JP2018518510A - 白金化合物、組成物及びその使用 - Google Patents

白金化合物、組成物及びその使用 Download PDF

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Abstract

本教示は、癌の治療のための化合物及び組成物に関する。ある実施形態において、組成物は、タンパク質上の官能基と反応するための少なくとも1つの反応基を有する白金(IV)錯体を含む。

Description

本発明は、白金系化合物に関する。
白金系薬剤は、最も有効でありかつ広く使用されている抗癌剤の1つである。シスプラチンは、FDAに認可された数少ない白金系癌化学療法薬の1つである。シスプラチンは、いくつかの固形腫瘍、特に精巣癌、膀胱癌及び卵巣癌に対して有効であるが、その臨床用途は、その毒性作用ならびにこの薬剤に対する一部の腫瘍の内因性及び獲得耐性のために限られている。
これらの制限を克服するために、より低い毒性及びシスプラチン耐性腫瘍におけるより高い活性を有する白金類似体が開発され、試験されており、米国においてカルボプラチン及びオキサリプラチンの認可につながった。例えば、カルボプラチンは、腎毒性が低いという利点を有するが、シスプラチンとのその交差耐性により、本来であればシスプラチンで治療可能な疾患においてその用途が限られている。
しかしながら、オキサリプラチンは、シスプラチンのものと異なる抗癌スペクトルを示す。オキサリプラチンは、シスプラチン及びカルボプラチンが実質的に有効でない進行大腸癌のための、5−フルオロウラシル/ロイコボリンと組み合わせた一次又は二次治療として認可されている。これらの白金薬剤は、2+酸化状態の白金(Pt(II))を有し、経口で活性でない。
4+酸化状態の白金錯体(Pt(IV)錯体)は、いくつかの利点を提供する。白金(IV)錯体は、4+酸化状態で実質的に不活性であるが、白金(II)状態への還元により活性化される。したがって、Pt(IV)錯体は、腫瘍細胞内で活性化されるPt(II)薬剤のプロドラッグである。2つのさらなる配位部位(アキシアル部位)も錯体の薬物動態特性を変化させるように修飾され得る。例えば、2つのアキシアル部位及び4つのエクアトリアル部位は、マイケル受容体を有するリガンドを含み得る。本教示に開示されるようにマイケル受容体を含むことは、腫瘍細胞内のPt濃度を高めることができ、一部の例では、本明細書に記載される疾患又は病態を治療する際の有効性を高め得る。一部の例では、本教示のPt(IV)錯体は、経口で活性であり、及び/又は減少した長期毒性を有し得る。
本教示は、例えば、癌細胞の増殖を低減し、妨げ、もしくは阻害するため、又は癌細胞の死を誘導するための組成物に関する。
組成物は、白金(IV)化合物を含み得る。様々な実施形態において、白金(IV)化合物は、タンパク質上の官能基と反応するための好適な反応基を含む。このような化合物は、本明細書においてPt(IV)Mと呼ばれる。反応基は、マイケル受容体であり得る。例えば、マイケル受容体がリガンドによって導入され得る。様々な実施形態において、アキシアルリガンドの一方又は両方は、それぞれ1つ又は複数のマイケル受容体を含む。
本教示は、本明細書に記載される化合物を含む組成物及び本明細書に記載される化合物又は組成物を使用する方法も提供する。様々な実施形態において、本教示の方法は、増加した細胞死又は減少した細胞増殖から利益を得る疾患の予防又は治療に有用である。例えば、本教示の方法は、癌細胞死を増加させるか、又は癌細胞増殖を減少させるのに使用され得る。増加した癌細胞死又は減少した癌増殖は、例えば、体外で(エクスビボ)又は体内で(インビボ)起こり得る。
本教示の特定の実施形態は、疾患を治療又は予防するための薬剤としての、及び/又は例えば疾患の治療に使用するためのこのような薬剤の製造における、本明細書に記載される化合物の使用も提供する。ある実施形態は、薬剤として使用するための本明細書に記載される化合物の使用を提供する。特定の実施形態において、本教示は、疾患の治療、例えば癌の治療のための、本明細書に記載される化合物又は組成物を提供する。特定の実施形態において、本教示は、腫瘍細胞が1つ又は複数のKRAS変異を発現する腫瘍の治療のための、本明細書に記載される化合物又は組成物を提供する。
室温におけるブリトン−ロビンソン緩衝液中の0.1mg/mLの化合物8中での不純物2の形成を示すグラフ。 酸性ビヒクル製剤中での不純物2の形成を示すグラフ。 緩衝液モル濃度に応じた不純物2の形成を示すグラフ。 明条件対暗条件における不純物1の形成を示す(下側の図は暗条件の製剤の拡大版を表す)グラフ。 明条件対暗条件における不純物2の形成を示すグラフ。 室温対低温における模擬スケールアップ(mock scale−up)プロセスでの不純物1の形成を示すグラフ。 室温対低温における模擬スケールアッププロセスでの不純物2の形成を示すグラフ。 模擬プロセス及び生理食塩水(CB:クエン酸緩衝液)中の臨床的希釈(clinical dilution)後の不純物1の形成を示すグラフ。 模擬プロセス及び生理食塩水(CB:クエン酸緩衝液)中の臨床的希釈後の不純物2の形成を示すグラフ。 pH約4及び約5の両方における5mMのクエン酸生理食塩水中の2つの異なるDSロットにおける不純物1の形成を示すグラフ。 pH約4及び約5の両方における5mMのクエン酸生理食塩水中の2つの異なるDSロットにおける不純物2の形成を示すグラフ。 注射用の化合物8粉末の製造プロセス流れ図。 化合物8(BTP−114、15mg/kg)及びシスプラチン(3mg/kg)投与後の腫瘍及び血漿中の白金レベルを示すグラフ。 実施例39における事象のスケジュール。 実施例39における事象のスケジュール。 実施例39における事象のスケジュール。 化合物8の投与計画を示す流れ図。
本出願人は、タンパク質上の官能基と反応するための好適な反応基を有するPt(IV)化合物が、細胞増殖及び腫瘍増殖の有効な阻害剤であることを発見した。このような化合物は、本明細書においてPt(IV)Mと呼ばれる。ある実施形態において、タンパク質は、アルブミンであり、Pt(IV)M化合物は、アルブミンを含まない。反応基は、マイケル受容体であり得る。ある実施形態において、Pt(IV)M化合物は、モノマレイミドを含む。
これらの化合物の特徴は、腫瘍増殖を阻害し、例えば、減速させ、又は停止させる有効性を維持しながら、生物に対するそれらの比較的低い毒性である。本明細書において使用される際、「毒性」は、細胞、組織生命体(tissue organism)又は細胞環境に対して有害又は有毒である物質又は組成物の能力を指す。低い毒性は、細胞、組織生命体又は細胞環境に対して有害又は有毒である物質又は組成物の低下した能力を指す。このような低下した又は低い毒性は、標準的な測定に対するか、治療に対するか又は治療の非存在に対するものであり得る。
毒性は、対象の体重減少に対してさらに測定されてもよく、ここで、体重の15%超、20%超又は30%超の体重減少が毒性の指標である。無気力及び全身けん怠感を含む患者の症状の測定基準などの毒性の他の測定基準も測定され得る。好中球減少症又は血小板減少症も毒性の測定基準であり得る。
毒性の薬理学的指標としては、上昇したAST/ALTレベル、神経毒性、腎障害、胃腸障害などが挙げられる。
さらに、ある実施形態において、このような化合物は、多くのタイプの腫瘍において、サイズの正味値(重量、表面積又は体積)としてか、又は時間に対する率として測定されるかにかかわらず、腫瘍増殖を阻害するのに有効である。
ある実施形態において、腫瘍のサイズは、60%以上減少される。ある実施形態において、腫瘍のサイズは、重量、及び/又は面積、及び/又は体積の測定により、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%減少される。
ある実施形態において、固形癌の治療効果判定基準(RECIST:Response Evaluation Criteria In Solid Tumors))基準が、固形腫瘍に対する本発明の化合物の効果を特性評価するのに使用される。腫瘍を測定するためのガイドラインは、2009年1月にヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー(European Journal of Cancer)(EJC)(アイゼンハワー(Eisenhauer)ら著、2009年、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー(European Journal of Cancer)、第45巻、p.228〜247)において更新及び公開されており、その内容は全体が参照により本明細書に援用される。限定されないが、応答、評価及び測定基準を含むRECIST測定基準のいずれかを用いて、腫瘍に対する本発明の化合物の効果が特性評価され得る。
インビトロ細胞増殖を阻害する本発明の化合物の相対能力は、腫瘍増殖を阻害するそれらの相対能力の予測因子ではなく、すなわち、腫瘍増殖を阻害するそれらの相対能力は、インビトロの細胞増殖を阻害するそれらの相対能力より高いことが意外にも分かった。
何らかの理論に制約されることを意図しないが、Pt(IV)M化合物の有効な送達は、アルブミンなどのタンパク質への化合物の共有結合に関連し得る。アルブミンへの結合が急速なクリアランスを防ぎ、腫瘍部位に安定したかつ不活性形態の白金を送達する。化合物−アルブミン結合は、腫瘍部位において切断され、活性な白金化合物、例えば、Pt(II)化合物を生じ得る。アルブミンによるPt(IV)M化合物の輸送は、MIA PaCa−2及びBxPC−3細胞株を用いて試験されている(コミッソ(Commisso)ら著、2013年、ネイチャー(Nature)、第497巻、p.633〜637、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。
ある実施形態において、本明細書に記載されるPt(IV)M化合物が、1つ又は複数のKRAS変異を発現する細胞を含む腫瘍を有する対象に投与される。対象の腫瘍は、当該技術分野において公知の方法を用いてKRAS変異について分析されてもよく、例えば、アンダーソン(Anderson)著、2011年、エキスパート・レビュー・オブ・モレキュラー・ダイアグノスティックス(Expert Rev Mol Diagn.)、第11巻、p.635〜642及びティエリー(Thierry)ら著、2014年、ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)、第20巻、p.430〜435(これらのそれぞれの内容は全体が参照により本明細書に援用される)を参照されたい。腫瘍がKRAS変異を有する場合、腫瘍は、本明細書に開示されるPt(IV)M化合物による治療に反応する可能性が高い。ある実施形態において、腫瘍は、KRAS変異の存在について直接分析される。ある実施形態において、非腫瘍組織、例えば、血漿DNAがKRAS変異の存在について分析される。
この知見はまた、1つ又は複数のKRAS変異型を発現する細胞を含有する一部の腫瘍が特定の治療に対して感受性でないため、重要である。例えば、これらの変異のいくつかの存在は、EGFRに向けられた治療に対する耐性を予測するため、大腸癌患者は、KRAS変異の存在について試験される(シエナ(Siena)ら著、2009年、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(J Natl Cancer Inst)、第101巻、p.1308〜24、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。このような患者は、本明細書に記載されるPt(IV)M化合物による治療の候補である。
便宜上、本教示のさらなる説明に先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に用いられる用語のいくつかの定義がここにまとめられている。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして、及び当業者によって理解されるように読まれるべきである。特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
本明細書において使用される際に冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、矛盾する明らかな記載がない限り、「少なくとも1つ」を意味することが理解されるべきである。
本明細書において使用される際の「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、ある場合には接続語的に存在し、他の場合には離接語的に存在する要素を意味することが理解されるべきである。「及び/又は」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素は、矛盾する明らかな記載がない限り、具体的に特定される要素に関連しているか関連していないかにかかわらず、任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などのオープンエンドな語とともに使用される場合、一実施形態において、Bを含まないA(任意選択的にB以外の要素を含む);別の実施形態において、Aを含まないB(任意選択的にA以外の要素を含む);さらに別の実施形態において、A及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)を指し得る。
本明細書において使用される際、「又は」は、上に定義される「及び/又は」と同じ意味を有することが理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的、すなわち、いくつかの要素又は要素のリストのうちの少なくとも1つ(2つ以上も含む)と、任意選択的に、列挙されていないさらなる項目との包含であると解釈されるものとする。それとは反対に明確に示される限定的な用語、例えば「〜のうちの1つのみ」もしくは「〜のうちの厳密に1つ」、又は特許請求の範囲において使用される場合の「からなる」は、いくつかの要素又は要素のリストのうちの厳密に1つの要素の包含を指す。
一般に、本明細書において使用される際の「又は」という用語は、排他性の用語、例えば「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」、又は「〜のうちの厳密に1つ」が前にある場合、排他的な選択肢(すなわち、「いずれか一方であり、両方ではない」)を示すものとのみ解釈されるものとする。「から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
本明細書において使用される際、1つ又は複数の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の要素のいずれか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味し、要素のリスト内に具体的に列挙されたあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素のいずれの組合せも除外しないことが理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内に具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連しているか関連していないかにかかわらず、任意選択的に存在してもよいことを許容する。
したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は均等に「A又はBの少なくとも1つ」、又は均等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態において、少なくとも1つ(任意選択的に2つ以上を含む)の、Bが存在しないA(任意選択的にB以外の要素を含む)を指し;別の実施形態において、少なくとも1つ(任意選択的に2つ以上を含む)の、Aが存在しないB(任意選択的にA以外の要素を含む)を指し;さらに別の実施形態において、少なくとも1つ(任意選択的に2つ以上を含む)のA及び少なくとも1つ(任意選択的に2つ以上を含む)のB(任意選択的に他の要素を含む)を指し得るなどである。
本明細書において使用される際、「含む」、「包含する」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」などの全ての移行句は、オープンエンドである、すなわち、限定されないが含むを意味することが理解されるべきである。
「からなる」及び「から本質的になる」という移行句のみは、米国特許庁の特許審査基準(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)に記載されるように、それぞれクローズド又はセミクローズド型の移行句とする。
本明細書において使用される際、「対象」又は「患者」は、任意の哺乳動物(例えば、ヒト)、例えば、疾患又は障害、例えば、腫瘍発生又は癌を起こしやすい哺乳動物を指す。例としては、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、又はげっ歯類、例えば、マウス、ラット、ハムスター、又はモルモットが挙げられる。様々な実施形態において、対象は、治療、観察もしくは実験の対象であったもの又はその対象となる予定のものを指す。例えば、対象は、癌と診断された対象もしくは癌であると分かっている対象、又は対象における既知の癌に基づいて治療、観察もしくは実験のために選択された対象であり得る。
本明細書において使用される際、「治療」又は「治療すること」は、疾患もしくは障害、又はその少なくとも1つの兆候もしくは症状の改善を指す。「治療」又は「治療すること」は、例えば、少なくとも1つの兆候もしくは症状の安定化によって決定される疾患もしくは障害の進行の低減、又は少なくとも1つの兆候もしくは症状の進行速度の低下によって決定される進行速度の低下を指し得る。別の実施形態において、「治療」又は「治療すること」は、疾患又は障害の発症を遅延させることを指す。
本明細書において使用される際、「予防」又は「予防すること」は、所定の疾患又は障害の兆候又は症状を得るか又は有するリスクの低減、すなわち、予防的治療を指す。
本明細書において使用される際の「治療有効量」という語句は、所望の治療効果を生じるのに有効な本教示の化合物を含む化合物、材料、又は組成物の量を意味する。したがって、治療有効量は、疾患又は障害を治療又は予防し、例えば、障害の少なくとも1つの兆候又は症状を改善する。様々な実施形態において、疾患又は障害は癌である。
2つの文字又は記号間にないダッシュ記号(「−」)は、置換基の結合点を示すのに使用される。例えば、−CONHは、炭素原子(C)を介して結合される。
「任意選択の」又は「任意選択的に」とは、その後に記載される事象又は状況が起こっても又は起こらなくてもよいこと、及び記載が、事象又は状況が起こる場合及び起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「任意選択的に置換されるアリール」は、本明細書に定義される「アリール」及び「置換アリール」の両方を包含する。1つ又は複数の置換基を含有する任意の基に関して、このような基は、立体的に実現困難、合成不可能、及び/又は本質的に不安定な任意の置換又は置換パターンを導入することが意図されていないことが当業者によって理解されるであろう。
本明細書において使用される際の「アルキル」という用語は、飽和直鎖状又は分枝鎖状炭化水素、例えば、本明細書においてそれぞれ(C〜C22)アルキル、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルキル、及び(C〜C)アルキルと呼ばれる、1〜22、1〜8、1〜6、又は1〜4個の炭素原子の直鎖状又は分枝鎖状基を指す。例示的なアルキル基としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、2−メチル−1−ブチル、3−メチル−1−ブチル、2−メチル−3−ブチル、2,2−ジメチル−1−プロピル、2−メチル−1−ペンチル、3−メチル−1−ペンチル、4−メチル−1−ペンチル、2−メチル−2−ペンチル、3−メチル−2−ペンチル、4−メチル−2−ペンチル、2,2−ジメチル−1−ブチル、3,3−ジメチル−1−ブチル、2−エチル−1−ブチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルが挙げられる。
本明細書において使用される際の「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合(例えば、「=」として示される)を有する不飽和直鎖状又は分枝鎖状炭化水素、例えば、本明細書においてそれぞれ(C〜C22)アルケニル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルケニル、及び(C〜C)アルケニルと呼ばれる、2〜22、2〜8、2〜6、又は2〜4個の炭素原子の直鎖状又は分枝鎖状基を指す。例示的なアルケニル基としては、限定されないが、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ブタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、2−エチルヘキセニル、2−プロピル−2−ブテニル、及び4−(2−メチル−3−ブテン)−ペンテニルが挙げられる。
本明細書において使用される際の「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合(例えば、「≡」として示される)を有する不飽和直鎖状又は分枝鎖状炭化水素、例えば、本明細書においてそれぞれ(C〜C22)アルキニル、(C〜C)アルキニル、(C〜C)アルキニル、及び(C〜C)アルキニルと呼ばれる、2〜22、2〜8、2〜6、2〜4個の炭素原子の直鎖状又は分枝鎖状基を指す。例示的なアルキニル基としては、限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、メチルプロピニル、4−メチル−1−ブチニル、4−プロピル−2−ペンチニル、及び4−ブチル−2−ヘキシニルが挙げられる。
本明細書において使用される際の「シクロアルキル」という用語は、飽和又は不飽和の単環式、二環式、他の多環式、又は架橋環状炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、3〜22、3〜12、又は3〜8個の環炭素を有することができ、本明細書においてそれぞれ(C〜C22)シクロアルキル、(C〜C12)シクロアルキル、又は(C〜C)シクロアルキルと呼ばれる。シクロアルキル基はまた、1つ又は複数の炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合を有し得る。
例示的な単環式シクロアルキル基としては、限定されないが、シクロペンタン(シクロペンチル)、シクロペンテン(シクロペンテニル)、シクロヘキサン(シクロへキシル)、シクロヘキセン(シクロヘキセニル)、シクロヘプタン(シクロへプチル)、シクロヘプテン(シクロヘプテニル)、シクロオクタン(シクロオクチル)、シクロオクテン(シクロオクテニル)、シクロノナン(シクロノニル)、シクロノネン(シクロノネニル)、シクロデカン(シクロデシル)、シクロデセン(シクロデセニル)、シクロウンデカン(シクロウンデシル)、シクロウンデセン(シクロウンデセニル)、シクロドデカン(シクロドデシル)、及びシクロドデセン(シクロドデセニル)が挙げられる。二環式、多環式、及び架橋環式基を含む他の例示的なシクロアルキル基としては、限定されないが、ビシクロブタン(ビシクロブチル)、ビシクロペンタン(ビシクロペンチル)、ビシクロヘキサン(ビシクロへキシル)、ビシクロヘプタン(ビシクロへプチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン(ビシクロ[2,2,1]へプチル)及びビシクロ[3,2,0]ヘプタン(ビシクロ[3,2,0]へプチル)を含む)、ビシクロオクタン(ビシクロオクチル、オクタヒドロペンタレン(オクタヒドロペンタレニル)、ビシクロ[3,2,1]オクタン(ビシクロ[3,2,1]オクチル)、及びビシクロ[2,2,2]オクタン(ビシクロ[2,2,2]オクチル)を含む)、及びアダマンタン(アダマンチル)が挙げられる。シクロアルキル基は、他の飽和又は不飽和シクロアルキル、アリール、又はヘテロシクリル基に縮合され得る。
本明細書において使用される際の「アリール」という用語は、単環、二環、又は他の多炭素環式芳香環系を指す。アリールは、6〜22、6〜18、6〜14、又は6〜10個の炭素を有することができ、本明細書においてそれぞれ(C〜C22)アリール、(C〜C18)アリール、(C〜C14)アリール、又は(C〜C10)アリールと呼ばれる。アリール基は、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択される1つ又は複数の環に任意選択的に縮合され得る。本明細書において使用される際の「二環式アリール」という用語は、別の芳香族又は非芳香族炭素環又は複素環に縮合されたアリール基を指す。例示的なアリール基としては、限定されないが、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、及びナフチル、ならびにベンゾ縮合炭素環式部分、例えば、5,6,7,8−テトラヒドロナフチルが挙げられる。例示的なアリール基としては、限定されないが、本明細書において「(C)アリール」又はフェニルと呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系も挙げられる。フェニル基はまた、シクロヘキサン又はシクロペンタン環に縮合されて別のアリールを形成し得る。
本明細書において使用される際の「アリールアルキル」という用語は、少なくとも1つのアリール置換基を有するアルキル基(例えば、−アリール−アルキル−)を指す。例示的なアリールアルキル基としては、限定されないが、本明細書において「(C)アリールアルキル」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系を有するアリールアルキルが挙げられる。本明細書において使用される際の「ベンジル」という用語は、基−CH−フェニルを指す。
「ヘテロアルキル」という用語は、1つ又は複数の炭素原子がヘテロ原子で置換された本明細書に記載されるアルキル基を指す。好適なヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、リンなどが挙げられる。ヘテロアルキル基の例としては、限定されないが、アルコキシ、アミノ、チオエステルなどが挙げられる。
「ヘテロアルケニル」及び「ヘテロアルキニル」という用語は、上記のヘテロアルキルと長さ及び可能な置換が類似するが、それぞれ少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含む不飽和脂肪族基を指す。
「複素環」という用語は、環原子として少なくとも1つのヘテロ原子、一部の例では、環原子として1〜3個のヘテロ原子を含有し、環原子の残りが炭素原子である環式基を指す。好適なヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、リンなどが挙げられる。一部の例では、複素環は、環構造が1〜4個のヘテロ原子を含む3員〜10員環構造又は3員〜7員環であり得る。「複素環」という用語は、ヘテロアリール基、飽和複素環(例えば、シクロヘテロアルキル)基、又はそれらの組合せを含み得る。複素環は、飽和分子であってもよく、又は1つ又は複数の二重結合を含み得る。一部の例では、複素環は、少なくとも1つの環が少なくとも1つの窒素環原子を含む窒素複素環である。複素環は、他の環に縮合されて多環式複素環を形成し得る。したがって、複素環としては、上記の複素環のいずれかが、アリール、シクロアルキル、及び複素環から独立して選択される1つ又は2つの環に縮合される二環式、三環式、及び四環式基も挙げられる。複素環はまた、スピロ環式基に縮合され得る。
複素環としては、例えば、チオフェン、ベンゾチオフェン、チアントレン、フラン、テトラヒドロフラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、ジヒドロピロール、ピロリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、オキサジン、ピペリジン、ホモピペリジン(ヘキサメチレンイミン)、ピペラジン(例えば、N−メチルピペラジン)、モルホリン、ラクトン、ラクタム(アゼチジノン及びピロリジノンなど)、スルタム、スルトン、それらの他の飽和及び/又は不飽和誘導体などが挙げられる。
一部の例では、複素環は、ヘテロ原子環原子(例えば、窒素)を介して化合物に結合され得る。一部の例では、複素環は、炭素環原子を介して化合物に結合され得る。一部の例では、複素環は、ピリジン、イミダゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アクリジン、アクリジン−9−アミン、ビピリジン、ナフチリジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、ベンゾイソキノリン、フェナントリジン−1,9−ジアミンなどである。
本明細書において使用される際の「複素芳香族」又は「ヘテロアリール」という用語は、1つ又は複数のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、及び硫黄などの1〜3個のヘテロ原子を含有する、単環式、二環式、又は他の多環式芳香環系を指す。ヘテロアリールはまた、非芳香環に縮合され得る。様々な実施形態において、本明細書において使用される際の「複素芳香族」又は「ヘテロアリール」という用語は、示されない限り、N、O、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する芳香環を含有する、安定した5員〜7員単環式、安定した9員〜10員縮合二環式、又は安定した12員〜14員縮合三環式複素環系を表す。ある実施形態において、少なくとも1つの窒素は、芳香環内にある。
複素芳香族又はヘテロアリールとしては、限定されないが、本明細書において「(C〜C)ヘテロアリール」と呼ばれる、環が2〜5個の炭素原子及び1〜3個のヘテロ原子を含む単環式芳香環が挙げられる。単環式複素芳香族(又はヘテロアリール)の例示的な例としては、限定されないが、ピリジン(ピリジニル)、ピリダジン(ピリダジニル)、ピリミジン(ピリミジル)、ピラジン(ピラジル)、トリアジン(トリアジニル)、ピロール(ピロリル)、ピラゾール(ピラゾリル)、イミダゾール(イミダゾリル)、(1,2,3)−及び(1,2,4)−トリアゾール((1,2,3)−及び(1,2,4)−トリアゾリル)、ピラジン(ピラジニル)、ピリミジン(ピリミジニル)、テトラゾール(テトラゾリル)、フラン(フリル)、チオフェン(チエニル)、イソオキサゾール(イソオキサゾリル)、チアゾール(チアゾリル)、イソオキサゾール(イソオキサゾリル)、及びオキサゾール(オキサゾリル)が挙げられる。
本明細書において使用される際の「二環式複素芳香族」又は「二環式ヘテロアリール」という用語は、別の芳香族又は非芳香族炭素環又は複素環に縮合されたヘテロアリール基を指す。例示的な二環式複素芳香族又はヘテロアリールとしては、限定されないが、一方又は両方の環がヘテロ原子を含有する5,6−又は6,6−縮合系が挙げられる。「二環式複素芳香族」又は「二環式ヘテロアリール」という用語は、一方又は両方の環が環ヘテロ原子を含有する還元型又は部分還元型の縮合芳香族系も包含する。環系は、酸素、窒素、及び硫黄から独立して選択される3個までのヘテロ原子を含有し得る。
例示的な二環式複素芳香族(又はヘテロアリール)としては、限定されないが、キナゾリン(キナゾリニル)、ベンゾオキサゾール(ベンゾオキサゾリル)、ベンゾチオフェン(ベンゾチオフェニル)、ベンゾオキサゾール(ベンゾオキサゾリル)、ベンゾイソオキサゾール(ベンゾイソオキサゾリル)、ベンゾイミダゾール(ベンゾイミダゾリル)、ベンゾチアゾール(ベンゾチアゾリル)、ベンゾフラン(ベンゾフラニル)、ベンゾイソチアゾール(ベンゾイソチアゾリル)、インドール(インドリル)、インダゾール(インダゾリル)、インドリジン(インドリジニル)、キノリン(キノリニル)、イソキノリン(イソキノリニル)、ナフチリジン(ナフチリジル)、フタラジン(フタラジニル)、フタラジン(フタラジニル)、プテリジン(プテリジニル)、プリン(プリニル)、ベンゾトリアゾール(ベンゾトリアゾリル)、及びベンゾフラン(ベンゾフラニル)が挙げられる。ある実施形態において、二環式複素芳香族(又は二環式ヘテロアリール)は、キナゾリン(キナゾリニル)、ベンゾイミダゾール(ベンゾイミダゾリル)、ベンゾチアゾール(ベンゾチアゾリル)、インドール(インドリル)、キノリン(キノリニル)、イソキノリン(イソキノリニル)、及びフタラジン(フタラジニル)から選択される。特定の実施形態において、二環式複素芳香族(又は二環式ヘテロアリール)は、キノリン(キノリニル)又はイソキノリン(イソキノリニル)である。
本明細書において使用される際の「三環式複素芳香族」又は「三環式ヘテロアリール」という用語は、別の芳香族又は非芳香族炭素環又は複素環に縮合された二環式ヘテロアリール基を指す。「三環式複素芳香族」又は「三環式ヘテロアリール」という用語は、一方又は両方の環が環ヘテロ原子を含有する還元型又は部分還元型の縮合芳香族系も包含する。三環式複素芳香族(三環式ヘテロアリール)における環のそれぞれは、酸素、窒素、及び硫黄から独立して選択される3個までのヘテロ原子を含有し得る。
例示的な三環式複素芳香族(又はヘテロアリール)としては、限定されないが、アクリジン(アクリジニル)、9H−ピリド[3,4−b]インドール(9H−ピリド[3,4−b]インドリル)、フェナントリジン(フェナントリジニル)、ピリド[1,2−a]ベンゾイミダゾール(ピリド[1,2−a]ベンゾイミダゾリル)、及びピリド[1,2−b]インダゾール(ピリド[1,2−b]インダゾリル)が挙げられる。
本明細書において使用される際の「アルコキシ」という用語は、酸素(−O−アルキル−)に結合されたアルキル基を指す。「アルコキシ」基は、酸素に結合されたアルケニル基(「アルケニルオキシ」)又は酸素に結合されたアルキニル基(「アルキニルオキシ」)基も含む。例示的なアルコキシ基としては、限定されないが、本明細書においてそれぞれ(C〜C22)アルコキシ、(C〜C)アルコキシ、又は(C〜C)アルコキシと呼ばれる、1〜22、1〜8、又は1〜6個の炭素原子のアルキル、アルケニル又はアルキニル基を有する基が挙げられる。例示的なアルコキシ基としては、限定されないが、メトキシ及びエトキシが挙げられる。
本明細書において使用される際の「シクロアルコキシ」という用語は、酸素に結合されたシクロアルキル基を指す。
本明細書において使用される際の「アリールオキシ」又は「アロキシ」という用語は、酸素原子に結合されたアリール基を指す。例示的なアリールオキシ基としては、限定されないが、本明細書において「(C)アリールオキシ」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系を有するアリールオキシが挙げられる。本明細書において使用される際の「アリールアルコキシ」という用語は、酸素原子に結合されたアリールアルキル基を指す。例示的なアリールアルキル基は、ベンジルオキシ基である。
本明細書において使用される際の「アミン」又は「アミノ」という用語は、非置換及び置換の両方のアミン、例えば、NRb’を指し、ここで、R、R、及びRb’が、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、カルバメート、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及び水素から選択され、R、R、及びRb’のうちの少なくとも1つが水素ではない。アミン又はアミノは、窒素を介して親分子基に結合され得る。アミン又はアミノはまた、環状であってもよく、例えば、R、R、及びRb’のいずれか2つが一緒に結合されてもよく、及び/又はNと一緒に3員〜12員環(例えば、モルホリノ又はピペリジニル)を形成してもよい。アミノという用語は、任意のアミノ基の対応する第四級アンモニウム塩も含む。例示的なアミンとしては、R、もしくはRb’のうちの少なくとも1つがアルキル基であるアルキルアミン、又はR、もしくはRb’のうちの少なくとも1つがシクロアルキル基であるシクロアルキルアミンが挙げられる。
本明細書において使用される際の「アンモニア」という用語は、NHを指す。
本明細書において使用される際の「アルデヒド」又は「ホルミル」という用語は、−CHOを指す。
本明細書において使用される際の用語「アシル」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールに結合されたカルボニル基を指す。例示的なアシル基としては、限定されないが、アセチル、ホルミル、プロピオニル、ベンゾイルなどが挙げられる。
本明細書において使用される際の「アミド」という用語は、形態−NRC(O)(R)−又は−C(O)NRを指し、ここで、R、R、及びRが、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及び水素から選択される。アミドは、炭素、窒素、R、R、又はRを介して別の基に結合され得る。アミドはまた、環状であってもよく、例えばR及びRは、結合されて3員〜12員環、例えば、3員〜10員環又は5員又は6員環を形成してもよい。「アミド」という用語は、スルホンアミド、尿素、ウレイド、カルバメート、カルバミン酸、及びそれらの環状型などの基を包含する。「アミド」という用語は、カルボキシ基に結合されたアミド基、例えば、−アミド−COONaなどの−アミド−COOH又は塩も包含する。
本明細書において使用される際の「アリールチオ」という用語は、硫黄原子に結合されたアリール基を指す。例示的なアリールチオ基としては、限定されないが、本明細書において「(C)アリールチオ」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系を有するアリールチオが挙げられる。
本明細書において使用される際の「アリールスルホニル」という用語は、スルホニル基に結合されたアリール基、例えば、−S(O)−アリール−を指す。例示的なアリールスルホニル基としては、限定されないが、本明細書において「(C)アリールスルホニル」と呼ばれる、環が6個の炭素原子を含む単環式芳香環系を有するアリールスルホニルが挙げられる。
本明細書において使用される際の「カルバメート」という用語は、−ROC(O)N(R)−、−ROC(O)N(R)R−、又は−OC(O)NRを指し、ここで、R、R、及びRが、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及び水素から選択される。例示的なカルバメートとしては、限定されないが、アリールカルバメート又はヘテロアリールカルバメート(例えば、ここで、R、R及びRのうちの少なくとも1つが、独立して、アリール又はヘテロアリール、例えば、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、及びピラジニルから選択される)が挙げられる。
本明細書において使用される際の「カルボニル」という用語は、−C(O)−を指す。
本明細書において使用される際の「カルボキシ」又は「カルボキシレート」という用語は、R−COOH又はその対応するカルボン酸塩(例えば、R−COONa)を指し、ここで、Rが、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、エーテル、ハロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルから選択され得る。例示的なカルボキシとしては、限定されないが、Rがアルキルであるアルキルカルボキシ、例えば、−O−C(O)−アルキルが挙げられる。例示的なカルボキシとしては、例えば、Rがフェニル及びトリルなどのアリール、又はピリジン、ピリダジン、ピリミジン及びピラジンなどのヘテロアリール基である、アリール又はヘテロアリールカルボキシも挙げられる。カルボキシという用語は、「カルボキシカルボニル」、例えば、カルボニル基に結合されたカルボキシ基、例えば、−C(O)−COOH又は塩、例えば、−C(O)−COONaも含む。
本明細書において使用される際の「ジカルボン酸」という用語は、飽和及び不飽和炭化水素ジカルボン酸及びその塩など、少なくとも2つのカルボン酸基を含有する基を指す。例示的なジカルボン酸としては、アルキルジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、限定されないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フタル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、マロン酸、フマル酸、(+)/(−)−リンゴ酸、(+)/(−)酒石酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられる。ジカルボン酸は、そのカルボン酸誘導体、例えば、無水物、イミド、ヒドラジド(例えば、無水コハク酸及びスクシンイミド)をさらに含む。
本明細書において使用される際の「シアノ」という用語は、−CNを指す。
「エステル」という用語は、構造−C(O)O−、−C(O)O−R−、−RC(O)O−R−、又は−RC(O)O−を指し、ここで、Oが水素に結合されず、R及びRが、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、エーテル、ハロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルから選択され得る。Rは、水素であり得るが、Rは、水素であることはない。エステルは、環状であってもよく、例えば、炭素原子及びR、酸素原子及びR、又はR及びRが結合されて3員〜12員環を形成してもよい。例示的なエステルとしては、限定されないが、R又はRのうちの少なくとも1つがアルキルであるアルキルエステル、例えば、−O−C(O)−アルキル、−C(O)−O−アルキル−、及び−アルキル−C(O)−O−アルキル−が挙げられる。例示的なエステルとしては、例えば、R又はRのうちの少なくとも1つがフェニルもしくはトリルなどのアリール基、又はピリジン、ピリダジン、ピリミジンもしくはピラジンなどのヘテロアリール基であるアリール又はヘテロアリールエステル、例えば、ニコチン酸エステルも挙げられる。例示的なエステルとしては、酸素が親分子に結合された、構造−RC(O)O−を有する逆エステルも挙げられる。例示的な逆エステルとしては、コハク酸エステル、D−アルギニネート、L−アルギニネート、L−リシネート及びD−リシネートが挙げられる。エステルとしては、カルボン酸無水物及び酸ハロゲン化物も挙げられる。
「エーテル」という用語は、構造−RO−R−を指し、ここで、R及びRが、独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びエーテルであり得る。エーテルは、R又はRを介して親分子基に結合され得る。例示的なエーテルとしては、限定されないが、アルコキシアルキル及びアルコキシアリール基が挙げられる。エーテルとしては、例えば、R及びRの一方又は両方がエーテルであるポリエーテルも挙げられる。
本明細書において使用される際の「ハロ」又は「ハロゲン」又は「ハル」又は「ハライド」という用語は、F、Cl、Br、又はIを指す。
本明細書において使用される際の「ハロアルキル」という用語は、1つ又は複数のハロゲン原子で置換されたアルキル基を指す。「ハロアルキル」は、1つ又は複数のハロゲン原子で置換されたアルケニル又はアルキニル基も包含する。
本明細書において使用される際の「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」という用語は、−OHを指す。
本明細書において使用される際の「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキル基に結合されたヒドロキシを指す。
本明細書において使用される際の「ヒドロキシアリール」という用語は、アリール基に結合されたヒドロキシを指す。
本明細書において使用される際の「ケトン」という用語は、構造−C(O)−R(例えば、アセチル、−C(O)CH)又は−R−C(O)−R−を指す。ケトンは、R又はRを介して別の基に結合され得る。R又はRは、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル又はアリールであり得、又はR又はRが結合されて、例えば、3員〜12員環を形成してもよい。
本明細書において使用される際の「モノエステル」という用語は、カルボン酸の一方がエステルとして官能化され、他方のカルボン酸が遊離カルボン酸又はカルボン酸の塩である、ジカルボン酸の類似体を指す。モノエステルの例としては、限定されないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸及びマレイン酸のモノエステルが挙げられる。
本明細書において使用される際の「ニトロ」という用語は、−NOを指す。
本明細書において使用される際の「ニトレート」という用語は、NO を指す。
本明細書において使用される際の「パーフルオロアルキル」という用語は、水素原子の全てがフッ素原子で置換されたアルキル基を指す。例示的なパーフルオロアルキル基としては、限定されないが、トリフルオロメチルなどのC〜Cパーフルオロアルキルが挙げられる。
本明細書において使用される際の「パーフルオロシクロアルキル」という用語は、水素原子の全てがフッ素原子で置換されたシクロアルキル基を指す。
本明細書において使用される際の「パーフルオロアルコキシ」という用語は、水素原子の全てがフッ素原子で置換されたアルコキシ基を指す。
本明細書において使用される際の「ホスフェート」という用語は、−OP(O)O 2−、−ROP(O)O 2−、−OP(O)(OR)O、又は−ROP(O)(OR)Oを指し、ここで、R、R及びRが、それぞれ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、又は水素であり得る。
本明細書において使用される際の「スルフィド」という用語は、構造−RS−を指し、ここで、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルであり得る。スルフィドは、環状であってもよく、例えば、3〜12員環を形成してもよい。本明細書において使用される際の「硫化アルキル」という用語は、硫黄原子に結合されたアルキル基を指す。
本明細書において使用される際の「スルフィニル」という用語は、構造−S(O)O−、−RS(O)O−、−RS(O)OR−、又は−S(O)OR−を指し、ここで、R及びRがアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシルであり得る。例示的なスルフィニル基としては、限定されないが、R又はRのうちの少なくとも1つがアルキル、アルケニル、又はアルキニルであるアルキルスルフィニルが挙げられる。
本明細書において使用される際の「スルホンアミド」という用語は、構造−(R)−N−S(O)−R−又は−R(R)N−S(O)−Rを指し、ここで、R、R、及びRが、例えば、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリルであり得る。例示的なスルホンアミドとしては、アルキルスルホンアミド(例えば、ここで、Rがアルキルである)、アリールスルホンアミド(例えば、ここで、Rがアリールである)、シクロアルキルスルホンアミド(例えば、ここで、Rがシクロアルキルである)、及びヘテロシクリルスルホンアミド(例えば、ここで、Rがヘテロシクリルである)が挙げられる。
本明細書において使用される際の「スルホネート」という用語は、スルホン酸の塩又はエステルを指す。「スルホン酸」という用語は、RSOHを指し、ここで、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、又はヘテロシクリル(例えば、アルキルスルホニル)である。本明細書において使用される際の「スルホニル」という用語は、構造RSO−を指し、ここで、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、及びヘテロシクリル(例えば、アルキルスルホニル)であり得る。本明細書において使用される際の「アルキルスルホニル」という用語は、スルホニル基に結合されたアルキル基を指す。「アルキルスルホニル」基は、任意選択的に、アルケニル又はアルキニル基を含有し得る。
本明細書において使用される際の「スルホネート」という用語は、RSO を指し、ここで、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、アルコキシ、アロキシ、又はアラルコキシであり、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロキシ、又はアラルコキシのそれぞれが任意選択的に置換される。非限定的な例としては、トリフレート(トリフルオロメタンスルホネートとしても知られている、CFSO )、ベンゼンスルホネート、トシレート(トルエンスルホネートとしても知られている)などが挙げられる。
「チオケトン」という用語は、構造−R−C(S)−R−を指す。ケトンは、R又はRを介して別の基に結合され得る。R又はRがアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル又はアリールであり得、又はR又はRが結合されて、環、例えば、3員〜12員環を形成してもよい。
上記の基のそれぞれが任意選択的に置換され得る。本明細書において使用される際、「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが想定され、「許容される」は、当業者に公知の価数の化学的規則に関するものである。「置換された」は、置換により、例えば、転位、環化、脱離などの変化を自然に起こさない安定した化合物が得られることも含むことが理解されるであろう。一部の例では、「置換された」は、一般に、本明細書に記載される置換基による水素の置換を指し得る。しかしながら、本明細書において使用される際の「置換された」は、例えば、「置換された」官能基が置換によって異なる官能基になるような、分子が特定される官能基の置換及び/又は変化を包含しない。例えば、「置換されたフェニル基」はフェニル部分をなお含む必要があり、置換により、この定義において、例えばピリジン環になるように修飾されることはできない。
広い態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分枝鎖状及び非分枝鎖状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、、例えば、本明細書に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対して1つ又は複数であってもよく、同じか又は異なり得る。本教示の趣旨では、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の価数を満たす、水素置換基及び/又は本明細書に記載される有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。
様々な実施形態において、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、これらのそれぞれは、1つ又は複数の好適な置換基で任意選択的に置換される。ある実施形態において、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、ここで、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンのそれぞれは、1つ又は複数の好適な置換基でさらに置換され得る。
置換基の例としては、限定されないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、チオケトン、エステル、ヘテロシクリル、−CN、アリール、アリールオキシ、パーハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキサミド、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、アルコキシアルキル、パーハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられる。ある実施形態において、置換基は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、及びニトロから選択される。
非限定的な例として、様々な実施形態において、本明細書においてアミン又はアミノと呼ばれるNRb’中のR、R、及びRb’のうちの1つがアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルから選択される場合、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルのそれぞれは、独立して、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の置換基で任意選択的に置換されてもよく、ここで、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンのそれぞれは、1つ又は複数の好適な置換基でさらに置換され得る。ある実施形態において、アミンがアルキルアミン又はシクロアルキルアミンである場合、アルキル又はシクロアルキルは、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、ホスフェート、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の置換基で置換され得る。特定の実施形態において、アミンがアルキルアミン又はシクロアルキルアミンである場合、アルキル又はシクロアルキルは、アミノ、カルボキシ、シアノ、及びヒドロキシルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の置換基で置換され得る。例えば、アルキルアミン又はシクロアルキルアミンにおけるアルキル又はシクロアルキルは、アミノ基で置換されて、ジアミンを形成する。
本明細書において使用される際、「好適な置換基」は、本発明の化合物又はそれらを調製するのに有用な中間体の合成又は薬学的実用性を無効にしない基を指す。好適な置換基の例としては、限定されないが、(C〜C22)、(C〜C)、(C〜C)、又は(C〜C)アルキル、アルケニル又はアルキニル;(C〜C22)、(C〜C18)、(C〜C14)、又は(C〜C10)アリール;(C〜C21)、(C〜C17)、(C〜C13)、又は(C〜C)ヘテロアリール;(C〜C22)、(C〜C12)、又は(C〜C)シクロアルキル;(C〜C22)、(C〜C)、(C〜C)、又は(C〜C)アルコキシ;(C〜C22)、(C〜C18)、(C〜C14)、又は(C〜C10)アリールオキシ;−CN;−OH;オキソ;ハロ;カルボキシ;アミノ、例えば、−NH((C〜C22)、(C〜C)、(C〜C)、又は(C〜C)アルキル)、−N((C〜C22)、(C〜C)、(C〜C)、又は(C〜C)アルキル)、−NH((C)アリール)、又は−N((C〜C10)アリール);ホルミル;ケトン、例えば、−CO((C〜C22)、(C〜C)、(C〜C)、又は(C〜C)アルキル)、−CO(((C〜C10)アリール)エステル、例えば、−CO((C〜C22)、(C〜C)、(C〜C)、又は(C〜C)アルキル)及び−CO((C〜C10)アリール)が挙げられる。当業者は、本発明の化合物の安定性ならびに薬理学的及び合成活性に基づいて好適な置換基を容易に選択することができる。
「薬学的に許容される対イオン」という用語は、薬学的に許容されるアニオン又はカチオンを指す。様々な実施形態において、薬学的に許容される対イオンは、薬学的に許容されるイオンである。例えば、薬学的に許容される対イオンは、シトレート、マレート、アセテート、オキサレート、クロリド、ブロミド、ヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、ホスフェート、酸ホスフェート、イソニコチネート、アセテート、ラクテート、サリチレート、タートレート、オレエート、タンネート、パントテネート、ビタートレート、アスコルベート、スクシネート、マレエート、ゲンチシネート、フマレート、グルコネート、グルカロネート、サッカレート、ホルメート、ベンゾエート、グルタメート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート及びパモエート(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))から選択される。ある実施形態において、薬学的に許容される対イオンは、クロリド、ブロミド、ヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、ホスフェート、酸ホスフェート、シトレート、マレート、アセテート、オキサレート、アセテート、及びラクテートから選択される。特定の実施形態において、薬学的に許容される対イオンは、クロリド、ブロミド、ヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、及びホスフェートから選択される。
「薬学的に許容される塩」という用語は、本教示において使用される化合物中に存在し得る酸性又は塩基性基の塩を指す。本質的に塩基性である本教示に含まれる化合物は、様々な無機及び有機酸と多様な塩を形成することができる。このような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するのに使用され得る酸は、非毒性酸付加塩を形成するもの、すなわち、限定されないが、スルフェート、シトレート、マレート、アセテート、オキサレート、クロリド、ブロミド、ヨージド、ニトレート、スルフェート、ビスルフェート、ホスフェート、酸ホスフェート、イソニコチネート、アセテート、ラクテート、サリチレート、シトレート、タートレート、オレエート、タンネート、パントテネート、ビタートレート、アスコルベート、スクシネート、マレエート、ゲンチシネート、フマレート、グルコネート、グルカロネート、サッカレート、ホルメート、ベンゾエート、グルタメート、メタンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート及びパモエート(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))塩を含む、薬理学的に許容されるアニオンを含む塩である。アミノ部分を含む本教示に含まれる化合物は、上記の酸に加えて、様々なアミノ酸と薬学的に許容される塩を形成し得る。本質的に酸性である本教示に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容されるカチオンと塩基塩を形成することができる。このような塩の例としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、及び鉄塩が挙げられる。
さらに、本明細書に記載される化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は、酸塩の溶液を塩基性化することによって得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基性化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って遊離塩基を好適な有機溶媒に溶解させ、溶液を酸で処理することによって生成され得る。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するのに使用され得る様々な合成方法を認識するであろう。
薬学的に許容される塩は、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,2−ジクロロ酢酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、2−オキソグルタル酸、4−アセトアミド安息香酸、4−アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸、カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、及びウンデシレン酸から選択される酸から得ることができる。
特に規定されない限り、これらの化学基は、それらの対応する一価、二価、三価、及び四価基を含む。例えば、メチルは、一価メチル(−CH)、二価メチル(−CH−、メチリル)、三価メチル(
)、及び四価メチル(
)を含む。
特に規定されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分、反応条件、及び他の特性又はパラメータの量を表す全ての数は、全ての例において、「約」という用語で修飾されているものと理解されるべきである。したがって、特に示されない限り、以下の本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは近似値であることが理解されるべきである。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限することを意図しないが、数値パラメータは、報告された有効数字の数及び通常の丸め法の適用に照らして読まれるべきである。例えば、「約」という用語は、「約」という用語が修飾する数の数値の±10%、±5%、±2%、±1%、±0.5%、又は±0.1%の変動を包含し得る。様々な実施形態において、「約」という用語は、この数の数値の±5%、±2%、±1%、又は±0.5%の変動を包含する。ある実施形態において、「約」という用語は、この数の数値の±5%、±2%、又は±1%の変動を包含する。特定の実施形態において、「約」という用語は、この数の数値の±5%の変動を包含する。特定の実施形態において、「約」という用語は、この数の数値の±2%の変動を包含する。特定の実施形態において、「約」という用語は、この数の数値の±1%の変動を包含する。
本明細書における全ての数値範囲は、記載された数値範囲内の全ての数値及び全ての数値範囲を含む。非限定的な例として、(C〜C)アルキルとしては、C、C、C、C、C、C、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、(C〜C)、及び(C〜C)アルキルのいずれか1つも挙げられる。
さらに、本開示の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは、上述されるように近似値であるが、実施例の節に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、このような数値は、測定装置及び/又は測定技術から得られるいくらかの誤差を本質的に含むことが理解されるべきである。
本教示は、一般に、化合物、組成物、及び化合物又は組成物を使用する方法を提供する。
化合物
本明細書において提供される様々な実施形態において、白金(IV)化合物は、タンパク質上の官能基と反応するための好適な反応基を含む。反応基は、タンパク質結合特性を有し、すなわち、それは、タンパク質に共有結合する。例えば、反応基は、リガンドによって導入され得る。様々な実施形態において、アキシアルリガンドの一方又は両方は、それぞれ1つ又は複数の反応基を含む。ある実施形態において、タンパク質は、アルブミンである。ある実施形態において、反応基は、マイケル受容体である。ある実施形態において、本教示の化合物は、式I:
で表されるか、又はその薬学的に許容される塩であり、式中:
X及びYが、独立して、NH、アルキル及びアリールから選択され;
及びRがそれぞれClであり、又はR及びRが結合されてオキサレートを形成し;
が、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリ基ル、アリール基及びヘテロアリール基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルのそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され;
及びRがそれぞれHであるか、又は一緒にシクロヘキシル環を構成し;
Zが、択一的に、不在であるか、又はアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンのそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され;及び
が、限定されないが、
などのタンパク質上の官能基と反応するための好適な反応基であり、ここで、RがCl、Br、F、メシレート、トシレート、O−(4−ニトロフェニル)、O−ペンタフルオロフェニルである。反応基はまた、活性化ジスルフィド基、ビニルカルボニル基、ビニルアセチレン基、エポキシド、アジリジン基又はアセチレン基であり得る。これらの基は、必要に応じて置換されていてもよい。
本発明の一実施形態は、XがRと一緒に、
からなる群から選択される化合物又はその薬学的に許容される塩である。
ある実施形態において、反応基は、マレイミドである。このような化合物は、本明細書において「モノマレイミド化合物」、すなわち、Pt(IV)Mモノマレイミド化合物と呼ばれ得る。本明細書において使用される際、「モノマレイミド化合物」は、単一のマレイミド基を有する化合物である。モノマレイミド化合物は、式
で表されるか、又はその薬学的に許容される塩であり、式中:
X及びYが、独立して、NH、アルキル及びアリールから選択され;
及びRがそれぞれClであり、又はR及びRが結合されてオキサレートを形成し;
が、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルのそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され;
及びRがそれぞれHであるか、又は一緒にシクロヘキシル環を構成し;及び
Zが、択一的に、不在であるか、又はアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンのそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換される。
何らかの理論に制約されることを意図しないが、Pt(IV)Mモノマレイミド化合物の非対称性は、白金薬剤の放出の調節を可能にする。
本発明の別の実施形態は、YがZ及びマレイミドと一緒に、
からなる群から選択されるマレイミド化合物又はその薬学的に許容される塩である。
本発明の別の実施形態は、式IIa:
で表されるマレイミド化合物又はその薬学的に許容される塩であり、式中:
X及びYが、独立して、NH、アルキル及びアリールから選択され;
及びRがそれぞれClであり、又はR及びRが結合されてオキサレートを形成し;
が、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルのそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され;及び
Zが、択一的に、不在であるか、又はアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンのそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換される。
本発明の別の実施形態は、式IIb:
で表されるマレイミド化合物又はその薬学的に許容される塩であり、式中:
X及びYが、独立して、NH、アルキル及びアリールから選択され;
及びRがそれぞれClであり、又はR及びRが結合されてオキサレートを形成し;
が、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルのそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され;及び
Zが、択一的に、不在であるか、又はアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基のそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンのそれぞれが、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換される。
本発明のPt(IV)M化合物の非限定的な例は、列挙される化合物:
からなる群から選択される化合物である。
本発明のPt(IV)M化合物の別の非限定的な例は、列挙される化合物:
からなる群から選択される化合物である。
本明細書に記載されるように、本教示のいくつかの化合物は、荷電した白金錯体及び対イオン(薬学的に許容される対イオンを含む)を含む塩として提供され得る。対イオンは、(−1)、(−2)、(−3)、(+1)、(+2)、(+3)などの電荷を有する弱イオン又は非求核性安定化イオンであり得る。ある実施形態において、対イオンは、(−1)の電荷を有する。他の実施形態において、対イオンは、(−2)の電荷を有する。ある実施形態において、対イオンは、(+1)の電荷を有する。他の実施形態において、対イオンは、(+2)の電荷を有する。
本教示は、本明細書に記載される化合物の1つ又は複数、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をそれぞれ含む組成物(医薬組成物を含む)をさらに含む。
製剤化、送達、投与、及び投薬
ある実施形態において、組成物は、ヒト、ヒト患者又は対象に投与される。本開示の趣旨では、「活性成分」という語句は、一般に、本明細書に記載されるように、送達されるPt(IV)M化合物を指す。
本明細書において提供される医薬組成物の説明は、主に、ヒトへの投与に好適な医薬組成物に向けられているが、このような組成物は、一般に、任意の他の動物、例えば、非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳動物への投与に好適であることが当業者によって理解されるであろう。ヒトへの投与に適した医薬組成物を様々な動物への投与に適するようにするための変性は、十分に理解されており、通常の熟練した獣医薬理学者は、あるとしても通常の実験のみでこのような変性を設計しかつ/又は行うことができる。医薬組成物の投与が想定される対象としては、限定されないが、ヒト及び/又は他の霊長類;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、及び/又はラットなどの商業に関連する哺乳動物を含む哺乳動物;及び/又は家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/又はシチメンチョウなどの商業に関連する鳥類を含む鳥類が挙げられる。
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で公知であるか又は今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、このような調製方法は、活性成分を賦形剤及び/又は1つ又は複数の他の補助成分と結合させ、次に、必要及び/又は所望に応じて生成物を分割、成形及び/又は包装して、所望の単回又は複数回投与単位にする工程を含む。ある実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、約15〜30℃の温度で調製、処理、包装又は貯蔵され得る。温度は、30℃未満であり得る。温度は、10℃未満であり得る。温度は、約0℃〜約10℃、約2℃〜約8℃であり得る。医薬組成物は、0℃未満、約−10℃未満、又は約−20℃未満の温度で貯蔵され得る。
ある実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、光から保護され得る。本明細書に記載される医薬組成物は、光への曝露を最小限に抑えるために琥珀色のバイアルなどの任意の不透明又は光フィルタリングバイアル中で包装又は貯蔵され得る。
本発明に係る医薬組成物は、バルクで、単一の単位用量として、及び/又は複数の単一の単位用量として調製、包装及び/又は販売され得る。本明細書において使用される際、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般に、対象に投与されるであろう活性成分の投与量及び/又はこのような投与量の好都合な割合、例えば、このような投与量の2分の1又は3分の1に等しい。
本発明に係る医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容される賦形剤、及び/又は任意のさらなる成分の相対量は、治療される対象の固有性、サイズ及び/又は状態に応じて、さらに組成物が投与される経路に応じて変化する。例として、組成物は、0.1%〜100%、例えば、0.5〜50%、1〜30%、5〜80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
本発明のPt(IV)M化合物は、(1)安定性を高め;(2)持続又は遅延放出を可能にし(例えば、Pt(IV)M化合物のデポー製剤から);(3)生体内分布を変化させ(例えば、Pt(IV)M化合物で特定の組織又は細胞型をターゲティングする);(4)インビボでのPt(IV)M化合物の放出プロファイルを変化させるために、1つ又は複数の賦形剤を用いて製剤化され得る。賦形剤の非限定的な例としては、あらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体媒体、分散もしくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、及び防腐剤が挙げられる。本発明の賦形剤としては、限定されないが、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、ミセル、デンドリマー、エキソソーム、シクロデキストリン、リポプレックス、コアシェル型ナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼを含む酵素、ナノ粒子模倣体及びそれらの組合せも挙げられる。したがって、本発明の製剤は、それぞれがPt(IV)M化合物の安定性を一緒に高める量で1つ又は複数の賦形剤を含み得る。
ある実施形態において、医薬組成物のpH値は、約3〜約7、3〜6、3〜5、約3、約4、約5、約6又は約7である。
賦形剤
医薬製剤は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよく、本明細書において使用される際、薬学的に許容される賦形剤としては、所望の特定の剤形に適したあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体媒体、分散もしくは懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘又は乳化剤、防腐剤、固体結合剤、滑沢剤、増量剤などが挙げられる。レミントン(Remington)のザ・サイエンス・アンド・プラクティス・オブ・ファーマシ、第21版(The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition)、A.R.ジェンナロ(A.R.Gennaro)(リピンコット(Lippincott)、ウィリアムズ(Williams)及びウィルキンス(Wilkins)、メリーランド州ボルチモア(Baltimore,MD)、2006年;全体が参照により本明細書に援用される)には、医薬組成物を製剤化するのに使用される様々な賦形剤及びその調製のための公知の技術が開示されている。任意の従来の賦形剤媒体が、何らかの望ましくない生物学的効果を生じるか、又は他に医薬組成物の任意の他の成分と有害な方法で相互作用することにより、物質又はその誘導体と不適合である場合を除いて、その使用は本発明の範囲内であると考えられる。
ある実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%純粋である。ある実施形態において、賦形剤は、ヒトへの使用及び動物への使用が承認されている。ある実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によって承認されている。ある実施形態において、賦形剤は、医薬品グレードである。ある実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP:United States Pharmacopoeia)、欧州薬局方(EP:European Pharmacopoeia)、英国薬局方(British Pharmacopoeia)、及び/又は国際薬局方(International Pharmacopoeia)の基準を満たす。
医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤としては、限定されないが、不活性希釈剤、分散及び/又は造粒剤、表面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、滑沢剤、及び/又は油が挙げられる。このような賦形剤は、任意選択的に医薬組成物に含まれていてもよい。
例示的な希釈剤としては、限定されないが、デキストロース、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、トウモロコシデンプン、粉砂糖など、及び/又はそれらの組合せが挙げられる。
例示的な造粒及び/又は分散剤としては、限定されないが、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、シトラスパルプ、寒天、ベントナイト、セルロース及び木材製品、天然スポンジ、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、シリケート、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル−ピロリドン)(クロスポビドン)、ナトリウムカルボキシメチルデンプン(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファデンプン(スターチ1500(starch 1500))、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガム(VEEGUM)(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物など、及び/又はそれらの組合せが挙げられる。
例示的な表面活性剤及び/又は乳化剤としては、限定されないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、及びレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]及びビーガム(VEEGUM)(登録商標)[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、エチレングリコールジステアレート、モノステアリン酸グリセリル、及びプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、及びカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[トゥイーン(TWEEN)(登録商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[スパン(SPAN)(登録商標)40]、ソルビタンモノステアレート[スパン(SPAN)(登録商標)60]、ソルビタントリステアレート[スパン(SPAN)(登録商標)65]、モノオレイン酸グリセリル、ソルビタンモノオレエート[スパン(SPAN)(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[MYRJ(登録商標)45]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、及びソルトール(SOLUTOL)(登録商標))、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、クレモフォール(CREMOPHOR)(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル、(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[BRIJ(登録商標)30])、ポリ(ビニル−ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー(Poloxamer)(登録商標)188(プルロニック(Pluronic)(登録商標)F−68)、ポロキサマー(Poloxamer)(登録商標)407(プルロニック(Pluronic)(登録商標)F−127)、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウムなど及び/又はそれらの組合せが挙げられる。
例示的な結合剤としては、限定されないが、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン及びデンプン糊);ゼラチン;糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然及び合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモス(Irish moss)の抽出物、パンワルガム(panwar gum)、ガティガム、イサポールハスク(isapol husk)の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニル−ピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガム(Veegum)(登録商標))、及びカラマツアラボガラクタン);アルギネート;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコールなど;及びそれらの組合せが挙げられる。
例示的な防腐剤としては、限定されないが、酸化防止剤、キレート剤、抗菌防腐剤、抗真菌防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、及び/又は他の防腐剤が挙げられ得る。例示的な酸化防止剤としては、限定されないが、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び/又は亜硫酸ナトリウムが挙げられる。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、及び/又はエデト酸三ナトリウムが挙げられる。例示的な抗菌防腐剤としては、限定されないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、及び/又はチメロサールが挙げられる。例示的な抗真菌防腐剤としては、限定されないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及び/又はソルビン酸が挙げられる。例示的なアルコール防腐剤としては、限定されないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、及び/又はフェニルエチルアルコールが挙げられる。例示的な酸性防腐剤としては、限定されないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、β−カロテン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及び/又はフィチン酸が挙げられる。他の防腐剤としては、限定されないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、グリダントプラス(GLYDANT PLUS)登録商標)、フェノニップ(PHENONIP)(登録商標)、メチルパラベン、ガーモール(GERMALL)(登録商標)115、ガーマベン(GERMABEN)(登録商標)II、ネオロン(NEOLONE)(商標)、ケーソン(KATHON)(商標)、及び/又はユーキシル(EUXYL)(登録商標)が挙げられる。
例示的な緩衝剤としては、限定されないが、コハク酸、酒石酸、及び乳酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D−グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、リン酸カルシウムヒドロキシド、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱性物質除去蒸留水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、及び/又はそれらの組合せが挙げられる。
例示的な滑沢剤としては、限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、水添植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、及びそれらの組合せが挙げられる。
例示的な油としては、限定されないが、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、クロスグリ種子、ルリヂサ、ビャクシン属の木(cade)、カモミール、キャノーラ、キャラウェー、カルナバ、ヒマシ、シナモン、カカオ脂、ヤシ、タラ肝、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、アマニ、ゲラニオール、ウリ類、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイの実、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リツェアクベバ、マカデミアナッツ、ゼニアオイ、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィ、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ケシ種子、カボチャ種子、ナタネ、米ヌカ、ローズマリ、ベニバナ、サンダルウッド、サスクアナ(sasquana)、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、及びコムギ胚芽油が挙げられる。例示的な油としては、限定されないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、及び/又はそれらの組合せが挙げられる。
カカオ脂及び坐薬ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び/又は芳香剤などの賦形剤が配合者の判断に従って組成物中に存在し得る。
ある実施形態において、賦形剤は、約0.5%(w/w)〜約50%(w/w)、約1%(w/w)〜約50%(w/w)、約0.5%(w/w)〜約20%(w/w)、約1%(w/w)〜約20%(w/w)、約1%(w/w)〜約10%(w/w)、又は約1%(w/w)〜約5%(w/w)の重量パーセントを有する。
ある実施形態において、賦形剤は、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、及び/又はイヌリンを含む。一実施形態において、賦形剤は、約1%(w/w)〜約10%(w/w)の重量パーセントを有するマンニトールを含む。マンニトールの濃度は、約1%(w/w)、2%(w/w)、3%(w/w)、又は4%(w/w)であり得る。
ある実施形態において、賦形剤は、約2〜約6、又は約4〜約5のpHを有する緩衝液を含む。緩衝液の濃度は、約0.5mM〜約100mM、約1mM〜約50mM、約1mM〜約20mM、約1mM〜約10mM、又は約1mM〜約5mMであり得る。
ある実施形態において、賦形剤は、クエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸及び/又は酒石酸緩衝液を含み得る。緩衝液の濃度は、約0.5mM〜約100mM、約1mM〜約10mMであり得る。
一実施形態において、賦形剤は、クエン酸ナトリウム及びクエン酸、又はクエン酸及び水酸化ナトリウムを含むクエン酸緩衝液を含む。クエン酸緩衝液の濃度は、少なくとも約5mMであり得る。
投与
本発明のPt(IV)M化合物は、治療的に有効な結果をもたらす任意の経路によって投与され得る。これらとしては、限定されないが、腸内、胃腸、硬膜外(epidural)、経口、経皮、硬膜外(epidural(peridural))、脳内(大脳の中)、脳室内(脳室の中)、経皮(皮膚への適用)、皮内(皮膚自体の中)、皮下(皮膚の下)、経鼻投与(鼻から)、静脈内(静脈の中)、動脈内(動脈の中)、筋肉内(筋肉の中)、心臓内(心臓の中)、骨内注入(骨髄の中)、鞘内(脊柱管の中)、腹腔内(腹膜内への注入もしくは注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼から)、海綿体内注入(陰茎基部の中)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身への分布のために無傷の皮膚を通して拡散)、経粘膜(粘膜を通して拡散)、吹送(鼻から)、舌下、舌下、かん腸剤、点眼薬(結膜へ)、又は点耳薬が挙げられる。特定の実施形態において、組成物は、それらが血液脳関門、血管バリア、又は他の上皮バリアをわたることを可能にするように投与され得る。投薬
本発明は、Pt(IV)M化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。本明細書に記載されるPt(IV)M化合物は、疾患、障害、及び/又は病態(例えば、作業記憶障害に関連する疾患、障害、及び/又は病態)を予防又は治療又は画像化するのに有効な任意の量及び任意の投与経路を用いて対象に投与され得る。正確な必要量は、対象の種、年齢、及び全身状態、疾患の重症度、具体的な組成物、その投与方法、その活性形態などに応じて対象ごとに異なる。
本発明に係る組成物は、典型的に、投与の容易さ及び投与量の均一性のために投与単位形態で製剤化される。しかしながら、本発明の組成物の1日の総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医によって決定され得ることが理解されるであろう。任意の特定の患者に対する具体的な治療的に有効であるか、予防的に有効であるか、又は適切なイメージング線量レベルは、治療される疾患及び疾患の重症度;用いられる具体的な化合物の活性;用いられる具体的な組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別及び食習慣;用いられる具体的な化合物の投与時期、投与経路、及び排せつ速度;治療期間;用いられる具体的な化合物と併用又は同時に使用される薬剤;及び医学分野において周知の同様の要因を含む様々な要因に応じて決まる。
ある実施形態において、本発明に係る組成物は、所望の治療、診断、予防、又はイメージング効果を得るために、1日1回以上、1日当たり対象の体重の約0.0001mg/kg〜約100mg/kg、約0.001mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.005mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.001mg/kg〜約0.005mg/kg、約0.05mg/kg〜約0.5mg/kg、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約0.1mg/kg〜約40mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、又は約1mg/kg〜約25mg/kg送達するのに十分な投与量レベルで投与され得る。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、2日おき、毎週、隔週、3週間ごと、又は4週間ごとに送達され得る。ある実施形態において、所望の投与量は、複数回投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回、又はそれを超える投与)を用いて送達され得る。複数回投与が用いられる場合、本明細書に記載されるものなどの分割投与計画が使用され得る。
ある実施形態において、本発明に係る組成物は、所望の治療、診断、予防、又はイメージング効果を得るために、1日1回以上、1日当たり対象の体表面積の約10mg/m〜約500mg/m、約20mg/m〜約400mg/m、約50mg/m〜約400mg/m、約20mg/m〜約200mg/m、約20mg/m〜約100mg/mの投与量レベルで投与され得る。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、2日おき、毎週、隔週、3週間ごと、又は4週間ごとに送達され得る。ある実施形態において、所望の投与量は、複数回投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回、又はそれを超える投与)を用いて送達され得る。複数回投与が用いられる場合、本明細書に記載されるものなどの分割投与計画が使用され得る。
本明細書において使用される際、「分割用量」は、単一の単位用量又は1日当たりの総用量を2つ以上の用量、例えば、単一の単位用量の2回以上の投与に分割することである。本明細書において使用される際、「単一の単位用量」は、1回用量/一度で/単一の経路/単一の接触点、すなわち、単一の投与事象で投与される任意の治療用量である。本明細書において使用される際、「1日当たりの総用量」は、24時間の期間の所定又は規定の量である。それは、単一の単位用量として投与され得る。一実施形態において、本発明のPt(IV)M化合物は、分割用量で対象に投与される。Pt(IV)M化合物は、緩衝液のみの中又は本明細書に記載される製剤中で製剤化され得る。
剤形
本明細書に記載される医薬組成物は、経口、局所、鼻腔内、気管内、又は注射用(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、心臓内、腹腔内、皮下)などの本明細書に記載される剤形に製剤化され得る。
液体剤形
非経口投与用の液体剤形としては、限定されないが、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及び/又はエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、限定されないが、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含む、当該技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤を含み得る。非経口投与に関する特定の実施形態において、組成物は、可溶化剤、例えば、クレモフォール(CREMOPHOR)(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、及び/又はそれらの組合せと混合され得る。
注射用
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性又は油性懸濁液は、公知の技術に従って製剤化されてもよく、好適な分散剤、湿潤剤、及び/又は懸濁化剤を含み得る。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤及び/又は溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液、及び/又はエマルション、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液であり得る。用いられ得る許容されるビヒクル及び溶媒の中でも、限定されないが、水、リンゲル液、U.S.P.、及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。滅菌固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来用いられている。この目的のため、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油が用いられ得る。オレイン酸などの脂肪酸が注射用製剤の調製に使用され得る。
注射用製剤は、例えば、乾式加熱、湿式加熱、もしくは照射に対する曝露により、又は細菌保持フィルタを通したろ過により、及び/又は使用前に滅菌水又は他の滅菌注射用媒体に溶解又は分散され得る滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことにより滅菌され得る。
活性成分の効果を延長するために、皮下又は筋肉内注射からの活性成分の吸収を遅らせることが望ましいことがある。これは、難水溶性の結晶性又は非晶質材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。その際、Pt(IV)M化合物の吸収速度は、その溶解速度に左右され、これは、したがって結晶サイズ及び結晶形態に左右され得る。あるいは、非経口投与されたPt(IV)M化合物の遅延吸収は、モノマリミドを油媒体に溶解又は懸濁させることによって達成され得る。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中でPt(IV)M化合物のマイクロカプセルマトリクスを形成することによって作製される。ポリマーに対するPt(IV)M化合物の比率及び用いられる特定のポリマーの性質に応じて、Pt(IV)M化合物の放出の速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、限定されないが、ポリ乳酸、ポリラクトン、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、Pt(IV)M化合物を、生体組織と適合するリポソーム又はマイクロエマルションに取り込むことによって調製され得る。
肺用
肺送達に有用であると本明細書に記載される製剤は、医薬組成物の鼻腔内投与にも使用され得る。鼻腔内投与に好適な別の製剤は、活性成分を含み、約0.2μm〜500μmの平均粒径を有する粗粉末であり得る。このような製剤は、嗅ぎ薬が吸われる方法で、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔を通した急速な吸入によって投与され得る。
経鼻投与に好適な製剤は、例えば、わずか約0.1%(w/w)及び100%(w/w)もの活性成分を含んでもよく、本明細書に記載されるさらなる成分の1つ又は複数を含み得る。医薬組成物は、口腔投与に好適な製剤中で調製、包装、及び/又は販売され得る。このような製剤は、例えば、従来の方法を用いて作製される錠剤及び/又はトローチの形態であってもよく、例えば、約0.1%〜20%(w/w)の活性成分を含有してもよく、残りは、口腔内で溶解可能及び/又は分解可能な組成物と、任意選択的に、本明細書に記載されるさらなる成分の1つ又は複数とを含み得る。あるいは、口腔投与に好適な製剤は、活性成分を含む粉末及び/又はエアロゾル化及び/又は霧状溶液及び/又は懸濁液を含み得る。このような粉末、エアロゾル化、及び/又はエアロゾル化製剤は、分散されると、約0.1nm〜約200nmの範囲の平均粒径及び/又は液滴サイズを有してもよく、本明細書に記載される任意のさらなる成分の1つ又は複数をさらに含み得る。
医薬品の製剤化及び/又は製造における概論は、例えば、レミントン(Remington):ザ・サイエンス・アンド・プラクティス・オブ・ファーマシ、第21版(The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.)、リピンコット(Lippincott)、ウィリアムズ(Williams)及びウィルキンス(Wilkins)、2005年(全体が参照により本明細書に援用される)に見出される。
コーティング又はシェル
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、及び顆粒の固体剤形は、腸溶コーティング及び医薬品製剤化分野において周知の他のコーティングなどのコーティング及びシェルを用いて調製され得る。それらは、任意選択的に乳白剤を含んでもよく、それらが、活性成分のみ又は活性成分を優先的に、腸管の特定の部分で、任意選択的に遅延方式で放出する組成のものであり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物が、ラクトース又は乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟質及び硬質ゼラチンカプセルにおける充填剤として用いられ得る。
医薬組成物及び使用方法
本教示の実施形態はまた、本明細書に記載される技術及び組成物及び組成物の組合せのいずれかに従って過剰増殖性疾患、癌及び/又は腫瘍を治療することに関する。
様々な実施形態において、癌に罹患した対象を治療するための方法であって、本明細書に記載されるように、治療有効量の化合物を、癌に罹患した対象、癌の疑いがある又は癌の素因を有する対象に投与することを含む方法が提供される。本発明によれば、癌は、無制御な細胞増殖、例えば、過剰増殖によって特徴付けられる任意の疾患又は疾病を包含する。癌は、腫瘍、例えば、固形腫瘍又は任意の新生物によって特徴付けられ得る。
ある実施形態において、対象は、化合物による治療に特に適応がなくてもよい。ある実施形態において、方法は、限定されないが、哺乳動物の癌細胞を含む癌細胞の使用を含む。一部の例では、哺乳動物の癌細胞は、ヒト癌細胞である。
ある実施形態において、本教示の化合物は、癌及び/又は腫瘍増殖を阻害することが分かった。それらはまた、細胞増殖、侵襲性、及び/又は転移を低減し得るため、癌の治療に有用である。
ある実施形態において、本教示の化合物は、腫瘍もしくは癌の増殖を防止し、かつ/又は腫瘍もしくは癌の転移を防止するのに使用され得る。ある実施形態において、本教示の組成物は、癌を縮小又は破壊するのに使用され得る。
ある実施形態において、本明細書において提供される化合物は、癌細胞の増殖を阻害するのに有用である。ある実施形態において、本明細書において提供される化合物は、細胞増殖の阻害、例えば、細胞増殖の速度の抑制、細胞増殖の防止、及び/又は細胞死の誘導に有用である。一般に、本明細書に記載される化合物は、癌細胞の細胞増殖を阻害し、又は癌細胞の増殖の阻害及び/もしくは細胞死の誘導の両方が可能である。
本教示の方法によって治療可能な癌は、一般に、哺乳動物において生じる。哺乳動物としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びウシが挙げられる。様々な実施形態において、癌は、肺癌、例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、扁平上皮肺癌、乳癌、例えば、変異型BRCA1及び/又は変異型BRCA2乳癌、非BRCA関連乳癌、大腸癌、結腸癌、卵巣癌、膵臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮頸癌、腎臓癌、白血病、中枢神経系の癌、骨髄腫、黒色腫、中皮腫、胃癌、直腸癌、大腸の癌、小腸の癌、食道癌、子宮癌、頭頸部癌、子宮内膜癌、眼癌、甲状腺癌、精巣癌、胆管癌、肝臓癌、腎臓癌、下垂体癌、リンパ腫、脳腫瘍、神経膠腫、多形膠芽細胞腫、髄膜腫、髄芽腫、星細胞腫、神経芽細胞腫、皮膚の基底細胞癌、肉腫、滑膜肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、軟骨肉腫、及び線維肉腫である。ある実施形態において、癌は、肺癌である。特定の実施形態において、癌は、ヒトの肺癌、卵巣癌、膵臓癌又は大腸癌である。
ある実施形態において、本教示の化合物は、BRCA1変異、BRCA2変異、ERCC1又はERCC2変異、ファンコーニ貧血遺伝子、MLH1、MSH2、PTENの変異、DNA修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異、非相同DNA修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異、ヌクレオチド除去修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異、DNAミスマッチ修復に関与するタンパク質をコードする遺伝子の変異、DNA修復に欠陥を有する腫瘍を同定する遺伝子検査、ERCC1又はERCC2などのDNA修復に関与する遺伝子の発現の変化などを有する癌細胞に投与され得る。変異は、生殖細胞系又は体細胞であり得る。
別の態様において、本教示の化合物は、アルブミンの取り込みが増加した細胞、例えば、限定されないが、微飲作用を増加させる変異を有する細胞、マイトジェン活性化キナーゼ経路変異を有する細胞、KRAS変異を有する細胞、BRAF変異を有する細胞、RAC変異を有する細胞、RAS過剰発現を有する細胞、RAC1活性化を有する細胞、又はCDC42活性化を有する細胞に投与され得る。
ある実施形態において、アルブミンの取り込みが増加した細胞は、イメージング技術を用いて同定され得る。例えば、造影剤が患者に投与され、腫瘍部位における造影剤の蓄積レベルがイメージング技術を用いて測定される。イメージング技術は、超音波、X線、単一光子放射断層撮影/コンピュータ断層撮影(SPECT/CT:single−photon emission tomography/computed tomography)、ポジトロン放出型断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET/CT:positron−emission tomography/computed tomography)、磁気共鳴イメージング(MRI:magnetic resonance imaging)、コンピュータ断層撮影(CT:computed tomography)、単一光子放射断層撮影(SPECT:single−photon emission tomography)、蛍光断層撮影、及び蛍光分光法であり得る。
さらに別の態様において、本教示の化合物は、高いレベルの血管透過性滞留性亢進(EPR:enhanced permeability and retention)効果を有する腫瘍に投与され得る。ある実施形態において、高いレベルの血管透過性滞留性亢進効果を有する腫瘍は、イメージング技術を用いて同定され得る。非限定的な例として、酸化鉄ナノ粒子磁気共鳴イメージングは、患者に施してもよく、EPR効果が測定される。
ある実施形態において、本教示の化合物は、国際公開第2015017506号パンフレット(その内容は全体が参照により本明細書に援用される)に開示される方法により選択される対象に投与されてもよく、この方法は、
(a)造影剤を対象に投与することと;
(b)少なくとも1つの治療目標部位における造影剤の蓄積レベルを測定することと;
(c)造影剤の蓄積レベルに基づいて対象を選択することと
を含み、ここで、治療目標部位は、腫瘍である。
キット及び装置
本発明は、本発明の方法を好都合に及び/又は有効に行うための様々なキット及び装置を提供する。典型的に、キットは、使用者が対象の複数の処理を行い、及び/又は複数の実験を行うことが可能であるのに十分な量及び/又は数の成分を含み得る。
一実施形態において、本発明は、インビトロ又はインビボで腫瘍細胞の増殖を阻害するためのキットであって、本発明のPt(IV)M化合物又は本発明のPt(IV)M化合物の組合せを任意選択的に任意の他の活性薬剤と組み合わせて含むキットを提供する。
キットは、製剤組成物を形成するために、包装及び使用説明書及び/又は送達剤をさらに含み得る。送達剤は、生理食塩水、緩衝液、又は本明細書に開示される任意の送達剤を含み得る。各成分の量は、一貫した再現可能な高濃度生理食塩水又は単純緩衝液製剤を可能にするように変化され得る。成分はまた、一定の期間にわたって及び/又は様々な条件下で緩衝液中のPt(IV)M化合物の安定性を高めるために変化され得る。
本発明は、本発明のPt(IV)M化合物を組み込み得る装置を提供する。これらの装置は、それを必要とする対象、例えば、ヒト患者に直ちに送達することが可能な安定した製剤で含む。ある実施形態において、対象は、癌に罹患している。
装置の非限定的な例としては、ポンプ、カテーテル、針、経皮パッチ、加圧された嗅覚器送達装置、イオン導入装置、多層マイクロ流体素子が挙げられる。装置は、単回、複数回又は分割投与計画に従って本発明のPt(IV)M化合物を送達するのに用いられ得る。装置は、生体組織に、皮内、皮下、又は筋肉注射で本発明のPt(IV)M化合物を送達するのに用いられ得る。Pt(IV)M化合物を送達するのに好適な装置のさらなる例としては、限定されないが、国際公開第2014036555号パンフレットに開示される嚢内薬剤送達用の医療機器、米国特許出願公開第20080108697号明細書に開示されるI型ガラス製のガラス瓶、米国特許出願公開第20140308336号明細書に開示される分解性ポリマー及び活性薬剤で作製されるフィルムを含む薬剤溶出装置、注入マイクロポンプ、又は米国特許第5716988号明細書に開示される活性薬剤の薬学的に安定な製剤を含む容器を有する注入装置、国際公開第2015023557号パンフレットに開示されるリザーバ及びリザーバと流体連結しているチャネル部材を含む埋め込み可能な装置、米国特許出願公開第20090220612号明細書に開示される1つ又は複数の層を有する中空繊維ベースの生体適合性薬剤送達装置、国際公開第2013170069号パンフレットに開示される固体又は半固体形態の薬剤を含むリザーバを画定する筐体を有する細長い可撓性の装置を含む薬剤送達用の埋め込み可能な装置、米国特許第7326421号明細書に開示される生体吸収性インプラント装置(これらのそれぞれの内容は全体が参照により本明細書に援用される)が挙げられる。以下の実施例は、本発明を例示することを意図し、限定することを意図しないことが理解されるであろう。様々な他の例ならびに上記の説明及び例の変更形態は、本開示を読んだ後、本発明の趣旨及び範囲を逸脱せずに当業者に明らかになるであろう。また、全てのこのような例又は変更形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本明細書に引用される全ての刊行物及び特許は、全体が参照により本明細書に援用される。
(実施例)
実施例1.Pt(IV)M化合物の調製
Pt(IV)M化合物の合成及びHPLC分析方法は、PCT出願番号PCT/米国特許出願公開第2015/037071号明細書(その内容は全体が参照により本明細書に援用される)の実施例1〜19に記載されている。
実施例2.注射用の化合物8の粉末の組成
化合物8の安定した製剤化を決定するために、いくつかの実験を行って、pH、緩衝液モル濃度、光への曝露、及び温度を含む様々な条件下で化合物8の安定性を評価した。2つの主な不純物が製剤化手順(以下に示される)の際に生じることが分かった。第1の不純物、不純物−1は、製剤が光に曝されると発生し得る白金族を含まない遊離アミンである。第2の不純物、不純物−2は、5を超えるpH値を形成するマレイミド基の開環生成物である。広範な評価後、最終的な製剤が、注射用の水中5%のマンニトールを含む、pH約4の5mMのクエン酸緩衝液中の3〜5mg/mlの化合物8の溶液であることが分かった。ビヒクルの同定後、いくつかの薬剤物質ロットの飽和溶解度が最適なビヒクル中で決定された。製剤化中及び製剤化後、組成物は、光から保護され、製剤化中に2〜8℃に維持され、両方の不純物の形成を最小限に抑えるために貯蔵時に冷蔵されなければならない。
結果
pH安定性:120mMのブリトン−ロビンソンユニバーサル緩衝液を用いたpH範囲スクリーン
マレイミド基が生理学的pH値で開環生成物になりやすいことは、文献において十分に確立されている。ある範囲のpH値で化合物8の安定性を決定するために、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中の10mg/mlの化合物8のストック溶液を、2、4、5、6、7.3、及び8の値に設定されたpHの一連のブリトン−ロビンソン緩衝液に混合して0.1mg/mlの最終濃度の化合物8を作製した。室温で24時間中に生成された不純物2(マレイミド開環不純物)の量が図1に示される。
この予備実験から、不純物2が最大で24時間にわたって4未満のpH値で生成されないことが分かった。より短い期間で、化合物8は、より高いpH値で安定している。例えば、不純物2は、pH5において4時間の時点で検出されず、pH6でも不純物2は1時間以内に検出されない。しかしながら、より長い貯蔵条件又は使用安定性時間の場合、総不純物プロファイルに対する不純物2の寄与を最小限に抑えるために、より低いpHが好ましい。
pH安定性:酸性化製剤の評価
緩衝液が安定性を維持するのに必要とされるかどうかを決定するために、2つの酸性化剤、塩酸及びクエン酸を5mMのクエン酸緩衝生理食塩水中の対照製剤に対して評価した。全てのビヒクルは、生理食塩水中で4のpHにし、各製剤は、各ビヒクル中の1mg/mlの濃度で作製した。室温で貯蔵される24時間にわたって生成される不純物2の相対量が図2に示される。
クエン酸緩衝製剤は、おそらく製剤を緩衝するその能力により、不純物2の形成を阻害する。対照的に、酸性化剤で作製される製剤の両方は、より高い不純物2の形成を示し、塩酸が24時間後に2面積%超を形成する。したがって、これらのデータに基づいて、緩衝された製剤が好ましい。
pH安定性:緩衝能力
酸性ビヒクル試験によって作成されるデータに基づいて、緩衝された製剤が好ましいことが確認された。臨床投薬の場合、注射時に製剤の緩衝能力が血液の緩衝能力によって覆されるように、投与される緩衝液の量を減少させるのが最適である。生理学的値に対するpHのこの変化は、薬剤におけるマレイミド基へのアルブミンの結合のために理想的である。さらに、非臨床試験において投与される緩衝液の量を10mM未満に抑えることが文献によって示唆されている。
緩衝能力の影響を評価するために、製剤は、5mM及び100mMのクエン酸生理食塩水(pH約4)で作製された。2つの製剤は、100mMのシトレート中において、一方が0.1mg/ml及び他方が1mg/mlで作製された。1mg/mlで5mMのシトレートの第3の製剤は、緩衝能力の増加が製剤の安定性を向上させたかどうかを決定するために比較のために作製した。
緩衝能力は、図3に示されるように、化合物8の安定性に対する影響をほとんど与えないようであった。10時間にわたる不純物プロファイルは、5mM対100mMで同様であった。したがって、より多い量の緩衝液を使用するリスクを軽減するために、より低いモル濃度の緩衝液が選択された。
pH安定性:pHの最終的な決定
薬剤製品の安定性に対するpHの寄与の徹底的分析後、最後の2つのビヒクルは、pHが4又は5のいずれかに調整された5mMのクエン酸生理食塩水からなると見なされた。両方のプロトタイプは、模擬製造プロセス及び模擬臨床的希釈試験において評価した。
バイアルの選択:透明対琥珀色
化合物8生成物は、水溶液中に2つの主な分解経路、すなわち、不純物1及び不純物2を有する。不純物1が光に曝されると急速に形成される一方、不純物2はpH依存性である。両方の不純物の成長は独立しているようであるが、アミン生成物(不純物1)が高濃度で形成される場合、それは、製剤のpHを上昇させ、したがって不純物2の生成を触媒する。これらの不純物の形成を最小限に抑えるために、薬剤製品を琥珀色のバイアル中に貯蔵することが推奨される。以下の実験は、琥珀色のバイアルに対して透明のバイアル中に貯蔵されるときの製剤を監視する。
明条件対暗条件を比較するために、化合物8は、pH約4の5mMのクエン酸緩衝液生理食塩水中で製剤化され、2つの別個のバイアル(一方は透明で、他方は琥珀色)に入れた。製剤が室温で24時間貯蔵され、不純物1及び不純物2の量を観察した。図4及び5から、透明のバイアル中で化合物8溶液を光に曝すと、琥珀色のバイアルに含まれる溶液と比較して不純物1の量が増加したことが分かる(約0.75%の不純物1と比較して約10%の不純物1)。同様に、不純物2の量も、暗条件で貯蔵される場合、0.5%(透明のバイアル)から約0.25%(琥珀色のバイアル)に減少した。また、これらの実験から、不純物2の形成は、感光性ではなく、製剤のpHに依存性であると結論付けられた。
温度の影響
2つの主な分解生成物の形成に対する温度及び光の両方の影響を決定するために、模擬製造プロセス及び模擬臨床的希釈試験を行った。模擬プロセスは、大規模な製造プロセスをシミュレートする、わずかな時間にわたる室温又は低温条件(例えば、氷浴)下での化合物8薬剤製品の製剤化及び保持によってシミュレートした。試料が模擬製造プロセスを経たら、それらは、凍結溶液として−20℃で貯蔵し、その後、投与前に臨床用に解凍した。模擬臨床的希釈試験では、各溶液は、臨床で予想される最も低い希釈係数で生理食塩水中において希釈した。次に、希釈された製剤は、室温でシリンジ中に貯蔵し、次に、最後に(両方の手順について)効力及び総不純物について分析した。
模擬製造プロセスでは、室温試料が製剤化され、室温で合計8時間貯蔵され、次に一晩冷蔵された。対照的に、低温試料は、氷上で製剤化され、2〜8℃で合計8時間貯蔵され、最後に−20℃に凍結された。不純物1及び不純物2の総量がそれぞれ図6及び7に示される。
不純物1の形成は、低温条件下での製剤化(24時間後に<0.3%)とは対照的に、室温で製剤化される場合により多かった(24時間後に約0.8%)。この傾向は、取られる時点のそれぞれにおいて観察された。同様に、不純物2の形成は、低温条件下での製剤化(24時間後に約0.1%)と比較して、室温で製剤化される場合にわずかに多かった(24時間後に約0.3%)。したがって、分解生成物、不純物1及び不純物2を最小限に抑えるために、低温条件(2〜8℃)下で化合物8薬剤製品を製造し、貯蔵することが推奨される。
臨床的希釈が不純物の総量にどのように寄与するかを理解するために、擬似製造プロセス試料を解凍し、生理食塩水中で希釈した。さらに、明条件と暗条件との比較が、臨床において製剤を光に曝すリスクを理解するために行われた。生理食塩水中での2.5倍の希釈後、化合物8溶液を2つのシリンジ中に吸い取った。暗条件の試料は、アルミニウム箔で光から保護し、明条件の試料は、蛍光電球の直下で貯蔵した。両方の模擬製造された化合物8溶液(室温及び低温)を模擬臨床的希釈試験において評価し、結果が図8及び9に示される。
最初の時点で、両方の分解生成物は、室温での製剤化と比較した場合より、低温条件下で製剤化される場合により少量で形成される。光への曝露又は8時間の暗条件後、不純物1及び不純物2の量は両方とも低温試料より室温試料でより多い。不純物の総量は、低温で製造され、希釈中に光から保護された製剤で最も少ない。
上記の結果に基づいて、化合物8を琥珀色のバイアル中で供給するのが推奨される。薬剤製品は、低温で製剤化され、冷凍貯蔵されるべきである。使用中の投与では、解凍及び希釈中の光への曝露は最小限に抑えられるべきであり、投与溶液は琥珀色の袋で覆われるべきである。
ロット依存性
異なる純度を有する2つのロットの化合物8が、製剤化中に生成される分解生成物の総量の差があるかどうかを決定するために比較された。化合物8のロットCAL−69−73A(99%の純度)及びCAL−69−74A(97%の純度)は、5mMのクエン酸生理食塩水(pH約4及び約5)中で評価した。
図10及び11は、試験される2つの化合物8の純度ロット間で有意な差が観察されなかったことを示した。
飽和溶解度:5mMのクエン酸生理食塩水(pH約4)
飽和溶解度は、5mMのクエン酸生理食塩水(pH約4)中の10〜20mg/mlの濃度を目標にすることによって試験した。製剤は、室温で1時間撹拌することによって調製した。それらは、製剤化中にアミン生成物(不純物1)の形成を最小限に抑えるために光から保護された。また、飽和溶解度は、いくつかのロットについて24時間の期間にわたって試験したが、化合物の分解のため、それは全てのロットについてさらに追跡されなかった。5つの薬剤物質ロットの飽和溶解度が表1に示される。
5つの異なるロットの化合物8の飽和溶解度は、ビヒクル中で8〜23mg/mlの範囲であった。一部の例では、溶液は、ろ過し、4℃で3〜5日間貯蔵した。濃度が時間とともにわずかに低下した。調製の直後に溶液をろ過し、次に、後の沈殿を引き起こし得るシーディングのリスクを最小限に抑えるために冷凍することが提案される。全体的に、飽和溶解度は、9mg/mlであると推定される。
方法
全ての試料は、バイナリポンプ及びダイオードアレイ検出器を備えたアジレント(Agilent)1260 HPLCにおいて分析した。2.7μmのビーズ直径を有するアジレント・ポロシェル(Agilent Poroshell)120 EC−C8カラム(カラムサイズ4.6×50mm)を使用した。カラムは、30℃に平衡化し、移動相は、A(精製蒸留水中0.1%のトリフルオロ酢酸[TFA])及びB(アセトニトリル[ACN]中0.1%のTFA)からなった。勾配は以下の通りであった。
流量は、1.5ml/分に設定し、試料は、5mMのクエン酸緩衝液を用いて1mg/mlの濃度に希釈し、5μlの注入量でHPLCに注入した。クロマトグラムは、2つの波長で分析した。不純物2の効力、面積パーセント純度、及び面積パーセントを決定するために、254nmの波長を監視した。不純物1の相対量は、310nmの波長を観察することによって決定した。標準は、試験のためにN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中で作製した。
賦形剤
マンニトールは、最も一般的に使用される凍結乾燥増量剤である。バルク充填溶液中のマンニトールの濃度、2.5%(w/w)は、許容されるケーキをもたらす、実験的に評価されるものの最小濃度である。
クエン酸とクエン酸ナトリウムとの組合せは、バルク充填溶液中の5mMのクエン酸緩衝液(pH約4〜5)を形成する。クエン酸緩衝液は、一般的に使用される非経口緩衝液である。5mMの濃度は、処理中に化合物8を安定させるのに有効である実験的に評価される緩衝液強度の最小値である。
マンニトールを用いた組成物又は用いない組成物を比較した。2〜8℃における溶液の安定性が7日間にわたって追跡された。凍結融解(F/T)安定性が3サイクルにわたって追跡された。以下の表に示されるように、マンニトールを用いた場合、化合物8の%T0(%T0は、濃度についてT0(初期)と比較した回収パーセントである)は、2〜8℃で7日間貯蔵した後に99.8%であった。化合物8の面積%は、98.5%であり、不純物1(Im.1)及び不純物2(Im.2)についてわずか0.12%及び0.18%であった。マンニトールを用いない場合、化合物8の%T0は、2〜8℃で7日間貯蔵した後にわずか97.6%であった。化合物8の面積%は、わずか97.6%であった一方、不純物1は、0.67の面積%を有し、不純物2は、0.22の面積%を有した。したがって、以下の表中のデータは、化合物8の製剤化安定性に対するマンニトールの予想外の利益を示した。化合物8は、2〜8℃で及びF/Tサイクル下で、マンニトールを含む組成物中でより安定していた。
結論
化合物8は、約pH4の5mMのクエン酸緩衝液及び5%のマンニトール中において3〜5mg/mLの薬剤濃度で製剤化する。製剤は、低温条件(2〜8℃)下において琥珀色のバイアル中で調製し、分解生成物、不純物1及び不純物2の形成を最小限に抑えるために、冷凍貯蔵することが推奨される。臨床的希釈中、化合物8は、光から保護することが提案される。化合物8は、光、pH、及び温度に感受性である。製剤開発の初期段階で、化合物8が水溶液中で2つの主な不純物を形成することが発見された。第1の不純物、不純物1は、製剤が光に曝されると発生し得る白金族を含まない遊離アミンである。第2の不純物、不純物2は、主に、6を超えるpH値で形成される、マレイミド基の開環生成物である。両方のプロセスの速度は、温度の低下とともに低下する。
したがって、高レベルの純度を確実にし、安定性を最大にするために、化合物8は、クエン酸緩衝液(低いpHを維持するため)を用いて製剤化され、凍結乾燥され(加水分解を最小限に抑えるため)、琥珀色のバイアル中に包装される(光への曝露を最小限に抑えるため)。
要約すると、注射用の化合物8の粉末は、化合物8、シスプラチンプロドラッグをマンニトール、クエン酸ナトリウム及びクエン酸とともに含有する滅菌した凍結乾燥粉末である。各投与単位は、栓付きの50mLの琥珀色のバイアル中に100mgの化合物8を含む。公称充填は、20mLである。投与前に、生成物が0.45%の塩化ナトリウムの20mLの水溶液でもどされて、5mMのクエン酸緩衝液、0.45%の塩化ナトリウム及び2.5%のマンニトール中の化合物8の5mg/mLの等張液を得る。
注射用の化合物8の粉末の組成が表2に示される。
あるいは、注射用の化合物8の粉末の各投与単位はまた、栓付きの50mLの琥珀色のバイアル中に50mgの化合物8を含有し得る。pHは、5mMのクエン酸緩衝液/生理食塩水を用いて約4に維持する。各バイアル中の公称充填は、10mLである。
実施例3.注射用の化合物8の粉末の製造プロセス
薬剤製品プロセスは、2.5%のマンニトール及び5mMのクエン酸緩衝液(pH約4〜5)溶液の冷却された溶液の調製から開始し、これに化合物8薬剤物質を5mg/mLの濃度で加える。この緩衝液中の薬剤物質の飽和溶解度は、16〜17mg/mLであることが実験的に示された。バルク溶液は、バイアルに無菌充填され、凍結乾燥され、滅菌されたフィルタ(0.2μm)である。化合物8の分解を最小限に抑えるために、バルク溶液は、処理中、冷却状態に維持し、光から保護する。乾燥粉末としての化合物8の凍結乾燥が貯蔵中の加水分解を最小限に抑えるための最良の手段として選択された。最後に、ろ過滅菌が薬剤製品を滅菌するための最も良好な手段として選択された。
容器施栓システム[注射用の化合物8の粉末]
容器施栓システムは、滅菌した凍結乾燥製品用の標準的な医薬品容器施栓成分を使用する。琥珀色の血清瓶が光から製品を保護するために選択された。ゴム栓は、栓との薬剤製品の相互作用を最小限に抑えるように設計されたフルロポリマーフィルムバリアで構成される。
適合性[注射用の化合物8の粉末]
薬剤製品をもどした溶液は、市販の静脈内(i.v.)輸液バッグ及び投与セット用量と適合性である。
バッチ処方[注射用の化合物8の粉末]
化合物8薬剤製品の本バッチサイズが表3に示され、バッチ処方が表15に示される。
製造プロセス
注射用の化合物8の粉末薬剤製品のための製造及び包装プロセスの流れ図が図12に示される。
製造プロセスの説明
注射用の化合物8の粉末の製造は、黄色灯下でクラス100,000の部屋において行われる。無菌処理工程は、VHP汚染除去アイソレータにおいて行われる。
バルク溶液は、周囲温度で撹拌器付きの25Lのステンレス鋼被覆容器中で所要量のクエン酸ナトリウム、クエン酸及びマンニトールを90%の必要量のWFIに溶解させることによって調製する。次に、バルク溶液が2〜8℃に冷却され、pHが4.0〜4.5の許容範囲内に確実にされた後、化合物8薬剤物質を加え、溶解するまで混合する。さらなるWFIをQSに加えて目標の体積にする。
無菌バイアル充填は、黄色灯下でVHP汚染除去アイソレータにおいて、自動化された充填/栓/キャッパー機(capper machine)によって行われる。バルク溶液は、アイソレータ壁のポート(porting)及び一連のリダンダント滅菌フィルタ(redundant sterile filter)(0.2μm)を介して、閉じられた蒸気滅菌ステンレス鋼被覆(2〜8℃)収集容器中に断続的にポンプ注入する。収集容器から溶液が50mLの琥珀色のバイアル中に分配される(公称充填20mL)。あるいは、溶液が、バイアルの破損を低減するために50mLの琥珀色のバイアル中に分配される(公称充填10mL)。バイアルが部分的に施栓されてトレーに移され、次にそれを5℃の棚設定点温度を有する凍結乾燥機に移す。バイアル移動中、凍結乾燥機は、アイソレータに開口している。
凍結乾燥サイクルは、−45℃(棚設定点)への急速凍結から開始し、−10℃(棚設定点)におけるアニーリングが続く。一次乾燥が−45℃(棚設定点)への急速凍結から開始し、真空が開始し、棚温度設定点が−10℃(生成物臨界温度:−5℃)に上昇した。一次乾燥が完了したら、棚温度設定点を30℃に上昇させることによって二次乾燥が開始する。サイクルが完了したら、凍結乾燥機に滅菌窒素をバックフィルし、栓を完全に固定する。
バイアルは、凍結乾燥機からアイソレータ中に移動させ、蓋をする。生成物のバイアルは、検査及び放出試験のための試料採取前に2〜8℃に保持する。次に、バイアルは−20℃で貯蔵され、一次ラベル付け、貯蔵及び流通のためにドライアイス上で配給業者に輸送される。
工程内管理の説明
化合物8の溶解
安定性を維持するために、溶液中の化合物8は、低いpH及び温度に保持し、光から保護しなければならない。これは、以下の管理手段によって行われる:
− 全てのオープン製造プロセスは黄色灯下で行われる;
− バルク溶液は配合され、処理中に温度が2〜8℃に維持された閉じられたステンレス鋼被覆容器中で貯蔵される;
− 充填中、バルク溶液は、2〜8℃に制御された閉じられたステンレス鋼被覆サージ容器中に維持される;
− クエン酸緩衝液はpH約4.2になるように配合される;
− 充填されたバイアルは、充填が完了するまで5℃の棚温度設定点で凍結乾燥機中に維持される。
無菌性
生成物の無菌性を確実にするために、以下の管理を用いる:
− 環境モニタリング;
− 生成物は、リダンダント滅菌フィルタ(0.2μm)に通してろ過する(後工程完全性合格(post−process integrity acceptance)は、バブルポイント試験に合格する単一フィルタに基づく);
− 無菌充填プロセスは、充填ラインで使用される最大及び最小の容器を覆う微生物培地(TSB)を用いてプロセスシミュレーションによって確認する;
− アイソレータVHP汚染除去手順が確認された;
− 凍結乾燥機滅菌サイクルが確認された。
凍結乾燥
良好な品質を確実にするために、低い水分含量で容易にもどされるケーキ及び以下の管理を用いた:
− 凍結乾燥サイクルは、生成物の熱的特性に基づいて設計し、パイロット規模試験において確認した;
− サイクルは凍結乾燥機中に予めプログラムし、温度及び圧力は連続して記録し、監視する。
重要な工程及び中間体の管理[注射用の化合物8の粉末]
表5に列挙される工程内試験は、注射用の化合物8の粉末の薬剤製品の製造プロセスの重要な工程のいくつかを管理するのに用いられる。
バッチ情報及び分析結果
提案される臨床試験に使用するための、薬剤製品である注射用の化合物8の粉末、50mLのバイアル中100mg/バイアル、又は50mLのバイアル中50mg/バイアルは、工程内管理の説明(Description of the in Process Controls)に記載されるプロセスを用いて無菌環境中で製造した。3つのバッチ(2つは開発及び1つは臨床)が同じプロセス、同じグレードの賦形剤及び溶液組成を用いて調製された。第1の開発バッチは、凍結乾燥前に2mLの充填で10mg/バイアルにおいて調製した。その後のバッチは、凍結乾燥前に20mLの充填で100mg/バイアル、又は10mLの充填で50mg/バイアルにおいて調製した。再構成後、10mg及び100mgは両方とも表6に示されるように5mg/mLである。また、再構成後、50mgのバイアルは、5mg/mLである。10mg及び100mgバッチの関連するバッチ分析データが表7に示される。
実施例4.化合物8の毒物学的試験
化合物8は、シスプラチンの新規なアルブミン結合プロドラッグである。その薬物動態特性の評価は、それが、タンパク質結合性が高く(>99%)、静脈内投与後、マウス、ラット及びイヌの血漿中の高い白金レベルをもたらすことを示した。
化合物8毒性は、単回及び反復投与非臨床毒物学的試験において評価した。この節に要約される試験のリストが以下の表8に示される。
単回投与試験は、反復投与毒性試験の用量及び種の選択ならびにイヌの心血管毒性試験の用量の選択を補助するために用量範囲設定(DRF:dose range−finding)試験として設計した。
ラットは、ラット及びイヌのDRF試験の結果、ラットが白金薬剤の予測モデルであることを示す文献データ(ポールAアンドリュー(Paul A Andrews)、デビッドD.スミス(David D.Smith)ら著、「白金抗癌剤の前臨床毒物学的試験の予測値(Predictive Value of Preclinical Toxicology Studies for Platinum Anticancer Drugs)」、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin Cancer Res)、1999年、第5巻、p.1161〜1167)(その内容は全体が参照により本明細書に援用される)に基づき、より感受性の高い種として反復投与試験のために選択された。ラットDRF試験において決定されるMTD又はSTD10、19mg/kg(122mg/m)は、イヌDRF試験において決定される10mg/kg(200mg/m)のMTDより低い。さらに、12mg/kg(240mg/m)までイヌの死亡又は治療に関連する臨床的観察はなかった一方、ラットの予定外の死亡が27mg/kg(162mg/m)で観察され、ラットにおいてより低い用量で死亡はなかった。
ラットの反復投与試験はまた、測定可能な毒性を生じることが予測され、かつ潜在的な臨床的毒性の基準となるシスプラチン臨床範囲(20〜100mg/m)内に入る36mg/mのHEDに当てはめられた(extrapolated)6mg/kgの用量で比較例としてシスプラチンを含んでいた。
毒性及びトキシコキネティクス(TK:toxicokinetic)評価が化合物8及びシスプラチンの両方について行われた。被験物質(化合物8又はシスプラチン)への曝露は、血漿、血漿限外ろ過液、及び赤血球(RBC:red blood cell)ペレット中の総白金濃度を分析することによって決定した。血漿限外ろ過液中の白金は遊離薬剤(非タンパク質結合)と見なされた一方、血漿中の白金は、タンパク質結合及び遊離薬剤の組合せであった。これらの2つの濃度の差は、タンパク質結合薬剤(化合物8又はシスプラチン)を表す。
化合物8について、白金への平均全身曝露は、血漿、RBCペレット及び限外ろ過液について用量範囲にわたってほぼ用量に比例して増加し、血漿中で最も高く、限外ろ過液中で最も低く、これは、血漿中の薬剤の主要な画分がタンパク質結合されることを意味している。シスプラチン群では、血漿中の用量正規化曝露は、化合物8で処理された動物における血漿曝露より低いが、RBCペレット及び限外ろ過液中の用量正規化曝露は、化合物8で処理された動物からのものより多かった。
化合物8による処理後の臨床的観察、機能観察バッテリー(FOB:functional observation battery)評価又は眼科検査において死亡はなく、何らの効果も示されなかった。シスプラチン群におけるFOB所見は、1日目の投与後の眼瞼閉鎖状態の発生の軽度の増加、2回目の投与後の熱応答時間の増加及び回復期の最後における平均前肢強度のわずかな低下を含んでいた。
体重は、7日目まで一時的に(9mg/kg)又は治療期間全体にわたって(14及び19mg/kg)、ビヒクル群と比べて化合物8で処理された動物において減少した。シスプラチン投与(6mg/kg)群は、化合物8の最高用量(19mg/kg)の群のラットと同等であったビヒクル群と比べて、雄及び雌ラットにおいて治療に関連する体重減少を示した。回復期中、14mg/kgの化合物8を投与された雄及び19mg/kgの化合物8を投与された雌の体重は、ビヒクルで処理された動物と同等であり、これは、正常状態に向かうわずかな好転を示す。逆に、シスプラチンで処理された動物は、体重減少を示し続け、これは、ビヒクル群と比べて回復期中によりひどくなる傾向にあった。
血液学及び臨床化学所見の大部分は、シスプラチン(6mg/kg)及び最高用量(19mg/kg)化合物8群について同様であった。しかしながら、腎機能の変化に起因する変化は、一般に、シスプラチン群においてより大きかった。例えば、6mg/kgのシスプラチンを投与されたラット群におけるクレアチニンの+288%(雄)及び+103%(雌)の増加と比較して、19mg/kgでは+76%(雄)及び+18%(雌)のクレアチニン濃度の用量依存的な軽度の増加が観察された。6mg/kgのシスプラチンにおける+386%(雄)及び150%(雌)と比較して、19mg/kgの化合物8では雄ラットにおける+14%の尿素窒素の軽度の増加が観察された。
シスプラチン群に特有の臨床的化学的変化は、ナトリウム、カリウム及び/又は塩化物濃度の軽度から中程度の低下を含んでいた。化合物8で処理された動物に特有の変化は、終末期の最後におけるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の用量依存的な軽度の増加に限られ、回復期中に完全に消失した。両方の群で見られるが、化合物8で処理された動物においてより顕著な変化は、増加したフィブリノゲン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アミラーゼ、リパーゼ、グロブリン、及びトリグリセリドレベルを含み、これらは全て回復期中に減少するか又は完全に消失した。
最終解剖(terminal necropsy)において、化合物8に関連する顕微鏡的所見は、雄の腎臓(≧9mg/kg)及び雌の腎臓(≧14mg/kg);雄及び雌の骨髄(大腿骨/胸骨)及び膵臓(≧9mg/kg);雄の胸腺及び雌の胸腺(≧14mg/kg)、最後の注射部位、雄及び雌の胃(腺胃及び非腺胃)及び皮膚(19mg/kg)、ならびに雄の精巣及び精巣上体(≧9mg/kg)に限定された。
6mg/kgにおけるシスプラチンに関連する顕微鏡的所見は、終末期の雄及び雌の腎臓、骨髄、胸腺、及び皮膚に限定され、顕微鏡的所見は、化合物8群について上述されるのと同様の特徴のものであった。BTP114で処理された雄において示される所見より増加した発生/重症度の精巣の変化が、シスプラチンで処理された動物において示された。最後の注射部位における顕微鏡的所見は、終末期の雄の炎症の重症度のわずかな増加に限定され、膵臓アポトーシスの発生の増加は、終末期の雌のみで示された。一般に、顕微鏡的所見は、19mg/kgの化合物8群と比較して増加した発生及び/又は重症度というものであった。
3週間の回復期の完了後、化合物8で処理された群において示される所見は、一般に、血小板数、コレステロール濃度、尿pH、クレアチニンクリアランスの示される変化、及び精巣の変化を除いて、正常状態に向かって好転する傾向があった。同様の所見が、3週間の回復期の最後にシスプラチンで処理された群において示された。
化合物8投与群において示される有害な所見に基づいて、ラット反復投与試験に基づいたSTD10(動物の10%において死亡又は不可逆的な強い毒性を引き起こす用量)は、≧19mg/kg(≧114mg/m)であると推定された。
シスプラチンを含む複数の白金化合物の前臨床的評価に関する広範な公開された文献がある。白金化合物に関連する毒性は、十分に確立されており、主な毒性は、吐き気及び嘔吐;腎毒性;神経毒性(知覚神経障害);中毒性難聴;及び骨髄抑制を含む。フェーズ1試験に見られる白金薬剤のDLT、すなわち、骨髄抑制、胃腸毒性腎毒性、及び神経毒性は、げっ歯類及びイヌの試験において非臨床的に予測された(ダイアナL.クラーク(Diana L.Clark)、ポールAアンドリュー(Paul A Andrews)、デビッドD.スミス(David D.Smith)ら著、「白金抗癌剤の前臨床毒物学的試験の予測値(Predictive Value of Preclinical Toxicology Studies for Platinum Anticancer Drugs)」、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin Cancer Res)、1999年、第5巻、p.1161〜1167、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。
白金薬剤、特にシスプラチンについて得られる広範な非臨床及び臨床データを考慮して、化合物8についての非臨床的な毒物学的プログラムは、ラット及びイヌの2つの単回投与毒性試験、及びラットの反復投与毒性試験に限定される。単回投与試験は、GLP反復投与毒性試験の用量及び種の選択ならびにイヌのGLP安全性薬理学的試験の用量の選択を補助するために、DRF試験として設計した。
ラットは、ラット及びイヌのDRF試験の結果ならびにラットが白金薬剤の予測モデルであることを示す文献(ダイアナL.クラーク(Diana L.Clark)、ポールAアンドリュー(Paul A Andrews)、デビッドD.スミス(David D.Smith)ら著、「白金抗癌剤の前臨床毒物学的試験の予測値(Predictive Value of Preclinical Toxicology Studies for Platinum Anticancer Drugs)」、クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin Cancer Res)、1999年、第5巻、p.1161〜1167、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)に基づいて、より感受性の高い種として反復投与試験のために選択された。ラットDRF試験において決定されるMTD及びSTD10、19mg/kg(122mg/m)は、イヌDRF試験において決定される10mg/kg(200mg/m)のMTDより低い。さらに、12mg/kg(240mg/m)までイヌの死亡又は治療に関連する臨床的観察はなかった一方、ラットの予定外の死亡が27mg/kg(162mg/m)で観察された。
ラットの反復投与試験は、6mg/kgの用量、測定可能な毒性を生じることが予測され、かつ36mg/mのHEDに当てはめられた用量、臨床的毒性の基準となるシスプラチン臨床範囲(20〜100mg/m)内の用量で比較例としてシスプラチンを含んでいた。
単回投与試験
2つの単回投与毒物学的試験は、1つはラットにおいて、もう1つはビーグル犬において化合物8を用いて行った。
雄ラットにおける単回投与静脈内用量範囲設定毒性試験
この試験(化合物8−TX−001)は、ラットにおける反復投与静脈内(IV)毒性GLP試験(化合物8−TX−007)の用量の選択を補助するために用量範囲設定試験として設計した。
被験物質、化合物8は、2.7、1.4、1.9、及び2.3mg/mLの公称濃度で5mMのクエン酸緩衝生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム)中の溶液(pH約4〜4.5)として投与前に製剤化した。化合物8は、それぞれ27、14、19、及び23mg/kgの用量で3匹の動物の群への静脈内(IV)注射によって投与した。用量処方は全て目標濃度の98.8〜106.2パーセントの範囲の許容基準(目標濃度の±10%)内であった。毒性の評価は、死亡率、臨床的観察、体重、及び食物消費、ならびに臨床及び解剖病理学に基づいていた。
試験の過程で2つの予定外の死亡があった。群1の2匹のラット(27mg/kg)は、7日目に死亡しているのが発見された。両方の動物は、試験を通して体重が減少し、痩せた外観、鼻の周りの赤色物、立毛、活動の低下、及び/又は冷たい感触を含む臨床的観察が観察された。さらに、胸腺細胞の軽度から中程度の減少、脾臓における白脾髄及び赤脾髄の中程度の減少、及び中程度から顕著な腎症が示された。試験の病理学者は、両方のラットの死亡の原因は急性腎不全であったと見なした。生存している動物において示されるさらなる観察は、27mg/kgの化合物8を投与された1匹の動物において痩せた外観、ならびに23mg/kgの化合物8を投与された1匹の動物において後肢及び前肢の冷たい感触を含んでいた。
体重の減少が≧23mg/kgの用量で試験を通して示された。さらに、体重の一時的な減少が4日目まで≦19mg/kgの用量で示された。体重の減少は、全ての群において食物消費の減少と相関していた。
以下の1つ又は複数を含む腎機能の低下及び腎障害のエビデンスが、≧14mg/kgの用量で化合物8を投与されたラットにおいて示された:血清尿素窒素、クレアチニン、及びリンの増加、低い尿比重、尿中のグルコース及び/又はタンパク質の存在、及び/又は尿腎障害マーカ(すなわち、腎障害分子−1、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン、アルブミン、及びオステオポンチン)の増加。尿素窒素及びクレアチニンの変化は、14及び19mg/kgの化合物8を投与されたラットの最終収集(terminal collection)において部分的乃至完全な解消を示したが、23及び27mg/kgを投与された雄において大きさが進行した。ナトリウム及び塩化物の減少、及び/又はカリウムの増加を含む、腎障害に続発すると見なされる電解質変化も≧19mg/kgの用量で存在していた一方、アルブミンの減少も≧19mg/kgを投与されたラットにおいて示されたが、これはおそらく尿中のタンパク質減少に続発する。
総白血球、好中球、単球、及び/又はリンパ球の増加を含む炎症反応のエビデンスが≧19mg/kgの用量のラットにおいて示された。さらに、おそらく造血の減少(網状赤血球及び血小板の減少)に起因する変化が、23mg/kgの化合物8を投与されたラットにおいて示された。
示される病理組織学的に重要な所見は、軽度から顕著な急性腎症、軽度から重度の胸腺減少、ならびに軽度から中程度の脾臓減少及びリンパ過形成を含んでいた。重要でない所見も肝臓、精巣、及び潜在的に甲状腺において観察された。群1及び4(それぞれ27及び23mg/kg、)は、最も顕著な腎臓所見を有していた一方、群2及び3(それぞれ14及び19mg/kg)は、可逆的変化により典型的な腎臓所見を有していた。
この試験の結果に基づいて及び1群当たりの動物の少ない数(N=3)を考慮して、MTD及びSTD10は、約19mg/kgであると決定された。したがって、19mg/kgがラットの反復投与静脈内(IV)毒性試験において最高用量として選択された。
ビーグル犬における単回投与静脈内用量範囲設定毒性試験
この試験(化合物8−TX−002)は、急性毒性を評価及び特性評価し、イヌへの静脈内(IV)注射によって1回投与されたときの化合物8のMTDを決定し、その後のイヌ心血管試験(化合物8−TX−005)の用量の選択を補助するために行った。被験物質、化合物8は、1.2、2.4、4.0、及び4.8mg/mLの公称濃度で5mMのクエン酸緩衝生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム)(pH約4〜4.5)中の溶液として投与前に製剤化した。用量処方は全て目標濃度の92.1〜99.8パーセントの範囲の許容基準(目標濃度の±10%)内であった。
それぞれ2匹の動物の群(1匹は雄、1匹は雌)は、3、6、10、又は12mg/kgの用量の化合物8を投与された。毒性の評価は、死亡率、臨床的観察、体重、及び質的な食物評価;身体検査;及び臨床病理学に基づいていた。トキシコキネティクス評価は、血漿及び血漿限外ろ過液中の白金濃度について行った。
試験中の死亡及び治療に関連する臨床的観察はなかった。
体重の減少(一般に、投与に関連する)が全ての投与群の雄及び雌イヌにおいて示され、12mg/kgの動物の10%を超えていた。10及び12mg/kg投与群において、この体重減少は、質的な食物消費の散発的な減少に相関していた。
血液学パラメータ(網状赤血球、赤血球量、好中球及び血小板の減少)の一般的な傾向は、両方の性別及び全ての群において示され、用量反応に一貫して従わず、2日目と比べて4及び10日目より顕著になる傾向にあった骨髄/造血効果を示した。化学、凝固、又は尿検査パラメータに対する化合物8の決定的な効果はなかった。
この試験の結果に基づいて、MTDは、10mg/kg(200mg/m)であると決定された。これらの結果に基づいて、イヌ心血管毒性試験の用量の選択は、6及び10mg/kgであった。
反復投与試験
1つの反復投与毒物学的試験がラットにおいて行われた。
3週間の回復期を含むラットの反復投与静脈内毒性試験
化合物8毒性は、3週間の回復期を含むラットの反復投与静脈内(IV)毒性試験(化合物8−TX−007)において評価した。この試験は、1及び21日目に投与されたときのラットにおける被験物質、化合物8の潜在的な反復投与毒性を評価し、3週間の投与後観察期間後に観察された変化の可逆性、進行、又は遅延した出現を評価するために行った。30匹の動物の群(15匹/性別)は、9、14、19、又は6mg/kgのビヒクル対照又は化合物8をそれぞれ投与された。20匹の動物の群(10匹/性別)は、9、14、19、又は6mg/kgの化合物8を投与され、6匹の動物(3匹/性別)は、試験のTK部分においてビヒクル対照を投与された。
毒性の評価は、死亡率、臨床的観察、機能観察バッテリー評価、体重、ならびに食物消費及び効率;検眼鏡検査;ならびに臨床及び解剖病理学に基づいていた。RBCペレット分析が総白金含量について行われた。
毒性及びTK評価は、被験物質及び陽性対照について行った。陽性対照、シスプラチンは、臨床毒性の基準となる比較例として使用した。ラットにおける6mg/kgのシスプラチン投与は、36mg/mのヒト推定用量(HED:human estimated dose)に当てはめられ、これは、シスプラチンの臨床的用量範囲(20〜100mg/m、シスプラチンの最も一般的に使用される臨床的用量は、75mg/mである)内に入る。
化合物8による処理後の臨床的観察、FOB、又は眼科検査において死亡はなく、何らの効果も示されなかった。シスプラチンで処理された動物において示されるFOB所見は、1日目の投与後の眼瞼閉鎖状態の発生の軽度の増加;2回目の投与後の熱応答時間の増加;及び回復期の最後における平均前肢握力のわずかな低下を含んでいた。
体重は、7日目まで一時的に(9mg/kg)又は治療期間を通して(14及び19mg/kg)化合物8で処理された動物において減少された。食物消費は、BWと同様の効果を示した。シスプラチン投与(6mg/kg)群は、化合物8の最高用量(19mg/kg)群のラットと同等であったビヒクル群と比べて、雄及び雌ラットにおいて治療に関連する体重減少を示した。回復期中、14mg/kgの化合物8を投与された雄及び19mg/kgの化合物8を投与された雌の体重は、ビヒクルで処理された動物と同等であり、これは、正常状態に向かうわずかな好転を示す。逆に、シスプラチンで処理された動物は、体重減少を示し続け、これは、ビヒクル群と比べて回復期中によりひどくなる傾向にあった。
化合物8で処理された動物は、全ての投与レベルで両方の性別において、網状赤血球数の減少ならびに単球数及びフィブリノゲン及びグロブリン濃度の増加を示した。血小板数も14及び19mg/kgの雄において増加した。腎機能の変化に起因する変化(クレアチニン濃度、尿素窒素濃度、リン及びカルシウム濃度の増加;尿比重の低下と同時に尿量の増加;糖尿の増加;ならびに尿pH及びクレアチニンクリアランスの減少)が全ての化合物8用量レベルで両方の性別において示された。アミラーゼ及びリパーゼ活性の増加ならびにAST、ALT、及び/又は乳酸脱水素酵素(LDH)活性の増加も全ての用量レベルで両方の性別において存在していた。コレステロールの増加及びトリグリセリドの減少も、グルコース値の増加とともに、化合物8で処理された動物において示された。全ての化合物8用量レベルの雄における活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT:activated partial thromboplastin time)の減少及び全ての化合物8用量レベルの雌におけるプロトロンビン時間の延長も示された。
シスプラチンで処理された動物は、19mg/kgの化合物8で処理された群において観察されるのと同様の所見(シスプラチン6mg/kgを投与された両方の性別における網状赤血球数及び血小板の減少を含む)を示したが、網状赤血球数は、19mg/kgの化合物8投与群より大きく減少し、シスプラチン6mg/kgを投与された両方の性別において総白血球数は中程度に減少した。腎機能の変化に起因する変化(クレアチニン濃度、尿素窒素濃度、リン及びカルシウム濃度の増加;尿比重の低下と同時に尿量の増加;糖尿の増加;ならびに尿pH及びクレアチニンクリアランスの減少)が、シスプラチン6mg/kgを投与された両方の性別において示されたが、一般に、19mg/kgの化合物8でいずれかの性別において観察されるものより大きい程度であった。AST、LDH、及びアミラーゼ活性の増加も6mg/kgのシスプラチンを投与された動物において示されたが、これらの検体の変化は、雄及び雌間で一貫性なく示され、19mg/kgの化合物8でいずれかの性別において観察されるものより少ない程度に生じた。シスプラチン6mg/kgを投与された動物に特有の臨床化学検体間の変化は、ナトリウム、カリウム、及び/又は塩化物濃度の軽度から中程度の減少を含んでいた。aPTTの軽度の減少も6mg/kgのシスプラチンを投与された雄の最終収集時に存在していた。
≧14mg/kgの化合物8で処理された群における臓器重量の変化は、雄及び雌における絶対及び相対胸腺重量の減少、雄における絶対及び相対前立腺重量の減少、ならびに雄における精嚢及び凝固腺の絶対及び相対重量の減少を含んでいた。化合物8で処理された群における顕微鏡的変化は、≧9mg/kgでの終末期及び回復期の雄における及び≧14mg/kgでの雌における腎尿細管変性/壊死及び/又は再生;≧9mg/kgでの終末期及び回復期の雄及び雌における骨髄造血細胞充実性の減少;≧14mg/kgでの終末期の雄及び雌における胸腺のリンパ皮質減少;19mg/kgでの終末期の雄及び雌の最後の注射部位における亜急性/慢性炎症及び/又は出血;ならびに≧9mg/kgでの終末期及び回復期の雄における精巣上体精子減少症/胚細胞残屑を伴うかもしくは伴わない散発的な両側もしくは片側精巣精細管変性/萎縮又は精細管拡張を含んでいた。19mg/kgでの終末期の雄の非腺胃のびらん/潰瘍;19mg/kgでの終末期の雄及び雌における腺胃粘膜萎縮;19mg/kgでの数匹の終末期の雄及び雌における皮膚の脱毛症/減毛症;19mg/kgでの1匹の終末期の雌の肝臓における帯状肝壊死;19mg/kgでの1匹の終末期の雌における個々の肝細胞壊死;ならびに≧9mg/kgの化合物8での終末期の雄及び雌における膵腺房細胞アポトーシスも顕微鏡的に示された。
シスプラチンで処理された群における臓器重量の変化は、絶対及び相対胸腺重量の減少を含んでいた。絶対及び相対臓器重量の減少も、6mg/kg(シスプラチン)での終末期の雄及び雌の脾臓及び甲状腺/副甲状腺、ならびに6mg/kg(シスプラチン)での終末期の雄の肝臓、前立腺、及び精嚢及び凝固腺において示された。シスプラチンで処理された動物において示される顕微鏡的変化は、一般に、19mg/kgの化合物8と比較して増加した重症度の腎尿細管変性/壊死及び/又は再生;19mg/kgの用量の化合物8で処理された動物と比較して増加した重症度の、骨髄造血細胞充実性の減少;ならびに19mg/kgの化合物8動物と比較して増加した重症度の、胸腺のリンパ皮質減少の発生/重症度の増加を含んでいた。シスプラチンで処理された動物において脾臓のリンパの減少も示され、これは、化合物8で処理された動物において示されなかった。最後の注射部位の亜急性/慢性炎症及び/又は出血の発生/重症度の増加、及び腺胃粘膜萎縮の発生の増加は全て、19mg/kgの化合物8で処理された群と同様の発生及び/又は重症度で、シスプラチンで処理された動物において示された。精巣の変化は、化合物8で処理された雄において示される所見より増加した発生/重症度で、シスプラチンで処理された雄において示された。
3週間の回復期の完了後、化合物8で処理された群において示される所見は、一般に、血小板数、コレステロール濃度、尿pH、クレアチニンクリアランスの示される変化、及び精巣の変化を除いて、正常状態に向かって好転する傾向にあった。同様の所見が、3週間の回復期の最後にシスプラチンで処理された群において示された。
化合物8投与群において示される有害な所見に基づいて、STD10(動物の10%において死亡又は不可逆的な強い毒性を引き起こす用量)は、≧19mg/kg(114mg/m)であると推定された。
局所耐性
雄及び雌ラットへの静脈内(IV)投与後の化合物8lの局所耐性は、反復投与GLP試験(化合物8−TX−007)において評価した。評価は、最後の注射部位の顕微鏡的評価によって行った。
最後の注射部位において、血管周囲の亜急性/慢性炎症及び/又は出血の発生及び/又は重症度のわずかな増加が19mg/kgでの終末期の雄及び雌において示された。混合炎症細胞及び/又はRBCの溢出が、全ての群にわたって動物の大部分において血管周囲で観察され、これらのタイプの所見は、注入プロセスに関してある程度予測される。しかしながら、発生及び/又は重症度のわずかな増加は、19mg/kgでの最小限に増加した刺激を反映し得る。
最後の注射部位におけるシスプラチンに関連する顕微鏡的所見は、終末期の雄の炎症の重症度のわずかな増加に限られ、膵臓アポトーシスの発生の増加は、終末期の雌のみにおいて示された。
他の試験:
遺伝毒性試験、発癌性試験、生殖及び発生毒性試験も化合物8を用いて行う。例えば、以下の試験を行う:抗原性、免疫毒性、機構(mechanistic)試験、依存性、代謝産物に関する試験、不純物に関する試験、生殖及び初期胚発生、胚・胎児発生(embryofetal development)、出生前及び出生後発生(母性機能を含む)、ならびに子孫(幼動物)が投与され、及び/又はさらに評価される試験。
化合物8のインビボ評価及びシスプラチンとの比較の要約が以下の表9に示される。
実施例5.インビボ薬理学
マウス異種移植モデルにおける抗腫瘍活性
化合物8の潜在的な抗腫瘍活性は、卵巣、膵臓、及び肺を含む様々なマウス異種移植モデルにおいて評価した。
卵巣異種移植モデル
腫瘍増殖阻害(TGI:tumor growth inhibition)に対する化合物8の効果は、A2780ヒト卵巣癌ヌードマウス(雌Crl:NU(NCr)−Foxn1nu)異種移植モデルにおいて評価した。このモデルにおいて、合計で6つの用量の化合物8(20mg/kg)、比較例としてのシスプラチン(4mg/kg)、及びビヒクル対照処理は、3日ごと(q3)にスケジュールの最後まで静脈内(IV)投与し、パーセント腫瘍増殖阻害(%TGI)をその後決定した。化合物8及びシスプラチン処理は、ビヒクル対照と比較して腫瘍増殖の有意な(p<0.0001)減少(それぞれ72%のTGI及び55%のTGI)をもたらした。化合物8についての腫瘍増殖の減少は、シスプラチンについての腫瘍増殖の減少より大きく、群間の差は統計的有意性に達しなかった(p=0.242)(表11)。
全ての群において、わずかな平均BW減少が認められ、平均最大BW減少は、化合物8について15日目に7.4%であり、シスプラチンについて5日目に2.3%であり、ビヒクルについて5日目に0.3%であった。いずれの処理群でも治療に関連する副作用は見られなかった。
膵臓異種移植モデル
TGIに対する化合物8の効果は、BxPC−3ヒト膵臓腺癌ヌードマウス(雌Crl:NU(NCr)−Foxn1nu)異種移植モデルにおいて評価した。このモデルにおいて、合計で7つの用量の化合物8(20mg/kg)、比較例としてのシスプラチン(4mg/kg)、及びビヒクル対照処理は、3日ごと(q3)にスケジュールの最後まで静脈内(IV)投与し、その後、%TGIを20日目に決定した。化合物8及びシスプラチン処理は、それぞれこのモデルのビヒクル対照と比べて31%のTGIをもたらし、各群とビヒクル対照との間の差は有意でなかった。
全ての群において、わずかな平均BW減少が認められた。化合物8群における治療に関連する副作用は、全ての動物において13日目に膨張した尾を含み、これは深刻になり、16日目に1匹の動物において潰瘍を生じた。シスプラチン又はビヒクル対照群において治療に関連する副作用は見られなかった。
別の膵臓異種移植モデル、MIA Paca−2ヒト膵臓腺癌ヌードマウス(雌Crl:NU(NCr)−Foxn1nu)モデルにおいて、合計で7つの用量の化合物8(10mg/kg)、比較例としてのオキサリプラチン(7mg/kg)、及びビヒクル対照は、3日ごと(q3)にスケジュールの最後まで静脈内(IV)投与し、その後、TGIを18日目に決定した。オキサリプラチン及び化合物8の両方によるMIA Paca−2異種移植片腫瘍の処理は、ビヒクル対照と比べて、それぞれ61%(p=0.0023)及び64%(p=0.0014)の統計的に有意なTGIをもたらした。化合物8及びオキサリプラチンは、この分析において互いに有意に異なっていなかった(表11)。
わずかな平均BW減少が各群において見られ、平均最大BW減少は、化合物8について18日目に3.7%、オキサリプラチンについて5.3日目に8.1%、ビヒクル対照について0%であった。化合物8又はビヒクル対照で治療に関連する有害な影響は見られなかった。オキサリプラチン群における治療に関連する効果が見られ、群における全ての動物が青白く、脱水状態であり、18日目に点状出血があった。
肺異種移植モデル
化合物8の効果は、Calu−6ヒトNSCLCヌードマウス(雌Crl:NU(NCr)−Foxn1nu)異種移植モデルにおいて評価した。このモデルにおいて、合計で4つの用量の化合物8(10mg/kg及び15mg/kg)、比較例としてのシスプラチン(3mg/kg)、及びビヒクル対照は、2週間にわたって週に2回静脈内(IV)投与され、その後、TGI及びパーセント腫瘍増殖遅延(%TGD)をそれぞれ33日目及び54日目に決定した。ビヒクル対照と比べて81%及び74%の有意なTGIがそれぞれ化合物8 15mg/kg及びシスプラチンで見られ(p<0.0001)、化合物8とシスプラチンとの間の差は有意でなかった。42%のパーセントTGIが、10mg/kgのより低い化合物8用量で見られ、これは、ビヒクル(p=0.021)及び化合物8 15mg/kg(p=0.03)の両方と有意に異なっていたが、シスプラチンと有意に異なっていなかった(表12)。
ビヒクル対照と比べて、18%、51%、及び47%の腫瘍増殖遅延がそれぞれ化合物8 10mg/kg、化合物8 15mg/kg、及びシスプラチンで見られた。より高い化合物8用量レベルにおいて、TGDは、ビヒクル対照と比べて有意であったが(p<0.01)、シスプラチンと統計的に異なっていなかった(p>0.05)(表13)。
わずかな平均BW減少が各群において見られ、平均最大BW減少は、化合物8 10mg/kgについて4日目に0.9%、化合物8 15mg/kgの用量について5日目に3.2%であり、シスプラチン及びビヒクル対照群においてBW減少は見られなかった。化合物8又はビヒクル対照で治療に関連する副作用は見られなかった。シスプラチン群の1つの動物において4日目に深刻な点状出血が認められた。
化合物8の効果はまた、NCI−H520ヒトNSCLCヌードマウス(雌CrTac:NCr−Foxn1nu)異種移植モデルにおいて評価した。このモデルにおいて、化合物8の合計で5回の反復投与(15mg/kg、10mg/kg)、比較例としてのシスプラチン(3mg/kg)、及びビヒクル対照は、週に2回静脈内(IV)投与され、その後、TGIを31日目に決定した。ビヒクルと比べて56%、83%、及び60%のパーセントTGIがそれぞれ化合物8 10mg/kg、化合物8 15mg/kg、及びシスプラチンで見られた。全ての処理は、ビヒクルと比較して統計的に有意であった(p<0.0001)。化合物8群とシスプラチンとの間の差は有意でなかった(表14)。
全ての群においてわずかな平均BW減少が認められ、平均最大BW減少は、化合物8 15mg/kgについて17日目に11%、化合物8 10mg/kgについて4日目に2.7%、シスプラチンについて4日目に0.43%、ビヒクル対照について4日目に0.42%であった。いずれの処理群でも治療に関連する有害な影響は見られなかった。
安全性薬理学
心血管及び呼吸器系
放射性標識アンタゴニストを用いたhERGの膜調製物への化合物8の結合のインビトロ評価を行った。このアッセイにおいて、化合物8は、それぞれ3μM及び10μMの濃度で、ヒト血清アルブミンに結合されるとき及びヒト血清アルブミンに結合されていないときに試験した。所見は、ヒト血清アルブミンに結合された3uMの濃度の化合物8、及び/又はヒト血清アルブミンに結合されていない10uMの濃度の化合物8で有意な心血管毒性のエビデンスを示さなかった。
静脈内(IV)投与された化合物8の心血管及び呼吸作用は、ビーグル犬(化合物8−TX−005)において評価した。所見は、6及び10mg/kgの用量で雌ビーグル犬に単回静脈(IV)注射として投与された化合物8が死亡、又は体温、心拍数、心電図(ECG:electrocardiogram)パラメータ(PR、RR、QRS、QT、もしくはQTc間隔)、もしくは呼吸数の変化を生じなかったことを示した。被験物質に関連する効果は、心血管モニタリング期間(投与後約24時間)の最後に全ての動物について示された嘔吐、及び両方の処理の6〜12時間後に示された血圧のわずかな非用量依存性の上昇(対照より≦9〜16%高い)の観察を含んでいた。
要約すると、化合物8の静脈内(IV)投与は、200mg/m以下のHEDに対応する10mg/kg以下の用量で、雌ビーグル犬の心血管又は肺機能に対する観察可能な有害な影響を生じなかった。呼吸機能の評価は、10mg/kg以下の用量での雌ビーグル犬への化合物8の静脈内(IV)投与後、試験中に示される呼吸数の被験物質に関連する変化がなかったことを示した。
動物の薬物動態及び薬剤代謝
一連の非臨床試験が、ラット及びヒト血漿におけるインビトロタンパク質結合;マウス、ラット、及びイヌへの化合物8の静脈内(IV)投与後の血漿及び血漿限外ろ過液における白金のPK、ならびにインビトロ及びインビボで化合物8からの白金のRBC分配の評価を含め、化合物8のPK特性を評価するために行われた。さらに、化合物8及びシスプラチンについての血漿中の腫瘍における相対的な白金レベルは、マウス異種移植片試験において測定した。最後に、化合物8及びアルブミンに結合された形態の化合物8がCYP阻害について試験された。
吸収
化合物8は静脈内(IV)投与するため、吸収は関連していなくてもよい。
分布
組織分布
化合物8についての正式な組織分布試験は行わなかった。
インビトロ血漿タンパク質結合
ラット及びヒト血漿(化合物8−DMPK−008)を用いたインビトロタンパク質結合アッセイにおいて、化合物8は、37℃で10分間のインキュベーション後にタンパク質結合性が非常に高い(>99%)ことが示された。これらの結果は、迅速かつ効率的にアルブミンに結合する化合物8の設計と一致する。
マウス、ラット及びイヌの総血漿及び血漿限外ろ過液白金薬物動態
非臨床試験は、マウス、ラット、及びイヌへの化合物8の静脈内(IV)投与後の血漿中の白金のPKを評価するために行った。分析は、総血漿ならびに血漿限外ろ過液の両方における白金レベルを含んでいた。評価される全ての種において、化合物8は、白金の大部分が、限外ろ過液中で遊離状態であると見出されるより、血漿タンパク質に結合されていたことを示した。
マウス(化合物8−DMPK−011;化合物8−DMPK−012)において、化合物8の単回静脈内(IV)ボーラス投与の投与は、投与後5分の時点で282μモル/Lの総白金血漿最高濃度(Cmax)をもたらした。血漿濃度時間曲線下面積(AUC:area under the plasma concentration time curve)は3680h・μmol/Lであり、排出相における半減期は23.2時間であった。血漿中遊離白金Cmaxは15.9μモル/Lであり、AUCは20.6h・μmol/Lであった。排出相における半減期は7.27時間であった。
総血漿白金の半減期はマウスにおけるアルブミンの半減期と類似しており、これは、化合物8がインビボでアルブミンへの共有結合を形成することと一致している。これらのデータはまた、血漿限外ろ過液中の非結合白金が総循環白金のごく一部に過ぎないことを示す。Cmaxにおいて、限外ろ過液白金対総白金の比率は0.06であり、限外ろ過液対総白金AUCの比率は0.0056であり、これは、循環中の白金のごく一部(<1%)が限外ろ過液中で遊離状態であることを示す。
化合物8は、マウスにおいて2つの異なる配合物中で投与した。薬理学試験において使用される製剤は、5%のジメチルスルホキシド(DMSO)/10%のソルトール(Solutol)/生理食塩水であり、PK試験において使用される製剤は、5mMのシトレート(pH約4)であり、この後者の製剤は、ラットのGLP毒物学的試験において使用されるものであり、ヒト臨床製剤である。総血漿のAUC(0−48h)値は、DMSO/ソルトール(Solutol)製剤について3440μM・hrであり、シトレート製剤について3270μM・hrであった。これらの2つの値の平均差は5%であり、これは、マウス試験において使用される2つの異なる製剤間で観察されるPKのわずかな差があり、したがって、アッセイ結果に対する製剤の効果はほとんど又は全くないことを示す。
ラット及びイヌにおける総血漿白金PKパラメータの要約が表15に示される。
9、14、又は19mg/kg(化合物8−TX−007)の化合物8静脈内(IV)ボーラス投与で処理されたラット、及び3、6、10、又は12mg/kg(化合物8−TX−002)の化合物8静脈内(IV)ボーラス投与で処理されたイヌの両方において、総白金の曝露は、試験範囲にわたって用量線形性を示した。総白金のクリアランスは、ラット(0.07mL/分/kg)及びイヌ(0.03mL/分/kg)の両方において非常に低く、両方の種において低い分布容積(Vz)を有し、これは、血漿コンパートメントへの白金の著しい制限と一致している。排出半減期は、ラット(53時間)及びイヌ(109時間)において長く、これらの種においてアルブミン半減期と一致している。
ラット及びイヌの限外ろ過液レベルは、分布相において急速に低下し、総白金と並行して長い排出相半減期を有していた。限外ろ過液レベルは、分布相を通して総白金レベルの約1%であった。
化合物8は、アルブミンへの結合の制限、及び分布のアルブミン領域への制限を一貫して有して作用する。これは、化合物8白金が、白金がコンジュゲートから放出されるまで分布の水領域全体に分配するのを防ぐ。細胞外液が300mL/kgであり、血漿が40mL/kgであるため、326mL/kgの平均Vzは、アルブミンコンジュゲートの予測される血漿及び細胞外空間への分布を反映している。対照的に、シスプラチンのVzは、非常に高く、広く分配するより高い傾向を反映している。
インビトロの赤血球分配
化合物8のRBC分配の分析は、ヒト及びラット全血(化合物8−DMPK−009)においてインビトロで行った。ヒトの血液中、白金(92%)の大部分が、試験される全ての時点で血漿において観察され、低いレベル(<8%)が、4時間にわたってRBCにおいて観察された。同様の分配が最も早い時点でラットRBCにおいて見られ、4時間までRBCにおける中程度に増加した蓄積があり、18%はその時点で観察された。これらのデータは、全血中に導入される化合物8からの白金の大部分が血漿と結合されたままであり、白金の一部がRBC中で検出されることを示す。RBCと結合された白金のレベルは、ヒトの全血において時間とともに変化せず、ラット全血において4時間にわたって中程度に増加する(表16)。
赤血球白金濃度
RBC白金濃度は、ラットの反復投与毒物学的試験(化合物8−TX−007)において評価した。シスプラチン(6mg/kg)の投与は、1日目と比べて21日目に、投与の96時間後の時点でRBCにおける白金の蓄積をもたらした一方、化合物8(19mg/kg)は、1日目と比べて21日目に、RBCにおける白金の有意な蓄積をもたらさなかった。これは、より少ない化合物8白金薬剤送達がRBC中で失われることを示唆している。
腫瘍曝露
0、3、7、及び10日目の化合物8(10及び15mg/kg)及びシスプラチン(6mg/kg)の投与後の腫瘍及び血漿中の相対的な白金レベルは、NCI−H520ヒトNSCLCヌードマウス(雌CrTac:NCr−Foxn1nu)異種移植モデル(化合物8−DMPK−013)において測定した。白金のモル濃度基準で、MTDにおける化合物8はシスプラチンより30%多く投与されたが、腫瘍白金AUCは12.8倍高く、血漿白金の曝露は64倍高かった(図13)。これらの差は、血漿及び腫瘍曝露の有意な増加が、化合物8、アルブミンに共有結合されたシスプラチンのプロドラッグを用いて得られたことを示す。
代謝
ミクロソーム安定性は、陰性対照が失敗したために行うことができなかった。安定性試験において、化合物8は、NADPHフリー対照(化合物8−DMPK−011)における定量下限未満であった。これは、ミクロソームがタンパク質チオールを含有し、化合物8と反応するであろうことを報告する文献と一致している(リーブラDC(Liebler DC)、メレディスMJ(Meredith MJ)、ゲンゲリッチFP(Guengerich FP)著、ミクロソーム及び単離された肝細胞における塩化ビニリデンの反応性代謝産物によるグルタチオンコンジュゲートの形成(Formation of glutathione conjugates by reactive metabolites of vinylidene chloride in microsomes and isolated hepatocytes)、キャンサー・リサーチ(Cancer Res)、1985年、第45巻(1)、p.186〜93、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。CYP阻害は、化合物8がミクロソームに対する阻害効果を与えるかどうかを決定するために試験した。
排出
化合物8についての排出試験は行わなかった。
薬剤間相互作用
化合物8がNADPHの非存在下でミクロソーム製剤中において急速に消失したことが知られており、これは、化合物8と反応し得る、ミクロソームにおける高いタンパク質チオール含量を示唆する文献と一致している(リーブラDC(Liebler DC)、メレディスMJ(Meredith MJ)、ゲンゲリッチFP(Guengerich FP)著、ミクロソーム及び単離された肝細胞における塩化ビニリデンの反応性代謝産物によるグルタチオンコンジュゲートの形成(Formation of glutathione conjugates by reactive metabolites of vinylidene chloride in microsomes and isolated hepatocytes)、キャンサー・リサーチ(Cancer Res)、1985年、第45巻(1)、p.186〜93、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。また、マレイミドがアルブミンと急速に結合することが文献において広く確立されている(クラッツF(Kratz F)著、薬剤担体としてのアルブミン:プロドラッグ、薬剤コンジュゲート及びナノ粒子の設計(Albumin as a drug carrier: design of prodrugs, drug conjugates and nanoparticles)、ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(J Control Release)、2008年、第132巻(3)、p.171〜83、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。したがって、両方の化合物8及びインビトロでアルブミンに結合された化合物8(化合物8S)は、CYP阻害試験において評価し、結果が表17に要約されている。
化合物8は、試験されるCYPの範囲にわたって活性の中程度のレベルを示した。化合物8が循環中のアルブミンと迅速に反応するため(CYPの阻害)、これは懸念事項であると見なされない。プレコンジュゲート(preconjugate)調製物は、CYP2B6を除いて、CYPのパネルに対してより低い活性を示した。この観察を考慮すると、主にCYP2B6によって代謝される薬剤は、化合物8臨床試験において禁止される。
実施例6.ヒトにおける効果
化合物8は、シスプラチンプロドラッグである。白金化合物の臨床評価の広範な公開された文献がある。シスプラチンの臨床試験は、1971年に開始し(レブウォールD(Lebwohl D)、カネッタR(Canetta R)著、癌治療における白金錯体の臨床開発:歴史的視点及び更新(Clinical development of platinum complexes in cancer therapy:an historical perspective and an update)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー(Eur J Cancer)、1998年、第34巻(10)、p.1522〜34、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)、この化合物は、1978年に転移性精巣癌及び卵巣癌の治療についてFDAによって最初に承認され、その後、進行膀胱癌の治療について承認された。
シスプラチンは、米国においてジェネリック医薬品として現在入手可能であるため、販売及び使用の追跡が難しい。しかしながら、ミラー(Miller)ら(ミラーRP(Miller RP)、タダガバディRK(Tadagavadi RK)、ラメッシュG(Ramesh G)、リーブスWB(Reeves WB)著、シスプラチン腎毒性の機構(Mechanisms of Cisplatin nephrotoxicity)、トキシンズ(Toxins)(バーゼル(Basel))、2010年、第2巻(11)、p.2490〜518、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)によって報告されるように、クリニカルトライアルズ・ドット・ゴブ(ClinicalTrials.gov)データベースの調査は、シスプラチンに関与する500を超える有効な臨床試験を公表しており、これは、シスプラチンの現在行われている広い臨床用途を示す。
シスプラチンは、肺、卵巣、膀胱、精巣、乳房、頭頸部、食道、胃及び膵臓の上皮性悪性腫瘍に対する最前線の化学療法として、また、黒色腫、前立腺、中皮腫、平滑筋肉腫、悪性神経膠腫などの癌を含むいくつかの転移性悪性腫瘍に対する二次及び三次治療として使用される。シスプラチンは、放射線療法と組み合わせて、子宮頸癌に対するゴールドスタンダード治療と見なされる(パセットLM(Pasetto LM)、ダンドレアMR(D’Andrea MR)、ブランデスAA(Brandes AA)、ロッシE(Rossi E)、モンファルディーニS(Monfardini S)著、白金化合物及びそれらの可能な組合せの開発(The development of platinum compounds and their possible combination)、クリティカル・レビューズ・イン・オンコロジー・ヘマトロジー(Crit Rev Oncol Hematol)、2006年、第60巻(1)、p.59〜75、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。
ほとんどの進行癌において、シスプラチンに対する反応率は、最前線の設定において約50%であり、二次又は三次の設定において15%である。25〜50%の反応率は、ゲムシタビン又はタキサンと併用してシスプラチン又はカルボプラチンで治療された、化学療法を受けたことのない進行NSCLC患者において観察され、例外的な事例において、これらの率は、放射線療法の追加により最大で80%である(パセットLM(Pasetto LM)、ダンドレアMR(D’Andrea MR)、ブランデスAA(Brandes AA)、ロッシE(Rossi E)、モンファルディーニS(Monfardini S)著、白金化合物及びそれらの可能な組合せの開発(The development of platinum compounds and their possible combination)、クリティカル・レビューズ・イン・オンコロジー・ヘマトロジー(Crit Rev Oncol Hematol)、2006年、第60巻(1)、p.59〜75、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。
アロメトリーを用いてヒトにおいて推定される開始用量は、GLP反復投与毒性試験(化合物8−TX−007)においてSTD10でラットにおいて観察されるAUCの10分の1をもたらす用量である。化合物8−TX−007におけるラットSTD10は19mg/kgであった。ラットにおいて19mg/kgで観察されるAUCは7,060μM・hrであり、したがってAUCの10分の1は706μM・hrである。用量=AUC×CL関係式を用いて、ヒトにおける提案される開始用量は20mg/mである(表18)。
相対成長率は、前臨床種におけるPK及び薬理学に基づいて、98mg/mの有効な用量及び383mg/mのMTDで、ヒトにおける総白金の低いクリアランス及び長い半減期を予測する(表19)。
潜在的リスク
化合物8についての非臨床データは、ヒトへの安全な投与を裏付ける。以下のサブセクションは、腫瘍学設定における化合物8についての非臨床データ及び他の白金化合物についての臨床データに基づいて、臨床設定における化合物8についての潜在的リスクを記載している。
吐き気及び嘔吐
シスプラチンは、吐き気及び嘔吐と関連している。
嘔吐は、化合物8を用いた非臨床試験において観察された。化合物8の臨床試験に参加する患者は、標準的な組織的な実施に従って各化合物8投与前に予防的な5−HT受容体アンタゴニストベースの制吐治療を受けてもよい。
腎毒性
シスプラチンは、用量依存性で累積する腎不全(急性腎不全を含む)と関連している。
非臨床試験の所見に基づいて、シスプラチンと比べて腎毒性の低下したリスクが化合物8で予測される。ラットにおいて、20mg/kg以下の用量の化合物8の単回静脈内(IV)投与は、評価される最高用量で軽度から最小の腎臓壊死を生じた一方、シスプラチン7mg/kgの単回投与による処理は、腎臓の中等度の急性腎尿細管壊死の高い発生を生じた。さらに、臨床化学所見は、シスプラチンと比較して化合物8による尿素窒素及びクレアチニンに対するより小さい効果を示し、これは、低下した腎毒性を示す。これらの所見は、シスプラチンと比べて化合物8による低下した腎毒性を同様に示した、ラットのGLP反復投与毒性試験の結果によって裏付けられた。
腎毒性のリスクを低下させるために、化合物8の臨床試験に参加する患者は、正常血清クレアチニン又は60mL/分(コッククロフトとゴールトの式)以上の計算されたクレアチニンクリアランスを有する必要がある。さらに、患者は、臨床試験プロトコルに記載されるように、各化合物8投与の前後に静脈内(IV)ハイドレーションを受ける必要がある。マンニトール又はフロセミドによる利尿薬治療は、必須ではないが、組織的な実施に従って投与されてもよい。
化合物8の臨床試験に参加する患者は、各化合物8投与前に臨床化学及び尿検査を行い、腎毒性の兆候を有する患者は、臨床試験プロトコルに記載されるように管理されるべきである。
中毒性難聴
シスプラチンは、主観的な聴力低下、耳痛、及び/又は耳鳴りに現れる中毒性難聴と関連している。
化合物8の臨床試験に参加する患者は、中毒性難聴の兆候について監視され、臨床試験プロトコルに記載されるように管理されるべきである。
神経毒性
シスプラチンは、先端感覚異常及び無感覚の症状によって特徴付けられる知覚神経障害と関連している。
ラットの反復投与毒性試験において、19mg/kg以下の用量の化合物8の影響はFOB評価において見られず、神経毒性の他の兆候は示されなかった。
既存のグレード2以上の末梢神経障害を有する患者は、化合物8の臨床試験に参加するのが禁止される。さらに、化合物8の臨床試験に参加する患者は、知覚神経障害の兆候について監視され、臨床試験プロトコルに記載されるように管理される。
骨髄抑制
シスプラチンは、治療される患者の25〜30%における骨髄抑制(すなわち、白血球減少症及び血小板減少症)と関連している。
非臨床試験において、化合物8は、網状赤血球、赤血球量、好中球、及び血小板の減少を含む、ラット及びイヌの両方における血液学的異常と関連している。
患者は、化合物8臨床試験への参加に適格であるように十分な骨髄機能を有する必要がある。化合物8臨床試験に参加する患者は、各化合物8投与前に血液学的検査を行い、血液毒性を有する患者は、臨床試験プロトコルに記載されるように管理されるべきである。
過敏性反応
シスプラチンは、治療される患者の20%以下に起こる過敏性反応と関連している。
化合物8に対するアレルギー反応を示す兆候は、非臨床試験において見られなかった。しかしながら、予防措置として、アナフィラキシーの管理のための設備が化合物8注入中に利用可能でなければならない。注射用のエピネフリン(1:1000)、蘇生装置、及びそれらの使用に慣れた職員が直ちに利用可能であるべきである。患者は、それらが起こった場合に直ちに治療を開始することができるように、このような症状について慎重に監視されるべきである。
潜在的な薬剤相互作用
化合物8及びアルブミンに結合された化合物8の予め結合された形態がCYPの阻害について試験された。化合物8の予め結合された形態では、0.070μMのIC50を有するCYP2B6を除いて、弱いCYP阻害が示された。この所見のため、CYP2B6によって除去される薬剤(例えば、リファンピン)の併用は、化合物8の臨床試験において禁止される。
発癌、突然変異生成、及び生殖障害
その発癌可能性又は生殖能力を損なう可能性についての非臨床試験は、試験化合物8に対して行わなかった。
シスプラチンの非臨床発癌性試験において、3×1mg/kgの体重/週で3週間にわたってシスプラチンで処理された50匹のラットにおいて、悪性腫瘍による13匹の死亡が見られた。さらに、二次性悪性腫瘍の発生が、シスプラチンで処理された患者において報告された(シスプラチン処方情報)。
妊娠
化合物8についての動物の繁殖試験は行わなかった。化合物8が妊婦に投与されたときに胎児に害を及ぼし得るか、又は生殖能力に影響を与え得るかどうかは不明である。
シスプラチンは、妊婦に投与されたときに胎児に害を及ぼし得る。化合物8は、妊婦に投与してはならない。臨床試験プロトコルに定義されるように、最初の化合物8投与の30日前から最後の化合物8投与の30日後まで、化合物8の臨床試験に参加する妊娠可能な女性ならびに生殖能力のある男性及びそのパートナは、性交を控えるか、又は十分な避妊法を使用することに合意しなければならない。
授乳期間中の母親
化合物8がヒトの乳中に排出されるかどうかは不明である。化合物8は、授乳期間中の母親に投与されるべきではない。
潜在毒性及び過剰摂取の管理
3〜4週間ごとに1回、100mg/m/サイクルを超えるシスプラチン投与は、臨床環境においてほとんど使用されない。一部の例では致死的であったシスプラチン過剰摂取の事例が文献において報告されている(シャルリエC(Charlier C)、キンツP(Kintz P)、デュボワN(Dubois N)、プラトーG(Plomteux G)著、シスプラチンの致死的な過剰摂取(Fatal overdosage with cisplatin)、ジャーナル・オブ・アナリティカル・トキシコロジー(J Anal Toxicol)、2004年、第28巻(2)、p.138〜40;ホフマンG(Hofmann G)、バーワンホファーT(Bauernhofer T)、クリップルP(Krippl P)、ラン−ロイドルトD(Lang−Loidolt D)、ホーンS(Horn S)、ゲスラーW(Goessler W)ら著、血漿交換は、シスプラチン過剰摂取の全ての副作用を好転させる−−事例報告及び治療勧告(Plasmapheresis reverses all side−effects of a cisplatin overdose−−a case report and treatment recommendation)、BMCキャンサー(BMC Cancer)、2006年1月4日、第6巻、p.1;ヤマダY(Yamada Y)、イクタY(Ikuta Y)、ノサカK(Nosaka K)、ミヤナリN(Miyanari N)、ハヤシN(Hayashi N)、ミツヤH(Mitsuya H)、ババH(Baba H)著、血漿交換によるシスプラチン過剰摂取の成功的治療(Successful treatment of Cisplatin overdose with plasma exchange)、ケース・レポート・イン・メディシン(Case Rep Med)、2010年、2010:802312;ジュレックT(Jurek T)、ロラットM(Rorat M)、ディスP(Dys P)、スウィアーテックB(Swiatek B)著、ESHAP計画による縦隔リンパ腫の治療における致死的なシスプラチン過剰摂取−薬剤の有害事象の原因の分析(Fatal cisplatin overdose in the treatment of mediastinal lymphoma with the ESHAP regimen − analysis of the causes of the adverse drug event)、オンコロジー(Onkologie)、2013年、第36巻(1−2)、p.49〜52、これらのそれぞれの内容は全体が参照により本明細書に援用される)。
中毒性難聴は、シスプラチン過剰摂取のいくつかの事例において主症状として報告された。シスプラチン過剰摂取に関連して報告される他の毒性としては、吐き気及び嘔吐、腎不全、電解質異常、骨髄抑制、末梢神経障害、肝毒性、及び網膜症が挙げられる。下痢、膵炎、発作、及び呼吸器不全も報告されている(チャンRY(Tsang RY)、アルファイドT(Al−Fayea T)、アウHJ(Au HJ)著、シスプラチン過剰摂取:毒性及び管理(Cisplatin overdose:toxicities and management)、ドラッグ・セイフティ(Drug Saf)、2009年、第32巻(12)、p.1109〜22、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。
シスプラチンの対処解毒法は存在しない。毒性を低下させる主な管理の原則及び手法は、浸透圧利尿薬を用いた又は用いない積極的な静脈内(IV)ハイドレーションを伴う腎臓保護性かつ促進性の薬物消失、及び腎毒性薬剤の回避を含む。チオ硫酸ナトリウム及び血液透析の補助を用いた又は用いない血漿交換が強く考慮されるべきである(チャン(Tsang)ら、2009年、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。このような治療は、3日間にわたって毎日シスプラチン80mg/m(240mg/mの総用量)で不注意に処理された患者において成功したことが報告された(ヤマダ(Yamada)ら、2010年、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。臨床及び検査パラメータの厳重なモニタリング、ならびに制吐薬及び造血コロニー刺激因子の補助を含む支持療法の施設が保証される(チャン(Tsang)ら、2009年、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。
シスプラチン過剰摂取の管理について上述されるものと同様の手段が化合物8の過剰摂取の設定において開始されるべきである。
貯蔵
注射用の化合物8の粉末は、−20℃以下で冷凍貯蔵され、光から保護されるべきである。化合物8は、適切な試験員のみが利用可能である施錠された領域中に貯蔵されるべきである。
実施例7.進行固形腫瘍を有する患者における単剤化合物8の静脈内投与、続いて、変異陽性固形腫瘍を有する患者における拡大のフェーズ1、非盲検、用量漸増試験のプロトコル
化合物8は、アルブミンに共有結合され、それによりシスプラチンと比べて血清半減期を増加させ、その結果、血漿濃度時間曲線下面積(AUC)を増加させるように設計されたシスプラチンの小分子プロドラッグである。これは、腫瘍組織におけるプロドラッグ及び活性薬剤の蓄積の増加をもたらし、ならびに関連する毒性を伴わずにシスプラチンと比較して有効性を高めることが想定される。この根拠は、化合物8がインビトロ及びインビボで血漿中のアルブミンに効率的に結合することを示した非臨床試験所見によって裏付けられる。腫瘍異種移植モデルにおいて、化合物8は、より高いパーセント腫瘍増殖阻害によって示されるように、シスプラチンと比べて向上した抗腫瘍活性を示した。ラット及びイヌに静脈内(IV)ボーラスとして投与されるとき、化合物8は、シスプラチンと比較して血漿AUCの増加及び半減期の延長を有していた。さらに、非臨床試験所見に基づいて、化合物8は、シスプラチンと比べて向上した安全性プロファイルを有することが予測される。これらの所見に基づいて化合物8の臨床試験が保証される。
用量漸増期に入った患者は、治癒的療法が存在しない集団を表す。DNA修復経路の欠損によって特徴付けられる癌は、白金による治療により感受性であり得、したがって潜在的な患者の選択手法を特定することが最近示された。DNA修復の欠損は、BRCA1/BRCA2に変異を有する卵巣及び乳癌においてよく特徴付けられる(ワデルN(Waddell N)、パジックM(Pajic M)、パッチAM(Patch AM)、チャンDK(Chang DK)、カッサンKS(Kassahn KS)、ベイリーP(Bailey P)ら著、全ゲノムが膵臓癌の変異ランドスケープを再定義する(Whole genomes redefine the mutational landscape of pancreatic cancer)、ネイチャー(Nature)、2015年、第518巻(7540)、p.495〜501、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)。より最近、これらの欠損は、膵臓及び前立腺癌を含む他の進行悪性腫瘍において記載されている。予備的エビデンスは、膵臓、前立腺のこれらのDNA修復欠損サブグループを示唆している(バイシャンパヤンUN(Vaishampayan UN)、フォンタナJ(Fontana J)、ハイルブランLK(Heilbrun LK)、スミスD(Smith D)、ヒースE(Heath E)、ディコB(Dickow B)、フィグWD(Figg WD)、これらのそれぞれの内容は全体が参照により本明細書に援用される)。ドセタキセルで前処理された転移性去勢抵抗性前立腺癌におけるベバシズマブ及びサトラプラチンのフェーズII試験(ウロロジック・オンコロジー(Urol Oncol)、2014年、第32巻(1)、31.e25−33)、及び乳癌(イザコフSJ(Isakoff SJ)、メイヤーEL(Mayer EL)、ヒーL(He L)、トレイナTA(Traina TA)、キャリーLA(Carey LA)、クラッグKJ(Krag KJ)ら著、TBCRC009:転移性トリプルネガティブ乳癌のバイオマーカ評価を用いた白金単剤療法の多施設フェーズII臨床試験(A Multicenter Phase II Clinical Trial of Platinum Monotherapy With Biomarker Assessment in Metastatic Triple−Negative Breast Cancer)、ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(J Clin Oncol)、2015年、これらのそれぞれの内容は全体が参照により本明細書に援用される)は、白金治療から利益を得られる可能性がより高い。
患者の選択のこの可能性は、安全性プロファイル及びMTD又は推奨されるフェーズ2用量(RP2D:recommended Phase 2 dose)が用量漸増期において確立されてから、腫瘍特異的拡大患者コホートにおいて化合物8の予備的活性を調べるための基礎を形成した。コホート拡大期において、化合物8の予備的安全性及び活性は、以下の異なる患者コホートにおいて評価する:1)進行疾患設定における化学療法の2回以下の前治療を有する、BRCA1/BRCA2変異進行膵臓癌;2)進行疾患設定における化学療法(無制限のホルモン療法が許容される)の1回以下の前治療を有する、BRCA1/BRCA2変異進行前立腺癌;及び3)進行疾患設定における化学療法の2回以下の前治療を有する、BRCA1/BRCA2変異を有する他の固形腫瘍(トリプルネガティブ乳癌(TNBC:triple−negative breast cancer)及び卵巣癌を含む)。
目的:
用量漸増期
第一目的
用量漸増期の第一目的は、進行固形腫瘍を有する患者における単剤療法として21日ごとに静脈内(IV)投与される化合物8の安全性、忍容性(tolerability)、用量規定毒性(DLT:dose−limiting toxicity)、最大耐量(MTD:maximum tolerated dose)、及び推奨されるフェーズ2用量(RP2D:recommended phase 2 dose)を決定することである。
副次的目的
用量漸増期の副次的目的は、進行固形腫瘍を有する患者における単剤療法としての化合物8の血漿薬物動態(PK:plasma pharmacokinetics)を評価することである。
固形癌の治療効果判定基準(RECIST)、第1.1版(アイゼンハワー(Eisenhauer)ら著、2009年、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)を用いて調査者によって決定されるように、進行固形腫瘍を有する患者における単剤療法としての化合物8の抗腫瘍活性の予備的エビデンスを評価するためである。
コホート拡大期
第一目的
コホート拡大期の第一目的は、以下の通りである:
− 以下の腫瘍特異的コホートにおける単剤療法としての化合物8の安全性、忍容性、及び抗腫瘍活性をさらに評価するためである:
− 進行疾患設定における化学療法の1又は2回の前治療を受けたことがある進行BRCA1又はBRCA 2変異陽性膵臓癌の患者(Nが約10〜15)における単剤療法としての化合物8;
− 進行疾患設定における化学療法の1回以下の前治療を受けたことがある進行BRCA1又はBRCA 2変異陽性前立腺癌の患者(Nが約10〜15)における単剤療法としての化合物8;
− 進行疾患設定における化学療法の2回以下の前治療を受けたことがある進行BRCA1又はBRCA 2変異陽性固形腫瘍の患者(Nが約20〜30)における単剤療法としての化合物8。拡大コホート3に入ることが予定された20〜30人の患者のうち、最小で10人の患者は、それぞれ以下の2つのカテゴリーのうちの1つでなければならない:
− 進行疾患設定における化学療法の2回以下の前治療を受けたことがあるBRCA1又はBRCA 2変異陽性トリプルネガティブ乳癌の患者;
− 進行疾患設定における化学療法の2回以下の前治療を受けたことがあるBRCA1又はBRCA 2変異陽性卵巣癌の患者。
方法
プロトコル化合物8−001は、進行固形腫瘍を有する患者における単剤療法としての化合物8を評価する非盲検、フェーズ1試験である。この試験は、2つの段階、すなわち、進行固形腫瘍の患者における用量漸増期、及び予測される機能喪失型BRCA1又はBRCA 2変異陽性固形腫瘍(膵臓癌、前立腺癌、乳癌、及び卵巣癌を含む)を有する患者におけるコホート拡大期を有する。
書面によるインフォームドコンセントの提供後、患者は、最初の試験薬剤投与前14日以内に試験適格性についてスクリーニングされる。スクリーニング評価に基づいて適格であると判定された患者は、サイクル1、1日目(C1D1;ベースライン)に試験に参加することになる。治療サイクルは、21日間の長さである。全ての患者は、21日ごとに1日目に静脈内(IV)投与された化合物8を与えられ、投与される化合物8の用量は、患者が入るコホート/期に依存する。治療中、患者は、研究センターに来院し、各治療サイクルのD1、D8、及びD15に試験評価を行われる。用量漸増期において、患者はまた、C1D3又はC1D4に研究センターに来院する。全ての試験来院は、外来患者に基づいて行うが、施設の指針に従って入院患者に基づいて行ってもよい。
許容されない化合物8治療に関連する毒性又は進行がない場合、患者は、調査者の裁量で最大で1年間、及び調査者及びスポンサーの合意の上で1年間を超えて化合物8治療を受ける。
試験薬剤の中断後、患者は、最後の試験薬剤投与後30日以内に治療終了(EOT:End of Treatment)来院を完了させる。その後、患者は、生存状態について3ヶ月ごとに電話で連絡を取られる。
安全性は、有害事象(AE:adverse event)の報告、臨床検査、身体検査、バイタルサイン測定、心電図(ECG)、及び米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG:Eastern Cooperative Oncology Group)のパフォーマンスステータス(PS:performance status)によって試験中に評価する。
PKのための連続血液試料は、用量漸増期において全ての患者から採取する。
スクリーニング中、疾患の全ての部位は、コンピュータ断層撮影(CT)によって評価する。解剖学的領域がCTによって十分に画像化できない場合、磁気共鳴イメージング(MRI)が、メディカルモニターの承認を得て代わりに使用され得る。腫瘍測定は、C3から開始して1サイクルおきに最初の試験薬剤投与の7日以内及びEOT来院時に繰り返される。(このような評価は、指示される場合、より頻繁に行われることになる)。反復評価は、ベースラインで使用されるのと同じ放射線学的方法を使用する。疾患応答は、RECIST、第1.1版(アイゼンハワーEA(Eisenhauer EA)、テラッセP(Therasse P)、ボガーツJ(Bogaerts J)、シュワルツLH(Schwartz LH)、サージェントD(Sargent D)、フォードR(Ford R)、ダンシーJ(Dancey J)、アーバックS(Arbuck S)、グアイザーS(Gwyther S)、ムーニM(Mooney M)、ルービンシュタインL(Rubinstein L)、シャンカルL(Shankar L)、ドッドL(Dodd L)、カプランR(Kaplan R)、ラクームD(Lacombe D)、フェルヴァイJ(Verweij J)著、固形癌の新しい治療効果判定基準(New response evaluation criteria in solid tumours):改訂版RECISTガイドライン(第1.1版)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー(Eur J Cancer)、2009年、第45巻(2)、p.228〜47、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)を用いて調査者によって評価する。
用量漸増期:
進行固形腫瘍を有する患者は、用量漸増期に参加するのに適格である。
用量漸増期は、最初に各コホートに1人の患者が参加する(すなわち、単一患者コホート)加速性滴定設計を用いる。初期の患者は、20mg/mの開始用量で化合物8単剤療法を受ける。米国(US)国立癌研究所(NCI:National Cancer Institute)有害事象共通用語規準(CTCAE:Common Terminology Criteria for Adverse Event)、第4.03版に従って決定した際にグレード2以上の毒性(脱毛症を除く)に直面するまで、用量は100%の増分で漸増され(すなわち、倍加)、その時点で、そのコホート及び全てのその後の単剤療法コホートは従来の「3+3」用量漸増設計(すなわち、標準コホート)に従う。(試験薬剤に関連していると調査者が見なすグレード2以上の毒性なしで80mg/m2の用量に達する場合、加速性滴定手順は停止し、80mg/m2コホートから開始する標準的な用量漸増手順に従う)。用量は、安全性審査委員会(SRC:Safety Review Committee)の決定に基づいて、MTDに達するまで25〜50%の増分でさらに漸増される。前の用量レベルの安全性及び忍容性データの一時的な評価に基づいて、増加が中間用量レベルで行われることも決定され得る。
C1を完了したコホート内の全ての患者は、C2D1を通して安全性評価を行われ、次のコホートへの参加が開始し得る前にDLTについて評価される。コホート内の33%未満の患者がDLTを有する場合(すなわち、6以下のうちの2未満)、次のコホートへの参加はメディカルモニターからの承認を得て開始し得る。コホート内の33%以上(6以下のうちの2以上)の患者がDLTを受ける場合、DLT用量レベルに達しており、前のより低い用量レベルが予備的MTDと見なされる。合計で6〜10人の患者がMTD又はRP2Dにおいて処理されて、化合物8の安全性、忍容性、及びPKのさらなる特性評価が得られる。
RP2Dは、用量漸増期において単剤療法を受けた患者における化合物8の安全性、忍容性、PK、及び活性プロファイルの所見に基づく。このRP2Dは、コホート拡大期において拡大コホートに使用される。
コホート拡大期:
コホート拡大期は、MTDにおけるC2D1を通した全ての患者の参加及び/又は治療が用量漸増期に完了しない場合でも、RP2Dが特定されたら開始する。RP2Dは、コホート拡大期の実施中に変更されてもよく、患者の用量は、PKに関連する観察及び複数のサイクル後に観察される何らかの蓄積毒性に基づいて相応に調整される。RP2Dは、予備的MTD以上であってもよいが、非耐性用量(すなわち、2人以上の患者がDLTを生じた用量)未満であり得る。
コホート拡大期において、化合物8単剤療法は、用量漸増期において特定されるRP2Dを用いて評価する。選択されたBRCA1又は2変異陽性固形腫瘍を有する患者の異なるサブセットからなる3つ以下の拡大コホートが参加される(腫瘍型については、目的、コホート拡大期を参照されたい)。いずれの拡大コホートを試験するかについての最終決定は、用量漸増期のデータ及び/又は非臨床データに基づく。
化合物8の安全性及び抗腫瘍活性は、拡大コホートにおいて評価する。同様に、患者の固形腫瘍に適した腫瘍マーカ(例えば、癌胎児性抗原[CEA]及び膵臓癌の癌抗原[CA]−19−9;卵巣癌のCA−125;前立腺癌の前立腺特異的抗原[PSA])が測定される。
患者の数:
用量漸増期:
標準的なフェーズ1用量漸増スキームに基づいて、1人の患者が各単一患者コホートに参加し、3〜6人の患者が各標準コホートに参加する。各患者は、1つの用量コホートのみに参加する。用量漸増期に参加する患者の総数は、観察される安全性プロファイルに応じて決まり、これは、1用量コホート当たりの患者の数、ならびに化合物8のMTDを達成し、RP2Dを確立するのに必要な用量漸増の回数を決定する。
限界DLT率(33%)の場合に6人の患者に拡大する、各標準コホートにおける少なくとも3人の患者の試料サイズは、新規な抗癌剤の用量漸増における安全な従来の手法と見なされた。5%以下の真のDLT率を仮定すると、3%の変化があり、用量漸増が所与のコホートにおいて停止される(すなわち、DLTを有する2人以上の患者を観察する)。50%の真のDLT率が仮定される場合、83%の変化があり、用量漸増が所与のコホートにおいて停止される。
前述されるように、さらなる6〜10人の患者がMTD又はRP2Dにおいて参加して、化合物8の安全性、忍容性、及びPKのさらなる特性評価が得られる。
コホート拡大期:
各拡大コホート1及び2における10〜15人の患者ならびに拡大コホート3における20〜30人の患者(各拡大コホート3A及び3Bに少なくとも10人の患者を含む)を含む、合計で60人以下の患者がコホート拡大期に参加する。1コホート当たり少なくとも10人の患者の試料サイズは、異なる腫瘍型を有する患者における化合物8の忍容性及び予備的活性を評価するのに十分であると見なされる。正式な試料サイズの計算は行わなかった。
診断及び包含のための主な基準:
全ての患者
全ての患者は、参加するのに適格であるように以下の基準の全てを満たさなければならない:
− 18歳以上の男性又は女性;
− 脳転移歴を有する患者は、以下の基準を全て満たす場合、試験に適格である:a)脳転移を治療した;b)治療後に進行又は出血のエビデンスがない;c)デキサメタゾンをC1D1前の少なくとも2週間中断した;及びd)デキサメタゾン及び/又は抗てんかん薬による治療が試験参加中に必要でない;
− 0〜1のECOG PSスコア;
− 以下のように定義される、C1D1前の14日以内の十分な臓器機能:
− 骨髄:絶対好中球数(ANC:absolute neutrophil count)≧1.5×10/L、血小板数≧100×10/L、及びヘモグロビン≧9g/dL.;
− 肝臓:正常上限(ULN:upper limit of normal)の1.5倍以下の総ビリルビンならびにULNの1.5倍以下(肝臓転移が存在する場合、ULNの5倍以下)のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT:alanine aminotransferase)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST:aspartate aminotransferase);
− 腎臓:正常血清クレアチニン又は60mL/分(コッククロフトとゴールトの式)以上の推定クレアチニンクリアランス。
− 妊娠可能な女性の場合、C1D1前の72時間以内の陰性血清妊娠検査を受け、C1D1の30日前から最後の試験薬剤投与の30日後まで、医師に承認された避妊法を使用するのに合意する;
− 男性の場合、外科的に不妊であるか、又はC1D1の30日前から最後の試験薬剤投与の30日後まで、医師に承認された避妊法を使用するのに合意する;
− 試験手順の開始前にインフォームドコンセント用紙にサインすることを理解する能力及びサインしようとする意思;
− RECIST、第1.1版(アイゼンハワー(Eisenhauer)ら著、2009年、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)に従って測定可能な疾患、(すなわち、従来の技術による20mm以上又はCTスキャンもしくはMRIによる10mm以上の少なくとも1つの測定可能な病変)、最後のイメージングは、最初の試験薬剤投与前の14日以内に行う。
用量漸増期における患者
用量漸増期における患者はまた、以下のさらなる基準を満たさなければならない:
− 患者が化学療法の3回以下の前治療を受けたことがある、原発性中枢神経系(CNS:central nervous system)腫瘍以外の局所進行固形腫瘍。(標的薬剤、免疫療法、又はホルモン療法による過去の治療を受けたことに関する制限はない)。
コホート拡大期における患者
コホート拡大期における患者はまた、以下のさらなる基準を満たさなければならない:
− 以下のカテゴリーのうちの1つの組織学的に又は病理学的に確認された固形腫瘍:
− 患者が進行疾患設定における化学療法の1又は2回の前治療を受けたことがある、進行BRCA1又は2変異陽性膵臓癌(拡大コホート1);
− 患者が進行疾患設定における化学療法の1回以下の前治療を受けたことがある、進行BRCA1又は2変異陽性前立腺癌(拡大コホート2);
− 患者が進行疾患設定における化学療法の2回以下の前治療を受けたことがある、以下を含む進行BRCA1又は2変異陽性固形腫瘍(拡大コホート3):
− 患者が進行疾患設定における化学療法の2回以下の前治療を受けたことがある、BRCA1又は2変異陽性トリプルネガティブ乳癌(拡大コホート3A);
− 患者が進行疾患設定における化学療法の2回以下の前治療を受けたことがある、BRCA1又は2変異陽性卵巣癌(拡大コホート3B)。
以下の基準のいずれかを満たす患者は、試験参加に適格でない:
− 軟膜疾患又は脊髄の圧迫の病歴;
− C1D1前の4週間以内に大手術を受けたか、又はC1D1前の14日以内(マイトマイシンC及びニトロソウレアの場合には6週間以内)又は薬剤の5半減期以内(いずれか短い方)に癌の治療(化学療法、放射線療法、ホルモン療法、生物療法又は免疫療法など)又は治験薬もしくは機器を与えられた。治験薬の停止と、化合物8の投与との間に最小で10日間が必要とされる。さらに、脱毛症を除く、薬剤に関連する毒性がグレード1以下に回復したはずである;
− ベースライン(C1D1)におけるグレード2以上の末梢神経障害;
− 女性の場合、妊娠中又は授乳期間中である;
− 患者が、併用療法による毒性のリスクが増加した状態にあり得るか、疾患に関連する症状が化合物8の安全性の正確な評価を除外し得るような、既知のヒト免疫不全ウイルス(HIV:human immunodeficiency virus)感染又はB型肝炎又はC型肝炎感染;
− 何らかの原発性CNS腫瘍(例えば、星細胞腫、膠芽細胞腫);
− 任意の白金含有薬剤に対する過敏性;
− 何らかの他の病態が、調査者の考えによれば、患者の安全性を損ない、又は試験の実施を妨げ得る。
治験薬、投与量及び投与方法:
注射用の化合物8の粉末は、マンニトール、クエン酸ナトリウム、及びクエン酸とともに、化合物8、シスプラチンプロドラッグを含有する滅菌した凍結乾燥粉末である。この製品は、等張液でもどされ、静脈内(IV)注入されることが意図される。注射用の化合物8の粉末は、50mLの琥珀色のI型ガラス瓶中で供給される。
患者は、21日ごとにD1に60分間にわたって静脈内(IV)投与された化合物8を与えられる。患者は、各化合物8投与の前後に標準治療に従って静脈内(IV)ハイドレーションを受けるべきである。
用量漸増期において、単剤療法としての化合物8の開始用量は、20mg/mである。用量漸増は、加速性滴定設計(サイモンR(Simon R)、フリードリンB(Freidlin B)、ルービンシュタインL(Rubinstein L)、アーバックSG(Arbuck SG)、コリンズJ(Collins J)、クリスチャンMC(Christian MC)著、腫瘍学におけるフェーズ1臨床試験のための加速性滴定設計(Accelerated titration designs for phase 1 clinical trials in oncology)、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(J Natl Cancer Inst)、1997年、第89巻、p.1138〜47、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)に従って、及び次に標準的な3+3設計によって行う。計画された用量レベルは、以下の通りであり、表20に列挙される。
前述されるように、前の用量レベルの安全性及び忍容性データの一時的な評価に基づいて、増加が中間用量レベルで行われることも決定され得る。用量漸増のレベル及び中間用量レベルに進む決定は、用量漸増前にSRCによって決定されるが、予め規定されるスキーマに従って計画された用量を超えない。
用量漸増期において、患者が進行のエビデンスなしで化合物8に耐性がある場合、患者は、C1後、スポンサーのメディカルモニターの合意の上で、SRCによって耐性があることが既に確立された用量に増加された用量を有し得る。
コホート拡大期において、化合物8は、用量漸増期に確立されるようにRP2Dに投与される。
治療の期間:
許容されない化合物8治療に関連する毒性又は進行がない場合、患者は、調査者の裁量で最大で1年間、及び調査者及びスポンサーの合意の上で1年間を超えて化合物8治療を受けてもよい。
評価の基準:
安全性:安全性は、定期的な身体検査、12誘導ECG、臨床検査評価、及びAEのモニタリングによって評価する。AEは、NCI CTCAE、第4.03版を用いて等級分けする。
スポンサーのメディカルモニター及び参加している調査者からなるSRCは、用量漸増期中に約1〜2週間ごとの遠隔会議を行って、現コホートにおいて生じている毒性を検討し、DLTを決定する。その検討に基づいて、SRCは、次の用量レベルへの漸増が開始し得るかどうかもしくは現コホートが拡大されるべきかどうか、又は調査される中間用量レベルを決定する。
抗腫瘍活性:
疾患応答は、RECIST、第1.1版を用いて調査者によって評価される。コホート拡大期において、患者の固形腫瘍に適した腫瘍マーカ(例えば、膵臓癌におけるCEA及びCA−19−9;卵巣癌におけるCA−125;前立腺癌におけるPSA)も測定される。
薬物動態:
PKプロファイルは、試験を通して間隔を空けて化合物8の血漿中濃度を決定することによって用量漸増期において評価する。
統計的方法:
PKは、適切なコンパートメントモデルを各患者についての完全な一連のデータに適合させることによって特性評価される。安全性、PK、及び抗腫瘍活性の統計的分析は、試験の目的がさらなる調査に使用される化合物8のDLT、MTD、及び推奨用量を決定することであるため、基本的に性質が記述的である。この目的は、決定性アルゴリズムの結果によって達成され、したがって、これに関連して統計的仮説検定は意図されず適切でもない。
連続型変数は、記述統計学[n、平均、標準偏差、中央値、最小値、及び最大値]を用いて要約される。カテゴリー変数は、各分類内の患者の数及びパーセンテージ(n、%)を示して要約される。
事象のスケジュール:
事象のスケジュールは、図14−1、14−2及び14−3に示される。C=サイクル;D=日;ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ;EOT=治療終了。
− EOT来院の完了後、研究センター職員は、生存状態について3ヶ月ごとに電話で患者と連絡を取る;
− スクリーニング血清学は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、及びC型肝炎ウイルスデオキシリボ核酸(HCV DNA)を含む;
− スクリーニング評価がベースライン(C1D1)前の7日以内に行われる場合、それはC1D1に反復される必要がない;
− 体表面積(BSA:Body surface area)は、計算のデュボイス法を用いて研究センター職員によって計算されるべきである。BSAは、C1D1における試験薬剤投与前に計算され、C3から開始して1治療サイクルおきの試験薬剤投与前に再計算されるべきである;
− 血液学パラメータは、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球(RBC)数、血小板数、及び白血球(WBC:white blood cell)百分率数を含む。試験薬剤投与日に結果が得られ、試験薬剤投与前に再検討されなければならない;
− スクリーニング評価がベースライン(C1D1)前の72時間以内に行われる場合、C1D1に繰り返される必要がない;
− 臨床化学は、塩化物、二酸化炭素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、血中尿素窒素、クレアチニン、グルコース、アルブミン、アルカリホスファターゼ、AST、ALT、総ビリルビン、及び総タンパク質を含む。試料は、予定された来院の48時間前までに採取され得る。試験薬剤投与日において、、試験薬剤投与前に結果が調査者によって再検討されなければならない;
− 凝固検査は、プロトロンビン時間(PT:prothrombin time)及び活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を含む;
− 尿検査は、比重、pH、血液、グルコース、タンパク質、ケトン、及び堆積物の顕微鏡検査を含む;
− 血清妊娠検査は、妊娠可能な女性のみに必要とされ、妊娠検査は、試験中、妊娠が疑われるときはいつでも繰り返されるべきである;
− ベースライン腫瘍評価のため、疾患の全ての部位は、CTによって画像化されるべきである。解剖学的領域が、CTによって十分に画像化できない場合、MRIが、メディカルモニターの承認を得て代わりに使用され得る。腫瘍測定は、C3から開始して1サイクルおきに最初の試験薬剤投与の7日以内及びEOT来院時に繰り返される。反復評価は、ベースラインで使用されるのと同じ放射線学的方法を使用すべきである;
− 疾患応答は、RECIST、第1.1版(アイゼンハワーEA(Eisenhauer EA)、テラッセP(Therasse P)、ボガーツJ(Bogaerts J)、シュワルツLH(Schwartz LH)、サージェントD(Sargent D)、フォードR(Ford R)、ダンシーJ(Dancey J)、アーバックS(Arbuck S)、グアイザーS(Gwyther S)、ムーニM(Mooney M)、ルービンシュタインL(Rubinstein L)、シャンカルL(Shankar L)、ドッドL(Dodd L)、カプランR(Kaplan R)、ラクームD(Lacombe D)、フェルヴァイJ(Verweij J)著、固形癌の新しい治療効果判定基準(New response evaluation criteria in solid tumours):改訂版RECISTガイドライン(第1.1版)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー(Eur J Cancer)、2009年、第45巻(2)、p.228〜47、これらのそれぞれの内容が参照により本明細書に援用される)を用いて、試験薬剤の最初の投与前の14日以内に調査者によって評価され、C3から開始して1サイクルおきに最初の試験薬剤投与の7日以内に、及びEOT来院時に繰り返される;
− 用量漸増期のみにおいて、PK評価のための連続血液試料がC1D1投与前ならびに注入開始の0.5、1、2、4、及び6時間後の時点で採取される;
− 用量漸増期のみにおいて、PK評価のための血液試料がC1D1における注入の開始の72〜96時間後の任意の時点で採取され;
− 用量漸増期のみにおいて、トラフ薬剤レベルの血液試料が、投与前に採取され;
− 用量漸増期のみにおいて、≧C2において、PK評価のための血液試料が、D1投与前ならびに及び注入の開始の0.5、1、及び2時間後の時点で採取される。SRCが、十分なPKデータが採取され、PKのためのさらなる試料が≧C2において必要でないと決定する場合、このような試料は、もはや採取されない;
− 患者の固形腫瘍に適した腫瘍マーカ(例えば、膵臓癌におけるCEA及びCA−19−9;卵巣癌におけるCA−125;前立腺癌におけるPSA)が、試験薬剤の最初の投与前の14日以内にスクリーニング中に測定され、C3から開始して1サイクルおきに最初の試験薬剤投与の7日以内及びEOT来院時に繰り返される。腫瘍マーカは、該当する場合、腫瘍測定の±7日以内に測定される。
患者の治療
試験薬剤の供給
注射用の化合物8の粉末は、マンニトール、クエン酸ナトリウム、及びクエン酸とともに、化合物8、シスプラチンプロドラッグを含有する滅菌した凍結乾燥粉末である。この製品は、等張液でもどされ、静脈内(IV)注入されるべきである。各投与単位は、栓付きの50mLの琥珀色のバイアル中の100mgの化合物8を含有し、100mgの化合物8は、51mgのシスプラチン当量を含有する。あるいは、各投与単位は、栓付きの50mLの琥珀色のバイアル中の50mgの化合物8を含有する。
注射用の化合物8の粉末は、50mLの琥珀色のI型ガラス瓶中で供給される。
試験薬剤の包装及びラベル付け
試験薬剤ラベルは、誤り又は誤解を与える記載を確かに含み、又は試験薬剤が安全であり、又はそれを調べる目的のために有効であることを表す。ラベル付けの内容は、該当する場合、FDA及びその場所の国家規制規定(National regulatory specification)及び要件に従う。
試験薬剤の貯蔵
注射用の化合物8の粉末は、≦−20℃で冷凍貯蔵され、光から保護されるべきである。化合物8は、適切な試験員のみが利用可能である施錠された領域中に貯蔵されるべきである。
試験薬剤の説明責任
FDAは、各研究センターが受け取る全ての治験薬の説明を求めている。必要とされる薬剤の体内動態の記録は、センターが受け取った日付、投与された日付、投与された量、及び試験薬剤を投与した患者を含む。調査者には、全ての使用及び未使用試験薬剤容器ならびに未使用試験薬剤についての説明責任がある。
各研究センターは、試験薬剤の体内動態を報告するために試験薬剤の説明責任ログを使用する。この形式における全ての項目は、全て記入される。スポンサーを表す治験担当者(CRA:clinical research associate)は、試験薬剤が貯蔵され、説明責任記録が保持される場所を承認することになる。
調査者の識別番号ならびに患者の頭文字及び識別番号が各試験薬剤の説明責任ログに記録される。毎回、試験員は、試験薬剤を患者に投薬し、投薬された日付、投薬された試験薬剤の量、及び患者の頭文字を記録する。試験員は、臨床用の供給品の在庫を監視し、全ての使用及び未使用試験薬剤の数を維持する。CRAは、定期的なモニタリング訪問中、試験薬剤の説明責任記録及び残りの薬剤供給を見直す。
試験薬剤の用量調製
化合物8用量は、患者が参加するコホート/試験段階に依存する。化合物8用量は、ベースラインにおいて及びC3から出発してその後の1サイクルおきにD1において計算されるように、体表面積(BSA)に基づいて計算される。
静脈内(IV)注入の場合、注射用の化合物8の粉末の各瓶が20mLの0.45%の塩化ナトリウム注入、USPでもどされて、5mMのクエン酸緩衝液、2.5%のマンニトール及び0.45%の塩化ナトリウム中の化合物8の5mg/mLの溶液が得られる。もどされた溶液は、塩化ナトリウム注入、静脈内(IV)注入用のUSP 0.9%(1時間にわたって250mL)でさらに希釈される。もどした後、研究センターの薬剤師は、もどされた溶液を注入セットに移すであろう。化合物8は可能な限り早く注入され、もどした後、約3、4、又は5時間より長くならない。それは、光から保護される必要があり得る。
試験薬剤の用量調製及び投与に関する詳細については、薬剤学のマニュアル(Pharmacy Manual)を参照されたい。
試験薬剤投与
全ての患者は、各治療サイクルのD1に60分間にわたって静脈内(IV)注入によって化合物8を投与される。
化合物8の投与計画が図15に要約されている。示されるように、全ての患者は、各化合物8投与前の1〜2時間にわたり、20mEqの塩化カリウム及び2gの硫酸マグネシウムを含有する1,000mLの0.9%の塩化ナトリウムによる静脈内(IV)ハイドレーションを受ける必要がある。プレハイドレーションの投与後、患者は、組織的な実施に従ってマンニトールフロセミドによる利尿薬治療を受けてもよい。利尿薬の投与後、患者は、存在する場合、組織的な実施に従って予防的な5−HT受容体アンタゴニストベースの制吐治療(例えば、オンダンセトロン)を受けてもよい。その後、試験薬剤が投与される。化合物8注入の完了後、患者は、1〜2時間にわたって20mEqの塩化カリウム及び2gの硫酸マグネシウムを含有する1,000mLの0.9%の塩化ナトリウムによる静脈内(IV)ハイドレーションを受ける。患者は、化合物8投与後の2〜3日間にわたって1日当たり1〜2Lの流体を飲むことが指示される。
各化合物8注入について、日付、注入開始及び停止時間(24時制)、計画された及び実際の注入用量、及び注入体積がソースドキュメントにおいて報告され、eCRFにおいて書き写される。
用量漸増期
化合物8の開始用量は、20mg/mである。計画された用量レベルは、表21に要約されている。
化合物8用量は、スポンサー、メディカルモニター、及び参加する調査者からの適切な説明、現用量レベルにおいて参加する患者からC1中に収集された安全性データの検討により、SRC後に連続して漸増される。
用量コホートにおける各患者は、DLTの評価に適格であるように、C2D1を通して化合物8を投与され、追跡調査安全性評価を完了させなければならない。
C1を完了する前にDLT以外の理由で試験を中断する患者は交換される。
DLTがさらなる患者のコホートへの参加を余儀なくする場合、SRCは、全ての患者がC2D1を通して化合物8を投与され、追跡調査安全性評価を完了させた後、そのコホートについての全ての安全性データを検討する。前の用量レベルの安全性及び忍容性データの一時的な評価に基づいて、増加が中間用量レベルで行われ得ることも決定され得る。SRCは、委員会の注目を必要とする重要な安全性問題が生じる場合、スポンサーの裁量でより早く開催され得る。
加速性滴定手順
毒性は、NCI CTCAE、第4.03版を用いて、調査者によって等級分けされる。
最初に1人の患者が第1の用量コホートに参加する。患者が化合物8を投与され、C2D1を通して安全性評価を行われた後:
− 患者が、化合物8に関連していると調査者が見なすグレード2以上の毒性を生じない場合、次の患者は、SRCの承認を得て次の用量コホートに参加してもよい;
− 患者が、DLT(コホート拡大期)の定義を満たさない、化合物8に関連していると調査者が見なすグレード2以上の毒性(脱毛症を除く)を生じる場合、標準的な用量漸増手順(次のサブセクションを参照されたい)に従ってそのコホートへの参加が継続する;
− 患者がDLT(コホート拡大期)を生じる場合、標準的用量漸増手順(次のサブセクションを参照されたい)に従ってそのコホートへの参加が継続する。
試験薬剤に関連していると調査者が見なすグレード2以上の毒性なしで80mg/mの用量に達する場合、加速性滴定手順は停止し、80mg/mコホートから開始する標準的な用量漸増手順に従う(次のサブセクションを参照されたい)。
標準的な用量漸増手順
用量漸増手順は、表22に要約されている。
3人以下の患者が最初に各コホートに参加する。
3人の患者が化合物8を投与され、C2D1を通して安全性評価を行われた後:
− 3人の患者のいずれもDLT(コホート拡大期)を生じない場合、次のコホートへの参加は、SRCからの承認を得て開始し得る;
− コホート内の3人の患者のうちの1人がDLT(コホート拡大期)を生じる場合、最大で3人のさらなる患者がその用量レベルで連続して参加することになる。さらなる3人の患者のいずれもDLTを生じない(すなわち、6人の患者のうちの1人がDLTを有する)場合、次の計画された用量における参加は、SRCからの承認を得て開始し得る;
− コホート内の2人以上の患者がDLT(コホート拡大期)を生じる場合、DLT用量レベルに達し、前のより低い用量レベルがMTDと見なされる;
− 10人の患者のうちの合計で6人が、MTD又はフェーズ2におけるさらなる調査のために推奨される他の用量(すなわち、RP2D)で処理されて、化合物8の安全性、忍容性、及びPKのさらなる特性評価が得られる。
次の用量コホートへの参加は、現用量コホートに参加する最後の患者がC1を完了し、DLTについて評価され、ただし、現用量コホートにおける2人未満の患者がDLTを生じる場合のみ開始し得ることに留意されたい。
用量漸増に関する決定は、C1からのデータの検討に基づいて行われるが、安全性データはまた、治療を継続している全ての患者から収集され、これは、SRCによって定期的に見直される。検出された蓄積毒性は、後の減量又は必要に応じて他の措置(RP2Dのさらなる改善を含む)を必要とし得る。
コホート拡大期
コホート拡大期において、全ての患者は、用量漸増期において特定されるようにMTD又はRP2Dにおける化合物8を投与される。
RP2Dは、コホート拡大期の実施中に変更されてもよく、患者の用量は、PKに関連する観察及び複数のサイクル後に観察される何らかの蓄積毒性に基づいて相応に調整される。RP2Dは、予備的MTD以上であってもよいが、非耐性用量(すなわち、2人以上の患者がDLTを生じた用量)未満であり得る。
用量規定毒性(DLT)の定義
DLTは、少なくともおそらく化合物8に関連していると調査者が見なす、治療の最初のサイクル内(すなわち、C2D1を通して)の以下の事象のいずれかの発生として定義される:
− 化合物8に関連する毒性(血液学的又は非血液学毒性のいずれか)のため、計画された通りに(すなわち、試験22日目に)C2を開始することができない;
− 7日間以上の期間のグレード4の血液学的毒性;
− グレード2以上の出血に関連するグレード3以上の血小板減少症;
− 発熱性好中球減少症;
− 以下を除く、グレード3以上の非血液学的毒性:
− 最大の補助的治療を開始する48時間以内にグレード3未満に改善される吐き気及び/又は嘔吐及び下痢;
− 72時間以内にグレード3未満に改善される、グレード3の下痢、発熱(好中球減少症がない場合)、又は疲労。
症状に関連せず、C2D1によってグレード1又はベースラインまで改善するグレード3の検査所見の異常。
用量制限毒性であると調査者及びスポンサーの医薬情報担当者が見なす他の著しい毒性(例えば、C1中の患者の離脱につながる、少なくともおそらく化合物8に関連していると見なされる毒性)。
最大耐量(MTD)の定義
MTDは、33%未満の患者がC1においてDLTを生じる最高用量レベルとして定義される。
推奨されるフェーズ2用量(RP2D)の定義
RP2Dは、予備的MTD以上であってもよいが、非耐性用量(すなわち、33%以上の患者がDLTを生じた用量)未満であり得る。RP2Dは、スポンサー、メディカルモニター、及び調査者との協議で決定される。さらに、PKに関する観察及び複数のサイクル後に観察される何らかの蓄積毒性が、RP2Dを裏付ける根拠として含まれ得る。
用量の調節
用量漸増期
用量漸増期において、全ての患者は、C1において所定の用量の化合物8を投与されなければならない。C1後、調査者の判断において患者が用量レベルに耐性でない場合、メディカルモニターは、より低い化合物8用量レベルへの減量、又は必要に応じて治療の中断に関して連絡を取られるべきである。患者がPDのエビデンスなしで化合物8に耐性である場合、患者は、C1後、スポンサーのメディカルモニターの合意の上で、SRCによって安全でかつ耐性があることが既に確立された用量に増加された用量を有し得る。
コホート拡大期
可能な場合、毒性は、症候的に管理されるべきである。吐き気及び嘔吐のための制吐薬、下痢のための下痢止め薬、及び発熱のための解熱薬を含む適切な治療が、兆候及び症状を改善するために使用されるべきである。
用量の再度の漸増なしで、1回以下の減量が各患者について実施されるべきである。
血液学的毒性のための用量の調節
好中球減少症
好中球減少症は、医学的に示されるように治療されるべきである。さらに、表23に列挙される手段が推奨される。
血小板減少症
グレード3又は4の血小板減少症の場合、血小板数が100×10/L以上になるまで最大で2週間治療を遅らせる。血小板数が100×10/L以上に戻ったら、25%減少された用量で試験薬剤を再開する。
最大で2週間(すなわち、前の試験薬剤投与後5週間以内)治療を遅らせた後、血小板数が100×10/L以上に戻らない場合、試験薬剤は中断されるべきである。
貧血
グレード2又は3の貧血の場合、貧血がグレード1又はベースライン(ヘモグロビン≧10g/dL)に改善されるまで、最大で2週間(すなわち、前の試験薬剤投与後5週間以内)治療を遅らせる。輸血及び/又はエリスロポエチンによる治療が許容される。ヘモグロビンが10g/dL以上に戻ったら、25%減少された用量で試験薬剤を再開する。
最大で2週間(すなわち、前の試験薬剤投与後5週間以内)治療を遅らせた後、ヘモグロビンが10g/dL以上に戻らない場合、試験薬剤は中断される。
試験薬剤は、グレード4の貧血の場合に中断されるべきである。
非血液学的毒性
末梢神経障害
グレード3以上の末梢神経障害の場合、グレード2以下に改善されるまで最大で2週間治療を遅らせる。末梢神経障害がグレード2以下に改善されたら、25%減少された用量で試験薬剤を再開する。
最大で2週間(すなわち、前の試験薬剤投与後5週間以内)治療を遅らせた後、末梢神経障害がグレード2以下に改善されない場合、試験薬剤は中断されるべきである。
腎毒性
クレアチニンクリアランスは、各サイクルのD1における試験薬剤投与前にコッククロフトとゴールトの式を用いて推定されるべきである。患者の推定クレアチニンクリアランスが、
− 60mL/分超である場合、100%で再治療する;
− 45〜60mL/分である場合、25%減少された用量で再治療する;
− 45mL/分未満である場合、試験薬剤を中断する。
中毒性難聴
試験薬剤は、化合物8に関連していると調査者が見なすグレード3以上の中毒性難聴の場合に中断される。
吐き気及び嘔吐
グレード2以下の吐き気及び嘔吐の場合、症候的に管理され、予定通りに100%で再治療する。
グレード3以上の吐き気及び嘔吐の場合、症候的に管理され、グレード2以下又はベースラインに改善されるまで最大で2週間治療を遅らせる。その後、25%減少された用量で試験薬剤を再開する。吐き気及び嘔吐が、最大で2週間の遅延後(すなわち、前の試験薬剤投与の5週間後)にグレード2以下に改善されない場合、試験薬剤は中断される。
選択される用量の根拠
ヒト開始用量
アロメトリーを用いてヒトにおいて推定される最終用量は、GLP反復投与毒性試験において動物の10%で極めて有毒な用量(STD10)でラットにおいて観察されるAUCの10分の1をもたらす用量である。この試験におけるSTD10に最も近い用量は19mg/kgのMTDであった。ラットにおいて19mg/kgで観察されるAUCは7,060μM・時間であり、したがって曝露の10分の1は706μM・時間である。用量=AUC×クリアランス関係式を用いて、ヒトにおいて得られる開始用量は、20mg/mであると推定される(表24)。
併用薬
化合物8の最初の投与の30日前からEOT来院まで摂取される、薬理学的用量のビタミン、植物薬、又は他の非伝統的薬剤を含む全ての処方薬及び非処方箋薬及び治療は、eCRFに記録されなければならない。PK試料採取日において、併用薬及び治療の日付及び時刻の両方が記録されなければならない。
除外される薬剤
以下の薬剤及び治療が試験参加中に禁止される。
固形腫瘍の治療について調査中である、患者の固形腫瘍以外の適応症のための市販の薬剤を含む、化合物8以外の任意の治験薬又は機器;
− 試験薬剤以外の固形腫瘍に対する活性を有する任意の抗腫瘍治療。これは、高用量のコルチコステロイドを含む;
− 腎毒性であることが知られている薬剤(例えば、アミノグリコシド抗生物質[ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン]、アムホテリシンB、シクロスポリン、タクロリムス、バンコマイシン);
− CYP2B6によって除去される薬剤(例えば、リファンピン);
− ピリドキシン;
− 抗けいれん薬(例えば、クロナゼパム、フェニトイン)の血漿中濃度は、化合物8治療中に治療量以下になり得る。このような薬剤を投与される患者は監視されるべきであり、抗てんかん薬の用量は調査者の裁量で調整される。
標的病変に対する放射線治療又は標的病変の外科的除去は、PDを示すものと見なされ、患者が疾患応答について評価不能となる。
許容される薬剤
疾患に関連する症状のための緩和ケア及び支持療法を含む、除外される薬剤において規定されるもの以外の薬剤及び治療が試験中に許容される。患者は厳重に監視されるべきであり、必要に応じて疾患に関連する症状に合わせた治療が行われるべきである。
− 利尿薬及び制吐薬:試験薬剤投与の節に記載されるように、必要とされるプレハイドレーションを受けた後かつ各化合物8投与前に、患者は、組織的な実施に従ってマンニトール又はフロセミドによる利尿薬治療を受けてもよい。利尿薬の投与後で化合物8投与前に、患者は、存在する場合、組織的な実施に従って予防的な5−HT受容体アンタゴニストベースの制吐治療(例えば、オンダンセトロン)を受けてもよい;
− 造血成長因子:造血成長因子が、メディカルモニターの承認を得て、及びアメリカ臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology)のガイドラインに従って使用され得る。5日以上続くグレード4の好中球減少症;38.5℃以上の口腔体温でグレード3/4の好中球減少症;又はグレード3/4の好中球減少症による感染を有する患者は、調査者の裁量でコロニー刺激因子による治療を受けてもよい;
− 黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH:luteinizing hormone−releasing hormone)アゴニスト:前立腺癌を有する患者は、調査者の裁量でLHRHアゴニストによる併用治療を受けてもよい。
ランダム化及び盲検法
これは非盲検、用量漸増試験であり、ランダム化又は盲検法は用いられない。
薬物動態評価
用量漸増期における全ての患者について、PK評価のための連続血液試料が以下の時点で採取される:
− C1D1:投与前ならびに試験薬剤注入の開始の0.5、1、2、4、6、及び72〜96時間後の時点;
− C1D8;
− C1D15;
− ≧C2D1:投与前ならびに試験薬剤注入の開始の0.5及び1時間後及び2時間後の時点(SRCが、十分なPKデータが収集され、PKのためのさらなる試料が≧C2において必要でないと決定する場合、このような試料はもはや採取されない);
− PK試料採取の時間は、試験薬剤注入の開始に対するものである;
− PK評価のための血液試料採取のカレンダー日付及び正確な24時制の時間がソースドキュメント及びeCRFにおいて報告される;
− PK評価のための血液試料は、試験マニュアルに記載されるように処理、貯蔵及び輸送されるべきである。
抗腫瘍活性評価
腫瘍マーカ
患者の固形腫瘍型に該当する腫瘍マーカ(例えば、膵臓癌におけるCEA及びCA−19−9;卵巣癌におけるCA−125;前立腺癌におけるPSA)が、図14−1、14−2及び14−3に示される時点又は拡大コホートにおける患者において測定される。腫瘍マーカ評価のための血液は、該当する場合、腫瘍測定の±7日以内に採取される。
腫瘍測定及び疾患応答の評価
腫瘍測定及び疾患応答評価は、全ての患者について行う。(全ての患者は、スクリーニング中に測定可能な疾患を有する必要がある)。疾患応答評価は、C3から開始して1サイクルおきに最初の試験薬剤投与の7日以内及びEOT来院時に行う。
このような患者の場合、疾患の全ての部位は、コンピュータ断層撮影(CT)によって画像化されるべきである。メディカルモニターの承認を得て、解剖学的領域がCTによって十分に画像化できない場合、磁気共鳴イメージング(MRI)が代わりに使用され得る。その後の評価は、スクリーニング中に使用されるのと同じ放射線学的方法を使用すべきである。解剖学的測定(標的病変にわたって交差される)は、スクリーニング及びそれぞれのその後の評価中に報告される。客観的評価がスクリーニング中及びC3から開始して1サイクルおきに最初の試験薬剤投与前に行われる。変動を減少させるために、可能であれば、資格のある同じ医師が結果を解釈する。X線画像が研究センターにおいて保持され、試験結果及び調査者の所見が患者のソースドキュメントにファイルされる。
スクリーニング中、腫瘍病変は、以下のように測定可能対測定不可能及び標的対非標的として分類される。
測定可能対測定不可能
測定可能:少なくとも1次元がCTスキャンもしくは臨床検査による測径器測定によって10mm以上であるか、又は胸部X線によって20mm以上であることが正確に測定され得る病変;最長径が記録される。
測定不可能:小さい病変(10mm未満の最長径又は10mm以上15mm未満の短軸を有する病理学的リンパ節)及び全く測定不可能な病変を含む、全ての他の病変。
標的対非標的
標的:1つの臓器当たり最大2つの病変及び全ての病変のある臓器を代表する全部で5つの病変までの全ての測定可能な病変が標的病変として特定され、スクリーニングにおいて測定され、記録される。標的病変は、それらのサイズ(すなわち、最長径を有するもの)及び正確な反復測定への適格性に基づいて選択される。全ての標的病変の最長径の和が計算され、ベースライン長径和としてeCRFにおいて記録される。
非標的:標的病変(又は疾患の部位)として分類されない全ての他の病変が非標的病変として特定され、eCRFにおいて記録される。非標的病変の測定は必要でない。
標的及び非標的病変における疾患応答が、表25に記載されるカテゴリー及び基準に従って、RECISTガイドライン、第1.1版(アイゼンハワー(Eisenhauer)ら著、2009年、その内容は全体が参照により本明細書に援用される)を用いて調査者によって評価される。各患者の最良総合効果が、表26中でカテゴリー及び基準を用いて記録される一連の客観的状態で報告される最良効果として報告される。
CR又はPRを有するいずれの患者も、応答を確認するために4週間後に反復評価を行われる。
安全性評価
患者背景
年齢、性別、人種、及び民族性を含む患者背景がスクリーニング中に報告される。
癌の病歴を含む病歴
全病歴がスクリーニング中に報告され、最初の化合物8投与の投与前にベースラインで更新される。
病歴は、患者の原発腫瘍型を含む癌の病歴、現在の病期、診断日及び診断時の病期、診断方法、及び全ての過去の治療(全身治療、放射線治療、及び外科手術を含む)、ならびにこのような治療に対する応答を含む。
各患者のBRCA状態が報告される。
患者の癌の病歴の一部として、研究センターは、入手可能であれば、参加前に得られた局所的な組織構造又は細胞診レポートを提出する。さらに、パラフィンブロック(好ましい)又は入手可能な保管腫瘍組織の最小10個の染色されていないスライドが患者の地域の医療機関から取り寄せられ、収集される。
身体検査
精密身体検査が、図14−1、14−2及び14−3に示される時点で行われる。精密身体検査は、以下の評価を含む:
− 全身外観;
− 頭、眼、耳、鼻、及び喉;
− 心血管系;
− 呼吸器系;
− 胸部;
− 胃腸系(腹部);
− リンパ系;
− 筋骨格系;
− 皮膚;
− 精神医学;
− 神経学(患者が何らかの無感覚及び/又は疼痛ならびに軽い接触、鋭い接触[皮膚プリック]、及び温度、位置[固有受容]、及び振動感覚試験を受けているかどうかに関する質問を含む。さらなる神経学的評価が、必要に応じて調査者の裁量で患者の状態について行われるべきである)。
症状に対する(すなわち、簡略)身体検査が全ての他の試験来院時に行われる。
投与日において、身体検査は注入前に完了されるべきである。スクリーニング中及びC1D1における投与前に特定の患者について臨床的に有意であると調査者が見なす異常な身体検査所見は、患者の病歴の一部として報告される。C1D1における投与の開始後の異常な臨床的に有意な検査所見は、所見がベースラインからの変化を表す場合、AEとして報告される。
バイタルサイン
血圧、脈拍、呼吸数、及び体温を含むバイタルサインが、図14−1、14−2及び14−3に示される時点で測定される。脈拍数及び血圧は、5分間の試験後に座位の患者で測定される。
バイタルサインは、任意の計画された血液試料採取前に測定されるべきである。投与日において、バイタルサインは、試験薬剤注入の開始前及び任意の計画された血液試料採取前に測定される。
スクリーニング中及びC1D1における投与前に特定の患者について臨床的に有意であると調査者が見なすバイタルサインの異常は、患者の病歴の一部として報告される。C1D1における投与の開始後に観察される異常な臨床的に有意なバイタルサイン結果は、所見がベースラインからの変化を表す場合、AEとして報告される。
体重及び身長
身長が、スクリーニング中に全ての患者について測定されるべきである。
体重が、図14−1、14−2及び14−3に示される時点ならびに患者が体重の著しい変化(±10%)を生じた任意の時点で測定される。
ベースラインにおいて、BSAは、スクリーニング身長及びベースライン体重測定を用いてデュボイス法によって計算される。ベースラインBSAは、患者の試験薬剤用量を決定するのに使用される。その後、BSAは、C3から開始して1治療サイクルおきのD1に再計算され、患者の試験薬剤用量は相応に調整される。
心電図(ECG)
12誘導ECGが、図14−1、14−2及び14−3に示される時点で行われる。
実験室評価
実験室評価が地域の実験室によって行われる。
スクリーニング中及びベースラインにおける試験薬剤投与前に特定の患者について臨床的に有意であると調査者が見なす検査所見の異常は、患者の病歴の一部として、及びベースラインにおける試験薬剤投与の開始後に所見がベースラインからの変化を表す場合、AEとして報告される。
血液学及び臨床化学
血液学及び臨床化学用の血液試料は、図14−1、14−2及び14−3に示される時点で採取される。スクリーニング試料がC1D1前の72時間以内に採取される場合、試料はC1D1に採取される必要はない。
C1D1後、試料は、計画された研究センター来院の48時間前までに採取される。血液学及び臨床化学結果は、試験薬剤投与前に調査者によって検討されなければならない。何らかの臨床的に関連する血液学又は臨床化学異常が、患者が研究センターを出た後に確認される場合、患者は連絡を取られ、適切な追跡調査が行われる。
以下の臨床検査パラメータが測定される。
臨床検査評価は、患者の臨床状態に基づいて、調査者によって決定されるスケジュールで治療中に必要に応じて繰り返される。
尿検査
尿検査用の尿は、図14−1、14−2及び14−3に示される時点で採取される。スクリーニング試料がC1D1前の72時間以内に採取される場合、試料はC1D1に採取される必要はない。
以下の尿検査パラメータが決定される。
凝固検査
プロトロンビン時間及び活性化部分トロンボプラスチン時間を含む凝固試験用の血液試料は、図14−1、14−2及び14−3に示される時点で採取される。スクリーニング試料がC1D1前の72時間以内に採取される場合、試料はC1D1に採取される必要はない。
妊娠検査
β−ヒト絨毛性ゴナドトロピン妊娠検査用の血清試料は、図14−1、14−2及び14−3に示される時点で、妊娠可能な女性(FOCBP:females of childbearing potential)から採取される。スクリーニング試料がC1D1前の72時間以内に採取される場合、試料はC1D1に採取される必要はない。
妊娠検査は、妊娠が疑われるときはいつでも繰り返される。
FOCBPは、初経を経験し、かつ成功した避妊手術(子宮摘出術、卵管結紮術、又は両側卵巣摘出術)を受けていないか、又は閉経後(12ヶ月以上連続の無月経;又は35mIU/mL以上の血清中卵胞刺激ホルモンレベルが報告されたホルモン補充療法中の女性として定義される)でない女性として定義される。避妊するために、経口用、埋め込み式、又は注射用の避妊ホルモン又は機械製品(避妊具など)又はバリア式方法(ペッサリー、コンドーム、殺精子剤)を使用している女性、禁欲を実施している女性、又はパートナが無精子症である(例えば、精管切除術)女性は、妊娠可能な女性であると見なされる。
試験参加前、FOCBPは、試験参加中の妊娠及び予期せぬ妊娠の潜在的リスク因子を避けることの重要性について知らされなければならない。この情報は、患者がサインしなければならないインフォームドコンセント用紙(ICF:informed consent form)に含まれる。さらに、全てのFOCBP又は妊娠可能なパートナを有する生殖能力のある男性は、FOCBP又は妊娠可能なパートナが試験参加中のいずれかの時点で妊娠の疑いがある場合(例えば、月経期がない又は月経期の遅れ)、直ちに調査者と連絡を取るように指示されるべきである。
したがって、患者は、C1D1の30日前から最後の試験薬剤投与の30日後までの十分な避妊に合意しなければならない。
スクリーニング中又はC1D1に陽性の妊娠検査結果を有する患者は、試験参加に適格でない。試験薬剤投与の開始後の任意の時点で陽性結果を有する患者は、試験薬剤を永久的に中断される。
スクリーニング血清学
HIV、B型肝炎表面抗原、及びC型肝炎DNAを含む血清学的検査用の血液試料は、スクリーニング中に採取される。
ECOGパフォーマンスステータス
ECOGパフォーマンスステータスは、図14−1、14−2及び14−3に示される時点で決定される。
ECOGパフォーマンスステータススケール、及び相当するカルノフスキー(Karnofsky)パフォーマンスステータススコア値は、以下の通りである。
有害事象
各患者は、AEの発生について慎重に監視されなければならない。この情報は、非誘導的質問(例えば、「具合はいかがですか?」)の形態で、各検査中に検出される兆候及び症状、試験員の観察、及び患者の自発報告から得られるべきである。
AEについての情報は、C1D1における化合物8投与の開始から試験薬剤の最後の投与の30日後まで収集される。
有害事象の定義、記録、及び報告
有害事象の定義
有害事象(AE)
AEは、医薬品を投与された患者又は臨床試験対象における有害な医療上の出来事であり、これは、必ずしもこの治療との因果関係を有する必要はない。したがって、AEは、治験薬に関連しているか否かにかかわらず治験薬の使用に時間的に関連する、好ましくない予期せぬ兆候(検査所見の異常を含む)、症状、又は疾患であり得る。
臨床的に有意であると調査者が見なす異常な臨床又は検査所見は、試験薬剤投与の開始前に生じる場合、患者の病歴の一部としてeCRFにおいて記録され、ベースラインにおける試験薬剤投与の開始後に生じる場合、所見がベースラインからの変化を表す場合、AEとして記録されるべきである。
この試験の目的のため、死亡及び進行(すなわち、PD)はAEと見なされず、それ自体で報告されるべきではない。死亡は、1つ又は複数の重要なAEの結果と見なされ、PDは、基礎疾患の悪化と見なされ、試験薬剤の中断の基準である。PDは、PDが死亡の結果をもたらさない限り、AEとして記録されるべきではなく、このような場合、PDは、死亡の結果を伴うAE/重篤な有害事象(SAE:serious adverse event)として報告されるべきである。
予期せぬ有害事象
予期せぬAEは、性質又は重症度が現在の調査者の概要書における情報と一致しない事象である。
重篤な有害事象(SAE)
AE又は疑われる有害反応は、調査者又はスポンサーのいずれかを考慮して、それが以下の通りである場合、重篤であると見なされる:
− 死亡をもたらす場合;
− 生命に関わる場合。生命に関わるとは、患者が、それが起こると反応に起因する死亡の差し迫ったリスクがあることを意味し、すなわち、それは、より重篤な形態でそれが起こると場合に死亡を引き起こし得る反応を含まない;
− 患者の入院又は現在の入院の延長を必要とする場合:試験期間中に行うことが計画されるが、試験参加前に予定される入院及び/又は外科手術は、患者が試験に参加する前に病気又は疾患が存在していた場合、それが試験中に予想外に悪化しなければAEと見なされない(例えば、予定より早く行われる外科手術)。SAE報告のさらなる除外は、以下の理由での入院を含む:
− 選択的手続き;
− AEなしで、社会的/管理上の理由;
− PDによって引き起こされる予期される悪化;
− 永続的な又は重大な身体の障害/無能力をもたらす場合。身体の障害は、正常な生活機能を行う人の能力の実質的な崩壊として定義される;
− 先天異常/先天性欠損である場合;
− 重大な医療事象である場合。重大な医療事象は、死亡をもたらさず、生命に関わらず、又は入院を必要としないことがあり得るが、それが患者を危険に曝すおそれがあり、SAEの定義に列挙される結果のうちの1つを防ぐために医学的又は外科的介入を必要とし得る場合、適切な医学的判断に基づいてSAEと見なされ得る事象である。このような医療事象の例としては、緊急治療室もしくは自宅での集中治療を必要とするアレルギー性気管支けいれん、患者の入院をもたらさない血液の悪液質もしくはけいれん、又は薬物依存もしくは薬物乱用の発生が挙げられる。
患者が参加した後、治療前、治療中、又は治療の停止後30日以内に起こる全てのSAEは、それらが試験薬剤に関連しているか否かにかかわらず、報告されなければならない。
有害事象評価
強度
各AEの強度は、NCI CTCAE、第4.03版に従って調査者によって評価されるべきである。AEが、NCI CTCAEに含まれない場合、調査者は、以下の基準に従ってAEの強度を決定することになる:
軽度(グレード1):試験薬剤の継続により消失するか又は楽に耐えられるAE。
中等度(グレード2):通常の作業活動の支障を引き起こすのに十分に不快なAE。
重度(グレード3):作業又は日常活動を行うことができない、身体能力を奪うAE。
生命に関わる(グレード4):潜在的に生命に関わるAE。
死亡(グレード5):AEに関連する死亡。
試験薬剤に対する各AEの因果関係は、最良の医学的判断に従って調査者により、以下のように決定される:
明らかに関連あり:このカテゴリーは、慎重な医学的検討後、他の原因がほぼ考え付かない場合に該当する。
おそらく関連あり:AEの発現と試験薬剤投与との間に臨床的に妥当な時間系列がある。AEは、併発症及び/又は基礎疾患、他の薬剤、又は手順によって引き起こされる可能性が低い。該当する場合、AEは、試験薬剤の離脱により臨床的に一貫した解消パターンを辿る。
関連する可能性あり:AEの発現と試験薬剤投与との間に臨床的に妥当な時間系列があるが、AEは、併発症/基礎疾患、他の薬剤、又は手順によって引き起こされた可能性もある。試験薬剤離脱に関する情報は、不足しているか又は不明確であり得る。「可能性あり」は、試験薬剤投与がAEのいくつかの生物学的に妥当な原因のうちの1つである場合に使用されるべきである。
おそらく関連なし:AEは、試験薬剤に関連しない原因による可能性が最も高い。しかしながら、試験薬剤との関連を完全に除外することはできない。
関連なし:AEの別の原因が最も妥当であり、臨床的に妥当な時系列がAEの発現及び試験薬剤投与と一致せず、及び/又は因果関係が生物学的に妥当でないと見なされる。
AE/SAEと試験薬剤との間の関係が「可能性あり」、「おそらく関連あり」、又は「明らかに関連あり」と判断される場合、事象は、迅速な規制報告及び安全性分析のために治療に関連すると見なされる。
有害事象の記録
各患者は、AEの発生について慎重に監視されなければならない。この情報は、非誘導的質問(例えば、「具合はいかがですか?」)の形態で、各検査中に検出される兆候及び症状、試験員の観察、及び患者の自発報告から得られるべきである。
患者によって自発的に報告され、かつ/あるいは試験員からの自由回答式の質問に応答した、又は観察、身体検査もしくは他の診断手順によって明らかにされる全てのAE(重篤及び非重篤)は、患者のソースドキュメントにおいて報告され、eCRFにおいて記録される。実験室評価又は他の臨床所見における臨床的に関連する(調査者によって決定される)悪化はAEと見なされ、患者のソースドキュメント及びeCRFにおいて記録されなければならない。
AEについての情報は、ベースラインにおける化合物8投与の開始から試験薬剤の最後の投与の30日後まで収集される。AEの用語は、可能であれば標準的な医学用語で報告されるべきである。また、可能であれば、共通の基礎病変を示す兆候及び症状は、1つの総合的な事象として示されるべきである。各AEについて、調査者は、発現、解消、強度、因果関係、取られた措置、重篤な結果(該当する場合)、及びそれが患者に試験を中断させるか否かを評価し、報告する。
重篤な有害事象の報告
スクリーニングからEOT来院(最後の試験薬剤投与の30日後)までに起こる全てのSAE(関連あり及び関連なし)が報告される。
調査者は、全てのSAEを発見の24時間以内にノヴェラ(Novella)に報告しなければならない。
さらなる追跡調査情報は、必要とされるか又は入手可能な場合、受け取ってから1営業日内にノヴェラ(Novella)に送られ、元のSAE情報とともに置かれ、eCRF及び/又は試験ファイルの担当部門より保管されるべきである。
スポンサーは、特定の事象を関連する規制機関に知らせる責任を負う。研究センターにおいて発生する全てのSAEをIRBに知らせることが調査者の責任である。調査者も、臨床試験中に起こる全ての予期せぬ事象、重篤な事象、薬剤に関連する事象を知らされる(7/15日安全性報告)。各研究センターは、これらのさらなるSAEをそのIRBCに知らせる責任を負う。
有害事象の追跡調査
調査者は、全ての治療により発現したSAE及び試験薬剤に少なくとも関連する可能性があると見なされる重篤でないAEを、解消するまで、あるいは事象が安定しているか、又は患者の安定したもしくは慢性的な状態もしくは併発疾患によるものと明らかに判断されるまで追跡し続けなければならない。この追跡調査は、試験の終了後に延長し得る。
妊娠
試験薬剤は、患者の妊娠の場合、直ちに中断されなければならない。患者は、さらなる評価及びカウンセリングのために生殖毒性に精通した産科医/婦人科医に診せるべきである。
調査者は、妊娠の完了まで患者/患者のパートナを追跡し、5日以内に結果をメディカルモニターに知らせなければならない。調査者は、追跡調査としてのこの情報を最初の報告に提供する。
妊娠の結果が、SAE(すなわち、自然流産[中絶された胎児において検出された先天異常が報告されるべきである]、死産、新生児死亡、又は先天異常)としての即時の分類の基準を満たす場合、調査者は、それ自体を報告すべきである。さらに、出生の30日以内に起こる全ての新生児死亡が、因果関係に関係なくSAEとして報告されるべきである。さらに、試験薬剤への子宮内曝露に関連すると調査者が疑う30日後の乳児死亡も報告されるべきである。
過剰摂取
過剰摂取の兆候及び症状は、AEとして報告されるべきである。
プロトコルからの逸脱は、個々の場合に及び緊急事態のみに許容されると判断される。このような緊急事態を担当する調査者又は他の医師は、緊急の状況を説明するために可能な限り早くメディカルモニターと連絡を取らなければならない。
メディカルモニターは、調査者とともに、患者が試験に参加し続けるべきかどうかを決定する。全てのプロトコルの逸脱及びこのような逸脱の理由は、患者のソース記録において報告されなければならない。
緊急事態又は有害事象によるプロトコルの逸脱
プロトコルからの逸脱は、個々の場合に及び緊急事態のみに許容されると判断される。このような緊急事態を担当する調査者又は他の医師は、緊急の状況を説明するために可能な限り早くメディカルモニターと連絡を取らなければならない。
メディカルモニターは、調査者とともに、患者が試験に参加し続けるべきかどうかを決定する。全てのプロトコルの逸脱及びこのような逸脱の理由は、患者のソース記録において報告されなければならない。
統計学
一般的な統計的考慮事項
プロトコル化合物8−001は、進行固形腫瘍を有する患者における単剤療法として化合物8を評価する非盲検、フェーズ1試験である。試験は、2つの段階、すなわち、進行固形腫瘍の患者における用量漸増期、及び選択されたBRCA1又はBRCA2変異陽性固形腫瘍(膵臓癌、前立腺癌、乳癌、及び卵巣癌を含む)を有する患者におけるコホート拡大期を有する。
用量漸増期の目的は、進行固形腫瘍を有する患者における単剤療法として21日おきに静脈内(IV)投与される化合物8の安全性、忍容性、DLT、MTD、血漿PK、予備的抗腫瘍活性及びRP2Dを決定することである。コホート拡大期の目的は、4つの腫瘍特異的コホート(膵臓、前立腺、乳房、及び卵巣)における単剤療法として化合物8の安全性、忍容性、及び予備的抗腫瘍活性をさらに評価することである。
記述統計学は、全ての安全性、有効性、及びPKパラメータに用いられる。カテゴリー変数は、度数分布(患者の数及びパーセンテージ)によって要約され、連続型変数は、平均、標準偏差、中央値、最小値、最大値によって要約され、時間事象変数は、カプランマイヤー法及び推定平均時間の数値を用いて要約される。
全てのデータは、試験段階(用量漸増及びコホート拡大)、癌適応症(膵臓癌、前立腺癌、乳房癌、及び卵巣癌)及び投与される化合物8用量によって要約される。収集された全てのデータは患者のリストにも示される。
試料サイズの決定
用量漸増期
用量漸増期に参加する患者の総数は、観察された安全性プロファイルに依存し、この安全性プロファイルは、1用量コホート当たりの患者の数、ならびに化合物8のMTDを達成し、RP2Dを確立するのに必要な用量漸増の回数を決定する。標準的なフェーズ1用量漸増スキームに基づいて、1人の患者が単一患者コホートに参加し、3〜6人の患者が各標準コホートに参加する。各患者は、1つの用量コホートのみに参加する。
この試験の用量漸増期の動作特性が表28に示される。
例えば、5%の真のDLT率を仮定すれば、用量漸増の97%の確率がある。逆に、50%の真のDLT率の場合、用量漸増の確率は17%である。
合計で6〜10人の患者が、化合物8の安全性、忍容性、及びPKのさらなる特性評価を提供するためにMTD又はRP2Dにおいて処理される。
コホート拡大期
正式な試料サイズの計算は行わなかった。合計で60人以下の患者がコホート拡大期に参加する。これは、各拡大コホート1、2、3A、及び3Bにおける10〜15人の患者を含む。1コホート当たり少なくとも10人の患者の試料サイズは、特定の統計的閾値を満たすように選択されなかったが、異なる腫瘍型を有する患者における化合物8の忍容性及び予備的活性を評価するのに十分であると見なされる。
患者の交換
追跡不能であるか、又は化合物8を投与される前の試験参加のための合意を撤回した患者、又は用量漸増期においてDLT以外の理由でC1において離脱する患者は交換され得る。
分析のための集団
安全性及び有効性集団については、治療企図(ITT:intent−to−treat)原理に従うことになる。これは、試験に参加し、任意の量の化合物8を投与される全ての患者として定義される。PK分析は、任意の量の化合物8を投与され、PK分析のための十分なデータを有する全ての患者として定義されるPK集団において行われる。
患者の体内動態
データ表は、以下の患者の数を要約する:
− 参加した;
− 化合物8用量を投与された;
− 安全性及び有効性について評価可能;
− プロトコル違反;
− プロトコル完了;
− AE;調査者の要請;合意の撤回;追跡不能;eCRFにおいて収集された他の理由による試験からの離脱。
患者の特性
患者の人口動態及びベースライン特性が、記述統計学:年齢;性別;人種;民族性;ベースラインECOG PS;一次診断;診断時及びベースラインにおける病期;過去の治療(全身治療、放射線治療、及び外科手術を含む);eCRFにおいて収集された他のベースライン特性を用いて要約される。
併用薬
様々な併用薬を用いた安全性分析セットにおける患者の数及び割合が表にされ、WHO薬剤解剖治療化学(ATC)分類及び基本語によって要約される。
有効性分析
予備的抗腫瘍活性のエビデンスが、RECIST、第1.1版によって定義されるように客観的反応によって評価される。これは、全奏効率(CR+PR)、ならびに個々のカテゴリーの奏効率(すなわち、CR、PR、SD、及びPD)を要約するのに使用される。
安全性分析
任意の量の化合物8を投与された全ての患者は、安全性データの最終的な要約及びリストに含まれる。
要約表は、治療により発現した有害事象(TEAE:treatment−emergent adverse event)及び対応するパーセンテージについて観察される患者の数を示し、ここで、治療により発現したとは、試験薬剤の最初の投与の投与後から試験薬剤の最後の投与の30日後までに起こる何らかのAE、事象の開始日にかかわらず試験薬剤に関連すると見なされる何らかの事象、又はベースラインにおいて存在するが、強度が悪化するか、又は調査者によって試験薬剤に関連すると後に見なされる何らかの事象として定義される。
発生率を計算するのに使用される分母は、任意の量の化合物8を投与される患者からなる。各要約表内で、AEは、医薬規制用語集(MedDRA:Medical Dictionary for Regulatory Activities)器官別大分類(system organ class)及び基本語に従って分類される。さらなるサブカテゴリーは、事象強度(CTCAE、第4.03版に従って等級分けされる重症度)及び試験薬剤に対する関係に基づく。
試験薬剤の中断につながる死亡、SAE、及びTEAEは、データによって保証されるように患者ごとに表にされる。
用量漸増期では、DLT、MTD、及びRP2Dが特定される。
臨床検査パラメータのベースラインからの変化が試験中に時間にわたって要約される。さらに、最大ベースライン後CTCAEグレードによる検査所見の異常の頻度が、少なくともヘモグロビン、白血球数、ANC、リンパ球、血小板数、AST、ALT、ビリルビン、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、及び電解質を含む選択された検査パラメータについて、サイクル及び全体によって表にされる。変化の表も、サイクル及び全体により、ベースラインCTCAEグレード及び最大CTCAEグレードに基づいてこれらのパラメータについて作成され得る。
バイタルサインパラメータ(最高及び最低血圧及び心拍数を含む)及び体重の変化が時間の経過とともに要約され、異常値が表にされる。治療により発現した臨床的に有意なECG異常を有する患者の割合が表にされ、ECG所見の変化がデータ列挙形式で示される。
ECOGパフォーマンスステータスがサイクル及び最悪状態全体によって要約され、ECOGパフォーマンスステータスがデータ列挙形式で示される。
さらなる安全性分析が、毒性の率を最も明確に列挙し、化合物8の安全性プロファイルをさらに定義するために、先入観なしで任意の時点で決定され得る。
薬物動態分析
PKは、適切なコンパートメントモデルを各患者についての完全な一連のデータに適合させることによって特性評価される。使用されるモデルは、データから決定され、クリアランス及び分布容積に関してパラメータ化される。
均等物及び範囲
本教示のいくつかの実施形態が本明細書に記載され、例示されてきたが、当業者は、本明細書に記載される機能を実行し、かつ/又は本明細書に記載される結果及び/もしくは利点の1つもしくは複数を得るための、様々な他の手段及び/又は構造を容易に予測し、このような変形形態及び/又は変更形態のそれぞれは、本教示の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的なものであることが意図され、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本開示の教示が使用される1つ又は複数の具体的な用途に左右されることを理解するであろう。当業者は、日常的な実験のみを用いて、本明細書に記載される本教示の特定の実施形態の多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。
したがって、上記の実施形態が例として示されるに過ぎず、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、本教示が、具体的に記載され、特許請求される以外に実施され得ることが理解されるべきである。本教示は、本明細書に記載される各個々の特徴及び/又は方法に関する。さらに、2つ以上のこのような特徴及び/又は方法の任意の組合せは、このような特徴及び/又は方法が互いに矛盾しない場合、本教示の範囲内に含まれる。
本発明の範囲は、上記の説明に限定されることを意図されず、添付の特許請求の範囲に記載される通りである。
特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」などの冠詞は、矛盾する記載がない限り又は文脈上他の意味であることが明らかでない限り、1つ又は2つ以上を意味し得る。群の1つ又は複数の要素間に「又は」を含む請求項又は説明は、矛盾する記載がない限り又は文脈上他の意味であることが明らかでない限り、群の要素のうちの1つ、2つ以上、又は全てが所定の製品又はプロセスに存在し、用いられ、又は他に関連する場合に満たされると見なされる。本発明は、群のうちの厳密に1つの要素が所定の製品又はプロセスに存在し、用いられ、又は他に関連する実施形態を含む。本発明は、群の要素のうちの2つ以上、又は全てが所定の製品又はプロセスに存在し、用いられ、又は他に関連する実施形態を含む。
「含む」という用語は、オープンであることが意図され、さらなる要素又は工程の包含を許容するが必須ではないことにも留意されたい。「含む」という用語が本明細書において使用される場合、「からなる」という用語もしたがって包含され、開示される。
範囲が与えられる場合、端点が含まれる。さらに、特に示されない限り又は文脈上及び当業者の理解から他の意味であることが明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈上特に明記されない限り、本発明の異なる実施形態において記載される範囲内の任意の特定の値又は部分範囲を範囲の下限の単位の10分の1まで取り得ることが理解されるべきである。
さらに、先行技術に含まれる本発明の任意の特定の実施形態が請求項の任意の1つ以上から明らかに除外され得ることが理解されるべきである。このような実施形態は、当業者に公知であると見なされるため、それらは、除外が本明細書に明示されていない場合でも除外され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態は、先行技術の存在に関連するか否かにかかわらず、何らかの理由により、任意の1つ以上の請求項から除外され得る。
全ての引用元、例えば、本明細書に引用される参考文献、刊行物、データベース、データベース登録、及び技術は、引用に明示されていない場合でも、参照により本出願に援用される。引用元及び本出願の記載が矛盾する場合、本出願の記載が優先されるものとする。
節及び表の見出しは、限定的であることを意図されていない。

Claims (23)

  1. 式IIb:
    (式中:
    X及びYは、独立して、NH、アルキル及びアリールから選択され;
    及びRはそれぞれClであり、又はR及びRが結合されてオキサレートを形成し;
    は、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、前記アルキル基、アルケニル基、前記シクロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基及び前記ヘテロアリール基のそれぞれは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、前記カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルのそれぞれは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、及び
    Zは、択一的に、不在、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール及びヘテロアリールであり、ここで、前記アルキル基、アルケニル基、前記シクロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基及び前記ヘテロアリール基のそれぞれは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換され、ここで、前記カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル又はアルキリデンヒドラジンのそれぞれは、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される1つ又は複数の基で任意選択的に置換される)の化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物。
  2. 及びRはそれぞれClである、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 及びRは結合してオキサレートを形成する、請求項1に記載の医薬組成物。
  4. はアルキルである、請求項1に記載の医薬組成物。
  5. はメチル又はエチルである、請求項4に記載の医薬組成物。
  6. 前記化合物は化合物8:
    である、請求項1に記載の医薬組成物。
  7. 化合物8の濃度は3〜5mg/mLである、請求項6に記載の医薬組成物。
  8. 化合物8の濃度は5mg/mLである、請求項7に記載の医薬組成物。
  9. 10mLの前記医薬組成物は50mLのバイアル中に含まれる、請求項8に記載の医薬組成物。
  10. 緩衝液をさらに含み、かつ約2〜約6のpHを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  11. 約4〜約5のpHを有する、請求項10に記載の医薬組成物。
  12. 約4又は約4.25のpHを有する、請求項11に記載の医薬組成物。
  13. 前記緩衝液は約0.5mM〜約100mMの濃度を有する、請求項10に記載の医薬組成物。
  14. 前記緩衝液はクエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、乳酸緩衝液、コハク酸緩衝液及び酒石酸緩衝液からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
  15. 前記緩衝液は、クエン酸ナトリウム及びクエン酸、又はクエン酸及び水酸化ナトリウムを含むクエン酸緩衝液である、請求項14に記載の医薬組成物。
  16. 賦形剤は約0.5%(w/w)〜約20%(w/w)の重量パーセントを有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  17. 前記賦形剤は、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、ソルビトール、グルコース、ラフィノース、グリシン、ヒスチジン、ポリビニルピロリドン及びイヌリンから選択される1つ又は複数の賦形剤を含んでなる、請求項16に記載の医薬組成物。
  18. 前記賦形剤がマンニトールである、請求項17に記載の医薬組成物。
  19. マンニトールの重量パーセントは2.5%(w/w)である、請求項18に記載の医薬組成物。
  20. 光から保護される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  21. 約10℃未満の温度で調製、処理、包装又は貯蔵される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  22. 約2〜8℃の温度で調製、処理、包装又は貯蔵される、請求項21に記載の医薬組成物。
  23. 約2〜8℃の温度で調製、処理又は包装され、かつ約20℃未満で貯蔵される、請求項21に記載の医薬組成物。
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