JP6336681B2 - 白金化合物、組成物、及びそれらの使用 - Google Patents

白金化合物、組成物、及びそれらの使用 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2014年6月23日に出願された米国仮特許出願第62/015,714号、発明の名称「Monomaleimide Compounds, Compositions, and Uses Thereof」、2014年8月6日に出願された米国仮特許出願第62/034,124号、発明の名称「Monomaleimide Compounds, Compositions, and Uses Thereof」、2014年8月8日に出願された米国仮特許出願第62/035,126号、発明の名称「Novel Procedures of Synthesizing and Purifying Platinum Compounds」、2014年8月11日に出願された米国仮特許出願第62/035,739号、発明の名称「Novel Procedures of Synthesizing and Purifying Platinum Compounds」、及び2015年4月20日に出願された米国仮特許出願第62/150,045号、発明の名称「Platinum Compounds, Compositions, and Uses Thereof」の優先権を主張する。これらの内容は、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は、白金系化合物に関する。
白金系の薬剤は、最も有効な、かつ広く用いられている抗がん剤の1つである。シスプラチンは、数少ないFDAが認可した白金系のがんの化学療法薬の1つである。シスプラチンは、多くの固形腫瘍、特に精巣がん及び卵巣がんに対して有効であるが、その毒性作用並びにこの薬剤に対する一部の腫瘍の潜在的及び獲得耐性のため、その臨床用途は限定されている。
これらの制約を克服するため、毒性が低く、シスプラチン耐性腫瘍でより強力な活性を有する白金アナログが開発及び試験された結果、米国でカルボプラチン及びオキサリプラチンが認可された。例えば、カルボプラチンは、腎毒性が低いという利点を有するが、シスプラチンとの交差耐性が、他のシスプラチンで治療可能な疾患におけるその用途を限定している。
オキサリプラチンは、しかしながら、シスプラチンとは異なる抗がん薬効範囲を示す。これは、シスプラチンとカルボプラチンが本質的に不活性な進行結腸直腸がんに対する5‐フルオロウラシル/ロイコボリンと併せた一次または二次治療として承認された。これらの白金薬剤は、酸化状態が2+の白金(Pt(II))を有し、経口では有効でない。
酸化状態が4+の白金錯体(Pt(IV)錯体)は、いくつかの利点をもたらす。白金(IV)錯体は、酸化状態が4+では実質的に不活性であるが、白金(II)状態への還元で活性化する。従って、Pt(IV)錯体は、腫瘍細胞で活性化されるPt(II)薬剤のプロドラッグを構成する。また、Pt(IV)錯体の2つの追加の配位部位(アキシアル部位)を修飾し、該錯体の薬物速度論的特性を変えることもできる。
該2つのアキシアル部位及び4つのエクアトリアル部位は、アミノ基、水酸基、またはチオール基と反応可能な反応基を含むことができ、タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンドと複合体を形成できる。該白金(IV)錯体の複合体化は、投与の前に行うことも、インビボで行うこともできる。該白金(IV)錯体に対する該複合体化の利点としては、循環時間の増加、すなわち、標的器官または標的細胞集団への供給の改良が挙げられる。
本開示に示される反応基の包含は、腫瘍細胞におけるPt濃度を増加させうるとともに、場合によっては、本明細書に記載の疾患または状態の治療における有効性を増加させうる。場合によっては、本開示のPt(IV)錯体は、長期毒性が低い可能性がある。
本開示は、例えば、がん細胞の増殖を減少、阻止、もしくは阻害するため、またはがん細胞死を誘導するための組成物に関する。
該組成物は、白金(IV)化合物を含むことができる。様々な実施形態では、該白金(IV)化合物は、タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体上の官能基との反応に適した反応基を含む。かかる化合物は、本明細書ではPt(IV)Mと呼ぶ。該反応基は、マイケル受容体及び/またはアルキル化官能基でありうる。例えば、マイケル受容体は、白金と該マイケル受容体及び/またはアルキル化官能基及び/またはアルキル化官能基の間のリンカーによって導入されうる。様々な実施形態では、白金の該アキシアル部位の1つもしくは両方はそれぞれ、1つ以上のマイケル受容体及び/またはアルキル化官能基を含む。
いくつかの実施形態では、本開示は、式I:
の化合物またはその医薬的に許容される塩を提供する。ここで:
X及びYは、独立して、NH、アルキル、及びアリールから選択され;
及びRは、それぞれClであるか、または、R及びRが一緒になってオキサレートを形成し;
は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、ここで、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され;
及びRは、それぞれHであるか、または、一緒にシクロへキシル環を構成し;
Zは、存在しないか、または、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される。
は、タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体の官能基との反応に適切な反応基であって、ここで、Rは以下の基:
のいずれかから選択され;
ここで、Rは、Cl、Br、F、メシレート、トシレート、O−(4−ニトロフェニル)、O−ペンタフルオロフェニルである。該反応基は、活性ジスルフィド基、ビニルカルボニル基、ビニルアセチレン基、エポキシド、アジリジン基、またはアセチレン基でもよい。これらの基は、必要に応じて置換されていてもよい。
本開示はまた、本明細書に記載の化合物を含む組成物及び本明細書に記載の化合物または組成物の使用方法も提供する。様々な実施形態では、本開示の方法は、細胞死の増加または細胞増殖の減少が有効な疾患の予防または治療に有用である。例えば、本開示の方法は、がん細胞死の増加またはがん細胞増殖の減少に用いることができる。がん細胞死の増加またはがん増殖の減少は、例えば、体外で(インビトロ)または体内で(インビボ)生じうる。
本開示の特定の実施形態では、疾患の治療もしくは予防薬剤としての、及び/または、例えば、疾患の治療で用いるかかる薬剤の製造における本明細書に記載の化合物の使用もまた提供する。いくつかの実施形態は、薬剤として用いる本明細書に記載の化合物の使用を提供する。特定の実施形態では、本開示は、疾患の治療用、例えば、がんの治療用の本明細書に記載の化合物または組成物を提供する。特定の実施形態では、本開示は、腫瘍細胞が1つ以上のKRAS変異を発現する腫瘍の治療用の本明細書に記載の化合物または組成物を提供する。
本開示はまた、本明細書に記載の化合物の新規な合成及び精製法も提供する。
2種の対照薬、溶媒、または本開示の3種のPt(IV)Mを投与された場合のヌードマウス異種移植片におけるA2780腫瘍の増殖曲線を示すグラフである。 2種の対照薬、溶媒、または本開示の3種のPt(IV)Mを投与された場合のヌードマウス異種移植片におけるA2780腫瘍の増殖曲線を示すグラフである。 2種の対照薬、溶媒、または本開示の2種のPt(IV)Mを投与された場合のヌードマウス異種移植片におけるA2780腫瘍の増殖曲線を示すグラフである。 2種の対照薬、溶媒、または本開示のPt(IV)Mを投与された場合のヌードマウス異種移植片におけるA2780腫瘍の増殖曲線を示すグラフである。 2種の対照薬、溶媒、または本開示のPt(IV)Mを投与された場合のヌードマウス異種移植片におけるCalu−6腫瘍の増殖曲線を示すグラフである。 2種の対照薬、溶媒、または本開示の2種のPt(IV)Mを投与された場合のヌードマウス異種移植片におけるA2780腫瘍の増殖曲線を示すグラフである。 2種の対照薬、溶媒、または本開示の2種のPt(IV)Mを投与された場合のヌードマウス異種移植片におけるCalu−6腫瘍の増殖曲線を示すグラフである。 白金(IV)を本開示の8種の例示化合物及び2種の対照化合物の形で担がんヌードマウスに静脈内投与した場合の腫瘍における白金レベルを示すグラフである。 本開示のPt(IV)Mの保持時間を示す液体クロマトグラフィー−誘導結合プラズマ質量分析法(LC−ICPMS)のクロマトグラムである。 本開示のPt(IV)Mの市販のアルブミンとの培養産物の保持時間を示すLC−ICPMSのクロマトグラムである。 図11Aは、本開示のPt(IV)Mのラット血清との培養産物の保持時間を示すLC−ICPMSのクロマトグラムである。図11Bは、アルブミンのトリプシンペプチドT3との本開示のPt(IV)MのLC MS/MS分析である。 マウスが対照薬、溶媒、または本開示のPt(IV)Mを投与された場合のKRAS変異型Calu−6腫瘍の増殖曲線を示すグラフである。 KRAS変異型細胞及びKRAS WT細胞におけるインビトロでのアルブミンの取り込みを示すグラフである。 KRAS変異型細胞及びKRAS WT細胞におけるインビトロでの蛍光標識アルブミンの取り込みを示す。 マウスが対照薬、溶媒、または本開示のPt(IV)Mを投与された場合のKRAS野生型BxPC−3膵臓がんモデルの増殖曲線を示すグラフである。 マウスが対照薬、溶媒、または本開示のPt(IV)Mを投与された場合のKRAS変異型Miapaca−2膵臓がんモデルの増殖曲線を示すグラフである。 シスプラチン、オキサリプラチン、ビスマレイミド化合物、及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物のTGI%を示す。 肺がんモデルNCI−H460における、血漿及び腫瘍中でのPt(IV)Mモノマレイミド化合物の単回投与による白金の蓄積を示す。 肺がんモデルNCI−H520における、血漿及び腫瘍中でのPt(IV)Mモノマレイミド化合物の2回投与による白金の蓄積及びDNAの白金化(platination)を示す。 シスプラチン及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物で処理された卵巣がんモデルA2780における腫瘍体積を比較している。 シスプラチン及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物で処理された卵巣がんモデルA2780における試験後の白金レベルを示す。 肺がんモデルNCI−H520における、シスプラチン及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物の32日間の複数回投与後の腫瘍体積を比較している。 肺がんモデルNCI−H520における、シスプラチン及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物の32日間の複数回投与後の白金レベルを示す。 NCI−H520試験10日目の細胞の脱分化画像を示す。 NCI−H520試験10日目のTUNELアポトーシス画像を示す。 シスプラチン及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物での処理後100時間までの期間にわたるラットでの白金濃度を示す。 シスプラチン及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物での処理後400時間までの期間にわたるイヌでの白金濃度を示す。 Pt(IV)Mモノマレイミド化合物での処理後のRBC分配及びタンパク質分配を示す。 直接注入、またはアルブミンに予め結合させたPt(IV)M化合物で処理されたラットの血漿における白金濃度を示す。 シスプラチン及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物で処理されたMX−1乳がんモデルの腫瘍における平均腫瘍体積及び白金レベルを示す。 シスプラチン及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物で処理後の腎障害の血液マーカーのレベルを示す。
本出願人らは、タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体上の官能基との反応に適切な反応基を有するPt(IV)化合物が、細胞増殖及び腫瘍増殖の有効な阻害剤であることを発見した。かかる化合物を本明細書ではPt(IV)M化合物と呼ぶ。Pt(IV)Mと、タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、またはリガンドのいずれかに存在する官能基との反応で得られる生成物を、本明細書ではPt(IV)M複合体と呼ぶ。
本明細書で用いられる用語「リガンド」は、所与の標的細胞集団と関連する受容体または他の受容部分に、特異的に結合もしくは反応的に関連する、または複合化する任意の分子を含む。
本明細書で用いられる用語「反応基」は、タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体上の官能基と反応しうる該Pt(IV)化合物の官能基を指す。タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体上の官能基とは、アミノ基、水酸基、またはチオール基でよい。
反応基の限定されない例としては、活性ジスルフィド基、ビニルカルボニル基、ビニルアセチレン基、エポキシド、アジリジン基、またはアセチレン基が挙げられる。これらの基は、必要に応じて置換されていてもよい。該反応基はまた:
のいずれかでもよく、ここで、Rは、Cl、Br、F、メシレート、トシレート、O−(4−ニトロフェニル)、O−ペンタフルオロフェニルである。
いくつかの実施形態では、該Pt(IV)M複合体は、該Pt(IV)M化合物と、タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体とのインビボでの反応で得られる。すなわち、該反応基と該官能基間の結合は、インビボで生じる。
いくつかの実施形態では、Pt(IV)M複合体は、体外での投与の前に、該Pt(IV)M化合物と、タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体との反応で得られる。すなわち、該反応基と該官能基間の結合は、生体内投与の前に行われる。
該タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体は、その内容が参照することによって全体として本明細書に組み込まれるWillnerら(BMS)のEP0554708に開示されているリガンドのいずれかでよい。例えば、該タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体は、非免疫反応性、例えば、限定されないが、トランスフェリン、上皮成長因子(「EGF」)、ボンベシン、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、血小板由来増殖因子、IL−2、IL−6、腫瘍増殖因子(「TGF」)、例えば、TGF−α及びTGF−β、ワクシニア成長因子(「VGF」)、インスリン並びにインスリン様成長因子I及びIIでよい。非ペプチドリガンドとしては、例えば、ステロイド、炭水化物及びレクチンを挙げてもよい。該タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体はまた、非免疫反応性、例えば、限定されないが、抗原認識免疫グロブリン(「抗体」とも呼ばれる)、またはその抗原認識フラグメントでもよい。該免疫グロブリンは、腫瘍関連抗原を認識可能な免疫グロブリンでよい。用いられる「免疫グロブリン」とは、任意の認識された免疫グロブリンのクラスまたはサブクラス、例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、またはIgEを指すことができる。該免疫グロブリンは、任意の種、例えば、ヒト、マウス、またはウサギ起源由来でよい。さらに、該免疫グロブリンは、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、二官能性、またはハイブリッドでよい。
いくつかの実施形態では、該タンパク質はアルブミンまたはその誘導体/アナログ/模倣体である。いくつかの実施形態では、該人工的に作り出されたタンパク質は、組み換えアルブミン(rアルブミン)、例えば、その内容が参照することによって全体として本明細書に組み込まれるChristensenら(Novozymes)のUS20090280534に開示されている組み換えアルブミンでよい。
該反応基は、マイケル受容体及び/またはアルキル化官能基でよい。いくつかの実施形態では、該Pt(IV)M化合物は、マレイミド基及び/またはその誘導体を含む。
本明細書で用いられる「マイケル受容体」とは、α,β‐不飽和求電子試薬、例えば、限定されないが、α,β‐不飽和カルボニル誘導体またはα,β‐不飽和ニトリルを指し:「求電子試薬」とは、電子対を受容できることを意味し;「α,β‐不飽和求電子試薬」とは、限定されないが、α,β‐不飽和カルボニル誘導体、α,β‐不飽和ニトリル、α,β‐不飽和スルホン、または、限定されないが、ニトロ基等の強電子吸引基で置換された他のビニル誘導体を含む化合物のクラスを意味し;「α,β‐不飽和カルボニル誘導体」とは、限定されないが、α,β‐不飽和ケトン、キノンもしくはその誘導体、α,β‐不飽和アルデヒド、α,β‐不飽和カルボン酸誘導体、例えば、限定されないが、エステル、アミド、置換アミド、またはマレイミドもしくはその誘導体を含む化合物のクラスを意味する。
該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体の特徴は、腫瘍増殖の阻害、例えば、減速または停止における効果を維持しつつ、有機体に対する毒性が比較的低いことである。本明細書で用いられる「毒性」とは、物質または組成物が、細胞、組織有機体または細胞環境に対して有害もしくは有毒になる能力を指す。低毒性とは、物質または組成物が、細胞、組織有機体または細胞環境に対して有害もしくは有毒になる能力の低下を指す。かかる低下または低毒性は、一般的な基準に対して、処理に対して、または非処理に対して相対的でよい。
毒性は、さらに、対象の体重減少に相対的に測定されてもよく、体重の15%を超える、20%を超える、または30%を超える減少は、毒性を示す。毒性の他の指標はまた、例えば患者の不活発及び全身けん怠感を含む症状を指標として測定してもよい。好中球減少や血小板減少もまた、毒性の指標になりうる。
毒性の薬理学的指標としては、AST/ALTレベルの上昇、神経毒性、腎障害、胃腸障害等が挙げられる。
さらに、いくつかの実施形態では、かかるPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、複数種類の腫瘍で、サイズ(重量、表面積、もしくは体積)の正味の値として測定されようと、経時割合として測定されようと、腫瘍増殖の阻害に有効である。
いくつかの実施形態では、腫瘍のサイズは、60%以上低減される。いくつかの実施形態では、腫瘍のサイズは、重量、面積、及び/または体積を尺度として、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%低減される。
いくつかの実施形態では、RECIST(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)基準を用いて本発明の化合物の固形腫瘍への効果を特徴づける。腫瘍計測のガイドラインは、更新され、2009年1月にEuropean Journal of Cancer (EJC)(Eisenhauer,ら, European Journal of Cancer: 45 (2009) 228-247)に掲載された。その内容は、参照することによって全体が本明細書に組み込まれる。RECIST指標のいずれかを用いて、限定されないが、応答、評価、及び測定基準を含めた本発明の化合物の腫瘍への効果を特徴づけてもよい。
いくつかの実施形態では、無増悪生存期間及び全生存期間を用いて本発明の化合物の固形腫瘍への効果を特徴づける。
意外にも、本発明のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体の相対的なインビトロ細胞増殖阻害能は、それらの相対的な腫瘍増殖阻害能を予測するものではないこと、すなわち、それらの相対的な腫瘍増殖阻害能は、それらの相対的なインビトロ細胞増殖阻害能より大きいことが見出された。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、Pt(IV)M化合物の有効な供給は、アルブミン等のタンパク質への該化合物の共有結合に関連しうる。アルブミンへの結合は、急速なクリアランスを防止し、白金の安定かつ不活性型を腫瘍部位に供給する。該化合物−アルブミン結合は、腫瘍部位で切断され、活性白金化合物、例えば、Pt(II)化合物を生成しうる。アルブミンによるPt(IV)M化合物の輸送は、MIA PaCa−2及びBxPC−3細胞株で研究されている(Commissoら, Nature, vol.497:633−637 (2013)、その内容は参照することによって全体が本明細書に組み込まれる)。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、1つ以上のKRAS変異を発現する細胞を含む腫瘍を有する対象に投与される。対象の腫瘍は、当技術分野で周知の方法を用いて、KRAS変異について分析されうる。例えば、それぞれの内容が参照することによって全体として本明細書に組み込まれるAnderson, 2011, Expert Rev Mol Diagn. 11:635−642及びThierryら, 2014, Nature Medicine 20:430−435を参照されたい。該腫瘍がKRAS変異を有する場合、該腫瘍は、本明細書に記載のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体による治療に応答する可能性がある。いくつかの実施形態では、該腫瘍はKRAS変異の存在について直接分析される。いくつかの実施形態では、非腫瘍組織、例えば、血漿中を循環している腫瘍DNAは、KRAS変異の存在について分析される。
この知見はまた、1つ以上のKRAS変異型を発現する細胞を含む一部の腫瘍が特定の治療に非感受性であるということからも重要である。例えば、結腸直腸がん患者は、特定のKRAS変異の存在が、EGFRの治療に対する耐性を予測することから、KRAS変異の存在について調べられる(Sienaら, 2009, J Natl Cancer Inst 101:1308−24、その内容は参照することによって全体が本明細書に組み込まれる)。このような患者は、本明細書に記載のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体による治療の候補である。
便宜上、本開示のさらなる説明の前に、本明細書及び特許請求の範囲で用いられる用語の特定の定義をここにまとめる。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らし、当業者によって理解されるように読まれるものとする。別段の定義のない限り、本明細書で用いられるすべての技術的及び科学的用語は、当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書で用いられる冠詞「a」及び「an」は、明らかに反対のことが示されない限り、「少なくとも1つの」を意味すると理解されたい。
本明細書で用いられる表現「及び/または」は、そのように結合された要素の「どちらかまたは両方」、すなわち、ある場合には接続語的に存在し、他の場合には離接語的に存在する要素を意味すると理解されたい。「及び/または」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素は、具体的に特定されたそれらの要素に関連していてもいなくても、明らかに反対のことが示されない限り、任意に存在してもよい。従って、非限定的な例として、「A及び/または B」への言及は、「comprising」等のオープンエンドな文体と併せて用いられる場合、一実施形態では、Bを含まないA(B以外の要素を任意に含む);別の実施形態では、Aを含まないB(A以外の要素を任意に含む);さらに別の実施形態では、AとBの両方(他の要素を任意に含む)を指すことができる。
本明細書で用いられる「または」は、上記に定義した「及び/または」と同じ意味を有すると理解されたい。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「または」または「及び/または」は、包括的、すなわち、要素の複数またはリストのうちの少なくとも1つ、及び2つ以上、並びに任意にリストに載っていないさらなる項目の包含と解釈されるものとする。それとは反対に明確に指示される唯一の用語、例えば、「のうち1つだけ」もしくは「のうちちょうど1つだけ」、または、特許請求の範囲で用いられる場合、「からなる」は、要素の複数またはリストのうちの厳密に1つの要素の包含を指すことになる。
一般に、本明細書で用いられる用語「または」は唯一、排他性の用語、例えば、「いずれか」、「のうち1つ」、「のうち1つだけ」、または「のうちちょうど1つ」で始まる場合、排他的な選択肢(すなわち、「どちらか一方だけ」)を示すと解釈されるものとする。「本質的にからなる」は、特許請求の範囲で用いられる場合、特許法の分野で用いられるその通常の意味を有するものとする。
本明細書で用いられる、1つ以上の要素のリストに関する「すくなくとも1つ」という表現は、該要素のリスト内の任意の1つ以上の該要素から選択される少なくとも1つの要素を意味し、該要素のリスト内に具体的に記載されたありとあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、該要素のリスト内の要素のいずれの組合せも排除しないものと理解されたい。この定義はまた、「すくなくとも1つ」という表現が指す該要素のリスト内に具体的に特定された該要素以外の要素が、具体的に特定されたそれら要素に関連していてもいなくても、任意に存在してもよいようにもする。
従って、非限定的な例として、「A及びBのすくなくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBのすくなくとも1つ」、もしくは同等に、「A及び/またはBのすくなくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上を含む、Bを含まないA(及びB以外の要素を任意に含む);別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上を含む、Aを含まないB(及びA以外の要素を任意に含む);さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意に2つ以上を含む、A、及び少なくとも1つ、任意に2つ以上を含む、B(並びに他の要素を任意に含む);等を指すことができる。
本明細書で用いられるすべての移行句、例えば、「comprising」、「including」、「carrying」、「having」、「containing」、「involving」、「holding」、等は、オープンエンドであること、すなわち、限定されずに含むを意味すると理解される。
米国特許庁の特許審査便覧に記載の通り、移行句「からなる」及び「本質的にからなる」だけは、それぞれクローズドまたはセミクローズド型の移行句とする。
本明細書で用いられる「対象(subject)」または「患者(patient)」は、任意の哺乳類(例えば、ヒト)、例えば、疾患または障害、例えば、腫瘍形成もしくはがんに感受性でありうる哺乳類を指す。例としては、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、またはげっ歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスター、もしくはモルモットが挙げられる。様々な実施形態では、対象とは、治療、観察、もしくは実験を受けたもの、または治療、観察、もしくは実験を受けるものを指す。例えば、対象とは、がんと診断された対象、もしくはがんであると分かっている対象、または、該対象における既知のがんに基づいて、治療、観察、もしくは実験のために選択されるものでありうる。
本明細書で用いられる「治療(treatmentまたはtreating)」とは、疾患もしくは障害、またはその少なくとも1つの徴候もしくは症状の改善を指す。「治療(treatmentまたはtreating)」とは、例えば、少なくとも1つの徴候もしくは症状の安定化によって決まる、疾患または障害の進行の軽減、または、少なくとも1つの徴候もしくは症状の進行速度の低下によって決まる進行速度の低下を指すことができる。別の実施形態では、「治療(treatmentまたはtreating)」とは、疾患または障害の発症を遅延させることを指す。
本明細書で用いられる「予防(preventionまたはpreventing)」とは、特定の疾患もしくは障害の徴候もしくは症状の獲得または所有のリスクの軽減、すなわち、予防的治療を指す。
本明細書で用いられる「治療有効量」という表現は、所望の治療効果を生み出すのに有効な、本開示の化合物を含む化合物、物質、または組成物の量を意味する。従って、治療有効量は、疾患もしくは障害を治療または予防、例えば、該疾患の少なくとも1つの徴候もしくは症状を改善する。様々な実施形態では、該疾患または障害は、がんである。
2つの文字または記号間にないダッシュ記号(「−」)は、置換基の結合点を示すために用いられる。例えば、−CONHは、該炭素原子(C)を介して結合される。
「任意の(optional)」または「任意に(optionally)」とは、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、並びに、該記載が、該事象または状況が生じる例、及び生じない例を含むことを意味する。例えば、本明細書で定義される「任意に置換されるアリール」は、「アリール」及び「置換アリール」の両方を包含する。当業者であれば、1つ以上の置換基を含む任意の基に関して、かかる基が、立体的に実現困難、合成不可能、及び/または本質的に不安定な置換もしくは置換パターンを導入することを意図されていないことが理解されよう。
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、飽和直鎖または分岐状炭化水素、例えば、本明細書ではそれぞれ、(C−C22)アルキル、(C−C)アルキル、(C−C)アルキル、及び(C−C)アルキルと呼ばれる炭素原子数1〜22、1〜8、1〜6、または1〜4の直鎖もしくは分岐状基を指す。典型的なアルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合(例えば「=」のように示される)を有する不飽和直鎖または分岐状炭化水素、例えば、本明細書ではそれぞれ、(C−C22)アルケニル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルケニル、及び(C−C)アルケニルと呼ばれる炭素原子数2〜22、2〜8、2〜6、または2〜4の直鎖もしくは分岐状基を指す。典型的なアルケニル基としては、限定されないが、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルへキシル、2−プロピル−2−ブテニル、及び4−(2−メチル−3−ブテン)ペンテニルが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合(例えば「≡」のように示される)を有する不飽和直鎖または分岐状炭化水素、例えば、本明細書ではそれぞれ、(C−C22)アルキニル、(C−C)アルキニル、(C−C)アルキニル、及び(C−C)アルキニルと呼ばれる炭素原子数2〜22、2〜8、2〜6、2〜4の直鎖または分岐状基を指す。典型的なアルキニル基としては、限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4−メチル−1−ブチニル、4−プロピル−2−ペンチニル、及び4−ブチル−2−ヘキシニルが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「シクロアルキル」は、飽和または不飽和の単環式、二環式、その他の多環式、または架橋環式炭化水素基を指す。シクロアルキル基は環炭素を3〜22、3〜12、または3〜8個含むことができ、本明細書ではそれぞれ、(C−C22)シクロアルキル、(C−C12)シクロアルキル、または(C−C)シクロアルキルと呼ばれる。シクロアルキル基はまた、1つ以上の炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有することができる。
典型的な単環式シクロアルキル基としては、限定されないが、シクロペンタン(シクロペンチル)、シクロペンテン(シクロペンテニル)、シクロヘキサン(シクロへキシル)、シクロヘキセン(シクロヘキセニル)、シクロヘプタン(シクロへプチル)、シクロヘプテン(シクロヘプテニル)、シクロオクタン(シクロオクチル)、シクロオクテン(シクロオクテニル)、シクロノナン(シクロノニル)、シクロノネン(シクロノネニル)、シクロデカン(シクロデシル)、シクロデセン(シクロデセニル)、シクロウンデカン(シクロウンデシル)、シクロウンデセン(シクロウンデセニル)、シクロドデカン(シクロドデシル)、及びシクロドデセン(シクロドデセニル)が挙げられる。二環式、多環式、及び架橋環式基等の他の典型的なシクロアルキル基としては、限定されないが、ビシクロブタン(ビシクロブチル)、ビシクロペンタン(ビシクロペンチル)、ビシクロヘキサン(ビシクロヘキシル)、ビシクロヘプタン(ビシクロヘプチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン(ビシクロ[2,2,1]へプチル)及びビシクロ[3,2,0]ヘプタン(ビシクロ[3,2,0]ヘプチル)等)、ビシクロオクタン(ビシクロオクチル、オクタヒドロペンタレン(オクタヒドロペンタレニル)、ビシクロ[3,2,1]オクタン(ビシクロ[3,2,1]オクチル)、及びビシクロ[2,2,2]オクタン(ビシクロ「2,2,2」オクチル)等)、並びにアダマンタン(アダマンチル)が挙げられる。シクロアルキル基は、他の飽和もしくは不飽和シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクリル基と縮合されうる。
本明細書で用いられる用語「アリール」とは、単環、二環、またはその他の多炭素環式芳香環系を指す。該アリールは、6〜22、6〜18、6〜14、または6〜10個の炭素を有することができ、本明細書ではそれぞれ、(C−C22)アリール、(C−C18)アリール、(C−C14)アリール、または(C−C10)アリールと呼ばれる。該アリール基は、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択される1つ以上の環に任意に縮合されうる。本明細書で用いられる用語「二環式アリール」は、別の芳香族もしくは非芳香族炭素環またはヘテロ環に縮合したアリール基を指す。典型的なアリール基としては、限定されないが、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、及びナフチル、並びに、ベンゾ縮合炭素環部分、例えば、5,6,7,8−テトラヒドロナフチルが挙げられる。典型的なアリール基としてはまた、限定されないが、本明細書では「(C)アリール」またはフェニルと呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系も挙げられる。該フェニル基は、シクロヘキサンまたはシクロペンタン環と縮合して別のアリールを形成しうる。
本明細書で用いられる用語「アリールアルキル」とは、少なくとも1つのアリール置換基を有するアルキル基(例えば、−アリール−アルキル−)を指す。典型的なアリールアルキル基としては、限定されないが、本明細書では「(C)アリールアルキル」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系を有するアリールアルキルが挙げられる。本明細書で用いられる用語「ベンジル」とは、−CH−フェニル基を指す。
用語「ヘテロアルキル」とは、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられた本明細書に記載のアルキル基を指す。適切なヘテロ原子としては、酸素、イオウ、窒素、リン等が挙げられる。ヘテロアルキル基の例としては、限定されないが、アルコキシ、アミノ、チオエステル等が挙げられる。
用語「ヘテロアルケニル」及び「ヘテロアルキニル」とは、上記のヘテロアルキルと長さ及び可能な置換が類似し、それぞれ少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む不飽和脂肪族基を指す。
用語「ヘテロ環」とは、環原子として少なくとも1つのヘテロ原子、一部の例では、環原子として1〜3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素原子である環状基を指す。適切なヘテロ原子としては、酸素、イオウ、窒素、リン等が挙げられる。一部の例では、該ヘテロ環は、その環構造が1〜4個のヘテロ原子を含む3〜10員環構造または3〜7員環でありうる。用語「ヘテロ環」は、ヘテロアリール基、飽和ヘテロ環(例えば、シクロヘテロアルキル)基、またはこれらの組合せを含みうる。該ヘテロ環は、飽和分子であっても1つ以上の二重結合を含んでもよい。一部の例では、該ヘテロ環は、少なくとも1つの環が少なくとも1つの環原子窒素を含む窒素ヘテロ環である。該ヘテロ環は、他の環と縮合して多環式ヘテロ環を形成しうる。従って、ヘテロ環としてはまた、二環式、三環式、及び四環式の基であって、上記ヘテロ環のいずれかが、アリール、シクロアルキル、及びヘテロ環から独立して選択される1つまたは2つの環に縮合される基が挙げられる。該ヘテロ環はまた、スピロ環式の基にも縮合されうる。
ヘテロ環としては、例えば、チオフェン、ベンゾチオフェン、チアントレン、フラン、テトラヒドロフラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、ジヒドロピロール、ピロリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルザジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、オキサジン、ピペリジン、ホモピペリジン(ヘキサメチレンイミン)、ピペラジン(例えば、N−メチルピペラジン)、モルホリン、ラクトン、ラクタム、例えばアゼチジノン及びピロリジノン、スルタム、スルトン、これらの他の飽和及び/または不飽和の誘導体、等が挙げられる。
一部の例では、該ヘテロ環は、環ヘテロ原子(例えば、窒素)を介して化合物と結合されうる。一部の例では、該ヘテロ環は、環炭素原子を介して化合物と結合されうる。一部の例では、該ヘテロ環は、ピリジン、イミダゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アクリジン、アクリジン−9−アミン、ビピリジン、ナフチリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、フェナントリジン−1,9−ジアミン、等である。
本明細書で用いられる用語「ヘテロ芳香族」または「ヘテロアリール」は、1つ以上のヘテロ原子、例えば、1〜3個のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、及びイオウを含む、単環式、二環式、または多環式芳香環系を指す。ヘテロアリールはまた、非芳香環に縮合されうる。様々な実施形態では、本明細書で用いられる用語「ヘテロ芳香族」または「ヘテロアリール」は、特に指示のない限り、N、O、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む芳香環を含む安定な5〜7員の単環式、安定な9〜10員の縮合二環式、または安定な12〜14員の縮合三環式ヘテロ環系を表す。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの窒素原子は、該芳香環内にある。
ヘテロ芳香族またはヘテロアリールは、限定されないが、本明細書では「(C−C)ヘテロアリール」と呼ばれる、環が2〜5個の炭素原子及び1〜3個のヘテロ原子を含む単環式芳香環を含みうる。単環式ヘテロ芳香族(またはヘテロアリール)の具体例としては、限定されないが、ピリジン(ピリジニル)、ピリダジン(ピリダジニル)、ピリミジン(ピリミジル)、ピラジン(ピラジル)、トリアジン(トリアジニル)、ピロール(ピロリル)、ピラゾール(ピラゾリル)、イミダゾール(イミダゾリル)、(1,2,3)−及び(1,2,4)−トリアゾール((1,2,3)−及び(1,2,4)−トリアゾリル)、ピラジン(ピラジニル)、ピリミジン(ピリミジニル)、テトラゾール(テトラゾリル)、フラン(フリル)、チオフェン(チエニル)、イソオキサゾール(イソオキサゾリル)、チアゾール(チアゾリル)、イソオキサゾール(イソオキサゾリル)、及びオキサゾール(オキサゾリル)が挙げられる。
本明細書で用いられる用語「二環式ヘテロ芳香族」または「二環式ヘテロアリール」とは、別の芳香族もしくは非芳香族炭素環またはヘテロ環に縮合したヘテロアリール基を指す。典型的な二環式ヘテロ芳香族またはヘテロアリールとしては、限定されないが、一方もしくは両方の環がヘテロ原子を含む、5,6−または6,6−縮合系が挙げられる。用語「二環式ヘテロ芳香族」または「二環式ヘテロアリール」はまた、一方もしくは両方の環が環ヘテロ原子を含む縮合芳香族系の還元型、または部分還元型も包含する。該環系は、酸素、窒素、及びイオウから独立して選択される3個までのヘテロ原子を含みうる。
典型的な二環式ヘテロ芳香族(またはヘテロアリール)としては、限定されないが、キナゾリン(キナゾリニル)、ベンゾオキサゾール(ベンゾオキサゾリル)、ベンゾチオフェン(ベンゾチオフェニル)、ベンゾオキサゾール(ベンゾオキサゾリル)、ベンゾイソオキサゾール(ベンゾイソオキサゾリル)、ベンゾイミダゾール(ベンゾイミダゾリル)、ベンゾチアゾール(ベンゾチアゾリル)、ベンゾフラン(ベンゾフラニル)、ベンゾイソチアゾール(ベンゾイソチアゾリル)、インドール(インドリル)、インダゾール(インダゾリル)、インドリジン(インドリジニル)、キノリン(キノリニル)、イソキノリン(イソキノリニル)、ナフチリジン(ナフチリジル)、フタラジン(フタラジニル)、フタラジン(フタラジニル)、プテリジン(プテリジニル)、プリン(プリニル)、ベンゾトリアゾール(ベンゾトリアゾリル)、及びベンゾフラン(ベンゾフラニル)が挙げられる。いくつかの実施形態では、該二環式ヘテロ芳香族(または二環式ヘテロアリール)は、キナゾリン(キナゾリニル)、ベンゾイミダゾール(ベンゾイミダゾリル)、ベンゾチアゾール(ベンゾチアゾリル)、インドール(インドリル)、キノリン(キノリニル)、イソキノリン(イソキノリニル)、及びフタラジン(フタラジニル)から選択される。特定の実施形態では、該二環式ヘテロ芳香族(または二環式ヘテロアリール)は、キノリン(キノリニル)またはイソキノリン(イソキノリニル)である。
本明細書で用いられる用語「三環式ヘテロ芳香族」または「三環式ヘテロアリール」は、別の芳香族もしくは非芳香族炭素環またはヘテロ環に縮合した二環式ヘテロアリール基を指す。用語「三環式ヘテロ芳香族」または「三環式ヘテロアリール」はまた、一方もしくは両方の環が環ヘテロ原子を含む縮合芳香族系の還元型、または部分還元型も包含する。該三環式ヘテロ芳香族(三環式ヘテロアリール)における環の各々は、酸素、窒素、及びイオウから独立して選択される3個までのヘテロ原子を含みうる。
典型的な三環式ヘテロ芳香族(またはヘテロアリール)としては、限定されないが、アクリジン(アクリジニル)、9H−ピリド[3,4−b]インドール(9H−ピリド[3,4−b]インドリル)、フェナントリジン(フェナントリジニル)、ピリド[1,2−a]ベンゾイミダゾール(ピリド[1,2−a]ベンゾイミダゾリル)、及びピリド[1,2−b]インダゾール(ピリド[1,2−b]インダゾリル)が挙げられる。
本明細書で用いられる用語「アルコキシ」とは、酸素に結合したアルキル基(−O−アルキル−)を指す。「アルコキシ」基はまた、酸素に結合したアルケニル基(「アルケニルオキシ」)または酸素に結合したアルキニル基(「アルキニルオキシ」)も含む。典型的なアルコキシ基としては、限定されないが、本明細書ではそれぞれ、(C−C22)アルコキシ、(C−C)アルコキシ、もしくは(C−C)アルコキシと呼ばれる、炭素原子数1〜22、1〜8、もしくは1〜6のアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を有する基が挙げられる。典型的なアルコキシ基としては、限定されないが、メトキシ及びエトキシが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「シクロアルコキシ」は、酸素に結合したシクロアルキル基を指す。
本明細書で用いられる用語「アリールオキシ」または「アロキシ」は、酸素原子に結合したアリール基を指す。典型的なアリールオキシ基としては、限定されないが、本明細書では「(C)アリールオキシ」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系を有するアリールオキシが挙げられる。本明細書で用いられる用語「アリールアルコキシ」とは、酸素原子に結合したアリールアルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基は、ベンジルオキシ基である。
本明細書で用いられる用語「アミン」または「アミノ」は、未置換及び置換の両方のアミン、例えば、NRb’を指す。ここで、R、R、及びRb’は、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、カルバメート、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及び水素から選択され、R、R、及びRb’のうちの少なくとも1つは水素ではない。該アミンまたはアミノは、該窒素を介して親分子基に結合されうる。該アミンまたはアミノはまた、環状であってもよく、例えば、R、R、及びRb’のうちのいずれか2つが結合されても、並びに/またはNと一緒に3〜12員環(例えば、モルホリノもしくはピペリジニル)を形成してもよい。用語アミノはまた、任意のアミノ基の対応する四級アンモニウム塩も含む。典型的なアミンとしては、R、R、もしくはRb’のうちの少なくとも1つがアルキル基であるアルキルアミン、または、R、R、もしくはRb’のうちの少なくとも1つがシクロアルキル基であるシクロアルキルアミンが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「アンモニア」は、NHを指す。
本明細書で用いられる用語「アルデヒド」または「ホルミル」は、−CHOを指す。
本明細書で用いられる用語「アシル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールに結合したカルボニル基を指す。典型的なアシル基としては、限定されないが、アセチル、ホルミル、プロピオニル、ベンゾイル等が挙げられる。
本明細書で用いられる用語「アミド」は、−NRC(O)(R)−または−C(O)NRの構造を指す。ここで、R、R、及びRは、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及び水素から選択される。該アミドは、該炭素、該窒素、R、R、またはRを介して別の基に結合されうる。該アミドはまた、環状であってもよく、例えば、R及びRが一緒になって3〜12員環、例えば、3〜10員環または5〜6員環を形成してもよい。用語「アミド」は、スルホンアミド、尿素、ウレイド、カルバメート、カルバミン酸、及びそれらの環状型等の基を包含する。用語「アミド」はまた、カルボキシ基に結合したアミド基、例えば、−アミド−COOHまたは−アミド−COONa等の塩も包含する。
本明細書で用いられる用語「アリールチオ」は、イオウ原子に結合したアリール基を指す。典型的なアリールチオ基としては、限定されないが、本明細書では「(C)アリールチオ」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系を有するアリールチオが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「アリールスルホニル」は、スルホニル基に結合したアリール基、例えば、−S(O)−アリール−を指す。典型的なアリールスルホニル基としては、限定されないが、本明細書では「(C)アリールスルホニル」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系を有するアリールスルホニルが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「カルバメート」は、−ROC(O)N(R)−、−ROC(O)N(R)R−、または−OC(O)NRの構造を指す。ここで、R、R、及びRは、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及び水素から選択される。典型的なカルバメートとしては、限定されないが、アリールカルバメートまたはヘテロアリールカルバメート(例えば、ここではR、R、及びRのうちの少なくとも1つが、独立してアリールまたはヘテロアリール、例えば、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、及びピラジニルから選択される)が挙げられる。
本明細書で用いられる用語「カルボニル」は、−C(O)−を指す。
本明細書で用いられる用語「カルボキシ」または「カルボキシレート」は、R−COOHまたはその対応するカルボン酸塩(例えば、R−COONa)を指す。ここで、Rは、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、エーテル、ハロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルから選択されうる。典型的なカルボキシとしては、限定されないが、Rがアルキルである場合のアルキルカルボキシ、例えば、−O−C(O)−アルキルが挙げられる。典型的なカルボキシとしてはまた、例えば、Rがフェニル及びトリル等のアリール、または、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、及びピラジン等のヘテロアリール基である場合のアリールまたはヘテロアリールカルボキシも挙げられる。用語カルボキシはまた、「カルボキシカルボニル」、例えば、カルボニル基に結合したカルボキシ基、例えば、−C(O)−COOHまたは塩、例えば、−C(O)−COONaも含む。
本明細書で用いられる用語「ジカルボン酸」は、飽和及び不飽和炭化水素のジカルボン酸及びその塩等の、少なくとも2つのカルボン酸基を含む基を指す。典型的なジカルボン酸としては、アルキルジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、限定されないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、マロン酸、フマル酸、(+)/(−)リンゴ酸、(+)/(−)酒石酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、さらに、そのカルボン酸誘導体、例えば、無水物、イミド、ヒドラジド(例えば、無水コハク酸及びスクシンイミド)が挙げられる。
本明細書で用いられる用語「シアノ」は、−CNを指す。
用語「エステル」は、−C(O)O−、−C(O)O−R−、−RC(O)O−R−、または−RC(O)O−の構造を指す。ここで、Oは水素に結合されておらず、R及びRは、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、エーテル、ハロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルから選択されうる。Rは水素であってよいが、Rは水素ではない。該エステルは環状であってよく、例えば、該炭素原子とR、該酸素原子とR、またはRとRが結合して3〜12員環を形成してもよい。典型的なエステルとしては、限定されないが、RまたはRの少なくとも1つがアルキルである場合のアルキルエステル、例えば、−O−C(O)−アルキル、−C(O)−O−アルキル−、及び−アルキル−C(O)−O−アルキル−が挙げられる。典型的なエステルとしてはまた、例えば、RまたはRの少なくとも1つがアリール基、例えば、フェニルもしくはトリル、または、ヘテロアリール基、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、もしくはピラジンである場合のアリールまたはヘテロアリールエステル、例えば、ニコチン酸エステルが挙げられる。典型的なエステルとしてはまた、酸素が親分子に結合された、構造−RC(O)O−を有する逆エステルも挙げられる。典型的な逆エステルとしては、コハク酸エステル、D−アルギニンエステル、L−アルギニンエステル、L−リジンエステル、及びD−リジンエステルが挙げられる。エステルはまた、カルボン酸無水物及び酸ハロゲン化物も含む。
用語「エーテル」は、−RO−R−の構造を指す。ここで、R及びRは、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びエーテルでありうる。該エーテルは、RまたはRを介して親分子基と結合されうる。典型的なエーテルとしては、限定されないが、アルコキシアルキル及びアルコキシアリール基が挙げられる。エーテルはまた、例えば、R及びRの一方または両方がエーテルであるポリエーテルも含む。
本明細書で用いられる用語「ハロ」、「ハロゲン」、「ハル」、または「ハライド」は、F、Cl、Br、またはIを指す。
本明細書で用いられる用語「ハロアルキル」は、1つ以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を指す。「ハロアルキル」はまた、1つ以上のハロゲン原子で置換されたアルケニルまたはアルキニル基も包含する。
本明細書で用いられる用語「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」は、−OHを指す。
本明細書で用いられる用語「ヒドロキシアルキル」は、アルキル基に結合したヒドロキシを指す。
本明細書で用いられる用語「ヒドロキシアリール」は、アリール基に結合したヒドロキシを指す。
本明細書で用いられる用語「ケトン」は、−C(O)−R(例えば、アセチル、−C(O)CH)または−R−C(O)−R−の構造を指す。該ケトンは、RまたはRを介して別の基と結合されうる。RまたはRは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはアリールでありうる。または、RもしくはRは結合して、例えば、3〜12員環を形成しうる。
本明細書で用いられる用語「モノエステル」は、ジカルボン酸の一方のカルボン酸がエステルとして官能化され他方のカルボン酸が遊離のカルボン酸またはカルボン酸塩である、ジカルボン酸のアナログを指す。モノエステルの例としては、限定されないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸及びマレイン酸のモノエステルが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「ニトロ」は、−NOを指す。
本明細書で用いられる用語「ニトレート」は、NO を指す。
本明細書で用いられる用語「パーフルオロアルキル」は、水素原子のすべてがフッ素原子で置換されたアルキル基を指す。典型的なパーフルオロアルキル基としては、限定されないが、C−Cパーフルオロアルキル、例えば、トリフルオロメチルが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「パーフルオロシクロアルキル」は、水素原子のすべてがフッ素原子で置換されたシクロアルキル基を指す。
本明細書で用いられる用語「パーフルオロアルコキシ」は、水素原子のすべてがフッ素原子で置換されたアルコキシ基を指す。
本明細書で用いられる用語「ホスフェート」は、−OP(O)O 2―、−ROP(O)O 2―、−OP(O)(OR)O、または−ROP(O)(OR)Oの構造を指す。ここで、R、R、及びRは、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、または水素でありうる。
本明細書で用いられる用語「スルフィド」は、−RS−の構造を指す。ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルでありうる。該スルフィドは、環状であってよく、例えば3〜12員環を形成してもよい。本明細書で用いられる用語「アルキルスルフィド」は、イオウ原子に結合したアルキル基を指す。
本明細書で用いられる用語「スルフィニル」は、−S(O)O−、−RS(O)O−、−RS(O)OR−、または−S(O)OR−の構造を指す。ここで、R及びRは、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシルでありうる。典型的なスルフィニル基としては、限定されないが、RまたはRのうちの少なくとも1つがアルキル、アルケニル、またはアルキニルである場合のアルキルスルフィニルが挙げられる。
本明細書で用いられる用語「スルホンアミド」は、−(R)−N−S(O)−R−または−R(R)N−S(O)−Rの構造を指す。ここで、R、R、及びRは、例えば、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルでありうる。典型的なスルホンアミドとしては、アルキルスルホンアミド(例えば、Rがアルキルの場合)、アリールスルホンアミド(例えば、Rがアリールの場合)、シクロアルキルスルホンアミド(例えば、Rがシクロアルキルの場合)、及びヘテロシクリルスルホンアミド(例えば、Rがヘテロシクリルの場合)が挙げられる。
本明細書で用いられる用語「スルホネート」は、スルホン酸の塩またはエステルを指す。用語「スルホン酸」は、RSOHを指す。ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである(例えば、アルキルスルホニル)。本明細書で用いられる用語「スルホニル」は、RSO−の構造を指す。ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリル(例えば、アルキルスルホニル)でありうる。本明細書で用いられる用語「アルキルスルホニル」は、スルホニル基に結合したアルキル基を指す。「アルキルスルホニル」基は、任意にアルケニルまたはアルキニル基を含みうる。
本明細書で用いられる用語「スルホネート」は、RSO を指す。ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、アルコキシ、アロキシ、またはアラルコキシであって、そこで、該アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロキシ、またはアラルコキシの各々は、任意に置換される。非限定的な例としては、トリフラート(トリフルオロメタンスルホネートとしても知られる、CFSO )、ベンゼンスルホネート、トシレート(トルエンスルホネートとしても知られる)、等が挙げられる。
用語「チオケトン」は、−R−C(S)−R−の構造を指す。該ケトンは、RまたはRを介して別の基に結合されうる。RまたはRは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリルまたはアリールでありうる。または、RもしくはRは、結合して環、例えば、3〜12員環を形成しうる。
上記の各々の基は、任意に置換されていてもよい。本明細書で用いられる用語「置換された(substituted)」は、有機化合物の許容される置換基のすべてを含むことを企図し、「許容される」とは、当業者に周知の価数の化学的規則にのっとっている。「置換された」はまた、該置換で、例えば、転位、環化、脱離等の変化を自然に受けない安定化合物が得られることも含むことが理解されよう。一部の例では、「置換された」は、概して、本明細書に記載の置換基による水素の置換を指す。しかしながら、本明細書で用いられる「置換された」は、例えば、「置換された」官能基が、置換によって異なる官能基になるような、分子が識別される官能基の置換及び/または変更を包含しない。例えば、「置換されたフェニル基」は、該フェニル部分をなお含む必要があり、置換によって、この定義においては、例えば、ピリジン環になるように変更することはできない。
広い態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及びヘテロ環式、芳香族及び非芳香族置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば、本明細書に記載のものが挙げられる。該許容される置換基は、適切な有機化合物に対して、1つ以上でよく、また、同一でも異なっていてもよい。本開示の目的のために、窒素等のヘテロ原子は、該ヘテロ原子の価数を満たす水素置換基及び/または本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有しうる。
様々な実施形態では、該置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、これらの各々は、1つ以上の適切な置換基で任意に置換される。いくつかの実施形態では、該置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、ここで、該アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンは、さらに、1つ以上の適切な置換基で置換されうる。
置換基の例としては、限定されないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、チオケトン、エステル、ヘテロシクリル、−CN、アリール、アリールオキシ、パーハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキサミド、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、アルコキシアルキル、パーハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキル、等が挙げられる。いくつかの実施形態では、該置換基は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、及びニトロから選択される。
非限定的な例として、様々な実施形態では、本明細書でアミンまたはアミノと呼ばれるNRb’中のR、R、及びRb’のうちの1つが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択される場合、該アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルは、それぞれ独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンからそれぞれ独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換されてもよく、そこで、該アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンの各々はさらに、1つ以上の適切な置換基で置換されうる。いくつかの実施形態では、該アミンがアルキルアミンまたはシクロアルキルアミンの場合、該アルキルまたは該シクロアルキルは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンからそれぞれ独立して選択される1つ以上の置換基で置換されうる。特定の実施形態では、該アミンがアルキルアミンまたはシクロアルキルアミンの場合、該アルキルまたは該シクロアルキルは、アミノ、カルボキシ、シアノ、及びヒドロキシルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の置換基で置換されうる。例えば、該アルキルアミンまたは該シクロアルキルアミンの該アルキルまたは該シクロアルキルは、アミノ基で置換され、ジアミンを形成する。
本明細書で用いられる「適切な置換基」とは、本発明の化合物またはその調製に有用な中間体の合成もしくは薬理学的実用性を無効にしない基を指す。適切な置換基の例としては、限定されないが:(C−C22)、(C−C)、(C−C)、もしくは(C−C)アルキル、アルケニル、またはアルキニル;(C−C22)、(C−C18)、(C−C14)、または(C−C10)アリール;(C−C21)、(C−C17)、(C−C13)、または(C−C)ヘテロアリール;(C−C22)、(C−C12)、または(C−C)シクロアルキル;(C−C22)、(C−C)、(C−C)、または(C−C)アルコキシ;(C−C22)、(C−C18)、(C−C14)、または(C−C10)アリールオキシ;−CN;−OH;オキソ;ハロ;カルボキシ;アミノ、例えば、−NH((C−C22)、(C−C)、(C−C)、または(C−C)アルキル)、−N((C−C22)、(C−C)、(C−C)、または(C−C)アルキル)、−NH((C)アリール)、または−N((C−C10)アリール);ホルミル;ケトン、例えば、−CO((C−C22)、(C−C)、(C−C)、または(C−C)アルキル)、−CO(((C−C10)アリール);エステル、例えば、−CO((C−C22)、(C−C)、(C−C)、または(C−C)アルキル)及び−CO((C−C10)アリール)が挙げられる。当業者であれば、本発明の化合物の安定性並びに薬理学的及び合成活性に基づいて、適切な置換基を容易に選択できる。
用語「医薬的に許容される対イオン」は、医薬的に許容されるアニオンまたはカチオンを指す。様々な実施形態では、該医薬的に許容される対イオンは、医薬的に許容されるイオンである。例えば、該医薬的に許容される対イオンは、シトレート、マレート、アセテート、オキサレート、クロリド、ブロミド、ヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、ホスフェート、酸ホスフェート、イソニコチネート、アセテート、ラクテート、サリシレート、タートレート、オレエート、タンネート、パントテネート、ビタートレート、アスコルベート、スクシネート、マレエート、ゲンチシネート、フマレート、グルコネート、グルカロネート、サッカレート、ホルメート、ベンゾエート、グルタメート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート、及びパモエート(すなわち、1,1’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))から選択される。いくつかの実施形態では、該医薬的に許容される対イオンは、クロリド、ブロミド、ヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、ホスフェート、酸ホスフェート、シトレート、マレート、アセテート、オキサレート、アセテート、及びラクテートから選択される。特定の実施形態では、該医薬的に許容される対イオンは、クロリド、ブロミド、ヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、及びホスフェートから選択される。
用語「医薬的に許容される塩」は、本開示で用いられる化合物に存在しうる酸性または塩基性基の塩を指す。本質的に塩基性である本開示に含まれる化合物は、様々な無機及び有機酸と、多種多様な塩を形成することができる。かかる塩基性化合物の医薬的に許容される酸付加塩の調製に用いられうる該酸は、非毒性の酸付加塩を形成するもの、すなわち、薬理学的に許容されるアニオンを含む塩、限定されないが、スルフェート、シトレート、マレート、アセテート、オキサレート、クロリド、ブロミド、ヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、ホスフェート、酸ホスフェート、イソニコチネート、アセテート、ラクテート、サリシレート、シトレート、タートレート、オレエート、タンネート、パントテネート、ビタートレート、アスコルベート、スクシネート、マレエート、ゲンチシネート、フマレート、グルコネート、グルカロネート、サッカレート、ホルメート、ベンゾエート、グルタメート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート、及びパモエート(すなわち、1,1’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))塩等である。アミノ部分を含む本開示に含まれる化合物は、上記の酸に加えて、様々なアミノ酸と医薬的に許容される塩を形成しうる。本質的に酸性である本開示に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンと塩基塩を形成することができる。かかる塩の例としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、及び鉄塩が挙げられる。
さらに、本明細書に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離の塩基は、該酸塩の溶液を塩基性化することによって得ることができる。反対に、生成物が遊離の塩基である場合、付加塩、特に医薬的に許容される付加塩は、塩基性化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って、該遊離の塩基を適切な有機溶剤に溶解し、該溶液を酸で処理することによって製造されうる。当業者であれば、非毒性の医薬的に許容される付加塩の調製に用いられうる様々な合成方法を認めるであろう。
医薬的に許容される塩は、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,2−ジクロロ酢酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、2−オキソグルタル酸、4−アセタミド安息香酸、4−アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸、カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、及びウンデシレン酸から選択される酸から得ることができる。
特に指定しない限り、これら化学基は、対応する1価、2価、3価、及び4価の基を含む。例えば、メチルは、1価メチル(−CH)、2価メチル(−CH−、メチリル)、
を含む。
特に指定しない限り、本明細書並びに特許請求の範囲で用いられる成分、反応条件、及び他の特性またはパラメータの量を表すすべての数は、すべての例において、「約」という用語で修飾されていると理解されたい。従って、特に断りのない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは近似値であると理解されたい。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みではないが、数値パラメータは、報告された有効数字の数及び通常の丸め方の適用に照らして読まれるものとする。例えば、「約」という用語は、「約」という用語が修飾する数の数値の±10%、±5%、±2%、±1%、±0.5%、または±0.1%の変動を包含しうる。様々な実施形態では、「約」という用語は、該数の数値の±5%、±2%、±1%、または±0.5%の変動を包含する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、該数の数値の±5%、±2%、または±1%の変動を包含する。特定の実施形態では、「約」という用語は、該数の数値の±5%の変動を包含する。特定の実施形態では、「約」という用語は、該数の数値の±2%の変動を包含する。特定の実施形態では、「約」という用語は、該数の数値の±1%の変動を包含する。
本明細書のすべての数値範囲は、記載された数値範囲内のすべての数値及びすべての数値範囲を含む。非限定的な例として、(C−C)アルキルはまた、C、C、C、C、C、C、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、(C−C)、及び(C−C)アルキルのうちのいずれか1つも含む。
さらに、上述したように、本開示の広い範囲を記載する該数値範囲及びパラメータは近似値であるが、実施例の節に記載の数値は、可能な限り正確に示される。しかしながら、かかる数値は、測定装置及び/または測定技術に由来する特定の誤差を本質的に含むことを理解されたい。
本開示は、概して、Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体、組成物、並びに該化合物、複合体、もしくは組成物の使用方法を提供する。
化合物
本明細書で提供される様々な実施形態では、白金(IV)(Pt(IV))化合物は、タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体上の官能基との反応に適切な反応基を含む。該反応基はタンパク質結合特性を有する。すなわち、該反応基はタンパク質に共有結合する。例えば、該反応基は、該反応基と白金の間のリンカーによって導入されうる。様々な実施形態では、白金のアキシアル位の片方または両方はそれぞれ、1つ以上の反応基を含む。
いくつかの実施形態では、該タンパク質はアルブミン及び/またはその誘導体/アナログ/模倣体である。
いくつかの実施形態では、該反応基は、マレイミド等のマイケル受容体である。
いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、式I:
またはその医薬的に許容される塩を有する。ここで:
X及びYは、独立して、NH、アルキル、及びアリールから選択され;
及びRは、それぞれClであるか、または、R及びRが一緒になってオキサレートを形成し;
は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、ここで、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され;
及びRは、それぞれHであるか、または、一緒にシクロへキシル環を構成し;
Zは、存在しないか、または、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され;
は、アミノ基、水酸基、またはチオール基との反応に適切な反応基であって、タンパク質、人工的に作り出されたタンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、アゴニスト、アンタゴニスト、アプタマー、または選択された標的細胞集団の認識が可能でありうるリガンド、及び/もしくはこれらの誘導体/アナログ/模倣体と複合体を形成し、また、ここで、Rは、以下の基:
のいずれかから選択され;
ここで、Rは、Cl、Br、F、メシレート、トシレート、O−(4−ニトロフェニル)、O−ペンタフルオロフェニルである。該反応基は、活性ジスルフィド基、ビニルカルボニル基、ビニルアセチレン基、エポキシド、アジリジン基、またはアセチレン基でもよい。これらの基は、必要に応じて置換されていてもよい。
本発明の実施形態は、XがRとともに:
からなる群から選択される化合物またはその医薬的に許容される塩である。
いくつかの実施形態では、該反応基はマレイミドを含みうる。かかる化合物は、本明細書では、「モノマレイミド化合物」、すなわち、Pt(IV)Mモノマレイミド化合物と呼ばれうる。本明細書で用いられる「モノマレイミド化合物」とは、単一のマレイミド基を有する化合物である。該マレイミド化合物は、式II:
またはその医薬的に許容される塩を有する。ここで:
X及びYは、独立して、NH、アルキル、及びアリールから選択され;
及びRは、それぞれClであるか、または、R及びRが一緒になってオキサレートを形成し;
は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、ここで、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され;
及びRは、それぞれHであるか、または、一緒にシクロへキシル環を構成し;
Zは、存在しないか、または、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、Pt(IV)Mモノマレイミド化合物の非対称性は、白金薬剤の放出の調節を可能にする。
本発明の別の実施形態は、YがZ及び該マレイミドとともに:
からなる群から選択されるマレイミド化合物またはその医薬的に許容される塩である。
本発明の別の実施形態は、式IIa:
を有するマレイミド化合物またはその医薬的に許容される塩である。ここで:
X及びYは、独立して、NH、アルキル、及びアリールから選択され;
及びRは、それぞれClであるか、または、R及びRが一緒になってオキサレートを形成し;
は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、ここで、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され;
Zは、存在しないか、または、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される。
本発明の別の実施形態は、式IIb:
を有するマレイミド化合物またはその医薬的に許容される塩である。ここで:
X及びYは、独立して、NH、アルキル、及びアリールから選択され;
及びRは、それぞれClであるか、または、R及びRが一緒になってオキサレートを形成し;
は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、ここで、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され;
Zは、存在しないか、または、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールであって、該アルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換され、そこで、該カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、またはアルキリデンヒドラジンの各々は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ以上の基で任意に置換される。
本発明のPt(IV)M化合物の非限定的な例は、記載の化合物からなる群から選択される化合物である:
本発明のPt(IV)M化合物の別の非限定的な例は、記載の化合物からなる群から選択される化合物である:
本明細書に記載の通り、本開示のいくつかの化合物は、荷電した白金錯体及び医薬的に許容される対イオン等の対イオンを含む塩として提供されうる。該対イオンは、(−1)、(−2)、(−3)、(+1)、(+2)、(+3)等の電荷を有する弱または非求核性安定化イオンでありうる。いくつかの実施形態では、該対イオンは(−1)の電荷を有する。他の実施形態では、該対イオンは(−2)の電荷を有する。いくつかの実施形態では、該対イオンは(+1)の電荷を有する。他の実施形態では、該対イオンは(+2)の電荷を有する。
本開示は、さらに、各々が本明細書に開示の1つ以上の化合物及び少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤を含む組成物(医薬組成物を含む)を含む。
処方、供給、投与、及び投薬
いくつかの実施形態では、組成物はヒト、すなわちヒト患者または対象に投与される。本開示の目的のために、「活性成分」という表現は概して、本明細書に記載の通り、供給される該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体を指す。
本明細書に示される医薬組成物の記載は、主に、ヒトに投与するのに適した医薬組成物に向けられているが、当業者には、かかる組成物は一般に他の動物、例えば、非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳類への投与に適していることが理解されよう。ヒトへの投与に適した医薬組成物を、様々な動物への投与に適するようにするための変性は、十分理解されており、当獣医薬理学者は、かかる変性を、実験するとしても通常の実験のみで設計及び/または実行できる。該医薬組成物の投与が企図される対象としては、限定されないが、ヒト及び/または他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス及び/またはラット等の商業関連の哺乳類を含めた哺乳類;並びに/または家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/またはシチメンチョウ等の商業関連の鳥類を含めた鳥類が挙げられる。
本明細書に記載の医薬組成物の処方は、薬理学の分野で既知の、または今後開発される方法のいずれかによって調製されうる。一般に、かかる調製方法は、該活性成分を賦形剤及び/または1つ以上の他の補助成分と結合させ、その後、必要及び/もしくは所望に応じて、該生成物を分割、成形、並びに/または包装して、所望の単回もしくは複数回投与単位にする段階を含む。
本発明の医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、及び/もしくは複数の単一単位用量として調製、包装、並びに/または販売されうる。本明細書で用いられる「単位用量」とは、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。該活性成分の量は、一般に、対象に投与される活性成分の用量、及び/またはかかる用量の使いやすい画分、例えば、かかる用量の2分の1もしくは3分の1に等しい。
本発明の医薬組成物中の該活性成分、該医薬的に許容される賦形剤、及び/または任意の追加成分の相対量は、治療される対象の固有性、サイズ、及び/または状態に応じて、さらに、該組成物が投与される経路に応じて変化する。一例として、該組成物は、0.1%〜100%、例えば、5〜50%、1〜30%、5〜80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含みうる。
本発明のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は:(1)安定性を増加せるため;(2)持続または遅延放出を可能にするため(例えば、該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体のデポー製剤から);(3)生体内分布を変える(例えば、該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体で特定の組織または細胞型を標的にする)ため;(4)該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体のインビボでの放出プロファイルを変えるため、1つ以上の賦形剤を用いて処方されうる。該賦形剤の非限定的な例としては、ありとあらゆる溶剤、分散媒、希釈剤、または他の液体媒体、分散もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘もしくは乳化剤、及び防腐剤が挙げられる。本発明の賦形剤はまた、制限なく、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェル型ナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体、及びそれらの組合せも挙げられる。従って、本発明の処方は、1つ以上の賦形剤を、各々が該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体の安定性を一緒に向上させる量で含みうる。
いくつかの実施形態では、該医薬組成物のpH値は、約4から約7、4〜6、4〜5、約4、約5、約6、または約7である。
賦形剤
製剤処方はさらに、医薬的に許容される賦形剤を含んでもよく、本明細書で用いられるものとしては、個別の所望の剤形に適したありとあらゆる溶剤、分散媒、希釈剤、または他の液体媒体、分散もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘もしくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、及び滑沢剤等が挙げられる。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy, 21st Edition, A. R. Gennaro (Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2006;参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる)は、医薬組成物の処方に用いられる様々な賦形剤及び公知のその調製技術を開示している。任意の従来の賦形剤媒体が物質またはその誘導体と、例えば、任意の望ましくない生物学的効果を生じたり、そうでなければ該医薬組成物の他の(1つまたは複数の)成分と有害な様式で相互作用することによって、不適合である場合を除き、その使用は、本発明の範囲内に含まれることが企図される。
いくつかの実施形態では、医薬的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%純粋である。いくつかの実施形態では、賦形剤は、ヒト用及び動物への使用に対して承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は、医薬品グレードである。いくつかの実施形態では、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/または国際薬局方の基準を満たしている。
医薬組成物の製造に用いられる医薬的に許容される賦形剤としては、限定されないが、不活性希釈剤、分散及び/もしくは造粒剤、界面活性剤及び/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、滑沢剤、並びに/または油が挙げられる。かかる賦形剤は、医薬組成物に任意に含まれてよい。
典型的な希釈剤としては、限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖等、及び/またはそれらの組合せが挙げられる。
典型的な造粒及び/または分散剤としては、限定されないが、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クレー、アルギン酸、グアーガム、シトラスパルプ、寒天、ベントナイト、セルロース及び木材製品、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、シリケート、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(starch 1500)、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(VEEGUM(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物等、並びに/またはそれらの組合せが挙げられる。
典型的な界面活性剤及び/または乳化剤としては、限定されないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、及びレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]及びVEEGUM(登録商標)[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、エチレングリコールジステアレート、モノステアリン酸グリセリル、及びプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、及びカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[TWEEN(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[TWEENn(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[TWEEN(登録商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[SPAN(登録商標)40]、ソルビタンモノステアレート[SPAN(登録商標)60]、ソルビタントリステアレート[SPAN(登録商標)65]、モノオレイン酸グリセリル、ソルビタンモノオレエート[SPAN(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[MYRJ(登録商標)45]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、及びSOLUTOL(登録商標))、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、CREMOPHOR(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[BRIJ(登録商標)30])、ポリ(ビニルピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、PLURONIC(登録商標)F68、POLOXAMER(登録商標)188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウム等、及び/またはそれらの組合せが挙げられる。
典型的な結合剤としては、限定されないが、デンプン(例えば、コーンスターチ及びデンプンペースト);ゼラチン;糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然及び合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモス抽出物、パンワルゴム(Panwar gum)、ガッチゴム、イサポール皮の粘質物(mucilage of isapol husks)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、セルロースアセテート、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum(登録商標))、及びカラマツアラボガラクタン);アルギネート;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコール等;並びにそれらの組合せが挙げられる。
典型的な防腐剤としては、限定されないが、酸化防止剤、キレート剤、抗菌防腐剤、抗真菌防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、及び/または他の防腐剤が挙げられる。典型的な酸化防止剤としては、限定されないが、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び/または亜硫酸ナトリウムが挙げられる。典型的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、及び/またはエデト酸三ナトリウムが挙げられる。典型的な抗菌防腐剤としては、限定されないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、及び/またはチメロサールが挙げられる。典型的な抗真菌防腐剤としては、限定されないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及び/またはソルビン酸が挙げられる。典型的なアルコール防腐剤としては、限定されないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、及び/またはフェニルエチルアルコールが挙げられる。典型的な酸性防腐剤としては、限定されないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及び/またはフィチン酸が挙げられる。その他の防腐剤としては、限定されないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、GLYDANT PLUS(登録商標)、PHENONIP(登録商標)、メチルパラベン、GERMALL(登録商標)115、GERMABEN(登録商標)II、NEOLONE(商標)、KATHON(商標)、及び/またはEUXYL(登録商標)が挙げられる。
典型的な緩衝剤としては、限定されないが、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D−グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、リン酸カルシウムヒドロキシド、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール等、及び/またはそれらの組合せが挙げられる。
典型的な滑沢剤としては、限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、水添植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム等、及びそれらの組合せが挙げられる。
典型的な油としては、限定されないが、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、カシス種子、ルリヂサ、カデ、カモミール、キャノーラ、キャラウェー、カルナバ、ヒマシ、シナモン、ココアバター、ココナツ、タラ肝臓、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、アマニ、ゲラニオール、ヘチマ、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リツェアクベバ、マカデミア(macademia)ナッツ、ゼニアオイ、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ケシ種子、カボチャ種子、ナタネ、米ヌカ、ローズマリー、ベニバナ、サンダルウッド、サスクアナ(sasquana)、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチベル、クルミ、及びコムギ胚芽油が挙げられる。典型的な油としては、限定されないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコーン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、及び/またはそれらの組合せが挙げられる。
ココアバター及び坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭薬、並びに/または芳香剤等の賦形剤は、考案者の判断に応じて該組成物中に含まれうる。
投与
本発明のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、治療的に有効な結果をもたらす任意の経路で投与されうる。これらとしては、限定されないが、経腸、胃腸、硬膜外(epidural)、経口、経皮、硬膜外(epidural(peridural))、脳内(大脳内へ)、脳室内(脳室内へ)、経皮(皮膚への塗布)、皮内(皮膚自体の中へ)、皮下(皮膚の下)、経鼻投与(鼻から)、静脈内(静脈の中へ)、動脈内(動脈の中へ)、筋肉内(筋肉の中へ)、心内(心臓の中へ)、骨内注入(骨髄の中へ)、鞘内(脊柱管の中へ)、腹腔内、(腹膜内への注入もしくは注射)、嚢内注入、硝子体内、(眼から)、海綿体内(陰茎基部の中へ)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身への分布用に無傷の皮膚を通して拡散)、経粘膜(粘膜を通して拡散)、吹送(鼻息)、舌下、唇下、浣腸、点眼薬(結膜へ)、または点耳が挙げられる。特定の実施形態では、組成物は、それらが血液脳関門、血管バリア、または他の上皮バリアを横切ることが可能な方法で投与されうる。
投薬
本発明は、Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。本明細書に記載のPt(IV)M化合物は、疾患、障害、及び/または状態(例えば、作業記憶障害に関する疾患、障害、及び/または状態)を予防、治療、または画像化するために有効な任意の投与量並びに任意の投与経路を用いて対象に投与されうる。正確な必要量は、対象ごとに、当該対象の種、年齢、及び全身状態、該疾患の重症度、個々の組成物、その投与方法、その活性様式、等に応じて変化する。
本発明の組成物は、通常、投与の容易さ及び投薬量の均一性のため、投薬単位形態で処方される。しかしながら、本発明の組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されうることが理解されよう。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効用量、予防的な有効用量、または適切な画像化用量レベルは、治療される該障害及び該障害の重症度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成;該患者の年齢、体重、全身状態、性別、及び食事;使用される具体的な化合物の投与期間、投与経路、及び排出速度;治療期間;使用される具体的な化合物と併用もしくは同時に用いられる薬剤;並びに医学分野で周知の同様の要因を含めた様々な要因に依存する。
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、1日に1回以上、1日当たり対象の体重の、約0.0001mg/kgから約100mg/kg、約0.001mg/kgから約0.05mg/kg、約0.005mg/kgから約0.05mg/kg、約0.001mg/kgから約0.005mg/kg、約0.05mg/kgから約0.5mg/kg、約0.01mg/kgから約50mg/kg、約0.1mg/kgから約40mg/kg、約0.5mg/kgから約30mg/kg、約0.01mg/kgから約10mg/kg、約0.1mg/kgから約10mg/kg、または約1mg/kgから約25mg/kg供給するために十分な用量レベルで投与され、所望の治療、診断、予防、または画像化効果が得られうる。該所望の用量は、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、2日おき、毎週、隔週、3週間ごと、または4週間ごとに供給されうる。いくつかの実施形態では、該所望の用量は、複数回投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回、またはそれ以上の投与)を用いて供給されてもよい。複数回投与が採用される場合、本明細書に記載のもの等の分割投薬レジメンが使用されうる。
本明細書で用いられる「分割用量」とは、単一の単位用量または合計1日用量を2つ以上の用量、例えば、該単一の単位用量の2回以上の投与に分けることである。本明細書で用いられる「単一の単位用量」とは、1回用量/一度で/単一の経路/単一の接触点、すなわち、単一の投与事象で投与される任意の治療用量である。本明細書で用いられる「合計1日用量」とは、24時間の所定または既定の量である。これは、単一の単位用量として投与されうる。一実施形態では、本発明の該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、対象に対して分割用量で投与される。該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、緩衝剤のみの中、または本明細書に記載の製剤中に処方されうる。
剤形
本明細書に記載の医薬組成物は、本明細書に記載の剤形、例えば、局所、鼻腔内、気管内、または注射用(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、心臓内、腹腔内、皮下)に処方されうる。
液体剤形
非経口投与用の液体剤形としては、限定されないが、医薬的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及び/またはエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、限定されないが、水または他の溶剤、可溶化剤、及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物等の当技術分野で通常用いられる不活性希釈剤を含んでよい。非経口投与についての特定の実施形態では、組成物は、CREMOPHOR(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、及び/またはそれらの組合せ等の可溶化剤と混合されうる。
注射用
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、公知の技術に従って処方されうるとともに、適切な分散剤、湿潤剤、及び/または懸濁剤を含みうる。滅菌注射用製剤は、滅菌注射用溶液、懸濁液、及び/またはエマルションの非毒性の非経口的に許容される希釈剤及び/または溶剤溶液、例えば、1,3−ブタンジオール溶液でありうる。使用されうる該許容される溶媒及び溶剤としては、限定されないが、水、リンゲル液、U.S.P.、及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。滅菌固定油は、溶剤または懸濁媒体として従来使用されている。この目的のため、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の非刺激性固定油を用いることができる。オレイン酸等の脂肪酸を、該注射用製剤に用いることができる。
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターでのろ過、及び/または滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解もしくは分散可能な滅菌固体組成物の形の滅菌剤の使用前の組み込みによって滅菌されうる。
活性成分の効果を延ばすため、皮下または筋肉内注射からの該活性成分の吸収を遅らせることが望ましい場合がある。これは、難水溶性の結晶性または非晶性物質の懸濁液の使用によって達成されうる。その結果、該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体の吸収速度は、その溶解速度に依存し、これは、同様にして、結晶サイズ及び結晶形に依存しうる。別の方法として、非経口投与されたPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体の遅延吸収は、該モノマレイミドを油媒体に溶解または懸濁することによって達成されうる。注射用デポー形態は、該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体のマイクロカプセル化マトリクスを生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド‐ポリグリコリド内で形成することによって作製される。該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体のポリマーに対する比、及び使用される個別のポリマーの特性に応じて、該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体の放出速度が制御できる。他の生分解性ポリマーの例としては、限定されないが、ポリ(オルソエステル)及びポリ(アンハイドライド)が挙げられる。注射用デポー製剤は、生体組織と適合するリポソームまたはマイクロエマルションに該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体を取り込ませることによって調製されうる。
肺用
肺供給に有用なものとして本明細書に記載の処方はまた、医薬組成物の経鼻内投与にも用いることができる。経鼻投与に適する別の処方は、該活性成分を含む、平均粒径約0.2umから500umの粗粉末でありうる。かかる処方は、嗅ぎ薬が吸われる方法、すなわち、鼻に近づけた該粉末の容器から鼻腔を通る急速な吸入によって投与されうる。
経鼻投与に適した処方は、例えば、活性成分をわずか約0.1%(w/w)から100%(w/w)も含みうるとともに、本明細書に記載の1つ以上の追加成分を含みうる。医薬組成物は、口腔投与に適した処方で調製、包装、及び/または販売されうる。かかる処方は、例えば、従来法を用いて作製される錠剤及び/またはトローチの形態でよく、例えば、約0.1%から20%(w/w)の活性成分を含みうるとともに、その残部は、口腔内で溶解可能及び/または崩壊可能な組成物、並びに、任意に、本明細書に記載の1つ以上の追加成分を含みうる。あるいは、口腔投与に適した処方は、活性成分を含む粉末、並びに/またはアエロゾル化並びに/もしくは霧状の溶液及び/もしくは懸濁液を含みうる。かかる粉末、アエロゾル化、及び/または霧状処方は、分散時、約0.1nmから約200nmに及ぶ平均粒径及び/または液滴サイズを有しうるとともに、さらに、本明細書に記載の追加成分のいずれか1つ以上を含んでもよい。
医薬品の処方及び/または製造における概論は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 21st ed., Lippincott Williams & Wilkins, 2005(参照することによって全体が本明細書に組み込まれる)に見出されうる。
コーティングまたはシェル
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒の固体剤形は、腸溶性コーティング及び医薬製剤分野で周知の他のコーティング等のコーティング並びにシェルを用いて調製されうる。それらは、任意に乳白剤も含んでよく、また、該(1つまたは複数の)活性成分のみを、または該(1つまたは複数の)活性成分を優先的に、消化管の特定の部位で、任意に遅延方式で放出する組成物でありうる。使用可能な包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックス類が挙げられる。同様の種類の固形組成物は、ラクトースまたは乳糖、及び高分子量のポリエチレングリコール等の賦形剤を用いる軟質並びに硬質ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用されうる。
医薬組成物及び使用方法
本開示の実施形態はまた、本明細書に記載の技術並びに組成物及び組成物の組合せのいずれかによって、過剰増殖性疾患、がん、及び/または腫瘍を治療することに関する。
様々な実施形態では、がんを有する対象の治療法を提供する。本方法は、治療有効量のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体を、本明細書に記載の通り、がんを有する、がんの疑いがある、もしくはがんの素因を有する対象に投与することを含む。本発明によれば、がんは、無制御な細胞増殖、例えば過剰増殖によって特徴づけられる任意の疾患または疾病を包含する。がんは、腫瘍、例えば、固形腫瘍または任意の新生物に特徴づけられてもよい。
いくつかの実施形態では、該対象は、特に該Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体による治療適用でなくてもよい。いくつかの実施形態では、方法は、限定されないが、哺乳類のがん細胞等のがん細胞の使用を含む。いくつかの実施形態では、該哺乳類のがん細胞は、ヒトのがん細胞である。
いくつかの実施形態では、本開示のPt(IV)M化合物並びに/またはPt(IV)M複合体が、がん及び/もしくは腫瘍の増殖を阻害することが見出された。それらはまた、細胞増殖、侵襲性、及び/または転移を低減しうるため、それらをがん治療に有用にしている。
いくつかの実施形態では、本開示のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、腫瘍もしくはがんの増殖を防止するため、並びに/または腫瘍もしくはがんの転移を予防するために用いられうる。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、がんの縮小または破壊に用いられうる。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、がん細胞の増殖阻害に有用である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は、細胞増殖の阻害、例えば、細胞増殖速度の抑制、細胞増殖の阻止、及び/または細胞死の誘導に有用である。一般に、本明細書に記載の化合物は、がん細胞の細胞増殖の阻害、または、がん細胞の増殖阻害及び/もしくは細胞死の誘導の両方が可能である。
本開示の方法で治療可能ながんは、通常、哺乳類で生じる。哺乳類としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びウシが挙げられる。様々な実施形態では、該がんは、肺がん、例えば、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平上皮肺がん、乳がん、非BRCA関連乳がん、結腸直腸がん、結腸がん、卵巣がん、膵臓がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮頚がん、腎臓がん(renal cancer)、白血病、中枢神経系のがん、骨髄腫、黒色腫、中皮腫、胃がん、直腸がん、大腸のがん、小腸のがん、食道がん、子宮がん、頭頸部がん、子宮体がん、眼のがん、甲状腺がん、精巣がん、胆管がん、肝臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、下垂体がん、リンパ腫、脳がん、神経膠腫、多形神経膠芽腫、髄膜腫、髄芽腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、皮膚の基底細胞がん、非上皮性悪性腫瘍、滑膜肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、軟骨肉腫、及び線維肉腫である。いくつかの実施形態では、該がんは、肺がんである。特定の実施形態では、該がんは、ヒトの肺がん、卵巣がん、膵臓がん、または結腸直腸がんであって、これらがんの変異型BRCA1及び/もしくは変異型BRCA2もしくは非BRCA関連形態を含む。
いくつかの実施形態では、本開示のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、BRCA1変異、BRCA2変異、ERCC1もしくはERCC2の変異、ファンコーニ貧血遺伝子の変異、MLH1、MSH2、PTEN、DNA修復に関与する遺伝子タンパク質をコードする遺伝子の変異、非相同DNA修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異、ヌクレオチド除去修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異、DNAミスマッチ修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異を有するがん細胞、DNA修復に欠陥を有する腫瘍を同定する遺伝子検査、ERCC1もしくはERCC2等のDNA修復に関与する遺伝子の発現の変化を有する腫瘍を同定する遺伝子検査、等に投与されうる。これらの変異は、生殖細胞系または体細胞でありうる。
別の態様において、本開示のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、アルブミンの取り込みが上昇した細胞、例えば、限定されないが、微飲作用を増加させる変異を有する細胞、マイトジェン活性化キナーゼ経路の変異を有する細胞、KRAS変異を有する細胞、BRAF変異を有する細胞、RAC変異を有する細胞、RASの過剰発現を有する細胞、RAC1活性化細胞、またはCDC42活性化細胞に投与されうる。
いくつかの実施形態では、アルブミンの取り込みが上昇した細胞は、画像化技術を用いて同定されうる。例えば、造影剤を患者に投与し、腫瘍部位での該造影剤の蓄積レベルを画像化技術を用いて測定する。該画像化技術は、超音波、X線、単一光子放出断層撮影/コンピュータ断層撮影(SPECT/CT)、陽電子放出断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET/CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放出断層撮影(SPECT)、蛍光断層撮影法、及び蛍光分光法でよい。
さらに別の態様において、本開示のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、血管透過性滞留性亢進(EPR)効果が高レベルの腫瘍に対して投与されうる。いくつかの実施形態では、血管透過性滞留性亢進効果が高レベルの腫瘍は、映像化技術によって同定されうる。非限定的な例として、酸化鉄ナノ粒子磁気共鳴画像法を患者に施すことができ、EPR効果が測定される。
いくつかの実施形態では、本開示のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体は、参照することによってその内容が全体として本明細書に組み込まれるWO2015017506に開示された方法で選択された対象に投与することができる。該方法は:
(a)該対象に造影剤を投与し;
(b)少なくとも1つの治療目的部位での該造影剤の蓄積レベルを測定し;
(c)該造影剤の蓄積レベルを基にして該対象を選択することを含み、ここで、該治療目的部位は腫瘍である。
キット及び装置
本発明は、本発明の方法を都合よく及び/または効果的に行うための様々なキット及び装置を提供する。通常、キットは、使用者が、(1または複数の)対象の複数の処理を行うのに、及び/または複数の実験を行うのに十分な量及び/もしくは数の成分を含む。
一実施形態では、本発明は、インビトロもしくはインビボで、腫瘍細胞の増殖を阻害するための、本発明のPt(IV)M化合物及び/もしくはPt(IV)M複合体、または本発明のPt(IV)M化合物及び/もしくはPt(IV)M複合体の組合せを、任意に他の活性薬剤との組合せで含むキットを提供する。
該キットは、さらに、製剤組成物を形成するための包装並びに取扱説明書及び/または供給剤を含みうる。該供給剤は、生理食塩水、緩衝液、または本明細書に開示の任意の供給剤を含みうる。各成分の量を変えて、一貫した再現可能な高濃度生理食塩水または単純緩衝液製剤を可能にしてもよい。さらに、該成分を変化させ、該緩衝液中での経時的な、及び/または様々な条件下でのPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体の安定性を増大させてもよい。
本発明は、本発明のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体を組み込みうる装置を提供する。これら装置は、それを必要とする対象、例えばヒトの患者に直ちに供給できる安定な処方で含む。いくつかの実施形態では、該対象はがんを有する。
該装置の非限定的な例としては、ポンプ、カテーテル、針、経皮パッチ、加圧された嗅覚供給装置、イオン導入装置、多層マイクロ流体素子が挙げられる。該装置を用い、本発明のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体を、単回、複数回、または分割投与レジメンに従って供給してよい。該装置を用い、本発明のPt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体を、生体組織に、皮内、皮下、または筋肉注射で供給してよい。Pt(IV)M化合物及び/またはPt(IV)M複合体を供給するのに適した装置のさらなる例としては、限定されないが、国際公開第WO2014036555号に開示の嚢内薬物送達用医療装置、米国公開第20080108697号に開示のI型ガラス製のガラス瓶、米国公開第20140308336号に開示の分解性ポリマー及び活性薬剤からなるフィルムを含む薬物溶出装置、注入マイクロポンプまたは米国特許第5716988号に開示の通り活性薬剤の医薬的に安定な製剤を含む容器を有する注入装置、国際公開第WO2015023557号に開示の通り、リザーバ及び該リザーバと流体連結している溝形成部材を含む移植可能な装置、米国公開第20090220612号に開示の通り、1層以上の中空繊維ベースの生体適合性薬物送達装置、国際公開第WO2013170069号に開示の通り、薬剤を固体または半固体の形態で含むリザーバを画定する筐体を有する細長く柔軟な装置を具備する薬物送達用の移植可能な装置、米国特許第7326421号に開示の生体吸収性インプラント装置が挙げられる。これらの各々の内容は、参照することによって全体が本明細書に組み込まれる。
以下の実施例は、本発明を説明することを意図し、限定することを意図しないことが理解されよう。様々な他の実施例並びに前述の説明及び実施例の変更は、当業者には、本開示を読んだ後、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく明らかになろう。また、かかる例または変更のすべては、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本明細書に参照されたすべての刊行物及び特許は、参照することによって全体が本明細書に組み込まれる。
実施例1:HPLC分析法の説明
C18逆相HPLCによる生成物の分析(A法)。このHPLC分析は、SunFire(商標)C18逆相カラム(4.6×50mm、3.5μm)(ウォーターズ社、マサチューセッツ州ミルフォード)にて、水+0.01%TFA(溶媒A)及びアセトニトリル+0.01%トリフルオロ酢酸(TFA)(溶媒B)からなる移動相を用い、流量2.0mL/分、並びにカラム温度50℃で行った。注入容量は10μLであり、分析物は220及び254nmのUVを用いて検出した。初期勾配は、溶媒B5%であって、1.4分で溶媒B95%まで増加させ、その後1.6分間溶媒B95%で維持した。すべての溶媒はHPLCグレードであった。
C18逆相HPLC(RPHPLC)による生成物の分析(B法)。RPHPLC分析は、Zorbax(登録商標)Eclipse XDB−C18逆相カラム(4.6×100mm、3.5μm、Agilent PN:961967−902、Agilent Technologies、カリフォルニア州サンタクララ)にて、水+0.1%TFA(溶媒A)及びアセトニトリル+0.1%TFA(溶媒B)からなる移動相を用い、流量1.5mL/分、並びにカラム温度35℃で行った。注入容量は10μLであり、分析物は220及び254nmのUVを用いて検出した。初期勾配は、溶媒B5%であって、6分で溶媒B95%まで増加させ、2分間溶媒B95%で維持し、その後溶媒B5%に戻し、2分間維持した。
実施例2:アセテート6‐(2,5‐ジオキソ‐2H‐ピロール‐1(5H)‐イル)ヘキサノエートオキサリプラチンの合成
ヒドロキシ(アセトキシ)オキサリプラチン(150mg、0.317mmol、1.0当量)、6‐(2,5‐ジオキソ‐2,5‐ジヒドロ‐1H‐ピロール‐1‐イル)ヘキサン酸(73.6mg、0.349mmol、1.10当量)、及び1‐シアノ‐2‐エトキシ‐2‐オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU(登録商標))(149mg、0.349mmol、1.10当量)をジメチルホルムアミド(DMF)(6.3mL)中で混合し、N‐メチルモルホリン(38μL、0.349mmol、1.1当量)を加えた。この反応混合物を室温で2時間攪拌した。この反応物をその後濃縮乾固し、この残渣をC18カラム(30g)に直接ロードし、0〜30%のMeCN/HO勾配にて15分で溶出した。生成物を含む画分をロータリーエバポレーターで濃縮し、この残渣をCHCl及びメチルtert‐ブチルエーテルTBME中で粉砕し、黄色固体を得た。この生成物を、シリカゲルカラム(4g)を用い、0〜10%のMeOH/CHCl勾配にて15分で溶出して再度精製した。この生成物を含む画分を合わせ、濃縮し、MeCN/HOで希釈し、凍結乾燥して生成物を白色固体として得た(24.0mg、収率11%、純度97%);H NMR (500 MHz, DO) δ 8.92−8.37 (m, 4H), 7.01 (s, 2H), 3.46−3.41 (m, 2H), 2.92−2.80 (m, 2H), 2.37−2.29 (m, 2H), 2.27−2.21 (m, 2H), 1.94 (s, 3H), 1.67−1.56 (m, 4H), 1.55−1.45 (m, 4H), 1.33−1.26 (m, 2H), 1.26−1.20 (m, 2H); HPLC−MS 97%.C202910Pt [(M+1)+]に対するm/z = 667.3.
実施例3:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物2の合成
ステップ1:オキサリプラチン(300mg、0.76mmol、1.0当量)をメトキシ酢酸(3.40g、37.8mmol、50当量)に懸濁し、その後過酸化水素(30%w/w水溶液、0.13mL、3.8mmol、5.0当量)を加え、溶液を1時間攪拌した。ジエチルエーテルを加え、得られた沈殿物をろ過し、乾燥して白色固体(400mg)を得た。
ステップ2:6‐マレイミドヘキサン酸(126mg、0.596mmol、1.0当量)をテトラヒドロフラン(THF)(5mL)に懸濁し、その後4‐メチルモルホリン(65μL、0.596mmol、1.0当量)に続いてクロロギ酸イソブチル(77μL、0.596mmol、1.0当量)を加えた。この溶液を室温で1時間攪拌し、その後水(10mL)及びEtOAc(10mL)を加え、層を分離した。この有機層をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。このメトキシアセテートヒドロキシオキサリプラチン(300mg、0.596mmol、1.00当量)をDMF(1mL)に溶解し、その後活性化エステルを加え、溶液を室温で2時間攪拌した。この粗生成物を逆相クロマトグラフィー(MeCN/HO、0.2%AcOH)で精製し、所望の生成物を得、これを凍結乾燥し、凍結乾燥粉体を得た(115mg、収率28%)。HPLC/MS (A法): 1.333分, M+H = 696.2, 697.2, 698.3.
実施例4:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物3の合成
本明細書に開示の化合物の別の例を、オキサリプラチン(1.0g、2.52mmol、1当量)から、これを酢酸(6mL,100mmol、40当量)に溶解し、30%H(1mL、12.6mmol、5当量)と反応させて合成した。この反応混合物をアルミ箔で覆い、室温で24時間攪拌した。この反応に続いて、さらなる酢酸(3mL、50mmol、20当量)及び30%H(1mL、12.6mmol、5当量)を加え、この反応混合物をさらに24時間攪拌した。この懸濁液をろ過し、白色固体残渣をジエチルエーテル(EtO)で洗浄してヒドロキシ(アセトキシ)オキサリプラチン(878mg、収率74%、純度70%)を得た。H NMR (500 MHz, DMF−d7) δ 10.42 (brs, 2H), 8.93 (m, 1H), 8.39 (brs, 1H), 7.96 (brs, 1H), 7.26 (brs, 1H), 2.91−2.80 (m, 2H), 2.31−2.22 (m,2H), 1.98 (s, 3H), 1.89 (s, 3H), 1.73−1.49 (m, 4H), 1.34−1.21 (m, 2H); HPLC−MS 91%, C1018Pt [(M+H)]に対するm/z = 474.2.
ヒドロキシ(アセトキシ)オキサリプラチン(200mg、0.422mmol、1.0当量)及びDMF(1.10mL)を丸底フラスコに入れた。室温で、イソシアネート(176mg、0.845mmol、2.0当量)のDMF(1.0mL)溶液を一度に加え、この反応物を室温で2時間攪拌した。HPLCでの追跡で、出発物質中のビスヒドロキシオキサリプラチンの存在のために、この反応が約30%のビス付加物も産生して完了することが示された。水(8.0mL)をこの反応混合物に加え、この溶液を直接C18カラム(60g)にロードした。この反応混合物を、0〜40%のMeCN/HO勾配を12カラム容積用いて精製した。この化合物は、26%MeCN/HOで溶出された。純粋な画分を合わせて凍結乾燥し、生成物を白色固体として得た(157.6mg、55%);H NMR (500 MHz, DMF−d7) δ 10.10 (s, 1H), 8.92 - 8.63 (m, 2H), 8.35 (s, 1H), 7.07 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 7.01 (s, 2H), 3.44 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.09 - 2.95 (m, 2H), 2.90 - 2.84 (m, 2H), 2.33 (t, J = 11.4 Hz, 2H), 1.94 (s, 3H), 1.67 - 1.14 (m, 12H); HPLC−MS 98.6%. C203010Pt [(M+1)]に対するm/z = 682.3.
実施例5:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物4の合成
メトキシ酢酸(42mg、0.464mmol、1.00当量)をTHF(3mL)に懸濁し、その後、4‐メチルモルホリン(51μL、0.464mmol、1.00当量)に続いてクロロギ酸イソブチル(60μL、0.464mmol、1.00当量)を加えた。この溶液を室温で1時間攪拌し、その後水(5mL)及びEtOAc(5mL)を加え、層を分離した。この有機層をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。ジヒドロキシオキサリプラチン(200mg、0.464mmol、1.00当量)をDMSO(4mL)に懸濁し、その後この活性化エステルを加え、溶液を室温で3日間攪拌した。残留固体をろ過し、その後このろ液にジエチルエーテル(10mL)を加え、層の分離に先立って5分間攪拌した。アセトン(20mL)をこのDMSO層に加え、固体を沈殿させた。5分間攪拌した後、この固体をろ過し、アセトンで洗浄し、真空下で乾燥し、オフホワイトの固体(105mg)を得た。
2‐メトキシアセテートヒドロキシルオキサリプラチン(105mg、0.21mmol、1.0当量)をDMF(1mL)に溶解し、その後1‐(5‐イソシアナートペンチル)‐1H‐ピロール‐2,5‐ジオン(65mg、0.31mmol、1.5当量)を加え、この溶液を室温で16時間攪拌した。この粗生成物を逆相クロマトグラフィー(MeCN/HO、0.2%AcOH)で精製し、所望の生成物を凍結乾燥粉体(67mg)として得た。HPLC/MS (A法): 1.203分, M+H = 711.2, 712.2, 713.3.
実施例6:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物5の合成
6‐マレイミドヘキサン酸(844mg、4.0mmol、2.0当量)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(822mg、4.0mmol、2.0当量)をバイアルに充填し、DMF(10mL)に溶解した。この溶液を30分間攪拌し、この間に沈殿が生じた。この固体をろ過し、このろ液をDMF(10mL)に懸濁したジヒドロキシオキサリプラチン(862mg、2.0mmol、1.0当量)に加え、溶液を室温で4時間攪拌した。この懸濁液をろ過し、その後エチルイソシアネート(EtNCO)(206mL、4.0mmol、2.0当量)をろ液に加え、溶液を室温で30分間攪拌した。その後溶媒を蒸発させ、この残渣をシリカゲル(2〜7%MeOH/DCM(ジクロロメタン))にて精製した。濃縮した純粋な画分をMeOH(2mL)に溶解し、TBME(50mL)に加えて白色沈殿を得、これをろ過し、乾燥した。所望の生成物を白色固体(340mg)として得た。HPLC/MS (B法): 3.81分, M+H = 695, 696, 697.
実施例7:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物6の合成
ヒドロキシ(アセトキシ)(DACH)PtCl:(DACH)PtCl(1.00g、2.63mmol、1.0当量)及び尿素ヒドロペルオキシド(UHP)(1.24g、13.15mmol、5.0当量)を丸底フラスコに入れた。AcOH(13mL)及びHO(13mL)を加え、この反応物を室温で一夜攪拌した。この黄色反応混合物溶液をその後濃縮乾固した。HPLC−MSによる追跡によって、出発物質がまだ存在していることが分かった。得られた粗固体を約10mLのMeOHに懸濁し、DCMをゆっくりと加えて懸濁液を得た。30分間攪拌した後、この固体をブフナー漏斗でろ過し、所望の化合物をオフホワイト固体として得た(410mg、34.2%)。HPLC−MS 93%, C18ClPt [(M+1)]に対するm/z = 457.2.
ヒドロキシ(アセトキシ)(DACH)PtCl(200mg、0.438mmol、1.0当量)及びDMF(3.0mL)を丸底フラスコに入れた。室温で、1‐(5‐イソシアナートペンチル)‐1H‐ピロール‐2,5‐ジオン(273mg、1.31mmol、3.0当量)のDMF(1.40mL)溶液を一度に加え、この反応物を室温で一夜攪拌した。翌日、HPLCによる追跡でこの反応が完了したことが示された。この反応混合物をC18カラム(60g)に直接ロードし、0〜60%のMeCN/HO勾配を15カラム容積用いて精製した。この化合物は、32%MeCN/HOで溶出された。純粋な画分を合わせて凍結乾燥し、生成物を白色固体として得た(182mg、63%)。H NMR (500 MHz, DMF−d7) δ 10.94 (s, 1H), 9.74 (s, 1H), 8.43 (s, 1H), 8.11 (s, 1H), 7.05 (t, J = 6.0 Hz, 1H), 7.03 - 7.00 (m, 2H), 3.47 - 3.42 (m, 2H), 3.10 - 2.94 (m, 2H), 2.90 - 2.80 (m, 1H), 2.44 - 2.30 (m, 2H), 1.93 (s, 3H), 1.69 - 1.37 (m, 9H), 1.37 - 1.15 (m, 4H); HPLC−MS 95.4%, C1830ClPt [(M+1)]に対するm/z = 665.2.
実施例8:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物7の合成
6‐マレイミドヘキサン酸(285mg、1.35mmol、1.00当量)をTHF(10mL)に懸濁し、その後4‐メチルモルホリン(148μL、1.35mmol、1.00当量)に続いてクロロギ酸イソブチル(175μL、1.35mmol、1.00当量)を加えた。この溶液を室温で1時間攪拌し、その後水(20mL)及びEtOAc(20mL)を加え、層を分離した。ジヒドロキシシスプラチン(450mg、1.35mmol、1.00当量)をDMSO(8mL)に懸濁し、その後活性化エステルを加え、この溶液を室温で3日間攪拌した。エチルイソシアネート(500μL、9.7mmol、7.0当量)をDMF(2mL)溶液として加え、溶液を室温で1時間攪拌した。この生成物を逆相クロマトグラフィー(MeCN/HO、0.2%AcOH)で精製し、所望の生成物を凍結乾燥粉体(160mg)として得た。HPLC/MS (A法): 1.473分, M+H = 597.1, 598.1 599.1.
実施例9:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物8の合成
ヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチンは、シスプラチン(5.0g、16.7mmol、1.0当量)を酢酸(40mL、667mmol、40当量)に懸濁し、30%H(6.5mL、83.5mmol、5当量)と反応させて合成した。この反応混合物をアルミ箔で覆い、室温で24時間攪拌して黄色固体を得、これをろ過し、EtOで洗浄して2.86gのヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチン酢酸錯体を得た(収率37%)。H NMR (500 MHz, DMSO) δ 6.57−6.10 (m, 6H), 2.33 (s, 3H), 2.29 (s, 3H); HPLC−MS 100%, C10ClPt [(M+H)]に対するm/z = 377.0.
ヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチン酢酸錯体(100mg、0.229mmol、1.00当量)及びDMF(1.0mL)を丸底フラスコに入れた。室温で、1‐(5‐イソシアナートペンチル)‐1H‐ピロール‐2,5‐ジオン(111mg、0.532mmol、2.32当量)のDMF(0.8mL)溶液をその後一度に加え、反応物を室温で一夜攪拌した。水(4.0mL)をこの反応混合物に加え、この溶液をC18カラム(60g)に直接ロードした。この反応混合物を、0〜80%のMeCN/HO勾配を15カラム容積用いて精製した。この化合物は、30%MeCN/HOで溶出された。純粋な画分を合わせて凍結乾燥し、化合物8を白色固体として得た(117.0mg、収率87%)。H NMR (500 MHz, DMF−d7) δ 7.19 - 6.75 (m, 9H), 3.45 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.04 - 2.95 (m, 2H), 1.90 (s, 3H), 1.59 - 1.50 (m, 2H), 1.49 - 1.37 (m, 2H), 1.34 - 1.20 (m, 2H); HPLC−MS 96.7%. C1222ClPt [(M+H)]に対するm/z = 585.2.
実施例10:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物9の合成
ステップ1:シスプラチン(300mg、1.00mmol、1.00当量)をメトキシ酢酸(4.5g、50mmol、50当量)に懸濁し、その後過酸化水素(30%w/w水溶液、0.57mL、5mmol、5.0当量)を加え、この溶液を2日間攪拌した。その後ジエチルエーテルを加え、得られた沈殿をろ過し、乾燥して、ジメトキシアセテートシスプラチンとメトキシアセテートヒドロキシシスプラチンの混合物(1.5:1)を得た。この白色固体(400mg)をDMF(10mL)に懸濁し、次のステップに用いた。活性化エステルを調製するため、6‐マレイミドヘキサン酸(316mg、1.5mmol、1.0当量)をTHF(10mL)に懸濁し、その後4‐メチルモルホリン(165μL、1.5mmol、1.0当量)に続いてクロロギ酸イソブチル(194μL、1.5mmol、1.0当量)を加えた。この溶液を室温で1時間攪拌し、その後水(20mL)及びEtOAc(20mL)を加え、層を分離した。この有機層をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。得られた活性化エステルをDMF(2mL)に溶解し、メトキシアセテートヒドロキシシスプラチン溶液に加え、室温で2時間攪拌し、その後逆相クロマトグラフィー(MeCN/HO、0.2%AcOH)で精製し、所望の生成物を凍結乾燥粉体(115mg)として得た。HPLC/MS (A法): 1.199分, M+H = 599.0, 600.0, 601.1.
実施例11:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物10の合成
ステップ1:シスプラチン(250mg、0.83mmol、1.00当量)をメトキシ酢酸(3.75g、41.7mmol、50.0当量)に懸濁し、その後過酸化水素(30%w/w水溶液、0.47mL、4.17mmol、5.0当量)を加え、溶液を2日間攪拌した。ジエチルエーテルを加え、得られた沈殿をろ過し、乾燥してジメトキシアセテートシスプラチンとメトキシアセテートヒドロキシシスプラチンの混合物(1.5:1)を得た。この白色固体(350mg)をDMF(1mL)に溶解し、その後イソシアネート(260mg、1.25mmol、1.50当量)を加え、この溶液を室温で2時間攪拌した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(MeCN/H2O、0.2%AcOH)で精製し、所望の生成物を凍結乾燥粉体(139mg)として得た。HPLC/MS (A法): 1.184分, M+H = 614.1, 615.1, 616.1.
実施例12:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物11の合成
DMF(0.035M、15mL)に懸濁されたヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチン酢酸錯体(200mg、0.459mmol、1.00当量)に、6‐マレイミドヘキサン酸(130mg、0.61mmol、1.33当量)に続いてN‐メチルモルホリン(67μL、0.61mmol、1.33当量)及びCOMUペプチドカップリング試薬(263mg、0.61mmol、1.33当量)を加えた。この反応混合物を室温で15時間攪拌した。得られた透明黄色溶液を減圧下濃縮した。得られた残渣を水(20mL)で希釈し、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)(2×15mL)で2回洗浄した。この水層をおよそ5mLの残留体積まで減圧下濃縮した。この生成物を含む溶液を予め充填されたC−18カートリッジ(30g)上に注入し、逆相系で、15〜50%(MeCN/水)の15分の勾配で溶出した。純粋な回収画分を合わせ、減圧下濃縮し、残留水を凍結乾燥で除去し、化合物11をオフホワイト固体として得た(119mg、46%)。H NMR (500 MHz, DMF−d) δ (ppm): 7.02 (s, 2H), 7.03−6.67 (m, 6H), 3.44 (t, J=7.3Hz, 2H), 2.22 (t, J=7.3Hz, 2H), 1.90 (s, 3H), 1.57−1.46 (m, 4H), 1.31−1.23 (m, 2H). HPLC−MS 99%, C1221ClPt [(M+H)]に対するm/z = 570.2.
実施例13:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物12の合成
ヒドロキシ(6‐(2,5‐ジオキソ‐2H‐ピロール‐1(5H)‐イル)ヘキサノエート)シスプラチンの合成。シスプラチン(200mg、0.67mmol、1.00当量)をエタノール(1mL)に懸濁し、6‐(2,5‐ジオキソ‐2,5‐ジヒドロ‐1H‐ピロール‐1‐イル)ヘキサン酸(703mg、3.33mmol、5.00当量)に続いて30%H(160μL、2.01mmol、3.00当量)を加えた。この反応混合物をアルミ箔で覆い、室温で60時間攪拌した。この反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、DMFに溶解し、C18カラム(30g)に直接ロードし、0〜40%のMeCN/HO勾配で15分かけて溶出した。純粋な画分を合わせ、凍結乾燥してヒドロキシ(6‐(2,5‐ジオキソ‐2H‐ピロール‐1(5H)‐イル)ヘキサノエート)シスプラチンを黄色固体(90.4mg)として得た;HPLC−MS C1019ClPt [(M+H)+]に対するm/z = 528.2.
2‐(2‐メトキシエトキシ)アセテート6‐(2,5‐ジオキソ‐2H‐ピロール‐1(5H)‐イル)ヘキサノエートシスプラチン:ヒドロキシ(6‐(2,5‐ジオキソ‐2H‐ピロール‐1(5H)‐イル)ヘキサノエート)シスプラチン(140mg、0.265mmol、1.00当量)、3,6‐ジオキサヘプタン酸(39.0mg、0.292mmol、1.10当量)、及びCOMU(125mg、0.292mmol、1.10当量)をDMF(5mL)中混合し、次いで、N‐メチルモルホリン(32μL、0.29mmol、1.1当量)を加えた。この反応混合物を室温で一夜攪拌した。この反応混合物をその後水で希釈し、この水層をMTBEで洗浄した。この水層を濃縮乾固し、水に溶解し、C18カラム(30g)に直接ロードし、0〜30%のMeCN/HO勾配で15分かけて溶出した。生成物を含む画分をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。この残渣をシリカゲルに吸着させ、シリカゲルカラム(24g)を用い、97〜70%MeCN/HO勾配で15分かけて溶出して精製した。生成物を含む画分を濃縮し、この残渣をシリカゲルに吸着させ、シリカゲルカラム(4g)を用い、0〜10%MeOH/CHCl勾配で15分かけて溶出して精製した。生成物を含む画分を濃縮し、この残渣をMeCN/HOで希釈し、凍結乾燥して生成物、すなわち化合物12を黄色固体として得た(31.8mg、収率19%);H NMR (500 MHz, DO) δ 6.85 (s, 2H), 4.26 (s, 2H), 3.75−3.72 (m, 2H), 3.67−3.64 (m, 2H), 3.55−3.50 (m, 2H), 3.40 (s, 3H), 2.45−2.38 (m, 2H), 1.62−1.55 (m, 4H), 1.35−1.25 (m, 2H); HPLC−MS 97%.C1527ClPt [(M+H)+]に対するm/z = 644.2.
実施例14:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物13の合成
オキサリプラチン(2.05g、5.00mmol、1.00当量)を2‐メトキシエトキシ酢酸(22.7mL、200mmol、40.0当量)に懸濁し、その後過酸化水素(30%w/w水溶液、0.775mL、25mmol、5.0当量)を添加し、溶液を16時間攪拌した。MTBE(175mL)を加え、そのろ液をデカントした。この粘着性残渣をDMF(5mL)に溶解し、EtOAc(125mL)に滴下した。得られた沈殿をろ過し、EtOAc(3×20mL)ですすぎ、真空下で乾燥し、白色固体(1.75g)を得た。HPLC/MS(B法):2.29分, M+H = 547, 548, 549 及び 2.81分, M+H = 663, 664, 665.この固体は、所望の生成物とビスアシル化生成物の1:1混合物からなり、次のステップ用に、その組成物に用いた。
2‐ヒドロキシエチルマレイミド(120mg、0.85mmol、2.00当量)をTHF(4.0mL)に懸濁し、その後N‐メチルモルホリン(93μL、0.85mmol、2.0当量)に続いて無水コハク酸(85mg、0.85mmol、2.0当量)を加えた。この溶液を室温で16時間攪拌し、その後N‐メチルモルホリン(93μL、0.85mmol、2.0当量)に続いてクロロギ酸イソブチル(110μL、0.85mmol、2.0当量)を加え、この溶液を室温で45分間攪拌した。水(10mL)及び酢酸エチル(10mL)を加え、層を分離した。溶媒をその後蒸発させ、次にこの活性化エステルをDMFに溶解し、ヒドロキシ(2‐メチルエトキシアセトキシ)オキサリプラチン(IV)(233mg、0.43mmol、1.0当量)を加え、溶液を50℃で18時間攪拌した。この混合物から溶媒を蒸発させ、粗生成物をシリカゲル(0〜8%MeOH/DCM勾配)にて精製し、残留MeOHを含む所望の生成物を得た。この残渣をMeOH(2mL)に溶解し、得られた溶液をTBME(50mL)に加えて白色沈殿(化合物13)を得、これをろ過し、真空下で乾燥した。化合物13がオフホワイト固体として得られた(131mg、収率40%)。HPLC/MS (B法): 3.41分, M+H = 771.
実施例15:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物14の合成
2‐ヒドロキシエチルマレイミド(120mg、0.85mmol、2.3当量)をTHF(4mL)に懸濁し、その後N‐メチルモルホリン(93μL、0.85mmol、2.3当量)に続いて無水コハク酸(85mg、0.85mmol、2.3当量)を加えた。溶液を室温で16時間攪拌し、その後N‐メチルモルホリン(93μL、0.85mmol、2.3当量)に続いてクロロギ酸イソブチル(110μL、0.85mmol、2.3当量)を加え、溶液を室温で45分間攪拌した。水(10mL)及び酢酸エチル(10mL)を加え、層を分離した。溶媒を蒸発させ、その後活性化エステルをDMFに溶解し、ヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチン(IV)酢酸錯体(160mg、0.367mmol、1.00当量)を加え、溶液を50℃で18時間攪拌した。この溶媒を蒸発させ、粗物質をシリカゲル(3〜8%MeOH/DCM勾配)にて精製し、残留MeOHを含む所望の生成物を得た。この残渣をMeOH(1mL)に溶解し、溶液をTBME(50mL)に加えて白色沈殿を得、これをろ過し、減圧下で乾燥した。化合物14がオフホワイト固体として得られた(83mg、収率38%)。HPLC/MS (B法): 3.21分, M+H = 600.
実施例16:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物15の合成
アセトキシオキサリプラチン(4‐アセチルフェニル)カルボキシレート:
アセトキシ(ヒドロキシ)オキサリプラチン(409mg、0.86mmol、1.00当量)、4‐アセトキシ安息香酸(170mg、1.03mmol、1.20当量)、及びCOMU(444mg、1.03mmol、1.20当量)をDMF(0.1M、8mL)に懸濁し、N‐メチルモルホリン(114μL、1.03mmol、1.20当量)を室温で加えた。この反応混合物を室温で16時間攪拌した。この反応混合物を濃縮し、残渣をシリカゲル上で懸濁させ、シリカゲルカラム(40g)を用いた順相クロマトグラフィーにより、5〜20%MeOH/CHCl勾配で15分かけて溶出して精製した。純粋な画分を合わせ、真空中で濃縮し、生成物をオフホワイト固体として得た(328mg、61%、純度94.8%)。HPLC−MS 94.8%, C1924Pt [(M+H)+]に対するm/z = 620.2.
アセテート4‐(1‐(2‐(6‐(2,5‐ジオキソ‐2H‐ピロール‐1(5H)‐イル)ヘキサノイル)ヒドラゾノ)エチル)ベンゾエートオキサリプラチンは、アセトキシオキサリプラチン(4‐アセチルフェニル)カルボキシレート(328mg、0.529mmol、1.00当量)を用い、これをDMF(0.05M、10mL)に溶解し、6‐(2,5‐ジオキソ‐2,5‐ジヒドロ‐1H‐ピロール‐1‐イル)ヘキサンヒドラジドTFA塩(359mg、1.05mmol、2.00当量)と反応させて合成した。この反応混合物を室温で16時間攪拌した。粘着物質が生成するまでMTBEをこの反応混合物に加え、この溶媒をデカントした。この粘着性残渣にさらにMTBEを加え、この粘着物質が黄色固体になるまでこの混合物を超音波浴でインキュベートした。この固体をろ過し、MTBEですすぎ、化合物15を得た(126mg、29%、純度93.2%);1H NMR (500 MHz, DMF−d7) δ 10.50 (s, 0.4H), 10.42 (s, 0.6H), 8.95−8.44 (m, 4H), 7.92−7.88 (m, 4H), 7.03 (s, 0.8H), 7.02 (s, 1.2H), 3.62−3.35 (m, 6H), 2.46−2.33 (m, 5H), 1.98 (s, 3H), 1.78−1.50 (m, 8H), 1.43−1.22 (m, 4H); HPLC−MS 93.2%, C29H37N5O11Pt [(M+H)+]に対するm/z = 828.3.
実施例17:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物16の合成
最初にアセトキシオキサリプラチン(4‐アセチルフェニル)カルバメートをアセトキシ(ヒドロキシ)オキサリプラチン(243mg、0.51mmol、1.00当量)及びDMF(0.1M、5mL)に溶解した4‐アセチルフェニルイソシアネート(124mg、0.77mmol、1.50当量)を用いて合成した。この反応混合物を室温で一夜攪拌した。この反応混合物を濃縮し、シリカゲル上で含浸した。この粗生成物を、シリカゲルカラム(40g)を用いた順相クロマトグラフィーにより、5〜20%MeOH/CHCl勾配で15分かけて溶出して精製した。純粋な画分を合わせ、真空中で濃縮し、生成物を黄色固体として得た(241mg、74%、純度83%)。HPLC−MS 83.1%, C1925Pt [(M+H)+]に対するm/z = 635.2.
アセテート4‐(1‐(2‐(6‐(2,5‐ジオキソ‐2H‐ピロール‐1(5H)‐イル)ヘキサノイル)ヒドラゾノ)エチル)フェニルカルバメートオキサリプラチン:アセトキシオキサリプラチン(4‐アセチルフェニル)カルバメート(228mg、0.36mmol、1.00当量)をDMF(0.05M、7mL)に溶解し、6‐(2,5‐ジオキソ‐2,5‐ジヒドロ‐1H‐ピロール‐1‐イル)ヘキサンヒドラジドTFA塩(158mg、0.47mmol、1.30当量)と反応させた。この反応混合物を室温で16時間攪拌した。この反応混合物を濃縮し、その残渣をアセトニトリルとともに粉砕し、生成物を黄色粉体として沈殿させた。この粉体を最初にイソプロピルアルコール(iPrOH)と、その後DCMとともに粉砕し、所望の生成物を得た(70mg、23%、純度93.5%)。HPLC−MS 93.5%, C293811Pt [(M+H)+]に対するm/z = 842.3. H NMR (500 MHz, DMF−d) δ 10.34−10.15 (m, 1H), 9.91−9.66 (m, 1H), 9.37−9.24 (m, 1H), 8.88−8.66 (m, 2H), 8.59−8.48 (m, 1H), 7.80−7.73 (m, 2H), 7.61−7.53 (m, 2H), 7.04−6.98 (m, 2H), 3.50−3.43 (m, 2H), 3.14−3.02 (m, 1H), 2.75−2.70 (m, 1H), 2.43−2.25 (m, 6H), 2.01−1.92 (m, 3H), 1.74−1.53 (m, 9H), 1.42−1.24 (m, 4H).
実施例18:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物17の合成
アセトキシシスプラチン(4‐アセチルフェニル)カルボキシレート:ヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチン酢酸錯体(500mg、1.15mmol、1.0当量)、4‐アセチル安息香酸(240mg、1.46mmol、1.27当量)、及びCOMU(625mg、1.46mmol、1.27当量)、続いてN‐メチルモルホリン(160μL、1.46mmol、1.27当量)を室温でDMF(0.05M、25mL)に懸濁した。この反応混合物を室温で一夜攪拌すると、この懸濁液がゆっくりと黄色溶液になった。HPLC−MSで反応が未完であることが示され、さらなるCOMU(205mg、0.478mmol、0.42当量)及びN‐メチルモルホリン(160uL、1.46mmol、1.27当量)を加えた。この反応混合物をその後さらに3時間攪拌した。この反応混合物を濃縮し、その残渣を水に溶解し、予め充填されたC18の60g‐カラムを用いた逆相クロマトグラフィーにより、0〜30%MeCN/HO勾配で15分かけて溶出して精製した。純粋な画分を合わせ、凍結乾燥して生成物を黄色固体として得た(236mg、34%、純度80%)。この固体をMTBE中で粉砕し、アセトキシシスプラチン(4‐アセチルフェニル)カルボキシレートを得た(180mg、収率30%)。HPLC−MS 100%, C1116ClPt [(M+H)]に対するm/z = 523.1.
アセトキシシスプラチン(4‐アセチルフェニル)カルボキシレート(178mg、0.341mmol、1当量)をDMF(0.05M、6.8mL)に溶解し、6‐(2,5‐ジオキソ‐2,5‐ジヒドロ‐1H‐ピロール‐1‐イル)ヘキサンヒドラジドTFA塩(139mg、0.409mmol、1.2当量)と反応させた。この反応混合物を室温で5時間攪拌した。懸濁液が得られるまでMTBEをこの反応混合物に加え、黄色固体をろ過して化合物17を得た(159mg、64%、純度97%)。H NMR (500 MHz, DMF−d7) δ 10.48 (s, 0.3H), 10.40 (s, 0.6H), 7.97−7.92 (m, 2H), 7.91−7.86 (m, 2H), 7.24−6.77 (m, 6H), 7.02 (s, 2H), 3.50−3.44 (m, 2H), 2.77−2.72 (m, 1.4H), 2.44−2.38 (m, 0.6H), 2.40 (s, 2H), 2.37 (s, 1H), 1.94 (s, 3H), 1.73−1.64 (m,2H), 1.63−1.54 (m, 2H), 1.42−1.29 (m, 2H); HPLC−MS 98%, C2129ClPt [(M+H)]に対するm/z = 730.2.
実施例19:Pt(IV)Mモノマレイミド、化合物18の合成
アセトキシシスプラチン(4‐アセチルフェニル)カルバメートの合成:ヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチン酢酸錯体(300mg、0.688mmol、1.00当量)をDMF(0.05M、16mL)に懸濁し、その後4‐イソシアナートアセトフェノン(257mg、1.60mmol、2.33当量)を室温で加えた。この反応混合物を室温で一夜攪拌した。翌朝、この反応混合物を濃縮乾固し、その残渣を水とメタノールの混合物中で粉砕した。この懸濁液をろ過して、生成物及び4‐アセチルフェニル副産物18%を含む340mgの黄色固体を得た。この固体をDMFに溶解し、予め充填されたC18の60gカラムを用いた逆相クロマトグラフィーにより、0〜30%MeCN/H2O勾配で15分かけて溶出して精製した。純粋な画分を合わせ、凍結乾燥して生成物を黄色固体として得た(218mg、収率59%)。HPLC−MS 100%, C1117ClPt [(M+H)+]に対するm/z = 538.1.
アセトキシシスプラチン(4‐アセチルフェニル)カルバメート(215mg、0.400mmol、1.0当量)をDMF(0.05M、8mL)に溶解し、6‐(2,5‐ジオキソ‐2,5‐ジヒドロ‐1H‐ピロール‐1‐イル)ヘキサンヒドラジドTFA塩(163mg、0.480mmol、1.2当量)と室温で反応させた。この反応混合物を室温で一夜攪拌した。ジクロロメタンをこの反応混合物に加え、この懸濁液をろ過し、黄色固体を得た(230mg、収率77%、純度90.9%)。得られた残渣をMeCNとともに粉砕し、化合物18を黄色固体として得た(144mg、収率48%、純度97.3%)。H NMR (500 MHz, DMF−d7) δ 10.28 (s, 0.4H), 10.15 (s, 0.6H), 9.74 (brs, 1H), 7.79−7.72 (m, 2H), 7.61−7.54 (m, 2H), 7.22−6.81 (m, 6H), 7.02 (s, 2H), 3.50−3.44 (m, 2H), 2.74−2.70 (m, 1.2H), 2.40−2.35 ( m, 0.8H), 2.33 (s, 2H), 2.29 (s, 1H), 1.93 (s, 3H), 1.72−1.63 (m, 2H), 1.62−1.53 (m, 2H), 1.42−1.29 (m, 2H); HPLC−MS 97%, C2130ClPt [(M+H)+]に対するm/z = 745.2.
実施例20:Pt(IV)Mモノマレイミド化合物によるインビトロ細胞増殖阻害
ヒトがん細胞株を96ウェルプレート(Costar)に播種し、24時間後に化合物で48〜72時間処理した。具体的には、H460細胞(ATCC)をウェル当たり1,500細胞の濃度で播種し、化合物処理を48時間行った。化合物の開始用量は20μMであって、3倍連続希釈を計10点について行った。細胞増殖阻害は、CellTiter−Glo(登録商標)試薬を用い、標準的なプロトコル(Promega)及びGlomax(登録商標)multi+検出システム(Promega)を用いて測定した。増殖阻害パーセントは、以下の式を用いて算出した:阻害%=(対照−処理)/対照*100。対照は、溶媒のみと定義する。IC50曲線は、GraphPad Prism 6での非線形回帰分析(4パラメータ)を用いて作成した。
本開示の選択された化合物の各々は、0.0001μMと50μMの間のIC50を有する。例えば、表1に示す通り、化合物のいくつかの例は、シスプラチンより活性が低く、IC50値が10μMを超える。
これらのデータは、本明細書に記載のいくつかのPt(IV)M化合物が、これらの実験条件下でのがん細胞における細胞死の誘導について、シスプラチンと比較して効果が弱いことを示す。
実施例21:Pt(IV)Mモノマレイミド化合物の腫瘍増殖への影響
シスプラチンと比較して、インビトロでの細胞増殖に対する有効性は弱かったが、出願人らは、Pt(IV)Mモノマレイミド化合物のインビボでの活性を評価した。これらの実験ではヒトCalu−6 NSCLC(非小細胞肺がん)A2780(卵巣)、MIA Paca−2(膵臓)及びBxPC−3(膵臓)異種移植片の成長への化合物の影響能力を調べた。すべてのマウスは、ヒューマンケア及び実験動物の使用におけるOLAW公衆衛生局ポリシー並びに実験動物の管理と使用に関するILARガイドに従って処理し、チャールズ・リバー・ラボラトリーズ(ノースカロライナ州モリスビル)で行った。すべてのインビボ試験は、チャールズ・リバー施設内動物管理使用委員会によって承認されたプロトコルに従って行った。MX−1試験は、TD2(アリゾナ州スコッツデール)で行い、すべての手順は、トランスレーショナル医薬品開発機関動物管理使用委員会の機関のガイドラインの下で行った。A2780のインビボ試験については、10週齢のメスNCRヌードマウスの右脇腹に、1:1のRPMI 1640(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)/Matrigel(登録商標)(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)中の1千万細胞を皮下接種した。Calu−6のインビボ試験については、10週齢のメスNCRヌードマウスの右脇腹に、1:1のRPMI 1640/Matrigel中の500万細胞を皮下接種した。MIA Paca−2、BxPC−3のインビボ試験については、腫瘍材料をメスヌードNCRヌードマウスでの一連の生着によって維持した。腫瘍増殖を開始するため、1mm断片を各試験動物の右脇腹に皮下移植した。これら動物は、BxPC−3及びMIA Paca−2モデルについての試験の開始時、それぞれ9週齢及び10〜11週齢であった。MX−1のインビボ試験については、腫瘍材料を、無胸腺ヌードマウスにおける一連の生着によって維持した。腫瘍増殖を開始するため、3×3mmの小片を各試験動物の右脇腹に皮下移植した。これらの動物は、移植時、5週齢であった。
腫瘍測定は、ノギスを用い、週2回行った。腫瘍体積は式:V=0.5×幅×幅×長さを用いて算出した。
腫瘍が体積100mmに近づいたときに、マウスを無作為に10匹の3群に分けた。マウスを溶媒対照(10%のSolutol(登録商標)HS15生理食塩水溶液)、10mg/kgで化合物3または4、20mg/kgで化合物2、7、8、11、14、または30mg/kgで化合物13によって処理し;化合物5は、A2780及びCalu−6試験に対して、30mg/kgで静脈内注射によって与えた。化合物5は、BxPC−3及びMIA Paca−2試験に対しては15mg/kgで投与した。試験期間中、マウスに週2回投与した。化合物8は、MX−1試験に対して10mg/kg及び15mg/kg投与し、動物に、週2回、合計4回投与した。最後の投与の24時間後、腫瘍増殖阻害を算出するため、腫瘍体積を再度測定した。すべての統計分析は、GraphPad PRISM.RTM.バージョン6.00を用いて行った。最終的な腫瘍体積を一元配置分散分析及びテューキー多重比較検定を用いて分析した。
A2780モデルにおける8種の化合物の有効性データを図1〜3に示す。表2は、該8種の化合物並びに比較のシスプラチン及びオキサリプラチンについての本試験で観察された腫瘍増殖阻害パーセントを示す。すべての試験化合物は、本モデルにおいて、シスプラチン及びオキサリプラチンと比較して、腫瘍増殖阻害が増加した。
A2780モデルにおける化合物5の有効性データを図4に示す。表3は、化合物5並びに比較のシスプラチン及びオキサリプラチンについての本試験で観察された腫瘍増殖阻害パーセント(TGI%)を示す。
Calu−6モデルにおける化合物5の有効性データを図5に示す。表4は、化合物5並びに比較のシスプラチン及びオキサリプラチンについての本試験で観察された腫瘍増殖阻害パーセント(TGI%)を示す。
BxPC−3モデルにおける化合物5の有効性データを図15に示す。表4−2は、化合物5及び比較のオキサリプラチンについての本試験で観察された腫瘍増殖阻害パーセント(TGI%)を示す。この膵臓モデルは、KRASの野生型であり、これらのデータの結果は、表4−3、図16に示す結果と直接比較された。
MIA Paca−2モデルにおける化合物5の有効性データを図15に示す。表6は、化合物5及び比較のオキサリプラチンについての本試験で観察された腫瘍増殖阻害パーセント(TGI%)を示す。これらのデータは、KRAS変異型膵臓モデルであるMIA Paca−2において、化合物5は腫瘍増殖を有意に阻害することを示す。オキサリプラチンもまた、このモデルにおいて腫瘍増殖阻害を示すが、程度はより低い。オキサリプラチンと化合物5の活性の違いは、統計的に有意である(P<0.05)。これらの結果は、インビボ設定において、KRAS変異の存在下で、非アルブミン結合薬剤に対するアルブミン結合プロドラッグのより大きな有効性を示す。このデータは、図13のインビトロでのアルブミンの取り込みデータを裏付ける。
これらのデータは、化合物によって示されたインビトロ細胞増殖阻害の弱さにもかかわらず、意外にも、これら化合物が、オキサリプラチン及びシスプラチンと同等またはそれより大きな腫瘍増殖阻害を異種移植片において示したことを示す。オキサリプラチンが、調べた2つのモデルにおいて有意に異なる阻害量を示した一方、化合物5は両方のモデルにおいて腫瘍増殖阻害に対して高度に有効であったことにも注目される。
実施例22:Pt(IV)Mモノマレイミド化合物の腫瘍蓄積
出願者らは、以前、2種の白金‐マレイミド化合物を開示した(USSN61/922,274参照)。2つのマレイミド化合物に対する有効性データは、以前、これらは、A2780モデルではシスプラチン及びオキサリプラチンと同等であり、かつCalu−6モデルではオキサリプラチンとシスプラチンの間であることを示しており(図6及び7)、本出願で開示された分子と比較して腫瘍増殖阻害が劣る。以下の表は、化合物19及び20並びに比較としてのシスプラチン及びオキサリプラチンについてのこれらの試験で観察された腫瘍増殖阻害パーセント(TGI%)を示す。
実施例23:Pt(IV)M化合物を投与された担がんヌードマウスにおける腫瘍の白金レベル
本明細書に開示の化合物の腫瘍内蓄積能を調べるため、マウスがんモデルを用いた。動物の脇腹に、5×10のH460小細胞肺がん細胞を皮下注射によって接種した。腫瘍をおよその体積で約500mmに到達させた。動物をその後時点ごとに3匹の処理群に無作為に分け、4mg/kgで投与した。24時間の時点を、化合物全体のベンチマークとして用いた。
腫瘍の白金レベルは、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)で測定した。腫瘍を動物から摘出し、4部の硝酸を1部の腫瘍(w/w)に加えて60℃で一夜加熱することにより、発煙硝酸(60%w/w)に溶解した。得られた分解物を、ICP−MS分析緩衝液(1%硝酸、2%Triton(登録商標)X−100)に1:10で希釈し、蠕動ポンプでICP−MS装置に直接導入した。ICP−MSに導入されたこれら試料の最終希釈倍率は50倍であった。
図8は、本開示の8種の例示化合物について、それぞれの腫瘍中の白金レベルを、比較用のシスプラチン及びオキサリプラチンとともに示す。これらのデータは、これら化合物が腫瘍中で、シスプラチン及びオキサリプラチンより高い白金レベルを示すということを示す。さらに、これらのデータは、Pt(IV)M化合物の腫瘍への白金供給能の測定法を示す。
実施例24:化合物5及び8のアルブミンまたは血清との反応
特定の機序に傾倒することはないが、Pt(IV)M化合物の効果的な供給は、この化合物のアルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン;HSA)への共有結合に関連すると考えられている。Pt(IV)M化合物は、無傷アルブミンのアミノ酸34(システイン)に結合すると推定される。アルブミンの血中循環量は大きく、Pt(IV)M化合物への共有結合は血中で起こることが予想される。この化合物−アルブミン結合は、腫瘍部位で切断され、活性白金化合物、例えば、Pt(II)化合物を生じる。
Pt(IV)M化合物のアルブミンへの共有結合能及び該反応が血中で起こりうることを確認するため、HPLCシステムがICP−MSシステムと連結され、アルブミンが反応した白金化合物に対する白金含有量を測定する分析システムを用いた。細孔径が300オングストロームのC18カラムを勾配クロマトグラフィーで流し、分離をきたした。弱緩衝液は、10mMでpH5のギ酸アンモニウムであった。強緩衝液は、90%アセトニトリルと10mMのギ酸アンモニウムであった。勾配は、強緩衝液0%から強緩衝液100%まで9分かけた。注入容量は試料5μLであった。アルブミンを含む試料は、希釈、抽出、またはその他の前処理なしで、直接LC−ICPMSシステムに注入した。
化合物5のアルブミン複合体の基準試料は以下のように調製した。Lee Solutions製20%HSA溶液を用いた(#R8447)。このアルブミンをPBSで濃度5%(50mg/mL)に希釈した。化合物5の複合体化は以下のようにして行った:5の9mgをメタノールに溶解し、20mLのアルブミン溶液(濃度=50mg/mL)に加えた。この反応は、37℃で1時間行った。1時間後、この反応混合物を、10KD膜カットフィルター(Spectrum Labs)を用い、タンジェントろ過によって注射用水(WFI)で25倍洗浄した。洗浄ろ液500mLを回収した後、最終的なアルブミン:化合物5複合体溶液を16mLまで濃縮した。この濃縮物に、10X PBS1.77mLを加え、アルブミン複合体の1X PBS溶液を得た。この混合物を滅菌ろ過(0.22ミクロンMillipore Steriflip)した。この最終溶液のアルブミン濃度を測定したところ53.17mg/mLであった。この溶液を4℃で保存した。
化合物5と血清の反応は、マウス血清990μLに化合物5のDMF溶液10μLを混ぜて行った。得られた反応混合物は、1:100希釈の薬剤であって、この生体試料中に存在する溶媒はわずか1%であった。この反応を37℃で30分間行い、この試料をLC−ICPMS分析列に供した。
対照試料は、様々な白金含有種の保持時間を測定するために反応させた。これらには化合物5及びアルブミンと反応させた化合物5を含めた。保持時間についてこのクロマトグラフィーを特徴づけた後、ラット血清を化合物5と反応させ、アルブミンとの反応の程度及びこのアルブミンの反応の特異性を測定した。未反応の化合物5は、保持時間が3.65分であった(図9)。化合物5と反応させた市販のヒト血清アルブミンは、保持時間が4.35分であった(図10)。
化合物5を濃度300μMでマウス血清中インキュベートした場合、得られたLC−ICPMSクロマトグラムは、白金シグナルの96%がアルブミンに結合していると認められることを示した(図11A)。
化合物8を、アルブミンのトリプシンペプチドT3と混合し、LC MS/MS分析を行った。この分析結果を図11Bに示した。T3の内因性複合体及びT3−化合物8複合体のシグナルが認められ、これらシグナルは化合物8がT3と結合する証拠であった。
実施例25:KRAS変異型細胞によるアルブミンの取り込み及びKRAS変異型腫瘍細胞の化合物5での処理
アルブミンの取り込みは、BxPC3、NCI−H520、HT−29野生型KRAS発現細胞株並びにMiaPaca−2、NCI−H441、HCT116、及びLoVo KRAS変異発現細胞株で測定した。本明細書で用いられる「KRAS変異型」とは、少なくとも1つのKRAS変異を有する細胞、細胞株、または腫瘍である。図13は、KRAS変異型細胞では、LoVo細胞を除いて、アルブミンの取り込みがKRAS変異を有さない細胞より高いことを示した。マクロピノサイトーシスの阻害剤は、アルブミンの取り込みを減少させた。
造影剤として蛍光標識されたアルブミンを用いたアルブミンの取り込み測定の例を図14に示した。蛍光標識されたアルブミンは、KRAS変異型膵臓Mia Paca−2細胞において、KRAS WT膵臓BxPC3細胞におけるよりも多く蓄積した。ヒトにおいては、放射性標識アルブミンが造影剤として用いられうる。
KRAS変異型及び野生型発現細胞の増殖におけるPt(IV)Mモノマレイミド化合物の影響を、実施例21〜23に記載したものと同様の方法を用いて調べた。化合物5の有効性データを図12、図15、及び図16に示した。化合物5は、KRAS変異型細胞株であるMiapaca−2及びCalu−6において、KRAS野生型株であるBxPC−3と比較して、腫瘍増殖阻害がオキサリプラチンによるものよりも大きいことを示した。化合物5は、KRAS変異型モデルのCalu−6及びMiapaca−2において腫瘍増殖阻害に対して高度に有効であった。
実施例26:化合物8の合成法の改良
化合物8の改良された手順を用いた調製を以下に示す。
化合物8の合成手順の改良の説明
ヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチン酢酸錯体(化合物1’)の調製
シスプラチン(4.93g、16.4mmol、1.00)を窒素雰囲気下、反応器に投入した。酢酸(40.0mL、699mmol、42.6当量)を加え、得られた混合物を攪拌して懸濁液を生成した。過酸化水素の30%Wt/Wt水溶液(7.15g、63.1mmol、3.85当量)を加え、温度23〜30℃で約4時間攪拌を続けた(発熱反応)。この反応は逆相HPLCによって監視し、攪拌を20〜25℃で続けた。この懸濁液を、過酸化水素添加の約24時間後にろ過した。このケークをイソプロパノール(3X6mL)、次いでMTBE(3X6mL)で洗浄した。得られた固体を20〜23℃で一定重量まで真空下乾燥した。ヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチン酢酸錯体が白〜オフホワイト粉体として単離された(2.66g、収率37%)。HPLCに基づく純度>=98%。H NMR (500 MHz, DMSO) δ 6.57−6.10 (m, 6H), 2.33 (s, 3H), 2.29 (s, 3H); HPLC−MS 98%, C10ClPt [(M+H)]に対するm/z = 377.0.
化合物8の調製
ヒドロキシ(アセトキシ)シスプラチン酢酸錯体(2.00g、4.59mmol、1.00当量)を窒素雰囲気下で反応器に投入した。無水THF(20mL)を加えた。得られた混合物を20〜25℃で攪拌して懸濁液を生成した。化合物2’(イソシアネート、2.22g、10.7mmol、2.33当量)を無水THF(16mL)溶液として加え、この反応混合物を、出発物質が完全に消費されるまで20〜25℃で攪拌した(逆相HPLCで測定されたように、反応は14時間で完了する)。この粗混合物は次のステップ(沈殿/最終的な単離)に直ちに用いた。
化合物8の沈殿/最終的な単離
MTBE(120mL)を窒素雰囲気下で反応器に投入し、20〜25℃で攪拌した。前工程からの粗化合物8混合物をろ過し、そのろ液を、MTBEを含む反応器に滴下した。この粗化合物8混合物がMTBEと接触状態になると、容易に沈殿が生じた。機器を無水THFですすいだ(2X2mL)。この懸濁液を20〜25℃で約1時間攪拌した。この固体をろ過し、ケークを窒素雰囲気下、MTBEで洗浄した(3X5mL)。このケークをホモジナイズし、得られた粉体を20〜25℃の真空中で乾燥した。化合物8が白〜オフホワイトの微粉として単離された(2.58g、収率96%)。HPLC純度>=95%。H NMR (500 MHz, DMF−d7) δ 7.19 - 6.75 (m, 9H), 3.45 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 3.04 - 2.95 (m, 2H), 1.90 (s, 3H), 1.59 - 1.50 (m, 2H), 1.49 - 1.37 (m, 2H), 1.34 - 1.20 (m, 2H); HPLC−MS 96.7%. C1222ClPt [(M+H)]に対するm/z = 585.2.
化合物2’(イソシアネート)の調製
反応1
6‐マレイミドヘキサン酸(4.22g、20.0mmol、1.00当量)を窒素雰囲気下で反応器に投入した。無水トルエン(200mL)を加え、得られた混合物を20〜25℃で攪拌し、懸濁液を得た。無水トリエチルアミン(3.36mL、24.0mmol、1.20当量)を加えた。得られた混合物を20〜25℃で均質溶液が得られるまで攪拌し、この時点で、温度を20〜25℃に維持しながら、DPPA(4.76mL、22.0mmol、1.10当量)を加えた。攪拌を20〜25℃で約5時間続けた。NaHCOの10%Wt/Wt水溶液(200mL)を加えた。得られた混合物を5分間攪拌し、その後、層が10分で分離された。温度を<35℃に保ちながら、トルエン(90mL)が留去されるまでこの有機層を真空中で濃縮した。無水トルエン(90mL)を得られた溶液に加えた。
反応2
前工程で得られた溶液を窒素雰囲気下、95〜105℃に<14時間加熱した。温度を<35℃に保ちながら、真空中で揮発性物質を除去した。粗イソシアネートが黄色油として単離された(4.83g、収率=116%)。この物質は、化合物8の調製用にそのまま使用可能である。ごく一部(0.4g)を、シリカゲルクロマトグラフィーによって特徴づけの目的及び、この化合物8生成反応(ステージ2、図1)における精製物質の性能を評価するために精製した(精製は以下の段落に記載)。この粗反応混合物のLC/MS分析に基づいて、精製イソシアネートはより混じりけのない化合物8を生成した。
化合物2’(イソシアネート)の精製
シリカゲル精製:粗油(0.400g/4.83g)を酢酸エチル/n‐ヘプタン(1:19V/V、2mL)に溶解し、Redisepカラム(4g、1CV=4.8mL)にロードした。このカラムを、0〜50%(v/v)の酢酸エチル/n‐ヘプタンの勾配で12分かけて溶出した。目的の化合物は4.5〜6.5分の間に溶出した。流量:18mL/分。画分サイズ:4〜6mL。画分をLC/MSで分析した。単一の成分として化合物2’を含む画分を合わせ、T<30℃に保ちながら真空中で揮発性物質を除去した。化合物2’が無色油(0.180g)として単離された。H NMR (500 MHz, CDCl) δ 6.69 (s, 2H), 3.53 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 3.29 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.67 - 1.57 (m, 4H), 1.40 - 1.32 (m, 2H); MS: M+1 =209.このNMRスペクトル及びMSデータは、化合物2’の構造と一致した。
考察
実施例26に開示した手順は、シスプラチンを化合物8に変換するために2つのステージを有した。これは、いかなるクロマトグラフィーや凍結乾燥の工程も含まなかった。化合物8は、沈殿によって、純度≧95%で精製された。沈殿で、優れた純度(>=95%、対して、クロマトグラフィー及び/または凍結乾燥では<95%)及び収率(85%、対して、クロマトグラフィー及び/または凍結乾燥では51〜75%)を示す。沈殿による化合物8の精製は、簡単でかつ:不純物を除去し;目的の純度>=95%をもたらし;化合物8の分解を防ぎ;高収率(85%)をもたらす条件下で行われる。サイクルタイムに関しては、沈殿による化合物8の精製は、膨大な時間の節約につながり:単一のバッチとして化合物8を沈殿させるのに<1日で、これらの条件下で化合物8は安定であり;純度を分析する試料の数を劇的に減らす。原材料コストは、高収率のため、沈殿を介した簡単な精製によって最小限になる。クロマトグラフィーのコストも排除される。さらに、合成の安全性及び患者の安全性が向上される。ステージ1では、ジエチルエーテルがIPA及びMTBE洗浄に置き換えられた。これらの溶媒は、大規模で使用しても安全である。化合物1’は、一貫して>=98%の高純度で、収率に悪影響なく単離された。ジエチルエーテルは、その高揮発性、高引火性、その過酸化物の形成傾向、及び鎮静性のため、スケールアップには適さない。IPA及びMTBE洗浄によるジエチルエーテルの置き換えは、化合物1’の純度と収率に有益であることが分かった。イソシアネート化合物2’は、DPPA及びDPPAの副産物を除去するために精製された。DPPAやDPPAの副産物等の有毒な不純物の除去は、より高純度のイソシアネート化合物2’を与え、化合物8の品質を向上させ、患者に対するリスクを低減する。
結論
実施例26の方法は、これが:1)化合物8の優れた総純度及び収率、2)拡張可能性に対するより少ないリスク(化合物8は精製条件下でより安定である)、3)より短いサイクルタイム(化合物8の精製はカラムクロマトグラフィーにも凍結乾燥にもよらない)、4)総収率の向上/クロマトグラフィー精製の撤廃によるより低い原材料コスト、5)ジエチルエーテル洗浄をIPA及びMTBE洗浄に置き換えることによる安全、6)化合物8を生成する反応/工程にDPPAやDPPAの副産物等の不純物が入ることを防ぐことによって患者にとってより安全にされるということをもたらすため、化合物8の合成及び/または精製(目標規模約0.1〜約1Kg)のための新規な経路を表す。
実施例27:Pt(IV)Mモノマレイミド化合物は、シスプラチン及びオキサリプラチンよりも向上した腫瘍増殖阻害を示す
Pt(IV)Mモノマレイミド化合物(化合物1、3、8、及び11)並びに2つのマレイミド基を含む化合物(ビスマレイミド化合物19、28、29、及び30)を、A2780モデル(卵巣がん)における腫瘍増殖阻害(TGI%)についてインビボでスクリーニングした。シスプラチン及びオキサリプラチンも調べた。図17の結果は、Pt(IV)Mモノマレイミドがシスプラチン及びオキサリプラチンより優れたTGI%を有することを示した。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ビスマレイミド化合物中の第二のマレイミドは、他のシステインに共有結合し、架橋すなわち毒性につながる可能性を有する。
実施例28:シスプラチンより増加した腫瘍増殖阻害をもたらす白金蓄積及びDNA白金化の増加
化合物8の10mg/kgでの単回投与の24時間後の血漿及び腫瘍中の白金レベルを肺がんモデルNCI−H460で測定した。化合物8の10mg/kgでの2回投与(1日目と4日目に投与)後5日目の血漿及び腫瘍中の白金レベルを肺がんモデルNCI−H520で測定した。シスプラチンも調べた。図18及び図19の結果は、化合物8が、血漿及び腫瘍の両方で、単回投与及び2回投与試験ともに、シスプラチンより多くの白金蓄積を生じたことを示した。腫瘍の白金増加は、より高いレベルのDNAの白金付加物をもたらす。
腫瘍増殖阻害は、卵巣がんモデルA2780で、20mg/kgでの化合物8及びシスプラチンでの処理について測定した。結果を図20に示した。試験後の白金レベルもまた追跡し、図21に示した。化合物8で処理したA2780異種移植片の腫瘍組織における白金濃度は、シスプラチンより14倍高かった。
従って、Pt(IV)Mモノマレイミド化合物8は、シスプラチンより高い白金濃度を腫瘍組織にもたらし、シスプラチンと比較して、腫瘍抑制に優れた有効性を有する。
実施例29:Pt(IV)Mモノマレイミド化合物は腫瘍に持続的な白金量を供給する
肺がん(NSCLC)モデルNCI−H520での化合物8の複数回投与(0、3、7、及び10日目に投与)処理後32日間、腫瘍体積及び白金レベルを追跡した。化合物8は15mg/kgで投与した。シスプラチンを比較として用い、3mg/kgで投与した。これらの結果を図22及び図23に示した。10日目の最後の投与の16日後の腫瘍において同様に高白金レベルが認められた。白金の持続放出は、シスプラチンより優れた腫瘍増殖阻害をもたらす。
細胞の脱分化及びアポトーシスを免疫組織化学(IHC)及びTUNEL染色で検討した。NCI−H520モデルの10日目からの代表的な画像を図24及び図25に示した。化合物8で処理した腫瘍は、アポトーシス及び脱分化の有意かつ持続した上昇を示した。これらの結果は、シスプラチンより優れた化合物8の有効性及び白金濃度と一致する。
実施例30:Pt(IV)Mモノマレイミド化合物の薬物動態及び分布
ラット(n=3)及びイヌ(n=3)における両方の白金濃度を、それぞれ100時間及び400時間連続して測定した。シスプラチンもまた、比較として調べた。結果を図26及び27に示した。ラット及びイヌにおける化合物8の半減期を算出し、以下の表8に示した。アルブミンを対照として用いた。
化合物8の白金の露出はシスプラチンより15〜18倍高い。化合物8の半減期はアルブミンと同等である。従って、Pt(IV)Mモノマレイミド化合物は、白金の持続放出をもたらし、現在入手可能な白金薬剤の急速なクリアランスを克服する。
RBC分配及びタンパク質分配を検討した。化合物8での処理後、RBC及びタンパク質中の白金を測定した。図28の結果は、化合物8は赤血球内に隔離されず、化合物8の98%が血漿中のタンパク質に結合することを示した。
ラットPK試験(N=3のラット)は、化合物19の直接注入及びアルブミンに予め結合させた化合物19を用いて行った。図29における用量正規化データは、化合物19を予めアルブミンに結合させることの薬物動態への影響が最小限であったことを示す。
実施例31:BRCA1/2変異型モデルはPt(IV)Mモノマレイミド化合物に超高感度である
インビボMX−1ヒト乳がん異種移植片試験をシスプラチン及びPt(IV)Mモノマレイミド化合物で行った。マウスにおけるMX−1誘導異種移植片の腫瘍体積を、主試験群に対する化合物8の15mg/kgでの1日目、5日目、8日目、及び12日目(週2回を2週間)の複数回静脈内投与後に測定した。10mg/kgでの化合物8及び3mg/kgでのシスプラチンも、同じ投与日で調べた。MX−1細胞株は、エストロゲン受容体陰性かつHer2正常である。これは、BRCA1及びBRCA2変異型:BRCA1短縮型変異(3363delGAAA)及びBRCA2変異(16864A>C、Asn289His、及び22184A>G、Asn991Asp)である。サテライト群(n=5)は9日目に白金腫瘍測定用に採取した。これら腫瘍における平均腫瘍体積及び白金レベルを図30に示した。腫瘍は、化合物8での処理後12日目に消失した。さらに、15mg/kg群については、試験の終了時点、すなわち75日目で腫瘍の再増殖は認められず、これは、同様にシスプラチン処理群でも見られた。10mg/kg群から唯一の腫瘍が71日目に再び増殖し始め、試験の終了時点の75日目には体積が39mmであった。化合物8はまた、シスプラチンより高濃度の白金を腫瘍に供給する。
実施例32:Pt(IV)Mモノマレイミド化合物に対するラットの毒性試験
化合物8をラットの毒性試験において評価した。尿細管壊死の値を表11に示した。クレアチニン及び尿素窒素レベルを図31に示した。血液マーカー及び組織病理が、白金高用量において、シスプラチンと比較して腎毒性の改善を示した。化合物8の他の病理学的所見は認められなかった。
実施例33:インビトロ及びインビボでの結腸直腸腫瘍増殖におけるPt(IV)Mモノマレイミド化合物の影響
結腸直腸がん細胞株、例えば、HCT−15、LoVo、SW48、SW480、HCT116、HT115、HT29、HCA−7等を96ウェルプレート(Costar)に播種し、24時間後、化合物5で48〜72時間処理する。化合物5の開始用量は20μMであって、3倍連続希釈を計10点について行う。細胞増殖阻害は、CellTiter−Glo(登録商標)試薬を用い、標準的なプロトコル(Promega)及びGlomax(登録商標)multi+検出システム(Promega)を用いて測定する。増殖阻害パーセントは、以下の式を用いて算出する:阻害%=(対照−処理)/対照*100。対照は、溶媒のみと定義する。
化合物5のヒト結腸直腸がん及び結腸直腸がん異種移植片の増殖への化合物の影響能力を調べる。すべてのマウスは、ヒューマンケア及び実験動物の使用におけるOLAW公衆衛生局ポリシー並びに実験動物の管理と使用に関するILARガイドに従って処理する。すべてのインビボ試験は、チャールズ・リバー施設内動物管理使用委員会によって承認されたプロトコルに従って行う。結腸直腸がんは10週齢のマウスで誘導する。腫瘍が体積100mmに近づいたときに、マウスを無作為に10匹の3群に分ける。マウスを溶媒対照(10%のSolutol(登録商標)HS15生理食塩水溶液)、または化合物5を静脈内注射によって用量10mg/kg〜30mg/kgで処理する。試験期間中、マウスに週2回投与する。最後の投与の24時間後、腫瘍増殖阻害を算出するため、腫瘍体積を再度測定する。すべての統計分析は、GraphPad PRISM.RTM.バージョン6.00を用いて行う。最終的な腫瘍体積を一元配置分散分析及びテューキー多重比較検定を用いて分析する。化合物5が腫瘍増殖を阻害したことが認められる。
対応特許及び範囲
本開示のいくつかの実施形態を本明細書に記載及び説明してきたが、当業者には、本明細書に記載の機能を実行するため、並びに/または本明細書に記載の結果及び/もしくは1つ以上の利点を得るため、様々な他の手段及び/または構造が容易に予測されるであろう。かかる変更及び/または修正の各々は、本開示の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者には、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示を意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/または構成は、本開示の教示が用いられる具体的な用途もしくは複数の用途に依存することになることが理解されよう。当業者には、通常の実験のみを用いて、本明細書に記載の本開示の特定の実施形態と同等の多くものが認められ、または確認可能となるであろう。
従って、前述の実施形態が例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、本教示は、具体的に記載され、主張された以外に実施されうることが理解される。本教示は、本明細書に記載の個々の特徴及び/または方法の各々に関する。さらに、かかる特徴及び/または方法の2つ以上の任意の組合せは、かかる特徴及び/または方法が互いに矛盾しない場合、本教示の範囲内に含まれる。
本発明の範囲は、上記説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に規定のものである。
特許請求の範囲において、「a」、「an」、及び「the」等の冠詞は、反対のことが示されない限り、または文脈から明らかでない限り、1つまたは2つ以上を意味しうる。群のうちの1つ以上の要素間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、該群の要素のうちの1つ、2つ以上、もしくはすべてが、所与の産物または工程に存在し、採用され、または関連する時には、反対のことが示されない限り、または文脈から明らかでない限り満たされると見なされる。本発明は、該群のうちの厳密に1つの要素が、所与の産物または工程に存在し、採用され、または関連する実施形態を含む。本発明は、該群の要素のうちの2つ以上もしくはすべてが、所与の産物または工程に存在し、採用され、または関連する実施形態を含む。
用語「comprising」がオープンであり、追加の要素または工程の包含を許可するが必須ではないということにも留意されたい。本明細書で用語「comprising」が用いられる場合、用語「consisting of」も従って包含され、開示される。
範囲が与えられる場合、端点が含まれる。さらに、別段の指示のない限り、または文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、本発明の異なる実施形態で、その文脈が明らかに他を指示しない限り、表示された範囲内の任意の特定の値または下位範囲を、該範囲の下限の10分の1の単位までとることができる。
さらに、従来技術に含まれる本発明の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明らかに除外されうることを理解されたい。かかる実施形態は当業者に周知であると見なされるため、この除外が本明細書に明示されていない場合でも、これらは除外されうる。本発明の組成物の特定の実施形態は、従来技術の存在に関連するかどうかにかかわらず、何らかの理由により、請求項のいずれか1つ以上から除外することができる。
すべての引用元、例えば、本明細書に引用された参考文献、刊行物、データベース、データベース登録、及び技術は、当該引用に明示的に記載されていない場合も、参照することによって本出願に組み込まれる。引用元と本出願の記述が矛盾する場合、本出願の記述が統制するものとする。
節及び表の見出しは、限定することを意図しない。

Claims (13)

  1. 式I:
    の化合物またはその医薬的に許容される塩であって
    及びRは、それぞれClであるか、または、R及びRが一緒になってオキサレートを形成し
    及びRは、それぞれHであるか、または、一緒にシクロへキシル環を構成し
    X−R は、−CH 、−CH OCH 、−NHCH CH 、及び−(CH −OCH CH OCH から選択され、
    Y−Zは、−(CH −、−NH−(CH −、及び−CH −COO−(CH −から選択され、

    である、前記化合物またはその医薬的に許容される塩。
  2. 及びRがそれぞれClである、請求項1に記載の化合物。
  3. 及びRが一緒になってオキサレートを形成する、請求項1に記載の化合物。
  4. 請求項1に記載の化合物であって、
    から選択される化合物。
  5. 請求項4に記載の化合物であって、
    である化合物。
  6. 請求項4に記載の化合物であって、
    である化合物。
  7. 請求項1からのいずれか一項に記載の化合物及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
  8. の合成方法であって:
    a.シスプラチンから
    を合成し;
    b.6‐マレイミドヘキサン酸及びジフェニルホスホリルアジド(DPPA)から
    を合成し;
    c.化合物1’及び化合物2’から化合物8を合成することを含む、前記方法。
  9. さらに、化合物8を沈殿で精製することを含む、請求項に記載の方法。
  10. 前記方法が、化合物2’を精製してDPPA及び任意のDPPA副産物を除去することを含む、請求項に記載の方法。
  11. 化合物1’が、イソプロパノール(IPA)及びメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)で洗浄される、請求項に記載の方法。
  12. 前記方法が、いかなるクロマトグラフィーも凍結乾燥工程も含まない、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 化合物8の純度が少なくとも95%である、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
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