JP6340974B2 - 音響装置 - Google Patents

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Description

この発明は、スピーカ等の音響装置に関する。
スピーカ等の音響装置は、壁面に囲まれた空間を内包する筐体を有している。この空間内に固有周波数の音波が放射されると、いずれかの対向する壁面の一方の壁面から他方の壁面に進む音波と他方の壁面から一方の壁面に進む音波とが合わさって、筐体内に音の定在波が発生する。
特開2013−70362号公報
筐体内に発生する定在波は、音響装置の音響特性に悪影響を及ぼす。このため、このような定在波を抑制したい。
この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成により、筐体内に発生する音の定在波を低減することができる音響装置を提供することを目的としている。
この発明は、少なくとも一対の対向面に囲まれた空間を内包し、開口部を有する筐体と、両端が開口し、前記筐体の開口部に設けられて前記筐体の内外の空間を連通させる音響管であって、前記筐体内に発生する定在波の波長の略半波長の管長を有し、前記筐体内の空間に開口する内側開口端を前記定在波の音圧の略腹の位置に配置した音響管と、を具備することを特徴とする音響装置を提供する。
この発明によれば、音響管の内側開口端は、筐体内に発生する定在波の音圧の略腹の位置に配置されるため、この内側開口端付近の媒質は、当該筐体内の定在波によって加振される。音響管の内部を伝って内側開口端から反対の開口端に進行する音波は、当該反対の開口端において位相が反転して反射する。一方、内側開口端付近から筐体内を伝って一方の対向面から他方の対向面に進行する音波は、当該他方の対向面において同相のまま反射する。そして、内側開口端の付近に到達した音響管内の反射波と同筐体内の反射波とが重ねあわされる。その結果、筐体内の定在波は緩和される。すなわち、本音響装置によれば、簡単な構成により、筐体内に発生する音の定在波を低減することができる。
筐体内に発生する音の定在波を抑制する技術の例として、特許文献1の技術がある。特許文献1の技術は、両端が開口している音響管の両端を筐体内の所定の位置に配置することにより、管共鳴を利用して筐体内の定在波を抑制するものである。これに対して、本音響装置では、両端が開口している音響管を介して筐体の内外の空間を連通させており、音響管の一方の端は、筐体内の所定の位置に配置され、他方の端は、筐体外の空間に開口している。すなわち、本音響装置は、音響管の開口端の位置が特許文献1の音響装置と異なる。このため、本音響装置は、特許文献1の技術とは全く異なるものである。
この発明による音響装置の第1実施形態であるスピーカ1の構成を示す平面透視図である。 同スピーカ1の筐体10内に発生する音の定在波の例を示す図である。 同スピーカ1の設計例を示す図である。 同スピーカ1の周波数特性のシミュレーション条件を示す図である。 同スピーカ1の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。 同スピーカ1の周波数特性のシミュレーション結果を示す図である。 この発明による音響装置の第2実施形態であるスピーカ1Aの構成を示す平面透視図である。 この発明による音響装置の第3実施形態であるスピーカ1Bの構成を示す平面透視図である。 この発明による音響装置の第4実施形態であるスピーカ1Cの構成を示す平面透視図である。 この発明による音響装置の第5実施形態であるスピーカ1Dの構成を示す平面透視図である。 この発明による音響装置の第6実施形態であるスピーカ1Eの構成を示す平面透視図である。 この発明による音響装置の第7実施形態であるスピーカ1Fの構成を示す平面透視図である。
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明による音響装置の第1実施形態であるスピーカ1の構成を示す平面透視図である。スピーカ1の筐体10は、壁面10F、10U、10D、10L、10Rおよび10Bにより囲まれた直方体形状の筐体である。図1では、この筐体10の上壁面10Uを透かして筐体1の内部の構成が示されている。筐体1の前の壁面10Fには、音響放射面をスピーカ1の外側に向けてスピーカユニット20が固定されている。スピーカユニット20は、スピーカ1における音の発生源としての役割を果たす装置である。
本実施形態によるスピーカ1は、音響管30を有する。音響管30は、両端が開口した中空の管体である。例えば、音響管30の形状は、円筒形状である。音響管30は、筐体10内に収容されている。音響管30の開口端31は、左壁面10Lの開口部に固定されている。筐体10内の空間Sと筐体10外の空間とは、音響管30の内側の空間を介して連通している。
本実施形態による音響管30は、バスレフポートとして機能する。すなわち、音響管30は、ヘルムホルツ共鳴器におけるネックであり、筐体10とともにヘルムホルツ共鳴器を構成している。より詳細には、音響管30は、音響管30の開口面の面積、音響管30に連通した筐体10の容積、音響管30の長さにより決定されるヘルムホルツ共鳴周波数の音(例えば低音)を増強する。
ところで、筐体10内の空間Sの各種固有周波数は、互いに対向する壁面間の距離、すなわち、前後の壁面10Fおよび10B間の距離、左右の壁面10Lおよび10R間の距離、上下の壁面10Uおよび10D間の距離により定まる。スピーカユニット20から空間Sにその固有周波数と同じ周波数の音波が伝わった場合、いずれかの対向する壁面における一方の壁面から他方の壁面へ進む音波と他方の壁面から一方の壁面へ進む音波とが合わさって、壁面間の距離の2/k(k=1,2…)倍の波長λ(k=1,2…)を持った定在波SW(k=1,2…)が発生する。音響管30は、このようにして筐体10内に発生する音の定在波を低減する役割も担う。
音響管30は、筐体10内に発生する音の定在波を減衰させるために、以下の条件1〜3を満たすように設けられている。
(条件1):音響管30は、空間S内における抑圧対象の定在波SWの波長の略半波長の管長を有すること。より好適には、音響管30は、空間S内における抑圧対象の定在波SWのうちの最も低次の定在波SWの波長の略半波長の管長を有すること。具体的には、音響管30の管長Lport(音響管30と空間Sとの境界面から音響管30と筐体10の外部の空間との境界面までの長さ:図1参照)が、互いに対向する壁面間の距離Lcabに略等しいこと。
(条件2):音響管30の一端は、筐体10の外部の空間に開口していること。
(条件3):音響管30の他端は、空間S内における抑圧対象の定在波SWの音圧の略腹の位置に配置されること。この音響管30の他端は、抑圧対象の定在波SWのうち最も低次のものの音圧の略腹の位置に配置されるのが好ましい。具体的には、音響管30の他端は、抑圧対象の定在波を発生させる壁面の近傍の位置に配置されるのが好ましい。
図1の例では、音響管30の管長Lportは、左右の壁面10Lおよび10R間の距離Lcabに略等しくなっている。また、音響管30の開口端31は、筐体10の左壁面10Lの開口部に固定されて筐体10の外部の空間に開口しており、音響管30の開口端32は、右壁面10Rの内側の面の近傍に位置している。すなわち、図1に示す音響管30は、筐体10の左右の壁面10Lおよび10R間に発生する定在波を減衰させる。
なお、空間Sに開口する開口端(本実施形態では開口端32)を内側開口端(あるいは内側端)と呼ぶ。また、本明細書において、音圧の略腹の位置とは、抑圧対象の定在波の音圧の腹の位置を中心として、その抑圧対象の定在波の波長の±10%程度の範囲を言うこととする。この意味によれば、壁面の近傍とは、壁面から抑圧対象の定在波の波長の10%程度離れた位置までの範囲を言うこととする。また、音響管30は、空間S外の空気を空間S内に流入させ、空間S内の空気を空間S外に流出させる。このため、壁面の近傍の意味する範囲は、この空気の流入および流出を考慮するとなお良い。具体的には、壁面の近傍とは、音響管30の側壁を内側開口端から壁面まで延長したときの当該延長した側壁部分の表面積が内側開口端の開口面の面積と同程度になるときの内側開口端と壁面との間の距離を含む、という具合である。当該延長した側壁部分および内側開口端の開口面を通って空気が空間Sの内外に移動するからである。また、管長が抑圧対象の定在波の波長の略半波長の長さとは、抑圧対象の定在波の波長の半波長よりも抑圧対象の定在波の波長の10%程度短い長さから、抑圧対象の定在波の波長の半波長よりも抑圧対象の定在波の波長の10%長い長さまでの範囲を言うこととする。
この構成において、音響管30は、抑圧対象の定在波SWを抑制する。その理由は次のとおりである。図2は、筐体10内に発生する音の定在波の例を示す図である。図2では、左右の壁面10Lおよび10R間に発生する最も低次の定在波SWを例示している。空間S内において定在波SWが発生した場合、音響管30の開口端32付近の媒質(空気)は、定在波SWの腹の位置の音圧変化によって加振される。本実施形態では、開口端32が右壁面10Rの近傍に配置されているため、開口端32付近の媒質は、主に左右の壁面10Lおよび10R間に発生する最も低次の定在波SWの腹の音圧変化によって加振される。これにより、音響管30の内部では、開口端32から開口端31に向かう進行波が発生する。それと同時に、空間Sでは、開口端32から各壁面へ向かう進行波が発生する。例えば、壁面10Lへ向かう進行波が発生する。
音響管30内の進行波は、音響管30内を伝わって、開口端31に到達する。開口端31は筐体10の外部の空間に開口しているため、開口端31付近では音響インピーダンスが大きく変化している。このため、進行波が開口端31に到達すると、開口端31において反射波が発生する。開口端31における反射は開口端反射であるため、反射波は、進行波に対して位相の反転したものとなる。この反射波は、音響管30内を伝わって、加振源である開口端32付近に到達する。
一方、筐体10内の進行波のうちの一部は、空間Sを伝わって、壁面10Lへ伝わる。進行波が壁面10Lへ到達すると、壁面10Lにおいて反射波が発生する。壁面10Lにおける反射は剛壁による反射であるため、反射波の位相は、進行波と同相となる。この反射波は、空間Sを伝わって、加振源である開口端32付近に到達する。
音響管30の管長Lportと左右の壁面10Lおよび10R間の距離Lcabが略等しいため、開口端31による反射波と、左壁面10Lによる反射波とは、ほぼ同時刻に加振源である開口端32付近に到達する。そして、開口端31による反射波の位相と壁面10Lによる反射波の位相とは互いに逆相であるため、開口端32付近の位置では、開口端31による反射波と壁面10Lによる反射波とが重ねあわされて音圧が弱められる。従って、開口端32付近の位置では、抑圧対象の定在波SW、主に抑圧対象の定在波SWのうちの最も低次の定在波SWの音圧分布が緩和される。
図3は、本実施形態のスピーカ1の設計例を示す図である。図3の例では、本実施形態のスピーカ1の筐体10の内寸は、従来のスピーカと同じ寸法である。また、従来のスピーカの音響管の長さは230mmである。これに対して、本実施形態のスピーカ1では、音響管30の長さを300mmとしている。これは、音響管30の長さを筐体10の左右の壁面10Lおよび10R間の距離310mmに略等しくするためである。また、従来のスピーカの音響管の直径は76mmである。これに対して、本実施形態のスピーカ1では、音響管30の直径を88mmとしている。その結果、本実施形態のスピーカ1も従来のスピーカと同じヘルムホルツ共鳴周波数46Hzを有する。すなわち、本実施形態のスピーカ1は、現実的な寸法および形状で実現することができる。
次に、発明者は、シミュレーションにより本実施形態のスピーカ1の周波数特性を確認した。図4は、シミュレーション条件を示す図である。図4(A)は、シミュレーションを行った3つのモデルModel−1〜Model−3の各寸法を示したものである。図4(B)〜図4(D)は、Model−1〜Model−3の各々の透視図である。図4(E)は、筐体の幅内寸W、高さ内寸Hおよび奥行内寸Dの位置を示す図である。図4に示すModel−1は、本実施形態によるスピーカ1のシミュレーション条件例を示している。Model−1と図3のスピーカ1の設計例とは、シミュレーションの都合により筐体の内寸等が若干異なっているが、上記条件1〜3を満たす点において同じである。Model−2は、筐体の形状(筐体の幅内寸W、高さ内寸Hおよび奥行内寸D)、筐体の容積Cおよび音響管の長さLがModel−1と同じであるが、音響管の内側端の位置がModel−1と異なる。Model−1では、音響管の内側端は、筐体の壁面近傍に位置しているが、Model−2では、音響管の内側端は、筐体の中央近傍に位置している。Model−3は、筐体の容積CがModel−1と同じであるが、筐体の形状がModel−1と異なる。Model−1およびModel−2は、筐体が比較的立方体に近い形状であるのに対して、Model−3は、筐体の幅内寸Wおよび高さ内寸Hが短く奥行内寸D(音響管の長手方向の寸法)が長い形状である。また、Model−3では、音響管の内側端は筐体の中央近傍に位置している。
図5および図6は、図4のシミュレーション条件により行ったシミュレーション結果を示す図である。シミュレーションでは、筐体に固定されるスピーカユニットに所定レベルのホワイトノイズを入力した場合の筐体内部の音圧の周波数特性を求めた。図5において、M1は、図4のModel−1の筐体内部の音圧の周波数特性を示しており、M2は、図4のModel−2の筐体内部の音圧の周波数特性を示している。図5に示すように、音響管の内側端を壁面近傍に配置した場合の周波数特性M1と、音響管の内側端を筐体の中央近傍に配置した場合の周波数特性M2の両方において、図3のヘルムホルツ共鳴周波数46Hzに相当する周波数60Hz付近にヘルムホルツ共鳴の大きなピークを有する。すなわち、本実施形態によるスピーカ1は、従来のバスレフスピーカと同様に低音を適切に増強している。さらに、図5に示すように、周波数特性M2では、周波数944Hz付近に106dB程度の1次音響モードのピークが発生する。これに対して、周波数特性M1では、1次音響モードのピークの周波数が、880Hz程度と990Hz程度の2つの周波数に分かれる。これは、筐体の1次音響モードと音響管の1次音響モードが連成することにより生じる。そして、これら2つの周波数付近のピークは、それぞれ102dB程度に低減されている。このように、本実施形態によるスピーカ1では、1次音響モード、すなわち、最も低次の定在波の音圧が緩和される。
図6において、M1は、図5のそれと同じである。一方、図6において、M3は、図4のModel−3の筐体内部の音圧の周波数特性を示している。図6に示すように、周波数特性M1と、筐体の形状を変えた場合の周波数特性M3の両方において、周波数60Hz付近にヘルムホルツ共鳴の大きなピークを有する。また、図6に示すように、周波数特性M3では、周波数453Hz付近に102dB程度の1次音響モードのピークが発生する。これに対して、周波数特性M1では、周波数453Hz付近にはピークが発生しない。また、周波数特性M3では、1次よりも高次の音響モードのピークも多数発生している。これに対して、周波数特性M1では、1次よりも高次の音響モードは、周波数特性M3に比べ少ない。
以上のように、本実施形態によるスピーカ1によれば、簡単な構成により、筐体10内に発生する音の定在波を低減することができる。また、本実施形態の音響管30は、バスレフポートとしての役割と、筐体10内の定在波を低減する役割の両方を果たす。従って、本実施形態によれば、簡単な構成により、低音を適切に増強し、かつ、筐体10内に発生する音の定在波を低減することができる。また、本実施形態によれば、従来のバスレフスピーカに筐体10内の定在波を低減する音響管を別個に設ける態様に比べ、部品点数を削減することができる。このため、本実施形態によれば、従来のバスレフスピーカと同程度の製造工程および製造コストで、スピーカに筐体10内の定在波を低減する機能を付加することができる。なお、本実施形態では、筐体10の左右方向の定在波を抑圧する例を示したが、抑圧対象はこれに限られない。例えば、筐体10の前後方向の定在波や上下方向の定在波を抑圧するように音響管を配置しても良い。
なお、従来のバスレフポートを有するバスレフスピーカでは、バスレフポート(音響管)の管長を筐体内の定在波の波長の略半波長にするという思想や、バスレフポートの内側端を筐体内の定在波の音圧の略腹の位置に配置するという思想はない。従って、本音響装置は、従来のバスレフスピーカとは全く異なるものである。
<第2実施形態>
図7は、この発明の第2実施形態によるスピーカ1Aの構成を示す透視図である。本実施形態によるスピーカ1Aは、音響管30に代えて音響管30Aを有する点において第1実施形態によるスピーカ1と異なる。
音響管30Aは、一方の開口端32Aから他方の開口端31Aに至る途中において90度屈曲したL字形状をなしている。本実施形態における抑圧対象の定在波は、第1実施形態と同様に、左右の壁面10Lおよび10R間に発生する最も低次の定在波である。このため、音響管30Aの管長は、左右の壁面10Lおよび10R間の距離に略等しくなっている。なお、音響管30Aの管長とは、当該音響管30Aの中心となる線(中心軸)の開口端32Aから開口端31Aまでの長さのことである。音響管30Aは、筐体10外に配置されている。音響管30Aの開口端32Aは、筐体10外の空間に開口している。音響管30Aの内側開口端である開口端31Aは、後ろの壁面10Bの右壁面10R寄りの開口部に固定されている。すなわち、開口端31Aは、筐体10を構成する複数対の対向面のうちの一対の対向面(例えば前後の壁面10Fおよび10B)の一方の面(例えば後ろの壁面10B)と、他の一対の対向面(例えば左右の壁面10Lおよび10R)の一方の面(例えば右壁面10R)とが交差する位置(以下、筐体の角という)に配置されている。
本実施形態では、内側開口端の開口面の延長面が抑圧対象の定在波を発生させる左右の壁面10Lおよび10Rに交差するように内側開口端が配置されている。具体的には、内側開口端である開口端31Aは、音圧の腹の位置である右壁面10Rの近傍の位置において、開口端31Aの開口面の延長面が右壁面10Rに垂直に交差するように配置されている。このような姿勢で内側開口端が配置されても、内側開口端が音圧の略腹の位置に配置される点においては変わらない。また、音響管30Aがその長手方向の途中において屈曲していても、筐体10内の定在波を低減する機能に影響を及ぼさない。
このように、音響管30Aは、第1実施形態において示した条件1〜3を満たす。従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、開口端31Aを右壁面10Rに垂直に配置したことにより、音響管30Aを介して空間S内に空気が滑らかに流入し空間S外に空気が滑らかに流出する。このため、音響管30Aを介して空間S内に流入する空気の移動や空間S外に流出する空気の移動に起因する異音(いわゆる風切り音)を、第1実施形態に比べ、低減することができる。また、筐体の角は、複数の対向面の各々の定在波の音圧の腹になる。本実施形態では、内側開口端を筐体の角に配置しているため、壁面の中央付近に内側開口端を配置した態様に比べ、筐体内の定在波をより低減することができる。また、本実施形態の音響管30Aは、その長手方向の途中において屈曲している。このため、音響管をまっすぐに筐体10外に突出させる態様に比べ、スピーカ1Aをコンパクトにすることができる。
<第3実施形態>
図8は、この発明の第3実施形態によるスピーカ1Bの構成を示す透視図である。本実施形態によるスピーカ1Bは、音響管30に代えて音響管30Bを有する点において第1実施形態によるスピーカ1と異なる。
音響管30Bは、一方の開口端32Bから他方の開口端31Bに至る途中において180度屈曲したU字形状をなしている。本実施形態における抑圧対象の定在波は、第1実施形態と同様に、左右の壁面10Lおよび10R間に発生する最も低次の定在波である。このため、音響管30Bの管長は、左右の壁面10Lおよび10R間の距離に略等しくなっている。なお、音響管30Bの管長とは、当該音響管30Bの中心となる線(中心軸)の開口端32Bから開口端31Bまでの長さのことである。音響管30Bは、筐体10内に配置されている。開口端31Bは、左壁面10Lの開口部に固定され、筐体10外の空間に開口している。内側開口端である開口端32Bは、開口端31Bが固定されている左壁面10Lの近傍に配置されている。左壁面10Lは、抑圧対象の定在波の音圧の腹の位置である。
このように、音響管30Bは、第1実施形態において示した条件1〜3を満たす。従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
<第4実施形態>
図9は、この発明の第4実施形態によるスピーカ1Cの構成を示す透視図である。本実施形態によるスピーカ1Cは、音響管30に代えて音響管30Caおよび30Cbを有する点において第1実施形態によるスピーカ1と異なる。
音響管30Caおよび30Cbは、筐体10内に配置されている。音響管30Caは、音響管30Caの直径が音響管30よりも少し小さい点において音響管30と異なるが、その他は音響管30と同様である。音響管30Caは、第1実施形態において示した条件1〜3を満たしている。
一方、音響管30Cbは、管長が音響管30Caよりも短い音響管である。例えば、音響管30Cbの管長は、音響管30Caの管長の半分程度である。音響管30Cbの一方の開口端31Cbは、左壁面10Lの開口部に固定されている。音響管30Cbの他方の開口端32Cbは、空間Sの中央付近において開口している。すなわち、音響管30Cbは、上記条件1〜3を満たしていない通常のバスレフポートである。本実施形態では、音響管30Caの開口面の面積、音響管30Caの管長、音響管30Cbの開口面の面積、音響管30Cbの管長、および筐体10の容積から決定されるヘルムホルツ共鳴周波数の音が増強される。
このように、本実施形態によるスピーカ1Cは、バスレフポートとしての役割と、筐体10内の定在波を低減する役割の両方を果たす音響管30Caと、通常のバスレフポートとしての役割を果たす音響管30Cbを混在させたものである。この態様においても、音響管30Caは、上記条件1〜3を満たすため、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、内側開口端を筐体内の定在波の音圧の略腹の位置に配置させることによって音響管の管長が長くなり、所定のヘルムホルツ共鳴周波数を得るために音響管の開口面の面積を大きくする必要がある場合、本実施形態のように、筐体内の定在波を低減する役割を兼ねる音響管と通常のバスレフポートとを設けることにより、個々の音響管の開口面の面積が大きくなるのを抑えることができる。なお、筐体内の定在波を低減する役割を兼ねる音響管を複数設けても良い。
<第5実施形態>
図10は、この発明の第5実施形態によるスピーカ1Dの構成を示す透視図である。本実施形態によるスピーカ1Dは、音響管30に加えて音響管30Dをさらに有する点において第1実施形態によるスピーカ1と異なる。
本実施形態における抑圧対象の定在波は、左右の壁面10Lおよび10R間に発生する最も低次の定在波と前後の壁面10Fおよび10B間に発生する最も低次の定在波である。音響管30は、第1実施形態と同様に、左右の壁面10Lおよび10R間の定在波を抑圧するための音響管である。音響管30Dは、前後の壁面10Fおよび10B間の定在波を抑圧するための音響管である。音響管30Dは、両端が開口した中空の管体であり、筐体10内に収容される。音響管30Dの管長は、前後の壁面10Fおよび10B管の距離に略等しくなっている。開口端31Dは、後ろの壁面10Bの開口部に固定され、筐体10外の空間に開口している。内側開口端である開口端32Dは、前の壁面10Fの近傍に配置されている。すなわち、音響管30Dは、前後の壁面10Fおよび10B間の定在波に対して第1実施形態において示した条件1〜3を満たす。また、音響管30Dは、スピーカユニット20を避けて設けられている。例えば、音響管30Dは、スピーカユニット20よりも上方に位置している。
このように、本実施形態においても、上記条件1〜3を満たす音響管30および30Dを有するため、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、複数方向の定在波、すなわち、筐体10の左右の壁面10Lおよび10R間に発生する定在波と、筐体10の前後の壁面10Fおよび10B間に発生する定在波の両方が低減される。このため、本実施形態のスピーカ1Dは、第1実施形態に比べ、筐体10内の定在波をより低減することができる。なお、抑圧対象の組み合わせは、筐体10の左右方向と前後方向の組み合わせに限られない。例えば、筐体10の左右方向と上下方向の両方向の定在波を抑圧するようにしても良いし、筐体10の左右方向、前後方向および上下方向のすべての方向の定在波を抑圧するようにしても良い。
<第6実施形態>
図11は、この発明の第6実施形態によるスピーカ1Eの構成を示す透視図である。図11では、左壁面10Lを透かして筐体10の内部の構成が側面から示されている。本実施形態によるスピーカ1Eは、音響管30に代えて音響管30Eを有し、さらにスピーカユニット21を有する点において第1実施形態によるスピーカ1と異なる。
スピーカユニット21は、スピーカユニット21の振動板が筐体10内の空間Sに開放されていない音源である。スピーカユニット21は、例えば、高音域の音の発生源としての役割を果たすツイータである。スピーカユニット21は、前の壁面10Fに音響放射面をスピーカ1の外側に向けて固定されている。また、スピーカユニット21は、スピーカユニット20の上方に固定されている。スピーカユニット21の厚さは、前の壁面10Fの厚さと同程度である。
音響管30Eは、両端が開口した中空の管体であり、筐体10内に収容される。音響管30Eの管長は、前後の壁面10Fおよび10B間の距離に略等しくなっている。開口端31Eは、後ろの壁面10Bの開口部に固定されて、筐体10外の空間に開口している。内側開口端である開口端32Eは、スピーカユニット21の背面近傍に位置している。スピーカユニット21の厚さが前の壁面10Fの厚さと同程度であるため、スピーカユニット21の背面近傍の位置は、音圧の略腹の位置である。音響管30Eは、筐体10の前後の壁面10Fおよび10B間に発生する定在波を減衰させる。
このように、音響管30Bは、第1実施形態において示した条件1〜3を満たす。従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、スピーカユニット21の振動板が空間Sに開放されていないため、開口端32Eをスピーカユニット21の背面近傍に配置しても、音響管30Eは、スピーカユニット21の動作によって影響を与えられない。
<第7実施形態>
図12は、この発明の第7実施形態によるスピーカ1Fの構成を示す透視図である。本実施形態によるスピーカ1Fは、音響管30に代えて音響管30Fを有する点において第1実施形態によるスピーカ1と異なる。音響管30Fは、音響管30Fの両端付近の形状を、音響管30Fの内壁により囲まれた空間が音響管30Fの中央側から両端に進むに従って放射状に徐々に広がる形状(以下、フレア形状という)にした点において音響管30と異なる。
このように、音響管30Fの両端の形状をフレア形状にすることにより、音響管30Fを介した空気の流入および流出をより滑らかにすることができ、風切り音を低減することができる。また、本実施形態のスピーカ1Fは、音響管30Fの両端の形状をフレア形状にした点を除いて、第1実施形態と同様であるため、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
<他の実施形態>
以上、この発明の各実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
(1)上記各実施形態の音響管30〜30Fの内壁に、音響管30〜30Fを通過する音のエネルギーを減少させるような構造を設けても良い。例えば、音響管の内壁面の粗さを粗くする、という具合や、音響管の内壁面に吸音材を貼り付ける、という具合である。このような態様にすることにより、筐体10内に発生する定在波をさらに低減することができる。
(2)音響管を筐体外に配置し、音響管の内側開口端を抑圧対象の定在波を発生させる壁面の開口部に固定しても良い。この態様においても上記各実施形態と同様の効果が得られる。
(3)上記第1実施形態の音響管30の内側開口端は、抑圧対象の定在波を発生させる左右の壁面10Lおよび10Rのうちの右壁面10Lに対向するように開口していた。しかし、内側開口端は、内側開口端の開口面の延長面が抑圧対象の定在波を発生させる壁面に交差するように開口していても良い。例えば、第1実施形態のスピーカ1において、音響管30が開口端32付近でL字状に屈曲しており、開口端32がその開口面と右壁面10Rとが直交するような状態で配置される、という具合である。内側開口端が抑圧対象の定在波を発生させる壁面の近傍に配置されていれば、第1実施形態と同様の効果が得られるからである。
(4)上記各実施形態のスピーカ1〜1Fでは、音響管30〜30Fが筐体10に固定されていた。しかし、スピーカは、音響管の管長を維持しつつ、音響管の内側開口端の位置を調整する機構を有しても良い。例えば、第1実施形態の音響管30を当該音響管30の長手方向にスライドさせる、という具合である。この態様によれば、筐体10の壁面から最も適切な位置に音響管30の内側開口端が位置するように調整することができる。これにより、風切り音を適切に抑えつつ、筐体10内に発生する定在波を低減することができる。また、第2実施形態のスピーカ1Aのように、音響管の内側開口端が筐体の壁面の開口部に固定される態様においても、以下に例示するようにして、音響管の管長を維持しつつ、音響管の内側開口端の位置を調整することができる。例えば、筐体の壁面には、開口位置が異なる複数の開口部が設けられており、ユーザは、これら複数の開口部のなかから選択した開口部に音響管を内側開口端側から取り付け、選択されなかった開口部にその開口部を塞ぐ栓を取り付ける、という具合である。この態様では、ユーザが音響管を他の位置の開口部に付け替えることで、音響管の内側開口端の位置を変えることができる。この態様においても第2実施形態と同様の効果が得られる。また、音響管をその長手方向にスライドさせる態様と、複数の開口部のなかから音響管を取り付ける開口部を選択する態様とを組み合わせても良い。
(5)上記第1、3〜7実施形態のスピーカ1、1B〜1Fでは、音響管30、30B〜30Fを筐体10内に収容しており、上記第2実施形態のスピーカ1Aでは、音響管30Aを筐体10外に配置していた。しかし、音響管は、その長手方向の途中において屈曲して筐体内から筐体外に突出し、その先端に進むに従って再度筐体内に収容されても良い。
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F…スピーカ、10…筐体、10F,10U,10D,10L,10R,10B…壁面、20,21…スピーカユニット、30,30A,30B,30Ca,30Cb,30D,30E,30F…音響管、31,31A,31B,31Ca,31Cb,31D,31E,31F,32,32A,32B,32Ca,32Cb,32D,32E,32F…開口端。

Claims (3)

  1. 少なくとも一対の対向面に囲まれた空間を内包し、開口部を有する筐体と、
    両端が開口し、前記筐体の開口部に設けられて前記筐体の内外の空間を連通させる音響管であって、前記筐体内に発生する定在波の波長の略半波長の管長を有し、前記筐体内の空間に開口する内側開口端を前記定在波の音圧の略腹の位置に配置した音響管と、
    を具備することを特徴とする音響装置。
  2. 前記管長を前記対向面のうちのいずれか一対の対向面間の距離に略等しくし、前記内側開口端を当該一対の対向面のいずれか一方の面の近傍の位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
  3. 前記筐体が内包する空間は、複数対の対向面によって囲まれており、
    前記複数対の対向面のうちの一対の対向面の一方の面と、前記複数対の対向面のうちの他の一対の対向面の一方の面とが交差する位置に前記内側開口端を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の音響装置。
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