前述した工場設備等において,圧縮空気の消費量は常に一定ではなく,例えば1日のうちでもその時間帯によって圧縮空気の消費量は大きく変化することから,圧縮空気供給システムでは,このような圧縮空気の消費量の変化に対応して,圧縮空気の供給量を増減させる必要がある。
そして,1台の大型モータ駆動型圧縮機を圧縮空気の供給源として設け,圧縮空気の消費量の減少に応じて大型モータ駆動型圧縮機を長時間低負荷で運転させる場合に比較して,比較的小型のモータ駆動型圧縮機複数台を設け,圧縮空気の消費量の増減に応じて稼働させるモータ駆動型圧縮機の台数を増減させた方が,消費電力を低減できることに鑑み,前述した台数制御を採用した圧縮空気の供給システムも普及している。
このような圧縮空気の供給システムでは,空圧機器等に対し確実に圧縮空気を供給することができるよう,工場設備等における最大消費量の圧縮空気を供給できる台数(以下,「必要台数」という。)のモータ駆動型圧縮機を設ける他,モータ駆動型圧縮機に故障等が生じた場合やメンテナンス等により停止する場合,及び生産量の増加,あるいは,新たな設備の増設等があってもこれを補うことができるようにするために,前述した「必要台数」のモータ駆動型圧縮機の他,補助あるいは予備として所定台数(以下「予備台数」という)のモータ駆動型圧縮機を設けることが行われている。
そのため,圧縮空気供給システムに設けられたモータ駆動型圧縮機中,前述の予備台数分のモータ駆動型圧縮機は,当該工場設備等における最大消費量の圧縮空気の消費が行われている状態にあっても,通常は稼働されない。
しかし,前述したように生産量の増加等により工場設備等における圧縮空気の最大消費量を超える圧縮空気が消費される場合も想定される等,必要台数のモータ駆動型圧縮機のみならず,予備台数分をも含めた全てのモータ駆動型圧縮機を同時に稼働するための電源設備を設ける必要があり,電源設備や商用電源の契約電力量としては,前記必要台数に加え前記予備台数を含む全てのモータ駆動型圧縮機を同時に稼働できるだけのものを確保しておく必要があり,殆ど運転されることのない予備台数分のモータ駆動型圧縮機を稼働できるようにするために多大な初期投資が必要になると共に,商用電源の契約では,電力の使用量に拘わらず,前述の契約電力量に応じた所定額の基本料金の負担が必要となるために,予備台数の稼働分をも含め契約電力量を設定すれば,ランニングコストも増大する。
そのため,契約電力量を低く抑えつつ空圧機器に対し安定した圧縮空気の供給を継続することができる圧縮空気供給システムが要望される。
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,比較的簡単な構成であり,且つ,ランニングコスト等を低減可能でありながら,モータ駆動型圧縮機の故障やメンテナンス等による停止により,圧縮空気の供給量が不足する場合や,生産量の増加等による圧縮空気の消費量の一時的な増大等に対しても対応可能な圧縮空気供給システム及び圧縮空気の供給方法を提供することを目的とする。
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
上記目的を達成するために,本発明の圧縮空気供給システム1は,
商用電源からの電力の供給を受けて駆動され,且つ,空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力を,空圧機器60の作動に必要な最低限の圧力である最低作動圧力P1よりも高い全負荷運転復帰圧力PLと,前記全負荷運転復帰圧力PLよりも高い無負荷運転開始圧力PHの間に保持するよう制御される一台又は複数台のモータ駆動型圧縮機11を備えた圧縮空気の主供給系10と,
空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力を,空圧機器60の作動に必要な最低限の圧力である最低作動圧力P1よりも高い圧力に保持するように制御される一台又は複数台のエンジン駆動型圧縮機21を備えた圧縮空気の補助供給系20と,
前記空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力を検知する圧力検知手段Ps2を備え,
前記圧力検知手段Ps2による検知圧力が前記全負荷運転復帰圧力PLよりも低く前記最低作動圧力P1よりも高い所定の始動圧力P2,P2’以下に低下したとき,前記補助供給系20に始動信号を出力して前記エンジン駆動型圧縮機21を始動させる制御装置30を設けたことを特徴とする(請求項1)。
なお,主供給系10が複数台のモータ駆動型圧縮機11を備える場合,前記エンジン駆動型圧縮機21の始動圧力P2,P2’を,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11の全負荷運転復帰圧力PL中で最も低い全負荷運転復帰圧力PLよりも低い圧力に設定することが好ましい(請求項2)。
上記構成の圧縮空気供給システム1には,更に,前記補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21の始動用電源となるバッテリ212を設けると共に,前記制御装置30に,商用電源より供給された電力によって前記バッテリ212を充電する充電器33を設けることができる(請求項3)。
更に,前記圧力検知手段Ps2が前記始動圧力P2,P2’よりも高く且つ前記無負荷運転開始圧力PH以下の範囲で設定された所定の停止圧力P3以上の圧力を検知したときに前記制御装置30が補助供給系20に停止信号を出力して前記エンジン駆動型圧縮機21を停止させるものとしても良い(請求項4)。
なお、主供給系10に複数台のモータ駆動型圧縮機11を設けた場合には,前記エンジン駆動型圧縮機21の停止圧力P3を,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11の無負荷運転開始圧力PH中で最も低い無負荷運転開始圧力PH以下の圧力に設定することが好ましい(請求項5)。
更に,前記モータ駆動型圧縮機11に,自己診断により所定の故障状態,例えば圧縮機本体の吐出温度上昇,フィルタ目詰まり,過負荷の状態等にあると判断したとき,又はユーザにより停止指令が入力されたときに停止する,保護停止機能を持たせた構成とすることもできる(請求項6)。
また,前記主供給系10に,前記モータ駆動型圧縮機11を複数台設けると共に,空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力に応じて前記複数台のモータ駆動型圧縮機の稼働台数を変化させる台数制御を行う台数制御手段を設けた構成にあっては,前記台数制御手段が,前記保護停止機能によって停止したモータ駆動型圧縮機を前記台数制御の対象から除外するように構成するものとしても良い(請求項7)。
なお,前述のようにモータ駆動型圧縮機11が前記保護停止機能により停止した場合,停止中,該停止したモータ駆動型圧縮機11が故障信号を出力するよう構成すると共に,前記制御装置30に,前記故障信号の受信中,故障表示を行う表示手段34を設けるものとしても良い(請求項8)。
前記主供給系10が複数のモータ駆動型圧縮機11を備える場合,前記始動圧力として通常時に使用される通常始動圧力P2と,前記通常始動圧力P2に対し所定の高い圧力に設定された故障時始動圧力P2’を設定し,
前記制御装置30が,前記故障信号の非受信時,前記通常始動圧力P2に基づいて前記始動信号を出力すると共に,前記故障信号の受信時,前記故障時始動圧力P2’に基づいて前記始動信号を出力するものとしても良い(請求項9)。
上記の構成において,前記故障時始動圧力P2’を可変とし,
前記制御装置30が,前記圧力検知手段Ps2の検知信号に基づき空圧機器60に供給する圧縮空気の圧力降下速度を監視し,該圧力降下速度が上昇するに従い前記故障時始動圧力P2’を高圧側にシフトさせるように構成しても良い(請求項10)。
また,本発明の圧縮空気の供給方法は,
空圧機器60に対し圧縮空気を供給する圧縮空気供給システム1における圧縮空気の供給方法に関するものであり,
前記圧縮空気供給システム1に,
商用電源からの電力の供給を受けて駆動され,且つ,空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力を,空圧機器60の作動に必要な最低限の圧力である最低作動圧力P1よりも高い全負荷運転復帰圧力PLと,前記全負荷運転復帰圧力PLよりも高い無負荷運転開始圧力PHの間に保持するよう制御される一台又は複数台のモータ駆動型圧縮機11を備えた圧縮空気の主供給系10と,
空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力を,空圧機器60の作動に必要な最低限の圧力である最低作動圧力P1よりも高い圧力に保持するよう制御される一台又は複数台のエンジン駆動型圧縮機21を備えた圧縮空気の補助供給系20を設け,
前記主供給系10による圧縮空気の供給時,前記空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力が,前記全負荷運転復帰圧力PLよりも低く前記最低作動圧力P1よりも高い所定の始動圧力P2,P2’以下に低下したとき,前記補助供給系20に設けた前記エンジン駆動型圧縮機21を始動させて前記補助供給系20による圧縮空気の供給を開始することを特徴とする(請求項11)。
この圧縮空気の供給方法において,前記主供給系10に複数台のモータ駆動型圧縮機11を設けた場合,前記エンジン駆動型圧縮機21の始動圧力P2,P2’を,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11の全負荷運転復帰圧力PL中で最も低い全負荷運転復帰圧力PLよりも低い圧力とすることが好ましい(請求項12)。
また,前記エンジン駆動型圧縮機21の始動後,前記空圧機器60に対する圧縮空気の供給圧力が,前記始動圧力P2,P2’よりも高く且つ前記無負荷運転開始圧力PH以下の範囲で設定された所定の停止圧力P3以上の圧力となったとき,前記エンジン駆動型圧縮機21を停止して前記補助供給系20による圧縮空気の供給を停止するものとしても良い(請求項13)。
この場合において,前記主供給系10に複数台のモータ駆動型圧縮機11を設けた場合,前記エンジン駆動型圧縮機21の停止圧力P3を,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11の無負荷運転開始圧力PH中で最も低い無負荷運転開始圧力PH以下の圧力に設定する(請求項14)。
更に,前記主供給系10に,自己診断により所定の故障状態にあると判断したとき,又はユーザにより停止指令が入力されたときに停止する保護停止機能を備えた複数のモータ駆動型圧縮機11を設けるものとしても良く,
この場合,前記始動圧力として,通常時に使用される通常始動圧力P2とは別に,前記通常始動圧力P2に対し所定の高い圧力に設定された故障時始動圧力P2’を設定し,
前記保護停止機能に基づき停止したモータ駆動型圧縮機11の非発生時,前記通常始動圧力P2に基づいて前記エンジン駆動型圧縮機21を始動させると共に,前記保護停止機能に基づき停止したモータ駆動型圧縮機11の発生時,前記故障時始動圧力P2’に基づいて前記エンジン駆動型圧縮機21を始動させるものとしても良い(請求項15)。
この場合,更に前記故障時始動圧力P2’を可変とし,
前記空圧機器60に供給する圧縮空気の圧力降下速度を監視して該圧力降下速度が上昇するに従い前記故障時始動圧力P2’を高圧側にシフトするようにしても良い(請求項16)。
以上で説明した本発明の構成により,本発明の圧縮空気供給システム1によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
圧力検知手段Ps2により検知された空圧機器60に対する圧縮空気の供給圧力が所定の始動圧力P2,P2’以下となった際に,始動信号を出力する制御装置30を設けると共に,前記始動信号の受信により補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21を始動させることで,例えばモータ駆動型圧縮機11の停止等により主供給系10による圧縮空気の供給量が減少または停止する,あるいは,生産量の増加等によって圧縮空気の消費量が主供給系10による圧縮空気の最大供給量を超えた場合のいずれにおいても,補助供給系20からの圧縮空気の供給が開始されることで,空圧機器60に対し安定した圧縮空気の供給を行うことができた。
しかも,補助供給系20の圧縮空気の発生源をエンジン駆動型圧縮機21としたことで,補助供給系20に対し商用電源からの電力供給を行う必要が無いことから,電力会社に対する契約電力量を主供給系10に設けた必要台数分のモータ駆動型圧縮機11の稼働に必要な電力量に抑えた場合であっても,補助供給系20に設けた予備台数分を含めた全ての圧縮機の稼働が可能であり,予備台数分の電源設備が不要で初期投資を抑えることができると共に電力会社に支払う基本料金を低く抑えることができる結果,ランニングコストを低く抑えることができた。
また,補助供給系20を比較的短時間の使用を予定した補助的なものとして位置付けたことにより,長時間の運転には不向きで,モータ駆動型圧縮機との統合制御が困難であるエンジン駆動型圧縮機21を,圧縮空気供給システム1としての統合制御が可能であり,しかも補助供給系20による圧縮空気の供給開始を,空圧機器60の最低作動圧力P1よりも所定の高い圧力として設定した始動圧力P2,P2’の検知に基づき開始したことで,主供給系10の供給能力を超えた圧縮空気の消費が行われた場合であっても,最低作動圧力P1未満に低下する前に圧縮空気の補助供給を開始することで空圧機器60が停止することを未然に防止することができた。
なお,主供給系10に複数台のモータ駆動型圧縮機を備えた場合にあっては,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21の始動圧力P2を,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11の中で最も低い全負荷運転復帰圧力PLよりも低い圧力に設定することによって,モータ駆動型圧縮機11の一部が未だ全負荷運転に復帰していない状態でエンジン駆動型圧縮機21が始動することを防止し,主供給系10に設けた稼働可能なモータ駆動型圧縮機11の全てが全負荷運転中であるにもかかわらず,なお集合タンク53内の圧力が前記P2以下に低下した時にのみ,前記補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21を始動させることができるため,補助供給系20の不要な運転を防ぐことができた。
前記圧力検知手段Ps2による検知圧力が前記始動圧力P2,P2’よりも高く且つ前記無負荷運転開始圧力PH以下の範囲で設定された所定の停止圧力P3以上を検知したときに前記制御装置30が補助供給系20に停止信号を出力すると共に,前記補助供給系20に設けた前記運転制御装置22が,前記停止信号を受信して前記エンジン駆動型圧縮機21を停止させることで,例えば故障等により停止していたモータ駆動型圧縮機の再始動,ユーザによる停止指令の解除によるモータ駆動型圧縮機の再始動,空圧機器による圧縮空気の消費量の減少又は消費停止によって,主供給系10による圧縮空気の供給のみで空圧機器による圧縮空気の消費量を賄うことができる状態となった場合には,エンジン駆動型圧縮機21を停止して補助供給系20からの圧縮空気の供給を終了すると共に,主供給系10のみによる圧縮空気の供給に復帰する処理を自動で行わせることができた。
なお,主供給系10に複数台のモータ駆動型圧縮機11を設けた場合には,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21の停止圧力P3を,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11の無負荷運転開始圧力PHの中で最も低い無負荷運転開始圧力PH以下の圧力に設定することによって,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11が無負荷運転に移行する,または容量制御に移行する前に,前記補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21を停止させることができ,補助供給系20の不要な継続運転を防ぐことができた。
更に,前記モータ駆動型圧縮機11に,自己診断により所定の故障状態,例えば圧縮機本体の吐出温度上昇,フィルタ目詰まり,過負荷の状態等にあると判断したとき,又はユーザにより停止指令が入力されたときに停止する,保護停止機能を持たせた構成とした場合には,モータ駆動型圧縮機11が故障等した場合,又は,ユーザがモータ駆動型圧縮機の停止信号を入力した場合,モータ駆動型圧縮機が停止することで,より深刻なダメージの発生等により保護することができた。
また、前述した保護停止機能に伴う停止によって主供給源10からの圧縮空気の供給が減少あるいは停止して空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力が低下する結果,エンジン駆動型圧縮機21が自動的に始動して,主供給系10による圧縮空気の供給に代え,補助供給系20による圧縮空気の供給に自動で移行させることが可能となった。
また,前記主供給系10に,このような保護停止機能を備えたモータ駆動型圧縮機11を複数台設けると共に,空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力に応じて前記複数台のモータ駆動型圧縮機11の稼働台数を変化させる台数制御を行う台数制御手段を設け,前記台数制御手段が,保護停止機能によって停止したモータ駆動型圧縮機11を台数制御の対象から除外する構成とした場合には,主供給系10全体を停止することなく,複数のモータ駆動型圧縮機11中の一部を停止した間引き運転が可能となると共に,これにより主供給系10による圧縮空気の最大供給量が減少して空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力を所定の圧力(始動圧力P2を超える圧力)に維持できなくなると,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21が自動的に始動することでこれを補うことができた。
更に,前記故障状態の自己診断結果,又は前記ユーザによる停止指令に基づく前記モータ駆動型圧縮機11の停止中,前記容量制御装置12が故障信号を出力するよう構成すると共に,前記制御装置30に,前記故障信号の受信中,故障表示を行う表示手段34を設けることで,ユーザ等が表示手段34の表示によって故障等の発生を容易に確認することができた。
このように,モータ駆動型圧縮機11が故障信号を出力する構成とした場合であって,更に,主供給系10が複数のモータ駆動型圧縮機11を備える場合には,前記始動圧力として通常時に使用する通常始動圧力P2と,この通常始動圧力P2に対し所定の高い圧力に設定された故障時始動圧力P2’を設定し,前記制御装置30が,前記故障信号の非受信時,前記始動圧力P2に基づいて前記始動信号を出力すると共に,前記故障信号の受信時,前記故障時始動圧力P2’に基づいて前記始動信号を出力するものとすることで,空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力が,空圧機器の最低作動圧力P1を下回ることを好適に防止することができた。
すなわち,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11の中の1台(又は複数)が停止した場合、主供給系10の圧縮空気供給能力が低下するため,圧縮空気の消費を主供給系10の他の運転可能なモータ駆動型圧縮機11のみでは賄えず,主供給系10に対し供給される圧縮空気の圧力降下速度が主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11が(全台数)正常に稼働している時よりも速くなるため,集合タンク53内の圧力がP2を下回り補助供給系20に対して始動信号を出力しても,エンジン駆動型圧縮機21が始動して圧縮空気の供給が始まる前に、集合タンク53内の圧力が空圧機器の最低作動圧力P1を下回り空圧機器が停止するおそれがある。
しかし,前述したように通常始動圧力P2に対し高圧に設定された故障時始動圧力P2’に基づいて始動信号を出力することにより,エンジン駆動型圧縮機21の始動タイミングを早め,空圧機器60に対する供給圧力が最低作動圧力P1を下回る前に補助供給系20による圧縮空気の供給を開始することができた。
特に,故障等により停止するモータ駆動型圧縮機の数が増える程,空圧機器60に対する供給圧力の降下速度が上昇し,最低作動圧力P1を下回る危険度が高まるが,故障時始動圧力P2’を可変とし,空圧機器60に対する供給圧力の降下速度が上昇するに従い,故障時始動圧力P2’を高圧側にシフトさせる構成を採用した場合には,空圧機器60に対する供給圧力が最低作動圧力P1を下回ることをより確実に防止することができた。
以下に,添付図面を参照しながら本発明の圧縮空気供給システム1について説明する。
〔全体構成〕
図1に示すように本発明の圧縮空気供給システム1は,商用電源からの電力の供給を受けて駆動されるモータ駆動型圧縮機11を備えた圧縮空気の主供給系10と,エンジン駆動型圧縮機21を備えた圧縮空気の補助供給系20と,空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力(図示の例では,後述する集合タンク53内の圧力)を検知する圧力検知手段Ps2と,前記圧力検知手段Ps2による検知圧力が,所定の始動圧力P2,P2’以下に低下したときに始動信号を出力して補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21を始動させる制御装置30を備えており,本実施形態にあっては,前記補助供給系20に設けた運転制御装置22,図示の例ではエンジン駆動型圧縮機21に設けた運転制御装置22が,前記制御装置30からの始動信号を受けてエンジン駆動型圧縮機21を始動させることができるよう構成されており,主供給系10からの圧縮空気の供給によっては空圧機器60に対して供給される圧縮空気の圧力を所定の始動圧力P2,P2’よりも高い圧力に維持できない場合,エンジン駆動型圧縮機21を始動させて補助供給系20より圧縮空気の供給を開始することで,空圧機器60に対する安定的な圧縮空気の供給を維持することができるように構成されている。
この圧縮空気供給システム1には,前述の主供給系10,及び補助供給系20で発生した圧縮空気を空圧機器60に対して供給するための供給配管系統50が設けられており,図示の実施形態にあっては主供給系10に連通された吐出配管51と,補助供給系20に連通された吐出配管52を共に集合タンク53に連通して集合タンク53内に圧縮空気を貯溜することができるよう構成すると共に,集合タンク53に連通した供給配管54を介して空圧機器60に対し圧縮空気を供給できるように構成しており,前述の吐出配管51,52,集合タンク53,及び供給配管54によって,前述の供給配管系統50が構成されている。
なお,図示の実施形態にあっては,補助供給系20にエンジン駆動型圧縮機21のエンジン始動用のバッテリ212を設けることで,停電時においてもエンジン駆動型圧縮機21を始動可能としているが,停電時における圧縮空気供給システム1の使用を予定しない場合,あるいは,停電時に利用可能な商用電源以外の予備電源が確保されている場合,バッテリ212は必ずしも設ける必要はない。
また,図示の実施形態にあっては,補助供給系20に設けたバッテリ212を,停電時には制御装置30の電源としても使用する構成としているが,制御装置30用のバッテリはエンジン駆動型圧縮機21のエンジン始動用のバッテリ212とは別に,例えば制御装置30内に設けるものとしても良く,又は,エンジン駆動型圧縮機21に始動用バッテリ212を設けずに制御装置30内に設けたバッテリによりエンジン駆動型圧縮機21を始動するように構成しても良い。
〔主供給系〕
前述の主供給系10は,圧縮空気の発生源であるモータ駆動型圧縮機11を備え,このモータ駆動型圧縮機11は,商用電源からの電力の供給によって駆動されるモータ111と,前記モータ111によって駆動される圧縮機本体(図示せず)と,前記圧縮機本体の吐出側圧力と吐出する圧縮空気量を制御する容量制御装置12を備え,モータ111によって駆動された圧縮機本体が外気を吸入すると共に圧縮して吐出することにより,圧縮空気を発生させることができるように構成されている。
このようなモータ駆動型圧縮機11としては,既知の各種構成のもの使用することができ,本実施形態にあっては,モータ駆動型圧縮機11として既知の油冷式のモータ駆動型圧縮機を採用している。
この構成の圧縮機では,圧縮機本体の潤滑・密封・冷却のために圧縮作用空間内に導入された冷却油と,吸入した外気を共に圧縮して気液混合流体として吐出する構造となっていることから,この圧縮機本体が気液混合流体として吐出した圧縮流体を貯留して冷却油と圧縮空気とに分離するためのレシーバタンク112を備えている。
そして,このレシーバタンク112内で冷却油が分離された圧縮空気を,前述の吐出配管51,集合タンク53及び供給配管54を介して空圧機器60に供給している。
なお,主供給系10には,1台のモータ駆動型圧縮機11を設ける構成に限定されず,図示は省略するが複数台のモータ駆動型圧縮機を設ける構成を採用し,複数台のモータ駆動型圧縮機を既知の方法により台数制御することで,複数台のモータ駆動型圧縮機の協働により圧縮空気を供給できるようにしても良い。
主供給系10に設けるモータ駆動型圧縮機11が備える前述の容量制御装置12は,空圧機器60に常に一定範囲の圧力で圧縮空気を供給することができるようにモータ駆動型圧縮機11の運転を制御するもので,この容量制御装置12が圧縮機本体の吸気弁(図示せず)の開閉制御及び/又は前記モータ111の回転速度制御を行うことにより,圧力センサ等によって構成された圧力検知手段Ps3が検知する圧縮機本体の吐出側圧力(図示の例ではレシーバタンク112内の圧力)が,空圧機器60の最低作動圧力P1よりも高い全負荷運転復帰圧力PLと,前記全負荷運転復帰圧力PLよりも高い無負荷運転開始圧力PHの間の圧力に維持されるよう容量制御を行うように構成されている。
なお,図示の実施形態にあってはモータ駆動型圧縮機11の吐出側圧力をレシーバタンク112内の圧力を測定することにより得ているが,モータ駆動型圧縮機11の吐出側圧力は,このレシーバタンク112内の圧力測定により得る構成に限定されず,モータ駆動型圧縮機11から空圧機器60に至る供給配管系統50内,例えば吐出配管51,集合タンク53,供給配管54に圧力検知手段を設けて検知するものとしても良く,図示の例では集合タンク53に設けた圧力検知手段Ps2の検知信号に基づいて前述の容量制御を行うよう構成しても良い。
また,主供給系10に複数のモータ駆動型圧縮機を設け,これを台数制御する場合には,各モータ駆動型圧縮機11が備える容量制御装置12を互いに連携させて稼働するモータ駆動型圧縮機11の台数を制御させるものとしても良い。
あるいは,前記容量制御装置12と共に,又は前記容量制御装置12に代えて,主供給系10に複数のモータ駆動型圧縮機を統合制御する台数制御装置(図示せず)を設け,この台数制御装置により,各モータ駆動型圧縮機の吐出側圧力Ps3を監視する,または,集合タンク53内の圧力を圧力検知手段Ps2により監視することによって,各モータ駆動型圧縮機の始動・停止および容量制御を行うものとしても良い。
また,図1に記載の構成では,容量制御を圧力検知手段Ps3からの検知信号に基づいて,電子制御手段である容量制御装置12が出力した制御信号に基づいて行う電気的な方法による制御として説明しているが,容量制御のうち,圧縮機本体の吸気口の開閉制御については,このような電気的な制御に代えて,例えば圧縮機本体の吐出側圧力により作動するレギュレータ類を使用する等して既知の機械的な制御によって行うものとしても良い。
なお,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11が備える前述の容量制御装置12には,モータ駆動型圧縮機11の保護回路の機能を持たせるものとしても良く,モータ駆動型圧縮機11が予め設定された故障状態に該当すると判断した場合,又は,モータ駆動型圧縮機11に設けられた操作パネル(図示せず)上でユーザが停止指令を入力した場合,モータ駆動型圧縮機11を非常停止させる保護停止機能を実現するように構成しても良い。
このように容量制御装置12に保護回路としての機能を持たせた場合であって,前述したように主供給系10に複数のモータ駆動型圧縮機11を設け,これらを台数制御する場合には,各モータ駆動型圧縮機が備える容量制御装置の連携によって実現される台数制御装置,又は前記容量制御装置とは別に設けた台数制御装置は,複数あるモータ駆動型圧縮機中,前述の保護停止機能に従って停止したモータ駆動型圧縮機11,すなわち所定の故障状態に該当して停止したモータ駆動型圧縮機,あるいはユーザが停止指令を入力することにより停止したモータ駆動型圧縮機を台数制御の対象から外すように構成しても良い。
このように,モータ駆動型圧縮機11が故障により,またはユーザの停止指令により停止した場合,図2に示すようにモータ駆動型圧縮機11が備える容量制御装置12は,モータ駆動型圧縮機11が停止状態にあることを示す「故障信号」を出力し,後述する制御装置30に設けられた液晶モニタパネルや表示灯等から成る表示手段34によって,モータ駆動型圧縮機11の停止,及び停止が複数のモータ駆動型圧縮機の一部である場合には停止に係るモータ駆動型圧縮機に割り振られた番号等を表示するように構成しても良い。
なお,前述した故障状態の判定基準としては,例えば,圧縮機本体の吐出温度上昇,フィルタ目詰まり,過負荷などがある。
〔補助供給系〕
補助供給系20は,生産量の増加等により圧縮空気の消費量が増大した場合や,前記主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11の停止により主供給系10からの圧縮空気の供給量が減少,または停止した場合等,主供給系10のみによる圧縮空気の供給によっては空圧機器60に対し始動圧力P2を超える圧力の圧縮空気を供給できない状態が生じたときに圧縮空気の供給を開始する。
前記補助供給系20は,圧縮空気の供給源であるエンジン駆動型圧縮機21を備え,このエンジン駆動型圧縮機21は,商用電源からの電力供給を受けることなく自立して稼働することができるよう,駆動源としてディーゼルエンジン(図示せず)を備えていると共に,このエンジンによって駆動される圧縮機本体(図示せず),前記圧縮機本体の吐出側圧力と吐出する圧縮空気量を制御する制御手段,および前記エンジンを始動させるスタータ213,燃料タンク(図示せず)等の必要な機器を備えており,エンジンによって駆動された圧縮機本体が外気を吸入すると共に圧縮・吐出することで,圧縮空気の供給を行うことができるように構成されている。
このようなエンジン駆動型圧縮機21としては,既知の各種の構成のものを使用することができ,自立して稼働するために必要な構成機器,例えばエンジン,圧縮機本体,制御手段,燃料タンク,バッテリ,スタータ等をボンネット内に収容した,「パッケージ型」と呼ばれる既知のエンジン駆動型圧縮機21を使用するものとしても良い。
本実施形態では,前述したモータ駆動型圧縮機11と同様,エンジン駆動型圧縮機21としても油冷式のものを使用しており,従って,エンジン駆動型圧縮機21には,気液混合流体として吐出された圧縮流体を貯留して冷却油と圧縮空気とを分離するためのレシーバタンク211を備えている。
また,エンジン駆動型圧縮機21は,圧力センサ等の圧力検知手段Ps1によって検知された圧縮機本体の吐出側圧力(図示の例ではレシーバタンク211内の圧力)によって容量制御が行われるよう構成されており,本実施形態では,前記モータ駆動型圧縮機11の圧力範囲(PL−PH間)のうち,全負荷運転復帰圧力PLに対し所定の高い圧力であるエンジン駆動型圧縮機の定格圧力PE2と,後述する停止圧力P3の間(PE2−P3間)において,圧縮機本体の吸気口の開閉制御及び/又はエンジンの回転速度の制御を行うよう構成されている。
本実施形態にあっては,エンジン駆動型圧縮機21に設けた運転制御装置22にこの容量制御を行う制御手段としての機能を持たせているが,エンジン駆動型圧縮機21の容量制御は既知の各種の構成を採用して行うことが可能で,運転制御装置22による容量制御に代え,エンジン駆動型圧縮機に設けられた例えばレギュレータ等を使用した既知の機械的な制御によって容量制御を行うものとしても良く,または,運転制御装置22とは別に各種センサ等を使用した電子制御装置を設けて行っても良く.あるいは,前記電子制御と前記機械的制御を組み合わせる等の手法を用いて行うことができる。
また,前述した主供給系10の場合と同様,複数台のエンジン駆動型圧縮機21によって補助供給系20を構成し,圧縮空気の消費量の変化に応じて稼働させるエンジン駆動型圧縮機21の台数を変化させる台数制御を行うものとしても良い。
この場合,各エンジン駆動型圧縮機21に設けた運転制御装置22が連携して台数制御を行うようにしても良く,又は,後述する制御装置30に台数制御装置としての機能を付加しても良く,更には運転制御装置22や制御装置30とは別に既知の台数制御装置を例えば補助供給系20に設けて台数制御を行うようにしても良く,本実施形態にあっては後述する制御装置30に台数制御装置の機能を持たせている。
補助供給系20に設けられたエンジン駆動型圧縮機21が備える前述の運転制御装置22は,後述する制御装置30からの始動信号を受信して,所定の手順に従いエンジン駆動型圧縮機21を始動するもので,更にエンジン駆動型圧縮機21の運転状態をエンジンに装備されたオルタネータ(発電機)の発電信号,エンジン油圧を検知する油圧検知手段の検知信号,エンジンの回転速度を検知する回転速度検知手段,圧縮機本体の吐出側圧力を検知する圧力検知手段Ps1等の検知信号に基づいて監視し,その結果を後述する制御装置30に出力するように構成しても良い。
また,後述する制御装置30が停止信号を出力した時に,この停止信号を前述の運転制御装置22が受信してエンジン駆動型圧縮機21を所定の手順に従い停止するようにしても良い。
前述の運転制御装置22より制御装置30に対して行われる出力としては,エンジン駆動型圧縮機21が所定の回転速度に達したことを示す「エンジン運転信号」,圧縮機本体の吐出側圧力が所定の圧力(一例とし0.15MPa)を超えたことを示す「圧力確立信号」の他,エンジン駆動型圧縮機の異常を示す「警報信号」,「非常停止信号」等を出力する。
なお,前記運転制御装置22には「警報信号」,「非常停止信号」の出力時にエンジン駆動型圧縮機21を非常停止させる保護回路の機能を持たせるものとしても良く,エンジン駆動型圧縮機21の運転状態の監視により,前述した警報信号,非常停止信号の出力条件に該当する運転状態に達すると,制御装置30へ警報信号,非常停止信号を出力すると共に,エンジン駆動型圧縮機21を非常停止する制御を行うように構成しても良い。
このような警報または非常停止条件としては,例えば,エンジン駆動型圧縮機21に設けられているエンジンの潤滑油の油圧低下,エンジンの冷却水温上昇,エンジン回転速度の低下,燃料の残量不足(ガス欠),圧縮機本体の吐出温度上昇等がある。
なお,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21に,該エンジン駆動型圧縮機21の始動,停止操作を行うためのキースイッチ等が設けられた計器盤(図示せず)を設け,後述する制御装置30からの始動信号の有無にかかわらず,前記キースイッチの操作によりエンジン駆動型圧縮機21の始動操作を行うことができるように構成しても良い。
〔制御装置〕
制御装置30は,空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力を圧力検知手段Ps2の検知信号に基づいて監視し,この圧力が前述のモータ駆動型圧縮機11の全負荷運転復帰圧力PLよりも低く前記最低作動圧力P1よりも高い所定の始動圧力P2,P2’以下に低下したときに始動信号を出力して,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21を始動させる。
また制御装置30は,空圧機器60に対し供給される圧縮空気の圧力(図示の例では集合タンク53内の圧力)が,前記始動圧力P2,P2’よりも高く且つ前記無負荷運転開始圧力PH以下の所定の停止圧力P3以上に上昇したことを検知したときに停止信号を出力し,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21を停止させる。
また,図示は省略するが,補助供給系20が複数台のエンジン駆動型圧縮機を設ける構成を採用し,複数台のエンジン駆動型圧縮機の協働により圧縮空気を供給するものとした場合,前記制御装置30に既知の台数制御機能を付加し,かつ集合タンク53内の圧力を圧力検知手段Ps2によって監視して,前記集合タンク53内の圧力が補助供給系20の始動圧力P2,P2’以下となったときに,1台目のエンジン駆動型圧縮機に対して始動信号を出力し,前記1台目のエンジン駆動型圧縮機の運転信号を受信してもなお,集合タンク53内の圧力が始動圧力P2,P2’以下の状態が継続する場合には,2台目のエンジン駆動型圧縮機に対して始動信号を出力し,この動作を補助供給系に設けたエンジン駆動型圧縮機の台数分行うように構成する。
なお,制御装置30には,前述の補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21が備える運転制御装置22より受信したエンジン駆動型圧縮機21の運転状態に関する監視結果(前述の「エンジン運転信号」,「圧力確立信号」,「警報信号」,「非常停止信号」),及び主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11が備える容量制御装置12より受信した「故障信号」(図2参照)に基づいて,エンジン駆動型圧縮機21の運転状態,警報等や,モータ駆動型圧縮機11の故障状態等を表示する液晶ディスプレイ等の表示手段34を備えるものとしても良い。
また,制御装置30には,商用電源から供給された電力によって補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21のエンジン始動用バッテリ212を充電する充電器33を設けるものとしても良い。
図示の実施形態にあっては,商用電源から供給される電力の供給状態を監視する電源装置31を設け,この電源装置31を経由した商用電源からの電力を充電器33を介して前記バッテリ212の充電に使用している。
〔動作説明〕
(1)通常運転
以上のように構成された本発明の圧縮空気供給システム1では,通常運転時には,商用電源からの電力の供給を受けて主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11で発生した圧縮空気が供給配管系統50を構成する吐出配管51,集合タンク53,供給配管54を介して空圧機器60に対し供給される。
主供給系10に設けられたモータ駆動型圧縮機11が備える容量制御装置12は,圧力検知手段Ps3の検知信号に基づき圧縮機本体の吐出側圧力(レシーバタンク112内の圧力)が,前述した全負荷運転復帰圧力PLと無負荷運転開始圧力PHの間に保持されるよう,圧縮機本体の吸気口を開閉制御すると共に,モータ111の回転速度を制御する。
具体的には,前記容量制御装置12は,圧力検知手段Ps3による検知圧力が全負荷復帰圧力PLよりも低圧であるとき(図3中のIの範囲),圧縮機本体の吸気口を全開と成すと共にモータ111の回転速度を全負荷回転速度(最高回転速度)とする全負荷運転を行い,圧力検知手段Ps3の検知圧力が全負荷運転復帰圧力PL以上になると(図3中のIIの範囲),レシーバタンク112内の圧力が全負荷運転復帰圧力PLと無負荷運転開始圧力PH間の圧力となるよう,圧縮機本体の吸気口の開閉制御及びモータの回転速度の増減制御を行う。
また,主供給系10に複数台のモータ駆動型圧縮機を設けると共に,各モータ駆動型圧縮機が備える容量制御装置12が互いに連携して台数制御の機能を発揮する場合,前述の圧力検知手段Ps3の検知圧力に応じて,稼働するモータ駆動型圧縮機の台数を増減する。
本実施形態にあっては,主供給系10による圧縮空気の最大供給量を,工場設備等に設けられた空圧機器60による圧縮空気の最大使用量を賄うことができる量に設定しており,通常時,工場設備における圧縮空気の消費量がピークを迎えた場合であっても,主供給系10からの圧縮空気の供給によってこれを賄うことができ,従って,集合タンク53内の圧力は,容量制御の圧力範囲(無負荷運転開始圧力PH−全負荷運転復帰圧力PL)間に保持されるよう制御され,始動圧力P2を超えた状態に保持されていることから,補助供給系20のエンジン駆動型圧縮機21は停止した状態にあり,補助供給系20からの圧縮空気の供給は行われていない。
(2)補助供給系による圧縮空気の供給
以上のように,通常時,空圧機器60に対する圧縮空気の供給は,主供給系10からの圧縮空気の供給のみによって行われる。
しかし,例えば,生産量の増加等により工場設備における圧縮空気の総消費量が主供給系10の最大供給量を超える場合がある。
又は,モータ駆動型圧縮機11が備える容量制御装置12が所定の故障状態にあることを検知して,或いはユーザの停止指令を受信して,モータ駆動型圧縮機11を停止させた場合には,主供給系10による圧縮空気の最大供給量が減少する,または,供給自体が停止することから,この場合にも空圧機器60による圧縮空気の消費量が主供給系10による圧縮空気の供給量を超える場合がある。
その結果,主供給系10からの圧縮空気の供給のみでは,空圧機器60に対し供給する圧縮空気の圧力を全負荷運転復帰圧力PLと無負荷運転開始圧力PH間に保持できなくなり,空圧機器60に対する供給圧力は低下する。
そして,集合タンク53内の圧力が全負荷運転復帰圧力PLを下回り,モータ駆動型圧縮機が全負荷運転に移行したにも拘わらず,更に圧力が低下して圧力検知手段Ps2が始動圧力P2以下の圧力を検知すると,制御装置30は,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21が備える運転制御装置22に対し,エンジン駆動型圧縮機21の始動を指令する始動信号を出力する。
この制御装置30による始動信号の出力は,始動圧力P2の検知後,直ちに行うものとしても良いが,例えば急激な圧縮空気の消費量増大に伴い集合タンク53内の圧力が一時的に始動圧力P2に低下した場合等,補助供給系20による圧縮空気の供給を受けなくとも主供給系10からの圧縮空気の供給によってその後,短時間で全負荷運転復帰圧力PL以上に回復可能な場合についてまでエンジン駆動型圧縮機21を始動させることを防止するため,始動圧力P2以下の圧力が所定時間(一例として2秒間)連続して検知された場合に,前述の始動信号を出力するように構成しても良い。
このようにして,制御装置30が始動信号を出力すると,この始動信号を受信した前述の運転制御装置22は,所定の手順に従い,エンジン駆動型圧縮機21の始動処理を行う。
エンジン駆動型圧縮機21にディーゼルエンジンを搭載した本実施形態にあっては,運転制御装置22はエンジンに設けられた予熱手段(グロープラグ,エアヒータ等:図示せず)に対し所定時間(一例として5秒)バッテリ電源の通電を行ってエンジンを予熱した後,スタータ213を始動(クランキング)してエンジンを始動する。
エンジンの始動動作中,運転制御装置22は,エンジンに装備されたオルタネータ(発電機)の発電信号,エンジンの油圧を検知する油圧検知手段の検知信号,エンジンの回転速度を検知する回転速度検知手段からの検知信号等に基づいてエンジンの回転速度を監視し,エンジンが所定の回転速度に達すると,制御装置30に対してエンジン運転信号を出力し,エンジン運転信号を受信した制御装置30は,始動信号の出力を停止する。
運転制御装置22は,制御装置30からの始動信号を受信している間,エンジンが始動して所定の回転速度に達するまでスタータ213の始動(クランキング)を行うよう構成されており,本実施形態にあっては,制御装置30は,始動信号の出力によりエンジンがクランキングを開始して所定時間(一例として10秒)を経過しても運転制御装置22からのエンジン運転信号が受信できない場合には,一旦始動信号の出力を停止し,所定時間(一例として15秒)の待機後,再度,始動信号を出力し,このような始動信号の出力を3回繰り返してもエンジン運転信号が受信できない場合,制御装置30はエンジン駆動型圧縮機21が始動渋滞に陥ったと判断し,前述の表示手段34に対し始動渋滞である旨の表示を行わせるように構成している。
前述のように、補助供給系20が複数台のエンジン駆動型圧縮機を設ける構成を採用し、複数台のエンジン駆動型圧縮機の協働により圧縮空気を供給する構成とし、且つ制御装置30に既知のエンジン駆動型圧縮機の台数制御機能を付加した場合、制御装置30が、始動信号を出力した1台目のエンジン駆動型圧縮機が備える運転制御装置からの運転信号が受信できず、始動渋滞と判断した場合には、2台目のエンジン駆動型圧縮機に対して始動信号を出力するよう構成しても良い。
また,運転制御装置22は,エンジン駆動型圧縮機21の始動後,圧力検知手段Ps1によって検知されたレシーバタンク211内の圧力が所定の圧力確立の判定圧力PE1(一例として0.15MPa)を超えると,制御装置30に対し圧力確立信号を出力する(図3中のIIIの範囲)。
運転制御装置22からのエンジン運転信号と圧力確立信号を受信した制御装置30は,エンジン駆動型圧縮機21が正常に始動したことを確認すると共に表示手段34にエンジン駆動型圧縮機21が稼働中であることを表示させる。
圧力検知手段Ps1によって検知された圧力が,圧力確立の判定圧力PE1以下の圧力範囲(図3のIIIの範囲)を脱すると,エンジン駆動型圧縮機21は,運転制御装置22による運転制御(容量制御)が行われる。
このような運転制御の一例として,本実施形態にあっては,圧力検知手段Ps1の検知圧力がエンジン駆動型圧縮機の定格圧力PE2以下の範囲(図4中IVの範囲)では,エンジンを予め設定されている全負荷回転速度(最高回転速度)で運転し,前記定格圧力PE2を超え,停止圧力P3未満(図3中Vの範囲)では全負荷回転速度(最高回転速度)と無負荷回転速度(最低回転速度:アイドリング回転速度)との間で運転制御される。
また,エンジンによって駆動される圧縮機本体の吸気口は,エンジンの始動時から前記定格圧力PE2迄(図3中III,IVの範囲)は全開状態にあり,定格圧力PE2を超えて停止圧力P3となる迄はレシーバタンク211内の圧力に応じて開閉制御される。
このような圧縮機本体の吸気口を開閉制御する開閉弁としては,バタフライ式,ピストン式等の既知の各種の開閉弁を使用することができる。
更に,運転制御装置22に保護回路の機能を持たせた場合には,運転制御装置22は,エンジン駆動型圧縮機21に設けられたエンジンの潤滑油の油圧低下,エンジンの冷却水温の上昇,エンジン回転速度の低下,燃料の残量不足(ガス欠),圧縮機本体の吐出温度上昇などを監視し,この監視結果に基づき制御装置30に対し警報信号,非常停止信号を出力する。
なお,エンジン駆動型圧縮機21のエンジンが始動してから,エンジンの回転が立ち上がり安定する迄の所定の時間(一例として10秒)が経過する迄は,運転状態が安定せず,この状態のエンジン駆動型圧縮機21の運転状態を監視して警報表示や非常停止を行う場合,前述の保護回路が誤作動するおそれがあることに鑑み,本実施形態にあっては,エンジン運転信号の出力後,所定時間(一例として10秒)が経過した後,運転制御装置22による保護回路の形成を行うものとしても良い。
(3)補助供給系による供給停止
以上のようにして補助供給系20による圧縮空気の供給が行われている状態から,例えば,停止中のモータ駆動型圧縮機11の運転再開,空圧機器60による圧縮空気の消費量の減少,又は消費停止等により,圧力検知手段Ps2が検知する集合タンク53内の圧力が停止圧力P3以上に上昇すると,制御装置30は停止信号を出力する。
この停止信号の出力は,停止圧力P3の検知後,直ちに行うこともできるが,好ましくは所定時間(一例として10秒)連続して停止圧力以上の圧力が検知された場合に前述の停止信号を出力するよう構成し,集合タンク53内の圧力上昇が一時的なものである場合にエンジン駆動型圧縮機21の停止と始動を繰り返す無駄を防止するように構成しても良い。
この停止圧力P3は,無負荷運転開始圧力PH以下で,且つ全負荷運転復帰圧力PLよりも高い圧力に設定でき,本実施形態にあっては停止圧力P3を無負荷運転開始圧力PHと同一の圧力に設定した。
なお,各圧力の大小関係は,図3に示す通り,
0<PE1<P1<P2<PL<PE2<P3≦PH
であり,各符号はそれぞれ
0:大気圧(ゲージ圧ゼロ)
PE1:圧力確立の判定圧力
P1:空圧機器の最低作動圧力
P2:始動圧力(エンジン駆動型圧縮機の)
PL:全負荷運転復帰圧力(モータ駆動型圧縮機の)
PE2:定格圧力(エンジン駆動型圧縮機の)
P3:停止圧力(エンジン駆動型圧縮機の)
PH:無負荷運転開始圧力(モータ駆動型圧縮機の)
である。
なお、主供給系10に規格が異なる複数のモータ駆動型圧縮機11を混在させる場合,各モータ駆動型圧縮機11の基本設定圧力(メーカ推奨の設定圧力あるいはメーカ出荷時の設定圧力)が異なる場合には,エンジン駆動型圧縮機21の始動圧力P2を全てのモータ駆動型圧縮機の中で最も低い全負荷運転復帰圧力PLよりも低い圧力に設定し,停止圧力P3を全てのモータ駆動型圧縮機の中で最も低い無負荷運転開始圧力PHよりも低い圧力に設定することが好ましい。
このようにして,制御装置30が停止信号を出力すると,制御装置30からの停止信号を受信した補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21が備える運転制御装置22は,所定の処理手順に従いエンジン駆動型圧縮機21の停止処理を行う。
一例として本実施形態にあっては,停止信号を受信した前述の運転制御装置22は,エンジン駆動型圧縮機21の圧縮機本体の吸気口を閉じると共にエンジンの回転速度を無負荷回転速度に低下させた無負荷運転を所定時間(一例として60秒)行う冷却運転を行った後,エンジン駆動型圧縮機21を停止させ,以後,主供給系10のモータ駆動型圧縮機11によって圧縮空気の供給を行う通常運転に移行する。
なお,前述の冷却運転中に圧力検知手段Ps2の検知圧力が始動圧力P2以下となった場合,制御装置30は停止信号をキャンセルして,運転制御装置22にエンジン駆動型圧縮機21の運転を継続させる。
〔使用例1:ピーク時補充型の使用〕
上記動作説明では,主供給系10による圧縮空気の最大供給量を,工場設備等に設けられた空圧機器60による圧縮空気の最大使用量を賄うことができる量に設定した用例について説明した。
しかし,1日の内で,工場設備に設けた空圧機器60が全数稼働して圧縮空気の消費量がピーク(最大消費量)となる時間が比較的短時間である場合,主供給系10に必要台数設けたモータ駆動型圧縮機11の全てに対して電源設備を設け,且つ必要台数を稼働できる商用電源の契約電力量を確保しても,圧縮空気の消費量が少ない時間においては,前記モータ駆動型圧縮機11の中で無負荷運転または停止させるものがあり,しかも停止時間が長時間に亘る場合,前記必要台数のモータ駆動型圧縮機を稼働するために支出する費用(ランニングコスト)に対して,稼働率が悪く経済的ではない。
よって,主供給系10による圧縮空気の供給能力を,工場設備および生産量から想定される空圧機器による圧縮空気の最大消費量以上に設定することに限定されず,主供給系10による圧縮空気の供給能力を前記最大消費量よりも少なく設定することで,本発明の圧縮空気供給システム1に設けた補助供給系20を,空圧機器60による圧縮空気の消費量がピークを迎えたときに不足する圧縮空気を補充する,ピーク時補充型の用途で使用するものとしても良い。
このような使用方法では,最大消費量の圧縮空気の全てをモータ駆動型圧縮機で賄う場合に比較して商用電源の契約電力量を低く,したがって基本料金を低く抑えることができ,また,電源設備も小型化可能で,ランニングコスト等の費用をさらに低減することができる。
この構成では,例えば常時稼働している空圧機器による圧縮空気の消費量(以下,常用消費量という)を,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11によって供給し,停止していた空圧機器が稼働して前記常用消費量を超える圧縮空気が消費されると,集合タンク53内の圧力が低下して圧力検知手段Ps2による検知圧力が補助供給系20の始動圧力P2以下となったときに,制御装置30は,補助供給系20に始動信号を出力してエンジン駆動型圧縮機を始動させる。
補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21の始動,停止の手順,方法は既に行った動作説明と同一である。
〔使用例2:停電等対応型の使用〕
空圧機器60により加工等されている製品が,製造方法上の理由により,或いは品質維持の観点から,所定の製造工程が終了する迄の間は作業を中断できない性質のものである場合,空圧機器の停止により加工作業等が中断すれば,この製品は廃棄や再加工が必要となり,大きな損失を生む場合がある。
そのため,少なくともこのような継続運転が必要とされる空圧機器(以下,「継続運転対象機器」という。)に対する圧縮空気の供給を担保する必要がある。
しかし,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11を稼働させるために必要な商用電源の契約電力量を確保し,この電力量の範囲内で圧縮空気供給システムを稼働させている場合であっても,電力会社は「需給調整契約」に基づき電力供給の限界が近づいた時には大口の需要家に対し使用電力の削減を要請することができ,この要請にも拘わらず電力の供給が逼迫したときには電気使用制限等規則に基づき強制的に電力供給を停止できることから,電力会社からの要請があった場合,モータ駆動型圧縮機に対する供給電力量の大幅な引き下げ,あるいは供給自体の停止が必要となる場合があり,前述した継続運転対象機器に対する圧縮空気の供給を継続できなくなる事態が生じ得る。
前述のような問題点に対応するために,一例として図4に示すように圧縮空気供給システム100に,予備電源としてエンジン駆動型発電機170を設け電源自動切替装置130に設けた停電検知制御装置131が電力供給が遮断されたこと(停電が発生したこと)を検知した時,エンジン駆動型発電機170を始動して電源自動切替手段132が自動で,エンジン駆動型発電機170により発生した電力をモータ駆動型圧縮機110に供給できるようにすることも考えられる。
しかし,上記構成の圧縮空気供給システムにあっては,電力の供給が遮断されたことを検知した後,予備電源であるエンジン駆動型発電機170を始動させ,この予備電源より供給される電力が安定する迄には一定の時間を必要とし,その結果,予備電源からの電力供給が安定した後に再始動が可能となるモータ駆動型圧縮機110が圧縮空気の安定供給を再開する迄には比較的長時間を要することから,この間に空圧機器160に対する圧縮空気の供給圧力が低下して空圧機器160を停止させてしまうおそれがある。
また,モータ駆動型圧縮機110に使用されている三相交流モータは定格運転時に比較して始動時には3倍程度の大電力を必要とすることから,これを賄えるよう,予備電源として設けるエンジン駆動型発電機170は,比較的大型のものを採用することが必要であり多大な経済的負担を強いられることとなる。
しかも,モータ駆動型圧縮機110が一旦始動して定格運転に移行した後には,エンジン駆動型発電機170の出力を大幅に減少させることができるが,大型のエンジン駆動型発電機170により小電力を発生させる場合には燃料消費量に対する発電量,即ち発電効率が悪くなるため,ランニングコストの面でもメリットが少ない。
このような問題を解消するためには,予備電源として比較的小型のエンジン駆動型発電機を複数台準備し,これら複数台のエンジン駆動型発電機を台数制御して,大電力が必要となるモータ駆動型圧縮機の始動時と,消費電力が減少する定格運転時とで稼働させるエンジン駆動型発電機の台数を変化させることも考えられるが,このような構成を採用する場合,装置構成が複雑かつ大がかりなものとなる結果,より一層の初期投資が必要となる。
本発明の圧縮空気供給システムでは,このように電力会社からの使用電力削減要請あるいは電力の供給停止があり,主供給系10による圧縮空気の供給能力が低下し,あるいは主供給系10による圧縮空気の供給自体が停止して,主供給系10によっては前述した継続運転対象機器に対する圧縮空気の供給を継続できない事態が生じた場合の圧縮空気の供給源として補助供給系20を使用する,停電等対応型の使用においても有利に用いることができる。
このような使用方法では,補助供給系20による圧縮空気の発生量を,前述の継続運転対象機器に必要な空圧機器に対する圧縮空気の消費量(継続運転対象機器が複数ある場合には,これらの合計消費量)以上に設定すると共に,好ましくはエンジン駆動型圧縮機21の始動用バッテリ212を設ける。
このように構成することで,商用電源の供給が制限された場合,または供給停止された場合において,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11の一部または全部を停止させることにより圧縮空気の供給量が減少し,または圧縮空気の供給自体が停止した場合であっても,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21を始動用のバッテリ212により始動させることで,継続運転対象機器に対する圧縮空気の供給を継続することが可能となる。
しかも,図4を参照して説明した,予備電源としてエンジン駆動型発電機170を備えた圧縮空気供給システム100では,予備電源であるエンジン駆動型発電機を始動させて安定運転させた後,更に,モータ駆動型圧縮機を始動させて安定運転に至る迄の2段階の工程が必要で,圧縮空気の供給を再開する迄に長時間を要していたが,本発明の圧縮空気供給システム1では,圧縮機本体を直接エンジンによって駆動するエンジン駆動型圧縮機を圧縮空気の補助供給系として設けた構成であるため,圧縮空気の供給再開あるいは追加供給迄に必要な時間を短縮することもできると共に,前述のエンジン駆動型発電機を設ける等の設備投資費用も不要である。
〔使用例3:台数制御における停止機補完型の使用〕
主供給系10が台数制御された複数のモータ駆動型圧縮機11を備えると共に,故障またはユーザの停止指令によりこのうち1台または複数台が停止した場合,主供給系10の圧縮空気供給量が減少し,圧縮空気の消費を主供給系10に残された運転可能なモータ駆動型圧縮機11だけでは賄えなくなる。
本発明の圧縮空気供給システムでは,このような主供給系10で生じた故障等に基づく停止機の発生による能力低下を補うものとして補助供給系20を使用する,停止機補完型の使用を行うことも可能である。
本発明の圧縮空気供給システム1を上記の用途で使用する場合,主供給系10のモータ駆動型圧縮機11に前述した停止機が発生した状態では,集合タンク53内の圧力降下速度が主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11が(全台数)正常に稼働している時よりも速くなるため,モータ駆動型圧縮機11が全機稼働可能な状態であることを前提として設定した始動圧力P2を基準として補助供給系20に対して始動信号を出力すると,エンジン駆動型圧縮機21が始動して圧縮空気の供給が始まる前に,集合タンク53内の圧力が空圧機器の最低作動圧P1を下回り空圧機器が停止する恐れがある。
従って,上記の用途で本発明の圧縮空気供給システム1を使用する場合には,このようにして集合タンク53内の圧力が空圧機器の最低作動圧力P1を下回ることを防止することができるように,通常時に使用する通常時始動圧力P2よりも所定の圧力高く,且つモータ駆動型圧縮機11の全負荷運転復帰圧力PL以下の圧力である故障時始動圧力P2’(P2<P2’≦PL)を予め設定し,モータ駆動型圧縮機11に設けた容量制御装置12からの故障信号を制御装置30が受信すると,補助供給系20の始動圧力を通常時に使用する通常始動圧力P2から故障時始動圧力P2’に切換え,通常よりも早く補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21を始動させる構成を採用し,これにより,集合タンク53内の圧力が空圧機器60の最低作動圧力P1以下に低下することを防止できるようにすることが好ましい。
なお,前記故障信号受信時における故障時始動圧力P2’は,これを所定圧力(一定値の圧力)とすることもできるが,この構成に代えてP2<P2’≦PLの範囲内において始動圧力P2’を可変とし,故障またはユーザの停止指令により停止するモータ駆動型圧縮機11の台数(供給可能な圧縮空気量)と空圧機器60の消費する圧縮空気量の増減によって変化する集合タンク53内の圧力降下速度を圧力検知手段Ps2の検知圧力により監視し,圧力降下速度が速い場合は故障時始動圧力P2’をPLに近く,遅い場合には通常時に使用する始動圧力P2に近くなるようシフトさせるものとしても良い。
〔使用例4:デマンドコントローラと組み合わせた使用例〕
本発明の圧縮空気供給システム1を,既知のデマンドコントローラと組み合わせた使用例を図5に示す。
デマンドコントローラは,一定時間における商用電源の使用電力量を検出し,所定の使用電力量を超える,または一定時間後の使用積算電力量が所定のレベルを超えることが予想されると警報信号を出力するもので,本使用例では,この警報信号の出力時,主供給系10にあるモータ駆動型圧縮機を無負荷運転に移行し又は停止させることにより,使用する電力量が契約電力量を超過することを防止できるようにしている。
デマンドコントローラが出力する前述の警報信号は,これをそのまま停止信号として使用してモータ駆動型圧縮機11を停止させるように構成しても良く,又は,デマンドコントローラが出力した警報信号を受信して警報表示を行う警報表示装置を設ける等して警報信号の出力をオペレータが把握できるようにし,警報表示装置等に表示された警報に基づいてオペレータが手動操作によってモータ駆動型圧縮機を停止するように構成しても良い。
このようにして,前記デマンドコントローラが警報信号を出力したことを契機として主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11が無負荷運転に移行し又は停止すると,空圧機器60による圧縮空気の消費によって集合タンク53内の圧力が低下し,集合タンク53に設けた圧力検知手段Ps2による検知圧力が補助供給系20の始動圧力P2(又はP2’)以下となると,制御装置30は,補助供給系20に始動信号を出力して,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21が始動して,圧縮空気の供給を開始する。
その結果,使用する電力量が契約電力量を超過する前に主供給系10による消費電力が減少,あるいは電力の消費が停止する一方,補助供給系20からの圧縮空気の供給が開始される結果,集合タンク53内の圧力が空圧機器の最低作動圧力P1まで低下することが防止され,空圧機器60の継続運転が確保される。
しかも,既知のデマンドコントローラから警報信号が出力され,主供給系10に設けたモータ駆動型圧縮機11が無負荷運転又は停止して圧縮空気の供給量が減少または停止した場合であっても,集合タンク53内の圧力が補助供給系20の始動圧力P2以下に低下しなければ制御装置30は始動信号を出力しないため,補助供給系20に設けたエンジン駆動型圧縮機21を無駄に始動することがない。