<実施の形態1>
(全体構成)
図1はこの発明の実施の形態1である受信装置の全体構成を示すブロック図である。本実施の形態においては、分散パイロットを用いたマルチキャリアの1つであるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)ブロック伝送通信の受信装置を説明する。
実施の形態1における受信装置は、アンテナ1、アナログ部2、AD変換部3、時間領域処理部4、FFT(Fast Fourier Transform)部5、周波数領域処理部6及び誤り訂正復号部7より構成される。
アンテナ1は、複数のシンボルからなるフレームごとにパイロット信号が周期的に配置されたマルチキャリア信号を受信し、アンテナ1で受信されたRF(Radio Frequency)信号S11はアナログ部2によってベースバンドアナログ信号S21に変換される。
AD変換部3は入力されたベースバンドアナログ信号S21をベースバンドデジタル信号S31に変換する。時間領域処理部4はベースバンドデジタル信号S31からGI(Guard Interval)を除去してGI除去時間信号S41を得る。FFT部5は時間領域処理部4から出力されたGI除去時間信号S41を変換して、周波数領域を規定した周波数信号S51を得る。
周波数領域処理部6は、周波数信号S51に対して伝送路推定処理及び等化処理を実行して復調軟判定ビット系列S61を生成する。誤り訂正復号部7は復調軟判定ビット系列S61に対して誤り訂正処理を実行して復号ビット系列S71を生成する。実施の形態1は図1で示した周波数領域処理部6に関し、以下に詳述する特徴的な動作を備えている。
(周波数領域処理部)
図2は図1で示した周波数領域処理部6の内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、周波数領域処理部6は、パイロット分離部10、レプリカ乗算部11、レプリカ生成部12、データ保持部13、パイロット伝送路保持部14、伝送路等化部15、伝送路推定部16、重み付けテーブル部17、パイロット伝送路推定部18、推定誤差計算部19、推定誤差平均部20、推定誤差比較部21、及びデマッピング部22から構成されている。
パイロット分離部10は周波数信号S51を入力信号として受け、周波数信号S51から受信データ信号(成分)S102、パイロット・データ位置情報S103、及びパイロット(シンボル)信号(成分)S104に分離して出力する。
本実施の形態の周波数領域処理部6は、1フレームをさらに複数ブロックに細分化し、フロック単位に伝送路推定処理を行うことを特徴としている。したがって、受信データ信号S102は、1フレーム分の周波数信号S51に対し、複数の実分割データの一つとしてブロック単位に、データ保持部13に向けて順次出力される。同様に、パイロット信号S104は、1フレーム分の周波数信号S51に対し、複数の分割パイロット信号の一つとしてブロック単位にレプリカ乗算部11に順次出力され、パイロット・データ位置情報S103は、1フレーム分の周波数信号S51に対し、複数の分割パイロット位置情報の一つとしてブロック単位に重み付けテーブル部17及び推定誤差平均部20に向けて順次出力される。
したがって、パイロット分離部10は、周波数信号S51におけるフレームを複数のブロックに分割して複数の分割データ(受信データ信号S102、パイロット・データ位置情報S103及びパイロット信号S104)を得る分割データ生成部として機能する。
レプリカ生成部12は、ブロック単位のパイロットシンボルのレプリカ信号(成分)S121を生成し、レプリカ乗算部11はパイロット信号S104とレプリカ信号S121とを乗算し、パイロット伝送路利得S111をパイロット伝送路保持部14に出力する。
データ保持部13では、ブロック単位に得られる受信データ信号S102を少なくとも2ブロック分蓄積し、保持データ信号(成分)S131として一定のタイミングで出力する。すなわち、保持データ信号S131は、受信データ信号S102と同様、分割実データに相当する。
以下では、複数のブロックのうち「伝送路推定処理対象のブロック」を単に「対象ブロック」と称する場合がある。
パイロット伝送路保持部14は、ブロック単位で得られるパイロット伝送路利得S111を少なくとも2ブロック分保持し、保持パイロット伝送路利得S141として一定のタイミングで出力する。なお、データ保持部13及びパイロット伝送路保持部14における一定のタイミングとは、伝送路推定部16が対象ブロックに対応した伝送路推定値信号S161を伝送路等化部15に出力する際、データ保持部13が伝送路等化部15に同じ対象ブロックに対応した保持データ信号S131を出力するタイミングを意味する。
伝送路等化部15は対象ブロックにおける保持データ信号S131に対して伝送路推定値信号S161の指示する伝送路推定値を用いて等化処理を実施し、等化後データS151を出力する。
デマッピング部22は、対象ブロックにおける等化後データS151に対して、デマッピングし対象ブロックにおける復調軟判定ビット系列S61を出力する。
伝送路推定部16は保持パイロット伝送路利得S141に対し、選択伝送路推定テーブル情報S171が指示する選択伝送路推定テーブルを用いて伝送路推定処理を実行して対象ブロックにおける伝送路推定値を得、該伝送路推定値を指示する伝送路推定値信号S161を得る。この伝送路推定値信号S161が伝送路等化部15に出力される。
重み付けテーブル部17はP(≧2)通り(複数種)の伝送路推定テーブル候補を予め保持しており、パイロット・データ位置情報S103に基づき逐次動作するタイミングを確認しつつ、テーブル比較結果S211に基づき、P通りの伝送路推定テーブル候補のうち選択した候補を、対象ブロックにおける選択伝送路推定テーブルとして決定し、当該選択伝送路推定テーブルの内容を指示する選択伝送路推定テーブル情報S171を伝送路推定部16に出力する。なお、重み付けテーブル部17はパイロット・データ位置情報S103に基づき、ブロック位置を正確に認識することができる。
重み付けテーブル部17は、上述したテーブル比較結果S211を得るため、選択伝送路推定テーブル情報S171の出力に先がけて、P通りの伝送路推定テーブル候補を指示するパイロット伝送路推定テーブル情報S172をパイロット伝送路推定部18に出力する。
パイロット伝送路推定部18は、対象ブロックにおける保持パイロット伝送路利得S141及びパイロット伝送路推定テーブル情報S172で指示されるP通りの伝送路推定テーブル候補を用いて、P個のパイロット伝送路推定値を算出して、その算出結果をパイロット伝送路推定値情報S181として出力する。
推定誤差計算部19は対象ブロックにおける保持パイロット伝送路利得S141(真のパイロット伝送路利得)とパイロット伝送路推定値情報S181で指示されるP個のパイロット伝送路推定値との比較結果に基づき、対象ブロックにおけるP通りの伝送路推定テーブル候補に対応するP個の伝送路推定誤差値を計算し、P個の伝送路推定誤差値を指示する伝送路推定誤差データS191を推定誤差平均部20に出力する。
推定誤差平均部20は、P個の伝送路推定誤差値それぞれに関し、パイロット・データ位置情報S103から逐次動作するタイミングを確認しつつ、伝送路推定誤差データS191により指示される伝送路推定誤差値と、対象ブロックより少なくとも一つ時間的に前に、推定誤差計算部19から入力済みのX(≧1)個の過去ブロックの伝送路推定誤差値を保持しており、対象ブロックの伝送路推定誤差値とX個の過去ブロックの伝送路推定誤差値とを算出対象としている。
そして、推定誤差平均部20は、P個の伝送路推定誤差値それぞれに関し、対象ブロックの伝送路推定誤差値とX個の過去ブロックの伝送路推定誤差値とを算出対象として平均化算出処理を実行し、伝送路推定誤差量の指数移動平均値を、誤差算出値として求める。推定誤差平均部20は、上記平均化算出処理をP個の伝送路推定誤差値それぞれに対して実行することにより、P通りの伝送路推定テーブル候補に対応するP個の誤差算出値を得ることができ、P個の誤差算出値を指示する平均推定誤差データS201を推定誤差比較部21に出力する。
推定誤差比較部21は、P通り伝送路推定テーブル候補から、平均推定誤差データS201で指示されたP個の誤差算出値のうち、最も小さい値を有する誤差算出値に対応する伝送路推定テーブル候補を選択伝送路推定テーブルとして決定し、決定した選択伝送路推定テーブルを指示する情報(例えば、伝送路推定テーブル候補の識別番号)をテーブル比較結果S211として重み付けテーブル部17に出力する。
その結果、重み付けテーブル部17は上述したように、テーブル比較結果S211に基づき、P通りの伝送路推定テーブル候補のうちから選択した候補を選択伝送路推定テーブルとし、当該選択伝送路推定テーブルの内容を指示する選択伝送路推定テーブル情報S171を伝送路推定部16に出力することができる。
このように、レプリカ乗算部11、パイロット伝送路保持部14、重み付けテーブル部17、パイロット伝送路推定部18、推定誤差計算部19、推定誤差平均部20及び推定誤差比較部21は、複数の分割データ(受信データ信号S102、パイロット・データ位置情報S103及びパイロット信号S104)それぞれに対し、P通りの伝送路推定テーブル候補のうち、最適と判断する候補を選択伝送路推定デーブルとして選択する伝送路推定テーブル選択部として機能する。
図3は受信信号の1フレーム内におけるブロック分割内容の一例を示す説明図である。図3では、28個のOFDMシンボル、15個のサブキャリアで1個のOFDMフレームが構成される場合のブロック分割内容を示している。本実施の形態では、この1単位のOFDMフレームを7個のブロックB0〜B6に分割している。
ブロックB0〜B6それぞれに8個のパイロット成分(信号)が含まれ、時間軸方向に沿って4シンボル単位に均等に7分割されている。
なお、複数のブロックの分割内容は、図3に示した構成に限らず、分割内容を任意に設定可能である。ただし、ブロック内の伝送路推定に使用する必要パイロット数がU個の場合、パイロット伝送路推定用のブロック(複数ブロックの場合有り)内に少なくとも(U個+1)以上のパイロット信号を存在させる必要がある。「+1」としている理由は伝送路推定対象のパイロット信号の位置の伝送路利得はパイロット信号の位置の伝送路推定には使用しないからである。
伝送路推定部16及びパイロット伝送路推定部18は、フレームをさらに細かく分割したブロック単位でパイロット(信号)の伝送路利得を使用して伝送路推定値をブロック単位に逐次的に計算する。
以下、伝送路推定テーブル(候補)および伝送路推定方法について説明する。まず、サブキャリア番号をK、シンボル番号をLとする。
A:伝送路推定に使用するパイロットシンボルの座標(K,L)(K,Lはパイロットシンボルが挿入されている場所のいずれかの座標)
B:伝送路推定に使用する上記Aのパイロットシンボルの重み(Aに対応するパイロットシンボルの重み)
上記Aの選択方法、および上記Bの算出方法は、以下のように行われる。
<Aの選択方法>
サブキャリア方向、OFDMシンボル方向の2次元平面上で、伝送路を推定したい(k,l)成分に最も「近い」パイロット信号(成分)から順番に、所定数(M個)のパイロット信号を選択する。ここで言う「近い」とは、パイロットシンボルの座標を(K,L)、シンボルレート正規化ドップラ周波数fd、シンボル周期正規化マルチパス最大遅延時間dsとした場合に、以下の式(1)で示される距離dが小さいことを指す。
ドップラ周波数fdが小さいほど時間(シンボル)方向の相関が大きく、最大遅延時間dsが小さいほど周波数(サブキャリア)方向の相関が大きい。式(1) に従って使用するパイロット信号を選択するということは、(k,l)成分の伝送路推定値をより精度良く推定するために、(k,l)成分と相関の大きいパイロット信号を選択するということを意味する。
<Bの算出方法>
(k,l)成分の推定に用いるM個(ここでは例として4個とする)のパイロット信号に対する最適な重み付け係数ベクトルw(k,l)は、使用する4個のパイロットシンボル同士の自己相関行列Φ、および推定を行う(k,l)成分と4個のパイロット信号の相互相関ベクトルθ(k,l)により次の式(2)で表される。なお、「T」は転置を示す。
ここで、伝送路を広義定常であると仮定すると、伝送路推定値を求めたい(k,l)成分と、<Aの選択方法>で式(1)に従って選択されたパイロット信号(Km,Lm)(0≦m≦3)との相互相関値θ(k-Km,l-Lm)、及び(Km,Lm)とそれ自身を含む4個のパイロット信号(Km',Lm')(0≦m'≦3)との相関ベクトルΦ(Km-Km',Lm-Lm')は、信号対雑音電力比snを用いて以下の式(3)及び式(4)のように表される。また、使用する全パイロット信号同士の相関行列Φは、Φ(Km-Km',Lm-Lm')を用いて以下の式(5)のように表される。
ここで、式(1),式(3)〜式(5)に着目すると、d,θ,Φともに、算出に必要な値は、伝送路推定値を求めたい(k,l)成分と使用するパイロット信号の位置関係、および伝送路パラメータのみに依存し、受信した信号には依存しない。また、(k,l)成分とその伝送路推定で使用するパイロット信号の位置関係はフレーム内のパイロット信号の座標配置を決定すれば、式(1) より伝送路パラメータのみに依存して定まるため、伝送路パラメータのみを決定すれば式(3)の重み付け係数ベクトルw(k,l)は一意に定まる。
複数の伝送路パラメータ(fd,ds,sn)をあらかじめ決定しておき、これらの伝送路パラメータに対して複数の重み付け係数ベクトルw(k,l)が求まる。各座標(k,l)におけるw(k,l)をあらかじめ計算しておき、計算結果を伝送路推定テーブル候補として保持して伝送路推定を実施する。
伝送路推定方法として、入力されたパイロット信号および伝送路推定テーブルの値に基づいて、1ブロック内の(k,l)成分(データシンボルが配置されている成分)それぞれについての伝送路推定値を算出する。具体的な方法として、まず、テーブル値を確認し、処理対象としている(k,l)成分の伝送路推定値の算出に使用する。4個のパイロット信号を使用して、伝送路推定を実施する場合、4個のパイロット伝送路利得を把握し、次に、これら4個のパイロット伝送路利得と対応する4つの重み付け係数ベクトルとを積和演算し、得られた演算結果を、(k,l)成分(処理対象としている成分)の伝送路推定値とする。以上が本実施の形態で用いる伝送路推定テーブルおよび伝送路推定方法の説明である。
図4及び図5は実施の形態1における周波数領域処理部6が行う伝送路推定処理の処理手順を示すフローチャートである。以下、これらの図を参照して、実施の形態1の伝送路推定処理の処理手順を説明する。
なお、ここでは、重み付けテーブル部17がP通りの伝送路推定テーブル候補を保持し、1OFDMフレームをQ個に分割しているとする。
まず、ステップST1において、パイロット伝送路保持部14はT番目(T:初期値0、0≦T<Q)のブロックB(T)の保持パイロット伝送路利得S141をパイロット伝送路推定部18に出力する。
次に、ステップST2において、パイロット伝送路保持部14は、Tの値を1増やし(T=T+1)、T番目のブロックB(T)の保持パイロット伝送路利得S141をパイロット伝送路推定部18に出力する。
一方、ステップST3において、重み付けテーブル部17はP通りの伝送路推定テーブル候補のうち、R番目(R:初期値0、0≦R<P)の伝送路推定テーブル候補をパイロット伝送路推定部18に出力する。
次に、ステップST4において、パイロット伝送路推定部18は、(T−1)番目のブロックB(T−1)内の各パイロットの伝送路推定値を、ブロックB(T−1)及びブロックB(T)内のパイロット成分(信号)の伝送路利得及びR番目の伝送路推定のテーブル候補を用いて算出する。ここでは、ブロックB(T−1)が伝送路推定処理対象の対象ブロックとなる。
具体的な方法として、U個(パイロット伝送路推定に必要な個数、例えば、図3の構成ではUの最大値は16となる)のパイロット伝送路利得を用いて、パイロット信号(k,l)の伝送路推定処理を実施する場合、ブロックB(T−1)内のパイロット信号(k,l)自身を除く、U個のパイロットの伝送路利得と対応する伝送路推定テーブル候補の重み付け係数ベクトルとを積和演算する。積和演算により得られた結果がR番目の伝送路推定テーブル候補を用いた、パイロット成分(k,l)に対応するパイロット伝送路推定値になる。ブロックB(T−1)内の他のパイロット成分に対して、同じ方法で、伝送路推定値を算出する。ここでは例として、2個のブロック(B(T−1)及びB(T))内のパイロット信号を用いたパイロット伝送路推定処理の説明をしたが、(T−2)番目、(T−1)番目、及びT番目のブロックB(T−2)、B(T−1)及びB(T)を使用するように3個以上のブロック内のパイロット信号を使用することもできる。
このように、パイロット伝送路推定部18は、ブロックB(T−1)内の各パイロットの伝送路推定値を得る際、2つのブロックB(T−1)及びB(T)内のパイロット信号の伝送路利得を利用することにより、1つのブロックを利用する場合に比べ、利用するパイロット信号のバリエーションが増す分、伝送路推定精度の向上が期待できる。
そして、ステップST5において、推定誤差計算部19は、パイロット伝送路推定部18で算出したブロックB(T−1)内の各パイロット信号(k,l)におけるパイロット伝送路推定値と真の値である既知信号成分(保持パイロット伝送路利得S141)との差の総和を計算して、R番目の伝送路推定テーブル候補における伝送路推定誤差値を得る。
その後、ステップST6において、「T=1」の有無がチェックされ、Yesの場合はステップST7に移行し、Noの場合はステップST8に移行する。
ステップST6でYesの場合に実行されるステップST7において、ブロックB(T−1)より時間的に前に位置する過去ブロックは存在しないため、ステップST9で平均化算出処理を実施することなく、ステップST9に移行する。この場合、対象ブロックの誤算算出値としてステップST5で求めた伝送路推定誤差値がそのまま採用されることになる。
ステップST6でNoの場合に実行されるステップST8において、推定誤差平均部20は、ブロックB(T−1)より前のブロックB(T−g(g≧2))で算出したX(X≧1)個の過去ブロックにおける伝送路推定誤差値を伝送路推定テーブル候補のP通り分保持しており、R番目の伝送路推定テーブル候補におけるX個の過去ブロックの伝送路推定誤差値とブロックB(T−1)の伝送路推定誤差値とを算出対象として平均化算出処理を実行する。
具体的には、R番目の伝送路推定テーブル候補に関し、平滑化係数αを設定し、ブロックB(T−1)の伝送路推定誤差とブロックB(T−1)より前のX個の過去ブロック(Xブロック分)の伝送路推定誤差との指数移動平均を計算する平均化算出処理を実行して、誤差算出値を得る。また、ここでは、平均化算出処理の例として、伝送路推定誤差値の指数移動平均を求める算出処理を示したが、ブロックB(T−1)の伝送路推定誤差値とブロックB(T−1)より前のX個の過去ブロックで算出した伝送路推定誤差値とにより、単純移動平均、加重移動平均、三角移動平均、あるいは累積移動平均を求める算出処理を採用しても良い。
その後、ステップST9において、「P−1=R」、すなわち、P通りの伝送路推定テーブル候補のすべてのステップST3〜ST8の処理の実行の有/無(Yes/No)がチェックされ、Yesの場合、ステップST11に移行する。
一方、ステップST9でNo、すなわち、ステップST3〜ST8の処理が実行されていない伝送路推定テーブル候補が存在する場合、ステップST10において、「R=R+1」の処理を行った後、ステップST3に戻る。以降、ステップST9でYesとされるまで、ステップST3〜ST10の処理が繰り返される。
このように、ステップST3〜ST10の処理を実行して、P個すべての伝送路推定テーブル候補に対して、パイロット伝送路保持部14、重み付けテーブル部17、パイロット伝送路推定部18、推定誤差計算部19、及び推定誤差平均部20において、同様の方法を繰り返し、対象ブロックであるブロックB(T−1)の誤差算出値が算出される。
ステップST9でYesの場合に実行されるステップST11において、推定誤差比較部21は、P通りの伝送路推定テーブル候補に対応して算出したP個の誤差算出値の中で最も値が小さい誤差算出値に対応する伝送路推定テーブル候補を選択伝送路推定テーブルとし、当該選択伝送路推定テーブルを指示するテーブル比較結果S211を重み付けテーブル部17に出力する。
その結果、重み付けテーブル部17は保持するP通りの伝送路推定テーブル候補のうち、テーブル比較結果S211が指示する伝送路推定テーブル候補を選択伝送路推定テーブルとし、選択伝送路推定テーブルの内容を指示する選択伝送路推定テーブル情報S171を伝送路推定部16に出力する。
その後、ステップST12において、伝送路推定部16は、ブロックB(T−1)における分割実データである保持データ信号S131に関する伝送路推定処理を実施する。すなわち、保持パイロット伝送路利得S141が指示するブロックB(T−1)及びB(T)内のU個の保持パイロット伝送路利得と、選択伝送路推定テーブル情報S171で指示された選択伝送路推定テーブル(値)を用いて、対象ブロックであるブロックB(T−1)の保持データ信号S131の伝送路推定値を算出する。すなわち、U個のパイロット伝送路利得と対応する選択伝送路推定テーブルの重み付け係数ベクトルとを積和演算し、得られた結果がデータ成分の伝送路推定値になり、この伝送路推定値を規定した伝送路推定値信号S161を伝送路等化部15に出力する。
ここでは例として、2個のブロック(B(T−1)及びB(T))内で伝送路推定処理を行う場合の説明をしたが、(T−2)、(T−1)番目、T番目のブロックを使用するように3個以上のブロック内のパイロット成分を使用することもできる。また、1つのブロック内に(U+1)個のパイロット成分が存在する場合、1個のブロックのみを用いて伝送路推定処理を行ってもよい。
ステップST13において、伝送路等化部15は、伝送路推定値信号S161で指示されるデータ成分の伝送路推定値を用いて、保持データ信号S131が指示するブロックB(T−1)のデータ成分(k,l)を等化する。
次に、ステップST14において、「Q−1=T」、すなわち、Q個のブロックすべてにおけるステップST3〜ST13の処理の終了の有/無(Yes/No)がチェックされ、Yesの場合はステップST16に以降する。
ステップST14でNoの場合は、ステップST15で「T=T+1」、「R=0」及び伝送路推定値信号S161をクリアする処理を行った後、ステップST3に戻る。以降、ステップST14でYesとされるまで、ステップST3〜ST15の処理が繰り返される。
ステップST14でYesの場合に実行されるステップST16において、伝送路推定部16は、選択伝送路推定テーブル情報S171と保持パイロット伝送路利得S141とに基づき、対象ブロックであるブロックBTの保持データ信号S131(分割実データ)に対する伝送路推定値を算出する。
そして、ステップST17において、伝送路等化部15は、伝送路推定値信号S161指示されるデータ成分の伝送路推定値を用いて、保持データ信号S131が指示するブロックBTのデータ成分(k,l)を等化する。
このように、1フレームがQ分割されたブロックごとに逐次的に、パイロット伝送路保持部14、伝送路推定部16、重み付けテーブル部17、パイロット伝送路推定部18、推定誤差計算部19、推定誤差平均部20、推定誤差比較部21において上述した処理を繰り返し、ブロック単位に等化を実施する。
実施の形態1により、フレームを分割したさらに小さいブロック単位で逐次処理を行うため、P通りの伝送路推定テーブル候補の情報量、データ保持部13及びパイロット伝送路保持部14が保持するべき、保持データ信号S131及び保持パイロット伝送路利得S141の必要蓄積量(伝送路推定処理に用いるブロック数分あれば良い)を削減することができる。例えば、図3のフレーム構成で、2ブロックを伝送路推定処理に用いた場合、では、蓄積量が2/7に削減でき、蓄積量が減る分、処理遅延の抑制も併せて図ることができる。また、伝送路推定テーブル候補もフレーム単位からブロック単位に変更する分、情報量が減少する。
このように、実施の形態1の受信装置の周波数領域処理部6における伝送路推定部16は、複数の分割実データ(ブロック数Q個の保持データ信号S131(受信データ信号S102))それぞれに対応して、重み付けテーブル部17より得られる選択伝送路推定テーブル情報S171により指示される選択伝送路推定テーブルを用いて、対応する保持データ信号S131における伝送路を推定して伝送路推定値信号S161を得る伝送路推定処理を実行している。
したがって、伝送路推定部16は、ブロック数Qの保持データ信号S131用の伝送路推定値信号S161を順次得るため、1フレーム単位で行う場合に比べ、伝送路推定処理に要するP通りの伝送路推定テーブル候補、保持データ信号S131、保持パイロット伝送路利得S141等のデータ蓄積量の低減化を図るとともに、処理遅延の抑制により処理速度の高速化を図ることができる。その結果、受信装置全体として省エネルギー化を達成することができる。
さらに、実施の形態1の受信装置における周波数領域処理部6は、1フレーム単位で行う場合に比べ、より細かいブロック単位で伝送路推定処理を行うことにより、伝送路環境の変化への追従性が高くなる効果を奏する。特に伝送路が高速に変化する環境下で上記効果は顕著となる。
さらに、上記伝送路推定テーブル選択部(構成部11、14、17〜21)は、推定誤差生成部、誤差算出部及び誤差比較・テーブル選択部に分類される。推定誤差生成部は、レプリカ乗算部11、パイロット伝送路保持部14、重み付けテーブル部17、パイロット伝送路推定部18及び推定誤差計算部19により構成され、誤差算出部は推定誤差平均部20より構成され、誤差比較・テーブル選択部は重み付けテーブル部17及び推定誤差比較部21により構成される。
上記した推定誤差生成部は、複数のパイロット信号S104(分割パイロット信号)のうち、伝送路推定処理の対象となるである対象ブロックにおいて、P通りの伝送路推定テーブル候補それぞれを用いて算出したパイロット伝送路推定値と保持パイロット伝送路利得S141(真のパイロット伝送利得)との比較結果に基づき複数の伝送路推定誤差値を得る。
上記した誤差算出部である推定誤差平均部20は、伝送路推定誤差データS191(P個(複数)の伝送路推定誤差値)を受け、平均化算出処理(誤差算出処理)を実行してP通りの伝送路推定テーブル候補に対応するP個の誤差算出値を算出する。
上記した誤差比較・テーブル選択部は、平均推定誤差データS201に指示されるP個の誤差算出値間を比較し、P通りの伝送路推定テーブル候補のうち、値が最も小さい誤差算出値に対応する伝送路推定テーブル候補を対象ブロック用の選択伝送路推定テーブルとして選択する。
そして、推定誤差平均部20は、P個の伝送路推定誤差値にそれぞれに関し、対象ブロックより時間的に前のブロックであるX(≧1)個の過去ブロックにおいて算出したXブロック分の伝送路推定誤差値と、対象ブロックの伝送路推定誤差値とを算出対象とした平均化算出処理(誤差算出処理)を実行してP個の誤差算出値を得ることを特徴としている。
このように、実施の形態1では、誤差算出部である推定誤差平均部20は上記特徴を有することにより、精度の高いP個の誤差算出値を得ることができ、伝送路推定部16による伝送路推定処理の信頼性を高めることができる。
<実施の形態2>
図6は、実施の形態2の受信装置における周波数領域処理部6Bの内部構成を示すブロック図である。なお、受信装置の全体構成は図1で示した実施の形態1の全体構成と同様であり、周波数領域処理部6が周波数領域処理部6Bに置き換わった点が異なる。
同図に示すように、実施の形態2の周波数領域処理部6Bは、パイロット分離部10、レプリカ乗算部11、レプリカ生成部12、データ保持部13、パイロット伝送路保持部14、伝送路等化部15、伝送路推定部16、重み付けテーブル部17、パイロット伝送路推定部18、推定誤差計算部19、推定誤差平均部20B、推定誤差比較部21、デマッピング部22、及び推定誤差判定部23から構成される。なお、図2と同一の構成要素については、図2と同一の符号を付して説明を適宜省略する。
実施の形態2の周波数領域処理部6Bにおける推定誤差判定部23は、P個の伝送路推定誤差値にそれぞれに関し、入力された伝送路推定誤差データS191が指示する伝送路推定誤差値と一定の閾値との比較により得られる判定結果を伝送路誤差判定データS231として推定誤差比較部21に出力する。具体的には、推定誤差判定部23は伝送路推定誤差データS191の指示する伝送路推定誤差値が閾値以下であれば「可」と判定し、閾値より大きければ「不可」と判定し、当該判定結果を指示する伝送路誤差判定データS231を出力する。
推定誤差平均部20Bは、P個の伝送路推定誤差値にそれぞれに関し、伝送路誤差判定データS231が「可」を指示する場合、実施の形態1と同様、伝送路推定誤差データS191に基づき、対象ブロックの伝送路推定誤差値と、保持しているX個の過去ブロックの伝送路推定誤差値とを算出対象として平均化算出処理を施して、算出結果として得られる誤差算出値を指示する平均推定誤差データS201を、推定誤差比較部21に出力する。
一方、推定誤差平均部20Bは、誤差判定結果S221が「不可」を指示する場合、伝送路推定誤差データS191は使用せず、すなわち、対象ブロックの伝送路推定誤差値を算出対象から外し、保持しているX個の過去ブロックの伝送路推定誤差値のみを算出対象として、必要に応じてX個の過去ブロックの伝送路推定誤差値内で平均化算出処理を実施して得られる誤差算出値を算出し、当該誤差算出値を指示する平均推定誤差データS201を推定誤差比較部21に出力する。
さらに、推定誤差平均部20Bは、伝送路誤差判定データS231が「不可」をY回(例えば、3回)以上連続して出力した後に、対象ブロックの誤差判定結果が「可」を指示した場合、X個の過去ブロックの伝送路推定誤差値を使用しない。すなわち、推定誤差平均部20Bは、平均化算出処理を実施せず、伝送路推定誤差データS191の指示する対象ブロックの伝送路推定誤差値をそのまま誤差算出値として指示する平均推定誤差データS201を推定誤差比較部21に出力する。
なお、上記の場合に、「Y<X」が成立する際、伝送路誤差判定データS231が「不可」と判定したY個のブロックのみ平均化算出処理の対象から外し、伝送路誤差判定データS231が「可」を判定した(X−Y)個のブロックと、対象ブロックとの伝送路推定誤差値とを平均化算出処理の算出対象とすることもできる。
このように、実施の形態2の受信装置は、実施の形態1と同様に、伝送路推定処理をブロック単位の逐次処理で実行するため、伝送路推定処理に要するデータ蓄積量の低減化及び処理遅延の抑制による省エネルギー化を図り、伝送路の変化にも追従することができる。
さらに、実施の形態2の周波数領域処理部6Bの推定誤差平均部20Bは、推定誤差判定部23からの伝送路誤差判定データS231が「不可」を指示し、対象ブロックの伝送路推定誤差値が閾値以上である場合、対象ブロックの伝送路推定誤差値を推定誤差平均部20Bの平均化算出処理の算出対象から除外している。このため、実施の形態2の受信装置は、対象ブロックの伝送路に突然の変化が生じても精度の高い誤差算出値を得ることにより、伝送路の変化により精度良く追従することができ、伝送路推定の信頼性をより高めることができる。
加えて、実施の形態2の周波数領域処理部6Bの推定誤差平均部20Bは、X個の過去ブロックの伝送路推定誤差値のうち、基準値以上で所定回連続する伝送路推定誤差値が存在する場合、X個の過去ブロックの伝送路推定誤差値を推定誤差平均部20Bの平均化算出処理の算出対象から除外している。このため、実施の形態2の受信装置は、過去のブロックの伝送路に突然の変化が生じていた場合の伝送路の変化により精度良く追従することができ、精度の高い誤差算出値を得ることにより、伝送路推定の信頼性をより高めることができる。
なお、上記効果は、X個の過去ブロックのうち、基準値以上となったY(X>Y)個のブロックの伝送路推定誤差値を算出対象から除外し、残りの(X−Y)個のブロックの伝送路推定誤差値を算出対象に含めることによっても達成することができる。
また、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。