JP6354576B2 - 成膜装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ドライプロセスによって薄膜を処理対象のワーク上に形成する成膜装置に関する。
ドライプロセスによって薄膜を形成する成膜装置として、プラズマ化学気相成長(CVD)装置や蒸着装置、スパッタ装置、アークプラズマ成膜装置などの種々の成膜装置が使用されている。例えばアークプラズマ成膜装置によれば、材料物質(ターゲット)の表面にアーク放電を連続的に励起し、イオン化したカーボン荷電粒子を含むプラズマをワークの表面に導いて、カーボン膜がワーク上に形成される(例えば非特許文献1参照)。アークプラズマを用いたフィルタード・アーク・デポジション(FAD)法、フィルタード・カソーディック・バキューム・アーク(FCVA)法を用いたカーボン膜製造装置によって、ワーク上にカーボン膜が形成される。上記方法で形成されるカーボン膜は水素を含まず、高い硬度を有する。このカーボン膜は、特にテトラヘドラル・アモルファス・カーボン(taC)膜と呼ばれる。
プラズマを用いたドライプロセスによる成膜方法では、ターゲットからターゲットの微細粒子(ドロップレット)が飛散する。このドロップレットがワークの成膜面に付着するのを抑制するために、プラズマ生成箇所とワークの成膜面が直線的につながらないように配置されている。これにより、ターゲット表面から直線的に放出されるドロップレットの成膜面への入射が抑制される。具体的な例として、ターゲットと成膜面の間を屈曲部を有する屈曲管でつなぐ構造が採用されている。この屈曲管内部に堆積する薄膜の剥離によって発生するパーティクル(マクロパーティクル)についても同様に、成膜面への付着を抑制する必要がある。
屈曲管を用いた構造では、ターゲットイオンを効率的に成膜面に導くために磁場を利用している。即ち、屈曲管に沿って磁場を形成して、プラズマ輸送を行う。ドロップレットやマクロパーティクルは基本的に荷電粒子ではなく、磁場の影響を受けないため、屈曲管に沿ったプラズマ輸送の段階で取り除かれる。つまり、屈曲管はフィルターとして機能する。
滝川 浩志 他、"屈曲管型真空アーク蒸着(FAD)装置の開発"、[online]、2003年、豊橋技術科大学、[平成24年11月6日検索]、インターネット<URL:http://arc.ee.tut.ac.jp/>
プラズマを発生させる成膜装置では、一般的に、ワークが格納される格納室とプラズマを発生させるプラズマ室とで構成される。格納室の内部とプラズマ室の内部とは、プラズマ通過口を介して連結される。
ターゲットの酸化や吸水によって、或いはプラズマ室の内壁面や内蔵部品及びプラズマ室内の着膜物や沈殿物の酸化や吸水によって、ワーク上に形成される薄膜の膜質が影響を受ける。即ち、プラズマ室内を清浄な状態に保たないと良質なプラズマを生成できず、薄膜の膜質が劣化する。
そこで、プラズマ室内の清浄度を高く保つために、ワークの搭載や取り出しの際に格納室のみを大気開放することが行われている。そのために、格納室とプラズマ室との間のプラズマ通過口に真空ゲートバルブなどの開閉機構を配置する装置構造が考案された。即ち、成膜時においては真空ゲートバルブを開放して格納室の内部とプラズマ室の内部とを連続させる。そして、プラズマ通過口を通過して、プラズマがプラズマ室から格納室に移動する。一方、プラズマ室内の清浄度を高く保持するために、格納室を大気開放する間は真空ゲートバルブによってプラズマ通過口を閉鎖して、プラズマ室を真空にする。
真空ゲートバルブによってプラズマ通過口を閉鎖するときは、プラズマ室のプラズマ通過口の周囲に配置されたシールリング(Oリング)と真空ゲートバルブのシール面とを密着させる。しかし、成膜時において真空ゲートバルブが開放されている間に、シールリングの表面に膜が形成されたり、マクロパーティクルが付着したりする。このため、真空ゲートバルブによるシール性能が著しく低下し、プラズマ通過口の閉鎖時に格納室とプラズマ室間でリークが発生する。その結果、プラズマ室内の清浄度を高く保持できないという問題があった。この問題は、アークプラズマ成膜装置に限られず、プラズマを使用して薄膜をワーク上に形成する成膜装置、例えばプラズマCVD装置や蒸着装置、スパッタ装置などに共通の問題である。
上記問題点に鑑み、本発明は、格納室の内部とプラズマ室の内部とを接続するプラズマ通過口を閉鎖する開閉機構のシール性能の低下を抑制できる成膜装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、(ア)ワークが格納される格納室と、(イ)プラズマが生成されるプラズマ室と、(ウ)格納室とプラズマ室との間に配置された、格納室の内部とプラズマ室の内部とを連結させるプラズマ通過口を有し、プラズマ通過口の周囲を囲んで環状のシールリングが凸状に配置された障壁と、(エ)プラズマ通過口を閉鎖するように障壁上に配置可能なバルブプレートを有し、バルブプレートを移動させてプラズマ通過口を開閉する開閉機構と、(オ)バルブプレートがプラズマ通過口を閉鎖していない状態において、障壁のプラズマ通過口の周囲においてシールリングの表面上に配置され、成膜時でのシールリングの表面の付着物を防止する環状のカバープレートを有する保護機構とを備え、プラズマ通過口が開放された成膜時に、プラズマをカバープレートの内側を通過させてプラズマ室から格納室内のワーク上に導入する成膜装置が提供される。
本発明によれば、格納室の内部とプラズマ室の内部とを接続するプラズマ通過口を閉鎖する開閉機構のシール性能の低下を抑制できる成膜装置を提供できる。
本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の成膜時でのプラズマ通過口の状態を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る成膜装置のプラズマ通過口を閉鎖時の状態を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る成膜装置のプラズマ通過口を閉鎖時のプラズマ通過口の状態を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る成膜装置のシールリングの構成例を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の開閉機構の動作を説明するための模式図である。 本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の保護機構の動作を説明するための模式図である。 比較例の成膜装置の成膜時の状態を示す模式図である。 比較例の成膜装置における格納室とプラズマ室間のリークを示す模式図である。 他の比較例の成膜装置の構成を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。 本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。 本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。 本発明の第2の実施形態に係る成膜装置のフラップ機構の動作例を示す模式図である。
図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。又、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る成膜装置1は、ドライプロセスによって薄膜を処理対象のワーク上に形成する。図1に示した成膜装置1は、ターゲット600を陰極(カソード)として発生させたアーク放電によって、ターゲット600に含まれる材料元素のイオンを含むプラズマ200を生成するアークプラズマ成膜装置である。成膜装置1によれば、ターゲット600の材料元素を主成分とする薄膜が処理対象のワーク100上に形成される。例えばFAD法を用いて、カーボンイオンを含むプラズマ200をアーク放電によって生成し、カーボンを主成分とする薄膜をワーク100上に形成する。
図1に示す成膜装置1は、ワーク100が格納される格納室10と、プラズマ200が生成されるプラズマ室20と、格納室10とプラズマ室20との間に配置された障壁15とを備える。障壁15は、格納室10の内部とプラズマ室20の内部とを連結させるプラズマ通過口150を有する。プラズマ通過口150の周囲には、プラズマ通過口150を囲んで環状のシールリング151が配置されている。
格納室10内で、ステージ12上にワーク100が配置される。プラズマ室20は屈曲部を有し、屈曲部の一方の端部で格納室10と障壁15を挟んで対向する。屈曲部の他方の端部には、ターゲット600がプラズマ室20内に露出するように配置されている。ターゲット600は、屈曲部の他方の端部に接続するターゲット保管室30に配置されている。また、プラズマ室20の屈曲部に沿って誘導コイル40が配置されている。誘導コイル40は、プラズマ室20内で励起されたアーク放電によってターゲット600の表面に生成されたプラズマ200を、プラズマ室20からワーク100上に誘導するように磁場を形成する。なお、スキャンコイル60によって、ワーク100の上方の磁場がスキャンされる。これにより、ワーク100の主面に均一な膜が形成される。
成膜装置1は、図2に示すようなバルブプレート161とカバープレート171とを更に備える。板状のバルブプレート161は、プラズマ通過口150を閉鎖するように障壁15上に配置可能である。後述するように、成膜時においては、プラズマ通過口150が閉鎖されないように、バルブプレート161はプラズマ通過口150から離間した位置に配置される。そして、格納室10を大気開放する場合には、バルブプレート161によってプラズマ通過口150が閉鎖され、プラズマ室20の真空状態を保持する。図1及び図2は、成膜時の状態である。図2は、プラズマ通過口150の開放時における障壁15の面法線方向から見た状態を示す。
図1及び図2に示すように、環形状のカバープレート171は、バルブプレート161がプラズマ通過口150を閉鎖していない状態においてシールリング151の表面に配置可能である。カバープレート171は環状であるため成膜時にプラズマ通過口150は閉鎖されず、図1に示すように、カバープレート171の内側を通過してプラズマ200がプラズマ室20から格納室10内のワーク100上に導入される。このとき、バルブプレート161はプラズマ通過口150から離間した位置で、障壁15に沿って配置されている。図1では、バルブプレート161の図示を省略している。
図3に、バルブプレート161によってプラズマ通過口150が閉鎖された状態を示す。図4に、プラズマ通過口150の閉鎖時における障壁15の面法線方向から見たプラズマ通過口150の状態を示す。このとき、カバープレート171はプラズマ通過口150から離間した位置で、障壁15に沿って配置されている。なお、図3ではカバープレート171の図示を省略している。
図2、図4に示すように、バルブプレート161は第1の支持体162の一方の端部に接続されている。第1の支持体162の他方の端部160は、支持点155で障壁15に支持されている。バルブプレート161及び第1の支持体162を含むプラズマ通過口150の開閉を行う機構を以下において「開閉機構16」という。開閉機構16は、バルブプレート161を移動させてプラズマ通過口150を開閉する。具体的には、バルブプレート161は、支持点155を旋回中心として、障壁15の表面に沿って旋回する。
カバープレート171は第2の支持体172の一方の端部に接続されている。第2の支持体172の他方の端部170は、支持点155で障壁15に支持されている。カバープレート171及び第2の支持体172を含むシールリング151の表面を保護する機構を以下において「保護機構17」という。保護機構17は、バルブプレート161がプラズマ通過口150を閉鎖していない状態において、障壁15のプラズマ通過口150の周囲においてシールリング151の表面にカバープレート171を配置する。具体的には、カバープレート171は、支持点155を旋回中心として、障壁15の表面に沿って旋回する。
図2、図4に示すように、第1の支持体162の端部160と第2の支持体172の端部170とは一体化している。つまり、第1の支持体162と第2の支持体172とのなす角θが一定のままで、バルブプレート161とカバープレート171が障壁15の表面に沿って同時に旋回する。
具体的には、バルブプレート161がプラズマ通過口150に接近するにしたがって、カバープレート171がプラズマ通過口150から離れていく。そして、バルブプレート161がプラズマ通過口150を閉鎖した状態では、カバープレート171はプラズマ通過口150から離間した位置に配置される。一方、バルブプレート161がプラズマ通過口150から離れるにしたがって、カバープレート171がプラズマ通過口150に接近する。そして、プラズマ通過口150がバルブプレート161によって閉鎖されていない状態では、カバープレート171によってシールリング151の表面が保護される。
なお、シールリング151には、例えば図5に示すように、障壁15の表面に設けられた凹部にOリングを嵌め込んだ構造などを採用可能である。
次に、成膜装置1の動作について説明する。以下では、ワーク100上にカーボンを主成分とする薄膜を形成する場合を例示的に説明する。
プラズマ室20に沿って配置した一つ以上の誘導コイル40によって形成される磁場により、正イオンであるカーボンイオンを含むプラズマ200が、図1に示すように、屈曲部に沿ってプラズマ室20からワーク100上に誘導される。誘導コイル40は、例えば供給される電流によって励磁される電磁誘導コイルであり、それぞれの中心に屈曲部が配置された環状コイルである。図示を省略する励磁電流源により供給される電流の大きさに応じて、誘導コイル40により形成される磁場の強さがそれぞれ制御される。誘導コイル40に流れる電流を制御することによりプラズマ輸送の軌道を制御し、プラズマ200がプラズマ室20内を屈曲輸送される。
アーク放電によりターゲット600からカーボンのドロップレットが発生する。しかし、このドロップレットは荷電粒子ではないので磁場の影響を受けることなく、直線的に飛行する。このため、屈曲部を有するプラズマ室20を通過して格納室10に到達することができず、プラズマ室20の内部に留まる。このようにして、ドロップレットが除去(フィルター)されて、ドロップレットの無いtaC膜がワーク100上に形成される。
上記では、ワーク100上にカーボン膜を形成する例を示した。任意の材料物質からなるターゲット600を用いることによって、金属膜などの種々の薄膜をワーク100上に形成できることはもちろんである。
成膜装置1によれば、図3及び図4に示すように、バルブプレート161によってプラズマ通過口150を閉鎖することによって、格納室10とプラズマ室20とを真空分離できる。即ち、プラズマ室20を真空状態に保ったままで格納室10の真空を破り、成膜後のワーク100を格納室10から取り出したり、成膜前のワーク100を格納室10に格納したりできる。プラズマ室20を真空状態に保つことにより、プラズマ室20内の清浄度が高く保持される。
成膜時においては、格納室10も真空状態にした後、バルブプレート161をプラズマ通過口150から離間した位置に移動させて、プラズマ通過口150をバルブプレート161によって閉鎖されていない状態にする。一方、バルブプレート161がプラズマ通過口150から離れると同時に、カバープレート171がプラズマ通過口150に接近して、シールリング151の表面に密着する。
既に説明したように、成膜時には、カバープレート171がシールリング151の表面に密着した状態において、カバープレート171の内側を通過してプラズマ200がプラズマ室20から格納室10に導入される。シールリング151の表面がカバープレート171によって覆われているため、シールリング151の表面に膜が形成されたり、マクロパーティクルが付着したりすることが防止される。
なお、プラズマ200がプラズマ通過口150を通過する際には、バルブプレート161はプラズマ通過口150から離間した位置に配置されている。したがって、成膜時におけるバルブプレート161の表面での膜の形成やマクロパーティクルの付着はほとんどない。このため、バルブプレート161によってプラズマ通過口150を閉鎖した状態において、プラズマ室20内の清浄度は高く保持される。
図6及び図7に示すように、開閉機構16及び保護機構17の旋回中心となる端部は、格納室10の外部に配置された駆動装置18に接続されている。駆動装置18は、バルブプレート161及びカバープレート171を矢印Aに示すように障壁15の表面に沿って旋回させる旋回アクチュエータ機能と、バルブプレート161及びカバープレート171を矢印Bに示すように障壁15の表面の面法線方向に沿って昇降させる昇降アクチュエータ機能とを備える。
駆動装置18は、バルブプレート161とカバープレート171を障壁15の表面に沿って旋回させる前後に、障壁15の表面の面法線方向に沿ってバルブプレート161とカバープレート171を昇降させる。バルブプレート161やカバープレート171の材料がアルミニウム(Al)やステンレス鋼(SUS)などの金属材であるのに対し、シールリング151の材料はゴムなどである。このため、バルブプレート161やカバープレート171がシールリング151に接触した状態で旋回すると、シールリング151の表面が損傷する場合がある。しかし、上記のようにバルブプレート161及びカバープレート171を旋回させる前後に昇降させることにより、シールリング151の表面を損傷することが防止される。
ここで、第1の実施形態に係る成膜装置1とは異なり、成膜時においてシールリング151の表面がカバープレート171によって覆われない比較例について説明する。成膜時にシールリング151の表面が露出していると、シールリング151の表面に膜が形成されたり、マクロパーティクルが付着したりする。図8に、シールリング151の表面にマクロパーティクル210が付着した例を示す。シールリング151の表面にマクロパーティクル210が付着していると、プラズマ通過口150をバルブプレート161によって閉鎖しようとしても、プラズマ通過口150とバルブプレート161間が密着しない。
このため、プラズマ通過口150にバルブプレート161を配置した状態で格納室10を大気開放すると、図9に示すように格納室10とプラズマ室20間に矢印で示したようにリークが生じる。その結果、プラズマ室20内の清浄度を高く保持できない。
また、第1の実施形態に係る成膜装置1とは異なる方法によってプラズマ室20内の清浄度を高く保持する手段として、図10に示すように格納室10にワーク取り込み室11を配置する方法がある。図10に示した例では、処理後のワーク100が真空状態の格納室10からワーク取り込み室11から移動される。そして、ゲートバルブ111が閉じられた後に、ワーク取り込み室11の真空を破ってワーク100が成膜装置1から取り出される。また、処理前のワーク100をワーク取り込み室11に格納した後、ワーク取り込み室11を真空にする。その後、ゲートバルブ111を開いて、ワーク100をワーク取り込み室11から格納室10に移動する。
上記のように、ワーク取り込み室11を有する成膜装置を使用すれば、格納室10を大気開放する必要がなくなり、プラズマ室20内の清浄度を高く保持できる。しかしながら、ワーク取り込み室11を装備することによって装置サイズが増大する。
上記の比較例に対し、本発明の第1の実施形態に係る成膜装置1では、プラズマ通過口150が開放された成膜時に、シールリング151の表面がカバープレート171によって覆われる。このため、シールリング151がバルブプレート161のシール面と接する領域に膜が形成されたりマクロパーティクルが付着したりすることが防止される。その結果、プラズマ通過口150を閉鎖する開閉機構16のシール性能の低下を抑制できる。これにより、プラズマ室20内の清浄度を高く保持することができる。また、成膜装置1によればワーク取り込み室を装備する必要がないため、装置サイズの増大を抑制することができる。
ワーク100は、例えばレンズの金型や基板などである。例えば、耐熱性保護膜としてレンズ金型の表面にカーボン膜を成膜する。成膜装置1によれば、プラズマ室20内の清浄度を高く保持することができるために、ワーク100に形成される薄膜の膜質の劣化が抑制される。このため、ワーク100の破損や製品の短寿命化が防止される。つまり、表面粗さが低減されることによる製品寿命の延びや、工具や機械部品を処理対象とした場合などに摩擦係数の低減や耐摩擦性の向上を実現できる。
<第1の変形例>
図1では、屈曲部に沿ってプラズマ室20の外側に誘導コイル40が配置された例を示した。しかし、図11に示すように誘導コイル40をプラズマ室20内に格納した構成の成膜装置1においても、プラズマ室20内の清浄度を高く保持するために、成膜時にシールリング151の表面にカバープレート171を配置することは有効である。
図11に示した成膜装置1では、プラズマ室20内に複数の誘導コイル40が配置されている。これらの誘導コイル40は、ターゲット600と格納室10との間に少なくとも1箇所の屈曲部を有して連続する磁力線を発生させるように配置されている。これにより、プラズマ室20内で生成されたプラズマ200は、誘導コイル40の内側を通過してターゲット600からワーク100まで輸送される。
図11に示した成膜装置1では、成膜時にシールリング151の表面がカバープレート171によって覆われる。このため、シールリング151がバルブプレート161のシール面と接する領域に膜が形成されたりマクロパーティクルが付着したりすることが防止される。その結果、プラズマ通過口150を閉鎖する開閉機構16のシール性能の低下が抑制され、プラズマ室20内の清浄度を高く保持できる。
なお、プラズマ200が誘導コイル40間から発散したり漏れたりするのを防止するために、誘導コイル40間の空間の周囲にプラズマ電位補正電極を配置してもよい。その場合、プラズマ200は、プラズマ電位補正電極の内側を通過して輸送される。プラズマ電位補正電極の電位は、本発明者らの実験によればプラズマの効率的な輸送のために−20V〜+20V程度の範囲が好ましい。
図11に示した成膜装置1によれば、プラズマ室20の内部に設置する誘導コイル40の数や位置を調整することにより、複雑なプラズマ屈曲輸送が可能である。また、屈曲部に制限されることなく誘導コイル40の設置位置の自由度が高いために、より効率的なプラズマ輸送が可能である。
<第2の変形例>
上記では、第1の支持体162の障壁15に接続する端部160と第2の支持体172の障壁15に接続する端部170とを一体化させた例を示した。しかし、例えば図12に示すように、第1の支持体162の端部160と、第2の支持体172の端部170とを、別々の支持点155a、155bで障壁15に接続してもよい。端部160、170は、図示を省略する別個の駆動装置18にそれぞれ接続されている。これらの駆動装置18によって、開閉機構16と保護機構17を独立して駆動することができる。
なお、第1の支持体162の端部160と第2の支持体172の端部170とを一体化させた場合には、駆動装置18が1つである。このため、成膜装置1の構成が簡単であり、装置製造コストを抑制できる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、バルブプレート161及びカバープレート171が、障壁15の表面に沿って旋回移動する例を示した。図13に示す第2の実施形態に係る成膜装置1は、フラップ機構によってバルブプレート161及びカバープレート171が移動する。具体的には、バルブプレート161を矢印C1のように移動させて、障壁15の表面とバルブプレート161とのなす角を変化させる。そして、カバープレート171を矢印C2のように移動させて、障壁15の表面とカバープレート171とのなす角を変化させる。これにより、障壁15とバルブプレート161との距離、及び障壁15とカバープレート171との距離をそれぞれ変化させる。このように、図13に示した成膜装置1では、フラップ機構によって、プラズマ通過口150の開閉を制御すると共に、シールリング151とカバープレート171との接触を調整する。図13は、カバープレート171をシールリング151上に配置した状態を示す。
図13では、成膜時における障壁15の表面とバルブプレート161とのなす角や、プラズマ通過口150の閉鎖時における障壁15の表面とカバープレート171とのなす角が、略90度である例を示した。しかし、これらの角度が90度に限られないのはもちろんである。成膜時の障壁15の表面とバルブプレート161とのなす角が大きいほど、成膜時におけるバルブプレート161の表面での膜の形成やマクロパーティクルの付着を少なくできる。
例えば図14に示す矢印D1のように、障壁15の表面と平行な方向を回転軸方向として、第1の支持体162の端部160を中心に駆動装置18aによって開閉機構16を回転させる。これにより、バルブプレート161によってプラズマ通過口150を閉鎖したり、プラズマ通過口150を開放したりする。同様に、駆動装置18bによって第2の支持体172の端部170を中心に保護機構17を矢印D2のように回転させる。これにより、カバープレート171をシールリング151上に接触させたり離間させたりできる。図14は、カバープレート171をシールリング151上に配置した状態を示す。
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、上記では成膜装置1がアークプラズマ成膜装置である場合を例示的に説明したが、アークプラズマ成膜装置以外の成膜装置にも本発明を適用できる。即ち、ワーク100が格納される格納室10とプラズマ200を発生させるプラズマ室20とがプラズマ通過口150を介して連結される構造の成膜装置であれば、プラズマCVD装置や蒸着装置、スパッタ装置などにおいても本発明を適用することができる。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
1…成膜装置
10…格納室
12…ステージ
15…障壁
16…開閉機構
17…保護機構
18…駆動装置
20…プラズマ室
30…ターゲット保管室
40…誘導コイル
60…スキャンコイル
100…ワーク
150…プラズマ通過口
151…シールリング
161…バルブプレート
162…第1の支持体
171…カバープレート
172…第2の支持体
200…プラズマ
600…ターゲット

Claims (8)

  1. ドライプロセスによって薄膜を処理対象のワーク上に形成する成膜装置であって、
    前記ワークが格納される格納室と、
    プラズマが生成されるプラズマ室と、
    前記格納室と前記プラズマ室との間に配置された、前記格納室の内部と前記プラズマ室の内部とを連結させるプラズマ通過口を有し、前記プラズマ通過口の周囲を囲んで環状のシールリングが凸状に配置された障壁と、
    前記プラズマ通過口を閉鎖するように前記障壁上に配置可能なバルブプレートを有し、前記バルブプレートを移動させて前記プラズマ通過口を開閉する開閉機構と、
    前記バルブプレートが前記プラズマ通過口を閉鎖していない状態において、前記障壁の前記プラズマ通過口の周囲において前記シールリングの表面上に配置され、成膜時での前記シールリングの表面の付着物を防止する環状のカバープレートを有する保護機構と
    を備え、
    前記プラズマ通過口が開放された成膜時に、前記プラズマを前記カバープレートの内側を通過させて前記プラズマ室から前記格納室内の前記ワーク上に導入することを特徴とする成膜装置。
  2. 前記開閉機構が、一方の端部が前記バルブプレートに接続し、他方の端部が前記障壁で支持される第1の支持体を備え、
    前記第1の支持体の前記他方の端部を旋回中心として、前記バルブプレートが前記障壁の表面に沿って旋回することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  3. 前記障壁の表面に沿って旋回する前後に、前記バルブプレートが前記障壁の表面の面法線方向に沿って昇降することを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
  4. 前記保護機構が、一方の端部が前記カバープレートに接続し、他方の端部が前記障壁で支持される第2の支持体を備え、
    前記第2の支持体の前記他方の端部を旋回中心として、前記カバープレートが前記障壁の表面に沿って旋回することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成膜装置。
  5. 前記障壁の表面に沿って旋回する前後に、前記カバープレートが前記障壁の表面の面法線方向に沿って昇降することを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
  6. 前記開閉機構が、一方の端部が前記バルブプレートに接続し、他方の端部が前記障壁で支持される第1の支持体を備え、
    前記保護機構が、一方の端部が前記カバープレートに接続し、他方の端部が前記障壁で支持される第2の支持体を備え、
    前記第1の支持体の前記他方の端部と前記第2の支持体の前記他方の端部とが一体化しており、前記第1の支持体と前記第2の支持体とのなす角が一定のままで前記バルブプレートが前記第1の支持体の前記他方の端部を旋回中心として前記障壁の表面に沿って旋回し、前記カバープレートが前記第2の支持体の前記他方の端部を旋回中心として前記障壁の表面に沿って旋回することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  7. 前記障壁の表面と前記バルブプレートとのなす角、及び前記障壁の表面と前記カバープレートとのなす角をそれぞれ変化させることによって、前記プラズマ通過口の開閉を制御すると共に前記シールリングと前記カバープレートとの接触を調整するフラップ機構を有することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
  8. アーク放電によって材料物資のイオンを含む前記プラズマを生成して、前記材料物資を主成分とする薄膜を前記ワーク上に形成するアークプラズマ成膜装置であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の成膜装置。
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