以下、図面を参照しつつ本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
図1は一実施形態に係る脚部状態検出装置の機能構成を示すブロック図であり、図2は図1の脚部状態検出装置を用いた片足立ち試験の様子を示す概略図であり、図3は脚部状態検出装置1のレーザレンジセンサ10を説明する平面図である。図1及び図2に示すように、脚部状態検出装置1は、例えば片足立ち試験において被験者Xの片足立ち動作における遊脚の状態(離踵、離床、着床)を検出する装置である。
「遊脚」とは、身体の重みのかからない方の脚を意味し、本実施形態では、片足立ち動作において床面から持ち上げられる方の脚のことを遊脚という。一方、遊脚とは異なる方の脚を「支持脚」という。片足立ち動作においては、床面に接地して被験者Xの身体の重みを支える方の脚が支持脚となる。また、「離踵」とは、遊脚の踵が床面から離れた状態を意味する。「離床」とは、遊脚全体が床面から離れた状態を意味する。「着床」とは、遊脚が床面に着いた状態を意味する。
図2に示すように、片足立ち試験とは、両足立ち姿勢から片足立ち姿勢に移行してから、片足立ち姿勢を所定時間(例えば5秒以上等)保った後に再び両足立ち姿勢に戻るまでの動作(片足立ち動作)の正確性(即ち、被験者Xの運動機能)を評価する試験である。このような片足立ち試験は、例えば、高齢者等の被験者XがRSE(Rhythmic Stepping Exercise)等の負荷の高い運動を行うために十分な運動機能を備えているか否かを短時間で評価するために実施される。
片足立ち試験は、例えば以下の要領で実施される。まず、被験者Xは、床面上に敷設されたマットMの中央位置に自然な状態で立って静止するように指示される。その後、被験者Xは、計測者からの合図又はモニタ30に映し出される指示内容等に基づいて、片足立ち動作を開始する。具体的には、被験者Xは、両手を腰の位置に当てて支持脚の膝を伸ばした状態で、遊脚を支持脚に触れないように前方に5cm程度(或いはそれ以上)上げ、その状態を5秒以上保つように指示される。本実施形態の脚部状態検出装置1は、このような片足立ち試験において被験者Xにより試行される片足立ち動作における遊脚の状態(離踵、離床、着床)を検出する。
脚部状態検出装置1は、レーザレンジセンサ(Laser Range Sensor,距離情報取得部)10と、電子制御装置20と、を含んで構成されている。レーザレンジセンサ10は、ある高さの二次元平面におけるセンサ周辺の物体までの距離である二次元平面距離情報(距離情報)を取得する。図3に示すように、このレーザレンジセンサ10は、水平方向に沿って走査するようにレーザ光(検出波)Lを出射すると共に、このレーザ光Lの反射状態に基づいて、レーザ光Lを反射した物体との距離に関する二次元平面距離情報を経時的に取得する。
具体的には、図2及び図3に示すように、レーザレンジセンサ10では、レーザ光Lを出射すると共に、このレーザ光Lを回転ミラーで反射させることにより、レーザ光Lを扇状に水平方向に走査する。具体的には、レーザレンジセンサ10は、被験者Xと、被験者Xの両側に設置されたポール40が測定領域に含まれるように、レーザ光Lを扇状に水平方向に走査する。そして、例えば被験者Xの脚Fで反射されたレーザ光Lの反射光を受光し、反射光の検出角度(走査角度)、及びレーザ光Lの出射から受光までの時間(伝播時間)を計測し、脚Fとの角度及び距離に係る情報を含む二次元平面距離情報を検出する。なお、ポール40は、レーザレンジセンサ10の位置合わせ等に利用することができる。
レーザレンジセンサ10は、レーザ光Lを出射する光窓部の高さが調整可能に構成されている。レーザレンジセンサ10は、被験者Xの脛部の高さ(つまり、足首から膝下までの高さ)に対応する高さ位置でレーザ光Lが出射されるように設置されている。ここでのレーザレンジセンサ10の光窓部の高さは、被験者XがRSE等を試行している最中の両脚の移動軌跡を取得するためにも用いられることを考慮して、例えば床面から0.16mとされている。
※ 図面の0.16mは削除する。
なお、レーザレンジセンサ10としては、測距範囲が0.1〜30m、測域角度が270deg、測距精度が±30mm、角度分解能が0.25deg、及びサンプリング周期が25ms/scanのものが用いられている。ちなみに、レーザレンジセンサ10は、そのタイプや仕様(スペック)について限定されるものではなく、例えば測定環境に応じて種々のものを用いることができる。
電子制御装置20は、レーザレンジセンサ10で取得された二次元平面距離情報に基づく演算を行うことで、両足立ち姿勢と片足立ち姿勢との間で被験者Xの姿勢が変化する際における被験者Xの離踵、離床及び着床を検出する。電子制御装置20は、例えば、パーソナルコンピュータや専用制御用コンピュータ等であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んで構成されている。
この電子制御装置20は、機能的要素として、遊脚位置情報取得部21、遊脚位置情報記憶部22、脚幅情報取得部23、脚幅情報記憶部24、遊脚速さ情報取得部25、遊脚速さ情報記憶部26、離踵検出部27、離床検出部28、及び着床検出部29を備えている。
遊脚位置情報取得部21は、レーザレンジセンサ10で取得された二次元平面距離情報に基づいて、被験者Xの遊脚の位置(例えばXY座標)を示す遊脚位置情報を経時的に取得する。具体的には、遊脚位置情報取得部21は、レーザレンジセンサ10により取得された二次元平面距離情報に基づいて、各時刻kにおける被験者Xの脚F(左脚FL及び右脚FR)の観測位置Pkを検出する。そして、遊脚位置情報取得部21は、各時刻kにおいて、所定の方法(詳しくは後述)によりいずれの脚Fが遊脚であるかを特定することで、遊脚である方の脚Fの観測位置PR,kを遊脚位置情報として取得する。
以下、上述した遊脚位置情報取得部21の処理について詳細に説明する。遊脚位置情報取得部21は、レーザレンジセンサ10により取得された二次元平面距離情報から脚Fのエッジ位置Eを検出する。そして、検出されたエッジ位置Eの位置関係に基づいて、複数の観測パターンO1〜O5(図4及び図5参照)を用いたパターン検出によって観測位置Pkを検出する。
図4(a)はSL(Single Leg)パターンを用いた例、図4(b)はLT(two Legs Together)パターンを用いた例、図4(c)はFSO(Forward Straddle Observable)パターンを用いた例である。図5(a)はFSU(Forward Straddle Unobservable)パターンを用いた例、図5(b)はUO(Unobservable)パターンを用いた例である。
図4(a)に示す観測パターンO1は、脚Fが単独でレーザレンジセンサ10から完全に観測できている状態である。この例では、左脚FL及び右脚FRのいずれもがSLパターンとして観測されている。図4(b)に示す観測パターンO2は、左脚FLと右脚FRがそろってレーザレンジセンサ10から完全に観測できている状態である。この状態では、左脚FL及び右脚FRによりLTパターンが形成されている。
図4(c)に示す観測パターンO3は、片方の脚Fの影響により、パターンが壇状になり、エッジ位置E間の幅が被験者Xの脚Fの脚幅(例えば、後述するキャリブレーション時に得られた脚Fの脚幅(頸部の直径に対応する長さ)の平均値wmean)の1/2以上であり、脚Fの中心位置がレーザレンジセンサ10から観測できている状態である。この例では、右脚FRがFSOパターンとして観測されている。一方、右脚FRよりも前方にある左脚FLについては、単独でレーザレンジセンサ10から完全に観測できている状態であり、SLパターンとして観測されている。
図5(a)に示す観測パターンO4は、FSOパターンと同様にパターンが壇状になるが、エッジ位置E間の幅が被験者Xの脚Fの脚幅の1/2未満で脚Fの中心位置がレーザレンジセンサ10から直接観測できない状態である。この例では、右脚FRがFSUパターンとして観測されている。一方、右脚FRよりも前方にある左脚FLについては、単独でレーザレンジセンサ10から完全に観測できている状態であり、SLパターンとして観測されている。図5(b)に示す観測パターンO5は、片方の脚Fの影響によってレーザレンジセンサ10から観測できない状態である。この例では、右脚FRがUOパターンとして観測されている。一方、右脚FRよりも前方にある左脚FLについては、単独でレーザレンジセンサ10から完全に観測できている状態であり、SLパターンとして観測されている。
遊脚位置情報取得部21は、観測位置Pkの検出において、観測パターンO1〜O4を満たさないエッジ位置Eは脚Fではないと判定する。観測位置Pkの検出には、例えば脚Fの脚幅が用いられる。例えば、図5(a)に示す観測パターンO4では、右脚FRについて、エッジ位置E間の中央が観測位置Pkとして検出されるのではなく、例えばエッジ位置Eから脚幅の1/2だけ内側に入った位置が観測位置Pkとして検出される。以上のように複数の観測パターンO1〜O5に応じて予め定められた方法で脚Fの観測位置Pkを検出することにより、レーザレンジセンサ10から見て一方の脚Fが他方の脚Fに重なって隠れた場合等であっても、脚Fの観測位置Pkを好適に検出することが可能となる。
遊脚位置情報取得部21は、上述の観測パターンO1〜O5に応じた観測位置の検出処理により、被験者Xの脚F(左脚FL及び右脚FR)の各時刻kにおける観測位置Pkを検出する。被験者Xの左右の脚Fの位置関係が入れ替わらないことを前提とした場合には、時刻kにおいて観測される2つの観測位置Pkのうち、レーザレンジセンサ10から見て右側の観測位置Pkが被験者Xの左脚FLの観測位置を示すことがわかる。一方、レーザレンジセンサ10から見て左側の観測位置Pkが被験者Xの右脚FRの観測位置を示すことがわかる。片足立ち試験において被験者Xが床面から持ち上げる方の脚F(遊脚)が、例えば左脚FLと予め定められている場合には、遊脚位置情報取得部21は、各時刻kにおける被験者Xの左脚FLの観測位置を、遊脚の観測位置PR,k(遊脚位置情報)として取得することができる。
なお、被験者Xが片足立ち姿勢となったときにふらついてしまうこと等に起因して、被験者Xの左右の脚Fの位置関係が入れ替わる場合もあり得る。このような場合であっても精度良く遊脚の位置情報を取得するために、遊脚位置情報取得部21は、相関処理を実行してもよい。相関処理とは、上述の検出処理により取得された時刻kにおける観測位置Pkを、時刻k−1における支持脚の観測位置PS,k−1及び遊脚の観測位置PR,k−1のいずれか一方に、一対一に対応付ける処理である。時刻kにおいて観測された一方の観測位置Pkが時刻k−1における支持脚の観測位置PS,k−1と一対一に対応付けられた場合には、当該観測位置Pkは、時刻kにおける支持脚の観測位置であると決定される。また、時刻kにおいて観測された他方の観測位置Pkが時刻k−1における遊脚の観測位置PR,k−1と一対一に対応付けられた場合には、当該観測位置Pkは、時刻kにおける遊脚の観測位置であると決定される。
以下、この相関処理についてより具体的に説明する。相関処理においては、追跡対象(例えば遊脚等)に対応し得る観測位置を限定するためにゲート(有効領域)と呼ばれる閾値が設定される。被験者Xが片足立ち姿勢となる場合には、床面から持ち上げられる遊脚よりも支持脚の動きが小さくなるため、支持脚から先に対応付けが行われる。具体的には、時刻kにおいて観測された観測位置Pkのうち、次式(1)を満たす観測位置の中で時刻k−1における支持脚の観測位置PS,k−1との距離が最小となる観測位置Pkが、時刻kにおける支持脚の観測位置PS,kとして決定される。
|PS,k−1−Pk|<GS・・・(1)
|PS,k−1−Pk|は、観測位置PS,k−1と観測位置Pkとの間の距離を示す。また、GSは支持脚のゲートであり、例えば「GS=0.20」等に設定される。ゲート内に観測値が存在しない場合(即ち、上記式(1)を満たす観測位置Pkが存在しない場合)には、支持脚の観測パターンをUOパターンと特定した上で、「PS,k=PS,k−1」としてもよい。
次に、時刻kにおいて観測された観測位置Pkのうち、支持脚の観測位置PS,kとして決定された観測位置以外であって、次式(2)を満たす観測位置の中で時刻k−1における遊脚の観測位置PR,k−1との距離が最小となる観測位置Pkが、時刻kにおける遊脚の観測位置PR,kとして決定される。
|PR,k−1−Pk|<GR・・・(2)
GRは遊脚のゲートであり、例えば「GR=0.40」等に設定される。ここでは、遊脚は支持脚と比較して位置が変化しやすいことが考慮されて、遊脚のゲートGRは、支持脚のゲートGSよりも大きい値に設定されている。ゲート内に観測値が存在しない場合(即ち、上記式(2)を満たす観測位置Pkが存在しない場合)には、遊脚の観測パターンをUOパターンと特定した上で、「PR,k=PR,k−1」としてもよい。
遊脚位置情報取得部21により取得された各時刻kにおける遊脚の位置(観測位置)PR,k(遊脚位置情報)は、離踵検出部27から参照できるように遊脚位置情報記憶部22に記憶される。
脚幅情報取得部23は、レーザレンジセンサ10で取得された二次元平面距離情報に基づいて、遊脚の脚幅を示す脚幅情報を経時的に取得する。具体的には、脚幅情報取得部23は、レーザレンジセンサ10により取得された二次元平面距離情報からエッジ位置Eを検出し、検出されたエッジ位置Eの位置関係に基づいて、複数の観測パターンO1〜O5(図4及び図5参照)の何れかのパターンを特定する。そして、脚幅情報取得部23は、各時刻kにおいて、例えば上述の相関距離等によって遊脚であると特定された方の脚Fのエッジ位置E間の距離を遊脚の脚幅wk(脚幅情報)として算出する。ただし、遊脚の観測パターンが上述のFSUパターン又はUOパターンの場合には、遊脚であると特定された方の脚Fの大部分が、支持脚であると特定された方の脚Fに隠されてしまう。この場合、遊脚であると特定された方の脚Fのエッジ位置E間の距離は、実際の遊脚の脚幅とは大きく異なる値となる。よって、このような場合、脚幅情報取得部23は、時刻k−1における遊脚の脚幅wk−1を時刻kにおける遊脚の脚幅wkとしてもよい。
脚幅情報取得部23により取得された各時刻kにおける遊脚の脚幅wk(脚幅情報)は、離踵検出部27及び着床検出部29から参照できるように脚幅情報記憶部24に記憶される。
遊脚速さ情報取得部25は、レーザレンジセンサ10で取得された二次元平面距離情報に基づいて、遊脚の速さを示す遊脚速さ情報を経時的に取得する。遊脚速さ情報取得部25は、例えば上述の遊脚位置情報記憶部22に記憶された時刻k−1,kにおける遊脚の観測位置PR,k−1,PR,kに基づいて、次式(3)により時刻kにおける遊脚の速さvkを算出することができる。次式(3)において、Δtは、時刻k−1と時刻kとの間の時間(即ち、レーザレンジセンサ10による計測間隔)を示す。
vk=|PR,k−PR,k−1|/Δt・・・(3)
遊脚速さ情報取得部25により取得された各時刻kにおける遊脚の速さvk(遊脚速さ情報)は、離床検出部28及び着床検出部29から参照できるように脚幅情報記憶部24に記憶される。
離踵検出部27は、脚幅情報取得部23で取得された脚幅情報(脚幅情報記憶部24に記憶されている各時刻kにおける脚幅情報)に基づいて、遊脚の踵が床面から離れた状態である離踵を検出する。
図6(a)は被験者Xの遊脚(左脚FL)の踵が床面(マットMの上面)から離れた状態(離踵)を示す図である。図6(a)に示すように、遊脚の踵が床面から離れる際には、遊脚全体が上方に持ち上がる形になる。このため、床面から所定高さの位置において、レーザレンジセンサ10により取得される二次元平面距離情報から得られる被験者Xの遊脚の脚幅は、両足立ち姿勢における脚幅から変化する。このような知見に基づいて、離踵検出部27は、遊脚の脚幅が所定の閾値以上変化した時刻を離踵時刻として決定する。具体的には、離踵検出部27は、両足立ち姿勢から被験者Xの姿勢が変化する場合において、両足立ち姿勢における遊脚の脚幅からの遊脚の脚幅wkの変化量が所定の閾値(第1の閾値)Δ1以上となった時刻kを遊脚の踵が床面から離れた離踵時刻T1として決定する。
離踵検出部27は、両足立ち姿勢における被験者Xの遊脚の脚幅の平均値wmean及び標準偏差wsdを取得する。平均値wmean及び標準偏差wsdは、例えばキャリブレーション時において、所定期間(例えば1秒間)の間に取得された複数の脚幅の観測値に基づいて算出される。平均値wmean及び標準偏差wsdは、例えば脚幅情報取得部23により算出され、脚幅情報記憶部24に記憶されてもよい。この場合、離踵検出部27は、脚幅情報記憶部24を参照することで、遊脚の脚幅の平均値wmean及び標準偏差wsdを取得する。また、離踵検出部27は、キャリブレーション時に脚幅情報取得部23により取得され、脚幅情報記憶部24に記憶された脚幅情報に基づいて、遊脚の脚幅の平均値wmean及び標準偏差wsdを自ら算出してもよい。
離踵検出部27は、この標準偏差wsdに基づいて、例えば当該標準偏差wsdをK1(>0)倍するといった演算を実行することにより閾値Δ1(=K1×wsd)を算出してもよい。また、離踵検出部27は、「両足立ち姿勢における遊脚の脚幅からの遊脚の脚幅wkの変化量」として、「両足立ち姿勢における遊脚の脚幅の平均値wmeanからの遊脚の脚幅wkの変化量(|wk−wmean|)」を用いてもよい。即ち、離踵検出部27は、次式(4)を満たす時刻kを離踵時刻T1として決定してもよい。
|wk−wmean|≧Δ1=K1×wsd・・・(4)
このように、被験者Xの遊脚の脚幅の変化量(|wk−wmean|)に基づいて離踵時刻T1を決定することで、被験者Xの片足立ち動作における遊脚の状態(離踵)を精度良く検出することができる。また、両足立ち姿勢においてふらつきが少ない被験者Xもいれば、両足立ち姿勢においてふらつきが多い被験者Xもいる。上記式(4)のように、両足立ち姿勢における被験者Xの遊脚の脚幅の標準偏差wsdを所定倍した値を閾値Δ1とすることで、被験者Xの個人特性(両足立ち姿勢におけるふらつきの多さ等)が考慮された閾値Δ1が算出される。また、上記式(4)では、「両足立ち姿勢における遊脚の脚幅からの遊脚の脚幅wkの変化量」として、「両足立ち姿勢における遊脚の脚幅の平均値wmeanからの遊脚の脚幅wkの変化量(|wk−wmean|)」が用いられる。その結果、被験者Xの個人特性を考慮して、時刻kが離踵時刻T1であるか否かを精度良く決定することができる。
なお、図6(a)に示すように、被験者Xの遊脚(左脚FL)の踵が床面(マットMの上面)から離れる離踵時には、一般的に、遊脚の膝部分が前方に押し出され、遊脚全体がくの字状になると考えられる。この場合、床面から所定高さの位置において、レーザレンジセンサ10により取得される二次元平面距離情報から得られる被験者Xの遊脚の位置は、両足立ち姿勢における遊脚の位置から変化すると考えられる。
そこで、離踵検出部27は、遊脚位置情報記憶部22に記憶された遊脚位置情報に基づいて、両足立ち姿勢における遊脚の位置からの遊脚の位置PR,kの距離が所定の閾値(第2の閾値)Δ2以上である期間に含まれる時刻を離踵時刻T1として決定してもよい。離踵検出部27は、両足立ち姿勢における被験者Xの遊脚の位置の平均値Pmean及び標準偏差Psdを取得する。平均値Pmean及び標準偏差Psdは、例えばキャリブレーション時において、所定期間(例えば1秒間)の間に取得された複数の遊脚の位置の観測値に基づいて算出される。平均値Pmean及び標準偏差Psdは、遊脚位置情報取得部21により算出され、遊脚位置情報記憶部22に記憶されてもよい。この場合、離踵検出部27は、遊脚位置情報記憶部22を参照することで、遊脚の位置の平均値Pmean及び標準偏差Psdを取得する。また、離踵検出部27は、キャリブレーション時に遊脚位置情報取得部21により取得され、遊脚位置情報記憶部22に記憶された遊脚位置情報に基づいて、遊脚の位置の平均値Pmean及び標準偏差Psdを自ら算出してもよい。
離踵検出部27は、この標準偏差Psdに基づいて、例えば当該標準偏差PsdをK2(>0)倍するといった演算を実行することにより閾値Δ2(=K2×Psd)を算出してもよい。また、離踵検出部27は、「両足立ち姿勢における遊脚の位置からの遊脚の位置PR,kの距離」として「両足立ち姿勢における遊脚の位置の平均値Pmeanからの遊脚の位置PR,kの距離(|PR,k−Pmean|)」を用いてもよい。即ち、離踵検出部27は、上記式(4)を満たすと共に次式(5)を満たす時刻kを離踵時刻T1として決定してもよい。
|PR,k−Pmean|≧Δ2=K2×Psd・・・(5)
図7は、被験者Xの片足立ち動作時における各測定値(位置、速さ、脚幅)の時系列図の一例である。図7(a)は、遊脚及び支持脚の位置(両足立ち姿勢である初期位置からの距離Δpk)の時系列図である。図7(b)は、遊脚及び支持脚の速さの時系列図であり、図7(c)は、遊脚及び支持脚の脚幅の時系列図である。本実施形態では一例として、被験者Xの左脚FLが遊脚であり、右脚FRが支持脚である。上述したように、離踵検出部27は、各時刻kについて、上記式(4)及び上記式(5)を満たすか否かを判定することにより、離踵時刻T1を決定する。
なお、離踵検出部27は、各時刻kが上記式(4)及び上記式(5)を満たすか否かの判定を、時刻kにおける遊脚の脚幅wk及び位置PR,kがそれぞれ、脚幅情報取得部23及び遊脚位置情報取得部21により取得されて脚幅情報記憶部24及び遊脚位置情報記憶部22に記憶される度に、リアルタイムに実行してもよい。また、離踵検出部27は、被験者Xの一連の片足立ち動作が完了した後、即ち片足立ち動作における全時間帯の遊脚の脚幅wk及び位置PR,kが脚幅情報記憶部24及び遊脚位置情報記憶部22に記憶された後に、各時刻kについて順に上記式(4)及び上記式(5)を満たすか否かの判定を行ってもよい。
このように、遊脚の脚幅wkの変化量(|wk−wmean|)だけでなく遊脚の距離(|PR,k−Pmean|)にも基づいて離踵時刻T1を決定することで、被験者Xの片足立ち動作における離踵をより精度良く検出することができる。即ち、遊脚の位置が両足立ち姿勢の初期位置から変化すると共に遊脚の脚幅の観測値が変化し始める時刻を離踵時刻T1として決定することができる。また、上記式(5)のように、両足立ち姿勢における被験者Xの遊脚の位置の標準偏差Psdを所定倍した値を閾値Δ2とすることで、被験者Xの個人特性(両足立ち姿勢におけるふらつきの多さ等)が考慮された閾値Δ2が算出される。また、上記式(5)では、「両足立ち姿勢における遊脚の位置からの遊脚の位置PR,kの変化量」として「両足立ち姿勢における遊脚の位置の平均値Pmeanからの遊脚の位置PR,kの変化量(|PR,k−Pmean|)」が用いられる。その結果、被験者Xの個人特性を考慮して、時刻kが離踵時刻T1であるか否かを精度良く決定することができる。
離床検出部28は、遊脚速さ情報取得部25で取得された遊脚速さ情報(遊脚速さ情報記憶部26に記憶された各時刻kにおける遊脚速さ情報)に基づいて、遊脚が床面から離れた状態である離床を検出する。
図6(b)は被験者Xの遊脚(左脚FL)全体が床面(マットMの上面)から離れた状態(離床)を示す図である。図6(a)及び図6(b)に示すように、被験者Xが片足立ち動作を行う場合には、遊脚の踵が床面から離れた以後に、遊脚全体が床面から離れると考えられる。つまり、遊脚全体が床面から離れる離床時刻T2は、離踵時刻T1以後であると考えられる。また、遊脚が床面から離れる離床時には、一般的に、遊脚のふらつきが大きくなるため、遊脚速さ情報取得部25により取得される遊脚の速さは、大きくなると考えられる。このような知見に基づいて、離床検出部28は、離踵時刻T1以後に被験者Xの姿勢が変化する場合において、両足立ち姿勢における遊脚の速さからの遊脚の速さvkの変化量が所定の閾値(第3の閾値)Δ3以上となった時刻kの直前の時刻k−1を、遊脚が床面から離れた離床時刻T2として決定する。ここで、「時刻kの直前の時刻k−1」とは、所定間隔(所定時間毎)に計測を行う際における時刻kの1つ前の計測時刻を示す。例えば所定間隔Δtで計測を行う場合には、直前の時刻k−1は、時刻kよりも所定間隔Δtだけ遡った時刻である。
離床検出部28は、両足立ち姿勢における被験者Xの遊脚の速さの平均値vmean及び標準偏差vsdを取得する。平均値vmean及び標準偏差vsdは、例えばキャリブレーション時において、所定期間(例えば1秒間)の間に取得された複数の遊脚の速さの観測値に基づいて算出される。平均値vmean及び標準偏差vsdは、遊脚速さ情報取得部25により算出され、遊脚速さ情報記憶部26に記憶されてもよい。この場合、離床検出部28は、遊脚速さ情報記憶部26を参照することで、遊脚の速さの平均値vmean及び標準偏差vsdを取得する。また、離床検出部28は、キャリブレーション時に遊脚速さ情報取得部25により取得され、遊脚速さ情報記憶部26に記憶された遊脚速さ情報に基づいて、遊脚の速さの平均値vmean及び標準偏差vsdを自ら算出してもよい。
離床検出部28は、この標準偏差vsdに基づいて、例えば当該標準偏差vsdをK3(>0)倍するといった演算を実行することにより閾値Δ3(=K3×vsd)を算出してもよい。また、離床検出部28は、「両足立ち姿勢における遊脚の速さからの遊脚の速さvkの変化量」として「両足立ち姿勢における遊脚の速さの平均値vmeanからの遊脚の速さvkの変化量(vk−vmean)」を用いてもよい。即ち、離床検出部28は、離踵時刻T1以後で次式(6)を満たす時刻kの直前の時刻k−1を離床時刻T2として決定してもよい。
vk−vmean≧Δ3=K3×vsd・・・(6)
離床検出部28は、離踵時刻T1以後の各時刻kの遊脚の速さvkについて、上記式(6)を満たすか否かを判定することにより、上記式(6)を満たす時刻kの直前の時刻k−1を離床時刻T2に決定する。なお、離床検出部28は、各時刻kが上記式(6)を満たすか否かの判定を、時刻kにおける遊脚の速さvkが遊脚速さ情報取得部25により取得されて遊脚速さ情報記憶部26に記憶される度に、リアルタイムに実行してもよい。また、離床検出部28は、被験者Xの一連の片足立ち動作が完了した後、即ち片足立ち動作における全時間帯の遊脚の速さvkが遊脚速さ情報記憶部26に記憶された後に、各時刻kについて順に上記式(6)を満たすか否かの判定を行ってもよい。
このように、離踵時刻T1以後における遊脚の速さvkに基づいて離床時刻T2を決定することで、被験者の片足立ち動作における離床を精度良く検出することができる。即ち、離踵検出以後に遊脚の速さが増加し始める時刻を離床時刻T2として決定することができる。また、上記式(6)のように、両足立ち姿勢における被験者Xの遊脚の速さの標準偏差vsdを所定倍した値を閾値Δ3とすることで、被験者Xの個人特性(両足立ち姿勢におけるふらつきの多さ等)が考慮された閾値Δ3が算出される。また、上記式(6)では、「両足立ち姿勢における遊脚の速さからの遊脚の速さvkの変化量」として「両足立ち姿勢における遊脚の速さの平均値vmeanからの遊脚の速さvkの変化量(vk−vmean)」が用いられる。その結果、被験者Xの個人特性を考慮して、時刻k−1が離床時刻T2であるか否かを精度良く決定することができる。なお、離踵時刻T1として決定された時刻k−1の後、離床検出部28により時刻kが上記式(6)を満たすと判定された場合、離床時刻T2も時刻k−1となる。つまり、この場合には、離踵時刻T1と離床時刻T2とは一致する。
着床検出部29は、遊脚速さ情報取得部25で取得された遊脚速さ情報(遊脚位置情報記憶部22に記憶された遊脚位置情報)と、脚幅情報取得部23で取得された脚幅情報(脚幅情報記憶部24に記憶された脚幅情報)とに基づいて、遊脚が床面に着いた状態である着床を検出する。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、被験者Xの遊脚が床面から離れてから再度床面に着く着床時にて、次の知見を見出した。即ち、床面から所定高さの位置において、レーザレンジセンサ10により取得された二次元平面距離情報に基づいて得られる遊脚の速さvkは、極大となった後に減少に転じ、遊脚の脚幅wkは、両足立ち姿勢における脚幅に近い値になることを見出した。そこで、着床検出部29は、遊脚の速さが極大となった後に減少に転じた後に、両足立ち姿勢における遊脚の速さからの遊脚の速さの変化量が所定の閾値(第4の閾値)Δ4以下となり且つ両足立ち姿勢における遊脚の脚幅からの遊脚の脚幅の変化量が所定の閾値(第5の閾値)Δ5以下となった場合に、遊脚の速さが極大となった時刻kを、遊脚が床面に着いた着床時刻T3として決定する。
ここで、着床検出部29は、両足立ち姿勢における被験者Xの遊脚の速さの平均値vmean及び標準偏差vsdを取得する。着床検出部29は、例えば上述した離床検出部28が平均値vmean及び標準偏差vsdを取得する方法と同様の方法により、平均値vmean及び標準偏差vsdを取得する。着床検出部29は、この標準偏差vsdに基づいて、例えば当該標準偏差vsdをK4(>0)倍するといった演算を実行することにより閾値Δ4(=K4×vsd)を算出してもよい。
また、着床検出部29は、両足立ち姿勢における被験者Xの遊脚の脚幅の平均値wmean及び標準偏差wsdを取得する。着床検出部29は、例えば上述した離踵検出部27が平均値wmean及び標準偏差wsdを取得する方法と同様の方法により、平均値wmean及び標準偏差wsdを取得することができる。着床検出部29は、この標準偏差wsdに基づいて、例えば当該標準偏差wsdをK5(>0)倍するといった演算を実行することにより閾値Δ5(=K5×wsd)を算出してもよい。
また、着床検出部29は、「両足立ち姿勢における遊脚の速さからの遊脚の速さの変化量」として「両足立ち姿勢における遊脚の速さの平均値vmeanからの遊脚の速さの変化量(後述する「vl−vmean」)」を用いてもよい。また、「両足立ち姿勢における遊脚の脚幅からの遊脚の脚幅の変化量」として「両足立ち姿勢における遊脚の脚幅の平均値wmeanからの遊脚の脚幅の変化量(後述する「wl−wmean」)」を用いてもよい。
即ち、着床検出部29は、次式(7)及び(8)を満たす時刻kを遊脚の速さが極大となる速さ極大時刻として特定する。そして、速さ極大時刻以後の時刻で、次式(9)及び(10)を満たす時刻l(l>k)が見つかったときに、速さ極大時刻であると特定された時刻kを着床時刻T3として決定してもよい。
vk>vk−1・・・(7)
vk>vk+1・・・(8)
vl−vmean≦Δ4=K4×vsd(l>k)・・・(9)
|wl−wmean|≦Δ5=K5×wsd(l>k)・・・(10)
着床検出部29は、離床時刻T2以後の各時刻kの遊脚の速さvk及び脚幅wkについて、上記式(7)〜上記式(10)を満たすか否かを判定する。そして、上記式(7)〜上記式(10)を満たす時刻kを、着床時刻T3として決定する。なお、着床検出部29は、各時刻kが上記式(7)〜上記式(10)を満たすか否かの判定を、時刻l(l>k)の遊脚の速さvl及び幅wlが遊脚速さ情報取得部25及び脚幅情報取得部23により取得されて遊脚速さ情報記憶部26及び脚幅情報記憶部24に記憶される度に、リアルタイムに実行してもよい。また、着床検出部29は、被験者Xの一連の片足立ち動作が完了した後、即ち片足立ち動作における全時間帯の遊脚の速さvk及び脚幅wkが遊脚速さ情報記憶部26及び脚幅情報記憶部24に記憶された後に、各時刻kについて順に上記式(7)〜上記式(10)を満たすか否かの判定を行ってもよい。
このように、遊脚の速さvk及び脚幅wkに基づいて、上記式(7)〜上記式(10)を満たす時刻kを着床時刻T3として決定することで、被験者Xの片足立ち動作における着床を精度良く検出することができる。また、上記式(9)及び上記式(10)のように、両足立ち姿勢における被験者Xの遊脚の速さ,脚幅の標準偏差vsd,wsdを所定倍した値をそれぞれ、閾値Δ4,Δ5とすることで、被験者Xの個人特性(両足立ち姿勢におけるふらつきの多さ等)が考慮された閾値Δ4,Δ5が算出される。また、上記式(9)では、「両足立ち姿勢における遊脚の速さからの遊脚の速さの変化量」として「両足立ち姿勢における遊脚の速さの平均値vmeanからの遊脚の速さの変化量(vl−vmean)」が用いられる。同様に、上記式(10)では、「両足立ち姿勢における遊脚の脚幅からの遊脚の脚幅の変化量」として「両足立ち姿勢における遊脚の脚幅の平均値wmeanからの遊脚の脚幅の変化量(|wl−wmean|)」が用いられる。その結果、被験者Xの個人特性を考慮して、時刻kが着床時刻T3であるか否かを精度良く決定することができる。
なお、着床時には、遊脚は一旦静止すると考えられる。即ち、着床時には、遊脚の速さが極大となった後に減少に転じた後、両足立ち姿勢からの遊脚の速さの変化量が閾値Δ4以下となり且つ両足立ち姿勢からの遊脚の脚幅の変化量が閾値Δ5以下となっている状態(以下「着床推定状態」という。)が、所定期間(例えば0.2秒間)継続すると考えられる。一方、着床推定状態が所定期間観測されなかった場合には、実際には被験者Xは着床していない可能性があると考えられる。即ち、観測ノイズ等が原因で着床推定状態が一瞬だけ観測されてしまった可能性があると考えられる。
そこで、着床検出部29は、着床推定状態が予め定められた期間継続した場合に、遊脚の速さが極大となった時刻kを、着床時刻T3として決定してもよい。具体的には、着床検出部29は、上記式(9)及び上記式(10)が、上記式(7)及び上記式(8)を満たす時刻k以後一定期間内に含まれる各時刻l(l>k)において成立した場合に、時刻kを着床時刻T3として決定してもよい。このように、着床推定状態が予め定められた期間継続した場合に遊脚の速さが極大となった時刻kを着床時刻T3として決定することで、着床の誤検出を低減することができる。その結果、被験者Xの片足立ち動作における着床をより精度良く検出することができる。
また、着床時には、通常、被験者Xは両足立ち姿勢に戻るため、上述の二次元平面距離情報に基づいて得られるエッジ位置Eの位置関係に基づいて特定される観測パターンは、特定のパターン(例えばSLパターン又はLTパターン)になると想定される。従って、速さ極大時刻(時刻k)以後に上記式(9)及び上記式(10)を満たすと共に、観測パターンが特定のパターンとなる時刻lを、着床時刻T3として決定してもよい。このように遊脚の観測パターンに基づく判定を行うことで、被験者Xの片足立ち動作における着床をより精度良く検出することができる。
モニタ30は、例えば電子制御装置20に読み込まれた記憶媒体(片足立ち試験の実施に関する説明、合図等の映像が記憶されたDVD等)の内容を、被験者Xが見ることができるように表示する。また、モニタ30は、被験者X及び計測者等が片足立ち動作が正しく実行されているか否かをフィードバックするために、電子制御装置20による演算結果(例えば、離踵、離床、着床等が検出されたことを示す情報等)を表示してもよい。
次に、図8に示すフロー図を用いて、片足立ち試験において、脚部状態検出装置1が被験者Xの片足立ち動作における遊脚の状態(離踵、離床及び着床)を検出する動作(一実施形態に係る脚部状態検出方法を含む)について説明する。図8は、脚部状態検出装置1を用いた片足立ち試験の実施時における処理フローを示すフロー図である。
図8に示すように、片足立ち試験の実施においては、被験者Xに片足立ち動作を開始させる前に、キャリブレーションが実行される(ステップS1)。キャリブレーションでは、レーザレンジセンサ10の位置合わせ等の調整や、被験者Xの両足立ち姿勢における各種測定値(位置、速さ、脚幅)の計測が実施される。キャリブレーション開始時には、被験者XはマットMの中央位置に自然な状態で立って静止する(極力動かない)ように指示されている。この状態で、レーザレンジセンサ10によるスキャンが実行される。即ち、レーザレンジセンサ10から、水平方向に沿って走査するようにレーザ光Lが出射され、レーザ光Lの反射状態に基づいてレーザ光を反射した物体との距離に関する二次元平面距離情報が取得される(ステップS11)。これにより、図3に示すような被験者Xの脚F及び2つのポール40の位置が観測される。観測された被験者Xの脚F及び2つのポール40の位置関係に基づいて、レーザレンジセンサ10が適切な位置及び方向で設置されているか否かが計測者等によって確認され、必要に応じてレーザレンジセンサ10とマットMとの位置合わせが実施される(ステップS12)。
続いて、遊脚の位置の平均値Pmean及び標準偏差Psd、遊脚の脚幅の平均値wmean及び標準偏差wsd、並びに遊脚の速さの平均値vmean及び標準偏差vsdが取得される(ステップS13)。具体的には、以下のようにして各測定値(位置、脚幅、速さ)の平均値及び標準偏差が取得される。被験者Xが両足立ち姿勢である期間(例えば1.0秒間)に所定間隔Δtでレーザレンジセンサ10により取得された二次元平面距離情報に基づいて、遊脚位置情報取得部21により、複数の時刻における遊脚位置情報が取得される。遊脚位置情報取得部21により、複数の遊脚位置情報に基づいて、遊脚の位置の平均値Pmean及び標準偏差Psdが算出され、算出された平均値Pmean及び標準偏差Psdは、遊脚位置情報記憶部22に記憶される。同様に、脚幅情報取得部23により、遊脚の脚幅の平均値wmean及び標準偏差wsdが算出され、算出された平均値wmean及び標準偏差wsdは、脚幅情報記憶部24に記憶される。また、遊脚速さ情報取得部25により、遊脚の速さの平均値vmean及び標準偏差vsdが算出され、算出された平均値vmean及び標準偏差vsdは、遊脚速さ情報記憶部26に記憶される。
キャリブレーション(ステップS1)が完了すると、計測者又はモニタ30等により、被験者Xに片足立ち動作の開始が指示される(ステップS2)。その後、被験者Xが片足立ち動作を開始すると、離踵及び離床の検出処理が実行される(ステップS3)。具体的には、まずレーザレンジセンサ10により、被験者Xの脚Fとの距離に関する二次元平面距離情報が経時的に取得される(ステップS31、距離情報取得ステップ)。続いて、レーザレンジセンサ10により取得された二次元平面距離情報に基づいて、被験者Xの脚F(遊脚を含む)が検出される(ステップS32)。具体的には、ステップS32において、遊脚位置情報取得部21によって遊脚の位置PR,kが取得され(遊脚位置情報取得ステップ)、脚幅情報取得部23によって遊脚の脚幅wkが取得され(脚幅情報取得ステップ)、遊脚速さ情報取得部25によって遊脚の速さvkが取得される(遊脚速さ情報取得ステップ)。
続いて、離踵検出部27により、時刻kが上記式(4)及び(5)を満たすか否かの判定が実行される(ステップS33、離踵検出ステップ)。ここで、時刻kが上記式(4)及び(5)を満たす場合には、時刻kが離踵時刻T1として決定され、離踵が検出される(ステップS33:YES)。一方、時刻kが上記式(4)及び(5)を満たさない場合には、ステップS31〜ステップS33の処理の実行が繰り返され、時刻k+1が上記式(4)及び(5)を満たすか否かが判定される。即ち、離踵が検出されるまで、ステップS31〜ステップS33の処理の実行が繰り返される。
離踵が検出されると(ステップS33:YES)、引き続き離床検出部28により、時刻kが上記式(6)を満たすか否かの判定が実行される(ステップS34、離床検出ステップ)。時刻kが上記式(6)を満たす場合には、時刻k−1が離床時刻T2として決定され、離床が検出される(ステップS34:YES)。一方、時刻kが上記式(6)を満たさない場合には、ステップS31〜ステップS34の処理の実行が繰り返され、時刻k+1が上記式(6)を満たすか否かが判定される。即ち、離床が検出されるまで、ステップS31〜ステップS34の処理の実行が繰り返される。なお、このステップS31〜ステップS34を繰り返し実行する処理においては、離踵時刻T1は既に決定されている(離踵は検出されている)ため、ステップS33において上記式(4)及び上記式(5)を満たすか否かの判定は実行されず、ステップS34における離床の判定のみが実行される。
離床が検出されると(ステップS34:YES)、着床の検出処理が実行される(ステップS4)。具体的には、まずステップS31と同様に、レーザレンジセンサ10により、被験者Xの脚Fとの距離に関する二次元平面距離情報が経時的に取得される(ステップS41、距離情報取得ステップ)。続いて、ステップS32と同様に、レーザレンジセンサ10により取得された二次元平面距離情報に基づいて、被験者Xの脚F(遊脚を含む)が検出される(ステップS42)。具体的には、ステップS42において、遊脚位置情報取得部21によって遊脚の位置PR,kが取得され(遊脚位置情報取得ステップ)、脚幅情報取得部23によって遊脚の脚幅wkが取得され(脚幅情報取得ステップ)、遊脚速さ情報取得部25によって遊脚の速さvkが取得される(遊脚速さ情報取得ステップ)。
続いて、着床検出部29により、時刻kが上記式(7)〜上記式(10)を満たすか否かの判定が実行される(ステップS43、着床検出ステップ)。ここで、時刻kが上記式(7)〜上記式(10)を満たす場合には、時刻kが着床時刻T3として決定され、着床が検出される(ステップS43:YES)。一方、時刻kが上記式(7)〜上記式(10)を満たさない場合には、ステップS41〜ステップS43の処理の実行が繰り返され、時刻k+1が上記式(7)〜上記式(10)を満たすか否かが判定される。即ち、着床が検出されるまで、ステップS41〜ステップS43の処理の実行が繰り返される。
以上のステップS1〜S4により、被験者Xの片足立ち動作における遊脚の状態(離踵、離床、着床)の検出が完了する。例えば、このような離踵、離床及び着床の検出結果(離踵時刻T1、離床時刻T2、及び着床時刻T3等)に基づいて、被験者Xが5秒以上片足立ち動作を保つことができたか否か(「T3−T2」が5秒以上か否か)の判定、及び、被験者Xが離踵後すぐに遊脚を持ち上げて離床することができたか否か(「T2−T1」が所定時間以内か否か)の判定が可能となる。ひいては、このような判定により、被験者XがRSE等を行うために十分な運動機能を備えているか否かを判定でき、被験者Xに引き続きRSE等の負荷の高いエクササイズを実行させても良いか否かを決定することが可能となる。
また、被験者Xに引き続きRSE等を実行させても良いと決定された場合には、被験者Xに引き続きRSE等を実行させ、脚部状態検出装置1と同一の装置(レーザレンジセンサ10及び電子制御装置20)によりRSE等におけるステップ動作を計測してもよい。この場合、RSE等における計測に用いられる装置と同一の装置で脚部状態検出装置1を構成すれば、RSE等の試行の前に行われる片足立ち動作における遊脚の状態を検出する装置を、RSE等におけるステップ動作を計測する装置とは別に用意する必要がない。
図9は、脚部状態検出プログラムPの機能構成(モジュール構成)を示すブロック図である。脚部状態検出プログラムPは、レーザレンジセンサ10と接続されるコンピュータ(電子制御装置20)を脚部状態検出装置1の一部として機能させるためのプログラムである。図9に示すように、脚部状態検出プログラムPは、脚幅情報取得モジュールP1、遊脚位置情報取得モジュールP2、遊脚速さ情報取得モジュールP3、離踵検出モジュールP4、離床検出モジュールP5、及び着床検出モジュールP6を備える。上記各モジュールが実行されることにより実現される機能はそれぞれ、上述した脚部状態検出装置1の脚幅情報取得部23、遊脚位置情報取得部21、遊脚速さ情報取得部25、離踵検出部27、離床検出部28、及び着床検出部29の機能と同様である。
脚部状態検出プログラムPは、例えばCD−ROM、DVD等の記憶媒体に記憶され、脚部状態検出装置1の一部として用いられるコンピュータ(電子制御装置20)により実行される。具体的には、当該コンピュータは、例えばCD−ROMドライブ、DVDドライブ等の記憶媒体読取部を備えている。記憶媒体読取部に記憶媒体がセットされると、当該コンピュータは、記憶媒体読取部から記憶媒体に格納された脚部状態検出プログラムPにアクセス可能となる。そして、脚部状態検出プログラムPを当該コンピュータに実行させることによって、当該コンピュータを、脚部状態検出装置1の一部として動作させることが可能となる。なお、脚部状態検出プログラムPは、搬送波に重畳されたデータ信号としてネットワークを介して提供されるものであってもよい。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
上記実施形態では、本発明の距離情報取得部としてレーザレンジセンサ10を用いる構成としたが、床面から所定高さの位置における二次元平面距離情報を取得可能なものであれば、種々のセンサや装置を用いることができる。例えば、上述の二次元平面距離情報を取得可能とされた赤外線センサ等を、距離情報取得部として用いてもよい。
上記実施形態では、脚部状態検出装置1が被験者Xの片足立ち動作における遊脚の状態(離踵、離床及び着床)を検出する動作の例(図8参照)として、リアルタイム処理によって離踵、離床、着床を検出する場合について説明した。しかし、上述した通り、離踵検出部27、離床検出部28、及び着床検出部29は、被験者Xの一連の片足立ち動作が完了した後(即ち、片足立ち動作における全時間帯の遊脚の位置PR,k、脚幅wk、及び速さvkが遊脚位置情報記憶部22、脚幅情報記憶部24、及び遊脚速さ情報記憶部26に記憶された後)に、各時刻kについて上記式(4)〜上記式(10)を満たすか否かの判定を行い、遊脚の状態を検出しても勿論よい。