以下に、本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
図1は、本実施形態の電池システム10を含むモータ駆動システム1の全体構成を示す図である。図1に示すように、モータ駆動システム1は、例えば、車両に搭載されている。このような車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車等がある。ハイブリッド自動車は、車両を走行させる動力源として、後述するモータジェネレータに加えて、エンジン又は燃料電池を備えている。電気自動車は、車両を走行させる動力源として、後述するモータジェネレータだけを備えている。
本実施形態の電池システム10は、ニッケル水素電池12と、圧力センサ16と、温度センサ18と、監視ユニット20と、電流センサ22と、コントローラ30とを備える。このうち、監視ユニット20以外の構成要素が本発明の電池システムを構成する。
ニッケル水素電池12は、電気的に直列に接続された複数の単電池14を有する。単電池14の数は、ニッケル水素電池12の要求出力などに基づいて、適宜設定することができる。本実施形態では、ニッケル水素電池12を構成する、すべての単電池14が電気的に直列に接続されているが、ニッケル水素電池12には、電気的に並列に接続された複数の単電池14が含まれていてもよい。
単電池14は、充放電を行う発電要素を電池ケースに収容することによって構成することができる。また、複数の発電要素を電池ケースに収容することもでき、この場合には、電池ケースの内部において、複数の発電要素を電気的に直列に接続することができる。電池ケースは、例えば、樹脂で形成することができる。
発電要素は、正極板と、負極板と、正極板および負極板の間に配置されたセパレータとを有する。正極板は、集電板と、集電板の表面に形成された正極活物質層とを有し、負極板は、集電板と、集電板の表面に形成された負極活物質層とを有する。ここで、正極活物質層、負極活物質層およびセパレータには、電解液が含まれている。正極活物質層は、水酸化ニッケルなどの正極活物質を含んでおり、負極活物質層は、負極活物質としての水素吸蔵合金を含んでいる。
圧力センサ16は、ニッケル水素電池12を構成する単電池14の内部圧力を検出して、検出結果をコントローラ30に出力する。圧力センサ16は、例えば、上記電池ケースの内部に配置され、単電池14内の内部圧力を検出する。圧力センサ16は、ニッケル水素電池12を構成するすべての単電池14に設けられるのが好ましい。複数の圧力センサ16が設置される場合、これらの検出値を平均して用いるか、または、最も高い検出値を用いて後述する放置中電池温度推定処理を実行してもよい。
温度センサ18は、ニッケル水素電池12の温度を検出して、検出結果をコントローラ30に出力する。図1では温度センサ18が電池ケースの外側に設けられるように示すが、電池ケースの内側に設けられてもよい。また、温度センサ18は1つでもよいし、あるいは、複数設けられてもよい。複数の温度センサ18を設ける場合、ニッケル水素電池12の電池温度を正確に検出できるように、ニッケル水素電池12を構成する複数の単電池14に対して均等な配置で設けるのが好ましい。またこの場合、複数の温度センサ18からコントローラ30に入力される複数の検出値を平均して用いるか、または、最も高い検出値を用いて後述する放置中電池温度推定処理を実行してもよい。
監視ユニット20は、ニッケル水素電池12の端子間電圧を検出して、検出結果をコントローラ30に出力する。ここで、監視ユニット20は、各単電池14の端子間電圧を検出することができる。また、上述したように、電池ケースに複数の発電要素を収容したとき、監視ユニット20は、複数の発電要素における端子間電圧を検出することができる。
電流センサ22は、ニッケル水素電池12に流れる電流を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。ここで、ニッケル水素電池12が放電しているときには、電流センサ22によって検出される電流値として正の値を用いることができる。また、ニッケル水素電池12が充電しているときには、電流センサ22によって検出される電流値として負の値を用いることができる。
本実施形態では、ニッケル水素電池12の正極端子と接続された正極ラインPLに電流センサ22を設けている。ただし、電流センサ22は、ニッケル水素電池12に流れる電流値を検出できればよく、電流センサ22を設ける位置は適宜設定することができる。また、複数の電流センサ22を用いることもできる。
コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)32と、メモリ34を有している。CPU32は、所定の処理(例えば、本実施形態で説明する処理)を実行する。また、メモリ34は、コントローラ30が所定の処理を行うための各種のプログラムや上記各センサ16,18,22による検出値を記憶する。さらに、コントローラ30は、時間を計測する図示しないタイマを有しており、例えば、温度センサ18によって検出されたニッケル水素電池12の電池温度を時間と関連付けて記憶することができる。なお、コントローラ30が本発明における推定装置に相当する。
コントローラ30には、スタートスイッチ36が接続されている。スタートスイッチ36が運転者等によってオン操作されると、電池システム10を含むモータ駆動システム1が起動されて稼働を開始する。また、スタートスイッチ36は、電池システム10の稼働中に運転者等によってオフ操作されると、電池システム10を含むモータ駆動システム1が稼働停止する。
ニッケル水素電池12の正極端子に接続された正極ラインPLには、システムメインリレーSMR−Bが設けられている。システムメインリレーSMR−Bは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。ニッケル水素電池12の負極端子と接続された負極ラインNLには、システムメインリレーSMR−Gが設けられている。システムメインリレーSMR−Gは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。
システムメインリレーSMR−Gには、システムメインリレーSMR−Pおよび電流制限抵抗Rが電気的に並列に接続されている。システムメインリレーSMR−Pおよび電流制限抵抗Rは、電気的に直列に接続されている。システムメインリレーSMR−Pは、コントローラ30からの制御信号を受けることにより、オンおよびオフの間で切り替わる。電流制限抵抗Rは、ニッケル水素電池12を負荷(具体的には、後述するインバータ24)と接続するときに、突入電流が流れることを抑制するために用いられる。
ニッケル水素電池12は、正極ラインPLおよび負極ラインNLを介して、インバータ24と接続されている。ニッケル水素電池12をインバータ24と接続するとき、コントローラ30は、まず、システムメインリレーSMR−Bをオフからオンに切り替えるとともに、システムメインリレーSMR−Pをオフからオンに切り替える。これにより、電流制限抵抗Rに電流を流して、突入電流が流れることを抑制できる。
続いて、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−Gをオフからオンに切り替えた後に、システムメインリレーSMR−Pをオンからオフに切り替える。これにより、ニッケル水素電池12およびインバータ24の接続が完了し、図1に示す電池システム10が起動されて稼働状態(Ready−On)となる。
一方、スタートスイッチ36がオンからオフに切り替わったとき、コントローラ30は、システムメインリレーSMR−B,SMR−Gをオンからオフに切り替える。これにより、ニッケル水素電池12およびインバータ24の接続が遮断され、電池システム10は、稼働停止状態(Ready−Off)となる。
インバータ24は、ニッケル水素電池12から出力された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータジェネレータ26に出力する。モータジェネレータ26は、インバータ24から出力された交流電力を受けて、車両を走行させるための運動エネルギーを生成する。モータジェネレータ26によって生成された運動エネルギーは、車輪に伝達され、車両を走行させることができる。なお、車両に搭載される走行用動力源としてのモータジェネレータは、1基であってもよいし、複数基であってもよい。
車両を減速させたり、停止させたりするとき、モータジェネレータ26は、車両の制動時に発生する運動エネルギーを電気エネルギー(交流電力)に変換する。インバータ24は、モータジェネレータ26が生成した交流電力を直流電力に変換し、直流電力をニッケル水素電池12に出力する。これにより、ニッケル水素電池12は、回生電力を蓄えることができる。
本実施形態では、ニッケル水素電池12をインバータ24に接続しているが、これに限るものではない。具体的には、ニッケル水素電池12およびインバータ24の間の電流経路に、昇圧回路を設けることができる。昇圧回路は、ニッケル水素電池12の出力電圧を昇圧し、昇圧後の電力をインバータ24に出力することができる。また、昇圧回路は、インバータ24の出力電圧を降圧し、降圧後の電力をニッケル水素電池12に出力することができる。
ここで、車載されたニッケル水素電池12の寿命は、電池の生涯で晒された電池温度履歴(または電池温度頻度)に起因する劣化度によって決まる。図2は、ニッケル水素電池12の電池温度と劣化度との関係を示すグラフである。ここで、横軸は電池温度を示し、縦軸は劣化度を示す。図2中の曲線42で示すように、ニッケル水素電池12の劣化度は、電池温度が高温になるほど、また、高温状態になる頻度が多いほど、劣化度が非線形で大きくなる傾向がある。したがって、ニッケル水素電池12の劣化度を精度よく推定するには、電池温度について正確な情報を得る必要がある。モータ駆動システム1が稼働状態にあって車両が走行中または走行可能な状態にあるときは、ニッケル水素電池12の電池温度は温度センサ18によって随時検出されるため温度履歴を正確に把握することができる。
一方、車両が運転停止されて電池システム10が稼働停止した状態(すなわちReady−Off)になったとき、システム稼働停止中にも温度センサ18およびコントローラ30を機能させてニッケル水素電池12の電池温度を検出しようとすると、コントローラ30に常時電力供給する電源回路(以下、常時電源回路という)を設置する必要があり、回路構成が複雑でコスト高になるという問題がある。
これに対し、電池システム10が稼働停止中におけるニッケル水素電池12の電池温度を線形補間によって推定する手法がある。図3に示すグラフにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は電池温度を示す。横軸において、時間t1はスタートスイッチ36がオフされた電池システム10が稼働停止した時刻であり、時間t2はスタートスイッチ36がオンされて電池システム10が稼働状態になった時間である。すなわち、時間t1−t2間の時間期間が電池システム10の稼働停止中となる。
図3を参照すると、上述した線形補間の手法は、時間t1における電池温度T1と時間t2における電池温度T2とを直線38で結んで、システム稼働停止中の電池温度がこの直線38上で推移したと推定するものである。しかしながら、システム稼働停止中における実際のニッケル水素電池12の電池温度は、図3中の破線40で示すように上に凸状(もしくは下に凸状)の曲線上で推移する場合が多い。このように電池温度が曲線状に変化する理由として、(1)システム稼働中に単電池14内に発生した酸素ガスがシステム稼働停止後に単電池内部の水素と再結合して水になり、そのときに発生する熱によって電池温度が上昇すること、および、(2)車両走行中に加減速走行(すなわち高負荷走行)してから間もなく電池システム10が稼働停止されたとき、単電池14で発熱した熱が電池温度を検出する温度センサ18まで到達するのに時間を要すること等が挙げられる。
このようにニッケル水素電池12のシステム稼働停止中の実際の電池温度が破線40で示すように上に凸状の曲線上で推移する場合に、上述した直線38によって線形補間して電池温度履歴を推定すると、直線38の上側であって破線40との間に位置する斜線で示す温度領域が含まれないことになる。すなわち、電池温度の推定が甘めに行われたことになる。このような甘めに推定された電池温度履歴に基づいてニッケル水素電池12の劣化度を推定した場合、ニッケル水素電池12の劣化を抑制するための入出力制限を適切な時期に実施できず、電池寿命が短くなる可能性がある。
他方、図示していないが、ニッケル水素電池12のシステム稼働停止中の実際の電池温度が下に凸状の曲線上で推移する場合がある。この場合に上記直線38で示すように電池温度履歴を推定すると、直線38の下側にあって実際の電池温度を示す曲線との間に位置する温度領域が含まれないことになる。すなわち、電池温度の推定が厳しめに行われたことになる。このような厳しめに推定された電池温度履歴に基づいてニッケル水素電池12の劣化度を推定した場合、ニッケル水素電池12の劣化を抑制するための入出力制限が早期に実施され、ハイブリッド車両や燃料電池車の場合にはエンジンや燃料電池の出力で補うことになって車両の燃費悪化につながる。
上記(1)および(2)の理由によるシステム稼働停止後のニッケル水素電池12内の温度上昇は、システム稼働停止時のニッケル水素電池12の内部圧力および電池電流に基づいて推測することができる。したがって、システム稼働停止時およびシステム起動時のニッケル水素電池12の電池温度に加えて、ニッケル水素電池12の内部圧力および電池電流を用いて、放置中のニッケル水素電池12の電池温度推定を精度よく実行することが可能になる。
そこで、本実施形態の電池システム10では、図4および図5を参照して以下に説明する処理を実行することによって、電池システム10の稼働停止中におけるニッケル水素電池12の温度履歴を精度よく推定できるようにしている。なお、以下において、電池システム10の稼働停止中を適宜に「放置中」ということがある。
図4は、図1に示したコントローラにおいて実行されるシステム稼働中処理の処理手順を示すフローチャートである。この処理は、スタートスイッチ36がオンされて電池システム10が起動されたときに実行される。
コントローラ30は、ステップS10において、放置中電池温度推定処理を実行する。その詳細については、図5を参照して後述する。
次に、コントローラ30は、ステップS12において、圧力センサ16によって検出されるニッケル水素電池12の内部圧力を取得する。そして、コントローラ30は、今回取得した内部圧力をメモリ34に更新(すなわち前回値に置き換えて)して記憶する。
続いて、コントローラ30は、ステップS14において、電流センサ22によって検出されるニッケル水素電池12を流れる電池電流(I)を取得して、その電流二乗値(I2)を算出する。そして、コントローラ30は、今回算出した電流二乗値をメモリ34に更新して記憶する。
次に、コントローラ30は、ステップS16において、温度センサ18によって検出されるニッケル水素電池12の電池温度を取得する。そして、コントローラ30は、今回取得した電池温度をメモリ34に更新して記憶する。
続いて、コントローラ30は、スタートスイッチ36がオフされたか否かを判定する。スタートスイッチ36がオフされていないと判定されると(すなわちシステム稼働状態が維持)、上記ステップS12,S14,S16を繰り返し実行する。そして、コントローラ30は、スタートスイッチ36がオフされたと判定されると(すなわちシステム稼働停止)、メモリ34に含まれるバックアップメモリに最新の内部圧力、電流二乗値および電池温度を記憶して退避させる。これにより、システム稼働中処理が終了する。
図5は、図4に示したステップS10における放置中電池温度推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
コントローラは、まずステップS22において、初回のスタートスイッチ36のオン操作か否かを判定する。ここで、「初回」とは、スタートスイッチ36が一旦オンされたが、何らかの理由ですぐにオフされてオンされ直した場合の2回目以降のオン操作を除外する意味である。このように車両が走行せずにスタートスイッチ36のオン操作が繰り返し行われた場合、2回目以降のオン時にはニッケル水素電池12の現在温度と、前回のシステム稼働停止時の電池温度、内部圧力および電流二乗値に変更がないため、無駄な処理が行われることになるためである。
上記ステップS22により初回のスタートスイッチ36のオン操作であると判定されると、続くステップS24に進み、一方、初回のスタートスイッチ36のオン操作ではないと判定されると、図4に示す処理を終了する。
コントローラ30は、ステップS24において、システム起動時のニッケル水素電池12の電池温度を取得する。このとき、スタートスイッチ36のオンにより電池システム10が稼働状態になり、コントローラ30および温度センサ18に電源が供給されるため、電池システム10が稼働開始したときの温度センサ18による検出値を現在の電池温度として取得する。
続いて、コントローラ30は、前回のシステム稼働停止時にバックアップメモリに退避させた内部圧力、電流二乗値および電池温度を読み出して取得する。
そして、コントローラ30は、続くステップS28において、前回の内部圧力が所定のしきい値Aより大きいか否かを判定する。上記しきい値Aは、実験やシミュレーション等によって予め求めた値をメモリ34に記憶させておくことができる。前回の内部圧力がしきい値Aより大きい場合には、ニッケル水素電池12の単電池14内での酸素および水素の反応が放置中のニッケル水素電池12の温度推移に及ぼす影響が大きいとみなせる。言い換えると、前回の内部圧力がしきい値A以下である場合には、ニッケル水素電池12の単電池14内での酸素および水素の反応がニッケル水素電池12の温度推移に及ぼす影響が小さいとみなせる。上記しきい値Aは、例えば0.30MPaとすることができる。
上記ステップS28において、前回の内部圧力がしきい値Aより大きいと判定されると、コントローラ30は、続くステップS30において、ステップS24で取得したシステム起動時の電池温度と、ステップS26で取得した前回システム稼働停止時の電池温度および内部圧力とに基づいて、電池温度オフセット値Toffsetを取得する。この電池温度オフセット値Toffsetは、現在電池温度と前回の電池温度および内部圧力とを引数として、メモリ34に予め記憶された第1のマップを参照することによって取得できる。この第1のマップは、実験やシミュレーション等で得られた結果から作成することができる。ただし、これに限定されるものではなく、コントローラ30は、所定の計算式に現在および前回の電池温度と前回の内部圧力を代入することによって電池温度オフセット値Toffsetを算出してもよい。
一方、上記ステップS28において前回の内部圧力がしきい値A以下であると判定された場合、続くステップS32において、ステップS26で取得した電流二乗値が所定のしきい値Bより大きいか否かを判定する。上記しきい値Bは、実験やシミュレーション等によって予め求めた値をメモリ34に記憶させておくことができる。電流二乗値がしきい値Bより大きい場合には、前回走行時の負荷状態が放置中のニッケル水素電池12の温度推移に及ぼす影響が大きいとみなせる。言い換えると、電流二乗値がしきい値B以下である場合には、前回走行時の負荷状態が放置中のニッケル水素電池12の温度推移に及ぼす影響が小さいとみなせる。上記しきい値Bは、例えば1000A2とすることができる。
上記ステップS32において電流二乗値がしきい値Bより大きいと判定された場合、コントローラ30は、続くステップS34において、ステップS24で取得した現在の電池温度と、ステップS26で所得した前回システム稼働停止時の電池温度および電流二乗値とに基づいて、電池温度オフセット値Toffsetを取得する。この電池温度オフセット値Toffsetは、現在電池温度と前回の電池温度および電流二乗値とを引数として、メモリ34に予め記憶された第2のマップを参照することによって取得できる。この第2のマップは、実験やシミュレーション等で得られた結果から作成することができる。ただし、これに限定されるものではなく、コントローラ30は、所定の計算式に現在および前回の電池温度と前回の電流二乗値を代入することによって電池温度オフセット値Toffsetを算出してもよい。
一方、上記ステップS32において電流二乗値がしきい値B以下であると判定された場合、コントローラ30は、続くステップS36において、ステップS24で取得した現在電池温度と、ステップS26で取得した前回の電池温度とに基づいて、電池温度オフセット値Toffsetを取得する。この電池温度オフセット値Toffsetは、現在電池温度と前回の電池温度とを引数として、メモリ34に予め記憶された第3のマップを参照することによって取得できる。この第3のマップは、実験やシミュレーション等で得られた結果から作成することができる。第3のマップを参照して取得される電池温度オフセット値Toffsetは、第1および第2のマップから取得される電池温度オフセット値Toffsetに比べて小さいものである。第3のマップから導出される電池温度オフセット値Toffsetはそれぞれ所定のしきい値A,B以下であった内部圧力および電流二乗値の影響が考慮されたものになっている。そのため、図3を参照して説明した直線38で補間して温度推定するよりもニッケル水素電池12の温度推定精度を上げることができる。
次に、コントローラ30は、上記ステップS30、S34、またはS36により取得された電池温度オフセット値Toffsetを用いて、放置中のニッケル水素電池12の電池温度推移を線形補間によって求める。具体的には、図6に示すように、図3を参照して説明した放置中のニッケル水素電池12の電池温度推移を表す直線38に関し、その始点である前回のシステム稼働停止時の電池温度T1と、その終点である現在の電池温度T2とのそれぞれに電池温度オフセット値Toffsetを加算して、すなわち電池温度オフセット値Toffset分だけ直線38を移動させて、時間t1での電池温度T1offsetと時間t2での電池温度T2offsetとを結んだ新たな電池温度推移補間直線39とする。
この場合、電池温度オフセット値Toffsetは、電池温度推移補間直線39と直線38との間の斜線部面積が、電池温度推移補間直線39と破線40との間の斜線部面積と同じになるように設定されるものではない。図2を参照して上述したように、電池温度が高くなるにしたがってニッケル水素電池12の寿命に影響する劣化度が非線形に大きくなる相関を有している。したがって、本実施形態における電池温度オフセット値は、このような非線形の相関が考慮された上記の各マップを参照して設定される。
なお、実際の電池温度推移が直線38に対して下側に位置して下へ凸状の曲線上になる場合には、電池温度オフセット値Toffsetが負の値になり、その結果、新たな電池温度推移補間直線39は、直線38が電池温度オフセット値Toffset分だけ下方へ平行にシフトした直線になる。
このようにしてコントローラ30は、ステップS38により電池温度オフセット値Toffsetを用いて放置中のニッケル水素電池12の新たな線形補間直線39を求めて、放置中電池温度推定処理を終了する。
なお、上述した図5の処理において、電池温度オフセット値Toffsetの決定順序として、まず内部圧力について判定し、次いで電流二乗値について判定する理由は、放置中のニッケル水素電池12についての新たな電池温度推移補間直線39を求めるのに必要な電池温度オフセット値Toffsetは、電流二乗値による温度上昇よりも、内部圧力による温度上昇の度合いの方が大きいことが実験結果および電池物性から判明しているためである。
上述したように本実施形態の電池システム10によれば、常時電源回路等を設けることなくシステム稼働停止中におけるニッケル水素電池12の電池温度履歴を精度よく推定することができ、その結果、比較的簡素でかつ安価な回路構成でニッケル水素電池12の劣化推定精度を向上させることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲内において種々の変更や改良が可能であることはいうまでもない。