以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1〜図3を参照して、実施の形態1に係る電子回路基板10について説明する。実施の形態1に係る電子回路基板10は、複数の貫通孔2が形成されている回路基板1と、複数の貫通孔2のうちの一部に挿入されている電子回路部品11と、電子回路部品11が挿入されていない貫通孔2のうちの第1貫通孔2aと第1貫通孔2a以外の第2貫通孔2bとに挿入されている誤挿入防止部材3とを備える。
回路基板1は、第1の主面1Aと、第1の主面1Aと反対側に位置する第2の主面1Bとを有している。回路基板1には、第1の主面1Aから第2の主面1Bに達する貫通孔2が複数形成されており、第1の主面1Aおよび第2の主面1Bの少なくとも一方には、貫通孔2にまで延在する導電性パターン(図示しない)が形成されている。
貫通孔2は、第1の主面1Aから第2の主面1Bに達するように形成されている。貫通孔2の孔軸は、第1の主面1Aおよび第2の主面1Bに対して所定の角度を有して交差するように形成されていればよいが、たとえば第1の主面1Aおよび第2の主面1Bに対して垂直に伸びるように形成されている。貫通孔2は第1の主面1Aおよび第2の主面1B上において、互いに所定の間隔を隔てて複数形成されている。貫通孔2の第1の主面1Aおよび第2の主面1B上における平面形状は、任意の形状とすることができるが、たとえば円形状である。貫通孔2は、後述する誤挿入防止部材3の挿入部5を挿入可能に設けられている。具体的には、貫通孔2において開口部を挟んで対向する内周端面間の最大距離W2(孔径W2)は、誤挿入防止部材3の長手方向に垂直な面における外周端面間の最大幅W1(本明細書において、単に最大幅という)よりも長い。最大距離W2と最大幅W1との差は、電子回路部品11において貫通孔2に挿入される部分(たとえばリード線)の最大幅よりも小さくなるように設けられている。貫通孔2の内周端面には、上記導電性パターンが延在している。
貫通孔2や導電性パターンは、回路基板1を汎用的なものとするために形成されている。図6を参照して、たとえば出力の異なる電気機器100と電気機器200など複数の仕様が存在する電気機器において、出力に応じて回路配置の異なる複数の電子回路基板10が必要となる。この場合、製造コストなどの観点から回路基板1は共用可能に設けられているのが好ましく、そのような回路基板1に形成されている貫通孔2は電子回路部品11が挿入される貫通孔2と、電子回路部品11が挿入されない貫通孔2とを含むことになる。言い換えると、ある電気機器100用の電子回路基板10において電子回路部品11が挿入されない貫通孔2は、他の電気機器200用の電子回路基板20において電子回路部品11が挿入される貫通孔2として設けられている。
複数の貫通孔2の孔径W2は、それぞれ等しく形成されていてもよいし、異なるように形成されていてもよい。複数の貫通孔2は、回路基板1の第1の主面1Aおよび第2の主面1B上において、互いに任意の方向に任意の方向を隔てて形成されていればよい。たとえば、回路基板1の第1の主面1A上における特定の方向において、隣り合う貫通孔2は、間隔L1、L1よりも短い間隔L2、およびL1とL2との和に相当する間隔L1+L2を有するように形成されていてもよい。また、回路基板1の第1の主面1A上における上記特定の方向と垂直な方向において、隣り合う貫通孔2は上記間隔L1,L2と異なる間隔L3を有するように形成されていてもよい。
誤挿入防止部材3および電子回路部品11は、いずれも貫通孔2に挿入されており、たとえばはんだ(図示しない)により貫通孔2に接合されている。なお、回路基板1に対する誤挿入防止部材3の接合方法は、はんだ接合に限られるものではなく、たとえばプレスフィットによる接合であってもよい。
電子回路部品11は、回路基板1上において所定の電子回路を形成するための任意の電子回路部品であり、たとえば抵抗器、コンデンサ、コイル、トランジスタ、およびダイオードなどである。電子回路部品11が挿入されている貫通孔2は、複数の貫通孔2のうち所定の電子回路を形成するために選択されている。
誤挿入防止部材3は、電子回路部品11が挿入されておらず、電子回路基板10において電子回路部品11が挿入されていない複数の貫通孔2のうちから選択された2つの貫通孔2(第1貫通孔および第2貫通孔)に挿入されている。誤挿入防止部材3は、電子回路部品11の誤挿入防止の観点から、電子回路部品11が挿入されていない貫通孔2のうち電子回路部品11が挿入されている貫通孔2に隣接する貫通孔2にのみ挿入されていてもよいが、はんだ使用量を低減する観点からより多くの貫通孔2に挿入されているのが好ましく、より好ましくは全ての貫通孔2に挿入されている。
誤挿入防止部材3が挿入されている2つの貫通孔2は、回路基板1において互いに隣接している2つの貫通孔2であってもよいし、他の貫通孔2を跨いだ位置にある(他の貫通孔2を間に挟む位置にある)2つの貫通孔2であってもよい。誤挿入防止部材3が挿入されている2つの貫通孔2の位置関係、すなわち電子回路基板10における誤挿入防止部材3の配置は、任意に選択され得る。
誤挿入防止部材3を構成する材料は、電気的絶縁性を有し、かつ塑性を有する樹脂部材であって、たとえば塑性変形性ポリエチレン、ポリエチレン、エチレン‐αオレフィン共重合体、ポリスチレン、およびポリ乳酸からなる群から選択される少なくとも1つを含む。つまり、誤挿入防止部材3の表面には導電性を有する材料が表出しておらず、電気的絶縁性を有する材料のみによって形成されている。誤挿入防止部材3は、耐熱性を有するフィラーを含んでいてもよい。このようにすれば、誤挿入防止部材3の耐熱性を向上させることができる。フィラーを構成する材料は、任意に選択されるが、たとえばガラス繊維やセラミックスなどであってもよい。このような誤挿入防止部材3は、塑性を有している。ここで、誤挿入防止部材3が有する塑性とは、折り曲げ角度を95度として折り曲げた後に折り曲げ角度が85度になるまでの時間が0.5秒以上であるような特性をいう。
誤挿入防止部材3は、長手方向に延びるように線状に形成されていた樹脂材料が、折り曲げられて構成されている。たとえば誤挿入防止部材3は、当該長手方向において所定の間隔を隔てた少なくとも2か所において折り曲げられた屈曲部4と、屈曲部4を挟んで配置された一組の挿入部5とを含んでいる。言い換えると、誤挿入防止部材3は、屈曲部4に挟まれた部分と、屈曲部4よりも誤挿入防止部材3の端部3E側に位置している2つの挿入部5とを有している。挿入部5は、屈曲部4よりも誤挿入防止部材3の端部3E側に位置する部分であり、そのうちの少なくとも一部が貫通孔2の内部に配置されている。
図3を参照して、屈曲部4における屈曲角度θ1は、屈曲部4に挟まれた部分と、挿入部5とが成す角度である。屈曲部4における屈曲角度θ1は、回路基板1における第1の主面1Aと貫通孔2の孔軸とが成す角度に応じて貫通孔2に挿入部5を挿入可能とする範囲内に設けられていればよい。たとえば、回路基板1における第1の主面1Aと貫通孔2の孔軸とが直交している場合の屈曲角度θ1は85度以上95度以下であるのが好ましい。なお、2つの屈曲部におけるそれぞれの屈曲角度θ1は、同一である必要はなく、異なっていてもよい。
誤挿入防止部材3の2つの屈曲部4間の長さは、誤挿入防止部材3が挿入される2つの貫通孔2間の距離(図2中のL1,L1+L2,L3など)と同等程度に設けられている。さらに、屈曲角度θ1が90度程度である場合には、屈曲部4間の長さと端部3E間の長さとは同等程度に設けられており、すなわち端部3E間の距離は貫通孔2間の距離と同等程度に設けられている。
挿入部5の長さL4、すなわち少なくとも一方の屈曲部4とこれに近接する端部3Eまでの長さは、後述する電子回路基板10の製造方法において電子回路部品11の誤挿入を防止する役割を果たすことができるように誤挿入防止部材3が回路基板1上に配置され得る(固定され得る)限りにおいて、任意の長さを有していればよい。好ましくは、2つの挿入部5のうち少なくとも一方の挿入部5の長さL4は、回路基板1の厚みTと同等かそれ以上である。つまり、少なくとも一方の挿入部5は第2の主面1B側に突出していてもよい。なお、2つの挿入部5の長さL4は、同一である必要はなく、異なっていてもよい。たとえば一方の挿入部5の長さL4は回路基板1の厚みTよりも長く設けられているとともに、他方の挿入部5の長さL4は回路基板の厚みTよりも短く設けられていてもよい。
誤挿入防止部材3の最大幅W1は、上述のように、貫通孔2の孔径W2よりも短くなるように設けられている。誤挿入防止部材3の挿入部5は、貫通孔2の内周壁面に接している状態で、あるいは接することなく微小な間隔を有している状態で、はんだ接合されている。2つの屈曲部4に挟まれた部分は、回路基板1の第1の主面1Aと接して設けられていてもよいし、第1の主面1Aから任意の距離だけ離れて設けられていてもよい。誤挿入防止部材3の長手方向に垂直な断面形状は、貫通孔2の平面形状に応じて任意に決めることができるが、たとえば円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
次に、図4を参照して、実施の形態1に係る電子回路基板10の製造方法について説明する。実施の形態1に係る電子回路基板10の製造方法は、回路基板1への誤挿入防止部材3の配置をアキシャル挿入機を用いて自動装着により行うものである。
電子回路基板10の製造方法は、回路基板1を準備する工程(S10)と、誤挿入防止部材3を準備する工程(S20)と、誤挿入防止部材3を回路基板1の貫通孔2(第1貫通孔および第2貫通孔)に挿入する工程(S30)と、回路基板1の貫通孔2のうち第1貫通孔および第2貫通孔以外の貫通孔2に電子回路部品11を挿入する工程(S40)と、誤挿入防止部材3および電子回路部品11を回路基板1にはんだ付けする工程(S40)とを備える。
まず、回路基板1を準備する(工程(S10))。具体的には、第1の主面1Aと、第1の主面1Aと反対側に位置する第2の主面1Bとを有し、第1の主面1Aから第2の主面1Bに至る貫通孔2が複数形成されており、第1の主面1Aおよび第2の主面1Bの少なくとも一方には貫通孔2にまで延在する導電性パターンが形成されている回路基板1を準備する。複数の貫通孔2および導電性パターンは、そのうちの任意の貫通孔2に電子回路部品11を挿入することによって複数パターンの電子回路を形成可能に設けられている。
次に、誤挿入防止部材3を準備する(工程(S20))。図5を参照して、はじめに、誤挿入防止部材3は屈曲部4が形成されていない線状の樹脂材料として準備される。誤挿入防止部材3は、その最大幅W1が回路基板1の貫通孔2の最大距離(孔径W2)よりも小さく、かつ、最大距離W2と最大幅W1との差が電子回路部品11において貫通孔2に挿入される部分(たとえばリード線)の最大幅よりも小さくなるように設けられている。
誤挿入防止部材3はその両端がアキシャル挿入機用テープ6aによって保持されている状態で準備されていればよい。アキシャル挿入機用テープ6aに保持されている誤挿入防止部材3は、従来のアキシャル挿入機用テーピングが施されているジャンパー線と同様の構成を有していればよい。たとえば、アキシャル挿入機用テープ6aに保持されている誤挿入防止部材3の全長は、回路基板1に形成されている複数の貫通孔2間のうちの最大間隔と回路基板1の厚みTの和以上となるように設けられている。つまり、本工程(S20)において準備される誤挿入防止部材3の長さや形状は、後述する工程(S30)において回路基板1の貫通孔2に挿入される誤挿入防止部材3の端部3E間の長さや形状と異なっている。アキシャル挿入機用テープ6aは、公知である任意の材料により構成されていればよい。
次に、誤挿入防止部材3を折り曲げることによって、屈曲部4および屈曲部4を挟んで対向する一組の挿入部5を形成する。屈曲部4および挿入部5の寸法値は、電子回路基板10の回路配置に応じて設計パラメータとしてあらかじめ求められている。間隔L1だけ離れた2つの貫通孔2に挿入される誤挿入防止部材3の2つの屈曲部4は、互いに間隔L1だけ離れた位置に形成されるとともに、誤挿入防止部材3の端部3Eから屈曲部4までの距離L4が回路基板1の厚みTよりも長くなるように形成されてもよい。このとき、誤挿入防止部材3の端部3Eは、アキシャル挿入機用テープ6aに保持されていたときの誤挿入防止部材3の端部であってもよいし、アキシャル挿入機用テープ6aに保持されていたときの誤挿入防止部材3の当該端部側の一部が切断されることにより形成されたものであってもよい。
貫通孔2に挿入される前に誤挿入防止部材3が折り曲げられる角度(以下、単に折り曲げ角度という)は、電子回路基板10における屈曲部4の屈曲角度θ1に応じて決定される。たとえば屈曲角度θ1が85度以上95度以下である場合には、屈曲部4の折り曲げ角度は95度であってもよい。
次に、回路基板1に形成されている複数の貫通孔2のうちの第1貫通孔および第2貫通孔に誤挿入防止部材3の挿入部5を挿入する(工程(S30))。回路基板1に形成されている複数の貫通孔2において、誤挿入防止部材3が挿入される第1貫通孔および第2貫通孔は、電子回路部品11が配置されるべき貫通孔2以外の貫通孔2のうちから任意に選択される2つの貫通孔2である。誤挿入防止部材3は、たとえば屈曲部4が第1の主面1A上に配置されるように、第1の主面1A側から回路基板1の貫通孔2に挿入される。なお、誤挿入防止部材3は電子回路部品11が配置される方向に応じて任意に決めればよく、電子回路部品11が第1の主面1A側から挿入されて電子回路部品11における回路基板1との接合部分(足)の端部が第2の主面1B側に配置される場合、誤挿入防止部材3は上述のように第1の主面1A側から挿入されるのが好ましい。
誤挿入防止部材3の端部3E間の間隔は誤挿入防止部材3が配置される貫通孔2(第1貫通孔および第2貫通孔)の間隔L1,L3に応じて、屈曲部4の折り曲げ角度は回路基板1の第1の主面1Aと貫通孔2の孔軸とのなす角度に応じて、それぞれ決定されている。そのため、一般的な電子回路基板の製造方法において用いられるアキシャル挿入機やジャンパー挿入機などの自動装着機を用いて、誤挿入防止部材3を回路基板1の貫通孔2に容易に挿入することができる。
次に、誤挿入防止部材3が挿入されていない貫通孔2に電子回路部品11を挿入する(工程(S40)。電子回路部品11が挿入される貫通孔2は、先の工程(S30)により誤挿入防止部材3が挿入されている貫通孔2以外の貫通孔2である。このとき、最大距離W2と最大幅W1との差が電子回路部品11において貫通孔2に挿入される部分(たとえばリード線)の最大幅よりも小さくなるように設けられているため、電子回路部品11は誤挿入防止部材3が挿入されている貫通孔2に挿入されることが防止される。これにより、電子回路部品11は、挿入されるべき貫通孔2以外の貫通孔2に誤挿入されることを防止されている。なお、本工程(S40)は、自動挿入機を用いて実施されてもよいし、手作業により実施されてもよい。
次に、回路基板1に誤挿入防止部材3および電子回路部品11をはんだ付けする(工程(S50))。本工程(S50)は、たとえばフローはんだ付けにより実施される。溶融はんだは回路基板1の貫通孔2に供給されるが、複数の貫通孔2にはそれぞれ誤挿入防止部材3または電子回路部品11が挿入されているため、回路基板1に誤挿入防止部材3および電子回路部品11がはんだ接合される。このようにすれば、汎用の回路基板1を用いて電子回路基板10を製造する場合には電子回路部品11が挿入されない貫通孔2が生じるが、このような貫通孔2には誤挿入防止部材3が挿入されている。そのため、フローはんだ付けにより一括はんだ付けを行う場合にも貫通孔2の内部に供給されて滞留するはんだの量を低減することができ、電子回路基板の製造方法におけるはんだ使用量を低減して製造コストを低減することができる。なお、本工程(S50)では、はんだ付けに限られず、電子回路部品11を回路基板1に電気的に接続し固定することができる任意の方法により電子回路部品11を回路基板1に接合してもよい。たとえば電子回路部品11はプレスフィットにより回路基板1に接合されてもよい。
次に、図6を参照して、実施の形態1に係る電気機器100,200について説明する。電気機器100および電気機器200は、それぞれ共通の回路基板1上に異なる回路配置が形成されている電子回路基板10および電子回路基板20を備えている。つまり、電子回路基板10および電子回路基板20用として同一の規格で形成されている(貫通孔2および導体パターンの配置が同一に設けられている)回路基板1において、電子回路部品11および誤挿入防止部材3が挿入されている貫通孔2はそれぞれ異なっている。電気機器100,200は、任意の電気機器とすることができるが、たとえば空調機器の室外機である。
次に、実施の形態1に係る電子回路基板10およびその製造方法の作用効果について説明する。
実施の形態1に係る電子回路基板10は、第1の主面1Aと、第1の主面1Aと反対側に位置する第2の主面1Bとを有し、第1の主面1Aから第2の主面1Bに至る貫通孔2が複数形成されており、第1の主面1Aおよび第2の主面1Bの少なくとも一方には、貫通孔2にまで延在する導電性パターンが形成されている回路基板1と、回路基板1の複数の貫通孔2のうちの一部に挿入されている電子回路部品11と、屈曲部4と、屈曲部4を挟んで配置された一組の挿入部5とを含み、第1の主面1A上に屈曲部4が配置されており、複数の貫通孔2のうち電子回路部品11が挿入されていない第1貫通孔および第2貫通孔に挿入されている誤挿入防止部材3とを備え、誤挿入防止部材3を構成する材料は、電気的絶縁性および塑性を有する樹脂材料である。
このようにすれば、誤挿入防止部材3はその全体が電気的絶縁性を有しているため、電子回路基板10の回路パターンを構成する電子回路部品11や導電性パターンと隣接または接触するように配置されていても、電子回路基板10の回路動作に影響を与えることがない。そのため、電子回路基板の製造方法において、電子回路基板10における誤挿入防止部材3の配置箇所について回路動作などの観点から特別な配慮をすることなく誤挿入防止部材3を配置することができる。その結果、同一の型の回路基板1を汎用して回路パターンの異なる複数種の電子回路基板10,20を容易にかつ安価に得ることができる。
また、誤挿入防止部材3は塑性を有しているため、線状の誤挿入防止部材3を折り曲げた後に回路基板1の貫通孔2に挿入する場合にも、折り曲げてから挿入するまでの間に弾性変形により屈曲形状を維持することができず挿入が困難となるということがない。
具体的には、誤挿入防止部材3が所定の角度に折り曲げられてから回路基板1の貫通孔2に挿入されるまでには、アキシャル挿入機を用いてこれらを連続的に行った場合であっても時間差が生じる。さらに一般的なアキシャル挿入機において、折り曲げる際に誤挿入防止部材3に付加されていた力は折り曲げ後の当該時間中には除かれている。そのため、塑性を有さない樹脂材料からなる線状の誤挿入防止部材3を用いると、折り曲げてから貫通孔2に挿入するまでの上記時間中に誤挿入防止部材3が弾性変形(曲げ戻り)することにより、屈曲部4の折り曲げ角度が小さくなる。この場合、あらかじめ上記時間中の誤挿入防止部材3の弾性変形を考慮して誤挿入防止部材3を折り曲げた場合であっても、挿入時において所定の折り曲げ角度を有する屈曲部4を精度よく形成することは困難であった。そのため、従来の電子回路基板の製造方法では、樹脂線材を折り曲げて回路基板の貫通孔に挿入することは行われていなかった。
これに対し、実施の形態1に係る誤挿入防止部材3は塑性を有する樹脂材料で構成されているため、誤挿入防止部材3に力を印加し所定の折り曲げ角度に折り曲げた後に力を除荷した場合にも、誤挿入防止部材3の弾性変形が抑制されている。一般的なアキシャル挿入機を用いた場合には、誤挿入防止部材3が所定の角度に折り曲げられてから回路基板1の貫通孔2に挿入されるまでの時間は0.5秒以上となるため、たとえば許容される折り曲げ角度を0.5秒以上保持することができれば、一般的なアキシャル挿入機を用いて回路基板1に誤挿入防止部材3を精度よく自動装着することができる。
屈曲部4の屈曲角度θ1が85度以上95度以下の場合には、たとえば折り曲げ角度を95度として折り曲げた後に当該折り曲げ角度が85度になるまでの時間が0.5秒以上である誤挿入防止部材3を用いて折り曲げ角度が95度となるまで折り曲げれば、挿入時の折り曲げ角度を85度以上95度以下とすることができる。このような誤挿入防止部材3は、一般的なアキシャル挿入機を用いて回路基板1に精度よく自動装着されることができる。
その結果、所定の長さを有する誤挿入防止部材3を貫通孔2間の間隔の異なる個々の装着箇所に応じて切断し、折り曲げることにより、折り曲げ後の弾性変形を詳細に考慮することなく貫通孔2間の間隔が異なる汎用の回路基板1に対し誤挿入防止部材3を汎用して容易にかつ安易に電子回路基板10を得ることができる。
また、誤挿入防止部材3は電気的絶縁性を有する樹脂材料で構成されている。このため、汎用として準備された誤挿入防止部材3を挿入される2つの貫通孔2(第1貫通孔および第2貫通孔)間の間隔L1,L3や回路基板1の厚みTに応じて切断しても、切断により形成される端部3Eの切断面に導電性材料が表出することがない。そのため、電子回路基板10に形成される電子回路特性に対して誤挿入防止部材3が与える影響を考慮することなく、誤挿入防止部材3を任意に配置することができる。その結果、電子回路基板10を容易にかつ安価に得ることができる。
誤挿入防止部材3は折り曲げ角度を95度として折り曲げた後に折り曲げ角度が85度になるまでの時間が0.5秒以上とすることができるため、線状の誤挿入防止部材3を用いて屈曲部4の屈曲角度θ1が85度以上95度以下である誤挿入防止部材3を備える電子回路基板10を容易にかつ安価に得ることができる。
なお、回路基板1に形成されている複数の貫通孔2のうちの第1貫通孔および第2貫通孔に誤挿入防止部材3の挿入部5を挿入する工程(S30)において自動装着機を用いる場合に、誤挿入防止部材3を準備する工程(S20)において準備される誤挿入防止部材3は、アキシャル挿入機用テープ6aにより保持されているがこれに限られるものではない。たとえば、線状の誤挿入防止部材3は、ボビン等に巻きつけられた状態で準備されてもよい。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る電子回路基板10について説明する。実施の形態2に係る電子回路基板10は、基本的には実施の形態1に係る電子回路基板10と同様の構成を備えるが、図7に示すように、実施の形態2に係る誤挿入防止部材3では挿入部5が第2の主面1B上に少なくとも1つ配置された端部屈曲部7を有する点で異なる。すなわち、実施の形態2において、誤挿入防止部材3はクリンチ加工されている。
また、実施の形態2に係る電子回路基板の製造方法は、基本的には実施の形態1に係る電子回路基板の製造方法と同様の構成を備えるが、貫通孔2に誤挿入防止部材3を挿入する工程(S30)の後であってはんだ付けする工程(S50)の前に、誤挿入防止部材3を端部屈曲部7を形成する(クリンチ加工する)工程をさらに備えている点で異なる。なお、誤挿入防止部材3をクリンチ加工する工程は、貫通孔2に電子回路部品11を挿入する工程(S40)の前後いずれに実施されてもよいが、たとえば誤挿入防止部材3をクリンチ加工する工程の後に貫通孔2に電子回路部品11を挿入する工程(S40)を実施してもよい。端部屈曲部7の形成は、一般的な電子回路基板の組み立てに用いられるアキシャル挿入機やジャンパー挿入機など、クリンチ加工機能を備えた自動装着機を用いて容易に実施することができる。
端部屈曲部7の屈曲角度θ2は、挿入部5において貫通孔2の内部に位置している部分と貫通孔2の外部に位置している部分とが成す角度である。屈曲角度θ2は、任意の角度とすればよいが、たとえば30度以上であるのが好ましい。図7に示す端部屈曲部7は、2つの端部3Eが互いに近接して向かい合うように挿入部5が屈曲されることにより構成されているが、これに限られるものではない。端部屈曲部7は、たとえば2つの端部3Eが互いに離間するように屈曲されていてもよいし、2つの挿入部5がそれぞれ挿入されている貫通孔2(第1貫通孔および第2貫通孔)に対して同じ方向に向かって屈曲されていてもよい。
実施の形態2に係る電子回路基板10によれば、誤挿入防止部材3は第1の主面1A上および第2の主面1B上にそれぞれ屈曲部4,7を有しているため、はんだ付けする工程(S50)の前においても回路基板1に誤挿入防止部材3を確実に装着することができる。そのため、たとえばはんだ付けする工程(S50)の前において誤挿入防止部材3を挿入した回路基板1の第2の主面1Bを鉛直方向上方に向けても、回路基板1から誤挿入防止部材3の脱離を防止することができる。
また、実施の形態2に係る誤挿入防止部材3は、折り曲げ角度を90度として折り曲げた後に折り曲げ角度が30度になるまでの時間が1時間以上であるのが好ましい。このようにすれば、誤挿入防止部材3をクリンチ加工した後はんだ付けする工程(S50)までに、誤挿入防止部材3の端部屈曲部7の屈曲角度θ2が弾性変形によって小さくなって誤挿入防止部材3の脱離防止効果が低減されることを防ぐことができる。
なお、端部屈曲部7を形成する方法は、アキシャル挿入機などの自動挿入機によるクリンチ加工に限られるものではなく、ラジオペンチなどの工具を用いて手加工によっても容易に実現することができる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3に係る電子回路基板およびその製造方法について説明する。実施の形態3に係る電子回路基板およびその製造方法は、基本的には実施の形態1に係る電子回路基板10およびその製造方法と同様の構成を備えるが、誤挿入防止部材3を準備する工程(S20)においてあらかじめ屈曲部4を有している誤挿入防止部材3が準備される点で異なる。
図8を参照して、実施の形態3に係る電子回路基板の製造方法において、誤挿入防止部材3は、たとえば屈曲角度θ1の屈曲部4を有する誤挿入防止部材3がラジアル挿入機用テープ6bに保持されて準備される。誤挿入防止部材3を構成する材料は、実施の形態1と同様に、電気的絶縁性を有し、かつ塑性を有する樹脂材料とすることができる。つまり、実施の形態3に係る誤挿入防止部材3は、たとえば線状に形成された樹脂材料が折り曲げられることによって屈曲部4が形成されているとともに、その状態でラジアル挿入機用テープ6bに保持されていてもよい。この場合には、2つの屈曲部4間の間隔が所定の距離となるように折り曲げられている複数の誤挿入防止部材3が一つのラジアル挿入機用テープ6bに保持されており、当該屈曲部4間の間隔が異なる複数種類の誤挿入防止部材3毎に別のラジアル挿入機用テープ6bに保持された状態で準備されているのが好ましい。
また、誤挿入防止部材3は、たとえば電気的絶縁性を有するが塑性を有さない樹脂材料により構成されており、当該樹脂材料を射出成型法により屈曲部4を有するように成型されることにより準備されてもよい。この場合にも、2つの屈曲部4間の間隔が所定の距離となるように折り曲げられている複数の誤挿入防止部材3が一つのラジアル挿入機用テープ6bに保持されており、当該屈曲部4間の間隔が異なる複数種類の誤挿入防止部材3毎に別のラジアル挿入機用テープ6bに保持された状態で準備されているのが好ましい。
このようにしても、誤挿入防止部材3は電気的絶縁性を有する樹脂材料で構成されているため、その表面に導電性材料が表出することがない。さらに誤挿入防止部材3を回路基板1の厚みTに応じて切断しても、切断により形成される端部3Eの切断面に導電性材料が表出することがない。そのため、電子回路基板10に形成される電子回路特性に対して誤挿入防止部材3が与える影響を考慮することなく、誤挿入防止部材3を任意に配置することができる。その結果、電子回路基板10を容易にかつ安価に得ることができる。
(実施の形態4)
次に、図9を参照して、実施の形態4に係る電子回路基板10について説明する。実施の形態4に係る電子回路基板10は基本的に実施の形態1に係る電子回路基板10と同様の構成を備えるが、誤挿入防止部材3において、貫通孔2(第1貫通孔および第2貫通孔)の内部に配置されている第1部分9aの最大幅が第1部分9a以外の第2部分9bの最大幅W1より大きい点で異なる。
第1部分9aは、好ましくは貫通孔2(第1貫通孔および第2貫通孔)の内周壁面と接している。つまり、第1部分9aの最大幅は、貫通孔2の孔径W2と同等に設けられているのが好ましい。
実施の形態4に係る電子回路基板の製造方法は、基本的には実施の形態1に係る電子回路基板の製造方法と同様の構成を備えるが、貫通孔2に誤挿入防止部材3を挿入する工程(S30)が第1部分9aを形成する工程を含む点で異なる。第1部分9aを形成する工程において、第1部分9aは、たとえば図3に示すような回路基板1の厚みTよりも長い挿入部5を有する誤挿入防止部材3の端部3Eを第2の主面1B側から支持しながら、誤挿入防止部材3を構成する樹脂材料を加熱溶融させることにより形成され得る。つまり、実施の形態4において誤挿入防止部材3を構成する樹脂材料は、回路基板1を構成する材料よりも融点が低い材料で構成されていればよい。
このようにすれば、はんだ付けする工程(S50)においてフローはんだ法により電子回路部品11および誤挿入防止部材3の一括はんだを行う場合にも、電子回路部品11が挿入されていない貫通孔2(第1貫通孔および第2貫通孔)へのはんだの流入量を低減することができるため、電子回路基板10の製造方法におけるはんだ使用量を効果的に低減することができる。
なお、図9に示す例では、第1部分9aおよび第2部分9bがいずれも貫通孔2の内部に形成されているが、これに限られるものではない。第1部分9aは、貫通孔2の孔軸方向において少なくとも一部に形成されていてもよいが、貫通孔2の内部全体に形成されていてもよい。つまり、第2部分9bは貫通孔2の内部に形成されていなくてもよい。
上述した実施の形態1〜4に係る電子回路基板10において、誤挿入防止部材3はいずれも線状に形成されているがこれに限られるものではない。図10を参照して、誤挿入防止部材3は、たとえば、誤挿入防止部材3が挿入される2つの貫通孔2(第1貫通孔から第2貫通孔)まで延びる長手方向に対して垂直な方向に所定の幅を有する帯状体として形成されていてもよい。この場合、回路基板1の複数の貫通孔2の平面形状は、長辺と短辺とを有する楕円形状や長方形状であってもよい。
図11を参照して、実施の形態1〜4に係る電子回路基板10において、誤挿入防止部材3は電子回路部品11や他の誤挿入防止部材3と重なるように形成されていてもよい。電子回路部品11において導電性材料が表出している場合であって、誤挿入防止部材3は当該導電性材料と重なるように形成されていてもよい。このようにしても、誤挿入防止部材3は電気的絶縁性を有しているため、電子回路基板10の回路特性に大きな影響を与えることがない。このため、電子回路基板10における誤挿入防止部材3の配置の自由度を高めることができる。
なお、図11に示すように、電子回路部品11の1種として複数ピン12Aを有するコネクタ12を備える電子回路基板10,20であって、電子回路基板10,20との間でピン数の異なるコネクタ12が選択的に実装される場合にも、誤挿入防止部材3によりコネクタ12の誤挿入を効果的に防止することができる。
また、実施の形態1〜4に係る電子回路基板10において、誤挿入防止部材3は回路基板1の貫通孔2にはんだ付けされているが、これに限られるものではない。誤挿入防止部材3は、たとえばはんだ付けする工程(S50)において誤挿入防止部材3が挿入されている貫通孔2(第1貫通孔および第2貫通孔)にはんだが供給された後、はんだが凝固する前に誤挿入防止部材3を取り除いてもよい。このようにしても、実施の形態1〜4に係る電子回路基板およびその製造方法と同様の効果を奏することができる。また、最終的に誤挿入防止部材3は電子回路基板10から取り除かれるため、誤挿入防止部材3を構成する材料によって電子回路基板10の回路特性への影響が懸念される場合であっても、実施の形態1〜4に係る電子回路基板10およびその製造方法を適用することができる。
また、実施の形態1〜4に係る電子回路基板10において、誤挿入防止部材3は両面実装されていてもよい。たとえば、電子回路基板10に形成されている複数の誤挿入防止部材3のうちの一部は第1の主面1A上に屈曲部4が配置されており、残りは第2の主面1B上に屈曲部4が配置されていてもよい。このようにしても、実施の形態1〜4に係る電子回路基板10およびその製造方法と同様の効果を奏することができる。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲のすべての変更が含まれることが意図される。