JP6371149B2 - 電流センサ及び電流センサの製造方法 - Google Patents

電流センサ及び電流センサの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、導体を流れる電流の変化を高感度に検出可能な電流センサ及び電流センサの製造方法に関する。
従来の電流センサは、U字状の湾曲導体に制御電流を供給し、その湾曲導体の周囲に生じる電流磁界の変化をホール素子によって検出していた(例えば、特許文献1参照)。また、従来の電流センサは、ホール素子の替わりに巨大磁気抵抗効果(GiantMagneto−Resistive−effect)を発現する巨大磁気抵抗効果素子(以下、GMR素子)を用いて、電流を検出していた(例えば、特許文献2参照)。
[特許文献1] 特公平7−123090号公報
[特許文献2] 特開2007−101252号公報
[特許文献3] 特開2014−6127号公報
しかしながら、ホール素子もしくはGMR素子を用いた従来の電流センサは、微小で精密な電流値測定ができない。ホール素子及びGMR素子は、その構造上、十分に小型化することができない。
本発明の第1の態様においては、検出電流が入力される電流入力端子と、検出電流を出力する電流出力端子と、電流入力端子に入力された検出電流が流れ、磁化が第1の方向に固定された第1のピンド層と、第1のピンド層上に形成された第1のトンネル層と、第1のトンネル層上に形成され、磁化の方向が、検出電流によって生じる磁場により変化する第1のフリー層と、第1のピンド層に電気的に接続されるトンネル接合部とを備えた電流センサを提供する。
本発明の第2の態様においては、検出電流が入力される電流入力端子と検出電流を出力する電流出力端子とが形成されたピンド層と、互いに離間して、ピンド層上に形成された第1のトンネル層及びトンネル接合部と、第1のトンネル層上に形成され、磁化の方向が、検出電流によって生じる磁場により変化する第1のフリー層とを備えた電流センサを提供する。
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
磁気抵抗効果素子1の構成の一例を示す。 磁気抵抗効果素子1の状態の一例を示す。 磁気抵抗効果素子1の状態の一例を示す。 磁気抵抗効果素子1の膜面に平行方向の抵抗値と外部磁場との関係を示す。 実施形態1に係る電流センサ100を示す。 実施形態1に係る電流センサ100のA断面図を示す。 実施形態1に係る電流センサ100のB断面図を示す。 実施形態1に係る電流センサ100のC断面図を示す。 実施形態1に係る電流センサ100のA断面図を示す。 実施形態1に係る電流センサ100のB断面図を示す。 実施形態1に係る電流センサ100のC断面図を示す。 実施形態1に係る電流センサ100の回路概念図を示す。 検出電流が流れたときにフリー層40にかかる磁場を示す模式図である。 実施形態2に係る電流センサ100を示す。 実施形態2に係る電流センサ100のA断面図を示す。 実施形態2に係る電流センサ100のB断面図を示す。 実施形態2に係る電流センサ100のC断面図を示す。 実施形態3に係る電流センサ100を示す。 実施形態3に係る電流センサ100のA断面図を示す。 実施形態3に係る電流センサ100のB断面図を示す。 実施形態3に係る電流センサ100のC断面図を示す。 実施形態3に係る電流センサ100のD断面図を示す。 実施形態3に係る電流センサ100の回路概念図を示す。 ピンド層20が形成された基板90を示す。 ピンド層20の磁化を固定する工程を示す。 ピンド層20上にトンネル層30を形成する工程を示す。 電流センサ100の素子分離工程を示す。 TMR素子をパターニングする工程を示す。 第2の絶縁膜92を堆積させる工程を示す。 上部配線層60が形成された電流センサ100を示す。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、磁気抵抗効果素子1の構成の一例を示す。磁気抵抗効果素子1は、ピンド層20、トンネル層30及びフリー層40を備える。磁気抵抗効果素子1は、ピンド層20とフリー層40との相対的な磁化の角度によって抵抗値が変化する。抵抗値の変化とは、磁気抵抗効果素子1の膜面に水平方向の抵抗値、及び膜面に垂直方向の抵抗値の少なくとも一方の変化を指す。本例の磁気抵抗効果素子1は、X軸の方向に1um、Y軸の方向に10umの矩形形状を有する。矢印は、磁化の方向を指す。
ピンド層20は、磁化が予め定められた方向に固定されている磁性材料からなる。ピンド層20は、Co、Fe、Ni等の材料の組み合わせにより形成される。例えば、ピンド層20の磁化は、磁気抵抗効果の膜を形成した後、磁場中での熱処理(アニール処理)によりx軸方向に固定される。磁気抵抗効果の膜とは、外部磁場等により電気抵抗が変化する膜を指す。
トンネル層30は、薄膜の絶縁体である。トンネル層30は、ピンド層20上に形成される。例えば、磁気抵抗効果素子1が、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunnel Magneto Resistance)素子の場合、トンネル層30は、Al、MgO等で形成される。TMR素子とは、磁性体薄膜の間に極薄の絶縁膜を挟んだ素子を指す。TMR素子では、絶縁膜の両端の磁性体薄膜の磁化の向きによって、絶縁膜の抵抗が変化する。
フリー層40は、外部磁場に応じて磁化の向きが変化する磁性体である。例えば、フリー層40は、Co、Fe、Ni等の材料の組み合わせにより形成される軟磁性材料である。フリー層40は、トンネル層30上に形成される。
図2は、磁気抵抗効果素子1の状態の一例を示す。本例の磁気抵抗効果素子1は、フリー層40の磁化容易軸がピンド層20の磁化の向きと直交する方向に誘導された状態を示す。磁化容易軸とは、結晶磁気異方性を持つ磁性体において、磁化され易い結晶方位を指す。
図3は、磁気抵抗効果素子1の状態の一例を示す。本例の磁気抵抗効果素子1は、フリー層40の磁化がy軸方向に誘導された状態を示す。つまり、フリー層40の磁化の向きは、ピンド層20の磁化の向きと直交する。フリー層40の磁化の向きは、ピンド層20に流れる電流により生じる磁場によって変化する。
図4は、磁気抵抗効果素子1の膜面に平行方向の抵抗値と外部磁場との関係を示す。縦軸は磁気抵抗効果素子1の抵抗値、横軸は外部磁場の強度を示す。外部磁場の向きは、ピンド層20の固定された磁化の向きを正として示す。
外部磁場無しの状態では、ピンド層20とフリー層40の磁化は直交している。正の向きに弱い外部磁場を印加した場合、フリー層40の磁化がピンド層20の磁化の向きに揃う方向に動く。磁化の向きが揃う場合、磁化が不規則に並んでいる場合よりも、磁化の電子に対する影響が小さくなり、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が減少する。外部磁場の大きさが一定以上になると、フリー層40の磁化はピンド層20の磁化の向きと揃う。磁化の向きが揃うと、磁気抵抗効果素子1の抵抗値は飽和する。
負の向きに弱い外部磁場を印加した場合、フリー層40の磁化がピンド層20の磁化の向きと逆方向に動き、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が上昇する。外部磁場の大きさが一定以上になると、フリー層40の磁化がピンド層20の磁化の向きと逆方向に向く。磁化の向きが逆方向を向くと、磁気抵抗効果素子1の抵抗値は飽和する。しかし、さらに強い外部磁場を印加すると、固定されていたピンド層20の磁化が負の向きを向き始める。即ち、磁化の向きが揃う方向になるため、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が減少する。
以上の通り、ピンド層20の磁化の向きを感度軸としてとることにより、磁気抵抗効果素子1の抵抗値が線形に変化する。但し、抵抗値を線形に変化させるには、外部磁場の絶対値が予め定められた値よりも小さいことが必要である。
<実施形態1>
実施形態1の電流センサ100について図5から図9を用いて説明する。図5は、電流センサ100を上面から見た配置図である。図6Aから図6C及び図7Aから図7Cは、点線A−A'、点線B−B'、点線C−C'における電流センサ100の断面図である。
電流センサ100は、電流入力端子70、電流出力端子75、ピンド層20、第1のトンネル層31、第1のフリー層41、トンネル接合部35及び抵抗検出回路85を備える。ピンド層20には、第1のピンド層21、中間層25、入力側ピンド層26及び出力側ピンド層27が含まれる。電流センサ100は、電流入力端子70に入力され、電流出力端子75から出力される検出電流を検出する。
図6Aは、図5で示した点線A−A'における電流センサ100の各断面図を示す。A断面は、第1のピンド層21、トンネル接合部35、中間層25、第1のトンネル層31、及び第1のフリー層41の断面に相当する。第1のトンネル層31、第1のフリー層41、第1のカバー層51及び第1の上部配線層61は、トンネル接合部35及び第2の上部配線層62と互いに離間して配置される。
トンネル接合部35は、出力側ピンド層27上に形成される。トンネル接合部35は、第1のピンド層21に電気的に接続される。トンネル接合部35は、検出電流が第2の上部配線層62側に流れるのを防止する。
図6Bは、図5で示した点線B−B'における電流センサ100の断面図を示す。B断面は、第1の上部配線層61及び入力側ピンド層26の断面に相当する。第1の上部配線層61は、入力側ピンド層26と離間して形成される。
図6Cは、図5で示した点線C−C'における電流センサ100の断面図を示す。C断面は、第1のピンド層21、第1のトンネル層31、第1のフリー層41、第1のカバー層51及び第1の上部配線層61の断面図に相当する。第1のピンド層21、第1のトンネル層31、第1のフリー層41、第1のカバー層51及び第1の上部配線層61の各層は、この順に積層して形成される。なお、第1のピンド層21の幅は、第1のトンネル層31、第1のフリー層41及び第1のカバー層51の各々の幅より大きくてもよい。第1のピンド層21の幅とは、検出電流の流れる方向と垂直な方向の第1のピンド層21の厚さを指す。第2のピンド層22の幅についても同様である。
図7Aは、図5で示した点線A−A'における電流センサ100の断面図を示す。図7Aは、トンネル接合部35の一例を示す。本例のトンネル接合部35は、第2のピンド層22、第2のトンネル層32、第2のフリー層42及び第2のカバー層52を有する。第2のピンド層22は、第1のピンド層21と直列に設けられ、検出電流が流れる。図7Bは、図5で示した点線B−B'における電流センサ100の断面図を示す。図7Cは、図5で示した点線C−C'における電流センサ100の断面図を示す。図7B及び図7Cは、図6B及び図6Cとそれぞれ同一である。次に、図5に示された電流センサ100について、図7Aから図7Cの断面図を参照して説明する。
電流入力端子70は、入力側ピンド層26に電気的に接続される。本例の電流入力端子70は、入力側ピンド層26上に形成される。電流入力端子70と入力側ピンド層26との間の接触抵抗は、電圧ドロップが無視できる程度に小さい。
入力側ピンド層26は、一端が電流入力端子70に接続され、他端が第1のピンド層21に接続される。入力側ピンド層26には、電流入力端子70に入力された検出電流が流れる。本例の入力側ピンド層26は、中央で直角に曲がった形状を有する。入力側ピンド層26の形状は、本例の形状に限られずレイアウトに応じて適宜変更されてよい。
第1のピンド層21は、入力側ピンド層26と同一の材料で形成され、磁化が予め定められた方向に固定される。第1のピンド層21は、入力側ピンド層26と一体に形成されてよい。第1のピンド層21は、上部に第1のトンネル層31が形成される点で入力側ピンド層26と異なる。
中間層25は、第1のピンド層21と第2のピンド層22とを接続し、検出電流が流れる。本例の中間層25は、ピンド層20と同一の材料で形成される。なお、中間層25は、第1のピンド層21と第2のピンド層22とを接続可能な材料であれば、ピンド層20と同一の材料に限られない。
第2のピンド層22は、出力側ピンド層27と同一の材料で形成され、磁化が予め定められた方向に固定される。第2のピンド層22は、出力側ピンド層27と一体に形成されてよい。第2のピンド層22は、上部に第2のトンネル層32が形成される点で出力側ピンド層27と異なる。
出力側ピンド層27は、一端が第2のピンド層22に接続されて、他端が電流出力端子75に接続される。出力側ピンド層27は、第2のピンド層22から入力された検出電流を、電流出力端子75に出力する。本例の出力側ピンド層27は、中央で直角に曲がった形状を有する。出力側ピンド層27の形状は、本例の形状に限られずレイアウトに応じて適宜変更されてよい。なお、第1のピンド層21、第2のピンド層22、中間層25、入力側ピンド層26及び出力側ピンド層27は、ピンド層20として一体に形成されてよい。
電流出力端子75は、出力側ピンド層27の端部に接続される。本例の電流出力端子75は、出力側ピンド層27上に形成される。電流出力端子75は、出力側ピンド層27から出力された検出電流を出力する。なお、電流入力端子70と電流出力端子75は、入力側ピンド層26及び出力側ピンド層27に直接形成されてもよく、トンネル層、フリー層、カバー層を積層した上に形成してもよい。
第1のトンネル層31は、第1のピンド層21上に形成される。第1のトンネル層31は、第1のピンド層21に流れる検出電流が第1の上部配線層61側に流れるのを防止する。本例の第1のトンネル層31は、第1のピンド層21と膜面の断面形状が同一である。第1のトンネル層31は、第1のピンド層21と膜面の断面形状が異なってよい。
第1のフリー層41は、第1のトンネル層31上に形成される。第1のフリー層41は、第1のピンド層21に流れる検出電流により生じる磁場により、磁化の方向が変化する。本例の第1のフリー層41は、第1のトンネル層31と膜面の断面形状が同一である。
第1のカバー層51は、第1のフリー層41の上部を保護する。第1のカバー層51は、第1のフリー層41上に連続して形成される。第1のカバー層51は、抵抗値の小さな材料で形成されるのが好ましい。
第2のトンネル層32は、第2のピンド層22上に形成される。第2のトンネル層32は、第2のピンド層22に流れる検出電流が第2の上部配線層62側に流れるのを防止する。本例の第2のトンネル層32は、第2のピンド層22と膜面の断面形状が同一である。第2のトンネル層32は、第2のピンド層22と異なる断面形状を有してよい。
第2のフリー層42は、第2のトンネル層32上に形成される。第2のフリー層42は、第2のピンド層22に流れる検出電流により生じる磁場により、磁化の方向が変化する。本例の第2のフリー層42は、第2のトンネル層32と膜面の断面形状が同一である。
第2のカバー層52は、第2のフリー層42の上部を保護する。第2のカバー層52は、第2のフリー層42上に連続して形成される。第2のカバー層52は、抵抗値の小さな材料で形成されるのが好ましい。
第1の上部配線層61は、抵抗検出回路85と接続される第1の外部接続端子71を備える。第1の上部配線層61は、第1のピンド層21と離間して形成される。離間とは、各層の間に空間を有することを指す。また、空間の代わりに、絶縁膜等の非磁性体層を備えてもよい。
第2の上部配線層62は、抵抗検出回路85と接続される第2の外部接続端子72を備える。第2の上部配線層62は、第2のピンド層22と離間して形成される。
抵抗検出回路85は、電圧計VM1、電流計IM及び定電流源ISを備える。抵抗検出回路85は、第1の外部接続端子71及び第2の外部接続端子72に接続される。定電流源ISは、測定用の一定電流を流す。抵抗検出回路85は、電圧計VM1及び電流計IMを用いて抵抗値を検出する。
図8は、実施形態1の電流センサ100の回路概念図である。電流センサ100の回路図は、第1のセンサ抵抗(TMR1)、第2のセンサ抵抗(TMR2)、中間層抵抗(RPC)、第1の配線抵抗(RP1)及び第2の配線抵抗(RP2)を用いて簡略的に表されている。TMR1は、第1のピンド層21から第1のフリー層41までの層間の第1のセンサ抵抗を示す。TMR2は、第2のピンド層22から第2のフリー層42までの層間の第2のセンサ抵抗を示す。RPCは、中間層25の抵抗を示す。RP1は、電流入力端子70から第1のピンド層21までの配線抵抗を示す。RP2は、第2のピンド層22から電流出力端子75までの配線抵抗を示す。TMR1は、RP1とRPCとの間に接続される。TMR2は、RP2とRPCとの間に接続される。電流入力端子70及び電流出力端子75は、入力電流回路80に接続される。
入力電流回路80は、電流Iinを検出電流として電流入力端子70に入力する。検出電流は、直列に接続されたRP1、RPC及びRP2を流れる。検出電流は、電流出力端子75から入力電流回路80に戻る。
抵抗検出回路85は、第1のフリー層41と第2のフリー層42との間の抵抗値を検出することにより、検出電流を検出する。第1のフリー層41と第2のフリー層42との間の抵抗値とは、TMR1とRPCとTMR2との抵抗値の和を指す。抵抗検出回路85は、電流Imを測定用の電流として第1の外部接続端子71に入力する。測定用の電流は、直列に接続されたTMR1、RPC及びTMR2を流れる。測定用の電流は、第2の外部接続端子72から抵抗検出回路85に戻る。
本例のTMR1及びTMR2はそれぞれ数kΩ程度であり、RPCは数Ωである。そのため、TMR1及びTMR2における電圧ドロップと比較して、中間層25のRPCにおける電圧ドロップを無視できる。よって、電流センサ100は、図8に示した回路概念図を用いて、検出電流の電流値を測定できる。また、TMR1及びTMR2には、検出電流が流れないので、精確に電流を検出できる。
抵抗検出回路85の検出する抵抗値は、下記の式で求められる。
TMR1+TMR2=VM1/IM
但し、
RPC<<TMR1+TMR2
Iin*RPC<<VM
ここで、VM1は、電圧計VM1が計測した電圧値であり、IMは、電流計IMが計測した電流値である。VMは、第1の外部接続端子71と第2の外部接続端子72との間の電圧値である。本例では、VM=VM1となる。
図9は、検出電流が流れたときにフリー層40にかかる磁場を示す模式図である。図9は図7CのC断面を示す。点線は、第1のピンド層21に流れる検出電流により生じる磁場を示す。
第1のピンド層21に検出電流が流れると、右ねじの法則に従って第1のピンド層21の周りに磁場が発生する。第1のピンド層21の中心点に大きさIの線電流が流れていると考える。第1のピンド層21に流れる線電流を中心とした半径rの位置に発生する磁場Bの大きさは、下記の式(1)により表される。
B=(4π*μ*I)/(2*r)・・・式(1)
ここで、μは、真空の透磁率を示す。
本例の第1のピンド層21、第1のトンネル層31、第1のフリー層41及び第1のカバー層51は、それぞれ数十オングストローム程度の厚みである。例えば、検出電流の大きさを1μA、第1のピンド層21から第1のフリー層41までの平均的な距離を50オングストローム(5nm)とする。この場合、式(1)を用いると、その地点にできる磁場Bの大きさは、下記の通りとなる。
B=(4*3.14*10−7*1μA)/(2*5nm)
=126μT
このオーダの磁場の大きさがあれば、電流センサ100自身のノイズや抵抗検出回路85のノイズよりも大きなセンサ信号出力が得られる。即ち、検出電流により生じる磁場に応じて、第1のフリー層41の磁化方向が変化し、センサ抵抗値であるTMR1とTMR2が変化する。抵抗検出回路85は、TMR1とTMR2の抵抗値を検出することにより、検出電流をセンシングできる。
従来の電流センサは、電流経路とセンサをそれぞれ別途の配線及び素子で構成して近接配置しているので、センサ部に発生する磁場が小さい。よって、従来の電流センサは、mAオーダの電流を流さないと、センサ自身のノイズや検出回路のノイズによりその電流値を検知できない。一方、本例の電流センサ100は、センサ抵抗直下のピンド層20に流れる電流を検出するので、高精度に小さな電流変化を検出することができる。また、ピンド層20と磁場を検出するフリー層40が一体となっているため、経年変化による位置関係のずれがなく、1μA程度の微小電流を長期的に安定して測定できる。また、本例の電流センサ100は、プロセス工程を新たに追加することなく、小面積で安価に製造できる。
<実施形態2>
図10及び図11Aから図11Cは、実施形態2に係る電流センサ100を示す。本例の電流センサ100は、第1のピンド層21と第2のピンド層22との間に、中間層25の代わりに金属配線層65を有する。図11Aから図11Cは、点線A−A'、点線B−B'、点線C−C'における電流センサ100の各断面図である。
金属配線層65は、中間層25と比較して抵抗を小さくできるので、第1のピンド層21と第2のピンド層22との間のRPCを低減できる。金属配線層65は、第1の上部配線層61及び第2の上部配線層62と同じ材料で形成されてよい。この場合、金属配線層65は、第1の上部配線層61及び第2の上部配線層62と同一の工程で形成することができる。そのため、本実施形態に係る電流センサ100は、実施形態1に係る製造工程から、新たなプロセス工程を設けることなく製造できる。
<実施形態3>
図12から図14は、実施形態3に係る電流センサ100を示す。実施形態1に係る電流センサ100では、RPCにより電流の測定範囲が制限される領域が発生する。一方、本例の電流センサ100は、ピンド層20から第3の外部接続端子73及び第4の外部接続端子74をそれぞれ引き出すことにより、RPCの抵抗を無くすことができる。
図12は、電流センサ100を上面から見た配置図である。図13Aから図13Dは、点線A−A'、点線B−B'、点線C−C'、点線D−D'における電流センサ100の各断面図である。本例の電流センサ100は、第3のピンド層23、第3のトンネル層33、第3のフリー層43、第3のカバー層53、第4のピンド層24、第4のトンネル層34、第4のフリー層44、第4のカバー層54、第3の上部配線層63、第4の上部配線層64、第3の外部接続端子73及び第4の外部接続端子74をさらに備える。本例の抵抗検出回路85は、電圧計VM2をさらに備える。
第3のピンド層23は、第1のピンド層21から延出して形成される。第3のピンド層23は、第1のピンド層21と同時に形成されてもよい。第3のピンド層23の他端は、第3の外部接続端子73に接続される。
第3のトンネル層33は、第3のピンド層23上に形成される。第3のトンネル層33は、第3のピンド層23に流れる検出電流が第3の上部配線層63側に流れるのを防止する。本例の第3のトンネル層33は、第3のピンド層23上の少なくとも一部に形成される。
第3のフリー層43は、第3のトンネル層33上に形成される。本例の第3のフリー層43は、第3のトンネル層33と膜面の断面形状が同一である。
第3のカバー層53は、第3のフリー層43の上部を保護する。第3のカバー層53は、第3のフリー層43上に連続して形成される。
第3の上部配線層63は、抵抗検出回路85と接続される第3の外部接続端子73を備える。第3の上部配線層63は、第3のピンド層23と離間して形成される。
第4のピンド層24は、第2のピンド層22から延出して形成される。第4のピンド層24は、第2のピンド層22と同時に形成されてもよい。第4のピンド層24の他端は、第4の外部接続端子74に接続される。
第4のトンネル層34は、第4のピンド層24上に形成される。第4のトンネル層34は、第4のピンド層24に流れる検出電流が第4の上部配線層64側に流れるのを防止する。本例の第4のトンネル層34は、第4のピンド層24上の少なくとも一部に形成される。
第4のフリー層44は、第4のトンネル層34上に形成される。本例の第4のフリー層44は、第4のトンネル層34と膜面の断面形状が同一である。
第3のフリー層43及び第4のフリー層44は、磁化の方向が、検出電流によって生じる磁場により変化されない。即ち、第3のピンド層23及び第4のピンド層24には、検出電流が流れない。検出電流が流れないとは、完全に検出電流が流れない場合に加えて、第3のフリー層43及び第4のフリー層44の磁化の方向が、検出電流によって生じる磁場により変化されない程度の検出電流が流れる場合を含んでよい。
第4のカバー層54は、第4のフリー層44の上部を保護する。第4のカバー層54は、第4のフリー層44上に連続して形成される。
第4の上部配線層64は、抵抗検出回路85と接続される第4の外部接続端子74を備える。第4の上部配線層64は、第4のピンド層24と離間して形成される。
図14は、実施形態3に係る電流センサ100の回路概念図である。本例の電流センサ100の回路概念図には、図8と比較して、抵抗RS3及びRS4がさらに追加されている。RS3は、第3のピンド層23の抵抗値と第3のピンド層23から第3のフリー層43までの抵抗値との和である。RS3は、RP1とRPCの間の接続点から抵抗検出回路85に接続される。RS4は、第4のピンド層24の抵抗値と第4のピンド層24から第4のフリー層44までの抵抗値との和である。RS4は、RP2とRPCの間の接続点から抵抗検出回路85に接続される。
抵抗検出回路85は、第1のフリー層41と第3のフリー層43との間の抵抗値、及び第2のフリー層42と第4のフリー層44との間の抵抗値を検出することにより、検出電流を検出する。第1のフリー層41と第3のフリー層43との間の抵抗値とは、TMR1とRS3との抵抗値の和を指す。第2のフリー層42と第4のフリー層44との間の抵抗値とは、TMR2とRS4との抵抗値の和を指す。抵抗検出回路85は、第1の外部接続端子71から第2の外部接続端子72に検出用の電流を流す。
電圧計VM1は、TMR1及びRS3に直列に接続され、第1のセンサ抵抗TMR1を測定する。即ち、電圧計VM1の電圧測定回路ループがRPCを組み込まない。よって、電圧計VM1は、RPCの影響を受けずに第1のセンサ抵抗TMR1を測定できる。
電圧計VM2は、TMR2及びRS4に直列に接続され、第2のセンサ抵抗TMR2を測定する。即ち、電圧計VM2の電圧測定回路ループがRPCを組み込まない。よって、電圧計VM2は、RPCの影響を受けずに第2のセンサ抵抗TMR2を測定できる。これにより、抵抗検出回路85は、RPCの影響をなくすことができる。
<製造方法>
図15Aから図15Gは、電流センサ100の製造方法の一例を示す。図15Aは、ピンド層20が形成された基板90を示す。本例の基板90は、シリコンで形成される。本例の基板90表面は、第1の絶縁膜91により覆われている。例えば、第1の絶縁膜91は、二酸化シリコンSiO等の一般的な製造工程で用いられる絶縁膜である。ピンド層20は、スパッタにより形成される。ピンド層20を形成するスパッタは、磁場をかけた状態で実施されてよい。
図15Bは、ピンド層20の磁化を固定する工程を示す。ピンド層20は、磁場中での熱処理により、磁化が固定される。例えば、磁場は、ピンド層20の磁化が固定される方向に向けられる。
図15Cは、TMR素子を形成する工程を示す。ピンド層20上には、トンネル層30、フリー層40及びカバー層50が形成される。
図15Dは、電流センサ100の素子分離工程を示す。電流センサ100は、フォトリソグラフィー工程、イオンミリング工程等を用いて、カバー層50からピンド層20までの不要な部分を取り除く。これにより、素子分離されたTMR素子が形成される。
図15Eは、TMR素子をパターニングする工程を示す。電流センサ100は、フォトリソグラフィー工程、イオンミリング工程等を用いて、不要なフリー層40及びカバー層50が除去される。なお、不要なフリー層40及びカバー層50と同様のパターンで、トンネル層30まで除去してもよい。
また、実施形態2のように中間層25の代わりに金属配線層65を形成する場合、フォトリソグラフィー工程、イオンミリング工程等を用いて、金属配線層65が形成される領域のピンド層20を除去する。その後、ピンド層20が除去された領域に金属配線層65を堆積させる。これにより、中間層25の代わりに金属配線層65を形成できる。
図15Fは、第2の絶縁膜92を堆積させる工程を示す。基板90の全面には、第2の絶縁膜92が形成される。本例の第2の絶縁膜92は、二酸化シリコンSiOで形成される。第2の絶縁膜92は、第1の絶縁膜91と同一の材料であっても異なる材料であってもよい。
図15Gは、上部配線層60が形成された電流センサ100を示す。フォトリソグラフィー工程、イオンミリング工程等により、第2の絶縁膜92上に上部配線層60のパターンで開口する。その後、金属のスパッタ、リフトオフ工程により、上部配線層60が形成される。これにより、各磁気抵抗効果素子TMRの間を接続する引き回し配線及び外部との接続配線が形成される。
以上の通り、本例の電流センサ100は、従来と同様の製造工程を用いることにより製造される。また、電流センサ100は、従来の電流センサと比較して、高精度に電流を検出でき、且つ小型に形成できる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
1・・・磁気抵抗効果素子、20・・・ピンド層、21・・・第1のピンド層、22・・・第2のピンド層、23・・・第3のピンド層、24・・・第4のピンド層、25・・・中間層、26・・・入力側ピンド層、27・・・出力側ピンド層、30・・・トンネル層、31・・・第1のトンネル層、32・・・第2のトンネル層、33・・・第3のトンネル層、34・・・第4のトンネル層、35・・・トンネル接合部、40・・・フリー層、41・・・第1のフリー層、42・・・第2のフリー層、43・・・第3のフリー層、44・・・第4のフリー層、50・・・カバー層、51・・・第1のカバー層、52・・・第2のカバー層、53・・・第3のカバー層、54・・・第4のカバー層、60・・・上部配線層、61・・・第1の上部配線層、62・・・第2の上部配線層、63・・・第3の上部配線層、64・・・第4の上部配線層、65・・・金属配線層、70・・・電流入力端子、71・・・第1の外部接続端子、72・・・第2の外部接続端子、73・・・第3の外部接続端子、74・・・第4の外部接続端子、75・・・電流出力端子、80・・・入力電流回路、85・・・抵抗検出回路、90・・・基板、91・・・第1の絶縁膜、92・・・第2の絶縁膜、100・・・電流センサ

Claims (12)

  1. 検出電流が入力される電流入力端子と、
    前記検出電流を出力する電流出力端子と、
    前記電流入力端子に入力された前記検出電流が流れ、磁化が第1の方向に固定された第1のピンド層と、
    前記第1のピンド層上に形成された第1のトンネル層と、
    前記第1のトンネル層上に形成され、磁化の方向が、前記検出電流によって生じる磁場により変化する第1のフリー層と、
    前記第1のピンド層に電気的に接続されるトンネル接合部と
    を備え
    前記トンネル接合部は、
    前記第1のピンド層と直列に設けられ、前記検出電流が流れ、且つ、磁化が第1の方向に固定された第2のピンド層と、
    前記第2のピンド層上に形成された第2のトンネル層と、
    前記第2のトンネル層上に形成された第2のフリー層と
    を備える電流センサ。
  2. 前記第1のピンド層と前記第2のピンド層とを接続し、かつ、前記検出電流が流れる中間層をさらに備える請求項に記載の電流センサ。
  3. 前記中間層が、前記第1のピンド層及び前記第2のピンド層と同じ材料で形成される請求項に記載の電流センサ。
  4. 前記中間層が、金属配線層である請求項に記載の電流センサ。
  5. 前記電流入力端子が、前記第1のピンド層上に形成され、前記電流出力端子が、前記第2のピンド層上に形成される請求項からのいずれか一項に記載の電流センサ。
  6. 前記第1のピンド層から延出して形成された第3のピンド層と、
    前記第2のピンド層から延出して形成された第4のピンド層と、
    前記第3のピンド層上に形成された第3のトンネル層と、
    前記第4のピンド層上に形成された第4のトンネル層と、
    前記第3のトンネル層上に形成され、磁化の方向が、前記検出電流によって生じる磁場により変化されない第3のフリー層と、
    前記第4のトンネル層上に形成され、磁化の方向が、前記検出電流によって生じる磁場により変化されない第4のフリー層と
    を備えた請求項からのいずれか一項に記載の電流センサ。
  7. 前記第3のピンド層及び前記第4のピンド層には、前記検出電流が流れない請求項に記載の電流センサ。
  8. 検出電流が入力される電流入力端子と前記検出電流を出力する電流出力端子とが形成されたピンド層と、
    互いに離間して、前記ピンド層上に形成された第1のトンネル層及びトンネル接合部と、
    前記第1のトンネル層上に形成され、磁化の方向が、前記検出電流によって生じる磁場により変化する第1のフリー層と
    を備え
    前記トンネル接合部は、
    前記ピンド層上に形成された第2のトンネル層と、
    前記第2のトンネル層上に形成され、磁化の方向が、前記検出電流によって生じる磁場により変化する第2のフリー層と
    を備える電流センサ。
  9. 前記第1のフリー層と前記第2のフリー層との間の抵抗値を検出することで、前記検出電流を検出する抵抗検出回路を備える請求項からのいずれか一項に記載の電流センサ。
  10. 前記第1のフリー層と前記第3のフリー層との間の抵抗値、及び前記第2のフリー層と前記第4のフリー層との間の抵抗値を検出することで、前記検出電流を検出する抵抗検出回路を備える請求項に記載の電流センサ。
  11. 前記第1のフリー層上に形成された第1の上部配線層と、
    前記第2のフリー層上に形成された第2の上部配線層と
    をさらに備える請求項からのいずれか一項に記載の電流センサ。
  12. 基板上にピンド層を形成する工程と、
    前記ピンド層上にトンネル層を形成する工程と、
    前記トンネル層上にフリー層を形成する工程と、
    前記フリー層及び前記トンネル層をエッチングして、互いに離間した第1のトンネル層及び第2のトンネル層と、第1のトンネル層上の第1のフリー層と、第2のトンネル層上の第2のフリー層とを形成する工程と、
    前記第1のフリー層上に第1の上部配線層を形成し、前記第2のフリー層上に第2の上部配線層を形成する工程と、
    前記ピンド層上に、第1の外部接続端子と第2の外部接続端子とを形成する工程と、
    前記第1の上部配線層に第3の外部接続端子を形成し、前記第2の上部配線層に第4の外部接続端子を形成する工程と
    を備えた電流センサの製造方法。
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