JP6344843B2 - ステンレス鋼部材の検査方法、及びステンレス鋼製品の製造方法 - Google Patents

ステンレス鋼部材の検査方法、及びステンレス鋼製品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6344843B2
JP6344843B2 JP2014008890A JP2014008890A JP6344843B2 JP 6344843 B2 JP6344843 B2 JP 6344843B2 JP 2014008890 A JP2014008890 A JP 2014008890A JP 2014008890 A JP2014008890 A JP 2014008890A JP 6344843 B2 JP6344843 B2 JP 6344843B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
stainless steel
steel member
sheet
passive film
complex
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014008890A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015137899A (ja
Inventor
雄一 井合
雄一 井合
麻里 福岡
麻里 福岡
健一 赤嶺
健一 赤嶺
典宏 高遠
典宏 高遠
憲明 福島
憲明 福島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
IHI Corp
IHI Infrastructure Systems Co Ltd
Original Assignee
IHI Corp
IHI Infrastructure Systems Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by IHI Corp, IHI Infrastructure Systems Co Ltd filed Critical IHI Corp
Priority to JP2014008890A priority Critical patent/JP6344843B2/ja
Publication of JP2015137899A publication Critical patent/JP2015137899A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6344843B2 publication Critical patent/JP6344843B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Materials By The Use Of Chemical Reactions (AREA)
  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Non-Biological Materials By The Use Of Chemical Means (AREA)

Description

本発明は、ステンレス鋼部材の検査方法、及びステンレス鋼製品の製造方法に関する。
ステンレス鋼製品は、不動態皮膜を備えるため、耐食性に優れる。ステンレス鋼製品の製造では、ステンレス鋼基材の表面を不動態化して、不動態皮膜を備えるステンレス鋼部材を作製し、さらにステンレス鋼部材を加工する。加工においては、不動態皮膜の一部がステンレス鋼部材から除去されてしまう。したがって、不動態皮膜が除去された部分を特定して、その部分に不動態皮膜を形成する工程が必要となる。しかし、不動態皮膜の厚さは1〜3nm程度であるため、不動態皮膜自体を肉眼で見ることはできない。
下記特許文献1には、1,10−フェナントロリン、パソフェナントロリン、又は2,2’−ビピリジンを含む液状の検知剤を用いて、ステンレス鋼部材の表面において不動態皮膜がある部分と不動態皮膜がない部分とを目視で識別する方法が記載されている。ステンレス鋼部材の表面において不動態皮膜がない部分には、鉄がイオン化し易い状態で存在する。ステンレス鋼部材の表面を検知剤で被覆すると、不動態皮膜がない部分の鉄が検知剤中でイオン化する。この鉄イオンと検知剤中の上記成分とが反応して、赤橙色のキレート錯体が検知剤中に生成する。したがって、不動態皮膜がない部分は赤橙色に変色し、不動態皮膜がある部分と識別される。
特開平4−215065号公報
上記特許文献1に記載の方法で用いられる検知剤は液体であるため、キレート錯体が検知剤中で拡散し易く、検知剤がステンレス鋼部材の表面で流動し易い。したがって、キレート錯体が、不動態皮膜のない部分から不動態皮膜がある部分へ移動して、不動態皮膜がある部分も赤橙色に見えてしまうことがある。つまり、検知剤が液体であるため、不動態皮膜がない部分の色がにじみ易く、変色部の位置と不動態皮膜がない部分の位置とが一致しないことがある。また、ステンレス鋼部材の表面には金属光沢があるため、不動態皮膜がある部分と不動態皮膜がない部分との僅かな色差を目視で確認することが困難なことがある。特に、不動態皮膜がない部分の面積が小さいほど、又はキレート錯体の量が少ないほど、色差を目視で確認することは困難になる。
以上の理由から、上記特許文献1に記載の方法では、ステンレス鋼部材の表面において不動態皮膜がない部分の位置を目視で正確に特定することは容易ではなかった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ステンレス鋼部材の表面において不動態皮膜がない部分の位置を目視で特定することができるステンレス鋼部材の検査方法、及びこれを用いたステンレス鋼製品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係るステンレス鋼部材の検査方法は、配位子を含有する試液を吸液性のシートに染み込ませる工程と、ステンレス鋼部材の表面を吸液性のシートで覆う工程と、を備え、ステンレス鋼部材は、ステンレス鋼基材と、ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部を覆う不動態皮膜と、を含み、ステンレス鋼部材の表面においてステンレス鋼基材が露出している露出部分がある場合、配位子と露出部分に存在する鉄とから錯体が形成され、錯体が可視光を吸収する。「露出部分」とは、ステンレス鋼部材の表面において不動態皮膜がない部分と言い換えられる。「錯体が可視光を吸収する」とは、錯体に吸収される光の少なくとも一部の波長が可視光領域内にあることを意味する。
本発明の一側面に係るステンレス鋼部材の検査方法では、シートと露出部分とが重なる領域において、鉄が試液中でイオン化し、配位子と反応して錯体が生成する。生成した錯体は、シートにおいて露出部分と重なる領域で可視光を吸収し、露出部分と重なる領域が変色する。一方、ステンレス鋼部材の表面において不動態皮膜がある部分は化学的に不活性である。したがって、不動態皮膜がある部分では鉄イオンも錯体も生成し難く、シートにおいて不動態皮膜と重なる領域は変色し難い。これらのメカニズムによって、露出部分と重なる領域と露出部分と重ならない領域との間に色差が生じる。つまり、不動態皮膜がない部分と重なる領域と不動態皮膜と重なる領域との間に色差が生じる。この色差に基づいて、露出部分(不動態皮膜がない部分)の位置を目視で特定することができる。
本発明の一側面に係るステンレス鋼部材の検査方法では、試液がシートに染み込んでいるため、試液中での鉄又は錯体の拡散がシートによって抑制され、試液の流動がシートによって抑制される。したがって、鉄又は錯体が露出部分と重なる領域から不動態皮膜と重なる領域へ移動することが抑制され、不動態皮膜と重なる領域の変色が抑制される。つまり、シートにおいて露出部分と重なる領域の色がにじみ難く、露出部分と重なる領域の位置と変色部の位置とが一致し易い。また、ステンレス鋼部材の表面の金属光沢がシートによって遮られるため、露出部分と重なる領域と不動態皮膜と重なる領域との僅かな色差を目視で確認し易い。不動態皮膜がない部分の面積が小さく、錯体の量が少ない場合であっても、色差を目視で確認することできる。
以上の理由から、本発明の一側面に係るステンレス鋼部材の検査方法によれば、吸液性のシートを用いずにステンレス鋼部材の表面を試液で直接覆う場合に比べて、不動態皮膜がない部分の位置を目視で正確に特定することができる。
上記検査方法において、配位子を含有する試液を吸液性のシートに染み込ませる上記工程の後、ステンレス鋼部材の表面を吸液性のシートで覆う上記工程を行ってよい。上記検査方法において、ステンレス鋼部材の表面を吸液性のシートで覆う上記工程の後、配位子を含有する試液を吸液性のシートに染み込ませる上記工程を行ってもよい。
本発明の一側面に係るステンレス鋼製品の製造方法は、ステンレス鋼基材と、ステンレス鋼基材の表面を覆う不動態皮膜と、を含むステンレス鋼部材を作製する第一不動態化工程と、上記ステンレス鋼部材の検査方法を実施することによって、ステンレス鋼部材の表面において露出部分があるか否かを検査する検査工程と、露出部分がある場合、検査工程後に不動態皮膜を露出部分の表面に形成する第二不動態化工程と、を備え、検査工程は、配位子を含有する試液を吸液性のシートに染み込ませる工程と、ステンレス鋼部材の表面を吸液性のシートで覆う工程と、を含み、露出部分がある場合、配位子と露出部分に存在する鉄とから錯体が形成され、錯体が可視光を吸収する。
本発明の一側面に係るステンレス鋼製品の製造方法によれば、ステンレス鋼製品の製造に用いるステンレス鋼部材の表面において不動態皮膜が除去された部分を目視で特定することができる。
本発明によれば、ステンレス鋼部材の表面において不動態皮膜がない部分の位置を目視で特定することができるステンレス鋼部材の検査方法、及びこれを用いたステンレス鋼製品の製造方法が提供される。
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
本発明の一実施形態に係るステンレス鋼製品の製造方法では、前処理工程、第一不動態化工程、加工工程、検査工程、及び第二不動態化工程をこの順序で行う。検査工程では、本発明の一実施形態に係るステンレス鋼部材の検査方法を実施する。
(前処理工程)
ステンレス鋼基材の表面は空気中の酸素と自然に反応するため、耐食性が低い酸化皮膜がステンレス鋼基材の表面に形成されている。前処理工程では、酸化皮膜をステンレス鋼基材の表面から除去する。酸化皮膜を除去する方法は、例えば、酸洗又は機械研磨であってよい。酸化皮膜の除去と共にステンレス鋼基材の表面の脱脂洗浄を行ってもよい。
ステンレス鋼基材は、50質量%以上の鉄と10.5質量%以上のクロムとを含有する合金鋼である。ステンレス鋼基材は、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、又は析出硬化型ステンレス鋼であってよい。これらのステンレス鋼は、例えば、Fe−Cr系合金、Fe−Cr−Ni系合金、Fe−Cr−Ni−Mo系合金、Fe−Cr−Ni−Mo―Cu系合金、又はFe−Cr−Ni−Mn系合金からなっていてよい。これらの合金におけるクロム(Cr)の含有率は、例えば12質量%以上であってもよい。
(第一不動態化工程)
第一不動態化工程では、酸性の処理液をステンレス鋼基材の表面に接触させて、ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部を不動態化する。不動態化により、ステンレス鋼基材と、ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部を覆う不動態皮膜と、を備えるステンレス鋼部材を作製する。ステンレス鋼基材の表面全体を不動態化して、ステンレス鋼基材の表面全体を不動態皮膜で覆ってもよい。
酸性の処理液は、例えば、酸化剤を含有する水溶液であってよい。酸化剤は、例えば、過酸化水素、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、又はフッ酸であってよい。処理液は複数種の酸化剤を含有してもよい。
処理液は、水溶性のモリブデン化合物を含有していてもよい。水溶性のモリブデン化合物は、例えば、リンモリブデン酸n水和物(nは自然数である。)、リンモリブデン酸ナトリウムn水和物、リンモリブデン酸アンモニウム三水和物、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸ナトリウム、七モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸リチウム、又はモリブデン酸二アンモニウムであってよい。処理液は複数種のモリブデン化合物を含有してもよい。
処理液は、増粘剤を含有していてもよい。増粘剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン、又はプロピレングリコールであってよい。処理液は複数種の増粘剤を含有してもよい。
処理液の温度は、特に限定されないが、例えば常温(20〜30℃)であってよい。
処理液をステンレス鋼基材の表面に接触させる方法は、特に限定されない。処理液をステンレス鋼基材の表面に塗布してもよい。処理液をステンレス鋼基材の表面に噴霧してもよい。ステンレス鋼基材を処理液に浸漬してもよい。
不動態化後、ステンレス鋼部材の表面の水洗又は乾燥を行ってもよい。処理液が付着したステンレス鋼基材の表面を乾燥しながら、ステンレス鋼基材の表面を徐々に不動態化した後、ステンレス鋼部材を水洗してもよい。
不動態皮膜はクロムの酸化物を含有する。不動態皮膜は更にクロムの水酸化物を含有していてもよい。不動態皮膜は、例えば、ステンレス鋼基材を覆う第一層と、第一層を覆う第二層と、を備えてもよい。第一層は、Cr・wHOとFe・xHOとを含んでよい。w及びxは自然数である。第二層は、CrO・OH・yHOとFeO・OH・zHOとを含んでよい。y及びzは自然数である。不動態皮膜は更にモリブデン又はニッケルを含有してもよい。不動態皮膜の厚さは、例えば、1〜3nmであってよい。
(加工工程)
加工工程では、ステンレス鋼部材を加工する。加工の種類は特に限定さない。加工とは、例えば、溶接、切削、成形又は組立等であってよい。加工に伴って、不動態皮膜の一部がステンレス鋼部材から除去され、ステンレス鋼基材がステンレス鋼部材の表面に露出することがある。不動態皮膜の一部がステンレス鋼部材から除去される原因は、加工に限定されない。例えば、ステンレス鋼部材の保管時又は搬送時、ステンレス鋼部材が他の物体と衝突して、不動態皮膜の一部がステンレス鋼部材から除去されて、ステンレス鋼基材がステンレス鋼部材の表面に露出することもある。
(検査工程)
検査工程では、ステンレス鋼部材の表面においてステンレス鋼基材が露出している露出部分があるか否かを検査する。
検査工程は、配位子を含有する試液を吸液性のシートに染み込ませる工程と、ステンレス鋼部材の表面を吸液性のシートで覆う工程と、を備える。これらの工程を行うことにより、ステンレス鋼部材の表面を覆う吸液性のシートに試液が含まれる。検査工程は、可視光の存在下で行う。
不動態皮膜がない露出部分には、ステンレス鋼基材を構成する鉄がイオン化し易い状態で存在する。したがって、露出部分がある場合、シートと露出部分とが重なる領域において、試液と露出部分とが接触し、露出部分にある鉄が試液中でイオン化する。イオン化した鉄(例えば、Fe2+又はFe3+)が配位子と反応して、鉄を中心金属とする錯体が生成する。錯体は、シートにおいて露出部分と重なる領域で可視光を吸収し、露出部分と重なる領域が変色する。シートと露出部分との間で生成した錯体が、試液を介してシート内へ移動してもよい。シートと露出部分との間で生成した鉄イオンが、試液を介してシート内へ移動した後、配位子と反応して錯体が生成してもよい。
ステンレス鋼部材の表面において不動態皮膜がある部分は、化学的に不活性である。したがって、不動態皮膜がある部分では鉄イオンも錯体も生成し難く、シートにおいて不動態皮膜と重なる領域は変色し難い。
以上のメカニズムによって、シートにおいて、不動態皮膜がない部分と重なる領域と不動態皮膜と重なる領域との間に色差が生じる。この色差に基づいて、不動態皮膜がない部分(露出部分)の位置を目視で特定することができる。シートをステンレス鋼部材の表面から剥がして、ステンレス鋼部材の表面に密着していた側のシート表面における色差を目視してもよい。ステンレス鋼部材の表面を覆った状態にあるシートにおける色差を目視してもよい。
検査工程では、試液をシートに染み込ませた後、ステンレス鋼部材の表面をシートで覆ってよい。または、ステンレス鋼部材の表面をシートで覆った後、試液をシートに染み込ませてもよい。ステンレス鋼部材の表面を試液で覆った後、ステンレス鋼部材の表面をシートで覆う場合、シートがステンレス鋼部材の表面に接触することに伴い、露出部分において生成した鉄イオン、錯体又はこれらを含む試液が不動態皮膜の表面へ移動することがある。その結果、シートにおいて不動態皮膜と重なる領域も変色することがある。つまり、シートにおける変色部の位置が露出部分と重なる領域からずれることがある。
ステンレス鋼部材の表面の一部をシートで覆ってもよい。ステンレス鋼部材の表面全体をシートで覆ってもよい。ステンレス鋼部材の表面を複数のシートで覆ってもよい。シートをステンレス鋼部材の表面に固定してもよい。ステンレス鋼部材の表面におけるシートの位置を固定した場合、露出部分の位置を正確に特定し易い。ステンレス鋼部材の表面をシートで覆う前に、ステンレス鋼部材の表面を洗浄してもよい。洗浄により、加工工程で生じた金属屑等がステンレス鋼部材の表面から除去され、検査の精度が向上する。
試液が染みこんだシートでステンレス鋼部材の表面を覆う時間は、特に限定されないが、例えば1〜5分であってよい。シートをステンレス鋼部材の表面から剥がした後、ステンレス鋼部材の表面を洗浄してもよい。
吸液性のシートは、例えば、繊維の集合体であってよい。シートの具体例は、濾紙又は布(織物若しくは不織布)である。シートにおける色差を目視するために、シートの色は錯体に吸収される光の補色以外の色であってよい。シートの色は白であってもよい。シートが白い場合、シートにおいて露出部分と重なる領域は、錯体に吸収される光の補色になり、色差が際立つ。シートの厚さは、特に限定されないが、例えば0.1〜0.2mmであってよい。シートが薄いほど、色差を目視で確認し易く、シート中の錯体を分析機器で定量し易い。シートにおける試液の含有量は、特に限定されない。シート中の試液がステンレス鋼部材の表面と接触する程度にシートが湿っていればよい。
錯体は、一つ以上の鉄(例えば、Fe2+又はFe3+)と、鉄に結合する一つ以上の配位子、とを備える分子であってよい。錯体は錯イオンであってよい。錯体はキレート錯体であってよい。配位子は、可視光を吸収する鉄の錯体を構成するものである限り、限定されない。錯体を含む試液の色は、配位子の種類又は錯体の構造に依るものであり、可視光領域のいずれかの色(例えば、赤、橙、黄、緑、青、藍、又は紫)であればよい。配位子は、単座配位子、二座配位子、又は三座以上の多座配位子であってよい。配位子は、例えば、アクア、ヒドロキソ、オキソ、チオラト、スルフィド、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、ヒドリド、シアナト、アジド、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、ニトリト、カルボキシラト、オキサラト、アクアク(アセチルアセトナート)、オキソアニオン(例えば、NO 、CO 2−、ClO 、SO 2−、PO 3−)、アンミン、ジアミン(例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン)、トリアミン(例えば、ジエチレントリアミン、1,4,7−トリアザシクロノナン)、テトラミン(例えば、トリエチレンテトラミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン、1,4,8,11−テトラアザ−シクロテトラデカン)、ピリジン、ジイミン(例えば、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、1,8−ジアミノナフタレン)、トリイミン、ポルフィリン、サレン(N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン)、単座ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン)、二座ホスフィン(例えば、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)、三座ホスフィン、四座ホスフィン、ピロール、アミノ酸、糖、核酸、エチレンジアミンテトラ酢酸、クラウンエーテル、シッフ塩基、カルボニル、アルケン、アルキン、シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、アルキル、アリール、ビニル、又はアルキニルであってよい。
試液は、配位子の水溶液又は非水溶液であってよい。試液は、ステンレス鋼基材及び不動態皮膜を腐食し難いものであってよい。試液における配位子の含有量は特に限定されない。配位子の含有量は飽和量であってよい。配位子の含有量が多いほど、試液の感度が高く、色差を目視で確認し易い。
本実施形態によれば、検査のためにステンレス鋼部材を破壊する必要がない。本実施形態によれば、実験室に設置された分析機器を用いなくとも、製造の現場で露出部分の位置を目視で特定することができる。ただし、分析機器を用いた検査方法は本発明の技術的範囲から排除されるものではない。
検査工程において、試液が染み込んだシートをステンレス鋼部材の表面から剥がした後、シート中の錯体を分析機器で分析してもよい。分析機器を用いることにより、目視では認識できない微量の錯体を検出し、不動態皮膜の状態(例えば、耐食性)を定量的に把握することができる。
例えば、拡散反射の原理に基づく分光光度測定機(固体試料用の分光光度測定機)を用いて、シートの各部分における吸光スペクトルを測定する。同様に、未使用のシートの吸光スペクトルを測定する。これらの測定結果に基づいて、シートの各部分における錯体を定量する。シートにおいて多量の錯体が存在する部分は、当該部分で覆われていたステンレス鋼部材の表面に多量の鉄が存在していたことを示すものである。ステンレス鋼部材の表面において多量の鉄が存在する部分では、不動態皮膜の耐食性が低い。したがって、分析機器を用いた分析により、不動態皮膜において耐食性の低い位置を特定することができる。
本実施形態では、試液がシートに染み込んでいるため、試液中での鉄イオン又は錯体の拡散がシートによって抑制され、試液の流動もシートによって抑制される。つまり、シートにおける錯体の位置が変動し難く、シートにおける錯体の位置とステンレス鋼部材の表面における鉄の位置との対応関係が維持される。したがって、シートをステンレス鋼部材から剥がした後であっても、シートの特定の位置における錯体の量に基づいて、ステンレス鋼部材の特定の位置における鉄の量を推測することができる。
仮にシートを用いることなくステンレス鋼部材の表面を試液で直接覆った場合、鉄イオン又は錯体が試液中で拡散し易く、試液がステンレス鋼部材の表面で流動し易い。その結果、ステンレス鋼部材の表面において鉄が存在していた位置と錯体が存在する位置とが一致し難い。また、試液をステンレス鋼部材の表面から回収する際に、錯体が存在していた位置に関する情報が失われる。したがって、仮にシートを用いない場合、ステンレス鋼部材の特定の位置における鉄の量を、錯体の定量的な分析に基づいて推測することが困難である。
シートにおける変色部とそれ以外の部分との色差を分光色差計で測定してもよい。この測定により、変色部における錯体を定量し、変色部で覆われていたステンレス鋼部材の表面における鉄の量を推測することができる。携帯型の分光色差計を用いて製造の現場で色差を測定してもよい。
(第二不動態化工程)
検査工程において露出部分が見つかり、その位置が特定された場合、第二不動態化工程を行う。第二不動態化工程では、第一不動態化工程と同様の方法で、処理液を露出部分に接触させて、露出部分を不動態化する。つまり、不動態皮膜を露出部分の表面に形成する。検査工程において露出部分が見つからなかった場合、第二不動態化工程を行わなくてもよい。不動態皮膜において耐食性の低い部分を再び不動態化してもよい。
以上の工程を経て、ステンレス鋼製品が完成する。
本実施形態に係るステンレス鋼部材の検査方法は、例えば、水門(例えば、戸当たり部若しくは扉)、原子力設備(例えば、配管)、LNGプラント(例えば、配管)、又はターボ圧縮機(例えば、インペラ)に用いられるステンレス鋼部材の検査に適用される。本実施形態に係るステンレス鋼製品の製造方法は、例えば、水門、原子力設備、LNGプラント、若しくはターボ圧縮機、又はこれらを構成する部品等のステンレス鋼製品の製造に適用される。
以下では実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
0.1gの1,10−フェナントロリン一水和物をイオン交換水に溶解させて、無色の試液を調製した。試液中の1,10−フェナントロリン一水和物の含有量は、0.1質量%(飽和溶解量)に調整した。1,10−フェナントロリンは、Fe2+と反応することにより、キレート錯体を形成する配位子である。キレート錯体は[Fe(phen)2+(phenは1,10−フェナントロリンを意味する。)と表される。[Fe(phen)2+の極大吸収波長は510nmである。[Fe(phen)2+は、紫外・可視光領域の光を吸収して、赤色を示す。
ステンレス鋼基材の表面を酸性の処理液で不動態化して、表面全体に不動態皮膜を備えるステンレス鋼部材を作製した。ステンレス鋼部材の表面の一部分をグラインダーで研磨して、不動態皮膜を除去した。2枚の白い濾紙に試液を染み込ませた。グラインダーで研磨された部分を一方の濾紙で覆った。グラインダーで研磨されていない部分を他方の濾紙で覆った。2〜3分経過した後、各濾紙の色を目視で確認した。グラインダーで研磨された部分を覆った濾紙は赤色になった。グラインダーで研磨されていない部分を覆った濾紙は変色しなかった。

Claims (3)

  1. ステンレス鋼基材と、前記ステンレス鋼基材の表面を覆う不動態皮膜と、を含むステンレス鋼部材を作製する第一不動態化工程と、
    配位子を含有する試液を吸液性のシートに染み込ませる工程と、
    ステンレス鋼部材の表面を吸液性のシートで覆う工程と、を備え、
    前記ステンレス鋼部材は、ステンレス鋼基材と、前記ステンレス鋼基材の表面の少なくとも一部を覆う不動態皮膜と、を含み、
    前記ステンレス鋼部材の表面において前記ステンレス鋼基材が露出している露出部分がある場合、前記配位子と前記露出部分に存在する鉄とから錯体が形成され、前記錯体が可視光を吸収するステンレス鋼部材の検査方法を実施することによって、
    前記ステンレス鋼部材の表面において前記露出部分があるか否かを検査する検査工程と、
    前記露出部分がある場合、前記検査工程後に前記不動態皮膜を前記露出部分の表面に形成する第二不動態化工程と、
    を備える、ステンレス鋼製品の製造方法。
  2. 配位子を含有する試液を吸液性のシートに染み込ませる前記工程の後、ステンレス鋼部材の表面を吸液性のシートで覆う前記工程を行う、
    請求項1に記載のステンレス鋼製品の製造方法
  3. ステンレス鋼部材の表面を吸液性のシートで覆う前記工程の後、配位子を含有する試液を吸液性のシートに染み込ませる前記工程を行う、
    請求項1に記載のステンレス鋼製品の製造方法
JP2014008890A 2014-01-21 2014-01-21 ステンレス鋼部材の検査方法、及びステンレス鋼製品の製造方法 Active JP6344843B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014008890A JP6344843B2 (ja) 2014-01-21 2014-01-21 ステンレス鋼部材の検査方法、及びステンレス鋼製品の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014008890A JP6344843B2 (ja) 2014-01-21 2014-01-21 ステンレス鋼部材の検査方法、及びステンレス鋼製品の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015137899A JP2015137899A (ja) 2015-07-30
JP6344843B2 true JP6344843B2 (ja) 2018-06-20

Family

ID=53768996

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014008890A Active JP6344843B2 (ja) 2014-01-21 2014-01-21 ステンレス鋼部材の検査方法、及びステンレス鋼製品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6344843B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6345433B2 (ja) * 2014-02-07 2018-06-20 日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社 金属材の皮膜形成状態評価液及びそれを用いた皮膜形成状態評価方法

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3895940A (en) * 1969-07-11 1975-07-22 Int Nickel Co Corrosion resistant high chromium ferritic stainless steel
JPS60105961A (ja) * 1983-11-14 1985-06-11 Kawasaki Steel Corp 鋼材中のりん偏析検出法
JPH061266B2 (ja) * 1988-07-08 1994-01-05 トヨタ車体株式会社 鉄鋼表面性状検査用組成物
JPH0381667A (ja) * 1989-08-24 1991-04-08 Solar:Kk 表面処理鋼板の判定液及び判定器具
JPH0421799A (ja) * 1990-05-14 1992-01-24 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 貫通欠陥検出液
JP2867076B2 (ja) * 1990-12-11 1999-03-08 西山ステンレスケミカル株式会社 不動態検知方法及びメッキ検知方法
US6093303A (en) * 1998-08-12 2000-07-25 Swagelok Company Low temperature case hardening processes
JP2000345316A (ja) * 1999-06-01 2000-12-12 Nisshin Steel Co Ltd ステンレス鋼の表面改質方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015137899A (ja) 2015-07-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Yuan et al. Surface characterization and corrosion behavior of 70/30 Cu–Ni alloy in pristine and sulfide-containing simulated seawater
Eliyan et al. Electrochemical evaluation of the corrosion behaviour of API-X100 pipeline steel in aerated bicarbonate solutions
Lanigan et al. Reflectance FTIR spectroscopic analysis of metal complexation to EDTA and EDDS
Liu et al. A turn-on and reversible fluorescence sensor for Al 3+ ion
Gill et al. Comparison of electrochemical nitric oxide detection methods with chemiluminescence for measuring nitrite concentration in food samples
Mercier et al. The role of chelating agents on the corrosion mechanisms of aluminium in alkaline aqueous solutions
CN101825574B (zh) 一种检测奥氏体不锈钢表面铁素体污染的溶液及方法
JP6344843B2 (ja) ステンレス鋼部材の検査方法、及びステンレス鋼製品の製造方法
TW493013B (en) Method for developing an enhanced oxide coating on a component formed from stainless steel or nickel alloy steel
Nabizadeh et al. The mechanism of thermal oxide film formation on low Cr martensitic stainless steel and its behavior in fluoride-based pickling solution in conversion treatment
Cornu et al. Behaviour of tetramine inhibitors during pickling of hot rolled steels
Martinelli‐Orlando et al. Second‐harmonic generation technique for in situ study of passive film formation on carbon steel surfaces in aqueous solutions
Naqvi et al. The role of chelants in controlling C u (II)‐induced radical chemistry in oxidative hair colouring products
Bai et al. Electrochemical and spectroscopic characterization of oxide films formed on Alloy 182 in simulated boiling water reactor environment: Effect of dissolved hydrogen
Otani et al. Influence of metal cations on inhibitor performance of gluconates in the corrosion of mild steel in fresh water
Buyuksagis et al. Corrosion inhibition of st37 steel in geothermal fluid by Quercus robur and pomegranate peels extracts
Rezić et al. Characterization of Ag and Au nanolayers on Cu alloys by TLC, SEM‐EDS, and ICP‐OES
Kim et al. Soft X-ray study on electronic structure of passive oxide layer of carbon steel and low alloy steel in flow-accelerated corrosion environments of pressurized water reactors
CN110044833A (zh) 一种紫外可视检测铜离子的试纸制备及其使用方法
Lee et al. Influence of chloride and bromide anions on localized corrosion of 15% Cr ferritic stainless steel
Yuan et al. Nickel release rate of several nickel-containing stainless steels for jewelries
Olejniczak et al. 1, 2, 4‐Triazine‐Based Chromogenic Reagents for the Detection of Microtraces of Various Metals Left on Human Skin
TWI537436B (zh) 鐵鋅鍍層鑑別方法
EP2492667B1 (en) Method for detecting tin
JPH04215065A (ja) 不動態検知方法及びメッキ検知方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160906

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20160907

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170426

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170509

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170703

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20170704

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171017

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171218

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20171219

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180424

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180521

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6344843

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313115

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250