JP6342634B2 - サルcyp2cおよびcyp2d遺伝子の多型の検出およびその利用 - Google Patents

サルcyp2cおよびcyp2d遺伝子の多型の検出およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、サルにおけるCYP2CおよびCYP2Dサブファミリーの薬物代謝酵素をコードする遺伝子多型の検出およびその利用に関する。
シトクロムP450(CYP)のサブファミリーであるCYP2Cは、ヒトにおいてはCYP2C8、CYP2C9、CYP2C18およびCYP2C19からなり、フルルビプロフェン(flurbiprofen)やS-メフェニトイン(S-mephenytoin)といった処方薬のおよそ20%の代謝に関係している(非特許文献1)。同じくCYPのサブファミリーの1つであるCYP2Dは、ヒトでは偽遺伝子(CYP2D7PとCYP2D8P)と、機能的な遺伝子CYP2D6を含む(非特許文献2)。CYP2D6は、例えばブフラロール(bufuralol)やデキストロメトルファン(dextromethorphan)といった現在処方されている薬のほぼ20-25%の代謝に関係している(非特許文献10)。CYP2CおよびCYP2D6遺伝子依存的な代謝パターンにおける顕著な個体差が報告され、その幾つかは遺伝子欠失を含む遺伝子多型に起因するものである。
新薬開発の過程では、代謝のパターンがヒトに非常に似ていることから、薬物代謝試験を含む薬物動態試験、薬効試験、安全性試験等でサルがモデル動物として頻用されている。しかしながら、一部の薬物について、サルの代謝パターンがヒトの代謝パターンと異なる場合があるとの報告がなされている(非特許文献3〜6)。
カニクイザルとアカゲザルにおいて、CYP2C遺伝子のCYP2C43およびCYP2C75、CYP2D遺伝子のCYP2D17およびCYP2D44は肝臓で主に発現しており、薬物代謝機能酵素をコードする。そして、CYP2C43およびCYP2C75はヒトCYP2Cの基質であるS-メフェニトイン、フルルビプロフェン、プロゲステロン等(非特許文献7〜8)を、CYP2D17およびCYP2D44はヒトCYP2D6基質であるブフラロールおよびデキストロメトルファン等を代謝する(非特許文献9〜10)。
カニクイザルにおいて、デキストロメトルファンやS-メフェニトインを用いた薬物代謝試験では、個体間で代謝パターンが異なることが報告されている。
Goldstein JA., Br J Clin Pharmacol (2001) 52:349-355. Nelson DR et al. , Pharmacogenetics (2004) 14:1-18. Nartimatsu S et al., Chem Biol Interact (2000) 127:73-90. Sharer JE et al., Drug Metab Dispos (1995) 23:1231-1241. Stevens JC et al., Drg Metab Dispos (1993) 21:753-760. Weaver RJ et al., Xenobiotica (1999) 29:467-482. Mitsuda M et al., J Biochem (2006) 139:865-872. Uno Y et al., Mol Pharmacol (2006)70:477-486. Uno Y et al., Drug Metab Dispos (2010b)38:1486-1492. Ingelman-Sundberg M., Pharmacogenomics J (2005) 5:6-13.
このような背景のもと、ヒトにおいて、CYP2CおよびCYP2Dサブファミリーの酵素群およびそれらの薬物代謝能に関する研究は非常に重要であり、その研究に適したモデル動物は非常に有用である。また、そのようなモデル動物を用いた薬物動態試験、薬効試験、安全性試験等の結果から、ヒトにおける薬物動態を推測し、ヒトにおける安全性を高めるためには、この酵素群の薬物代謝への影響を適切に評価する必要がある。
本発明は、ヒト用の医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性を試験するためのモデル動物とするサルを選択する方法を提供することを課題とする。
以上の課題を解決すべく研究を重ねた結果、本発明者らは、サルにおいて、CYP2Cサブファミリーのうち特にCYP2C43およびCYP2C75について、CYP2Dサブファミリーのうち特にCYP2D17およびCYP2D44について、遺伝子にアミノ酸の置換や欠失を生じさせる多型が存在することを見出した。また、これらの遺伝子の多型であって、基質認識領域またはヘム結合部位のアミノ酸が変化している多型、発現タンパク質が薬物代謝活性を変化させる多型を見出し、かかる多型を有するサルは野生型と異なる薬物代謝能を有することを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕サルのCYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、及びCYP2D44からなる群から選択される薬物代謝酵素をコードする核酸またはその一部であって、以下の多型を含む核酸:
前記CYP2C43にあっては、
c.44T>G、c.77G>A、c.85C>T、c.127C>A、c.130A>C、c.218G>A、c.245C>T、c.262A>G、c.317C>T、c.334A>C、c.389C>T、c.407T>C、c.761C>T、c.848A>C、c.887C>G、c.1024A>G、c.1031A>G、c.1032C>G、c.1150G>A、c.1187G>A、c.1213G>C、c.1228C>A、c.1263A>C、c.1319T>A、c.1324C>A、c.1421A>G、及びc.1444G>A
からなる群から選択される1以上の多型を、
前記CYP2C75にあっては、
c.66G>C、c.77G>A、c.85T>C、c.143A>G、c.167AC>GT、c.214G>C、c.220A>G、c.221T>C、c.298TT>AA、c.308C>T、c.334ATC>CTT、c.370C>T、c.406A>T、c.445G>A、c.449G>C、c.470G>A、c.511G>A、c.680C>A、c.680C>T、c.709A>G、c.718T>A、c.765G>A、c.781C>T、c.790A>C、c.807G>C、c.965G>A、c.1015A>T、c.1081C>T、c.1187A>G、c.1193A>G、c.1193A>C、c.1371C>G、c.1406C>G、及びc.1469C>T
からなる群から選択される1以上の多型を、
前記CYP2D17にあっては、
c.13G>A、c.35C>T、c.77G>A、c.83G>A、c.175G>A、c.367T>C、c.563C>A、c.679G>A、c.724C>G、c.769G>A、c.799C>G、c.815C>T、c.819G>C、c.866G>C、c.871A>C、c.877G>A、c.886C>T、c.891A>G、c.926C>G、c.952C>T、c.1009A>G、c.1012G>A、c.1072G>T、c.1150CTA>GTG、c.1162C>T、c.1165A>G、c.1181C>T、c.1264G>A、c.1277G>A、c.1322A>G、c.1375T>C、c.1411G>A、c.1414CA>TG、c.1415A>G、c.1420C>T、及びc.1486C>T
からなる群から選択される1以上の多型を、
前記CYP2D44にあっては、
c.69G>A、c.79C>G、c.101C>T、c.128T>del、c.164C>T、c.175G>C、c.227C>T、c.254C>A、c.269C>T、c.293C>T、c.298G>A、c.319T>A、c.337G>A、c.344G>A、c.371A>G、c.373G>C、c.395G>A、c.413C>A、c.469G>A、c.496G>A、c.502G>A、c.505G>A、c.524G>A、c.529C>T、c.553G>T、c.587A>T、c.595G>C、c.601C>G、c.612G>T、c.625G>C、c.628C>G、c.633G>C、c.664G>T、c.679G>A、c.694C>T、c.704C>G、c.710C>T、c.724C>G、c.734G>A、c.769G>A、c.806G>C、c.819C>G、c.845C>A、c.859G>A、c.891G>A、c.964G>A、c.971A>G、c.974C>T、c.988C>T、c.989G>C、c.1009A>G、c.1042C>G、c.1063T>A、c.1147G>A、及びc.1153C>A
からなる群から選択される1以上の多型;
〔2〕上記〔1〕に記載の核酸を含む発現ベクター;
〔3〕上記〔2〕に記載の発現ベクターを含む形質転換体;
〔4〕上記〔3〕に記載の形質転換体を培養する工程と、
前記形質転換体が産生するタンパク質を回収する工程と、
を含むサルのCYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、及びCYP2D44からなる群より選択される薬物代謝酵素の変異体の製造方法;
〔5〕代謝活性に異常を有するヒトのための医薬品候補化合物について、薬物動態、薬効および/または安全性を試験するためのモデル動物とするサルを選択する方法であって、
前記代謝活性に異常を有するヒトにおける前記医薬品候補化合物の代謝活性を調べる工程と、
前記医薬品候補化合物が、サルにおいてどの酵素で代謝されるのか調べる工程と、
前記医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素の遺伝子が、サルにおける医薬品候補化合物の代謝が前記代謝活性に異常を有するヒトと同等となる多型を有する個体を選択する工程と、を含み、
前記多型が、以下の多型からからなる群より選択される、方法:
前記医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素がCYP2C43の場合は、
c.44T>G、c.77G>A、c.85C>T、c.127C>A、c.130A>C、c.218G>A、c.245C>T、c.262A>G、c.317C>T、c.334A>C、c.389C>T、c.407T>C、c.761C>T、c.848A>C、c.887C>G、c.1024A>G、c.1031A>G、c.1032C>G、c.1150G>A、c.1187G>A、c.1213G>C、c.1228C>A、c.1263A>C、c.1319T>A、c.1324C>A、c.1421A>G、及びc.1444G>A
からなる群から選択される1以上の多型、
前記医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素のCYP2C75の場合は、
c.66G>C、c.77G>A、c.85T>C、c.143A>G、c.167AC>GT、c.214G>C、c.220A>G、c.221T>C、c.298TT>AA、c.308C>T、c.334ATC>CTT、c.370C>T、c.406A>T、c.445G>A、c.449G>C、c.470G>A、c.511G>A、c.680C>A、c.680C>T、c.709A>G、c.718T>A、c.765G>A、c.781C>T、c.790A>C、c.807G>C、c.965G>A、c.1015A>T、c.1081C>T、c.1187A>G、c.1193A>G、c.1193A>C、c.1371C>G、c.1406C>G、及びc.1469C>T
からなる群から選択される1以上の多型、
前記医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素がCYP2D17の場合は、
c.13G>A、c.35C>T、c.77G>A、c.83G>A、c.175G>A、c.367T>C、c.563C>A、c.679G>A、c.724C>G、c.769G>A、c.799C>G、c.815C>T、c.819G>C、c.866G>C、c.871A>C、c.877G>A、c.886C>T、c.891A>G、c.926C>G、c.952C>T、c.1009A>G、c.1012G>A、c.1072G>T、c.1150CTA>GTG、c.1162C>T、c.1165A>G、c.1181C>T、c.1264G>A、c.1277G>A、c.1322A>G、c.1375T>C、c.1411G>A、c.1414CA>TG、c.1415A>G、c.1420C>T、及びc.1486C>T
からなる群から選択される1以上の多型、
前記医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素がCYP2D44の場合は、
c.69G>A、c.79C>G、c.101C>T、c.128T>del、c.164C>T、c.175G>C、c.227C>T、c.254C>A、c.269C>T、c.293C>T、c.298G>A、c.319T>A、c.337G>A、c.344G>A、c.371A>G、c.373G>C、c.395G>A、c.413C>A、c.469G>A、c.496G>A、c.502G>A、c.505G>A、c.524G>A、c.529C>T、c.553G>T、c.587A>T、c.595G>C、c.601C>G、c.612G>T、c.625G>C、c.628C>G、c.633G>C、c.664G>T、c.679G>A、c.694C>T、c.704C>G、c.710C>T、c.724C>G、c.734G>A、c.769G>A、c.806G>C、c.819C>G、c.845C>A、c.859G>A、c.891G>A、c.964G>A、c.971A>G、c.974C>T、c.988C>T、c.989G>C、c.1009A>G、c.1042C>G、c.1063T>A、c.1147G>A、及びc.1153C>A
からなる群から選択される1以上の多型;
〔6〕サルをモデル動物として行った、ヒトの医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性の試験データにおける個体差の原因を究明する方法であって、
前記試験に用いたサル個体において、CYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、及びCYP2D44からなる群から選択される薬物代謝酵素の少なくとも1つをコードする遺伝子の多型を検出する工程と、
前記多型が、前記薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化させるものであるか評価する工程と、を含み、
前記遺伝子の多型を検出する工程において、
前記CYP2C43にあっては、
c.44T>G、c.77G>A、c.85C>T、c.127C>A、c.130A>C、c.218G>A、c.245C>T、c.262A>G、c.317C>T、c.334A>C、c.389C>T、c.407T>C、c.761C>T、c.848A>C、c.887C>G、c.1024A>G、c.1031A>G、c.1032C>G、c.1150G>A、c.1187G>A、c.1213G>C、c.1228C>A、c.1263A>C、c.1319T>A、c.1324C>A、c.1421A>G、及びc.1444G>A
からなる群から選択される1以上の多型を、
前記CYP2C75にあっては、
c.66G>C、c.77G>A、c.85T>C、c.143A>G、c.167AC>GT、c.214G>C、c.220A>G、c.221T>C、c.298TT>AA、c.308C>T、c.334ATC>CTT、c.370C>T、c.406A>T、c.445G>A、c.449G>C、c.470G>A、c.511G>A、c.680C>A、c.680C>T、c.709A>G、c.718T>A、c.765G>A、c.781C>T、c.790A>C、c.807G>C、c.965G>A、c.1015A>T、c.1081C>T、c.1187A>G、c.1193A>G、c.1193A>C、c.1371C>G、c.1406C>G、及びc.1469C>T
からなる群から選択される1以上の多型を、
前記CYP2D17にあっては、
c.13G>A、c.35C>T、c.77G>A、c.83G>A、c.175G>A、c.367T>C、c.563C>A、c.679G>A、c.724C>G、c.769G>A、c.799C>G、c.815C>T、c.819G>C、c.866G>C、c.871A>C、c.877G>A、c.886C>T、c.891A>G、c.926C>G、c.952C>T、c.1009A>G、c.1012G>A、c.1072G>T、c.1150CTA>GTG、c.1162C>T、c.1165A>G、c.1181C>T、c.1264G>A、c.1277G>A、c.1322A>G、c.1375T>C、c.1411G>A、c.1414CA>TG、c.1415A>G、c.1420C>T、及びc.1486C>T
からなる群から選択される1以上の多型を、
前記CYP2D44にあっては、
c.69G>A、c.79C>G、c.101C>T、c.128T>del、c.164C>T、c.175G>C、c.227C>T、c.254C>A、c.269C>T、c.293C>T、c.298G>A、c.319T>A、c.337G>A、c.344G>A、c.371A>G、c.373G>C、c.395G>A、c.413C>A、c.469G>A、c.496G>A、c.502G>A、c.505G>A、c.524G>A、c.529C>T、c.553G>T、c.587A>T、c.595G>C、c.601C>G、c.612G>T、c.625G>C、c.628C>G、c.633G>C、c.664G>T、c.679G>A、c.694C>T、c.704C>G、c.710C>T、c.724C>G、c.734G>A、c.769G>A、c.806G>C、c.819C>G、c.845C>A、c.859G>A、c.891G>A、c.964G>A、c.971A>G、c.974C>T、c.988C>T、c.989G>C、c.1009A>G、c.1042C>G、c.1063T>A、c.1147G>A、及びc.1153C>A
からなる群から選択される1以上の多型を検出する、方法;
〔7〕前記多型が、前記医薬品候補化合物を代謝する薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化させるものである場合、前記個体差の原因は該多型であると判断する、上記〔6〕に記載の方法;
〔8〕ヒトまたはサルのCYP2C又はCYP2Dの機能を評価するための試験に用いるモデル動物、又は、ヒト用の医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性を試験するためのサルを作出する方法であって、
(a)以下の(i)から(iv)のいずれかを行う工程と:
(i)CYP2C43においては、c.44T>G、c.77G>A、c.85C>T、c.127C>A、c.130A>C、c.218G>A、c.245C>T、c.262A>G、c.317C>T、c.334A>C、c.389C>T、c.407T>C、c.761C>T、c.848A>C、c.887C>G、c.1024A>G、c.1031A>G、c.1032C>G、c.1150G>A、c.1187G>A、c.1213G>C、c.1228C>A、c.1263A>C、c.1319T>A、c.1324C>A、c.1421A>G、及びc.1444G>A
からなる群から選択される1以上の多型をヘテロ接合体またはホモ接合体で有するサル個体を選択する工程;
(ii)CYP2C75においては、c.66G>C、c.77G>A、c.85T>C、c.143A>G、c.167AC>GT、c.214G>C、c.220A>G、c.221T>C、c.298TT>AA、c.308C>T、c.334ATC>CTT、c.370C>T、c.406A>T、c.445G>A、c.449G>C、c.470G>A、c.511G>A、c.680C>A、c.680C>T、c.709A>G、c.718T>A、c.765G>A、c.781C>T、c.790A>C、c.807G>C、c.965G>A、c.1015A>T、c.1081C>T、c.1187A>G、c.1193A>G、c.1193A>C、c.1371C>G、c.1406C>G、及びc.1469C>T
からなる群から選択される1以上の多型をヘテロ接合体またはホモ接合体で有するサル個体を選択する工程;
(iii)CYP2D17においては、c.13G>A、c.35C>T、c.77G>A、c.83G>A、c.175G>A、c.367T>C、c.563C>A、c.679G>A、c.724C>G、c.769G>A、c.799C>G、c.815C>T、c.819G>C、c.866G>C、c.871A>C、c.877G>A、c.886C>T、c.891A>G、c.926C>G、c.952C>T、c.1009A>G、c.1012G>A、c.1072G>T、c.1150CTA>GTG、c.1162C>T、c.1165A>G、c.1181C>T、c.1264G>A、c.1277G>A、c.1322A>G、c.1375T>C、c.1411G>A、c.1414CA>TG、c.1415A>G、c.1420C>T、及びc.1486C>T
からなる群から選択される1以上の多型をヘテロ接合体またはホモ接合体で有するサル個体を選択する工程;及び
(iv)CYP2D44においては、c.69G>A、c.79C>G、c.101C>T、c.128T>del、c.164C>T、c.175G>C、c.227C>T、c.254C>A、c.269C>T、c.293C>T、c.298G>A、c.319T>A、c.337G>A、c.344G>A、c.371A>G、c.373G>C、c.395G>A、c.413C>A、c.469G>A、c.496G>A、c.502G>A、c.505G>A、c.524G>A、c.529C>T、c.553G>T、c.587A>T、c.595G>C、c.601C>G、c.612G>T、c.625G>C、c.628C>G、c.633G>C、c.664G>T、c.679G>A、c.694C>T、c.704C>G、c.710C>T、c.724C>G、c.734G>A、c.769G>A、c.806G>C、c.819C>G、c.845C>A、c.859G>A、c.891G>A、c.964G>A、c.971A>G、c.974C>T、c.988C>T、c.989G>C、c.1009A>G、c.1042C>G、c.1063T>A、c.1147G>A、及びc.1153C>A
からなる群から選択される1以上の多型をヘテロ接合体またはホモ接合体で有するサル個体を選択する工程、
(b)前記工程(a)で選択されたサル個体同士、または前記工程(a)で選択されたサル個体と別のサル個体とを交配させる工程と、
を含む方法;
〔9〕ヒト用の医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性を試験することを目的とするサルの使用であって、
前記サルがCYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、及びCYP2D44からなる群から選択される薬物代謝酵素の少なくとも1つをコードする遺伝子に多型を有し、
前記多型が
CYP2C43にあっては、
c.44T>G、c.77G>A、c.85C>T、c.127C>A、c.130A>C、c.218G>A、c.245C>T、c.262A>G、c.317C>T、c.334A>C、c.389C>T、c.407T>C、c.761C>T、c.848A>C、c.887C>G、c.1024A>G、c.1031A>G、c.1032C>G、c.1150G>A、c.1187G>A、c.1213G>C、c.1228C>A、c.1263A>C、c.1319T>A、c.1324C>A、c.1421A>G、及びc.1444G>A
からなる群から選択される1以上、
CYP2C75にあっては、
c.66G>C、c.77G>A、c.85T>C、c.143A>G、c.167AC>GT、c.214G>C、c.220A>G、c.221T>C、c.298TT>AA、c.308C>T、c.334ATC>CTT、c.370C>T、c.406A>T、c.445G>A、c.449G>C、c.470G>A、c.511G>A、c.680C>A、c.680C>T、c.709A>G、c.718T>A、c.765G>A、c.781C>T、c.790A>C、c.807G>C、c.965G>A、c.1015A>T、c.1081C>T、c.1187A>G、c.1193A>G、c.1193A>C、c.1371C>G、c.1406C>G、及びc.1469C>T
からなる群から選択される1以上、
CYP2D17にあっては、
c.13G>A、c.35C>T、c.77G>A、c.83G>A、c.175G>A、c.367T>C、c.563C>A、c.679G>A、c.724C>G、c.769G>A、c.799C>G、c.815C>T、c.819G>C、c.866G>C、c.871A>C、c.877G>A、c.886C>T、c.891A>G、c.926C>G、c.952C>T、c.1009A>G、c.1012G>A、c.1072G>T、c.1150CTA>GTG、c.1162C>T、c.1165A>G、c.1181C>T、c.1264G>A、c.1277G>A、c.1322A>G、c.1375T>C、c.1411G>A、c.1414CA>TG、c.1415A>G、c.1420C>T、及びc.1486C>T
からなる群から選択される1以上、
CYP2D44にあっては、
c.69G>A、c.79C>G、c.101C>T、c.128T>del、c.164C>T、c.175G>C、c.227C>T、c.254C>A、c.269C>T、c.293C>T、c.298G>A、c.319T>A、c.337G>A、c.344G>A、c.371A>G、c.373G>C、c.395G>A、c.413C>A、c.469G>A、c.496G>A、c.502G>A、c.505G>A、c.524G>A、c.529C>T、c.553G>T、c.587A>T、c.595G>C、c.601C>G、c.612G>T、c.625G>C、c.628C>G、c.633G>C、c.664G>T、c.679G>A、c.694C>T、c.704C>G、c.710C>T、c.724C>G、c.734G>A、c.769G>A、c.806G>C、c.819C>G、c.845C>A、c.859G>A、c.891G>A、c.964G>A、c.971A>G、c.974C>T、c.988C>T、c.989G>C、c.1009A>G、c.1042C>G、c.1063T>A、c.1147G>A、及びc.1153C>A
からなる群から選択される1以上であり、
前記多型を有する遺伝子にコードされる薬物代謝酵素の代謝活性が前記医薬品候補化合物を投与するヒトに類似しているサルの使用;
〔10〕ヒト用の医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性を試験するためのモデル動物とするサルを選択するためのキットであって、
配列番号5〜66、および配列番号128〜177のいずれかで表される塩基配列を含むプライマーを含む、キット
に関する。
本発明によれば、CYP2CおよびCYP2Dサブファミリーの薬物代謝酵素により代謝され得る薬物の、ヒトにおける薬物動態、薬効および安全性を評価するために非常に有用な、この酵素群の薬物代謝への影響を適切に評価することができるモデル動物の選択方法及びモデル動物が提供される。また、既に薬物動態試験、薬効試験、安全性試験等に用いたサル個体について、本発明の方法を適用すれば、該試験で見られた予想外の結果(異常値)の原因を説明することもできる。
図1は、CYP2C43 Non-synonymous変異タンパク質の触媒活性を示す。値は、2回行った実験の平均である。 図2は、CYP2C75 Non-synonymous変異の触媒活性を示す。値は、2回行った実験の平均である。 N. D.は検出限界以下であることを示す。 図3は、異なるCYP2C75遺伝子型のカニクイザル肝臓でのワルファリン・水酸化活性の率を示す。値は、2回行った実験の平均である。*はP < 0.05、**はP < 0.01であることを示す。 図4は、CYP2D17 Non-synonymous変異の触媒活性を示す。値は、2回行った実験の平均である。 図5は、異なるCYP2D17変異を有するカニクイザルの肝臓での酵素活性を示す。値は、2回行った実験の平均である。wは野生型、mは変異型を示す。***はP < 0.01、**はP < 0.05であることを示す。 図6は、CYP2D44 Non-synonymous変異の触媒活性を示す。値は、2回行った実験の平均である。
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明は、サルのCYP2C又はCYP2Dサブファミリーに属する薬物代謝酵素のうち、CYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、及びCYP2D44からなる群から選択される薬物代謝酵素をコードする核酸またはその一部であって、以下の多型を含む核酸を含む。
本明細書において「サル」とは、旧世界ザル、新世界ザル、原猿類等を含み、ヒトを除く霊長目(primates)に属する動物を意味する。特に、本発明が、ヒトにおける薬物代謝を調べるためのモデル動物を提供するという観点からは、旧世界ザルが好ましく、マカク属のサル(Macaca)(例えば、カニクイザル(Cynomolgus macaque、Macaca facicularisまたはMacaca irus)、アカゲザル(Rhesus macaque、Macaca mulatta)、ブタオザル(Pig- tailed macaque、Macaca nemestrina)、ニホンザル(Japanese macaque、Macaca fuscata)等およびアフリカミドリザル(African green monkey、Cercopithecus aethiops)がより好ましい。特に、ヒトとよく似た薬物代謝能を示すことが知られるカニクイザルおよびアカゲザルが好ましい。
本明細書中において、「CYP2Cサブファミリーに属する薬物代謝酵素」は、ヒトおよび上記サルにおいて見出されるCYP2Cサブファミリーに属する全ての分子種を含み、例えばヒトではCYP2C8、CYP2C9、CYPC18およびCYP2C19、サルでは、マカク属のサルにおけるCYP2C43およびCYP2C75、及びその他のサルにおけるこれらに対応する薬物代謝酵素を含む。
また、本明細書中において、「CYP2Dサブファミリーに属する薬物代謝酵素」は、ヒトおよび上記サルにおいて見出されるCYP2Dサブファミリーに属する全ての分子種を含み、例えばヒトではCYP2D6、サルでは、マカク属のサルにおけるCYP2D17およびCYP2D44、及びその他のサルにおけるこれらに対応する薬物代謝酵素を含む。
「その他のサルにおけるこれらに対応する薬物代謝酵素」は、当業者が適宜調べることができる。「対応する」薬物代謝酵素であるか否かは、例えば、マカク属のサルにおける薬物代謝酵素の遺伝子と、他のサルにおける薬物代謝酵素の遺伝子の配列同一性や相同性から、当業者が確認することができる。マカク属のサルの薬物代謝酵素に「対応する」他のサルの薬物代謝酵素の例として、マカク属のサルにおける薬物代謝酵素の遺伝子のオーソログ遺伝子にコードされる他のサルの薬物代謝酵素が挙げられるが、これに限定されない。
以下、本明細書では、特に断りのある場合を除き、「サルのCYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、又はCYP2D44」という場合、マカク属におけるCYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、又はCYP2D44に加え、その他のサルにおけるこれらに対応する薬物代謝酵素を含む。
例えば、マカク属のサルのCYP2D17は、アカゲザルにおいてはCYP2D42であるが、本明細書においてサルの「CYP2D17」は、アカゲザルのCYP2D42も含む概念で用いられる。また、「カニクイザルとアカゲザルのCYP2D17」は、カニクイザルのCYP2D17とアカゲザルのCYP2D42を示す概念で用いられる。
本明細書において「核酸」は、天然又は非天然の核酸を含み、DNA及びRNAを含むがこれらに限定されない。本明細書において「薬物代謝酵素をコードする核酸」は、薬物代謝酵素のアミノ酸配列に対応する塩基配列を有する核酸をいい、例えば、薬物代謝酵素の遺伝子、cDNA、mRNAを含む。
本明細書における「薬物代謝酵素をコードする核酸」は、配列の同一性などから、当業者がその薬物代謝酵素をコードすると認識できる核酸であればよく、多型や変異を含んでいてもよい。多型や変異を含んでいる結果、タンパク質を発現できないものであってもよい。
本明細書において「薬物代謝酵素をコードする核酸の一部」は、所定の多型を含む限り、どのような長さの一部であってもよい。例えば、5塩基以上、8塩基以上、10塩基以上としてもよく、20塩基以下、30塩基以下、40塩基以下であってもよい。5塩基〜40塩基、8塩基〜30塩基、10塩基〜20塩基としてもよい。
本明細書において、サルの薬物代謝酵素CYP2C43又はCYP2C75をコードする核酸としては、例えば、カニクイザルおよびアカゲザルにおけるCYP2C43遺伝子やCYP2C75遺伝子が挙げられる。ここで、カニクイザルおよびアカゲザルのCYP2C43遺伝子はCYP2C9遺伝子とも呼ばれることがあり、カニクイザルおよびアカゲザルCYP2C75遺伝子はCYP2C19遺伝子とも呼ばれることがある。
カニクイザルおよびアカゲザルにおけるCYP2C43およびCYP2C75の遺伝子は本明細書中において、それぞれ、カニクイザルCYP2C43およびアカゲザルCYP2C43、カニクイザルCYP2C75およびアカゲザルCYP2C75とも言う。GenBankに登録されているこれらの遺伝子のcDNAは、カニクイザルCYP2C43 cDNA (GenBankアクセッション番号DQ074806、配列番号:1)およびアカゲザルCYP2C43 cDNA (GenBankアクセッション番号NP_001035329)、カニクイザルCYP2C75 cDNA (GenBankアクセッション番号DQ074805、配列番号:2)およびアカゲザルCYP2C75 cDNA (GenBankアクセッション番号NP_001035301)、である。
本明細書において、サルの薬物代謝酵素CYP2D17又はCYP2D44をコードする核酸としては、カニクイザルのCYP2D17遺伝子やCYP2D44遺伝子、アカゲザルにおけるCYP2D42遺伝子やCYP2D44遺伝子が挙げられる。
本明細書中において、カニクイザルのCYP2D17およびアカゲザルにおけるCYP2D42の遺伝子は、それぞれカニクイザルCYP2D17およびアカゲザルCYP2D42とも言う。また、上述のとおり、カニクイザルのCYP2D17はアカゲザルCYP2D42に対応するので、本願ではいずれも単にCYP2D17と示す場合がある。本明細書中のカニクイザルおよびアカゲザルにおけるCYP2D44の遺伝子は、カニクイザルCYP2D44およびアカゲザルCYP2D44とも言う。GenBankに登録されているこれらの遺伝子のcDNAは、カニクイザルCYP2D17 cDNA (GenBankアクセッション番号GU981762、配列番号:3)およびアカゲザルCYP2D42 cDNA (GenBankアクセッション番号NP_001035308(アカゲザルCYP2D6として登録))、カニクイザルCYP2D44 cDNA (GenBankアクセッション番号DQ297684、配列番号:4)である。
本明細書中において、「多型」とは、CYP2CおよびCYP2Dサブファミリーの薬物代謝酵素の遺伝子の塩基配列上の個体間での変化を意味し、かかる変化は、塩基の付加、欠失、挿入、置換のいずれであってもよく、変化を生じる塩基の数も限定されない。個体間での変化の頻度が高いものを多型と呼び、低いものを変異と呼ぶ概念もあるが、本明細書中においては、多型と変異を区別しない。
本発明に係る方法で検出する多型としては、塩基配列上で一の塩基のみが個体間で異なる一塩基多型(SNPs)であってもよく、二以上の塩基が異なる多型であってもよい。SNPsであればエクソンに存在するcSNPs、転写調節領域に存在するrSNPs、遺伝子領域でない部分に存在するgSNPsのいずれであってもよい。本明細書中において、SNPsを記載する場合には、コーディング鎖側の塩基で記載する。
多型を検出する場合、用いるDNAは、サル個体から当業者に公知の手法を用いて得ることができる。そのようなDNA(ゲノム)を得るための試料は、体細胞由来であれば特に限定されず、例えば血液試料、肝臓試料などを用いることができる。サルにおいて、CYP2C43、CYP2C75、CYP2D17およびCYP2D44は肝臓で強く発現することが知られ、これらの組織由来の試料はcDNAを得るために好ましく用いることができる。
本発明の方法において、多型の検出は、CYP2CおよびCYP2Dサブファミリーに属する薬物代謝酵素をコードするヒト遺伝子のオーソログである、サル個体の遺伝子領域および該遺伝子領域の両側に隣接する塩基について行うことができる。例えば、両側に隣接する2000塩基、好ましくは1000塩基、より好ましくは500塩基および該塩基に挟まれる遺伝子領域について、多型を検出することができる。
本明細書におけるCYP2C43遺伝子、CYP2C75遺伝子、CYP2D17遺伝子、及びCYP2D44遺伝子「多型」の例を以下に示す。
CYP2C43をコードする遺伝子の多型としては、例えばc.44T>G、c.77G>A、c.85C>T、c.127C>A、c.130A>C、c.218G>A、c.245C>T、c.262A>G、c.317C>T、c.334A>C、c.389C>T、c.407T>C、c.761C>T、c.848A>C、c.887C>G、c.1024A>G、c.1031A>G、c.1032C>G、c.1150G>A、c.1187G>A、c.1213G>C、c.1228C>A、c.1263A>C、c.1319T>A、c.1324C>A、c.1421A>G、及びc.1444G>A等が挙げられる。これらの多型は、いずれもアミノ酸の置換を伴う。ここで、44、77等の数字は、カニクイザルCYP2C43遺伝子のcDNA配列としてGenBankに登録されたアクセッション番号DQ074806(配列番号:1)の塩基配列において翻訳開始点を+1として数えた場合の塩基配列の番号を表す。なお、翻訳開始点とは、アクセッション番号DQ074806(配列番号:1)で表される塩基配列によりコードされるアミノ酸の開始コドンであるメチオニン(ATG)の最初の塩基(A)に対応し、アクセッション番号DQ074806(配列番号:1)で表される塩基配列の26番目のAをいう。また、T>G、G>Aは、それぞれTがGに置換されていること、GがAに置換されていることを示す。
このうち、c.317C>T、c.334A>C、c.887C>G、c.1319T>A、c.1324C>A、及びc.1421A>Gの遺伝子多型は、1塩基置換により異なるアミノ酸に翻訳される上に、置換される領域は多くの機能に重要な領域(基質認識部位(SRS)、ヘム結合領域を含む)であるため、機能が変化したタンパク質が生じることが強く示唆される。
実際、本発明者らは、カニクイザルCYP2C43において、c.317C>T、c.887C>G、c.1421A>G の多型が存在する場合には発現タンパク質の酵素代謝能が変化することを確認した。
本発明の方法において検出される多型は、カニクイザル以外のサルにおける上記遺伝子群のオーソログ遺伝子における多型であってもよい。他のサルにおいても、CYP2C43においてこれらの多型が存在する場合にはCYP2C43の機能が変化しうる。他のサルにおけるCYP2C43のオーソログ遺伝子、及び、当該オーソログ遺伝子における上記のカニクイザルCYP2C43の多型に対応する多型の有無は、当業者であれば常法により確認することができる。
CYP2C75をコードする遺伝子の多型としては、例えばc.66G>C、c.77G>A、c.85T>C、c.143A>G、c.167AC>GT、c.214G>C、c.220A>G、c.221T>C、c.298TT>AA、c.308C>T、c.334ATC>CTT、c.370C>T、c.406A>T、c.445G>A、c.449G>C、c.470G>A、c.511G>A、c.680C>A、c.680C>T、c.709A>G、c.718T>A、c.765G>A、c.781C>T、c.790A>C、c.807G>C、c.965G>A、c.1015A>T、c.1081C>T、c.1187A>G、c.1193A>G、c.1193A>C、c.1371C>G、c.1406C>G、及びc.1469C>T等が挙げられる。ここで、77、85等の数字は、カニクイザルCYP2C75遺伝子のcDNA配列としてGenBankに登録されたアクセッション番号DQ074805(配列番号:2)の塩基配列において翻訳開始点を+1として数えた場合の塩基配列の番号を表す。なお、翻訳開始点とは、アクセッション番号DQ074805(配列番号:2)で表される塩基配列によりコードされるアミノ酸の開始コドンであるメチオニン(ATG)の最初の塩基(A)に対応し、アクセッション番号DQ074805(配列番号:2)で表される塩基配列の29番目のAをいう。また、TT>AAは、TTがAAに置換されていることを示す。
このうち、c.298TT>AA、c.308C>T、c.334ATC>CTT、c.709A>G、c.718T>A、及びc.1081C>Tの遺伝子多型は、塩基置換により異なるアミノ酸に翻訳される上に、置換される領域は多くの機能に重要な領域(基質認識部位を含む)であるため、機能が変化したタンパク質が生じることが強く示唆される。
実際、本発明者らは、カニクイザルCYP2C75において、c.298TT>AA、c.308C>T、c.334ATC>CTT、c.709A>Gの多型が存在する場合には発現タンパク質の酵素代謝能が変化することを確認している。
本発明の方法において検出される多型は、カニクイザル以外のサルにおける上記遺伝子群のオーソログ遺伝子における多型であってもよい。他のサルにおいても、CYP2C75においてこれらの多型が存在する場合にはCYP2C75の機能が変化しうる。他のサルにおけるCYP2C75のオーソログ遺伝子、及び、当該オーソログ遺伝子における上記のカニクイザルCYP2C75の多型に対応する多型の有無は、当業者であれば常法により確認することができる。
CYP2D17をコードする遺伝子の多型としては、例えばc.13G>A、c.35C>T、c.77G>A、c.83G>A、c.175G>A、c.367T>C、c.563C>A、c.679G>A、c.724C>G、c.769G>A、c.799C>G、c.815C>T、c.819G>C、c.866G>C、c.871A>C、c.877G>A、c.886C>T、c.891A>G、c.926C>G、c.952C>T、c.1009A>G、c.1012G>A、c.1072G>T、c.1150CTA>GTG、c.1162C>T、c.1165A>G、c.1181C>T、c.1264G>A、c.1277G>A、c.1322A>G、c.1375T>C、c.1411G>A、c.1414CA>TG、c.1415A>G、c.1420C>T、及びc.1486C>T等が挙げられる。ここで、35、83等の数字は、カニクイザルCYP2D17遺伝子のcDNA配列としてGenBankに登録されたアクセッション番号GU981762(配列番号:3)配列番号1の塩基配列において翻訳開始点を+1として数えた場合の塩基配列の番号を表す。なお、翻訳開始点とは、アクセッション番号GU981762(配列番号:3)で表される塩基配列によりコードされるアミノ酸の開始コドンであるメチオニン(ATG)の最初の塩基(A)に対応し、アクセッション番号GU981762(配列番号:3)で表される塩基配列の9番目のAをいう。
このうち、c.367T>C、c.724C>G、c.886C>T、c.891A>G、c.926C>G、及びc.1322A>Gの遺伝子多型は、塩基置換により異なるアミノ酸に翻訳される上に、置換される領域は多くの機能に重要な領域(基質認識部位、ヘム結合領域を含む)であるため、機能が変化したタンパク質が生じることが強く示唆される。
実際、本発明者らは、カニクイザルCYP2D17において、c.724C>G、c.891A>G、c.1009A>Gの多型が存在する場合には発現タンパク質の酵素代謝能が変化することを確認している。
本発明の方法において検出される多型は、カニクイザル以外のサルにおける上記遺伝子群のオーソログ遺伝子における多型であってもよい。他のサルにおいても、CYP2D17においてこれらの多型が存在する場合にはCYP2D17の機能が変化しうる。他のサルにおけるCYP2D17のオーソログ遺伝子、及び、当該オーソログ遺伝子における上記のカニクイザルCYP2D17の多型に対応する多型の有無は、当業者であれば常法により確認することができる。
CYP2D44をコードする遺伝子の多型としては、例えばc.69G>A、c.79C>G、c.101C>T、c.128T>del、c.164C>T、c.175G>C、c.227C>T、c.254C>A、c.269C>T、c.293C>T、c.298G>A、c.319T>A、c.337G>A、c.344G>A、c.371A>G、c.373G>C、c.395G>A、c.413C>A、c.469G>A、c.496G>A、c.502G>A、c.505G>A、c.524G>A、c.529C>T、c.553G>T、c.587A>T、c.595G>C、c.601C>G、c.612G>T、c.625G>C、c.628C>G、c.633G>C、c.664G>T、c.679G>A、c.694C>T、c.704C>G、c.710C>T、c.724C>G、c.734G>A、c.769G>A、c.806G>C、c.819C>G、c.845C>A、c.859G>A、c.891G>A、c.964G>A、c.971A>G、c.974C>T、c.988C>T、c.989G>C、c.1009A>G、c.1042C>G、c.1063T>A、c.1147G>A、及びc.1153C>A等が挙げられる。ここで、128、175等の数字は、カニクイザルCYP2D44遺伝子のcDNA配列としてGenBankに登録されたアクセッション番号DQ297684(配列番号:4)の塩基配列において翻訳開始点を+1として数えた場合の塩基配列の番号を表す。なお、翻訳開始点とは、アクセッション番号DQ297684(配列番号:4)で表される塩基配列によりコードされるアミノ酸の開始コドンであるメチオニン(ATG)の最初の塩基(A)に対応し、アクセッション番号DQ297684(配列番号:4)で表される塩基配列の82番目のAをいう。
このうち、c.128T>delは、128番目のTが欠失していることを意味する。従って、c.128T>delの場合には、フレームシフトが生じ全長のP450タンパク質が発現しないものと推測される。
また、c.319T>A、c.337G>A、c.344G>A、c.371A>G、c.373G>C、c.625G>C、c.628C>G、c.633G>C、c.724C>G、c.734G>A、及びc.891G>Aの遺伝子多型は、塩基置換により異なるアミノ酸に翻訳される上に、置換される領域は多くの機能に重要な領域(基質認識部位を含む)であるため、機能が変化したタンパク質が生じることが強く示唆される。
実際、本発明者らは、カニクイザルCYP2D44において、c.524G>A、c.553G>T、c.704C>G、c.724C>G、c.734G>A、及びc.1009A>Gの多型が存在する場合には発現タンパク質の酵素代謝能が変化することを確認している。
本発明の方法において検出される多型は、カニクイザル以外のサルにおける上記遺伝子群のオーソログ遺伝子における多型であってもよい。他のサルにおいても、CYP2D44においてこれらの多型が存在する場合にはCYP2D44の機能が変化しうる。他のサルにおけるCYP2D44のオーソログ遺伝子、及び、当該オーソログ遺伝子における上記のカニクイザルCYP2D44の多型に対応する多型の有無は、当業者であれば常法により確認することができる。
本発明に係る核酸は、当業者が公知の方法又はそれに準ずる方法で調製することができる。例えば、細胞から抽出してもよいし、自動合成装置によって合成してもよい。
本発明に係る核酸は、薬物代謝酵素を発現させない多型を有しない限り、発現ベクターのプロモータの下流に挿入することにより、薬物代謝酵素を発現させることができる。本明細書において「発現ベクター」は、目的のタンパク質を発現させることができる限り特に限定されないが、例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13、pUC18、pUC19、pUC118、pBluescript II、pUB110、pTP5、pC1912、pTP4、pE194、pC194、pSH19、pSH15、pCW、YEp、YRp、YIp、YAC等のプラスミドベクター、バクテリオファージ(λファージ、M13ファージ等)、ウイルス(レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルス、バキュロウイルス等)、コスミド等を使用してもよい。
プロモータは、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。宿主が動物細胞である場合は、例えば、SV40(simian virus 40)由来プロモータ、CMV(cytomegalovirus)由来プロモータを用いてもよい。宿主が大腸菌である場合は、trpプロモータ、T7プロモータ、lacプロモータ等を用いてもよい。
発現ベクターには、DNA複製開始点(ori)、選択マーカー(抗生物質抵抗性、栄養要求性等)、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、タグ(FLAG、HA、GST、GFPなど)をコードする核酸等を組み込んでもよい。
本明細書において「形質転換体」は、本発明に係る核酸を含む発現ベクターを用いて宿主を形質転換することにより作ることができる。
形質転換に用いる宿主は、ベクターとの関係で適宜選択することができ、例えば、大腸菌、枯草菌、バチルス属菌)、酵母、昆虫又は昆虫細胞、動物細胞等が用いられる。動物細胞として、例えば、HEK293T細胞、CHO細胞、COS細胞、ミエローマ細胞、HeLa細胞、Vero細胞などを用いてもよい。形質転換は、宿主の種類に応じ、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法等、公知の方法に従って行うことができる。
形質転換体を常法に従って培養することにより、目的とする薬物代謝酵素が発現する。培地は、宿主の種類等に応じて適宜選択される。
形質転換体の培養物からの薬物代謝酵素の精製は、当業者が公知の方法又はそれに順ずる方法に従って行うことができる。例えば、培養細胞を回収し、適当な緩衝液に懸濁してから超音波処理、凍結融解などの方法により細胞を破壊し、遠心分離やろ過によって粗抽出液を得る。
粗抽出液からの精製も公知の方法又はそれに準ずる方法(例えば、塩析、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、SDS−PAGE法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー等)で行うことができる。
得られたペプチドは、公知の方法又はそれに準ずる方法で遊離体から塩に、又は塩から遊離体に変換してもよい。
また、上記形質転換体は、多型を有する薬物代謝酵素についてin vitroの代謝試験にも有用である。
本発明は、代謝活性に異常を有するヒトのための医薬品候補化合物について、薬物動態、薬効および/または安全性を試験するためのモデル動物とするサルを選択する方法も包含する。
当該方法は、
代謝活性に異常を有するヒトにおける医薬品候補化合物の代謝活性を調べる工程と、
医薬品候補化合物が、サルにおいてどの酵素で代謝されるのか調べる工程と、
医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素の遺伝子が、サルにおける医薬品候補化合物の代謝が前記代謝活性に異常を有するヒトと同等となる多型を有する個体を選択する工程と、を含む。
本明細書において、代謝活性に異常を有するヒトとは、疾患等によって、特定の薬物の代謝活性が健常者とは異なるヒトいう。
サルを用いた試験は、ヒトの臨床試験における初回投与量を決定することを目的の1つとすることがあるが、代謝活性に異常を有しないヒトに対する医薬品の開発に用いるサルと同じサルを用いると、代謝活性に以上を有するヒトに対しては不適切な初回投与量が決定され、臨床試験の被験者であるヒトに危険を及ぼす可能性がある。
代謝活性に異常を有するヒトは、以下のように分類することができる。
UM (ultra-rapid metabolizer):代謝活性が高すぎて薬が効かない
EM (extensive metabolizer):標準的なヒトと同じ薬物代謝活性を示す
IM (intermediate metabolizer):EMより薬物代謝活性が低い
PM (poor metabolizer):代謝活性が低すぎて投与薬の血中濃度が高くなり副作用を示す
本明細書において、「代謝活性に異常を有するヒトにおける前記医薬品候補化合物の代謝活性を調べる工程」は、臨床試験の被験者群における、開発対象となる医薬品化合物の代謝活性を調べる工程を意味し、例えば、臨床試験の被験者群(例えば、特定の代謝疾患を有する被験者群)上記分類を特定する工程を意味する。
代謝活性を調べる工程は、どのような方法で行ってもよく、例えば文献を調べてもよいし、被験者群から採取した細胞や組織を用いてin vitroの代謝試験を行うことにより調べてもよい。
本明細書において、医薬品候補化合物が、サルにおいてどの酵素で代謝されるのか調べる工程も、当業者が、公知の方法に従って、適宜行うことができ、例えば、野生型のサルから採取した細胞や組織を用いて、in vitroの代謝試験を行うことにより行ってもよい。具体的には、その医薬品化合物が、CYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、又はCYP2D44で代謝されるか否かを調べる。
調べた結果、CYP2Cサブファミリーが代謝する医薬品候補化合物は、例えば、CYP2C43のみが代謝する、CYP2C75のみが代謝する、CYP2C43及びCYP2C75が代謝する場合が考えられる。
また、CYP2Dサブファミリーが代謝する医薬品候補化合物は、例えば、CYP2D17のみが代謝する、CYP2D44のみが代謝する、CYP2D17及びCYP2D44が代謝する場合が考えられる。
本明細書において、「医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素の遺伝子が、サルにおける医薬品候補化合物の代謝が前記代謝活性に異常を有するヒトと同等となる多型を有する個体を選択する工程」は、上記工程で医薬品候補化合物を代謝することがわかったサルの遺伝子における多型のうち、サルにおいて、代謝活性に異常を有するヒトと同等な代謝活性を与える多型を有するサルを選択する工程をいう。
例えば、「代謝活性に異常を有するヒトにおける前記医薬品候補化合物の代謝活性を調べる工程」において、臨床試験の被験者群における医薬品候補化合物の代謝活性がUMであると評価された場合であって、「医薬品候補化合物が、サルにおいてどの酵素で代謝されるのか調べる工程」において、遺伝子がCYP2C43であると特定された場合、CYP2C43の多型のうち、医薬品候補化合物Xの代謝活性が通常(野生型のサルのレベル)より高くなる多型を選び、その多型を有する個体をモデル動物として選択することができる。
また、「代謝活性に異常を有するヒトにおける前記医薬品候補化合物の代謝活性を調べる工程」において、臨床試験の被験者群における医薬品候補化合物の代謝活性がEMであると評価された場合であって、「医薬品候補化合物が、サルにおいてどの酵素で代謝されるのか調べる工程」において、遺伝子がCYP2C75であると特定された場合、CYP2C75の多型のうち、医薬品候補化合物の代謝活性を通常とあまり変化させない多型を選び、その多型を有する個体をモデル動物として選択することができる。
また、「代謝活性に異常を有するヒトにおける前記医薬品候補化合物の代謝活性を調べる工程」において、臨床試験の被験者群における医薬品候補化合物の代謝活性がIMであると評価された場合であって、「医薬品候補化合物が、サルにおいてどの酵素で代謝されるのか調べる工程」において、遺伝子がCYP2D17であると特定された場合、CYP2D17の多型のうち、医薬品候補化合物の代謝活性が通常より低くなる多型を選び、その多型を有する個体をモデル動物として選択することができる。
また、「代謝活性に異常を有するヒトにおける前記医薬品候補化合物の代謝活性を調べる工程」において、臨床試験の被験者群における医薬品候補化合物の代謝活性がPMであると評価された場合であって、「医薬品候補化合物が、サルにおいてどの酵素で代謝されるのか調べる工程」において、遺伝子がCYP2D44であると特定された場合、CYP2D44の多型のうち、医薬品候補化合物の代謝活性が通常よりかなり低くなる多型又はヌル変異を選び、その多型又はヌル変異を有する個体をモデル動物として選択することができる。
なお、上記は例示であって、ヒトの代謝活性、薬物を代謝するサルの遺伝子の種類、及び当該遺伝子の多型による代謝の変化の程度に基づいて、当業者は適宜モデル動物として最適な多型を有するサルを選択すればよい。
多型を検出して個体を選別すれば、選別の再現性が高くなるとともに、試験データのばらつきも少なくすることができる。
また、本発明は、サルをモデル動物として行った、ヒトの医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性の試験データにおける個体差の原因を究明する方法も包含する。
かかる方法は、試験に用いたサル個体において、CYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、及びCYP2D44からなる群から選択される薬物代謝酵素の少なくとも1つをコードする遺伝子の多型を検出する工程と、
検出された多型が、薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化させるものであるか評価する工程と、を含む。
本発明において、遺伝子の多型の検出は、当業者に公知の手法のいずれを用いても行うことができる。例えば、後述の実施例1に記載のように、既報のサルのCYP2CおよびCYP2Dサブファミリーの酵素の遺伝子と、被験対象の個体から得た対応遺伝子の配列を比較することによって行うことができる。たとえば、エクソンに存在する多型を検出したい場合には、それぞれのエクソンおよびその近傍領域を、プライマーを用いて増幅し、シーケンシングによって塩基配列を決定し、これを既報のCYP2CおよびCYP2Dサブファミリーの酵素の遺伝子の塩基配列と比較することができる(ダイレクトシーケンス法)。
その他の手法としては、例えば、以下のような方法を用いることができる。
1. PCR-RFLP(Restriction Fragment Length Polymorphism)法
特定の多型を有する遺伝子では、制限酵素による切断によって生じる断片の長さが異なることを利用して、多型を検出する方法である。検出しようとする多型を含む領域をPCRによって増幅した後、増幅産物に変異部を認識する制限酵素を作用させ、断片を電気泳動法等により分離、同定する。生じた断片の長さから制限酵素による切断の有無、ひいては多型の有無を確認することができる。
2. ASP(Allele Specific Primer)-PCR
多型を含む領域にハイブリダイズするプライマーを用いてPCRを行い、多型を有する場合、当該プライマーと鋳型DNAとの間にミスマッチが生じるため伸長反応が起こらないことを利用する方法である。増幅産物を電気泳動法等により分離、同定し、増幅の有無を確認することによって、試料DNAの多型の有無を知ることができる。
3. 一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)法
サル由来のDNAをPCRで増幅した後、1本鎖に解離させると、1本鎖DNAは塩基対形成をはじめとする種々の分子内相互作用で、塩基配列に依存した固有の高次構造をとり、わずかな塩基配列の違いが存在しても、高次構造が変化する。そのため1本鎖DNAをポリアクリルアミド中で電気泳動すると、高次構造の違いに応じて移動度も異なり、この移動度の違いを検出することによって多型の有無を判定することができる。
4. 変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)法
尿素、ホルムアミド等の変性剤の濃度に勾配をつけたポリアクリルアミドゲル上で、必要に応じて制限酵素等で処理したサル由来の被検DNAサンプルと、正常DNA断片との混合物の電気泳動を行ってサンプルを分離する。多型に起因するミスマッチが存在すると、より低い濃度の変性剤で1本鎖に解離するため、ミスマッチのない2本鎖より泳動速度が速くなる。従って、正常DNAサンプルのバンドと比較することによって、1本鎖の存在の有無を検出することが可能となり、結果として多型の有無を検出することができる。
5. マイクロアレイを用いる方法
マイクロアレイ上に固定されたプローブDNAと、サル由来のDNAまたはRNAサンプルとのハイブリダイゼーションを検出して、多型の有無を解析する方法である。ハイブリダイゼーションの有無を検出する方法や、プローブDNAの3’末端を多型の予想される部位にあわせてハイブリダイゼーションさせ、標識したジデオキシヌクレオチドとDNAポリメラーゼを添加して、伸長反応の有無を検出する方法等がある。標識は、蛍光色素、放射性物質、電気化学的に検出できる化合物等各種選択することができる。
6. Pyrosequencing法
シーケンス反応を化学発光で検出する方法である。サル由来の被検DNAをPCRで増幅した後、1本鎖DNAを精製し、適当なプライマーをハイブリダイズさせてからデオキシヌクレオチドを一塩基ずつ添加する。伸長反応に伴って発生するピロリン酸がカスケード反応を開始させ、生じたATPによりルシフェリンを基質としてルシフェラーゼが発光する。この発光を検出することにより被検DNAの塩基配列を決定することができ、高精度に多型を検出できる(Alderborn A et al., Genome Res (2000) 28:1249-1258)。
その他の例として、質量分析計(MALDI TOF-MS等)を用いて、質量の違いにより多型を検出する方法や、クエンチャーと蛍光色素によって標識されたアレル特異的オリゴと、TaqDNAポリメラーゼを用いたPCR反応を行ってタイピングするTaqMan PCR法、標的DNAの一塩基ミスマッチの構造変化を特異的に認識する酵素を用いた蛍光シグナルの検出によるインベーダー法、LAMP法、SMAP法等が挙げられる。
検出された多型が、前記薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化させるものであるかの評価は、例えば、特定の多型及び薬物については、後述する実施例の結果を参照することによって行うことができる。
また、例えば後述の実施例4に記載のように、該多型を有する遺伝子(cDNA)から発現させたタンパク質を得て、対照となるレファレンス遺伝子(cDNA)から発現させたタンパク質との物性を比較することにより判断する手法を用いることができる。また、該多型を有する遺伝子(cDNA)からの発現タンパク質について薬物代謝能を確認する手法も用いることができる。発現タンパク質による薬物代謝の確認に用いる薬物は、CYP2CおよびCYP2Dサブファミリーが代謝する可能性があるものであれば特に限定されない。例えば、CYP2C43、CYP2C75について、ヒトCYP2Cで基質特異性が確認されているフルルビプロフェンとS-メフェニトイン、CYP2D17、CYP2D44について、ヒトCYP2Dで基質特異性が確認されているブフラロールとデキストロメトルファンを用いて薬物代謝能を確認することができる。
検出された多型が、前記薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化させるものであるかは、該多型を有する遺伝子でコードされるアミノ酸配列を、対照となるレファレンス遺伝子でコードされるアミノ酸配列と比較することによって評価することもできる。個体の肝臓や血液由来の試料を用いて、レファレンスcDNAから発現させたタンパク質を認識する抗体を用いたウェスタンブロットにより、タンパク質発現量の変化や発現タンパク質の分子量がわかり、また、免疫染色によって細胞内における薬物代謝酵素の局在の変化がわかるため、これらの手法を用いて評価することもできる。RNAからcDNAを合成して塩基配列を決定することによって、スプライシングに影響を及ぼす多型において、スプライシングのパターンがどのように変化したのかという観点から評価することもできる。リアルタイムRT-PCR法によって野生型とは異なる転写産物(バリアント)の発現量を定量することによって評価することもできる。
検出された多型が、前記薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化させるものであるかの評価は、その多型を有するサルを調べることによって行うこともできる。例えば、ある多型を有する個体と有しない個体に、ある薬物を投与し、生成される代謝物の種類や量を測定することによって、その多型による薬物代謝酵素の発現や機能が変化したかどうかを調べることができる。
薬物代謝酵素の発現および機能の「変化」とは、酵素の発現の阻害、抑制および亢進ならびに酵素の機能の阻害、抑制および亢進のいずれも含み、このような変化によって、例えば、酵素の代謝活性、基質特異性、安定性等が変化し得る。「変化」は統計学的に有意な変化であってもよいし、統計学的に有意な変化でなくても、変化する傾向があると当業者が認識できる程度での変化であってもよい。
本発明は、上記に詳述したように、サル個体において、CYP2CおよびCYP2Dサブファミリーに属する薬物代謝酵素をコードする遺伝子の多型を検出し、前記多型が、前記薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化させるものであるか評価することにより、ヒト用の医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性を試験データにおける個体差の原因を究明する。
後述する実施例に示されるとおり、本発明者らは、CYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、及びCYP2D44について、代謝活性を変化させる可能性の高い多型、すなわちアミノ酸置換や欠失を生じる多型、基質認識部位やヘム結合領域に位置する多型、全長の酵素タンパク質が発現しなくなる多型等を検出している。
したがって、各多型の薬物代謝活性への影響を調べる場合には、これらの多型を優先して調べることにより、作業を大きく効率化することができる。
本明細書において、「ヒトと同等な代謝活性」とは、ある薬物について、ヒトと同じ代謝物が同程度生成されることをいう。同じ代謝物が同程度生成されることは、in vitro又はin vivoの試験で当業者が適宜確認することができる。
また、本明細書において「薬物代謝パターンがヒトに近い」とは、代謝される薬物の種類や代謝産物等がヒトに類似し、薬物動態試験、薬効試験、毒性試験等の結果もヒトと近似することを意味する。「薬物代謝パターンがヒトに近い」という場合、複数の薬物に対する代謝パターンがヒトに近い場合も、特定の薬物に対する代謝パターンのみがヒトに近い場合も含む。このようなモデル動物を用いた試験結果からは、ヒトでの試験結果を予測することができるため、医薬品開発の過程で、ヒトを用いた臨床試験に先立って行われる前臨床試験等において有用なモデル動物となる。
本発明は、また、既にモデル動物として薬物動態試験、薬効試験、安全性試験等に用いたサル個体について、上記の本発明の選択方法を適用することによって、前記試験において異常値が観察された場合等に、該異常値が、CYP2CおよびCYP2Dサブファミリーに属する薬物代謝酵素をコードする遺伝子の多型(既知または新規の多型を含む)によるものであるか評価することができ、該異常値の原因を明らかにすることができる。例えば、既にモデル動物として用いたサル個体であって、ある薬物の試験において異常値が観察されたサル個体からCYP2CおよびCYP2Dサブファミリーに属する薬物代謝酵素をコードする遺伝子の多型であって、当該薬物に対して表現型としてUMやPMを与える多型が検出された場合、その異常値の原因についてそれ以上検討を重ねることなく、当該個体を被験動物から除外することができる。
本発明はまた、ヒトまたはサルのCYP2Cの機能を評価するための試験に用いるモデル動物を作出する方法であって:
(i) CYP2C43をコードする遺伝子においてc.44T>G、c.77G>A、c.85C>T、c.127C>A、c.130A>C、c.218G>A、c.245C>T、c.262A>G、c.317C>T、c.334A>C、c.389C>T、c.407T>C、c.761C>T、c.848A>C、c.887C>G、c.1024A>G、c.1031A>G、c.1032C>G、c.1150G>A、c.1187G>A、c.1213G>C、c.1228C>A、c.1263A>C、c.1319T>A、c.1324C>A、c.1421A>G、及びc.1444G>Aをヘテロ接合体またはホモ接合体で有するサル個体を選択する工程、および (ii) 前記工程(i)で選択されたサル個体同士、または前記工程(i)で選択されたサル個体と別のサル個体とを交配させる工程を含む方法;
あるいは
(i') CYP2C75をコードする遺伝子においてc.66G>C、c.77G>A、c.85T>C、c.143A>G、c.167AC>GT、c.214G>C、c.220A>G、c.221T>C、c.298TT>AA、c.308C>T、c.334ATC>CTT、c.370C>T、c.406A>T、c.445G>A、c.449G>C、c.470G>A、c.511G>A、c.680C>A、c.680C>T、c.709A>G、c.718T>A、c.765G>A、c.781C>T、c.790A>C、c.807G>C、c.965G>A、c.1015A>T、c.1081C>T、c.1187A>G、c.1193A>G、c.1193A>C、c.1371C>G、c.1406C>G、及びc.1469C>Tをヘテロ接合体またはホモ接合体で有するサル個体を選択する工程、および (ii') 前記工程(i')で選択されたサル個体同士、または前記工程(i')で選択されたサル個体と別のサル個体とを交配させる工程を含む方法も提供する。
本発明はさらに、ヒトまたはサルのCYP2Dの機能を評価するための試験に用いるモデル動物を作出する方法であって:
(i) CYP2D17をコードする遺伝子においてc.13G>A、c.35C>T、c.77G>A、c.83G>A、c.175G>A、c.367T>C、c.563C>A、c.679G>A、c.724C>G、c.769G>A、c.799C>G、c.815C>T、c.819G>C、c.866G>C、c.871A>C、c.877G>A、c.886C>T、c.891A>G、c.926C>G、c.952C>T、c.1009A>G、c.1012G>A、c.1072G>T、c.1150CTA>GTG、c.1162C>T、c.1165A>G、c.1181C>T、c.1264G>A、c.1277G>A、c.1322A>G、c.1375T>C、c.1411G>A、c.1414CA>TG、c.1415A>G、c.1420C>T、及びc.1486C>Tをヘテロ接合体またはホモ接合体で有するサル個体を選択する工程、および (ii) 前記工程(i)で選択されたサル個体同士、または前記工程(i)で選択されたサル個体と別のサル個体とを交配させる工程を含む方法;
あるいは
(i') CYP2D44をコードする遺伝子においてc.69G>A、c.79C>G、c.101C>T、c.128T>del、c.164C>T、c.175G>C、c.227C>T、c.254C>A、c.269C>T、c.293C>T、c.298G>A、c.319T>A、c.337G>A、c.344G>A、c.371A>G、c.373G>C、c.395G>A、c.413C>A、c.469G>A、c.496G>A、c.502G>A、c.505G>A、c.524G>A、c.529C>T、c.553G>T、c.587A>T、c.595G>C、c.601C>G、c.612G>T、c.625G>C、c.628C>G、c.633G>C、c.664G>T、c.679G>A、c.694C>T、c.704C>G、c.710C>T、c.724C>G、c.734G>A、c.769G>A、c.806G>C、c.819C>G、c.845C>A、c.859G>A、c.891G>A、c.964G>A、c.971A>G、c.974C>T、c.988C>T、c.989G>C、c.1009A>G、c.1042C>G、c.1063T>A、c.1147G>A、及びc.1153C>Aをヘテロ接合体またはホモ接合体で有するサル個体を選択する工程、および (ii') 前記工程(i')で選択されたサル個体同士、または前記工程(i')で選択されたサル個体と別のサル個体とを交配させる工程を含む方法も提供する。
CYP2C43、CYP2C75、CYP2D17、CYP2D44遺伝子の機能の研究のためには、上記モデル動物の中でも、それぞれの遺伝子のヌル個体が有用である。
工程(i)または(i')で選択されるサル個体はヘテロ接合体であってもホモ接合体であってもよいが、ホモ接合体を有するサル個体を選択することがより好ましい。このような選択は、当業者に公知の手法で行うことができる。例えば、後述の実施例1および5に記載するように、サル個体の組織サンプルからゲノムDNAを抽出し、ダイレクトシークエンス法によって上記の選択を行うことができる。
工程(ii)または(ii')における、ヘテロ接合体またはホモ接合体のサル個体同士、あるいはこれらのサル個体と別のサル個体との交配は、ヘテロ接合体−ヘテロ接合体、ヘテロ接合体−ホモ接合体、ホモ接合体−ホモ接合体、ヘテロ接合体−ワイルドタイプ、ホモ接合体−ワイルドタイプのいずれの組み合わせであってもよい。例えば、c.317C>Tで表される多型をヘテロ接合体を有するサル同士を交配させれば、メンデルの法則にしたがって、4分の1の確率で多型をホモ接合体を有するサルが得られ、2分の1の確率で多型をヘテロ接合体で有するサルを得られ、4分の1の確率で多型を有しないサルが得られる。交配は、自然交配のほか、体外受精や顕微受精、人工授精などの生殖工学技術を用いて行ってもよく、所望によりこのような交配を繰り返し、前記モデル動物となるサルを作出することができる。例えば、雄1頭と雌数頭を同居させる交配方式であるハーレム形式で繁殖させて新たな集団(コロニー)を構築することもできる。
本発明はまた、ヒト用の医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性を試験するために用いるモデル動物を選択するためのキットを提供する。該キットはCYP2CおよびCYP2Dサブファミリーに属する薬物代謝酵素をコードする遺伝子の多型を検出するための試薬および/または装置を含む。そのような試薬および装置としては、例えば、多型を検出するために用いるプライマー、プローブ、DNAチップ等が挙げられる。例えば、実施例の表1に記載した配列番号5および6のプライマーは、サルCYP2C43遺伝子における多型c.44T>Gの検出に有用である。また、実施例の表2に記載した配列番号35および36のプライマーは、サルCYP2C75遺伝子における多型c66.G>Cの検出に有用である。
上記のキットはさらに、検出された多型がCYP2CおよびCYP2Dサブファミリーに属する薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化するものであるか判断するための試薬および/または装置を含んでいてもよい。そのような試薬および装置としては、レファレンスとするCYP2CおよびCYP2Dサブファミリーに属する薬物代謝酵素をコードする遺伝子の配列情報、タンパク質発現系(ベクター、培地、宿主菌体等)、該レファレンス遺伝子(cDNA)から発現するタンパク質、該タンパク質のアミノ酸情報、該タンパク質の物性データ、該発現タンパク質が代謝することが知られる薬物等が挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。
実施例1 サルCYP2C43、CYP2C75における遺伝的変異の同定および解析
78個体のカニクイザル(インドシナ産38個体、インドネシア産40個体)および36個体のアカゲザル(中国産)のゲノムサンプルを用いて、遺伝的変異を同定した。
〔カニクイザルおよびアカゲザルCYP2C43、CYP2C75における遺伝的変異の同定〕
まず、上記各個体の全血液サンプルから、製造者の使用説明書に従ってPUREGENE(登録商標) DNA isolation kit (Gentra Systems、Minneapolis、MN)を用いて、ゲノムDNAを調製した。得られた各サンプルのゲノムDNAについて、プライマーを用いて、各エクソンおよびその近傍領域をPCRで増幅した。PCRは、1ngのゲノムDNA、それぞれ5pmoleのフォワードおよびリバースプライマーならびに1ユニットのAmpliTaq(商標)Gold DNA polymerase (AppliedBiosystems、Foster City、CA)を含む、20μLの反応液中で行い、サーマルサイクラー(AppliedBiosystems)を用いて増幅を実施した。反応条件は、最初の変性を95℃10分で行った後、95℃ 20秒、60℃ 30秒、72℃ 1分のサイクルを30回繰り返し、最終伸長を72℃ 10分で行った。得られたPCR産物の配列決定は、シーケンス用プライマーおよびABI PRISM(登録商標)BigDye(商標)Terminator v3.0 Ready Reaction Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いて実施した。その後、ABI PRISM(登録商標)3730 DNA Analyzer (Applied Biosystems)を用いて電気泳動を行った。PCRおよび配列決定に用いたCYP2C43のプライマーを表1に、CYP2C75のプライマーを表2示す。表中、「F」はFWプライマー、「R」はRVプライマー、「S」はシーケンス用プライマーを示す。
〔配列解析〕
得られた配列データについて、DNASIS Pro (Hitachi Software、Tokyo、Japan)を用いてシーケンス解析を行った。カニクイザル及びアカゲザルのゲノムサンプルからの配列データについてはGenBankに登録されたカニクイザルのCYP2C43 cDNA配列 (GenBank アクセッション番号DQ074806、配列番号:1)を、それぞれのレファレンス配列として用いて、各ゲノムサンプルのCYP2C43遺伝子において塩基置換を探索した。また、GenBankに登録されたカニクイザルのCYP2C75 cDNA配列 (GenBank アクセッション番号DQ074805、配列番号:2)を、それぞれのレファレンス配列として用いて、各ゲノムサンプルのCYP2C75遺伝子において塩基置換を探索した。
最近の研究では、アカゲザルで見出された遺伝子多型の約半分は、カニクイザルにも存在することが示唆されており、いずれかの種のサルで同定された遺伝的変異は、他方の種における遺伝的変異の解析においても利用できることが示唆される。
解析の結果、CYP2C43遺伝子においては新規の27の変異(表3)、CYP2C75遺伝子においては、新規の34の変異を検出した(表4)。
〔遺伝的変異の解析〕
CYP2C43遺伝子において、検出された変異のうち27個はNon-synonymous変異(アミノ酸が変化する変異)であった。そのうちc.317C>Tとc.334A>CはSRS1(基質認識領域1)、c.887C>GはSRS4(基質認識領域4)、c.1421A>GはSRS6(基質認識領域6)、c.1319T>Aとc.1324C>Aはヘム結合領域に、それぞれ位置していた。カニクイザルおよびアカゲザル間での比較により、同定された27個の変異のうち、7個がこれらの種で重複しており、13個がカニクイザルのみで、7個がアカゲザルのみで、それぞれ確認された。さらに、13個のカニクイザルでの変異は、7個はインドシナ産のみで、5個はインドネシア産にのみで、それぞれ確認された(表3)。
CYP2C75遺伝子において、検出された変異のうち34個はNon-synonymous変異であった。そのうちc.298TT>AA、c.308C>Tおよびc.334ATC>CTTはSRS1、c.709A>Gとc.718T>AはSRS3、c.1081C>TはSRS5に、それぞれ位置していた。カニクイザルおよびアカゲザル間での比較により、同定された34個の変異のうち、12個がこれらの種で重複しており、16個がカニクイザルのみで、6個がアカゲザルのみで、それぞれ確認された。さらに、16個のカニクイザルでの変異は、8個はインドシナ産のみで、5個はインドネシア産にのみで、それぞれ確認された(表4)。
〔地域差の解析〕
CYP2C43遺伝子においては12個のカニクイザルでの変異は、7個はインドシナ産のみで、5個はインドネシア産にのみで、CYP2C75遺伝子においては16個のカニクイザルでの変異は、8個はインドシナ産のみで、5個はインドネシア産にのみで、それぞれ確認され、アレル頻度に地域差が存在することが示唆された(表3、4)。同様に、中国産アカゲザルとインド産アカゲザルとの間にアレル頻度の地域差が存在することが報告されている。このような、異なる集団間での遺伝的多様性は、薬物代謝能における差異を生じる可能性があるため、薬物代謝の研究には同一集団からの動物を用いることが好ましいと考えられる。
実施例2 変異が導入されたサルCYP2C43およびCYP2C75タンパク質の準備
実施例1で得られた遺伝的変異の機能的特性解析のために、発現プラスミドを構築し、変異が導入されたサルCYP2C43およびCYP2C75タンパク質を得た。
ヒトリダクターゼcDNAと共発現させるようにpCWベクター(Barnes, HJ., Methods Enzymol (1996) 272:3-14)をもとに作製したベクターに、カニクイザルCYP2C43とCYP2C75、それぞれのcDNA (アクセッション番号DQ074806、DQ074806、配列番号:1、2)を直接クローニングした。発現レベルを高めるためにCYPのN末端をウシCYP17のN末端配列MALLLAVFに改変した。遺伝子多型の解析には、該当する変異を発現プラスミドのCYP配列に導入する必要があるが、これは製造者の使用説明書に従ってQuikChange(商標)XL II kit (Stratagene、La Jolla、CA)を用いて行った。使用したプライマー対をCYP2C43については表1に、CYP2C75は表2に示す。変異導入後の全配列を、実施例1と同様の手法を用いてシーケンシングにより確認した。次に、DH5α competent cells (Invitrogen、Carlsbad、CA)を形質転換した後、インサートの塩基配列と配向性をシーケンシングにより確認した。バクテリアは、100μg/mlのアンピシリンを含むLuria-bertani broth中で一晩培養した後、Iwata H et al.,Biochem Pharmacol (1998) 55:1315-1325の方法に従って調製した。Terrific Brothで100倍に希釈し、200μg/mlのアンピシリン存在下、30℃で6時間〜12時間、OD600が約0.6〜0.8になるまで培養した。
続いてイソプロピル-B-D-チオガラクトシド(IPTG) (Wako Pure Chemicals、Osaka、Japan)を最終濃度が1.5mMとなるように培養液に添加した。16時間〜20時間後、培養した細胞を採取して細胞膜画分を調製し、変異が導入されたサルCYP2C43およびCYP2C75タンパク質を得た。
実施例3 変異が導入されたサルCYP2C75肝ミクロソームの準備
実施例2同様に、実施例1で得られた遺伝的変異の機能的特性解析のために、Uehara S et al., J Pharmacol Exp Ther (2011) 339:654‐61の方法に従ってCYP2C75のSRS1におけるc.298TT>AA (F100N)、c.308C>T (A103V)およびc.334ATC>CTT (I112L)のすべての変異をもつカニクイザル肝ミクロソームを得た。
実施例4 変異が導入されたサルCYP2C43およびCYP2C75タンパク質の薬物代謝活性の測定
実施例1〜3で得られた遺伝的変異の機能的特性解析のために、発現タンパク質、肝ミクロソームについての薬物代謝活性の測定を、Uno Y et al., Arch Biochem Biophys (2007) 46:98-105およびYamazaki H et al., Drug Metab Dispos (1999) 27:999-1004に記載の手法を用いて行った。公知の方法(Omura T et al., J Biol Chem (1964) 239: 2379 -2385) に従い、U-3000 spectrophotometer (Shimadzu、Kyoto、Japan)を使用て、P450スペクトルを求めた。P450の発現を確認した後、Iwata H et al., Biochem Pharmacol (1998) 55:1315-1325の方法に従って、NAPDH-P450リダクターゼの濃度を測定した。
発現させたタンパク質については、S-ワルファリン、R-ワルファリン、フルルビプロフェン、カフェイン、ジクロフェナクおよびオメプラゾールを基質として、5pmoleのP450を用いて代謝活性を測定した。カニクイザルおよびアカゲザルのCYP2C43タンパク質は、S-ワルファリン、R-ワルファリン、フルルビプロフェン、カフェイン、またはジクロフェナク代謝活性を、CYP2C75タンパク質は、S-ワルファリン、R-ワルファリン、フルルビプロフェン、ジクロフェナクまたはオメプラゾールの代謝活性を有することが知られている (Utoh M et al., Xenobiotic (2013), in press、Hosoi Y et al., Biochem Pharmacol (2012) 84(12):1691-1695、Uno Y et al., PLoS ONE (2011) 6(2): e16923)。
CYP2C43のNon-synonymous変異のうち、SRS1におけるc.317C>T (A106V)、SRS4におけるc.887C>G (A296G)またはSRS6のおけるc.1424A>G (N474S) を有するCYP2C43 cDNAを含むプラスミドを用いて発現させたタンパク質について、上記の手法を用いて活性を測定した(図1)。
カフェイン-3/7-ジメチル化、ジクロフェナク4'-水酸化の代謝速度はすべての変異で遺伝子に変異のない野生型よりも減少した。フルルビプロフェン4'-水酸化は、A106VとN474Sで野生型より減少した。R-ワルファリン7-水酸化はN474Sで野生型より減少し、A296Gで野生型より亢進した。S-ワルファリン7-水酸化も同様に、N474Sで野生型より減少し、A296Gで野生型より亢進した。SRS領域のアミノ酸変異はタンパク質機能に影響を与える可能性があることがわかったが、c.887C>G (A296G)のように同じ変異でも基質によってタンパク質機能への影響は異なる。
CYP2C75のNon-synonymous変異のうち、SRS1におけるc.298TT>AA (F100N)、c.308C>T (A103V)またはc.334ATC>CTT (I112L)、SRS3におけるc.709A>G(I237V) を有するCYP2C75 cDNAを含むプラスミドを用いて発現させたタンパク質について、上記の手法を用いて活性を測定した(図2)。
ジクロフェナク4'-水酸化、フルルビプロフェン4'-水酸化、オメプラゾール5-水酸化、R-/S-ワルファリン 7-水酸化の代謝速度はすべての変異で遺伝子に変異のない野生型より減少した。SRS領域のアミノ酸変異はタンパク質機能に影響を与える可能性があることがわかった。
CYP2C75においてのNon-synonymous変異のうち、SRS1におけるc.298TT>AA (F100N)、c.308C>T (A103V)およびc.334ATC>CTT (I112L)のすべての変異を有する肝ミクロソームについて、上記の手法を用いて活性を測定した(図3)。ホモ型、ヘテロ型いずれも、R-ワルファリン 6-水酸化、R-ワルファリン 7-水酸化、S-ワルファリン 7-水酸化の代謝速度はすべての変異で遺伝子に変異のない野生型より減少した。
実施例5 サルCYP2D17、CYP2D44における遺伝的変異の同定および解析
サルCYP2D17については87個体のカニクイザル(インドシナ産39個体、インドネシア産48個体)および40個体のアカゲザル(中国産)、CYP2D44については78個体のカニクイザル(インドシナ産38個体、インドネシア産40個体)および40個体のアカゲザル(中国産)のゲノムサンプルを用いて、遺伝的変異を同定した。
〔カニクイザルおよびアカゲザルCYP2D17およびCYP2D44における遺伝的変異の同定〕
まず、上記各個体の全血液サンプルから、製造者の使用説明書に従ってPUREGENE(登録商標) DNA isolation kit (Gentra Systems、Minneapolis、MN)を用いて、ゲノムDNAを調製した。得られた各サンプルのゲノムDNAについて、プライマーを用いて、各エクソンおよびその近傍領域をPCRで増幅した。PCRは、1ngのゲノムDNA、それぞれ5pmoleのフォワードおよびリバースプライマーならびに1ユニットのAmpliTaq(商標)Gold DNA polymerase (AppliedBiosystems、Foster City、CA)又はLA Taq polymerase(Takara、日本)(CYP2D17のexon3-4、CYP2D44のexon1-2及びexon3-4のみ)を含む、20μLの反応液中で行い、サーマルサイクラー(AppliedBiosystems)を用いて増幅を実施した。反応条件は、CYP2D17は、最初の変性を95℃10分で行った後、95℃ 20秒、58℃ 30秒、72℃ 1分のサイクルを30回繰り返し、最終伸長を72℃ 10分で行った。CYP2D44は、最初の変性を95℃10分で行った後、95℃ 20秒、62℃ 30秒、72℃ 1分のサイクルを30回繰り返し、最終伸長を72℃ 10分で行った。得られたPCR産物の配列決定は、シーケンス用プライマーおよびABI PRISM(登録商標)BigDye(商標)Terminator v3.0 Ready Reaction Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いて実施した。その後、ABI PRISM(登録商標)3730 DNA Analyzer (Applied Biosystems)を用いて電気泳動を行った。PCRおよび配列決定に用いたCYP2D17のプライマーを表5に、CYP2D44のプライマーを表6に示す。表中、「F」はFWプライマー、「R」はRVプライマー、「S」はシーケンス用プライマーを示す。
〔配列解析〕
得られた配列データについて、DNASIS Pro (Hitachi Software、Tokyo、Japan)を用いてシーケンス解析を行った。カニクイザル及びアカゲザルのゲノムサンプルからの配列データについてはGenBankに登録されたカニクイザルのCYP2D17 cDNA配列 (GenBank アクセッション番号UG981762、配列番号:3)を、それぞれレファレンス配列として用いて、各ゲノムサンプルのCYP2D17遺伝子において塩基置換を探索した。また、GenBankに登録されたカニクイザルのCYP2D44 cDNA配列 (GenBank アクセッション番号DQ297684、配列番号:4)を、それぞれレファレンス配列として用いて、各ゲノムサンプルのCYP2D44遺伝子において塩基置換を探索した。
最近の研究では、アカゲザルで見出された遺伝子多型の約半分は、カニクイザルにも存在することが示唆されており、いずれかの種のサルで同定された遺伝的変異は、他方の種における遺伝的変異の解析においても利用できることが示唆される。
解析の結果、CYP2D17遺伝子において新規の36の変異(表7)、CYP2D44遺伝子においては新規の55の変異を検出した(表8)。
〔遺伝的変異の解析〕
CYP2D17遺伝子において、検出された変異のうち36個はNon-synonymous変異であった。Non-synonymous変異うちc.367T>CはSRS1、c.724C>GはSRS3、c.886C>T、c.891A>G、c.926C>GはSRS4、c.1322A>Gはヘム結合領域に、それぞれ存在していた。カニクイザルおよびアカゲザル間での比較により、同定された36個のNon-synonymous変異のうち、7個がこれらの種で重複しており、22個がカニクイザルのみで、7個がアカゲザルのみで、それぞれ確認された。さらに、22個のカニクイザルでの変異は、9個はインドシナ産のみで、11個はインドネシア産にのみで、それぞれ確認された(表7)。
CYP2D44遺伝子において、検出された変異のうち55個はNon-synonymous変異であった。そのうちc.319T>A、c.337G>A、c.344G>A、c.371A>G及びc.373G>CはSRS1、c.625G>C、c.628C>G、及びc.633G>CはSRS2、c.724C>G、c.734G>AはSRS3、c.891G>AはSRS4に結合していた。カニクイザルおよびアカゲザル間での比較により、同定された55個の変異のうち、14個がこれらの種で重複しており、30個がカニクイザルのみで、11個がアカゲザルのみで、それぞれ確認された。さらに、30個のカニクイザルでの変異は、12個はインドシナ産のみで、16個はインドネシア産にのみで、それぞれ確認された(表8)。
〔地域差の解析〕
CYP2D17遺伝子においては22個のカニクイザルでの変異は、9個はインドシナ産のみで、11個はインドネシア産にのみで、CYP2D44遺伝子においては30個のカニクイザルでの変異は、12個はインドシナ産のみで、16個はインドネシア産にのみで、それぞれ確認され、アレル頻度に地域差が存在することが示唆された。同様に、中国産アカゲザルとインド産アカゲザルとの間にアレル頻度の地域差が存在することが報告されている。このような、異なる集団間での遺伝的多様性は、薬物代謝能における差異を生じる可能性があるため、薬物代謝の研究には同一集団からの動物を用いることが好ましいと考えられる。
実施例6 変異が導入されたサルCYP2D17およびCYP2D44タンパク質の準備
実施例5で得られた遺伝的変異の機能的特性解析のために、発現プラスミドの構築し、変異が導入されたサルCYP2D17およびCYP2D44タンパク質を得た。
ヒトリダクターゼcDNAと共発現させるようにpCWベクター(Barnes, HJ., Methods Enzymol (1996) 272:3-14)をもとに作製したベクターに、カニクイザルCYP2D17およびCYP2D44、それぞれのcDNA (アクセッション番号UG981762、DQ297684、配列番号:3、4)を直接クローニングした。発現レベルを高めるためにCYPのN末端をウシCYP17のN末端配列MALLLAVFに改変した。遺伝子多型の解析には、該当する変異を発現プラスミドのCYP配列に導入する必要があるが、これは製造者の使用説明書に従ってQuikChange(商標)XL II kit (Stratagene、La Jolla、CA)を用いて行った。使用したプライマー対をCYP2D17については表5に、CYP2D44については表6に示す。変異導入後の全配列を、実施例5と同様の手法を用いてシーケンシングにより確認した。次に、DH5α competent cells (Invitrogen、Carlsbad、CA)を形質転換した後、インサートの塩基配列と配向性をシーケンシングにより確認した。バクテリアは、100μg/mlのアンピシリンを含むLuria-bertani broth中で一晩培養した後、Iwata H et al.,Biochem Pharmacol (1998) 55:1315-1325の方法に従って調製した。Terrific Brothで100倍に希釈し、200μg/mlのアンピシリン存在下、30℃で6時間〜12時間、OD600が約0.6〜0.8になるまで培養した。
続いてイソプロピル-B-D-チオガラクトシド(IPTG) (Wako Pure Chemicals、Osaka、Japan)を最終濃度が1.5mMとなるように培養液に添加した。16時間〜20時間後、培養した細胞を採取して細胞膜画分を調製し、変異が導入されたサルCYP2D17およびCYP2D44タンパク質を得た。
実施例7 変異が導入されたサルCYP2D17肝ミクロソームの準備
実施例5〜6で得られた遺伝的変異の機能的特性解析のために、CYP2D17において、c.1277G>A (R426H)、c.891A>G (I297M)とc.1009A>G (N337D)、の変異をもつカニクイザル肝ミクロソームを得た。
実施例8 変異が導入されたサルCYP2D17およびCYP2D44タンパク質の薬物代謝活性の測定
実施例5〜7で得られた遺伝的変異の機能的特性解析のために、発現タンパク質、肝ミクロソームについての薬物代謝活性の測定を、Uno Y et al., Arch Biochem Biophys (2007) 46:98-105およびYamazaki H et al., Drug Metab Dispos (1999) 27:999-1004に記載の手法を用いて行った。公知の方法(Omura T et al., J Biol Chem (1964) 239: 2379 -2385) に従い、U-3000 spectrophotometer (Shimadzu、Kyoto、Japan)を使用て、P450スペクトルを求めた。P450の発現を確認した後、Iwata H et al., Biochem Pharmacol (1998) 55:1315-1325の方法に従って、NAPDH-P450リダクターゼの濃度を測定した。
発現させたタンパク質については、ブフラロール、デキストロメトルファンを基質として、5pmoleのP450を用いて代謝活性を測定した。カニクイザルのCYP2D17とCYP2D44タンパク質は、ブフラロール、デキストロメトルファンの代謝活性を有することが知られている (Uno Y et al., Drug Metab Dispos (2010) 38(9):1486-1492)。
CYP2D17のNon-synonymous変異のうち、c.563C>A (S188Y)、c.679G>A (V227I)、SRS3におけるc.726C>G (R242G) を有するCYP2D17 cDNAを含むプラスミドを用いて発現させたタンパク質について、上記の手法を用いて活性を測定した(図4)。
ブフラロール1-水酸化の代謝速度は野生型と比べてR242Gでかなり減少したが、S188YとV227Iと代謝速度は同様だった。
CYP2D17においてのNon-synonymous変異のうち、c.1277G>A (R426H)または、c.891A>G (I297M)とc.1009A>G (N337D)の変異を有する肝ミクロソームについて、上記の手法を用いて活性を測定した(図5)。c.1277G>A (R426H)ではホモ型、ヘテロ型いずれもブフラロール1-水酸化および、デキストロメトルファンO-脱メチル化の代謝速度は野生型と比べて有意差はなかった。c.891A>G (I297M)とc.1009A>G (N337D)のホモ型、ヘテロ型ではブフラロール1-水酸化および、デキストロメトルファンO-脱メチル化の代謝速度は亢進した。
CYP2D44のNon-synonymous変異のうち、c.524G>A (S175N)、c.553G>T (V185L)、c.704C>G (A235G)、c.964G>A (M322I)とc.1009A>G (N337D)、SRS3におけるc724C>G (R242G)、c.734G>A (R245K)を有するCYP2D44 cDNAを含むプラスミドを用いて発現させたタンパク質について、上記の手法を用いて活性を測定した(図6)。
ブフラロール1-水酸化および、デキストロメトルファンO-脱メチル化の代謝速度は、M322Iを除き、すべてのこれらの変異で活性が十分に減少した。つまり、10μM、100μMの基質において、野生型に比べてそれぞれ6.1倍から24倍と3.3倍から24倍減少した。
実施例9 サルCYP2D44において見出されたヌルアレルの解析
実施例5において、ヌルアレルとしてc.128T>del (V92X)が見出された(表8)。このアレルが存在すると、フレームシフトが起こり、完全なタンパク質が合成されない。
配列番号1は、カニクイザルCYP2C43 cDNAの塩基配列である(GeneBank アクセッション番号 DQ074806)。
配列番号2は、カニクイザルCYP2C75 cDNAの塩基配列である(GeneBank アクセッション番号 DQ074805)。
配列番号3は、カニクイザルCYP2D17 cDNAの塩基配列である(GeneBank アクセッション番号 GU981762)。
配列番号4は、カニクイザルCYP2D44 cDNAの塩基配列である(GeneBank アクセッション番号 DQ297684)。
配列番号4〜66は、プライマーの塩基配列である。
配列番号67〜93は、アカゲザルとカニクイザルのCYP2C43で同定されたNon-synonymous変異である。
配列番号94〜127は、アカゲザルとカニクイザルのCYP2C75で同定されたNon-synonymous変異である。
配列番号128〜177は、プライマーの塩基配列である。
配列番号178〜213は、アカゲザルとカニクイザルのCYP2D17で同定されたNon-synonymous変異である。
配列番号214〜268は、アカゲザルとカニクイザルのCYP2D44で同定されたNon-synonymous変異(ヌル変異を含む)である。

Claims (10)

  1. カニクイザル又はアカゲザルのCYP2C43及びCYP2C75からなる群から選択される薬物代謝酵素をコードする核酸であって、以下の多型を含む核酸:
    カニクイザルのCYP2C43にあっては、
    c.317C>T及びc.1421A>G
    からなる群から選択される1以上の多型を、
    カニクイザルのCYP2C75にあっては、
    c.298TT>AA、c.308C>T、及びc.334ATC>CTT
    からなる群から選択される1以上の多型を、
    アカゲザルのCYP2C75にあっては、
    c.298TT>AA及びc.334ATC>CTT
    からなる群から選択される1以上の多型
  2. 請求項1に記載の薬物代謝酵素をコードする核酸を含む発現ベクター。
  3. 請求項2に記載の発現ベクターを含む形質転換体。
  4. 請求項3に記載の形質転換体を培養する工程と、
    前記形質転換体が産生するタンパク質を回収する工程と、
    を含むカニクイザル又はアカゲザルのCYP2C43及びCYP2C75からなる群より選択される薬物代謝酵素の変異体の製造方法。
  5. 代謝活性に異常を有するヒトのための医薬品候補化合物について、薬物動態、薬効および/または安全性を試験するためのモデル動物とするサルを選択する方法であって、サルが、カニクイザル又はアカゲザルであり、
    代謝活性に異常を有するヒトは、特定の薬物の代謝活性が健常者とは異なるヒトであり、UM (ultra-rapid metabolizer):代謝活性が高すぎて薬が効かないヒト、IM (intermediate metabolizer):EMより薬物代謝活性が低いヒト、あるいはPM (poor metabolizer):
    代謝活性が低すぎて投与薬の血中濃度が高くなり副作用を示すヒトに分類され、EM (extensive metabolizer)は、標準的なヒトと同じ薬物代謝活性を示すヒトであり、
    前記代謝活性に異常を有するヒトにおける前記医薬品候補化合物の代謝活性の上記分類を特定する工程と、
    前記医薬品候補化合物が、サルにおいてどの酵素で代謝されるのか調べる工程であって、サルの酵素がCYP2C43又はCYP2C75である工程と、
    前記医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素の遺伝子が、サルにおける医薬品候補化合物の代謝が前記代謝活性に異常を有するヒトと同等となる多型を有する個体を選択する工程と、を含み、
    前記多型が、以下の多型からからなる群より選択される、方法:
    前記医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素が
    カニクイザルのCYP2C43の場合は、
    c.317C>T及びc.1421A>G
    からなる群から選択される1以上の多型を、
    アカゲザルのCYP2C43の場合は、
    c.887C>G
    の多型を、
    前記医薬品候補化合物を代謝するサルの酵素が
    カニクイザルのCYP2C75の場合は、
    c.298TT>AA、c.308C>T、及びc.334ATC>CTT
    からなる群から選択される1以上の多型を、
    アカゲザルのCYP2C75にあっては、
    c.298TT>AA及びc.334ATC>CTT
    からなる群から選択される1以上の多型
  6. サルをモデル動物として行った、ヒトの医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性の試験データにおける個体差の原因を究明する方法であって、サルが、カニクイザル又はアカゲザルであり、
    前記試験に用いたサル個体において、CYP2C43及びCYP2C75からなる群から選択される薬物代謝酵素の少なくとも1つをコードする遺伝子の多型を検出する工程と、
    前記多型が、前記薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化させるものであるか評価する工程と、を含み、
    前記遺伝子の多型を検出する工程において、
    カニクイザルのCYP2C43にあっては、
    c.317C>T及びc.1421A>G
    からなる群から選択される1以上の多型を、
    アカゲザルのCYP2C43にあっては、
    c.887C>G
    の多型を、
    カニクイザルのCYP2C75にあっては、
    c.298TT>AA、c.308C>T、及びc.334ATC>CTTを、
    アカゲザルのCYP2C75にあっては、
    c.298TT>AA及びc.334ATC>CTT
    からなる群から選択される1以上の多型
    からなる群から選択される1以上の多型を検出する、方法。
  7. 前記多型が、前記医薬品候補化合物を代謝する薬物代謝酵素の発現および/または機能を変化させるものである場合、前記個体差の原因は該多型であると判断する、請求項6に記載の方法。
  8. ヒトまたはサルのCYP2Cの機能を評価するための試験に用いるモデル動物、又は、ヒト用の医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性を試験するためのサルを作出する方法であって、サルが、カニクイザル又はアカゲザルであり、
    (a)以下の(i)から(ii)のいずれかを行う工程と:
    (i)CYP2C43においては、c.317C>T及びc.1421A>G
    からなる群から選択される1以上の多型をヘテロ接合体またはホモ接合体で有するカニクイザル個体、あるいはc.887C>G
    の多型をヘテロ接合体またはホモ接合体で有するアカゲザル個体を選択する工程;
    (ii)CYP2C75においては、c.298TT>AA、c.308C>T、及びc.334ATC>CTT
    からなる群から選択される1以上の多型をヘテロ接合体またはホモ接合体で有するカニクイザル個体、あるいはc.298TT>AA及びc.334ATC>CTT
    からなる群から選択される1以上の多型をヘテロ接合体またはホモ接合体で有するアカゲザル個体を選択する工程;
    (b)前記工程(a)で選択されたサル個体同士、または前記工程(a)で選択されたサル個体と別のサル個体とを交配させる工程と、
    を含む方法。
  9. ヒト用の医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性を試験することを目的とするサルの使用であって、サルが、カニクイザル又はアカゲザルであり、
    前記サルがCYP2C43及びCYP2C75からなる群から選択される薬物代謝酵素の少なくとも1つをコードする遺伝子に多型を有し、
    前記多型が
    カニクイザルのCYP2C43にあっては、
    c.317C>T及びc.1421A>G
    からなる群から選択される1以上、
    アカゲザルのCYP2C43にあっては、
    c.887C>G
    カニクイザルのCYP2C75にあっては、
    c.298TT>AA、c.308C>T、及びc.334ATC>CTT
    からなる群から選択される1以上
    アカゲザルのCYP2C75にあっては、
    c.298TT>AA及びc.334ATC>CTT
    からなる群から選択される1以上であるサルの使用。
  10. ヒト用の医薬品候補化合物についての薬物動態、薬効および/または安全性を試験するためのモデル動物とするカニクイザル又はアカゲザルを選択するためのキットであって、
    カニクイザルの場合は、配列番号29〜30、33〜34及び59〜64のいずれかで表される塩基配列を含むプライマーを含み、
    アカゲザルの場合は、配列番号31〜32、59〜60及び63〜64のいずれかで表される塩基配列を含むプライマーを含む、キット。
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