以下、添付図面に従って本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るレーザーダイシング装置の概略を示した構成図である。図1に示すように、レーザーダイシング装置10は、ステージ12、レーザーヘッド20、制御部50等で構成されている。
ステージ12は、XYZθ方向に移動可能に構成され、ウェーハWを吸着保持する。ウェーハWは、表面(デバイス面)とは反対側の裏面がレーザー光照射面となるようにステージ12上に載置される。なお、ウェーハWの表面をレーザー光照射面としてもよい。後述する他の実施形態においても同様である。
レーザーヘッド20は、ウェーハWの内部に改質領域を形成するための加工用レーザー光L1をウェーハWに対して照射する。
制御部50は、CPU、メモリ、入出力回路部等からなり、レーザーダイシング装置10の各部の動作を制御する。
レーザーダイシング装置10はこの他に、図示しないウェーハ搬送手段、操作板、テレビモニタ、及び表示灯等から構成されている。
操作板には、レーザーダイシング装置10の各部の動作を操作するスイッチ類や表示装置が取り付けられている。テレビモニタは、図示しないCCDカメラで撮像したウェーハ画像の表示、又はプログラム内容や各種メッセージ等を表示する。表示灯は、レーザーダイシング装置10の加工中、加工終了、非常停止等の稼働状況を表示する。
次に、レーザーヘッド20の詳細構成について説明する。
図1に示すように、レーザーヘッド20は、加工用レーザー光源100、コリメートレンズ102、ダイクロイックミラー104、集光レンズ106、AF装置(オートフォーカス装置)110等で構成されている。
加工用レーザー光源100は、ウェーハWの内部に改質領域を形成するための加工用レーザー光L1を出射する。例えば、加工用レーザー光源100は、パルス幅が1μs以下であって、集光点におけるピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上となるレーザー光を出射する。
加工用レーザー光源100から出射された加工用レーザー光L1は、コリメートレンズ102でコリメートされ、ダイクロイックミラー104を透過した後、集光レンズ106によりウェーハWの内部に集光される。加工用レーザー光L1の集光点のZ方向位置(ウェーハ厚み方向位置)は、第1アクチュエータ108によって集光レンズ106をZ方向(加工用レーザー光L1の光軸方向)に微小移動させることにより調節される。第1アクチュエータ108は、集光レンズ駆動手段の一例である。なお、詳細は後述するが、第1アクチュエータ108は、集光レンズ106とウェーハWのレーザー光照射面との距離が一定となるように、制御部50によって駆動が制御される。
図2は、ウェーハ内部の集光点近傍に形成される改質領域を説明する概念図である。図2(a)は、ウェーハWの内部に入射された加工用レーザー光L1が集光点に改質領域Pを形成した状態を示し、図2(b)は断続するパルス状の加工用レーザー光L1の下でウェーハWが水平方向に移動され、不連続な改質領域P、P、…が並んで形成された状態を表している。図2(c)は、ウェーハWの内部に改質領域Pが多層に形成された状態を示している。
図2(a)に示すように、ウェーハWのレーザー光照射面から入射した加工用レーザー光L1の集光点がウェーハWの厚さ方向の内部に設定されていると、ウェーハWのレーザー光照射面を透過した加工用レーザー光L1は、ウェーハWの内部の集光点でエネルギーが集中し、ウェーハWの内部の集光点近傍に多光子吸収によるクラック領域、溶融領域、屈折率変化領域等の改質領域が形成される。図2(b)に示すように、断続するパルス状の加工用レーザー光L1をウェーハWに照射して複数の改質領域P、P、…をダイシングストリートに沿って形成することで、ウェーハWは分子間力のバランスが崩れ、改質領域P、P、…を起点として自然に割断するか、或いは僅かな外力を加えることによって割断される。
また、厚さの厚いウェーハWの場合は、改質領域Pの層が1層では割断できないので、図2(c)に示すように、ウェーハWの厚さ方向に加工用レーザー光L1の集光点を移動し、改質領域Pを多層に形成させて割断する。
なお、図2(b)、(c)に示した例では、断続するパルス状の加工用レーザー光L1で不連続な改質領域P、P、…を形成した状態を示したが、加工用レーザー光L1の連続波の下で連続的な改質領域Pを形成するようにしてもよい。不連続の改質領域Pを形成した場合は、連続した改質領域Pを形成した場合に比べて割断され難いので、ウェーハWの厚さや搬送中の安全等の状況によって、加工用レーザー光L1の連続波を用いるか、断続波を用いるかが適宜選択される。
AF装置110は、AF用レーザー光(検出用レーザー光)L2をウェーハWに対して照射し、ウェーハWのレーザー光照射面で反射したAF用レーザー光L2の反射光を受光し、その受光した反射光に基づいて、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置(Z方向位置)を検出する。AF装置110は、高さ位置検出手段の一例である。
AF装置110は、AF用レーザー光L2を出力する光源部200と、光源部200から出力されたAF用レーザー光L2を集光レンズ106に導く照射光学系300と、集光レンズ106により集光されウェーハWのレーザー光照射面で反射したAF用レーザー光L2の反射光を検出する検出光学系400と、検出光学系400で検出されたAF用レーザー光L2の反射光を利用してウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を示すAF信号を生成するAF信号処理部500と、を備えている。
光源部200は、第1光源202、第2光源204、コリメートレンズ206、208、ダイクロイックミラー210、集光レンズ212等で構成されている。光源部200は、検出用レーザー光出力手段の一例である。
第1光源202及び第2光源204は、例えばLD(Laser Diode)光源やSLD(Super Luminescent Diode)光源等からなり、互いに異なる波長のAF用レーザー光(検出用レーザー光)L2a、L2bをそれぞれ出射する。AF用レーザー光L2a、L2bは、加工用レーザー光L1とは異なる波長であってウェーハWのレーザー光照射面で反射可能な波長を有する。すなわち、AF用レーザー光L2aは第1波長域(例えば、620〜750nm)の波長を有するレーザー光(赤色レーザー光)であり、AF用レーザー光L2bは第1波長域とは異なる第2波長域(例えば、450〜495nm)の波長を有するレーザー光(青色レーザー光)である。第1光源202及び第2光源204は、複数の検出用レーザー光源の一例である。
第1光源202及び第2光源204から出射されたAF用レーザー光L2a、L2bは、それぞれ、コリメートレンズ206、208でコリメートされ、ダイクロイックミラー210に導かれる。
ダイクロイックミラー210は、コリメートレンズ206、208を介して入射されるAF用レーザー光L2a、L2bのうち、一方のAF用レーザー光L2aを透過し、他方のAF用レーザー光L2bを反射することにより、両方の光を同一光路に導く。ダイクロイックミラー210により同一光路に導かれたAF用レーザー光L2a、L2bの合成光は、集光レンズ212により集光されて光源光(AF用レーザー光L2)として光源部200から出力される。なお、ダイクロイックミラー210は、光合成手段の一例である。
照射光学系300は、光ファイバ302、コリメートレンズ304、フォーカス光学系306、ハーフミラー308、4f光学系310、ダイクロイックミラー104等で構成されている。
光源部200から出力されたAF用レーザー光L2(AF用レーザー光L2a、L2bの合成光)は、光ファイバ302の入射端に入射され、光ファイバ302を経由して光ファイバ302の出射端から出射される。さらに、このAF用レーザー光L2は、コリメートレンズ304でコリメートされ、フォーカス光学系306を経由し、ハーフミラー308で反射される。そして、4f光学系310を経由し、ダイクロイックミラー104で反射され、加工用レーザー光L1と同一光路に導かれる。さらに、このAF用レーザー光L2は、集光レンズ106により集光されてウェーハWに照射される。
ウェーハWのレーザー光照射面で反射したAF用レーザー光L2の反射光は、集光レンズ106により屈折され、ダイクロイックミラー104で反射され、4f光学系310を経由し、ハーフミラー308を透過し、照射光学系300の光路から分岐された光路上に設けられた検出光学系400に導かれる。
なお、ハーフミラー308は、光路分岐手段の一例であり、照射光学系300の光路(照射光路)に配設され、ウェーハWのレーザー光照射面で反射したAF用レーザー光L2の反射光の一部を照射光学系300の光路から検出光学系400の光路(検出光路)に分岐させる。
検出光学系400は、ダイクロイックミラー402、結像レンズ404、406、シリンドリカルレンズ408、410、第1検出器412、第2検出器414等で構成されている。検出光学系400は、光検出手段の一例である。検出光学系400に入射したAF用レーザー光L2の反射光は、ダイクロイックミラー402に導かれる。
ダイクロイックミラー402は、AF用レーザー光L2の反射光を特定の波長の光とそれ以外の波長の光に分割する波長分割手段である。すなわち、AF用レーザー光L2の反射光のうち、第1光源202から出射されたAF用レーザー光L2aの波長に相当する第1波長域の光は、ダイクロイックミラー402を透過し、結像レンズ404、シリンドリカルレンズ408を経由して、第1検出器412に受光される。一方、第2光源204から出射されたAF用レーザー光L2bの波長に相当する第2波長域の光は、ダイクロイックミラー402で反射され、結像レンズ406、シリンドリカルレンズ410を経由して、第2検出器414に受光される。なお、シリンドリカルレンズ408、410は、ダイクロイックミラー402で波長域毎に分割された光にそれぞれ非点収差を付与する非点収差付与手段である。
第1検出器412及び第2検出器414は、4分割された受光素子(光電変換素子)を有する4分割フォトダイオードからなり、それぞれの波長域の光の集光像を分割して受光し、それぞれの光量に応じた出力信号(電気信号)をAF信号処理部500に出力する。
なお、第1検出器412及び第2検出器414は、それぞれの波長域に対する色収差を考慮した位置に配置されており、同じ合焦位置を示すように調整されている。
AF信号処理部500は、第1検出器412及び第2検出器414の少なくとも一方の検出器の各受光素子から出力された出力信号に基づいて、ウェーハWのレーザー光照射面の基準位置からのZ方向の変位(デフォーカス距離)を示す変位信号(検出信号)としてのAF信号(オートフォーカス信号)を生成して制御部50に出力する。なお、AF信号処理部500は、変位信号生成手段の一例である。
ここで、ウェーハWのレーザー光照射面の変位の検出原理について説明する。
図3は、検出器(第1検出器412及び第2検出器414に相当)を構成する4分割フォトダイオード600の受光面に形成される集光像の様子を示した図である。なお、図3(a)〜(c)は、図4においてウェーハWのレーザー光照射面がそれぞれh1、h2、h3で示す位置にあるときに、4分割フォトダイオード600の受光面に形成される集光像の様子を示している。
まず、ウェーハWのレーザー光照射面がh2の位置にある場合、すなわち、ウェーハWのレーザー光照射面とAF用レーザー光L2の集光点とが一致している場合には、図3(b)に示すように、4分割フォトダイオード600の受光面上に形成されるAF用レーザー光L2の反射光の集光像は真円となる。
一方、ウェーハWのレーザー光照射面がh1の位置にある場合、すなわち、ウェーハWのレーザー光照射面がAF用レーザー光L2の集光点よりも集光レンズ106に近い位置にある場合には、図3(a)に示すように、4分割フォトダイオード600の受光面上に形成されるAF用レーザー光L2の反射光の集光像は縦方向に引き伸ばされた楕円となり、その大きさはウェーハWのレーザー光照射面の変位量に依存する。
また、ウェーハWのレーザー光照射面がh3の位置にある場合、すなわち、ウェーハWのレーザー光照射面がAF用レーザー光L2の集光点よりも集光レンズ106から遠い位置にある場合には、図3(c)に示すように、4分割フォトダイオード600の受光面上に形成されるAF用レーザー光L2の反射光の集光像は横方向に引き伸ばされた楕円となり、その大きさはウェーハWのレーザー光照射面の変位量に依存する。
このように、4分割フォトダイオード600を構成する各受光素子602A〜602Dで受光される光量は、ウェーハWのレーザー光照射面の変位に応じて変化する。したがって、このような性質を利用してウェーハWのレーザー光照射面の変位を検出することができる。
図5は、AF信号の出力特性を示したグラフであり、横軸はウェーハWのレーザー光照射面の基準位置からZ方向(ウェーハ厚み方向)の変位(デフォーカス距離)を示し、縦軸はAF信号の出力値を示している。なお、ウェーハWのレーザー光照射面の基準位置(原点)にAF用レーザー光L2の集光点が一致するように予め調整されているものとする。
図5に示すように、AF信号の出力特性は、ウェーハWのレーザー光照射面の基準位置(原点)をゼロクロス点としたS字状の曲線となる。また、ウェーハWのレーザー光照射面の位置が、図中に矢印で示した範囲、すなわち、ウェーハWのレーザー光照射面の変位を検出可能な測定範囲(引き込み範囲)内にあるとき、ウェーハWのレーザー光照射面の変位とAF信号の出力との関係は、原点を通る単調増加曲線(又は単調減少曲線)となり、その大部分で略直線的な変化を示している。つまり、AF信号の出力がゼロであれば、ウェーハWのレーザー光照射面がAF用レーザー光L2の集光点と一致する合焦位置にあることが分かり、AF信号の出力がゼロでなければ、ウェーハWのレーザー光照射面の変位方向及び変位量を知ることができる。
このような出力特性を有するAF信号は、ウェーハWのレーザー光照射面の基準位置からZ方向の変位を示すウェーハ変位情報としてAF信号処理部500で生成され、制御部50に出力される。
ここで、本実施形態におけるAF信号処理部500は、第1検出器412及び第2検出器414でそれぞれ受光された光の総受光量が多い方の検出器から出力される出力信号を用いてAF信号Eを生成している。
具体的には、第1検出器412を構成する4分割フォトダイオード600の受光素子600A〜600Dから出力された出力信号をそれぞれA1〜D1とし、第2検出器414を構成する4分割フォトダイオード600の受光素子600A〜600Dから出力された出力信号をそれぞれA2〜D2としたとき、第1検出器412における出力信号の和(A1+B1+C1+D1)が第2検出器414における出力信号の和(A2+B2+C2+D2)以上である場合には、AF信号Eを、次式(1)に従って求める。
E={(A1+C1)−(B1+D1)}/{(A1+C1)+(B1+D1)} ・・・(1)
一方、第1検出器412における出力信号の和(A1+B1+C1+D1)が第2検出器414における出力信号の和(A2+B2+C2+D2)未満である場合には、AF信号Eを、次式(2)に従って求める。
E={(A2+C2)−(B2+D2)}/{(A2+C2)+(B2+D2)} ・・・(2)
すなわち、本実施形態におけるAF信号処理部500では、AF信号Eを求めるための検出器を、第1検出器412及び第2検出器414のうち総受光量が多い方の検出器に切り替えて使用している。これにより、常に高い反射率の波長の光を用いてAF信号Eが生成されるので、ウェーハWのレーザー光照射面に照射されたAF用レーザー光L2の反射率が波長により変化しても、ウェーハWのレーザー光照射面に形成された薄膜のばらつきによる影響を受けることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置の検出を精度よく安定して行うことができる。
制御部50は、AF信号処理部500から出力されたAF信号に基づいて、集光レンズ106とウェーハWのレーザー光照射面との距離が一定となるように、第1アクチュエータ108の駆動を制御する。これにより、ウェーハWのレーザー光照射面の変位に追従するように集光レンズ106がZ方向(ウェーハ厚み方向)に微小移動され、ウェーハWのレーザー光照射面から一定の距離(深さ)に加工用レーザー光L1の集光点が位置するようになるので、ウェーハWの内部の所望の位置に改質領域を形成することができる。なお、制御部50は、制御手段の一例である。
以上のように構成されるAF装置110には、照射光学系300の光路にフォーカス光学系306が配設されている。具体的には、光源部200とハーフミラー308との間の光路にフォーカス光学系306が配設されている。
フォーカス光学系306は、集光点調整光学系の一例であり、加工用レーザー光L1の集光点とは独立してAF用レーザー光L2の集光点をZ方向(ウェーハ厚み方向)に調整する。このフォーカス光学系306は、少なくとも照射光学系300の光路に沿って移動可能に構成された移動レンズを含む複数のレンズからなり、本例では、被写体側(ウェーハW側)から順に、照射光学系300の光路に沿って移動不能に設けられた固定レンズ(正レンズ)312と、照射光学系300の光路に沿って移動可能に設けられた移動レンズ(負レンズ)314とから構成される。
第2アクチュエータ316は、移動レンズ314を照射光学系300の光路に沿って移動させる。移動レンズ314が照射光学系300の光路に沿って移動すると、加工用レーザー光L1の集光点のZ方向位置は固定された状態で、移動レンズ314の移動方向及び移動量に応じてAF用レーザー光L2の集光点のZ方向位置が変化する。すなわち、加工用レーザー光L1の集光点とAF用レーザー光L2の集光点との相対的な距離が変化する。
制御部50は、AF信号処理部500から出力されるAF信号に基づいて、AF用レーザー光L2の集光点がウェーハWのレーザー光照射面に一致するように(具体的には、AF信号の出力がゼロとなるように)、第2アクチュエータ316の駆動を制御する。
本実施形態のように、ダイクロイックミラー104によりAF用レーザー光L2が加工用レーザー光L1と同一光路に導かれる構成においては、改質領域の加工深さを変えるために集光レンズ106とウェーハWとの相対的な距離が変化すると、加工用レーザー光L1の集光点とともにAF用レーザー光L2の集光点もウェーハWに対するZ方向位置が変化する。
例えば、図6(a)に示すように、ウェーハWのレーザー光照射面から浅い位置に改質領域を形成する場合において、ウェーハWのレーザー光照射面にAF用レーザー光L2の集光点が一致していたとする。このような場合、図6(b)に示すように、ウェーハWのレーザー光照射面から深い位置に改質領域を形成するために、集光レンズ106とウェーハWとの相対的な距離を変化させると、AF用レーザー光L2の集光点がウェーハWのレーザー光照射面からZ方向(ウェーハ厚み方向)に大きくずれてしまう。そして、AF用レーザー光L2の集光点とウェーハWのレーザー光照射面との距離が測定範囲(引き込み範囲)を超えてしまうと、ウェーハWのレーザー光照射面の変位を検出することができなくなってしまう。特に、集光レンズ106は高NAレンズが用いられるため、ウェーハWのレーザー光照射面の変位を検出可能な測定範囲がAF用レーザー光L2の集光点(合焦位置)の近傍に限られるため、上記問題はより顕著なものとなる。
かかる問題に対処するため、本実施形態のAF装置110では、加工用レーザー光L1の集光点の位置を変えることなく、AF用レーザー光L2の集光点の位置を変化させることができるようにするために、フォーカス光学系306が照射光学系300の光路上に設けられている。これにより、図6(a)に示した状態から図6(b)に示した状態のように、改質領域の加工深さを変化させるために集光レンズ106とウェーハWとの相対的な距離が変化する場合においても、上記のようにフォーカス光学系306の移動レンズ314を照射光学系300の光路に沿って移動させることにより、図6(c)に示した状態のように、加工用レーザー光L1の集光点のZ方向位置を固定した状態で、AF用レーザー光L2の集光点をウェーハWのレーザー光照射面に一致させることが可能となる。
したがって、改質領域の加工深さが変化する場合においても、加工用レーザー光L1の集光点とAF用レーザー光L2の集光点との間隔を調整することができるので、AF用レーザー光L2の集光点をウェーハWのレーザー光照射面に一致させることができ、ウェーハWのレーザー光照射面で反射されたAF用レーザー光L2の反射光の単位面積あたりの光量が低下することなく、ウェーハWのZ方向位置(高さ位置)を正確に検出することが可能となる。
また、本実施形態では、図1に示すように、フォーカス光学系306と集光レンズ106との間には4f光学系310が配設されている。4f光学系310は、第1リレーレンズ318と第2リレーレンズ320とから構成されており、第1リレーレンズ318と集光レンズ106との距離が第1リレーレンズ318の焦点距離f1と等しい位置に配され、第2リレーレンズ320とフォーカス光学系306との距離が第2リレーレンズ320の焦点距離f2と等しい位置に配され、第1リレーレンズ318と第2リレーレンズ320との距離がこれらの焦点距離の和(f1+f2)に等しい位置に配される。
このような構成によれば、集光レンズ106の射出瞳と共役な面を集光レンズ106から物理的に離れた位置に配置することが可能となるので、集光レンズ106とフォーカス光学系306との光学的距離を所望の範囲に容易に設定することが可能となる。
次に、本実施形態のレーザーダイシング装置10を用いたダイシング方法について説明する。図7は、本実施形態のレーザーダイシング装置10を用いたダイシング方法の流れを示したフローチャートである。
図7に示すように、レーザーダイシング装置10は、後述するリアルタイム加工動作に先立って、AF信号の出力特性を測定するキャリブレーション動作を実行する(ステップS10)。
キャリブレーション動作が完了した後、レーザーダイシング装置10は、ウェーハWのレーザー光照射面の変位に追従するように加工用レーザー光L1の集光点のZ方向位置を調整しながらウェーハWの内部に改質領域を形成するリアルタイム加工動作を実行する(ステップS12)。
図8は、図7に示すキャリブレーション動作の詳細な流れを示したフローチャートである。
まず、制御部50は、第2アクチュエータ316の駆動を制御して、フォーカス光学系306の移動レンズ314を改質領域の加工深さに応じた位置に移動させる(ステップS20)。なお、制御部50のメモリ部(不図示)には、改質領域の加工深さとフォーカス光学系306の移動レンズ314の位置との対応関係が保持されている。
続いて、制御部50は、ステージ12の移動を制御して、ウェーハWのレーザー光照射面の基準位置を集光レンズ106の直下に移動させる(ステップS22)。なお、ウェーハWのレーザー光照射面の基準位置は、AF用レーザー光L2の集光点を一致させる位置であって、ウェーハWのレーザー光照射面のZ方向の変位の基準となる位置なので、ウェーハWのレーザー光照射面の段差が少ない部分(平滑面)であることが望ましく、例えば、ウェーハWの外周部を除く中央部分の所定位置を基準位置とする。
続いて、制御部50は、第2アクチュエータ316の駆動を制御して、AF信号処理部500から出力されるAF信号がゼロとなるように、フォーカス光学系306の移動レンズ314を照射光学系300の光路に沿って移動させる(ステップS24)。これにより、図6(b)に示すように、AF用レーザー光L2の集光点とウェーハWのレーザー光照射面の基準位置とにずれがある場合でも、図6(c)に示すように、AF用レーザー光L2の集光点がウェーハWのレーザー光照射面の基準位置と一致するように集光点調整が行われる。なお、制御部50は、メモリ部(不図示)に保持されているフォーカス光学系306の移動レンズ314の位置を、集光点調整後の移動レンズ314の位置(補正位置)に書き換える。
このとき、AF信号処理部500では、第1検出器412及び第2検出器414のうち総受光量が多い方の検出器を構成する4分割フォトダイオード600の受光素子600A〜600Dから出力された出力信号に基づいてAF信号を生成する。このため、ウェーハWのレーザー光照射面に形成された薄膜のばらつき(ウェーハW毎あるいは場所によるばらつき)による影響を受けることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を安定かつ精度よく検出することができる。
続いて、制御部50は、第1アクチュエータ108の駆動を制御して、集光レンズ106をZ方向に沿って移動可能範囲の全体にわたって移動させながらAF信号処理部500から出力されるAF信号の出力特性を測定して、その出力特性をルックアップテーブルとしてメモリ部(不図示)に保持しておく(ステップS26)。
なお、ウェーハWの内部に改質領域の層を複数形成する場合には、ステップS20からステップS26までの処理を改質領域の加工深さ毎に実行する。
以上の処理により、制御部50は、図7のステップS12のリアルタイム加工動作において、メモリ部(不図示)に保持されたルックアップテーブルを参照することにより、AF信号処理部500から出力されるAF信号の出力値からウェーハWのレーザー光照射面の基準位置からのZ方向の変位(デフォーカス距離)を簡単に求めることができるので、リアルタイム加工動作における加工効率(スループット)を向上させることが可能となる。
図9は、図7に示すリアルタイム加工動作の詳細な流れを示したフローチャートである。
まず、制御部50は、図8のステップS20と同様に、第2アクチュエータ316の駆動を制御して、フォーカス光学系306の移動レンズ314を改質領域の加工深さに応じた位置に移動させる(ステップS30)。このとき、制御部50は、メモリ部(不図示)に保持されている移動レンズ314の位置(補正位置)に移動させる。これにより、AF用レーザー光L2の集光点がウェーハWのレーザー光照射面の基準位置と一致し、AF装置110は、ウェーハWのレーザー光照射面の基準位置を基準としたZ方向の変位を検出することが可能となる。
続いて、制御部50は、ステージ12の移動を制御して、ステージ12に吸着保持されたウェーハWを所定の加工開始位置に移動させる(ステップS32)。
続いて、制御部50は、加工用レーザー光源100をONとした後、ウェーハWを水平方向(XY方向)に移動させながら、加工用レーザー光源100から出射された加工用レーザー光L1により、ダイシングストリートに沿ってウェーハWの内部に改質領域を形成する(ステップS34)。
このとき、制御部50は、加工用レーザー光源100をONにするタイミングと略同時、或いはそれよりも先のタイミングで、第1光源202及び第2光源204をONとする。これにより、加工用レーザー光L1とAF用レーザー光L2(互いに波長の異なる2つのAF用レーザー光L2a、L2bの合成光)が集光レンズ106によりウェーハWに向かって集光される。そして、ウェーハWのレーザー光照射面に照射され反射したAF用レーザー光L2の反射光は、ダイクロイックミラー402で互いに異なる波長に分割され、分割された各々の光は第1検出器412及び第2検出器414にそれぞれ受光される。AF信号処理部500は、第1検出器412及び第2検出器414のうち総受光量が多い方の検出器から出力された出力信号に基づいて、ウェーハWのレーザー光照射面の基準位置からのZ方向の変位を示すAF信号を生成して制御部50に出力する。
そして、制御部50は、AF信号処理部500から出力されるAF信号に基づいて、第1アクチュエータ108の駆動を制御することによって、加工用レーザー光L1の集光点のZ方向位置を調整しながら、ウェーハWの内部に改質領域を形成する。
続いて、制御部50は、ウェーハWの全てのダイシングストリートに対して改質領域の形成が終了しているか否かを判断する(ステップS36)。全てのダイシングストリートに対して改質領域の形成が終了していない場合(Noの場合)、次のダイシングストリートに移動し(ステップS38)、そのダイシングストリートについてステップS34からステップS36までの処理を繰り返す。一方、全てのダイシングストリートに対して改質領域の形成が終了した場合(Yesの場合)、次のステップS40に進む。
続いて、制御部50は、全ての加工深さについて改質領域の形成が終了しているか否かを判断する(ステップS40)。全ての加工深さについて改質領域の形成が終了していない場合には、次の加工深さに移動し(ステップS42)、ステップS30からステップS40までの処理を繰り返す。一方、全ての加工深さについて改質領域の形成が終了した場合には、リアルタイム加工動作を終了する。
このようにして、ウェーハの内部の所望の位置に改質領域を形成することにより、改質領域を起点としてウェーハWを複数のチップに分割することが可能となる。
図10は、第1の実施形態におけるAF信号の出力特性の一例を示した図であり、改質領域の加工深さを0〜800μmの範囲で変化させたときの出力特性を示している。
本実施形態では、改質領域の加工深さに応じてAF用レーザー光L2の集光点のZ方向位置がウェーハWのレーザー光照射面の基準位置と一致するように調節されるので、図10に示すように、各加工深さに対応するAF信号の出力特性は略揃ったものとなり、いずれもウェーハWのレーザー光照射面の基準位置(原点)をゼロクロス点としたほぼ直線状の出力特性となる。したがって、このような出力特性を有するAF信号を用いてリアルタイム加工動作を実行することにより、改質領域の加工深さの変更に影響されることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の変位を安定かつ高精度に検出することが可能となる。
以上のとおり、本実施形態では、互いに波長の異なる2つのAF用レーザー光L2a、L2bを用いてウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出しているので、ウェーハWのレーザー光照射面に形成される薄膜のばらつきによる影響を受けることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を安定かつ精度よく検出することが可能となる。
また、本実施形態では、AF用レーザー光L2を集光レンズ106に導くための照射光学系300の光路上であってダイクロイックミラー104とハーフミラー308との間には、AF用レーザー光L2の集光点をZ方向(ウェーハ厚み方向)に調整する集光点調整光学系としてフォーカス光学系306が設けられている。このため、改質領域の加工深さの変化に伴い、集光レンズ106とウェーハWとの相対的距離が変化する場合でも、AF用レーザー光L2の集光点がウェーハWのレーザー光照射面に一致させるように調整することができるので、ウェーハのレーザー光照射面から所定の加工深さに改質領域を精度よく形成することが可能となる。
また、本実施形態では、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、加工深さによらず安定したオートフォーカス特性(AF特性)を得る上で、集光レンズ106の射出瞳とフォーカス光学系306との光学的距離D0、集光レンズ106の射出瞳と結像レンズ404、406との光学的距離をD1が重要なパラメータであることを見出した。具体的には、光学的距離D0、D1を50mm未満とすることで、AF感度が高く、引き込み範囲を広く、加工深さによらず安定したAF特性を得ることが可能となる。したがって、改質領域の加工深さによらず、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を迅速にかつ精度よく安定して検出することができる。その結果、ウェーハWのレーザー光照射面にばらつきがあっても、ウェーハWのレーザー光照射面から所定の加工深さに改質領域を精度よく形成することが可能となる。
なお、本実施形態では、第1検出器412及び第2検出器414のうち総受光量の多い方の検出器から出力される出力信号を用いたが、これに限らず、第1検出器412及び第2検出器414でそれぞれ受光された光量に対し予め定めた基準に従って重み付け加算を行うことによってAF信号を得るようにしてもよい。例えば、第1検出器412で受光された光量をS1とし、第2検出器414で受光された光量をS2としたとき、S1、S2に対してそれぞれ重み係数α、β(但し、α、β>0)を乗じたものを加算したものを用いてもよい。また、S1、S2をそれぞれ二乗して加算したものを用いてもよいし、他の重み付けの方法を用いてもよい。
また、本実施形態では、互いに波長が異なる2つのAF用レーザー光L2a、L2bが用いられるため、第1検出器412及び第2検出器414は、それぞれの波長域に対する色収差を考慮した位置に配置される構成としたが、これに限らず、例えば、色収差補正手段としてフォーカス光学系306内に貼り合わせレンズを含んでいてもよい。この場合、フォーカス光学系306は色収差補正手段として機能するので、第1検出器412及び第2検出器414の位置調整が不要となり、AF装置110の装置構成を簡素化することが可能となる。
また、本実施形態では、互いに波長が異なる2つのAF用レーザー光L2a、L2bを用いてウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出する場合について説明したが、これに限らず、互いに波長が異なる3つ以上のAF用レーザー光を用いてもよい。
また、本実施形態では、第1検出器412及び第2検出器414が4分割フォトダイオードで構成される例を示したが、これに限らず、光量バランスを測定できるものであればよく、例えば、2次元撮像素子等を用いてもよい。
また、本実施形態では、光ファイバ302を用いているが、レイアウト上の問題がなければ、コリメートレンズ304の前側焦点位置に光源像を直接作り、光ファイバ302を省略してもかまわない。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
図11は、第2の実施形態に係るレーザーダイシング装置の概略を示した構成図である。図11中、図1と共通又は類似する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
第2の実施形態は、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出する方法として、ナイフエッジ法を用いるものである。
図11に示すように、AF装置110の照射光学系300は、ナイフエッジ322を備えている。ナイフエッジ322は、照射光学系300の光路上であってコリメートレンズ304とフォーカス光学系306との間に配設され、AF用レーザー光L2の一部を遮光する。
AF装置110の光源部200から出力されたAF用レーザー光L2は、光ファイバ302を経由して、コリメートレンズ304でコリメートされ、ナイフエッジ322によってその一部が遮光される。そして、ナイフエッジ322によって遮光されることなく進行した光は、フォーカス光学系306、ハーフミラー308、4f光学系310、ダイクロイックミラー104を経由して、集光レンズ106により集光されてウェーハWに照射される。ウェーハWのレーザー光照射面で反射したAF用レーザー光L2の反射光は、AF用レーザー光L2と同一光路を逆向きに進み、その光路上に配置されるハーフミラー308を透過し、照射光学系300の光路から分岐した光路に設けられた検出光学系400に導かれる。
検出光学系400は、ダイクロイックミラー402、結像レンズ404、406、第1検出器416、第2検出器418等で構成されている。
ダイクロイックミラー402は、第1の実施形態と同様に、検出光学系400に導かれたAF用レーザー光L2の反射光を特定の波長の光とそれ以外の波長の光に分割する。すなわち、AF用レーザー光L2の反射光のうち、第1光源202から出射されたAF用レーザー光L2aの波長に相当する第1波長域の光は、ダイクロイックミラー402を透過し、結像レンズ404を経由し、第1検出器416に受光される。一方、第2光源204から出射されたAF用レーザー光L2bの波長に相当する第2波長域の光は、ダイクロイックミラー402で反射され、結像レンズ406を経由し、第2検出器418に受光される。
第1検出器416及び第2検出器418は、2分割された受光素子を有する2分割フォトダイオードからなり、それぞれの波長域の光の集光像を分割して受光し、それぞれの光量に応じた出力信号をAF信号処理部500に出力する。
なお、第1検出器416及び第2検出器418は、それぞれの波長域に対する色収差を考慮した位置に配置されており、同じ合焦位置を示すように調整されている。
ここで、ウェーハWのレーザー光照射面の変位の検出原理について説明する。
図12は、検出器(第1検出器416及び第2検出器418に相当)を構成する2分割フォトダイオード602の受光面に形成される集光像の様子を示した図である。なお、図12(a)〜(c)は、図4においてウェーハWのレーザー光照射面がそれぞれh1、h2、h3で示す位置にあるときに、2分割フォトダイオード602の受光面に形成される集光像の様子を示している。
まず、ウェーハWのレーザー光照射面がh2の位置にある場合、すなわち、ウェーハWのレーザー光照射面とAF用レーザー光L2の集光点とが一致している場合、図12(b)に示すように、2分割フォトダイオード602の受光面には真ん中にシャープな像(真円)が形成される。このとき、2分割フォトダイオード602の受光素子602A、602Bで受光される光量は共に等しくなり、ウェーハWのレーザー光照射面は合焦位置にあることが分かる。
一方、ウェーハWのレーザー光照射面がh1の位置にある場合、すなわち、ウェーハWのレーザー光照射面がAF用レーザー光L2の集光点よりも集光レンズ106に近い位置にある場合、図12(a)に示すように、2分割フォトダイオード602の受光面には、受光素子602A側に半円状の集光像が形成され、その大きさ(ぼけ量)はウェーハWと集光レンズ106との距離に応じて変化する。
また、ウェーハWのレーザー光照射面がh3の位置にある場合、すなわち、ウェーハWのレーザー光照射面がAF用レーザー光L2の集光点よりも集光レンズ106から遠い位置にある場合、図12(c)に示すように、2分割フォトダイオード602の受光面には、受光素子602B側に半円状の集光像が形成され、その大きさ(ぼけ量)はウェーハWと集光レンズ106との距離に応じて変化する。
このように、2分割フォトダイオード602の受光素子602A、602Bで受光される光量は、ウェーハWのレーザー光照射面の変位に応じて変化する。したがって、このような性質を利用してウェーハWのレーザー光照射面の変位を検出することができる。
AF信号処理部500は、第1検出器416を構成する2分割フォトダイオード602の受光素子602A、602Bから出力された出力信号をそれぞれA1、B1とし、第2検出器418を構成する2分割フォトダイオード602の受光素子602A、602Bから出力された出力信号をそれぞれA2、B2としたとき、第1検出器416における出力信号の和(A1+B1)が第2検出器418における出力信号の和(A2+B2)以上である場合には、AF信号Eを、次式(3)に従って求める。
E=(A1−B1)/(A1+B1) ・・・(3)
一方、第1検出器416における出力信号の和(A1+B1)が第2検出器418における出力信号の和(A2+B2)未満である場合には、AF信号Eを、次式(4)に従って求める。
E=(A2−B2)/(A2+B2) ・・・(4)
かかる構成によれば、制御部50は、AF信号処理部500から出力されるAF信号に基づいて、上述した第1の実施形態と同様に、第1アクチュエータ108や第2アクチュエータ316の駆動を制御することができるので、改質領域の加工深さに対する変更に影響を受けることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の変位を追従するように加工用レーザー光L1の集光点を高精度に制御することができ、ウェーハWの内部の所望の位置に改質領域を高精度に形成することが可能となる。
なお、第1検出器416及び第2検出器418は、2分割フォトダイオードに限らず、光量バランスを測定できるものであればよく、例えば、4分割フォトダイオードや2次元撮像素子等を用いてもよい。
図13は、第2の実施形態におけるAF信号の出力特性を示した図である。図13に示すように、第2の実施形態では、第1の実施形態におけるAF信号の出力特性(図10参照)に比べてフォーカス引き込み範囲は若干狭くなっているが、AF信号の出力特性のカーブの傾き(合焦位置を中心とした比例関係にある略直線部分の傾き)は大きくフォーカス感度が高く、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を安定して検出することが可能なものとなっている。
このように第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第1の実施形態と同様に、光学的距離D0、D1を50mm未満とすることで、AF感度が高く、引き込み範囲を広く、加工深さによらず安定したAF特性を得ることが可能となる。したがって、改質領域の加工深さによらず、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を迅速にかつ精度よく安定して検出することができる。その結果、ウェーハWのレーザー光照射面にばらつきがあっても、ウェーハWのレーザー光照射面から所定の加工深さに改質領域を精度よく形成することが可能となる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
図14は、第3の実施形態に係るレーザーダイシング装置の概略を示した構成図である。図14中、図1と共通又は類似する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
第3の実施形態は、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出する方法として、中心強度法を用いるものである。なお、中心強度法とは、2つの検出器のいずれか一方の検出器で反射光の一部を受光し、他方の検出器で反射光の全部又は一部を受光し、それぞれの検出器における受光量を用いてウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出する方法である。
図14に示すように、AF装置110の照射光学系300は、上述した第1の実施形態と同様の構成を有しており、AF装置110の光源部200から出力されたAF用レーザー光L2は、照射光学系300の光路を経由して集光レンズ106に導かれ、集光レンズ106により集光されてウェーハWに照射される。ウェーハWのレーザー光照射面で反射したAF用レーザー光L2の反射光は、照射光学系300の光路を逆向きに進み、その光路上に配置されるハーフミラー308を透過し、照射光学系300の光路から分岐した光路に設けられた検出光学系400に導かれる。
検出光学系400は、ダイクロイックミラー402、穴あきミラー422、424、結像レンズ426、428、第1検出器430a、430b、第2検出器432a、432b等で構成されている。
ダイクロイックミラー402は、第1の実施形態と同様に、検出光学系400に導かれたAF用レーザー光L2の反射光を特定の波長とそれ以外の波長の光に分割する。すなわち、AF用レーザー光L2の反射光のうち、第1光源202から出射されたAF用レーザー光L2aの波長に相当する第1波長域の光は、ダイクロイックミラー402を透過し、その一部の光は穴あきミラー422の中央部分に形成される開口部を通過して第1検出器430aで受光され、残りの光は穴あきミラー422の周辺部分の反射面で反射されて結像レンズ426により集光されて第1検出器430bで受光される。一方、第2光源204から出射されたAF用レーザー光L2bの波長に相当する第2波長域の光は、ダイクロイックミラー402で反射され、その一部の光は穴あきミラー424の中央部分に形成される開口部を通過して第2検出器432aで受光され、残りの光は穴あきミラー424の周辺部分の反射面で反射されて結像レンズ428により集光されて第2検出器432bで受光される。
第1検出器430a、430b及び第2検出器432a、432bは、受光した光量に応じた出力信号をAF信号処理部500に出力する。
AF信号処理部500は、第1検出器430a、430b及び第2検出器432a、432bの少なくとも一方の検出器から出力された出力信号に基づいて、ウェーハWのレーザー光照射面の基準位置からのZ方向の変位(デフォーカス距離)を示すAF信号を生成して制御部50に出力する。
ここで、ウェーハWのレーザー光照射面の変位の検出原理について説明する。なお、第1検出器430a、430bを用いた検出原理と第2検出器432a、432bの検出原理を用いた検出原理は同様なので、これらを代表して第1検出器430a、430bを用いた検出原理について説明する。
ダイクロイックミラー402を透過した反射光のうち、一部の光は穴あきミラー422の開口部を通過して第1検出器430aで受光され、残りの光は穴あきミラー422の周辺部分の反射面で反射されて結像レンズ426により集光されて第1検出器430bで受光される。このため、第1検出器430a、430bで受光される反射光の光量の和(総受光量)は、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置によらず常に一定であり、第1検出器430a、430bの出力の和は一定となる。一方、第1検出器430aに受光される反射光は、穴あきミラー422の開口部によって受光領域が中心部分に制限されるので、集光レンズ106からウェーハWのレーザー光照射面までの距離、すなわち、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置(Z方向位置)によって受光量が変化する。そのため、第1検出器430aの出力は、AF用レーザー光L2が照射されるウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置によって変化する。したがって、このような性質を利用することで、ウェーハWのレーザー光照射面の変位を検出することができる。
AF信号処理部500では、第1検出器430a、430bから出力された出力信号をそれぞれPa、Pb、第2検出器432a、432bから出力された出力信号をそれぞれQa、Qbとしたとき、第1検出器430a、430bにおける出力信号の和(Pa+Pb)が第2検出器432a、432bにおける出力信号の和(Qa+Qb)以上である場合には、AF信号Eを、次式(5)に従って求める。
E=(Pa+Pb)/Pa・・・(5)
一方、第1検出器430a、430bにおける出力信号の和(Pa+Pb)が第2検出器432a、432bにおける出力信号の和(Qa+Qb)未満である場合には、AF信号Eを、次式(6)に従って求める。
E=(Qa+Qb)/Qa・・・(6)
すなわち、AF信号処理部500は、AF信号Eを求めるための検出器を、第1検出器430a、430b及び第2検出器432a、432bのうち総受光量が多い方の検出器に切り替えて使用している。これにより、常に高い反射率の波長の光を用いてAF信号Eが生成されるので、ウェーハWのレーザー光照射面に照射されたAF用レーザー光L2の反射率が波長により変化しても、ウェーハWのレーザー光照射面に形成された薄膜のばらつきによる影響を受けることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置の検出を精度よく安定して行うことができる。
かかる構成によれば、制御部50は、AF信号処理部500から出力されるAF信号に基づいて、上述した第1の実施形態と同様に、第1アクチュエータ108や第2アクチュエータ316の駆動を制御することができるので、改質領域の加工深さに対する変更に影響を受けることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の変位を追従するように加工用レーザー光L1の集光点を高精度に制御することができ、ウェーハWの内部の所望の位置に改質領域を高精度に形成することが可能となる。
図15は、第3の実施形態におけるAF信号の出力特性を示した図である。図15に示すように、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、各加工深さに対応するAF信号の出力特性は略揃ったものとなり、いずれもウェーハWのレーザー光照射面の基準位置(原点)で一定の出力値を示すほぼ直線状の特性となる。したがって、このような出力特性を有するAF信号を用いてリアルタイム加工動作を実行することにより、改質領域の加工深さの変更に影響されることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の変位を安定かつ高精度に検出することが可能となる。
このように第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第3の実施形態では、集光レンズ106と穴あきミラー422,424(受光領域規制手段)との光学的距離が20mm以上150mm以下であり、かつ集光レンズ106の射出瞳とフォーカス光学系306の固定レンズ312との光学的距離が120mm以下であることが好ましい。これらの光学的距離を上記範囲に設定することで、AF感度が高く、引き込み範囲を広く、加工深さによらず安定したAF特性を得ることが可能となる。
なお、第3の実施形態では、受光領域規制手段である穴あきミラー422、424を用いたが、これに限らず、例えば、分割ミラーを用いてもよい。この場合、ダイクロイックミラー402で波長毎に分割されたAF用レーザー光L2の反射光を分割ミラーで2つの経路に分割し、分割された各々の反射光を第1検出器430a、430b及び第2検出器432a、432bでそれぞれ検出する。これにより、穴あきミラー422、424を用いる場合と同様にしてAF信号を求めることができ、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出することが可能となる。
また、第3の実施形態では、AF用レーザー光L2を検出する検出光学系400の構成として、第1検出器430a、430b及び第2検出器432a、432bを用いた構成を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。AF用レーザー光L2を検出する検出光学系400の構成として、例えば、図16に示すような構成を採用することもできる。
図16は、第3の実施形態に係るダイシング装置の他の構成例を示した要部構成図である。図16に示した構成例においては、図14に示した穴あきミラー422、424に代えて、ハーフミラー434、436、マスク438、440が設けられている。
この構成例によれば、ダイクロイックミラー402に導かれたAF用レーザー光L2の反射光のうち、ダイクロイックミラー402を透過した第1波長域の光の一部はハーフミラー434を透過して、光路上に中央開口を有するマスク438を介して第1検出器430aで受光され、残りの光はハーフミラー434で反射され、結像レンズ426により第1検出器430bに100%受光される。一方、ダイクロイックミラー402で反射された第2波長域の光の一部はハーフミラー436を透過して、光路上に中央開口を有するマスク440を介して第2検出器432aで受光され、残りの光はハーフミラー436で反射され、結像レンズ428により第2検出器432bに100%受光される。第1検出器430b、第2検出器432bに受光される反射光の光量は一定であるのに対し、第1検出器430a、第2検出器432aに受光される反射光の光量はウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置によって変化する。この性質を利用することで、第3の実施形態と同様にして、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出することが可能となる。
すなわち、AF信号処理部500では、第1検出器430a、430bから出力された出力信号をそれぞれPa、Pb、第2検出器432a、432bから出力された出力信号をそれぞれQa、Qbとしたとき、第1検出器430bにおける出力信号Pbが第2検出器432bにおける出力信号Qb以上である場合には、AF信号Eを、次式(7)に従って求める。
E=Pb/Pa・・・(7)
一方、第1検出器430bにおける出力信号Pbが第2検出器432bにおける出力信号Qb未満である場合には、AF信号Eを、次式(8)に従って求める。
E=Qb/Qa・・・(8)
かかる構成によれば、制御部50は、AF信号処理部500から出力されるAF信号に基づいて、上述した第1の実施形態と同様に、第1アクチュエータ108や第2アクチュエータ316の駆動を制御することにより、改質領域の加工深さに対する変更に影響を受けることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の変位を追従するように加工用レーザー光L1の集光点を高精度に制御することができ、ウェーハWの内部の所望の位置に改質領域を高精度に形成することが可能となる。
また、第3の実施形態では、図17に示すような構成を採用することができる。すなわち、ダイクロイックミラー104と4f光学系310との間にハーフミラー442が配置されている。ハーフミラー442は、光路分岐手段の一例であり、照射光学系300の光路に配設され、ウェーハWのレーザー光照射面で反射したAF用レーザー光L2の反射光の一部を照射光学系300の光路から検出光学系400の光路に分岐させる。
AF装置110の光源部200から出力されたAF用レーザー光L2は、照射光学系300の光路を経由して集光レンズ106に導かれ、集光レンズ106により集光されてウェーハWに照射される。ウェーハWのレーザー光照射面で反射したAF用レーザー光L2の反射光は、AF用レーザー光L2と同一光路を逆向きに進み、その光路上に配置されるハーフミラー442で反射され、照射光学系300の光路から分岐した光路に設けられた検出光学系400に導かれる。
検出光学系400に導かれたAF用レーザー光L2の反射光は、第3の実施形態と同様に、ダイクロイックミラー402で波長毎に分割される。すなわち、ダイクロイックミラー402に導かれたAF用レーザー光L2の反射光のうち、ダイクロイックミラー402を透過した第1波長域の光の一部は穴あきミラー422の中央部分に形成される開口部を通過して第1検出器430aで受光され、残りの光は穴あきミラー422の周辺部分の反射面で反射されて結像レンズ426により集光されて第1検出器430bで受光される。同様に、ダイクロイックミラー402で反射された第2波長域の光の一部は穴あきミラー424の中央部分に形成される開口部を通過して第2検出器432aで受光され、残りの光は穴あきミラー424の周辺部分の反射面で反射されて結像レンズ428により集光されて第2検出器432bで受光される。
このような構成においても、上述した第3の実施形態と同様にしてウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出することができるので、ウェーハWのレーザー光照射面に形成される薄膜のばらつきによる影響を受けることなく、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を正確に検出することが可能となる。したがって、ウェーハのレーザー光照射面から所定の加工深さに改質領域を精度よく形成することが可能となる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
図18は、第4の実施形態に係るレーザーダイシング装置の概略を示した構成図である。図18中、図1と共通又は類似する構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
第1の実施形態では、AF装置110は、2つの検出器412、414を用いて波長が異なる2つのAF用レーザー光L2a、L2bの反射光を同時に検出していたのに対し、第4の実施形態では、波長が異なる2つのAF用レーザー光L2a、L2bを時間的に交互に出射して、ウェーハWのレーザー光入射面で反射したAF用レーザー光L2a、L2bの反射光を波長域毎に時分割的に交互に検出するものである。
すなわち、AF装置110は、光源部200の第1光源202及び第2光源204のON/OFFを時分割的に交互に切り替え、その切替タイミングに同期してAF用レーザー光L2a、L2bの反射光を波長域毎に1つの検出器412で時分割的に検出できるように構成されている。なお、光源部200は、時分割出力手段の一例である。また、検出器412は、時分割検出手段の一例である。
制御部50は、光源制御部52と検出制御部54とを備えている。光源制御部52は、第1光源202及び第2光源204のON/OFFの切り替えを制御する。検出制御部54は、光源制御部52における切替タイミングに同期して検出器412の検出動作(受光動作)を制御する
以上のような構成により、第4の実施形態においても、AF用レーザー光L2a、L2bの反射光の光量に応じた出力信号が検出器412から時分割的に交互に出力されるので、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。さらに第4の実施形態では、波長の異なる複数のAF用レーザー光を検出するために複数の検出器を備える必要がないので、装置構成を簡略化することが可能となる。
なお、第4の実施形態では、ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出する方法として、非点収差法を適用した場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。ウェーハWのレーザー光照射面の高さ位置を検出する方法として、上述した第2の実施形態や第3の実施形態のように、ナイフエッジ法や中心強度法を採用することもできる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。