以下、本発明の実施の形態に係る荷重増幅負荷装置を図面に基づき説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係る荷重増幅負荷装置(詳しくは荷重増幅負荷装置の1例である荷重試験機)の全体構成を示す全体構成図である。但し、図1における分力倍力槓桿などの一部の構成要素についてはその配設方向を変更した状態で簡略的に示している。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る荷重増幅負荷装置(荷重試験機)1は、その重点(おもりの負荷が作用している箇所であり、荷重を作用させる点)に負荷された既知質量のおもり2の負荷を増幅させて力点(重点荷重を釣り合わせるために力を作用させる点)から出力するおもり倍力槓桿(おもり倍力てこ)3と、おもり倍力槓桿3の力点に負荷された力を分けて伝達する分力手段としての分力槓桿(分力てこ)4と、この分力手段としての分力槓桿4により二分された分力がそれぞれ重点に負荷され、前記分力を増幅させて力点から出力する1対(すなわち2つ)の分力倍力槓桿(分力倍力てこ)5と、各分力倍力槓桿5の力点から出力された力を、並列的に2つ設けられた荷重負荷対象物(被試験物)7に伝達して負荷させる増幅分力伝達手段としての増幅分力伝達枠8と、その下辺と増幅分力伝達枠8の上辺との間に荷重負荷対象物(被試験物)7を挟持して、荷重負荷対象物(被試験物)7を通して伝達された力を受ける力受け外枠39と、を備えている。そして、2つの荷重負荷対象物7に対して並列的に増幅分力を負荷可能に構成している。
なお、図1における12は、おもり2の負荷をおもり倍力槓桿3の重点に負荷させる吊り下げ体、30は上端部がおもり倍力槓桿3の力点3cに係止され、下端部が分力槓桿(分力てこ)4に連結された力伝達体、31は、分力槓桿(分力てこ)4の両端部と各分力倍力槓桿5の重点とを連結する分力伝達体、37は各分力倍力槓桿5の力点と各増幅分力伝達枠8とを連結する増幅分力伝達ロッドである。また、例えば、おもり倍力槓桿3では、その重点に作用する負荷が、4倍に増幅されてその力点から出力され、各分力倍力槓桿5では、その重点に作用する負荷が、5倍に増幅されてその力点から出力される。なお、図1においては簡略的に示しているため、分力伝達体31の長さが異なって示しているが、実際には、分力伝達体31同士の長さや構造は同じものが用いられている。また、増幅分力伝達ロッド37についても同様である。
ここで、各分力倍力槓桿5は、少なくともその支点および力点に刃と刃受けとが設けられて力が受けられていることが好ましく、荷重負荷対象物7が、荷重を測定するロードセルやはかり(計量装置)などの荷重測定装置である場合が好ましいが、これに限るものではない。また、前記分力手段は、入力した力を2分割して伝達する、分力槓桿4であることが好ましいが、これに限るものではない。
この構成により、既知質量のおもり2をおもり倍力槓桿3の重点に作用させると、既知質量のおもりの負荷がおもり倍力槓桿3により増幅され、この増幅された力が分力手段としての分力槓桿(分力てこ)4により分けられて、各分力倍力槓桿5の重点に作用する。そして、各分力倍力槓桿5により分力が増幅されて各分力倍力槓桿5の力点から出力され、各分力倍力槓桿で増幅された力が増幅分力伝達手段としての増幅分力伝達枠8を介して各荷重負荷対象物7に負荷される。その際に各分力倍力槓桿のてこ比は既知の方法で調整されて、各荷重負荷対象物に大きさが試験精度内で許容される値以下に収まっているほぼ等しい荷重が負荷される。
この荷重増幅負荷装置1ならびに荷重増幅負荷方法によれば、おもり2を負荷させると、複数(この実施の形態では2つ)の荷重負荷対象物7に対してほぼ等しい大荷重を同時に負荷させることができる。また、各分力倍力槓桿5として、少なくともその支点および力点に刃と刃受けとが設けられて力が受けられているものを用いることで、分割された力を高精度に増幅させた荷重を、各荷重負荷対象物7に負荷させることができる。
次に、本発明の他の実施の形態に係る荷重増幅負荷装置を図2などに基づき説明する。ここで、図2は本発明の他の実施の形態に係る荷重増幅負荷装置(詳しくは荷重増幅負荷装置の1例である荷重試験機)の全体構成を示す全体構成図である。但し、図2における分力倍力槓桿などの一部の構成要素についてはその配設方向を変更した状態で簡略的に示している。この実施の形態に係る荷重増幅負荷装置(荷重試験機)10は、上記荷重増幅負荷装置(荷重試験機)1と同様な構成要素を有している上に、さらに高精度に荷重を荷重負荷対象物に負荷することが可能なように、さらに別途構成要素が加えられている。なお、当該荷重増幅負荷装置(荷重試験機)10における上記実施の形態の荷重増幅負荷装置(荷重試験機)1と同様な構成要素には同符号を付す。
この実施の形態に係る荷重増幅負荷装置(荷重試験機)10でも、その重点3bに負荷された既知質量のおもり2の負荷を増幅させて力点3cから出力するおもり倍力槓桿(おもり倍力てこ)3と、おもり倍力槓桿3の力点3cに負荷された力を分けて伝達する分力手段としての分力槓桿(分力てこ)4と、この分力手段としての分力槓桿4により二分された分力がそれぞれ重点に負荷され、前記分力を増幅させて力点から出力する1対(すなわち2つ)の分力倍力槓桿(分力倍力てこ)5と、各分力倍力槓桿5の力点から出力された力を、並列的に2つ設けられた荷重負荷対象物(被試験物)7に伝達して負荷させる増幅分力伝達手段としての増幅分力伝達枠8と、荷重負荷対象物(被試験物)7を通して伝達された力を受ける力受け外枠39と、を備えている。そして、2つの荷重負荷対象物7に対して並列的に増幅分力を負荷可能に構成している。なお、図2におけるFは床面(フロア面)を示しており、分力倍力槓桿5は床面Fから下方に掘られたピットP内に配設されている。
図3、図4に示すように、おもり2は、順次吊り下げ可能な既知質量の複数種類の分銅2a〜2fを連結・分離可能ないわゆる連鎖分銅からなる。この実施の形態では、おもり2として、例えば、100kgの分銅2aが3つ、200kgの分銅2bが1つ、250kgの分銅2cが1つ、500kgの分銅2dが1つ、750kgの分銅2eが1つ、1t(1000kg)の分銅2fが3つ設けられている。各分銅2a〜2fは、図3に簡略的に示すように、分銅2a〜2fを上下に係合可能な連結具11などを介して上下に分離・連結可能な状態で取り付けられている。そして、おもり倍力槓桿3の重点から吊り下げられた吊り下げ体12により、おもり倍力槓桿3の重点3bにおもり2(分銅2a〜2f)の荷重が段階的に負荷可能とされている。
図2、図3に示すように、最も下方に配置されている分銅2fの下方には昇降台用のスクリュジャッキ13により昇降自在の昇降台14が配設され、スクリュジャッキ13により昇降台14を上限位置まで上昇させることで、分銅2a〜2fの荷重が吊り下げ体12に作用しないよう構成されている。また、昇降台14を下限位置まで下降させることで、おもり2(分銅2a〜2f)の全荷重(合計5t)を吊り下げ体12に作用させる(負荷させる)ことができる。また、昇降台14を上限位置と下限位置との間の位置とすることで、おもり2(分銅2a〜2f)の荷重を段階的に吊り下げ体12に作用させる(負荷させる)ことができる。なお、昇降台14の上下方向の位置を検出する位置検出器15や、昇降台14が上限位置や下限位置に達したことを検知する上限位置センサ16や下限位置センサ17も設けられている。
おもり倍力槓桿3は、重点3bと力点3cとの間に支点3aがある一次てこからなる単一槓桿である。その支点3aとなる箇所に配設された刃20が、第1支持基台21から立設する第1立設枠22に固定された刃受け23により下方から受けられている。吊り下げ体12が吊り下げられるおもり倍力槓桿3の重点3bは、おもり倍力槓桿3の一端部側における支点3aから比較的離れた箇所に配設され、この重点3bの近傍箇所には、おもり倍力槓桿3の一端部側を下方から保持可能な休み装置としてのスクリュジャッキ24およびジャッキ駆動用モータ25も設けられている。なお、図示しないが、倍力槓桿3の重点3bも刃と刃受けで接触するように構成され、吊り下げ体12の上端部に組み付けられた刃受けが、倍力槓桿3側に設けられた刃で受けられている。
おもり倍力槓桿3は、他端側の支点3aから比較的近い位置に刃が取り付けられた力点3cが配設されて、この力点3cに刃受けが組み付けられた連結環27が係止されている。この実施の形態では、重点3bと支点3aとの間の距離が、力点3cと支点3aとの間の距離の4倍とされ、重点3bに作用する負荷が、4倍に増幅されて力点3cから出力される。また、おもり倍力槓桿3の他端部には、おもり2の荷重が全く負荷されていない状態で、おもり倍力槓桿3がほぼ水平姿勢となるように、バランスウエイト28が取り付けられている。
また、おもり倍力槓桿3の一端部近傍箇所には、おもり倍力槓桿3の振動を抑制するためのダンパー26や、おもり倍力槓桿3の傾斜状態を検出する差動トランスなどからなる傾斜状態検出センサ(傾斜状態検出手段)29が設けられているとともに、この傾斜状態検出センサ29により検出した傾斜状態に対応して、荷重負荷対象物7に負荷されている荷重の値が実際に負荷されている荷重値に近づくように補正する補正手段が荷重増幅負荷装置1に設けられた制御演算部(図示せず)内に設けられている。また、荷重増幅負荷装置1に設けられた制御演算部内には、傾斜状態検出センサ29により検出した傾斜状態に対応して、後述するようにおもり倍力槓桿3が水平となるように油圧シリンダ40へ注入する油量を制御するなどする水平制御手段(図示せず)が設けられている。
おもり倍力槓桿3の力点3cに係止された連結環27には下方に延びる力伝達体30を介して、分力手段としての分力槓桿(分力てこ)4が連結されている。力伝達体30の下端部には刃受け30aが配設されている。この刃受け30aに接触するように刃先が下方を向いた刃4aが分力槓桿(分力てこ)4に取り付けられている。
分力槓桿4は、力伝達体30と係合される箇所を上下に通るラインを中心として両側方に同様な寸法で延びる線対称な形状とされ、一端部と他端部とに刃4cと刃受け31aとによって、下方に力を伝達する分力伝達体31がそれぞれ係止されている。したがって、分力伝達体31は力伝達体30と係合される点(重点4b)を中心として、線対称となる位置で分力伝達体31と連結されている。すなわち、分力手段としての分力槓桿4は、一方の分力伝達体31との係止位置を支点4a(または4a’)とし、力伝達体30との係合点を重点4bとし、他方の分力伝達体31との係止位置が力点4a’(または4a)となる二次てこからなる単一槓桿である。したがって、力伝達体30を介しておもり倍力槓桿3の力点3cから伝達された負荷が、正確に1/2ずつに分けられて、分力伝達体31に伝達される。
図2、図5、図6に示すように、各分力伝達体31の下端部にも、それぞれ連結環32が取り付けられ、各連結環32に組み付けられた刃受け32aに、各分力倍力槓桿(分力倍力てこ)5の刃5eが重点5bで上方から接触するように配設されている。各分力倍力槓桿5は、ピットP内に配設された第2支持枠33に取り付けられた下向きの刃受け34に、分力倍力槓桿5に組み付けられた支点となる刃5dが接触されて、この接触点を支点5aとして、分力倍力槓桿5が揺動可能な状態で配設される。また、これらの分力倍力槓桿5は、同じ構造のものが用いられ、重点5bと力点5cとの間に支点5aがある一次てこの単一槓桿である。したがって、分力倍力槓桿5の力点5cは、支点5aを中心として重点5bとは逆方向に設けられている。また、この実施の形態では、重点5bと支点5aとの間の距離が、力点5cと支点5aとの間の距離の5倍とされ、重点5bに作用する負荷が、5倍に増幅されて力点5cから出力される分力倍力槓桿5が用いられている。なお、この実施の形態においては、重点5bと支点5aとの間の距離を既知の方法により微小距離可変することによって、各分力倍力槓桿5の力点荷重が、試験精度内で許容される値以下に収まっているほぼ等しい荷重となるよう調整されている。図5、図7に示すように、分力倍力槓桿5における力点5cの箇所には、十分な強度および長さを有する刃35が組み付けられ、この分力倍力槓桿5の力点5cに設けられている刃35は、分力倍力槓桿5により増幅された増幅分力を伝達する増幅分力伝達体36の下端部に組み付けられた刃受け36aに上方から接触された状態で受けられている。
なお、この実施の形態においては、図7に示すように、刃受け36aは、下方側が二股状となった2枚の金属板状体36cの下部の間に刃受け支持部36bが挟持されて下方から受けられる状態で配設されている増幅分力伝達体36の刃受け支持部36bに固定されている。また、分力倍力槓桿5の力点に設けられる刃35を組み付ける箇所(力点刃取付部5d)は、2枚の金属板状体36bの間で隙間を有する状態で分力倍力槓桿5の両側方(分力倍力槓桿5の幅方向)に大きく延ばされている。そして、この力点刃取付部5dの幅方向中央部を除く下面2箇所にそれぞれ刃35が組み付けられており、刃35や刃受け36aの長さが比較的長さの短いもの(例えば、それぞれの刃35や刃受け36aの長さが20数cmのもので、各分力倍力槓桿5では、合わせて40数cmのもの)が用いられているがこれに限るものではない。
各増幅分力伝達体36の上端部は、増幅分力伝達ピン6bおよび増幅分力出力部6dを介して、上方に延びる姿勢で増幅分力伝達ロッド37がそれぞれ連結されている。また、各増幅分力伝達ロッド37の上端部は、側面視略矩形状とされた増幅分力伝達枠8の下辺部中央にそれぞれ結合されており、増幅分力伝達枠8の近傍には、この増幅分力伝達枠8の上部側領域を外側から囲むような姿勢で、さらに上方に延びる増幅分力伝達外枠39が配設されている。そして、各荷重負荷対象物(被試験物)7は、増幅分力伝達枠8の上辺部と、増幅分力伝達外枠39の下辺部との間に挟持される状態で配設され、増幅分力伝達外枠39の上辺部は、油圧シリンダ装置40によりそれぞれ昇降自在に支持される。この実施の形態では、荷重負荷対象物(被試験物)7は、荷重を測定する荷重測定装置であり、取引業務上使用されて特定計量器として用いられるロードセルである。
各油圧シリンダ40は、地上面とほぼ同じ高さの床面Fよりも上方の2階床面に相当する第3固定支持枠(高部固定支持枠)41に載せられた状態で本体部分が固定されている。一方、荷重負荷対象物7が配設される箇所は、床面F上に設けられた恒温室42内の空間とされ、この恒温室42内は任意の温度に維持させたり、温度を上昇または下降させたりすることが制御可能に構成されている。各油圧シリンダ40はそれぞれ隣接して配設されている油圧ポンプ43によりピストンロッド40aを昇降可能とされ、ピストンロッド40aにより、増幅分力伝達外枠39の上辺部を介して、増幅分力伝達外枠39およびこの増幅分力伝達外枠39に取り付けられた荷重負荷対象物7を昇降自在である。また、これらの2つの油圧シリンダ40は、互いに同期してピストンロッド40aを同じ昇降量で昇降可能とされている。なお、図示しないが、ピストンロッド40aにより昇降される増幅分力伝達外枠39の昇降位置を検知する複数の位置検知センサや、上限位置や下限位置に達したこと検知する位置センサが別途設けられている。なお、油圧ポンプ43は油圧シリンダ40に対して油圧をパルス駆動により微小に制御可能とされている。
また、第3固定支持枠41の上方箇所には、各荷重負荷対象物7に作用するおもり2以外の負荷(分力倍力槓桿5自体の重量の一部や増幅分力伝達枠8自体の重量など)をキャンセルまたは調整するために無駄目消し槓桿50がそれぞれ設けられている。各無駄目消し槓桿50は、第3固定支持枠41よりもさらに上方に設けられた第4固定支持枠51に取り付けられた刃受け53により、無駄目消し槓桿50の支点50aとなる箇所に刃50dが取り付けられており、無駄目消し槓桿50の一端側(図5などにおける左側)には、おもり2以外の負荷をキャンセルまたは調整するためのバランスウエイト52がそれぞれ取り付けられている。
また、無駄目消し槓桿50の他端側(重点)50bには刃先が上を向いた刃54が取り付けられ、刃54に上方から接触する刃受け58には、下方に延びる引き上げ力伝達材55A、55Bが取り付けられている。また、各油圧シリンダ40のピストンロッド40aには軸心方向に沿って貫通する貫通孔が形成されており、引き上げ力伝達材55Bはこの貫通孔や油圧シリンダ40を支持する支持台に形成された貫通孔などを通って増幅分力伝達枠8の上辺部下面にその下端部55bが取り付けられている。そして、バランスウエイト52の荷重を、引き上げ力伝達材55Bを介して、それぞれ増幅分力伝達枠8に引き上げ力として作用できる。また、おもり2の荷重を作用させていない状態において、バランスウエイト52からの荷重(引き上げ力)を作用させた状態で、油圧シリンダ40のピストンロッド40aを下げることで、図8に示すように、荷重負荷対象物7の配置空間H(すなわち、増幅分力伝達枠8の上辺部と増幅分力伝達外枠39との間の空間)を広げることができ、これにより、荷重負荷対象物7を容易に配設したり交換したりすることが可能に構成されている。また、各無駄目消し槓桿50の他端部には、無駄目消し槓桿50の振動を抑制するダンパー56や、無駄目消し槓桿50の姿勢(傾斜状態)を検知する傾斜状態検知センサ57がそれぞれ設けられている。
上記構成において、荷重負荷対象物(被試験物)7を装着する(セットする)際には、おもり倍力槓桿3の他端部に、おもり2の荷重を負荷させていない状態で、油圧シリンダ40のピストンロッド40aを下降させることで、合力伝達外枠39を下方向に移動させる。これにより、図8に示すように、各増幅分力伝達枠8の上辺部と各増幅分力伝達外枠39の下辺部との間に、各荷重負荷対象物7を装着可能な空間Hを形成することができる。
この後、各増幅分力伝達枠8の上辺部と各増幅分力伝達外枠39の下辺部との間に、各荷重負荷対象物7(この実施の形態では被試験物であるロードセル)を装着する(セットする)。そして、各油圧シリンダ40のピストンロッド40aを上昇させて、各荷重負荷対象物7に各増幅分力伝達枠8の上辺部が当接して、各荷重負荷対象物7に初期荷重が作用するようにする。
また、おもり倍力槓桿3の他端部にはおもり2の荷重が負荷しない状態を維持しながら、おもり倍力槓桿3および分力倍力槓桿5や無駄目消し槓桿50が水平となるように、油圧シリンダ40の油圧を同期させながら調整してピストンロッド40aの高さを調整する。なお、予め、おもり倍力槓桿3が水平姿勢となった場合に、分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50が水平となるように配置しておく。この実施の形態では、おもり2の荷重が、おもり倍力槓桿3により4倍増幅され、分力槓桿4によって1/2倍に減少し、さらに分力倍力槓桿5により5倍増幅される構成である。一方、変位としては、例えば、油圧シリンダ40の油圧を調整してピストンロッド40aを1mm上昇させると、合力伝達外枠39、荷重負荷対象物7、合力伝達外枠39および各分力倍力槓桿5の力点5cは、同じく1mm上昇し、各分力倍力槓桿5の重点5b、分力槓桿4、おもり倍力槓桿3の力点3cは5mm下降し、おもり倍力槓桿3の重点3bは20mm上昇する。すなわち、ピストンロッド40aの高さ調整寸法の20倍の寸法がおもり倍力槓桿3の重点3bで変化するため、おもり倍力槓桿3の重点3bが設けられているおもり倍力槓桿3の一端部近傍箇所の位置を傾斜状態検出センサ29により検出し、また、無駄目消し槓桿50の一端部近傍箇所の位置を傾斜状態検出センサ57により検出し、おもり倍力槓桿3、分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50が水平姿勢を維持できるように、油圧シリンダ40の油圧が同期されながら調整される。このおもり倍力槓桿3の姿勢を調整する場合には、油圧シリンダ40に油を送る油圧ポンプ43をパルス駆動などして微量調整してもよい。なお、このように、おもり倍力槓桿3が水平となった状態で、分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50も水平姿勢となるように、予め調整しておく。
この状態から、おもり2を載せている昇降台14を徐々に下降させることで、おもり2(分銅2a〜2f)の荷重をおもり倍力槓桿3の重点3bに段階的に負荷させる。なお、おもり2の荷重を順次負荷させている各過程においては、おもり2の荷重が増加することで、力を伝える各構成要素の力伝達部分が延びることなどにより、おもり倍力槓桿3や分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50の姿勢が若干変動するが、この際には、おもり倍力槓桿3の姿勢および各分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50の姿勢が検出されて、おもり倍力槓桿3や分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50が水平になるように油圧シリンダ40のピストンロッド40aの高さが同期された状態で随時調整される。また、大きな負荷を長時間負荷し続けさせた場合(例えば、クリープ試験の実施時)のように、おもり倍力槓桿3や分力倍力槓桿5の水平姿勢が油圧シリンダ40や油圧機器の微小な油漏れによって維持できない場合には、おもり倍力槓桿3の傾斜姿勢に基づいて、荷重負荷対象物7に対して実際に負荷されている荷重に近づくように補正される。
おもり2の荷重は、おもり倍力槓桿3により増幅される(この実施の形態では4倍に増幅される)が、この後、増幅された荷重は、分力槓桿4により1/2ずつに分けられて、各分力倍力槓桿5の重点5bに負荷される。そして、1/2ずつに分けられた負荷が、各分力倍力槓桿5によってそれぞれ増幅される(この実施の形態ではさらに5倍に増幅される)。この後、各分力倍力槓桿5によってそれぞれ増幅された負荷が、合力伝達枠8を介して荷重負荷対象物7に負荷される。したがって、この実施の形態において、全ての分銅2a〜2fのおもり2の荷重を負荷した際には、5t(5000kg)の荷重がおもり倍力槓桿3の重点3bに負荷され、各荷重負荷対象物7には50tの荷重が負荷される。
本発明によれば、既知質量のおもり2の負荷をおもり倍力槓桿3により増幅させた後、この力を分力手段としての分力槓桿4により分け、この分力を複数設けられた各分力倍力槓桿5により増幅し、これらの増幅された力を複数設けられた各荷重負荷対象物7に作用させるので、複数(この実施の形態では2つ)の荷重負荷対象物7に対して並列的に増幅分力を負荷できる。したがって、例えば、各荷重負荷対象物7が、荷重を測定するロードセルなどの荷重測定装置である場合には、複数の荷重測定装置(ロードセル)を同時に試験したり検査したりすることができて、作業能率を向上させることができる。
また、当該荷重増幅負荷装置1、10や荷重増幅負荷方法では、おもり倍力槓桿や各分力倍力槓桿を用いて力を増幅する構成である。これらの槓桿は、槓桿の支点、重点、力点において刃と刃受けとで互いに接触する構造(炭素工具鋼などが用いられる)であり、刃と刃受けとの接触荷重が、刃の長さ当たり最大1.0〜1.2t/cm程度が、精度が維持できる値と考えられている。例えば、負荷容量が50tである場合には、この負荷容量を作用させるための槓桿の刃および刃受けの長さが40数cm必要となり、これは高精度を維持できる実用化可能な最大長さである。したがって、このような刃および刃受けの長さの分力倍力槓桿を有する構造を採用することで、各荷重負荷対象物に対して負荷容量が50t程度の大荷重を高精度に負荷することが可能となる。
この荷重増幅負荷装置1、10や荷重増幅負荷方法によれば、力が分力手段としての分力槓桿4により分けられて、各分力倍力槓桿5の重点5bに作用されて増幅されるため、各分力倍力槓桿5の力点5cには、分けられて増幅された力しか作用せず、各分力倍力槓桿5で増幅する荷重自体を小さくすることができる。これにより、上記のように、おもり倍力槓桿3、分力槓桿4、分力倍力槓桿5の各支点、重点、力点において、刃と刃受けとで互いに接触する構成を採用した場合でも、最も大きな荷重が負荷される分力倍力槓桿5の力点5cにおいて例えば40数cmの刃および刃受けを用いることで、刃の長さ当たり最大1.0〜1.2t/cm以下とすることができる。これにより、大荷重を負荷できながら、実用可能な長さの構造の分力倍力槓桿5を採用でき、上記のように、荷重負荷対象物7が、荷重を極めて高精度に測定するロードセル(荷重測定装置)である場合でも、高精度で大荷重を負荷することができて、各ロードセル(荷重測定装置)を大荷重かつ高精度で同時に試験することができる。
また、上記構成によれば、おもり倍力槓桿3が傾斜した場合でも、この傾斜状態が傾斜状態検出センサ(傾斜状態検出手段)29により検出され、傾斜状態検出センサ29により検出した傾斜状態に対応して、荷重負荷対象物7に負荷されている荷重の値が実際に負荷されている荷重値に近づくように補正される。これによっても精度を向上させることができる。
また、上記構成によれば、おもり倍力槓桿3が傾斜すると、この傾斜状態が傾斜状態検出センサ(傾斜状態検出手段)29により検出され、また、各分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50が傾斜すると、この傾斜状態が傾斜状態検出センサ(傾斜状態検出手段)57により検出され、おもり倍力槓桿3、分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50が同期して水平となるように、前記水平制御手段により各油圧シリンダ40への油量が調整されて、各油圧シリンダ40のピストンロッド40aの位置が調整される。これにより、おもり倍力槓桿3や分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50が傾斜した場合でも、水平姿勢となるように制御されるため、おもり倍力槓桿3や各分力倍力槓桿5が傾斜すること自体を最小限に抑えることができ、ひいては、精度を向上させることができる。
また、上記構成では、おもり倍力槓桿3に、おもり2からの負荷を一時的に受ける休み装置としてのスクリュジャッキ24およびジャッキ駆動用モータ25を設けている。これにより、例えば、荷重負荷対象物7であるロードセルに対して、大荷重を一気に(60秒以内などの短時間で一度に)負荷するクリープ試験を行う場合には、おもり2が負荷されているおもり倍力槓桿3の一端部側を一時的にスクリュジャッキ24により保持し、この状態で、おもり2を載せている昇降台14を下限位置まで下降させる。そして、この後、ジャッキ駆動用モータ25を駆動してスクリュジャッキ24を下降させることで、大荷重を一気におもり倍力槓桿3に負荷させることができる。また、スクリュジャッキ24を下降させた状態から、上昇させて、おもり倍力槓桿3の一端部側を支持させる。これにより、大荷重を一気に荷重負荷対象物7である各ロードセルに負荷させたり、除荷させたりすることができ、大荷重を一度に負荷させてその後の挙動を観察するなどするクリープ試験を良好に行うことが可能となる。なお、このクリープ試験を行う際にも、おもり倍力槓桿3や各分力倍力槓桿5を水平に維持するように各油圧シリンダ40により増幅分力伝達外枠39の位置を迅速に調整しなければならないが、この際に素早く各増幅分力伝達外枠39の位置を調整できるように、油圧シリンダ40や油圧ポンプ43をそれぞれ複数台設けて短時間に大量の油量を供給させてもよい。
ところで、この荷重増幅負荷装置としての荷重増幅負荷装置1、10も含めて、一般に、槓桿を用いた荷重試験機や実荷重試験機では、荷重負荷対象物7への負荷値は、小荷重範囲においては比較的細かく荷重を段階的に変更しながら作用させることができるが、大荷重範囲においては粗く(大きく)荷重を変更させる構成である。上記実施の形態における荷重増幅負荷装置10では、小荷重範囲においては、最も小さい100kgの分銅2a同士を連結させて、荷重負荷対象物7に対して100kgの20倍である2t単位で段階的に負荷できる。一方で、大荷重範囲においては、最も大きな1tの分銅2fを連結することにより、一挙に20t単位で大まかに負荷できるに過ぎない。したがって、大荷重領域においては、すなわち、細かな荷重(重量)間隔で荷重負荷対象物7に負荷させて試験することはできなかった。
この点を改良したものが、図9に示す荷重増幅負荷装置(荷重試験機)60である。この実施の形態に係る荷重増幅負荷装置60では、図9に簡略的に示すように、各無駄目消し槓桿50の一端側(力点)に、おもり2以外の負荷をキャンセルまたは調整するためのバランスウエイト52に加えて、手載せ用の分銅61aなどの比較的小さな既知質量のおもり61を載せることが可能な載せ台62をそれぞれ設けて、この載せ台62を、吊り輪63などを介して、無駄目消し槓桿50の一端側(力点)から吊り下げるように構成している。なお、この載せ台62などが追加されている構成以外は、上記実施の形態と同様な構成とされており、同機能の構成要素には同じ符号を付している。
このように構成することにより、無駄目消し槓桿50における載せ台62の支点からの距離に対応して、小質量のおもり61の荷重が増幅された力分だけ、増幅分力伝達枠8を引き上げる力として伝達され、その分だけ、荷重負荷対象物7としてのロードセル(荷重測定装置)に負荷される荷重が減少することになる。したがって、例えば、各無駄目消し槓桿50の載せ台62が取り付けられている箇所を力点とした場合の重点での増幅率が5倍である場合に、各載せ台62に20kgの分銅61aを載せることで、無駄目消し槓桿50の重点には100kgの引き上げ力が作用するため、載せ台62にこの分銅61aを段階的に載せることで、大荷重でも100kgの細かい範囲で段階的に変化させながら、ロードセルなどの各荷重負荷対象物7に荷重を負荷することが可能となり、大荷重でのロードセルなどの各荷重負荷対象物7の性能を良好に試験したり検査したりすることができる。また、大荷重での荷重増幅負荷装置60の挙動の確認(刃と刃受けとの接触が良好な状態であることの確認など)を行うことも可能となり、荷重増幅負荷装置60の信頼性を良好に確認することもできる。
また、上記実施の形態では、1つの分力槓桿4と、1対の分力倍力槓桿5とを備えて、おもり倍力槓桿3からの力を2つに分けて増幅させる構成とした場合を述べたが、これに限るものではない。すなわち、図10に簡略的に示すように、この荷重増幅負荷装置(荷重試験機)70では、おもり倍力槓桿3側からの力を2つに分ける分力槓桿(第1の分力槓桿)4(4A)の下流に、分力槓桿(第1の分力槓桿)4で分けられた力をさらに2つに分ける2つの第2の分力槓桿4(4B)を接続し、これらの4つに分けられた力を4つ(すなわち2対)設けられた分力倍力槓桿5によりそれぞれ増幅する。そして、各分力倍力槓桿5において分けられて増幅された力が、増幅分力伝達枠8を介して、4つの荷重負荷対象物7にそれぞれ対応して負荷される。
この構成によれば、4つの荷重負荷対象物7に対して並列的に増幅分力を負荷できる。したがって、例えば、各荷重負荷対象物7が、荷重を測定するロードセルなどの荷重測定装置である場合には、複数の荷重測定装置(ロードセル)を同時に試験したり検査したりすることができて、さらに作業能率を向上させることができる。
また、さらに、上記構成において第2の分力槓桿により4つに分けられた力をさらに2分する4つの第3の分力槓桿と、この第3の分力槓桿により分けられた力を増幅する4対の分力倍力槓桿と、を設けて、各分力倍力槓桿で増幅された力を、増幅分力伝達枠を介して、8つの荷重負荷対象物にそれぞれ対応させて負荷させるように荷重増幅負荷装置(荷重試験機)70’を構成してもよい(図示せず)。これにより、並列的に設けた8つの荷重負荷対象物に大きな負荷を同時に作用させることが可能となり、一層作業能率を向上させることができる。
なお、図9に示す荷重増幅負荷装置(荷重試験機)70や、上述した荷重増幅負荷装置(荷重試験機)70’においても、図2に示すような、おもり倍力槓桿3にバランスウエイト28を取付けたり、おもり倍力槓桿3の傾斜状態を傾斜状態検出センサ(傾斜状態検出手段)29により検出し、傾斜状態検出センサ29により検出した傾斜状態に対応して、荷重負荷対象物7に負荷されている荷重の値が実際に負荷されている荷重値に近づくように補正したりすることが好ましく、これにより、荷重負荷対象物7への負荷を精度よく作用させることができる。また、おもり倍力槓桿3に、おもり2からの負荷を一時的に受ける休み装置を設けることが好ましく、これにより、大荷重を一度に負荷させてその後の挙動を観察するなどするクリープ試験を良好に行うことが可能となる。
また、荷重増幅負荷装置(荷重試験機)70、70’においても、各荷重負荷対象物7に対応して、油圧シリンダ40などをそれぞれ設けて、おもり倍力槓桿3や分力倍力槓桿5および無駄目消し槓桿50が水平姿勢となるように制御することが好ましく、これによっても、おもり倍力槓桿3や分力倍力槓桿5が傾斜すること自体を最小限に抑えることができ、ひいては、精度を向上させることができる。また、各荷重負荷対象物7に作用するおもり2以外の負荷をキャンセルまたは調整する無駄目消し槓桿50を設けることが好ましく、無駄目消し槓桿50に、バランスウエイト52に加えて、手載せ用の分銅61aなどの比較的小さな既知質量のおもり61を載せることが可能な載せ台62をそれぞれ設けてもよい。
上記実施の形態では何れの場合も、おもり2の荷重を1つのおもり倍力槓桿3により増幅した構成である場合を述べたが、これに限るものではない。つまり、複数のおもり倍力槓桿を直列に接続して連結し、最下流に接続したおもり倍力槓桿により増幅した力を分力槓桿により分けて、分力倍力槓桿により増幅してもよい。また、上記実施の形態では、おもり倍力槓桿3が一次てこからなる単一槓桿で構成されていた場合を述べたが、これに限るものではなく、おもり倍力槓桿3が三次てこ(力点が重点と支点との間にあるてこ)からなる単一槓桿で構成してもよい。
また、上記実施の形態では、おもり2として連鎖分銅を用いた場合を述べたが、これに限るものではなく、ロバーバル機構により昇降可能な載せ台上に既知質量の分銅を載せて、この負荷をおもり倍力槓桿3の重点に作用させるよう構成してもよい。また、分力槓桿が3つ以上設けられている場合には、上流側の分力槓桿と下流側の分力槓桿との間にも、分力荷重を増幅させる分力倍力槓桿をさらに配設してもよい。また、おもり倍力槓桿3などを水平にするための油圧シリンダ40のような大荷重で微小量変位を調整可能な大荷重微小量調整手段として、油圧シリンダ40に代えて電動ジャッキを設けてもよい。
また、上記の実施の形態では、荷重負荷対象物(被試験物)7が、大荷重を精度よく測定可能であり、取引業務上使用されて特定計量器として用いられるロードセルである場合を述べた。しかし、これに限るものではなく、荷重負荷対象物(被試験物)が、大荷重を測定可能な荷重測定装置、いわゆる載せ台を備えた計量装置90であってもよい。この荷重負荷対象物としての計量装置90は、図11に簡略的に示すように、圧延製造された直径約1.5mのロール形状の鋼板からなる被計量物81の荷重を測定するもので、上面部に設けられた載せ台82上に被計量物81が載せられて計量される。例えば、載せ台82の大きさは、平面視した状態での寸法で、長さ4m、幅1.5mとされ、計量装置80の秤量は例えば50tとされている。
このような、載せ台82の面積が比較的小さいにも関わらず、大荷重が負荷される計量装置80については、特定計量器として用いられるため検査させる際には、載せ台82の上に、載せ台82よりも大きな鋼板などを載置し、この鋼板上に、大荷重の分銅などを載せることが考えられる。しかしながら、このような状況は、非常に危険であるため、計量法においては、検査しなくてもよい除外物として挙げられている。しかし、このような計量装置80を例えば2台有する場合においても、大荷重を精度よく負荷して、試験したり検査したりすることが望まれる。
本実施の形態に係る荷重増幅負荷装置100は、このような計量装置80についても、荷重負荷対象物(被試験物)として荷重を負荷できる構成である。この荷重増幅負荷装置100は、図12に簡略的に示すように、ロバーバル機構101により昇降可能な状態で支持され、既知質量の分銅103を多数載せることが可能な大きな面積を有する載せ台102と、この載せ台102からの荷重が重点に負荷され、力点から増幅されて出力されるおもり倍力槓桿104と、このおもり倍力槓桿104からの力を2分割する分力手段としての分力槓桿105と、この分力槓桿105に分力伝達材107を介して連結され、分力槓桿105により分けられた力を増幅する1対の分力倍力槓桿106(106A、106B)と、この分力倍力槓桿106(106A、106B)によりそれぞれ増幅された力を、荷重負荷対象物(被試験物)としての計量装置80に伝達して負荷させる分力増幅負荷手段としての分力増幅負荷体109(109A、109B)とを備えている。なお、分力倍力槓桿106(106A、106B)および分力増幅負荷体109(109A、109B)は、図12の紙面における手前側と奥側とに設けられており、互いに同様な構造であり、2つの分力伝達材107同士も同様な構造および長さである。また、図示しないが、おもり倍力槓桿104や分力倍力槓桿106(106A、106B)の力点、支点、重点にも、刃および刃受け構造が用いられている。
なお、載せ台102は、ロバーバル機構101により昇降可能な状態で支持された支持軸111により、昇降自在に支持されており、支持軸111の下端部に連結されたおもり伝達材112がおもり倍力槓桿104の重点104bに接続されている。そして、ロバーバル機構101によって、載せ台102に負荷された荷重以外の力は除去され、載せ台102からの荷重(下向き荷重)だけがおもり倍力槓桿104の重点104bに良好に負荷されるよう構成されている。また、おもり倍力槓桿104は、力点104cが重点104bと支点104aとの間にある三次てこからなる単一槓桿で構成されており、重点104bに負荷された下方への荷重が増幅されて、力点104cから下方への荷重として出力される。
分力槓桿105は、おもり倍力槓桿104の力点104cに連結された力伝達部材113を介して荷重が下方に負荷されており、上記実施の形態の分力槓桿4とは、力の作用する方向は上下に逆方向であるが、おもり倍力槓桿104の力点104cからの力を2分して、各分力倍力槓桿106(106A、106B)に伝達する点は同様であり、二次てこからなる単一槓桿である。
分力倍力槓桿106(106A、106B)では、分力槓桿105で分けられた力がそれぞれ増幅されて、分力倍力槓桿106(106A、106B)の力点106cから出力され、これらの増幅された負荷がそれぞれ分力増幅負荷体109(109A、109B)を介して、荷重負荷対象物(被試験物)としての計量装置80に負荷される。ここで、この実施の形態では、各分力増幅負荷体109(109A、109B)もロバーバル機構110により昇降自在に支持されており、これにより、各分力増幅負荷体109(109A、109B)から荷重負荷対象物(被試験物)としての計量装置80には、上下方向の荷重のみが負荷され、分力増幅負荷体109(109A、109B)に負荷された荷重以外の力やモーメントは除去される。
この荷重増幅負荷装置100によっても、大荷重を高精度で、かつ、安全に、計量装置80(計量装置80の載せ台81)に負荷させることができる。
すなわち、本発明に係る荷重増幅負荷装置および荷重増幅負荷方法は、内容をまとめると以下の通りである。なお、図13および図1、図2、図10、図12等を参照されたい。また、図13では、また、分力槓桿4が3つ以上設けられており、上流側の分力槓桿4と下流側の分力槓桿4との間にも、分力荷重を増幅させる分力倍力槓桿をさらに配設している場合を簡略的に示しているが、これに限るものではない。
連鎖分銅2a〜2fあるいはロバーバル機構101を備えた載せ台102上に分銅を積載するなどの方法により、おもり倍力槓桿3、104の重点に既知質量のおもり2の負荷を作用させ、一次てこ、または三次てこの単一槓桿からなる1つまたは複数直列接続したおもり倍力槓桿3、104によって荷重を増幅させる。そして、この増幅された荷重を分ける分力手段として、二次てこの単一槓桿からなる分力槓桿4、105を2n−1個(なお、nは1以上の正の整数)配設する。分けられた2n個の荷重を、2n個の同一寸法の大荷重用槓桿からなる分力倍力槓桿5、106の重点に作用させる。ここで、分力倍力槓桿5、106は、一次てこ、または三次てこの単一槓桿から構成される。これらの2n個の大荷重用の分力倍力槓桿5、106は、適当な間隔で並列的または直列的に配設されている。ここで、増幅された荷重は、分力倍力槓桿5、106に使用する刃と刃受けの接触荷重の制限によって定まる荷重の最大値(Wmax)以下に設定されている。そして、各分力倍力槓桿5により増幅された力を、並列された2n個の荷重負荷対象物に負荷するよう構成されている。
このように、基準荷重となる分銅の荷重を高精度に増幅するために設けられた、1個または直列連結のおもり倍力槓桿の一部に、分力槓桿からなる分力手段を2n−1個設けて、荷重を分割した上で、(Wmax)の力点荷重を有する2n個の並列配置された大荷重用の分力倍力槓桿に連結し、2n個の(Wmax)を得て、並列された2n個の荷重負荷対象物に良好に負荷することができる。
また、荷重が負荷されることによって生じる槓桿の撓みや荷重伝達を担う各連結部材の伸びなどによって、槓桿(詳しくは槓桿の刃線)が傾斜するが、この傾斜を最小にするために、最大荷重が負荷される被試験物のロードセルまたははかり(計量装置)の固定部あるいは荷重伝達部に、または大荷重が作用する分力倍力槓桿の複数の支点台とこの支点台を保持するフレームとの間に、油圧シリンダあるいは電動ジャッキのような大荷重で微小量変位を調整可能な大荷重微小量調整手段と、この変位量を制御する変位量制御手段とを設け、荷重負荷時に最も大きな変位を生じる槓桿系(通常、分銅を負荷されるおもり倍力槓桿)の変位を検出し、その変位量を0、つまり当該槓桿が水平に戻るように、油圧シリンダ等の大荷重微小量調整手段を制御して、各負荷の荷重試験時に槓桿系が水平に保持されて、実質的に零位法による荷重試験を可能にしている。これにより、おもり倍力槓桿などを良好に水平に制御することができて、精度をさらに向上させることができる。
上記実施の形態では、荷重増幅負荷装置として、50tもの大荷重を接触荷重として耐えられる刃と刃受けとを分力倍力槓桿5、106が備えている場合を述べた。しかし、荷重増幅負荷装置の設置場所や使用する環境に起因する制約により、例えば、金属が腐食しやすい設置場所や使用環境では、錆びやすい高炭素鋼からなる刃や刃受けを使用することができず、この場合には、刃や刃受けの材料としては、ステンレス鋼や非鉄金属(セラミックなど)などを使用しなればならず、接触荷重は大幅に減少(例えば1/10ほど)してしまうが、このような場合でも、従来のステンレス鋼や非鉄金属(セラミックなど)などを使用せざるをえないために、最大負荷荷重が5tほどであった場合でも、刃や刃受けの材料以外は本発明と同様の構造を採用することで、従来よりも大荷重で精度の高い荷重増幅負荷装置や荷重増幅負荷方法を実現可能である。
なお、上記実施の形態では、荷重負荷対象物がロードセルやはかり(計量装置)などの荷重測定装置であり、当該荷重増幅負荷装置が、これらの荷重測定装置を被試験物として試験する荷重試験機である場合を述べた。また、荷重試験機は力を測定する試験機であるため、力の単位であるN(ニュートン)やkN、MNで表現するべきであるが、本発明の荷重試験機は、取引証明用の計量装置に使用する特定計量器で用いるロードセルが主な被試験物であるため、質量単位であるt(トン)を用いている。しかし、荷重負荷対象物が、荷重測定装置を被試験物として試験する荷重試験機に限るものではなく、荷重負荷対象物としては、大荷重が精度よく作用させる対象物であれば、荷重測定装置以外のものでもよいことはもちろんである。