本明細書において、本発明の制御対象の温水給湯設備は、瞬間式給湯器、貯湯式給湯機等をはじめとする一般の温水供給設備とする。また、本発明の給湯需給マネジメント装置は地域の中長期給湯需給マネジメントシステムを実現するための最下層レベルの個別住居毎に取り付ける装置を指す。また、本発明の給湯需給マネジメント装置は個々の世帯における温水使用行動列・時系列情報を得るまでの計測制御、情報処理、および情報記憶の役割を担当するとともに、世帯属性の変化や温室効果ガス抑制の意図に基づく見える化の効果を把握する役割を担う最上層の給湯需給マネジメントセンターに、それらの役割を果たすに必要な情報を提供する装置とする。
本発明の給湯需給マネジメントセンターは、ネットワークを介して最下層からすべての温水・エネルギー使用に関するデータ等を収集し、データベースを作成し、それを用いた演算等を行う。また、作成したデータベースや演算で得られた情報等を、ネットワークを介して中間層および最下層へ発信する。最下層である、各々の個別住居の給湯需給マネジメント装置に総和・平均時間指令、時刻情報提供、制御入力指令、データ・状態出力指令等を行う最上位のセンターである。
また、本発明の給湯需給マネジメントセンターの集中情報処理推定策定装置は、地域内の多数の給湯需給マネジメント装置から収集した温水使用行動列を、指令時間総和量時系列および指令時間平均量時系列等から各個別住居(世帯)の温水使用者を推定する。例えば、各個別住宅の家族構成員の性別、年齢を推定する。また、当該家族構成員の増減を推定する。また、例えば、給湯需給マネジメント装置からの計測情報をもとに、地域の給湯用途ならびにそれを含むすべての用途に使用する電力等のエネルギー総量および上下水道総量を推定する。そして、コスト削減とともに顕著な温室効果ガス排出抑制を目的とする地域の中長期的電力等のエネルギー・上下水道供給計画等を策定する。
当該集中情報処理推定策定装置が行う策定までの一連の情報処理の流れの具体的な例として、例えば、一年間にわたる各個別住宅の過去数年の同月データから、次年度およびそれ以後の同月の温水使用量、温水製造に用いるエネルギー年間使用量を推定し、当該推定結果から、各個別住宅の次年度およびそれ以後の温水年間使用量、温水製造に用いるエネルギー年間使用量を推定し、全世帯の総計をとることによって、地域の次年度およびそれ以後の温水年間使用量、温水製造に用いるエネルギー年間使用量を推定し、地域の次年度およびそれ以後の年間使用量の推定結果から、中長期的電力等のエネルギー・上下水道供給計画等の策定に至る。例えば、毎年更新されて実行できる。
前記温水使用行動列は、表1の温水使用行動量を時間順に並べたものである。また、前記時系列は表2の諸量を時間順に並べたものである。
本発明の給湯需給マネジメント装置は、個別住居の瞬間式給湯器又は貯湯式給湯機による温水供給設備において、前記温水供給設備への給水の流量および温度と、前記温水供給設備から出力される温水の流量および温度とをそれぞれ測定するとともに、温水使用の開始時刻τmと終了時刻τnとを検出する測定および検出手段と、前記温水使用の開始時刻から終了時刻まで前記温水供給設備から出力される温水使用による第1の温水使用量V(表1の式(1))と、前記温水使用の開始時刻から終了時刻までの時間幅(τn―τm)と、前記第1の温水使用量と当該時間幅から算出される単位時間当たりの平均使用量である前記温水使用の第1の平均流量(表1の式(2))と、前記温水使用の開始時刻から終了時刻まで前記温水供給設備から出力される前記温水の温度と前記温水の流量と前記第1の温水使用量とによる第1の流量重みづけ平均温度(表1の式(3))と、前記温水の温度から前記温水供給設備に供給される給水の温度を差し引いた温度差と前記温水使用の開始時刻から終了時刻まで前記温水供給設備から出力される前記温水の流量とに基づく第1の給湯負荷量L(表1の式(4))とを、それぞれ前記温水使用毎に算出する第1の算出手段と、一定時間内の前記温水供給手段から出力される温水使用による第2の温水使用量V(表2の式(5))と、前記一定時間における第2の前記温水使用量の第2の平均流量と、前記一定時間内の前記温水供給設備から出力される前記温水の温度と前記温水の流量と前記第2の温水使用量とによる第2の流量重みづけ平均温度(表2の式(6))と、前記一定時間内に供給される給水の温度を差し引いた温度差と前記一定時間内の前記温水供給設備から出力される前記温水の流量とに基づく第2の給湯負荷量L(表2の式(7))と、前記温水供給設備における加熱パワー量に基づく前記一定時間における加熱エネルギー量E(表2の式(8))とをそれぞれ算出する第2の算出手段と、前記第1の温水使用量、前記第1の平均流量、前記第1の流量重みづけ平均温度、および前記第1の給湯負荷量からなるデータセットを温水使用の開始時刻順序で並べた、温水使用の実際の特性を示し、かつ、前記個別住居の世帯の属性の関数である温水使用行動列を作成する温水使用行動列作成手段と、前記第2の温水使用量、前記第2の平均流量、前記第2の流量重みづけ平均温度、および前記第2の給湯負荷量からなる前記一定時間毎のデータセットを時間順に並べた時系列を作成する時系列作成手段とを備え、前記温水使用行動列から行動者の分類を行った上、前記時系列とつき合わせて温水使用者を推定し、その推定結果に基づいて温水使用に応じて、外部の給湯需給マネジメントセンターが備える集中情報処理推定策定装置との情報交換により給湯制御を行う。
ここで、表1の諸量は温水使用の行動毎に基づいて定義される量で、一方、表2の諸量は等間隔に区分された時間の1区分の時間毎に基づいて定義される量であるので、表1と表2の対応する量は異なる。例えば、表1の温水使用量Vと、表2の温水使用量Vとは異なる。すなわち、表1の温水使用量は、温水使用行動開始時刻τmから温水使用行動終了時刻τnまでに使われる温水量であるのに対し、表2の温水使用量は、所定の計測期間を等間隔に区分して、1区分の時間の始めの時刻τMから、終わりの時刻τNまでに使用された温水量である。具体的な説明は後述する。
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る給湯需給マネジメント装置の第1の実施形態の構成図を示す。図1に示す第一の実施形態の給湯マネジメント装置100は、前記測定および検出手段が、給水流量計および温度計107、都市ガス流量計106、内部状態検出器103、第1の流量計および温度計111、第2の流量計および温度計112、第3の流量計および温度計113、および風呂給湯の流量計114であり、前記第1の算出手段、および前記第2の算出手段、および前記温水使用行動列作成手段、前記時系列作成手段が温水使用計測制御装置104である。
図1において、第1の実施形態の給湯需給マネジメント装置100は、ハードウエアである給湯器101、浴槽105を対象に計測制御を行う温水使用計測制御装置104を備える。給湯器101は、都市ガスを燃料とする瞬間式給湯器で、内部に給湯器内制御機器102および内部状態検出器103を有する。内部状態検出器103は給湯器内制御機器102からの情報に基づき給湯器101の内部状態を検出する。
給湯器101への入力要素は、都市ガスと太陽熱温水器等で温めた温水、あるいは温めない場合は水道水である。給湯器101からの出力要素は、洗面、台所、およびシャワー等、一般給湯用の温水と浴槽105での湯張や追焚などの風呂給湯用の温水である。給湯器101の入力側の都市ガス配管には気体流量計(MF)106が取り付けられており、給水配管には液体流量計および温度計(F/T)107が取り付けられている。以後、液体流量計を単に流量計と呼称する。気体流量計106と流量計および温度計107、ならびに後述する流量計および温度計111〜113と流量計114の上部に記した矢印は、流れる流体の方向を示す。流量計および温度計107、ならびに後述する流量計および温度計111〜113はそれぞれ流量計と温度計とが複合化された製品を用いている。
給湯器101の出力側の3本の温水配管108、109および110のうち、温水配管108は一般給湯用の配管、温水配管109および110は風呂給湯用の配管で、いずれの配管にも流量計および温度計(F/T)111、112、113が設置されている。以後、風呂給湯用の配管109および110のうち配管109を単に往管、配管110を単に復管と呼称する。さらに給湯器101からの配管のうち、復管110に限っては、追焚や沸かし直しを行う時、すなわち循環ポンプ動作時の給湯器101側に向かう方向の流量を測る流量計(F)114が取り付けられている。また、一般給湯用の温水配管108は電磁弁115を通して混合水栓116、117および118にそれぞれ連通している。
混合水栓116、117および118は、電磁弁115が開いている時は混合水栓のハンドル操作により洗面、台所、シャワーに給湯器101から温水配管108を通って出力されている温水を供給するか、この温水供給と同時に、各混合水栓ハンドルに対応して一般給湯用配管に取り付けられた電磁弁119、120、121を混合水栓ハンドルの操作に応じて開き、温水温度を下げるための混合用水道水を混合水栓ハンドルの操作角度に応じた流量で洗面、台所、シャワーに供給させる。
温水使用計測制御装置104は、内部状態検出器103をはじめ、気体流量計106、流量計および温度計(F/T)107、111、112、113、流量計114等と結線されている(図1)。温水使用計測制御装置104は、AD変換部等を内蔵したプログラマブルな組込型デバイス等から構成されており、気体流量計106、流量計および温度計(F/T)107、111、112、113、流量計114からの流量や温度の計測データと、内部状態検出器103からの温水使用行動量や温水使用量を表す時刻データなどが入力されて、表1に示すような算出式に基づき温水使用量Vや給湯負荷量Lなどを算出し、その算出結果による温水使用行動列に基づき、実際の使用条件、すなわち温水使用行動の実態に応じた、温室効果ガス抑制の最大化につながる給湯制御に要求されるデータ計測と前処理を行う。
風呂給湯の湯張時には、給湯器101内蔵の湯張操作電磁弁がオンすると、図1中の往管109と復管110にそれぞれ浴槽105に向けて温水が流入し始める。内部状態検出器103は上記電磁弁のオン信号を検知し、その検知信号を温水使用計測制御装置104に供給する。温水使用計測制御装置104は、この検知信号の入力により表1の温水使用行動開始時刻τmを取得する。電磁弁に限らず、湯張操作を伝える信号源であればかまわない。図1の循環ポンプや、後述する図4の混合弁についても同様である。続いて、温水使用計測制御装置104は、流量計および温度計(F/T)112および113により、それぞれ計測された流量データおよび温度データを入力として受け、例えば1秒という所定のサンプリング間隔Δτでこれらの入力データをサンプリングして、表1に示すサンプリング流量Qiと給湯器101で温めた後の高温水のサンプリング温度Teiとを取得する。また、これと同時に温水使用計測制御装置104は、流量計および温度計(F/T)107により計測された給湯器101に入力される水道水等の給水温度データをサンプリング間隔Δτでサンプリングして、表1に示す給湯器で温める前の低温水あるいは水道水のサンプリング温度Tsiを取得する。
続いて、温水使用計測制御装置104は、内蔵の乗算回路でサンプリング流量Qiとサンプリング温度Tei、Tsiとをそれぞれ乗算して(Qi*Tei)と(Qi*Tsi)をそれぞれ算出し、さらに、その算出した値を湯張操作電磁弁がオフの後温水流量がゼロになるまで加算していく。その後、電磁弁オン信号から温水が流れるまでの無駄時間および遅れ時間を考慮した温水流れ開始時刻τm、電磁弁オフ信号から温水がゼロになるまでの無駄時間および遅れ時間を考慮した温水流れ終了時刻τnとの間の上記加算値とサンプリング間隔Δτとから、表1の(1)式により温水使用量Vを演算し、(2)式により平均流量を演算し、(3)式により流量重みづけ平均温度を演算し、(4)式により給湯負荷量Lを演算する。(3)式により求められる流量重みづけ平均温度は、水道水を0℃から温めて同じ温水を得るのに必要な正味のエネルギー量を温水使用量Vで除算した値であり、全温水量で平均化した温水温度に相当するので、この量を温水温度として定義して用いる。
風呂給湯の追焚時には、温水使用計測制御装置104は、湯張用電磁弁のオン/オフ信号の代わりに、追焚用の循環ポンプの信号をもとに温水使用開始時刻と温水終了時刻とを取得する。追焚の場合は、温水使用量はゼロである。図1の浴槽105から復管110に流れ出る温水を循環ポンプで給湯器101に汲み上げ、給湯器101で温めて、再び往管109を通して浴槽105に戻す。表1の(1)式を循環量を求める式と考え、サンプリング温度Tsiを浴槽水の温度と見なすと、(4)式は追焚に用いる給湯負荷量に相当する。(3)式は追焚での温水温度を示す。
温水使用計測制御装置104は、一般給湯(洗面、台所、シャワー)の開始時刻と終了時刻を、内部状態検出器103による電磁弁開閉信号および循環ポンプの動作信号に基づき、デバイス内部のクロックから取得する。燃焼時の点火信号等の給湯器内制御機器102から取り出せる適切な信号を用いることは可能である。デバイス内部のクロックは、イントラネットを介して、後述する地域の中長期給湯需給マネジメントシステムの最上層の給湯需給マネジメントセンターに設置したNTPサーバーによって、標準時間に時刻合わせがなされる。特に、個別住居の温水使用量の総計や平均による均し効果を検討する場合に問題となる個別住居間での時刻情報の差異をゼロにする補正が行われる。また、洗面、台所、シャワー等の温水使用行動の類別は、温水使用の全体量、流量、および継続時間で行う。正確な類別には、使用時刻等の推定に役立つ各個別住居の生活パターン情報を用いることなどが考えられる。
図1において、給湯器101への給水の流量および温度を計測する液体流量計および温度計107と、給湯器101から出力される温水の流量および温度を計測する液体流量計および温度計111と、給湯器101から浴槽105へ出力される温水の流量および温度を計測する液体流量計および温度計112と、浴槽105から出力される温水の流量を計測する液体流量計114と、給湯器101への都市ガスの流量を計測する気体流量計106と、温水使用の開始時刻と終了時刻に信号を出力する内部状態検出器103とは、本発明における測定および検出手段を構成している。また、温水使用計測制御装置104は、本発明における第1および第2の算出手段、温水使用行動列作成手段、および時系列制御手段を構成している。
図2は、本発明に係る給湯需給マネジメント装置の第2の実施形態の構成図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図2に示す第2の実施形態の給湯需給マネジメント装置130は、第1の実施形態の電磁弁115、119、120、121に代えて、自身の開閉制御信号を出力する電磁弁132、133、134、135を設け、温水使用計測制御装置131が電磁弁132〜135から開閉制御信号が入力される構成としたものである。
この実施形態の給湯需給マネジメント装置130の温水使用計測制御装置131は、一般給湯用配管108に設けられる電磁弁132や混合用水道水給水配管に設けられる電磁弁132、133、134、135から直接に開閉制御信号が供給されることで電磁弁毎に使用時刻等を確実に取得できるので、洗面所が複数ある場合や、洗面、台所、シャワー以外の用途の少なくない個所での温水使用が想定されるケースで、温水使用行動の確実な類別を可能にできる。
図3は、本発明に係る給湯需給マネジメント装置の第3の実施形態の構成図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図3に示す第3の実施形態の給湯需給マネジメント装置150は、第1の実施形態の電磁弁132に代えて電磁弁152を設けるとともに、混合水栓116、117および118に代えて、光センサなどによりハンドルを操作したときの操作信号を出力する機能を備える混合水栓153、154および155を設け、温水使用計測制御装置151が内部状態検出器103による一般給湯用電磁弁152の開閉制御信号、混合水栓153〜155からのハンドル操作に基づく開閉制御信号とが入力される構成としたものである。
この実施形態の給湯需給マネジメント装置150の温水使用計測制御装置151は、水道水のみの使用かどうかを判定できるように構成したもので、電磁弁152の開閉制御信号と、混合水栓153、154および155からの開閉制御信号との論理積の値から、水道水のみが洗面、台所、又はシャワーへ供給しているかどうかを判定することができる。
また、電磁弁119、120および121より上流側の水道水配管の部分に流量計を取り付け、その流量計からの計測データが温水使用計測制御装置151に入力できるようなオプションチャンネルを予め増設しておけば、洗面、台所、およびシャワーの用途で使われるそれぞれの水道水使用量も把握することができる。さらに、温水使用計測制御装置151のオプションチャンネルに、個別住居の水道元栓周辺の配管部に流量計を付けるか、あるいは過渡応答性に問題がなければ既設又は新規の水道メーターを利用するかして、それらからの計測データを取り込むこと、ならびに、例えば東京都水道局によると、家庭で最も使用量が多いトイレにおける水洗操作時に温水使用計測制御装置151にその操作信号を入力できる仕組みをつくっておけば、トイレ使用における水道水使用量が把握できるので、水道水使用による温室効果ガス排出量の把握をより正確なものとすることができる。通常トイレには、貯水タンクがついているので、水栓操作信号は、オフ動作はなくオン動作だけなので、流量計の流量がゼロになる時刻を判断するような仕組みが必要である。トイレ以外の風呂と同等あるいは若干少ない炊事や洗濯のときの水道使用量も同様に、温水使用計測制御装置151の機能を使えば把握することが可能である。水道水使用行為毎の水道水の使用量に加え、例えば1時間毎の時系列データが得ることもできるので、用途別の水道水使用量の把握も可能である。なお、流量計の取り付け場所は、個別住居の水道元栓周辺の配管部以外の下流側の水道使用量の計測精度の向上等につながる適切なポイントであればかまわない。
電磁弁152や混合水栓153、154および155が開信号入力から実際に開状態となって温水が流れるまでには、必ず無駄時間や遅れ時間が発生する。それらの時間が前述した計測データのサンプリング間隔より長い場合は、温水流量の総和を得る時間範囲を後方にずらす必要がある。電磁弁等の応答特性は本来非線形である。ずらす時間や場合により前述した温水使用量や給湯負荷量等を得るためのサンプリング数を増やすかどうかについては、事前の過渡応答試験等によって明らかにしておく。その結果に基づき総和区間の補正を行う。
図4は、本発明に係る給湯需給マネジメント装置の第4の実施形態の構成図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図4に示す第4の実施形態の給湯需給マネジメント装置170は、貯湯式給湯機であるヒートポンプ式給湯機に適用したものであり、貯湯ユニット171とヒートポンプ(HP)ユニット174とを備える。貯湯ユニット171は貯湯ユニット内制御機器172および内部状態検出器173を備える。ヒートポンプ式給湯機は、交流電力によってヒートポンプユニット174を稼働させ、大気中の熱を吸熱し自然冷媒である二酸化炭素(CO2)を圧縮して熱くさせ、貯湯ユニット内制御機器172を通して貯湯ユニット171に給水されて貯められる水を加熱し温水とする給湯器である。
本実施形態の給湯需給マネジメント装置170は、温水使用計測制御装置175が、ヒートポンプユニット31に供給される電力を測定する電力計(P)176、貯湯ユニット171に供給される水の流量と温度を測定する流量および温度計(F/T)177、貯湯ユニット171から出力される温水の流量と温度を測定する流量および温度計(F/T)111と112、復管110に取り付けられた流量および温度計(F/T)178、貯湯ユニット171内の貯湯量を測定する複数の温度計からなる内部状態検出器173からの各測定データが入力され、表1に示した式(1)〜(4)と同様の演算を行って温水使用量や給湯負荷量などを算出する。
次に、本発明の給湯需給マネジメント装置100、130、150、170の要部を構成する温水使用計測制御装置104、131、151、175の構成および動作について、さらに詳細に説明する。ここで、温水使用計測制御装置104、131、151、175の基本的構成は同一であるので、代表して一つの温水使用計測制御装置について説明する。
図5は、温水使用計測制御装置の一実施形態のブロック図。図6は、温水使用計測制御装置の他の実施形態のブロック図を示す。両図中、同一構成部分には同一符号を付してある。図5に示す温水使用計測装置200は、前記第1の算出手段が、AD変換部201、デジタル前処理回路部501、総和演算部211、信号変換部202、時刻情報処理部212、NTPクライアント部216からなり、前記第2の算出手段が、AD変換部201、デジタル前処理回路部501、総和演算部211からなり、前記温水使用行動列作成手段が、総和演算部211、および基本量演算部213の温水使用行動列演算部からなり、前記時系列作成手段が、総和演算部211、および基本量演算部213の指令時間総和量時系列演算部、および基本量演算部213の指令時間平均量時系列演算部からなる。
温水使用行動列の算出は次の通りである。内部状態検出器103からの信号をもとに時間情報処理部212において、総和演算開始指令および総和演算終了指令を総和演算部211に送る。総和演算部211はAD変換部201からの計測データをデジタル前処理回路部501による演算データを受けて、前記総和演算開始指令および前記総和演算終了指令に基づいて総和演算を行い、基本量演算部213の温水使用行動列演算部で、前記総和演算の結果から温水使用行動列Aを算出する。指令時間総和量時系列、および指令時間平均量時系列の算出は次の通りである。総和演算部211はAD変換部201からの計測データをデジタル前処理回路部501による演算データを受けて、給湯需給マネジメントセンターからの総和・平均時間指令に基づいて総和演算を行い、基本量演算部213の指令時間総和量時系列演算部、および指令時間平均量時系列演算部で、前記総和演算の結果から指令時間総和量時系列B、および指令時間平均量時系列Cを算出する。
図5に示す温水使用計測制御装置200は、計測データをAD変換部201でデジタルデータに変換した後、そのデジタルデータをデジタル乗算器203〜210を使用して乗算し、その乗算結果を総和演算部211に供給して演算処理させる構成の温水使用計測制御装置である。一方、図6に示す温水使用計測制御装置250は、計測データをアナログ乗算器251〜258を使用して乗算した後、そのアナログ乗算結果をAD変換部259によりデジタル乗算データに変換して総和演算部211に供給して演算処理させる構成の温水使用計測制御装置である。図5の温水使用計測制御装置200は、AD変換部201と総和演算部211の間にデジタル乗算器を用いたデジタル前処理回路部501を設けたのに対し、図6の温水使用計測制御装置250は、総和演算部211の反対側の、AD変換部259の入力側にアナログ乗算器を用いたアナログ前処理回路部502を設けた構成となっている。
なお、図5および図6において、給湯流量計、給湯温度計等をアナログ型のセンサとしているが、パルス型のセンサの場合は図5のAD変換部201はパルスカウンタに、図6のアナログ乗算器251〜258およびAD変換部259はパルスカウンタとデジタル計算機の組み合わせ等で代替される。その他の型式や型式の組み合わせの場合も同様である。温水使用計測制御装置のデジタル計算部に取り込める信号形式に変換できる回路であれば、この限りでない。
図5および図6共に情報処理の流れを分かり易くする説明するため、計測データや情報がパラレルに伝送されるように図示している。実際の温水使用計測制御装置では、既存の市販されているデバイスの利用やコストが嵩むような冗長な部分はなくすような工夫がされるので、図5および図6に示す温水使用計測制御装置の構成は実際のデバイスの回路構成とは異なっている。図5の温水使用計測制御装置200がイントラネットに繋がれているのは、組み込まれた演算部を含む内蔵デバイスが、標準時への時刻合わせの機能をもつNTPサーバー等を介して、正しい時刻に同期する機能を実現するために要求されるIPネットワーク化を前提とすることによる。具体的には、NTPクライアント部216を設け、NTPサーバーとの時刻情報等のやりとりにより、各温水使用計測制御装置200の時刻合わせを実現する仕組みになっている。デジタル乗算結果に基づいて処理をする図5の温水使用計測制御装置200と、アナログ乗算結果に基づいて処理をする図6の温水使用計測制御装置250の基本的な処理は同じであるので、以下の説明では図5の温水使用計測制御装置200について代表して説明する。
図5において、AD変換部201は、図1に示した都市ガス流量計106、給水流量計および温度計107、一般給湯流量計および温度計111、風呂往路流量計および温度計112、風呂復路流量計および温度計113、風呂復路戻流量計114からの各測定信号をそれぞれアナログ・デジタル変換する。デジタル前処理回路部501は、AD変換部201から出力された各デジタル信号が入力され、給水温度Tsi、温水温度Tei等の示強性変数と温水流量Qi等の示量性変数のデジタル前処理演算を行ってデジタル前処理演算結果を出力する複数のデジタル乗算器203〜210から構成される。信号変換部202は、内部状態検出器103から送信される都市ガス開閉電磁弁の動作信号、給水開閉電磁弁の動作信号、洗面水栓開閉電磁弁の動作信号、台所水栓電磁弁の動作信号、シャワー水栓開閉電磁弁の動作信号、風呂往路開閉電磁弁の動作信号、風呂復路開閉電磁弁の動作信号、風呂循環ポンプ弁の動作信号が入力されてデジタル信号に変換処理する。NTPクライアント部216は、受信した時刻取得指令に基づき時刻情報を送信する。
時刻情報処理部212は、信号変換部202から入力されたデジタル信号と、NPTクライアント部216から入力された時刻情報と、外部から入力された時刻情報出力指令とに基づいて、温水使用行動の開始・終了時刻の情報と、総和演算開始指令および総和演算終了指令の情報とを出力するとともに、NPTクライアント部216に前記時刻取得指令を出力する。総和演算部211は、デジタル前処理回路部501からデジタル前処理演算結果が入力され、かつ、時刻情報処理部212から前記総和演算開始指令および総和演算終了指令の情報が入力されるとともに、イントラネットを経由して、集中情報処理推定策定装置(後述の図8の341)から総和・平均時間指令を受信して、前記デジタル前処理演算結果を用いた総和演算を行う。基本量演算部213は、基本量演算部出力指令により総和演算部211から出力された総和演算結果に基づいて、温水使用行動列A、指令時間総和量時系列Bおよび指令時間平均量時系列Cを演算する。記憶部214は、基本量演算部213により演算された、温水使用行動列A、指令時間総和量時系列Bおよび指令時間平均量時系列Cを記憶するとともに、前記基本量演算部出力指令を基本量演算部213へ出力する。入出力部215は、時刻情報処理部212から温水使用行動の開始・終了時刻の情報が入力され、イントラネットを経由して集中情報処理推定策定装置(後述の図8の341)から制御指令を受信し、時刻情報処理部212に前記時刻情報出力指令を出力し、記憶部214に記憶部情報出力指令を送信することで記憶部214から出力された温水使用行動列A、指令時間総和量時系列Bおよび指令時間平均量時系列Cが入力されて前記集中情報処理推定策定装置に、イントラネットを経由して出力する。
次に、図5に示す温水使用計測制御装置200の動作についてさらに詳細に説明する。
アナログ型の都市ガス流量計106のセンサの出力はAD変換部201によってデジタル変換される。デジタル変換された測定データはデジタル前処理部501において、デジタル乗算が行われるか、そのままスルーで総和演算部211に入力される。例えば、デジタル乗算器203は、それぞれAD変換部201から供給される、給水温度計(流量計および温度計107の温度計)で計測された給水温度を既知のサンプリング間隔Δτでサンプリングして得たサンプリングデータTsiと、一般給湯流量計(流量計および温度計111の流量計)で計測された一般給湯流量をサンプリング間隔Δτでサンプリングして得たサンプリングデータQiとを乗算し、その乗算結果(Tsi*Qi)を総和演算部211へ出力する。デジタル乗算器204はそれぞれAD変換部201から供給される、上記一般給湯流量のサンプリングデータQiと、一般給湯温度計(流量計および温度計111の温度計)で計測された一般給湯温度をサンプリング間隔Δτでサンプリングして得たサンプリングデータTeiとを乗算し、その乗算結果(Tei*Qi)を総和演算部211へ出力する。
また、デジタル乗算器205は、それぞれAD変換部201から供給される、上記給水温度のサンプリングデータと、風呂往路流量計(流量計および温度計112の流量計)で計測された浴槽へ供給される温水の流量のサンプリングデータとを乗算し、その乗算結果を総和演算部211へ出力する。デジタル乗算器206は、それぞれAD変換部201から供給される、風呂往路流量計および温度計(流量計および温度計112)で計測された浴槽へ供給される温水の流量の計測データと温水温度の計測データとを乗算し、その乗算結果を総和演算部211へ出力する。同様に、デジタル乗算器207は上記給水温度のサンプリングデータTsiと風呂復路流量計および温度計(流量計および温度計113の流量計)で計測された浴槽へ供給される温水流量のサンプリングデータとを乗算し、デジタル乗算器208は風呂復路流量計および温度計(流量計および温度計113)でそれぞれ計測された温水の流量のサンプリングデータと温水温度のサンプリングデータとを乗算して、乗算結果を総和演算部211へ出力する。また、デジタル乗算器209は上記給水温度のサンプリングデータTsiと風呂復路戻流量計114で計測された浴槽から出力される温水流量のサンプリングデータとを乗算し、デジタル乗算器210は風呂復路流量計および温度計(流量計および温度計113の温度計)で計測された温水温度のサンプリングデータと風呂復路戻流量計114で計測された温水流量のサンプリングデータとを乗算して、それぞれ乗算結果を総和演算部211へ出力する。
総和演算部211は、デジタル乗算器203〜210の各乗算結果と、AD変換部201からデジタル乗算されることなく直接供給される、都市ガス流量計106のガス流量計測データ、給水流量計(流量計および温度計107の流量計)で計測された給水流量のサンプリングデータ、給水温度のサンプリングデータTsi、一般給湯流量のサンプリングデータQi、一般給湯温度のサンプリングデータ、風呂往路流量計および温度計でそれぞれ計測された流量データおよび温度データ、風呂復路流量計および温度計でそれぞれ計測された流量データおよび温度データ、および風呂復路戻流量計114で計測された流量データとを入力データとして受け、それら入力データの総和演算を行う。
すなわち、総和演算部211は、一般給湯温度のサンプリングデータTeiと一般給湯流量のサンプリングデータQiとの乗算結果(Tei*Qi)、給水温度のサンプリングデータTsiと一般給湯流量のサンプリングデータQiとの乗算結果(Tsi*Qi)を、温水使用行動の開始時刻τmから終了時刻τnに至るまで継続して加算する。また、総和演算部211は、一般給湯流量のサンプリングデータQiにサンプリング間隔Δτを乗算した値を温水使用行動の開始時刻τmから終了時刻τnに至るまで継続して加算する。さらに、総和演算部211は、一般給湯温度のサンプリングデータTeiと一般給湯流量のサンプリングデータQiとサンプリング間隔Δτとの乗算結果(Tei*Qi*Δτ)を、温水使用行動の開始時刻τmから終了時刻τnに至るまで継続して加算する。
一般給湯以外の風呂給湯においても、総和演算部211は、一般給湯流量計および温度計の計測データに代えて、風呂往路流量計および温度計112や、風呂復路流量計および温度計113の流量サンプリングデータおよび温度サンプリングデータを用いて、上記と同様の各種の加算値を得る。
図5の信号変換部202は、都市ガス開閉電磁弁および給水開閉電磁弁の各開閉信号が供給される。また、信号変換部202は、第1の混合水栓(図2、図4の116)の開閉を示す洗面水栓開閉電磁弁、第2の混合水栓(図2、図4の117)の開閉を示す台所水栓開閉電磁弁、第3の混合水栓(図2、図4の118)の開閉を示すシャワー水栓開閉電磁弁の開閉信号ならびに一般給湯電磁弁、風呂往路開閉電磁弁、風呂復路開閉電磁弁、風呂循環ポンプの各開閉信号が内部状態検出器103から供給される。ただし、図3の混合水栓153〜155の開閉信号は、混合水栓153〜155から直接供給される。信号変換部202は、これら入力電磁弁開閉信号をデジタル信号に変換して時刻情報処理部212に出力する。
時刻情報処理部212は、例えばNICT(独立行政法人 情報通信研究機構)からの標準時への時刻合わせの機能をもつNTPサーバーとNTPクライアント部216との時刻情報等のやりとりを介して、正しい時刻に同期する組込デバイスの時間情報を使用して給湯行動の開始時刻と終了時刻とを取得する。NTPサーバーは時刻情報提供サービスの役割を受けもつサーバーで、後述する給湯需給マネジメントセンターに配備される。時刻情報処理部212は、取得した給湯行動の開始時刻と終了時刻に基づき生成した、総和演算開始指令および総和演算終了指令を総和演算部211に供給して、演算実施の時刻および継続時間の情報を与える。
前述の電磁弁による応答遅れ等の影響を考慮した総和開始時刻や区間の補正が必要なケースでは、時刻情報処理部212は入出力部215を介して入力される給湯需給マネジメントセンターからの補正情報をもとに、総和演算部211の演算開始時間と終了時間の情報を総和演算部211に伝送する。総和開始時刻や区間の補正の必要がないケースでは、給湯行動の開始時刻と終了時刻を用いる。給湯行動の開始時刻と終了時刻および総和開始時刻と総和終了時刻は、時刻情報処理部212から基本量演算部213に送られる。
基本量演算部213では、総和演算部211で算出された各種総和情報(加算値)を使って、表1の(1)式〜(4)式の演算を行う。すなわち、基本量演算部213は、一般給湯温度のサンプリングデータTeiと一般給湯流量のサンプリングデータQiとの乗算結果(Tei*Qi)から給水温度のサンプリングデータTsiと一般給湯流量のサンプリングデータQiとの乗算結果(Tsi*Qi)を差し引いた値(Tei*Qi−Tsi*Qi)を、温水使用行動の開始時刻τmから終了時刻τnに至るまで継続して加算して得た加算値に既知のサンプリング間隔Δτを乗算して表1の(4)式に示した給湯負荷量Lを算出する。この給湯負荷量Lは、温水製造に使われる正味のエネルギーを表す。また、基本量演算部213は、総和演算部211から供給される一般給湯流量のサンプリングデータQiを温水使用行動の開始時刻τmから終了時刻τnに至るまで継続して加算した加算値に、サンプリング間隔Δτを乗算し、表1の(1)式の算出式に基づく温水使用量Vを算出する。
また、基本量演算部213は、温水使用行動の開始時刻τmから終了時刻τnまでの時間幅(n−m)にサンプリング間隔Δτを乗算した値で上記温水使用量Vを除算することにより、表1の(2)式で表される平均流量を算出する。さらに、基本量演算部213は、一般給湯温度のサンプリングデータTeiと一般給湯流量のサンプリングデータQiとサンプリング間隔Δτとの乗算結果(Tei*Qi*Δτ)を、温水使用行動の開始時刻τmから終了時刻τnに至るまで継続して加算して得た加算値を上記温水使用量Vで除算することにより、表1の(3)式で表される流量重みづけ平均温度を算出する。
一般給湯以外の風呂給湯においても、基本量演算部213は、一般給湯流量計および温度計の計測データに代えて、風呂往路流量計および温度計112や風呂復路流量計および温度計113の流量サンプリングデータおよび温度サンプリングデータを用いて得られた各種加算値に基づいて、表1の(1)式〜(4)式と同様の算出式に用いて温水使用量、平均流量、流量重みづけ平均温度、給湯負荷量を算出する。ただし、追焚や沸かし直しを行う時は、電磁弁の開閉信号ではなく、風呂循環ポンプの信号をもとに温水使用行動の開始時刻と温水終了時刻とを取得する。このときは表1の(1)式を、循環量を求める式と考え、サンプリング温度Tsiを浴槽水の温度と見なすと、(4)式は追焚に用いる給湯負荷量に相当する。(3)式は追焚での温水温度を示す。
基本量演算部213は、表1の(1)式〜(4)式で表される温水使用量V、平均流量、流量重みづけ平均温度、および給湯負荷量Lからなるデータセットを作成する。このデータセットは、世帯の属性(員数・構成、世帯類型、在宅状況、年間収入、就寝時間、高齢世帯/非高齢世帯、ライフスタイルなど)に基づいた、温水使用行動毎の実際の温水使用行動開始時刻や温水使用行動終了時刻を含む時間間隔がまちまちの複数のデータの組み合わせからなる、温水使用行動の実際の特性を示す温水使用行動列Aを示す。洗面、台所、シャワー、湯張等のセットデータは、温水使用行動開始時刻順に番号を振って記憶部214で一時的に保存される。その後、記憶部214に記憶されたデータセットは、定期的に、あるルールにしたがって、あるいは給湯需給マネジメントセンターからの指令に基づいて、入出力部215を経て給湯需給マネジメントセンターに送られる。本実施形態は、後述するように世帯属性の関数である温水使用行動列Aに基づき、実際の使用条件、すなわち温水使用行動の実態に応じた給湯制御を行う点に特徴がある。
温水使用量に限った温水使用量時系列と温水使用行動列を求める算出式(表1の(1)、(3)、(4)式)との違いは、総和演算の開始時刻と終了時刻で、1時間毎の時系列を得る場合は、XX時00分00秒からXX時59分59秒までの時間内のサンプリングの総和の繰り返し演算が行われる。一方、温水使用行動列の演算では、温水使用行動毎に求める温水使用行動開始時刻と温水使用行動終了時刻の間の総和演算が行われる。温度の単なる時間平均は、温水使用行動の温度とはならない。温水使用の観点からは、温水流量が大きい場合の温度の方が実感として温水流量の小さい場合の温度よりも重要である。そこで、温水使用行動列の演算では、温水使用時の温度を、流量で重みづけした平均温度で表すこととしている。前述のように、流量重みづけ平均温度は、水道水を0℃から温めて同じ温水を得るのに必要な正味のエネルギー量を温水使用量Vで除算した値であり、全温水量で平均化した温水温度に相当するので、この量を温水温度として定義して用いている。
また、基本量演算部213は給湯需給マネジメントセンターからの指令により、従来から得られている指令時間総和量時系列Bおよび指令時間平均量時系列Cも演算して、記憶部214に記憶する。基本量演算部213は、総和・平均時間が、例えば1時間の場合は1時間毎に、示量性変数である流量等の指令時間総和量時系列Bおよび示強性変数である温度等の平均値の指令時間平均量時系列Cの演算を、下記の表2の(5)式〜(7)式に基づいて行う。
時系列BおよびCを求める演算では、表2の(5)式により温水使用量を求めるほか、温水製造に用いる都市ガスの使用量の時系列を求める。表2の(8)式で示すように、都市ガス流量のサンプリングデータPiを、例えば1時間毎に総和をとることによって、1時間あたりの加熱エネルギー量Eの時系列が得られる。さらに表2の(9)式で示すように、表2の(7)式で求められる給湯負荷量Lと上記加熱エネルギー量Eとの1時間毎の比(L/E)を算出することによって給湯効率の時系列を得ることができる。同じ演算を、温水使用行動開始時刻と温水使用終了時刻の間で行うことにより、前述のように温水使用毎の加熱エネルギーや給湯効率efを求めることも可能である。
以上の説明は、図1〜図3に示した都市ガスを燃料とした瞬間式給湯器を備える給湯需給マネジメント装置100、130、150を対象としたものであり、図4に示したヒートポンプ式給湯機のような貯湯式の給湯機を備える給湯需給マネジメント装置とは異なる部分がある。例えば、図4に示したヒートポンプ式給湯機を備える給湯需給マネジメント装置170では、温水供給は給湯器本体からではなく貯湯槽からの配管を通して行われ、加熱エネルギーは都市ガスではなく電力が用いられ、追焚等は貯湯槽内部の高温水と浴槽からの低温水との熱交換で行われるなどの点で、瞬間式給湯器を備える給湯需給マネジメント装置100、130、150と相違する。
一般給湯用および風呂給湯用の配管系が同じである場合は、図4に示した温水使用計測制御装置175の情報処理の手順は図5および図6に示した構成の温水使用計測制御装置104、131、151のそれと同じである。都市ガス流量計107は電力計176に、都市ガス開閉電磁弁はヒートポンプユニット174への電力供給入口部の運転動作機器に置き換えれば、そのままあてはまる。ただし、貯湯式の給湯機の場合は、深夜時間帯に一度に温水を製造するので、表2の加熱エネルギーEおよび給湯効率efの時系列は、1日単位が基本となる。したがって、瞬間式給湯器のケースのように任意の例えば1時間を単位とする時系列は得られない。しかし、温水使用行動列A、指令時間総和量時系列B、および指令時間平均量時系列Cについては、前述の瞬間式給湯器のケースと同様である。
次に、本発明における温水使用行動列Aと従来の指令時間総和量時系列Bである温水使用量時系列との相違点についてさらに説明する。図7は、温水使用行動列と温水使用量時系列とを対比して示す図である。図7は、浴槽水入れ替え日におけるJIS S 2071によるふろ給湯標準使用モードの温水使用行動タイムチャートを示し、同図(a)は温水使用行動列のタイムチャートを示し、同図(b)は温水使用量時系列のタイムチャートを示す。
ある1日の00時00分から23時59分の間において、図7(a)に示す温水使用行動列では、温水の使用種別と温水使用行動開始時刻と温水使用行動終了時刻とが対応付けて表されるのに対し、同図(b)に示す温水使用量時系列では1時間毎の温水の使用種別と使用時間のみが表される。すなわち、同じ1時間という時間帯において、図7(a)に示す温水使用行動列では温水が複数回使用された場合は、それぞれの温水使用毎に温水の使用種別と温水使用行動開始時刻と温水使用行動終了時刻とが対応付けて表されるのに対し、同図(b)に示す温水使用量時系列ではその時間帯における1回又は複数回の温水使用の総和量と温水種別とがまとめて表されるに過ぎない。
世帯における世帯構成員の温水使用行動は、性別や学生か勤め人か主婦か高齢者かなどにより起床在宅時間、就寝・睡眠時間、外出時間などまちまちであるが、それぞれある傾向がある。このため、温水使用行動列では温水使用行動時刻からその世帯における使用者を推定することが可能である。一方、温水使用量時系列では使用者の特定は困難であることが多い。そこで、温水使用行動列から行動者の分類を行った上、温水使用量時系列とつき合わせて、温水使用者を推定することが可能となる。そして、温水使用者の推定結果に基づいて、温水使用計測制御装置200は温水使用行動の実態に応じた温室効果ガス抑制の最大化につながる給湯制御を行うことができる。なお、温水使用行動が翌日までおよぶ世帯の場合は、例えば00時00分から23時59分までの24時間を単位とするのではなく、最終の温水使用行動の終了時刻以後で、深夜電力を使う給湯設備等の稼働時刻以前を境目に時刻範囲の設定を行うこととする。
さらに、図5および図6には図示しなかったが、一時的な記憶機能をもつ温水使用計測制御装置200または250を介してイントラネットで結ばれた最上層の給湯需給マネジメントセンターにおいて、そのような操作をもとに、1年毎のデータセット単位でまとめあげる。つまり、記憶手段により各年毎の温水使用行動列を少なくとも複数年記憶する。各年の温水使用行動列および温水使用量時系列は世帯の属性の変化とともに変化する。例えば子供が誕生してから小学生のときまではそれほど多くなかったシャワー時間および回数が、子供が中学生になってから成長するにつれて多くなり、さらに子供が独立してから急激に少なくなる。したがって、推定手段により過去の各年毎の世帯の温水使用行動の計測・処理による温水使用行動列の経年変化に基づいて、将来どのような温水使用行動列に変化するかを推定し、策定手段によりその推定結果に基づいて、将来の世帯全体の温水使用量、ひいてはエネルギー使用量を予測し、中長期的な給湯計画の策定をすることができる。上記の記憶手段、推定手段、策定手段は、最上層の給湯需給マネジメントセンター内の集中情報処理推定策定装置におかれる。また、すべてのデータは、給湯需給マネジメントセンターにおいて構築されたデータベースの中に保存される。全ての個別住居の温水需給に関する情報処理やデータベースの機能をもつ給湯需給マネジメントセンター内の大規模な情報処理装置をクラウドコンピューティングシステムで代替してもかまわない。
このようにして、上記の各実施形態の給湯需給マネジメント装置によれば、給湯需給マネジメントセンターとの連携により、アンケート調査や統計処理を土台とすることなく、年間を通して得られる温水使用行動量を示すデータセットを順番に並べた列である温水使用行動列が世帯属性の関数であることから、温水使用行動列に基づき将来の世帯全体の温水使用量を推定(予測)し、その推定結果に基づいて策定した中長期的な給湯計画に従い、中長期的な温室効果ガス抑制の最大化につながる給湯制御を行うことができる。
次に、上記の給湯需給マネジメント装置を用いて、世帯にとどまらず地域全体の住居における、中長期の給湯需給に関する供給計画の策定を行う本発明に係る地域の中長期給湯需給マネジメントシステムについて説明する。
喫緊の課題となっている温室効果ガス排出の抑制を最大限に行う方策の一つとして、法的に縛りのない家庭部門の協力を促す仕組みづくりを取り上げる。この場合でも業務部門であれば、600世帯のエネルギー消費量で届け出が要求されるので効果は少なくないといえる。家庭部門の温室効果ガス排出抑制を行う手段として、本発明では、地域住民の能動的な参加による排出抑制体制を構築する図8に示すような、地域の中長期給湯需給マネジメントシステムを提案する。
図8は、本発明に係る地域の中長期給湯需給マネジメントシステムの一実施形態の概略システム構成図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図8において、地域の中長期給湯需給マネジメントシステム300は、最大限の温水使用量の節約と最小限のエネルギー使用による温水製造とを基本要件とする給湯需給マネジメントシステムであって、地域や大規模マンションという集合体の基本要素である需要家(個別住居)を最下層L1とし、地域の部分集合である例えば町会、町会内の班等の共同体や、大規模マンションであれば数十世帯のそれぞれの階を中間層L2とし、全集合(地域の場合は区役所や市役所などの公共体、大規模マンションの場合は例えばマンション管理事務所)を最上層L3とするツリー構造の階層化構造を構成している。
すなわち、地域全体の中にある各個別住居を集めて、いくつかの小さな地域を形成し、当該の小さな地域を集めてより大きい幾つかの地域を形成し、これを地域全体になるまで繰り返し、地域全体を最上位として、当該地域全体から、各前記小さな地域、各前記より大きな地域等、各個別住居まで枝分かれするツリー構造において、当該地域全体を最上層、当該地域全体の各個別住居を構成要素とする最下層とし、当該最上層と当該最下層の間の、各前記小さな地域、各前記より大きな地域等を構成要素とする中間層とする。最上層の構成要素は給湯需給マネジメントセンターであり、中間層の構成要素は各前記小さな地域、各前記より大きな地域等であり、最下層の構成要素は、前記地域全体の各個別住居である。前記各個別住居が属する最上層との間の中間層の構成要素は1であっても良い。例えば、極めて大きな規模のケースとして、東京23区全体を地域全体と見做す。地域全体を最上位とすると、地域全体は区に分けられ、各区は町に分けられ、各町は個別住居からなるツリー構造をなしている。すなわち、地域全体である最上位から一個別住居までを、区、町を経由して結ぶことをすべての住居について行えば、地域全体である最上位から各個別住居まで枝分かれするツリー構造をなす。最上位を最上層、各々の個別住居を最下層とする。最上層と最下層の間を中間層とする。ここでは、区と町が中間層となる。中間層は区、町だけに限らず、マンション等の集合住宅も中間層に入ることもあることは言うまでもない。また例えば大規模マンションを地域全体と見做し、各個別住居を最下層に、中間層を各階の個別住居全体を中間層とすることができる。
大規模マンションの場合、同じ階の数十世帯の個別住居を一つのブロックの中間層L2としたのは、顔見知りの機会の多い住民による情報共有、共通認識、および合意形成による温室効果ガス排出規制の結束的な動きを期待することによる。複数階にまたがる住民の連携の機会としては、管理会社や管理組合などで行っている防災訓練、防災イベントなどがある。高層マンションが集中する地域の自治体では、地震対策の一環として、一定階数(例えば5階)毎に備蓄倉庫の設置を義務付けているところもある。このようなまとまりとなり得る複数階にまたがるブロックを上位の中間層とすることによって、非常時を含む温室効果ガス抑制の連携が期待できる。温室効果ガス抑制の見える化とともに、非常時には安否確認に加え、電気、ガス、水道等の現状や復旧、復興の状況の見える化が期待できる。
各階層L1〜L3間の情報伝送は、イントラネットやインターネットなどの通信ネットワークを介して行うようになっており、また、最下層L1の各給湯需給マネジメント部301と最上層L3に設置されている給湯需給マネジメントセンター330との間で双方向の通信ができるようになっている。なお、本実施形態ではイントラネット310を介して情報伝送を行う例を示している。また、中間層L2は図8の例ではレベル数が“2”であるが、地域や大規模マンションの大きさに応じてレベル数は変わるので、これに限定されない。
本発明に係る地域の中長期給湯需給マネジメントシステムの情報ネットワークは、図26に示すようにスター型の構造をもつ。すなわち、情報ネットワークの構造は、最上層の給湯需給マネジメントセンターa、最下層の個別住居bi(i=1,2,・・・,m)、中間層の構成要素cj(j=0,1,2,・・・n)を、aとbi間は双方向の基本情報伝送パスsi(a→bi,bi→a)、a→とcj間は片方向の基本情報伝送パスtj(a→cj)を少なくとも含む。いずれも給湯需給マネジメントセンターaから相互に交わらない多対1対応の情報伝送パスを形成している。図26から給湯需給マネジメントセンターaから、例えば町会、町会の班等に係る見える化情報は町会、町会の班等の集まりの中心となるような場所、施設等設置された表示装置Cjに送られる。給湯需給マネジメントセンターaと個別住居の給湯需給マネジメント装置Bの間は双方向の情報のやりとりが行われる。
最下層L1の個別住居においては、例えば図1に示した給湯需給マネジメント装置100と可視化のための表示装置126とパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)125などが設けられ、全体として給湯需給マネジメント部301を構成している。パソコン125は、給湯需給マネジメントセンター330から提供される表示メニューにしたがって表示画面の選択操作を行う手段で、パソコン125以外にもそのような選択操作と表示が行える単機能のタブレット端末等でもよい。また、表示画面の選択操作機能のない表示装置でも構わない。この場合は、給湯需給マネジメントセンター330が作成する見える化プログラムに沿っての、受動的な給湯需給マネジメントセンター330まかせの表示状態となる。給湯需給マネジメント部301内の温水使用計測制御装置104およびパソコン125は、イントラネット310を介して、最上層L3の給湯需給マネジメントセンター330にイントラネットあるいは他の通信ネットワークを介して接続されている。また、携帯端末320と給湯需給マネジメントセンター330との間でイントラネット310を介して双方向通信が可能で、携帯端末320は給湯需給マネジメントセンター330から提供される表示メニューにしたがって、個別住居の給湯に関する料金節約状況等を、世帯員の要求に応じて把握することができる。なお、給湯需給マネジメント装置100の代わりに他の給湯需給マネジメント装置130、150あるいは170を設けるようにしてもよい。
中間層L2の共同体の所定の場所(例えば、地域集会所、町内会館、集合住宅に於ける共用スペースなど)には、所定区域に含まれる最下層L1の個別住居の給湯需給マネジメント部301から給湯需給マネジメントセンター330へ送信される情報(温水使用行動列A、指令時間総和量時系列Bおよび指令時間平均量時系列Cなど)をもとに、所定区域内の個別住居の集計結果を取り纏めた画面表示を行う表示装置305が設置される。この表示装置305は給湯需給マネジメントセンター330から提供される表示メニューにしたがって、所定区域の給湯供給に用いた電気・都市ガス等エネルギー・上下水道水の使用による温室効果ガスの排出量、排出抑制目標、他の区域との比較情報に加え、個別住居の給湯要因以外の照明、冷蔵庫、トイレ等での用途を含むすべての要因に基づく、エネルギー・上下水道水の使用による温室効果ガスの排出量、排出抑制目標、他の区域との比較情報を表示する。
また、最上層L3の所定の場所(例えば、区役所や市役所などの公共体、マンションの管理事務所など)の、給湯需給マネジメントセンター330には、最下層L1のすべての個別住居から送信される情報(温水使用行動列Aなど)を取り纏めて得られる地域全体の、中間層L2と同様な集計情報を見える化する公共の表示装置342を備える。なお、給湯需給マネジメントセンター330は最上層とは別に設けるか、あるいは複数の最上層を取りまとめたその上の層に設けてもよい(ただし、本明細書では説明の便宜上、給湯需給マネジメントセンター330は最上層に設けるものとする。)。図8においては、集中情報処理推定策定装置341が給湯需給マネジメントセンター330に設置されるように描いている。図中に記していないが、給湯需給マネジメントセンター330に設置されるNTPサーバー、データベースシステム等を含め、クラウドコンピューティングシステム等他のシステムで代替してもよい。
地域の中長期給湯需給マネジメントシステム300では、給湯需給マネジメントセンター330が、集中情報処理推定策定装置341および表示装置342を含んだ構成とされている。給湯需給マネジメントセンター330の集中情報処理推定策定装置341は、イントラネットを経由して最下層L1の多数の個別住居の給湯需給マネジメント部301に対して前述した温水使用行動列A、指令時間総和量時系列Bおよび指令時間平均量時系列Cの演算の指令を直接出力し、その演算結果をイントラネットを経由して直接収集する。給湯需給マネジメントセンター330の集中情報処理推定策定装置341は、地域内の多数の給湯需給マネジメント部301から収集した温水使用行動列Aを、指令時間総和量時系列Bおよび指令時間平均量時系列Cとつき合わせて各個別住居(世帯)の温水使用者を推定し、その推定結果に基づき将来の世帯全体の温水使用量を予測して中長期的給湯計画を策定し、イントラネットを経由して最下層L1の多数の個別住居の給湯需給マネジメント部301に対して上記中長期的給湯計画に基づき給湯制御を行う。
すなわち、給湯需給マネジメントセンター330の集中情報処理推定策定装置341は、各最下層L1の直上層である中間層L2の複数の情報処理部305毎に、収集した温水使用行動列A、指令時間総和量時系列Bおよび指令時間平均量時系列Cの平均値を算出するとともに、地域全体の平均値も算出する。指令時間総和量時系列Bおよび指令時間平均量時系列Cの平均値は、一定時間間隔の温水製造に必要な給湯負荷量、実際のエネルギー使用量、水道使用量および温水使用に伴う温室効果ガス排出量の各平均値である。給湯需給マネジメントセンター330は、推定した個別住居毎の温水使用者の温水使用行動の実態と、上記の各平均値と、国や地域から与えられる削減目標とに基づいて、地域全体で温室効果ガス抑制の最大化につながる給湯制御を行うための給湯制御指令を収集元の個別住居の給湯需給マネジメント部301にそれぞれ伝送するとともに、中間層L2の各表示装置305にも伝送して表示させ知らしめる。これにより、各個別住居毎に温水使用節約への応答把握が容易になり、地域ぐるみの温室効果ガス排出抑制の最大化を実現することができる。
また、給湯需給マネジメントセンター330の集中情報処理推定策定装置341は、地域内の多数の給湯需給マネジメント部301から収集した温水使用行動列Aを1年毎のデータセット単位でまとめあげ、過去の各年毎の世帯の温水使用行動の計測・処理による温水使用行動列の経年変化に基づいて、将来どのような温水使用行動列に変化するかを推定し、その推定結果に基づいて、将来の世帯全体の温水使用量、ひいてはエネルギー使用量を各個別住居単位で予測するとともに、中間層L2毎についても予測し、それらの予測結果に基づいて、地域全体の中長期計画の策定をすることができる。
給湯需給マネジメントセンター330は、以下の5つの基本的役割をもつ。
(1)個別住居における温水使用行動と温水使用量に関する計測制御指令と計測情報収集
(2)個別住居への温室効果ガス(CO2換算)排出抑制に向けたホームナビゲーション情報の配信、ならびに最上層・中間層の給湯需給マネジメント部301の共用設備への、それぞれの総計量に基づく同様なナビゲーション情報の配信
(3)個別住居(温水融通を行う場合は隣組住居)への給湯機器設備の選択更新判断サービス情報の提供
(4)個人情報保護を前提とする個別住居の計測(加工)情報の外部機関への配信
(5)温水使用に関する時刻と量のバラツキによる均し効果、その効果を醸し出す世帯属性の変化予測、外部機関からの気象およびCO2排出量原単位(排出係数)変化等の追加情報と(1)の計測情報をもとに、地域や大規模マンションの給湯用途ならびにそれを含むすべての用途に使用する電力等のエネルギー総量および上下水道総量の推定を行うことによる、無駄の少ない中長期的電力等のエネルギー・上下水道供給計画の策定
これらのうち、(2)に記載したホームナビゲーション情報は、個別住居に置かれた表示装置によって、その個別住居の温水使用による温室効果ガス排出量、電力等のエネルギー料金、および上下水道料金についての視覚情報として表示される。履歴(時系列)や時間的比較、他の個別住居との相対比較、新たな給湯設備が設置されたことによる効果、給湯需給マネジメントセンター330の運用元である大規模マンション等の管理組織の努力による経費節減の効果、上述の追加情報を加えたすべてのエネルギー使用量や上下水道使用量、それらの使用料金との比較は、時系列グラフ等の画像や音声を交えた映像等の視覚情報として同様に表示される。この表示にあたっては、温室効果ガス排出抑制に協力するような工夫を盛り込むことが必要不可欠である。
上記の表示による見える化を効果的にするため、以下のことが行われる。温水使用による環境・経済(家計)への影響の理解促進の観点からは、温水製造に必要な水道水およびエネルギーの使用量、それぞれに起因する温室効果ガス排出量、毎月の水道料金およびガス等エネルギー料金、全エネルギーおよび全水道料金に占める割合、ならびに給湯負荷とエネルギー使用量の日から実際の給湯効率をグラフィック材料とする見える化を対象とする。
図8のようなツリー構造活用の観点からは、縦系列および横系列(横並び)を追っての相対評価の実現に向けて、最上層L3の地域レベルの公共的要件として総計値、直下層L2から最下層L1までの各階層での横系列(横並び)の相互比較、直下層L2から最下層L1まで貫く縦系列の相互比較の見える化を対象とする。中間層L2の共同体レベルでは、中間層レベルの総計値、同一レベル階層のエネルギー・水道使用量の横系列(横並び)の相互比較、および直下層から最下層L1まで貫く縦系列の相互比較、ならびに最下層L3の個別住居レベルでは、直上層から最上層L3まで各階層の個別住居の横系列(横並び)の相互比較および直上層から最上層まで各階層の個別住居の縦系列の相互比較を見える化の対象とする。
給湯器等温水製造システムの最適運用や最適な買い替えの実現に向けての短期および中長期のトレンドの見える化の観点からは、時間積算量24時間(1日)パターンの年合計量の年単位時系列、四半期および月合計量のそれぞれの単位の時系列、および曜日ごとの年単位、四半期単位、および月単位の時系列、日積算量の年間の時系列、四半期および月の時系列の導出と見える化を対象とする。さらに、四半期積算量および月積算量の年間時系列、ならびに年積算量の中長期(例えば10年)時系列の導出と見える化を対象とする。
無駄のない供給計画・システム運用の実現に向けて、温水使用のランダム性・断続性による均し効果把握の観点からは、分積算量24時間(1日)パターンの適切分割、分割パターンごとの面積の算出と比較、および各分割パターンの重心(面積中心)時刻、歪度、尖度の算出に基づく見える化が対象となる。
均し効果と合わせて世帯属性との相関性の把握に向けて、用途別温水使用行動の分類の観点からは、温水流量と閾値を超える分積算量の継続時間で分類に基づく見える化が対象となる。さらに、個別住居の世帯属性変化予測を組み込んだ中長期供給計画の策定に向けて、世帯属性の変化把握の観点からは、秘密保持を保証する公的機関における世帯属性データベース作成、世帯属性と温水温度(給湯、湯張、追焚等)との関係把握、世帯属性と入浴方法(浴槽湯張入浴とシャワー入浴)との関係把握、および世帯属性と均し効果・用途別温水使用行動との相関解析から温水・エネルギー使用量の変化予測の手順を介しての見える化が対象となる。
温室効果ガス排出抑制の最大化に向けた地域の中長期に及ぶ温水需給マネジメントを実現するにあたっては、世帯属性変化を裏付ける諸情報を念頭においておく必要がある。温水使用量の年間推定量の算出や予測を行うにあたっても、温水使用量の増減の背景にある温水使用行動をできるだけ詳細に把握しておくことが要求される。
図10は、最下層L1の個別住居における給湯需給マネジメント装置100によって得られる世帯属性を反映する温水使用行動と温水使用量・温水負荷量の一例の関係を示す。同図中の数値は、家庭用ガスふろがま・石油ふろがまの標準使用条件を定めたJISの資料「JIS S 2072」に記載された値をもとに算出したものである。1ヶ月毎に世帯属性変化による温水使用量の増減のモニタリングを行うとして集計のスパンを1ヶ月としている。世帯員数は4人である。「JIS S 2072」では1週間7日のうち6日は湯張、1日は沸かし直しとしているので、1ヶ月を30日として、そのうちの26日を湯張日、4日を沸かし直し日とした。
図10から読み取れるように、一般給湯の中の洗面と台所は、温水使用量に比して行動頻度が極めて高いので、世帯員の人数変化に関しては高い感度を示すといえる。図10が示すように洗面あるいは台所での月間の行動頻度は、それぞれ450回、930回にも及ぶので、世帯員の人数変化はそれらの回数の増減から統計的に判定可能である。台所用途の温水使用継続時間の合計量も用途別では最大なので同様のことがいえる。各用途の行動開始時刻と行動終了時刻も世帯の生活スタイルを分類する情報を与える。さらなる世帯員ごとの生活スタイルの分類は、個々の用途別温水使用行動の開始時刻と終了時刻の情報を用いることによって得ることが可能である。
「JIS S 2072」では、風呂給湯日のうちの7分の6は湯張を行うとしているが、実際には、湯張を行わないでシャワー入浴で済ます傾向が強くなっている。特に、夏期にシャワー入浴のみという世帯も増えてきている。そのような世帯においては、シャワー使用量が最大の用途となっている。しかも湯張量は浴槽のサイズによってほぼ決まることから、例えば月間のシャワー使用量の増減から世帯員の人数変化や子供の成長状況の把握も可能となる。さらに追焚等による湯張以外の使用量の増減も含めることにより、より信頼性を高めることができる。これらにより、デジタル量である洗面や台所の行動頻度とアナログ量であるシャワーや追焚に用いる温水使用量の両面から世帯属性の変化を把握できる。
個々の個別住居の給湯需給マネジメント部301からの図10に示す情報は、最上層の給湯需給マネジメントセンター330で収集されて、中長期に及ぶ温水需給マネジメントのための情報処理とデータベース構築が行われる。最下層の個別住居向けには、温室効果ガス排出量抑制の最大化の手だてとして、住民による公共的抑制意識の醸成および家計に及ぼすメリットの周知につながる表示情報の作成が行われる。給湯需給マネジメントセンター330は、収集した情報に基づいて、住民が、どのような無駄な部分を削れば効率的な抑制が実現できるかの具体的かつ計画的なシナリオを描けるように、個別住居の電力、ガス等のエネルギーおよび上下水道の要因および用途の間の温室効果ガス排出量ならびに利用料金の比較情報に加え、温水使用行動の用途別頻度情報を作成する。
温室効果ガス排出量ならびに利用料金に関する相対的比較の対象は、下記の通りである。
(a)給湯要因と非給湯要因を含む全体の電力、都市ガス等エネルギーおよび上下水道の比較
(b)給湯要因におけるエネルギー別・用途別比較
(c)温水使用行動における用途別頻度の比較
(d)給湯要因と非給湯要因を含む全体の上下水道別・用途別比較
(e)給湯要因における上下水道別・用途別比較
(f)非給湯要因におけるエネルギー別・用途別比較
(g)最も身近な比較基準としての人間の呼吸要因による排出量との比較
(a)の全体の電力、都市ガス等エネルギーおよび上下水道の比較については、個別住居の電力、都市ガス、上下水道等の検針票データを活用する。将来的に都市ガスや上下水道などまで測れる次世代型スマートメーターが導入されれば、それらの計測データを用いることとする。
給湯需給マネジメント装置100、130、または150によって得られるデータをベースに、1年間の月間の温室効果ガス排出量、エネルギー・上下水道料金、ならびに温水使用行動の用途別頻度変化を表示した例を図11−図21に示す。これらの表示例を作成するにあたっては、給湯要因のエネルギー使用に大きく影響する給水温度として、大阪の集合住宅で計測した市水の温度データを用いている。電力データについても同程度の給湯エネルギーを使用する上記の住宅のデータを用いた。給湯に用いるエネルギーは都市ガス、給湯以外に用いるエネルギーは電力のみとした。給湯器の効率は、前述したJISの資料「JIS S072」に記載されている数値の80%とした。給湯器の運転には実際に電力が用いられるが、使用エネルギーが都市ガスに較べて無視できるとしている。水道水については、給湯に用いる使用量は、東京都水道局によって示されている「家庭での水道水の使われ方」資料を参考に、トイレ等での使用を含めた全使用量の40%とした。
電力、都市ガス、および上下水道水の使用による温室効果ガスのCO2を算出するための排出係数は、東京都地球温暖化防止活動推進センターが発行している「中小企業事業者のための省エネルギー対策」資料に記載されている数値を用いた。都市ガス料金および水道料金については、それぞれ東京ガスの料金表(H24.05)、東京都の料金表(H17.01.01−)を用いた。電力料金については、東京電力の契約電流を50Aとして電灯従量B料金表を用いて算出した。以後、温室効果ガス排出量については、CO2に換算された数値に基づいて説明を進めることとする。
図11は、個別住居の給湯、非給湯を含む全体の都市ガス、上下水道、および電力の使用によるCO2換算した温室効果ガス排出量の合計量とそれぞれの月毎の大小の比較を表している。図11によれば、都市ガスにおける温室効果ガス排出量は暖房時期の冬に多く、電力による温室効果ガス排出量は冷房時期の夏に多くなることが見てとれる。上下水道の温室効果ガス排出量については、顕著な傾向は見られない。図12は、個別住居の月間光熱水料金の変化表示例を示す。図11と図12とを比較すると、上下水道利用による温室効果ガス排出量が都市ガス利用による温室効果ガス排出量の9分の1程度であるにも関わらず、上下水道料金は都市ガス料金よりも高いことなどが分かる。
図13は、個別住居の給湯要因に限った給湯ガス使用による用途別のCO2換算した温室効果ガス排出量の月毎の合計量と月間の比較表示例を示す。図14は、個別住居の給湯ガス使用による用途別の都市ガス料金の月毎の合計額と月間の変化表示例を示す。図15は、図10に記載された温水使用行動の頻度の数値を当てはめて作成した月間の全温水使用行動の頻度の変化とともに、用途別の頻度の変化も読みとれる積み上げ棒グラフによる表示例を表す。表3は、図15の積み上げ棒グラフの説明のため、用途別の頻度の具体的な数値を表す。
図13−図15の積み上げ棒グラフの上部には、それぞれの用途とグラフ面のパターン(模様)との対応関係が示してある。対応関係の並びの順番は、洗面用途の頻度が一番下の白地に黒枠の棒グラフ成分の高さが対応するような、積み上げ棒グラフの下部から上部に向かう方向の積み上げ順につけている。他の積み上げ棒グラフについても同様である。表3によれば、温水使用行動の年間の合計頻度は2万回程度、月間の用途別頻度は、大きい順に台所、洗面、シャワー、追焚、湯張の用途で、それぞれ、950回、450回、90回、25回の前後の値で、最少の沸かし直しでは4回あるいは5回であることが分かる。
図13と図15を比較すると、例えば、給湯ガス使用に伴う温室効果ガス排出量は、給湯用途の月間行動頻度が450回前後であるにも関わらず、行動頻度が120回前後のシャワー用途に伴う温室効果ガス排出量の4分の1程度である。1回あたりの使用による温室効果ガス排出の割合は、シャワー用途の場合は、洗面用途の場合に比べ14倍程度多い。温室効果ガス排出量が同じであるとした場合は、洗面用途の行動頻度はシャワー用途では、同じ14倍程度になる。後述する世帯属性の経年変化、例えば子供が独立して世帯員でなくなるような場合は、洗面用途の行動頻度とともにシャワー用途による温室効果ガス排出量の数値が顕著に変わることが窺い知れる。
図16(a)は、個別住居における全体の上下水道利用による月間温室効果ガス排出量の変化表示例を示し、同図(b)は、上下水道利用による給湯用途と非給湯用途(トイレ等)の月間温室効果ガス排出量の変化表示例を示す。ここでは、上水道と下水道の使用量は同じとしている。図16(a)、(b)によれば、都市ガスおよび電力に関する図11−図14の表示例と比べると、水道水の温度や気温の違いで生ずる顕著な月変化がなく、ほぼ平坦な利用のされ方がされていることが見てとれる。また、下水道の排出量が上水道の温室効果ガス排出量に比べて多いのは、前者のCO2換算の温室効果ガス排出係数が後者のそれの2.7倍程度大きいことによる。
図17(a)は、個別住居における月間の上下水道利用料金の変化表示例を示し、同図(b)は、給湯用途と非給湯用途(トイレ等)の月間の上下水道利用料金の変化表示例を示す。図17(a)および(b)から、上水道料金が下水道料金を上回ること、給湯用途の上下水道料金は、トイレ等給湯用途でない上下水道料金以下であることなどが読みとれる。上水道料金が下水道料金を上回るのは、下水道料金には基本料の徴収がないことにもよる。
図18(a)は、個別住居における給湯要因のみを対象とする上下水道利用による月間温室効果ガス排出量の変化表示例を示し、同図(b)は、上下水道利用による給湯用途(洗面、台所、シャワー、湯張)の月間温室効果ガス排出量を示す。図18(a)に示す上水道と下水道の利用による温室効果ガス排出量の違いは、図16(a)の非給湯要因も含む排出量の違いと同様CO2換算の温室効果ガス排出係数の大小に起因する。図19(a)は、個別住居における月間の給湯要因のみを対象とする上下水道利用料金の変化表示例を示し、同図(b)は、上下水道利用による給湯用途(洗面、台所、シャワー、湯張)の月間の上下水道利用料金の変化表示例を示す。図18(b)から、シャワーと湯張用途の上下水道使用による温室効果ガス排出量は同程度、台所用途はそれらよりも多少少なく(7割程度)、洗面用途は台所用途よりも半分以下の排出量であることが分かる。図19(b)の上下水道料金表示例においても、温室効果ガス排出量に関する図18(b)と同様の傾向が見られる。図19(a)の上下水道料金については、非給湯要因も含む図17(b)の上下水道料金表示例が示す傾向と同じである。
上述のように照明、空調、冷蔵庫等の非給湯要因のエネルギーには、電力の形態が用いられるとした。図20および図21は、電力使用による月間の温室効果ガス排出量および利用料金の変化を表示したものである。いずれも7月−8月の夏期にピークを示すのは冷房のための電力使用による。これは、図13および図14の給湯ガス使用による温室効果ガス排出量および利用料金が1月から2月にピーク期を迎えるのと対照的である。都市ガス料金は電力料金の5割から6割程度であることを表している。
給湯需給マネジメントセンター330では、まず世帯の経年変化において、温水使用量および給湯負荷量に急激な変化が見込める世帯とそうではない世帯との分類によって、将来に向けての温水使用量や加熱エネルギー量予測の迅速化を図る。最下層の個別住居の温水使用量および給湯負荷量の急激な変化としては、(1)子供が中学生になった時から成人に至る間の急激な増大、(2)子供が独立したときの世帯員数の減少による急激な減少、(3)子供が誕生や世帯員の長期入院や死去による顕著な増減、が挙げられる。成人後から子供の独立までは、温水使用量および給湯負荷量はライフスタイルの多様化により、なだらかな増加傾向にあるといえる。
給湯需給マネジメントセンター330は、上記の温水使用量および給湯負荷量の変化を裏付ける図10の情報を蓄積することによって、子供が世帯の中で、各用途の温水使用行動が頻度および継続時間がどのくらいで、温水使用量や給湯負荷量がどのくらいであったかを、年齢や性別毎に検索できるデータベースを構築し、上記(2)の要因による実態データに基づく変化予測を行う。また、上記(1)および(3)の要因による変化についても同様である。
図22は、個別住居の次年度予測値の算出フローチャートを示す。同図に示すように、予測対象は温水使用量、給湯負荷量、加熱エネルギー量であり、加熱エネルギー量に対する給湯負荷量の比から年間平均給湯効率を算出できる。給湯需給マネジメントセンター330は、温水使用量および給湯負荷量に急激な変化が見込める世帯で、実際に変化が生じた場合は、その変化後の値を始点に、まずは、変化直後は世帯属性が類似する世帯グループの平均的なトレンドにそって推移するとみなす。世帯属性が類似する世帯グループのトレンド平均については後述する。その後は、経年変化とともに実測値に置き換えていく。
温水使用量および給湯負荷量の急激な変化は、入居や転居に伴う世帯そのものの入れ替わりや空き家になるケースでも生じる。この場合は、過去の年間・月間のデータは無いので、まずは世帯類型、男女数、年代構成等が同じような世帯グループの平均温水使用量および平均的な変化パターンが同じとみなす。そして、データ蓄積によって修正していくとともに、次の月の予測を開始する。最上層の給湯需給マネジメントセンター330は、データ蓄積による予測修正を注力事項として情報処理を進める。当面、来年度同月の予測は、同上の世帯の変化トレンドを基にする。温水使用量および給湯負荷量のなだらかな変化が続く世帯では、過去の同月の年をまたがる複数年のデータをベースに、その変化が示すトレンドを数式化するため最小二乗法等を用いて演算を行い、その結果に基づいて来年度およびそれ以後の予測を行う。図22の横向きの点線矢印が示す従来の年間総量の蓄積データからの予測値と、縦上向きの1月から12月に向けての矢印方向の月間量に基づく予測値との突合せによって、当該年度内における世帯属性の変化の有無についての判定情報が得られる。
以上により、各個別住居毎に該当する月までの次年度予測値が算出される。大規模マンションを一つの地域と見做すと、全世帯の総計をとることによって、地域の温水使用量、すなわち水道使用量と加熱エネルギーの予測値が得られる。さらに、各世帯毎の来年度およびそれ以後の予測値を加え合わせることによって、地域の来年度およびそれ以後の予測を行うことができる。これらの予測に基づき、マンションの管理会社による電力、都市ガスなどの大口契約によって、各世帯への利益還元が可能となるとともに、高齢化による地域の温水使用量の減少の傾向を浮き彫りにすることによって、余剰なエネルギー施設の建設等を行うことなく、身の丈の合った地域のエネルギー供給計画の展開によって、コスト削減とともに顕著な温室効果ガス排出規制が期待できる。
地球環境に適合する公共的なシステム構築に向けての外部情報活用の観点からは、前述の住宅内における温水使用行動に関する周辺の情報(例えば台所に人間が居る等の情報)による用途分類精度の向上に加え、気象・気候情報を用いた給湯需給予測精度の向上、広域電力、ガス、および水道水使用情報による地域相互および全域との比較、地域のデジタル地図情報に各階層の所在位置等空間的パターンを見ながらの比較に基づく見える化を対象とする。
図8の構成の地域の中長期給湯需給マネジメントシステム300において、見える化を実現する方法としては、(1)温室効果ガスの排出量等の大小の目安を示す相対評価情報の表示、(2)温室効果ガスの排出状況を体感をもって受け止めることができる情報の並列表示、(3)最下層の個別住居における電気・ガス等のエネルギー使用料金の表示などがある。このうち(1)の表示については最下層L1や中間層L2の同一ブロック内での平均値との比較表示が有力である。世帯員数の違いを考慮した公平さが要求される場合は、平均世帯員数を併せて表示するような対策をとる必要がある。ただし、個人情報保護の厳守が前提である。(2)の並列表示については、住民自身の呼吸によるCO2排出量の表示を取り上げる。住民自身の呼吸によるCO2排出量の表示を取り上げたのは、国民の呼吸によるCO2排出量に対する国全体のCO2排出量の比は、先進国ほど大きい傾向にあり、財団法人省エネルギーセンターのエネルギー・経済統計要覧によると、2009年における米国、日本、ブラジルの比は、それぞれ50、24、5であることから読みとれるように、呼吸によるCO2排出量は生活の快適性の享受度すなわち贅沢度の目安を推し測る基準として用いることができると言えることによる。
前述のように最下層の個別住居向けには、温室効果ガス排出量抑制の最大化の手だてとして、住民による公共的抑制意識の醸成と家計に及ぼすメリットの周知につながる表示情報の作成を行う。前者の公共的抑制意識の醸成の観点から作成した最下層L1の個別住居での表示画面例を図23(a)、(b)に示す。図10に示した情報と同様に、7月の実測値まで得られているとする。図23(a)、(b)は、それぞれ温室効果ガス排出量(CO2換算)の7月までの累積量および7月の排出量と、過去5年の同月までの累積量ならびに7月の実測値との比較を意図して示したものである。相対評価のため同一ブロックの住居平均と参考として世帯構成員の呼吸によるCO2排出量の値が示されている。住居平均等の表示にあたっては、以下同様、個人情報保護を前提に平均世帯数の規模等を考慮することは言うまでもない。世帯構成員は1時間に20Lの呼吸をするとして算出したものである。さらに参考として、給湯要因以外の照明、冷蔵庫、トイレ等での用途を含むすべての要因による、電力、都市ガス、および上下水道の使用で排出された累積量と月間量とともに、将来的に地域から要請されると考える温室効果ガス抑制に向けてのカウントダウン情報を指し示すような個別住居向けに配信される地域目標、ならびに同一ブロック内での平均値の値が示される。
図23(a)によれば、温水使用による温室効果ガス排出量(CO2換算)よりも、世帯構成員の呼吸によるCO2排出量の方が多いことが分かる。図23(b)は、個々の月の温室効果ガス排出量ではなく、1月から7月までの累積温室効果ガス排出量を示し、年間目標が設定されるときに重要な情報を与える。
グラフ表示に充分な実測値の蓄積が行われた場合は、給湯要因による用途別の都市ガス、上下水道の使用による温室効果ガス排出量(CO2換算)については、それぞれ図13および図18のような積み上げ棒グラフのような全体的な傾向や相対比較の把握に適した直感に訴える表示ができる。図23(a)、(b)の数値を用いる場合は、当該年度の1月から7月までの月間量の変化を表す図13および図18のような積み上げ棒グラフ、平成21年から平成25年にまたがる1月から7月までの累積量ならびに7月の月間量に関する、年変化の積み上げ棒グラフでの表示を行う。住居平均や家族呼吸等の比較検討対象とする温室効果ガス排出量を、折れ線グラフにより同時表示すること等によって、より具体的な抑制目標や抑制シナリオを作り易い環境を整え、さらなる公共的抑制意識の醸成を図る。
非給湯要因を含むすべての要因に基づく都市ガス、上下水道、および電力の使用による温室効果ガス排出量(CO2換算)については、それぞれ図11、図16、および図20のような積み上げ棒グラフ、あるいは単純な棒グラフのような全体的な傾向や相対比較の把握に適した直感に訴える表示ができる。電力については、照明、冷蔵庫、テレビ等の用途別実測は、本発明の対象外なので、図20は全使用量を表す単純な棒グラフとなっているが、個別住居における既存の電力需給マネジメント技術、例えばスマートタップの利用によって得られる用途別の使用量情報に基づいて、用途別比較が行える積み上げ棒グラフで表示することが可能である。
後者の家計に及ぼすメリットの周知につながるという観点から作成した最下層L1の個別住居での表示画面例を図24(a)、(b)に示す。図10に示した情報と同様に、7月までの使用料金まで分かっているとする。図24(a)、(b)は、それぞれ都市ガス、電力および上下水道使用料金の7月までの累積料金および7月の料金と、過去5年の同月までの累積料金ならびに7月の使用料金との比較を意図して示したものである。参考として、給湯要因以外の照明、冷蔵庫、トイレ等での用途を含むすべての要因による、電力、都市ガス、および上下水道の使用による累積料金と月間料金が示される。
図24(a)は、エネルギー・水道使用料金および使用量の7月の実測値と過去5年の同月の実測値との比較を意図して示したものである。相対評価のため同一ブロックの住居平均と世帯のエネルギー・水道使用料金および使用量の値が示されている。図24(b)は、個々の月のエネルギー・水道使用料金および使用量ではなく、1月から7月までの累積エネルギー・水道使用料金および使用量を示し、年間目標が設定されるときに重要な情報を与える。
グラフ表示に充分な実測値の蓄積が行われた場合は、図23が示す温室効果ガス(CO2換算)のケースと同様に、給湯要因による用途別の都市ガス、上下水道の使用による使用料金については、それぞれ図14および図19のような積み上げ棒グラフのような全体的な傾向や相対比較の把握に適した直感に訴える表示ができる。図24(a)、(b)の数値を用いる場合は、当該年度の1月から7月までの月間量の変化を表す図14および図19のような積み上げ棒グラフ、平成21年から平成25年にまたがる1月から7月までの累積量ならびに7月の月間量に関する、年変化の積み上げ棒グラフでの表示を行う。住居平均や家族呼吸等の比較検討対象とする温室効果ガス排出量を、折れ線グラフにより同時表示すること等によって、図形表示の特長である全体像把握を可能とするため、無駄な部分の節約や削減可能な部分を浮き彫りにすることによって、家計に及ばすメリット享受の役割を果たすことが可能となる。
非給湯要因を含むすべての要因に基づく都市ガス、上下水道、および電力の使用による料金については、それぞれ図12、図17、および図21のような積み上げ棒グラフあるいは単純な棒グラフのような全体的な傾向や相対比較の把握に適した直感に訴える表示ができる。電力については、照明、冷蔵庫、テレビ等の用途別実測は、本発明の対象外なので、図20は全使用量を表す単純な棒グラフとなっているが、個別住居における既存の電力需給マネジメント技術、例えば電気機器ごとの使用電力が測れ、見える化による節電の意図から使用されている、上述のスマートタップ等の利用で得られる用途別の使用量情報にもとづいて、用途別比較が行える積み上げ棒グラフで表示することが可能である。
ところで、温室効果ガス排出量抑制の最大化の実現にあたっては、個別住居毎にまかせる抑制だけでは限りがある。住民同士の情報共有と合意形成を促すコミュニティづくりが欠かせない。コミュニティの単位としては、近所づきあいで括れる隣組、そして地震等災害による被害最小化を目指した自助共助公助のうちの共助の枠組みを形成する地区等の集まり(以後、単に地区と呼称)などがあげられる。このうち、地区としては、地震対策の一環として、大規模マンションの5階ごとに備蓄倉庫を置くことを義務付けている東京都品川区の例からも、100世帯程度が括りの範囲となる。地震等災害による被害を最小限に食い止めるには、食料や水の備蓄のみならず、地区やその中の個別住居の必要性にマッチした電力、都市ガス、上下水道等のライフラインの迅速な復旧と、それによる供給を実現する体制が不可欠である。地区単位のコミュニティ形成のもとでの、温室効果ガス排出量抑制の最大化に向けた公的な抑制意識の醸成は、地区内における個々の個別住居における日常の電力、都市ガス、上下水道等の使用状況の把握にもつながるので、被災時において限りのある供給可能なエネルギー源や貯水槽、貯湯槽等に残存水がある場合は、優先順位をつけて効果的な配布・活用を行うことも期待できる。
このような観点から、100世帯程度からなる地区を中間層レベルの一つとして作成した、個別住居に関する図23の表示画面例に対応する、温室効果ガス排出量(CO2換算)に関する表示画面例を図25に示す。図25の表示画面例は図23と同様に、1月から7月までの累積量ならびに7月の月間量を表す。図25には、平成21年から平成23年の値までしか表示していないが、図23と同じ5年分を表示してもよい。図25の表示画面例においては、電力、都市ガス、上下水道等の使用の温室効果ガス排出量(CO2換算)の累積量と月間量とともに、給湯要因のみによる累積量と月間量も併記している。さらに、地球温暖化や水資源の枯渇の観点から、今後提示されることが予想される国レベルや地方レベルの温室効果ガス排出量の抑制や節約の目標から算出される地区の目標と、個別住居の関心事の一つである地区内の他の個別住居がどの程度の電力、都市ガス、上下水道等の使用に基づく温室効果ガス排出量抑制の度合が推し測れる地区平均も併せて示している。さらに、温室効果ガス排出量の大小を、身をもって感じる手立てとして、住民呼吸による排出量も記載した。
給湯需給マネジメントセンター330は、上述の図25の表示画面例が表すような数値の蓄積によって、平成23年から平成25年にまたがる1月から7月までの累積量ならびに7月の月間量に関する、年変化の積み上げ棒グラフでの表示を表示装置342にて行う。
地域目標や住居平均の比較検討対象とする温室効果ガス排出量を、折れ線グラフにより同時表示すること等によって、さらなる公共的抑制意識の醸成を図る。共用スペース、玄関等、住民に目のつきやすいところが表示場所となる。最上層の地域レベルでは、表示装置342を住民の集まりやすい地点や市役所等公共機関に設置することも重要である。
図25の表示画面例は中間層の一つである地区に関すものであるが、20世帯程度で括った隣組、あるいは最上層である例えば1000世帯程度の地域レベルにおいても、効果的な見える化のための表示ができる。最上層の地域レベルでの表示な場合の地域比較表示は、同等の表示を行っている他の最上層の地域レベルの値の平均値から算出される。表示場所は各階のエレベーターホール等が候補である。特に、最上層である地域レベルやそれらを足し合せたより上位のレベルにおいては、国や地方にどの位の借金の残高があるのか、所定の時間当たりどの位変わっているのかを表す借金時計の例に倣って、CO2時計と定義し、国が国際社会に向けて掲げる中長期的の温室効果ガス削減目標に基づいて算出される地域の温室効果ガスの排出削減目標量がどの位で、住民の協力によってどのようなペースで削減されているか、を表す削減目標までのカウントダウン情報等の見える化を実現する効果的な表示が挙げられる。
以上、説明した本実施形態の地域の中長期給湯需給マネジメントシステム300によれば、省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)や温対法(地球温暖化対策推進法)による、届け出義務のない家庭部門の温室効果ガス抑制ができる。家庭部門のエネルギー消費量は2010年度において、民生部門に含まれるオフィス・事務所、病院、ホテル等を含む業務部門の消費量より多いという統計結果が示されているので、この効果は重要である。
また、本実施形態によれば、高齢者のほぼ全日をカバーする見守り機能が、副産物として提供できるので、高齢化社会において多大な効果が期待できる。例えば、温水使用行動データ提供による高齢者を対象とする熱中症や孤独死などの阻止につながる終日生活見守りの実現が期待できる。高齢化社会の到来に向けて、本実施形態のシステム運用を基本骨格として、それぞれの高齢者の状態に即した見守りシステムを付け加えることにより、的確な健康見守りや安否確認などの個人情報保護を前提においた公的機関や民間によるサービスの実現が可能となる。高齢者以外でも暴力、虐待、育児放棄等の社会問題となっている諸課題解決についても同様である。福祉担当、保健所等地域の公的外部機関との密なる連携が要求される。無論、温水使用行動データに加え、判断材料となるようなエビデンスを裏づける追加情報が要求される。所定時間間隔における量ベースでの特性(マクロ特性)と所定の期間(例えば1日)における給湯栓の開閉の頻度、時刻、時間(30sec以下の出湯が50−70%)、および流量で表されるイベントベースでの特性(ミクロ特性)の両特性を反映する、例えば1日ごとの温水使用(洗面、台所、シャワー、入浴、その他)に関する行動履歴のモニタリングは、他の諸行動からは得られない量的にも質的にも優れるような世帯全体の日常生活情報が提供可能なことによる。
個別住居毎に給湯需給マネジメント装置の配備によって、各世帯の起床時間をカバーする温水使用行為毎の履歴が得られる。例えば、日単位、月単位、および年単位などの各タイムスパンの温水使用行為の回数、各行為の継続時間・使用量等の多少・増減のモニタリングによって、世帯員の人数の増減、成長や加齢などの変化の大枠を把握することができる。さらに、給湯需給マネジメント装置のオプション機能の追加によって、温水のみならず、トイレ等における水道水使用行為についても同様なモニタリングが行えることにより、全日をカバーする密度の濃い家庭見守りを実現することが可能である。水道をひねったら感知してくれるような、全日に及ぶ頻度の高い水道使用行為に関する日常生活情報の提供によって、電気ポットの使用行為を遠方の親族に知らせる現在の高齢者見守りサービスを超える生活見守りが実現でき、アンケート調査等から伺い知れる病気時の心配をもつ一人住まいの住民の期待に応えることが可能である。
また、ほぼ全日をカバーする温水使用行動の把握によって、世帯全体の日常生活スケジュールの骨組みが分かるので、特に地震や津波などによる大規模災害時において、在宅か外出かの判定に有力な情報を提供する。その結果、高齢者や子供等、弱い立場にある世帯員の安否確認をスムーズに行うことが可能になり、特に生命に関わる減災に大きく貢献できる。
また、本実施形態によれば、世帯の人数・構成、ライフステージ、ライフスタイル等の世帯属性による実態把握が可能なので、集合住宅などでは、オーバースペックに陥らない電力等エネルギーや上下水道の総量の見積が行え、中長期を見据えた一括購入等による家計を助けるコスト削減を促すので、目に見える効果が期待できる。これは、全世帯を対象としたクラスタリングに基づく世帯属性の変化予測が可能であることによる。街全体から見ると、電力等エネルギーや上下水道の余剰な施設や設備の建設を極力減らすことになるので、結果的に家計を助けることにつながる。
また、本実施形態によれば、各家庭の温水利用状態の把握がリアルタイムに近い状態で明らかになることから、家庭群の合計による均し効果や家庭間の差異・ばらつきなどが鳥瞰図的に把握でき、中長期間におよぶデータ蓄積を通して、地域のエネルギーや水道水の無駄のない利用計画を立てることが可能である。また、地域全体において家庭間融通によるさらなる節約も可能となる。さらに上述の給湯需給マネジメント装置におけるオプション機能の拡張によって、用途別の水道使用量時系列等、温水使用行為の場合と同様な情報も取得できるので、温水製造に使う以外の水道水を含む全水道使用量に関して、より無駄のない供給計画を立てることができる。
日本工業規格(JIS)をはじめ、多くの公的機関から、瞬間式ガス給湯器や貯湯式ヒートホンプ給湯機などの給湯設備の性能試験に用いる1日あるいは数日におよぶテストスケジュールが、標準的な温水使用条件として提起されている。しかし、いずれもアンケート調査や統計処理を土台としているので、個別住居毎の実態に合わせるのは自ら限界がある。本実施形態により、すべての個別住居の温水使用の実態の把握が可能である。世帯人数やその構成によって異なる、そして年を追うごとに変わる世帯属性を見据えた多種多様な使用条件を提供できる。よって、世帯ごとの特性や変化などを考慮した給湯設備の性能試験の実現と実態にあう効率測定が期待できる。本実施形態によれば、アンケート調査や統計解析などによらない給湯需要の実態に基づくデータを提供できるので、各々の住宅の給湯需要に合った給湯機器・設備の選択や更新とともに、それらの製造メーカーに各々の住宅の給湯実態そのものを指し示すことができる。これにより、実質的な給湯効率向上に寄与する運用や技術開発を可能とするので、長い目でみると、持続的な温室効果ガス抑制に多大な効果を産み出すことが期待できる。従来はアンケート調査や統計解析に基づいて、住宅における給湯使用の標準モードを定め、その標準モードに基づいて、給湯機器・設備の給湯効率等の仕様が決められていたので、実態に合わない部分もあった。
さらに、本実施形態では、個別住居の台所、洗面、シャワー、湯張、追焚等の温水消費行動の種類判別もできるような仕組みになっているため、得られた温水使用行動情報をアンビエント社会で構築されるコンピュータに転送することによって、個別住居における見守り機能の充実度は非常に大きいと予想される。また、同コンピュータから温水使用行動に関する周辺の情報(例えば台所に人間が居る等の情報)が得られれば、より確実な温水使用行動の判別ができる。このような相互的な情報交換によって、温水利用状態に支配的な世帯の属性の変化の推定などは、益々精度を増すことにつながるので、遠くない将来において、最下層の個別住居から最上層の地域までを含む、統合的なエネルギー節約や水道水節約に加え、家族から地域におよぶ高齢化社会で要求される、人にやさしい見守りの社会実現に貢献することが期待される。
ところで、以上説明した地域の中長期給湯需給マネジメントシステム300によれば、温水使用行動列を測定できる地域の給湯需給マネジメント部301から供給される各家庭の世帯員個々の温水使用行動の使用時刻・使用時間などの給湯需要の実態に基づく各種のデータ(例えば、年間あるいは月間の使用行動回数、延べの使用時間の計測等)の蓄積を通して、各家庭群からなる地域全体の中長期の温水の使用状態や給湯効率が計測でき、地域の中長期のエネルギーや水道水の無駄のない利用計画を策定することが可能である。しかし、さらにそのデータを給湯機器・設備の企業に提供して、実質的な給湯効率向上に寄与する運用や技術開発を可能とさせることで、地域と企業とが協調した、持続的で極めて効果的な温室効果ガス抑制効果を達成することが期待できる。この場合、給湯効率を向上して温室効果ガスの抑制を最大化するためには、中長期給湯需給マネジメントシステムがシステム環境の変化に追従した適応的な応答特性を有することが極めて重要である。そこで、以下説明する他の実施形態では、地域の中長期給湯需給マネジメントシステムに図27に示す給湯需給変化応答モデルを組み込み、図28に示す給湯需給マネジメントセンター700の構成要素である集中情報処理推定策定装置710により、図27に示す地域給湯需給変化応答特性600を演算する構成としたものである。
図27の給湯需給変化応答モデルは、図中に示すように、次の(イ)〜(ハ)の3つの代表入力量およびその推移に対する温室効果ガス排出量、加熱エネルギー量、給湯負荷量、温水使用量等の変化の応答を出力するモデルである。
(イ)地域世帯の、ある年・月における世帯類型、さらに世帯員の男女数、年代、ライフスタイル等で分けた分類グループごとの世帯数、および全て足し合せた全世帯数および年間・月間のそれら世帯数の推移
(ロ)見える化対象量である地域世帯の、ある年・月の温室効果ガスの排出量・削減目標、個別住宅への電気・ガス・上下水道の料金およびそれら対象量の年間・月間量の推移
(ハ)省エネ・節湯給湯設備機器および運用ソフトの更新や導入を媒介にした給湯効率、給湯負荷量、温水使用量のある年・月の値、およびそれら諸量の年間・月間の推移
給湯需給変化応答モデルは、それぞれの入力が一定値の場合の静的な入出力関係、ならびに入力が変化する場合の動的な関係を明らかにするため、本実施形態で提起する地域社会モデルである。(イ)の入力、例えば子供の誕生・独立(巣立ち)、死亡、入居、転居等による世帯類型ごとの世帯数の推移や世帯類型が同じでも世帯員の加齢による年代(年齢)の推移などに対する、温室効果ガス排出量等の出力変化の大きさおよび応答時間特性(時定数、時間変化形状 等)を明らかにするシステム構造を備える。地域の温室効果ガスの排出量・削減目標等の見える化対象量の(ロ)は、地域世帯・世帯員の省エネ・節湯による節約意識の醸成の度合いを推し測る入力である。
図27の見える化対象量のところでは詳細説明の記載はないが、見える化の効果を高めるため、図11−図21に示すように給湯要因に加え、非給湯要因を含めた温室効果ガス排出量、電力・ガス料金、上下水道料金等も合わせ、(ロ)と同様の表示をすることとする。給湯要因の場合と同様に、非給湯要因による電力・ガス・上下水道料金等についても、前述のように既存技術を用いることによって用途別の見える化も可能である。例えばスマートタップ等を用いた照明、冷蔵庫、テレビ等の用途別実測データを取り込めばよい。
給湯需給変化応答モデルは、地域の温室効果ガス排出量の削減目標、電気・ガス等料金等の見える化によって、温室効果ガス排出量と電気・ガス等料金の変化の大きさや応答時間特性(時定数等)を出力する機能をもつ。変化の大きさは見える化の効果の程度を、応答時間特性(時定数等)は、地域の温室効果ガス排出量の削減目標を達成までに必要な目安を与える特性量である。特に、地域の温室効果ガス排出量の削減目標の大きさと達成時間を決めるのに欠かせない、中長期削減計画策定の土台を形成する2大要素である。省エネ・節湯給湯設備機器の更新、導入による給湯効率の向上等の入力(ハ)に対する温室効果ガス排出量等の出力変化の大きさおよび応答特性(時定数等)を与える給湯需給変化応答モデルの出力は、おもに給湯設備関連企業の省エネ・節湯に向けた商品開発のテンポに依存する。給湯設備効率について、省エネ法で定めた目標年度2017年のトップランナー基準値をすでにクリアする商品も出現している。
給湯需給変化応答モデルは、このような高効率の給湯設備が、地域世帯に普及することによる温室効果ガス排出量等の出力変化の大きさおよび応答時間特性(時定数等)を与える機能をもつ。給湯設備本体の効率化ばかりでなく、外部情報の分析・抽出によって温室効果ガス排出量等を顕著に抑制する手段の適用による入出力関係についても明らかにする機能をもつ。代表的な抑制手段として、給湯設備の加熱前の水道水等の代りに太陽熱温水器によって温めた温水を用いて加熱エネルギー量を低減する手段、ならびにヒートポンプユニットに取り込む空気温度を、下水の排熱や家庭熱を使って高め、給湯効率を向上する手段である。これらの手段を実現する設備は大規模になるケースもある。今後の都市計画等の中に組み込まれることを充分考えらえることから、実現性ありとして広義に捉え、図27の給湯設備機器の中に含めて考えることとする。節湯水栓や食器洗浄機の普及・使用率上昇等による温水使用量や給湯負荷量の低減に対する入出力関係についても、給湯需給変化応答モデルが、普及・使用率上昇等による、それらの効果の大きさと応答特性(時定数等)を与える機能については同様である。
温室効果ガス排出量削減等の目標に向けて、給湯需給変化応答モデルが果たす役割は必要不可欠である。(イ)−(ハ)の諸入力に対する温室効果ガス排出量に関する抑制効果の大きさと応答特性(時定数等)を与えるので、それらの動的な特性量によって、はじめて具体的な中長期計画の作成に着手できることによる。
図27において、地域給湯需給変化応答特性600は、給湯需給マネジメント装置(図8の給湯需給マネジメント部301に相当)から計測データを受けて地域世帯の温室効果ガス排出量等を算出する集中情報処理推定策定装置(図8の341に相当)の演算機能によって導出される。集中情報処理推定策定装置は、地域の中長期給湯需給マネジメントセンター(図8の330に相当)に組み込まれている。図27には、地域の中長期給湯需給マネジメントシステムの外部のシステム環境変化610として、世帯属性経年変化611、給湯設備機器の製品開発612、自然環境条件613、公共施設改良の方向性614が挙げられている。
世帯属性経年変化611は、中長期的なスパンの長い経年変化で、国勢調査に基づく、例えば東京都の世帯数・人口予測等を参考に、世帯類型や世帯数等の経年変化を見積もる。世帯類型は、世帯人数と世代数を尺度として分類した変数である。本実施形態では、この世帯類型ごとの給湯効率の向上をできる限り行うものである。中長期的に存続する、総計で少なくとも90%を超える世帯類型は、単独世帯、夫婦のみ世帯、夫婦と子供世帯、一人親と子供世帯の4つである。温水使用はシャワー、洗面等の個人的用途(以後、単に個人用途という)と、シャワーを除く浴槽入浴および台所などの共通用途(以後、単に世帯用途という)とに分ける。特に後者の世帯員1人あたりの使用量が世帯人数と共に減少する所謂スケールメリットの効果を持つことから、その効果を明らかにする。
東京ガス都市生活研究所が行ったアンケート調査報告資料(例えば、風呂文化研究会:現代人の入浴事情2000、現代人の入浴事情2009、親子入浴に関する実態調査2010、現代人の入浴事情2012、その他)によると、個人用途の浴槽・シャワー入浴におけるシャワー使用時間は、顕著な男女差があり、また、年代では10代で最もその差が大きい。個人用途の浴槽・シャワー入浴におけるシャワー使用時間は、世帯員の男女割合・年代(年齢)構成によって変わる。そこで、地域給湯需給変化応答特性600の算出のために、まずは東京ガス都市生活研究所による調査報告が示す男女別年代によるシャワーの使用時間との関係を手本として、シャワーの使用時間をはじめ使用量、使用回数等の諸量と世帯員の性別・年代(年齢)との関係、および世帯類型ごとの加齢による経年変化を把握する。
さらに夫婦が揃っている世帯では、世帯類型が同じでも、専業主婦世帯か共働き夫婦世帯かによって、世帯用途である台所等での温水使用時間等に違いが出てくる。専業主婦世帯では昼間使用が多く、共働き夫婦では食器洗浄機による温水使用時間の節約が増える傾向があること等による。そこで、世帯類型をさらに男女別世代や専業主婦か共働き世帯かまで細かく分類したグループの型式を、世帯類型をさらに分けるという意味合いで世帯分類型と呼称する。したがって、世帯類型をさらに世帯分類型に分けた場合、世帯類型の温水使用時間等の平均値は、それぞれの世帯分類型に含まれる世帯数の重みづけ平均で与えられる。また、図27に示す給湯需給変化応答モデルの構成では、上記スケールメリットの効果等による世帯類型ごとに異なる給湯需要を念頭におき、それぞれの需要に合った給湯設備、特に貯湯式の場合は運転プログラムを含めて給湯効率の向上を促進する構成とされている。
世帯属性経年変化611において用いる過去から現在までの地域(全体)世帯属性620は、図27に示すように、世帯数、平均世帯人数、居住年数、世帯類型ごとの世帯数の比率等の実際の値によって表される。世帯属性を表す基本的な特性、すなわち世帯人数、続柄、年齢および性別については、個人情報保護法に基づき、給湯需給マネジメントセンターの運営主体であるマンション管理組合等が有する管理情報を、各世帯の同意のもとに利用することとする。東京ガス都市生活研究所における「世帯構成員の入浴特性等を調査するための東京生活調査点システム(TULIP)」のような仕組みを作って、同様な世帯属性情報を得てもよい。
地域給湯需給変化応答特性600は、地域(全体)世帯属性620の他、給湯設備機器の製品開発612による給湯効率向上等、自然環境条件613としての気温・湿度変動等、公共施設改良の方向性614としての上下水道設備の改良による温水使用による温室効果ガス排出量低減等、の諸量に関する具体的な数値を入力要素とする。給湯設備機器の製品開発612による給湯効率向上については、企業との連携を前提に、ハード開発まで対象にするのか、ソフト開発で対応できるかを判断する。まずは世帯類型ごとの給湯設備が対象となる。実測データが蓄積した段階では、世帯分類型まで考える必要性を判定する。ソフトの入れ替えで済めば短期的な、ハードまで必要であれば長期的な課題とし、中長期的な給湯効率向上を図る。
給湯設備機器の製品開発612での節湯化による温室効果ガスの排出抑制については、温水使用時の温水流量を絞ることと温水使用時間を短くすることの両面から考える。前者については節湯水栓の導入等が対象となる。年間、月間等をスパンとする温水使用時間に対する温水使用量の比で与えられる長時間平均流量により、節湯水栓の使用の有無および節湯化の程度から温水使用量節約の度合いを把握する。食器洗浄機についても同様であるが、運転時の電流使用パターンが機械的なので既存の技術を使って、節湯水栓とは切り離して節約の度合いを把握する。中長期的には、個人用途の温水使用時間等については、世帯員の誕生から世帯を去るまでの加齢による経年変化を解明することが望まれる。世帯人数と世帯員の男女数および年齢構成を与えれば世帯の給湯需要が推定できることによる。そこで、個人用途使用行動と世帯員との対応をつけるための浴槽・シャワー入浴1回あたりのシャワー使用時間と使用時刻・順番等を分類軸とする温水使用行動クラスタリングと世帯類型変化時の世帯員属性との対応関係を、長年に亘って把握し、経年変化を解明する。
地域世帯の中長期的温室効果ガス排出量の推定にあたっては、将来予想できる代表的な世帯類型およびより詳細な世帯分類型を定める。世帯類型ごとの温水使用量等は、過去から現在に至るまでのトレンドから得た予測式に基づいて将来予測を行う。図27に示す公共施設改良等614におけるCO2排出係数の変動については、水道局、電力・ガス会社等による現在から将来にわたる変動予測に注視する。これらの予測が示す数値の積から中長期的温室効果ガス排出量の推定をした地域給湯需給変化応答特性600を得る。
中長期に及ぶ地域世帯属性620における世帯類型ごとの世帯数は、基本的に国勢調査に基づく東京都区市町村の世帯数、男女年齢別人口等の推計値を用いる。独自に対象とする地域に合った将来推計を行い、その結果を用いても良い。将来的に存続する世帯類型等ごとの温室効果ガス排出量とそれぞれの世帯数の積を取り、地域の全世帯分加算することで、地域世帯全体のCO2換算温室効果ガス排出量を推定する。
温室効果ガス排出抑制は、給湯設備機器の性能向上によってもたらされる。現在のところ、給湯設備、節湯水栓、および食器洗浄機が対象となる。特に給湯設備についての給湯効率の向上に関する将来予測が重要である。
給湯設備については省エネ法で定めた省エネ性能の向上を促すための給湯効率についての目標基準(トップランナー基準)値が設定される。電気を用いる貯湯式のヒートポンプ式給湯機(電力による給湯設備に該当)については、現在の2009年度基準値に続いて目標年度を2017年度とするトップランナー基準値が設定されている。トップランナー基準値は、貯湯容量、仕向地(一般地/寒冷地)、保温(循環追焚)機能の有無、貯湯缶数で分けられた36区分(現在)ごとの基準エネルギー消費効率の値で与えられる。エネルギー消費効率は給湯効率に該当する。目標値は2次エネルギーである電力消費に対する効率なので、ガス消費に対する効率と比較するため、単位電力量を得るのに要した一次エネルギー量に対する単位電力量との比で掛ける必要がある。
瞬間式のガス温水機器(ガスによる給湯設備に該当)については、給湯付ふろがま・給湯暖房兼用機の現在のトップランナー基準値が、それぞれ2006年度および2008年に設定されている。前者のトップランナー基準値は、通気方式(強制燃焼/自然燃焼)、循環方式(強制循環/自然人感)、吸排気方式(屋外/屋内(半密閉/密閉))による17区分(現在)ごとの基準エネルギー消費効率の値で与えられる。ガスに対する一次エネルギー量については、例えば都市ガス13Aの単位体積当たりの熱量(45MJ/m3)を用いる。
市販される給湯設備製品給湯効率は、例えば経産省資源エネルギー庁省エネ性能カタログ等によって公表される。省エネ法で定めたトップランナー基準値をクリアしているかどうか、そうであれば何%上回っているかが示される。最大のトップランナー値を示す製品群も明示する。個別世帯では、世帯類型等によって、自宅がどの区分の給湯設備が適合するかについて検討する手掛かりを提供する。しかし、これら給湯効率の数値は、標準的な給湯モードによる性能試験に基づくため、世帯の温水使用実態から場合によっては顕著な差のある数値になることは否めない。
本発明の給湯需給変化応答モデルは、地域世帯全体の例えば年間にわたる実測に基づく給湯設備の効率の平均値の変化を出力する機能をもつ。省エネ法で定めたトップランナー基準値に狙いを定めて製造された製品群の給湯効率の値(カタログ値)、ならびに企業や区分の異なる給湯設備ごとの導入台数を計数することにより、カタログ値がそのまま当てはまると仮定した場合の、地域世帯全体の給湯効率の年間をスパンとする平均値を算出できる。それぞれの給湯設備の給湯効率を、導入台数で重みづけして平均をとればよい。以後、地域世帯全体、世帯類型ごと等を対象に導入台数で重みづけした平均値を、以後カタログ平均値と呼称する。
実際の平均値とカタログ平均値は、地域世帯全体のみならず、世帯類型ごと、およびさらに細分類した世帯分類型ごとに算出できる。それらの差が小さい世帯類型ほど、カタログ平均値による選択が適切かの判断材料となる。実際の平均値とカタログ平均値との差異が非常に大きい場合は、給湯設備選択の誤りや世帯属性の急激な変化などの要因が考えられる。運用プログラムの更新等ソフト面で効率向上が図れる場合は、まずは運用面での改良を考える。ハード面での効率向上しか望めない場合は、設置後の給湯設備の耐用期間が10年、長くて15年程度と言われているので、それらのサイクルを念頭においた中長期的なスパンの中での対策をとることが前提となる。
給湯設備機器の性能向上の他、温室効果ガス排出抑制は、地域住民の節約意識によってももたらされる。図27の給湯需給変化応答モデルにおいて、地域給湯需給変化応答特性600の出力要素である見える化情報のうち温室効果ガス排出量は、上下水道量等に地域ごとに異なるCO2排出係数を乗算部640で乗算してCO2排出量に換算する。見える化情報630には、CO2換算排出量の他、上下水道料金・電力・ガス料金等の家計に関わる情報を含むこととする。見える化による地域住民の温水・エネルギー節約意識の向上を意図して、地域給湯需給変化応答特性600の出力要素である見える化情報630は地域給湯需給変化応答特性600の入力要素としてフィードバックされ、温室効果ガス排出抑制を促進する。
経産省資源エネルギー庁の給湯設備等に関する省エネカタログには、省エネに向けた温水機器の上手な使い方に関するお勧め情報が記載されている。浴槽入浴は間隔を空けず、なるべく追焚しないこと、給湯温度は小まめに調節し普段から低めに設定すること、食器洗いやシャワーの出しっぱなしはしないこと、食器を洗う前に水につけたり、ぼろ布で汚れをふき取っておくことにより温水使用量を減らすこと等である。温水の出しっぱなしをなくすことは、温水使用時間を短くすることによる節湯効果を促す。さらに、洗い心地や洗いの効果を落とさないような節湯水栓の導入によって、温水流量を絞ることによる温水節約が期待できる。
見える化による地域住民の温水・エネルギー節約意識の向上は、省エネに向けた温水機器の上手な使い方に反映される。本実施形態では、給湯需給マネジメントセンターの運営主体が、温水機器の上手な使い方をする世帯数の増大によって、見える化の効果を推し測ることを可能とする。この見える化効果には、国レベルでの温室効果ガスの中長期的な削減目標が設定された場合の見える化効果を含む。地域住民の温水・エネルギー節約意識に及ぼす見える化の効果は、地域全世帯のうち省エネに向けた温水機器の上手な使い方を実践する世帯の割合や、世帯数の増大による温室効果ガス排出の抑制量で推定する。
そのため、本実施形態では、温水使用行動列等の計測から得られる諸量を用いて、温水機器の上手な使い方ごとに、地域世帯の節約行動から排出量抑制に至る流れをあきらかにした上で計算式を作成し、その流れの中で得られる排出抑制量を算出するソフトウェアを用意する。地域世帯の台所用途に関して、食器洗いの節水につながる上手な使い方の例をとると、温室効果ガス排出抑制の度合いは、加熱エネルギー量と温水使用に用いる上下水道量の減少具合による。節約行動が、給湯負荷量を抑えることを通して加熱エネルギー量の減少を導く。給湯温度を下げるおよび温水使用量を少なくする節約行動によって給湯負荷は低減する。
ここで、給湯需給マネジメント装置による上記の温水使用行動列等の計測によって、地域世帯全体および個別世帯の、温水使用の全用途および用途別の、年間、月間等における、(1)温室効果ガス排出量、(2)加熱エネルギー量、(3)給湯負荷量、(4)温水使用量、(5)平均給湯効率、(6)平均流量、(7)平均温度、(8)加熱前低温水(水道水)温度、(9)温水使用日数、(10)温水使用頻度、(11)温水使用時刻、および(12)温水使用時間を把握することができる。これらのうち、年間・月間平均流量は、年間および月間の温水使用時間に対する温水使用量の比で与えられる。年間・月間平均温度は、年間および月間の温水使用ごとの流量重みづけ平均温度をそれぞれの使用時の温水使用量で重みづけした平均温度である。温水使用の用途は、シャワー、洗面等の個別用途と湯張、追焚等の世帯用途に大別される。この他、見える化による世帯の削減・節約意識の向上を意図して、上下水道料金と電気、ガス等エネルギー料金が表示対象となっている。
給湯効率に対する給湯負荷の低減量の比から、加熱エネルギー量の低減分そして電力、ガス等のCO2排出係数を掛けることによって、温室効果ガスCO2換算量の抑制量を得ることができる。計算式は、このような因果関係に基づく流れにそって作成する。注意すべきところは、給湯効率に対する給湯負荷量の比で決まる加熱エネルギー量が減少した場合、高効率の給湯設備の導入等による節約行動によらない効果を切り離して、見える化等による節約行動の効果のみを算出できる点である。したがって、給湯負荷量を抑える節約行動の結果に基づく抑制量の算出は、給湯負荷量、給湯温度、温水使用量、給湯効率等のから、温室効果ガスCO2換算量の抑制量を導く計算式によって行えばよい。
温水使用に伴う温室効果ガスCO2換算量は、上下水道の使用量と上下水道に関するCO2排出係数の積で与える。温水使用量を抑える節約行動による効果は、年間・月間等のスパンの温水使用時間に対する温水使用量に比で与えられる長時間平均流量に対するその間の温水使用量の比である温水使用時間の短縮の度合いから推定する。平均流量が顕著に減少するような節湯水栓の多数の取り付けがあった場合は、温水使用量と温水使用時間との2つの量から節湯水栓の性能評価を行う。洗い心地や洗いの効果が変らないような性能の節湯水栓では、温水使用時間の大きな変化はないが、洗い心地や洗いの効果が悪くなる場合は温水使用時間が長くなることによる。このような場合、温水節約行動による効果は、節湯水栓の性能評価を踏まえて行う。
以上、食器洗いの節水につながる上手な使い方を例にとって、節湯水栓を除く節約行動による効果を定量的に把握する考え方に言及した。それ以外の浴槽入浴は間隔を空けず、なるべく追焚しないこと、給湯温度はこまめに調節し普段から低めに設定すること等による効果の把握も同様に行うことができる。これらすべての効果を対象に見える化による温室効果ガス抑制量の推定を行うことが可能である。
図27の給湯需給変化応答モデルにおいてフィードバックループを構成する入出力関係が示すように、本実施形態では、温室効果ガスCO2換算排出量・削減目標、上下水道料金・電力・ガス料金等を、見える化情報として地域世帯に入力したときの地域世帯給湯需給変化応答出力を導出することを可能とする。
温室効果ガス抑制の最大化を実現するには、地域世帯と給湯設備機器の製品開発に携わる企業との連携は必要不可欠である。そのためには地域給湯需給変化応答特性600の出力を図27に650で示したように給湯設備関連企業へ実測データとして提供することで、給湯設備関連企業との協調的な温室効果ガス排出抑制に向けた動的な展開が要求される。また、図27に670で示す給湯効率の向上による省エネ化等に向けて、企業間の地域世帯に密着した製品開発の促進、ならびに世帯人数や世代数を念頭に置いた世帯類型それぞれに適合するようなソフトウェア、例えばヒートポンプ式給湯設備の運転プログラムを含めた給湯設備等の準オーダーメード化660の流れが具体的になることが期待できる。このような要求および期待の実現を図るため、上述の見える化の場合と同様、給湯設備機器の製品開発612のブロックから、地域給湯需給変化応答特性600のブロックへの矢印によってフィードバックループを構成する入出力関係の仕組みが作られている。
本発明のような、温室効果ガス抑制の最大化に向けた、中長期に及ぶ給湯需給予測を意図するシステムは存在しない。水道事業経営計画の策定で要求される世帯(家庭)の水需要の中長期的予測に関する検討は、いくつかの文献(例えば、清水他:「社会動向と水利用機器普及を考慮した使用目的別水需要予測に関する研究」、環境工学研究論文集、第46巻、pp.277-286,2009、その他)に記載されている。世帯の水道水の使用に限ったものであるが、中長期的予測にあたっては、(1)料金算定等に適用される5年程度の中期経営計画、(2)10年程度を見通した地域水道ビジョン、(3)施設の大規模な更新を伴う30−40年先の長期計画、の計3つのシナリオが想定されている。水道水の使用行動については、従来どおりアンケート(水利用行動記録)調査や聞き取り調査をもとに、例えば水道水使用を伴う湯張の回数等の推定が行われている。これに対し、本発明の温室効果ガス抑制の最大化に向けた中長期に及ぶ給湯需給予測を意図するシステムは、そのような調査の代わりに、給湯需給マネジメント装置を用い、温水使用開始・終了時刻、その間の使用時間、そして使用頻度(回数)を機械的に実測するものであり、上記の水需要予測の手法とは本質的に異なる。
あえて水道水の使用に限って、本発明システムと上記の水需要予測の手法との違いを挙げれば、水需要予測の手法で水道水計測に用いられている量水計と呼ばれる計測器のサンプリング時間は5分であり、温水使用に関する本発明の用途すべてにおいて、実用に耐える使用時間の測定精度を得ることができない。本発明システムで必要とされる水道水使用に関する使用時刻および使用時間の測定は不可能であり、例えば入浴時のシャワー用途の使用時間に対する水道水(温水)使用量の比から得られる平均的な流量を把握することはできない。したがって、上記の水需要予測の手法では、節水(節湯)型のシャワー水栓等が使われ始める時期やそれ以後、どの程度の水道水節約が実現しているかの具体的なデータを得られず、また、アンケート調査を用いているので人為的な誤差は免れない。水需要の中長期的な予測を信頼性の高いレベルまで持ち上げるには限界があることによる。
次に、上述した給湯需給変化応答モデルを実現するために地域給湯需給変化応答特性600を演算・算出する、本発明に係る集中情報処理推定策定装置の他の実施形態について詳細に説明する。
図28は、本発明に係る集中情報処理推定策定装置の他の実施形態の機能構成図を示す。図28において、給湯需給マネジメントセンター700は、本実施形態の集中情報処理推定策定装置710と、給湯需給マネジメントデータベースシステム720とを含んだ構成とされている。給湯需給マネジメントセンター700は、図8の給湯需給マネジメントセンター330に相当し、集中情報処理推定策定装置710は、図8の集中情報処理推定策定装置341に相当する。また、給湯マネジメントデータベースシステム720は、各世帯の給湯マネジメント装置730-1〜730-Nがそれぞれ出力する計測データ(温水使用行動列)を少なくとも複数年記憶する本発明の第1の記憶手段と、地域の全世帯の世帯属性、給湯設備の機器の技術情報、および給湯モニター情報を含むシステム環境の変化に応じた給湯関連情報740を外部機関から取得して記憶する本発明の第2の記憶手段とを構成している。なお、図28の給湯需給マネジメントセンター700内には、集中情報処理推定策定装置710および給湯需給マネジメントデータベースシステム720以外に、例えば通信ネットワークに結ばれた入出力装置や表示装置などの構成要素も含まれているが、それらの図示は省略している。
給湯需給マネジメントセンター700は、各世帯の給湯需給マネジメント装置730-1〜730-Nからそれぞれの計測データを受け取ると共に、給湯需給マネジメント装置730-1〜730-Nに対しそれぞれ必要に応じて制御指令を送信して互いに独立に給湯制御を行う。給湯需給マネジメント装置730-1〜730-Nは、図8の給湯需給マネジメント部301に相当する。また、給湯需給マネジメントセンター700は、外部機関による給湯関連情報740を外部から受け取り、節水・省エネ意識の向上を促す地域世帯への階層的見える化情報750、および中長期の給湯需給推定・計画策定による各種情報760を出力する。節水・省エネ意識の向上を促す地域世帯への階層的見える化情報750、および中長期の給湯需給推定・計画策定による各種情報760は、集中情報処理推定策定装置710で作成される。
外部機関による給湯関連情報740は、(1)公共機関による情報、(2)給湯モニター情報、(3)企業からの節湯・節水、省エネ・創エネ機器・設備技術情報からなる。
(1)の公共機関による情報については、例えば10年20年後の中長期的の世帯人数や同居世代数による世帯類型ごとの世帯数、男女別年齢ごとの人数等については、現在までの数値から推定することは困難であるので、総務省国勢調査、厚労省国民生活基礎調査等による世帯属性情報や、国勢調査に基づく地域(例えば、東京都区市町村)の世帯数、男女年齢別人口等の予測情報等が対象となる。多くの地域で当てはまる世帯給湯予測モデルの構築にあたっては、気温・湿度等の気象情報を入力変数とする。気象情報を入力変数とすることによって、気象情報が異なる別の地域の世帯属性の経年変化による温室効果ガス排出量の増減を推定することが可能である。給湯設備のトップランナー基準については、将来的な給湯効率の数値が出されるので、10年程度の給湯設備の更新による温室効果ガス排出抑制の度合いを見積もる足掛かりを提供する。温室効果ガスCO2排出係数値については、水道局等による温室効果ガスの抑制努力次第で大きく変わり得るので、そのような排出規制の流れの中で注視する必要がある。また、水道・電気・ガス料金の情報も公共機関による情報に含まれる。(1)の公共機関による情報のうち、気象情報は図27の自然環境条件613の情報に相当し、それ以外は図27の公共施設改良等614の情報に相当する。
(2)の給湯モニター情報は、東京ガス都市生活研究所の特に入浴に関するTULIPと呼称されるモニターシステムによる長年にわたる膨大なアンケート実態調査を求めた給湯モニター情報である。この給湯モニター情報は、給湯需給マネジメント装置730-1〜730-Nからの計測データから得られる入浴関連情報、例えばシャワー使用時間と男女別年代(年齢)との関係等の事前のひな型および突合せ対象として活用できるので、特に給湯需給に関するシステム設計において初期の羅針盤の役割を果たす。(2)の給湯モニター情報は、図27の世帯属性経年変化611の情報に相当する。
(3)の節湯・節水、省エネ・創エネ機器・設備技術情報は、節湯水栓、食器洗浄機、太陽熱温水器、熱電併給システム等の日進月歩の製品開発情報で、これは上記の給湯設備のトップランナー基準と同様、地域世帯の温室効果ガス排出抑制の将来に向けての見通しを得る根拠となる。(3)の節湯・節水、省エネ・創エネ機器・設備技術情報は、図27の給湯設備機器の製品開発612の情報に相当する。
給湯需給マネジメントセンター700のシステム構成要素である集中情報処理推定策定装置710は、各世帯の給湯需給マネジメント装置730-1〜730-Nから供給される計測データと、外部機関による給湯関連情報740とに基づき、図28にステップIからVIIIまでの8段階の演算処理を順次に行い、節水・省エネ意識の向上を促す地域世帯への階層的見える化情報750、および中長期の給湯需給推定・計画策定による各種情報760を出力する。地域世帯への階層的見える化情報750、および中長期の給湯需給推定・計画策定による各種情報760は、図27に示した地域給湯需給変化応答特性600に基づく出力情報である。
まず、第1段階の演算処理Iでは、集中情報処理推定策定装置710は、図27の地域給湯需給変化応答特性600に示したシャワー、洗面、湯張、台所等の用途別の見える化対象量を含む地域(全体)給湯特性代表量を算出する。地域(全体)給湯特性代表量の算出にあたっては、給湯需給マネジメントデータベースシステム720に予め保存されている算出のベースとなる給湯特性データを用いる。
集中情報処理推定策定装置710は、第1段階の演算処理Iを図29に示すフローチャート等に基づいて行う。図29において、DA1は上記の給湯特性データの一例を示し、地域間の相互比較や中長期的気候変動の影響把握のための温水使用量の増減に関わる体感温度や不快指数などの算出に必要な気温・湿度の気象データと共に、温水使用量、給湯負荷量、加熱エネルギー量それぞれの1月から12月までの月間量とその合計である年間量とからなる。なお、給湯特性データは図29のように同じ年の1月から12月までの1年間のデータでなく、途中の月、例えば9月までの月間量でも何ら問題はない。その場合は、1年間に至らない中間的合計量か前年の10月−12月のデータを含めた1年間の合計量を算出すればよい。
第1段階の演算処理Iでは、まず集中情報処理推定策定装置710に対し初期入力をする(ステップS1)。この初期入力では、指定年月とその時点での水道・電気・ガス料金表DA2に示された電気、都市ガス、上下水道の使用に伴う温室効果ガス排出量をCO2換算するためのCO2排出係数と料金表の数値とを入力する。次に、集中情報処理推定策定装置710は、世帯番号nに初期値である「1」を代入し(ステップS2)、続いて世帯番号n(この時点では「1」)の世帯の給湯特性データを給湯特性データDA1の中から受け取る(ステップS3)。この給湯特性データは、温水使用量V(n)、給湯負荷量Q(n)、加熱電力量EE(n)、加熱ガス量EG(n)とからなる。加熱エネルギー量E(n)は、加熱電力量EE(n)と加熱ガス量EG(n)との和で算出される。なお、この時点ではn=1である。
続いて、集中情報処理推定策定装置710は、ステップS3で取得した世帯番号1の給湯特性データにCO2排出係数を記載した表DA2から得たCO2排出係数を掛けて温室効果ガスCO2換算排出量G(n)を算出し(ステップS4)、さらに、水道・電気・ガス料金C(n)を算出する(ステップS5)。次に、集中情報処理推定策定装置710は、ステップS3〜S5で得た温水使用量V(n)、給湯負荷量Q(n)、加熱電力量EE(n)、加熱ガス量EG(n)、温室効果ガスCO2換算排出量G(n)、水道・電気・ガス料金C(n)のそれぞれを前回の値に加算して温水使用累積量SV(n)、給湯負荷累積量SQ(n)、加熱電力累積量SEE(n)、加熱ガス累積量SEG(n)、温室効果ガスCO2換算排出累積量SG(n)、水道・電気・ガス累積料金SC(n)を算出する(ステップS6)。
続いて、集中情報処理推定策定装置710は、世帯番号nが全世帯数Nに等しいか否かを判定する(ステップS7)。この時点ではn=1であり、Nと等しくないので、集中情報処理推定策定装置710は、世帯番号nを1加算して(ステップS8)、次の世帯番号「2」に更新した後、再び世帯番号「2」について上記のステップS3〜S6の演算処理を行う。以下、同様の演算処理を繰り返し、世帯数Nの全世帯について上記のステップS3〜S6の演算処理を行う。これにより全世帯Nの地域の温水使用累積量SV(n)、給湯負荷累積量SQ(n)、加熱電力累積量SEE(n)、加熱ガス累積量SEG(n)、温室効果ガスCO2換算排出累積量SG(n)、水道・電気・ガス累積料金SC(n)が得られる。
世帯数Nの全世帯について上記のステップS3〜S6の演算処理を行うと、ステップS7でn=Nと判定され、集中情報処理推定策定装置710は、給湯効率を算出し(ステップS9)、演算処理を終了する(ステップS10)。地域間の相互比較等に用いる年間と月間の給湯効率は、ステップS9において全世帯の給湯負荷量の合計量SQi(N)と換算した加熱エネルギー量の合計量SEi(N)との比(SQi(N)/SEi(N))により求められる。給湯負荷量の合計量を表す記号SQi(N)等につけられた添え字iは、図中の世帯特性データ例の行成分の1−12月および年間に該当する。加熱エネルギー累積量は、SE(N)は、加熱電力累積量SEE(n)と加熱ガス累積量SEG(n)の和で与えられる。なお、用途別の温水使用量、例えばシャワー温水使用量等については、図29の給湯特性データDA1に、用途別のデータを挿入すればよい。ただし、夜間電力を用いるヒートポンプ式給湯機のような貯湯するタイプのものは、加熱エネルギーを用途別に区別することができないので、加熱エネルギーおよび給湯効率は全用途を含めたものとなる。
このようにして、上記の累積量SG(N)は年間・月間温室効果ガスCO2換算排出量として、累積量SC(N)は年間・月間の水道・ガス・電気料金として、累積量SV(N)は年間・月間温水使用量として、加熱電力累積量SEE(n)と加熱ガス累積量SEG(n)との和である累積量SE(N)は年間・月間エネルギー量として求められる(ステップS20)。これらは地域給湯特性代表量のうち、全用途・用途別見える化対象量である。また、その他の給湯特性代表量としてステップS9で年間・月間給湯効率が算出される。
また、地域給湯特性代表量のうち、全用途・用途別見える化対象量および年間・月間給湯効率以外の全用途・用途別年間・月間温水使用時間、全用途・用途別年間・月間温水使用頻度についても上記と同様にして算出される。電気、ガス以外の石油等を使用する場合も同様である。なお、地域を階層化に分けて見える化を行う場合は、階層の中に含まれる世帯の合計量を図29と同じ手順で行えばよい。個別の世帯では、既に温水使用量等は算出済みなので、CO2換算計算、電気料金等の計算、給湯効率の計算を行えばよい。このようにして、集中情報処理推定策定装置710は、第1段階の演算処理Iで演算処理して得られた上記の全用途・用途別見える化の対象量を地域世帯への階層的見える化情報750として出力することで、各階層の節水・省エネの意識の向上に寄与する。
次に、集中情報処理推定策定装置710は、図28に示す第2段階の演算処理IIを行う。第2段階の演算処理IIでは、代表的世帯類型ごと、さらに世帯員の性別、年齢等の構成が類似の世帯をグループ化する。これは次の理由による。世帯属性が温室効果ガス排出量等に及ぼす影響を世帯人数と世代数で分けた世帯類型で見積もることには無理がある。例えば、個人用途である温水シャワー使用量は、世帯類型が同じでも男女数および年代によって、世帯用途である浴槽入浴時の湯張・追焚量と、湯張・追焚目標温度、年間・月間等におけるシャワー入浴と浴槽入浴の回数、および回数割合が特に年代によって変わるからである。世帯類型のうち将来的に存続し続ける世帯類型は、単独世帯、夫婦のみの世帯、一人親と子供の世帯、夫婦と子供(子供の人数ごと)の4種類である。3人以上の子供のいる世帯、および3世代世帯数は減少し続けている。中長期にわたる温室効果ガス排出量の推定には、世帯類型ごとの世帯数変化を予め見積もっておくことも必要不可欠である。
そこで、第2段階の演算処理IIでは、上記の観点から世帯類型の男女数および年代によって細分化した世帯分類型のグループ分けをもって、温室効果ガス排出量等の地域世帯全体の中長期的な推定および計画策定を行うための処理を行う。すなわち、集中情報処理推定策定装置710は、給湯需給マネジメントセンター700の運営主体であるマンション管理組合等から得た地域各世帯の世帯属性を表す基本的な特性、すなわち世帯人数、続柄、年齢および性別等の管理情報を、通常の並び替え機能を使って世帯数分のデータ行を有するデータ表(基本世帯属性表)を作成する。図30は、基本世帯属性表の一例を示す。図30に示すように、基本世帯属性表は、(1)世帯番号、(2)世帯人数、(3)世代数、(4)配偶者あるいは世帯主である女性の年齢、(5)同じく男の年齢、(6)子供と祖父母の年齢、(7)同じ性別、(8)同じく続柄、(9)各世帯ごとの温室効果ガス排出量、給湯効率等に関する集中情報処理の対象データを同一行の列に順番に書き込んだ、世帯数分のデータ行を有するデータ表である。
上記基本世帯属性表の作成にあたっては、まず世帯人数、世代数の順の優先順位のもと並び替えを行い、世帯数の多い世帯類型ごとに分類を進めていく。次に、世帯類型が同じ場合、男女構成と年代構成が類似した世帯をまとめグループ分けする。これは、男女数(子供や親が同居の場合)、および世帯員の年代によって、特に個人用途であるシャワー用途の温水使用量等が顕著に異なることから、加齢による世帯の経年変化を把握するために不可欠な男女の差異および年代の違いによる温水使用量の違い、ひいては温室効果ガス排出量の違いを明らかにするためである。そのため、女性あるいは女親を軸として考え、例えば夫婦と複数の子供が同居する世帯では、まず子供の男女数で区別する。
次いで、子供の男女数が同じ世帯については、女と男の子供の生まれた順番が違っても、子供間の年齢差が縮まれば、温室効果ガス排出量等の差異は小さくなると考え、世帯全体の温水使用量等はあまり変わらないと仮定して、母親が同じ年代(年齢)であれば、子供および世帯主(夫)の年齢は同一類型の世帯では同じとみなす分類分けを行うこととする。母親の年齢と複数の子供および世帯主(夫)との年齢差は、母親が第1子、第2子、第3子等を出産した時、および初婚時の平均年齢差を用いることとする。このような仮定をするのは、厚労省統計局「平成26年我が国人口動態」によると、3人の子供を持つ母親の場合、第1子と第3子との平均年齢差が、1975年では4.6歳であったのが、2012年では3.0歳と縮まる傾向にあるので、子供の年齢構成を母親の年齢で一律に決めても、温水使用量等の検討には問題がないと思われることによる。そこで、地域世帯全体の母親が子供を出産した年齢の平均値でもって、母親と子供の年齢差を一律に考える。例えば、母親と第1子、第2子、第3子等との平均年齢差が、30歳、31歳、32歳等であれば、全ての世帯においてそうであるという前提でもって、近似的な分類を行う。3人の子供をもつ母親が同年齢であれば3人の子供もそれぞれ同じ年齢であると考える。個人用途の例えばシャワー使用量については、この程度の近似であれば差し支えないとする。
夫婦の場合は、初婚の平均年齢差で、全ての夫婦の年齢差とする。同様な理由である。一人親で男親の場合は、母親の平均出産年齢に夫婦平均年齢差を加えて、子供との年齢差とする。夫婦と祖父母との年齢差も同様に考える。そして、世帯類型に加え、母親あるいは女を各年代(例えば、10年幅で30代、40代、・・・、70代、・・・)のうちのどこに入るかによって世代分けをすることにする。母親が30代であれば0代の子供がいることとする。少数ではあるが、複数の祖父母がいる世帯では、世帯主あるいは配偶者との親子関係をもとに同様なグループ分けをすることとする。世帯類型ごとのグループ分けについては、上記の方法以外に他の適切な方法があれば上記の方法に限定されるものではない。
なお、上記の(1)−(9)の項目のうち(5)−(8)の項目については、それぞれ世帯主以外の世帯員の人数分が書き込める複数の列を用意し、誕生日順に書き込む。また、性別および続柄については自然数で対応させることとする。該当しない場合は空白とする。配偶者あるいは世帯主である女の年齢を先に記載したのは、子供と親および子供同士の平均年齢差計算の場合、出産年齢で計算する方が都合がよいことによる。
次に、集中情報処理推定策定装置710は、図28に示す第3段階の演算処理IIIを行う。第3段階の演算処理IIIでは、グループ分けした世帯類型ごとに第1段階の演算処理Iで求めた諸量(年間・月間水道・ガス・電気料金を除く)の原単位量の平均量等、ならびに基準となる原単位量と世帯人数および世代数との関係を算出して、世帯類型が及ぼす特に世帯用途使用量のスケールメリット効果(集合効果)を把握する演算を行う。ここで、「原単位量」は、1日1人あたりの年間・月間平均量とする。
平成22年国勢調査によると、世帯数の増加と共に世帯平均人数の減少が止まらない。施設等を除く一般世帯数は5184万世帯と20年前よりも約27%増加したのに対し、一般世帯平均人数は2.42人で、20年前の2.99人に比べ20%程度減少している。世帯数の多い順に、単独世帯、夫婦と子供世帯、夫婦のみ世帯、一人親世帯、3世代世帯で、いずれも5%以上を占め、全体では99%以上を占める。東京23区の一般世帯平均人数は1.95人で、多人数世帯がより少ないことが窺い知れる。本実施形態では、単独世帯から3世代世帯までの世帯を、世帯人数と世代数を尺度に分類した世帯類型を用いる。
このような殆どの世帯をカバーする世帯類型を対象に世帯人数などによるスケールメリット効果(集合効果)を把握するために、集中情報処理推定策定装置710は、第3段階の演算処理IIIで世帯員1人・1日あたりの温室効果ガス排出量等の原単位量を算出する。世帯員が少ない世帯ほど、温水使用量や加熱エネルギー量の原単位量が多いことが知られている。したがって、単独世帯の1日あたりの温水使用量等は原単位量そのもので最大である。スケールメリット効果(集合効果)を把握するにあたっては、図31に示すように、温水の使用用途を、浴槽入浴およびシャワー入浴におけるシャワー、洗面等の個人用途と、シャワーを除く浴槽入浴および台所などの、世帯人数が多いことに基づくスケールメリット効果(集合効果)が効く家族共通性の強い世帯用途に分けて考えることとする。
次に、集中情報処理推定策定装置710は、図28に示す第4段階の演算処理IVを行う。第4段階の演算処理IVでは、個人用途使用量、特に浴槽・シャワー入浴におけるシャワーの使用時間、使用量、使用回数等が世帯員の男女割合・年代(年齢)構成によって顕著に変わることから、上述諸量と世帯員の性別・年代(年齢)との関係、および世帯類型ごとの加齢による経年変化を把握する処理を行う。すなわち、世帯員の男女差や年齢の違いによって個人用途の温水使用量が異なる。特に洗面に比べて温水使用量が大幅に多いことが知られているシャワー用途では、男女の違い、年齢の違いによって、その差異は顕著である。温水使用に関する諸量について、誕生から世帯を去るまでの間の加齢による経年変化を、男女それぞれの年代(年齢)ごとに把握することとする。年代に関する分類については、母親あるいは女性を軸とした前述の近似的な分類方法でグループ化する。
東京ガス都市生活研究所において、男女別の10代から60代までの10歳間隔ごとの所謂10歳階級の、個人用途であるシャワーの使用時間についての給湯モニター結果が浴槽入浴時およびシャワー入浴時のそれぞれについて報告されている。温水使用時間は世帯員の加齢による温水使用行動の経年変化を捉える量的な物差し(尺度)として最適である。例えば、温水使用量、加熱エネルギー量は、現在から将来に向けたトレンドとなっている節湯化や給湯効率の向上によって、温水使用行動が同じでも顕著に変わり得るからである。
次に、集中情報処理推定策定装置710は、図28に示す第5段階の演算処理Vを行う。第5段階の演算処理Vでは、地域全体および代表的世帯類型ごとの年間・月間平均給湯効率および月間等の温水使用時間に対する温水使用量の比等で与えられる長時間平均流量の算出と、過去からの給湯効率・節水化率向上の割合を算出する。地域全体の平均給湯効率は、図29と共に説明した式により算出できる。地域全体の年間・月間平均給湯効率は、他地域の平均給湯効率との比較を通して、省エネの給湯設備の普及度や気温等の自然環境条件の差異による影響を推し測るためのマクロな指標を表す。
続いて、集中情報処理推定策定装置710は、代表的な世帯類型ごと、および男女・年代別のより詳細な分類(世帯分類型)ごとの給湯効率の算出を行う。これらの給湯効率は、例えば図30の基本世帯属性表を世帯人数、世代数等の順に優先順位をつけて並び替えを行い、それぞれの世帯類型あるいは世帯分類型の行のみを対象にすれば容易に算出することができる。中長期的には代表的な世帯類型等の平均給湯効率にそれぞれの世帯数予測値を掛けて足し合わせ、かつ、全世帯数で割れば、現在時点での平均給湯効率を想定したときの地域全体の平均給湯効率が算出できる。世帯類型等ごとの平均給湯効率の向上を見込むことができれば、それぞれの世帯類型世帯の向上分を含んだ地域全体の平均給湯効率となる。
例えば、用途別の年間・月間の温水使用時間に対する温水使用量の比から得ることができる長時間平均流量およびその変化を捉えることによって、シャワー、洗面、台所において節湯水栓が使われているかどうかの判断を行う。温水使用時間は温水使用行動列の要素である温水使用開始・終了時間から得られる。台所においてはさらに食器洗浄機による節湯化の判断を行う。住宅を対象とする「住宅・建築物の省エネルギー基準(2013年10月から施行)」において定義された節湯水栓において、節水機構と省エネ機構とを組み合わせたものは、従来の給湯水栓に比して台所用途の給湯量で36%、シャワー用途の給湯量で32%の削減を謳っている。シャワー用途の節湯水栓では、浴び心地を損ねることのない空気を混合して吐水する機構も用いられている。吐水量は従来の10L/minに対し6.5L/minである。洗面用途では30%の削減を謳っている。
本発明では、温室効果ガス抑制の最大化を目指しているので、省エネの観点から食器洗浄機は給湯接続を前提とする。手洗いの場合は自然乾燥が通常であるが、食器洗浄機は乾燥まで行うので、乾燥に用いる電気エネルギー使用量も台所用途の使用量として含めることとする。食器洗い乾燥機の年間電気使用量および水道使用量は、それぞれ525.20kWh、10.80m3で済む.に対し、手洗いではガス使用量は81.62m3(1202kWhに相当)、水道使用量は47.45m3要することが知られている(一般財団法人省エネルギーセンター「家族の省エネ大辞典(2012年版)」参照)。給湯接続によって給湯設備からの温水を利用すれば、より省エネの実現が可能である。
次に、集中情報処理推定策定装置710は、図28に示す第6段階の演算処理VIを行う。第6段階の演算処理VIでは、世帯員全員が入浴する日を対象に、個人用途使用行動と世帯員との対応をつけるための浴槽・シャワー入浴1回あたりのシャワー使用時間と使用時刻・順番等を分類軸とする温水使用行動クラスタリングと世帯類型変化時の世帯員属性との対応関係について、年を追って把握するための情報蓄積を行う。縦軸がシャワー使用時間、横軸が使用時刻とする座標系を考えると、それぞれの世帯員のシャワー使用行動はその座標のポイントで表される。1ヶ月あるいは数か月の使用行動は、散布図で表すことができる。世帯員のシャワー使用時間や使用時刻に規則性があるとし、散布図はいくつかのクラスタに分割されると仮定する。使用時刻の代りに風呂に入る順番等を横軸にしてもよい。クラスタ数を自動的に分類するシルエット方法(例えば、P.J.Rousseeuw, Silhouettes:A graphical aid to the interpretation and validation of cluster analysis, Journal of Computational and Applied Mathematics, 20 (1987)53-65)を用いることによって、以下のようにしてそれぞれの世帯員とクラスタの対応づけをすることができる。
いま、座標をもつ要素i(世帯員のシャワー使用行動における使用時間と使用時刻の座標ポイント)がクラスタCの中にあるとき、iと他の要素の二乗平均を凝集性a(i)、クラスタC以外のクラスタ構成要素とiとの間の距離の二乗平均の最小値を分離性b(i)として、シルエット幅s(i)を次式で定義する。
このとき、s(i)を要素iが属するクラスタC内のシルエット幅とすると、クラスタCを含む全てのクラスタ群の要素である各クラスタのシルエット幅の平均値が、そのクラスタ群のシルエット係数と呼ばれる分割数kの関数である。シルエット法は、シルエット係数が最大化するとき妥当な分割数kを与える。すなわち、分割数kの値を変えて数1の式の値を得る演算を順次行い、シルエット係数が最大となる分割数kを求める手法である。世帯員がすべて単独入浴であれば世帯員の人数を推定することができる。さらに各クラスタの温水使用時間、使用時刻、および順番の平均値を得ることによって、例えば温水使用時間が一番長い世帯員は、何時頃入浴するか、あるいは世帯員のうち何番目に入るかという統計結果が得られる。このようなシルエット法による統計結果をもとに世帯員判別を行う材料を得ることができる。シルエット法以外の適切な方法があればこの限りでない。
世帯員としてシャワー使用時間が最長と言われている10代の女の子供が居る場合は、クラスタ内の平均時間が最長のクラスタを候補として着目し、年々の変化に把握する。その子が結婚等によって独立した場合は、候補にとして着目したクラスタが消滅するので、その正しさを確認することが可能である。長年そして全世帯について同様な方法を用い、データを蓄積することによって、男と女の違いおよび年代の違いによるクラスタの位置の差異を統計的に把握することとする。親子入浴によって、時間帯が重なることから乳幼児の使用時間は少ないと見なされる。単独入浴になるにしたがって単独入浴に変わるので、1人前の使用時間になっていくと考えられる。そのようなプロセスも上述のクラスタの中心位置等の変化から把握する。世帯員の入浴の順番等についてアンケート調査に答えてくれる世帯があれば、その情報を用いることによって、温水使用時間に関する男女の違いや年代の違いをより早く把握できることは言うまでもない。温水使用時間については実測値であるので、人為的な誤差は生じない。
さらに長年の情報蓄積で、例えば夫婦世帯と、夫婦と女の子供1人世帯の2つの世帯類型の世帯グループについて、年代ごとの浴槽入浴およびシャワー入浴時のシャワー温水使用時間の1日当たりの平均値を得ることができる。子供の有無にかかわらず夫婦のみの1日当たりの使用時間が同じであれば、2つの世帯グループの平均値の差を取ることにより、女の子供のみの年代ごとの浴槽入浴およびシャワー入浴時の1日当たりのシャワー使用平均時間を得ることができる。男の子供1人の場合も同様である。また、夫婦と子供2人の世帯と子供1人の世帯の平均の差をとることによって、男あるいは女の子供の世代ごとの1日当たりの温水使用時間の平均値を、同様に得ることができる。例えば10代の女の子供が居る世帯と居ない世帯との差をとることにより、10代の女の子供のシャワー平均時間を得ることができる。女性の単独世帯と男性の単独世帯との1日当たりの平均値の差から男性と女性の年代ごとの使用時間の世帯平均値の差も得ることができる。これらのすべての差をもとに、女性および男性の誕生から年代ごとの1日当たりの温水使用時間平均値と、上記のクラスタリングの結果の平均値とを突合せ、相互補正することによって、より良い精度の女性および男性の1日当たりの温水使用時間と年代との関係を得ることが可能である。
東京ガス都市生活研究所のアンケートによる実態調査によれば、浴槽入浴およびシャワー入浴時のシャワー温水使用時間は、親子入浴期である乳児期・幼児期の00代(0−9歳)から成長期の10代(10−19歳)にかけて急激に増加し、10代(10−19歳)をピークになだらかに減少し、一定に近づくような傾向をもつことが窺い知れる。また、浴槽入浴およびシャワー入浴時のシャワー温水使用時間は、10代(10−19歳)のピーク期においては、男性に比べ女性の方がそれぞれ1.9倍程度、1.5倍程度長く、男女差が顕著であるが、10代以後は男女差が無くなっていく傾向をもつ。このような傾向は、世帯に子供がいる場合、特に女の子供がいる場合には、使用量の多いシャワー用途の温水使用量、および、それに必要な加熱エネルギー量の増減が激しいことを意味する。
誕生から世帯を去るまでの男女の温水使用量の経年変化を明らかにすることによって、老若世帯の温水使用量、特にシャワー用途の温水使用量の違いを推定することが可能である。ただし、男女の加齢による経年変化を明らかにするにあたっては、温水使用時間を用いる。例えば、温水使用量は節湯水栓の使用前と使用後では大きく変わる可能性があるので、経年変化の尺度としてはふさわしくないことによる。温水使用量は温水使用時間と上記の平均流量を掛けることによって得ることができる。
世帯員の性別と年代を推定するにあたっては、シャワー使用時間と使用時刻あるいは入浴の順番とをそれぞれの軸とする座標空間において、温水使用行動のクラスタリングを行い、異常データ等のノイズ除去が前提となる。世帯員の判定は、世帯類型および世帯分類型の変化時、例えば誕生時、子供の巣立ち(独立)時などの時点を捉えて、その前後の経過を追って行う。さらに、高齢者と非高齢者との差異は、昼間在宅率による。昼間在宅率については、台所用途の温水使用に関する同様なクラスタリングを行うことによって得ることができる。
次に、集中情報処理推定策定装置710は、図28に示す第7段階の演算処理VIIを行う。第7段階の演算処理VIIは第1〜第6段階の演算結果に基づいて、世帯属性の経年変化、世帯類型適合型給湯設備および節湯機器の製品開発・普及情報を組み入れた見える化対象である温水・エネルギー使用によるCO2排出量の将来推定を行う、本発明における推定手段を構成している。第7段階の演算処理VIIは第6段階の演算VIにより得られた現在までのデータを使って数年後までの予測を行い、大口契約で電気料金等を低減することを目的とする。具体的には、第7段階の演算処理VIIでは、世帯類型ごとの世帯数の次年度以後の予測値を算出し、それらの予測値と当該年度の世帯類型ごとの全用途・用途別で年間、月間の加熱エネルギー量、給湯負荷量、温水使用量、および温水使用時間の世帯平均値にもとに、次年度以後の全用途・用途別で年間、月間の温室効果ガス排出量、平均給湯効率、加熱エネルギー量、給湯負荷量、温水使用量、平均流量、平均温度、電気・ガス等エネルギー料金、上下水道料金を与える演算を実行する。そのため、まず、地域世帯の見える化対象量のうち最も基本とする温室効果ガス排出量を取り扱う。中長期にわたる温室効果ガスの推定にあたって、将来予測対象とする世帯類型およびより詳細な世帯分類型を定める。長期にわたる温水使用量等の蓄積データが得られた場合は、世帯類型に加え、性別、年代、昼間在宅の有無など、詳細な分類型を用いる。蓄積が少ない場合は、統計誤差が許容できる範囲で相応の分類型を用いることとする。
図32は、地域世帯の給湯需要に基づく温室効果ガス排出量等の演算データの一例を示す。図32の例では、分類したグループの合計数は15で7つの世帯類型を含む。世帯類型は夫婦のみ世帯とその他少数世帯の2つで、他の5つの世帯類型は、それぞれさらに2つの世帯分類型に分けてある。直近の全国を対象とする国勢調査によると、図32の最下部に示す「その他少数世帯」は全世帯の1割前後で、5%程度の3世代世帯を除くと、いずれの世帯も数%およびそれ以下である。将来においては減少し続けるか増えることはないと推測される。「その他少数世帯」をひとまとめに扱ったのは、それぞれの世帯数が多くないので、地域世帯全体の温室効果ガス排出量等の推定値に大きな影響を及ぼすことはないとの判断による。大きな影響を及ぼすときは、実際の演算の過程でさらにいくつかのグループに分けて推定を行い推定誤差の低減を図ればよい。
中長期にわたる地域温室効果ガス排出量(CO
2排出量)は、表4に示す算出式により算出される。
表4に示すように、(10)式で算出される温水・エネルギー使用によるCO2排出量は、全世帯の平均温水使用量の総和を示す(11)式で算出される温水使用量SVy(N)と、全世帯の平均給湯負荷量の総和を示す(12)式で算出される給湯負荷量SQy(N)と、給湯負荷量SQy(N)を平均給湯効率で除算した値と給湯加熱以外で使用の電気エネルギー量との和を示す(13)式で算出される全世帯の加熱エネルギー量SEy(N)とを用いて、(10)式により算出される。給湯加熱以外で使用の電気エネルギー量としては、給湯設備の制御操作、食器洗い洗浄機による乾燥に使う電気エネルギー量等がある。給湯加熱のエネルギー量に比して小さいので、無視しても影響は殆どないと考える。なお、Nは地域の全世帯数を示す。また、(11)式〜(13)式の右辺の各値は給湯需給マネジメント装置730-1〜730-Nから供給される計測データに基づく。
表4の(11)式は、図32の1番から15番の分類グループを対象とすると、各番号のグループ世帯における温水使用量の平均値と世帯数の積を、通し番号1番から15番まで加算することで、全地域世帯温水使用量を与える式である。温水使用の全用途に対しても用途別に分けても成立する。子供の誕生等による世帯類型等が変化する世帯数は、年間のスパンでも全世帯数に比べて多くない。そこで、本実施形態では、分類グループの世帯数が変った年および月でも、それぞれの分類グループの全用途・用途別温水使用世帯平均量は一定とみなし、地域世帯の温水使用世帯平均量が変化前の温水使用世帯平均量と変化後の世帯数の積で与えられるとする。グループ世帯数の変化要因は、入居、転居、誕生、死亡、独立(巣立ち)等である。このような前提を設けることによって、地域世帯温水使用量の将来推定は、温水使用世帯平均量を世帯数のそれぞれの変化と切り離して考えることができる。特に世帯数が増減した場合、温水使用世帯平均量の現在値をもって、変化後の地域世帯の温水使用量を簡単に算出できることをもたらす。(12)式および(13)式の給湯負荷量および加熱エネルギー量でも同様である。したがって、全用途・用途別温水使用量等平均量と世帯数を独立変数として捉え、(10)式をもとに地域世帯の全用途・用途別温室効果ガス排出量の将来推定を行うことができる。
分類グループごとの全用途・用途別温水使用量等平均量を対象とする演算結果は、将来予測等に関する多くの足掛かりを提供する。全用途・用途別の温水使用世帯平均量、給湯負荷世帯平均量、加熱エネルギー世帯平均量についての将来予測は、個別住居の場合と同様、図22に示す算出フローチャートにしたがって、年および月ごとの変化のトレンドを浮き彫りにすることを起点に進めることができる。加熱エネルギー使用量に対する給湯負荷量の比から、分類グループごとの年間・月間給湯平均効率の変化のトレンドが把握できる。温水平均使用量同様、温水使用平均時間についても、(11)式のような関係式が得られる。年間・月間の温水使用時間に対する温水使用量の比から長時間温水平均流量を算出できる。用途別の長時間温水平均流量の把握は、例えば台所用途で節湯水栓の普及と食器洗浄機の普及・使用の度合いの推定を可能とする。図32では世帯分類型レベル1までのグループ分けにとどまっているが、さらにレベル2のグループ分けによって高齢世帯と非高齢世帯に分けることにより、浴槽入浴平均日数、シャワー入浴平均日数、シャワー平均使用量、湯張用途の給湯温度の違いをあきらかにできるので、高齢化が進むことによる温室効果ガス排出量への影響を推定する根拠を与える。高齢世帯と非高齢世帯との2分割でなく、それ以上の分割によって加齢による経年変化の推定も可能にする。
第7段階の演算処理VIIによる温室効果ガス等の次の年および数年後の将来推定は、分類グループを対象とするので、個別住居の将来推定と本質的に異なる。分類グループごとの将来推定では、それぞれ世帯数の増減が関与するのに対し、個別住居の予測は世帯数とは無関係であることによる。本実施形態では、ある世帯グループの世帯数が変化しても、変化時点では世帯グループの温水使用世帯平均量は変わらないとし、変化後は変化世帯の実測値を取得次第、その実測値を用いて所属する分類グループの温水使用量の平均値を修正する手法をとる。図22に示す算出フローチャートに基づき平均値修正は基本的に月単位とする。よって、変化時点では分類グループごとの世帯数予測は世帯数のみの増減数による。その後実測値の取得とともに月単位を基本に平均値を修正するので、月替わりした後の温水使用世帯平均量等は更新される。変化時点を含む月における給湯設備効率の向上による加熱エネルギーの低減や節湯水栓導入や世帯員の節湯による温室効果ガス排出量抑制効果は、次の月の加熱エネルギー平均値と温水使用量平均値の変化の度合いによって推測する。分類グループごとの温水使用世帯平均量、給湯負荷平均量、および加熱エネルギー平均量の月変化および年変化をたどることによって、給湯設備や運転プログラムの更新等による給湯効率の向上、節湯水栓の導入数の増加による温水使用量の減少、世帯員の節約行動による温水使用時間および給湯負荷量の低減等の推移を把握することができる。
また、地域世帯全体を対象とし、世帯人数が異なる世帯類型をもつ世帯グループ間の給湯設備効率の相対比較によって、給湯設備のカタログ値平均、実態値平均、およびそれらの差異の順位付けを行うことが可能である。どの世帯グループがトップランナー基準を満たすより高い給湯効率の給湯設備を多く導入しているか、平均的にカタログ値と実態値の差異が最も大きい世帯グループはどれか等の貴重な情報を得ることができる。ただし、カタログ値は地域世帯と給湯設備関連企業の連携のパイプ等を通じて得られるとする。平均的にカタログ値と実態値がかけ離れている世帯グループにおいては、給湯設備と世帯規模およびその運転プログラムと世帯員の温水使用行動とのミスマッチング、出荷台数の少ない効率向上に余地を残す給湯設備の使用、世帯員の節湯意識が相対的に低いことなどを推し測ることを可能とするので、特に給湯設備関連企業の製品開発のターゲットをあきらかにする情報提供が行えることとなる。
また、給湯設備の効率と同様に、世帯人数が異なる世帯グループ間の節湯水栓および食器洗浄機の導入比率の違い、それらの導入による節湯の程度の実態等を把握することができる。台所用途の温水使用量については、食器洗浄機が導入されていても充分活用されているかどうかは世帯によって異なる。前述のように温水使用量が50L程度の手洗いに対し食器洗浄機による温水使用量は20Lで済むと言われている。しかし、洗浄対象であるすべての食器をひとまとめしなければ食器洗浄機による節湯の威力を充分発揮することはできない。ひとまとめにする前段階で、汚れた食器を放置することが嫌いな世帯員がその都度少数の食器を手洗いすることは充分考えられる。潔癖な世帯員の要求を満足するような食器洗浄機あるいは食器洗浄システムの製品開発が実現しない限り、手洗いをともなわない食器洗浄が100%行われると考えることに無理があろう。そこで節湯の度合は、手洗い、およびまとめ洗い、食器洗浄機の比率にもとづいて判断することが妥当と言える。
図32の分類グループごとについては、世帯の温水使用の多くを占める個人用途のシャワー使用量および使用回数について、独身女世帯、独身男世帯、非高齢夫婦のみ世帯、高齢夫婦世帯、子供の男女数が異なる夫婦世帯の相互比較による実態把握に注力を注ぐことが要求される。男と女、非高齢と高齢の違いの浴槽入浴日数、シャワー入浴日数、それらの比率、湯張給湯温度等の比較から、加齢による世帯の経年変化による温室効果ガスへの影響を推し測る糸口を得ることができる。非高齢と高齢の2分割でなくより詳細な分割により、さらに詳細な影響把握の道筋を得られることは言を待たない。本発明は、分類グループごとの温水使用量、給湯負荷量、加熱エネルギー量、給湯効率の世帯平均量、ならびに年間・月間の長時間温水平均流量の過去から現在に至るトレンドに基づいて、ブラックボックスのレベルでなく、内部状態レベルでの具体的な推移との対応づけを可能とする、温室効果ガスの将来推定の基礎を提供する。
本発明では、分類グループごとの温室効果ガス排出量の将来予測は、温室効果ガスの算出に必要不可欠な温水世帯使用世帯平均量等とそれぞれの世帯グループの世帯数との両者の将来予測に分けて行う手法を用いる。すべての分類グループごとの将来推定値が揃った時点で、それぞれの諸量の総和をとり、外部の公的機関から得たCO2排出係数を用いて、地域世帯全体の温室効果ガスの将来推定値を得ることとする。前者の温水世帯使用世帯平均量は、以上の検討事項を勘案しながら行う。後者のそれぞれの世帯グループの世帯数については、子供の誕生・独立(巣立ち)、死亡、転居、入居等による世帯数変化の将来予測が要求される。
分類グループごとの子供の誕生による世帯数変化は次の手順で進める。厚労省統計局「平成26年我が国人口動態」によると、2012年の母親の第一出産平均年齢は30.3才、第3子は33.3才である。そこで、女性の年齢を30才を中央値とする。例えば、年齢幅が5年の区間(28才以上32才未満)を中心に出産可能範囲を5年の区間幅で区間分割する。地域全世帯の配偶者に相当する女性を対象に、過去から現在までの各年の出産総数と年齢区間ごとの出産数を給湯マネジメントデータベースシステムから取り出す。ある年の出産総数を、ある年齢区間に含まれる女性の人数とその区間の出産確率に相当する係数との積と誤差の和からなる線形方程式を仮定する。
過去から現在までの年間の出産総数とすべての年齢区間に含まれる女性の人数を代入して得た誤差項を含む連立方程式を対象に、最小二乗法を適用しそれぞれの年齢区間の出産確率に相当する係数の値を求める。出産総数を従属変数、それぞれの年齢区間に含まれる女性の人数を独立変数とし、各年齢区間の出産確率を係数とする回帰方程式を構成する。回帰方程式の当該年度の各区間の女性の人数を代入することにより、地域世帯の出産総数を得る。子供が居る世帯のうち、1人、2人、3人、3人以上の世帯が占める比率に応じて、図32が示すような分類グループに出産総数を振り分けることによって、次年度の各分類グループの世帯数を求める。次年度以降は、次年度の結果を用いて逐次予測することとする。上記の年齢区間の幅は一定としたが、該当する女性の人数に応じて幅を柔軟に変えてもよい。子供の誕生による分類グループごとの世帯数予測を対象としたが、独立(巣立ち)等でも、その人数が多い年齢を中心に同様な予測を行えばよい。なお、次々年度の予測は次年度の予測値を用いて行うこととする。必要であればその後も同様に行うとする。他に適切な予測方法があればこの限りではない。
温暖化による異常気象が、現実になりつつある危機感が世界各国に広がりつつあるなか、日本においても今まで以上の具体的な削減目標に向けた温室効果ガス排出量抑制が要求されよう。近いうちに今まで以上の数値目標の設定も充分想定できる状況にある。EUでは2030年時点の温室効果ガス削減目標値を1990年対比で40%削減するという案が出されている。環境省から出されている資料「2012年度温室効果ガス排出量(確定値)」によると、2012年の家庭部門の排出量は全部門の16%、1990年対比で59.7%増加し、2009年以降4年連続で増加している。このような増加傾向にあるのは、業務その他部門のみで、産業部門運輸部門等は、ほぼ横ばいか減少傾向にある。家庭部門においては、それぞれの世帯の削減・節約意識に頼らざる得ない面があり、地域全体で足並みが揃うような協調的な削減活動を起こす仕組みが足りなかった面は否定できない。地域世帯全体で、中長期的な温室効果ガス抑制の数値目標を掲げることができる仕組みづくりが要求される。
本発明の給湯需給マネジメントシステムは、中長期にわたる地域世帯の上限の数値目標を目指す温室効果ガス排出抑制による社会貢献、ならびに、それによってもたらされる水道・エネルギー料金の削減による家計負担軽減の双方の実現に資する。見える化による地域住民の環境保全・節約意識の醸成および地域世帯と給湯設備関連企業との連携による利便性を損なうことのない給湯需要の抑制を促す仕組みに基づく。
地域世帯全体が温室効果ガス削減の数値目標に向け、足並みを揃えることよる給湯需要の抑制は、中長期給湯供給の計画策定に大きな影響を及ぼす。非給湯の需要についても同様である。数値目標達成を念頭におき、地域や大規模マンションの給湯用途、ならびにそれを含むすべての用途に使用する電力等のエネルギー総量および上下水道総量の推定を行うことから、無駄の少ない中長期的電力等のエネルギー・上下水道供給計画の策定が実現できることによる。集中情報処理推定策定装置710による第8段階の演算処理VIIIにおいて、地域世帯全体の給湯需要に関する中長期見通しを得ることが前提となる。
集中情報処理推定策定装置710は、第7段階の演算処理VIIに続いて図28に示す第8段階の演算処理VIIIを行う。第8段階の演算処理VIIIは第7段階の演算処理VIIの演算結果(推定結果)に基づいて、地域給湯需給変化応答特性に従った水道・電気・ガスの中長期地域供給計画の策定(シナリオの作成)をする本発明の策定手段を構成している。すなわち、第8段階の演算処理VIIIでは、中長期例えば5年以後の世帯類型ごとの世帯数の推計値と、中長期例えば5年以後の世帯類型ごとの全用途で年間の平均給湯効率、給湯負荷量、および温水使用量の展望値、太陽熱温水器による給湯設備の加熱前の水道水を含む低温水の温度上昇の展望値、およびヒートポンプに取り込む空気温度の温度上昇の展望値から、中長期例えば5年以後の全世帯の全用途で年間の温室効果ガス排出量、平均給湯効率、加熱エネルギー量、給湯負荷量、温水使用量を与える演算を実行して中長期地域供給計画の策定(シナリオの作成)をする。新たに定義する展望値については後述する。
第8段階の演算処理VIIIでは、10年以後も対象とするので、世帯類型および世帯分類型で分けた分類グループの世帯数の推定は、東京都の人口推計資料「東京都の世帯数の予測(2014)」、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計[全国推計](2013)」等を参考にする。本発明の給湯マネジメントシステムを適用するにふさわしい地域は、都市部の大規模マンションが立ち並ぶ東京都の江東区等の区部である。一般に分譲マンションの平均的な居住期間は10年前後といわれている。中長期にわたる予測を要求するため、第7段階の演算処理VIIで紹介した過去から現在に至る分類グループごとの世帯数、男女別年代ごとの世帯員数等の世帯属性データから導き出すことは無理があることによる。よって、平成22年(2010年)の国勢調査結果を基準世帯数として、5年間間隔で平成27年(2015年)から平成47年(2035年)までを範囲とする東京都の世帯数の予測資料に重点をおく。
第3段階の演算処理IIIで、上述の国勢調査結果による、20年前に比べ世帯数が約20%増大と一般世帯平均人数が20%程度減少し現在2.42人になっていることを記載した。東京都の区部では、2.42人よりも少ない2.23人である。このように一般世帯平均人数は、なだらかな減少のトレンドにあり平成47年(2035年)には2.01人と予測している。世帯数割合は、多い順に単独世帯、夫婦と子供世帯、夫婦のみ世帯、およびひとり親世帯で、それぞれ平成22年(2010年)で49.1%、21.7%、16.3%、および7.3%、平成47年(2035年)では、50.2%、19.6%、16.5%、8.5%となり、単独世帯が50%を超える予測値を示す。一人親世帯も単調な増加傾向を示す。世帯割合の合計は、94.3%から94.8%になる。単独世帯以外は核家族世帯である。3世代世帯等の非核家族世帯の中には、夫婦と親、兄弟姉妹等からなる少数世帯が含まれるので、5人以上の世帯はより少なくなっていくと想定できる。本発明では、核家族、比較家族を問わず世帯人数と世代数で分類するので、世帯割合の合計は、上記を超える値と言える。
本発明では、表4の(11)−(13)式に表すように、地域世帯全体の温水使用量、給湯負荷量、および加熱エネルギー量は、分類グループごとの温水使用量等の平均値と世帯数との掛け算で算出する。温水使用量等の全分類グループの合計をとり、それぞれの合計量に該当するCO2排出係数を掛けて、地域世帯の温室効果ガスのCO2換算排出量を得る(10式)。世帯数については、例えば江東区豊洲3丁目の2棟で総戸数約1660戸の大規模マンション建設計画等の外部情報を参考に、東京都の世帯数予測結果等を用いて推定することとする。
地域世帯の温室効果ガスのCO2換算排出量の中長期的推定には、将来におけるCO2排出係数変化の見通し情報を得ておく必要がある。特に電力の排出係数は、石油火力、LNG火力、原子力、石炭火力等による発電の割合によって大きく変わる。東京電力等の各種発電所の発電割合の中長期計画に関する外部情報を逸早く取り入れて、温室効果ガスのCO2換算排出係数の変化を見通すことが前提となる。都市ガスのCO2排出係数についても、東京ガス等の情報による変化見通しが要求される。上下水道設備における省エネ化、例えばガスタービンを用いたコジェネ、太陽光発電等の導入、下水道設備における一酸化二窒素(CO2の300倍に相当する温室効果ガス)発生を低減する汚泥焼却・水処理施設の改良等に関する、東京都水道局の将来計画情報等によるCO2換算排出係数の変化見通しについても同様である。
本発明では、地域世帯の中長期に亘る温室効果ガスの削減目標の設定に具体性を与える展望値という数値を定義する。目標達成を確実にするには、まずは将来にかけて温室効果ガス抑制が見込めるできるだけ多くのシナリオを用意しておくことが必要不可欠である。展望値は、削減シナリオという将来構想、あるいは将来計画の筋書きに具体性を与える役割を担う。中長期における地域世帯の温室効果ガス排出量および給湯需要の将来推定を行うにあたって、前述の水道事業経営計画の策定で要求される世帯(家庭)の水需要の中長期的予測に関す文献(例えば、清水他:「社会動向と水利用機器普及を考慮した使用目的別水需要予測に関する研究」、環境工学研究論文集、第46巻、pp.277-286,2009、その他)が表すところの、中期から長期に及ぶいくつかの時点を目標とするシナリオを設定し、それぞれの時点でのシナリオにおけるフレーム値を与えることに相当する。
まず、加熱エネルギー、給湯負荷、温水使用量等ごとに、展望値を設定する。展望値は第1展望値と第2展望値の2つを基本とする。両者の関係は、第1展望値の値によって第2展望値が決まるとみなす観点による。もし、第2展望値によってはじめて定まるような展望値があれば第3展望値とする。第1展望値も第2の展望値も複数でもよいとする。加熱エネルギー量に関する第1展望値が、給湯負荷に関する第2展望値と設定されてもよい。他のケースについても同様である。第1展望値を独立変数と見なせば、第2展望値から先は、第1展望値に対して算出対象となる従属値とみなすことに相当する。必ずしも因果関係を前提としない。
上述の水需要の中長期的予測に関する研究では、本発明が対象とする温水使用のみに該当する水道水の使用に限ったものであるが、台所用途とシャワー用途に対して5年程度、10年および30−50年程度を目安に3つのフレーム値、すなわち展望値を設定している。台所用途の第1展望値は、手洗い、まとめ洗い、および食器洗浄機による洗いの3種の洗いの比率に相当する。食器洗浄機の比率が、現在値(上記の文献で2010年に該当)に対して、ほぼ5年後は5%、10年後は10%と毎年1%程度増大し、30−50年程度後は食器洗浄機による洗いが100%になると想定している。シャワー用途の第1展望値には、従来型のシャワーヘッド水栓と節湯水栓に該当する節水型のシャワーヘッド水栓との使用割合が相当する。節水型のシャワーヘッド水栓の割合が、現在値(2010年)に対して、ほぼ5年後は10%、10年後は20%と毎年2%程度増大し、30−50年程度後は100%になると想定している。第1展望値の設定値を用いて、水量実測調査、アンケート調査、水利用機器の性能に関する文献・カタログ調査の結果をもとに作成した使用水量算定モデルを用いて、第2展望値に相当する使用水量の算出を行っている。本実施形態では、温水使用量等は算定モデルを用いるまでもなく実測できるので、展望値はすべて実測値あるいは実測値から得られる算出値と考えてよい。したがって、第1展望値に何を選択すれば、具体的イメージをもって中長期推定が行えるかが重要課題である。
分類グループごとの世帯数予測に続いて、温水使用量、給湯負荷量、加熱エネルギー量等についての世帯平均値の予測を対象とする。給湯設備の給湯効率の向上が、省エネによる温室効果ガス排出量の抑制に果たす役割は大きい。しかし、最近の新商品の給湯効率の向上も限界に達しつつあり、従来のようなテンポでの給湯効率の向上は望めない。給湯設備の耐用期間が10年長くて15年程度と言われていることから、分類グループごとの世帯平均の給湯効率向上の余地は残されているが、新しい商品の導入に伴い向上のテンポが遅くなることは言うまでもない。カタログ値情報から、現在使用している給湯効率の階級(区間)ごとの世帯数を表す度数分布表を作成することから、上限に近い給湯効率を有する給湯設備を導入している世帯の割合を把握することができる。給湯効率度数分布は、給湯設備の導入時期の分布を反映するので、新しい給湯設備への取り換え時期とそれに該当する世帯数等の目安をつけることも可能である。長期的には、給湯効率の向上が限界に近づくことと、高い給湯効率の給湯設備をもつ世帯数が増大するトレンドは変わらないと言える。カタログ値に追従するように実態値も同様なトレンドをもつと考える。給湯効率は、給湯負荷量に対する加熱エネルギー使用量の大きさを定める示量性変数である。
まず、給湯効率の向上による温室効果ガス排出量等の中長期的抑制見通しを得るため、給湯効率の第1展望値に、給湯効率の実態値についての平均値を充てる。実態値は全用途および用途別に得られるので、まず全用途について、より詳細には用途別の第1展望値を得ることとする。ただし、前述のように用途別給湯効率が得られるのは瞬間式給湯設備のみである。第2展望値は、分類グループごとの給湯効率の世帯実態平均値とカタログ平均値の差とする。そして、過去から現在に至る分類グループごとの第1展望値の変化のトレンドを、最小ニ乗法等を用いて数式化し、数式から得た変化率に、5年、10年、20年等の年数を掛けて、中長期的展望値を設定する。第2展望値についても同様に予測値を得る。第2展望値に対する第1展望値の平均値との突合せを通して、当初は給湯効率の世帯実態平均値の向上の経年変化と世帯カタログ平均値との差等が示す経年変化について、例えば前者の向上につれて、後者の差が縮まる傾向の継続があきらかになれば、カタログ値が得られることによって実態値がどの位になるか等の将来的目安をつけることが可能となる。以後、経年変化情報の蓄積ともに給湯効率が上限に近づく傾向について補正を加えて行き、中長期見通しをより実態にちかいものにする。世帯員の温水使用行動を反映する給湯試験モードを適用することでカタログ値は実態値に近づけることができる。長期的にはカタログ値のみで省エネによる温室効果ガス排出量等の予測もできると考える。
ついで、給湯負荷量の低減によって、中長期的に温室効果ガス排出量等をどの位抑えられるかの将来見通しを得る操作を対象とする。給湯負荷量は、水道水等の低温水を使用目的の高温水にするために使用する正味の加熱エネルギー量である。給湯負荷量については実態値を用いるので、展望値は全用途および用途別に設定する。給湯負荷量については、年間・月間の給湯負荷量を第1展望値に、第2展望値として、年間・月間の温水使用量、温水使用日数、温水使用頻度(回数)、長時間温水平均温度、給湯効率等を候補とし、全用途および用途別にそれぞれの候補を選択する。例えば浴槽入浴およびシャワー入浴については、それぞれの入浴日数、浴槽入浴日の湯張、追焚等の温水使用時間、温水使用量、温水使用頻度(回数)、長時間温水平均温度等を第2展望値とする。浴槽・シャワー入浴時の第2展望値は、それぞれの入浴日の温水使用量、温水使用頻度(回数)、長時間温水平均温度等とする。分類グループごとの第1展望値である年間・月間の給湯負荷平均量の過去から現在までのトレンドをもとに、中長期にわたる展望値を設定する。そして経年変化にともなう第2展望値である年間・月間温水使用量、温水使用日数、温水使用頻度(回数)、長時間温水平均温度、給湯効率等との対応づけによって、例えば給湯負荷平均量の低減要因を構造的に突き詰めて行くことにより、将来予測の高精度化を図る。
さらに、本実施形態では温水使用量の低減によって、中長期的に温室効果ガス排出量等をどの位抑えられるかの将来見通しを得る操作を対象とする。温水使用量については、給湯負荷量同様、温水使用量を第1展望値とする。ただし、追焚等による循環量は含めない。第2展望値については、長時間平均温度の代わりに節湯水栓の使用率を推定するため長時間平均流量を用いる。
中長期の地域世帯の給湯供給計画を策定するにあたって、まずは分類グループ世帯ごとの第1展望値すなわち給湯効率、給湯負荷、温水使用量等の全用途・用途別の年間・月間世帯平均量、標準偏差等を算出する。世帯平均値とともに標準偏差等も得る。次の段階では、多様な発想や外部情報をもとに、現在に捉われない将来見通しを行い、中長期におよびいくつかの時点における第1展望値を設定する。新たな発想などがない場合は、とりあえず給湯効率、給湯負荷、温水使用量等のトレンドが続くとする。年を追うごとに異なるトレンドを示した場合を新しいトレンドを取り入れることとする。新たな発想等があれば、積極的に取り入れ、外部への発信を通し、中長期的な都市開発計画における大規模マンション建設との連携を図る。
さらに、用途別の第1展望値と第2展望値等との突合せによって、例えば、給湯効率向上が新たな給湯設備数の増大によるものか、給湯負荷の低減が低温度での温水使用による世帯員の節約意識によるものなのか、温水使用量の低減が節湯水栓の導入数の増大によるものなのか、あるいは世帯員の節約意識による温水使用時間の短縮によるものなのか等について、将来予測につながる知見を多く得ることを図る。特に温室効果ガスの削減目標が地域世帯全体に掲げられた場合の、それに応答する温室効果ガス排出量抑制の大きさ、および機動性の尺度である応答時間特性(時定数、時間変化形状等)を得るための演算を行っておくことを前提とする。
集中情報処理推定測定装置710は、それらの分類グループごとの世帯平均値についての結果と、前述の分類グループごとの世帯数推定値との積を算出する。さらに、分類グループの加熱エネルギー量および温水使用量の総和をとり、電力・ガス等エネルギーおよび上下水道の外部情報にもとづくCO2排出係数の予測値との積をとって、中期および長期における基準年に対する温室効果ガス削減量および排出量を算出する。地域世帯の温室効果ガス排出量およびそれを決定する加熱エネルギー量および温水使用に用いる水道量の供給については、分類グループごとではなく、地域全世帯を対象にそれらの合計量および標準偏差等を算出し、両者を用いた幅をもたした数値を用いる。中長期の給湯供給量が予測範囲にとどまることを前提に標準偏差よりも狭い統計量を見出すことができれば、その統計量を用いることとする。
節湯水栓の普及と性能向上による節湯、および食器洗浄機普及と性能向上による温室効果ガス排出量の抑制効果は、加熱エネルギー量、給湯負荷量、および温水使用量のすべてにかかわる。例えばシャワー用途および洗面用途における節湯水洗使用による分類グループごとの温水使用量を第1展望値に長時間温水流量の世帯平均量を第2展望値とし、両者の経年変化を見比べることによって、それぞれの用途の節湯水栓の使用割合と使用効果の中長期見通しを得ることができる。台所用途の食器洗浄機についても同様である。
改正省エネ法の対象商品であるシャワー、洗面、および台所の節湯水栓が具体的な対象で、節湯による省エネと水道水使用量抑制の両方の効果をもつ。特に温水使用量の多いシャワー水栓については、空気を混ぜることによって洗い心地を落とさないシャワー水栓が製品化されている。従来の温水量流量10L/minを6.5L/minにできるので、約35%の節湯を謳っている。現在のところ節湯水栓が備える機構として、手元で止水する機構、温水流量を絞る機構および非節水省エネの水優先吐水機構と呼称される機構の3つがある。住宅・建築物の省エネ基準では、手元止水機構をもつシャワー水栓と台所水栓のエネルギー削減率がそれぞれ20%および9%である。水優先吐水機構をもつ台所水栓および洗面用水栓は、両者とも30%である。手元止水機構と水優先吐水機構を備える台所水栓は、36%の削減率である。
給湯設備の新商品の給湯効率が近づきつつあるなか、従来のような伸び代が望めない状況を打破するには、新たな第1展望値を抽出しシナリオを作成する必要がある。そこで給湯効率の実態値を、第1展望値から外して、それ以外の可能性ある諸量を第1展望値とする考え方が要求される。例えば、まず瞬間式ガス給湯設備については加熱前の水道水を含む低温水の温度を、ヒートポンプ貯湯式給湯設備ではヒートポンプユニットが取り込む空気の温度を、それぞれの第1展望値とする。太陽熱温水器を導入し瞬間式ガス給湯設備の加熱前低温水温度を上げることによりガス使用量が平均約26−40%削減できると謳っている例がある。このような観点から太陽熱温水器によって温められた加熱前温度を第1展望値とし、第2展望値として加熱エネルギー量と太陽熱温水器から得た低温水の熱量として次のステップとすればよい。太陽熱温水器による加熱前後の低温水と水道水の温度差と低温水量で算出できる第2展望値である低温水の熱量から太陽熱温水器の利用規模を推定する。分類グループごとの太陽熱温水器の普及とともなう加熱前温度の上昇のトレンドを捉まえるとともに地域世帯全体の太陽熱温水器の設置計画や普及計画などに外部情報をもとに中長期的なシナリオ作成を行えばよい。
一般的なふろ保温機能をもつヒートポンプ貯湯式給湯設備のカタログ値は、年間使用電力に対する湯張等で得た熱量と追焚等で得た熱量の年間合計値の比で算出する年間給湯保温効率である。入力側の使用電力量に対する空気熱を利用するヒートポンプユニットが出力する熱量の比は成績係数(COP)と呼ばれる。取り込む空気の温度によってCOPは大きく上下する。現状では、外気を使う場合、夏場でCOPが約4.5であるのに対し、冬場では2程度に低下する。冬場では下水や家庭などの排熱を使って外気を夏場並みに温度にあげることで、冬場のCOPを2倍程度にでき、顕著な給湯効率向上が期待できる。大規模マンション世帯全体におよぶ下水や家庭などの排熱を利用する施設を造れば効果は大きい。そこでヒートポンプユニットが取り込む空気の温度を第1展望値にしてヒートポンプ貯湯式給湯設備の給湯効率の実態値を第2展望値とすればよい。
国レベルの温室効果ガス削減の数値目標の設定が近いうちに行われる状況にあるので、地域世帯全体の上記のような排熱利用の計画も充分考えられる。第1展望値の中長期的な目標値を設定し、冬場等の成績係数(COP)の向上にともなう年間給湯保温効率の向上と、その向上にともなう温室効果ガス削減量を算出し中長期的なシナリオ作成に着手する。年間給湯保温効率は、年間の外気温度ごとの発生日数と加熱前入水温度から算出する。年間給湯保温効率を瞬間式ガス給湯器の効率と比較するには、電力を造るために必要な一次エネルギーに換算することが要求される。原子力発電所等の稼働状態によるので一定ではないが、1日平均の電力の一次エネルギー換算値の代表例は9.760kJ/kWh(=2.71=1/0.369)である。よって、瞬間式ガス給湯設備との比較ではカタログ値は発電効率に相当する0.369との積をとればよい。
温室効果ガス排出量等の見える化対象量についての、地域世帯の中長期給湯需給マネジメントシステムが備える、第8段階の演算処理VIIIによる中長期的の数10年におよぶ将来推定、ならびに第7段階の演算処理VIIによる数年のスパンの将来推定を実現するシステム機能の役割は、近い将来設定される温室効果ガス削減の数値目標の達成に、具体的な道筋を探り出すことにある。見通しの効かない数10年後において、地域世帯による役割を果たすため、現時点から温室効果ガスの削減幅を大きく広げるような具体的なシナリオ作りをしておくことが重要である。中長期の都市計画に基づく大規模マンションの建設計画等も念頭において、将来的な地域世帯全体で実現可能で効果の大きい温室効果ガスの削減のシナリオもできるだけ用意して、そのシナリオが現実味を帯び次第、早い段階で削減予測を試みることが重要である。
なお、給湯設備として、おもに瞬間式ガス給湯設備とヒートポンプ貯湯式ガス給湯機を対象としてきたが、石油等を燃料とする給湯設備についての省エネ化等についても同様である。ガスを燃料とするガスエンジン、燃料電池を用いた熱電併給システム等を適用する給湯設備についても、発生する熱と電力と分けて考えることにより、省エネ化等について同様な知見を得ることができる。潜熱回収型の高効率ガス給湯設備ならびにヒートポンプ貯湯式給湯設備の出荷台数が2013年に両者とも400万台を超えたと言われている。ガスエンジンを用いた熱電併給システムは2013年に13万4千台、燃料電池を用いたシステムは2014年9月に10万台を突破した状態であると言われる。まだ将来的にどの程度まで普及するか見当がつかないので、本実施形態では取り扱っていない。もし、普及の兆しが見えた段階で、新たな省エネの対象に加えればよい。上述では、家庭での取り扱いの難しい水素を直接燃料とする燃料電池システムを含めたが、水素を用いるエネルギー社会への展開があれば対象に加えることは言うまでもない。
第8段階の演算処理VIIIでは、展望値という具体的な削減シナリオづくりの道具となる新たな数値を定義し、最も根本にある第1展望値の抽出に基づく中長期にわたるシナリオ作りの方法を提起した。現在までの給湯需給マネジメント対象データのみでは、説得力のあるシナリオづくりまでに至らないものの、将来的の芽を出しそうなシナリオは予め手の内に入れて置かなければ、温室効果ガス削減の数値目標の達成の手立てを失うことになり兼ねない。このような観点から、本実施形態では、第1展望値に、瞬間式ガス給湯設備の加熱前の水道水を含む加熱前低温水温度とヒートポンプ貯湯式給湯設備におけるヒートポンプユニットに取り込む空気温度(温めた外気の温度)とを用いている。前者の加熱前の低温水温度は地域世帯における太陽熱温水器の導入数が増大した場合、その規模を推し測る指標である。後者の空気温度は下水の排熱、家庭熱等の利用の規模を表す。都市計画のような中で、加熱前温度や取り込む空気温度を大幅に高める仕組みづくりが前提となる。ただし、仕組みの運用に伴うエネルギー使用量等については地域世帯の使用量とする。温室効果ガス排出量についても同様である。加熱前の低温水温度等を第1展望値として採用したのは、現在では給湯設備の給湯効率も上限に近づきつつあることにより従来のような伸び代が期待できないことによる。
年間・月間の世帯全世帯の電力・ガス量等の将来予測ができれば、マンションの管理会社等による電力、都市ガス等の大口契約によって、それぞれの世帯への利益還元が可能となる。それぞれの世帯へ利益還元による家計補助は、第7段階の演算処理VIIが生み出す、住民の節約意識の醸成につながる効果の1つである。さらに世帯類型ごとの誕生、独立、死亡等による世帯数の経年変化があっても、年間・月間の世帯全世帯の電力・ガス量等の将来予測を行う地域全世帯を対象に、世帯類型ごとの世帯給湯需要平均量を世帯数の積で与える算出式のもと、地域世帯全体の給湯需給量を演算する。これにより、世帯類型同士の平均給湯効率比較を可能とする世帯類型ごとの平均給湯効率の演算を通して、将来的に給湯効率の向上が望める世帯類型も浮き彫りにできるので、上記の演算結果は、給湯関連企業の貴重な製品開発情報となる。世帯類型ごとの世帯数の経年変化は、規模の異なる給湯設備の出荷台数に差を生じる源となるので製品製造情報となる。
温暖化による異常気象の猛威が増す中、温室効果ガス削減量の数値目標の設定は喫緊の課題となっている。公共の場に数値目標の達成を促進するカウントダウン情報を表示する前述のCO2時計を設置するべき状況になりつつあると考える。省エネ法や温対法による届け出義務のない家庭部門においても、地域世帯全体で足並みを揃えて、数値目標達成に向けた社会貢献を行うことが望まれる。本実施形態は見える化による地域住民の節約意識の醸成、地域世帯と企業との連携による削減効果の増大をもたらす地域の中長期給湯需給マネジメントシステムである。システムに組み込んだ給湯需給変化応答モデルによって、地域世帯全体の給湯需給応答特性(図27の600)を制御対象に、温室効果ガス排出量の抑制および削減に及ぼす、見える化の効果の大きさと応答時間特性(時定数等)、世帯から給湯関連企業への実測データ提供に基づく製品開発の効果と応答時間特性(時定数等)を把握することができる。応答時定数の範囲は、月のオーダーのものもあれば数年それ以上に及ぶものもある。見える化による温室効果ガス排出量削減の数値目標の設定に対して、地域世帯全体の給湯需給に関する応答時間特性等の動特性の把握によって、どのようなタイムスケールで削減目標を達成し得るかの見通しを得ることが可能となる。