JP6326322B2 - 薬液注入による地盤改良工法および改良体集合構造 - Google Patents

薬液注入による地盤改良工法および改良体集合構造 Download PDF

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Description

本発明は、薬液注入工法を用いた地盤改良工法および改良体集合構造に関する。
地震時の地盤の液状化対策工法として薬液注入工法が公知である。薬液注入工法によれば、注入される薬液が地盤中の土粒子の配列をほとんど変えることなく土粒子間の間隙に入って固結して地盤において止水性と粘着力を高めることで、地震時の地盤の液状化を防止する。薬液注入工法は、恒久薬液を低圧で地盤内に注入するため、周辺への影響が少なく、地表面隆起等を抑制することができる。近年では既設構造物に対する地震時の液状化対策の需要が多く、薬液注入工法が多く用いられている。
薬液注入工法は、対象地盤の間隙を100%改良する方法(100%改良)が一般的であるのに対し、特許文献1は、薬液注入量を低減して70%(70%改良)程度に設定すれば、所望の地盤改良効果が得られ、したがって薬液注入量をさらに高める必要性のないことを提案する(段落0017参照)。
特開平11-131467号公報
しかしながら、薬液注入量を減らした場合、液状化対策としての効果の低下が懸念され、たとえば薬液注入量を70%に低減した場合、30%の未改良部分が上端から下端まで連続してしまい、未改良部分が沈下することで、地表面に不等沈下が発生するおそれが生じてしまう。
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、薬液注入工法において薬液注入量を低減しても、地表面や地盤における不等沈下を抑制可能である薬液注入による地盤改良工法および薬液注入により地盤内に形成される改良体集合構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための薬液注入による地盤改良工法は、薬液注入により略球状の改良体を地盤内の深さ方向および水平方向に多数形成することで地盤を改良する地盤改良工法であって、同一深さに配置されるとともに相互に接するかまたは一部重なり合うように配置された4つの改良体を一組として上面から見たとき、その中央に存在する未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の4つの改良体の内の少なくとも1つの改良体が位置するようにして多数の前記改良体を地盤内に形成することを特徴とする。
この薬液注入による地盤改良工法によれば、多数の略球状の改良体を地盤内の深さ方向および水平方向に形成する際に、同一深さに配置され相互に接するかまたは一部重なり合うように配置された任意の4つの改良体を一組と考えた場合、それらを上面から見たとき、その中央に存在する未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の内の1つの改良体がその上に位置し、深さ方向に隣接するさらに別の一組の内の1つの改良体がその下に位置するようにできるので、未改良部分の深さ方向に改良体が存在し、未改良部分がその深さ方向の改良体に閉じ込められる形となるので、多数の改良体全体において未改良部分が改良対象の地盤の上端から下端まで連続することはなく、未改良部分の沈下に起因する地表面や地盤内での不等沈下の発生を未然に防止することができる。
上記薬液注入による地盤改良工法において、複数の前記改良体を深さ方向に一列に形成し、次に、水平方向に位置をずらして複数の前記改良体を深さ方向に一列に形成するようにして前記多数の改良体を地盤内に形成することが好ましい。これにより、未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の内の1つの改良体がその上に位置し、深さ方向に隣接するさらに別の一組の内の1つの改良体がその下に位置するようにできる。なお、複数の改良体を深さ方向に一列に形成する場合、深さ方向下端から上端へ一列に形成できるが、深さ方向上端から下端へ一列に形成してもよい。
また、複数の前記改良体を水平方向に一列に形成し、次に、前記水平方向に一列に形成された複数の改良体に対し深さ方向に位置をずらして複数の前記改良体を水平方向に一列に形成するようにして前記多数の改良体を地盤内に形成することが好ましい。これにより、未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の内の1つの改良体がその上に位置し、深さ方向に隣接するさらに別の一組の内の1つの改良体がその下に位置するようにできる。なお、かかる改良体の形成は、地盤内で削孔を曲がり形成することで実現できる。
また、前記未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の4つの改良体の内の1つの改良体が少なくとも部分的に位置するとともに、前記別の一組の他の1つの改良体が少なくとも部分的に位置するようにできる。
また、複数の前記改良体を鉛直線に対し傾斜角θで傾斜して一列に形成し、次に、水平方向に位置をずらして複数の前記改良体を傾斜角θで傾斜して一列に形成するようにして前記多数の改良体を地盤内に形成することが好ましい。なお、複数の改良体を傾斜角θで傾斜して一列に形成する場合、傾斜方向下端から上端へ一列に形成できるが、傾斜方向上端から下端へ一列に形成してもよい。
また、前記薬液として、たとえば溶液型・活性シリカのような特殊シリカ系(恒久グラウト)を用いることが好ましい。
なお、本薬液注入による地盤改良工法では、前記薬液の注入量を改良割合100%に対し少なくとも70%とすることができる。これにより、施工費用を低減することができる。
上記目的を達成するための改良体集合構造は、地盤を改良するために薬液注入により地盤内の深さ方向および水平方向に多数形成される略球状の改良体からなる集合構造であって、同一深さに配置されるとともに相互に接するかまたは一部重なり合うように配置された4つの改良体を一組として上面から見たとき、その中央に存在する未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の4つの改良体の内の少なくとも1つの改良体が位置するようにして多数の改良体が地盤内に形成されたものである。
この改良体集合構造によれば、多数の略球状の改良体を地盤内の深さ方向および水平方向に形成する際に、同一深さに配置され相互に接するかまたは一部重なり合うように配置された任意の4つの改良体を一組と考えた場合、それらを上面から見たとき、その中央に存在する未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の内の1つの改良体がその上に位置し、深さ方向に隣接するさらに別の一組の内の1つの改良体がその下に位置するようにできるので、未改良部分の深さ方向に改良体が存在し、未改良部分がその深さ方向の改良体に閉じ込められる形となるので、多数の改良体全体において未改良部分が改良対象の地盤の上端から下端まで連続することはなく、未改良部分の沈下に起因する地表面や地盤内での不等沈下の発生を未然に防止することができる。
上記改良体集合構造において、互いに隣接する前記改良体同士が接するかまたは一部重なり合うことで、前記多数の改良体が全体としてつながっていることが好ましい。これにより、独立した改良体が存在せず、多数の改良体が連続体として地震動に抵抗することで、地盤の液状化を効果的に防止することができる。
本発明によれば、薬液注入工法において薬液注入量を低減しても、地表面や地盤における不等沈下を抑制可能である薬液注入による地盤改良工法および改良体集合構造を提供することができる。
第1実施形態において鉛直方向に略球状の改良体を薬液注入により形成する場合の未改良部分対策を説明するための地盤の部分断面図(a)および部分上面図(b)である。 複数の略球状の改良体を地盤の略鉛直方向に一列に形成する工程(a)〜(d)を示す概略図である。 図2に続く工程(a)〜(d)を示す概略図である。 図3(a)の注入外管の要部拡大図(a)、b-b線方向の断面図(b)およびc-c線方向の断面図(c)である。 第2実施形態において鉛直線に対し傾斜した方向に略球状の改良体を薬液注入により形成する場合の未改良部分対策を説明するための地盤の部分断面図(a)および部分上面図(b)である。 第2実施形態において鉛直線から傾斜した方向に削孔が可能な削孔機を示す概略図である。 表1の比較例1,2,3の改良体の配置を示す図(a)〜(c)である。 表1の実施例1〜4の改良体の配置を示す図(a)〜(d)である。 表1の実施例5,6の改良体の配置を示す図(a)(b)である。 図2・図3、図6と異なる方法で地盤内に多数の改良体を形成する工程を説明するための概略図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
〈第1実施形態〉
第1実施形態は、薬液注入による地盤改良工法において、薬液注入により複数の略球状の改良体を地盤に対し略鉛直方向に一列に形成してから水平方向にずれた別の位置で略鉛直方向に一列に形成するようにして多数の改良体を地盤内に形成するものである。かかる鉛直方向に略球状の改良体を形成する場合の未改良部分に対する対策について図1(a)(b)を参照して説明する。図1は、第1実施形態において鉛直方向に略球状の改良体を薬液注入により形成する場合の未改良部分対策を説明するための地盤の部分断面図(a)および部分上面図(b)である。
図1(a)のように、複数の直径Dの略球状の改良体11a,11b,11c,・・・を鉛直方向に一列に形成し、水平方向にずれた別の位置に同じく複数の直径Dの略球状の改良体12a,12b,12c,・・・を鉛直方向に一列に形成する。改良体11aと12aは同一深さに位置し、改良体11bと12b、改良体11cと12cも、それぞれ同一深さに位置する。複数の直径Dの略球状の改良体15a,15b,・・・が改良体11a〜11cと改良体12a〜12cとの間に位置するようにして鉛直方向に一列に形成される。このようにして多数の改良体を地盤に形成する。
図1(b)のように各改良体を上面から見ると、改良体11aと改良体12aとは離れて位置するが、その間に別の直径Dの略球状の改良体13a、14aが改良体11a,12aに接するようにして配置され、改良体11a,12aと同一深さに位置する。改良体13a、14aの位置でも同様にして複数の改良体が鉛直方向に一列に形成され、改良体11b、12bと同一深さ、改良体11c、12cと同一深さにそれぞれ位置する。
図1(b)のように、同一深さに位置し相互に接するように形成された4つの略球状の改良体11a、12a、13a、14aを一組と考え、上面から見ると、それらの中心に未改良部分10が図のハッチングで示すように形成され、その結果、未改良部分10が改良対象の地盤の上端から下端まで連続して形成されてしまう。これに対し、本実施形態では、図1(a)(b)のように、未改良部分10に対し、深さ方向に隣接する別の一組の4つの改良体の内の1つの改良体15aがその下側に位置し、改良体11a、12a、13a、14aに接している。同様にして、改良体11b、12bを同一深さに形成された他の2つの改良体(図示省略)とともに一組と考え、それらの中心の未改良部分10に対し、深さ方向に隣接する別の一組の改良体15aがその上に位置するとともに、隣接するさらに別の一組の改良体15bがその下に位置する。
上述のように、多数の改良体により地盤の液状化を防止できるとともに、多数の改良体全体において未改良部分10に対してはその深さ方向の上下に別の改良体が存在し、未改良部分10がその深さ方向上下の改良体に閉じ込められる形となるので、未改良部分10が改良対象の地盤の上端から下端まで連続することはなく、未改良部分の沈下に起因する地表面での不等沈下の発生を未然に防止することができる。
図1(a)(b)において、改良体11a,11b,・・・の直径をD、改良体11aと深さ方向に並んで隣接する改良体11bとの中心間の間隔をLp、改良体11aと隣接の改良体15aとの水平方向の中心間の間隔をLeとすると、次式(1)、(2)を満足し、改良体11aと水平方向に隣接する改良体15aとの深さ方向の中心間の間隔をLp/2だけずらすことで、上述のような未改良部分に対して深さ方向の上下に別の改良体が存在する配置構成を実現することができる。
D<Lp≦√2×D (1)
Le=Lp/2 (2)
本実施形態により多数の改良体は、図1(a)(b)のように、配置されることで改良体の集合構造を構成している。かかる改良体集合構造では、互いに隣接する改良体同士が接するかまたは一部重なり合うことで、多数の改良体が全体としてつながり、独立した改良体は存在しない。これにより、多数の改良体は連続体として地震動に抵抗することで、地盤の液状化を効果的に防止することができる。
次に、薬液注入により複数の略球状の改良体を地盤内に略鉛直方向に一列に形成する方法について図2〜図4を参照して説明する。図2〜図4に示す薬液注入方法は、二重管ダブルパッカー注入方式によるものである。図2は複数の略球状の改良体を地盤の略鉛直方向に一列に形成する工程(a)〜(d)を示す概略図である。図3は、図2に続く工程(a)〜(d)を示す概略図である。図4は、図3(a)の注入外管の要部拡大図(a)、b-b線方向の断面図(b)およびc-c線方向の断面図(c)である。
まず、図2(a)のように、削孔機50を改良対象の地盤Gの表面上の所定の薬液注入位置にセットする。このとき、削孔の角度調整を行うが、この場合は、角度0°(鉛直方向)にセットする。
次に、図2(b)のように、地盤G内に加水しながら削孔用ケーシング51により削孔し、ケーシング51を継ぎながら所定深度まで削孔を行う。次に、図2(c)のように、ケーシング51内に注入外管52を建て込む。次に、図2(d)のように、ケーシング51を地盤G内の孔から引き抜く。
上述のようにして、地盤Gの孔内への注入外管52の建て込みが完了するが、この状態を図3(a)に示す。このとき、注入外管52が所定の高さに設置されているかレベル測量を行い確認する。
注入外管52は、図4(a)(b)のように、塩ビまたは鋼製の主管53と布等からなる特殊スリーブパッカー54とから構成され、主管53は外周面に多数のセメントベントナイト用注入口53aを有する。注入外管52は、図3(a)、図4(a)のように、縦方向に所定の間隔で設けられた複数の薬液注入部55を有する。各薬液注入部55は、図4(a)(c)のように、主管53の外周面に形成された薬液注入口55aと、注入孔ゴムパッカー56と、を有する。各薬液注入口55aは、縦方向に所定の間隔Lで設けられている。
次に、図3(b)のように、注入管57を注入外管52内に挿入し、薬液注入部55の上下の特殊スリーブパッカー54(図4(b))にセメントベントナイトを注入管57から注入外管52の注入口53aを通して注入し充填することで、特殊スリーブパッカー54を膨らませて孔内の壁面に密着させて薬液注入口55aの上下を密閉する。これにより、薬液の注入時の逸走を防止する。
次に、図3(c)のように、注入管57内を洗浄した後、注入管57を通して、薬液を薬液注入口55aから所定の注入速度で注入し、孔内の壁面から地盤G内に浸透させる。これにより、薬液による略球状の改良体1を地盤G内に形成することができる。
図3(b)(c)に示す工程を繰り返すことにより改良体1を注入外管52の最下段から順次ステップアップして形成する。なお、最上段から順次ステップダウンして形成してもよい。薬液の注入処理が完了すると、図3(d)のように、注入外管52内にセメントベントナイトを充填し、注入外管52の上端を切り取り、地盤G内に埋め戻す。
上述のようにして、図3(d)のように複数の改良体1を地盤G内に鉛直方向に一列に形成することができる。改良体1の中心と隣接の改良体1の中心との鉛直方向の間隔は、各薬液注入口55aの間隔Lと対応する。また、略球状の改良体1の直径は、薬液の注入量によって変化する。
また、薬液としては、特殊シリカ系(恒久グラウト)の薬液を用いることができ、地盤内において固化した略球状の改良体を形成することができる。具体的には、たとえば、溶液型・活性シリカを使用できる。
図1(a)(b)に示す改良体11a〜11c、15a、15b、12a〜12c,13a,14a,・・・は、図2〜図4に示す薬液注入方法によれば、次のようにして形成することができる。すなわち、注入外管52を図1(b)の平面位置11z(略球状の改良体11aの中心を通る鉛直線上の地盤表面位置に対応する)に建て込んでから、直径Dの複数の改良体11a,11b,11c,・・・を順次形成することで地盤内に鉛直方向に一列に形成する。このとき、図1(a)の改良体の中心間の間隔Lpは、注入外管52の各薬液注入口55aの薬液注入口間隔Lと対応する。
次に、注入外管52を図1(b)の平面位置11zから間隔Le(=Lp/2)だけ離れた平面位置15z(略球状の改良体15aの中心を通る鉛直線上の地盤表面位置に対応する)に建て込んでから、直径Dの複数の改良体15a,15b,・・・を順次形成することで地盤内に鉛直方向に一列に形成する。このとき、注入外管52は、その高さ位置に関し、薬液注入口55aの位置が隣接の改良体11a〜11cの場合よりもLp/2だけ深くなるようにセットされる。
次に、注入外管52を図1(b)の平面位置15zから間隔Le(=Lp/2)だけ離れた平面位置12z(略球状の改良体12aの中心を通る鉛直線上の地盤表面位置に対応する)に建て込んでから、直径Dの複数の改良体12a,12b,12c,・・・を順次形成することで地盤内に鉛直方向に一列に形成する。このとき、注入外管52は、改良体11a〜11cの場合と同じ高さにセットされる。また、平面位置12zは、平面位置11z、15zを結ぶ直線a上にある。また、改良体11a、12aの中心は、同一深さ位置にあるが、改良体15aの中心に対しては深さ方向にLp/2だけずれている。
同様にして、注入外管52を図1(b)の平面位置15zから間隔Le(=Lp/2)だけ直線aと直交する方向に離れた平面位置13z(略球状の改良体13aの中心を通る鉛直線上の地盤表面位置に対応する)に建て込んでから、直径Dの改良体13a,・・・を順次形成することで地盤内に鉛直方向に一列に形成する。また、平面位置13z、15zを結ぶ直線b上にあり、平面位置15zから間隔Le(=Lp/2)だけ離れた平面位置14zにおいても同様にして直径Dの改良体14a,・・・を順次形成することで地盤内に鉛直方向に一列に形成する。
以上のようにして、改良対象の地盤内に多数の改良体を図1(a)(b)に示すような配置にして図2〜図4に示す薬液注入方法により形成することができる。
〈第2実施形態〉
第2実施形態は、薬液注入による地盤改良工法において、薬液注入により複数の略球状の改良体を鉛直線から傾斜した方向に一列に形成してから、水平方向にずれた別の位置で同様に鉛直線から傾斜した方向に一列に形成するようにして多数の改良体を地盤内に形成するものである。かかる傾斜方向に略球状の改良体を形成する場合の未改良部分に対する対策について図5(a)(b)を参照して説明する。図5は、第2実施形態において鉛直線に対し傾斜した方向に略球状の改良体を薬液注入により形成する場合の未改良部分対策を説明するための地盤の部分断面図(a)および部分上面図(b)である。
図5(a)のように、複数の直径Dの略球状の改良体21a,21b,21c,21d,・・・を鉛直線vに対し傾斜角θで傾斜した方向に一列に形成し、次に、水平方向に間隔Leだけ離れた位置で同様に複数の直径Dの略球状の改良体22a,22b,22c,・・・を鉛直線vに対し傾斜角θで傾斜した方向に一列に形成し、同じく水平方向に間隔Leだけ離れた位置で同様に複数の直径Dの略球状の改良体23a,23b,・・・を鉛直線vに対し傾斜角θで傾斜した方向に一列に形成するようにして多数の改良体を地盤に形成する。改良体21aと22aと23aは同一深さに位置し、改良体21bと22bと23b、改良体21cと22cも、それぞれ同一深さに位置し、各改良体は水平方向には相互に一部重なり合っている。
図5(b)のように各改良体を上面から見ると、改良体21a、改良体22a、改良体23aとは、それらの中心が一直線c上に並んでいる。その直線cと間隔Leだけ離れた平行な直線d上には、改良体24a,25a,26aが形成されている。改良体24a,25a,26aの位置でも、改良体21a,22a,23aと同様に、鉛直線vに対し傾斜角θで傾斜した方向に複数の改良体が一列に形成されている。改良体24aと21a,改良体25aと22a,改良体26aと23aは、それぞれ中心位置が直線c、dと直交する各線上にある。
図5(b)のように、同一深さに位置し相互に接するか一部重なり合うように形成された4つの略球状の改良体21a、22a、24a、25aを一組と考え、上面から見ると、それらの中心に未改良部分20が図のハッチングで示すように形成される。これに対し、本実施形態では、図5(a)(b)のように、未改良部分20に対し、深さ方向に隣接する別の一組の4つの改良体の内の1つの改良体21b(破線で示す)がその下側に位置し、改良体21a、22aに接しているとともに、もう一つの改良体24b(破線で示す)がその下側に位置し、改良体24a、25aに接している。このように、改良体21a、22a、24a、25aを一組と考えたときの未改良部分20に対して、深さ方向下側に改良体21b,24bがそれぞれ部分的に存在し、全体として未改良分が深さ方向に連続することはない。
同様にして、同一深さに位置する4つの改良体21b、22b、24b、25bを一組と考え、それらの中心の未改良部分20Aに対し、深さ方向に隣接する別の一組の4つの改良体の内の1つの改良体22aがその上側に位置し、改良体21b、22bに接しているとともに、もう一つの改良体25aがその上側に位置し、改良体24b、25bに接し、さらに別の一組の内の1つの改良体21cがその下側に位置するとともに、もう1つの改良体(図示省略)がその下側に位置する。このように、改良体21b、22b、24b、25bを一組と考えたときの未改良部分20Aに対して、深さ方向上側に改良体22a,25aがそれぞれ部分的に存在し、深さ方向下側においても同様に2つの改良体が部分的に位置し、全体として未改良分が深さ方向に連続することはない。
上述のように、多数の改良体により地盤の液状化を防止できるとともに、多数の改良体全体において未改良部分20,20Aに対してはその深さ方向の上下にそれぞれ別の2つの改良体が部分的に存在し、未改良部分20,20Aがその深さ方向上下の改良体に閉じ込められる形となるので、全体として未改良部分が改良対象の地盤の上端から下端まで連続することはなく、未改良部分の沈下に起因する地表面での不等沈下の発生を未然に防止することができる。
図5(a)(b)において、各改良体21a,21b,・・・の直径をD、改良体22aと鉛直線から傾斜角θで傾斜方向に並んで隣接する改良体21bとの中心間の間隔をLp、改良体21aと隣接の改良体22aとの水平方向の中心間の間隔をLe、tanθ=1/2とすると、次式(3)、(4)を満足し、水平方向に並んだ改良体21a,22a,23aや改良体21b,22b,23bが深さ方向にそれぞれ同一レベルに位置することで、上述のような未改良部分に対して深さ方向の上下に別の改良体が存在する配置構成を実現することができる。
D≧Lp (3)
Le=(2/√5)×Lp (4)
本実施形態により多数の改良体は、図5(a)(b)のように、配置されることで改良体の集合構造を構成している。かかる改良体集合構造では、互いに隣接する改良体同士が接するかまたは一部重なり合うことで、多数の改良体が全体としてつながり、独立した改良体が存在しない。これにより、多数の改良体は連続体として地震動に抵抗することで、地盤の液状化を効果的に防止することができる。
上述のような薬液注入により複数の略球状の改良体を地盤内に鉛直線から傾斜した方向に一列に形成する方法は、図6に示すような削孔機を用いて、図2〜図4に示すような二重管ダブルパッカー注入方式による薬液注入方法で実施することができる。図6は、本実施形態において鉛直線から傾斜した方向に削孔が可能な削孔機を示す概略図である。
図6に示すように、削孔機50は、改良対象の地盤Gの表面上の所定の薬液注入位置にセットされる(図2(a)参照)が、このとき、削孔の角度調整が行われ、鉛直線vに対し傾斜角θでセットされる。次に、地盤Gに対し傾斜角θで斜めに削孔し、図2(b)〜(d)、図3(a)〜(d)と同様の工程を経ることで、図6のように、薬液注入により複数の略球状の改良体1を地盤G内に鉛直線vから傾斜角θで傾斜した方向に一列に形成することができる。
図5(a)(b)に示す改良体21a〜21d、22a〜22c、23a,23b、24a,24b,25a,25b,・・・は、次のようにして形成することができる。すなわち、注入外管52を図5(a)(b)の平面位置21zから傾斜角θで傾斜させて建て込んでから、直径Dの複数の改良体21a,21b,21c,21d,・・・を順次形成することで地盤内に傾斜角θで傾斜した方向に一列に形成する。このとき、図5(a)の改良体の中心間の間隔Lpは、注入外管52の各薬液注入口55aの間隔L(図3(a))と対応する。
次に、注入外管52を図5(a)(b)の平面位置21zから間隔Leだけ離れた平面位置22zから傾斜角θで建て込んでから、直径Dの複数の改良体22a,22b,22c,・・・を順次形成することで地盤内に傾斜角θで傾斜した方向に一列に形成する。このとき、注入外管52は、改良体21a〜21dの場合と同じ高さにセットされる。
次に、注入外管52を図5(a)(b)の平面位置22zから間隔Leだけ離れた平面位置23zから傾斜角θで建て込んでから、直径Dの複数の改良体23a,23b,・・・を順次形成することで地盤内に傾斜角θで傾斜した方向に一列に形成する。このとき、注入外管52は、改良体21a〜21dの場合と同じ高さにセットされる。また、平面位置21z、22z、23zは同一直線上にある。
同様にして、注入外管52を図5(b)の平面位置24z、25z、26zからそれぞれ傾斜角θで建て込んでから、直径Dの複数の改良体24a,24b,・・・、また、25a,25b,・・・、また、26a,・・・をそれぞれ順次形成することで地盤内に傾斜角θで傾斜した方向に一列に形成する。平面位置24z、25z、26zは、平面位置21z〜23zを結ぶ直線に対し間隔Leだけ離れかつ平行である。
上述のように、傾斜角θで傾斜方向に一列に複数の改良体を形成することが繰り返される。このとき、注入外管52はいずれも同じ高さ位置にセットされるので、改良体21a〜23a,24a〜26aは同じ深さ位置にあり、同様に、改良体21b〜23b、24,25b、また、改良体21c、22cもそれぞれ同じ深さ位置にある。また、注入外管52は、いずれの場合にも、傾斜角θで傾斜した方向に平行に建て込まれるので、一列に形成された複数の改良体は、傾斜角θの傾斜方向に相互に平行になって並ぶ。
また、各改良体は、直径DがD≧Lp(式(3))を満たすように形成され、tanθ=1/2(θ:26.6°)として形成されることで、間隔Leは、Le=(2/√5)×Lp)(式(4))を満たす。
以上のようにして、改良対象の地盤内に多数の改良体を図5(a)(b)に示すような配置にして図2〜図4に示す薬液注入方法により形成することができる。
ところで、薬液注入工法は、恒久薬液を使用するため、工事費がコスト高になってしまうことが課題の一つになっている。薬液注入工法における工事費用の約7割は薬液費用であるため、薬液注入量を削減することが大きなコストダウンとなる。このため、薬液注入工法は、対象地盤の間隙を100%改良する方法(100%改良)が一般的であるが、たとえば、薬液注入量を70%に低減する方法(70%改良)が提案されている。薬液注入工法における薬液費用は、工事費用の約70%を占めることから、薬液注入量を70%に低減することで、施工費用を20%程度低減することができる。
上述のように、薬液注入量を、たとえば70%に低減した場合に生じる、30%の未改良部分が上端から下端まで連続してしまい、未改良部分が沈下することで地表面に不等沈下が発生するおそれが生じてしまうという課題に対し、本実施形態の薬液注入による地盤改良工法によれば、未改良部分が連続せずに地表面における不等沈下を抑制可能であり、このため、施工費用を20%程度低減することができるという効果を奏する。かかる薬液注入量を低減した場合の効果について、実施例、比較例による計算例により説明する。
表1に、従来例である比較例1,2,3,図1による実施例1,2,3,4、および、図5による実施例5,6の各計算例を示す。図7(a)〜(c)に比較例1,2,3の改良体の配置を示す。図8(a)〜(d)に図1による実施例1〜4の改良体の配置を示す。図9(a)(b)に図5による実施例5,6の改良体の配置を示す。図7〜図9において、上段が地盤の断面図、下段が地盤の上面図である。
Figure 0006326322
図7(a)の比較例1が改良割合100%であるのに対し、図7(b)(c)の比較例2,3が表1に示すように、改良割合80%、70%である。比較例2,3では、図7(b)(c)の下段の上面図にハッチングで示すように、未改良部分が生じる。
これに対し、図8(a)(b)の実施例1,2は、各改良体を図1(a)(b)のように配置し、削孔間隔Leを2m、間隔Lp(薬液注入口間隔L)を4m、改良体の直径Dを2.90m、2.83mとし、√2×D=4.10、4.0であるので、上記式(1)(D<Lp≦√2×D)および式(2)(Le=Lp/2)を満たす。実施例1では、隣接する改良体が一部重なり合い、改良割合が100%である比較例1に対し、改良割合が80%で、費用割合が86%と低減する。実施例2では、隣接する改良体が接し、比較例1に対し、改良割合が74%で、費用割合が82%と低減する。
また、図8(c)(d)の実施例3,4は、各改良体を図1(a)(b)のように配置し、削孔間隔Leを1.723m、1.765m、間隔Lp(薬液注入口間隔L)を3.446m、3.53m、改良体直径Dを2.50mとし、√2×D=3.53であるので、上記式(1)(D<Lp≦√2×D)および式(2)(Le=Lp/2)を満たす。実施例3では、改良割合が100%である比較例1に対し、改良割合が80%であるが、削孔間隔Leが小さいため削孔本数割合が116%と増えるものの、費用割合が88%と低減する。実施例4では、比較例1に対し、改良割合が74%、削孔間隔Leが小さいため削孔本数割合が113%と増えるものの、費用割合が83%と低減する。
実施例3,4では、比較例1と比較すると、削孔間隔が小さくなるため、削孔本数が増加するが、施工費用において削孔費用の割合は小さく、薬液費用の割合が大きいことから、施工費用は低減される。実施例3,4は、実施例1,2のように改良体直径を大きくすることが不可能な場合に適用できる。たとえば、施工時間が限られているため、改良体直径を大きくすることができないような場合である。すなわち、1日の施工時間が限られている場合、注入時間が限られることとなり、限られた注入時間で1改良体を形成する必要があるため、注入時間から改良直径が決められることがある。
図9(a)(b)の実施例5,6は、各改良体を図5(a)(b)のように配置し、削孔間隔Leを2.0m、間隔Lp(薬液注入口間隔L)を2.30m、2.24m、改良体の直径Dを2.30m、2.24mとし、式(3)(D≧Lp)を満たし、(2/√5)×Lp=2.0であるので、式(4)(Le=(2/√5)×Lp)を満たす。実施例5では、比較例1に対し、削孔本数は1.5倍となるものの、削孔長は1.2倍程度であり、薬液注入量が80%となることから、施工費用は89%と低減する。実施例6では、比較例1に対し、削孔本数は1.5倍となるものの、削孔長は1.2倍程度であり、薬液注入量が74%となることから、施工費用は84%と低減する。
実施例5,6は、改良体直径を大きくすることができず、さらに改良体中心間隔を狭くすることができない場合に適用できる。改良体中心間隔を狭くすることができない場合とは、たとえば改良体中心間に障害物がある場合である。
次に、地盤内に多数の改良体を形成するさらに別の方法について図10を参照して説明する。図10は、図2・図3、図6と異なる方法で地盤内に多数の改良体を形成する工程を説明するための概略図である。
図10のように、既設構造物SSの直下において薬液注入による地盤改良を行うために、地盤面からの曲がりボーリングにより削孔31を曲がり形成する。削孔31は先端側に水平部分を有する。削孔31内に薬液注入ホース30を挿入し、薬液注入ホース30を通じて地盤G内に所定間隔毎に薬液注入口から薬液を注入し、複数の略球状の改良体41を地盤G内に水平方向に形成する。各改良体41の水平方向の間隔は薬液注入口の間隔に対応する。
次に、削孔位置をずらし、破線で示す削孔32を削孔31の下側に同様に曲がり形成し、薬液注入ホースを挿入し、薬液注入ホースを通じて地盤G内に所定間隔毎に薬液注入口から薬液を注入し、複数の略球状の改良体42を地盤G内に水平方向に形成する。このとき、各改良体42はその上側の隣接する改良体41に接するか、または一部重なり合うように形成する。次に、削孔位置をずらし、破線で示す削孔33を削孔32の下側に同様に曲がり形成し、薬液注入ホースを挿入し、薬液注入ホースを通じて地盤G内に所定間隔毎に薬液注入口から薬液を注入し、複数の略球状の改良体43を地盤G内に水平方向に形成する。このとき、各改良体43はその上側の隣接する改良体42に接するか、または一部重なり合うように形成する。なお、削孔の曲がり形成の具体的説明については、特開2005-273331号公報や特開2009-41301号公報に詳述されているので、本明細書においては省略する。
以上のようにして、所定数の改良体41,42,43,・・・を地盤G内に形成することができるが、それらの改良体41,42,43,・・・の配置は、図1(a)(b)と同様にできる。このようにして、図1(a)(b)と同じ配置で既設構造物SSの直下において薬液注入による地盤改良を行うことができるので、薬液注入量の低減による未改良部分が上端から下端まで連続せずに既設構造物SSにおける地盤の不等沈下を抑制可能であり、このため、薬液注入量低減により施工費用を低減することができる。
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、図5(a)(b)では、傾斜角θを26.6°(tanθ=1/2)に設定したが、本発明はこれに限定されず、たとえば、傾斜角θが26.6°±1°の範囲内であれば、先端側の改良体の位置が大きく逸脱せずに施工管理上問題がなく、同様の効果を得ることができる。
本発明の薬液注入による地盤改良工法および改良体集合構造によれば、薬液注入工法において薬液注入量を低減しても地表面や地盤における不等沈下を抑制可能であるので、薬液注入量低減による施工費用のコストダウンを達成できる。
10 未改良部分
11a,11b,11c 改良体
11a,12a,13a,14a 改良体
12a,12b,12c 改良体
15a,15b 改良体
20,20A 未改良部分
21a,21b,21c,21d 改良体
21a,22a,23a 改良体
21b,22b,23b 改良体
24b 改良体
22a,22b,22c 改良体
25a,26a 改良体
51 削孔用ケーシング
52 注入外管
55 薬液注入部
55a 薬液注入口
D 改良体直径
L 薬液注入口間隔
Le 水平方向に並ぶ隣接する改良体間の中心間隔、削孔間隔
Lp 同一深さ方向に並ぶ隣接する改良体間の中心間隔
v 鉛直線
θ 傾斜角

Claims (8)

  1. 薬液注入により略球状の改良体を地盤内の深さ方向および水平方向に多数形成することで地盤を改良する地盤改良工法であって、
    同一深さに配置されるとともに相互に接するかまたは一部重なり合うように配置された4つの改良体を一組として上面から見たとき、その中央に存在する未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の4つの改良体の内の少なくとも1つの改良体が位置するようにして多数の前記改良体を地盤内に形成することを特徴とする薬液注入による地盤改良工法。
  2. 複数の前記改良体を深さ方向に一列に形成し、次に、水平方向に位置をずらして複数の前記改良体を深さ方向に一列に形成するようにして前記多数の改良体を地盤内に形成する請求項1に記載の薬液注入による地盤改良工法。
  3. 複数の前記改良体を水平方向に一列に形成し、次に、前記水平方向に一列に形成された複数の改良体に対し深さ方向に位置をずらして複数の前記改良体を水平方向に一列に形成するようにして前記多数の改良体を地盤内に形成する請求項1に記載の薬液注入による地盤改良工法。
  4. 前記未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の4つの改良体の内の1つの改良体が少なくとも部分的に位置するとともに、前記別の一組の他の1つの改良体が少なくとも部分的に位置する請求項1に記載の薬液注入による地盤改良工法。
  5. 複数の前記改良体を鉛直線に対し傾斜角θで傾斜して一列に形成し、次に、水平方向に位置をずらして複数の前記改良体を傾斜角θで傾斜して一列に形成するようにして前記多数の改良体を地盤内に形成する請求項1または4に記載の薬液注入による地盤改良工法。
  6. 前記薬液として特殊シリカ系を用いる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の薬液注入による地盤改良工法。
  7. 地盤を改良するために薬液注入により地盤内の深さ方向および水平方向に多数形成される略球状の改良体からなる集合構造であって、
    同一深さに配置されるとともに相互に接するかまたは一部重なり合うように配置された4つの改良体を一組として上面から見たとき、その中央に存在する未改良部分に対し、深さ方向に隣接する別の一組の4つの改良体の内の少なくとも1つの改良体が位置するようにして多数の前記改良体が地盤内に形成されたことを特徴とする改良体集合構造。
  8. 互いに隣接する前記改良体同士が接するかまたは一部重なり合うことで、前記多数の改良体が全体としてつながっている請求項7に記載の改良体集合構造。
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