以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.本実施形態の基本的な考え方>
高炉の還元材比(RAR)は、原燃料因子と装入や送風などの操業因子とに左右される。原燃料因子としては、炭素高反応性装入物の反応性(すなわちガス化開始温度)、鉄系原料の還元特性(すなわち被還元性)、及び炭素高反応性装入物の混合率(すなわち炭素高反応性装入物と鉄系原料との使用比率)が挙げられる。すなわち、炭素高反応性装入物の反応性はその構成などに応じて様々に変化し、かつ、その反応性によって、還元材比も変化する。さらには、炭素高反応性装入物に組み合わせる鉄系原料の還元特性、及び炭素高反応性装入物の混合率によっても還元材比が変化する。しかし、高炉の還元材比(RAR)とこれらの因子との相関関係を定量的に評価する方法については何ら知られていなかった。特に、炭素高反応性装入物の物性の評価方法について何ら知られていなかった。
そこで、本発明者は、還元材比に影響を与える因子が非常に多数存在する中で、特に炭素高反応性装入物の反応性、鉄系原料の還元特性、及び炭素高反応性装入物の混合率の3つのパラメータに着目し、これらのパラメータと還元材比との相関関係について鋭意検討した。その結果、還元材比の低減量がこれらのパラメータの関数で表されることを見出した。すなわち、本発明者は、炭素高反応性装入物の好適な装入量は、炭素高反応性装入物の反応性及び鉄系原料の還元特性のバランスによって決定され、このバランスが変動すると、それに応じて好適な装入量も変動することを見出した。そして、本発明者は、このような知見に基づき、本実施形態に係る装入量決定方法を完成させた。本実施形態に係る装入量決定方法は、後述する実施例で示されるように、1年間の高炉操業において効果が実証されているので、実用に耐える装入量決定方法である。
本実施形態に係る装入量決定方法の概要は以下のとおりである。まず、炭素高反応性装入物のガス化開始温度Tc及びコークスのガス化開始温度Tcを測定する。そして、これらの差分△Tcを算出する。ついで、鉄系原料の還元特性値Rsを測定する。ついで、還元材比の低減量△RARとガス化開始温度の差分△Tc、鉄系原料の還元特性値Rs、及び炭素高反応性装入物の混合率Xcとの関数F(△Tc、Rs、Xc)を規定する。具体的には、ガス化開始温度の差分△Tc、及び鉄系原料の還元特性値Rsを指数化する。ついで、還元材比の低減量△RARが最大となるように混合率Xcを決定する。これにより、炭素高反応性装入物及び鉄系原料の特性に対して還元材比が最も低くなる混合率Xc、すなわち炭素高反応性装入物の好適な(最適な)装入量を高炉操業前に決定することができる。
また、本実施形態に係る高炉操業方法では、炭素高反応性装入物の混合率を上記の処理で決定された混合率Xc以下の混合率として高炉操業を行う。また、炭素高反応性装入物及び鉄系原料のうち少なくとも一方が変更された場合、上記の処理を再度行うことで混合率Xcを再度決定し、炭素高反応性装入物の混合率を新たに決定された混合率Xc以下の混合率とする。これにより、炭素高反応性装入物及び鉄系原料のうち少なくとも一方が変更された場合でも、短時間で還元材比の低い操業に移行することができる。このように、本実施形態に係る高炉操業方法では、還元材比を低減することができ、かつ、そのために必要な炭素高反応性装入物の装入量も低減することができるので、高炉操業コストを低減することができる。
<2.炭素高反応性装入物の装入量決定方法>
つぎに、本実施形態に係る炭素高反応性装入物の装入量決定方法の手順を、図1に示すフローチャートに沿って説明する。なお、ステップS10及びS20の順番は問われない。
(ステップS10:Tc及び△Tcの測定)
ステップS10において、炭素高反応性装入物及びコークスのガス化開始温度Tcを測定し、さらに、これらの差分△Tcを求める。
炭素高反応性装入物は、コークス(高炉に装入されるコークス)よりも反応性の高い(すなわち、コークスよりも低温でガス化する)炭材を含む。炭素高反応性装入物は、上記の特性を有するものであれば特に制限されない。炭素高反応性装入物としては、例えば、酸化鉄とカーボンのカップリング効果によって、カーボンの反応性をコークスよりも高めた塊成物(例えば含炭塊成鉱など)や、触媒をカーボンに担持させることでカーボンの反応性を通常のコークスよりも高めたコークス類(例えば、CaOを添加した高反応性コークス、同様の作用を奏するフェロコークスなど)等が挙げられる。含炭塊成鉱は、例えば炭材を含炭塊成鉱の総質量に対して15〜25質量%含み、残部の主成分が酸化鉄となるものが挙げられる。したがって、本実施形態に係る炭素高反応性装入物は、特許文献1〜4に挙げられたものを当然に含む。なお、炭素高反応性装入物の製造方法も特に限定されない。
ガス化開始温度は、原料(炭素高反応性装入物及びコークス)に含まれる炭材がCOガス化を開始する温度を意味する。ガス化開始温度の測定方法は特に限定されない。測定方法によって各原料のガス化開始温度Tc及びこれらの差分△Tcの測定値に多少のズレが生じる場合があるが、どのような測定値であっても、ある鉄系原料及び炭素高反応性装入物の組み合わせに対する好適な装入量は一意に決定される。ただし、関数Fの精度等の観点からは、測定試料及び反応ガスはなるべく操業時に近いものとすることが好ましい。具体的には、ガス化開始温度は、昇温速度が5〜20℃/minとなり、および/又はガス組成CO2/(CO2+CO)が0.2〜0.3となる条件下で測定されることが好ましい。
ガス化開始温度は、例えば熱天秤によって測定される。図2に熱天秤の一例である熱天秤10の構成を示す。熱天秤10は、筐体11と、外側反応管12と、内筒13と、ガス入口14と、発熱体15と、ガス出口16と、熱電対17と、吊りワイヤ18と、重量計19とを備える。
筐体11は、外側反応管12、内筒13、及び発熱体15を収納する容器である。外側反応管12は、内筒13を収納する容器である。内筒13は外側反応管12の内部に収納される容器である。内筒13には、アルミナボール20及び測定試料30(炭素高反応性装入物またはコークス)等が投入される。また、内筒13と外側反応管12との間には隙間が形成され、この隙間を反応ガスが流通する。また、内筒13の底面は通気穴が多数形成されており、反応ガスは、これら通気穴を通って内筒13の内部に導入される。ここで、反応ガスは、測定試料30内の炭材をガス化させるためのガスであり、その組成は高炉内を流通する還元ガスになるべく近いことが好ましい。反応ガスの組成は炭素高反応性装入物のガス化開始温度に影響を与え、ひいては関数Fに影響を与えるからである。反応ガスは、例えばCO、CO2、及びN2で構成され、CO及びCO2の総体積に対するCOの体積比率は0.2〜0.3であることが好ましい。N2の反応ガス総体積に対する体積比率は例えば55%とされる。
ガス入口14は、外側反応管12の側面の上端部に設けられ、外側反応管12の内部に反応ガスを導入する。発熱体15は、例えば発熱コイルであり、外側反応管12の外側に巻きつけられる。発熱体15は、アルミナボール20、測定試料30、及び反応ガスの加熱に使用される。ガス出口16は内筒13の上端部に設けられ、反応ガスを外部に排出する。外部に排出された反応ガスは分析計によって分析される。熱電対17は内筒13の内部に挿入され、測定試料30の温度を測定する。吊りワイヤ18は、内筒13に連結され、内筒13を外側反応管12の内部に吊り下げる。重量計19は吊りワイヤ18に連結される。したがって、重量計19は、内筒13内部の重量変化、すなわち測定試料30内の炭材が反応ガスによってガス化することによって生じた重量変化を検出することができる。
上記の熱天秤10を用いたガス化開始温度Tcの測定方法は以下のとおりである。まず、内筒13にアルミナボール20を敷き詰め、その上に所定の粒度範囲に整粒された測定試料30を所定量だけ敷き詰める。ここで、測定試料30の粒度範囲は操業時の粒度になるべく近いことが好ましく、具体的には15mm超過25mm以下、好ましくは19mm超過21mm以下が好ましい。測定試料30の粒度はガス化開始温度に影響を与え、ひいては関数Fにも影響を与えるからである。また、本実施形態での粒度は、例えば目開きの大きさが異なる篩を用いて測定される。例えば、目開きが25mmの篩を用意し、測定試料30をこの篩にかける。この篩に残留した測定試料は、粒度が25mmより大きく、篩から落ちた測定試料は粒度25mm以下となる。また、アルミナボール20及び測定試料30の装入量は熱天秤10のサイズにより適宜調整される。
次いで、発熱体15を発熱させる一方で、ガス入口14から反応ガスを外側反応管12内に導入する。反応ガスは、発熱体15により予熱された後に内筒13内に導入される。
測定試料30(及びアルミナボール20)は発熱体15によって1200℃まで昇温される。昇温速度は5〜20℃/minとなることが好ましい。したがって、反応ガスは、アルミナボール20により更に予熱され、測定試料30内に導入される。測定試料30は、発熱体15によって昇温される一方で、反応ガスに曝される。測定試料30の温度がガス化開始温度に到達した際に、測定試料30内の炭材が反応ガスと反応することでガス化する。測定試料30を通過した反応ガスは、排ガスとしてガス出口16から分析計に導入される。測定試料30が1200℃に到達するまで、測定試料30の重量変化(質量変化)と排ガス成分とを同時に測定する。
そして、反応ガス成分の測定結果と、下記式(4)、(5)とに基づいて、カーボン消費速度(gC/min)を算出する。
カーボン消費速度(gC/min)=(K(CO+CO2)out*Vout−K(CO+CO2)in*Vin)/22.4*12・・・(式4)
Vout(Nl/min)=Vin(Nl/min)*N2(in)(体積%)/N2(out)(体積%)・・・(式5)
ここで、K(CO+CO2)outは、排ガスの総体積に対するCO及びCO2の総体積の割合(体積%)であり、K(CO+CO2)inは、反応ガスの総体積に対するCO及びCO2の総体積の割合(体積%)である。N2(in)(体積%)は、反応ガスの総体積に対するN2の体積の割合(体積%)である。N2(out)(体積%)は、排ガスの総体積に対するN2の体積の割合(体積%)である。
カーボン消費速度及び重量変化の測定結果の例を図3及び図4に示す。図3では、カーボン消費速度と測定試料30の温度との相関関係を示すグラフを測定試料30の種類(すなわち通常コークス及び含炭塊成鉱)毎に示す。図4では、重量減少率と測定試料30の温度との相関関係を示すグラフを測定試料30の種類(すなわち通常コークス及び含炭塊成鉱)毎に示す。ここで、通常コークスは、高炉に装入されるコークスを意味する。また、各温度に対する重量減少率は、各温度の測定試料30の重量(質量)から測定開始時の測定試料30の重量(質量)を減じた値を測定開始時の測定試料30の重量(質量)で除算することで得られる。なお、図3及び図4の例では、CO及びCO2の総体積に対するCO2の体積の比率は0.3となる。
そして、カーボン消費速度が所定値(例えば0.04gC/min)を超えた時の温度を反応開始温度Tc(℃)と定義する。図3の例だと、通常コークスの反応開始温度は1009(℃)、含炭塊成鉱の反応開始温度は723℃となる。なお、熱天秤10のように、重量減少率を高精度で測定できる測定装置であれば、重量減少率を併用してガス化開始温度を測定することが好ましい。ガス化開始温度の測定精度が向上するからである。すなわち、カーボン消費速度が所定値を超え、かつ、単位時間当りの重量減少率が所定値(例えば0.005%/min)以上である温度を反応開始温度Tcと定義しても良い。なお、単位時間当りの重量減少率は、上述した重量減少率の1分間の変動量として示される。
そして、コークスのガス化開始温度から炭素高反応性装入物のガス化開始温度を減算することで、両者の差分△Tc(℃)を算出する。ここで、高炉に複数種類の炭素高反応性装入物を装入する場合、これらのガス化開始温度のうち、最も温度が低いガス化開始温度を用いて△Tcを算出する。これにより、炭素高反応性装入物の特性が変化した場合や、各成分の配合率が変化した場合にも、炭素高反応性装入物全体の特性を、一元的に管理することができる。
(ステップS20:鉄系原料の還元特性値Rsの測定)
次いで、ステップS20において、鉄系原料の還元特性値Rsを測定する。ここで、鉄系原料は、鉄分を鉄系原料の総質量に対して50質量%以上含有する高炉用装入物である。鉄系原料としては、例えば焼結鉱、焼成ペレット、塊鉱石、及び非焼成塊成鉱(非焼成塊成鉱の総質量に対して炭素を15質量%未満含むもの)が挙げられる。
鉄系原料の還元特性値Rsは、鉄系原料の被還元性の指標となる値であり、例えば還元率として示される。還元特性値Rsの測定方法は特に限定されない。例えばJIS−RI(JIS M8713)に規定された測定方法、特許文献5、6、及び非特許文献1に開示された測定方法が適用可能である。特許文献5に開示されたRA法は、樋口ら「大分製鐵所における新しい還元指標の開発と実機適用」:CAMP−ISIJ,19(2006),144にも開示されている。また、特許文献6に開示された測定方法は、細谷ら「焼結鉱の軟化溶融性状評価法の開発」:鉄と鋼,83(1997),97にも開示されている。また、鉄系原料の還元特性値Rsの測定方法として、上述したものの他に、1250℃、1.5時間反応後の還元率を測定する方法(土屋ら「自溶性ペレットの各種冶金性状におよぼすMgO添加の影響」:鉄と鋼,66(1980),1840も知られている。本実施形態では、いずれの測定方法を採用してもよい。いずれの測定方法においても、還元率は下式(6)に従って計算される。
還元率(%)=(除去された酸素(質量%))/(初期被還元酸素(質量%))*100・・・(6)
除去された酸素は、反応後の試料を回収して、化学分析によって得る場合と、反応過程の排ガス分析から得る場合、重量変化から得る場合があり、測定する方法に応じて、任意に算出方法を選択しても良い。除去された酸素の質量%は、試料の総質量に対する質量%として示される。一方、初期被還元酸素は、反応前の試料の化学分析から得られる。具体的には、以下の式(7)により得られる。
初期被還元酸素(質量%)=(T.Fe−M.Fe−FeO*(55.85)/(55.85+16))*16*1.5/55.85+16/(55.85+16)*FeO・・・(7)
ここで、T.Feは、試料に含まれる全鉄の質量であり、M.Feは試料に含まれる金属鉄の質量であり、FeOは、試料に含まれるFeOの質量である。
上記の測定方法の内、JIS−RIでは、融液が生成しない比較的低温域900℃、一定時間(3時間)でのCO還元における還元率を測定する。JIS−RIは鉄系原料をCOで還元するため、鉄系原料(すなわち酸化鉄)は低温域でも急速に金属鉄まで還元されてしまい、鉄系原料表面にメタル層が多量に形成される。
一方、実際の高炉では、鉄系原料を5〜20℃/min程度で昇温しながら、CO−CO2ガスで還元する。さらに、高炉では、高温域、すなわち1100℃付近から局所的に鉄系原料の融液を発生させ、かつ、上方の装入物の荷重によって鉄系原料を収縮させながら還元する。このように、実際の高炉では鉄系原料をCO−CO2ガスにより還元するので、低温域では鉄系原料の還元はFeOまでで一旦止まる。その後、鉄系原料は、鉄系原料内部と外周部の差異が比較的小さい状態で高温域へ移行し、その後メタルまで還元される。このことから、JIS−RIは高炉内部で起こる還元状態を模擬したものではない、簡易的な測定方法である。さらに、JIS−RIは900℃という比較的低温域での還元指標であるため、通常コークスのカーボン反応開始温度が1009℃であることを考慮すると、カーボン反応開始温度の変化に伴う、鉄系原料の性状変化を精緻に記述する指標ではない。
一方、高温荷重軟化試験装置を用いた測定方法(すなわち、1100℃〜1200℃の昇温還元率を測定する方法)は、実際の高炉を精緻に模擬した条件下で還元率を測定できる、カーボン反応開始温度の変化に伴う、鉄系原料の性状変化を包括的に記述できる、の2点で最も好ましい。ただし、推定精度は低下するものの、JIS−RI、RAなどの測定方法であっても本実施形態の還元特性値Rsの測定方法として用いることが出来る。すなわち、測定方法によって還元特性値Rsの測定値に多少のズレが生じる場合があるが、どのような測定値であっても、ある鉄系原料及び炭素高反応性装入物の組み合わせに対する好適な装入量は一意に決定される。
ここで、高温荷重軟化試験装置の一例を図5に示す。図5に示す高温荷重軟化試験装置40は、下段電気炉41と、上段電気炉42と、温度計44、45、46と、ガス入口47と、るつぼ48と、荷重装置49と、ガス出口50とを備える。るつぼ48には鉄系原料43が装入される。下段電気炉41と上段電気炉42とは、フランジにより接合されて、一体構造をなしている。下段電気炉41は、還元ガスを予熱し、上段電気炉42は、鉄系原料43を加熱する。各構成要素の機能については特許文献6に開示されているので説明を省略する。
次に、高温荷重軟化試験装置40を用いた還元特性値Rs、すなわち昇温還元率の測定方法について説明する。まず、鉄系原料43を用意し、鉄系原料43の上下をコークス層で挟んで、るつぼ48に装填し、その後、反応管の内部に設置する。ついで、予め組成と流量を調整した還元ガスを、ガス入口47から反応管内に導入する。一方、下段電気炉41及び上段電気炉42を駆動する。還元ガスは、下段電気炉41で予熱された後、るつぼ48内の鉄系原料43へ導入されて、鉄系原料43と反応する。鉄系原料43は、上段電気炉42によって昇温される。反応後の還元ガスは、ガス出口50から排出される。排出ガスの一部を採取して、ガス分析計で成分組成を分析する。排ガスの成分組成から還元率を算出する。
同時に、温度計46で、鉄系原料43直上の温度を測定し、ガス入口47とガス出口50においてガス圧力を測定する。ガス圧力の差から、鉄系原料43の通気抵抗を計測する。
また、鉄系原料43を加熱、還元する過程で、鉄系原料43に、荷重装置49により荷重を負荷し、高炉内での荷重条件を再現する。この荷重条件の下で生じる鉄系原料43の収縮挙動も測定する。
焼結機で製造した焼結鉱を10mm超過15mm以下の粒度範囲に整粒して作製した鉄系原料43を用いて上述した試験を行った結果を図6に示す。具体的に、図6は、鉄系原料43の温度変化に伴う還元率(%)の推移と圧力損失(mmAQ)の変化とを対比して示す。図6に示すように、加熱温度の上昇に伴って、還元率は上昇する。一方、通気抵抗は、1250℃付近で急上昇して圧力損失が急増する。その直前の還元率は、融着挙動を大きく支配するため重要である。そこで、高温荷重軟化試験装置を用いて還元率を測定する場合、還元率は、1100℃〜1200℃の還元率をRsとして採用することが好ましい。
なお、実際の高炉操業では、鉄系原料は、複数銘柄を混合して使用することが一般的である。複数銘柄の混合試料の還元特性値Rsは、鉄系原料単味の還元特性値Rsを予め測定しておき、それぞれの使用比率に応じた加重平均値とする。これにより、焼結鉱の特性が変化した場合や、焼結鉱、塊鉱石、及び、ペレットの配合率が変化した場合にも、鉄含有装入物全体の特性を、一元的に管理することができる。なお、鉄系原料の混合試料を上述した高温荷重軟化試験装置に投入し、混合試料の還元特性値Rsを測定してもよい。
なお、高温荷重軟化試験装置は、図5に示す装置に限定されるものではない。図5に示す装置と同様の機能を持つ試験装置であれば、図6に示す還元率(%)曲線、及び圧力損失曲線と同様の還元率(%)曲線、及び圧力損失曲線を得ることができ、さらに還元特性値Rsを算出することができる。
(ステップS30:関数Fを規定)
次いで、還元材比の低減量△RAR(kg/tp)とガス化開始温度の差分△Tc、鉄系原料の還元特性値Rs、及び炭素高反応性装入物の混合率Xcとの相関関係を示す関数F(ΔTc,Rs,Xc)を規定する。具体的に、関数Fは、以下の式(1)で規定される。
△RAR(kg/tp)=−a*(Xc−b)2+ab2・・・(1)
ここで、a、bは以下の式(2)、(3)で示される。
a=0.0825*exp(−0.055*b)*(0.0322*b−0.508)/5*(Rs−60)+1)・・・(2)
b=(−0.5*△Tc+120)*(0.1*(Rs−60)+1)・・・(3)
ここに、混合率Xcは、炭素高反応性装入物に含まれる炭材の原単位(kgC/tp)として定義される。式(1)は、△RARが、Xc=0で0、Xc=bで最大値ab2を取る上に凸のカーブとなることを想定して、それを2次式で表現したものである。ここは、2次式での表現が簡便である点で実用上好ましいが、前記特徴を表現できる形式であれば2次式以外の関数での表現も可能である。式(3)のbの定義は、△RARが最大となるXcの値をΔTcとRs(基準値を60とする)の積和として回帰して求めたものである。式(2)のaの定義は、最大値がab2となるように、bおよびRsで回帰して求めたものである。
すなわち、本発明者は、高炉の数学モデル(山本ら「フェロコークスの反応挙動と高炉内評価」:鉄と鋼,97(2011),501)を用いて各パラメータ△Tc、Rs、Xcと△RARとの相関関係を算出したところ、当該相関関係が式(1)で規定されることを見出した。また、本発明者は、BIS炉を用いて相関関係を推定したところ、当該相関関係が式(1)で規定されることを確認した。また、本発明者は、後述する実施例でも示されるとおり、実機のデータ解析によっても、当該相関関係が式(1)で規定されることを確認した。したがって、式(1)は、上記のいずれの方法によっても特定可能である。
関数Fの具体例を図7及び図8に示す。図7は、還元特性値Rs=65(%)かつガス化開始温度の差分△Tc=60、120、180(℃)となる場合の関数Fを示す。図8は、還元特性値Rs=60(%)かつガス化開始温度の差分△Tc=60、120、180(℃)となる場合の関数Fを示す。いずれの例においても、関数Fには△RARが最大となる混合率Xcが存在することがわかる。
(ステップS40:△RARが最大となるようにXcを決定する)
ステップS40において、△RARが最大となるように混合率Xcを決定する。以上の処理により、△RARが最大となる混合率Xcを事前に(すなわち高炉操業前に)決定することができる。
本発明者は、各パラメータ△Tc、Rs、Xcと△RARとの相関関係が関数Fで示される理由を以下のように考えている。すなわち、根本的にカーボン反応開始温度が低くなると、高炉の還元平衡点温度が低下し、還元ガスの有効利用率が上昇する。その結果、炭素高反応性装入物の装入量の増加によって、還元材比が低下する。しかし、ある時点でその効果は上限を示し、それ以降は増使用に伴い、効果は減少する。これは極端なカーボン反応開始温度の低下によって、シャフト温度が低下し、焼結鉱や塊鉱石、ペレットなど鉄系原料の還元速度の低下が顕著となるためである。ここに、カーボン反応開始温度がそれほど低くない装入物は、使用量の上限値は少し緩和されるものの、到達する最大効果は相対的に小さくなる。本結果から発明者は、使用する炭素高反応性装入物の反応特性に応じて、炭素高反応性装入物の装入量を制御し、最大効果を常に享受する高炉操業方法を発想するに至った。
<3.高炉操業方法>
つぎに、本実施形態に係る高炉操業方法について説明する。本実施形態に係る高炉操業方法では、高炉に投入する鉄系原料、コークス、及び炭素高反応性装入物に対して最適な混合率Xc(△RARが最大となる混合率Xc)が上述した方法により事前に特定されている。
(3−1.現状の高炉操業における炭素高反応性装入物使用量の最適化)
したがって、炭素高反応性装入物の現状の混合率Xcが最適な混合率Xcからずれている場合には、炭素高反応性装入物の混合率Xcを最適な値に調整する。これにより、RARを低減できる。しかし、炭素高反応性装入物の供給量が原料バランス上混合率Xcに達しない場合もある。この場合は、最適値以下であってもよく、供給可能な量の最大値で操業を行うのが最も好ましいことになる。
(3−2.炭素高反応性装入物の変更)
また、炭素高反応性装入物が変更された場合には、変動後の配合に基づいて最適な混合率Xcを再度算出し、炭素高反応性装入物の混合率Xcを新たに算出された混合率Xcに調整する。炭素高反応性装入物の混合率Xcは、最適値以下であってもよい。炭素高反応性装入物が変更される場合としては、例えば、炭素高反応性装入物を構成する各原料の配合が変更された場合、または炭素高反応性装入物を構成する各原料が変更された場合が考えられる。これにより、炭素高反応性装入物の配合が変動した場合であっても、短期間でRARが低い操業に移行できる。なお、鉄系原料が変更された場合にも同様の処理が可能である。
(3−3.鉄系原料の変更(最適化))
上記の3−1、3−2では、鉄系原料を固定した上で、炭素高反応性装入物の混合率Xcを最適化する操業である。しかし、鉄系原料を変更しても良いことはもちろんである。ここでは、鉄系原料を変更する場合の好適な操業方法について説明する。この操業方法は、概略的には、鉄系原料の焼結鉱比(SR)あるいはスラグ量(SV)を所定の範囲に調整して操業することで、還元材比RARを非常に小さくすることができる操業方法である。
鉄系原料の焼結鉱比は、鉄系原料の総質量に占める焼結鉱の質量比(質量%)である。図9は、鉄系原料の焼結鉱比と鉄系原料の還元特性値Rsとの対応関係を示す。ここで、還元特性値Rsは、鉄系原料を構成する各成分の還元特性値Rsを加重平均することで算出したものである。各成分の還元特性値Rsは、上述したステップS20の処理により測定される。図9に示すように、鉄系原料の焼結鉱比と鉄系原料の還元特性値Rsとはほぼ線形の関係にある。したがって、鉄系原料の焼結鉱比がわかれば、鉄系原料の還元特性値Rsも一意に特定される。そして、上述したように、還元材比RARと、△Tc、Rs、Xcとの間には相関があるので、△Tc、Xcが一定の下では、還元材比RARと鉄系原料の焼結鉱比との間にも相関があると言える。
その一例を図10に示す。図10は、焼結鉱比と還元材比との対応関係を、炭素高反応性装入物のあり、なしの条件下で測定した結果を示す。図10の対応関係を測定するにあたり、△Tcは120℃とし、混合率Xcは、△RARが最大となる値とした。図10に示すように、焼結鉱比が77〜95%となる範囲でRARが460kg/tp未満となる。また、△RAR(グラフ間の距離)が最も大きくなる。したがって、焼結鉱比は77〜95%であることが好ましい。また、焼結鉱比は、80〜90%であることがより好ましい。
ここに、焼結鉱比が77%未満の場合は、鉄系原料の還元特性値Rsが低下するため、RARは増加する。また、鉄系原料の焼結鉱比が95%を超えると、鉄系原料の被還元性は良好となる一方で、スラグ量の増大の悪影響が顕著となり、多量の溶解熱が必要となる。このため、RARが増加する。ここに、図10の求め方は、実施例2で詳述する。
図11は、鉄系原料の焼結鉱比と高炉のスラグ量(高炉から排出されるスラグ量、SV)との対応関係を示す。高炉のスラグ量は、スラグ量は、スラグそのものの測定は不正確であるので、一般的には炉頂からの装入物および羽口からの吹き込み固体燃料の使用量と灰分や脈石成分の測定値から算出可能である。図11に示すように、実用上、焼結鉱比と高炉のスラグ量とはほぼ線形の関係にある。したがって、高炉のスラグ量がわかれば、鉄系原料の焼結鉱比が一意に特定される。そして、上述したように、鉄系原料の焼結鉱比と鉄系原料の還元特性値Rsとの間にも対応関係がある。したがって、高炉のスラグ量がわかれば、鉄系原料の還元特性値Rsが一意に特定される。そして、上述したように、還元材比RARと、△Tc、Rs、Xcとの間には相関があるので、△Tc、Xcが一定の下では、還元材比RARと高炉のスラグ量との間にも相関があると言える。
したがって、焼結鉱比に変えて、高炉のスラグ量でRARが460kg/tp未満となる範囲を規定することもできる。具体的には、図10に示すように、焼結鉱比が77〜95%となる範囲でRARが460kg/tp未満となる。そして、図11に示すように、焼結鉱比が77〜95%となる場合、高炉のスラグ量は290kg/tp〜320kg/tpとなる。したがって、高炉スラグ量が290〜320kg/tpとなる場合に、RARが460kg/tp未満となる。したがって、図10の結果を、最適混合率Xcにおける高炉のスラグ量とRARの関係として読み直すことができる。
(実施例1)
次に、本実施形態の実施例1について説明する。本発明者らは、4800m3の高炉を1年間操業させた。そして、定期補修前後、及び、天候影響などの非定常状態での操業を除き、出銑比1.9〜2.2(t/m3・d)の安定操業期間の操業データを解析した。そして、本実施形態に係る炭素高反応性装入物の装入量決定方法が有効に機能することを確認した。
(Tc及び△Tcの測定)
まず、図2に示す熱天秤10を用いて、操業評価期間中に用いられたコークス(通常コークス)の反応開始温度、炭素高反応性装入物の反応開始温度及びこれらの差分△Tcを測定した。本実施例1では、炭素高反応性装入物として、表1に含炭塊成鉱Aおよび高反応性コークスA、Bを使用した。
表1中、「炭材」は炭素高反応性装入物に含まれる炭材の質量%を意味する。「M.Fe」は炭素高反応性装入物に含まれる金属鉄の質量%を意味し、「T.Fe」は炭素高反応性装入物に含まれる全鉄の質量%を意味する。
実施例1では、各炭素高反応性装入物のTc及び△Tcを以下のように測定した。炭素高反応性装入物を15mm超過25mm以下の粒度に整粒し、炭素高反応性装入物200gを試料として熱天秤10の内筒13内に設置した。ついで、Al2O3球で予熱された反応ガスを試料層に導入し、反応に伴う重量変化と排ガス成分を同時に測定した。
ここで、ガス流量は20NL/min(空塔速度8cm/s)で一定とし、試料は単味で200g一定とした。さらに、ガス組成をN255体積%−CO−CO2、CO2/(CO+CO2)=0.3で一定とした。試料は10℃/minで1200℃まで昇温し、重量変化、排ガス分析によるカーボン反応性を評価した。
具体的には、排ガス分析結果からガス化速度を逐次計算で求め、0.04gC/minを超える大きさとなった温度を「カーボン反応開始温度」と定義した。表1に測定結果を示す。
(Rsの測定)
次に、図5に示す高温荷重軟化試験装置を用いて、操業評価期間中に用いられた鉄系原料の還元特性値(還元率)Rsを測定した。
具体的には、10mm超過15mm以下の粒度範囲に整粒した鉄系原料43の上下をコークス層で挟んで、内径85mmのるつぼ48内に装入した。鉄系原料43の層厚は70mmとした。下段電気炉41は常温より1700℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、1700℃到達後その温度に保持した。上段電気炉42は常温より1000℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、1000℃より1600℃まで昇温速度5℃/minで昇温し、1600℃到達後その温度に保持した。ただし、上段電気炉42の温度と鉄系原料43の温度との温度差をあらかじめ30℃と設定し、この温度差が30℃を越えたときは、上段電気炉42の電力を減少させて30℃になるように電力を調整した。還元ガスは、常温より800℃まではN2ガス、800℃よりN255体積%−CO−CO2、CO2/(CO+CO2)=0.3の還元ガスとし、流量は20NL/minとした。荷重は荷重装置49により800℃から1.0kg/cm2かけた。
一方、排出ガスの一部を採取して、ガス分析計で成分組成を分析した。排ガスの成分組成から還元率を算出した。同時に、温度計46で、鉄系原料43直上の温度を測定し、ガス入口47とガス出口50においてガス圧力を測定した。ガス圧力の差から、鉄系原料43の通気抵抗を計測した。
この結果、加熱温度の上昇に伴って、還元率は上昇するが、1250℃付近で、通気抵抗が急上昇し、圧力損失が急増することがわかった。その直前の還元率は、融着挙動を大きく支配するため重要である。そこで、本実施例1では、1200℃の還元率をRsとして採用した。
(関数Fの決定)
これらの炭素高反応性装入物の使用比率を変化させて、実機での使用試験を実施した。1年間の操業につき、定期補修前後、及び、天候影響などの非定常状態での操業を除き、出銑比1.9〜2.2(t/m3・d)の安定操業期間の操業データを解析に供した。すなわち、Rs、△Tc及びXcを変動させ、各Rs、△Tc及びXcにおいて出銑比が1.9〜2.2(t/m3・d)となるようにRARを調整した。ここで、鉄系原料の還元特性値Rsは、鉄系原料を構成する各成分の還元特性値(単味の還元特性値)を加重平均した値とした。また、ガス化開始温度の差分△Tcは、炭素高反応性装入物を構成する各成分のガス化開始温度Tcのうち、最も低い値を用いて算出した。
そして、鉄系原料の還元特性値(各成分の還元特性値を加重平均した値)Rsが64〜66%(平均65%)となる期間を還元特性値Rs=65(%)の期間として抽出し、還元特性値Rsが59〜61%(平均60%)となる期間を還元特性値Rs=60(%)の期間として抽出した。そして、各期間の△RAR(ベースは炭素高反応性装入物の使用が0の期間のRAR)を△Tc及びXcで整理した。解析対象期間の鉄系原料の成分、単味Rs、使用比率および単味Rsの加重平均値の一例を表2に示す。
表2に示すように、期間aでは、還元特性値Rs(すなわち各成分の単味Rsの加重平均値)が65.0(%)の鉄系原料を使用し、期間bでは、還元特性値Rsの加重平均値が60.0(%)の鉄系原料を使用した。なお、表2の組成はあくまで一例であり、還元特性値Rsが同じであれば、鉄系原料の組成が異なっていても同様の解析結果がえられる。
解析の結果を図7及び図8に示す。図7及び図8によれば、カーボン反応開始温度が低い装入物ほど、最適使用領域が低使用領域に存在し、かつその還元材比低減効果は大きい傾向を示した。また、図7及び図8の結果に基づいて関数Fを算出したところ、関数Fは上述した式(1)〜(3)で示されることがわかった。このように、本実施形態の関数Fは、実際の高炉操業において再現された関数なので、極めて再現性が高く、実用に耐えることができるといえる。したがって、高炉操業前に使用原料の△Tc、Rsを測定し、これらの値に基づいて関数Fを規定することで、△RARが最大となる混合率Xcを把握することができる。
(実施例2)
次に、鉄系原料の焼結鉱比または高炉のスラグ量と還元材比RARとの間に対応関係があることを確認するために、実施例2を行った。まず、鉄系原料の焼結鉱比と鉄系原料の還元特性値Rsとの間に対応関係があることを確認した。具体的には、還元特性値Rsが70%の焼結鉱、還元特性値Rsが50%の焼成ペレット及び塊鉱石を用意した。そして、これらを混合することで鉄系原料を作成し、鉄系原料の還元特性値Rsを測定した。鉄系原料の還元特性値Rsは、焼結鉱、焼成ペレット、及び塊鉱石の還元特性値Rsを加重平均することで求めた。なお、焼結鉱、焼成ペレット、及び塊鉱石の還元特性値Rsは、上述した方法により測定した。そして、鉄系原料の焼結鉱比を変更して同様の処理を繰り返した。その結果を図9に示す。図9に示すように、鉄系原料の焼結鉱比と鉄系原料の還元特性値Rsとがほぼ線形の関係にあることを確認した。
次に、本発明者らは、4800m3の高炉を1年間操業させた。そして、定期補修前後、及び、天候影響などの非定常状態での操業を除き、出銑比1.9〜2.2(t/m3・d)の安定操業期間の操業データを解析した。
ここで、炭素高反応性装入物は、△Tc=120℃となる炭素高反応性装入物、すなわち上述した高反応性コークスBを使用した。また、操業期間中は、鉄系原料の焼結鉱比を変動させることで、鉄系原料の還元特性値Rsを変動させた。また、炭素高反応性装入物の混合率Xcは、上述した関数F(△Tc,Rs,Xc)で規定される△RARが最大となる値とした。そして、各Rs、△Tc及びXcにおいて出銑比が1.9〜2.2(t/m3・d)となるように還元材比を調整した。また、炭素高反応性装入物を挿入せずに同様の操業を行った。
例えば、図9に示すように、焼結鉱比が77%となる場合、還元特性値Rsは65.4となった。この場合、最も還元材比を低減しうる(すなわち、△RARが最大となる)混合率Xcは92.4kg/tpと予測された。そこで、92kg/tpで炭素高反応性装入物を使用した結果、RARは455kg/tpまで低減することができた。
同様に、焼結鉱比が94%の場合、還元特性値Rsは68.8となった。この場合、最も還元材比を低減しうる混合率Xcは112.8/tpと予測された。そこで、112kg/tpで炭素高反応性装入物を使用した結果、RARは454kg/tpまで低減することができた。
解析結果を図10に示す。図10に示すように、焼結鉱比が高いほど炭素高反応性装入物使用による還元材比RARの低減効果が大きく、焼結鉱比が77〜95%の範囲で、RARが460kg/tp未満となった。一方、焼結鉱比が77%未満の場合は、鉄系原料の還元特性値Rsが低下するため、RARは増加した。また、焼結鉱比が95%より大きい場合、スラグ量増大による所要溶解熱の増加と、炉下部通気悪化とが顕在化した。この結果、ベース(炭素高反応性装入物なし)の還元材比が大きく悪化し、炭素高反応性装入物を使用した場合であっても460kg/p未満の低RAR操業は困難であった。このため、鉄系原料を変更可能な場合、焼結鉱比は77〜95%にすることが好ましいことがわかった。また、焼結鉱比が80〜90%となる場合、還元材比は最小値(450kg/tp)となった。したがって、焼結鉱比の好ましい範囲は80〜90%であることがわかった。
また、本発明者は、鉄系原料の焼結鉱比と高炉のスラグ量(SV)との対応関係を測定した。高炉のスラグ量は、スラグ量は、スラグそのものの測定は不正確であるので、炉頂からの装入物および羽口からの吹き込み固体燃料の使用量と灰分および脈石成分の測定値から算出した。その結果を図11に示す。図11に示すように、実用上、焼結鉱比と高炉のスラグ量とはほぼ線形の関係にある。したがって、高炉のスラグ量がわかれば、鉄系原料の焼結鉱比が一意に特定される。そして、上述したように、鉄系原料の焼結鉱比と鉄系原料の還元特性値Rsとの間にも対応関係がある。したがって、高炉のスラグ量がわかれば、鉄系原料の還元特性値Rsが一意に特定される。すなわち、△Tc、Xcが一定の下では、還元材比RARと高炉のスラグ量との間にも相関があると言える。すなわち、図10の結果を、最適混合率Xcにおけるスラグ量とRARの関係として読み直すことができる。
例えば、図11に示すように、スラグ量が290kg/tpとなる場合、焼結鉱比は77%となった。そして、図9に示すように、焼結鉱比が77%となる場合、還元特性値Rsは65.4となった。この場合、最も還元材比を低減しうる混合率Xcは92.4kg/tpと予測された。そこで、92kg/tpで炭素高反応性装入物を使用した結果、RARは455kg/tpまで低減することができた。同様に、図11に示すように、スラグ量が318kg/tpとなる場合、焼結鉱比は94%となった。そして、図9に示すように、焼結鉱比が94%となる場合、還元特性値Rsは68.8となった。この場合、最も還元材比を低減しうる混合率Xcは112.8/tpと予測されたので、112kg/tpで炭素高反応性装入物を使用した結果、RARは454kg/tpまで低減することができた。このため、鉄系原料を変更可能な場合、高炉のスラグ量は焼結鉱比77〜95%に対応する290kg/tp〜320kg/tpとすることが好ましいことがわかった。
以上により、本実施形態によれば、コークスのガス化開始温度と、コークスよりも反応性の高い炭材を含む炭素高反応性装入物のガス化開始温度との差分△Tcを測定する。そして、鉄系原料の還元特性値Rsを測定する。そして、差分△Tc、還元特性値Rs、及び炭素高反応性装入物の混合率Xcと、高炉内の還元材比低減量△RARとの関数Fを規定する。そして、還元材比低減量△RARが最大となるように、混合率Xcを決定する。これにより、炭素高反応性装入物の好適な装入量を事前に決定することができる。
ここで、ガス化開始温度は、昇温速度が5〜20℃/minとなり、および/又はガス組成CO2/(CO2+CO)が0.2〜0.3となる条件下で測定されるので、ガス化開始温度をより実機に近い条件で測定することができる。
さらに、還元特性値Rsを、高温荷重軟化試験装置で測定した1100〜1200℃における昇温還元率とするので、より実機に近い条件で還元特性値Rsを測定することができる。
さらに、関数Fは、上述した以下の式(1)で示されるので、炭素高反応性装入物の好適な装入量をより正確に決定することができる。
さらに、本実施形態によれば、炭素高反応性装入物の混合率を上述した炭素高反応性装入物の装入量決定方法により決定された混合率Xc以下の混合率とするので、還元材比を効率的に低減することができる。さらに、還元材比の低減に必要な炭素高反応性装入物の装入量も低減することができる、したがって、高炉操業コストを低減することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。