JP6327543B1 - 抗炎症性を有する中空糸膜およびその製造方法 - Google Patents

抗炎症性を有する中空糸膜およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ポリアリールスルホン系ポリマーからなる中空糸膜において、特定の疎水性および親水性の側鎖構造からなるアクリル系共重合体を膜中に分散させることによって補体活性による炎症反応物質の産生を抑制する。【解決手段】本発明は、ポリアリールスルホン系ポリマー、ポリビニルピロリドンおよびアルキル(メタ)アクリレートとメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとからなる水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体を含む中空糸膜であって、前記中空糸膜を核磁気共鳴分光法を用いて測定したときに、(メタ)アクリレート共重合体の含有率が0.5〜5質量%であり、前記中空糸膜の内表面をX線光電子分光法を用いて測定したときに、(メタ)アクリレート共重合体の含有率が5〜30質量%である、中空糸膜である。【選択図】なし

Description

本発明は、生体適合性を向上させた膜表面を有する中空糸膜と中空糸膜モジュール、およびそれらの製造方法に関する。
慢性腎不全患者に対する維持療法である血液透析において、中空糸膜型の血液浄化装置が広く用いられている。また、急性腎不全や敗血症などの重篤な病態の患者に対する急性血液浄化療法として、持続血液濾過、持続血液濾過透析、持続血液透析などの療法の実施例が増加している。
上記の血液浄化治療において、血液が膜表面や、エンドトキシン等の透析液中に混入した微量汚染成分と接触すると、血小板系、凝固系および補体系が活性化され、各種の血栓反応、炎症反応およびアレルギー・免疫反応が惹起されることが知られている。特に長期間継続して血液透析を行っている患者の体内では、慢性的な微小炎症(microinflammation)と、それに伴う酸化ストレスの蓄積が起こっているとされ、血液浄化治療における炎症反応と心臓血管障害リスクとの関連性が近年多く指摘されるようになっている。
このような背景から、より生体適合性の高い、炎症反応を抑制可能な表面組成および表面構造を有する中空糸膜の要求が高まっている。
一般に血液浄化用の中空糸膜の素材としては、有機ポリマーが用いられる。中空糸膜素材として、高い機械強度と化学安定性を有し、血液中の不要物質の除去に好適な多孔構造を得やすいという観点から、ポリアリールスルホン(PAS)系ポリマー(具体的にはポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン)が広範に使用されている。
PAS系ポリマー自体は、疎水性が強い素材のため、血小板が材料表面で吸着および活性化することによる血栓形成反応が起こりやすく、膜中に残血と呼ばれる現象を起こしやすい。また、膜孔がタンパク質吸着で閉塞することによる膜性能の低下を引き起こしやすい欠点もある。
そのため、PAS系ポリマー単体による中空糸膜自体は、血液浄化用として優れているとは言えない。通常PAS系ポリマーを用いて中空糸膜を製造する場合には、PAS系ポリマーと相溶アロイを形成することで知られる水溶性ポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)を紡糸原液にあらかじめブレンドすることで、PAS系ポリマーとPVPの相溶アロイ膜を作製することにより、膜表面に親水性を付与し、タンパク質吸着を抑制する手法が採用されている。
このようなPVPアロイ化PAS系ポリマー膜は、高親水性であるためにPAS系ポリマー単体の膜と比較すると、血小板の吸着が軽微であることが知られている。さらにPVPアロイ化PAS系ポリマー膜は、適度な濡れ性を有するため、アルコール等の低表面張力溶媒による中空糸膜の湿潤処理を行わずとも、ガンマ線滅菌を施した乾燥膜モジュールを含水させれば自発的に膜が濡れた状態となるため、そのまま血液治療に用いることができ、モジュールの保存性および医療衛生の観点において好都合である。
(1.PVPアロイ化PAS系ポリマー膜の課題)
しかしながら、PVPアロイ化PAS系ポリマー膜は血液適合性の観点において、少なくとも2つの重要な問題点を有している。
1つ目の問題として、PVPは、PAS系ポリマーと相溶アロイを形成するとはいえ、基本的には水溶性ポリマーであるために、膜表面から微量ずつ血液中に溶出してしまうことがある。そのため製膜工程中、および中空糸膜モジュール内において、中空糸膜を熱水で高度に洗浄し、余剰PVPを除去する必要があるが、洗浄処理後の中空糸膜モジュール製品からのPVPの溶出速度は、各当業者の洗浄ノウハウやモジュールの保管期間等の影響を受けるため、必ずしも各製品において一様ではない。また、アルコールのようなPAS系ポリマー膜を膨潤させる溶媒で、PVPを洗浄することも可能であるが、過度に洗浄した場合、PAS系ポリマー膜から親水性が失われてしまう。
2つ目の問題は、PVPは、高い極性を有するN−ビニルピロリドン単位からなるホモポリマーであり、補体系の活性化能が高いという点である。活性化された補体は、マクロファージを走化させ、各種の炎症性サイトカインおよびラジカルを産生することが知られており、透析患者体内にこれらの物質が血液とともに還流されることで、炎症反応および酸化ストレスが蓄積していくことが危惧される。
N−ビニルピロリドンの補体活性化能については、例えば非特許文献1があり、N−ビニルピロリドンをグラフト処理したポリエチレンチューブに血液を通液させた場合、チューブ壁への補体活性に伴う白血球の吸着が多くなり、チューブ内に血栓を引き起こすまでの持続時間が短くなることが示されている。一方で、補体活性化能が低いとされる2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)をグラフト処理したチューブでは、白血球の吸着は見られないことが示されている。
補体の活性化を抑制する観点においては、上記のPVPにおけるラクタム構造のような極性の高い官能基は好ましくなく、疎水性表面が好ましいことが知られている。しかしながら、前述のとおりPAS系ポリマーをはじめ、ポリエチレン、シリコーン等の通常の疎水性ポリマー表面については、血小板の吸着と変性による血栓形成と残血現象を生じてしまう。
(2.他の生体適合性ポリマーにおける課題)
このように血液と膜表面の接触における炎症反応および酸化ストレスを低減するためには、血小板系だけではなく、補体系の活性化も抑制可能な分離膜表面が必要であると考えられるが、PAS系ポリマー膜において、PAS系ポリマーと相溶アロイを形成可能な親水性ポリマーはPVP系のポリマー構造以外に選択肢がないため、他の生体適合性ポリマーの適用可能性については、十分に実用に向けた検討がなされてきたとは言い難い。
PVP以外に有望な生体適合性ポリマーとしては、人工心肺や神経再生誘導チューブにおける生体適合コーティング材料として、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)をはじめとするアクリル系ポリマーが開発されている。そのなかでも特に補体活性の抑制に優れるポリマーとして、特許文献1に、疎水性のアルキル(メタ)アクリレート単位と、親水性のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート単位から構成される水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体が開示されている。
上記のアクリル系共重合体は、疎水性のアルキル側鎖を有する化学構造と、末端がメチル化された親水性のポリエチレングリコール側鎖の化学構造からなる可とう性のランダム共重合体であり、特定の単一側鎖を有するホモポリマーと比較して、前述した血小板系、補体系、凝固系のように、ある材料表面に対して異なる相互作用を示す血液中のタンパク質および細胞に対して、広範な吸着・活性化抑制能力を有すると考えられ、生体適合材料として好適である。
また、特許文献2には、(メタ)アクリレート共重合体を有機溶媒および水からなる混合液に分散させてなる医用材料の処理液、および該処理液を血液接触面に塗布してなる医用材料も開示されている。
しかしながら、上記の(メタ)アクリレート共重合体をエタノールなどの有機溶媒に溶解したコーティング溶液は、チューブなど比較的単純な構造の医用品へのコーティングには適するが、精密な分子量分画に基づく、血中タンパク質の成分調整能が要求される中空糸膜への適用はこれまで難しかった。具体的には、コーティング法を中空糸膜に適用した場合、溶液のポリマー濃度が低ければ、不均一な塗膜が形成され生体適合性が十分得られず、またポリマー濃度が高ければ、塗膜は比較的均一となるが、塗布膜厚が大きくなり、中空糸膜の孔径分布が変化してしまう。その結果、膜の透水性とタンパク質分子量カットオフのバランスが変動してしまい、血液浄化膜製品として十分な性能再現性を得ることが困難であった。
さらに、上記の(メタ)アクリレート共重合体は、補体活性を抑制し、かつ血液中へポリマーが溶出しないようにする、という設計思想に基づいて、アルキル(メタ)アクリレート疎水部を構造に含むため、水不溶性かつメタノールにも不溶な、比較的疎水性の強い構造となっている。そのため、該ポリマー単体を塗布した乾燥中空糸膜モジュールは、濡れ性が低く、そのままでは水に濡れないため、アルコール等の表面張力の低い溶媒で湿潤処理を行う必要がある。しかしながら、該共重合体は、エタノール等のアルコールに容易に溶解するため、膜性能を保持できないという問題があり、また処理工程が増えて取り扱い性および医療衛生確保の困難さも増加してしまう。
特許文献3には、PVPアロイ化PAS系ポリマー膜に対して、特定のポリエチレングリコール側鎖を有するアクリル系ホモポリマーをコーティング法によって付与した中空糸膜、およびコーティング法によるその中空糸膜の製造法が開示されている。
しかしながら、この技術においてもアルコール系溶媒で該アクリル系ホモポリマーをコーティングすることによる塗布ムラの発生や、またコート液濃度を増加させた場合の透水性の減少および中空糸膜の分画特性の変化は、本質的に回避が難しい問題がある。また、コート液へPVPが溶出することによるコート液の経時組成変化も生じるため、必ずしも再現性よく経済的に目的の中空糸膜を得ることが容易でない。さらに、疎水性のアルキル側鎖を含む共重合体ではないために、補体の活性化およびそれに伴う炎症反応の抑制効果については十分でない可能性がある。
特開2007−146133号公報 特開2007−264266号公報 WO2016/208642A1
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑みなされたものであり、従来のPVPアロイ化PAS系ポリマー膜の課題であった補体活性による炎症反応物質の産生を、特定の疎水性および親水性の側鎖構造からなる(メタ)アクリレート共重合体を付与することによって抑制することを第一の目的とする。さらに、前記水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体を中空糸膜に適用するうえで課題であった低い膜濡れ性を改善し、コーティング法を採用した場合に生じる膜性能の変動の問題を解決することを第二の目的とする。これら2つの目的を達成する結果として、抗炎症反応性に優れ、さらに分離性能および分離性能再現性にも優れ、製造も容易な中空糸膜、中空糸膜モジュール、およびその製造方法を提供しようとするものである。
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意検討を行い、下記の知見に基づき発明を完成させた。
特許文献1に記載の特定構造を有する(メタ)アクリレート共重合体は、水およびメタノールに不溶であったので、特許文献2に記載されるように、エタノール溶媒にてコート液を調製し、これにPVPを付与していない疎水性PAS系ポリマー中空糸膜のバンドルをディップコートし、風乾してみた。得られた中空糸膜は、水への濡れ性を十分有していなかった。また、コート液のポリマー濃度を高くするに従って透水性が低下し、分離性能の再現性を得ることが難しいという問題を生じた。
次に、この(メタ)アクリレート共重合体のエタノール溶液を、PVPアロイ化したPAS系ポリマー膜にディップコートして風乾してみた。得られた中空糸膜は、濡れ性を保持していたが、やはりコート液のポリマー濃度に応じて透水性が低下し、再現性を得ることが難しい問題を生じた。さらに、問題として、エタノールに易溶のPVPがコート液に溶出するため、中空糸膜バンドルの繰り返し処理を行うと、コート液が次第に組成変化を起こすことがわかった。そのため、コート液更新を頻繁に行わねばならず経済的観点から難があった。
このようにコーティング法には、いくつかの問題点が確認された。本発明者は、上記PVPおよび(メタ)アクリレート共重合体が、それぞれ水溶性および非水溶性という反目する特性を有する点に着目して、ポリマーブレンド法の適用を試みた。すなわち、中空糸膜の紡糸工程において、PAS系ポリマーおよびPVPの互いに相溶な2成分ポリマーからなる紡糸原液を作製し、ここに上記アクリル系共重合体を添加することとした。ここで、PAS系ポリマーとPVPは相溶系であることは公知であり、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、またはN−メチル−2−ピロリドンの溶媒下で、均一透明な紡糸原液を得ることができる。一方、上記(メタ)アクリレート共重合体は、上記溶媒に可溶である一方、PAS系ポリマーおよびPVPとはそれぞれ非相溶であった。(メタ)アクリレート共重合体の添加によって、紡糸原液は乳白半透明色の分散液となった。
このような非相溶なポリマー成分を含む分散系の紡糸原液は一般に可紡性(糸切れトラブルなく中空糸膜を安定して得ること)が良好でないことが知られている。そこで本発明者は、(メタ)アクリレート共重合体の添加量を大まかには紡糸原液全体の1質量%以下、PVP添加質量の1/10〜1/3程度の微量に調整したところ、十分な紡糸安定性を得ることができた。さらに、このようにして(メタ)アクリレート共重合体を添加したこと以外は、従来どおりの製膜法により、簡便に中空糸膜を得ることができた。
このようにして得られた本発明の中空糸膜は、その断面構造において従来のPAS系ポリマーとPVPの2成分系からなるスポンジ状の非対称膜には見られないドロップレット状のボイド構造(以下、「プール」と呼称する)を有する。この構造は、上記(メタ)アクリレート共重合体がPAS系ポリマーおよびPVPと非相溶であり、常温で液状であり、さらには非水溶性(水不溶性)である、という特性を有することに起因して生じるものである。具体的には、以下のような機構によってプールは形成されると考えられる。
前記3成分のポリマーからなる紡糸原液において、(メタ)アクリレート共重合体成分の溶液相は、PAS系ポリマーおよびPVPの2成分からなる溶液相とは分離した状態で存在しており、多数のドロップレット相となって紡糸原液全体に分散している。相分離による中空糸膜の形成過程において、これらの(メタ)アクリレート共重合体の液状ドロップレットは、PAS系ポリマーおよびPVPから形成される中空糸膜全体に分散された状態で取り残される。このようにして形成された大小無数のプールから、上記(メタ)アクリレート共重合体は、非水溶性かつ液状であるが故に、膜外(芯液や外部凝固液)に溶出することなく、中空糸膜の多孔構造表面上に放出、分散され、その結果として中空糸膜全体にポリマーコーティング処理がなされるものと考えられる。
上記紡糸工程に続いて、およびモジュール洗浄工程にて、70〜95℃の熱水洗浄により、中空糸膜から余剰PVPを洗浄する処理を行った後、乾燥処理した中空糸膜を重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、この溶液を核磁気共鳴分光法(NMR)にて測定し、中空糸膜の組成評価(3成分ポリマーの重量分率)を実施した。その結果、水溶性のPVPは仕込み量の5分の1〜10分の1に低下しており、透析型人工腎臓装置製造承認基準により定められた試験を実施した時の中空糸膜の抽出液における紫外吸収(UV波長220〜350nm)の吸光度が基準値0.10を十分下回ることがわかった。一方、驚くべきことに、上記の非水溶性の(メタ)アクリレート共重合体は95℃の高温熱水洗浄を行っても、ほとんど溶出は起こっておらず、ほぼ仕込み量を保持できていることがわかった。
次に、この中空糸膜について、血液および透析液がそれぞれ接触する内/外表面について、X線光電子分光法(ESCA)によって表面組成を評価したところ、PVPと上記(メタ)アクリレート共重合体は、ほぼ同程度のポリマー量比にて中空糸膜の内/外表面に偏在しており、かつ表面全体に均一に分布していることがわかった。
血液浄化用としての透水性能(UFR:UltraFiltration Rate)およびβ2ミクログロブリンまたはミオグロブリンのタンパク質阻止性能を評価したところ、上記(メタ)アクリレート共重合体の添加の有り・無しにおいて中空糸膜性能にはほとんど差異は確認できず、血液浄化用として良好な基本性能を再現性良く得ることが可能であった。
また、乾燥してγ滅菌処理を施した中空糸膜モジュールは、PVP由来の適度な濡れ性も維持しており、水によって自発的に濡れる特性も保持できていた。
さらに、発明者は血液適合性に優れる特定の(メタ)アクリレート共重合体を中空糸膜に付与した効果の確認として、後述する血液評価試験を実施したところ、本発明の中空糸膜は、血液循環試験後の残血量が、従来のPVPアロイ化PAS系ポリマー膜よりも少ない結果を得た。さらに、血液中の補体の活性化によって産生される炎症反応サイトカイン(特にTNF−αおよびIL−6)について、本発明における抗炎症付与効果のマーカーとして評価を試みた結果、中空糸膜モジュールへの人血循環前後における上記炎症性サイトカインの増加率は、従来のPVPアロイ化PAS系ポリマー膜と比較してほぼ半減されるという効果を見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、以下の(1)〜(9)の構成を有するものである。
(1)ポリアリールスルホン系ポリマー、ポリビニルピロリドン、および下記一般式(I)で示されるアルキル(メタ)アクリレートと下記一般式(II)で示されるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとからなる水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体を含む中空糸膜であって、前記中空糸膜を核磁気共鳴分光法を用いて測定したときに、(メタ)アクリレート共重合体の含有率が0.5〜5質量%であり、前記中空糸膜の内表面をX線光電子分光法を用いて測定したときに、(メタ)アクリレート共重合体の含有率が5〜30質量%である、中空糸膜。
(式中、Rは、炭素原子数2〜30のアルキル基またはアラルキル基、R、Rは、水素原子またはメチル基、kは1〜1000の整数を示す。m、nは、共重合の比率を示し、m+n=1である。)
(2)前記アルキル(メタ)アクリレートが下記一般式(III)で示されるものであり、前記メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが下記一般式(IV)で示されるものである、(1)に記載の中空糸膜。
(3)前記一般式(III)および(IV)において、m=0.5〜0.9であり、n=0.1〜0.5である、(2)に記載の中空糸膜。
(4)前記中空糸膜を核磁気共鳴分光法を用いて測定したときに、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの含有率が0.5〜5質量%、前記中空糸膜の内表面をX線光電子分光法を用いて測定したときに、ポリビニルピロリドンの含有率が5〜30質量%である、(1)〜(3)のいずれかに記載の中空糸膜。
(5)前記ポリアリールスルホン系ポリマーが、ポリエーテルスルホンである、(1)〜(4)のいずれかに記載の中空糸膜。
(6)前記中空糸膜が血液浄化用である、(1)〜(5)のいずれかに記載の中空糸膜。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の中空糸膜を装填した中空糸膜モジュールであって、中空糸膜の内腔に連通する2以上の流体出入口および中空糸膜の外腔に連通する2以上の流体出入口を有することを特徴とする中空糸膜モジュール。
(8)(1)〜(6)のいずれかに記載の中空糸膜を製造する方法であって、ポリアリールスルホン系ポリマー、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート共重合体、および溶媒を混合して得られた紡糸原液を芯液と共に二重環ノズルより吐出し、外部凝固液に浸漬する工程を含むことを特徴とする方法。
(9)前記紡糸原液は、ポリアリールスルホン系ポリマーを10〜50質量%、ポリビニルピロリドンを1〜10質量%、(メタ)アクリレート共重合体を0.1〜1.5質量%含む、(8)に記載の中空糸膜を製造する方法。
本発明の中空糸膜および中空糸膜モジュールは、PVPアロイ化によるPAS系ポリマー膜の濡れ性は保持したまま、補体活性抑制効果に優れる特定の生体適合性(メタ)アクリレート共重合体が膜表面に付与されており、優れた抗炎症性と取り扱い性を両立可能である。さらに、本発明の中空糸膜の製造方法は、上記(メタ)アクリレート共重合体をごく微量添加するポリマーブレンド法によって、従来法どおり製膜可能な簡便なものであり、コーティング法と比較して、膜の透水性能およびタンパク質分離性能の変動も無いため、作製が容易で経済的であるという特長も有する。
(メタ)アクリレート共重合体のNMRスペクトル例 (メタ)アクリレート共重合体の別のNMRスペクトル例 本発明の中空糸膜のNMRスペクトル例 本発明の中空糸膜の別のNMRスペクトル例 ポリエーテルスルホンとNMRピークとの対応例 ポリビニルピロリドンとNMRピークとの対応例 (メタ)アクリレート共重合体とNMRピークとの対応例 中空糸膜のESCA測定におけるC1sスペクトルのピーク分離の例 本発明の中空糸膜モジュールの一例を示す図 実施例1および比較例5の中空糸膜を用いた抗炎症性の評価結果 実施例および比較例のモジュールを用いた透析性能の評価結果
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の中空糸膜は、水溶性の親水性高分子であるポリビニルピロリドン(PVP)を含むポリアリールスルホン(PAS)系ポリマーを基本成分として、第3成分のポリマーとして特定の(メタ)アクリレート共重合体を含むことを特徴とする。
(ポリアリールスルホンポリマー)
ポリアリールスルホン系ポリマーは、スルホン結合を有する芳香族ポリマーの総称であり、このうちPVPと相溶するポリアリールスルホン系ポリマーを用いることが好ましい。具体的には、下記一般式(V)および一般式(VI)で示される繰り返し単位を持つポリスルホンおよびポリエーテルスルホンが、PVPと相溶し、入手も容易なため好ましい。分子量は、好ましい多孔構造と紡糸安定性を得る観点から、重量平均分子量20,000以上であることが好ましい。より好ましくは40,000以上である。
(ポリビニルピロリドン)
PVPは、PAS系ポリマー膜へブレンドすることにより、膜表面の親水性を高め、水への濡れ性を付与することを主目的としている。下記一般式(VII)にPVPの繰り返し単位構造を示す。PVPの分子量は、重量平均分子量10,000以上1,500,000以下のものを用いることができる。例えば、BASF社の重量平均分子量9,000(K17)、45,000(K30)、450,000(K60)、900,000(K80)、1,200,000(K90)のものを用いることができる。紡糸原液に適度な増粘効果を付与し、かつ適切な膜構造と後述される熱水洗浄によるPVP洗浄性を得るという観点からは、K60以上の高分子量タイプのものを用いることが好ましい。
((メタ)アクリレート共重合体)
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体は、一般式(I)で示される疎水性のアルキル(メタ)アクリレートおよび一般式(II)で示される親水性部のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートから構成される非水溶性(水不溶性)の(メタ)アクリレート共重合体であることが好ましい。
(式中、Rは炭素原子数2〜30のアルキル基またはアラルキル基、R、Rは水素原子またはメチル基、kは1〜1000の整数を示す。m、nは共重合の比率を示し、m+n=1である。)
補体の吸着および活性化に対する抑制効果を高めるためには、ポリマーの疎水性を高め、かつガラス転移温度の低い(すなわち分子運動性が高く流動性の大きい)ポリマー表面を形成する必要がある。そのため、疎水性部のアルキル(メタ)アクリレート(I)のRは、疎水性を高める観点から、炭素原子数2〜30のアルキル基またはアラルキル基、Rが水素原子またはメチル基であることが好ましい。また、ガラス転移温度を低くして、分子運動性を高めることがより好ましい。この点について、例えば「アクリル樹脂 合成・設計と新用途開発 中部経営開発センター 昭和60年発行」、「アクリル酸エステルとそのポリマー[II]株式会社昭晃堂 昭和50年発行」の知見を参考にすると、アルキル(メタ)アクリレートの炭素数が増大するにつれ、そのポリマーのガラス転移温度は低下し、ある極小値をむかえた後増大する傾向にあり、その極小値は、n−アルキルアクリレートでは炭素数が8である(n−アルキルメタクリレートでは炭素数が12)。よって、疎水性部のアルキル(メタ)アクリレートの構造は、下記一般式(III)のように炭素数8に調整されることがより好ましい。
一方、血小板の吸着・活性化を抑制するためには、適度な親水性をポリマー構造へ導入することが好ましいが、前述のとおり補体活性能を高めないようにするには、極性の小さい親水性構造を選択することが好ましい。この観点から、一般式(II)のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、Rは水素原子またはメチル基、kは1〜1000の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、一般式(IV)で示されるものを用いるのが好ましい。この範囲よりkが大きいと、親水性が高くなりすぎ、補体活性能を抑制できないとか、PVPの熱水洗浄処理工程において該ポリマーも同時に溶出してしまうことがある。また、この範囲よりkが小さいと、親水性が十分得られず、血小板吸着が起こりやすくなることがある。
本発明において、一般式(III)のmは、0.5〜0.9の範囲にあることが好ましい。共重合比率mが、この範囲よりも小さいと、ポリマー全体の親水性が高くなるため、補体活性化の抑制効果が低減するとともに、PVPの熱水洗浄処理工程においてポリマーが溶出しやすくなる。また、mがこの範囲よりも大きいと、ポリマーが疎水的になりすぎて血小板の吸着・活性化の程度が大きくなり、また紡糸原液の溶媒に溶解しにくくなる。
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体の分子量は、特に限定されないが、数平均分子量2,000以上であることが重合後の再沈殿による精製の容易さの点で好ましい。より好ましくは5,000以上である。
本発明において、(メタ)アクリレート共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれであってもよいが、ランダム共重合体が重合が簡便であるため好ましい。前記共重合体を製造するための反応方法は、特に限定されず、ラジカル重合法等の公知の方法を用いることができる。
(紡糸原液の調製)
本発明において、紡糸原液は、PAS系ポリマーおよびPVPをジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)から選択される1種以上の非プロトン性極性溶媒に溶解し、これに上記の(メタ)アクリレート共重合体を添加し、混練することで得ることができる。ポリマーの添加順序や混練の方法は、特に限定されない。
本発明において、紡糸原液中のポリマー濃度については、PAS系ポリマーを10〜50質量%、PVPを1〜10質量%、(メタ)アクリレート共重合体を0.1〜1.5質量%とするのが好ましい。PAS系ポリマーとPVPは、この範囲において中空糸膜の多孔構造を血液浄化用途に最適化し、かつ適度な膜濡れ性を付与することが可能となる。また、(メタ)アクリレート共重合体の添加量は、この範囲において、可紡性を確保し、また十分な抗炎症反応性を付与することが可能であるため、好ましい。
(中空糸膜の製造方法)
本発明の中空糸膜の製造方法は、公知の手段を用いることができるが、乾湿式紡糸法を用いることが好ましい。具体的には、PAS系ポリマー、PVP、(メタ)アクリレート共重合体、溶媒、必要に応じて非溶媒を混練、溶解した紡糸原液を、二重管ノズルのスリット部から吐出し、中心部から芯液を同時に吐出し、エアギャップを経て凝固浴中に浸漬することで、簡便に透水性とタンパク質分画特性に優れた中空糸膜を得ることができる。
本発明において、中空糸膜の製膜時に使用される芯液は、紡糸原液に含まれる溶媒および/または非溶媒を主成分とした液体を使用するのが好ましい。従って、溶媒と非溶媒の混合液、非溶媒のみ、溶媒と水の混合液、非溶媒と水の混合液、溶媒と非溶媒と水の混合液のいずれかを使用するのが好ましい。より好ましくは、紡糸原液の溶媒/非溶媒比率と同一とした混合液を調製し、それを水で希釈するのが好ましい。このとき、有機成分濃度を10〜80質量%とするのが好ましい。有機成分濃度が10質量%よりも少ないと、凝固が進行しやすくなり、膜の内側の構造が緻密化しすぎて透水性能が低下することがある。有機成分濃度が80質量%よりも多いと、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなる。
外部凝固液の組成は、紡糸原液に含まれる溶媒および非溶媒と、水との混合液を使用することが好ましい。この際、溶媒と非溶媒の比率は、紡糸原液の溶媒/非溶媒比率と同一であることが好ましい。紡糸原液に使用されるのと同一の溶媒および非溶媒を、紡糸原液中の比率と同一にして混合し、これに水を添加して希釈したものが好ましく用いられる。外部凝固液の有機成分濃度は、10〜70質量%とするのが好ましい。有機成分濃度が少ないと、凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下することがある。また、有機成分濃度が多いと、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招くことがある。また、外部凝固液の温度は、30〜80℃とするのが好ましい。温度が低いと凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下することがある。また、温度が高いと、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなる。
透水性能を制御する因子のひとつには、ノズルの温度が挙げられる。ノズルの温度が低いと、凝固が進行しやすくなり、膜構造が緻密化しすぎて透過性が低下してしまう。また、ノズルの温度が高いと、大孔径の空孔が生じやすくなり、分離特性や強度の低下を招く可能性が大きくなってしまう。好適なノズルの温度は、40〜80℃である。
芯液とともに二重管ノズルから吐出した紡糸原液を、エアギャップ部分を経て外部凝固液中に導かれた紡糸原液(中空糸膜)は、芯液からの凝固が進行しながら、外部からの凝固はある程度抑制された状態で外部凝固液と接触する。外部凝固液通過中に中空糸膜は凝固を完了し、構造が形成される。
紡糸速度(紡速)については、欠陥のない中空糸膜が得られ、生産性が確保できれば特に制限されないが、好ましくは5〜100m/分である。これよりも紡速が低いと、生産性が低下する。これよりも紡速が高いと、凝固工程において、相分離構造が十分発達しない可能性がある。
(熱水によるPVPの洗浄工程)
凝固を完了した中空糸膜は、熱水による洗浄を行って、膜内に含まれる過剰なPVPを除去することが好ましい。PAS系ポリマーとアロイ化されたPVPは、分子鎖がPAS系ポリマーのマトリクス相に束縛され、運動性が低くなっていると考えられる。実際、常温の水で洗浄するよりも、熱水で洗浄することで、より高いPVPの洗浄効果を得ることができる。熱水の温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80〜95℃である。これよりも低温では洗浄効果が不十分になってしまい、これよりも高温ではエネルギーコストが高くなり、洗浄効果も必ずしも向上しない。
(乾燥・バンドル化工程)
熱水洗浄を経て得られた中空糸膜は、適切な長さに切りそろえて束ね、バンドル状にする。中空部に存在する液を脱液する目的で、バンドルを立てた状態で30分〜2時間放置する。30分より短いと中空部内の液の脱液が不十分であり、好ましくない。また、2時間を超えて放置すると、立てかけた状態での脱液時に自重によるバンドルの座屈が起こることがある。
中空糸膜の乾燥方法は、風乾、減圧乾燥、熱風乾燥、マイクロ波乾燥など通常利用される乾燥方法を用いることができる。簡便な装置で効率的に大量の中空糸膜を乾燥できる点で、熱風乾燥が好ましく利用される。熱風乾燥時の熱風温度は特に制限されないが、好ましくは25〜100℃、より好ましくは30〜80℃である。これより温度が低いと乾燥までに長時間を要し、これより温度が高いと熱風生成のためのエネルギーコストが高くなる。
(モジュールの作製工程)
モジュールの作製は、中空糸膜束を容器へ挿入し、両束端にポリウレタン等のポッティング剤を注入して両端をシールした後、余分なポッティング剤を切断除去して中空糸膜端面を開口させ、ヘッダーを取り付けることにより行うことができる。
モジュール1は、筒状の容器2内に中空糸膜束3を装填し、中空糸膜束3の両端部を容器2の両端部に接着剤4等により固定し、容器2の両端部にキャップ5a,5bが取り付けられている。容器2の一方の端部近傍には、容器2内に透析液を導入する透析液導入口6aを、他方の端部近傍には、透析液を排出する透析液排出口6bをそれぞれ突出形成してある。また、一方のキャップ5aには容器2内に血液を導入する血液導入口7aを、他方のキャップ5bには血液を排出する血液排出口7bをそれぞれ突出形成してある(図9)。
そして、血液は、矢印Aに示すように、血液導入口7aからキャップ5aと中空糸膜束3の一方の端面とにより形成される空間内に入り、中空糸膜束3の中空糸膜の中空部を通り、中空糸膜束3の他方の端面とキャップ5bとにより形成される空間内に入り、血液排出口7bから矢印Bに示すように排出される。一方、透析液は、矢印Cに示すように、透析液導入口6aから容器2内に入り、中空糸膜束3の中空糸膜の外側を流れ、矢印Dに示すように、透析液排出口6bから排出される。このとき、透析される血液の流れと透析液の流れとは逆方向のいわゆる対向流とするのが好ましい。この間に、中空糸膜内を流れる血液中の老廃物が中空糸膜を通して外側の透析液中に透析される。
(モジュールの熱水処理工程)
前記の製膜工程における熱水洗浄に加えて、モジュール化された中空糸膜バンドルについても熱水処理が行われることが好ましい。これらの洗浄工程によって、最終的に治療に使用される段階において、透析型人工腎臓装置製造承認基準に定められた方法でモジュールから抽出された溶出物量が、UV吸収(220−350nm)で0.1以下の水準を達成することが可能となり、好ましい。
(モジュールの滅菌処理)
完成したモジュールは医療衛生の観点から滅菌処理される。モジュールを脱酸素剤と共に包装袋に密封し、モジュール内部の空間が乾燥した状態で放射線および/または電子線を照射し、滅菌処理することが好ましい。放射線または電子線としては、α線、β線、γ線、電子線などが挙げられるが、滅菌効率および取り扱い易さ等からγ線又は電子線が好適に用いられる。放射線または電子線の照射線量は、殺菌が可能な線量であれば特に限定はないが、一般には10〜30kGyが好ましい。
(中空糸膜のポリマー組成比)
中空糸膜を重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d)またはDMSO−dを含む混合溶媒に完全に溶解させて、プロトン核磁気共鳴分光(H−NMR)によるスペクトル測定を行うことで、該当ピークの積分比から計算されるPAS系ポリマー、PVPおよび(メタ)アクリレート共重合体の3成分の重量比率を評価することができる。この方法によって求まる組成比は中空糸膜全体における平均値である。
NMRの測定方法および解析方法は特に限定されず、公知の手段を用いればよい。組成比を正しく評価するためには以下の手順(1)〜(3)で測定を行うことが好ましい。(1)(メタ)アクリレート共重合体単体のNMR測定
PAS系ポリマーおよびPVPは、DMSO−dに易溶であるため中空糸膜のNMR測定を基本的にはDMSO−d溶媒で行なうが、本発明で用いられる(メタ)アクリレート共重合体は、その共重合組成によっては、DMSO−dへの溶解性が低い。その場合、例えばDMSO−d20体積部に、NMPを80体積部加えることで完全に溶解した状態を得ることができる。
また、(メタ)アクリレート共重合体は、重水素化クロロホルム(CDCl)に易溶である。そのため、(メタ)アクリレート共重合体単体のNMRを、CDCl溶液と上記のDMSO−d/NMP溶液について測定する。特定の(メタ)アクリレート共重合体(図7)のNMRスペクトル例を図1および図2に示す。両者のスペクトルから、NMPのピークに干渉されない(メタ)アクリレート共重合体の特徴的なピークを選定することができる。例えば、0.9ppm付近のアルキル(メタ)アクリレートのメチル基由来のピーク(図1のC)を評価に用いることができる。
(2)中空糸膜のNMR測定(DMSO−d溶媒)
中空糸膜におけるPAS系ポリマーおよびPVPの2成分の重量比を、DMSO−d溶液のNMRスペクトルから評価することができる。PAS系ポリマーとしてポリエーテルスルホンを用いた場合のDMSO−d溶液のNMRスペクトル例を図3に示す。ポリエーテルスルホン(図5)に由来する独立したピークとして、図3の8ppm付近のA(水素数4H)を、PVP(図6)に由来する複数のピークとして1.1〜2.3ppm付近のピーク群B(水素数6H)を採用して、PAS系ポリマーおよびPVPの重量比を計算する。このとき、前記PVPのピーク群Bには、(メタ)アクリレート共重合体のピーク群C′も含まれるため、(メタ)アクリレート共重合体単体のNMRスペクトルの積分比(図1:0.9ppm付近の独立ピークCおよび1.1〜2.3ppm付近のピーク群C′の積分値の比Δ)をもとに、これを除去して正味のPVPの積分値Bを計算する。
(3)中空糸膜のNMR測定(DMSO−d/NMP混合溶媒)
(メタ)アクリレート共重合体のDMSO−dへの溶解性が十分でない場合、同一の中空糸膜サンプルについて、DMSO−d/NMP混合溶媒のNMR測定も実施する。NMRスペクトル例を図4に示す。この測定では(メタ)アクリレート共重合体が完全に溶解しているので、PAS系ポリマーおよび(メタ)アクリレート共重合体の重量比を求めることができる。PVPのピークについては、NMPのピークとほぼ重なるために解析から除外する。8ppm付近のPAS系ポリマー(ポリエーテルスルホン)由来の独立ピークAと、0.9ppm付近の(メタ)アクリレート共重合体由来の独立ピークCの積分比から、両者の重量比を計算することができる。ただし、Cの積分値は(メタ)アクリレート共重合体の疎水部に由来するものであるため、共重合比(図7)をもとに親水部を含めたポリマー全体の重量比を計算する。
上記(1)〜(3)における解析手法および積分を行う化学シフトの範囲については、本発明において選択されるPAS系ポリマーの種類および(メタ)アクリレート共重合体の組成・組成比、溶媒組成によって多少変化しうるものである。また、上記ポリマー3成分以外の添加剤やコンタミ成分が中空糸膜に混入している場合には、それらのピーク同定と積分値除去の処理が適宜行われる必要がある。
以上の測定によって評価された中空糸膜の平均組成において、PAS系ポリマー、PVPおよび(メタ)アクリレート共重合体の3成分について、重量分率を求めたときに、PVPが1.0〜5.0質量%、(メタ)アクリレート共重合体が0.5〜5.0質量%の範囲にあれば、血液浄化療法における抗炎症性が良好であり好ましい。より好ましくは、PVPが1.5〜4.8質量%、(メタ)アクリレート共重合体が1.0〜4.7質量%である。PVPがこの範囲より多いと、血液浄化療法時のPVP溶出速度が大きくなる懸念がある。この範囲よりPVPが少ないと、中空糸膜に十分な濡れ性を付与することができないことがある。また、(メタ)アクリレート共重合体が、この範囲より少ないと、抗炎症性を十分発揮することができないことがある。また、この範囲より(メタ)アクリレート共重合体が多くても抗炎症性の向上がみられないだけでなく、膜表面への(メタ)アクリレート共重合体の付着が多すぎて細孔の入口や流路が狭くなるとか、細孔が閉塞するなどして透析性能の低下を招くことがある。
(ESCAによる中空糸膜の内/外表面の組成比の評価)
血液および透析液が接触する中空糸膜の内表面および外表面の組成評価については、X線光電子分光法(ESCA)による元素組成測定が好適に用いられる。ピーク積分比から計算されるPAS系ポリマー、PVPおよび(メタ)アクリレート共重合体の3成分について重量分率を評価したときに、PVPが5.0〜30質量%、(メタ)アクリレート共重合体が5.0〜30質量%の範囲にそれぞれあることが好ましい。より好ましくは、PVPが10〜30質量%、(メタ)アクリレート共重合体が5.0〜25質量%である。また、前記のH−NMR測定で評価される平均組成としてのPVPおよび(メタ)アクリレート共重合体の重量分率よりも、本方法で評価される中空糸膜の内表面におけるPVPおよび(メタ)アクリレート共重合体の重量分率のほうがそれぞれ大きいことが好ましい。この条件において、PVPおよび(メタ)アクリレート共重合体が適度に混合された状態で、中空糸膜表面に分散した状態となっており、また膜表面における前記2成分ポリマーの分布にばらつきが小さい状態を得ることができるため、後述する抗炎症性効果が高くなる。一方、この範囲よりもPVPおよび(メタ)アクリレート共重合体の重量分率が少ない場合には、中空糸膜に十分な濡れ性が付与されず、また抗炎症性が十分付与されないことがある。また、この範囲より大きいと、中空糸膜のマトリクス相であるPAS系ポリマーの重量分率が小さくなりすぎ、膜の機械強度が十分得られないことがある。
中空糸膜に(メタ)アクリレート共重合体を付与する方法としては、公知の方法により製造された中空糸膜を(メタ)アクリレート共重合体を溶解または分散させた溶液に浸漬して膜表面に(メタ)アクリレート共重合体を付着させる方法(コーティング法)および(メタ)アクリレート共重合体を添加した紡糸原液を用いて中空糸膜を製造する方法(ブレンド法)が挙げられる。しかし、本発明に用いる(メタ)アクリレート共重合体は、PAS系ポリマーおよびPVPと相溶性がなく、しかも水不溶性である。そのため、コーティング法を採用すると、中空糸膜の内表面や外表面には比較的多くの前記共重合体を付着させることはできるが、膜内部まで浸透させるのが難しい問題がある。また、膜内部に十分量の前記重合体を浸透させた後に、膜内表面及び膜外表面に過剰に付着した前記重合体を洗浄により除去しようとすると、水不溶性であるために有機溶媒等の洗浄液を用いる必要が生ずる。そうすると、中空糸膜からPVPが脱落してしまうとか、中空糸膜の部分的な溶解による膜構造の破壊や欠陥が生じることとなり、高いβ2MGのクリアランスを達成しつつ、低いタンパクリーク量を達成できなくなる。一方、ブレンド法であれば、適切な紡糸条件を選定することにより、膜全体の(メタ)アクリレート共重合体の含有率および内表面の(メタ)アクリレート共重合体の含有率を適正な範囲に調製することが可能である。
(人血による中空糸膜の抗炎症性の評価)
中空糸膜と血液が接触することで起こる炎症反応の程度の評価について、新鮮な人血を中空糸膜(マイクロモジュール)に循環し、血液と膜の接触前後における炎症性サイトカイン(TNF−αおよびIL−6)の増加率を比較することで行うことができる。評価は人血で行うことが好ましい。市販の牛血、豚血等の動物血液での評価では上記の炎症性サイトカインについては、初期値が極めて大きい値であったりして再現性の良い評価が行えない。
人血は、医療施設にて医療従事者により採取された健常者数名の血液を用いる。特定の膜面積を有する膜モジュールと一定長のチューブを用いて回路を構成し、透析液側に生理食塩水を、血液側に人血サンプルをそれぞれ一定流量で通液した後、血液を採取する。採取した血液は、炎症性サイトカイン検査および末梢血液一般検査について、専門の医療受託機関に評価を依頼する。
抗炎症性の評価について、TNF−αおよびIL−6の血中量を評価する理由については以下のとおりである。
炎症性サイトカインは、活性化補体、特にアナフィラトキシンC5a等によって走化されたマクロファージから産生されるものであり、これらが血液とともに患者体内に還流され肝臓や骨髄に蓄積すると、肝臓障害や骨障害を引き起こす恐れがあることが指摘されている。そのため、血液が中空糸膜に接触した後に、血中のTNF−αおよびIL−6の濃度の増加率を確認することで、中空糸膜と血液が接触することで生じる炎症反応の程度を調べることができる。
一方、中空糸膜表面の血液適合性評価として、補体価や活性化補体(特に、アナフィラトキシンC3a、C5a)を評価する方法もある。しかしながら、従来の評価法としては例えば、微細ガラスビーズに生体適合性ポリマーをコーティングし、これを試験管に入れて、血清を加えてインキュベートした後、補体価およびアナフィラトキシン生成量を測定する、等の方法が採られるが、中空糸膜において、このような測定は精度の良い試験を行うことが難しい。具体的には、血液透析等においては、中空糸膜を隔てた血液と透析液の間で、不要タンパク質、脂質、尿素等の排出が行われる。活性化補体であるC3a(分子量約9,000)やC5a(分子量約11,000)は分子量が低く、不要タンパク質であるβ2ミクログロブリン(分子量約11,000)と同程度以下であるために、特に高フラックスタイプの中空糸膜において、血液側から透析液側へ相当量透過してしまい、正確にその血中濃度の増加率を評価することは難しい。一方、活性化補体によって走化されたマクロファージ等の食細胞が産生するTNF−α(分子量約25,900)およびIL−6(分子量約23,700)は分子量が大きいので中空糸膜を透過せず、血液側に留まってそのまま体内に還流される可能性が高い。そのため、本発明の中空糸膜の抗炎症性を評価するための、より直接的な方法として、上記の炎症性サイトカインの血中濃度評価を行うものである。
以下に本発明の実施例と具体的な効果について記載するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
((メタ)アクリレート共重合体の数平均分子量測定)
ポリマーサンプル15mgに、3mLのGPC測定用の移動相を加えて溶解し、0.45μmの親水性ポリテトラフルオロエチレン膜(Millex−LH、日本ミリポア)でろ過を行った。GPC測定は510高圧ポンプ、717plus自動注入装置(日本ウォーターズ)、RI−101(昭和電工)の測定装置を用い、カラムPLgel5μMIXED−D(600×7.5mm)(PolymerLaboratories)、カラム温度は常温で行い、移動相は0.03質量%のジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加したテトラヒドロフラン(THF)を用いた。RIにて検出を行い、50μL注入した。分子量構成は単分散PMMA(EasiCal:PolymerLaboratories)により行った。
((メタ)アクリレート共重合体の溶媒溶解性テスト)
10mLバイアル中にサンプル500mgを加えたものを溶媒種の数だけ準備し、水、メタノール、エタノール、2−プロパノールを各々のバイアルに2mL加えて、マグネティックスターラーを用いて十分混和させた後、目視により溶解を確認した。
(ガラス転移温度の測定)
示差走査熱量計(島津DSC−50)を用いて、試料10mgをアルミニウム製サンプルパン(6mmφ)に詰めて、蓋をし、シーラ・クリンパでクリンプおよびシールした後、測定機器にセットして測定を行った。測定は液体窒素による冷却の後、Nガス気流下、昇温速度5℃/minにて−150℃から60℃まで実施した。
(中空糸膜面積の計算)
中空糸膜モジュールの膜面積Aを中空糸膜の内径基準にて下記式で求めた。
A=n×π×d×L(m
ここで、nはモジュール内の中空糸膜本数、πは円周率、dは中空糸の内直径(m)、Lはモジュール内の中空糸有効長(m)である。
(中空糸膜モジュールの作製)
中空糸膜10,000本を束ねたバンドルを、内径30〜35mmφのモジュールケースに充填して、両端を2液硬化性ポリウレタン樹脂にて封止して、膜面積(中空糸膜内径基準)1.5mの中空糸膜モジュールを作製した。血液透析における一般的な血液流量200mL/minにおいて本モジュールの中空糸膜内部の血流の線速度が1.0cm/sとなるように調節した。
(純水の限外ろ過係数UFRの測定)
中空糸膜モジュールの血液出口部回路を封止して、デッドエンド全ろ過とした。加圧タンクを37℃に保温した純水で満たし、レギュレーターで圧力を制御しながら、37℃に保温した恒温槽内の中空糸膜モジュールの中空糸膜内側へ純水を送り、中空糸膜外側から流出したろ液量をメスシリンダーで測定した。膜間圧力差TMPは、TMP=(Pi+Po)/2とした。ここで、Piはモジュール入口圧力、Poはモジュール出口側圧力である。TMPを変化させて4点のろ過流量を測定し、それらの直線の傾きからモジュールの透水性UFR(D)(mL/(h・mmHg))を算出した。このときTMPとろ過流量の相関係数は0.999以上でなくてはならない。また、回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定した。中空糸膜の透水性UFR(H)を膜面積とモジュールの透水性から下記式で算出した。
UFR(H)(mL/(m・h・mmHg))=UFR(D)/A
(β2ミクログロブリン(β2MG)のクリアランス評価)
透析会誌41(3)、p159〜167(2008年)に示されたモジュール性能評価基準に従って実施した。前記の膜面積1.5mのモジュールについて、総タンパク濃度6.5±0.5g/dL、37℃に保温したACD(acid−citrate−dextrose)添加牛血漿を,血液側流量200mL/minで1時間循環した。次いで、ヒトβ2ミクログロブリン(β2MG、遺伝子組み換え品、和光純薬製)を0.05〜0.1mg/Lの濃度になるように、総タンパク質濃度6.5±0.5g/dLのACD添加牛血漿に添加したものを、血液側流量200mL/minにて血液側に流し、市販透析液を500mL/min、ろ過流量15mL/minで透析を実施した。評価はシングルパスで実施した。透析開始後、60分時点の血液入口、出口、透析液出口より採取した試験液のβ2MG濃度を測定する。クリアランス(CL)は以下の式で計算した。
CLβ2MG(mL/min)=200×[(200×CBi)−(185×CBo)]/(200×CBi
ここで、CBiは血液入口部濃度、CBoは血液出口部濃度を表す。
(タンパクリーク量(TPL)の計算)
クエン酸を添加して、凝固を抑制した牛血液をヘマトクリット25〜30%、タンパク濃度6〜7g/dLに調製し、37℃で中空糸膜モジュールに200mL/minで送液し、ろ過流量15mL/minで血液をろ過した。このとき、ろ液は血液に戻し循環系とした。15分毎にろ過流量を測定し、中空糸膜モジュールのろ液を採取した。ろ液に含有するタンパクの濃度を測定した。血漿中のタンパク濃度の測定は、体外診断用のキット(マイクロTP−テストワコー、和光純薬工業社製)を用いて行った。2時間までのデータをもとに、平均タンパクリーク量を求め、3L除水換算時のタンパクリーク量TPLを算出して、これを評価値とした。
(中空糸膜のPVP溶出量測定)
透析型人工腎臓装置製造基準に定められた方法にて、中空糸膜を抽出処理し、該抽出液中のPVPを比色法で定量した。具体的には、乾燥中空糸膜モジュールについて、中空糸膜1gを取り出して、これを純水100mLに加え、70℃で1時間抽出処理した。得られた抽出液2.5mL、0.2molクエン酸水溶液1.25mL、0.006規定のヨウ素水溶液0.5mLをよく混合し、室温で10分間放置した。この抽出液について、分光光度計(日立製作所製、U−3000)を用いて波長範囲200〜350nmの吸光度を測定し、この波長範囲での最大の吸光度を求めた。モジュールから中空糸膜サンプルを取り出す際に、糸の長手方向に10個に等分し、各々の部位から乾燥状態の中空糸膜1gをはかりとり全サンプルについて測定を行い、その平均値を求めた。
(中空糸膜の抗炎症性評価)
(1.マイクロモジュールの作製)
内径8mm、全長95mm、透析液側(中空糸膜外側)の入口ポートおよび出口ポートを備えたポリカーボネート製のマイクロモジュールを準備し、これに中空糸有効長75mm、内径基準の膜面積24cm、血液循環流量1.0mL/minのときの中空糸内部の線速度が1.0cm/sとなるように中空糸膜を充填した。両端部をウレタン樹脂でポッティングして、硬化後にナイフで中空糸両端部を開口させて、それぞれポート付きのフタを取り付けた。糸本数は中空糸膜の内径によって多少変わるが、例えば内径200μmのときに糸本数51本として作製を行った。
マイクロモジュールは、使用前に洗浄処理を行った。血液側(中空糸膜内側)にシリンジで生理食塩水を5mL入れ、透析側(中空糸膜外側)にも同様に生理食塩水を5mL入れた。その後、血液側の生理食塩水をシリンジで押して出し切った。次に、リークテストとして、血液側の片方の端面のポートにシリンジを挿して、反対側は封止した状態として、シリンジで空気を押し出して、中空糸膜外側に膜リークによる気泡が生じないかを確認した。
(2.人血サンプルの準備)
血液サンプルは、東洋紡総合研究所診療所内にてボランティアの健常者複数名の血液をそれぞれ50mLずつ採取し、ヘパリン2mLを入れてなじませた後遠沈管に入れて、37℃の恒温槽内で測定時まで調温し、速やかに評価に供した。
(3.チューブ回路循環後の炎症性サイトカイン量の評価)
中空糸膜のみならず、チューブ回路と血液が接触することによっても、血液中の炎症性サイトカイン量は明確な増加が確認された。そのため、あらかじめ材質とチューブ回路長を固定した条件で血液を循環処理した後、炎症性サイトカイン量を測定し、これをブランクとして評価を行った。具体的には、内径1mm、外径3mm、長さ70cmのシリコーンチューブを準備し、これをマイクロチューブポンプ(EYELA MP−3)に取り付けて、チューブを37℃の恒温槽に静置して、生理食塩水を用いて1.0mL/minに流量を調節して循環した。その後、チューブ内に人血サンプルを流量1.0mL/minで15分間循環した。循環後の血液は、真空採血管(TERUMO ベネジェクトII真空採血管(滅菌品))に、4mLのサンプルおよび2mLのサンプルを採取して、それぞれ高感度IL−6およびTNF−α検査および末梢血液一般検査を近畿予防医学研究所に依頼して実施した。
(4.マイクロモジュール循環後の炎症性サイトカイン量の評価)
上記の洗浄後のマイクロモジュールに手順(3)で血液を循環したシリコーンチューブ回路70cmを、50cmと20cmにカットして、速やかにそれぞれマイクロモジュールの血液側の入口ポートと出口ポートに接続した。その後、マイクロモジュールとチューブ回路を37℃の恒温槽に静置して、マイクロチューブポンプを用いて流量1.0mL/minにて、同一の血液サンプルを15分間循環した。循環後の血液を前記同様に高感度IL−6およびTNF−α検査および末梢血液一般検査を実施した。
このようにして得られた炎症性サイトカイン(および必要に応じ、末梢血液一般検査の各項目)の各血中濃度から、炎症性サイトカイン増加率RIを下記式を用いて求めた。 RI(%)=100×(Ctotal−Ctube)/Ctube
ここでCtotalは、マイクロモジュールおよびチューブからなる系全体を循環した後の血液中のIL−6またはTNF−αの濃度(pg/ml)であり、Ctubeは、チューブ回路のみを循環した後の血液中のIL−6またはTNF−αの濃度(pg/mL)である。
(5.無処理血液の炎症性サイトカイン量の評価)
循環処理前の血液サンプルについて、そのまま真空採血管に取って同様に高感度IL−6およびTNF−α分析および末梢血液一般検査を必要に応じて実施した。
上記手順3〜5において、末梢血液一般検査を同時に実施したが、これは本評価の血液サンプルについて、白血球数および血小板数に異常値が生じていないかを確認するために参考として行った。
(中空糸膜モジュールの残血性評価)
上記のマイクロモジュールへの血液循環が終わったモジュールを解体し、残血し、赤色に染まった糸の本数を数えた。残血糸が0〜2本を◎(excellent)、3〜5本を○(good)、6〜10本を△(fair)、11本以上を×(bad)として評価した。
H−NMRによるポリマーおよび中空糸膜の測定方法)
以下の装置および条件にて測定を行った。
(装置):フーリエ変換核磁気共鳴装置(ブルカー・バイオスピン製AVANCE500、マグネットはオクスフォード社製)
(測定溶液):試料5〜50mgを0.6mLの重水素化ジメチルスルホキシド(その他溶媒)に溶解した。
H共鳴周波数):500.13MHz
(検出パルスのフリップ角):45°
(データ取り込み時間):4.0秒
(遅延時間):1.0秒
(積算回数):5〜200回
(測定温度):室温または40℃
((メタ)アクリレート共重合の組成比の評価)
NMR用試験管中にポリマーサンプル15mgを重水素化クロロホルム0.6mLに溶解したものを注入し、上記測定装置および測定条件により、NMR測定を行って算出した。
(X線光電子分光法(ESCA)による中空糸膜内/外表面の組成分析)
中空糸膜サンプルの外表面についてはそのまま測定を行い、内表面についてはナイフで開腹して測定した。装置および測定条件は、以下のようにして行った。
(装置):K−Alpha(Thermo Fisher Scientific製)
[測定条件]
(励起X線):モノクロ化Al Kα線
(X線出力):12kV,2.5mA
(光電子脱出角度):90°
(スポットサイズ):約200μmφ
(パスエネルギー):50eV
(ステップ):0.1eV
解析は以下のように行った。表面の各成分の重量分率は、上記ESCA測定にて評価したN元素(PVPに由来)、S元素(PAS系ポリマーに由来)、COO構造由来のC元素((メタ)アクリレート共重合体に由来)の元素比率と、各ポリマーの単位式量から求めた。COO構造のC元素は、C1sスペクトルを、(1)CHx、C−C、C=C、C−S由来の成分、(2)C−O、C−N由来の成分、(3)C=O由来の成分、(4)COO由来の成分、(5)π−π由来の成分、の5成分についてピーク分割を行った結果をもとに算出した(図8)。COO由来のピークはC−C等由来のメインピークから約4eV高結合エネルギー側に現れるピークを指す。バックグラウンドの差し引きは直線法にて行った。試料表面の各成分の重量分率は3箇所以上の測定結果の平均値とした。ただし、解析方法については、本発明に用いるPASポリマーの種類、(メタ)アクリレート共重合体の共重合比によって多少方法が変化しうるため、適宜調整した。
[実施例1]
((メタ)アクリレート共重合体の作製)
前述の化学式(III)、(IV)で表される(メタ)アクリレート共重合体を以下のとおり作製した。メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)151.0gおよび2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)297.0gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.445gを加えて、酢酸エチル1800g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後、反応液をメタノールに滴下し沈殿させ、生成物を単離した。生成物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、メタノールに滴下する操作を2回行って精製した。これを一昼夜60℃にて減圧乾燥し、目的とする(メタ)アクリレート共重合体を得た。疎水性部(EHA)と親水性部(MTEGA)の共重合比は0.68:0.32であった。ポリマーのガラス転移温度は−58℃、数平均分子量は14,000であった。
(紡糸原液の作製)
PAS系ポリマーとしてポリエーテルスルホン(BASF社製、6020P)を16.5質量%、PVP(BASF社製コリドンK−90)を3.0質量%、上記(メタ)アクリレート共重合体を0.30質量%、溶媒としてジメチルアセトアミドを75.2質量%、非溶媒としてRO水5.0質量%を60℃で混練、溶解し、紡糸原液を作製した。
(中空糸膜の製造方法)
得られた紡糸原液を60℃に加温した二重管ノズルから芯液(50質量%のジメチルアセトアミド水溶液)とともに吐出させ、紡糸管により外気と遮断された400mmの乾式部を通過後、70℃の30質量%ジメチルアセトアミド水溶液中で凝固させ、75℃の水洗浴を通過後に30m/minの速度で綛に捲き上げた。
(乾燥・バンドル化工程)
得られた中空糸膜約10000本の束を長さ40cmに切断し、ガーゼを巻いた後、熱風乾燥機にて60℃で18h乾燥させた。
(モジュールの作製工程)
得られた中空糸膜束をモジュールケースに挿入後、ポリウレタン樹脂で中空糸膜束端部とケースを液密に接着した。ポリウレタン樹脂が硬化した後、中空部が開口するように接着部の一部を切断し、ヘッダーを取り付けることによりモジュールを作製した。このように作製したモジュールを25kGyの吸収線量でγ線を照射し滅菌処理を行った。このモジュールを上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
(マイクロモジュールの作製工程)
内径8mm、全長95mm、透析液側(中空糸膜外側)の入口ポートおよび出口ポートを備えたポリカーボネート製のマイクロモジュールを準備し、これに中空糸有効長75mm、内径基準の膜面積24cm、血液循環流量1.0mL/minのときの中空糸内部の線速度が1.0cm/sとなるように中空糸膜を充填した。両端部をウレタン樹脂でポッティングして、硬化後にナイフで中空糸両端部を開口させて、それぞれポート付きのフタを取り付けた。このマイクロモジュールを上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1、表2および図10に示す。
[実施例2]
紡糸原液の作製において、PAS系ポリマーとしてポリエーテルスルホン(BASF社製、6020P)を16.5質量%、PVP(BASF社製コリドンK−90)を3.0質量%、上記(メタ)アクリレート共重合体を0.90質量%、溶媒としてジメチルアセトアミドを74.6質量%、非溶媒としてRO水5.0質量%を60℃で混練、溶解し、紡糸原液を作製した以外は、実施例1と同様な方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[実施例3]
中空糸膜の製造方法において、90℃の水洗浴を通過させた以外は、実施例1と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[実施例4]
(メタ)アクリレート共重合体の作製において、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)174.7gおよび2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)273.3gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.445gを加えて、酢酸エチル1800g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行い、疎水性部(EHA)と親水性部(MTEGA)の共重合比が0.61:0.39であるものを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[実施例5]
紡糸原液の作製において、PAS系ポリマーとしてポリエーテルスルホン(BASF社製、6020P)を21.0質量%、PVP(BASF社製コリドンK−90)を3.5質量%、(メタ)アクリレート共重合体を0.40質量%、溶媒としてジメチルアセトアミド溶媒を70.4質量%、非溶媒としてRO水4.7質量%を60℃で4時間溶解し、紡糸原液を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[実施例6]
紡糸原液の作製において、PAS系ポリマーとしてポリエーテルスルホン(BASF社製、6020P)を25.6質量%、PVP(BASF社製コリドンK−90)を4.0質量%、(メタ)アクリレート共重合体を0.60質量%、溶媒としてジメチルアセトアミド溶媒を65.4質量%、非溶媒としてRO水4.4質量%を60℃で混練、溶解し、紡糸原液を作製した以外は、実施例3と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[実施例7]
紡糸原液の作製において、PAS系ポリマーとしてポリエーテルスルホン(BASF社製、6020P)を34.5質量%、PVP(BASF社製コリドンK−90)を5.9質量%、(メタ)アクリレート共重合体を0.60質量%、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン溶媒を35.4質量%、非溶媒としてトリエチレングリコール23.6質量%を60℃で混練、溶解し、紡糸原液を作製した以外は、実施例6と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[実施例8]
紡糸原液の作製において、PAS系ポリマーとしてポリスルホン(SOLVAY社製、ユーデルP−1700)を17.0質量%、PVP(BASF社製コリドンK−90)を3.0質量%、(メタ)アクリレート共重合体を0.30質量%、溶媒としてジメチルアセトアミド溶媒を74.7質量%、非溶媒としてRO水5.0質量%を60℃で混練、溶解し、紡糸原液を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[実施例9]
(メタ)アクリレート共重合体の作製において、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)100.3gおよび2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)339.2gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.445gを加えて、酢酸エチル1800g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行い、疎水性部(EHA)と親水性部(MTEGA)の共重合比が0.79:0.21であるものを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[実施例10]
紡糸原液の作製において、PAS系ポリマーとしてポリエーテルスルホン(BASF社製、6020P)を14.5質量%、PVP(BASF社製コリドンK−90)を5.0質量%、(メタ)アクリレート共重合体を0.30質量%、溶媒としてジメチルアセトアミド溶媒を75.2質量%、非溶媒としてRO水5.0質量%を60℃で4時間溶解し、紡糸原液を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[比較例1]
(紡糸原液の作製)
PAS系ポリマーとしてポリエーテルスルホン(BASF社製、6020P)を16.5質量%、PVP(BASF社製コリドンK−90)を3.0質量%、溶媒としてジメチルアセトアミド溶媒を75.5質量%、非溶媒としてRO水5.0質量%を60℃で混練、溶解し、紡糸原液を作製した。
(中空糸膜の製造方法)
得られた製膜原液を60℃に加温した二重管ノズルから芯液として50質量%のジメチルアセトアミド水溶液とともに吐出させ、紡糸管により外気と遮断された400mmの乾式部を通過後、70℃の30質量%ジメチルアセトアミド水溶液中で凝固させ、75℃の水洗浴を通過後に30m/minの速度で綛に捲き上げた。
(乾燥・バンドル化工程)
得られた中空糸膜約10000本の束を長さ40cmに切断し、ガーゼを巻いた後、熱風乾燥機にて60℃で18h乾燥させた。
((メタ)アクリレート共重合体のコーティング)
得られた中空糸膜を(メタ)アクリレート共重合体0.05質量%のエタノール水溶液にディップコートし、風乾した。
(モジュールの作製工程)
得られた中空糸膜束をモジュールケースに挿入後、ポリウレタン樹脂で中空糸膜束端部とケースを液密に接着した。ポリウレタン樹脂が硬化した後、中空部が開口するように接着部の一部を切断し、ヘッダーを取り付けることによりモジュールを作製した。このように作製したモジュールを25kGyの吸収線量でγ線を照射し滅菌処理を行った。このモジュールを上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
(マイクロモジュールの作製工程)
内径8mm、全長95mm、透析液側(中空糸膜外側)の入口ポートおよび出口ポートを備えたポリカーボネート製のマイクロモジュールを準備し、これに中空糸有効長75mm、内径基準の膜面積24cm、血液循環流量1.0mL/minのときの中空糸内部の線速度が1.0cm/sとなるように中空糸膜を充填した。両端部をウレタン樹脂でポッティングして、硬化後にナイフで中空糸両端部を開口させて、それぞれポート付きのフタを取り付けた。このマイクロモジュールを上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1に示す。
[比較例2]
(メタ)アクリレート共重合体のコーティングにおいて、(メタ)アクリレート共重合体0.5質量%のエタノール水溶液にディップコートし、風乾した以外は、比較例1と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[比較例3]
(メタ)アクリレート共重合体のコーティングにおいて、(メタ)アクリレート共重合体0.15質量%のエタノール水溶液にディップコートし、風乾した以外は、比較例1と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[比較例4]
(メタ)アクリレート共重合体のコーティングにおいて、(メタ)アクリレート共重合体1.0質量%のエタノール水溶液にディップコートし、風乾した以外は、比較例1と同様の方法で、中空糸膜およびモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[比較例5]
紡糸原液の作製において、PAS系ポリマーとしてポリエーテルスルホン(BASF社製、6020P)を16.5質量%、PVP(BASF社製コリドンK−90)を3.0質量%、溶媒としてジメチルアセトアミド溶媒を75.5質量%、非溶媒としてRO水5.0質量%を60℃で混練、溶解し、紡糸原液を作製した以外は、実施例1と同様の方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1、表2および図10、図11に示す。
[比較例6]
(メタ)アクリレート共重合体の作製において、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)448.0gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.445gを加えて、酢酸エチル1800g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行い、親水性部(MTEGA)が100%であるものを使用した以外は、実施例1と同様な方法で、モジュールおよびマイクロモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
[比較例7]
(メタ)アクリレート共重合体の作製において、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)448.0gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.445gを加えて、酢酸エチル1800g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行い、疎水性部(EHA)が100%であるものを使用した以外は、実施例1と同様の方法で、中空糸膜およびモジュールを作製した。上述したとおりの測定評価に供して得られた結果を表1および図11に示す。
表1、2および図10、11の結果から明らかなように、実施例1−10は、透析性能のバランスに優れ、かつ抗炎症性に優れる中空糸膜が得られている。一方で、比較例1−4は、中空糸膜製膜後に(メタ)アクリレート共重合体をディップコートした結果、膜表面への前記共重合体の付着量は多くなったが、膜表面の細孔を閉塞するためか、透水量に比してβ2ミクログロブリンの透過性(除去性)が低くなった。比較例5では、(メタ)アクリレート共重合体を付与しなかった結果、抗炎症性の指標である炎症性サイトカイン(TNF−αおよびIL−6)の増加率RIが実施例に比較して大きくなった。また、残血モジュール数が若干多くなった。比較例6は、親水性アクリレートのホモポリマーを紡糸原液に添加して中空糸膜を製造した結果、抗炎症性の指標である炎症性サイトカイン(TNF−αおよびIL−6)の増加率RIが実施例に比較して大きくなった。また、残血モジュール数が若干多くなった。さらに、抽出液のUV吸光度が高くなった。比較例7は、疎水性アクリレートのホモポリマーを紡糸原液に添加して中空糸膜を製造した結果、抗炎症性の指標である炎症性サイトカイン(TNF−αおよびIL−6)の増加率RIが実施例に比較して大きくなった。また、残血モジュール数が若干多くなった。
本発明の中空糸膜は、透水量や老廃物の除去性に優れるだけでなく、血液と接触した際にも炎症反応物質の産生を抑制することができるので、長期間の血液透析歴を有する患者にも安心して適用することができる。
1:モジュール
2:モジュールケース
3:中空糸膜
4:接着剤
5:キャップ
6a:透析液導入口
6b:透析液排出口
7a:血液導入口
7b:血液排出口

Claims (9)

  1. ポリアリールスルホン系ポリマー、ポリビニルピロリドン、および下記一般式(I)で示されるアルキル(メタ)アクリレートと下記一般式(II)で示されるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとからなる水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体を含む中空糸膜であって、前記中空糸膜を核磁気共鳴分光法を用いて測定したときに、(メタ)アクリレート共重合体の含有率が0.5〜5質量%であり、前記中空糸膜の内表面をX線光電子分光法を用いて測定したときに、(メタ)アクリレート共重合体の含有率が5〜30質量%である、中空糸膜。
    (式中、Rは、炭素原子数2〜30のアルキル基またはアラルキル基、R、Rは、水素原子またはメチル基、kは1〜1000の整数を示す。m、nは、共重合の比率を示し、m+n=1である。)
  2. 前記アルキル(メタ)アクリレートが下記一般式(III)で示されるものであり、前記メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが下記一般式(IV)で示されるものである、請求項1に記載の中空糸膜。
  3. 前記一般式(III)および(IV)において、m=0.5〜0.9であり、n=0.1〜0.5である、請求項2に記載の中空糸膜。
  4. 前記中空糸膜を核磁気共鳴分光法を用いて測定したときに、中空糸膜中のポリビニルピロリドンの含有率が0.5〜5質量%、前記中空糸膜の内表面をX線光電子分光法を用いて測定したときに、ポリビニルピロリドンの含有率が5〜30質量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の中空糸膜。
  5. 前記ポリアリールスルホン系ポリマーが、ポリエーテルスルホンである、請求項1〜4のいずれかに記載の中空糸膜。
  6. 前記中空糸膜が血液浄化用である、請求項1〜5のいずれかに記載の中空糸膜。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸膜を装填した中空糸膜モジュールであって、中空糸膜の内腔に連通する2以上の流体出入口および中空糸膜の外腔に連通する2以上の流体出入口を有することを特徴とする中空糸膜モジュール。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の中空糸膜を製造する方法であって、ポリアリールスルホン系ポリマー、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリレート共重合体、および溶媒を混合して得られた紡糸原液を芯液と共に二重環ノズルより吐出し、外部凝固液に浸漬する工程を含むことを特徴とする方法。
  9. 前記紡糸原液は、ポリアリールスルホン系ポリマーを10〜50質量%、ポリビニルピロリドンを1〜10質量%、(メタ)アクリレート共重合体を0.1〜1.5質量%含む、請求項8に記載の中空糸膜を製造する方法。
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