以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る無線通信システムおよび無線通信方法の一実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施の形態は、内容を矛盾させない範囲で、適宜組み合わせることができる。
本実施形態に係る無線通信システムは、それぞれの無線通信端末が通信品質を算出し、通信品質が所定閾値以下になる場合、広域無線通信基地局に対して無線通信端末の各々が通信品質を通知する。広域無線通信基地局は、各々の無線通信端末から通知された通信品質に基づいて、通信品質の一番高い無線通信端末を中継装置(無線中継基地局)として選定し、選定された無線通信端末に通知する。中継装置として選定された無線通信端末は、自身の広域無線通信機能を継続し、非広域無線通信(中域無線通信、又は狭域無線通信)による無線中継機能を起動させて中継装置として機能する。中継装置として選定されない無線通信端末は、非広域無線通信を用いて、中継装置として選定された無線通信端末と接続する。これにより、無線通信端末のアクセスが集中して広域無線通信基地局が混雑する広域通信環境下においても通信品質の劣下を抑制することができる。なお、以下では、中継装置を「無線中継基地局」とも表記する。また、無線中継基地局は請求項の「中継装置」に対応する。
本実施形態に係る無線通信システムは、広域無線通信に用いる第1インターフェースと広域無線通信とは異なる通信に用いる第2インターフェースとをそれぞれが有する複数の無線通信端末と、複数の無線通信端末の各々が第1インターフェースを用いて接続する無線通信基地局とを備える無線通信システムである。
(第1実施形態)
まず、図1を用いて、第1実施形態に係る無線通信システム1の全体システム構成例について説明する。図1は、第1実施形態に係る無線通信システムの全体システム構成の一例を示す図である。
図1に示すように、無線通信システム1は、複数の無線通信端末10a、10bと、広域無線通信基地局20とを備える。以下、無線通信端末10a、10bを区別する必要がない場合は、無線通信端末10と表記する。図1に示す広域無線通信エリア30には、例えば、1つの広域無線通信基地局20に対して、複数の無線通信端末10a、10bが存在している。複数の無線通信端末10a、10bは、無線通信端末10ごとに、例えば、無線WAN(広域無線通信)により広域無線通信基地局20と接続し、例えば、携帯電話回線網を経由して各種の通信を行う。また、無線通信端末10は、広域無線通信基地局20との間でデータの送受信を行う。携帯電話回線網としては、例えば、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、UMB(Ultra Mobile Broadband)などであり、高速なデータ通信が可能である。
広域無線通信基地局20は、無線通信端末10との間で無線通信を行う。また、広域無線通信基地局20は、携帯電話回線網の末端となり、無線通信端末10との間の通話・通信を携帯電話回線網との間で中継する役割を持っている。各広域無線通信基地局20間は、例えば、有線(光ファイバー、電話回線(メタル回線)、ISDN等)又は無線・衛星回線で接続される。
なお、図1では、広域無線通信基地局20と接続される無線通信端末10の台数が2台である場合を例示しているが、これに限らず、広域無線通信基地局20と無線通信端末10の台数は任意である。
次に、図2〜4を用いて、無線通信端末10の機能について説明する。図2は、無線通信端末の機能構成の一例を示すブロック図である。図3は、接続パラメータ検出部の機能構成の一例を示すブロック図である。図4は、無線通信部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、無線通信端末10は、接続パラメータ検出部11と、通信品質算出部12と、制御部13と、無線通信部14とを備える。上記各部については、これらの一部又は全部がソフトウェア(プログラム)、ハードウェア回路であってもよい。また、上記各部のうちの一部が無線通信端末10に搭載される形態であってもよい。
接続パラメータ検出部11は、図3に示すように、RSSI(Received Signal Strength Indicator)抽出部111と、S/N比算出部112と、復調部113と、エラーレート算出部114と、通信速度検出部115と、通信遅延検出部116とを備える。接続パラメータ検出部11は、制御部13の制御の下、例えば、広域無線通信基地局20などの接続先との接続パラメータを検出し、検出結果を通信品質算出部12に通知する。
RSSI抽出部111は、図示しない無線通信I/F部で受信された無線電波信号から受信信号強度を検出して抽出する。一方、検出した受信信号強度よりS/N比を算出するために、受信信号強度をS/N比算出部112に通知する。
S/N比算出部112は、S/N比を算出する。ここで、S/N比とは、受信信号強度からノイズ強度を減算したものである。アンテナからの電波の放射を停止させた状態においては他の端末から電波が放出されない無電波状態であると判断できるので、この間にRSSI抽出部111で、ノイズの強度を検出することが可能となる。そして、受信信号強度からノイズ強度を減算してS/N比を算出する。
復調部113は、受信された無線電波を復調し、パケットを生成する。
エラーレート算出部114は、復調部113から復調されたパケットより、CRC(巡回冗長検査)でエラーレート(%)を算出する。
通信速度検出部115は、所定時間で上り方向と下り方向に対し、別々にデータ量を集計し、データ通信速度を算出する。
通信遅延検出部116は、接続先からのパケットを受信するまでの経過時間を測定し、遅延時間を検出する。例えば、広域無線通信基地局20などの接続先は、時刻情報を含むデータを送信し、無線通信端末10は、受信した信号から時刻情報を検出して、無線通信端末10の有する時刻情報との差分から通信遅延時間を測定する。
図2に戻り説明を続ける。通信品質算出部12は、無線通信基地局と通信する通信速度を少なくとも示す通信品質を算出する。通信品質算出部12は、算出した結果を制御部13に通知する。
また、通信品質は、通信速度(データ通信速度を含む)、受信信号強度、S/N比、エラーレート、通信遅延時間の何れかの接続パラメータを用いて算出することができる。具体的には、一例として、上述した検出された受信信号強度、算出されたS/N比、検出された通信速度、算出されたエラーレート、および測定された通信遅延時間、の例えば5つの接続パラメータを用いて、例えば、下記式(1)により通信品質を算出することができる。
(通信速度×S/N比)/(エラーレート×通信遅延時間×受信信号強度の絶対値)・・・(1)
上記式(1)で算出された通信品質は、検出された上記5つの接続パラメータの中で、S/N比及び通信速度が、大きければ大きいほど高い。すなわち、無線通信端末10に対し、(通信速度×S/N比)の値が大きければ大きいほど通信品質は高い。また、検出された上記5つの接続パラメータの中で、エラーレート及び通信遅延時間が、小さければ小さいほど通信品質は高い。また、受信信号強度が、大きければ大きいほど通信品質は高いが、受信信号強度の値が負数であるため、受信信号強度の絶対値が小さければ小さいほど通信品質は高い。すなわち、無線通信端末10に対し、(エラーレート×通信遅延時間×受信信号強度の絶対値)の値が小さければ小さいほど通信品質は高い。従って、上記式(1)により、算出した通信品質の値が大きければ大きいほど通信品質は高いことになる。
また、通信品質として、通信速度、接続のし易さ、接続までの時間、及び通信中の切断などの不具合の発生回数の何れかを指標として用いることもできる。
制御部13は、広域無線通信基地局20などの接続先との通信品質を監視する。制御部13は、接続している広域無線通信基地局20がアクセス集中などで混雑になった広域通信環境下で、通信品質が所定閾値以下になった時に、例えば、他の広域無線通信基地局21にハンドオーバできない場合(一定範囲内に異なる広域無線通信基地局がない)には、接続先との通信品質を接続している広域無線通信基地局20に通知し、広域無線通信基地局20の通知により、下記のように無線通信端末10を制御する。
例えば、無線通信端末10が無線中継基地局として選定された場合、制御部13は、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動し、起動された非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定されていない他の無線通信端末10と接続して、無線中継基地局として機能する。すなわち、無線中継基地局としての機能とは、無線中継基地局として選定された無線通信端末10を経由して、無線中継基地局として選定されていない他の無線通信端末10を広域無線通信基地局20に接続させる機能である。一方、無線中継基地局として選定された無線通信端末10の制御部13は、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を継続し、広域無線通信規格を用いて、広域無線通信基地局20と通信する。無線通信端末10が無線中継基地局として選定された場合、制御部13は、例えば、自身のデータ通信以外に、接続された他の無線通信端末10からのデータ通信を中継する通信を行う。なお、非広域無線通信機能とは、中域無線通信、又は狭域無線通信を用いて通信を行う機能である。また、広域無線通信機能とは、広域無線通信を用いて通信を行う機能である。
また、例えば、無線通信端末10が無線中継基地局として選定されていない場合、制御部13は、広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を停止し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する。制御部13は、起動された非広域無線通信を用いて、無線中継基地局として選定された無線通信端末10と接続し、無線中継基地局として選定された無線通信端末10を介して、広域無線通信基地局20と通信する。
一方、制御部13は、接続している広域無線通信基地局20が、例えば、アクセスが集中して混雑になった広域通信環境下で、通信品質が所定閾値以下になった時に、例えば、異なる広域無線通信基地局21にハンドオーバできる場合には、広域無線通信エリア30内の複数の広域無線通信基地局20、21から最適広域無線通信基地局21を選定し、ハンドオーバを行う機能も具備する。
無線通信部14は、図4に示すように、広域無線通信部141と、中域無線通信部142と、狭域無線通信部143とを備える。無線通信部14は、様々な無線通信規格に対応可能である。無線通信部14は、広域無線通信基地局20と、例えば、広域通信の無線WANにより接続し、各種の通信を行う。具体的には、無線通信部14は、広域無線通信基地局20との間でデータの送受信を行う。また、無線通信部14は、算出された通信品質を広域無線通信基地局20に対して送信(通知)する。また、無線通信部14は、広域無線通信基地局20から無線中継基地局として選定された情報を受信して制御部13に受け渡す。
また、無線通信部14は、無線中継基地局として選定された場合、無線中継基地局として選定されなかった無線通信端末10と、例えば、中域通信の無線MAN、又は狭域通信の無線LANを用いて通信を行う。具体的には、無線通信部14は、無線通信端末10との間でデータの送受信を行う。
また、無線通信部14は、制御部13の制御の下、各無線通信部を起動及び停止(ON又はOFF)する。なお、現状では中域通信の無線MAN、狭域通信の無線LANなどのサービスエリアは未だ十分ではないため、無線通信端末10を起動する時には、通常は広域無線通信部141は起動(ON)の状態であり、他の無線通信部は停止(OFF又はSLEEP)の状態である。なお、広域無線通信部141は請求項の「第1インターフェース」に対応し、中域無線通信部142と狭域無線通信部143は請求項の「第2インターフェース」に対応する。
次に、図5を用いて、広域無線通信基地局20の機能について説明する。図5は、広域無線通信基地局の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、広域無線通信基地局20は、通信部201と、選定部202と、制御部203とを備える。上記各部については、これらの一部又は全部がソフトウェア(プログラム)、ハードウェア回路であってもよい。また、上記各部のうちの一部が無線通信端末10に搭載される形態であってもよい。
通信部201は、広域無線通信エリア30内にある複数の無線通信端末10と、例えば、広域通信の無線WANにより接続し、各種の通信を行う。具体的には、通信部201は、複数の無線通信端末10との間でデータの送受信を行う。また、通信部201は、複数の無線通信端末10から通信品質のデータを受信して選定部202、制御部203に受け渡す。
選定部202は、複数の無線通信端末10から通知された通信品質が全て予め設定された閾値以下の場合、複数の無線通信端末10から受信した各々の通信品質に基づいて、通信品質の一番高い無線通信端末10を中継装置(無線中継基地局)として選定し、選定された無線通信端末10に対して第1中継装置(無線中継基地局)、又は第2中継装置として選定された情報を通信部201を介して通知する。なお、以下では、第1中継装置、第2中継装置を区別する必要が無い場合、単に「中継装置」と表記する。
また、選定部202は、制御部203から中継装置(無線中継基地局)の選定を通知された場合、複数の無線通信端末10から通知された通信品質に基づいて、通信品質の一番高い無線通信端末10を中継装置(無線中継基地局)として選定するようにしてもよい。
制御部203は、広域無線通信基地局20の全体を制御する。具体的には、制御部203は、複数の無線通信端末10から受け付けた通信品質が全て予め設定された閾値以下の場合、選定部202に対して中継装置(無線中継基地局)の選定を通知する。なお、通信品質が全て予め設定された閾値以下であるか否かの判断は、上記の選定部202で行うようにしてもよい。
次に、図1、図6及び図7を参照しながら、無線通信システム1の処理動作の一例を説明する。図6は、無線通信システムの処理動作の一例を示すフローチャート図である。
図1に示すように、広域無線通信エリア30内には、複数の無線通信端末10a、10bと、1つの広域無線通信基地局20とが存在している。複数の無線通信端末10は、直接に広域無線通信基地局20と接続し、通信を行っている。
本実施形態では、無線通信端末10が以下の状況であると仮定して説明する。まず、複数の無線通信端末10の中で、広域無線通信基地局20との通信品質が一番高い無線通信端末10は、無線通信端末10aであると仮定する。また、全ての無線通信端末10は、通信の最初の時には、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以上であり、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定する。なお、所定閾値は、任意に設定される、予め設定された閾値である。また、以下では、複数の無線通信端末10を、単に「無線通信端末10」と表記する。
無線通信端末10は、所在場所(広域無線通信エリア30)内の広域無線通信基地局20と接続する(ステップS1)。次に、無線通信端末10は、接続パラメータ検出部11で、広域無線通信基地局20との接続パラメータを検出し、通信品質算出部12で、検出結果を基に、通信品質を算出する(ステップS2)。このステップS2の処理は請求項の「第1ステップ」に対応する。
次に、無線通信端末10は、制御部13で、通信品質が所定閾値以下になるか否かを判定する(ステップS3)。通信品質が所定閾値以下になる場合(ステップS3:Yes)、複数の無線通信端末10は、算出された通信品質を無線通信部14を介して広域無線通信基地局20に対して通知(送信)する(ステップS4)。このステップS4の処理は請求項の「第2ステップ」に対応する。通信品質が所定閾値以下にならない場合(ステップS3:No)、無線通信端末10は、ステップS2に戻り処理を継続する。なお、本実施形態では、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定するため、一定時間経過した場合、処理をステップS4に移行する。ここで、所定閾値は、任意に設定される、予め設定された閾値である。
次に、広域無線通信基地局20は、複数の無線通信端末10から通知(送信)された通信品質が全て予め設定された閾値以下の場合、複数の無線通信端末10から受信した各々の通信品質に基づいて、通信品質の一番高い無線通信端末10を無線中継基地局(中継装置)として選定し、選定された無線通信端末10に対して無線中継基地局として選定された情報を通信部201を介して通知する(ステップS5)。なお、本実施形態では、例えば、広域無線通信基地局20との通信品質が一番高い無線通信端末10は、無線通信端末10aであると仮定し、全ての無線通信端末10は、「中継装置(無線中継基地局)が無線通信端末10aである」という情報が通知される。このステップS5の処理は請求項の「第3ステップ」に対応する。
次に、無線通信端末10は、制御部13で、無線中継基地局として選定されたか否かを判定する(ステップS6)。無線中継基地局として選定された場合(ステップS6:Yes)、無線通信端末10aは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を継続し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS7)。次に、無線通信端末10aは、起動された非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定されていない他の無線通信端末10と接続して、無線中継機能を起動させて無線中継基地局として機能する(ステップS8)。このステップS7、S8の処理は請求項の「第4ステップ」に対応する。
ステップS6に戻り、無線通信端末10は、無線中継基地局として選定されない場合(ステップS6:No)、無線通信端末10bは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を停止し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS9)。その後、無線通信端末10bは、非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定された無線通信端末10aと接続する(ステップS10)。このステップS9、S10の処理は請求項の「第4ステップにおける処理」に対応する。また、ステップS9の処理は請求項の「切り替えステップ」に対応する。
以上の処理を無線通信システム1に実行させることにより、無線通信端末10は、広域無線通信エリア30内の無線接続状況を図7のように変更する。図7は、無線通信システムが無線接続状況を変更した場合の一例について説明する図である。
図7に示すように、無線通信端末10aを中継無線基地局として、新しい狭域無線通信エリア40を構築してアクセスが集中して混雑になる広域無線通信基地局20の負荷を下げるようにする。そして無線通信端末10aに対しては、同じ広域無線通信エリア30内で広域無線通信基地局20に接続する無線通信端末10の数を減らすことで、他の無線通信端末10からの干渉を低減できるため、通信品質を向上させることが可能になる。
また、通信品質の一番高い無線通信端末10aを中継無線基地局として選定し、新しく構築した狭域無線通信エリア40内の無線中継基地局(無線通信端末10a)を経由して非広域無線規格で無線通信端末10bは通信できるため、広域無線通信基地局20との通信品質の劣下を抑制することができる。さらに、無線通信端末10bは、新しく構築した狭域無線通信エリア40を利用するので、他の無線通信端末10からの干渉を低減できるため通信品質の劣下を抑制することができる。
なお、図7の例では、無線通信端末10bが狭域無線通信を用いて、無線通信端末10aと接続しているが、これに限ることはなく無線通信端末10bが、例えば、中域無線通信を用いて、無線通信端末10aと接続してもよい。また、省電力を重視する場合には、広域無線通信の消費電力>中域無線通信の消費電力>狭域無線通信の消費電力の関係であるので、狭域通信を優先的に利用することが好ましい。
本実施形態によれば、無線通信端末10のアクセスが集中して広域無線通信基地局20が混雑する広域通信環境下においても通信品質の劣下を抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態に比較して広域無線通信エリア30内には、さらに多くの無線通信端末10が存在し、通信品質の一番高い無線通信端末10aが無線中継基地局として選定されている。他の無線通信端末10b〜10dは、狭域無線通信を用いて無線中継基地局として選定された無線通信端末10aを経由して通信を行うが、無線中継基地局として選定された無線通信端末10aと接続できない無線通信端末10c、10dが発生する場合について説明する。以下、具体的に説明する。
まず、図8を用いて、第2実施形態に係る無線通信システム1aの全体システム構成例について説明する。図8は、第2実施形態に係る無線通信システムの全体システム構成の一例を示す図である。第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、上述の第1実施形態と重複する部分については適宜に説明を省略する。
図8に示すように、無線通信システム1aは、複数の無線通信端末10a、10b、10c、10dと、広域無線通信基地局20とを備える。以下、無線通信端末10a〜10dを区別する必要がない場合は、無線通信端末10と表記する。図8に示す広域無線通信エリア30には、例えば、1つの広域無線通信基地局20に対して、複数の無線通信端末10a、10b、10c、10dが存在している。複数の無線通信端末10a〜10dは、無線通信端末10ごとに、例えば、無線WAN(広域無線通信)により広域無線通信基地局20と接続し、例えば、携帯電話回線網を経由して各種の通信を行う。また、無線通信端末10は、広域無線通信基地局20との間でデータの送受信を行う。無線通信端末10の機能、構成及び処理は、第1実施形態と同様である。また、広域無線通信基地局20の機能、構成及び処理は、第1実施形態と同様である。
なお、図8では、広域無線通信基地局20と接続される無線通信端末10の台数が4台である場合を例示しているが、これに限らず、広域無線通信基地局20と無線通信端末10の台数は任意である。
次に、図8、図9及び図10を参照しながら、無線通信システム1aの処理動作の一例について説明する。
本実施形態では、無線通信端末10が以下の状況であると仮定して説明する。まず、図8の例において、全ての無線通信端末10の中で、広域無線通信基地局20との通信品質が一番目に良い無線通信端末10は、無線通信端末10aであり、広域無線通信基地局20との通信品質が二番目に良い無線通信端末10は、無線通信端末10cであると仮定する。また、全ての無線通信端末10は、通信の最初の時には、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以上であり、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定する。さらに、無線通信端末10aを中継無線基地局として選定した後に、無線通信端末10cと無線通信端末10dの通信品質は向上するが、再度通信品質が所定閾値以下になり、無線通信端末10aと接続できないと仮定する。この場合、2つの無線通信端末10c、10dは、例えば、無線通信端末10aとの距離が遠いなどの理由で無線通信端末10aと接続できない状況である。なお、所定閾値は、任意に設定される、予め設定された閾値である。また、以下では、複数の無線通信端末10を、単に「無線通信端末10」と表記する。
図9は、無線通信システムの処理動作の一例を示すフローチャート図である。
なお、以下では、ステップS21〜S28は、第1実施形態の図6のステップS1〜S8と同様の処理であり、ステップS30〜S31は、第1実施形態の図6のステップS9〜S10と同様の処理である。本実施形態では、ステップSS29の処理が新たに行われる。
図9に示すように、無線通信端末10は、所在場所(広域無線通信エリア30)内の広域無線通信基地局20と接続する(ステップS21)。次に、無線通信端末10は、接続パラメータ検出部11で、広域無線通信基地局20との接続パラメータを検出し、通信品質算出部12で、検出結果を基に、通信品質を算出する(ステップS22)。
次に、無線通信端末10は、制御部13で、通信品質が所定閾値以下になるか否かを判定する(ステップS23)。通信品質が所定閾値以下になる場合(ステップS23:Yes)、複数の無線通信端末10は、算出された通信品質を無線通信部14を介して広域無線通信基地局20に対して通知する(ステップS24)。通信品質が所定閾値以下にならない場合(ステップS23:No)、無線通信端末10は、ステップS22に戻り処理を継続する。なお、本実施形態では、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定するため、一定時間経過した場合、処理をステップS24に移行する。ここで、所定閾値は、任意に設定される、予め設定された閾値である。
次に、広域無線通信基地局20は、複数の無線通信端末10から通知された通信品質が全て予め設定された閾値以下の場合、複数の無線通信端末10から受信した各々の通信品質に基づいて、通信品質の一番高い無線通信端末10を1個目の無線中継基地局(中継装置)として選定し、選定された無線通信端末10に対して無線中継基地局(中継装置)として選定された情報を通信部201を介して通知する(ステップS25)。なお、本実施形態では、例えば、広域無線通信基地局20との通信品質が一番高い無線通信端末10は、無線通信端末10aであると仮定し、全ての無線通信端末10は、「無線中継基地局が無線通信端末10aである」という情報が通知される。
次に、無線通信端末10は、制御部13で、無線中継基地局として選定されたか否かを判定する(ステップS26)。無線中継基地局として選定された場合(ステップS26:Yes)、無線通信端末10aは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を継続し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS27)。次に、無線通信端末10aは、起動された非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定されていない他の無線通信端末10と接続して、無線中継機能を起動させて無線中継基地局として機能する(ステップS28)。
ステップS26に戻り、無線通信端末10は、無線中継基地局として選定されない場合(ステップS26:No)、無線通信端末10b、10c、10dは、選定された無線中継基地局(無線通信端末10a)と接続できるか否かを判定する(ステップS29)。このステップS29の処理は請求項の「第5ステップ」に対応する。選定された無線中継基地局と接続できる場合(ステップS29:Yes)、無線通信端末10b、10c、10dは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を停止し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS30)。その後、無線通信端末10b、10c、10dは、非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定された無線通信端末10aと接続する(ステップS31)。このステップS30、S31の処理は請求項の「第1接続ステップ」、「第5ステップにおける処理」の一部に対応する。
ステップS29に戻り、選定された無線中継基地局(無線通信端末10a)と接続できない場合(ステップS29:No)、ステップS22に戻り処理を継続する。
本実施形態では、無線通信端末10c及び無線通信端末10dは、選定された無線中継基地局(無線通信端末10a)とは、一定時間を経過すると接続できないと仮定するため、ステップS22に戻る。次に、無線通信端末10c、10dは、接続パラメータ検出部11で、広域無線通信基地局20との接続パラメータを検出し、通信品質算出部12で、検出結果を基に、通信品質を算出する(ステップS22)。
次に、無線通信端末10c、10dは、制御部13で、通信品質が所定閾値以下になるか否かを判定する(ステップS23)。通信品質が所定閾値以下になる場合(ステップS23:Yes)、無線通信端末10c、10dは、算出された通信品質を無線通信部14を介して広域無線通信基地局20に対して通知する(ステップS24)。このステップS22、S24の処理は請求項の「第5ステップにおける処理」の一部、および請求項の「送信ステップ」に対応する。通信品質が所定閾値以下にならない場合(ステップS23:No)、無線通信端末10c、10dは、ステップS22に戻り処理を継続する。なお、本実施形態では、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定するため、一定時間経過した場合、処理をステップS24に移行する。
次に、広域無線通信基地局20は、無線通信端末10aと接続できない無線通信端末10c、10dから通知された通信品質が全て予め設定された閾値以下の場合、複数の無線通信端末10から受信した各々の通知された通信品質に基づいて、通信品質の一番高い無線通信端末10cを2個目の無線中継基地局(中継装置)として選定し、選定された無線通信端末10cに対して無線中継基地局(中継装置)として選定された情報を通信部201を介して通知する(ステップS25)。このステップS25の処理は請求項の「第6ステップ」に対応する。
次に、無線通信端末10c、10dは、制御部13で、無線中継基地局として選定されたか否かを判定する(ステップS26)。無線中継基地局として選定された場合(ステップS26:Yes)、無線通信端末10cは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を継続し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS27)。次に、無線通信端末10cは、起動された非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定されていない他の無線通信端末10dと接続して、無線中継機能を起動させて無線中継基地局として機能する(ステップS28)。
ステップS26に戻り、無線通信端末10dは、無線中継基地局として選定されない場合(ステップS26:No)、無線通信端末10dは、選定された無線中継基地局(無線通信端末10c)と接続できるか否かを判定する(ステップS29)。選定された無線中継基地局と接続できる場合(ステップS29:Yes)、無線通信端末10dは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を停止し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS30)。その後、無線通信端末10dは、非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定された無線通信端末10cと接続する(ステップS31)。
ステップS29に戻り、選定された無線中継基地局と接続できない場合(ステップS29:No)、ステップS22に戻り処理を継続する。
このように、本実施形態では、1個目の無線中継基地局(無線通信端末10a)と接続できなくなった無線通信端末10が存在する場合、2個目の無線中継基地局(無線通信端末10c)を選定し、2個目の狭域無線通信エリア41を構築する。
以上の処理を無線通信システム1aに実行させることにより、無線通信端末10は、広域無線通信エリア30内の無線接続状況を図10のように変更する。図10は、無線通信システムが無線接続状況を変更した場合の一例について説明する図である。
図10に示すように、無線通信端末10aを中継無線基地局として、狭域無線通信エリア40を構築した後、無線通信端末10b、10c、10dの通信品質は向上する。しかし、その後例えば、無線通信端末10cと無線通信端末10dは、狭域無線通信エリア40の有効範囲外に移動したため、無線通信端末10aとは接続できなくなり、通信品質が再度所定閾値以下になった場合、無線通信端末10cを2個目の中継無線基地局として、狭域無線通信エリア41を構築する。これにより、無線通信端末10cに対し、同じ広域無線通信エリア30内で広域無線通信基地局20に接続する無線通信端末10の数を減らすことで、他の無線通信端末10からの干渉を低減できるため、通信品質を向上させることが可能になる。
また、狭域無線通信エリア40の有効範囲内に入っていない無線通信端末10の中から、通信品質の一番高い無線通信端末10cを2個目の中継無線基地局として選定し、新しく構築した狭域無線通信エリア41内の無線中継基地局(無線通信端末10c)を経由して非広域無線規格で無線通信端末10dは通信できるため、広域無線通信基地局20との通信品質の劣下を抑制することができる。さらに、無線通信端末10dは、新しく構築した狭域無線通信エリア41を利用するので、他の無線通信端末10からの干渉を低減できるため通信品質の劣下を抑制することができる。
なお、図10の例では、無線通信端末10b、10dが狭域無線通信を用いて、無線通信端末10a、10cと接続しているが、これに限ることはなく無線通信端末10b、10dが、例えば、中域無線通信を用いて、無線通信端末10a、10cと接続することも可能である。また、省電力を考える場合には、広域無線通信の消費電力>中域無線通信の消費電力>狭域無線通信の消費電力の関係であるので、狭域通信を優先的に利用することが好ましい。
本実施形態によれば、無線通信端末10のアクセスが集中して広域無線通信基地局20が混雑する広域通信環境下においても通信品質の劣下を抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1の実施形態に比較して広域無線通信エリア30内には、さらに多くの無線通信端末10が存在し、通信品質の一番高い無線通信端末10aが無線中継基地局として選定されている。他の無線通信端末10b、10cは、狭域無線通信を用いて無線中継基地局として選定された無線通信端末10aを経由して通信を行うが、無線中継基地局として選定された無線通信端末10aが狭域無線通信エリア40内から移動して接続が切断される場合について説明する。以下、具体的に説明する。
まず、図11を用いて、第3実施形態に係る無線通信システム1bの全体システム構成例について説明する。図11は、第3実施形態に係る無線通信システムの全体システム構成の一例を示す図である。第3実施形態では、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、上述の第1実施形態及び第2実施形態と重複する部分については適宜に説明を省略する。
図11に示すように、無線通信システム1bは、複数の無線通信端末10a、10b、10cと、広域無線通信基地局20とを備える。以下、無線通信端末10a〜10cを区別する必要がない場合は、無線通信端末10と表記する。図11に示す広域無線通信エリア30には、例えば、1つの広域無線通信基地局20に対して、複数の無線通信端末10a、10b、10cが存在している。複数の無線通信端末10a〜10cは、無線通信端末10ごとに、例えば、無線WAN(広域無線通信)により広域無線通信基地局20と接続し、例えば、携帯電話回線網を経由して各種の通信を行う。また、無線通信端末10は、広域無線通信基地局20との間でデータの送受信を行う。無線通信端末10の機能、構成及び処理は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。また、広域無線通信基地局20の機能、構成及び処理は、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
なお、図11では、広域無線通信基地局20と接続される無線通信端末10の台数が3台である場合を例示しているが、これに限らず、広域無線通信基地局20と無線通信端末10の台数は任意である。
次に、図11、図12、図13及び図14を参照しながら、無線通信システム1bの処理動作の一例について説明する。図12は、無線通信システムの全体システム構成の一例を示す図である。
本実施形態では、無線通信端末10が以下の状況であると仮定して説明する。まず、図11の例に示すように、全ての無線通信端末10の中で、広域無線通信基地局20との通信品質が一番目に良い無線通信端末10は、無線通信端末10aであり、広域無線通信基地局20との通信品質が二番目に良い無線通信端末10は、無線通信端末10cであると仮定する。また、全ての無線通信端末10は、通信の最初の時には、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以上であり、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定する。さらに、図12の例に示すように、無線通信端末10aが中継無線基地局として選定され、無線通信端末10b、10cは、狭域無線通信を用いて無線中継基地局として選定された無線通信端末10aを経由して通信を行うが、一定時間経過後に無線中継基地局として選定された無線通信端末10aが狭域無線通信エリア40内から移動して接続が切断されると仮定する。なお、所定閾値は、任意に設定される、予め設定された閾値である。また、以下では、複数の無線通信端末10を、単に「無線通信端末10」と表記する。
図13は、無線通信システムの処理動作の一例を示すフローチャート図である。
なお、以下では、ステップS41〜S48は、第1実施形態の図6のステップS1〜S8、及び第2実施形態の図9のステップS21〜S28と同様の処理であり、ステップS49〜S51は、第2実施形態の図9のステップS29〜S31と同様の処理である。本実施形態では、ステップS52の処理が新たに行われる。
図13に示すように、無線通信端末10は、所在場所(広域無線通信エリア30)内の広域無線通信基地局20と接続する(ステップS41)。次に、無線通信端末10は、接続パラメータ検出部11で、広域無線通信基地局20との接続パラメータを検出し、通信品質算出部12で、検出結果を基に、通信品質を算出する(ステップS42)。
次に、無線通信端末10は、制御部13で、通信品質が所定閾値以下になるか否かを判定する(ステップS43)。通信品質が所定閾値以下になる場合(ステップS43:Yes)、複数の無線通信端末10は、算出された通信品質を無線通信部14を介して広域無線通信基地局20に対して通知する(ステップS44)。通信品質が所定閾値以下にならない場合(ステップS43:No)、無線通信端末10は、ステップS42に戻り処理を継続する。なお、本実施形態では、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定するため、一定時間経過した場合、処理をステップS44に移行する。ここで、所定閾値は、任意に設定される、予め設定された閾値である。
次に、広域無線通信基地局20は、複数の無線通信端末10から通知(送信)された通信品質が全て予め設定された閾値以下の場合、複数の無線通信端末10から受信した各々の通信品質に基づいて、通信品質の一番高い無線通信端末10を1個目の無線中継基地局(中継装置)として選定し、選定された無線通信端末10に対して無線中継基地局(中継装置)として選定された情報を通信部201を介して通知する(ステップS45)。なお、本実施形態では、例えば、広域無線通信基地局20との通信品質が一番高い無線通信端末10は、無線通信端末10aであると仮定し、全ての無線通信端末10は、「無線中継基地局が無線通信端末10aである」という情報が通知される。
次に、無線通信端末10は、制御部13で、無線中継基地局として選定されたか否かを判定する(ステップS46)。無線中継基地局として選定された場合(ステップS46:Yes)、無線通信端末10aは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を継続し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS47)。次に、無線通信端末10aは、起動された非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定されていない他の無線通信端末10b、10cと接続して、無線中継機能を起動させて無線中継基地局として機能する(ステップS48)。
ステップS46に戻り、無線通信端末10は、無線中継基地局として選定されない場合(ステップS46:No)、無線通信端末10b、10cは、選定された無線中継基地局(無線通信端末10a)と接続できるか否かを判定する(ステップS49)。選定された無線中継基地局と接続できない場合(ステップS49:No)、ステップS42に戻り処理を継続する。選定された無線中継基地局と接続できる場合(ステップS49:Yes)、無線通信端末10b、10cは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を停止し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS50)。その後、無線通信端末10b、10cは、非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定された無線通信端末10aと接続する(ステップS51)。
次に、無線通信端末10は、無線中継基地局との接続が切断されたか否かを判定する(ステップS52)。無線中継基地局との接続が切断されていない場合(ステップS52:No)、無線通信端末10は、処理を完了するが、無線中継基地局との接続状況を常に監視する処理については継続する。
ステップS52に戻り、無線中継基地局との接続が切断された場合(ステップS52:Yes)、ステップS42に戻り処理を継続する。
本実施形態では、一定時間を経過すると選定された無線中継基地局(無線通信端末10a)が狭域無線通信エリア40から移動するので、無線通信端末10b、10cは、選定された無線中継基地局(無線通信端末10a)と接続できないと仮定するため、ステップS42に戻る。次に、無線通信端末10b、10cは、接続パラメータ検出部11で、広域無線通信基地局20との接続パラメータを検出し、通信品質算出部12で、検出結果を基に、通信品質を算出する(ステップS42)。
次に、無線通信端末10b、10cは、制御部13で、通信品質が所定閾値以下になるか否かを判定する(ステップS43)。通信品質が所定閾値以下になる場合(ステップS43:Yes)、無線通信端末10b、10cは、算出された通信品質を無線通信部14を介して広域無線通信基地局20に対して通知する(ステップS44)。このステップS42、S44の処理は請求項の「第4ステップにおける処理」の一部、および請求項の「送信ステップ」に対応する。通信品質が所定閾値以下にならない場合(ステップS43:No)、無線通信端末10b、10cは、ステップS42に戻り処理を継続する。なお、本実施形態では、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定するため、一定時間経過した場合、処理をステップS44に移行する。
次に、広域無線通信基地局20は、無線通信端末10aと接続できない無線通信端末10b、10cから通知された通信品質が全て予め設定された閾値以下の場合、通知(受信)された通信品質に基づいて、通信品質の一番高い無線通信端末10cを無線中継基地局として選定し、選定された無線通信端末10cに対して無線中継基地局として選定された情報を通信部201を介して通知する(ステップS45)。このステップS45の処理は請求項の「第4ステップにおける処理」の一部、および請求項の「選定ステップ」に対応する。
次に、無線通信端末10b、10cは、制御部13で、無線中継基地局として選定されたか否かを判定する(ステップS46)。無線中継基地局として選定された場合(ステップS46:Yes)、無線通信端末10cは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を継続し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS47)。次に、無線通信端末10cは、起動された非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定されていない他の無線通信端末10bと接続して、無線中継機能を起動させて無線中継基地局として機能する(ステップS48)。
ステップS46に戻り、無線通信端末10bは、無線中継基地局として選定されない場合(ステップS46:No)、無線通信端末10bは、選定された無線中継基地局(無線通信端末10c)と接続できるか否かを判定する(ステップS49)。選定された無線中継基地局と接続できない場合(ステップS49:No)、ステップS42に戻り処理を継続する。選定された無線中継基地局と接続できる場合(ステップS49:Yes)、無線通信端末10bは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を停止し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS50)。その後、無線通信端末10bは、非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定された無線通信端末10cと接続する(ステップS51)。
次に、無線通信端末10は、無線中継基地局との接続が切断されたか否かを判定する(ステップS52)。無線中継基地局との接続が切断されていない場合(ステップS52:No)、無線通信端末10は、処理を完了するが、無線中継基地局との接続状況を常に監視する処理については継続する。
ステップS52に戻り、無線中継基地局との接続が切断された場合(ステップS52:Yes)、ステップS42に戻り処理を継続する。
このように、本実施形態では、一定時間を経過すると選定された無線中継基地局(無線通信端末10a)が狭域無線通信エリア40から移動するので、無線通信端末10b、10cは、選定された無線中継基地局(無線通信端末10a)と接続できなくなった場合、広域無線通信基地局20は新たな無線中継基地局(無線通信端末10c)を選定し、無線通信端末10は新たな狭域無線通信エリア40を構築する。
以上の処理を無線通信システム1bに実行させることにより、無線通信端末10は、広域無線通信エリア30内の無線接続状況を図14のように変更する。図14は、無線通信システムが無線接続状況を変更した場合の一例について説明する図である。
図14に示すように、無線通信端末10aとの接続が切断された後、無線通信端末10cを新しい中継無線基地局として、狭域無線通信エリア40を構築することでアクセスが集中して混雑になる広域無線通信基地局の負荷を下げることができる。これにより、無線通信端末10cに対し、同じ広域無線通信エリア30内で広域無線通信基地局20に接続する無線通信端末10の数を減らすことで、他の無線通信端末10からの干渉を低減できるため、通信品質を向上することが可能になる。
また、通信品質の一番高い無線通信端末10cを新しい中継無線基地局として選定し、新しく構築した狭域無線通信エリア40内の無線中継基地局(無線通信端末10c)を経由して非広域無線規格で無線通信端末10bは通信できるため、広域無線通信基地局20との通信品質の劣下を抑制することができる。さらに、無線通信端末10bは、新しく構築した狭域無線通信エリア40を利用するので、他の無線通信端末10からの干渉を低減できるため通信品質の劣下を抑制することができる。
なお、図14の例では、無線通信端末10bが狭域無線通信を用いて、無線通信端末10cと接続しているが、これに限ることはなく無線通信端末10bが、例えば、中域無線通信を用いて、無線通信端末10cと接続することも可能である。また、省電力を考える場合には、広域無線通信の消費電力>中域無線通信の消費電力>狭域無線通信の消費電力の関係であるので、狭域通信を優先的に利用することが好ましい。
本実施形態によれば、無線通信端末10のアクセスが集中して広域無線通信基地局20が混雑する広域通信環境下においても通信品質の劣下を抑制することができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態では、第1の実施形態に比較して無線通信端末10が存在するエリアには、複数の広域無線通信基地局20、21と、各広域無線通信エリア30、31内には、複数の無線通信端末10a、10bが存在している。全ての無線通信端末10は、広域無線通信基地局20と接続して通信している場合について説明する。以下、具体的に説明する。
まず、図15を用いて、第4実施形態に係る無線通信システム1cの全体システム構成例について説明する。第4実施形態では、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、上述の第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と重複する部分については適宜に説明を省略する。
図15に示すように、無線通信システム1cは、複数の無線通信端末10a、10bと、複数の広域無線通信基地局20、21とを備える。以下、無線通信端末10a、10bを区別する必要がない場合は、無線通信端末10と表記する。図15に示す広域無線通信エリア30、31には、例えば、複数の広域無線通信基地局20、21に対して、複数の無線通信端末10a、10bが存在している。複数の無線通信端末10a、10bは、無線通信端末10ごとに、例えば、無線WANにより広域無線通信基地局20、21と接続し、例えば、携帯電話回線網を経由して各種の通信を行う。また、無線通信端末10は、広域無線通信基地局20、21との間でデータの送受信を行う。無線通信端末10の機能、構成及び処理は、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と同様である。また、広域無線通信基地局20、21の機能、構成及び処理は、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と同様である。
なお、図15では、広域無線通信基地局20、21と接続される無線通信端末10の台数が2台である場合を例示しているが、これに限らず、無線通信端末10の台数は任意である。また、広域無線通信基地局20、21の数は2個であるがこれに限らず、広域無線通信基地局20、21の台数は任意である。
次に、図15、図16、図17を参照しながら、無線通信システム1cの処理動作の一例について説明する。図15は、無線通信システムの全体システム構成の一例を示す図である。
本実施形態では、無線通信端末10が以下の状況であると仮定して説明する。まず、図15の例に示すように、初めに無線通信端末10a、10bは、広域無線通信基地局20と接続し通信を行っている。また、全ての無線通信端末10は、通信の最初の時には、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以上であり、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定する。なお、所定閾値は、任意に設定される、予め設定された閾値である。また、以下では、複数の無線通信端末10を、単に「無線通信端末10」と表記する。
図16は、無線通信システムの処理動作の一例を示すフローチャート図である。
なお、以下では、ステップS61〜S63、ステップS65〜S69は、第1実施形態の図6のステップS1〜S3、ステップS4〜S8、及び第2実施形態の図9のステップS21〜S23、ステップS24〜S28、及び第3実施形態の図13のステップS41〜43、ステップS44〜S48と同様の処理である。ステップS70〜S73は、第2実施形態の図9のステップS29〜S31、及び第3実施形態の図13のステップS49〜S52と同様の処理である。本実施形態では、ステップS64、ステップS74、S75の処理が新たに行われる。
図16に示すように、無線通信端末10は、所在場所(広域無線通信エリア30)内の広域無線通信基地局20と接続する(ステップS61)。次に、無線通信端末10は、接続パラメータ検出部11で、広域無線通信基地局20との接続パラメータを検出し、通信品質算出部12で、検出結果を基に、通信品質を算出する(ステップS62)。
次に、無線通信端末10は、制御部13で、通信品質が所定閾値以下になるか否かを判定する(ステップS63)。通信品質が所定閾値以下にならない場合(ステップS63:No)、無線通信端末10は、ステップS62に戻り処理を継続する。なお、本実施形態では、一定時間を経過すると、広域無線通信基地局20との通信品質が所定閾値以下になると仮定するため、一定時間経過した場合、処理をステップS64に移行する。ここで、所定閾値は、任意に設定される、予め設定された閾値である。
通信品質が所定閾値以下になる場合(ステップS63:Yes)、複数の無線通信端末10は、他の広域無線通信基地局21にハンドオーバできるか否かを判定する(ステップS64)。他の広域無線通信基地局21にハンドオーバできる場合(ステップS64:Yes)、無線通信端末10は、接続パラメータ検出部11で、他の広域無線通信基地局21との接続パラメータを検出し、通信品質算出部12で、検出結果を基に、通信品質を算出する(ステップS74)。そして、通信品質の一番高い広域無線通信基地局を最適無線通信基地局として選定し、広域無線通信を用いて接続する(ステップS75)。すなわち、無線通信端末10は、広域無線通信基地局20から他の広域無線通信基地局21にハンドオーバを行う。その後、処理を終了する。このステップS64、S74、S75の処理は請求項の「第7ステップ」、「第2接続ステップ」に対応する。
ステップS64に戻り、他の広域無線通信基地局21にハンドオーバできない場合(ステップS64:No)、無線通信端末10は、算出された通信品質を無線通信部14を介して広域無線通信基地局20に対して通知する(ステップS65)。
次に、広域無線通信基地局20は、複数の無線通信端末10から通知された通信品質に基づいて、通信品質の一番高い無線通信端末10を1個目の無線中継基地局(中継装置)として選定し、選定された無線通信端末10に対して無線中継基地局(中継装置)として選定された情報を通信部201を介して通知する(ステップS66)。なお、本実施形態では、例えば、広域無線通信基地局20との通信品質が一番高い無線通信端末10は、無線通信端末10aであると仮定し、全ての無線通信端末10は、「無線中継基地局が無線通信端末10aである」という情報が通知される。
次に、無線通信端末10は、制御部13で、無線中継基地局として選定されたか否かを判定する(ステップS67)。無線中継基地局として選定された場合(ステップS67:Yes)、無線通信端末10aは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を継続し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS68)。次に、無線通信端末10aは、起動された非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定されていない他の無線通信端末10bと接続して、無線中継機能を起動し無線中継基地局として機能する(ステップS69)。
ステップS67に戻り、無線通信端末10は、無線中継基地局として選定されない場合(ステップS67:No)、無線通信端末10bは、選定された無線中継基地局(無線通信端末10a)と接続できるか否かを判定する(ステップS70)。選定された無線中継基地局と接続できない場合(ステップS70:No)、ステップS62に戻り処理を継続する。選定された無線中継基地局と接続できる場合(ステップS70:Yes)、無線通信端末10bは、自身の広域無線通信機能(広域無線通信部141の起動)を停止し、非広域無線通信機能(中域無線通信部142、又は狭域無線通信部143)を起動する(ステップS71)。その後、無線通信端末10bは、非広域無線通信機能を用いて、無線中継基地局として選定された無線通信端末10aと接続する(ステップS72)。
次に、無線通信端末10bは、無線中継基地局との接続が切断されたか否かを判定する(ステップS73)。無線中継基地局との接続が切断されていない場合(ステップS73:No)、無線通信端末10bは、処理を完了するが、無線中継基地局との接続状況を常に監視する処理については継続する。
ステップS73に戻り、無線中継基地局との接続が切断された場合(ステップS73:Yes)、ステップS62に戻り処理を継続する。
このように、本実施形態では、通信品質が所定閾値以下になる場合、無線通信端末10は、他の広域無線通信基地局21にハンドオーバできるか否かを判定し、他の広域無線通信基地局21にハンドオーバできる場合、無線通信端末10は、通信品質の一番高い広域無線通信基地局を最適無線通信基地局として選定して接続する。
以上の処理を無線通信システム1cに実行させることにより、無線通信端末10は、広域無線通信エリア30内の無線接続状況を図17のように変更する。図17は、無線通信システムが無線接続状況を変更した場合の一例について説明する図である。
図17に示すように、無線通信端末10aは、広域無線通信基地局21を最適無線通信基地局として選定してハンドオーバを行うため、無線通信端末10aは、新しい広域無線通信エリア31内で広域無線通信基地局21に接続する無線通信端末10の数を減らすことで、他の無線通信端末10からの干渉を低減できるため、通信品質を向上することが可能になる。
また、無線通信端末10bに対し、従来の広域無線通信エリア30内で広域無線通信基地局20に接続する無線通信端末10の数を減らすことで、他の無線通信端末10からの干渉を低減できるため、通信品質を向上することが可能になる。
以上に説明したように、本発明の各実施形態によれば、無線通信端末10のアクセスが集中して広域無線通信基地局20が混雑する広域通信環境下においても通信品質の劣下を抑制することができる、という有利な効果を達成できる。
以上、本発明に係る各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
また、上述した各実施形態の無線通信システム1、1a、1b、1cで実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよいし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、各種プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
なお、本実施形態の無線通信端末10と、広域無線通信基地局20、21とで構成されたシステム構成は一例であり、用途や目的に応じて様々なシステム構成例があることは言うまでもない。