以下に図面を参照して、開示のトランス接続相判定装置、トランス接続相判定方法、およびトランス接続相判定プログラムの実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、トランス接続相判定装置101の動作例を示す説明図である。図1において、トランス接続相判定装置101は、柱上トランスの接続相を判定するコンピュータである。柱上トランスは、電磁誘導の作用によって交流電流の電圧を変える変圧器である。以下の説明では、柱上トランスを、単に「トランス」と呼称する。
電力市場の自由化をはじめとする電力事業の規制改革や、再生可能電力普及の流れの中において、電力の伝達手段である送配電網に求められる機能が、昨今大きく変わってきている。このうち配電網においては、今後多数の導入が予想される太陽光発電(Photovoltaics、PV)などの分散型電源への対処が大きな課題である。課題の一例として、配電網の供給電圧を一定の範囲内、例えば、101±6V、202±20Vなどに収めるように電圧管理することが要求される。
電源が一ヶ所に集中する際の配電網の電圧管理における主な問題は、過負荷に伴う電圧降下であったが、分散型電源の配電網においては、売電のための逆潮流が発生するため、逆潮流の際の電圧上昇が大きな問題となる。電源が一ヶ所に集中する際の配電網においても、電圧降下の防止を前提とした設計および運用は成されているが、電圧上昇の問題に関しては、ほとんど想定されていない。この電圧上昇問題に対処するため、パワーエレクトロニクス上の各種受動機器および能動機器を利用するような、新しい電圧管理方式の検討が各所で開始されている。
ここで、新しい電圧管理方式の検討を行う場合には、トランスの接続相の問題が浮上する。具体的には、三相3線式の配電網において、電力を消費する電力消費源との接点にあるトランスが、三種類ある配電線の組み合わせのうち、どの相で高圧側と接続されているかわからないという問題である。この問題は、三相3線式でだけでなく、三相4線式といった3以上の電線を用いた配電網で起こり得る。本実施の形態では、三相3線式の配電網を例として説明する。
ここでは、トランスが接続する2つの配電線の組み合わせを、「トランスの接続相」と呼称する。また、三種類ある配電線をそれぞれ、「a線」、「b線」、「c線」と呼称する。そして、a線とb線との組み合わせを、「ab相」と呼称する。また、b線とc線との組み合わせを、「bc相」と呼称する。また、c線とa線との組み合わせを、「ca相」と呼称する。また、電力を消費する電力消費源を、「需要家」と呼称する。
トランスの接続相に関しては、三相交流を平衡に保つため、複数の需要家の負荷ができるだけバランスがとれるように選択されるが、各需要家が接続されたトランスの接続相が具体的にいずれであるかについては、管理することが困難である。このため、新しい電圧管理方式の適用を検討するに際しても、まずトランスの接続相の現状調査を行うことになる。
例えば、需要家10〜20軒に対して一つのトランスが設置されており、配電網全体を考えると、接続相を判定すべきトランスの数は膨大である。従って、配電網内の全てのトランスの接続相を人手で判定した場合には、大きなコストおよび時間を費やすことになってしまう。
また、配電線計測値に基づいて各配電線区間内の負荷で消費された消費電力を求めた各配電線区間内の相ごとの消費電力量と、相ごとの負荷計測値とが最も近くなるように、接続相の組み合わせを求めることによって、トランスの接続相を判別することが考えられる。しかしながら、トランスに接続された全ての需要家における消費電力の情報を用いるため、スマートメータを導入していない需要家があると、トランスの接続相を判別することが困難となる。
また、三相3線の各線の電流を計測できる高圧線に設置されたセンサが計測した電流値と、トランス配下に設置されたスマートメータの電力値との相関の違いによって接続相を判定することが考えられる。しかしながら、配電網の規模が大きい場合、接続相判定に用いるデータにノイズが増加するため、接続相判定の正解率が低下する。
ここで、接続相判定の正解率が低下する理由として、例えば、トランス1の接続相を判定するには、トランス1配下の電力変化がセンサで計測される電流にどう変化を与えるかを分析することになる。しかしながら、トランス2配下に存在する需要家の電力変化も同じくセンサで計測される電流に影響を与えるので、トランス1の接続相を判定する場合、トランス2配下の需要家によって変化するセンサの電流はノイズとなり、接続相判定の正解率が低下する。
そこで、実施の形態1にかかるトランス接続相判定装置101は、3以上の各配電線に流れる電流とトランス配下の電力の相関から判定したトランスの接続相の尤度が閾値以上であれば、電力からセンサが計測した線電流を補正して他トランスの接続相を判定する。以下の記載では、配電線に流れる電流のことを「線電流」と呼称する場合があり、配電線に流れる電流の値を、「線電流値」と呼称する場合がある。これにより、トランス接続相判定装置101は、線電流のノイズを除去して、接続相の判定精度を向上させる。
図1の(a)では、新たな電圧管理方式の検討の対象となる配電網eを示す。配電網eは、三相3線式の配電網であり、電力の流れを制御する変電所suと、センサseと、複数のトランスとしてトランス1、2とを有する。トランス1、2の接続相は不明である。センサseは、a線、b線、c線の線電流値をそれぞれを計測する。
図1の(b)では、トランス接続相判定装置101は、トランス1、2の接続相を判定する処理の例を示す。トランス1に対して、トランス接続相判定装置101は、トランス1に接続された需要家で消費した電力値と、a〜c線に流れた線電流値とに基づいて、a〜c線のそれぞれに対応して電力と線電流との相関を示す相関値を算出する。具体的な相関値の算出例は、図11で後述する。
ここで、需要家で消費した電力値は、需要家に導入されたスマートメータが計測した値を、トランス接続相判定装置101が取得したものでもよいし、トランス接続相判定装置101の利用者によりトランス接続相判定装置101の記憶領域に格納されたものでもよい。また、線電流値は、センサseが計測した電流値そのものでもよいし、センサseが計測した電流値から、あるトランスによるノイズを除去した補正後の電流値でもよい。さらに、線電流値は、ノイズを除去した補正後の電流値から、さらに別のトランス配下で消費する電力によるノイズを除去した補正後の電流値でもよい。
次に、トランス接続相判定装置101は、a〜c線に対応する相関値に基づいて、トランス1に接続された2つの配電線を判定する。具体的なトランスの接続相の判定例については、図11で後述する。図1の例では、トランス接続相判定装置101がトランス1の接続相をab相であると判定する。
次に、トランス接続相判定装置101は、トランス1配下の需要家で消費した電力値に基づいて、トランス1に接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を算出する。具体的な尤度の算出例は、図12で後述する。図1の例では、トランス接続相判定装置101は、ab相がトランス1に接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度として、L1を算出する。
次に、トランス接続相判定装置101は、算出した尤度が所定の閾値以上であれば、トランス1配下の電力値に基づいて、判定した接続相の各々の配電線に流れた電流値を補正する。所定の閾値は、予め指定された閾値であり、トランス接続相判定装置101の利用者によって指定されたものでもよいし、トランス接続相判定装置101が決定してもよい。また、トランス接続相判定装置101は、トランス1以外のトランスにおける尤度を算出しておき、トランス1以外のトランスにおける尤度を所定の閾値として決定してもよい。
図1の(b)の例では、尤度L1が、所定の閾値以上であるとする。この場合、トランス接続相判定装置101は、ab相がトランス1の接続相であることが正解であるとみなして、需要家が消費した電力値に基づいて、a線、b線に流れた線電流値を補正する。補正後のa線、b線に流れた線電流値は、配電網e内のトランス1以外の他のトランスにとってノイズとなるトランス1に流れる電流の影響を除去してあるため、トランス接続相判定装置101は、他のトランスの接続相の正解率を向上させることができる。
そして、トランス接続相判定装置101は、トランス2に接続された需要家が消費した電力値と、補正後のa線、b線の電流値と、計測したc線の電流値とに基づいて、a〜c線のそれぞれに対応する相関値を算出し、トランス2の接続相を判定する。
(トランス接続相判定システムの構成例)
次に、トランス接続相判定装置101を、配電網上に存在するトランスの接続相を判定するトランス接続相判定システムに適用した場合について説明する。
図2は、トランス接続相判定システム200の構成例を示すブロック図である。図2において、トランス接続相判定システム200は、配電網e上に存在するトランスの接続相を判定するシステムである。トランス接続相判定システム200は、配電網eと、トランス接続相判定装置101とを有する。
配電網eは、変電所suと、センサseと、トランス1〜Kと、需要家c1〜cnとを有する。需要家c1〜cnには、スマートメータを導入した需要家と、スマートメータを導入していない需要家とが混在する。例えば、図2では、需要家c1、c3、cnは、スマートメータを導入しており、需要家c2は、スマートメータを導入していない。スマートメータは、通信機能を有する電力計である。スマートメータは、例えば、スマートメータが導入された需要家である家庭、オフィス、工場などの電力の利用状況をリアルタイムに把握することができる。
変電所suは、電力の流れを制御して、電力を需要家に送り出す。トランス1〜Kは、電磁誘導の作用によって交流電流の電圧を変える変圧器である。以下の説明において、配電網eのうちの変電所suからトランス1〜Kを、「高圧配電網」と呼称する場合がある。また、配電網eのうちのトランス1〜Kからトランス1〜Kのそれぞれに接続する需要家までの部分を「低圧配電網」と呼称する場合がある。センサseは、トランス1〜Kよりも変電所su寄りに設置されており、高圧配電網の電流を計測する。ここで、高圧配電網は、本実施の形態では三相3線、すなわち3本の電線で電力を送るため、センサseは、3本の線電流値をそれぞれを計測する。
トランス接続相判定装置101は、トランス1〜Kの接続相を判定するコンピュータである。また、トランス接続相判定装置101は、a〜c線の線電流をセンサseが計測した値と、需要家が導入したスマートメータが計測した電力値とを取得可能である。次に、図3を用いて、トランス接続相判定装置101のハードウェア構成について説明する。
(トランス接続相判定装置101のハードウェア構成例)
図3は、トランス接続相判定装置101のハードウェア構成例を示すブロック図である。図3において、トランス接続相判定装置101は、CPU(Central Processing Unit)301と、ROM(Read Only Memory)302と、RAM(Random Access Memory)303と、を含む。また、トランス接続相判定装置101は、ディスクドライブ304と、ディスク305と、通信インターフェース306と、を含む。また、トランス接続相判定装置101は、ディスプレイ307と、キーボード308と、マウス309とを含む。また、CPU301〜マウス309はバス310によってそれぞれ接続される。
CPU301は、トランス接続相判定装置101の全体の制御を司る演算処理装置である。ROM302は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶する不揮発性メモリである。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される揮発性メモリである。
ディスクドライブ304は、CPU301の制御に従ってディスク305に対するデータのリードおよびライトを制御する制御装置である。ディスクドライブ304には、例えば、磁気ディスクドライブ、光ディスクドライブ、ソリッドステートドライブなどを採用することができる。
ディスク305は、ディスクドライブ304の制御で書き込まれたデータを記憶する不揮発性メモリである。例えば、ディスクドライブ304が磁気ディスクドライブである場合、ディスク305には、磁気ディスクを採用することができる。また、ディスクドライブ304が光ディスクドライブである場合、ディスク305には、光ディスクを採用することができる。また、ディスクドライブ304がソリッドステートドライブである場合、ディスク305には、半導体素子メモリ、いわゆる半導体ディスクを採用することができる。
通信インターフェース306は、ネットワークと内部のインターフェースを司り、外部装置からのデータの入出力を制御する制御装置である。具体的には、通信インターフェース306は、通信回線を通じてネットワークとなるLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどに接続され、ネットワークを介して他の装置に接続される。通信インターフェース306には、例えば、モデムやLANアダプタなどを採用することができる。
ディスプレイ307は、マウスカーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する装置である。ディスプレイ307には、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)、TFT(Thin Film Transistor)液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
キーボード308は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを有し、データの入力を行う装置である。また、キーボード308は、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。マウス309は、マウスカーソルの移動や範囲選択、あるいはウィンドウの移動やサイズの変更などを行う装置である。マウス309は、ポインティングデバイスとして同様に機能を有するものであれば、トラックボールやジョイスティックなどであってもよい。
(トランス接続相判定装置101の機能的構成例)
図4は、トランス接続相判定装置101の機能的構成例を示すブロック図である。トランス接続相判定装置101は、制御部401と、記憶部402とを有する。制御部401は、相関値算出部411と、判定部412と、尤度算出部413と、判断部414と、補正部415とを含む。制御部401は、記憶装置に記憶されたプログラムをCPU301が実行することにより、制御部401の機能を実現する。記憶装置とは、具体的には、例えば、図3に示したROM302、RAM303、ディスク305などである。また、各部の処理結果は、CPU301が有するレジスタや、RAM303等に記憶される。
また、トランス接続相判定装置101は、記憶部402にアクセス可能である。記憶部402は、RAM303、ディスク305等により実現される。記憶部402は、センサ線電流データ421と、メータ電力データ422と、配電網設備データ423と、トランス配下電力データ424と、補正後センサ線電流データ425とを有する。
センサ線電流データ421は、配電網e内の各線ごとにセンサseにより計測した電流値である。また、センサ線電流データ421は、計測期間を区切った期間に対応して該当の期間における線ごとの電流値であってもよい。ここで、計測期間は、スマートメータで需要家の電力を計測した期間である。センサ線電流データ421の記憶内容の一例については、図5で後述する。
メータ電力データ422は、配電網e内の各需要家に設置されたスマートメータにより需要家で消費された電力を計測した電力値である。また、メータ電力データ422は、計測期間を区切った期間に対応して該当の期間における需要家で消費された電力値であってもよい。メータ電力データ422の記憶内容の一例については、図6で後述する。
配電網設備データ423は、配電網e内の設備に関する情報である。配電網設備データ423の記憶内容の一例については、図7で後述する。トランス配下電力データ424は、メータ電力データ422と、配電網設備データ423とに基づいて作成されたデータであり、各トランス配下の消費電力を示す。トランス配下電力データ424の記憶内容の一例については、図8で後述する。
補正後センサ線電流データ425は、センサ線電流データ421に対して、接続相が既知のトランス配下のうちのスマートメータが導入された需要家の電力がセンサ電流に与える影響を除去したデータである。また、補正後センサ線電流データ425は、計測期間を区切った期間に対応して該当の期間において補正後の線ごとの電流値であってもよい。また、図4では、センサ線電流データ421と補正後センサ線電流データ425とを別にして表す。ここで、トランス接続相判定装置101は、センサ線電流データ421を一つ分用意し、センサ線電流データ421の各フィールドの値を更新していくことにより、補正後センサ線電流データ425を生成してもよい。補正後センサ線電流データ425の記憶内容の一例については、図10で後述する。
相関値算出部411は、トランス配下電力データ424と、センサ線電流データ421または補正後センサ線電流データ425とに基づいて、各々の配電線に対応して電力と線電流との相関を示す相関値を算出する。具体的な算出例は、図11で後述する。
判定部412は、相関値算出部411が算出した各々の配電線に対応する相関値に基づいて、3以上の配電線のうちのトランスに接続された2つの配電線を判定する。具体的な判定例は、図11で後述する。
尤度算出部413は、トランス配下電力データ424に基づいて、判定部412が判定した2つの配電線がトランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を算出する。例えば、尤度算出部413は、あるトランスに接続する需要家が消費した電力値の累積や、あるトランスに接続する需要家が消費した電力値の2乗値を尤度として算出する。トランス配下電力データ424に基づいて尤度を算出する方法としては、図12で後述する第2の尤度算出方法に相当する。
また、尤度算出部413は、各々の配電線に対応する相関値同士の差に基づいて、尤度を算出してもよい。各々の配電線に対応する相関値同士の差に基づいて尤度を算出する例は、図12で後述する第1の尤度算出方法に相当する。
また、図12で後述する第3の尤度算出方法として、相関値算出部411は、計測期間における各々の配電線に対応する電力と線電流との相関を示す相関値を算出するとともに、各期間における各々の配電線に対応する電力と線電流との相関を示す相関値を算出する。次に、判定部412は、算出した計測期間における各々の配電線に対応する相関値に基づきトランスに接続された2つの配電線を判定するとともに、算出した各期間における各々の配電線に対応する相関値に基づきトランスに接続された2つの配電線を判定する。そして、尤度算出部413は、各期間における各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果のうち、計測期間における各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果と一致する結果の数に基づいて、尤度を算出する。
例えば、尤度算出部413は、各期間における各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果のうち、計測期間における各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果と一致する結果の数を、そのまま尤度としてもよい。また、尤度算出部413は、各期間における各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果のうち、計測期間における各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果と一致する結果の数を、期間の数で割った値を尤度としてもよい。
判断部414は、尤度算出部413が算出した尤度が所定の閾値以上か否かを判断する。予め指定された閾値であり、トランス接続相判定装置101の利用者によって指定されたものでもよいし、トランス接続相判定装置101が決定してもよい。
補正部415は、尤度が所定の閾値以上であると判断部414が判断した場合、トランス配下電力データ424に基づいて、判定部412が判定した2つの配電線の各々の配電線に流れた電流値を補正する。具体的な電力の補正の補正例については、図9で後述する。また、補正部415は、補正した電流値を補正後センサ線電流データ425に格納する。
図5は、センサ線電流データ421の記憶内容の一例を示す説明図である。センサ線電流データ421は、検討対象配電網内の各線ごとにセンサにより計測した電流値である。
センサ線電流データ421は、期間と、センサa線電流と、センサb線電流と、センサc線電流というフィールドを含む。期間フィールドは、センサが電流を計測した期間を示す。ここで、実施の形態1〜3における期間は、説明の簡略化のため、1〜Tまでの自然数で表すものとする。従って、実施の形態1〜3における期間フィールドに格納される自然数は、期間を識別する値となる。例えば、期間1は、1月1日の0時00分から0時30分までの期間である。また、期間2は、1月1日の0時30分から1時00分までの期間である。また、期間1〜Tを合わせた期間が、計測期間となる。
センサa線電流フィールドには、a線を流れる電流値が格納される。センサb線電流フィールドには、b線を流れる電流値が格納される。センサc線電流フィールドには、c線を流れる電流値が格納される。
図5に示すセンサ線電流データ421は、レコード501−1〜Tを有する。例えば、レコード501−1は、期間1において、a線に流れる電流値がIa(1)[A]であり、b線に流れる電流値がIb(1)[A]であり、c線に流れる電流値がIc(1)[A]であることを示す。
図6は、メータ電力データ422の記憶内容の一例を示す説明図である。メータ電力データ422は、配電網e内の各需要家に設置されたスマートメータにより需要家が消費した電力を計測した電力値である。図6に示すメータ電力データ422は、レコード601−1〜Tを有する。
メータ電力データ422は、期間と、各需要家における需要家消費電力というフィールドを有する。期間フィールドは、各需要家に設置されたスマートメータが消費電力を計測した期間を示す。各需要家における需要家消費電力フィールドは、期間フィールドにより示される期間において、各需要家が消費した電力値を示す。
例えば、レコード601−1は、期間1において、需要家c1が消費した電力値がP需要家c1(1)であり、需要家c2が消費した電力値がP需要家c2(1)であることを示す。
図7は、配電網設備データ423の記憶内容の一例を示す説明図である。配電網設備データ423は、配電網e内の需要家の受電設備に関する情報である。図7に示す配電網設備データ423は、レコード701−1〜Kを有する。
配電網設備データ423は、トランスIDと、接続相と、トランス配下のスマートメータ導入済み需要家IDと、既知フラグと、というフィールドを含む。トランスIDフィールドには、トランスを識別する情報が格納される。接続相フィールドには、トランスIDで識別されるトランスの接続相を識別する情報が格納される。また、トランスIDで識別されるトランスの接続相が不明である場合、接続相フィールドには、接続相が不明であることを示す“不明”識別子が格納される。トランス配下のスマートメータ導入済み需要家IDフィールドには、トランスIDで識別されるトランス配下のスマートメータ導入済み需要家を識別する情報が格納される。既知フラグフィールドには、トランスIDで識別されるトランスの接続相が既知であるか否かを示すフラグが格納される。具体的には、既知フラグフィールドには、トランスの接続相が既知であることを示す“既知”識別子と、トランスの接続相が未知であることを示す“未知”識別子と、のいずれか一方の識別子が格納される。
例えば、レコード701−1は、トランス1の接続相が既知であってab相であり、トランス1配下の需要家は、需要家c1、需要家c2、…であることを示す。
図8は、トランス配下電力データ424の記憶内容の一例を示す説明図である。トランス配下電力データ424は、メータ電力データ422と、配電網設備データ423とに基づいて作成されたデータであり、各トランス配下の消費電力を示す。具体的には、トランス配下電力データ424は、トランスごとに、該当のトランス配下の需要家の消費電力を累計して作成されたデータである。図8に示すトランス配下電力データ424は、レコード801−1〜Tを有する。
トランス配下電力データ424は、期間と、各トランスにおけるトランス配下電力と、というフィールドを含む。期間フィールドには、期間を識別する値が格納される。各トランスにおけるトランス配下電力フィールドには、期間フィールドに格納された値により特定される期間において、各トランス配下の需要家が消費した電力の累計が格納される。
例えば、レコード801−1は、期間1において、トランス1の配下電力がP1(1)であり、…、トランスKの配下電力がPK(1)であることを示す。ここで、例えば、P1(1)は、期間1における需要家c1が消費した電力と、期間1における需要家c2が消費した電力と、…の累計となる。
図9は、センサ線電流データ421の補正例を示す説明図である。図9では、センサ線電流データ421の補正例として、センサ線電流データ421から、接続相が既知であるトランス配下の電力の影響を除去したデータを生成する例を示す。
トランス接続相判定装置101は、配電網設備データ423の既知フラグフィールドを参照して、接続相が既知であるトランスを特定する。図7に示す配電網設備データ423では、接続相が既知であるトランスはトランス1であるため、図9では、トランス1を例にして説明する。また、図9では、トランス1が、単相3線式のトランスであるとする。
接続相が既知であるトランス1を特定した後、トランス接続相判定装置101は、接続相が既知であるトランス配下電力によって、トランス1の1次側に流れる電流値を下記(9−1)式を用いて算出する。
I1_1(t)=(P1(t)/V)/r …(9−1)
ここで、I1_1(t)は、トランス1の1次側に流れる電流値を示す。また、P1(t)は、トランス1配下電力値を示す。また、Vは、トランス1に対応する配電区間の推定電圧値を示す。例えば、Vは、100[V]である。また、rは、トランス1の変圧比である。例えば、rは、トランス1の1次側の電圧値が6600[V]であり、トランス1の2次側の電圧値が105[V]であれば、r=6600/105となる。
また、トランス接続相判定装置101は、無効電力を考慮して、(9−1)式の代わりに、下記(9−2)式を用いてトランス1の1次側に流れる電流を算出してもよい。
I1_1(t)=(|P1(t)+jQ1(t)|/V)/r …(9−2)
ここで、Q1(t)は、P1(t)を基にした無効電力の推定値である。
次に、トランス接続相判定装置101は、トランス1に流れ込む電流値を、センサ計測地点の電流値に換算して、トランス1が接続されたセンサ線電流データ421から換算した値を減算する。図9の例では、トランス1の接続相は、ab相であるため、トランス接続相判定装置101は、下記(9−3)式、(9−4)式が示すように、a線、b線に対して、トランス1が接続されたセンサ線電流データ421から換算した値を減算する。c線に対しては、トランス1が接続されていないため、トランス接続相判定装置101は、補正を行わない。
I’a(t)=Ia(t)−I1_1(t)×(√3)/2 (9−3)
I’b(t)=Ib(t)−I1_1(t)×(√3)/2 (9−4)
ここで、I’a(t)、I’b(t)は、それぞれ、a線、b線の補正後のセンサ線電流データ421である。図9の例では、接続相が既知であるトランスが1つであったが、接続相が既知であるトランスが複数ある場合、トランス接続相判定装置101は、接続相が既知であるトランスの個数回、センサ線電流データの補正を行う。
図10は、補正後センサ線電流データ425の記憶内容の一例を示す説明図である。補正後センサ線電流データ425は、センサ線電流データ421に対して、接続相が既知のトランス配下のうちのスマートメータが導入された需要家の電力がセンサ電流に与える影響を除去したデータである。図10に示す補正後センサ線電流データ425は、レコード1001−1〜Tを有する。補正後センサ線電流データ425が有するフィールドは、センサ線電流データ421と同一であるため、説明を省略する。
例えば、レコード1001−1は、期間1において、a線に流れる補正後の電流値がI’a(1)[A]であり、b線に流れる補正後の電流値がI’b(1)[A]であり、c線に流れる補正後の電流値がI’c(1)[A]であることを示す。
図11は、接続相の判定例を示す説明図である。図11では、a、b、c線それぞれの補正後の電流値と、接続相が未知であるトランス2の配下電力とから、トランス2の接続相を判定する。
図11では、I’a、I’b、I’cそれぞれの時刻と電流との関係を、グラフ1101−I’a、1101−I’b、1101−I’cで示す。また、図11では、P2の時刻と電力との関係を、グラフ1101−P2で示す。
トランス接続相判定装置101は、トランスkの接続相を、I’a、I’b、I’cそれぞれと、トランスkの配下電力Pkとの相関係数ρ_Pk_I’a、ρ_Pk_I’b、ρ_Pk_I’cをそれぞれ算出し、相関が最も小さい値から、接続相を判定する。ここで、kは、1からKまでの自然数である。具体的には、トランス接続相判定装置101は、下記(11−1)式〜(11−3)式のうち、条件を満たした式に対応する相を接続相として判定する。
ρ_Pk_I’c≦ρ_Pk_I’a、かつρ_Pk_I’c≦ρ_Pk_I’b …(11−1)
ρ_Pk_I’a≦ρ_Pk_I’b、かつρ_Pk_I’a≦ρ_Pk_I’c …(11−2)
ρ_Pk_I’b≦ρ_Pk_I’c、かつρ_Pk_I’b≦ρ_Pk_I’a …(11−3)
(11−1)式を満たす場合、トランス接続相判定装置101は、接続相をab相として判定する。また、(11−2)式を満たす場合、トランス接続相判定装置101は、接続相をbc相として判定する。また、(11−3)式を満たす場合、トランス接続相判定装置101は、接続相をca相として判定する。
トランス接続相判定装置101は、相関係数ρ_Pk_I’xについて、下記(11−4)式を用いて算出する。ここで、xは、a、b、cのいずれかである。
ここで、I’avgxは、I’xの平均値である。トランス接続相判定装置101は、I’avgxを、下記(11−5)式を用いて算出する。また、Pavgkは、Pkの平均値である。トランス接続相判定装置101は、Pavgkを、下記(11−6)式を用いて算出する。
(11−4)式は、トランスk配下でスマートメータ導入済み需要家の合計電力Pkと、センサ電流I’a、I’b、I’cの相関の強さの違いを分析して、接続相を判定する手法を数式として示したものである。なお、トランス接続相判定装置101は、(11−4)式を実行する前に、Pk、I’a、I’b、I’cに関してデジタルフィルタの適用等の前処理を適用してもよい。
図11の例では、トランス接続相判定装置101は、(11−1)式を満たすと判断し、トランス2の接続相をab相として判定する。
次に、尤度の算出方法について説明する。尤度の算出方法として、本実施の形態では、第1の尤度算出方法〜第3の尤度算出方法という、3つの算出方法を示す。第1の尤度算出方法は、接続相の判定に用いた相関係数を用いて尤度を算出する方法である。第1の尤度算出方法については、図12を用いて説明する。第2の尤度算出方法は、トランス配下電力のスペクトルの大きさから尤度を算出する方法である。第3の尤度算出方法は、全てのデータを用いて算出した接続相と、一部のデータを用いて算出した接続相との関係から尤度を算出する方法である。第2の尤度算出方法および第3の尤度算出方法については、第1の尤度算出方法の説明後に説明する。
(第1の尤度算出方法)
図12は、第1の尤度算出方法を示す説明図である。トランス接続相判定装置101は、(12−1−1)式を用いて、トランスkの尤度Lkを算出する。
Lk=median(ρ_Pk_I’a,ρ_Pk_I’b,ρ_Pk_I’c)−min(ρ_Pk_I’a,ρ_Pk_I’b,ρ_Pk_I’c) …(12−1−1)
ここで、median()は、引数で与えられた値のうち中央値を出力する関数である。また、min()は、引数で与えられた値のうち最小値を出力する関数である。(12−1−1)式が尤度を示す理由として、図11で説明した接続相の判定は、ρ_Pk_I’a、ρ_Pk_I’b、ρ_Pk_I’cのうち最小値がどれかによって接続相を判定する。従って、最小の相関係数と2番目に小さい相関係数の差が大きければ、少しのノイズでも判定結果が変わらないことになり、接続相判定結果の尤度が大きいと言える。
より具体的には、図12では、図12の(a)が示すグラフ1201と、図12の(b)が示すグラフ1202とを用いて、尤度の大きさを示す。グラフ1201、1202ともに、ρ_Pk_I’a、ρ_Pk_I’b、ρ_Pk_I’cの相関係数を示す。
グラフ1201の例では、最小の相関係数ρ_Pk_I’aと、ρ_Pk_I’bとの差が大きいため、多少ノイズが入っていたとしても、判定結果はab相のままとなるため、尤度Lkは大きくなる。
これに対し、グラフ1202の例では、最小の相関係数ρ_Pk_I’aと、ρ_Pk_I’bとの差が小さいため、ノイズの程度によっては、真の最小値がρ_Pk_I’bであった可能性がある。ここで、真の最小値とは、無限のデータが得られた場合に判明する相関係数の最小値のことである。従って、判定結果はab相ではあるが、ρ_Pk_I’bである結果、真の接続相は、ca相である可能性を含むため、尤度Lkは小さくなる。
また、トランス接続相判定装置101は、(12−1−1)式の代わりに、下記(12−1−2)式を用いてトランスkの尤度Lkを算出してもよい。
Lk=(max(ρ_Pk_I’a,ρ_Pk_I’b,ρ_Pk_I’c)+median(ρ_Pk_I’a,ρ_Pk_I’b,ρ_Pk_I’c))/2−min(ρ_Pk_I’a,ρ_Pk_I’b,ρ_Pk_I’c) …(12−1−2)
ここで、max()は、引数で与えられた値のうち最大値を出力する関数である。図12の(c)は、図7に示した配電網設備データ423における接続相が未知のトランスごとに、判定結果と尤度とを纏めた一覧を、表1203として示す。表1203は、レコード1203−2、…、Tを有する。例えば、レコード1203−2は、トランス2の接続相の判定結果がab相であり、尤度が0.05であることを示す。接続相が既知のトランス1に関しては、接続相の判定を行わないため、表1203には存在しない。
(第2の尤度算出方法)
第2の尤度算出方法として、トランス接続相判定装置101は、トランス配下電力のスペクトルの大きさから尤度を算出する。具体的には、トランス接続相判定装置101は、トランス配下電力が大きい場合、ノイズに対する信号の強度が高くなり、尤度が高くなると言えることを利用し、下記(12−2−1)式または下記(12−2−2)式を用いて尤度Lkを算出する。
また、接続相の判定の際にデジタルフィルタを適用した場合、デジタルフィルタによってカットされる周波数成分は接続相の判定に影響しない。従って、接続相の判定の際にデジタルフィルタを適用した場合には、尤度の算出にもデジタルフィルタによってカットされる周波数成分を除いて算出することにより、精度を向上させることができる。具体的には、トランス接続相判定装置101は、下記(12−2−3)式を用いて尤度Lkを算出する。
ここで、Fは,デジタルフィルタによってカットされない周波数の集合を示す。また、F(Pk)(f)は、Pk(t)の離散フーリエ変換である。具体的には、F(Pk)(f)は、下記(12−2−4)式を用いて表される。
(第3の尤度算出方法)
第3の尤度算出方法として、トランス接続相判定装置101は、全てのデータを用いて算出した接続相と、一部のデータを用いて算出した接続相との関係から尤度を算出する。具体的には、トランス接続相判定装置101は、全てのデータを用いて判定した接続相が、同じトランスの他のデータ集合を用いて判定した接続相と同一であれば、尤度が高くなると言えることを利用し、下記(12−3−1)式を用いて尤度Lkを算出する。
Lk=(データ集合の中で、全データを使用して求めた接続相と同じ相判定結果を出した回数)/(データ集合の数) …(12−3−1)
以下に、(12−3−1)式を用いた具体的な例について説明する。トランスkについて、期間1、…、Tのデータを用いて求めた接続相をphase(1〜T,k)とする。ここではトランス接続相判定装置101は、仮にphase(1〜T,k)=abを得たとする。
次に、トランス接続相判定装置101は、計測期間1、…、Tのデータから、n0組のデータを生成する。例えば、T=10000で、n0を1000とした場合、トランス接続相判定装置101は、下記10組のデータを生成する。
1組目…期間1〜1000のデータ
2組目…期間1001〜2000のデータ
…
10組目…期間9001〜10000のデータ
次に、トランス接続相判定装置101は、n0組のデータそれぞれに対して接続相判定を行い、phase(1〜1000,k)、・・・、phase(9001〜10000,k)を求める。次に、トランス接続相判定装置101は、phase(1〜1000,k)、・・・、phase(9001〜10000,k)のうち、ab相と判定された数をNum(ab)とする。そして、トランス接続相判定装置101は、(12−3−1)式を用いて、以下のように算出する。
Lk=Num(ab)/10
尤度を算出した後、トランス接続相判定装置101は、尤度の大きさを用いて、接続相の判定結果が正解か否かを判定する。具体的な判定例について、図13を用いて説明する。
図13は、接続相の判定結果の正誤を判定する一例を示す説明図である。トランス接続相判定装置101は、接続相の判定結果の正誤判定として、尤度がシミュレーションの結果から得た閾値以上であれば、接続相の判定結果を正解として判定する。ここで、シミュレーションは、トランスの接続相が既知であるものに対して、図11で示した接続相の判定を行うとともに、第1の尤度算出方法〜第3の尤度算出方法のうちのいずれかにより尤度を算出したものである。図13の(a)で示すグラフ1301は、シミュレーションによる尤度と接続相の判定結果の正誤との関係を示す。グラフ1301の横軸は、尤度を示す。縦軸は、接続相の判定が既知である接続相と一致すれば正解を示す1をとり、接続相の判定が既知である接続相と不一致であれば不正解を示す0をとるダミー変数である。グラフ1301内の白抜きの菱型でプロットした点の1つが、1つのトランスに対してプロットしたものである。
グラフ1301を参照すると、尤度が0.01未満では、正解と不正解が混在するのに対し、尤度が0.01以上では、正解のみ存在することがわかる。トランス接続相判定装置101は、グラフ1301の各プロット点に基づいて、閾値を指定する。例えば、トランス接続相判定装置101は、グラフ1301をディスプレイ307に表示して、グラフ1301を閲覧したトランス接続相判定装置101の利用者の操作により受け付けた値を、閾値として指定してもよい。また、トランス接続相判定装置101は、不正解となった尤度のうちの最大値に対して、所定値を加えた値を、閾値として指定してもよい。図13の例では、閾値が0.02に指定されたとする。トランス接続相判定装置101は、尤度が指定された閾値以上であれば、接続相の判定結果を正解として、配電網設備データ423を更新する。なお、シミュレーションによる尤度の算出方法と、接続相の判定結果に対する尤度の算出方法とは、同一のものとする。
図13の(b)は、図12の(c)の表1203で示した接続相の判定結果と、閾値=0.02とを比較して、配電網設備データ423を更新した例である。表1203を参照すると、トランス2、Kにおいて、尤度が閾値以上であるため、トランス接続相判定装置101は、レコード701−2、Kの接続相フィールドの値をそれぞれ、ab相、ca相に更新する。
トランス接続相判定装置101は、新しく正解とみなしたトランスがあれば、図9で示した、センサ線電流データ421を補正した結果である補正後センサ線電流データ425を用いて接続相を判定し、接続相の判定結果の尤度を算出する。新しく正解とみなしたトランスがない場合、センサ線電流データ421を補正することができず、これ以上正解とみなせるトランスが現れないため、接続相の判定を終了する。
次に、図14、15を用いて、トランス接続相判定装置101が実行するフローチャートについて説明する。
図14は、配電網内トランス接続相判定処理手順の一例を示すフローチャートである。配電網内トランス接続相判定処理は、配電網e内のトランスの接続相を判定する処理である。トランス接続相判定装置101は、センサ線電流データ421を取得する(ステップS1401)。次に、トランス接続相判定装置101は、トランス配下電力データ424を取得する(ステップS1402)。次に、トランス接続相判定装置101は、センサ線電流データ421から、接続相が既知であるトランス配下の電力の影響を除いた補正後のセンサ線電流データを算出する(ステップS1403)。補正後のセンサ線電流データは、補正後センサ線電流データ425に格納される。また、ステップS1403において、2回目以降の処理においては、センサ線電流データ421から、接続相が既知であると判定されたトランス配下の電力の影響を除いた補正後のセンサ線電流データを算出し、補正後センサ線電流データ425に格納する。
次に、トランス接続相判定装置101は、トランス接続相判定および尤度算出処理を実行する(ステップS1404)。トランス接続相判定および尤度算出処理については、図15で後述する。
次に、トランス接続相判定装置101は、接続相が正解とみなせるトランスがあるか否かを判断する(ステップS1405)。接続相が正解とみなせるトランスがある場合(ステップS1405:Yes)、トランス接続相判定装置101は、接続相が正解とみなせるトランスを、接続相を既知とするトランスに決定する(ステップS1406)。次に、トランス接続相判定装置101は、配電網設備データ423のうちの、接続相を既知としたトランスの接続相を更新する(ステップS1407)。そして、トランス接続相判定装置101は、ステップS1403の処理に移行する。
接続相が正解とみなせるトランスがない場合(ステップS1405:No)、トランス接続相判定装置101は、配電網内トランス接続相判定処理を終了する。配電網内トランス接続相判定処理を実行することにより、トランス接続相判定装置101は、他トランスのノイズを除去してトランスの接続相を判断することができる。
図15は、トランス接続相判定および尤度算出処理手順の一例を示すフローチャートである。トランス接続相判定および尤度算出処理は、トランスの接続を判定するとともに、判定結果の尤度を算出する処理である。トランス接続相判定装置101は、配電網設備データ423のうちの、接続相が不明であり、接続相の判定をまだ行っていないトランスkを選択する(ステップS1501)。次に、トランス接続相判定装置101は、相関係数ρ_Pk_I’a、ρ_Pk_I’b、ρ_Pk_I’cを算出する(ステップS1502)。次に、トランス接続相判定装置101は、算出した相関係数のうち、ρ_Pk_I’aが最小か否かを判断する(ステップS1503)。ρ_Pk_I’aが最小である場合(ステップS1503:Yes)、トランス接続相判定装置101は、接続相をbc相に判定する(ステップS1504)。
一方、トランス接続相判定装置101は、ρ_Pk_I’aが最小でない場合(ステップS1503:No)、トランス接続相判定装置101は、算出した相関係数のうち、ρ_Pk_I’bが最小か否かを判断する(ステップS1505)。ρ_Pk_I’bが最小である場合(ステップS1505:Yes)、トランス接続相判定装置101は、接続相をca相に判定する(ステップS1506)。
一方、ρ_Pk_I’bが最小でない場合(ステップS1505:No)、トランス接続相判定装置101は、接続相をab相に判定する(ステップS1507)。
ステップS1504、ステップS1506、ステップS1507のうちのいずれかの処理を実行後、トランス接続相判定装置101は、尤度を算出する(ステップS1508)。次に、トランス接続相判定装置101は、接続相が不明なトランス全てを選択したか否かを判断する(ステップS1509)。接続相が不明なトランスのうち選択していないトランスがある場合(ステップS1509:No)、トランス接続相判定装置101は、ステップS1502に移行する。接続相が不明なトランス全てを選択した場合(ステップS1509:Yes)、トランス接続相判定装置101は、トランス接続相判定および尤度算出処理を終了する。トランス接続相判定および尤度算出処理を実行することにより、トランス接続相判定装置101は、トランスの接続相と接続相に対する尤度を得ることができる。
以上説明したように、トランス接続相判定装置101によれば、3以上の線電流とトランス配下の電力の相関から判定したトランスの接続相の尤度が閾値以上であれば、トランス配下の電力から線電流を補正して他トランスの接続相を判定する。これにより、トランス接続相判定装置101は、トランスの接続相判定に不要なノイズを除去できるため、配電網e内のトランスの接続相の判定精度を向上させることができる。また、トランス接続相判定装置101は、トランスに接続された電力消費源における消費電力の情報の一部があれば、トランスの接続相を推定することができる。従って、トランス接続相判定装置101は、トランスに接続された電力消費源における消費電力の情報全てを用意しなくてよいため、トランス接続相判定装置101は、トランスの接続相を効率的に判定することができる。
また、トランス接続相判定装置101によれば、各々の配電線に対応する相関値同士の差に基づいて、尤度を算出してもよい。相関値同士の差が大きければ大きいほど、ノイズが入っても接続相の判定結果が変わらないことになるため、トランス接続相判定装置101は、より尤もらしい接続相の判定結果の尤度を大きい値で出力することができる。
また、トランス接続相判定装置101によれば、各期間における各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果のうち、計測期間における各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果と一致する結果の数に基づいて、尤度を算出してもよい。これにより、トランス接続相判定装置101は、各期間におけるトランスの接続相が、計測期間におけるトランスの接続相と一致するほど、尤度を大きくすることができる。
また、トランス接続相判定装置101は、第1の尤度算出方法〜第3の尤度算出方法を組み合わせてもよい。例えば、トランス接続相判定装置101は、第1の尤度算出方法により算出された尤度が正解とみなせるトランスがない場合に、第2の尤度算出方法や第3の尤度算出方法により、尤度を算出してもよい。また、トランス接続相判定装置101は、第1の尤度算出方法〜第3の尤度算出方法をそれぞれ行い、それぞれの尤度算出方法により判定したトランスの接続相の一覧それぞれを出力してもよい。トランス接続相判定装置101の利用者は、トランスの接続相の一覧それぞれを閲覧し、一覧のそれぞれの中で、接続相が共通するトランスの接続相は正解とみなし、接続相が異なるトランスの接続相は不正解として、人手による確認を行ってもよい。
(実施の形態2)
実施の形態1にかかるトランス接続相判定装置101では、尤度が大きければ大きいほど、トランス接続相が正解しやすいことがわかるが、尤度がどの程度大きければ、どの程度の正解率かといった情報は含まれていない。そこで、実施の形態2にかかるトランス接続相判定装置では、尤度の大きさと正解率の対応を表す回帰モデルを作成して、作成した回帰モデルから尤度の正誤に用いる閾値を決定する。なお、実施の形態1において説明した箇所と同様の箇所については、同一符号を付して図示および説明を省略する。
(トランス接続相判定装置1601の機能的構成例)
図16は、トランス接続相判定装置1601の機能的構成例を示すブロック図である。図16において、トランス接続相判定装置1601は、制御部1602と、記憶部402とを有する。制御部1602は、相関値算出部411と、判定部412と、尤度算出部413と、判断部1611と、補正部1612とを含む。制御部1602は、記憶装置に記憶されたプログラムをCPU301が実行することにより、制御部1602の機能を実現する。記憶装置とは、具体的には、例えば、図3に示したROM302、RAM303、ディスク305などである。また、各部の処理結果は、CPU301が有するレジスタや、RAM303等に記憶される。
判断部1611は、次に示す関数に、算出した前記尤度を入力して得られる確率値が所定値以上であるか否かを判断する。ここで、関数は、3以上の配電線のうちのいずれか2つの配電線がトランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を用いて2つの配電線が前述のトランスに接続された配電線である確率を表す関数である。また、前述の関数は、回帰モデルにより作成される。回帰モデルにより作成された関数の一例については、図17で後述する。
補正部1612は、前述の関数に尤度を入力して得た確率値が所定値以上であると判断部1611が判断した場合、トランス配下電力データ424に基づいて、判定部412が判定した2つの配電線の各々の配電線に流れる線電流値を補正する。
図17は、回帰モデルにより作成された関数の一例を示す説明図である。トランス接続相判定装置1601は、回帰モデルを作成して、閾値を決定する。実施の形態2では、回帰モデルを、ロジスティックモデルによって求める。ロジスティックモデルは、下記(17−1)式で与えられる。
ここで、Lは、尤度を示す。また、yは、正解率を示す。また、β0とβ1とは、最尤法等で推定するパラメータである。また、εは、誤差を示す確率変数である。(17−1)式で示したロジスティックモデルに対し、図13の(a)で示したグラフ1301内の菱型でプロットした、接続相の判定が既知であるトランスの尤度と、ダミー変数とから、β0とβ1とを推定して生成した関数を図示したのが、グラフ1701における実線1702である。
グラフ1701は、尤度と判定結果の正解率との関係を表すグラフである。グラフ1701の横軸は、尤度を示す。グラフ1701の縦軸は、正解率を示す。また、グラフ1701内でプロットした点は、グラフ1301内の白抜きの菱型でプロットしたものを示す。
ロジスティックモデルを用いる場合、トランス接続相判定装置1601の利用者は、正解とする所定値を予め指定する。図17の例では、所定値が0.99に指定されたものとする。トランス接続相判定装置1601は、β0とβ1とを推定した(17−1)式に対して、Lに図12で説明した方法により算出した尤度を代入し、得た値がy=0.99以上であれば接続相の判定結果を正解とする。
以上説明したように、トランス接続相判定装置1601によれば、ロジスティックモデルにより作成された関数に、算出した尤度を入力して得られる確率値が所定値以上であれば、線電流値を補正してもよい。実施の形態1における所定の閾値は、尤度に応じて指定される。ここで、尤度は、尤度の算出方法に応じて大きく変わるものであり、トランス接続相判定装置101の利用者は、尤度に応じて所定の閾値を決定することになるため、所定の閾値を指定することが難しい。例えば、第2の尤度算出方法は、トランス配下電力のスペクトルの大きさから尤度を算出する方法であるが、トランス配下の電力の大きさによって尤度がとりうる値が大きく変わることになる。また、第1の尤度算出方法〜第3の尤度算出方法のうちの複数の尤度算出方法を利用する際は、所定の閾値は、各尤度算出方法によって変わるため、トランス接続相判定装置101の利用者は、利用する尤度算出方法ごとに所定の閾値を決定することになる。
これに対し、確率値は、0から1までの間であるから、トランス接続相判定装置1601の利用者は、所定値を指定することが、所定の閾値を指定するより容易に行える。また、第1の尤度算出方法〜第3の尤度算出方法のうちの複数の尤度算出方法を利用する場合にも、トランス接続相判定装置1601の利用者は、所定値一つを指定すればよい。
(実施の形態3)
実施の形態1にかかるトランス接続相判定装置101は、尤度が予め指定された閾値以上であれば、正解とみなす。ここで、指定された閾値は、グラフ1301の各プロット点に基づいて指定される。ここで、接続相の正解が既知であるトランスが少ない場合、プロットした点が少なくなる。従って、例えば、トランス接続相判定装置101の利用者により閾値を指定する場合、グラフ1301のプロット点の密度が粗くなるため、トランス接続相判定装置101の利用者は、閾値の指定が困難になる。また、例えば、不正解となった尤度のうちの最大値に所定値を加えた値を閾値とする場合、不正解であるにも関わらず正解であると判定してしまう可能性が高くなり、正解率の判定精度が低下する。
また、実施の形態2にかかるトランス接続相判定装置1601は、接続相の判定が既知であるトランスの尤度と、ダミー変数とから関数を生成する。従って、接続相の正解が既知であるトランスが少ない場合、生成される関数における正解率の判定精度が低下する。そこで、実施の形態3にかかるトランス接続相判定装置は、接続相の正解が既知であるトランスを増やす。なお、実施の形態1において説明した箇所と同様の箇所については、同一符号を付して図示および説明を省略する。
(トランス接続相判定装置1801の機能的構成例)
図18は、トランス接続相判定装置1801の機能的構成例を示すブロック図である。実施の形態3にかかるトランス接続相判定装置1801は、制御部1802と、記憶部402とを有する。制御部1802は、補正部415と、接続相仮決定部1811と、線電流算出部1812と、相関値算出部1813と、判定部1814と、尤度算出部1815と、対応付け部1816と、閾値決定部1817と、作成部1818と、判断部1819とを含む。制御部1802は、記憶装置に記憶されたプログラムをCPU301が実行することにより、制御部1802の機能を実現する。記憶装置とは、具体的には、例えば、図3に示したROM302、RAM303、ディスク305などである。また、各部の処理結果は、CPU301が有するレジスタや、RAM303等に記憶される。
接続相仮決定部1811は、複数のトランスの各々のトランスに対応して、3以上の配電線のうちの各々のトランスに接続された2つの配電線をランダムに決定する。2つの配電線をランダムに決定する例については、図20で示す。
線電流算出部1812は、各々のトランスにおける電力値と、決定した各々のトランスに対応する2つの配電線とに基づいて、各々のトランスに対応する2つの配電線が各々のトランスに接続されている場合の各々の配電線に流れる線電流値を算出する。各々のトランスにおける電力値は、各々のトランスに接続された電力消費源で消費された電力値である。具体的には、線電流算出部1812は、潮流計算により線電流値を算出する。潮流計算により線電流値を算出した結果の一例は、図21で示す。
相関値算出部1813は、各々のトランスにおける電力値と、線電流算出部1812が算出した各々の配電線に流れる線電流値とに基づいて、各々のトランスにおける各々の配電線に対応する相関値を算出する。相関値の算出方法は、相関値算出部1813が算出する際の引数となる電流値が、線電流算出部1812が算出した各々の配電線に流れる線電流値に置き換わるだけであり、実質同一である。
判定部1814は、相関値算出部1813が算出した各々の配電線に対応する相関値に基づいて、3以上の配電線のうちの各々のトランスに接続された2つの配電線を判定する。具体的な判定方法は、判定部1814が判定する際の相関値が、相関値算出部1813が算出した各々の配電線に対応する相関値に置き換わるだけであり、実質同一である。
尤度算出部1815は、各々のトランスにおける電力値に基づいて、判定部1814が判定した2つの配電線が各々のトランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を算出する。尤度の算出例は、図12で示した第1の尤度算出方法〜第3の尤度算出方法のうちのいずれであってもよい。
対応付け部1816は、接続相仮決定部1811が決定した各々のトランスに対応する2つの配電線と、判定部1814が判定した各々のトランスに接続された2つの配電線と、尤度算出部1815が算出した各々のトランスにおける尤度とを対応付けて出力する。対応付けた一例は、図22で示す。
閾値決定部1817は、接続相仮決定部1811が決定した各々のトランスに対応する2つの配電線と判定部1814が判定した各々のトランスに接続された2つの配電線とを比較する。そして、閾値決定部1817は、比較した比較結果と尤度算出部1815が算出した各々のトランスにおける尤度とに基づいて、所定の閾値を決定する。
例えば、接続相仮決定部1811が決定した各々のトランスに対応する2つの配電線と判定部1814が判定した各々のトランスに接続された2つの配電線との比較結果が一致を示したとする。このとき、閾値決定部1817は、所定の閾値を、尤度算出部1815が算出した各々のトランスにおける尤度に決定する。
また、接続相仮決定部1811が決定した各々のトランスに対応する2つの配電線と判定部1814が判定した各々のトランスに接続された2つの配電線との比較結果が一致しなかったことを示したとする。このとき、閾値決定部1817は、所定の閾値を、尤度算出部1815が算出した各々のトランスにおける尤度より大きい値に決定する。
トランス接続相判定装置1801は、閾値決定部1817の代わりに作成部1818を設けてもよい。作成部1818は、接続相仮決定部1811が決定した各々のトランスに対応する2つの配電線と判定部1814が判定した各々のトランスに接続された2つの配電線とを比較する。そして、作成部1818は、比較結果と、尤度算出部1815が算出した各々のトランスにおける尤度とに基づいて、関数を作成する。関数は、3以上の配電線のうちのいずれか2つの配電線がトランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を用いて2つの配電線が前述のトランスに接続された配電線である確率を表す関数である。
以下、実施の形態3の具体例を説明する。以下の説明では、説明の簡略化のため、配電網eには、K=3として、トランス1、2、3という、3つのトランスがあるものとする。そして、3つのトランスの接続相は未知であるとする。また、トランス1配下には需要家c1〜c10が接続されており、トランス2配下には需要家c11〜c20が接続されており、トランス3配下には需要家c21〜c30が接続される。このように、トランス1〜3にはそれぞれ10軒の需要家が存在するものとする。また、10軒のうちの5軒がスマートメータを導入したとする。図19では、前述の仮定に従った際のトランス配下電力データの記憶内容の一例を示す。
図19は、トランス配下電力データ1901の記憶内容の一例を示す説明図である。トランス配下電力データ1901は、期間フィールドと、トランス1配下電力フィールド〜トランス3配下電力フィールドを有する。期間フィールドと、トランス1配下電力フィールド〜トランス3配下電力フィールドとには、図8に示したトランス配下電力データ424と同名のフィールドと同内容の情報が格納される。また、トランス配下電力データ1901は、レコード1901−1〜Tを有する。
例えば、レコード1901−1は、期間1において、トランス1の配下電力がP1(1)であり、トランス2の配下電力がP2(1)であり、トランス3の配下電力がP3(1)であることを示す。
まず、トランス接続相判定装置1801は、トランス1〜3の接続相をランダムに仮決めする。図20では、仮決めした接続相の結果の一覧を示す。
図20は、仮決め接続相の結果の一例を示す説明図である。表2001は、トランスごとに仮決めした接続相の一覧を示す。図20に示す表2001は、レコード2001−1〜3を有する。例えば、レコード2001−1は、トランス1の仮決め接続相がbc相であることを示す。
次に、トランス接続相判定装置1801は、仮決め接続相と、トランス配下電力データ1901または標準的な電力データとに基づいて、接続相が仮に決定したものである場合に計測されるセンサ線電流データを算出する。具体的には、トランス接続相判定装置1801は、需要家c1〜c30が消費した電力を決定する。需要家c1〜c30のうちのスマートメータを導入済みの需要家が消費した電力について、トランス接続相判定装置1801は、図6に示したメータ電力データ422をそのまま用いる。一方、スマートメータを導入していない需要家が消費した電力について、トランス接続相判定装置1801は、一般的な電力需要モデルを用いてもよいし、配電網eとは別の配電網に存在するスマートメータを導入済みの需要家のメータ電力データ422を用いてもよい。
次に、トランス接続相判定装置1801は、需要家c1〜c30の電力値と、配電線のインピーダンス情報などを元に潮流計算と呼ばれる回路計算により、センサseが設置された地点の電流値を求める。潮流計算の具体例については、例えば、下記参考文献1に記載される。図21に、求めた電流値の一例を示す。
(参考文献1:MATLAB サンプルモデル 解説書、[平成26年1月29日検索]、インターネット<URL:http://www.mathworks.com/tagteam/58296_56709_TA063_Current_analysis_in_electric_power_system_engineering.pdf>)
図21は、仮決め接続相に基づく仮決めセンサ線電流データの一例を示す説明図である。図21に示す表2101は、仮決め接続相に基づく仮決めセンサ線電流データの一例を示す。表2101は、期間における配電線に流れる線電流値の一覧を示す。図21に示す表2101は、レコード2101−1〜Tを有する。例えば、レコード2101−1は、期間1において、a線に流れる電流値がIa_calc(1)であり、b線に流れる電流値がIb_calc(1)であり、c線に流れる電流値がIc_calc(1)であることを示す。
次に、トランス接続相判定装置1801は、図19に示したトランス配下電力データ1901と、図21に示した仮決めセンサ線電流データとに基づいて、接続相を判定するとともに、接続相の尤度を算出する。接続相の判定方法は、図11で説明した方法である。また、接続相の尤度の算出方法は、第1の尤度算出方法〜第3の尤度算出方法のいずれであってもよい。図22に、仮決め接続相の判定結果と、尤度との一例を示す。
図22は、仮決め接続相の判定結果と尤度との一例を示す説明図である。図22の(a)に示す表2201は、トランスごとの仮決め接続相の判定結果と尤度とを示す。表2201は、レコード2201−1〜3を有する。例えば、レコード2201−1は、トランス1の接続相の判定結果がbc相であり、尤度が0.1であることを示す。
また、図22の(b)に示す表2202は、トランスごとに、仮決め接続相と、仮決め接続相の判定結果と尤度とを対応付けた結果を示す。表2202は、レコード2202−1〜3を有する。例えば、レコード2202−1は、トランス1の仮決め接続相がbc相であり、判定結果がbc相であり、尤度が0.1であることを示す。従って、トランス接続相判定装置1801は、トランス1において、仮決め接続相と判定結果とが一致するため、判定結果が正解であると判定する。同様に、トランス接続相判定装置1801は、トランス2において、仮決め接続相と判定結果とが一致するため、判定結果が正解であると判定するとともに、トランス3において、仮決め接続相と判定結果とが一致しないため、判定結果が不正解であると判定する。
このように、図19〜図22に説明した処理を行うことにより、グラフ1301にプロットできる点を増やすことができる。図19〜図22の例では、点を3つ増やすことができる。次に、図19〜図22に説明した処理を行うフローチャートを、図23を用いて説明する。
図23は、尤度に対する接続相判定結果作成処理手順の一例を示すフローチャートである。尤度に対する接続相判定結果作成処理は、尤度に対する接続相の判定結果を作成する処理である。トランス接続相判定装置1801は、配電網設備データ423のうちの接続相が不明のトランスについて、接続相をランダムに仮に決定する(ステップS2301)。次に、トランス接続相判定装置1801は、仮に決定した接続相と、トランス配下電力データ1901から、接続相が仮に決定したものである場合の線電流値を潮流計算を用いて算出する(ステップS2302)。次に、トランス接続相判定装置1801は、トランス配下電力データ1901と、算出した線電流値とから、接続相を判定する(ステップS2303)。ステップS2303の処理について、トランス接続相判定装置1801は、トランス配下電力データ1901と、算出した線電流値とから、相関値を算出する。そして、トランス接続相判定装置1801は、相関値を用いて接続相を判定する。
次に、トランス接続相判定装置1801は、尤度を算出する(ステップS2304)。続けて、トランス接続相判定装置1801は、仮に決定した接続相と、判定した接続相と、算出した尤度とを対応付ける(ステップS2305)。
ステップS2305の処理終了後、トランス接続相判定装置1801は、対応付けた仮に決定した接続相と、判定した接続相と、算出した尤度とを出力してもよい。または、トランス接続相判定装置1801は、対応付けた仮に決定した接続相と、判定した接続相とから、判定結果が正解か否かを判定して、判定結果と算出した尤度とから、所定の閾値を決定してもよい。所定の閾値を決定する際には、トランス接続相判定装置1801は、判定結果と算出した尤度と、図13で示した接続相が既知であるトランスの判定結果とを用いて、所定の閾値を決定してもよい。または、トランス接続相判定装置1801は、対応付けた仮に決定した接続相と、判定した接続相とから、判定結果が正解か否かを判定して、判定結果と算出した尤度とから、ロジスティックモデルにより関数を作成してもよい。関数を作成する際には、トランス接続相判定装置1801は、判定結果と算出した尤度と、図13で示した接続相が既知であるトランスの判定結果とを用いて、関数を作成してもよい。
ステップS2305の処理終了後、トランス接続相判定装置1801は、尤度に対する接続相判定結果作成処理を終了する。尤度に対する接続相判定結果作成処理を実行することにより、トランス接続相判定装置1801は、尤度に対する接続相判定結果が少なくても、尤度に対する接続相判定結果を増やすことができ、適切な所定の閾値を決定することができ、また、精度の高い関数を作成することができる。
以上説明したように、トランス接続相判定装置1801によれば、仮に決定した接続相から線電流値を算出して、実施の形態1で示した方法により接続相の判定と尤度とを算出して、仮に決定した接続相と、判定した接続相と、算出した尤度とを対応付ける。これにより、トランス接続相判定装置1801の利用者は、接続相の正解が既知であるトランスが少なくても、対応付けた仮に決定した接続相と、判定した接続相と、算出した尤度とを参照して、所定の閾値を指定することができる。
また、トランス接続相判定装置1801によれば、対応付けた仮に決定した接続相と、判定した接続相とから、判定結果が正解か否かを判定して、判定結果と算出した尤度とから、所定の閾値を決定してもよい。これにより、トランス接続相判定装置1801は、接続相の正解が既知であるトランスが少なくても、判定結果と算出した尤度とから、適切な所定の閾値を決定することができる。
また、トランス接続相判定装置1801によれば、対応付けた仮に決定した接続相と、判定した接続相とから、判定結果が正解か否かを判定して、判定結果と算出した尤度とから、ロジスティックモデルにより関数を作成してもよい。これにより、トランス接続相判定装置1801は、接続相の正解が既知であるトランスが少なくても、判定結果と算出した尤度とから、精度の高い関数を作成することができる。
なお、本実施の形態で説明したトランス接続相判定方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。本トランス接続相判定プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc−Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また本トランス接続相判定プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
上述した実施の形態1〜3に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)3以上の配電線のうちのいずれか2つの配電線に接続された複数のトランスのいずれかのトランスに接続された電力消費源で消費された電力値と、前記3以上の配電線の各々の配電線に流れた電流値とに基づいて、前記各々の配電線に対応して電力と電流との相関を示す相関値を算出し、
算出した前記各々の配電線に対応する相関値に基づいて、前記3以上の配電線のうちの前記トランスに接続された2つの配電線を判定し、
前記電力値に基づいて、判定した前記2つの配電線が前記トランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を算出し、
算出した前記尤度が所定の閾値以上であれば、前記電力値に基づいて、判定した前記2つの配電線の各々の配電線に流れた電流値を補正する、
制御部を有することを特徴とするトランス接続相判定装置。
(付記2)前記制御部は、
前記各々の配電線に対応する相関値同士の差に基づいて、前記尤度を算出することを特徴とする付記1に記載のトランス接続相判定装置。
(付記3)前記制御部は、
前記電力を計測した計測期間における前記各々の配電線に対応する電力と電流との相関を示す相関値を算出するとともに、前記計測期間を区切った各期間における前記各々の配電線に対応する電力と電流との相関を示す相関値を算出し、
算出した前記計測期間における前記各々の配電線に対応する相関値に基づき前記トランスに接続された2つの配電線を判定するとともに、算出した前記各期間における前記各々の配電線に対応する相関値に基づき前記トランスに接続された2つの配電線を判定し、
前記各期間における前記各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果のうち、前記計測期間における前記各々の配電線に対応する相関値に基づき判定した結果と一致する結果の数に基づいて、前記尤度を算出することを特徴とする付記1または2に記載のトランス接続相判定装置。
(付記4)前記制御部は、
前記3以上の配電線のうちのいずれか2つの配電線がトランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を用いて前記2つの配電線が当該トランスに接続された配電線である確率を表す関数に、算出した前記尤度を入力して得られる確率値が所定値以上であれば、前記電力値に基づいて、判定した前記2つの配電線の各々の配電線に流れた電流値を補正することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載のトランス接続相判定装置。
(付記5)前記制御部は、
前記複数のトランスの各々のトランスに対応して、前記3以上の配電線のうちの前記各々のトランスに接続された2つの配電線をランダムに決定し、
前記各々のトランスに接続された電力消費源で消費された電力値と、決定した前記各々のトランスに対応する2つの配電線とに基づいて、決定した前記各々のトランスに対応する2つの配電線が前記各々のトランスに接続されている場合の前記各々の配電線に流れた電流値を算出し、
前記各々のトランスにおける電力値と、算出した前記各々の配電線に流れた電流値とに基づいて、前記各々のトランスにおける前記各々の配電線に対応する相関値を算出し、
算出した前記各々の配電線に対応する相関値に基づいて、前記3以上の配電線のうちの前記各々のトランスに接続された2つの配電線を判定し、
前記各々のトランスにおける電力値に基づいて、判定した前記2つの配電線が前記各々のトランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を算出し、
決定した前記各々のトランスに対応する2つの配電線と、判定した前記各々のトランスに接続された2つの配電線と、算出した前記各々のトランスにおける尤度とを対応付けて出力することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載のトランス接続相判定装置。
(付記6)前記制御部は、
決定した前記各々のトランスに対応する2つの配電線と、判定した前記各々のトランスに接続された2つの配電線とを比較し、
比較した比較結果と、算出した前記各々のトランスにおける尤度とに基づいて、前記所定の閾値を決定することを特徴とする付記5に記載のトランス接続相判定装置。
(付記7)前記制御部は、
決定した前記各々のトランスに対応する2つの配電線と、判定した前記各々のトランスに接続された2つの配電線とを比較し、
比較した比較結果と、算出した前記各々のトランスにおける尤度とに基づいて、前記3以上の配電線のうちのいずれか2つの配電線がトランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を用いて前記2つの配電線が当該トランスに接続された配電線である確率を表す関数を作成することを特徴とする付記5に記載のトランス接続相判定装置。
(付記8)コンピュータが、
3以上の配電線のうちのいずれか2つの配電線に接続された複数のトランスのいずれかのトランスに接続された電力消費源で消費された電力値と、前記3以上の配電線の各々の配電線に流れた電流値とに基づいて、前記各々の配電線に対応して電力と電流との相関を示す相関値を算出し、
算出した前記各々の配電線に対応する相関値に基づいて、前記3以上の配電線のうちの前記トランスに接続された2つの配電線を判定し、
前記電力値に基づいて、判定した前記2つの配電線が前記トランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を算出し、
算出した前記尤度が所定の閾値以上であれば、前記電力値に基づいて、判定した前記2つの配電線の各々の配電線に流れた電流値を補正する、
処理を実行することを特徴とするトランス接続相判定方法。
(付記9)コンピュータに、
3以上の配電線のうちのいずれか2つの配電線に接続された複数のトランスのいずれかのトランスに接続された電力消費源で消費された電力値と、前記3以上の配電線の各々の配電線に流れた電流値とに基づいて、前記各々の配電線に対応して電力と電流との相関を示す相関値を算出し、
算出した前記各々の配電線に対応する相関値に基づいて、前記3以上の配電線のうちの前記トランスに接続された2つの配電線を判定し、
前記電力値に基づいて、判定した前記2つの配電線が前記トランスに接続された配電線であることの尤もらしさを示す尤度を算出し、
算出した前記尤度が所定の閾値以上であれば、前記電力値に基づいて、判定した前記2つの配電線の各々の配電線に流れた電流値を補正する、
処理を実行させることを特徴とするトランス接続相判定プログラム。