以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態における通信システムの概略構成を示したブロック図である。図1において、通信システム1は、送信装置10と受信装置20とを含んで構成される。通信システム1は、無線通信によって送信装置10から受信装置20にデータ信号を伝送するシステムである。
なお、図1に示した通信システム1においては、送信装置10と受信装置20とを1台ずつ備えた構成を示しているが、一般的に、通信システム1に備える送信装置10と受信装置20との台数はそれぞれ複数であると考えられる。また、図1に示した通信システム1においては、送信装置10から受信装置20に無線信号(送信信号)を送信する構成を示しているが、一般的に、通信システム1においては、1つの通信装置が送信装置10と受信装置20と両方の機能を備える、つまり、通信システム1に備える通信装置は送受信装置であると考えられる。しかし、以下の説明においては、説明を容易にするため、通信システム1に、送信信号を送信する送信装置10と、送信信号を受信する受信装置20とをそれぞれ1台備えた場合について説明する。
送信装置10は、データ信号を受信装置20に送信する際、データ信号が含まれる変調信号を複数のスペクトラムに分割し、分割したスペクトラムのそれぞれを異なる周波数帯域の送信信号としてアンテナ(不図示)から送信する通信装置である。送信装置10は、送信するデータ信号に対して種々の処理を行って送信信号を生成する送信回路100を備えている。なお、送信回路100の構成および動作に関する詳細な説明は、後述する。
受信装置20は、送信装置10から複数の周波数帯域で送信されてきた送信信号をアンテナ(不図示)によって受信し、送信装置10によって分割されたスペクトラムを抽出して合成することによって生成した変調信号に含まれるデータ信号を取り出す通信装置である。受信装置20は、受信した送信信号に対して種々の処理を行ってデータ信号を取り出す受信回路200を備えている。なお、受信回路200の構成および動作に関する詳細な説明は、後述する。
このような構成によって通信システム1では、データ信号を、送信装置10から受信装置20に伝送する。
次に、本実施形態の通信システム1に備えた送信装置10の構成および動作について説明する。図2は、本実施形態の通信システム1を構成する送信装置10に備えた送信回路100の概略構成を示したブロック図である。送信回路100は、変調回路101、波形整形フィルタ102、DFT(離散フーリエ変換)回路103、複数の帯域分割フィルタ104、複数の位相器105、複数の周波数シフタ106、複数の加算器107、複数のIDFT(逆離散フーリエ変換)回路108、複数のPAPR(ピーク対平均電力比)算出回路109、最小PAPR選択器110を備えている。
変調回路101は、送信装置10が送信するデータ信号を、QPSKなどの変調方式で変調して波形整形フィルタ102に出力する。
波形整形フィルタ102は、変調回路101から入力された変調後のデータ信号に対して帯域制限を行い、帯域制限した後のデータ信号をDFT回路103に出力する。
DFT回路103は、波形整形フィルタ102から入力された帯域制限後のデータ信号に対して離散フーリエ変換を行って、周波数領域の変調信号を生成する。そして、DFT回路103は、生成した変調信号を、帯域分割フィルタ104のそれぞれに出力する。
帯域分割フィルタ104のそれぞれは、DFT回路103から入力された変調信号から、対応する周波数帯域の信号を抜き出したスペクトラム(以下、「サブスペクトラムSS」という)を生成する。図2には、ND(NDは2以上の整数)個の帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−NDを備えた送信回路100の構成を示している。そして、以下の説明においては、帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−NDのそれぞれが生成するサブスペクトラムSSに、帯域分割フィルタ104に対応した符号を付与して表す。
なお、図2に示した送信回路100の構成において、帯域分割フィルタ104に付与した符号の後の「−」に続く符号は、それぞれの帯域分割フィルタ104の順番を、生成するサブスペクトラムSSの周波数が低い順に表している。従って、帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−NDのそれぞれが生成するサブスペクトラムSSは、サブスペクトラムSS1、サブスペクトラムSS2、・・・、サブスペクトラムSSNDの順に周波数が高くなる。なお、それぞれのサブスペクトラムSSを区別せずに、いずれか1つのサブスペクトラムSSを表す場合には、「サブスペクトラムSSk」(1≦k≦ND)と表す。また、このサブスペクトラムSSkを生成する帯域分割フィルタ104を、「帯域分割フィルタ104−k」(1≦k≦ND)と表す。
送信回路100では、送信回路100に備えた帯域分割フィルタ104−kに対応する複数の周波数シフタ106と、1個の加算器107と、1個のIDFT回路108と、1個のPAPR算出回路109とを含んだ処理回路の組み合わせで、1つの送信系列に対応した1個の処理回路群(以下、「送信系列回路群」という)を構成している。そして、送信回路100では、複数の送信系列に対応するため、複数の送信系列回路群を備えている。なお、送信回路100に備えた複数の送信系列回路群の内、1個目の送信系列回路群以外には、送信回路100に備えた帯域分割フィルタ104−kに対応する複数の位相器105が含まれている。言い換えれば、複数種類の送信系列の内、1つの送信系列では、位相器105による処理(より具体的には、位相回転を付与する処理)が行われない構成になっている。
図2には、C個の送信系列回路群が構成された、つまり、C種類の送信系列に対応した送信回路100の構成を示している。すなわち、図2に示した送信回路100の構成では、ND個の帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−NDのそれぞれに対応したND個の周波数シフタ106と、1個の加算器107と、1個のIDFT回路108と、1個のPAPR算出回路109とで1個目の送信系列回路群を構成している。また、図2に示した送信回路100の構成では、ND個の帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−NDのそれぞれに対応したND個の位相器105と、ND個の周波数シフタ106と、1個の加算器107と、1個のIDFT回路108と、1個のPAPR算出回路109とで、2個目〜C個目の送信系列回路群を構成している。
より具体的には、図2に示した送信回路100の構成では、周波数シフタ106−1−1〜周波数シフタ106−1−ND、加算器107−1、IDFT回路108−1、およびPAPR算出回路109−1で1個目の送信系列回路群を構成している。また、図2に示した送信回路100の構成では、位相器105−2−1〜位相器105−2−ND、周波数シフタ106−2−1〜周波数シフタ106−2−ND、加算器107−2、IDFT回路108−2、およびPAPR算出回路109−2で2個目の送信系列回路群を構成している。また、図2に示した送信回路100の構成では、位相器105−C−1〜位相器105−C−ND、周波数シフタ106−C−1〜周波数シフタ106−C−ND、加算器107−C、IDFT回路108−C、およびPAPR算出回路109−CでC個目の送信系列回路群を構成している。
なお、図2に示した送信回路100の構成において、それぞれの送信系列回路群に含まれる構成要素(つまり、位相器105、周波数シフタ106、加算器107、IDFT回路108、およびPAPR算出回路109)に付与した符号の後の「−」に続く符号は、その構成要素が何個目の送信系列回路群に含まれる構成要素であるかを表している。また、それぞれの送信系列回路群に含まれる位相器105と周波数シフタ106とにおいて、さらにその後の「−」に続く符号は、その構成要素が対応している帯域分割フィルタ104−kを表している。なお、それぞれの送信系列回路群を区別せずに、いずれか1つの送信系列回路群に含まれる構成要素を表す場合には、それぞれの構成要素に付与した符号の後の「−」に続く符号をq(1≦q≦C)で表す。より具体的には、q個目の送信系列回路群に含まれる加算器107、IDFT回路108、PAPR算出回路109のそれぞれを、「加算器107−q」、「IDFT回路108−q」、および「PAPR算出回路109−q」(1≦q≦C)と表す。また、q個目の送信系列回路群に含まれ、帯域分割フィルタ104−kに対応する位相器105および周波数シフタ106のそれぞれを、「位相器105−q−k」、「周波数シフタ106−q−k」(1≦q≦C、1≦k≦ND)と表す。
帯域分割フィルタ104−kのそれぞれは、生成したサブスペクトラムSSkを、送信回路100に備えた送信系列回路群の数だけ複製し、複製したサブスペクトラムSSkを、それぞれの送信系列回路群に含まれる対応する周波数シフタ106−q−kおよび対応する位相器105−q−kのそれぞれに出力する。より具体的には、図2に示した送信回路100の構成では、C個の送信系列回路群を備えているため、帯域分割フィルタ104−1は、生成したサブスペクトラムSS1を、周波数シフタ106−1−1、位相器105−2−1、・・・、位相器105−C−1のそれぞれに出力する。また、帯域分割フィルタ104−2は、生成したサブスペクトラムSS2を、周波数シフタ106−1−2、位相器105−2−2、・・・、位相器105−C−2のそれぞれに出力する。また、帯域分割フィルタ104−NDは、生成したサブスペクトラムSSNDを、周波数シフタ106−1−ND、位相器105−2−ND、・・・、位相器105−C−NDのそれぞれに出力する。
位相器105−q−kのそれぞれは、対応する帯域分割フィルタ104−kから入力されたサブスペクトラムSSkに予め定めたオフセットの位相(以下、「位相オフセット」という)を付加することによって、サブスペクトラムSSkの位相を回転させる。このとき、位相器105−q−kでは、予め用意した、下式(2)で表される位相系列Θqを用いて、入力されたサブスペクトラムSSkに異なる位相オフセットを付加することによって、それぞれのサブスペクトラムSSkに異なる位相回転を付与する。なお、上述したように、位相器105−q−kが位相オフセットを付加するサブスペクトラムSSkは、サブスペクトラムSS2〜サブスペクトラムSSNDである。従って、位相系列Θq(Θ2、Θ3、・・・Θq、・・・、ΘC)は、サブスペクトラムSSq2、サブスペクトラムSSq3、・・・、サブスペクトラムSSqk、・・・、サブスペクトラムSSqNDに対して付加する位相オフセットθq2、θq3、・・・、θqk、・・・、数式(3)から構成される。
なお、上式(2)において、それぞれの位相オフセットθqkの値は、0〜2πの間でランダムに決定される値、つまり、乱数値である。そして、位相器105−q−kのそれぞれは、位相オフセットθqkを付加したサブスペクトラムSSkを、対応する周波数シフタ106−q−kに出力する。このとき、位相器105−q−kのそれぞれが出力する出力信号数式(4)、すなわち、位相オフセットθqkを付加したサブスペクトラムSSkは、下式(5)で表される。
周波数シフタ106−q−kのそれぞれは、対応する帯域分割フィルタ104−kから入力されたサブスペクトラムSSk、または対応する位相器105−q−kから入力された位相オフセットθqkを付加した後のサブスペクトラムSSkの周波数帯域を目的の周波数帯域にシフトし、周波数帯域をシフトした後のサブスペクトラムSSkを、対応する加算器107−qに出力する。
加算器107−qのそれぞれは、対応する周波数シフタ106−q−kから入力された、周波数帯域をシフトした後のサブスペクトラムSSkのそれぞれを加算(合成)し、複数のサブスペクトラムSSkを加算した出力信号を、対応するIDFT回路108−qに出力する。
IDFT回路108−qのそれぞれは、対応する加算器107−qから入力された出力信号に対して逆離散フーリエ変換を行って、時間領域の送信信号を生成する。そして、IDFT回路108−qのそれぞれは、生成した時間領域の送信信号を対応するPAPR算出回路109−qおよび最小PAPR選択器110に出力する。
PAPR算出回路109−qのそれぞれは、対応するIDFT回路108−qから入力された時間領域の送信信号について、最大電力と平均電力の比であるピーク対平均電力比(Peak−to−Average Power Ratio:PAPR)を算出する。なお、PAPR算出回路109−qにおけるピーク対平均電力比の算出は、例えば、PAPR算出回路109−1〜PAPR算出回路109−Cに入力されたC通りの時間領域の信号に対して2乗した値の最大値と平均値とをそれぞれ算出し、算出した最大値を平均値で除算(最大値/平均値)することによって行う。そして、PAPR算出回路109−qのそれぞれは、算出したピーク対平均電力比の結果を、最小PAPR選択器110に出力する。
最小PAPR選択器110は、それぞれのPAPR算出回路109−qから入力されたピーク対平均電力比の算出結果に基づいて、それぞれのIDFT回路108−qから入力された時間領域の送信信号の中から、最もピーク対平均電力比が小さい時間領域の送信信号を選択する。そして最小PAPR選択器110は、選択した時間領域の送信信号を、最終的な送信信号として受信装置20に送信する。
次に、本実施形態の通信システム1に備えた送信装置10の動作について説明する。図3は、本実施形態の通信システム1を構成する送信装置10に備えた送信回路100における送信処理の処理手順を示したフローチャートである。また、図4は、本実施形態の通信システム1を構成する送信装置10に備えた送信回路100による送信処理のそれぞれの段階の信号の一例を示した図である。図4には、送信装置10による送信処理のそれぞれの段階における送信回路100内の構成要素の信号の周波数帯域の一例を示している。以下の説明においては、送信装置10における送信処理の手順を、図2に示した送信回路100に備えた帯域分割フィルタ104−kが4個、つまり、k=4であり、送信系列回路群が3個、つまり、C=3である場合を例として、図4に示したそれぞれの信号の周波数帯域を示した図を参照して説明する。
まず、送信装置10における送信処理では、変調回路101が、送信するデータ信号を、QPSKなどの変調方式で変調し、変調したデータ信号を波形整形フィルタ102に出力する(ステップS100)。続いて、波形整形フィルタ102が、変調回路101から入力された変調後のデータ信号に予め定めたフィルタ係数を乗算することによって、変調されたデータ信号の波形を整形して帯域制限する。そして、波形整形フィルタ102は、帯域制限した後のデータ信号をDFT回路103に出力する(ステップS101)。その後、DFT回路103は、波形整形フィルタ102から入力された帯域制限後のデータ信号に対して離散フーリエ変換を行い、周波数領域の変調信号を生成する。そして、DFT回路103は、生成した周波数領域の変調信号を、帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4のそれぞれに出力する(ステップS102)。
このステップS102の処理によってDFT回路103から帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4のそれぞれに出力される周波数領域の変調信号は、図4(a)に示した変調信号Aのような周波数帯域である。また、図4(a)には、変調信号Aにおける位相θを示している。
続いて、帯域分割フィルタ104−kのそれぞれは、DFT回路103から入力された周波数領域の変調信号に予め定めた分割係数を乗算することによって、対応する周波数帯域の信号を抜き出したサブスペクトラムSSkを生成する(ステップS103)。つまり、DFT回路103から入力された周波数領域の変調信号を、複数のサブスペクトラムSSkに分割する。
ここでは、送信回路100に4個の帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4を備えているため、このステップS103の処理において、図4(a)に示した変調信号Aに、帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4のそれぞれに対応する4つの分割係数が周波数ごとに乗算され、サブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4が生成される。図4(a)には、帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4のそれぞれによって、変調信号AからサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4が生成される様子を示している。なお、図4においては、それぞれの信号の周波数帯域を示しているため、図4(a)において縦軸に示した振幅は、変調信号AとサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4とのそれぞれの信号における振幅の関係を表しているものではない。図4(a)を見てわかるように、分割されたそれぞれのサブスペクトラムSSkには、隣接するサブスペクトラムSSkと周波数帯域が重複している重畳領域がある。つまり、分割されたそれぞれのサブスペクトラムSSkの遷移域同士は重複している。また、図4(b)には、帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4のそれぞれが出力するサブスペクトラムSSkごとに、周波数帯域および位相θを示している。
続いて、帯域分割フィルタ104−kのそれぞれは、生成したサブスペクトラムSSkを、送信回路100に備えた送信系列回路群の数に複製する。そして、帯域分割フィルタ104−kのそれぞれは、複製したサブスペクトラムSSkのそれぞれを、対応する送信系列回路群に出力する(ステップS104)。ここでは、送信回路100に3個の送信系列回路群を備えているため、このステップS104の処理において、図4(b)に示したサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4のそれぞれは3個に複製され、対応する送信系列回路群に出力される。以下の説明においては、帯域分割フィルタ104−kのそれぞれによって複製されたサブスペクトラムSSkのそれぞれを合わせて表すときには、「複製信号」という。なお、ここでは、送信回路100に4個の帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4を備えているため、1つの複製信号には、サブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4のそれぞれが含まれている。
続いて、送信系列回路群のそれぞれは、帯域分割フィルタ104−kのそれぞれから入力された複製信号に対して、以下の処理を行う。なお、図2に示した送信回路100の構成からもわかるように、それぞれの送信系列回路群は、入力された複製信号、つまり、それぞれのサブスペクトラムSSkに対する処理を並列に実行することができる。しかし、以下の説明においては、説明を容易にするため、送信回路100に備えたそれぞれの送信系列回路群が、それぞれの複製信号に対する処理を順次実行するものとして、送信装置10に備えた送信回路100による送信処理の手順を説明する。
まず、送信系列回路群に含まれた周波数シフタ106−q−kまたは位相器105−q−kのそれぞれは、入力された複製信号が、1番目の複製信号であるか否かを判定する(ステップS105)。より具体的には、それぞれの送信系列回路群に含まれる周波数シフタ106−q−kまたは位相器105−q−kのそれぞれは、入力されたサブスペクトラムSSkが、1番目の複製信号に含まれるサブスペクトラムSSkであるか否かを判定する。
ステップS105の判定の結果、入力された複製信号が1番目の複製信号である場合(ステップS105の“YES”)、1番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた周波数シフタ106−1−kのそれぞれは、入力された複製信号に含まれる対応するサブスペクトラムSSkの周波数帯域を、予め定めた目的の周波数帯域にシフトする。そして、周波数シフタ106−1−kのそれぞれは、周波数帯域をシフトした後のサブスペクトラムSSkを、対応する加算器107−q、つまり、1番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた加算器107−1に出力する(ステップS106)。
ここでは、送信回路100に4個の帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4を備え、3個の送信系列回路群を備えている。このため、1番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた周波数シフタ106−1−1〜周波数シフタ106−1−4のそれぞれは、ステップS106の処理において、対応するサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4の周波数帯域をシフトして、加算器107−1に出力する。
続いて、送信系列回路群に含まれた加算器107−qは、対応する周波数シフタ106−q−kから入力された、周波数帯域をシフトした後のサブスペクトラムSSkのそれぞれを加算(合成)する。そして、加算器107−qは、複数のサブスペクトラムSSkを加算した出力信号を、対応するIDFT回路108−qに出力する(ステップS107)。より具体的には、1番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた加算器107−1は、周波数シフタ106−1−1〜周波数シフタ106−1−4のそれぞれから入力されたそれぞれのサブスペクトラムSSkを加算(合成)した出力信号を、1番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれたIDFT回路108−1に出力する。
続いて、送信系列回路群に含まれたIDFT回路108−qは、対応する加算器107−qから入力された出力信号に対して逆離散フーリエ変換を行って、時間領域の送信信号を生成する。そして、IDFT回路108−qは、生成した時間領域の送信信号を、対応するPAPR算出回路109−qおよび最小PAPR選択器110に出力する(ステップS108)。より具体的には、1番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれたIDFT回路108−1は、加算器107−1から入力された出力信号に対して逆離散フーリエ変換を行って生成した時間領域の送信信号を、1番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれたPAPR算出回路109−1、および最小PAPR選択器110に出力する。
続いて、送信系列回路群に含まれたPAPR算出回路109−qは、対応するIDFT回路108−qから入力された時間領域の送信信号について、ピーク対平均電力比(PAPR)を算出する。そして、PAPR算出回路109−qは、算出したピーク対平均電力比の結果を、最小PAPR選択器110に出力する(ステップS109)。より具体的には、1番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれたPAPR算出回路109−1は、IDFT回路108−1から入力された時間領域の送信信号について算出したピーク対平均電力比の結果を、最小PAPR選択器110に出力する。
続いて、送信系列回路群のそれぞれは、帯域分割フィルタ104−kによって複製された全ての複製信号に対して処理が終了したか否かを判定する(ステップS110)。ステップS110の判定の結果、全ての複製信号に対して処理が終了していない場合(ステップS110の“NO”)、ステップS105に戻って、ステップS105〜ステップS110の処理を繰り返す。
一方、ステップS105の判定の結果、入力された複製信号が1番目の複製信号でない場合(ステップS105の“NO”)、1番目以外の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた位相器105−q−kのそれぞれは、入力された複製信号に含まれる対応するサブスペクトラムSSkに予め定めた位相オフセットを付加する。そして、位相器105−q−kのそれぞれは、位相オフセットを付加したサブスペクトラムSSkを、対応する周波数シフタ106−q−kに出力する(ステップS111)。
ここでは、送信回路100に4個の帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4を備え、3個の送信系列回路群を備えている。このため、例えば、2番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた位相器105−2−1〜位相器105−2−4のそれぞれは、ステップS111の処理において、対応するサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4に位相オフセットを付加して、対応する周波数シフタ106−2−1〜周波数シフタ106−2−4のそれぞれに出力する。また、例えば、3番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた位相器105−3−1〜位相器105−3−4のそれぞれは、ステップS111の処理において、対応するサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4に位相オフセットを付加して、対応する周波数シフタ106−3−1〜周波数シフタ106−3−4のそれぞれに出力する。
図4(c)には、2番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた位相器105−2−1〜位相器105−2−4のそれぞれによって、帯域分割フィルタ104−1〜帯域分割フィルタ104−4のそれぞれが出力したサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4に、上式(2)で示される位相系列Θqにおける位相オフセットθqkを付加する様子を示している。より具体的には、サブスペクトラムSS2に位相オフセットθ22を付加し、サブスペクトラムSS3に位相オフセットθ23を付加し、サブスペクトラムSS4に位相オフセットθ24を付加する様子を示している。なお、図4(c)を見てわかるように、サブスペクトラムSS1には位相オフセットを付加していない。これは、上述したように、位相器105−q−kが位相オフセットを付加するサブスペクトラムSSkは、サブスペクトラムSS2〜サブスペクトラムSSNDであるからである。
その後、1番目以外の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた周波数シフタ106−q−k、加算器107−q、IDFT回路108−q、およびPAPR算出回路109−qのそれぞれは、ステップS106〜ステップS109の対応する処理をそれぞれ実行する。より具体的には、例えば、2番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた周波数シフタ106−2−1〜周波数シフタ106−2−4のそれぞれは、ステップS106の処理において、位相器105−2−1〜位相器105−2−4のそれぞれから入力されたサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4の周波数帯域をシフトして、加算器107−2に出力する。そして、2番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた加算器107−2は、ステップS107の処理において、周波数シフタ106−2−1〜周波数シフタ106−2−4のそれぞれから入力されたそれぞれのサブスペクトラムSSkを加算(合成)した出力信号を、IDFT回路108−2に出力する。そして、2番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれたIDFT回路108−2は、ステップS108の処理において、加算器107−2から入力された出力信号に対して逆離散フーリエ変換を行って生成した時間領域の送信信号を、PAPR算出回路109−2および最小PAPR選択器110に出力する。そして、2番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれたPAPR算出回路109−2は、ステップS109の処理において、IDFT回路108−2から入力された時間領域の送信信号について算出したピーク対平均電力比の結果を、最小PAPR選択器110に出力する。
また、例えば、3番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた周波数シフタ106−3−1〜周波数シフタ106−3−4のそれぞれは、ステップS106の処理において、位相器105−3−1〜位相器105−3−4のそれぞれから入力されたサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4の周波数帯域をシフトして、加算器107−3に出力する。そして、3番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた加算器107−3は、ステップS107の処理において、周波数シフタ106−3−1〜周波数シフタ106−3−4のそれぞれから入力されたそれぞれのサブスペクトラムSSkを加算(合成)した出力信号を、IDFT回路108−3に出力する。そして、3番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれたIDFT回路108−3は、ステップS108の処理において、加算器107−3から入力された出力信号に対して逆離散フーリエ変換を行って生成した時間領域の送信信号を、PAPR算出回路109−3および最小PAPR選択器110に出力する。そして、3番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれたPAPR算出回路109−3は、ステップS109の処理において、IDFT回路108−3から入力された時間領域の送信信号について算出したピーク対平均電力比の結果を、最小PAPR選択器110に出力する。
図4(d)には、2番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれた周波数シフタ106−2−1〜周波数シフタ106−2−4のそれぞれがステップS106の処理において出力した周波数帯域をシフトした(分散させた)後のサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4のそれぞれを、加算器107−2がステップS107の処理において加算(合成)した出力信号を示している。2番目の複製信号に対応する送信系列回路群に含まれたIDFT回路108−2は、図4(d)に示されたような周波数帯域が分散された複数のサブスペクトラムSSkが含まれる出力信号に対して逆離散フーリエ変換を行って時間領域の送信信号を生成し、生成した時間領域の送信信号をPAPR算出回路109−2および最小PAPR選択器110に出力する。
このようにしてそれぞれの送信系列回路群は、対応する複製信号に対する処理を実行する。そして、ステップS110の判定の結果、全ての複製信号に対して処理が終了した場合(ステップS110の“YES”)、最小PAPR選択器110は、それぞれのPAPR算出回路109−qから入力されたピーク対平均電力比の算出結果に基づいて、最もピーク対平均電力比が小さい時間領域の送信信号を選択し、最終的な送信信号として受信装置20に送信する(ステップS112)。
このように、送信装置10では、送信回路100によって、データ信号が含まれる変調信号を複数のスペクトラムに分割し、さらに、位相オフセットを変えた複数の時間領域の送信信号を生成する。そして、送信装置10では、生成した複数の時間領域の送信信号のそれぞれのピーク対平均電力比を算出して、生成した複数の時間領域の送信信号の内、最もピーク対平均電力比が小さい時間領域の送信信号を、最終的な送信信号として送信する。これにより、送信装置10では、送信信号に含まれるそれぞれのサブスペクトラムの間で互いの位相が同相合成される頻度を低減した、ピーク対平均電力比が小さい送信信号を送信することができる。このことにより、送信装置10では、大型で高出力の増幅器を用いる必要がなくなり、送信装置10の小型化を実現することができる。
次に、本実施形態の通信システム1に備えた受信装置20の構成および動作について説明する。図5は、本実施形態の通信システム1を構成する受信装置20に備えた受信回路200の概略構成を示したブロック図である。受信回路200は、DFT(離散フーリエ変換)回路201、複数の抽出フィルタ202、複数の周波数シフタ203、複数の位相推定器204、複数の位相器205、加算器206、IDFT(逆離散フーリエ変換)回路207、復調回路208を備えている。
受信回路200では、送信回路100に備えた帯域分割フィルタ104と同じ数の抽出フィルタ202および周波数シフタ203と、送信回路100に備えた帯域分割フィルタ104の数−1個の位相推定器204および位相器205を備えている。図5には、送信回路100に備えた帯域分割フィルタ104の数と同じND個の抽出フィルタ202−1〜抽出フィルタ202−ND、および周波数シフタ203−1〜周波数シフタ203−NDと、(ND−1)個の位相推定器204−2〜位相推定器204−ND、および位相器205−2〜位相器205−NDとを備えた受信回路200の構成を示している。以下の説明においては、図5に示した受信回路200のそれぞれの構成要素に付与した符号の後の「−」に続いて、その構成要素が対応している帯域分割フィルタ104−kを表す符号を付与して表す。つまり、帯域分割フィルタ104−kに対応する抽出フィルタ202、周波数シフタ203、位相推定器204、および位相器205のそれぞれを、「抽出フィルタ202−k」、「周波数シフタ203−k」、「位相推定器204−k」、および「位相器205−k」(1≦k≦ND)と表す。
DFT回路201は、送信装置10から送信されてきた時間領域の送信信号に対して離散フーリエ変換を行って、周波数領域の信号を生成する。そして、DFT回路201は、生成した周波数領域の信号を、抽出フィルタ202−kのそれぞれに出力する。
抽出フィルタ202−kのそれぞれは、DFT回路201から入力された周波数領域の信号から、対応する帯域分割フィルタ104−kが生成したサブスペクトラムSSkに応じた信号を抽出する。そして、抽出フィルタ202のそれぞれは、抽出したサブスペクトラムSSkに応じた信号を、対応する周波数シフタ203−kに出力する。
周波数シフタ203−kのそれぞれは、対応する抽出フィルタ202−kから入力されたサブスペクトラムSSkの周波数帯域を目的の周波数帯域にシフトする。なお、周波数シフタ203−kのそれぞれによるサブスペクトラムSSkの周波数帯域のシフトは、送信回路100に備えた周波数シフタ106−q−kによってサブスペクトラムSSkのそれぞれがシフトされる前の周波数帯域に戻す処理である。周波数シフタ203−kのそれぞれによる周波数帯域のシフトの処理によって、受信回路200内のそれぞれのサブスペクトラムSSkの周波数帯域は、隣接するサブスペクトラムSSkの周波数帯域と重複した状態になる。つまり、周波数シフタ203−kのそれぞれは、送信回路100に備えた周波数シフタ106−q−kがそれぞれのサブスペクトラムSSkの周波数帯域を分散させる前の、重畳領域がある状態(図4(c)参照)に戻す。そして、周波数シフタ203−kのそれぞれは、周波数帯域をシフトした後、つまり、周波数帯域を戻したサブスペクトラムSSkを、加算器206、または対応する位相推定器204−kおよび位相器205−kに出力する。
図5に示した受信回路200の構成では、周波数シフタ203−1が、周波数帯域をシフトした後のサブスペクトラムSS1を加算器206と位相推定器204−2とに出力する構成している。また、図5に示した受信回路200の構成では、周波数シフタ203−2が、周波数帯域をシフトした後のサブスペクトラムSS2を位相推定器204−2と位相器205−2とに出力し、周波数シフタ203−3が、周波数帯域をシフトした後のサブスペクトラムSS3を位相推定器204−3と位相器205−3とに出力する構成している。同様に、図5に示した受信回路200の構成では、周波数シフタ203−NDが、周波数帯域をシフトした後のサブスペクトラムSSNDを位相推定器204−NDと位相器205−NDとに出力する構成している。
位相推定器204−kのそれぞれは、2個の周波数シフタ203−kから入力された周波数帯域が隣接するそれぞれのサブスペクトラムSSkに基づいて、送信回路100に備えた位相器105−q−kによって付加された位相オフセットθqkの値を推定し、サブスペクトラムSSkを元の位相に戻す、つまり、サブスペクトラムSSkの位相を補償するための位相オフセット数式(6)(以下、「位相補償オフセット^θqk」と表す)の値を決定する。
より具体的には、位相推定器204−kのそれぞれは、周波数帯域が隣接するサブスペクトラムSS(k−1)とサブスペクトラムSSkとの遷移域における相関値Rk_abを算出する。そして、位相推定器204−kのそれぞれは、算出した相関値Rk_abに基づいて、送信回路100に備えた位相器105−q−kによって付加された位相オフセットθqkの値を推定し、サブスペクトラムSSkに付加する位相補償オフセット^θqkの値を決定する。そして、位相推定器204−kのそれぞれは、決定した位相補償オフセット^θqkの値を、対応する位相器205−kに出力する。
なお、上述したように、送信回路100では、サブスペクトラムSS1には位相オフセットを付加していない(図4(c)参照)。このため、サブスペクトラムSS1は、サブスペクトラムSSk(2≦k≦ND)に対する位相補償オフセット^θqkの値を決定する際の基準となる。また、以降のサブスペクトラムSSk(3≦k≦ND)に対する位相補償オフセット^θqkの値を決定する際には、決定した位相補償オフセット^θqkの値に基づいて位相が補償されたサブスペクトラムSSk(2≦k≦ND)が順次、基準のサブスペクトラムSS(k−1)となっていく。なお、位相推定器204−kのそれぞれにおける位相オフセットθqkの値の推定方法、つまり、位相補償オフセット^θqkの値の決定方法に関する詳細な説明は、後述する。
位相器205−kのそれぞれは、対応する位相推定器204−kから入力されたサブスペクトラムSSkに対する位相補償オフセット^θqkを付加ことによって、周波数シフタ203−kが出力したサブスペクトラムSSkの位相を補償する。つまり、周波数シフタ203−kが出力したサブスペクトラムSSkの位相から、送信回路100に備えた位相器105−q−kによって付加された位相オフセットθqkを差し引くように位相を回転させて、サブスペクトラムSSkに付与された位相回転をなくし、帯域分割フィルタ104−kが出力したサブスペクトラムSSkと同じ位相に戻す。そして、位相器205−kのそれぞれは、位相を補償したサブスペクトラムSSkを、加算器206および対応する位相推定器204−kに出力する。なお、位相器205−kのそれぞれにおけるサブスペクトラムSSkの位相の補償方法に関する詳細な説明は、後述する。
加算器206は、対応する周波数シフタ203―kまたは位相器205−kから入力された、周波数帯域のシフトを元に戻した後のサブスペクトラムSSkのそれぞれを加算(合成)する。これにより、受信回路200では、送信回路100に備えたDFT回路103が生成した変調信号と同じ周波数領域の変調信号を得ることになる。そして、加算器206は、入力された複数のサブスペクトラムSSkを加算した変調信号を、IDFT回路207に出力する。
IDFT回路207は、加算器206から入力された変調信号に対して逆離散フーリエ変換を行って、時間領域の変調信号を生成する。そして、IDFT回路207は、生成した時間領域の変調信号を復調回路208に出力する。
復調回路208は、IDFT回路207から入力された時間領域の変調信号を、送信回路100に備えた変調回路101が送信するデータ信号を変調したQPSKなどの変調方式に対応する復調方式で復調して、送信回路100が送信したデータ信号を取り出す。
ここで、位相推定器204−kのそれぞれにおける位相オフセットθqkの値の推定方法、つまり、位相補償オフセット^θqkの値の決定方法と、位相器205−kのそれぞれにおけるサブスペクトラムSSkの位相の補償方法について説明する。
まず、位相推定器204−kが位相オフセットθqkの値を推定(決定)する際に算出する相関値Rk_abの算出方法について説明する。送信回路100から送信された送信信号に含まれるそれぞれのサブスペクトラムSSkは、送信回路100に備えた周波数シフタ106−q−kによって、図4(d)に示したように、周波数帯域が分散されている。このため、受信回路200では、周波数シフタ203−kが、それぞれのサブスペクトラムSSkの周波数帯域を、シフトされる前の状態に戻す。これにより、位相推定器204−kに入力されるサブスペクトラムSS(k−1)とサブスペクトラムSSkとは、図4(c)で示したように、送信回路100において分散されたそれぞれのサブスペクトラムSSkの遷移域同士が重複している状態となる。このため、隣接するサブスペクトラムSSkの遷移域は共通の信号成分を持っている。つまり、それぞれのサブスペクトラムSSkには、共通の信号成分が、DFT回路201による離散フーリエ変換によって、それぞれのサブスペクトラムSSkにおける周波数帯域内に離散化して含まれている。そこで、位相推定器204−kでは、重複している遷移域の信号成分から相関値Rk_abを算出する。
図6は、本実施形態の通信システム1を構成する受信装置20において信号の相関値Rk_abの算出方法を説明する図である。図6には、位相推定器204−kに入力されるサブスペクトラムSS(k−1)とサブスペクトラムSSkとの一例を示している。以下の説明においては、それぞれのサブスペクトラムSSkにおける低周波数側の遷移域に離散化された信号成分を、周波数の低い側から順番にak1、ak2、・・・、akpとし、それぞれのサブスペクトラムSSkにおける高周波数側の遷移域に離散化された信号成分を、周波数の低い側から順番にbk1、bk2、・・・、bkpと定義する。なお、pは遷移域の周波数帯域に含まれる離散化された信号成分の数とする。このとき、例えば、DFT回路201における周波数の分解能をr、遷移域の周波数帯域の帯域幅をBtとすると、信号成分の数pは、p=[Bt/r]となる。ただし、[x]は、xを超えない最大の整数とする。
そして、相関値Rk_abは、隣接するサブスペクトラムSS(k−1)とサブスペクトラムSSkとにおける離散化された信号成分aと信号成分bとに基づいて算出する。より具体的には、相関値Rk_abは、下式(7)に表したように、サブスペクトラムSS(k−1)の高周波数側の信号成分b(k−1)1、b(k−1)2、・・・、b(k−1)pと、サブスペクトラムSSkの低周波数側の信号成分ak1、ak2、・・・、akpの複素共役とを乗算した後に、周波数軸方向に平滑化することによって算出する。
図6には、信号成分の数p=3であるときの一例を示している。図6に示した一例における相関値Rk_abは、下式(8)によって表される。
位相推定器204−kでは、このようにして算出した相関値Rk_abが、予め定めた閾値α以上であるとき、送信回路100から、位相器105−q−kによって位相オフセットθqkの値が付加されたサブスペクトラムSSkが送信信号として送信されたと判断する。一方、位相推定器204−kでは、相関値Rk_abが、閾値α未満であるとき、送信回路100から、位相オフセットθqkの値が付加されていないサブスペクトラムSSkが送信信号として送信されたと判断する。
位相推定器204−kは、位相器105−q−kによって位相オフセットθqkの値が付加されたサブスペクトラムSSkが、送信信号として送信回路100から送信されたと判断した場合、算出した相関値Rk_abに基づいて、送信信号に含まれるそれぞれのサブスペクトラムSSkを元の位相に戻すための位相補償オフセット^θqkの値を決定する。
続いて、位相推定器204−kのそれぞれにおける位相補償オフセット^θqkの値の決定方法と、位相器205−kのそれぞれにおけるサブスペクトラムSSkの位相の補償方法について説明する。位相推定器204−kによる位相補償オフセット^θqkの値の決定方法では、重複している遷移域の信号成分から算出した相関値Rk_abに基づいて、位相補償オフセット^θqkの値を順次決定する。
まず、位相推定器204−2では、周波数シフタ203−1から出力されたサブスペクトラムSS1と、周波数シフタ203−2から出力されたサブスペクトラムSS2との遷移域から算出した相関値R2_abに基づいて、下式(9)によってサブスペクトラムSS2に付加する位相補償オフセット^θq2の値を決定する。そして、位相推定器204−2は、決定した位相補償オフセット^θq2の値を、対応する位相器205−2に出力する。
上式(9)において、kは対応する帯域分割フィルタ104−kを表す。なお、以下の説明においては、説明を容易にするため、上式(9)におけるaが、位相推定器204−kに入力される基準のサブスペクトラムSSk(位相推定器204−2においてはサブスペクトラムSS1、すなわち“1”)を表し、bが、位相推定器204−kにおいて位相補償オフセット^θqkの値を決定するサブスペクトラムSSk(位相推定器204−2においてはサブスペクトラムSS2、すなわち“2”)を表すものとして説明する。従って、位相推定器204−2は、算出した相関値R2_12から上式(9)によって決定した位相補償オフセット^θq2の値(=arctan(R2_12))を、対応する位相器205−2に出力する。
そして、位相器205−2は、対応する周波数シフタ203−2から入力されたサブスペクトラムSS2に、対応する位相推定器204−2から入力されたサブスペクトラムSS2に対する位相補償オフセット^θq2の値を付加ことによって、周波数シフタ203−2が出力したサブスペクトラムSS2の位相を補償する。より具体的には、位相器205−2は、サブスペクトラムSS2に位相補償オフセット^θq2の値に基づいた数式(10)の値(位相器205−2では、「exp(−j^θq2)」)を乗算することによって、サブスペクトラムSS2の位相を補償する。
続いて、位相推定器204−3では、位相器205−2によって位相が補償されたサブスペクトラムSS2と、周波数シフタ203−3から出力されたサブスペクトラムSS3との遷移域から算出した相関値R3_23に基づいて、上式(9)によってサブスペクトラムSS3に付加する位相補償オフセット^θq3の値(=arctan(R3_23))を決定し、対応する位相器205−3に出力する。
そして、位相器205−3は、対応する周波数シフタ203−3から入力されたサブスペクトラムSS3に、対応する位相推定器204−3から入力されたサブスペクトラムSS2に対する位相補償オフセット^θq3の値に基づいた上記数式(10)の値(位相器205−3では、「exp(−j^θq3)」)を乗算することによって、サブスペクトラムSS3の位相を補償する。
続いて、以降の位相推定器204−k(4≦k≦ND)も同様に、サブスペクトラムSS(k−1)とサブスペクトラムSSkとの遷移域から算出した相関値Rk_abに基づいて、上式(9)によって位相補償オフセット^θqkの値(=arctan(Rk_ab))を決定する。そして、位相推定器204−kに対応する位相器205―k(4≦k≦ND)も同様に、対応する周波数シフタ203−kから入力されたサブスペクトラムSSkに、入力された位相補償オフセット^θqkの値に基づいた上記数式(10)の値(位相器205−kでは、「exp(−j^θqk)」)を乗算することによって、サブスペクトラムSSkの位相を順次補償する。
次に、本実施形態の通信システム1に備えた受信装置20の動作について説明する。図7は、本実施形態の通信システム1を構成する受信装置20に備えた受信回路200における受信処理の処理手順を示したフローチャートである。また、図8は、本実施形態の通信システム1を構成する受信装置20に備えた受信回路200による受信処理のそれぞれの段階の信号の一例を示した図である。図8には、受信装置20による受信処理のそれぞれの段階における受信回路200内の構成要素の信号の周波数帯域の一例を示している。以下の説明においては、受信装置20における受信処理の手順を、図5に示した受信回路200が、帯域分割フィルタ104−kを4個備えた送信回路100に対応した受信回路200である場合を例として、図8に示したそれぞれの信号の周波数帯域を示した図を参照して説明する。
まず、受信装置20における受信処理では、DFT回路201が、送信装置10から送信されてきた時間領域の送信信号に対して離散フーリエ変換を行い、周波数領域の信号を生成する。そして、DFT回路201は、生成した周波数領域の信号を、抽出フィルタ202−1〜抽出フィルタ202−4のそれぞれに出力する(ステップS200)。
続いて、抽出フィルタ202−1〜抽出フィルタ202−4のそれぞれは、DFT回路201から入力された周波数領域の信号に予め定めた抽出係数を乗算することによって、送信回路100に備えた対応する帯域分割フィルタ104−kが生成したサブスペクトラムSSkに応じた信号を抽出する。そして、抽出フィルタ202−1〜抽出フィルタ202−4のそれぞれは、抽出したサブスペクトラムSSkに応じた信号を、対応する周波数シフタ203−1〜周波数シフタ203−4のそれぞれに出力する(ステップS201)。
続いて、周波数シフタ203−1〜周波数シフタ203−4のそれぞれは、入力されたサブスペクトラムSSkの周波数帯域を、目的の周波数帯域にシフトすることによって、送信回路100に備えた周波数シフタ106−q−kによってサブスペクトラムSSkのそれぞれがシフトされる前の周波数帯域に戻す。そして、周波数シフタ203−1〜周波数シフタ203−4のそれぞれは、周波数帯域をシフトした後のサブスペクトラムSSkを、対応する加算器206、または対応する位相推定器204−2〜位相推定器204−4および位相器205−2〜位相器205−4に出力する(ステップS202)。
このステップS202の処理によって周波数シフタ203−1〜周波数シフタ203−4のそれぞれから、隣接するサブスペクトラムSSkの周波数帯域と重複している状態、つまり、送信回路100において分散されたそれぞれのサブスペクトラムSSkの遷移域同士が重複している状態と同様のサブスペクトラムSSkのそれぞれが出力される。例えば、受信回路200が受信した送信信号が、位相器105−q−kによって位相オフセットθqkの値が付加されたサブスペクトラムSSkが含まれる送信信号である場合、周波数シフタ203−2〜周波数シフタ203−4のそれぞれから出力される周波数領域のサブスペクトラムSS2〜サブスペクトラムSS4は、周波数シフタ203−1から出力されるサブスペクトラムSS1における位相θの特性と異なる特性の信号である。図8(a)には、周波数シフタ203−1〜周波数シフタ203−4のそれぞれから出力されるサブスペクトラムSSkにおいて、サブスペクトラムSS1の位相θの特性と異なる特性のサブスペクトラムSS2〜サブスペクトラムSS4を示している。
続いて、位相推定器204−2〜位相推定器204−4のそれぞれは、入力された周波数帯域が隣接するサブスペクトラムSS(k−1)とサブスペクトラムSSkとの位相θを比較することによって、遷移域における位相θの差を相関値Rk_abとして算出する。そして、位相推定器204−2〜位相推定器204−4のそれぞれは、算出した相関値Rk_abに基づいて、入力されたサブスペクトラムSSkに対応する位相補償オフセット^θqkの値を推定(決定)する。そして、位相推定器204−2〜位相推定器204−4のそれぞれは、推定(決定)したサブスペクトラムSSkに対応する位相補償オフセット^θqkの値を、対応する位相器205−2〜位相器205−4に出力する(ステップS203)。
続いて、位相器205−2〜位相器205−4のそれぞれは、入力されたサブスペクトラムSSkに、対応する位相推定器204−2〜位相推定器204−4のそれぞれから入力された位相補償オフセット^θqkの値を付加することによって、入力されたサブスペクトラムSSkの位相を補償する。そして、位相器205−kのそれぞれは、位相を補償したサブスペクトラムSSkを、加算器206および対応する位相推定器204−kに出力する。
図8(b)には、位相器205−2〜位相器205−4のそれぞれによって、周波数シフタ203−2〜周波数シフタ203−4のそれぞれから出力されたサブスペクトラムSS2〜サブスペクトラムSS4の位相θを補償する、つまり、送信回路100に備えた位相器105−q−kによって位相オフセットθqkが付加される前の位相に戻す様子を示している。より具体的には、サブスペクトラムSS2に位相補償オフセット^θ22の値を付加し、サブスペクトラムSS3に位相補償オフセット^θ23の値を付加し、サブスペクトラムSS4に位相補償オフセット^θ24の値を付加する様子を示している。これにより、サブスペクトラムSS2〜サブスペクトラムSS4のそれぞれの位相θは、サブスペクトラムSS1における位相θの特性と同様の特性となる。なお、図8(b)を見てわかるように、サブスペクトラムSS1には位相補償オフセット^θqkの値を付加していない。これは、上述したように、送信回路100では、サブスペクトラムSS1には位相オフセットθqkが付加されていないからである。
なお、位相器205−2〜位相器205−4のそれぞれにおけるサブスペクトラムSS2〜サブスペクトラムSS4のそれぞれに対する位相θの補償は、上述したように、低周波数側のサブスペクトラムSSkから順次行われる。このため、加算器206は、周波数シフタ203―1および位相器205−2〜位相器205−4のそれぞれからサブスペクトラムSSkが入力されたか否かによって、全てのサブスペクトラムSSkに対して処理が終了したか否かを判定する(ステップS205)。
ステップS205の判定の結果、全てのサブスペクトラムSSkに対して処理が終了していない場合(ステップS205の“NO”)、ステップS203に戻って、ステップS203〜ステップS205の処理を繰り返す。
一方、ステップS205の判定の結果、全てのサブスペクトラムSSkに対して処理が終了した場合(ステップS205の“YES”)、加算器206は、周波数シフタ203―1および位相器205−2〜位相器205−4のそれぞれからサブスペクトラムSSk、つまり、周波数帯域のシフトを元に戻した後のサブスペクトラムSSkのそれぞれを加算(合成)する。そして、加算器206は、複数のサブスペクトラムSSkを加算した出力信号を、IDFT回路207に出力する(ステップS206)。つまり、加算器206は、周波数シフタ203―1および位相器205−2〜位相器205−4のそれぞれから、周波数帯域のシフトを元に戻した後のサブスペクトラムSS1〜サブスペクトラムSS4が入力されるのを待ってから、入力された全てのサブスペクトラムSSkを加算(合成)した出力信号を、IDFT回路207に出力する。
続いて、IDFT回路207は、加算器206から入力された出力信号に対して逆離散フーリエ変換を行って、時間領域の変調信号を生成する。そして、IDFT回路207は、生成した時間領域の変調信号を、復調回路208に出力する(ステップS207)。
続いて、復調回路208は、IDFT回路207から入力された時間領域の変調信号を、送信回路100に備えた変調回路101が送信するデータ信号を変調したQPSKなどの変調方式に対応する復調方式で復調する(ステップS208)。これにより、受信回路200は、送信回路100が送信したデータ信号を取り出す。
このように、受信装置20では、受信回路200によって、送信装置10から送信されてきた時間領域の送信信号に含まれるそれぞれのサブスペクトラムSSkを抽出して周波数帯域のシフトを元に戻す。そして、受信装置20では、さらに、隣接したサブスペクトラムSSkの位相差を逐次推定して、それぞれのサブスペクトラムSSkを元の位相に戻すための位相補償オフセットの値を決定し、それぞれのサブスペクトラムSSkの位相を補償してから(元の位相に戻してから)加算(合成)することによって、送信回路100が送信したデータ信号を取り出す。これにより、受信装置20では、送信回路100から送信されてきた、それぞれのサブスペクトラムの間で互いの位相が同相合成される頻度を低減し、ピーク対平均電力比を低減させた送信信号を受信することができる。
上記に述べたとおり、本発明を実施するための形態によれば、送信装置が、データ信号が含まれる変調信号を周波数領域の信号に変換して複数のサブスペクトラムに分割した後、それぞれのサブスペクトラムの周波数帯域をシフトすることによって、周波数軸上の分散した位置にそれぞれのサブスペクトラムを配置する。このとき、本発明を実施するための形態の送信装置では、それぞれのサブスペクトラムに異なる位相オフセットを付加することによって異なる位相回転を付与し、サブスペクトラムの間で互いの位相が同相合成されてしまう頻度を低減する。さらに、本発明を実施するための形態の送信装置は、それぞれのサブスペクトラムを加算(合成)して時間領域の変調信号に変換した後にピーク対平均電力比を算出し、最もピーク対平均電力比が小さい時間領域の変調信号を、最終的な送信信号として送信する。
また、本発明を実施するための形態によれば、受信装置が、受信した送信信号を周波数領域の信号に変換した後、周波数領域の信号に含まれるそれぞれのサブスペクトラムを抽出して周波数帯域のシフトを元に戻す。そして、本発明を実施するための形態の受信装置では、隣接したサブスペクトラムの位相差に基づいてそれぞれのサブスペクトラムの位相を補償してから(元の位相に戻してから)それぞれのサブスペクトラムを加算(合成)し、時間領域の変調信号に変換してデータ信号を取り出す。
これにより、本発明を実施するための形態では、送信するデータ信号を変調した変調信号を周波数領域の信号に変換して複数のサブスペクトラムに分割した後、それぞれのサブスペクトラムを周波数軸上の不連続な周波数帯域に分散して伝送する通信システムにおいて、サブスペクトラム間で互いの位相が同相合成される頻度を低減させると共に、ピーク対平均電力比を低減させた伝送を行うことができる。このことにより、本発明を実施するための形態の通信システムでは、ピーク対平均電力比の低減に伴って、大型で高出力の増幅器を用いる必要がなくなり、送信装置の小型化を実現することができる。
なお、本実施形態においては、送信回路100の構成として、周波数シフタ106−q−kを、位相器105−q−kと加算器107−qとの間に配置した構成を説明した。しかし、送信回路100内で周波数シフタ106−q−kを配置する位置は、本発明を実施するための形態に限定されるものではない。例えば、周波数シフタ106−q−kを、帯域分割フィルタ104−kと位相器105−q−kとの間に配置し、この周波数シフタ106−q−kによって帯域分割フィルタ104−kから出力されたサブスペクトラムSSkの周波数帯域を目的の周波数帯域にシフト、つまり、目的の周波数帯域に分散して配置した後に、位相器105−q−kによってそれぞれのサブスペクトラムSSkに位相オフセットを付加する構成にしてもよい。
また、本実施形態においては、受信回路200の構成として、周波数シフタ203−kを、抽出フィルタ202−kと位相推定器204−kとの間に配置した構成を説明した。しかし、受信回路200内で周波数シフタ203−kを配置する位置は、本発明を実施するための形態に限定されるものではない。例えば、周波数シフタ203−kを、位相器205−kと加算器206との間に配置し、位相器205−kによって送信回路100で付与された位相オフセットを補償した後(位相オフセットによる位相回転をなくしてから)、この周波数シフタ203−kによってサブスペクトラムSSkの周波数帯域を目的の周波数帯域にシフト、つまり、それぞれのサブスペクトラムSSkの周波数帯域をシフトされる前の周波数帯域に戻す構成にしてもよい。
また、本実施形態においては、送信回路100の構成として、1個目の送信系列回路群と、1個目以外の送信系列回路群との構成が異なる場合について説明した。より具体的には、1個目の送信系列回路群には位相器105を含まず、1個目以外の送信系列回路群には位相器105を含む構成を説明した。しかし、送信回路100に備える送信系列回路群の構成は、本発明を実施するための形態に限定されるものではない。例えば、全ての送信系列回路群には位相器105を含む構成にしてもよい。この構成の場合、1個目の送信系列回路群に含まれる位相器105において、回転量が“0”の位相回転を付与する処理を行うことによって、本実施形態で説明した、位相器105を含まない1個目の送信系列回路群と同様の動作(処理)を行うことができる。そして、この構成にすることによって、送信回路100の回路規模が増大する可能性はあるが、送信信号を生成する動作(処理)が全ての送信系列回路群で同様になり、送信装置における処理が容易になるという効果が得られる。
また、本実施形態においては、送信回路100の構成として、複数の送信系列回路群を備え、それぞれの送信系列回路群が、帯域分割フィルタ104−kによって複製されたそれぞれのサブスペクトラムSSkに対する位相オフセットの付加、周波数帯域のシフト、サブスペクトラムSSkの加算(合成)、逆離散フーリエ変換、およびピーク対平均電力比の算出のそれぞれの処理を並列に実行する構成を説明した。しかし、送信回路100に備える送信系列回路群の数は、本発明を実施するための形態に限定されるものではない。例えば、図2に示した2個目の送信系列回路群と同様の構成の送信系列回路群を1個のみ備え、それぞれのサブスペクトラムSSkに対する同様の処理を順次実行する構成、つまり、図3に示したフローチャートを参照して説明した送信回路100における送信処理の処理手順と同様にそれぞれの処理が実行される構成にしてもよい。この構成にすることによって、送信信号を送信する際の速度が低下する可能性はあるが、送信回路100の回路規模を大幅に削減することができるという効果が得られる。
また、本実施形態においては、変調方式がQPSKである場合について説明したが、変調方式は、本発明を実施するための形態に限定されるものではない。例えば、8PSK(8Phase Shift Keying:八位相偏移変調)など、他の変調方式であっても同様に、本発明の考え方を適用することができる。
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。