〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について、図1〜図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。
(タッチパネルシステム1)
図1は、本実施形態のタッチパネルシステム1の概略的な構成を示す図である。タッチパネルシステム1は、タッチパネルコントローラ10およびタッチパネル100を備えている。タッチパネルコントローラ10は、タッチパネル100の動作を制御する制御部として機能する。タッチパネルコントローラ10の動作の詳細については、後述する。
なお、タッチパネルコントローラ10は、集積回路(例えばICチップ)として実装されてよい。この点は、後述のタッチパネルコントローラ20および30についても同様である。
(タッチパネル100)
タッチパネル100は、静電容量方式のタッチパネルである。図1に示されるように、タッチパネル100は、表示装置900の上に重ねて配置されている。なお、表示装置900は、後述する携帯電話機1000(電子機器)に設けられている(図11を参照)。
また、図1に示されるように、タッチパネル100は、表示装置900の筐体に支持されている。なお、タッチパネル100は、携帯電話機1000の筐体に支持されていてもよい。表示装置900の筐体は、携帯電話機1000の筐体と一体であってもよいし、別体であってもよい。
図2は、タッチパネル100の構成を示す配線図である。以下、図2を参照して、タッチパネル100の構成について説明する。タッチパネル100には、(i)垂直方向に沿って互いに平行に配置されたM本(Mは、M≧1を満たす整数)の駆動電極VL1〜VLMと、(ii)水平方向に沿って互いに平行に配置されたN本(Nは、N≧1を満たす整数)の検知電極HL1〜HLNとが、設けられている。
本実施形態では、駆動電極VL1〜VLMと平行な方向をX軸方向(第2方向)、検知電極HL1〜HLNと平行な方向をY軸方向(第1方向)と称する。本実施形態の場合には、X軸方向は垂直方向に一致し、Y軸方向は水平方向に一致する。
なお、図1には、簡単のために、i本目(iは、1≦i≦Mを満たす自然数)の駆動電極VLiと、j本目(jは、1≦j≦Nを満たす自然数)の検知電極HLjのみが図示されている。ここで、駆動電極VL1〜VLMは、ドライブラインと称されてもよい。また、検知電極HL1〜HLNは、センスラインと称されてもよい。
そして、図2に示されるように、検知電極HL1〜HLNと駆動電極VL1〜VLMとの各交点には、N×M個の静電容量C11〜CNMが発生する。ここで、検知電極HLjと駆動電極VLiとの交点に発生する静電容量は、Cjiとして表される。このように、タッチパネル100上において、複数の静電容量がマトリクス状に形成される。
なお、図2では、駆動電極VL1〜VLMと検知電極HL1〜HLNとが互いに垂直に交差している構成が例示されている。しかしながら、駆動電極VL1〜VLMと検知電極HL1〜HLNとは、必ずしも垂直に交差している必要はなく、互いに交差するように設けられていればよい。すなわち、上述の第1方向と第2方向とは、互いに異なる方向であればよい。
さらに、本実施形態のタッチパネル100では、M>Nの関係を満たすように、駆動電極VL1〜VLMと検知電極HL1〜HLNとが設けられている。換言すれば、X軸はタッチパネル100の短辺方向であり、Y軸はタッチパネル100の長辺方向である。すなわち、タッチパネル100のY軸方向の長さは、タッチパネル100のX軸方向の長さに比べて大きい。なお、図1では、M=20、N=16の構成が例示されている。
また、タッチパネル100は、表示装置900(または携帯電話機1000)の筐体をユーザが把持した時に、タッチパネル100のY軸方向に沿って、ユーザの持ち手の複数の指が配置されるように構成されている(上述の図13の(a)および(b)と同様の構成)。
(タッチパネルコントローラ10)
タッチパネルコントローラ10は、駆動部11、検知信号処理部12、座標検知部13、動作制御部14、近接検知設定部15、およびメモリ16を備えている。
そして、検知信号処理部12は、静電容量推定部12aおよびモード切替部12bを備えている。また、近接検知設定部15は、検知対象除外部15a(検知対象設定部)および駆動グループ設定部15b(グループ設定部)を備えている。
はじめに、近接検知設定部15以外の各部材について説明する。なお、後述するように、近接検知設定部15は、タッチパネルシステム1における対象物の近接検知を好適に行うために設けられた部材である。
駆動部11は、駆動信号としての電圧を生成する。駆動部11は、適当な符号系列に基づいて、駆動信号を生成してよい。なお、後述するように、駆動部11において生成される符号系列の相関の高低は、モード切替部12bからの指令に基づいて切り替えられる。
そして、駆動部11は、生成した駆動信号を、駆動電極VL1〜VLMに与える。駆動電極VL1〜VLMに駆動信号が与えられることにより、タッチパネル100上において、複数の静電容量がマトリクス状に形成される。
接触検知が行われる場合には、駆動部11は、駆動電極VL1〜VLMを並列駆動する。すなわち、駆動部11は、駆動電極VL1〜VLMに同時に駆動信号を与える。なお、接触検知が行われる場合における、駆動部11の動作については、後述する。
静電容量推定部12aは、検知電極HL1〜HLNから検知信号を読み出す。検知信号は、タッチパネル100上に形成された複数の静電容量の線形和として表される電圧信号である。
続いて、静電容量推定部12aは、検知信号に適当な演算(例えば内積演算)を施すことにより、各静電容量の値を算出(推定)する。静電容量推定部12aは、算出した各静電容量の値を、モード切替部12bおよび座標検知部13に与える。
モード切替部12bは、静電容量推定部12aにおいて算出された各静電容量の値を用いて、タッチパネル100の表面と対象物との間の距離(検知距離)が、所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。
ここで、「所定の閾値」は、「タッチ入力がタッチパネル100の表面に接触している、または接触していないが距離が十分小さい場合」と、「タッチ入力がタッチパネル100の表面から離れている場合」とを判別するために設定される閾値である。
換言すれば、モード切替部12bは、(i)対象物がタッチパネル100に近接しているか否かを判定する機能と、(ii)対象物がタッチパネル100に接触しているか否かを判定する機能との、2つの機能を有していると理解されてもよい。
モード切替部12bは、検知距離が所定の閾値よりも大きいか否かの判定結果によって、駆動部11が生成する符号系列の相関の高低を切り替える制御を行う。
より具体的には、モード切替部12bは、検知距離が所定の閾値以下の場合に、互いに相関の低い低相関符号系列を、符号系列として駆動部11に生成させる。低相関符号系列は、対象物の接触位置を検知する場合に好適な符号系列である。
他方、モード切替部12bは、検知距離が所定の閾値よりも大きい場合に、低相関符号系列と比較して互いの相関が高い高相関符号系列を、符号系列として駆動部11に生成させる。高相関符号系列は、対象物の近接位置を検知する場合に好適な符号系列である。
なお、低相関符号系列の例としては、M符号系列、アダマール符号系列、またはウォルシュ符号系列等を挙げることができる。また、高相関符号系列は、全ての駆動電極VL1〜VLMに対して同一の符号系列を適用することにより、実現されてよい。
このように、モード切替部12bは、タッチパネルシステム1における対象物の検知モードを、接触検知モードと近接検知モードとのいずれかに切り替える役割を果たす。なお、後述するように、モード切替部12bは、通常はタッチパネルシステム1を近接検知モードによって動作させる。
また、モード切替部12bは、検知距離が所定の閾値よりも大きい場合に、近接検知設定部15を動作させてよい。すなわち、近接検知設定部15の検知対象除外部15aおよび駆動グループ設定部15bは、近接検知モードのみにおいて動作してよい。
座標検知部13は、静電容量推定部12aにおいて算出された各静電容量の値を取得し、当該静電容量値のマッピング(分布)を生成する。そして、座標検知部13は、静電容量値のマッピングに基づいて、対象物の座標を検知する。
より具体的には、接触検知が行われる場合には、座標検知部13は、駆動電極VL1〜VLMの並列駆動のタイミングと、静電容量値のマッピングとに基づいて、対象物の座標を検知する。
なお、座標検知部13は、モード切替部12bにおける対象物の近接または接触の検知結果をトリガとして、動作してよい。例えば、座標検知部13は、モード切替部12bにおいて対象物の近接または接触が検知された場合に、動作を開始するように構成されてよい。
動作制御部14は、座標検知部13における検知結果に応じて、タッチパネルシステム1およびその周辺機器の動作を制御する。
一例として、動作制御部14は、座標検知部13において一定時間に亘って対象物の近接または接触が検知されなかった場合に、駆動部11、検知信号処理部12、および座標検知部13の動作を停止させ、かつ、タッチパネル100(または表示装置900)のバックライトを消灯する。
すなわち、動作制御部14は、タッチパネルシステム1を、通常の動作モードに比べて消費電力が低減される省電力モード(省エネモード)によって動作させる機能を有する。省電力モードは、タッチパネルコントローラおよびタッチパネル100の通常の動作時に比べて、消費電力が少ない動作モードであると理解されてもよい。
省電力モードでは、タッチパネル100のバックライトが消灯されるとともに、タッチパネル100に対する入力操作も無効化される。これにより、例えばユーザが携帯電話機1000を長時間に亘って使用していない場合に、携帯電話機1000の消費電力が低減される。また、例えばユーザが携帯電話機1000を使用して通話する場合に、タッチパネル100に対するユーザの誤入力が防止される。
また、動作制御部14は、座標検知部13において検知された対象物の近接位置の数が、あらかじめ設定された所定の数以上(例えば、2つ以上)であるか否かを判定してもよい。そして、動作制御部14は、対象物の近接位置の数が、所定の数以上である場合に、タッチパネルシステム1を省電力モードによって動作させてもよい。
なお、所定の数は特に限定されないが、2以上(複数)とすることが好ましい。例えば、携帯電話機1000を使用するユーザが、通話時に耳をタッチパネル100に近接させた場合には、座標検知部13において複数の近接位置が検知され得るためである。
このように、携帯電話機1000を使用するユーザが、タッチパネル100に体の一部を接近させたまま、タッチパネル100への入力操作を要しない特定の動作を行う場合には、タッチパネルシステム1を省電力モードによって動作させることが好ましい。
また、メモリ16は、検知信号処理部12および座標検知部13において算出された各種のデータを格納するための記憶部である。
ここで、本実施形態のタッチパネルコントローラ10では、近接検知設定部15を設けることにより、近接検知を行う場合の誤検知をより確実に防止することが可能となる。以下、近接検知設定部15の検知対象除外部15aおよび駆動グループ設定部15bについて説明する。
(検知対象除外部15a)
検知対象除外部15aは、検知電極HL1〜HLNのうち、タッチパネル100のX軸方向の両端付近に位置する検知電極を、静電容量推定部12aが検知信号を読み出す対象とする検知電極から除外する。
換言すれば、検知対象除外部15aは、検知電極HL1〜HLNのうち、(i)静電容量推定部12aが検知信号を読み出さない対象(検知対象外)とする検知電極と、(ii)静電容量推定部12aが検知信号を読み出す対象(検知対象)とする検知電極とを設定するものと理解されてもよい。
例えば、検知対象除外部15aは、2本の検知電極HL1およびHLNを検知対象外として設定し、(N−1)本の検知電極HL2〜HL(N−1)を検知対象として設定する。なお、検知対象外と設定された検知電極は、検知対象から除外された検知電極と表現されてもよい。
検知対象除外部15aは、タッチパネルコントローラ10とタッチパネル100との間における検知電極HL1〜HLNの接続関係を変更可能なスイッチング回路として実装されてよい。
なお、本実施形態において、検知対象除外部15aは、タッチパネル100のX軸方向の両端付近に、ユーザの持ち手の指が配置される状況(上述の図13(a)および(b)と同様の状況)に対処するために設けられていると理解されてよい。
検知対象除外部15aによれば、タッチパネル100のX軸方向の検知結果から、タッチパネル100のX軸方向の両端付近に存在するユーザの持ち手の指に起因する検知信号を除外することができる。
ここで、本実施形態のタッチパネルシステム1を電子機器に適用する場合には、タッチパネル100の中央付近の近接を適切に検知できることが重要となることに留意されたい。例えば、携帯電話機1000を使用するユーザが通話を行う場合には、タッチパネル100の中央付近に近ユーザの耳が近接することが想定されるためである。
このように、近接検知を行う場合には、タッチパネル100の中央付近における対象物の近接を適切に検知することが望まれる。他方、タッチパネル100のX軸方向の両端付近における対象物の近接を適切に検知する必要性は、比較的低いと言える。このため、タッチパネル100のX軸方向の両端付近に位置する検知電極を、検知対象外として設定しても、近接検知における不都合は少ない。
なお、検知対象除外部15aにおいて、検知対象外として設定される検知電極の数および範囲は、タッチパネルシステム1を搭載する電子機器のサイズ等を考慮して、タッチパネルシステム1の設計者によって適宜決定されてよい。
すなわち、電子機器を把持して使用するユーザの持ち手の指が配置されると想定されるタッチパネル100のX軸方向の両端付近の位置において、当該指の影響が好適に排除されるように、検知対象外とすべき検知電極の数および範囲が決定されればよい。
つまり、検知対象除外部15aは、ユーザの持ち手の指と交差する範囲に存在している検知電極を、検知対象から除外するように機能すればよい。
このように、検知対象除外部15aが設けられることにより、対象物の近接検知を行う場合に、当該対象物のX軸方向の座標を好適に検知することが可能となる。
(駆動グループ設定部15b)
駆動グループ設定部15bは、駆動電極VL1〜VLMを少なくとも2つ以上の複数のグループに分ける。そして、駆動グループ設定部15bは、当該グループ分けに基づいて、駆動部11の動作を制御する。
具体的には、駆動部11は、駆動グループ設定部15bの指令を受けて、各グループの駆動電極に、時分割的に駆動信号を順次に与える。これにより、当該対象物のY軸方向の座標を好適に検知することが可能となる。すなわち、駆動グループ設定部15bは、Y軸方向の近接位置を好適に検知するために設けられた部材とあると理解されてよい。
なお、本実施形態では、駆動グループ設定部15bと駆動部11とが別体として設けられている構成が例示されているが、駆動グループ設定部15bと駆動部11とは、一体として設けられてもよい。すなわち、駆動グループ設定部15bに、駆動部11の機能を併有させてもよい。
以下、図3の(a)〜(c)、および図4の(a)〜(c)を参照し、検知対象除外部15aおよび駆動グループ設定部15bの動作の一例について説明する。図3の(a)〜(c)は、タッチパネル100に近接した対象物Pの位置を検知する場合の各駆動状態を例示する図である。
また、図4の(a)〜(c)は、図3の(a)〜(c)の各駆動状態における検知信号の値のX軸方向の分布を示すグラフである。図4の(a)〜(c)において、グラフの横軸はX軸であり、グラフの縦軸は、検知電極から読み出された検知信号の値(以下、信号値Sと称する)である。
ここでは、駆動グループ設定部15bが、駆動電極VL1〜VLMを3つのグループGr1、Gr2、およびGr3に分ける場合を例示して説明を行う。この場合、駆動電極VL1〜VLMの駆動状態は、図3の(a)に示された状態1と、図3の(b)に示された状態2と、図3の(c)に示された状態3との3つの状態に区分される。
ここで、グループGr1は、対象物Pに最も近い駆動電極のグループである。また、グループGr3は、対象物Pから最も離れた駆動電極のグループである。また、グループGr2は、グループGr1に比べると対象物Pから離れているが、グループGr3に比べると対象物Pに近い駆動電極のグループである。このように、グループGr1〜Gr3は、Y軸方向の部分的な領域にそれぞれ対応付けられている。
また、図3の(a)〜(c)に示されるように、検知対象除外部15aによって、タッチパネル100の両端付近の電極(例えば、検知電極HL1およびHLN)が、検知対象から除外されている。
タッチパネルシステム1において近接検知を行う場合には、「状態1→状態2→状態3」の順に、駆動状態が変化する。また、状態3が完了した後には、再び状態1に戻る。このように、各状態の変化が繰り返される。
図3の(a)に示されるように、状態1では、対象物Pに最も近いグループGr1に、駆動電圧が与えられる。このため、状態1では、状態1〜状態3のうち、最も大きい静電容量の変化が生じることとなる。
それゆえ、状態1では、状態1〜状態3のうち、信号値Sの値が、最も大きくなる。ここで、図4の(a)に示されるように、状態1における信号値Sの最大値をSmax1として表す。
次に、図3の(b)に示されるように、状態2では、対象物Pに対して比較的離れたグループGr2に、駆動電圧が与えられる。このため、状態2では、状態1よりも小さく、かつ、状態3よりも大きい静電容量の変化が生じることとなる。
それゆえ、状態2では、状態1〜状態3のうち、信号値Sの値が、2番目に大きくなる。ここで、図4の(b)に示されるように、状態2における信号値Sの最大値をSmax2として表す。
次に、図3の(c)に示されるように、状態3では、対象物Pから最も離れたグループGr3に、駆動電圧が与えられる。このため、状態3では、状態1〜3のうち、最も小さい静電容量の変化が生じることとなる。
それゆえ、状態3では、状態1〜状態3のうち、信号値Sの値が、最も小さくなる。ここで、図4の(c)に示されるように、状態3における信号値Sの最大値をSmax3として表す。
以下、近接検知において、対象物Pの位置を検知するための方法について説明する。座標検知部13には、近接検知を行うために、所定の閾値Tがあらかじめ設定されている。はじめに、座標検知部13は、状態1〜3の各状態において、信号値Sの最大値(以下、最大値Smaxと総称する)が、閾値Tよりも大きいか否かを判定する。
続いて、座標検知部13は、最大値Smaxが閾値Tよりも大きいと判定した場合に、最大値Smaxが存在するX軸方向の座標を、対象物PのX軸方向の位置として検知する。
また、座標検知部13は、最大値Smaxが閾値Tよりも大きいと判定した場合に、駆動電圧が与えられている駆動電極のグループが存在するY軸方向の領域を、対象物PのY軸方向の位置として検知する。
ここで、一例として、図4の(a)〜(c)に示されるように、閾値Tが、Smax1>T>Smax2>Smax3を満たす場合を考える。この場合、座標検知部13は、状態1においてのみ、最大値Smax1が閾値Tよりも大きいと判定する。
従って、座標検知部13は、状態1における最大値Smaxが存在するX軸方向の座標を、対象物PのX軸方向の位置として検知する。また、座標検知部13は、状態1において駆動電圧が与えられている駆動電極のグループGr1が存在するY軸方向の位置(領域)を、対象物PのY軸方向の位置として検知する。
このように、タッチパネルシステム1では、駆動電極のグループGr1〜Gr3のそれぞれを時分割的に順次駆動し、検知対象とした検知電極から読み出された信号値Sの複数パターンの分布に基づき、タッチパネル100上(換言すれば、XY平面上)における対象物Pの近接位置が検出される。
なお、閾値Tを超える最大値Smaxが複数存在する場合において、1つの対象物Pの近接位置の検知精度を高めたい場合には、当該複数の最大値Smaxの中で、最大のものを用いればよい。この場合、例えば、Smax1>Smax2>T>Smax3であっても、状態1のみにおいて対象物Pの位置が検知される。
他方、複数の対象物の近接位置を検知したい場合には、当該複数の最大値Smaxのそれぞれを用いればよい。一例として、グループGr1の最も近くに第1の対象物が存在し、グループGr2の最も近くに第2の対象物が存在している場合を考える。
この場合、Smax1>Smax2>T>Smax3であれば、状態1において第1の対象物の位置が検知され、状態2において第2の対象物の位置が検知される。
また、複数の対象物の近接位置を検知したい場合には、信号値Sの極大値を用いて近接位置を検知してもよい。一例として、状態1において、閾値Tを超える2つの極大値が存在する場合には、各極大値が存在するX軸方向の座標を、対象物PのX軸方向の位置として検知してもよい。なお、図4の(a)〜(c)では、最大値Smax1〜Smax3が、信号値Sの極大値に一致する場合が例示されている。
このように、タッチパネルシステム1では、複数の対象物の近接位置を検知することも可能である。
また、本実施形態では、簡単のために、駆動電極VL1〜VLMを3つのグループに分けた場合を例示して説明を行った。しかしながら、駆動電極VL1〜VLMを分ける場合のグループ数は、必ずしも3つに限定されない。例えば、対象物PのY軸方向の近接位置の検知精度を高めるために、グループ数を4つ以上としてもよい。
(タッチパネルシステム1における対象物の検知および付随する処理の流れ)
図5は、タッチパネルシステム1における対象物の検知および付随する処理S1〜S10を例示するフローチャートである。以下、処理S1〜S10の流れについて説明する。
はじめに、タッチパネルシステム1が起動されると、モード切替部12bは、タッチパネルシステム1を近接検知モードによって動作させる。このため、タッチパネルシステム1は、通常は近接検知モードによって動作することとなる(処理S1)。
続いて、モード切替部12bは、対象物がタッチパネル100に近接しているか否かを判定する(処理S2)。対象物がタッチパネル100に近接している場合には(処理S2においてYES)、モード切替部12bは、タッチパネルシステム1を接触検知モードに切り替える。これにより、タッチパネルシステム1は、接触検知モードによって動作する(処理S3)。
他方、対象物がタッチパネル100に近接していない場合には(処理S2においてNO)、モード切替部12bは、タッチパネルシステム1を近接検知モードのまま動作させる。そして、処理S1に戻り、対象物がタッチパネル100に近接していると判定されるまで、処理S1および処理S2が繰り返される。
処理S3の後に、モード切替部12bは、対象物がタッチパネル100に接触しているか否かを判定する(処理S4)。対象物がタッチパネル100に接触している場合には(処理S4においてYES)、座標検知部13は、対象物のタッチパネル100における接触位置を検知する(処理S5)。検知された接触位置の座標は、タッチパネル100に施された入力操作の位置を示す情報として用いられてよい。
他方、対象物がタッチパネル100に接触していない場合には(処理S4においてNO)、モード切替部12bは、タッチパネルシステム1を近接検知モードに切り替える。これにより、タッチパネルシステム1は、再び近接検知モードによって動作する(処理S6)。
続いて、モード切替部12bは、所定の時間(例えば5秒)に亘って、対象物がタッチパネル100に近接しているか否かを判定する(処理S7)。ここで、所定の時間は、タッチパネルコントローラ10内のタイマ機能を使用して計時されてもよいし、または、携帯電話機1000に設けられたタイマ専用のデバイスによって計時されてもよい。
所定の時間に亘って対象物がタッチパネル100に近接している場合には(処理S7においてYES)、座標検知部13は、対象物のタッチパネル100における接触位置を検知する(処理S8)。他方、所定の時間に亘って対象物がタッチパネル100に近接していない場合には(処理S7においてNO)、処理S1に戻り、上述の各処理が繰り返される。
処理S8の後に、動作制御部14は、座標検知部13において検知された対象物の近接位置の数が、所定の数以上(例えば、2つ以上)であるか否かを判定する(処理S9)。
対象物の近接位置の数が所定の数以上である場合には(処理S9においてYES)、動作制御部14は、タッチパネルシステム1を省電力モードによって動作させる(処理S10)。これにより、例えばユーザが携帯電話機1000を使用して通話する場合に、タッチパネル100に対するユーザの誤入力が防止される。また、携帯電話機1000の消費電力が低減される。
他方、対象物の近接位置の数が所定の数未満である場合には(処理S9においてNO)、処理S1に戻り、上述の各処理が繰り返される。
(タッチパネルシステム1の効果)
上述したように、特許文献1の電子機器では、Y軸方向(長辺方向)の電極は、駆動電極と検知電極との機能を順序に切り替えられる。このため、図13の(a)に示されるように、Y軸方向に沿ってユーザの持ち手の複数の指が配置されている状態では、Y軸方向の電極が検知電極として機能する時に、対象物PのY軸方向の近接位置を適切に検知することができないという問題があった。
他方、本実施形態のタッチパネルシステム1では、Y軸方向の電極は、駆動電極としてのみ機能し、検知電極としては機能しない。さらに、駆動グループ設定部15bが設けられることによって、複数のグループに分割された駆動電極に、時分割的に順次に駆動信号が与えられる。
このため、Y軸方向に沿ってユーザの持ち手の複数の指が配置されている状態であっても、近接検知を行う場合に、ユーザの持ち手の指の影響を好適に排除することができる。それゆえ、対象物PのY軸方向の近接位置を適切に検知することが可能となる。
また、本実施形態のタッチパネルシステム1では、X軸方向(短辺方向)の電極は、検知電極としてのみ機能する。さらに、検知対象除外部15aが設けられることによってタッチパネル100のX軸方向の両端付近の位置(ユーザの指が存在する位置の近傍)における検知電極が、検知対象外となる。それゆえ、ユーザの持ち手の指の影響を好適に排除して、対象物PのX軸方向の近接位置を適切に検知することが可能となる。
このように、本実施形態のタッチパネルシステム1によれば、携帯電話機1000を把持するユーザの手持ち状態が安定していない場合であっても、近接検知時の誤検知を防止することができる。それゆえ、近接検知時の誤検知を従来よりも確実に防止することが可能となる。
〔変形例〕
上述の実施形態1では、タッチパネル100の短辺方向(X軸方向,第2方向)に沿って検知電極が設けられる構成が例示されていた。その理由は、タッチパネルシステム1を備えた電子機器の一例として、ユーザの掌とほぼ同サイズの携帯電話機が想定されているためである。
換言すれば、上述の実施形態1では、ユーザが携帯電話機1000の筐体の長辺方向を把持する使用態様が想定されている。当該使用態様において、ユーザの持ち手の複数の指は、タッチパネル100の長辺方向(Y軸方向,第1方向)に沿って配置されることとなる。このように、実施形態1のタッチパネルシステム1は、比較的小型の電子機器に適用された場合に想定される使用態様に対処するための構成であった。
しかしながら、検知電極および駆動電極の配置方向は、これに限定されない。例えば、タッチパネル100の長辺方向に沿って検知電極を、タッチパネル100の短辺方向に沿って駆動電極を、それぞれ設けてもよい。
一例として、タッチパネルシステム1を備えた電子機器として、タブレット等の比較的大型の携帯端末装置を考える。このような携帯端末装置では、ユーザが携帯端末装置の筐体の短辺方向も把持する使用態様(例えば、左側の短辺方向の筐体を左手によって把持し、かつ、右側の短辺方向の筐体を右手によって把持する使用態様)が想定される。
従って、当該携帯端末装置内のタッチパネルシステムでは、タッチパネル100の短辺方向に駆動電極を設けることにより、近接検知におけるユーザの持ち手の指の影響を好適に排除することができる。
また、上述の実施形態1では、長方形のタッチパネル100を例示して説明を行っていたが、本発明の一態様に係るタッチパネルシステムにおいて、タッチパネル100は、X軸方向とY軸方向に等しい長さを有していてもよい。例えば、タッチパネル100は正方形であってもよい。タッチパネル100の一辺に沿って駆動電極を設け、当該辺に直交する辺に沿って検知電極が設けられればよい。
以上のように、本発明の一態様に係るタッチパネルシステムにおいて、タッチパネル100の第1方向の長さは、タッチパネル100の第2方向の長さ以下であってもよい。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図6〜図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
(タッチパネルシステム2)
図6は、本実施形態のタッチパネルシステム2の概略的な構成を示す図である。本実施形態のタッチパネルシステム2は、実施形態1のタッチパネルシステム1において、タッチパネルコントローラ10をタッチパネルコントローラ20に置き換えることによって得られる構成である。
そして、本実施形態のタッチパネルコントローラ20は、実施形態1のタッチパネルコントローラ10に、検知領域設定部25および状態検知部26を付加することによって得られる構成である。
(検知領域設定部25)
検知領域設定部25は、タッチパネル100上において、近接検知が行われる領域を設定する。以降、検知領域設定部25によって設定された領域を、近接検知領域と称する。
具体的には、検知領域設定部25は、近接検知において、検知対象とする検知電極と、駆動すべき駆動電極とを指定する。以下、図7を参照して、検知領域設定部25の動作について説明する。図7は、検知領域設定部25によって設定された近接検知領域Aを示す図である。
図7の場合では、検知領域設定部25は、X軸方向において、タッチパネル100のX軸方向において、中央付近の検知電極を検知対象として指定する。これにより、近接検知領域AのX軸方向の範囲が設定される。
また、検知領域設定部25は、Y軸方向において、上述の駆動電極のグループGr1〜Gr3のうち、グループGr1を駆動対象となる特定のグループとして指定する。この場合、グループGr1のみが駆動され、グループGr2およびGr3は駆動されない。これにより、近接検知領域AのY軸方向の範囲が設定される。
検知領域設定部25は、検知対象として指定した検知電極を示す情報と、駆動対象として指定し特定のグループを示す情報とを、近接検知設定部15に与える。そして、検知対象除外部15aおよび駆動グループ設定部15bが、検知領域設定部25から取得した各情報に基づいて動作した結果、近接検知領域Aがタッチパネル100上に形成される。
近接検知領域Aでは、上述の実施形態1において示した処理によって近接検知が行われる。他方、近接検知領域A以外のタッチパネル100上の領域では、近接検知または接触検知のいずれも行われない。
以下、近接検知領域Aにおいて近接検知が行われるタッチパネルシステム2の動作モードを、部分検知モードと称する。検知領域設定部25は、タッチパネルシステム2を部分検知モードによって動作させる機能を有するものと理解されてもよい。
(状態検知部26)
状態検知部26は、タッチパネルシステム2が設けられた携帯電話機1000の状態を示す情報を取得する。例えば、状態検知部26は、携帯電話機1000のモーションセンサから、携帯電話機1000の現在の姿勢を示す情報を取得する。
これにより、状態検知部26は、携帯電話機1000の現在の姿勢が、所定の姿勢であるか否かを検知することができる。なお、携帯電話機1000の所定の姿勢は、携帯電話機1000の設計者によって、あらかじめ設定されてよい。
一例として、携帯電話機1000の長辺方向が鉛直方向に立てられている状態が、所定の姿勢として設定されてよい。この場合、携帯電話機1000が所定の姿勢でない場合の一例として、携帯電話機1000の長辺方向が水平方向(すなわち、鉛直方向と垂直な方向)に寝かされている状態を挙げることができる。
携帯電話機1000が所定の姿勢である場合には、ユーザが携帯電話機1000によって通話を行っていることが想定される。他方、携帯電話機1000の長辺方向が水平方向に寝かされている場合には、ユーザが携帯電話機1000のタッチパネル100を手などによって覆っていることが想定される。
本実施形態では、状態検知部26によって検知された携帯電話機1000の現在の姿勢の検知結果に基づいて、タッチパネルシステム2の動作モードを変更することが可能となる。
例えば、状態検知部26は、携帯電話機1000の現在の姿勢が所定の姿勢でないことを検知した場合に、検知領域設定部25を動作させてよい。これにより、ユーザが携帯電話機1000によって通話を行っていない場合に限り、近接検知領域Aをタッチパネル100上に設定することができる。
また、状態検知部26は、動作制御部14の指令を受けて動作を開始されてよい。例えば、座標検知部13において対象物の近接位置の数が所定の数以上である場合に、動作制御部14は、状態検知部26に動作を開始させる指令を与えてもよい。
(タッチパネルシステム2における対象物の検知および付随する処理の流れ)
図8は、タッチパネルシステム2における対象物の検知および付随する処理S21〜S32を例示するフローチャートである。
なお、図8の処理S21〜S29は、図3の処理S1〜S9と同様の処理である。また、図8の処理S31は、図3の処理S10と同様の処理である。このため、本実施形態では、処理S30、S32、およびその周辺の処理についてのみ説明する。
本実施形態において、対象物の近接位置の数が所定の数以上である場合には(処理S29においてYES)、状態検知部26は、携帯電話機1000の現在の姿勢が、所定の姿勢であるか否かを検知する(S30)。そして、携帯電話機1000の現在の姿勢が所定の姿勢である場合には(処理S30においてYES)、処理S31に進む。処理S31では、上述の処理S10と同様の処理が行われる。
他方、携帯電話機1000の現在の姿勢が所定の姿勢でない場合には(処理S30においてNO)、状態検知部26は、検知領域設定部25を動作させる。これにより、タッチパネルシステム2は、部分検知モードによって動作する(処理S32)。
一例として、部分検知モードにおける近接検知領域Aには、携帯電話機1000のロック状態を解除するための解除ボタンが表示されてよい。この場合、ユーザは近接検知領域Aに表示された解除ボタンに指を近付けることにより、携帯電話機1000のロック状態を解除することができる。
(タッチパネルシステム2の効果)
本実施形態のタッチパネルシステム2によれば、タッチパネル100上の近接検知領域Aのみにおいて近接検知を行うことが可能となる。
タッチパネルシステム2は、例えば、携帯電話機1000において複数のアプリケーションを動作させる場合に好適に用いられる。その理由は、ユーザの入力操作を受け付けるためのタッチパネル100上の操作領域が、アプリケーションごとに個別に設定される使用態様が想定されるためである。
タッチパネルシステム2によれば、ユーザによる入力操作を受け付ける100上の操作領域を、1つの近接検知領域のみに限定することができるため、ユーザが操作を意図していない位置に、誤って入力操作が与られることが防止される。従って、ユーザが使用を意図していないアプリケーションが誤って動作されることを防止することができる。
また、近接検知領域Aのみにおいて近接検知を行うため、タッチパネルシステム2の消費電力を低減させつつ、ユーザによるタッチパネル100に対する入力操作を受け付けることが可能となる。
なお、本実施形態では、処理S30および処理S32に示されるように、携帯電話機1000の現在の姿勢の検知結果に基づいて、タッチパネルシステム2の動作モードを部分検知モードに変更する例を説明していた。
しかしながら、携帯電話機1000の現在の姿勢の検知結果によらず、タッチパネルシステム2の動作モードを部分検知モードに変更させてもよい。
すなわち、図3の処理S10を、図8の処理S32に置き換えて、図3の各処理が行われてもよい。この場合、対象物の近接位置の数が所定の数以上である場合に、タッチパネルシステム2を部分検知モードによって動作させることができる。
一例として、タッチパネルシステム2が設けられた電子機器のサイズが比較的大型となる場合には、当該電子機器が使用される時の姿勢は、ほぼ一定の姿勢となることが想定される。このような場合には、状態検知部26を割愛することにより、タッチパネルシステム2の構成を簡単化することもできる。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図9および図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
(タッチパネルシステム3)
図9は、本実施形態のタッチパネルシステム3の概略的な構成を示す図である。本実施形態のタッチパネルシステム3は、実施形態2のタッチパネルシステム2において、タッチパネルコントローラ20をタッチパネルコントローラ30に置き換えることによって得られる構成である。
そして、本実施形態のタッチパネルコントローラ30は、実施形態2のタッチパネルコントローラ20において、検知領域設定部25を検知領域設定部35に置き換えることによって得られる構成である。
(検知領域設定部35)
本実施形態の検知領域設定部35は、実施形態2の検知領域設定部35に、複数(少なくとも2つ以上)の近接検知領域を設定する機能を付加したものである。以下、図10を参照して、検知領域設定部35の動作について説明する。
図10は、検知領域設定部35によって設定された6つの近接検知領域A1〜A6を示す図である。図10の場合では、検知領域設定部35は、X軸方向においてタッチパネル100のX軸方向の両端付近以外の位置の検知電極を、検知対象として指定している。
本実施形態では、近接検知領域は、タッチパネル100のX軸方向の中点を境界として、X軸方向に2分割されている。図10に示されるように、(i)近接検知領域A1、A3、およびA5は、X軸の原点に近い側に設定されており、(ii)近接検知領域A2、A4、およびA6は、X軸の原点から遠い側に設定されている。
本実施形態では、座標検知部13において、信号値Sの最大値が、(i)タッチパネル100のX軸方向の中点よりX座標が小さい位置に存在するか、または、(ii)タッチパネル100のX軸方向の中点よりX座標が大きい位置に存在するかのいずれの状態であるかが検知される。
前者の場合、近接した対象物は、近接検知領域A1、A3、またはA5のいずれかに存在するとして、対象物のX軸方向の位置が特定される。他方。後者の場合、近接した対象物は、近接検知領域A2、A4、またはA6のいずれかに存在するとして、対象物のX軸方向の位置が特定される。このように、対象物のX軸方向の位置が2通りに特定される。
さらに、検知領域設定部35は、駆動電極をグループGr1〜Gr3に区分している。図10に示されるように、(i)近接検知領域A1およびA2は、グループGr1に対応しており、(ii)近接検知領域A3およびA4は、グループGr2に対応しており、(iii)近接検知領域A5およびA6は、グループGr3に対応している。
本実施形態において、グループGr1〜Gr3は、実施形態1と同様に、時分割的に順次駆動される。すなわち、本実施形態では、近接検知領域は、Y軸方向に3分割されている。これにより、対象物のY軸方向の位置が3通りに特定される。
このように、本実施形態では、近接検知領域を、X軸方向に2分割、かつ、Y軸方向に3分割することにより、6つの近接検知領域A1〜A6が設定されている。本実施形態のタッチパネルシステム3では、6つの近接検知領域A1〜A6を用いて、部分検知モードによる近接検知を行うことができる。
なお、本実施形態では、グループGr1〜Gr3の全てを時分割的に順次駆動する構成が例示されているが、必ずしもすべてのグループが駆動されなくともよい。例えば、グループGr1およびGr2が時分割的に順次駆動され、グループGr3は駆動されないように構成されてもよい。この場合、タッチパネル100上には、4つの近接検知領域A1〜A4が設定される。
(タッチパネルシステム3の効果)
本実施形態のタッチパネルシステム3によれば、タッチパネル100上に設定された複数の近接検知領域A1〜A6において近接検知を行うことが可能となる。
従って、タッチパネルシステム3では、近接検知領域A1〜A6のそれぞれを、携帯電話機1000に設けられたアプリケーションごとに個別に設定されたタッチパネル100上の操作領域とすることができる。それゆえ、ユーザの入力操作の利便性を向上させることができる。
また、タッチパネルシステム3によれば、例えば、所定の順序によって、所定の近接検知領域のそれぞれにおいて近接検知が行われたことを、特定のアプリケーションを実行させるためのトリガとすることが可能となる。なお、この所定の順序は、ユーザによって任意に変更可能なものであってよい。
一例として、近接検知領域A1→A4→A6の順序によって近接検知が行われた場合に、携帯電話機1000に設けられた特定のアプリケーションが実行されるように、タッチパネルシステム3を構成してもよい。例えば、近接検知領域A1→A4→A6の順序によって近接検知が行われた場合に、携帯電話機1000のロック状態が解除されてよい。
また、例えば、携帯電話機1000による電子決済(クレジットカードの支払い等)を行うための操作として、ユーザに近接検知領域A1→A4→A6の順序による近接検知を行わせてもよい。これにより、携帯電話機1000の正規のユーザ以外の者が、当該正規のユーザになりすまして、不正に電子決済を行うことを防止することが可能である。
このように、本実施形態のタッチパネルシステム3によれば、正規のユーザ以外によって実行されることが好ましくない特定のアプリケーションが、不正に実行されることを防止することができる。それゆえ、タッチパネルシステム3を備えた電子機器の使用時の情報セキュリティの強化を図ることができる。
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
図11は、実施形態1のタッチパネルシステム1を含んだ携帯電話機1000の構成を示す機能ブロック図である。なお、本実施形態では、実施形態1のタッチパネルシステム1が携帯電話機1000に設けられた構成が例示されている。しかしながら、携帯電話機1000には、実施形態2のタッチパネルシステム2または実施形態3に係るタッチパネルシステムが設けられていてもよい。
携帯電話機1000は、タッチパネルシステム1、表示装置900、CPU(Central Processing Unit)913、ROM(Read Only Memory)914、RAM(Random Access Memory)915、カメラ916、マイクロフォン917、スピーカ918、および操作キー919を備えている。
また、携帯電話機1000の各部材は、相互にデータバスによって接続されている。なお、図11には示されていないが、携帯電話機1000が、有線によって他の電子機器と接続するためのインターフェースを備える構成としてもよい。
上述の図1に示されるように、タッチパネルシステム1は、タッチパネルコントローラ10およびタッチパネル100を備えている。また、表示装置900は、表示パネル911および表示制御回路912を備えている。
表示パネル911は、ROM914またはRAM915に格納されている画像を表示する。表示パネル911の動作は、表示制御回路912によって制御される。表示パネル911は、タッチパネル100に重ねられていてもよいし、タッチパネル100を内蔵していていてもよい。
なお、座標検知部13により生成された、タッチパネル100上の接触位置(または近接位置)を示す信号に、操作キー919が操作されたことを示す信号と同じ役割を持たせることもできる。
CPU913は、携帯電話機1000の動作を統括的に制御する。CPU913は、例えば、ROM914に格納されたプログラムを実行することによって、携帯電話機1000の動作を制御する。
なお、本明細書では、タッチパネルコントローラ10の各部材(駆動部11、検知信号処理部12、座標検知部13、および動作制御部14等)が、CPU913とは独立して設けられた形態を例示して説明を行っている。
しかしながら、本発明を具現化する形態はこれに限定されない。例えば、CPU913が動作制御部14の機能を併有していてもよい。この場合、タッチパネルコントローラ10の構成をより簡単化することができる。
ROM914は、固定データ(CPU913によって実行されるプログラム等)を、不揮発的に格納する。ROM914は、例えばEPROM(Erasable Programmable ROM)等の、書き込みおよび消去が可能なROMである。
RAM915は、可変データ(CPU913が演算のために参照するデータ、CPU913が演算によって生成したデータ、または操作キー919を介して入力されたデータ等)を、揮発的に格納する。RAM915は、例えばフラッシュメモリ等の、読み出し可能かつ書き込み可能なメモリである。
操作キー919は、ユーザによる携帯電話機1000に対する入力操作を受け付ける。操作キー919を介して入力されたデータは、RAM915に揮発的に格納される。
カメラ916は、操作キー919を介してユーザにより入力される撮影指示に基づき、被写体を撮影する。カメラ916によって撮影された被写体の画像データは、RAM915または外部メモリ(例えばメモリカード等)に格納される。
マイクロフォン917は、ユーザの音声の入力を受け付ける。入力されたユーザの音声を示す音声データ(アナログデータ)は、携帯電話機1000においてデジタルデータに変換され、他の携帯電話機(通信相手)に送信される。スピーカ918は、例えばRAM915に格納されている音楽データを、音声として出力する。
タッチパネルシステム1を備えた携帯電話機1000もまた、実施形態1のタッチパネルシステム1と同様の効果を奏する。
なお、本実施形態では、タッチパネルシステム1を備えた電子機器の一例として、携帯電話機1000(スマートフォン等)を挙げているが、タッチパネルシステム1を備えた電子機器はこれに限定されない。
例えば、タブレット等の携帯端末装置や、PCモニタ、サイネージ、電子黒板、およびインフォメーションディスプレイ等の情報処理装置もまた、タッチパネルシステム1を備えた電子機器に含まれ得る。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るタッチパネルコントローラ(10)は、タッチパネル(100)に対する対象物(P)の接触を検知する接触検知モードと、上記タッチパネルに対する上記対象物の近接を検知する近接検知モードとを切り替えるモード切替部(12b)と、上記タッチパネルの第1方向(Y軸方向)に沿って配置された複数の駆動電極(VL1〜VLM)を、複数のグループ(Gr1〜Gr3)に分割するグループ設定部(駆動グループ設定部15b)と、上記第1方向とは異なる上記タッチパネルの第2方向(X軸方向)に沿って配置された複数の検知電極(HL1〜HLN)の一部を、検知信号を読み出す検知対象とする検知対象設定部(検知対象除外部15a)と、を備え、各グループを時分割的に順次駆動し、上記検知対象から読み出した上記検知信号の複数パターンの分布に基づき、上記対象物の近接位置を検知する。
ところで、上述したように、特許文献1の電子機器では、第1方向(例えば、長辺方向であるY軸方向)の電極は、駆動電極と検知電極との機能を順序に切り替えられる。また、第2方向(例えば、短辺方向であるX軸方向)の電極は、駆動電極と検知電極との機能を順序に切り替えられる。
このため、図13の(a)に示されるように、第1方向に沿ってユーザの持ち手の複数の指が配置されている状態では、第1方向の電極が検知電極として機能する時に、対象物の近接位置(特に第1方向の近接位置)を適切に検知することができないという問題があった。
しかしながら、上記の構成によれば、本発明の一態様に係るタッチパネルコントローラにおいて、第1方向に沿って配置された複数の駆動電極は、駆動電極としてのみ機能し、検知電極としては機能しない。
このため、例えば、図13の(a)と同様に、第1方向に沿ってユーザの持ち手の複数の指が配置されている状態であっても、近接検知を行う場合に、ユーザの持ち手の指の影響を好適に排除することができる。また、各グループを時分割的に順次駆動し、分割したグループ数に応じた複数パターンの分布に基づき上記対象物の近接位置を検知するため、近接位置(特に第1方向の近接位置)を適切に検知することが可能となる。
また、上述したように、近接検知を行う場合には、タッチパネルの中央付近における近接検知を好適に行うことが求められる。ここで、検知対象設定部によれば、タッチパネルの第2方向の中央付近に存在する検知電極を検知対象とすることができる。
この場合、ユーザの持ち手の指に近い検知電極(すなわち、タッチパネルの第2軸方向の両端付近に位置する検知電極)を、検知対象から除外することができるため、近接位置(特に第2方向の近接位置)を適切に検知することが可能となる。
それゆえ、本実施形態の本発明の一態様に係るタッチパネルコントローラによれば、近接検知時の誤検知を従来よりも確実に防止することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様2に係るタッチパネルコントローラは、上記態様1において、上記検知信号の極大値(最大値Smax1)が所定の閾値(T)よりも大きくなる時に駆動されたグループが存在する上記第1方向の位置を、上記近接位置の上記第1方向の位置として検知し、上記極大値が存在する上記第2方向の位置を、上記近接位置の上記第2方向の位置として検知することが好ましい。
上記の構成によれば、近接位置の位置をより適切に検知することが可能となるという効果を奏する。
また、本発明の態様3に係るタッチパネルコントローラは、上記態様1または2において、上記タッチパネルが、筐体によって支持され、かつ、上記筐体をユーザが把持した時に、当該タッチパネルの上記第1方向に沿って、当該ユーザの持ち手の複数の指が配置されるように構成されており、
上記検知対象設定部は、上記指と交差する範囲に存在している上記検知電極を、上記検知対象から除外することが好ましい。
上記の構成によれば、本発明の一態様に係るタッチパネルコントローラおよびタッチパネルが設けられた電子機器(例えば携帯電話機)の筐体を、ユーザが把持して使用する場合に、近接検知時の誤検知を好適に防止することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様4に係るタッチパネルコントローラは、上記態様1から3のいずれか1つにおいて、上記近接位置を検知する動作が行われる領域である近接検知領域(A)を、上記タッチパネル上に設定する検知領域設定部(25)をさらに備えることが好ましい。
上記の構成によれば、近接検知時にユーザによる入力操作を受け付ける位置を、近接検知領域のみに限定することができるため、近接検知時の誤検知をより確実に防止することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様5に係るタッチパネルコントローラは、上記態様4において、上記検知領域設定部は、上記複数のグループから駆動対象となる特定のグループを指定することにより、上記近接検知領域の上記第1方向の範囲を設定し、上記検知対象を指定することにより、上記近接検知領域の上記第2方向の範囲を設定することが好ましい。
上記の構成によれば、駆動電極および検知電極が動作する範囲をそれぞれ指定することにより、近接検知領域を設定することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様6に係るタッチパネルコントローラは、上記態様4または5において、上記検知領域設定部は、複数の上記近接検知領域(A1〜A6)を設定することが好ましい。
上記の構成によれば、近接検知時におけるユーザの入力操作の利便性を向上させることが可能となるという効果を奏する。
また、本発明の態様7に係るタッチパネルコントローラは、上記態様1から6のいずれか1つにおいて、所定の数以上の上記近接位置が検知された場合に、上記タッチパネルコントローラおよび上記タッチパネルの動作モードを、通常の動作時に比べて消費電力が少ない省電力モードに切り替える動作制御部(14)をさらに備えることが好ましい。
上記の構成によれば、本発明の一態様に係るタッチパネルコントローラおよびタッチパネルが設けられた電子機器(例えば携帯電話機)を使用するユーザが、タッチパネルに体の一部を接近させたまま、タッチパネルへの入力操作を要しない特定の動作を行う場合に、当該電子機器の消費電力を低減することが可能となるという効果を奏する。
特定の動作の一例としては、ユーザがタッチパネルに耳を近づけて、携帯電話機を使用して通話を行う動作を挙げることができる。本発明の一態様に係るタッチパネルコントローラによれば、ユーザの通話時における当該携帯電話機の消費電力を低減することができる。
また、上述したように、省電力モードでは、タッチパネルのバックライトが消灯されるとともに、タッチパネルに対する入力操作も無効化される。これにより、ユーザの通話時に、タッチパネルに対する誤入力を防止することも可能となる。
また、本発明の態様8に係るタッチパネルコントローラは、上記態様4から6のいずれか1つにおいて、所定の数以上の上記近接位置が検知された場合に、上記検知領域設定部を動作させてもよい。
上記の構成によれば、近接検知時の誤検知をより確実に防止することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様9に係るタッチパネルコントローラは、上記態様1から8のいずれか1つにおいて、上記タッチパネルの上記第1方向の長さは、当該タッチパネルの上記第2方向の長さに比べて大きいことが好ましい。
上記の構成によれば、携帯電話機等の電子機器(比較的小型の電子機器)に対して、本発明の一態様に係るタッチパネルコントローラおよびタッチパネルを好適に用いることができるという効果を奏する。
また、本発明の態様10に係るタッチパネルコントローラは、上記態様1から8のいずれか1つにおいて、上記タッチパネルの上記第1方向の長さは、当該タッチパネルの上記第2方向の長さ以下であってもよい。
上記の構成によれば、タブレット等の電子機器(比較的大型の電子機器)に対しても、本発明の一態様に係るタッチパネルコントローラおよびタッチパネルを好適に用いることができるという効果を奏する。
また、本発明の態様11に係る集積回路は、上記態様1から10のいずれか1つに係るタッチパネルコントローラを含んでいることが好ましい。
上記の構成によれば、本発明の一態様に係るタッチパネルコントローラを、集積回路(ICチップ等)によって実現することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様12に係るタッチパネルシステム(1)は、上記態様1から10のいずれか1つに係るタッチパネルコントローラと、上記タッチパネルコントローラによって駆動されるタッチパネルと、を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、本発明の一態様に係るタッチパネルコントローラおよびタッチパネルを備えたタッチパネルシステムを実現することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様13に係る電子機器(1000)は、上記態様12に係るタッチパネルシステムを含んでいることが好ましい。
上記の構成によれば、本発明の一態様に係るタッチパネルシステムを含んだ電子機器を実現することができるという効果を奏する。
また、本発明の態様14に係る電子機器は、上記態様13において、上記タッチパネルコントローラが、上記タッチパネル上において上記近接位置を検知する動作が行われる領域である複数の近接検知領域を設定する検知領域設定部をさらに備え、所定の順序によって、上記複数の近接検知領域のそれぞれにおいて上記対象物の近接が検知された場合に、特定のアプリケーションを実行することが好ましい。
上記の構成によれば、電子機器の使用時の情報セキュリティを強化することが可能となるという効果を奏する。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
〔本発明の別の表現〕
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
すなわち、本発明の一態様に係るタッチパネルシステムは、検知対象物の接触、または近接によって静電容量が変化する複数の検知電極と、複数の駆動電極と、からなるセンサを有し、検知対象物の接触検出と近接検出が切り替え可能なタッチパネルシステムにおいて、上記接触検出と上記近接検出双方において、上記複数の駆動電極に駆動信号を与え、上記複数の検知電極から静電容量の差異を検出する構成であり、上記近接検出時、上記複数の検知電極の一部を検知対象外と設定し、上記複数の駆動電極を2つ以上の駆動電極を含む複数の駆動電極グループに分割し、上記駆動電極グループを時分割に順次部分駆動し、検知電極から検出される静電容量の差異と、順次部分駆動間の信号の時間差で近接位置を検知する。
また、本発明の一態様に係るタッチパネルシステムにおいて、上記検知対象外として設定される検知電極は、タッチパネルシステムを、上記検知電極を上方にして手のひらに置いた状態で手持ちした場合に、上記検知電極に指がかかる範囲にある。
また、本発明の一態様に係るタッチパネルシステムにおいて、
上記検知電極の一部を検知対象外と設定することと、上記駆動電極グループの一部を使用して、検知電極と駆動電極の有効範囲を指定することと、により、近接検知領域の指定が可能となる。
また、本発明の一態様に係るタッチパネルシステムを備えた電子情報機器は、上記駆動電極グループを少なくとも2つとした近接検知状態で近接物を検知した後、接触検知状態に移行して接触を検知しない場合、再び近接検知状態に戻り、上記近接物の座標を検出し、検出した座標が複数であれば、低消費電力のアプリケーションへ移行する。
また、本発明の一態様に係るタッチパネルシステムを備えた電子情報機器は、上記駆動電極グループを少なくとも2つとした近接検知状態で近接物を検知した後、接触検知状態に移行して接触を検知しない場合、再び近接検知状態に戻り、上記近接物の座標を検出し、検出した座標が複数であれば、一部分を近接検知の有効範囲とした状態のアプリケーションへ移行する。