以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
≪第1実施形態≫
<冷凍装置システム>
まず、第1実施形態に係る冷凍装置システムSについて、図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係る冷凍装置システムSの構成模式図である。
冷蔵庫、冷凍庫、冷蔵ケース、冷凍ケース等の冷凍装置システムSは、コンデンシングユニット11と、冷蔵庫12の内部に配置される冷却器13と、コントローラ8と、を備えており、冷蔵庫12の庫内空気(被冷却媒体)を冷却器13(後述する蒸発器5)により冷却することができるようになっている。これにより、冷凍装置システムSは、冷蔵庫12の庫内に収納された収納物品(図示せず)を冷却することができるようになっている。
具体的には、冷凍装置システムSは、圧縮機1と、凝縮器2と、冷媒液用電磁弁3と、膨張弁4と、蒸発器5と、を備えており、これらの間で冷媒が循環するように冷媒配管で環状に接続された冷凍サイクルを備えている。また、図示は省略するが、冷凍装置システムSは、外気をコンデンシングユニット11に取り込んで凝縮器2を流れる冷媒と熱交換させるためのコンデンシングユニットファン(図示せず)と、冷蔵庫12の庫内空気(被冷却媒体)を冷却器13に取り込んで蒸発器5を流れる冷媒と熱交換させるとともに、蒸発器5で冷却された庫内空気(被冷却媒体)を冷蔵庫12に循環させるための冷却器ファン(図示せず)と、を備えている。
なお、圧縮機1、凝縮器2およびコンデンシングユニットファン(図示せず)は、コンデンシングユニット11に配置されている。また、冷媒液用電磁弁3、膨張弁4、蒸発器5および冷却器ファン(図示せず)は、冷蔵庫12の冷却器13に配置されている。
冷凍サイクルを循環する冷媒の流れに沿って、冷凍装置システムSの各構成を説明する。
圧縮機1は、冷却器13(蒸発器5)からの冷媒ガスを圧縮し、高温高圧の冷媒ガスを凝縮器2へ吐出する。なお、圧縮機1は、インバータ(図示せず)を介して、後述するコンデンシングユニット制御装置10により、駆動制御されるようになっている。
凝縮器2は、空気−冷媒熱交換器であり、圧縮機1からの高温高圧の冷媒ガスを空気(外気)と熱交換させることにより、冷媒を冷却して凝縮し、冷媒液とする。凝縮器2からの冷媒液は、冷媒液用電磁弁3を介して、膨張弁4に流入する。
冷媒液用電磁弁3は、冷凍サイクルの運転中、即ち、圧縮機1の運転中は開弁しており、冷媒が通流可能になっている。一方、冷凍サイクルの運転停止中、即ち、圧縮機1の運転停止中は閉弁しており、冷媒が通流することを防止して、いわゆる冷媒寝込みを防止するようになっている。なお、冷媒液用電磁弁3は、後述する冷却器制御装置9により、開閉が制御されるようになっている。
膨張弁4は、凝縮器2からの高圧冷媒を減圧(断熱膨張)して、低温低圧冷媒とする。なお、第1実施形態に係る冷凍装置システムSの膨張弁4として、温度式自動膨張弁を用いることができる。膨張弁4からの低温低圧冷媒は、蒸発器5に流入する。
蒸発器5は、冷媒−熱媒体熱交換器であり、膨張弁4からの低温低圧冷媒を冷蔵庫12の庫内空気(被冷却媒体)と熱交換させることにより、庫内空気(被冷却媒体)を冷却するとともに、冷媒を蒸発させる。蒸発器5からの冷媒は、圧縮機1へと流入する。
このように、圧縮機1を運転して冷媒が冷凍サイクルを循環することにより、冷凍装置システムSは冷蔵庫12の庫内空気(被冷却媒体)を冷却する。
また、冷凍装置システムSは、庫内温度Tを検出する庫内温度センサ6と、吸入圧力Pを検出する吸入圧力センサ7と、冷凍装置システムSの全体を制御するコントローラ8と、冷却器13を制御する冷却器制御装置9と、コンデンシングユニット11を制御するコンデンシングユニット制御装置10と、をさらに備えている。
庫内温度センサ6は、冷蔵庫12の庫内に配置され、冷蔵庫12の庫内温度Tを検出することができるようになっている。庫内温度センサ6で検出された庫内温度Tの検出信号は、通信線を介してコントローラ8に出力され、さらにコントローラ8からコンデンシングユニット制御装置10に出力される。
吸入圧力センサ7は、コンデンシングユニット11に設けられており、圧縮機1の吸入側の冷媒ガスの圧力である吸入圧力Pを検出することができるようになっている。吸入圧力センサ7で検出された吸入圧力Pの検出信号は、通信線を介してコンデンシングユニット制御装置10に出力される。
コントローラ8は、庫内温度センサ6、冷却器制御装置9およびコンデンシングユニット制御装置10と通信線で通信可能に接続されている。
また、コントローラ8の記憶部8aには、庫内温度Tに対するサーモオン設定温度TONおよびサーモオフ設定温度TOFFが予め記憶されている。ここで、サーモオン設定温度TONとは、後述する冷凍装置システムSの通常運転(後述する図3参照)において、冷凍サイクルによる庫内空気(被冷却媒体)の冷却を開始する温度であり、サーモオフ設定温度TOFFとは、後述する冷凍装置システムSの通常運転(図3参照)において、冷凍サイクルによる庫内空気(被冷却媒体)の冷却を停止する温度である。
また、コントローラ8には、スイッチやモニタ等で構成された操作部(設定温度変更部)8bが設けられており、ユーザが操作部8bを操作することにより、記憶部8aに記憶されているサーモオン設定温度TONおよびサーモオフ設定温度TOFFを変更することができるようになっている。具体的には、操作部(設定温度変更部)8bは、冷蔵庫12の庫内温度Tの目標温度TPを設定することができるようになっている。この設定された目標温度TPおよび予め設定された温度変化許容値Taから、サーモオン設定温度TON「TON=TP+Ta」およびサーモオフ設定温度TOFF「TOFF=TP−Ta」を設定し、記憶部8aに記憶する。なお、温度変化許容値Taも操作部8bで変更することができるようになっていてもよい。また、操作部8bは、サーモオン設定温度TONおよびサーモオフ設定温度TOFFを直接設定し、記憶部8aに記憶するものであってもよい。
コントローラ8は、庫内温度センサ6で検出した庫内温度Tと、サーモオン設定温度TONやサーモオフ設定温度TOFFと、を比較し、その結果に応じて運転指令信号を出力するようになっている。即ち、庫内温度Tがサーモオン設定温度TON以上の場合、コントローラ8は、冷却器制御装置9およびコンデンシングユニット制御装置10に、冷凍サイクルの運転の開始を指令する運転開始指令信号を出力する。また、庫内温度Tがサーモオフ設定温度TOFF未満の場合、コントローラ8は、冷却器制御装置9およびコンデンシングユニット制御装置10に、冷凍サイクルの運転の停止を指令する運転停止指令信号を出力する。このように、コントローラ8は、運転指令信号(運転開始指令信号、運転停止指令信号)を出力することにより、コンデンシングユニット11および冷却器13を制御する、換言すれば、冷凍装置システムSの全体を制御することができるようになっている。
冷却器制御装置9は、冷却器13に設けられており、コントローラ8と通信線で通信可能に接続されている。
冷却器制御装置9は、コントローラ8の運転指令信号に基づいて冷却器13を制御する。即ち、冷却器制御装置9は、運転開始指令信号に応じて、冷媒液用電磁弁3を開弁するとともに、冷却器ファン(図示せず)を駆動させる。また、冷却器制御装置9は、運転停止指令信号に応じて、冷媒液用電磁弁3を閉弁するとともに、冷却器ファン(図示せず)を停止させる。
コンデンシングユニット制御装置10は、コンデンシングユニット11に設けられており、吸入圧力センサ7およびコントローラ8と通信線で通信可能に接続されている。
また、コンデンシングユニット制御装置10の記憶部10aには、吸入圧力Pに対する上限設定圧力(開始設定圧力)PH、下限設定圧力PLおよび停止設定圧力PSが予め記憶されている。ここで、上限設定圧力PHとは、冷凍装置システムSにおける圧縮機1の吸入圧力Pに対する仕様範囲の上限圧力であり、下限設定圧力PLとは、冷凍装置システムSにおける圧縮機1の吸入圧力Pに対する仕様範囲の下限圧力である。また、停止設定圧力PSとは、圧縮機1の運転を停止するか否かを判定するための閾値を示す圧力である。なお、これらの設定圧力は、圧縮機1の特性等により決定される。
ここで、各設定温度(サーモオン設定温度TON、サーモオフ設定温度TOFF)と各設定圧力(上限設定圧力(開始設定圧力)PH、下限設定圧力PL、停止設定圧力PS)との関係について、図2を用いて説明する。図2は、各設定温度における飽和圧力および各設定圧力との大小関係を示す図である。
まず、サーモオン設定温度TONはサーモオフ設定温度TOFFよりも高くなるように設定されている。また、上限設定圧力(開始設定圧力)PHは下限設定圧力PLよりも高くなるように設定され、停止設定圧力PSは、下限設定圧力PLよりも低くなるように設定されている。
そして、図2に示すように、上限設定圧力(開始設定圧力)PHはサーモオン設定温度TONにおける冷媒の飽和圧力より小さくなるように設定され、下限設定圧力PLはサーモオフ設定温度TOFFにおける冷媒の飽和圧力より大きくなるように設定され、停止設定圧力PSはサーモオフ設定温度TOFFにおける冷媒の飽和圧力より小さくなるように設定されている。
図1に戻り、コンデンシングユニット制御装置10は、コントローラ8の運転指令信号に基づいてコンデンシングユニット11を制御する。即ち、コンデンシングユニット制御装置10は、運転開始指令信号に応じて、コンデンシングユニット11に設けられたインバータ(図示せず)を介して圧縮機1を駆動制御するとともに、コンデンシングユニットファン(図示せず)を駆動させる。また、コンデンシングユニット制御装置10は、運転停止指令信号に応じて、インバータ(図示せず)を介して圧縮機1を停止させるとともに、コンデンシングユニットファン(図示せず)を停止させる。
さらに、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力センサ7で検出した吸入圧力Pと、上限設定圧力(開始設定圧力)PH、下限設定圧力PLおよび停止設定圧力PSと、を比較し、その結果に応じてインバータ(図示せず)を介して圧縮機1を駆動制御するようになっている。即ち、コンデンシングユニット制御装置10は、コントローラ8から運転開始指令信号が入力されると、吸入圧力Pが開始設定圧力(上限設定圧力)PH以上であるか否かを判定し、吸入圧力Pが開始設定圧力(上限設定圧力)PH以上であると判定した場合、圧縮機1の駆動を開始する。
そして、圧縮機1の駆動中において、吸入圧力Pが上限設定圧力PH以上である場合、コンデンシングユニット制御装置10は圧縮機1の回転速度を上昇させる、即ち、圧縮機1の駆動周波数fを上昇させる。これにより、吸入圧力Pを低下させ、圧縮機1の吸入圧力Pを仕様範囲内(PL〜PH)に収めるようになっている。また、圧縮機1の駆動中において、吸入圧力Pが上限設定圧力PH未満で下限設定圧力PL以上である場合、コンデンシングユニット制御装置10は圧縮機1の回転速度を維持させる、即ち、圧縮機1の駆動周波数fを維持させる。また、圧縮機1の駆動中において、吸入圧力Pが下限設定圧力PL未満で停止設定圧力PS以上である場合、コンデンシングユニット制御装置10は圧縮機1の回転速度を減少させる、即ち、圧縮機1の駆動周波数fを減少させる。これにより、吸入圧力Pを低下させ、圧縮機1の吸入圧力Pを仕様範囲内(PL〜PH)に収めるようになっている。さらに、圧縮機1の駆動中において、吸入圧力Pが停止設定圧力PS未満である場合、圧縮機1を停止させる。
<参考例に係る冷凍装置システムの運転挙動>
次に、一般的な(参考例に係る)冷凍装置システムの運転挙動について、図3を用いて説明する。図3は、参考例に係る冷凍装置システムの運転挙動の概略図である。ここで、図3の横軸は時間を示し、縦軸は圧縮機1の駆動周波数f、冷蔵庫12の庫内温度T、圧縮機1の吸入圧力Pの時間変化を示す。なお、参考例に係る冷凍装置システムの構成は、図1に示す第1実施形態に係る冷凍装置システムSと同様であり、詳細な説明を省略する。ちなみに、第1実施形態に係る冷凍装置システムSと参考例に係る冷凍装置システムとは、後述するプルダウン運転における制御が異なっている。第1実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転における制御については図4等を用いて後述する。
図3に示すように、参考例に係る冷凍装置システムは、庫内温度Tをサーモオン設定温度TONからサーモオフ設定温度TOFFまで冷却する通常運転Aと、蒸発器5の除霜を行う除霜運転Bと、冷凍装置システムの起動直後や除霜運転後に庫内温度Tをサーモオフ設定温度TOFFまで冷やしこむプルダウン運転Cと、を行うことができるようになっている。
通常運転Aとは、冷蔵庫12の庫内温度Tが目標温度TP(TP±Taの範囲内)となるように冷却する運転である。即ち、まず、庫内温度Tがサーモオン設定温度TON未満の場合、圧縮機1を停止させている。その後、庫内温度Tがサーモオン設定温度TON以上になると、圧縮機1を駆動させ、前述のように吸入圧力Pに応じて圧縮機1の駆動周波数fを増減させながら冷蔵庫12の庫内を冷却していく。そして、庫内温度Tがサーモオフ設定温度TOFF以下に達すると、圧縮機1を停止させる。その後、冷蔵庫12の庫外から冷蔵庫12の庫内への侵入熱や、冷蔵庫12の庫内に収納された収納物品(図示せず)が持つ熱により庫内温度Tが上昇して、庫内温度Tがサーモオン設定温度TON以上になると、再び圧縮機1を駆動させ、以降同様の運転が繰り返される。
ここで、冷凍装置システムの通常運転Aにおいて、冷凍装置システムの冷却器13は、冷蔵庫12の庫内温度Tを氷点下または氷点下付近にまで冷却するようになっている。このため、庫内空気(被冷却媒体)中の水蒸気が昇華することにより、冷蔵庫12の内部に配置される蒸発器5に霜が着いてしまうことがある。蒸発器5に霜が着くと、冷媒と庫内空気(被冷却媒体)との熱交換の妨げとなり、著しく蒸発器5の性能を損なう。このため、冷凍装置システムは、蒸発器5に着いた霜を融かす除霜運転Bを行うことができるようになっている。除霜運転Bでは、庫内温度Tや吸入圧力Pによらず圧縮機1を停止させるとともに、蒸発器5に設けられた電気ヒータ(図示せず)に通電することにより、蒸発器5に着いた霜を融かす。
除霜運転Bの終了後は、庫外温度にもよるが、しばしば庫内温度Tがサーモオン設定温度TONよりもある一定温度Tb以上高く(T≧TON+Tb)なることがある。この場合、冷蔵庫12の庫内に収納された収納物品(図示せず)の損傷を防ぐため、さらには、圧縮機1の吸入圧力Pを早期に冷凍装置システムSの仕様範囲内(PL〜PH)に収めるため、圧縮機1を全速(または、比較的高い駆動周波数)で運転するプルダウン運転Cを行い、冷蔵庫12の庫内温度Tを急速に冷やし込むようになっている。
なお、庫内温度Tがサーモオン設定温度TONよりもある一定温度Tb以上高く(TON+Tb)なるのは、除霜運転Bの終了後のみに限ることではなく、例えば、新規に冷凍装置システムを導入した際の試運転時や収納物品(図示せず)の入替えの際の庫外からの侵入熱や収納物品自体の熱等により庫内温度Tが大きく上昇した際も考えられる。このような場合にも、プルダウン運転Cを行い、冷蔵庫12の庫内温度Tを急速に冷やしこむようになっている。
プルダウン運転Cにより冷蔵庫12の庫内温度Tをサーモオフ設定温度TOFFまで冷却したら、圧縮機1を停止し、次のプルダウン運転Cとなるまで通常運転Aを繰り返す。
<第1実施形態に係る冷凍装置システムの運転挙動(プルダウン運転)>
次に、第1実施形態に係る冷凍装置システムSの運転挙動について説明する。ここで、第1実施形態に係る冷凍装置システムSは、参考例に係る冷凍装置システムと同様に、通常運転Aと、除霜運転Bと、プルダウン運転Cと、を行うことができるようになっている。そして、第1実施形態に係る冷凍装置システムSは、参考例に係る冷凍装置システムと比較して、プルダウン運転Cにおける制御が異なっている。
第1実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転Cについて、図4から図7を用いて説明する。図4は、第1実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転Cにおける運転挙動の概略図である。ここで、図4の横軸は時間を示し、縦軸は圧縮機1の駆動周波数f、冷蔵庫12の庫内温度T、圧縮機1の吸入圧力Pの時間変化を示す。
図4に示すように、第1実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転Cは、庫内温度Tがサーモオフ設定温度TOFFに到達するまでの運転域を、詳細は後述する冷却優先運転域と、吸入圧力安定優先運転域と、高COP優先運転域と、の3区分に分け、各温度範囲に対応して圧縮機1の駆動周波数fを変更する。即ち、図4に示すように、第1実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転Cでは、冷却優先運転C1と、吸入圧力安定優先運転C2と、高COP優先運転C3と、の3段階の運転を行うことができるようになっている。
<冷却優先運転>
まず、冷却優先運転C1について、図4を参照しつつ図5を用いて説明する。図5は、冷却優先運転C1における制御フローチャートである。冷却優先運転C1とは、庫内温度Tが周波数シフト設定温度(以下、シフト温度とする。)Tshift以下、かつ、吸入圧力Pが周波数シフト設定吸入圧力(以下、シフト圧力とする。)Pshift以下となるまで、圧縮機1の駆動周波数fを全速(最大駆動周波数fmax)として冷やしこむ運転である。
コンデンシングユニット制御装置10は、コントローラ8から運転開始指令信号を受信すると、以下の処理を開始する。
ステップS1において、コンデンシングユニット制御装置10は、庫内温度Tがサーモオン設定温度TONよりある一定温度(Tb)以上高いか否かを判定する(T≧TON+Tb?)。ここで、ある一定温度Tbとは、通常運転Aによる冷却を行うか、プルダウン運転Cによる冷却を行うかを判定するための閾値であり、コンデンシングユニット制御装置10の記憶部10aに予め記憶されている。
庫内温度Tがサーモオン設定温度TONよりある一定温度以上高い場合(S1・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS2に進む。庫内温度Tがサーモオン設定温度TONよりある一定温度以上高くない場合(S1・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS8に進み、通常運転A(図3参照)を実施する。
ステップS2において、コンデンシングユニット制御装置10は、庫内温度Tが、シフト温度Tshift以上であるか否かを判定する(T≧Tshift?)。ここで、シフト温度Tshiftとは、ユーザが任意に設定することができるようになっており、例えば、庫内高温異常の警報を発する温度とし、好ましくは、冷蔵庫12に収納された収納物品(図示せず)を損傷しない範囲の温度とし、より好ましくは、冷蔵庫12に収納された収納物品(図示せず)を損傷しない範囲の最高温度とする。このため、シフト温度Tshiftは、サーモオン設定温度TONよりも高い温度が設定される。
庫内温度Tがシフト温度Tshift以上である場合(S2・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS3に進む。庫内温度Tがシフト温度Tshift以上でない場合(S2・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS9に進み、他の区分の判定によりプルダウン運転を実施する。即ち、後述する図6のステップS11に進む。
ステップS3において、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力Pが、冷凍装置システムSの圧縮機1の吸入圧力Pの仕様範囲(下限設定圧力PL〜上限設定圧力PH)の範囲外であるか否かを判定する(P<PLまたはP>PH?)。ここで、冷凍装置システムSの圧縮機1の吸入圧力Pの仕様範囲とは、前述の下限設定圧力PL以上であり、かつ、前述の上限設定圧力PH以下の範囲をいう。
吸入圧力Pが仕様範囲外である場合(S3・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS4に進む。吸入圧力Pが仕様範囲外でない場合(S3・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS9に進み、他の区分の判定によりプルダウン運転を実施する。
ステップS4において、コンデンシングユニット制御装置10は、冷却優先運転C1(プルダウン運転C)を開始する。具体的には、コンデンシングユニット制御装置10は、インバータ(図示せず)を介して、駆動周波数fを全速(最大駆動周波数fmax)で圧縮機1を駆動させる。そして、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS5に進む。
ステップS5において、コンデンシングユニット制御装置10は、庫内温度Tが、シフト温度Tshift以下であるか否かを判定する(T≦Tshift?)。庫内温度Tがシフト温度Tshift以下でない場合(S5・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS5に戻り、圧縮機1の駆動周波数fを最大駆動周波数fmaxとしたまま運転を継続する。庫内温度Tがシフト温度Tshift以下である場合(S5・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS6に進む。
ステップS6において、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力Pが、シフト圧力Pshift以下であるか否かを判定する(P≦Pshift?)。ここで、シフト圧力Pshiftとは、冷凍装置システムSの情報(コンデンシングユニット11の情報、例えば、上限設定圧力PH、下限設定圧力PL等)に基づいて設定され、例えば、冷凍装置システムSの圧縮機1の吸入圧力Pの仕様範囲上限の80%(Pshift=0.8×PH)としてもよい。このようにシフト圧力Pshiftを設定することにより、吸入圧力Pの仕様範囲上限から余裕を持たせることができ、後述するように圧縮機1の駆動周波数fを減速することにより吸入圧力Pが上昇しても、冷凍装置システムSの圧縮機1の吸入圧力Pの仕様範囲内とし、冷凍装置システムSの信頼性を確保することができる。このため、シフト圧力Pshiftは、下限設定圧力PL以上かつ上限設定圧力PHより小さい範囲内で設定される。
吸入圧力Pがシフト圧力Pshift以下でない場合(S6・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS5に戻り、圧縮機1の駆動周波数fを最大駆動周波数fmaxとしたまま運転を継続する。吸入圧力Pがシフト圧力Pshift以下である場合(S6・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS7に進む。
ステップS7において、コンデンシングユニット制御装置10は、冷却優先運転C1を終了して、圧縮機1の駆動周波数fを減速して、吸入圧力安定優先運転C2に移行する。なお、ここでの駆動周波数fの減速量は、後述する吸入圧力安定優先運転C2の減速量(後述する図6のステップS16参照)と同様にする。
<吸入圧力安定優先運転>
次に、吸入圧力安定優先運転C2について、図4を参照しつつ図6を用いて説明する。図6は、吸入圧力安定優先運転C2における制御フローチャートである。吸入圧力安定優先運転C2とは、吸入圧力Pを冷凍装置システムSの仕様範囲内(下限設定圧力PL〜上限設定圧力PH)、かつ、シフト圧力Pshift以上を維持しながら、圧縮機1の駆動周波数fを後述する高COP周波数fCOPまで順次減速していく運転である。
ここで、図4に示すように、一般的に圧縮機1の駆動周波数fを減速すると、吸入圧力Pが上昇し、その後、庫内温度Tが低下することで吸入圧力Pも減少していく。即ち、吸入圧力安定優先運転C2では、吸入圧力Pがシフト圧力Pshift以下となれば駆動周波数fを減速する。駆動周波数fの減速直後は、冷媒の循環量が減ることにより、見かけ上の庫内冷却負荷が大きくなるため、吸入圧力Pが上昇する。その後、庫内温度Tが低下することで吸入圧力Pも減少していき、吸入圧力Pがシフト圧力Pshift以下となれば同様に駆動周波数fを減速する。
ステップS11において、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力Pが、シフト圧力Pshift以上であるか否かを判定する(P≧Pshift?)。吸入圧力Pがシフト圧力Pshift以上である場合(S11・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS12に進む。吸入圧力Pがシフト圧力Pshift以上でない場合(S11・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS19に進み、他の区分の判定によりプルダウン運転を実施する。
ステップS12において、コンデンシングユニット制御装置10は、庫内温度Tが、シフト温度Tshift以下であるか否かを判定する(T≦Tshift?)。庫内温度Tがシフト温度Tshift以下である場合(S12・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS13に進む。庫内温度Tがシフト温度Tshift以下でない場合(S12・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS19に進み、他の区分の判定によりプルダウン運転を実施する。
ステップS13において、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力Pが、冷凍装置システムSの圧縮機1の吸入圧力Pの仕様範囲(下限設定圧力PL〜上限設定圧力PH)の範囲内であるか否かを判定する(PL≦P≦PH?)。吸入圧力Pが仕様範囲内である場合(S13・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS14に進む。吸入圧力Pが仕様範囲内でない場合(S13・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS19に進み、他の区分の判定によりプルダウン運転を実施する。
ステップS14において、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力安定優先運転C2(プルダウン運転C)を開始する。具体的には、コンデンシングユニット制御装置10は、インバータ(図示せず)を介して、駆動周波数fを維持して(減速しない)圧縮機1を駆動させる。そして、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS15に進む。
ステップS15において、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力Pが、シフト圧力Pshift以下であるか否かを判定する(P≦Pshift?)。吸入圧力Pがシフト圧力Pshift以下でない場合(S15・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS12に戻り、圧縮機1の駆動周波数fを維持したまま運転を継続する。吸入圧力Pがシフト圧力Pshift以下である場合(S15・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS16に進む。
ステップS16において、コンデンシングユニット制御装置10は、駆動周波数fを減速する。ここで、図4に示すように、一回に減速する駆動周波数fの減少量Δfは、駆動周波数fの減速後に上昇する吸入圧力Pが冷凍装置システムSの圧縮機1の吸入圧力Pの仕様範囲(下限設定圧力PL〜上限設定圧力PH)の範囲内におさまるように設定することが望ましく、具体的には10Hzを最大とすることが望ましい。また、駆動周波数fの減速後、減速された駆動周波数fでの運転維持時間Δtを最低でも30秒間は維持することが望ましい。これにより、急激に駆動周波数fを減速することで吸入圧力Pの急激な上昇することを防止し、冷凍装置システムSの信頼性を確保することができる。そして、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS17に進む。
ステップS17において、コンデンシングユニット制御装置10は、駆動周波数fが高COP周波数fCOPとなったか否かを判定する(f=fCOP?)。ここで、高COP周波数fCOPとは、圧縮機1(冷凍装置システムS)のCOPが高くなる(望ましくは極大値となる)駆動周波数であり、圧縮機1の特性等により決定され、コンデンシングユニット制御装置10の記憶部10aに記憶されている。駆動周波数fが高COP周波数fCOPでない場合(S17・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS15に戻る。駆動周波数fが高COP周波数fCOPである場合(S17・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS18に進む。
ステップS18において、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力安定優先運転C2を終了し、高COP優先運転C3に移行する。
<高COP優先運転>
次に、高COP優先運転C3について、図4を参照しつつ図7を用いて説明する。図7は、高COP優先運転C3における制御フローチャートである。高COP優先運転C3とは、圧縮機1(冷凍装置システムS)のCOPが高くなる高COP周波数fCOPで圧縮機1を駆動し、庫内温度Tがサーモオフ設定温度TOFFとなるまで冷却する運転である。
ステップS21において、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力優先運転C2(図6参照)を経たか否かを判定する。吸入圧力優先運転C2を経た場合(S21・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS22に進む。吸入圧力優先運転C2を経ていない場合(S21・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS27に進み、他の区分の判定によりプルダウン運転を実施する。
ステップS22において、コンデンシングユニット制御装置10は、庫内温度Tが、シフト温度Tshift以下であるか否かを判定する(T≦Tshift?)。庫内温度Tがシフト温度Tshift以下である場合(S22・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS23に進む。庫内温度Tがシフト温度Tshift以下でない場合(S22・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS27に進み、他の区分の判定によりプルダウン運転を実施する。
ステップS23において、コンデンシングユニット制御装置10は、吸入圧力Pが、冷凍装置システムSの圧縮機1の吸入圧力Pの仕様範囲(下限設定圧力PL〜上限設定圧力PH)の範囲内であるか否かを判定する(PL≦P≦PH?)。吸入圧力Pが仕様範囲内である場合(S23・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS24に進む。吸入圧力Pが仕様範囲内でない場合(S23・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS27に進み、他の区分の判定によりプルダウン運転を実施する。
ステップS24において、コンデンシングユニット制御装置10は、高COP優先運転C3(プルダウン運転C)を開始する。具体的には、コンデンシングユニット制御装置10は、インバータ(図示せず)を介して、駆動周波数fを高COP周波数fCOPで圧縮機1を駆動させる。そして、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS25に進む。
ステップS25において、コンデンシングユニット制御装置10は、庫内温度Tが、サーモオフ設定温度TOFF以下であるか否かを判定する(T≦TOFF?)。庫内温度Tがサーモオフ設定温度TOFF以下でない場合(S25・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS22に戻り、圧縮機1の駆動周波数fを高COP周波数fCOPとしたまま運転を継続する。庫内温度Tがサーモオフ設定温度TOFF以下である場合(S25・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS26に進む。
ステップS26において、コンデンシングユニット制御装置10は、高COP優先運転C3(プルダウン運転C)を終了し、圧縮機1を停止させる。
以上のように構成された第1実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転Cおいては、まず、冷却優先運転C1により冷凍装置システムSの信頼性を確保しながら、最低限の要求庫内温度(シフト温度Tshift)に応え、次に、吸入圧力安定優先運転C2により冷凍装置システムSの信頼性を確保しながらCOP向上を図り、最後に、高COP優先運転によりCOP向上を図りながら要求庫内温度(サーモオフ設定温度TOFF)を満たすことにより、庫内温度管理、冷凍装置システムの信頼性の確保、および、運転消費電力の低減を図ったプルダウン運転を実施することができる。
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る冷凍装置システムSについて説明する。第2実施形態に係る冷凍装置システムSは、第1実施形態に係る冷凍装置システムSと同様の構成(図1参照)を有し、第1実施形態に係る冷凍装置システムSと同様に、プルダウン運転において、庫内温度Tと吸入圧力Pに基づいて、冷却優先運転域と、吸入圧力安定優先運転域と、高COP優先運転域の3区分に分け、各運転域に対応して圧縮機1の駆動周波数fを変更するようになっている。
前述のとおり、冷却優先運転C1において庫内温度Tがシフト温度Tshift以下、かつ、吸入圧力Pがシフト圧力Pshift以下となるまで冷却し、庫内の収納物品(図示せず)の熱による損傷を防ぐと、吸入圧力安定優先運転C2に移行し、シフト圧力Pshiftを維持しながら、圧縮機1の駆動周波数fを高COP周波数fCOPまで順次減速していく。
ここで、第1実施形態に係る冷凍装置システムSの吸入圧力安定優先運転C2(図6参照)においては、庫内温度Tが駆動周波数fの減速条件に含まれていないため、場合によっては駆動周波数fを減速したことにより、冷凍サイクルの冷却能力が不足し、サーモオフ設定温度TOFFまで冷却することが不能となるおそれがある。また、このような冷却不能という状態は、機器異常が生じていた場合や、シフト温度Tshiftやシフト圧力Pshift等の設定不良による場合もある。
そこで、第2実施形態に係る冷凍装置システムSは、高温警報を発することができるようになっている。図8は、第2実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転における庫内温度高温異常警報を発するまでの制御フローである。
ステップS31において、コンデンシングユニット制御装置10は、プルダウン運転中か否かを判定する。プルダウン運転中である場合(S31・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS32に進む。プルダウン運転中でない場合(S31・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS38に進み、通常運転中または運転停止であるとして図8に示す処理を終了する(ステップS38)。
ステップS32において、コンデンシングユニット制御装置10は、各区分(冷却優先運転C1、吸入圧力安定優先運転C2、高COP優先運転C3)の運転時間を計測し、その総和である総和プルダウン運転時間を演算する。
ステップS33において、コンデンシングユニット制御装置10は、ステップS32で演算した総和プルダウン運転時間が、あらかじめ設定された設定プルダウン時間より長いか否かを判定する。総和プルダウン運転時間が設定プルダウン時間より短い場合(S33・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS32に戻る。総和プルダウン運転時間が設定プルダウン時間より長い場合(S33・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS34に進む。
ステップS34において、駆動周波数fを最大駆動周波数fmaxまで順次増速し、冷却優先運転に移行する。但し、図5に示す通常の冷却優先運転C1は、シフト温度Tshiftまで冷却するのに対し、ステップS34における冷却優先運転はサーモオフ設定温度TOFFまで冷却することを目的とする。
ステップS35において、コンデンシングユニット制御装置10は、庫内温度Tが、サーモオフ設定温度TOFF以下であるか否かを判定する(T≦TOFF?)。庫内温度Tがサーモオフ設定温度TOFF以下でない場合(S35・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS36に進む。庫内温度Tがサーモオフ設定温度TOFF以下である場合(S35・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS39に進み、プルダウン運転Cを終了し、圧縮機1を停止させる(ステップS39)。
ステップS36において、コンデンシングユニット制御装置10は、冷却優先運転の運転時間が予め設定した制限時間より長いか否かを判定する。冷却優先運転の運転時間が予め設定した制限時間より短い場合(S36・No)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS35に戻る。冷却優先運転の運転時間が予め設定した制限時間より長い場合(S36・Yes)、コンデンシングユニット制御装置10の処理はステップS37に進む。
ステップS37において、コンデンシングユニット制御装置10は、アラームやランプ等の警報手段(図示せず)により、庫内温度高温異常警報を発報する。
以上のように、第2実施形態に係る冷凍装置システムSは、プルダウン運転の運転時間が設定プルダウン運転時間を超えると、冷却優先運転に移行して、庫内温度Tがサーモオフ設定温度TOFFとなるまで圧縮機1の駆動周波数fを全速(最大駆動周波数fmax)で運転する。そして、冷却優先運転に移行した後の運転時間である冷却優先運転時間が、制限時間を超えると庫内温度高温異常警報を発報するようになっている。これにより、庫内の収納物品の損傷を防止するとともに、機器異常を検知し、警報によりユーザに警告することができる。
また、第2実施形態に係る冷凍装置システムSのコントローラ8は、前述の各区分(冷却優先運転C1、吸入圧力安定優先運転C2、高COP優先運転C3)における運転時間を予め定められた周期(例えば1ヶ月)で記録しており、プルダウン運転時は各区分の運転終了時に最新の運転時間とその蓄積データを比較する。一般的に、機器を長く使用していれば経年劣化により運転時間が長くなるが、1ヶ月等の短周期であればさほど偏差はないはずである。ここで、偏差が極端に表れた場合、コントローラ8は機器以上と判断し、機器異常警報を発し、ユーザに警告する。
図9は、第2実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転における機器異常警報を発するまでの制御フローである。
ステップS41において、コントローラ8は、各区分(冷却優先運転C1、吸入圧力安定優先運転C2、高COP優先運転C3)の運転時間を計測する。
ステップS42において、コントローラ8は、各区分ごとに、今回の運転時間と、過去の運転時間とを比較して、その偏差(演算各区分運転時間偏差)を演算する。
ステップS43において、コントローラ8は、ステップS42で演算した各区分ごとの運転時間の偏差(演算各区分運転時間偏差)が、あらかじめ設定した偏差上限よりも大きいか否かを判定する。演算各区分運転時間偏差が偏差上限よりも大きい場合(S43・Yes)、コントローラ8の処理はステップS44に進み、アラームやランプ等の警報手段(図示せず)により、機器異常警報を発報する(ステップS44)。演算各区分運転時間偏差が偏差上限よりも小さい場合(S43・No)、コントローラ8の処理はステップS45に進み、ステップS41で計測した各区分の運転時間を蓄積データとして記憶する(ステップS45)。
以上のように、第2実施形態に係る冷凍装置システムSは、各区分(冷却優先運転C1、吸入圧力安定優先運転C2、高COP優先運転C3)における運転時間を計測し、各区分における過去の運転時間と比較することにより、機器の異常を検知し、警報によりユーザに警告することができる。
また、コントローラ8は、各駆動周波数fと、電動機1をその駆動周波数fで駆動させた際の消費電力との関係を示すテーブル(図示せず)を記憶しており、各区分の運転時間と、各区分における電動機1の駆動周波数fに基づいて、各区分における消費電力量を算出し、各区分における消費電力量の総和である総消費電力量を算出し、蓄積データとして記憶することができ、蓄積されたデータを任意に出力することができるようになっている。
これにより、ユーザは、蓄積されたデータに基づいて、シフト温度Tshiftやシフト圧力Pshiftを好適に設定変更することができる。また、同情報を持って、デマンド制御やピークカット制御として活用することができる。
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る冷凍装置システムSについて説明する。第1実施形態に係る冷凍装置システムS(図1参照)は、膨張弁4として温度式自動膨張弁を備えているものとして説明したのに対し、第3実施形態に係る冷凍装置システムSは、電子膨張弁4Eを備え、冷却器制御装置9により電子膨張弁4Eの弁開度が制御可能に構成されている。その他の構成は同様であり、詳細な説明は省略する。
また、第3実施形態に係る冷凍装置システムSは、第1実施形態に係る冷凍装置システムSと同様に、プルダウン運転において、庫内温度Tと吸入圧力Pに基づいて、冷却優先運転域と、吸入圧力安定優先運転域と、高COP優先運転域の3区分に分け、各運転域に対応して圧縮機1の駆動周波数fを変更するようになっている。
第3実施形態に係る冷凍装置システムSは、電子膨張弁4Eの弁開度を制御することにより、冷却器13の冷媒出口温度と冷却器13の冷媒入口温度との温度差である冷却器過熱度を制御する。一般に、電子膨張弁4Eの弁開度を減少させると冷却器過熱度は大きくなり、電子膨張弁4Eの弁開度を増加させると冷却器過熱度は小さくなる。
電子膨張弁4Eの弁開度を大きくすればするほど冷却器13(蒸発器5)を流れる冷媒も多くなり、蒸発器5での熱交換が促されるため、システム能力が向上し省エネに寄与する。一方で、電子膨張弁4Eの弁開度を大きくしすぎると、冷却器13で熱交換されず、液のまま圧縮機1に戻る、いわゆる「液バック現象」が起こりやすくなり、冷凍装置システムSの信頼性低下を招くおそれがある。このため、電子膨張弁4Eは、液バック現象が生じない範囲で、冷却器過熱度を小さくするように弁開度を制御することが望ましい。
ユーザがコントローラ8の操作部8bを操作することにより、冷却器過熱度の設定値(過熱度設定値)を設定できるようになっている。冷却器制御装置9は、コントローラ8から運転開始指令信号が入力されると、冷却器過熱度を随時演算し、演算された値が設定値以上であるか否かを判定する。そして、設定値以上であると場合、冷却器制御装置9は電子膨張弁4Eの弁開度を予め設定された量だけ開き、設定値未満であると判定した場合、冷却器制御装置9は電子膨張弁4Eの弁開度を予め設定された量だけ閉じることにより、冷却器過熱度が過熱度設定値となるように弁開度を調整する。
前述のとおり、冷却負荷と吸入圧力Pに相互関係があるため、冷却負荷に直結する冷媒流量を調整する電子膨張弁4Eの弁開度を制御することにより、吸入圧力Pを調整することができる。
ここで、例えば、吸入圧力Pを減少させるために電子膨張弁4Eの弁開度を減少させると、冷却器過熱度も増加するため、その後、冷却器制御装置9は、冷却器過熱度を設定過熱度にするために電子膨張弁4Eの弁開度を増加させようと制御することとなる。このような制御では、冷却器過熱度が安定しない、いわゆるハンチング現象が生じ、圧縮機1の吸入圧力Pも不安定となる。吸入圧力Pの安定とその制御は、そのまま冷凍装置システムSのCOPや信頼性に関わるため、電子膨張弁4Eもプルダウン運転Cの各区分において適宜制御することで、より高COP、高信頼性を図ることができる。
そこで、第3実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転Cの各区分において、電子膨張弁4Eの制御を冷却器過熱度を過熱度設定値になるように制御する従来の制御から変更させ、以下の図11から図13に示す制御に変更する。
図11は、第3実施形態に係る冷凍装置システムSの冷却優先運転C1における電子膨張弁4Eの制御フローである。
ステップS51において、冷却器制御装置9は、電子膨張弁4Eの弁開度をシステム最大まで開く。
ステップS52において、冷却器制御装置9は、冷却器13の冷媒出口温度を検出する温度センサ(図示せず)で検出した冷媒出口温度と、冷却器13の冷媒入口温度を検出する温度センサ(図示せず)で検出した冷媒入口温度とから、冷却器過熱度を演算する。そして、演算された冷却器過熱度が、液バック現象が生じない冷却器過熱度の範囲の下限値以上であるか否かを判定する。
冷却器過熱度が下限値以上でない場合(S52・No)、冷却器制御装置9の処理はステップS53に進み、電子膨張弁4Eの弁開度を減少させる(ステップS53)。そして、冷却器制御装置9の処理はステップS52に戻る。
冷却器過熱度が下限値以上である場合(S52・Yes)、冷却器制御装置9の処理はステップS54に進み、電子膨張弁4Eの弁開度を維持させる(ステップS54)。
図12は、第3実施形態に係る冷凍装置システムSの吸入圧力安定優先運転における電子膨張弁4Eの制御フローである。
ステップS61において、冷却器制御装置9は、冷却器13の冷媒出口温度を検出する温度センサ(図示せず)で検出した冷媒出口温度と、冷却器13の冷媒入口温度を検出する温度センサ(図示せず)で検出した冷媒入口温度とから、冷却器過熱度を演算する。そして、演算された冷却器過熱度が、液バック現象が生じない冷却器過熱度の範囲の下限値以上であるか否かを判定する。
冷却器過熱度が下限値以上でない場合(S61・No)、冷却器制御装置9の処理はステップS62に進み、電子膨張弁4Eの弁開度を減少させる(ステップS62)。なお、ステップS62における弁開度の減少速度(弁閉速度)は、後述するステップS63における弁開度の増加速度(弁開速度)よりも低く設定する。そして、冷却器制御装置9の処理はステップS61に戻る。
冷却器過熱度が下限値以上である場合(S61・Yes)、冷却器制御装置9の処理はステップS63に進み、電子膨張弁4Eの弁開度を増加させる(ステップS63)。そして、冷却器制御装置9の処理はステップS61に戻る。
図13は、第3実施形態に係る冷凍装置システムSの高COP優先運転における電子膨張弁4Eの制御フローである。
ステップS71において、冷却器制御装置9は、冷却器13の冷媒出口温度を検出する温度センサ(図示せず)で検出した冷媒出口温度と、冷却器13の冷媒入口温度を検出する温度センサ(図示せず)で検出した冷媒入口温度とから、冷却器過熱度を演算する。そして、演算された冷却器過熱度が、液バック現象が生じない冷却器過熱度の範囲の下限値以上であるか否かを判定する。
冷却器過熱度が下限値以上でない場合(S71・No)、冷却器制御装置9の処理はステップS72に進み、電子膨張弁4Eの弁開度を減少させる(ステップS72)。なお、ステップS72における弁開度の減少速度(弁閉速度)は、後述するステップS73における弁開度の増加速度(弁開速度)よりも低く設定する。そして、冷却器制御装置9の処理はステップS71に戻る。
冷却器過熱度が下限値以上である場合(S71・Yes)、冷却器制御装置9の処理はステップS73に進み、電子膨張弁4Eの弁開度を増加させる(ステップS73)。そして、冷却器制御装置9の処理はステップS74に進む。
ステップS74において、冷却器制御装置9は、電子膨張弁4Eの弁開度がシステム最大であり、なおかつ、吸入圧力Pがシフト圧力以下であるか否かを判定する。電子膨張弁4Eの弁開度がシステム最大でなく、または、吸入圧力Pがシフト圧力以下でない場合(S74・No)、冷却器制御装置9の処理はステップS71に戻る。電子膨張弁4Eの弁開度がシステム最大であり、なおかつ、吸入圧力Pがシフト圧力以下である場合(S74・Yes)、冷却器制御装置9の処理はステップS75に進む。
ステップS75において、冷却器制御装置9は、予め設定された冷却器過熱度の設定値にしたがって、電子膨張弁4Eの弁開度を制御する。
即ち、図11に示すように、冷却優先運転C1では、速やかに庫内温度T及び吸入圧力Pを減少させたいため、比較的大きな弁開度で冷媒を多く流し、また信頼性確保のため弁開度速度を高く設定し、液バックが生じないように流量調整の応答性を早くする。
また、図12に示すように、吸入圧力安定優先運転C2においても、吸入圧力Pを冷凍装置システムSの仕様範囲内(PL〜PH)で減少させ、早急に高COP優先運転C3に移行したいため、吸入圧力Pを仕様上限以下になる範囲で弁開度を増減する。
また、図13に示すように、高COP優先運転C3では、吸入圧力Pを冷凍装置システムSの仕様範囲内(PL〜PH)でシフト圧力Pshift以上に維持したいため、それに従って弁開度を増減させる。
ここで、プルダウン運転C(冷却優先運転C1、吸入圧力安定優先運転C2、高COP優先運転C3)において、前述の過熱度設定値は一時無視され、冷凍装置システムSの仕様範囲内(PL〜PH)でシフト圧力Pshift以上になるように目標過熱度及び弁開度速度を調整する。そして、弁開度を上限まで開いても吸入圧力Pをシフト圧力Pshift以上に維持できなくなった場合(S74・Yes)、前述の過熱度設定値に沿って電子膨張弁4Eの弁開度を調整する。
また、圧縮機1の駆動周波数制御の場合と同様に、急激な弁開度の減少により急激に吸入圧力Pが上昇することを防止するため、弁開速度には制約(但し、弁開速度>弁閉速度)を持たせる。
また、液バック現象を防止するため、冷却器過熱度の下限値を設定し、冷却器過熱度の下限値未満となれば、電子膨張弁4Eの弁開度を閉じるように制御する。
以上のように構成された本実施形態においては、冷凍装置システムの信頼性の確保、最小限の要求庫内温度管理を満たした上で、更に前述した実施例より高COPとなる運転を実施することが出来る。
<変形例>
なお、本実施形態に係る冷凍装置システムSは、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
本実施形態に係る冷凍装置システムSのプルダウン運転制御を、一つの冷却モードとし、ディップスイッチ等でユーザが容易に選択・切替えすることができるようにしてもよい。
各種設定値(Tb、Tshift、Pshift、fCOP、Δf、Δt等)は、あらかじめ設定され記憶部に記憶されているものとして説明したが、コントローラ8の操作部8bを操作することにより、ユーザが設定することができるようになっていてもよい。
コントローラ8は、コンデンシングユニット11および冷蔵庫12とは別体に設けるものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、コンデンシングユニット11の筺体にコントローラ8が設けられていてもよく、冷蔵庫12の筺体にコントローラ8が設けられていてもよい。また、コントローラ8、冷却器制御装置9およびコンデンシングユニット制御装置10により、冷凍装置システムSを制御するものとして説明したが、これに限られるものではなく、1つの制御手段が冷凍装置システムS全体を制御するものであってもよい。