JP6341128B2 - 油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、継目無鋼管の製造に係り、とくに低温靭性に優れた油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法に関する。
近年、世界的なエネルギー消費量の増大による、原油等のエネルギー価格の高騰や、石油資源の枯渇という観点から、従来、省みられなかったような深度が深い油田(深層油田)や、硫化水素等を含む、いわゆるサワー環境下にある厳しい腐食環境の油田やガス田や、さらには厳しい気象環境の極北における油田やガス田等において、エネルギー資源開発が盛んに行われている。このような環境下で使用される油井用鋼管には、高強度で、かつ優れた耐食性(耐サワー性)や、さらには優れた低温靭性を兼ね備えた材質を有することが要求されている。
従来から、炭酸ガスCO、塩素イオンCl等を含む環境の油田、ガス田では、採掘に使用する油井管として13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管が多く使用されている。さらに、最近では13Crマルテンサイト系ステンレス鋼のCを低減し、Ni、Mo等を増加させた成分系の改良型13Crマルテンサイト系ステンレス鋼の使用も拡大している。
例えば、特許文献1には、13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼の耐食性を改善した、改良型マルテンサイト系ステンレス鋼 (鋼板)の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、重量%で10〜15%Crを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼の組成で、Cを0.005〜0.05%と制限し、Ni:4.0%以上、Cu:0.5〜3%を複合添加し、さらにMoを1.0〜3%添加し、さらにNieqを−10以上に調整した組成を有する鋼を、熱間加工し室温まで自然放冷したのち、Ac1点以上でかつオーステナイト分率が80%になる温度以下で熱処理を施し、さらにオーステナイト分率が60%になる温度で熱処理を行い、組織が焼戻しマルテンサイト相、マルテンサイト相、残留オーステナイト相からなり、焼戻しマルテンサイト相、マルテンサイト相の合計の分率が60〜90%である組織を有する、マルテンサイトステンレス鋼としている。これにより、湿潤炭酸ガス環境および湿潤硫化水素環境における耐食性と耐硫化物応力腐食割れ性が向上するとしている。
また、特許文献2には、耐食性に優れた油井用高強度ステンレス鋼管の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術では、mass%で、C:0.005〜0.050%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.20〜1.80%、Cr:15.5〜18%、Ni:1.5〜5%、Mo:1〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含有し、Cr+0.65Ni+0.6Mo+0.55Cu−20C≧19.5およびCr+Mo+0.3Si−43.5C−0.4Mn−Ni−0.3Cu−9N≧11.5を満足する組成を有する鋼管素材を加熱し、熱間加工により造管して、造管後、空冷以上の冷却速度で室温まで冷却して所定寸法の継目無鋼管とし、ついで継目無鋼管を、850℃以上の温度に再加熱し空冷以上の冷却速度で100℃以下まで冷却し、ついで700℃以下の温度に加熱する焼入れ−焼戻処理を施すことにより、体積率で10〜60%のフェライト相を含み残部がマルテンサイト相である組織を有し、降伏強さが654MPa以上の油井用高強度ステンレス鋼管を得ることができるとしている。これにより、高強度で、COやClを含む、230℃までの高温の厳しい腐食環境下においても充分な耐食性を有し、しかもシャルピー衝撃試験の−40℃での吸収エネルギーが50J以上の高靭性を有する鋼管となるとしている。
特開平10−1755号公報 特許第5109222号公報
しかしながら、最近では、極北におけるような厳しい気象環境下での油田やガス田等の開発が促進され、寒冷地用として更なる低温靭性に優れた油井用継目無鋼管が強く要望されている。また、油井開発の更なるコストダウンの要求から、使用する油井用鋼管の薄肉化が指向され、油井用鋼管の更なる高強度化が求められている。このため、肉厚13mm以下の薄肉で、降伏強さYS:750MPaを超える高強度を有し、しかも従来の技術で得られる継目無鋼管に比べて優れた低温靭性を有する、油井用薄肉高強度継目無鋼管が要望されている。
かかる従来技術の状況に鑑み、本発明は、降伏強さ:750MPaを超える高強度と、肉厚中心部での優れた低温靭性とを兼備する油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管を得ることができる、油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法を提供することを目的とする。なお、ここでいう「薄肉継目無鋼管」とは、肉厚13mm以下の継目無鋼管をいうものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、まず、薄肉ステンレス継目無鋼管肉厚中央部の強度と靭性に及ぼす各種要因について鋭意研究した。その結果、薄肉ステンレス継目無鋼管においても強度向上および靭性改善に最も有効な方法は、組織の微細化であるということに想到した。
そこで、更なる研究を行ない、薄肉ステンレス継目無鋼管の更なる組織微細化のためには、穿孔圧延前の鋼素材に、1000℃以上の温度域で、少なくとも50℃以上の温度範囲を、空冷以上の冷却速度である1.0℃/s以上の平均冷却速度で冷却を施し、穿孔圧延を施すか、または穿孔圧延後の中空素材に、1000℃以上の温度域で、少なくとも50℃以上の温度範囲を、空冷以上の冷却速度である1.0℃/s以上の平均冷却速度で冷却を施し、さらに減肉あるいは成形等の加工を施せば、組織が微細化し、肉厚:13mm以下の薄肉ステンレス継目無鋼管の肉厚中心位置においても、強度および低温靭性が顕著に向上するという知見を得た。
すなわち、ステンレス鋼組成の鋼においては、通常、加熱温度域では、フェライト相の分率が高く、加熱温度から空冷程度の冷却速度で冷却すると、温度の低下に伴い、フェライト相が減少してオーステナイト相の分率が増加する。しかし、加熱温度から熱間加工温度(冷却停止温度)までの温度範囲を、1.0℃/s以上の平均冷却速度で加速冷却することにより、オーステナイト相の析出が遅れ、フェライト相が平衡状態より多く残存して、非平衡状態の相分布(組織)が得られる。そして、このような非平衡状態の組織の材料に、加工(圧延)を施せば、組織の微細化が達成できることを見出した。
というのは、非平衡で存在するフェライト粒に歪を付加すれば、α→γ変態の核生成サイトが多数生成でき、その結果、変態後に生成するオーステナイト粒が微細化し、強度および低温靭性がさらに向上すると考えられる。また、加速冷却によりオーステナイト相の変態を遅らせることで熱間加工時にフェライト相分率の高い状態となるため、相対的に強度の低いフェライト相に歪が集中することがなくなり、熱間変形能が向上し、圧延疵の発生を抑制することが可能となる。そして、本発明者らは、上記した現象を利用して低温靭性に優れた薄肉高強度ステンレス継目無鋼管を製造可能とするためには、使用する装置列を、加熱装置と穿孔圧延装置と圧延装置とをこの順に配列した従来の装置列から、加熱装置と穿孔圧延装置の間、あるいは穿孔圧延装置と圧延装置の間に、冷却装置を配設した装置列とすることが肝要であることを知見した。
本発明は、かかる知見に基づき、更なる検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎの通りである。
(1)鋼素材を加熱装置で加熱後、加熱された前記鋼素材を冷却装置で冷却し、しかるのちに、該鋼素材に穿孔圧延装置で穿孔圧延を施して中空素材とし、さらに該中空素材に圧延装置で加工を施して、あるいはさらに該加工後に保温装置を通過させる処理を施して、薄肉継目無鋼管とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.20〜1.80%、Cr:15.5〜18.0%、Ni:1.5〜5.0%、Mo:1.0〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、前記加熱を、1000℃以上鋼素材の融点未満の温度に加熱する処理とし、前記冷却装置で冷却する前の前記鋼素材の表面温度を冷却開始温度として、前記冷却を、表面温度で、前記冷却開始温度からの温度差が少なくとも50℃以上で、かつ600℃以上となる冷却停止温度まで、外表面温度で1.0℃/s以上の平均冷却速度で冷却する処理とし、肉厚:13mm以下の薄肉高強度ステンレス継目無鋼管とすることを特徴とする低温靭性に優れた油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
(2)鋼素材を加熱装置で加熱後、穿孔圧延装置で穿孔圧延を施して中空素材とし、さらに該中空素材を冷却装置で冷却したのち、圧延装置で加工を施して、あるいはさらに該加工後に保温装置を通過させる処理を施して、薄肉継目無鋼管とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.20〜1.80%、Cr:15.5〜18.0%、Ni:1.5〜5.0%、Mo:1.0〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、前記加熱を、1000℃以上鋼素材の融点未満の温度に加熱する処理とし、前記穿孔圧延を施したのちで、前記冷却装置で冷却する前の前記中空素材の表面温度を冷却開始温度として、前記冷却を、表面温度で、前記冷却開始温度からの温度差が少なくとも50℃以上で、かつ600℃以上となる冷却停止温度まで、外表面温度で1.0℃/s以上の平均冷却速度で冷却する処理とし、肉厚:13mm以下の薄肉高強度ステンレス継目無鋼管とすることを特徴とする低温靭性に優れた油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記加工後に前記保温装置内を通過させる処理が、平均冷却速度で20℃/s以下の冷却となるように調整する処理とすることを特徴とする油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、次A群〜D群
A群:Al:0.002〜0.050%、
B群:Cu:3.5%以下、W:3.0%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
C群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.01%以下
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することを特徴とする油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
本発明によれば、高強度でかつ低温靭性に優れた薄肉ステンレス継目無鋼管を、容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、比較的少ない加工量で、鋼管組織を中心部まで微細化することができ、薄肉高強度継目無鋼管で、更なる低温靭性の向上が図れるという効果がある。
本発明で使用する継目無鋼管製造用装置列の一例を模式的に示す説明図である。
本発明で使用する薄肉高強度継目無鋼管製造用の装置列としては、加熱した鋼素材を、適正温度範囲内で冷却したのちに加工(圧延)を施し、あるいは加工(圧延)したのち冷却し、継目無鋼管とすることができる装置列とする。本発明薄肉高強度継目無鋼管製造用として好適な装置列の一例を図1に示す。図1(a)は、加熱装置1と穿孔圧延装置2と冷却装置4と圧延装置3とをこの順に配設、図1(b)は、加熱装置1と冷却装置4と穿孔圧延装置2と圧延装置3とをこの順に配設、してなる装置列である。
本発明で使用する加熱装置1は、丸鋳片、丸鋼片等の鋼素材を所定温度に加熱できる、例えば、回転炉床式加熱炉、ウォーキングビーム式加熱炉等の常用の加熱炉がいずれも適用できる。また、誘導加熱方式の加熱炉としてもよい。
また、本発明で使用する穿孔圧延装置2は、加熱された鋼素材に穿孔圧延を施し中空素材とすることができる穿孔圧延装置であればよく、例えば、バレル形ロール等を用いるマンネスマン傾斜式穿孔機、熱間押出式穿孔機等の、通常公知の穿孔圧延装置がいずれも適用できる。
また、本発明で使用する圧延装置3は、中空素材に加工を施し所定形状の継目無鋼管とすることができる装置であればよく、目的に応じて、例えば、エロンゲータ31、穿孔された中空素管を薄く長く延ばすプラグミル32、素管内外表面を滑らかにするリーラ(図示せず)、所定寸法に整えるサイザー33の順で配置された圧延装置、あるいは中空素管を所定寸法の鋼管とするマンドレルミル(図示せず)、若干の圧下を行ない外径、肉厚を調整するレデューサ(図示せず)を配置した圧延装置等の、通常公知の圧延装置がいずれも適用できる。なお、好ましくは加工量を大きくとれるエロンゲータ、あるいはマンドレルミルとすることが好ましい。
また、本発明で使用する冷却装置4は、非平衡状態の相分布を得るために、加熱装置1と穿孔圧延装置2の間、あるいは穿孔圧延装置2と圧延装置3との間に設置される。本発明で使用する冷却装置は、加熱された鋼素材(被冷却材)を所望の冷却速度以上で冷却することが可能な装置であれば、その形式はとくに限定する必要はない。比較的容易に所望の冷却速度を確保できる冷却装置としては、被冷却材である加熱された鋼素材あるいは中空素材の外内面に、冷却水または圧縮空気、ミストを噴射して、あるいは供給して冷却する方式の装置とすることが好ましい。
本発明で使用する冷却装置は、ステンレス鋼組成の鋼管製造に際して、非平衡状態の相分布を得るために、被冷却材の外表面位置で、少なくとも1.0℃/s以上の平均冷却速度を得ることができる冷却能を有する装置とする必要がある。冷却装置の冷却能が不足し、上記した平均冷却速度より遅い冷却しかできない場合には、非平衡状態の相分布を得ることができず、その後に加工を施しても、組織の微細化ができなくなる。なお、冷却速度の上限は、とくに限定する必要はないが、熱応力による割れや曲がりの防止という観点から、30℃/sとすることが好ましい。
なお、本発明で使用する装置列では、圧延装置3の出側に、保温装置(図示せず)を配設した装置列とすることが好ましい。本発明で使用する装置列では、圧延加工後の冷却速度を遅くするために、保温装置を配設する。ステンレス鋼管の場合、加工後に冷却が速すぎると、非平衡フェライト相がα→γ変態を生じることなく冷却され、微細なオーステナイト粒の生成が得られず、所望の鋼管組織の微細化が達成できなくなる。なお、保温装置は、被冷却材の表面位置で、少なくとも20℃/s以下程度の冷却速度に調整できる保温能があれば十分である。
つぎに、上記した装置列を利用する、高強度で、かつ低温靭性にさらに優れた油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法について説明する。
鋼素材を加熱装置で加熱したのち、加熱された鋼素材を冷却装置で冷却し、しかるのちに穿孔圧延装置で穿孔圧延を施して中空素材とし、さらに中空素材に圧延装置で加工を施して、あるいは加工後にさらに保温装置を通過させる処理を施し、または、鋼素材を加熱装置で加熱したのち、穿孔圧延装置で穿孔圧延を施して中空素材とし、さらに中空素材を冷却装置で冷却したのち、直ちに圧延装置で加工を施して、あるいは加工後にさらに保温装置を通過させる処理を施し、所定寸法の薄肉高強度継目無鋼管とする。
使用する鋼素材は、質量%で、C:0.050%以下、Si:1.00%以下、Mn:0.20〜1.80%、Cr:15.5〜18.0%、Ni:1.5〜5.0%、Mo:1.0〜3.5%、V:0.02〜0.20%、N:0.01〜0.15%、O:0.006%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する。
まず、鋼素材の組成の限定理由について説明する。なお、とくに断わらないかぎり、質量%は単に%で記す。
C:0.050%以下
Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼の強度に関係する重要な元素であり、本発明では所望の強度を確保するために0.005%以上含有することが望ましい。一方、0.050%を超えて含有すると、Ni含有による焼戻時の鋭敏化が増大する。なお、耐食性の観点からはCは少ないほうが望ましい。このようなことから、Cは0.050%以下に限定した。なお、好ましくは0.030〜0.050%である。
Si:1.00%以下
Siは、脱酸剤として作用する元素であり、0.05%以上含有することが望ましい。一方、1.00%を超える含有は、耐食性を低下させ、さらに熱間加工性をも低下させる。このため、Siは1.00%以下に限定した。なお、好ましくは0.10〜0.30%である。
Mn:0.20〜1.80%
Mnは、強度を増加させる作用を有する元素であり、このような効果を得るためには0.20%以上の含有を必要とする。一方、1.80%を超えて含有すると、靭性に悪影響を及ぼす。このため、Mnは0.20〜1.80%に限定した。なお、好ましくは0.20〜1.0%である。
Cr:15.5〜18.0%
Crは、保護皮膜を形成し耐食性を向上させる作用を有し、さらに固溶して鋼の強度を増加させる元素である。このような効果を得るためには、15.5%以上の含有を必要とする。一方、18.0%を超えて多量に含有すると、熱間加工性が低下し、さらに強度が低下する。このため、Crは15.5〜18.0%に限定した。なお、好ましくは16.5〜18.0%である。
Ni:1.5〜5.0%
Niは、保護膜を強固にし、耐食性を高める作用を有する元素であり、さらに固溶して鋼の強度を増加させ、さらに靭性を向上させる元素でもある。このような効果は1.5%以上の含有で認められる。一方、5.0%を超えて含有すると、マルテンサイト相の安定性が低下し、強度が低下する。このため、Niは1.5〜5.0%に限定した。なお、好ましくは2.5〜4.5%である。
Mo:1.0〜3.5%
Moは、Clによる孔食に対する抵抗性を増加させる元素であり、1.0%以上の含有を必要とする。一方、3.5%を超える多量の含有は、強度が低下するとともに、材料コストが高騰する。このため、Moは1.0〜3.5%に限定した。なお、好ましくは2〜3.5%である。
V:0.02〜0.20%
Vは、強度を増加させるとともに、耐食性を改善する元素である。このような効果を得るためには、0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.20%を超えて含有すると、靭性が低下する。このため、Vは0.02〜0.20%に限定した。なお、好ましくは0.02〜0.08%である。
N:0.01〜0.15%
Nは、耐孔食性を著しく向上される元素であり、このような効果を得るためには0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.15%を超えて含有すると、種々の窒化物を形成し靭性を低下させる。なお、好ましくは0.02〜0.08%である。
O:0.006%以下
Oは、鋼中では酸化物として存在し、各種特性に悪影響を及ぼす。このため、できるだけ低減することが望ましい。とくに、Oが0.006%を超えて多量に含有すると、熱間加工性、靭性、耐食性の低下が著しくなる。このため、Oは0.006%以下に限定した。
上記した成分が基本の成分であるが、基本成分に加えてさらに、選択元素として、次A群〜D群
A群:Al:0.002〜0.050%、
B群:Cu:3.5%以下、W:3.0%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
C群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
D群:Ca:0.01%以下
のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することができる。
A群:Al:0.002〜0.050%、
A群:Alは、脱酸剤として作用する元素であり、このような効果を得るためには、0.002%以上含有することが好ましいが、0.050%を超えて含有すると、靭性に悪影響を及ぼす。このため、含有する場合には、A群:Al:0.002〜0.050%に限定することが好ましい。より好ましくは0.03%以下である。Al無添加の場合には、不可避的不純物としてAl:0.002%未満程度が許容される。
B群:Cu:3.5%以下、W:3.0%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
B群:Cu、W、REMはいずれも、保護皮膜を強固し、鋼中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を高める。このような効果を得るためにはCu:0.5%以上、W:0.2%以上、REM:0.001%以上、それぞれ含有することが望ましい。一方、Cu:3.5%、W:3.0%、REM:0.01%を、それぞれ超える含有は、熱間加工性、靭性が低下する。このため、含有する場合には、B群:Cu:3.5%以下、W:3.0%以下、REM:0.01%以下に、それぞれ限定することが好ましい。なお、より好ましくはCu:0.8〜2.5%、W:0.8〜2.5%、REM:0.002〜0.005%である。
C群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上
C群:Nb、Ti、Zr、Bはいずれも、強度を増加させる元素であり、必要に応じて選択して含有できる。このような効果は、Nb:0.03%以上、Ti:0.03%以上、Zr:0.03%以上、B:0.0005%以上の含有で認められる。一方、Nb:0.2%、Ti:0.3%、Zr:0.2%、B:0.01%、をそれぞれ超える含有は、靭性を低下させる。このため、含有する場合は、Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下に、それぞれ限定することが好ましい。
D群:Ca:0.01%以下
D群:Caは、硫化物系介在物の形態を球状化する作用を有し、介在物周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、介在物の水素トラップ能を低下させる効果を有し、必要に応じ含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上含有することが望ましいが、Ca:0.01%を超えて含有すると、耐食性が低下する。このため、含有する場合には、Caは0.01%以下に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としてはP:0.03%以下、S:0.005%以下が許容できる。
上記した組成を有する鋼素材の製造方法はとくに限定する必要はない。転炉、電気炉等、常用の溶製炉を使用して、上記した組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法等の常用の鋳造方法で、鋳片(丸鋳片)としたものを鋼素材とすることが好ましい。なお、鋳片を熱間圧延して所定寸法の鋼片として鋼素材としてもよい。また、造塊−分塊圧延法で鋼片とし、鋼素材としてもなんら問題はない。
まず、上記した組成を有する鋼素材を、加熱装置に装入して、加熱温度:1000℃以上融点未満の範囲の温度に加熱する。
加熱温度:1000℃以上融点未満
加熱温度が1000℃未満では、温度が低すぎて元素の拡散が遅延し、変態を利用した組織の微細化が達成できない。一方、融点以上では加工を施すことができない。このため、鋼素材の加熱温度は1000℃以上融点未満の温度に限定した。なお、好ましくは変形抵抗が小さく加工が容易であり、冷却時の温度差を大きくとれるという観点から1000〜1300℃である。より好ましくは1100〜1300℃である。
加熱された鋼素材は、ついで、冷却装置で、所定の冷却速度で所定の冷却停止温度まで冷却される。冷却は、冷却開始温度からの温度差が少なくとも50℃以上で、かつ1080℃以上となる冷却停止温度まで、鋼素材の外表面位置の温度で1.0℃/s以上の平均冷却速度で冷却する冷却処理とする。なお、冷却開始温度とは、冷却開始前の鋼素材の外表面温度であり、本発明では1100℃以上とすることが好ましい。冷却開始温度が1100℃未満では、変形抵抗が高くなり、その後の穿孔圧延が困難となる。
冷却停止温度:冷却開始温度からの温度差が少なくとも50℃以上で、かつ1080℃以上
冷却停止温度とは、冷却停止前の鋼素材の外表面温度である。冷却停止温度が1080℃未満では、変形抵抗が高くなり、その後の穿孔圧延が困難となる。このため、本発明では1080℃以上とる。また、冷却開始温度からの温度差が50℃未満では、顕著な非平衡状態の相分率を確保できなくなり、その後の穿孔圧延による組織の微細化を達成できない。このため、加熱後の冷却は、冷却開始温度からの温度差が少なくとも50℃以上に限定した。冷却の温度範囲が大きいほど、非平衡状態の相分率を確保しやすくなる。なお、好ましくは100℃以上である。
冷却の平均冷却速度:外表面温度で1.0℃/s以上
冷却の平均冷却速度が1.0℃/s未満では、非平衡状態の相分率を確保できなくなり、その後の穿孔圧延により所望の組織微細化を達成できない。このため、冷却の平冷却速度は1.0℃/s以上に限定した。なお、冷却速度の上限は、冷却装置の能力により決定され、とくに限定する必要はないが、熱応力による割れ、曲がり防止の観点から、50℃/s以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは3〜10℃/sである。
上記した冷却停止温度まで冷却された鋼素材は、ついで、穿孔圧延を施され、中空素材とされる。
穿孔圧延条件は、鋼素材を所定の中空素材とすることができれば、とくにその条件を限定する必要はなく、常用の穿孔圧延とすることが好ましい。
なお、本発明では、上記した温度範囲に加熱された鋼素材に、上記した冷却を施すことなく、穿孔圧延を施して、中空素材としてもよい。その場合、得られた中空素材は、冷却装置4で下記条件の冷却を施される。
冷却は、冷却開始温度からの温度差が少なくとも50℃以上で、かつ525℃以上となる冷却停止温度まで、中空素材の外表面位置の温度で1.0℃/s以上の平均冷却速度で加速冷却する冷却処理とする。なお、冷却開始温度とは、冷却開始前の中空素材の肉厚中心温度であり、本発明では1000℃以上とすることが好ましい。冷却開始温度が1000℃未満では、その後の加工による組織微細効果が期待できない。
冷却温度範囲:50℃以上
冷却の温度範囲、すなわち、冷却開始温度と冷却停止温度の温度差は、少なくとも表面温度で50℃以上とする。冷却の温度範囲が50℃未満では、顕著な非平衡状態の相分率を確保できなくなり、その後の加工により所望の組織微細化を達成できない。このため、冷却の温度範囲は50℃以上に限定した。冷却の温度範囲は大きいほど、非平衡状態の相分率を確保できやすくなる。なお、好ましくは100℃以上である。
冷却停止温度:525℃以上
冷却停止温度は525℃以上とする。冷却停止温度が525℃未満では、元素の拡散が遅くなり、その後の加工による相変態(α→γ変態)が遅れ、所望の加工による組織微細効果が期待できなくなる。このため、冷却停止温度は525℃以上に限定した。なお、好ましくは700℃以上である。なお、冷却停止時の温度が525℃未満でも、複熱やその後に加えられる熱間加工による加工発熱で525℃以上となる場合には、組織の微細化効果を発揮する。
平均冷却速度:1.0℃/s以上
冷却の平均冷却速度が1.0℃/s未満では、非平衡状態の相分率を確保できなくなり、その後の加工により所望の組織微細化を達成できない。このため、冷却の平冷却速度は1.0℃/s以上に限定した。なお、冷却速度の上限は、冷却装置の能力により決定され、とくに限定する必要はないが、熱応力による割れ、曲がり防止の観点から、50℃/s以下とすることが好ましい。なお、より好ましくは3〜10℃/sである。
得られた中空素材は、ついで、圧延装置3で加工を施され、所定寸法の継目無鋼管とされる。なお、加工を施すまでの時間は冷却終了後600s以内とすることが好ましい。冷却終了後、加工開始までの時間が600sを超えて長くなると、フェライト相がオーステナイト相に変態し、非平衡状態を確保できにくくなる。
なお、加工後の冷却速度は、とくに限定する必要はないが、肉厚中心温度で平均冷却速度で20℃/sを超える冷却となる場合には、圧延装置の出側に配設された保温装置に装入し、平均冷却速度を20℃/s以下に調整することが好ましい。加工後の冷却が20℃/sを超えて速くなりすぎると、α→γ変態によるオーステナイト相の析出が遅れ、オーステナイト相を析出することなく冷却され、加工後の組織が凍結され、所望の組織微細化を達成することができなくなる。
上記した製造方法で得られる継目無鋼管は、上記した組成と、マルテンサイト相を主相とし、フェライト相と、あるいはさらに残留オーステナイト相からなる組織とを有する鋼管である。ここでいう「主相」とは、もっとも多い相をいうものとする。なお、残留オーステナイト相は、体積率で20%以下とすることが好ましい。このような組織を有する薄肉継目無鋼管は、降伏強さ:750MPa以上の高強度と、肉厚中心位置でのシャルピー衝撃試験の試験温度:−40℃での吸収エネルギー(J)が60J以上となる優れた低温靭性と、有する薄肉高強度ステンレス継目無鋼管となる。
つぎに、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。
表1に示す組成の鋼素材を出発素材とした。これら鋼素材は、転炉で溶製した溶鋼を、連続鋳造法で鋳片とし、該鋳片を成型圧延で表1に示す組成の丸鋼片(190mmφ)としたものである。
プロセス1として、これら鋼素材を、図1(a)に示す装置列の加熱装置1に装入し、表2に示す加熱温度に加熱し一定時間(60min)保持したのち、バレル形ロールのマンネスマン式穿孔圧延装置2を用いて穿孔圧延を施して中空素材(肉厚:約22mm)とし、スプレーによる冷却水を冷媒とする冷却装置4で、表2に示す平均冷却速度で、表2に示す冷却停止温度まで冷却し、直ちにエロンゲータ、プラグミル、リーラ、サイザーを順次配列してなる圧延装置3で表2に示す累積圧下率で圧延し、薄肉継目無鋼管(外径210mmφ×肉厚10.5mm)とした。なお、圧延後は放冷(0.1〜1.5℃/s)した。得られた薄肉継目無鋼管にさらに熱処理(焼入焼戻処理あるいは焼戻処理)を施した。
また、プロセス2として、これら鋼素材を、図1(b)に示す装置列の加熱装置1に装入し、表3に示す加熱温度に加熱し一定時間(60min)保持したのち、スプレーによる冷却水を冷媒とする冷却装置4で、表3に示す平均冷却速度で、表3に示す冷却停止温度まで冷却し、直ちにバレル形ロールのマンネスマン式穿孔圧延装置2を用いて穿孔圧延を施して中空素材(肉厚:約22mm)とし、エロンゲータ、プラグミル、リーラ、サイザーを順次配列してなる圧延装置3で表3に示す累積圧下率で圧延し、薄肉継目無鋼管(外径210mmφ×肉厚10.5mm)とした。なお、圧延後は放冷(0.1〜1.5℃/s)した。得られた薄肉継目無鋼管にさらに熱処理(焼入焼戻処理あるいは焼戻処理)を施した。なお、比較として、冷却装置4による冷却を行わない(放冷)で、薄肉継目無鋼管とした。
得られた薄肉継目無鋼管について、管内外面の疵の有無を観察し、疵の発生個数を測定するとともに切り出した疵深さを調査し、深さ0.5mm未満で3個までの場合を「無」、深さ0.5mm以上の疵または個数が3個を超える場合を疵「有」とし、個数が5未満を「少」、5以上を「多」として表示した。
また、得られた薄肉継目無鋼管から、試験片を採取して組織観察、引張試験、衝撃試験を実施した。試験方法はつぎのとおりとした。
(1)組織観察
得られた鋼管から、組織観察用試験片を採取し、管長手方向に直交する断面(C断面)を研磨、腐食(腐食液:ビレラ液)して、光学顕微鏡(倍率:100倍)または走査型電子顕微鏡(倍率:1000倍)で組織を観察し、撮像して、画像解析を用い、組織の種類およびその分率を測定した。なお、組織写真から、単位長さの直線と交差する相境界の数を測定し、結晶粒のサイズ指標とし、微細化の指標とした。なお、単位長さ当たりの相境界数は、得られた値を、同一鋼種の冷却速度が放冷(0.7℃/s)である鋼管No.5の値を基準(1.00)として、基準値に対する比率として示した。
(2)引張試験
得られた鋼管から、管軸方向が引張方向となるように、丸棒引張試験片(平行部6mmφ×G.L.20mm)を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTSを求めた。なお、降伏強さは0.2%伸びでの強度とした。なお、冷却速度が放冷(0.7℃/s)である鋼管(鋼管No.5)の降伏強さYS、引張強さTSを基準値として、これら基準値と、得られた各鋼管の降伏強さYS、引張強さTSとの差を基準値で除した値ΔYS(%)(=(降伏強さ−基準降伏強さ)×100/(基準降伏強さ))、ΔTS(=(引張強さ−基準引張強さ)×100/(基準引張強さ))を算出した。YSが所望のYSである750MPa以上で、かつΔYSが0.5%以上である場合を「○」とし、それ以外を「×」と評価した。
(3)衝撃試験
得られた鋼管の肉厚中央位置から、管軸方向と直交する方向が試験片長手方向となるように、Vノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、試験温度:−40℃における吸収エネルギーを測定し、靭性を評価した。なお、試験片は各3本とし、それらの平均値を当該鋼管の吸収エネルギーとした。なお、冷却速度が放冷(0.7℃/s)である鋼管(鋼管No.5)の試験温度:−40℃における吸収エネルギーを基準値(基準E−40)とし、該基準値と、得られた各鋼管の試験温度:−40℃における吸収エネルギーE−40との差を基準値で除した値ΔE−40(=(E−40−基準E−40)×100/(基準E−40))を算出した。E−40が60J以上でかつΔE−40が10%以上である場合を「○」とし、それ以外の場合を「×」と評価した。
得られた結果を、表4、表5に示す。
Figure 0006341128
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Figure 0006341128
Figure 0006341128
Figure 0006341128
本発明例はいずれも、肉厚中心位置においても組織の微細化ができ、降伏強さ:750MPa以上でかつΔYSが0.5%以上と高強度であるにもかかわらず、シャルピー衝撃試験の試験温度:−40℃における吸収エネルギーE−40が60J以上でかつΔE−40が10%以上と基準値に比較して、靭性が顕著に向上している。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、圧延疵が発生しているか、組織が微細化できず、所望の高強度を確保できていないか、所望の高靭性を確保できていない。
1 加熱装置
2 穿孔圧延装置
3 圧延装置
4 冷却装置
31 エロンゲータ
32 プラグミル
33 サイジングミル(サイザー)

Claims (4)

  1. 鋼素材を加熱装置で加熱後、加熱された前記鋼素材を冷却装置で冷却し、しかるのちに、該鋼素材に穿孔圧延装置で穿孔圧延を施して中空素材とし、さらに該中空素材に圧延装置で加工を施して、あるいはさらに該加工後に保温装置を通過させる処理を施して、薄肉継目無鋼管とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、
    C :0.050%以下、 Si:1.00%以下、
    Mn:0.20〜1.80%、 Cr:15.5〜18.0%、
    Ni:1.5〜5.0%、 Mo:1.0〜3.5%、
    V :0.02〜0.20%、 N :0.01〜0.15%、
    O :0.006%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
    前記加熱を、1000℃以上鋼素材の融点未満の温度に加熱する処理とし、前記冷却装置で冷却する前の前記鋼素材の表面温度を冷却開始温度として、前記冷却を、表面温度で、前記冷却開始温度からの温度差が少なくとも50℃以上で、かつ1080℃以上となる冷却停止温度まで、外表面温度で1.0℃/s以上の平均冷却速度で冷却する処理とし、肉厚:13mm以下の薄肉高強度ステンレス継目無鋼管とすること
    を特徴とする低温靭性に優れた油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
  2. 鋼素材を加熱装置で加熱後、穿孔圧延装置で穿孔圧延を施して中空素材とし、さらに該中空素材を冷却装置で冷却したのち、圧延装置で加工を施して、あるいはさらに該加工後に保温装置を通過させる処理を施して、薄肉継目無鋼管とするにあたり、前記鋼素材を、質量%で、
    C :0.050%以下、 Si:1.00%以下、
    Mn:0.20〜1.80%、 Cr:15.5〜18.0%、
    Ni:1.5〜5.0%、 Mo:1.0〜3.5%、
    V :0.02〜0.20%、 N :0.01〜0.15%、
    O :0.006%以下
    を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材とし、
    前記加熱を、1000℃以上融点未満の温度に加熱する処理とし、前記穿孔圧延を施したのちで、前記冷却装置で冷却する前の前記中空素材の表面温度を冷却開始温度として、前記冷却を、表面温度で、前記冷却開始温度からの温度差が少なくとも50℃以上で、かつ525℃以上となる冷却停止温度まで、外表面温度で1.0℃/s以上の平均冷却速度で冷却する処理とし、肉厚:13mm以下の薄肉高強度ステンレス継目無鋼管とすることを特徴とする低温靭性に優れた油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
  3. 前記加工後に前記保温装置内を通過させる処理が、平均冷却速度で20℃/s以下の冷却となるように調整する処理とすることを特徴とする請求項1または2に記載の油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、下記A群〜D群のうちから選ばれた1群または2群以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法。

    A群:Al:0.002〜0.050%、
    B群:Cu:3.5%以下、W:3.0%以下、REM:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
    C群:Nb:0.2%以下、Ti:0.3%以下、Zr:0.2%以下、B:0.01%以下のうちから選ばれた1種または2種以上、
    D群:Ca:0.01%以下
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