JP6338362B2 - 予混合圧縮着火式エンジン及びその運転制御方法 - Google Patents
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Description
かかる予混合圧縮着火式エンジンは、圧縮比を増加させて効率の向上が可能であると共に、燃料を希薄状態で燃焼させ低NOx化が可能となり、特に、高圧噴射が困難でディーゼルエンジン用燃料としては不向きな天然ガス系都市ガス等の気体燃料を用いても、容易に混合気を圧縮着火させて燃焼させることができるというメリットを有する。
予混合圧縮着火式エンジンで安定した運転を維持し更には効率を向上させるためには、圧縮行程の後期の上死点近傍から膨張行程の初期にかけて適切な燃焼時期に燃焼室の各部において燃料を自己着火燃焼させることが重要である。即ち、膨張行程において着火反応による発熱よりも体積増加に伴う内部エネルギーの低下が上回ると、着火反応が停止して失火が発生する。
そこで、特許文献1及び2の予混合圧縮着火式エンジンでは、燃焼室に排ガスを再循環させるEGRを行うと共に、燃焼室への排ガスの再循環率であるEGR率を調整可能なEGR率調整手段を設けると共に、当該EGR率調整手段を作動させてEGR率を制御する燃焼時期制御を実行して、膨張行程において適切な燃焼時期に混合気を確実且つ安定して自己着火燃焼させるように構成されている。
内部EGRでは、燃焼室に残留又は吸い戻される排ガスは非常に高温である。よって、内部EGR率調整手段を用いた予混合圧縮着火式エンジンの燃焼時期制御では、EGR率を増加させるほど、次の圧縮行程における圧縮前の混合気の温度が上昇するので、燃焼時期が進角側に調整されることになる。
一方、外部EGRでは、排気路からEGR路及び吸気路を介して燃焼室に再循環される排ガスは、比較的低温であるものの、新気(空気)と比べて比熱が大きい二酸化炭素や水分が多く含まれている。よって、外部EGR率調整手段を用いた予混合圧縮着火式エンジンの燃焼時期制御では、EGR率を増加させるほど、次の圧縮行程における圧縮時の混合気の温度上昇速度が減少するので、燃焼時期が遅角側に調整されることになる。
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、予混合圧縮着火式エンジンにおいて、EGR率調整手段を用いた燃焼時期制御を行うにあたり、合理的な構成で、EGR率の増加に伴うサイクル変動の悪化を抑制する技術を提供する点にある。
燃焼室に吸気される新気に炭化水素系の主燃料を混合して混合気を形成し、当該混合気を燃焼室で圧縮して自己着火させ燃焼させる予混合圧縮着火式エンジンであって、
その特徴構成は、
燃焼室における混合気の燃焼時期を検出する燃焼時期検出手段と、
燃焼室への排ガスの再循環率であるEGR率を調整可能なEGR率調整手段と、
温度と着火遅れ時間との相関関係において酸素濃度の変動の影響がメタン及びブタンよりも少ないエタン及びプロパンの一方又は両方からなる特定炭化水素の混合気中の含有率である特定炭化水素含有率を調整可能な特定炭化水素含有率調整手段と、
前記燃焼時期検出手段で検出される燃焼時期が所定の目標燃焼時期になるように前記EGR率調整手段を作動させて前記EGR率を制御する燃焼時期制御を実行する運転制御手段と、を備え、
前記運転制御手段が、前記燃焼時期制御に加えて、前記EGR率の増加による酸素濃度の不均一化に伴って前記特定炭化水素含有率を増加させる形態で、前記EGR率調整手段の状態に応じて前記特定炭化水素含有率調整手段を作動させて前記特定炭化水素含有率を変動させる特定炭化水素含有率制御を実行する点にある。
即ち、本特徴構成によれば、燃焼時期制御を実行して、混合気の燃焼時期が目標燃焼時期になるようにEGR率を制御するにあたり、EGR率の増加によりサイクル変動が悪化する傾向にあったとしても、EGR率の増加に伴う混合気中の酸素濃度の不均一化の影響をほとんど受けない特定炭化水素の混合気中の含有率である特定炭化水素含有率、より好ましくはエタンの混合気中の含有率であるエタン含有率を、EGR率の増加に応じて増加させることで、EGR率の増加に伴うサイクル変動の悪化を抑制することができる。
一方、EGR率が減少又はEGRの実行が停止された場合には、特定炭化水素含有率が減少することから、混合気中の特定炭化水素含有率を増加するためのコストを節約することができる。
従って、本発明により、予混合圧縮着火式エンジンにおいて、EGR率調整手段を用いた燃焼時期制御を行うにあたり、合理的な構成で、EGR率の増加に伴うサイクル変動の悪化を抑制する技術を提供することができる。
排気弁を上死点よりも進角側又は遅角側で閉弁して燃焼室に排ガスを残留させる又は吸い戻す内部EGRを行うと共に、前記EGR率調整手段が、バルブタイミング可変機構により排気弁の閉弁タイミングを調整して前記EGR率を調整する内部EGR率調整手段であり、
前記運転制御手段が、前記燃焼時期制御において、前記燃焼時期の進角側への調整に対して前記EGR率を増加させる形態で、前記内部EGR率調整手段を作動させて前記EGR率を制御する点にある。
そして、燃焼時期制御によるEGR率の増加によりサイクル変動が悪化する傾向にあったとしても、特定炭化水素含有率制御により混合気中の特定炭化水素含有率を増加させることで、サイクル変動の悪化を抑制することができる。
排気路と吸気路とを接続するEGR路を介して燃焼室に排ガスを再循環させる外部EGRを行うと共に、前記EGR率調整手段が、当該EGR路に設けられたEGR弁の開度を調整して前記EGR率を調整する外部EGR率調整手段であり、
前記運転制御手段が、前記燃焼時期制御において、前記燃焼時期の進角側への調整に対して前記EGR率を減少させる形態で、前記外部EGR率調整手段を作動させて前記EGR率を制御する点にある。
そして、燃焼時期制御によるEGR率の増加によりサイクル変動が悪化する傾向にあったとしても、特定炭化水素含有率制御により混合気中の特定炭化水素含有率を増加させることで、サイクル変動の悪化を抑制することができる。
サイクル変動の悪化を検出するサイクル変動検出手段を備え、
前記運転制御手段が、前記特定炭化水素含有率制御において、前記サイクル変動検出手段で検出されるサイクル変動の悪化が抑制されるように前記特定炭化水素含有率調整手段を作動させて前記特定炭化水素含有率を変動させる形態で、前記特定炭化水素含有率を変動させる点にある。
即ち、サイクル変動検出手段でサイクル変動の悪化を検出すれば、EGR率が増加したと判断して、特定炭化水素含有率制御により混合気中の特定炭化水素含有率を増加させることで、サイクル変動の悪化を抑制することができる。
前記特定炭化水素含有率調整手段が、燃焼室に対して添加量調整を伴って特定炭化水素を添加可能な特定炭化水素添加手段である点にある。
燃焼室に吸気される新気に炭化水素系の主燃料を混合して混合気を形成し、当該混合気を燃焼室で圧縮して自己着火させ燃焼させる予混合圧縮着火式エンジンの運転制御方法であって、
その特徴構成は、
前記予混合圧縮着火式エンジンに、
燃焼室における混合気の燃焼時期を検出する燃焼時期検出手段と、
燃焼室への排ガスの再循環率であるEGR率を調整可能なEGR率調整手段と、
温度と着火遅れ時間との相関関係において酸素濃度の変動の影響がメタン及びブタンよりも少ないエタン及びプロパンの一方又は両方からなる特定炭化水素の混合気中の含有率である特定炭化水素含有率を調整可能な特定炭化水素含有率調整手段と、を設け、
前記燃焼時期検出手段で検出される燃焼時期が所定の目標燃焼時期になるように前記EGR率調整手段を作動させて前記EGR率を制御する燃焼時期制御を実行すると共に、当該燃焼時期制御に加えて、前記EGR率の増加による酸素濃度の不均一化に伴って前記特定炭化水素含有率を増加させる形態で、前記EGR率調整手段の状態に応じて前記特定炭化水素含有率調整手段を作動させて前記特定炭化水素含有率を変動させる特定炭化水素含有率制御を実行する点にある。
本発明に係る予混合圧縮着火式エンジン及びその運転制御方法の第1実施形態について、図1〜図4に基づいて説明する。
図1に示すエンジン1は、燃焼室10に吸気される新気に炭化水素系の主燃料を混合して混合気Mを形成し、当該混合気Mを燃焼室10で圧縮して自己着火させ燃焼させる予混合圧縮着火式エンジンとして構成されている。
燃焼室10は、シリンダ2の内面と、シリンダ2の上部に連結されたシリンダヘッド3の下面と、シリンダ2内において連結棒を介しクランク軸6に連結されて往復移動自在に収容されたピストン4の頂面とで形成されている。
そして、燃焼室10には、吸気路21及び排気路31が開口され、燃焼室10の吸気路21側には吸気弁20が、燃焼室10の排気路31側には排気弁30が設けられている。
また、一般的なHCCI式エンジンと同様に、各種センサとして、クランク軸6の角度であるクランク角を計測するクランク角センサ7や、燃焼室10の圧力である筒内圧を計測する筒内圧力センサ8等が設けられている。
詳しくは、吸気弁20を開動作させた状態でピストン4が上死点から下降することにより、吸気路21から燃焼室10に混合気Mを吸気する吸気行程が行われ、次に、吸気弁20を閉動作させた状態でピストン4が上昇することにより、燃焼室10の混合気Mを圧縮する圧縮行程が行われる。
この圧縮行程の後期では、混合気Mが断熱圧縮により昇温して、主燃料の酸化反応が進み、温度が連鎖分岐反応の発生する主燃料の着火温度まで上昇すると、自己着火が発生し混合気Mが燃焼する、所謂HCCI燃焼が行われる。
圧縮行程に続く膨張行程では、混合気Mの燃焼に伴う燃焼室10の容積増加によりピストン4が降下し、それに続く排気行程では、排気弁30を開動作させた状態でピストン4が上昇することにより、燃焼室10の排ガスが排気路31に排出される。
即ち、排気弁30の閉タイミングを下死点よりも進角した時点に設定する形態で内部EGRを行えば、燃焼室10に排ガスを残留させることができ、一方、排気弁30の閉時期を下死点よりも遅角した時点に設定する形態で内部EGRを行えば、排気路31から燃焼室10に排ガスを吸い戻すことができる。
このように内部EGRにより燃焼室10に高温の排ガスを残留又は吸い戻すと、燃焼室10では、その高温の排ガスが次の吸気行程で吸気された混合気Mに混入され、混合気Mの圧縮前の温度が高温の排ガスの混入により上昇することになる。即ち、内部EGR率調整手段40により内部EGRにおけるEGR率を調整することで、圧縮前の混合気Mの温度を調整することができる。例えば、排気弁30の閉タイミングを下死点よりも進角した時点に設定して燃焼室10に排ガスを残留させる形態で内部EGRを行う場合には、その上死点に対する排気弁30の閉弁タイミングの進角幅を増加させることで、EGR率が増加して、圧縮前の混合気Mの温度が上昇する。一方、排気弁30の閉タイミングを下死点よりも遅角した時点に設定して排気路31から燃焼室10に排ガスを吸い戻す形態で内部EGRを行う場合には、その上死点に対する排気弁30の閉弁タイミングの遅角幅を増加させることで、EGR率が増加して、圧縮前の混合気Mの温度が上昇する。
具体的に、図2に示すように、内部EGRにおけるEGR率が増加すると、圧縮前の混合気Mの温度が上昇することから、その混合気Mの燃焼時期の進角側への調整幅が増加し、逆に、内部EGRにおけるEGR率が減少すると、圧縮前の混合気Mの温度が低下することから、その混合気Mの燃焼時期の進角側への調整幅が減少することになる。
上記燃焼時期検出手段51が実行する燃焼時期検出処理では、クランク角センサ7で検出されるクランク角を参照しながら筒内圧力センサ8で検出された筒内圧の変化状態を分析して、燃焼質量割合50%時期(50%の主燃料の燃焼が完了した時期)や熱発生率の重心時期又は最大熱発生時期などの燃焼時期に関する状況を求め、かかる状況から混合気Mの燃焼時期を検出する。
上記運転制御手段52が実行する燃焼時期制御では、燃焼時期検出手段51で検出された燃焼室10における燃焼時期が、上死点近傍の目標燃焼時期範囲(例えば、6°ATDC〜10°ATDCの範囲)に対して進角側に乖離した場合には、バルブタイミング可変機構41により排気弁30の閉弁タイミングを調整してEGR率を減少させて、燃焼室10における圧縮前の混合気Mの温度を低下させる。すると、混合気Mの温度低下により、燃焼室10における燃焼時期が遅角側に移行して燃焼時期が上記目標燃焼時期範囲内に復帰することになる。更に、燃焼時期制御では、燃焼時期検出手段51で検出された燃焼室10における燃焼時期が、上記目標燃焼時期範囲に対して遅角側に乖離した場合には、バルブタイミング可変機構41により排気弁30の閉弁タイミングを調整してEGR率を増加させて、燃焼室10における圧縮前の混合気Mの温度を上昇させる。すると、混合気Mの温度上昇により、燃焼室10における燃焼時期が進角側に移行して上記目標燃焼時期範囲内に復帰することになる。
そして、運転制御手段52は、上記空燃比制御において空燃比を一定の目標空燃比に制御しながら、スロットルバルブ22の開度を変化させて、燃焼室10に対する1サイクルあたりの混合気Mの供給量(即ち吸気量)を調整する形態で、燃焼室10に対する1サイクルあたりの燃料供給量を調整してエンジン出力を制御する出力制御を実行する。即ち、吸気量を増加させれば、燃焼室10に対する燃料供給量が増加して、エンジン出力が上昇し、逆に、吸気量を減少させれば、燃焼室10に対する燃料供給量が減少して、エンジン出力が低下する。
尚、上記空燃比制御における目標空燃比を所定の設定範囲内において変化させて燃焼室10で自己着火燃焼する混合気Mの当量比を調整する形態で、燃焼室10に対する1サイクルあたりの燃料供給量を調整してエンジン出力を制御する出力制御を実行しても構わない。即ち、混合気Mの当量比を増加させれば、燃焼室10に対する燃料供給量が増加して、エンジン出力が上昇し、逆に、混合気Mの当量比を減少させれば、燃焼室10に対する燃料供給量が減少して、エンジン出力が低下する。
以下、その詳細構成について説明を加える。
具体的に、天然ガスの蒸留過程などで得られたエタンやプロパンの少なくとも一方の特定炭化水素が可搬式の高圧ガス容器63に加圧状態で蓄えられており、この特定炭化水素添加部61は、その高圧ガス容器63に貯留されている特定炭化水素を、ミキサ23に供給される主燃料に対して、特定炭化水素添加量調整弁62による添加量調整を伴って混合するように構成されている。
そして、運転制御手段52は、特定炭化水素含有率制御において特定炭化水素含有率を変動させるにあたり、混合気Mの特定炭化水素含有率を増加させる場合には特定炭化水素添加量調整弁62の開度を拡大させ、混合気Mの特定炭化水素含有率を減少させる場合には特定炭化水素添加量調整弁62の開度を縮小させる。
図4は、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、イソブタン(iso−C4H10)、及びノルマルブタン(n−C4H10)の夫々の炭化水素系燃料について、密閉定容系の詳細化学反応計算により、着火遅れ時間の酸素濃度依存性について解析した結果を示している。
特定炭化水素としてのエタンやプロパン以外の炭化水素系燃料(図4(a)、(d)、及び(e)参照)については、酸素濃度が10.5%、21%、及び42%の順に増加するほど、温度上昇に対する着火遅れ時間の短縮度合いが増加している。一方、エタンやプロパン(図4(b)、(c)参照)については、酸素濃度が10.5%、21%、及び42%と変化した場合でも、温度上昇に対する着火遅れ時間の短縮度合いが略一定である。即ち、この解析結果から、炭化水素系燃料のうち、エタンやプロパンが、他の炭化水素と比較して、着火遅れ時間に対する酸素濃度の変動の影響が少ないことがわかる。即ち、エタンやプロパンは、混合気中の酸素濃度が不均一になった場合でも、その影響をあまり受けることなく着火すると言える。
更に、エタン(図4(b))については、プロパン(図4(c))と比較しても、着火遅れ時間が酸素濃度の変動の影響をほとんど受けないことがわかる。よって、エタンは、混合気中の酸素濃度が不均一になった場合でも、その影響をほとんど受けることなく着火すると言える。
具体的に、特定炭化水素含有率制御では、図3のグラフ図に示すように、内部EGRにおけるEGR率の増加を伴う燃焼時期の進角側への調整に対しては、EGR率の増加に対して略比例的に特定炭化水素含有率を増加させることで、EGR率の増加に伴うサイクル変動の悪化を抑制し、逆に、内部EGRにおけるEGR率の減少を伴う燃焼時期の遅角側への調整に対しては、EGR率の減少に対して略比例的に特定炭化水素含有率を減少させることで、特定炭化水素の消費を節約することができる。
ECU50は、サイクル変動の悪化を検出するサイクル変動検出手段53として機能する。
上記サイクル変動検出手段53は、クランク角センサ7で検出されるクランク角を参照しながら筒内圧力センサ8で検出された筒内圧力を分析して、図示平均有効圧力を算出し、その図示平均有効圧力の標準偏差を同圧力の平均値で除算した値を、所定のサイクル数における変動係数COVとして求め、その変動係数COVが許容範囲を超えて増大した状態を、サイクル変動の悪化として検出する。
そして、運転制御手段52は、特定炭化水素含有率制御において、サイクル変動検出手段53で検出されるサイクル変動の悪化が抑制されるように特定炭化水素含有率調整手段60により特定炭化水素含有率を変動させる形態で、混合気Mの特定炭化水素含有率を変動させる。
具体的に、内部EGRにおけるEGR率の増加により燃焼時期を進角側へ調整することで、燃焼室10における酸素濃度が時間的に不均一になり、サイクル変動検出手段53でサイクル変動の悪化が検出される。この場合、特定炭化水素含有率制御により混合気Mの特定炭化水素含有率を増加させることで、混合気Mの着火性に対する酸素濃度の不均一化の影響が小さくなり、結果、サイクル変動の悪化が抑制されることになる。
本発明に係る予混合圧縮着火式エンジン及びその運転制御方法の第2実施形態について、図3、図5及び図6に基づいて説明する。尚、上記第1実施形態と同様の構成については、説明を割愛する場合がある。
図5に示すエンジン100は、EGRの形態並びにEGR率を調整するEGR率調整手段以外の構成において、第1実施形態と略同様の基本構成を有する予混合圧縮着火式エンジンとして構成されている。
即ち、エンジン100は、燃焼室10に排ガスを再循環させるEGRとして、排気路31と吸気路21とを接続するEGR路43を介して燃焼室10に排ガスを再循環させる外部EGRを行う。そして、その外部EGRにおけるEGR率を調整するEGR率調整手段として、当該EGR路43に設けられたEGR弁44の開度を調整してEGR率を調整する外部EGR率調整手段42が設けられている。
即ち、EGR弁44を開弁する形態で外部EGRを行えば、新気(空気)と比べて比熱が大きい二酸化炭素や水分が多く含まれている排ガスが、排気路31からEGR路43に取り出され、吸気路21を通流してある程度冷却された後に、燃焼室10に再循環されることになる。
このように外部EGRにより比熱が大きく比較的低温の排ガスを燃焼室10に再循環させると、燃焼室10では、その排ガスが混合気Mに混入され、圧縮時の混合気Mの温度上昇速度が減少することになる。即ち、外部EGR率調整手段42により外部EGRにおけるEGR率を調整することで、圧縮時の混合気Mの温度上昇速度を調整することができる。例えば、EGR弁44の開度を拡大することで、EGR率が増加して、圧縮時の混合気Mの温度上昇速度が減少する。
具体的に、図6に示すように、外部EGRにおけるEGR率が増加すると、圧縮時の混合気Mの温度上昇速度が減少することから、その混合気Mの燃焼時期の遅角側への調整幅が増加し、逆に、外部EGRにおけるEGR率が減少すると、圧縮時の混合気Mの温度上昇速度が増加することから、その混合気Mの燃焼時期の遅角側への調整幅が減少することになる。
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記実施形態では、特定炭化水素含有率調整手段60を、燃焼室10に対して添加量調整を伴って特定炭化水素を添加可能な特定炭化水素添加部61として構成したが、例えば、特定炭化水素含有率調整手段60を、燃焼室10に供給される主燃料から分離量調整を伴って特定炭化水素を分離することで、燃焼室10における混合気Mの特定炭化水素含有率の調整を行っても構わない。
また、主燃料以外の原料を外部から供給し、その原料を合成して特定炭化水素を得るように構成しても構わない。尚、この場合、原料としてのエチレンの水素化反応により特定炭化水素としてのエタンを得ることができ、更に、そのエチレンをエタノールの脱水処理により得ることもできる。
例えば、EGR率が0を含む所定値を超えた場合には、燃焼室10に対する特定炭化水素の添加を実行して、所定の特定炭化水素含有率の混合気Mを燃焼室10に吸気し、EGR率が所定値以下になった場合には、燃焼室10に対する特定炭化水素の添加を停止して、特定炭化水素が添加されていない混合気M、即ち特定炭化水素含有率が0の混合気Mを燃焼室10に吸気するように構成しても構わない。
10 :燃焼室
21 :吸気路
30 :排気弁
31 :排気路
40 :内部EGR率調整手段(EGR率調整手段)
41 :バルブタイミング可変機構
42 :外部EGR率調整手段(EGR率調整手段)
43 :EGR路
44 :EGR弁
51 :燃焼時期検出手段
52 :運転制御手段
53 :サイクル変動検出手段
60 :特定炭化水素含有率調整手段
61 :特定炭化水素添加部(特定炭化水素添加手段)
62 :特定炭化水素添加量調整弁(特定炭化水素添加手段)
M :混合気
Claims (6)
- 燃焼室に吸気される新気に炭化水素系の主燃料を混合して混合気を形成し、当該混合気を燃焼室で圧縮して自己着火させ燃焼させる予混合圧縮着火式エンジンであって、
燃焼室における混合気の燃焼時期を検出する燃焼時期検出手段と、
燃焼室への排ガスの再循環率であるEGR率を調整可能なEGR率調整手段と、
温度と着火遅れ時間との相関関係において酸素濃度の変動の影響がメタン及びブタンよりも少ないエタン及びプロパンの一方又は両方からなる特定炭化水素の混合気中の含有率である特定炭化水素含有率を調整可能な特定炭化水素含有率調整手段と、
前記燃焼時期検出手段で検出される燃焼時期が所定の目標燃焼時期になるように前記EGR率調整手段を作動させて前記EGR率を制御する燃焼時期制御を実行する運転制御手段と、を備え、
前記運転制御手段が、前記燃焼時期制御に加えて、前記EGR率の増加による酸素濃度の不均一化に伴って前記特定炭化水素含有率を増加させる形態で、前記EGR率調整手段の状態に応じて前記特定炭化水素含有率調整手段を作動させて前記特定炭化水素含有率を変動させる特定炭化水素含有率制御を実行する予混合圧縮着火式エンジン。 - 排気弁を上死点よりも進角側又は遅角側で閉弁して燃焼室に排ガスを残留させる又は吸い戻す内部EGRを行うと共に、前記EGR率調整手段が、バルブタイミング可変機構により排気弁の閉弁タイミングを調整して前記EGR率を調整する内部EGR率調整手段であり、
前記運転制御手段が、前記燃焼時期制御において、前記燃焼時期の進角側への調整に対して前記EGR率を増加させる形態で、前記内部EGR率調整手段を作動させて前記EGR率を制御する請求項1に記載の予混合圧縮着火式エンジン。 - 排気路と吸気路とを接続するEGR路を介して燃焼室に排ガスを再循環させる外部EGRを行うと共に、前記EGR率調整手段が、当該EGR路に設けられたEGR弁の開度を調整して前記EGR率を調整する外部EGR率調整手段であり、
前記運転制御手段が、前記燃焼時期制御において、前記燃焼時期の進角側への調整に対して前記EGR率を減少させる形態で、前記外部EGR率調整手段を作動させて前記EGR率を制御する請求項1に記載の予混合圧縮着火式エンジン。 - サイクル変動の悪化を検出するサイクル変動検出手段を備え、
前記運転制御手段が、前記特定炭化水素含有率制御において、前記サイクル変動検出手段で検出されるサイクル変動の悪化が抑制されるように前記特定炭化水素含有率調整手段を作動させて前記特定炭化水素含有率を変動させる形態で、前記特定炭化水素含有率を変動させる請求項1〜3の何れか1項に記載の予混合圧縮着火式エンジン。 - 前記特定炭化水素含有率調整手段が、燃焼室に対して添加量調整を伴って特定炭化水素を添加可能な特定炭化水素添加手段である請求項1〜4の何れか1項に記載の予混合圧縮着火式エンジン。
- 燃焼室に吸気される新気に炭化水素系の主燃料を混合して混合気を形成し、当該混合気を燃焼室で圧縮して自己着火させ燃焼させる予混合圧縮着火式エンジンの運転制御方法であって、
前記予混合圧縮着火式エンジンに、
燃焼室における混合気の燃焼時期を検出する燃焼時期検出手段と、
燃焼室への排ガスの再循環率であるEGR率を調整可能なEGR率調整手段と、
温度と着火遅れ時間との相関関係において酸素濃度の変動の影響がメタン及びブタンよりも少ないエタン及びプロパンの一方又は両方からなる特定炭化水素の混合気中の含有率である特定炭化水素含有率を調整可能な特定炭化水素含有率調整手段と、を設け、
前記燃焼時期検出手段で検出される燃焼時期が所定の目標燃焼時期になるように前記EGR率調整手段を作動させて前記EGR率を制御する燃焼時期制御を実行すると共に、当該燃焼時期制御に加えて、前記EGR率の増加による酸素濃度の不均一化に伴って前記特定炭化水素含有率を増加させる形態で、前記EGR率調整手段の状態に応じて前記特定炭化水素含有率調整手段を作動させて前記特定炭化水素含有率を変動させる特定炭化水素含有率制御を実行する前記予混合圧縮着火式エンジンの運転制御方法。
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JP2013250220A JP6338362B2 (ja) | 2013-12-03 | 2013-12-03 | 予混合圧縮着火式エンジン及びその運転制御方法 |
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