以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
以下に示す実施の形態においては、電動車両の1つの例として、外部充電が可能に構成されたハイブリッド車であるプラグインハイブリッド車について説明する。しかし、本発明が適用可能な車両は外部充電が可能に構成されていればこれに限定されるものではなく、エンジンを搭載しない電気自動車や燃料電池車であってもよい。
[実施の形態1]
<電動車両の基本構成>
図1は、実施の形態1に係る電動車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。図1を参照して、車両1は、メインバッテリ150と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)110と、空調装置120と、PCU(Power Control Unit)200と、第1モータジェネレータ(第1MG)10と、第2モータジェネレータ(第2MG)20と、動力分割機構30と、エンジン100と、駆動輪350と、ECU(Electronic Control Unit)300とを備える。
メインバッテリ150(蓄電装置)は、充放電が可能に構成された直流電源であり、代表的にはリチウムイオン電池もしくはニッケル水素電池などの二次電池、または電気二重層キャパシタなどのキャパシタを含んで構成される。本実施の形態では、リチウムイオン電池が採用される場合を例に説明する。メインバッテリ150の電圧は、たとえば200V程度である。メインバッテリ150は、車両1の運転時には、車両1の駆動力を発生させるための電力をPCU200に供給する一方で、車両1の回生制動時には、第1MG10または第2MG20によって発電された電力を蓄える。
メインバッテリ150には電池センサ152が設けられている。電池センサ152は、いずれも図示しないが、電圧センサと、電流センサと、温度センサとを含む。電圧センサはメインバッテリ150の電圧VBを検出する。電流センサはメインバッテリ150の入出力電流IBを検出する。温度センサはメインバッテリ150の温度(電池温度)TBを検出する。各センサは、その検出結果を示す信号をECU300に出力する。ECU300は、電圧VB、入出力電流IB、および電池温度TBに基づいて、メインバッテリ150のSOCを算出する。また、ECU300は、電池温度TBおよび後述する冷却ファン168の吸気温度TCに基づいて、メインバッテリ150の冷却が必要か否かを判定する。
SMR110は、メインバッテリ150と電力線PL,NLとの間に電気的に接続される。SMR110の閉成/開放は、ECU300からの制御信号SE1に応じて制御される。SMR110が閉成されている場合、メインバッテリ150とPCU250との間で電力線PL,NLを介して電力の授受が行なわれる。
電力線PL,NLには、空調装置120およびPCU200が電気的に接続されている。空調装置120は、ECU300からの制御信号に基づいて、車室(図示せず)内を空調する。冷房要求を示す制御信号を受けた場合、空調装置120は車室内を冷房する。
PCU200は、メインバッテリ150から供給された直流電力を交流電力に変換して、第1MG10および第2MG20に供給する。また、PCU200は、第1MG10または第2MG20で発電された交流電力を直流電力に変換して、メインバッテリ150に供給する。
エンジン100は、たとえばガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。第1MG10および第2MG20の各々は、たとえば永久磁石がロータに埋設された三相交流回転電機である。動力分割機構30は、たとえば遊星歯車機構であり、エンジン100が発生させた動力を、駆動輪350に伝達される動力と、第1MG10に伝達される動力とに分割する。
第1MG10は、動力分割機構30を介してエンジン100のクランク軸に連結される。第1MG10は、エンジン100を始動する際にメインバッテリ150の電力を用いてエンジン100のクランク軸を回転させる。また、第1MG10はエンジン100の動力を用いて発電することも可能である。第1MG10で発電された交流電力は、PCU200により直流電力に変換されてメインバッテリ150に充電される。なお、第1MG10で発電された交流電力は、第2MG20に供給される場合もある。
第2MG20は、メインバッテリ150からの電力および第1MG10で発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動軸を回転させる。また、第2MG20は、回生制動によって発電することも可能である。第2MG20で発電された交流電力は、PCU200により直流電力に変換されてメインバッテリ150に充電される。
ECU300(制御装置)は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、バッファとを含む。ECU300は、メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、各センサからの信号を用いた演算処理を実行し、演算処理結果に応じた制御信号を出力する。なお、ECU300の一部あるいは全部は、電子回路等のハードウェアにより演算処理を実行するように構成されてもよい。
<外部充電構成>
車両1は、外部充電のための構成として、インレット250と、AC/DCコンバータ260と、サブDC/DCコンバータ270と、充電リレー(CHR:Charge Relay)280とをさらに備える。
外部充電時には、外部電源500からの電力が充電ケーブル400を介して車両1に供給される。外部電源500は、典型的には商用交流電源を含んで構成される。充電ケーブル400は、プラグ410と、コネクタ420と、電線430とを備える。プラグ410は、外部電源500のコンセント510に接続可能に構成される。コネクタ420は、車両1のインレット250に接続可能に構成される。電線430は、プラグ410とコネクタ420とを電気的に接続する。
AC/DCコンバータ260は、外部電源500からの交流電力を直流電力に変換して、サブDC/DCコンバータ270に供給するとともに、CHR280を介してメインバッテリ150に供給する。
CHR280は、メインバッテリ150とAC/DCコンバータ260との間に電気的に接続される。CHR280の閉成/開放は、ECU300からの制御信号SE2に応じて制御される。
<補機系構成>
車両1は、補機系の構成として、ドアセンサ162と、シートセンサ164と、吸気温度センサ166と、冷却ファン168と、補機バッテリ170と、メインDC/DCコンバータ180とをさらに備える。なお、冷却ファン168は車両1の補機負荷であるが、補機負荷はこれに限定されず、図示しない他の機器(たとえばオーディオ機器、照明機器、カーナビゲーション機器等)を含んでもよい。
補機バッテリ170は、補機負荷に電力を供給するための電源であり、たとえば鉛蓄電池を含んで構成される。補機系の電圧は、メインバッテリ150の電圧(約200V)よりも低く、たとえば12V程度である。ECU300は、メインDC/DCコンバータ180(またはサブDC/DCコンバータ270)を用いて補機負荷の各機器へと電力を供給するとともに、補機バッテリ170を充電する。
メインDC/DCコンバータ180は、電力線PL,NLに電気的に接続され、電力線PL,NLから供給される直流電圧を降圧して補機負荷へと供給する。メインDC/DCコンバータ180は、SMR110を介してメインバッテリ150に電気的に接続されている。そのため、PCU200が駆動していない外部充電中にメインDC/DCコンバータ180を駆動させる場合、SMR110が閉成される。
ドアセンサ162およびシートセンサ164は、充電前冷却制御の実行時には、以下に説明するように、車両1の車室内のユーザの有無を判定するために用いられる。
図2は、充電前冷却制御の実行時における車両1の構成を説明するための図である。図2を参照して、空調装置120が駆動されると、冷風が吹出口(図示せず)から車室2内へと吹き出される。車両1には、車室2内の空気をメインバッテリ150へと導くための吸気通路3が設けられている。冷却ファン168では、回転速度(あるいは風量)をたとえば「大」、「中」、「小」の3段階で設定可能であり、冷却ファン168がECU300からの制御信号に応じて駆動されると、設定された風量の空気が冷却ファン168からメインバッテリ150へと送られる。
吸気温度センサ166は、吸気通路3に設けられ、吸気通路3を流通する空気の温度(吸気温度)TCを検出して、その検出結果を示す信号をECU300に出力する。ECU300は、電池温度TBおよび吸気温度TCに基づいて、メインバッテリ150の冷却を制御する。
図示しないが、車両1には複数のドア(トランクのドアを含む)が設けられている。ドアセンサ162は、車両1の各ドアに設けられたセンサを包括的に表すものであり、各ドアの開閉状態を検出して、その検出結果を示す信号をECU300に出力する。また、シートセンサ164は、車室2内の各シート4に設けられた荷重センサを包括的に表すものであり、各シート4への荷重を検出して、その検出結果を示す信号をECU300に出力する。
ECU300は、ドアセンサ162およびシートセンサ164からの信号に基づいて、車室2内のユーザの有無を判定する。より具体的には、(1)少なくとも1つのシート4への荷重が検出されており、かつ全てのドアが閉鎖されている場合、ECU300は、ユーザが車室2内にいると判断することができる。(2)少なくとも1つのシート4への荷重が検出されており、かつ少なくとも1つのドアが開放されている場合、ECU300は、ユーザが降車途中であると判断することができる。(3)いずれのシート4においても荷重が検出されていないものの、少なくとも1つのドアが開放されている場合、ECU300は、ユーザが乗車途中あるいは荷物の積み下ろし等の途中であると判断することができる。したがって、上記条件(1)〜(3)のいずれかが成立する場合に、ECU300は、車室2内または車両1の近く(以下、「車両近傍」と説明する)にユーザがいると判定する。すなわち、「車両近傍にユーザがいる」とは、ユーザが乗車途中、降車途中、および荷物の積み下ろし等の途中の状態を含む。これに対し、(4)いずれのシート4においても荷重が検出されておらず、かつ全てのドアが閉鎖されている場合、ECU300は、車両近傍にユーザはいないと判定する。
なお、車両近傍のユーザの有無を検出するための手法は特に限定されるものではない。ドアセンサ162およびシートセンサ164のいずれか一方のみを用いてもよいし、焦電型赤外線センサまたは車両の内部もしくは外部を撮影するための車載カメラ等を別途用いてもよい。あるいは、これらセンサおよび車載カメラを適宜組み合わせてもよい。
<制御モード>
以上のように構成された車両1では、充電前冷却制御において各種制御モードが切り替えられる。
図3は、充電前冷却制御に関する制御モードを説明するための状態遷移図である。図3を参照して、車両1は、待機モードと、ユーザ検出モードと、冷却モードと、冷却停止モードと、充電モードとを有する。
外出先から帰宅した際にユーザがイグニッションのオフ操作を実行すると、車両1はReady−OFF状態へと遷移する。このReady−OFF状態の車両1において、充電ケーブル400のコネクタ420が車両1のインレット250に接続されると、電池温度TBに基づいて、充電前冷却制御を実行する必要があるか否かが判定される。メインバッテリ150が高温のため充電前冷却制御の実行が必要と判定された場合、ECU300は、充電前冷却制御の実行を開始し、待機モードへと遷移する。
待機モードとは、車室2内のユーザの有無にかかわらず、所定の待機期間の間、空調装置120を始動させずに待機するモードである。待機期間の長さは、待機モードへの遷移時を基準として、ユーザが荷物の積み下ろしを行なって車両1から離れることが可能なように設定することが好ましい。本実施の形態では、待機期間が5分間に設定される例について説明する。待機開始から5分が経過すると、ECU300は、待機モードからユーザ検出モードへと遷移する。
ユーザ検出モードとは、車室2内のユーザを検出し、その検出結果に応じて冷却モードおよび冷却停止モードのいずれか一方を選択するためのモードである。すなわち、上述の条件(4)が成立し車両近傍にユーザがいないと判定された場合、ECU300は、ユーザ検出モードから冷却モードへと遷移する。冷却モードは、メインバッテリ150を冷却するためのモードであり、冷却モードでは、冷却ファン168および空調装置120の両方が駆動される。
一方、上述の条件(1)〜(3)のいずれかが成立し車両近傍にユーザがいると判定された場合、ECU300は、ユーザ検出モードから冷却停止モードへと遷移する。冷却停止モードは、車両近傍にユーザがいる場合に空調装置120を停止させるモードである。実施の形態1においては、冷却停止モードにて冷却ファン168および空調装置120の両方が停止される。なお、図3に示すように、冷却停止モードは充電前冷却制御の制御モードの1つである。つまり、充電前冷却制御は空調装置120の駆動中の制御に限られるものではなく、充電前冷却制御の実行中に空調装置120が一時的に停止されてもよい。
後述する所定の冷却完了条件が満たされると、ECU300は、冷却モードおよび冷却停止モードのいずれであっても充電モードへと遷移して外部充電を開始する。
ここで、ユーザが一旦車外に出たことによってECU300が冷却モードへと遷移し、空調装置120が駆動している間に、荷物の積み下ろしや車室内の忘れ物の取り出し等の用件のために、ユーザがドアを開ける場合を考える。この場合、ユーザに違和感を与えることを防止するためには、空調装置120を再び停止させることが好ましい。しかしながら、空調停止後に充電モードにて外部充電が開始されるまで空調装置120を停止状態に維持すると、メインバッテリ150が高温のまま放置されることになるため、メインバッテリ150の劣化が進行してしまう可能性がある。
そこで、本実施の形態によれば、矢印AR1,AR2にて示すように、充電前冷却制御の実行中において、車両近傍のユーザの有無に応じて冷却モードと冷却停止モードとが切り替えられる構成を採用する。すなわち、冷却モードにて空調装置120が駆動している間にユーザがドアを開くと、ECU300は、冷却モードから冷却停止モードへと遷移する(矢印AR2)。これにより、空調装置120が停止されるので、空調装置120の駆動に伴う違和感をユーザに与えることを防止できる。一方、冷却停止モードにて空調装置120が停止状態の場合にユーザがドアを閉じると、ECU300は、冷却停止モードから冷却モードへと遷移する(矢印AR1)。これにより、空調装置120が始動されてメインバッテリ150が冷却されるので、メインバッテリ150の劣化を抑制することができる。このように、本実施の形態によれば、空調装置120の予期しない駆動によってユーザに違和感を与えることを防止しつつ、メインバッテリ150の劣化を抑制することができる。
<充電前冷却制御>
図4は、実施の形態1における充電前冷却制御を説明するためのフローチャートである。図4に示すフローチャートは、Ready−OFF状態の車両1において、たとえば充電ケーブル400のコネクタ420が車両1のインレット250に接続されたことを示す接続信号(図示せず)をECU300が受けた場合に、メインルーチンから呼び出されて実行される。なお、図4および後述する図5〜図8に示すフローチャートの各ステップは、基本的にはECU300によるソフトウェア処理によって実現されるが、ECU300内に作製されたハードウェア(電子回路)によって実現されてもよい。
図4を参照して、S10において、ECU300は、電池温度TBに基づいて充電前冷却制御の実行が必要か否かを判定する。より具体的には、ECU300は、電池温度TBが基準温度(たとえば35℃)よりも高い場合、充電前冷却制御を実行する必要があると判定する一方で、電池温度TBが基準温度以下の場合には、充電前冷却制御を実行する必要がないと判定する。
充電前冷却制御の実行が不要と判定された場合(S10においてNO)、ECU300は、充電前冷却制御(S20)をスキップして、外部充電制御を実行する(S40)。外部充電制御については公知の制御を採用可能であるため詳細な説明は繰り返さないが、S40の処理の開始直後にメインバッテリ150の充電を開始してもよいし、あるいは、所定の時刻に充電を開始するいわゆるタイマー充電を行なってもよい。
一方、充電前冷却制御の実行が必要と判定された場合(S10においてYES)、ECU300は、充電前冷却制御の実行を開始する(S20)。充電前冷却制御については、図5を用いて詳細に説明する。
S30において、ECU300は、充電前冷却制御の冷却完了条件が満たされているか否かを判定する。より具体的には、冷却完了条件は、電池温度TBおよび冷却時間(ユーザ検出モードから冷却モードまたは冷却停止モードへの遷移時からの経過時間)に基づいて定められる。すなわち、電池温度TBが所定の判定温度(たとえば25℃)よりも高い場合、かつ冷却時間が所定の判定期間(たとえば30分間)以下の場合には、ECU300は、メインバッテリ150の冷却が完了していないと判定し(S30においてNO)、充電前冷却制御を継続する。その後、電池温度TBが次第に低下して判定温度以下になった場合、あるいは冷却時間が判定期間よりも長くなった場合に、ECU300は、メインバッテリ150の冷却が完了したと判定し(S30においてYES)、充電前冷却制御を終了して外部充電制御を実行する(S40)。
図5は、図4に示す充電前冷却制御(S20)にて実行される処理を詳細に説明するためのフローチャートである。充電前冷却制御の実行開始時において、図3にて説明したように、ECU300は待機モードである。ECU300は、待機モードへの遷移時からの経過時間が待機期間(本実施の形態では5分間)に達したか否かを管理するための待機完了フラグを有する。待機完了フラグは、充電前冷却制御の実行開始時にはオフである。
図5を参照して、S21において、ECU300は、待機完了フラグがオンであるか否かを判定する。待機完了フラグがオフの場合(S21においてNO)、ECU300は、処理をS110へと進める。以下に説明するS110,S120,S130,S140の処理は、待機モードに対応する処理である。
ECU300は、空調装置120の駆動を停止する(あるいは停止状態に維持する)とともに(S110)、冷却ファン168を停止する(あるいは停止状態に維持する、S120)。さらに、S130において、ECU300は、経過時間が5分以上であるか否かを判定する。経過時間が5分未満の場合(S130においてNO)、ECU300は、待機完了フラグをオフに保持したまま、図4に示すフローチャートへと処理を戻す。こうすることにより、経過時間が5分以上になるまで待機モードに対応する処理が繰り返されるため、ユーザが車両1から離れるための時間を確保することができる。
経過時間が5分以上になると(S130においてYES)、ECU300は、待機完了フラグをオフからオンへと切り替える(S140)。待機完了フラグがオンになることにより(S21においてYES)、処理はS22へと進められる。なお、待機モードからの遷移時のS22の処理は、図3に示すユーザ検出モードに対応する処理である。
S22において、ECU300は、車両近傍のユーザの有無を判定する。より具体的には、上述の条件(4)が成立している場合(S22においてNO)、車両近傍にユーザはいないとして、ECU300は、ユーザ検出モードから冷却モードへと遷移する。以下に説明するS210,S220,S230の処理は、冷却モードに対応する処理である。
S210において、ECU300はSMR110を閉成する。これにより、外部電源500またはメインバッテリ150からSMR110を介して空調装置120の駆動電力を供給することが可能になるため、ECU300は、空調装置120を駆動する(S220)。また、ECU300は冷却ファン168を駆動する(S230)。この際、冷却ファン168の風量は「大」に設定することが好ましい。その後、ECU300は、図4に示すフローチャートへと処理を戻す。こうすることにより、ユーザが車両近傍にいない間、冷却モードに対応する処理が繰り返されるため、空調装置120を用いてメインバッテリ150が冷却される。したがって、メインバッテリ150の劣化を抑制することができる。
一方、荷物の積み下ろしや車室2内の忘れ物の取り出し等の用件のために車両近傍にユーザがいる場合、上述の条件(1)〜(3)のいずれかが成立する。この場合(S22においてYES)、ECU300は、冷却モードから冷却停止モードへと遷移する。以下に説明するS310,S320,S330の処理は、冷却停止モードに対応する処理である。
ECU300は、SMR110を開放するとともに(S310)、空調装置120を停止する(S320)。また、ECU300は、冷却ファン168を停止する(S330)。その後、ECU300は、図4に示すフローチャートへと処理を戻す。こうすることにより、ユーザが車室内または車両近傍にいる間、冷却停止モードに対応する処理が実行されるため、空調装置120は停止状態に維持される。したがって、空調装置120の予期しない駆動によってユーザに違和感を与えることを防止できる。
図4および図5に示すフローチャートによれば、待機モードの完了後、冷却完了条件が成立するまでの間、冷却モードに対応する処理(S210,S220,S230)と、冷却停止モードに対応する処理(S30,S320,S330)とがユーザの有無に応じて切り替えられる。荷物の積み下ろし等の用件のために車両近傍にユーザが検出された場合、ECU300は、冷却モードから冷却停止モードへと遷移する。これにより、空調装置120が停止されるので、空調装置120の予期しない駆動によってユーザに違和感を与えることを防止できる。なお、この処理は、図3の矢印AR2にて示す状態遷移を行なうための処理に相当する。
さらに、冷却停止モードにおいて、ユーザが上記用件を終え車両近傍から検出されなくなった場合、ECU300は、冷却停止モードから冷却モードへと遷移する。これにより、空調装置120が再び始動され車室2内の冷房が再開されるため、メインバッテリ150が冷却される。したがって、メインバッテリ150の劣化を抑制することができる。なお、この処理は、図3の矢印AR1にて示す状態遷移を行なうための処理に相当する。
このように、実施の形態1によれば、充電前冷却制御を実行可能に構成された車両1において、ドアセンサ162およびシートセンサ164の検出結果に基づき、車両近傍におけるユーザの有無が判定される。荷物の積み下ろし等の用件のために車両近傍にユーザがいると判定された場合、空調装置120の駆動が禁止される。これにより、空調装置120の予期しない駆動によってユーザに違和感を与えることが防止できる。一方、空調装置120の停止状態であっても、たとえばシートセンサ164が荷重を検出しなくなり、かつ全てのドアが閉鎖されたときには、ユーザが上記用件を終え、車両1を離れた可能性が高いと判断することが可能である。したがって、このような場合には、車室2内の冷房が再開される。これにより、メインバッテリ150が冷却されるため、メインバッテリ150の劣化を抑制することができる。
なお、冷却停止モードにおいて、SMR110を閉成したまま空調装置120を停止することも可能であるが、SMR110は開放させる方が好ましい(S310)。これにより、メインバッテリ150の高電圧(約200V)がPCU200に印加されなくなるため、PCU200の寿命(図示しない電解コンデンサ等のPCU200の構成部品の耐久寿命)が短くなることを防止できる。
また、車両近傍のユーザを検出した時刻からユーザが検出されなくなった時刻までの間隔が所定期間よりも長い場合には、冷却停止モードから冷却モードへの遷移を禁止してもよい。上述のように、充電前冷却制御における冷却時間は、たとえば最長30分間に制限されている。一方で、冷却モードにて車室2内の温度を低下させるには、ある程度の期間を要する。たとえばユーザが車室2内に27分間いた場合、冷却モードの期間は3分間しかなくなるため、空調装置120を駆動したとしてもメインバッテリ150を効果的に冷却することができない。このような場合には冷却モードへの遷移を禁止することにより、不必要な電力消費を防止することができる。
[実施の形態2]
実施の形態1にて説明したように、車両近傍からユーザが検出されなくなると、制御モードが冷却停止モードから冷却モードへと切り替えられ、空調装置が始動される。一方で、空調装置には、一般的な電気機器と同様に耐久寿命が存在する。このため、空調装置の耐久寿命が残り少ないにもかかわらず充電前冷却制御を実行すると、耐久寿命が消費されてしまい、空調装置の故障が生じ易くなる可能性がある。そこで、実施の形態2では、空調装置の耐久寿命が残り少ない場合には、車両近傍からユーザが検出されなくなったときであっても冷却停止モードから冷却モードへの遷移を制限する構成について説明する。なお、実施の形態2に係る車両の構成は、実施の形態1に係る車両1(図1および図2参照)の構成と同等であるため、説明は繰り返さない。
図6は、実施の形態2における充電前冷却制御を説明するためのフローチャートである。図6を参照して、このフローチャートは、S11,S12の処理をさらに含む点において、実施の形態1におけるフローチャート(図4参照)と異なる。
電池温度TBが基準温度よりも高い場合(S10においてYES)、ECU300は、充電前冷却制御を実行する必要があると判定し、処理をS11に進める。
S11において、ECU300は、空調装置120の駆動回数の累積値(以下、「駆動回数」と略す)が判定値よりも大きいか否かを判定する。空調装置120の駆動回数とは、たとえば車両1の製造時または空調装置120の車両1への設置時以降に空調装置120が駆動された回数を合計した値である。
なお、空調装置120の駆動回数の計測手法は特に限定されるものではないが、一例として、ECU300は、初期値を0とするカウント値を図示しないメモリに保持し、空調装置120を始動する度にカウント値をインクリメントしてもよい。また、判定値は、固定値である必要はなく、たとえば車両1の製造時から時間の経過に伴って増加するように設定してもよい。後述する駆動期間の計測手法および判定期間の設定手法についても同様である。
空調装置120の駆動回数が判定値よりも大きい場合(S11においてYES)、空調装置120の耐久寿命が残り少なくなっている可能性がある。ECU300は、それ以上、冷却モードにおいて空調装置120を駆動しないようにするために、充電前冷却制御(S20)をスキップして外部充電制御(S40)の実行を開始する。一方、空調装置120の駆動回数が判定値以下の場合(S11においてNO)、ECU300は、処理をS12へと進める。
S12において、ECU300は、空調装置120の駆動期間の累積値(以下、「駆動期間」と略す)が判定期間よりも大きいか否かを判定する。空調装置120の駆動期間とは、たとえば車両1の製造時または空調装置120の車両1への設置時以降に空調装置120が駆動された期間を合計した値である。
空調装置120の駆動期間が判定期間よりも大きい場合(S12においてYES)、空調装置120の耐久寿命が残り少なくなっている可能性がある。ECU300は、それ以上、冷却モードにおいて空調装置120を駆動しないようにするために、充電前冷却制御(S20)をスキップして外部充電制御(S40)の実行を開始する。一方、空調装置120の駆動期間が判定期間以下の場合(S12においてNO)、空調装置120の耐久寿命が残っているため空調装置120を駆動させることが可能であるので、ECU300は、充電前冷却制御(S20)の実行を開始あるいは継続する。
なお、実施の形態2における充電前冷却制御のそれ以外の処理は、実施の形態1におけるフローチャートの対応する処理(図4および図5参照)と同等であるため、詳細な説明は繰り返さない。
このように、実施の形態2によれば、空調装置120の耐久寿命が残り少ない場合には、車両近傍にユーザが検出されておらず空調装置120を駆動させることが可能な状況であっても、ECU300は、冷却モードへは遷移せず(すなわち空調装置120の駆動を再開せず)、充電モードへと遷移する。これにより、充電前冷却制御によって空調装置120の耐久寿命が消費されることを防止できる。
なお、図5に示すフローチャートでは、空調装置120の駆動回数に基づく判定処理(S11)および空調装置120の駆動期間に基づく判定処理(S12)の両方が実行される例について説明したが、いずれか一方の処理のみを実行してもよい。
[実施の形態3]
実施の形態1,2では、待機モードおよび冷却停止モードにおいて、空調装置および冷却ファンの両方を停止する構成について説明した。しかし、冷却ファンを低回転速度で駆動するのであれば比較的小さな駆動音しか生じないので、冷却ファンが駆動していることをユーザに認識させずにメインバッテリを冷却できる場合がある。このように、実施の形態3においては、待機モードまたは冷却停止モードであっても冷却ファンを駆動する構成について説明する。なお、実施の形態3に係る車両の構成は、実施の形態1に係る車両1(図1および図2参照)の構成と同等であるため、説明は繰り返さない。
図7は、実施の形態3における充電前冷却制御にて実行される処理を詳細に説明するためのフローチャートである。実施の形態3では、充電前冷却制御として、実施の形態1におけるフローチャートの処理(S20)に代えて図7に示すフローチャートの処理(S20A)が実行される。図7を参照して、このフローチャートは、S120に代えてS121を含む点と、S330に代えてS331を含む点とにおいて、図5に示すフローチャートと異なる。
待機モードではユーザが車両近傍にいるか否かにかかわらず、ECU300は、経過時間が5分以上になるまでは空調装置120を停止する一方で(S110)、冷却ファン168を駆動する(あるいは駆動状態に維持する、S121)。
同様に、ユーザが車両近傍にいる場合は冷却停止モードにおいて、ECU300は、SMR110を開放するとともに空調装置120を停止する一方で(S310,S320)、冷却ファン168を駆動する(あるいは駆動状態に維持する、S331)。
ここで、冷却ファン168を駆動する際の風量は「小」に設定することが望ましい。その理由を以下に説明する。
第1に、上述のように、冷却ファン168を低回転速度で駆動するのであれば比較的小さな駆動音しか生じない。このため、ユーザが車両近傍にいる場合であっても、冷却ファン168の駆動をユーザに認識させずにメインバッテリ150を冷却することが可能である。
第2に、PCU200の寿命低下を防止する観点から、SMR110を開放状態に維持することが望ましいためである。すなわち、冷却ファン168の駆動に必要な電力は、サブDC/DCコンバータ270およびメインDC/DCコンバータ180のいずれか一方を用いて供給される。電力供給にサブDC/DCコンバータ270を用いる場合、SMR110を開放状態に維持することができるが、サブDC/DCコンバータ270の電力供給能力は、メインDC/DCコンバータ180の電力供給能力に比べて低く設計されていることが多い。一方で、冷却ファン168の消費電力は比較的大きいため、冷却ファン168の風量を「大」または「中」に設定すると、サブDC/DCコンバータ270から必要な電力を供給することができなくなる場合がある。この場合、メインDC/DCコンバータ180を用いるためにSMR110が閉成される。そうすると、メインバッテリ150の高電圧がPCU200に印加されることになるため、PCU200の寿命が短くなってしまう。このように、PCU200の寿命の短縮を防止する観点からは、SMR110を開放状態に維持することが可能な範囲内で冷却ファン168の風量を設定することが望ましい。
これに対し、冷却モードではSMR110が閉成されているので(S210)、外部電源500またはメインバッテリ150からの電力をメインDC/DCコンバータ180経由で冷却ファン168に供給可能である。また、車両近傍にユーザはいないので、ユーザの違和感を考慮する必要もない。したがって、冷却効果を最大にするために冷却ファン168の風量は「大」に設定することが望ましい。
なお、実施の形態3における充電前冷却制御の上記以外の処理は、実施の形態1におけるフローチャートの対応する処理(図4および図5参照)と同等であるため、詳細な説明は繰り返さない。
このように、実施の形態3によれば、待機モードまたは冷却停止モードにおいて空調装置120が停止されている場合であっても、駆動音によってユーザに違和感を与えない範囲内において冷却ファン168が駆動される。こうすることにより、空調装置120を用いた冷却と比べるとメインバッテリ150の劣化抑制への効果は小さいものの、メインバッテリ150の劣化抑制に寄与することができる。
[変形例]
実施の形態3のように待機モード中に冷却ファンを駆動したとしても、車室内が高温の場合(すなわち吸気温度TCが高温の場合)には高温の空気がメインバッテリに供給されることになるので、メインバッテリを効果的に冷却することはできない。そこで、吸気温度TCに基づいて、冷却ファンを駆動させた方が良いかどうかを判定してもよい。
図8は、実施の形態3の待機モードにおいて実行される処理を説明するためのフローチャートである。実施の形態3の変形例では、図7に示す待機モードの破線内の処理に代えて、図8に示すフローチャートの処理が実行される。
図8を参照して、吸気温度TCが所定温度(たとえば電池温度TB)以下であるか否かが判定される。吸気温度TCが電池温度TB以下の場合(S122においてYES)、メインバッテリ150の効果的な冷却が可能であるため、ECU300は、冷却ファン168を駆動する(あるいは駆動状態に維持する、S123)。一方、吸気温度TCが電池温度TBよりも高い場合(S122においてNO)、冷却ファン168を駆動させてもメインバッテリ150を効果的に冷却することはできないため、ECU300は、冷却ファン168を停止する(あるいは停止状態に維持する、S124)。このように、実施の形態3の変形例によれば、吸気温度TCが高温の場合には冷却ファン168を駆動しないことにより、不必要な電力消費を防止することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。