JP6355083B2 - 光触媒組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光エネルギーにより水を分解して酸素と水素を発生させる光触媒組成物及び
光触媒組成物の製造方法に関し、特に可視光線または可視光線よりも波長の長い光のエネルギーにより水を分解して酸素と水素とを発生させる光触媒組成物及び光触媒組成物の製造方法に関する。
人類のエネルギー消費量は年々増加しており、人類の生活はエネルギー資源なしでは成り立たたない。現在、主なエネルギー源を石油、石炭、天然ガスが占めているが、先進国のこれらの化石燃料への依存や、経済成長を目指す途上国の人口増加に伴いエネルギー需要はますます増加している。しかし化石燃料は、何億年もかけて作られた有限の資源であり埋蔵量に限りがある。また化石燃料は、大気汚染や地球温暖化などの環境問題を引き起こす原因にもなっており、新たな代替エネルギーの開発が必要である。
一方、クリーンかつ無尽蔵なエネルギーとして、太陽光エネルギーが注目されている。太陽光エネルギーは地球上に、無限に降り注ぐエネルギーであり、太陽光が大気上層部に降り注ぐ輻射エネルギーは、年間を通してほぼ一定の1.37 kW/m2であり、地球全体に毎時入射する太陽光エネルギーは1.73×1017 Wにもなる。大気層において吸収や反射によりエネルギーが失われることを加味しても、1時間あたりに地表に到達する太陽光エネルギーは人類が1年間に消費するエネルギー総量を十分に上回る。
また、持続可能なクリーンエネルギー源として水素が注目されている。例えば、燃料電池においては燃料として水素と酸素を使用し生成物は水のみである。さらに水素は貯蔵や運搬を比較的容易に行うことが出来るため、全体的なエネルギーロスが少ない。
現在の主な水素製造方法は、水蒸気改質法によるものが主である。水蒸気改質法とは、天然ガスや液化天然ガス、ナフサなどの化石燃料に水蒸気を反応させて水素を製造する方法であるが、化石燃料を使用する為、同時に二酸化炭素が発生してしまう。
そこで、半導体光触媒を用いる太陽光エネルギーを利用した水分解システムによる水素の製造技術が提案された。反応は水分解のみであるため、一酸化炭素や二酸化炭素などの環境汚染物質の排出がなくエネルギー源も太陽光と水のみであり、エネルギー枯渇の心配もないといえる。
水素発生光触媒と酸素発生光触媒を用い、可視光照射のもと水を分解し、水素・酸素両方を発生できる系はZスキームと呼ばれ、非特許文献1で既に報告されている。これは、可視光線により水を分解して酸素を発生させる酸素発生触媒と、可視光線により水を分解して水素を発生させる水素発生触媒と、酸化還元媒体と、を組み合わせた触媒である。これにより、酸素発生触媒で水の還元に寄与しない電子が、酸化還元媒体を還元し、この還元された酸化還元媒体は、水素発生触媒で水の酸化に寄与しない正孔により酸化されて還元される前の酸化還元媒体に戻る、というサイクルを繰り返すことにより、水の完全分解(水素:酸素=2:1(量論比))が出来るとしている。
この系を触媒的に機能させるためには酸化還元媒体(Fe3+/Fe2+やI-/IO3 -)が必要であり(すなわち純水の分解でない)、かつ酸化還元媒体の電子授受効率が低く、水分解活性が低いという問題がある。また、これら酸化還元媒体の酸化還元電位に対し適切な材料を選択する必要があり、材料の選択肢が狭まってしまう。
このような課題を解決するため、特許文献1では、可視光線を吸収し水を分解して酸素を発生させる酸素発生光触媒と、可視光線を吸収し水を分解して水素を発生させる水素発生光触媒とを接合し、対標準水素電極電位で比較して、酸素発生光触媒のフェルミ準位よりも水素発生光触媒のフェルミ準位のほうが負側もしくは同等である光触媒組成物が開示されている。
また、非特許文献2や非特許文献3には、それぞれ光触媒間に金やタングステンを挟んだCdS/Au/TiO2系や、PbBi2Nb1.9Ti0.1O9/W/WO3系が開示されているが、これらの径では、可視光照射下での水の完全分解は今だ達成されていない。
再公表WO2011/148683
K.Sayama et al., J. Photo. Photo. A:Chem., 148, 71 (2002) H.Tada, T. Mitui, T. Kiyonaga, T. Akita, K. Tanaka, Nat. Mater., 5, 78 (2006) H. G.Kim, E. D. Jeong, Appl. Phys. Lett. 89, 064103 (2006)
従来の特許文献1の光触媒組成物では、対標準水素電極電位で比較して、酸素発生光触媒のフェルミ準位よりも水素発生光触媒のフェルミ準位のほうが負側もしくは同等でなければいけないため、酸素発生光触媒と水素発生光触媒の材料選択の幅が狭まり、材料が限定されるという課題がある。
以上のような課題を解決するため、本発明による光触媒組成物は、対標準水素電極電位において価電子帯の上端が1.23Vよりも正であり、3.0eV以下のバンドギャップエネルギーを持つ酸素発生光触媒と、対標準水素電極電位において伝導帯の下端が0Vよりも負であり、3.0eV以下のバンドギャップエネルギーを持つ水素発生光触媒と、前記水素発生光触媒と前記酸素発生光触媒が銀を介して接合していることを特徴としている。
また、本発明による光触媒組成物の製造方法は、水素発生光触媒と、酸素発生光触媒と、金属の単体又は化合物を混合する工程と、前記金属を介して前記水素発生光触媒と前記酸素発生光触媒とを接合するために、加熱処理を行う工程とを備えたことを特徴としている。
本発明による光触媒組成物によれば、酸素発生光触媒と水素発生光触媒の材料選択の幅が広がり、材料が限定されないという効果がある。
は、半導体である光触媒のバンド図を示す図である。 は、半導体光触媒における光吸収反応における電子状態の変化を示す図である。 は、太陽光スペクトルを示す図である。 は、本発明による酸素発生光触媒/銀/水素発生光触媒の構造を示す図である。 は、本発明による酸素発生光触媒/銀/水素発生光触媒のバンド構造を示す図である。 は、本発明の実施例1によるAgSbO3(パイロクロア型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物の製造方法を示す図である。 は、本発明の実施例2によるAgSbO3(イルメナイト型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物の製造方法を示す図である。 は、本発明の実施例1によるAgSbO3(パイロクロア型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物のXRDパターンを示す図である。 は、本発明の実施例2によるAgSbO3(イルメナイト型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物のXRDパターンを示す図である。 は、本発明の実施例1によるAgSbO3(パイロクロア型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物のHNO3処理後のXRDパターンの変化を示す図である。 は、単体のZnRh2O4のSEM観察結果を示す写真である。 は、HNO3処理後の単体のパイロクロア型AgSbO3のSEM観察結果を示す写真である。 は、本発明の実施例1によるAgSbO3(パイロクロア型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物のSEM観察結果を示す写真である。 (b)は、本発明の実施例2によるAgSbO3(イルメナイト型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物の水分解活性評価の結果を示す図であり、(a)は参考例としての酸化剤を用いずに作製した場合の試料による水分解活性評価の結果を示す図である。 は、本発明の実施例1によるAgSbO3(パイロクロア型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物の水分解活性評価の結果を示す図である。 は、単体のZnRh2O4の水分解活性評価の結果を示す図である。 は、単体のAg1-xSbO3-yの水分解活性評価の結果を示す図である。
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1に半導体である光触媒のバンド図を示す。縦軸は電子のエネルギーを示し、通常はeV単位で示すが、電位を単位にとるときは上側が負となる。電子は価電子帯(valence
band, VB)と伝導帯(conduction band, CB)に存在することができ、禁制帯に存在することはできない。価電子帯の上端と伝導帯の下端の間のエネルギー差をバンドギャップEgといい、電子がEg以上のエネルギーを得ることで、価電子帯から伝導帯に遷移することが可能となる。バンド内の電子の占有確率はフェルミ分布関数で表され、電子に占有される確率が1/2となるエネルギー準位はフェルミ準位(EF)と呼ばれ、禁制帯の中に存在する。
図2に半導体光触媒における光吸収反応による電子状態の変化をバンド図を用いて示す。バンドギャップEg以上のエネルギーhν(hはプランク定数、νは振動数)を持つ光子であれは吸収することができ、光子のエネルギーを得た電子は、価電子帯から伝導帯に遷移する。電子が励起されると、価電子帯には正孔と呼ばれる電子の抜けた空の状態が生成する。これらの生成した電子-正孔対は主に熱エネルギーを放出しながらそれぞれ伝導帯下端・価電子帯上端へ移動(熱緩和)する。さらに、材料表面まで拡散した電子は表面に付着する化学物質を還元し、正孔は化学物質を酸化する。しかし、結晶中に欠陥や不純物による中間準位が禁制帯中に存在すると、酸化還元反応を起こす前に、電子-正孔対はその準位を介して再結合してしまう場合がある。
光触媒が水の中にある場合、標準水素電極(SHE)を基準にして水の還元電位は0V(vs.SHE)、水の酸化電位は1.23V(vs.SHE)であるため、伝導帯下端の電位が0Vよりも負である場合には伝導帯の電子による水の還元反応が起こりH2が発生し、価電子帯上端が1.23Vよりも正である場合には価電子帯の正孔による水の酸化反応がおこり、O2が発生する。
図3に示した太陽光スペクトルによれば、可視光である380nm〜760nmの波長をもつ光のエネルギーは、スペクトル全体の光のエネルギーの40%以上を占める。可視光を吸収することにより、電子が価電子帯から、伝導帯に遷移するためには、バンドギャップEgは約3eV以下である必要がある。
以上から、可視光の照射により効率よく水素を発生する水素発生光触媒としては、伝導帯下端が0Vよりも負であり、3.0eV以下のバンドギャップを持つ必要がある。また、可視光の照射により効率よく酸素を発生する酸素発生光触媒としては、価電子帯上端が1.23Vよりも正であり、3.0eV以下のバンドギャップを持つ必要がある。
本発明では、それぞれの光触媒を銀を介して接合することにより、図4に示すような酸素発生光触媒/銀/水素発生光触媒の構造を実現している。本構造のバンド図を図5に示す。水素発生光触媒の価電子帯の正孔と酸素発生光触媒の伝導帯の電子は銀の伝導帯の準位を介して結合し電流が流れる。このような電流が流れることにより、水素発生光触媒の価電子帯の正孔と酸素発生光触媒の伝導帯の電子はそれぞれの触媒内部での電子-正孔対の再結合には寄与せず、効率よく同時に水素と酸素を発生させることができる。
以下に、本発明の実施例について詳細に説明する。
本実施例の水素発生光触媒には、ZnRh2O4(ロジウム酸亜鉛)を用いた。ZnRh2O4中の擬閉殻電子構造イオンRh3+は、d6電子配置でありそのd軌道は正八面体の結晶場においてt2g-egに配位子場分裂する。ZnRh2O4では、価電子帯上端はt2g 6軌道により、伝導体上端がeg 0軌道により構成され、バンドギャップが1.2
eVと非常に小さく、可視光全域に応答することが出来る。さらに、価電子帯上端が〜0.1 V(vs. SHE)と一般的な酸化物よりも著しく負電位であり、伝導帯下端は〜−1.1 V(vs. SHE)とプロトン還元電位よりも大きく負側にあるため、可視光において水素を発生できる。
本実施例の酸素発生光触媒には、バンドギャップが2.6eVであるパイロクロア型AgSbO3を用いた。
従って、本実施例による光触媒組成物は、AgSbO3(パイロクロア型)/Ag/ZnRh2O4である。
本実施例によるAgSbO3(パイロクロア型)/Ag/ZnRh2O4の製造方法について説明する。まず、ZnRh2O4は固相法にて作製する。ZnO(関東化学)とRh2O3(関東化学)を化学量論比で秤量し、エタノールボールミルで24h混合したのちペレットを形成し電気炉にて1000℃24h焼成を行う。
AgSbO3は、Ag2O(関東化学)とSb2O5(Aldrich)を出発物質とし、最も高活性なAg/Sb=1.01(mol)の比で秤量したものをジルコニアンボール(YTZ、5φ)とエタノールとともにポリエチレンボトルに入れ卓上型ボールミル(V-2ML)で20h〜24h粉砕・混合する。混合した試料はジルコニアンボールを取り除いた後、ロータリーエバポレータ(アイラ東京理科機器、N-1100S型)により乾燥させ、60kNでプレスしてペレットを作製する。形成したペレットは電気炉を使用して900℃8hにて焼成を行う。
Ag2Oは280℃で熱分解し金属Agになる。Agは導電率が非常に高いため、触媒間に導電層として挟んだ場合、効率よく電荷授受を行える。Agの融点は960℃であり、マイクロ粒子はさらに融点が下がるため900℃程度でも容易に融解する。このAgの融解を利用してパイロクロア型AgSbO3との接合を行う。
図6に示すように、あらかじめ作製しておいたAgSbO3(パイロクロア型)とZnRh2O4の単体を、Ag2OとともにAgSbO3:Ag2O:ZnRh2O4=0.8:1:1.2(mol)となるように混合し、エタノールボールミルにより24h混合したのちペレットを形成し電気炉にて900℃2h焼成を行う。Agは900℃で融解し、一部のAgは両光触媒の間に覆われるようにして挿入される。
Agの挿入と同時に接合に関与しない過剰なAgが光触媒表面に接着されるが、これは硝酸(HNO3)水溶液で処理することにより取り除くことができる。5M HNO3 水溶液50 mL中で7分撹拌を行うことで、本実施例のAgSbO3(パイロクロア型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物を製造することができる。
本実施例の水素発生光触媒は実施例1と同様に、ZnRh2O4を用い、酸素発生光触媒には、バンドギャップが2.4eVであるイルメナイト型AgSbO3を用いた。
従って、本実施例による光触媒組成物は、AgSbO3(イルメナイト型)/Ag/ZnRh2O4である。
本実施例によるAgSbO3(イルメナイト型)/Ag/ZnRh2O4の製造方法について説明する。ZnRh2O4は実施例1と同様に作製する。
AgSbO3は、Ag2O(関東化学)とSb2O5(Aldrich)を出発物質とし、化学量論比で秤量する。以下、実施例1と同様にペレット作製まで行い、形成したペレットを電気炉を使用して500℃12hにて焼成を行う。
イルメナイト型AgSbO3(600℃以上の加熱でパイロクロア型に変化)などの低温に安定な材料ではAgの融解を利用した接合は利用できない。Ag2Oを400〜500℃で加熱することによる表面接着では試料の撹拌時に接合が剥がれてしまい、適切な電荷授受が起こらない。そこでAg2Oの還元剤を用いた接合方法を用いる。
Ag2Oマイクロ粒子と還元剤を混合して加熱を行うと還元剤は融解しAg2Oマイクロ粒子を覆う。覆われたAg2Oマイクロ粒子は150℃程度の低温で還元され、同時にAgナノ粒子を生成する。生成したAgナノ粒子は再び還元剤に覆われるが、さらなる加熱(300℃程度)により還元剤は揮発する。Agナノ粒子表面は高い表面エネルギーを有するため、還元剤の揮発により生成する蒸発熱と加熱によって得た周囲の熱により瞬時に焼結される。
図7に示すように、あらかじめ作製しておいたZnRh2O4とイルメナイト型AgSbO3の単体を、Ag2OとともにAgSbO3:Ag2O:ZnRh2O4=2:1:1(mol)となるように混合し、エタノールボールミルにより24h混合したのちエタノールを脱気し、乳鉢にて還元剤であるミリスチルアルコール(融点24℃、沸点約260℃)を25 wt%投入し5分混合後、ペレットを形成し電気炉にて400℃1hで焼成を行う。
作製したペレットを5M HNO3水溶液50 mL中で1 min処理を行い、本実施例のAgSbO3(イルメナイト型)/Ag/ZnRh2O4の光触媒組成物を製造する。
本実施例の水素発生光触媒は実施例1,2と同様に、ZnRh2O4を用い、酸素発生光触媒には、バンドギャップが2.0eVであるAgVO3を用いた。
従って、本実施例による光触媒組成物は、AgVO3/Ag/ZnRh2O4である。
本実施例によるAgVO3/Ag/ZnRh2O4の製造方法について説明する。ZnRh2O4は実施例1,2と同様に作製し、AgVO3は高純度化学社製の製品を使用する。
AgVO3は融点が700℃であり、イルメナイト型AgSbO3と同様にAg2Oの還元剤を用いた接合方法を用いる。
あらかじめ作製しておいたZnRh2O4とAgVO3の単体を、Ag2Oとともに混合し、エタノールボールミルにより24h混合したのちエタノールを脱気し、乳鉢にて還元剤であるミリスチルアルコール(融点24℃、沸点約260℃)を25 wt%投入し5分混合後、ペレットを形成し電気炉にて400℃1hで焼成を行う。
本実施例の場合は、硝酸中でAgVO3は溶解するため、HNO3水溶液は用いず、過剰なAgの除去は行わない。
本実施例1,2の試料を評価した結果を以下に説明する。図8、9に実施例1,2の試料のXRDパターンを示す。HNO3処理前では両光触媒の単相が得られAgを入れたことによる結晶構造の変化はなくAgのピークも出現した。しかし、HNO3処理後にZnRh2O4のピーク位置は変化しないまま実施例1のパイロクロア型AgSbO3のピークのみが図10に示すように全体的に低角度側にシフトした。このピーク位置はAg0.5Sb2O4.83のピーク位置に類似していることから、パイロクロア型AgSbO3の結晶構造中にAgの欠陥が発生してしまったことがわかる。硝酸処理時間によって欠陥量は変わるため、Ag0.5Sb2O4.83になっているかどうかの判断はできない。実施例2のイルメナイト型にはこのような欠陥は発生しなかった。また両接合系において過剰なAgは完全に除去されている。
ピークが低角度側にシフトしたのは、Ag欠陥の発生にともないO原子が過剰に抜けてしまい、電荷バランスを保つためにSb5+がSb3+になってしまったためであると推測される。Sb5+とSb3+のイオン半径はそれぞれ0.6Åと0.76Åでありイオン半径の大きいSb3+の生成により格子間隔が広がり、ピークが低角度側へシフトしてしまったと考えられる。仮にAg0.5Sb2O4.83の組成になっていた場合、Agの欠陥量以上のOが抜けてしまっているため、この推測は正しいと思われる。
次に図11〜13に単体のZnRh2O4と7分HNO3処理後パイロクロア型AgSbO3(以下「Ag1-xSbO3-y」という)、実施例1の接合系Ag1-xSbO3-y
/Ag/ZnRh2O4のSEM観察結果を示す。ZnRh2O4は日立製 S-4500で観察し、Ag1-xSbO3-yは日本電子
JSM-6500Fで観察を行った。加速電圧15.0 kV、倍率30.0
K, 60.0 K, 100 Kですべて同条件に統一した。
ZnRh2O4は観察像からほぼすべての粒子が角ばっている100〜200 nmの粒径であることがわかる。それに対しAg1-xSbO3-yは丸みを帯びており、粒径も300〜600 nmとZnRh2O4よりも大きい粒子である。
図13のAg1-xSbO3-y/Ag/ZnRh2O4(接合比1:2:1)でのSEM観察結果から、丸みを帯びた粒径の大きいAg1-xSbO3-yと角ばった粒径の小さなZnRh2O4がしっかりと接合しているのがわかる。
図14、15に実施例1,2の水分解活性評価の結果を示す。犠牲剤などは投入せず純水 10 mLを使用し試料60 mg、光源にはXeランプを用いて実施例2のイルメナイト型AgSbO3/Ag/ZnRh2O4 接合系ではY-44フィルタ、実施例1のAg1-xSbO3-y/Ag/ZnRh2O4接合系ではY-48フィルタ(λ>460 nm)を挟んだ条件で評価を行った。キャリアはArガス50KPaを使用した。
その結果、図14(b)の還元剤を用いた接合系においては水素と酸素の発生が確認された。しかし、水素発生量と酸素発生量が1:64と酸素が過剰に発生した。これは表面に接着したAg中に含まれるAg+が犠牲剤として働いてしまいイルメナイト型AgSbO3光触媒表面上でAg+の還元が進行したためであると考えられる。水素発生量が少ないのはZnRh2O4とイルメナイト型AgSbO3の比が1:2(mol)と酸素発生光触媒が多く存在し、光照射時にZnRh2O4に光がほとんど当たっていないためと思われる。また図14(a)の参考として還元剤なしで作製した試料を同条件下で行った水分解活性評価では微量な酸素発生がみられたが、これは溶存酸素によるものであり、光触媒による水素、酸素の発生は見られていない。
図15に実施例1のAg1-xSbO3-y/Ag/ZnRh2O4の水分解活性評価の結果を示す。こちらの系では純水から水素と酸素が2:1の化学量論比で発生した。また、図16,17は単体をそれぞれ同じ条件で作製し全光で光照射を行った評価で、ZnRh2O4では水素は発生せず、Ag1-xSbO3-yでも水素は発生せず、酸素もごくわずかな検出が認められたが窒素と酸素の増加の傾向から溶存酸素の検出であり単体では酸素も発生しない。硝酸処理により過剰な銀はすべて溶解しているため、この水分解活性は、接合により適切な電荷授受が起きたことによるものであることがいえる。
本発明による光触媒組成物によれば、太陽光エネルギーの多くの部分を占める可視光のエネルギーを有効に利用して水を分解し、水素と酸素を同時に得ることが可能となり、一酸化炭素、二酸化炭素の排出がなく、クリーンなエネルギー源を得ることができる。

Claims (13)

  1. 対標準水素電極電位において価電子帯の上端が1.23Vよりも正であり、3.0eV以下のバンドギャップエネルギーを持つ酸素発生光触媒と、
    対標準水素電極電位において伝導帯の下端が0Vよりも負であり、3.0eV以下のバンドギャップエネルギーを持つ水素発生光触媒と、
    前記水素発生光触媒と前記酸素発生光触媒が銀を介して接合していることを特徴とする光触媒組成物。
  2. 前記酸素発生光触媒が、銀を含む酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒組成物。
  3. 前記銀を含む酸化物が、銀アンチモン酸化物又は銀バナジウム酸化物であることを特徴とする請求項2に記載の光触媒組成物。
  4. 前記水素発生光触媒が、亜鉛ロジウム酸化物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光触媒組成物。
  5. 対標準水素電極電位において伝導帯の下端が0Vよりも負であり、3.0eV以下のバンドギャップエネルギーを持つ水素発生光触媒と、対標準水素電極電位において価電子帯の上端が1.23Vよりも正であり、3.0eV以下のバンドギャップエネルギーを持つ酸素発生光触媒と、銀の単体又は化合物とを混合する工程と、
    前記銀を介して前記水素発生光触媒と前記酸素発生光触媒とを接合するために、加熱処理を行う工程と、
    を備えたことを特徴とする光触媒組成物の製造方法。
  6. 前記加熱処理の温度が、銀の融点温度以上であり、溶融した前記銀により前記水素発生光触媒と前記酸素発生光触媒とを接合することを特徴とする請求項5に記載の光触媒組成物の製造方法。
  7. 前記銀の化合物が銀の酸化物であり、前記加熱処理の温度が900℃以上であることを特徴とする請求項6に記載の光触媒組成物の製造方法。
  8. 前記混合する工程において、前記水素発生光触媒と、前記酸素発生光触媒と、前記銀の単体又は化合物に加え、さらに還元剤を混合し、前記加熱処理が、前記還元剤の還元温度以上であることを特徴とする請求項5に記載の光触媒組成物の製造方法。
  9. 前記銀の化合物が銀の酸化物であり、前記加熱処理の温度が150℃以上であることを特徴とする請求項8に記載の光触媒組成物の製造方法。
  10. 酸処理により、接合を介する前記銀の余剰分を除去する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の光触媒組成物の製造方法。
  11. 前記酸処理が、硝酸溶液による処理であることを特徴とする請求項10に記載の光触媒組成物の製造方法。
  12. 前記酸素発生光触媒が、銀アンチモン酸化物又は銀バナジウム酸化物であることを特徴とする請求項5から11のいずれかに記載の光触媒組成物の製造方法。
  13. 前記水素発生光触媒が、亜鉛ロジウム酸化物であることを特徴とする請求項5から12のいずれかに記載の光触媒組成物の製造方法。
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