以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
本発明の見守りシステムは、見守り対象者の位置を時系列で測定して、見守り対象者の状態をモニタリングすることを特徴とする。また、本発明の見守りシステムは、更なる特徴として、見守り対象者の歩行機能をモニタリングする機能も備える。このように、歩行機能のモニタリングを行うのは、以下の理由からである。
非特許文献1には、運動機能あるいは認知機能の衰えにより要介護状態に陥る割合が多いという調査結果が述べられている。よって、日常的に運動機能をモニタリングできる見守りシステムの有用性が高いといえる。特に歩行機能は、自ら移動して生活行動を行う意味、歩行運動によって血流を良くし、代謝機能を保持する意味の両面から重要な機能である。このため、日常的に歩行機能をモニタリングする見守りシステムが有効である。しかし、これまでの運動機能、歩行機能の評価は、年一回程度、自治体等が主催して体育施設などで機能評価を受ける程度であり、評価のカバー範囲及び頻度の面で不十分である。健康状態の悪化、生活機能の低下の兆候を捉え、予防的な措置を取るためには、日常生活の中で自然に評価を行い、評価結果を外部から知ることができることが望ましい。したがって、本発明では、日常生活の中から見守り対象者の歩行機能をモニタリングする。
<第1実施例>
<見守りシステムの構成>
図1は、本発明の第1実施例に係る見守りシステムの全体構成図である。見守りシステム100は、見守り対象者(対象者)が居住あるいは滞在する施設1と、見守りサービスを提供する情報処理システム2と、見守り担当者が利用する端末3の三つの主要な構成要素を備える。
施設1は、施設1における対象者の位置を時系列で測定するための測定システムTN0200を備える。測定システムTN0200は、センサにより歩行信号を計測する歩行信号計測部TN0201と、歩行信号計測部TN0201を制御し、計測した信号に対して演算処理を実行する制御部及び演算部TN0202と、制御部及び演算部TN0202の演算結果を蓄積する蓄積部TN0203と、演算結果を外部に通信する機能を有する通信部TN0204とを備える。
情報処理システム2は、見守り対象者の位置の時系列の変化が、後述する異常判定テーブル(図17)の条件を満たすかを判定することにより、見守り対象者の健康状態を判定するものである。情報処理システム2は、施設1に設置された測定システムTN0200の通信部TN0204より送信された情報をネットワーク8を経由して受け取る通信部9と、間取り情報格納部10と、異常判定情報格納部11と、履歴蓄積部12と、見守り対象者の行動解析、歩行機能評価、及び異常判定を行う制御部及び演算部13と、見守り者情報格納部16とを備える。情報処理システム2において、制御部及び演算部13の演算結果、及び、測定システムTN0200からの情報は、履歴蓄積部12に蓄積される。
情報処理システム2はさらに、アプリケーションサーバ(APPサーバ)14と、WEBサーバ15と、メールサーバ17とを備える。アプリケーションサーバ14は、履歴蓄積部12に蓄積された情報を参照し、端末3に見守り対象者の状態や履歴を表示するアプリケーション機能を提供する。WEBサーバ15は、インターネットなどのネットワーク8を介して端末3から届くリクエストに応じ、見守り対象者の状態や履歴を表示する画面を提供する。また、メールサーバ17は、見守り者情報格納部16の情報を用いて、平時の見守り担当者あるいは緊急担当者に対して見守り対象者の状態を知らせるメールを送信する。
アプリケーションサーバ14及びWEBサーバ15は、見守り者情報格納部16に登録されている管理情報を用いて、WEBサーバにアクセスしてきた見守り担当者のIDに応じて表示内容を選択する。端末3は、見守りサービスを提供する情報処理システム2から提供される、見守り対象者の歩行機能評価、行動解析、異常判定の結果をネットワーク8を介して受け取る通信部を有する。また、端末3は、受け取った情報を表示する表示部と、必要に応じて入力を行う入力部とをさらに有する。端末3は、例えばPCやスマートフォン、タブレット端末、携帯電話などである。
なお、これらは各拠点の構成は、ハードウェアとして独立である必要は無く、一体となったハードウェア内に複数の機能が実現されてもよい。また、見守りサービスを提供する情報処理システム2と、情報処理システム2からの情報を受け取り且つ情報処理システム2への入力を行う端末3が同じ拠点内に存在してもよい。さらに、複数の端末3が使用されてもよい。複数箇所で見守ることでより確実な見守りが期待できる。後述するように、平時の見守り担当者と緊急対応者とを組合せて見守りサービスを提供することができる。また、遠隔地に住む家族などが見守りサービスのための端末3を持つことで、遠隔から見守り対象者の状態を確認することができる。
また、測定システムTN0200及び情報処理システム2の構成要素は、コンピュータ、ワークステーションなどの情報処理装置によって構成される。情報処理装置は、中央処理装置と、メモリなどの記憶部と、記憶媒体とを備える。中央処理装置は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサで構成されている。記憶媒体は、例えば不揮発性記憶媒体等である。不揮発性記憶媒体には、磁気ディスク、不揮発性メモリ等が含まれる。上述した格納部や蓄積部は、記憶媒体あるいはメモリなどの記憶部によって実現される。また、記憶媒体には、見守りシステムの機能を実現するプログラムなどが格納されており、メモリには、記憶媒体に格納されているプログラムが展開される。CPUは、メモリに展開されたプログラムを実行する。したがって、以下で説明する見守りシステムの処理は、コンピュータ上で実行されるプログラムとして実現されてもよい。なお、実施例の構成は、それらの一部や全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現されてもよい。
<施設の構成>
次に施設1内のシステムを説明する。図2は、施設1の建物の間取りの一例である。施設1は、第1の部屋TN0101と、第2の部屋TN0102と、風呂TN0103と、トイレTN0104と、玄関TN0105とから構成され、各部屋は廊下TN0106でつながっている。センサTN0107a、TN0107bは、例えば、廊下TN0106の端の2箇所に設置され、施設1内のセンシングを行う。なお、図2において、添え字のa、b、・・・は同一の構成要素であることを示し、特に必要のない場合は省略する。
図3は、施設1内の測定システムTN0200の構成図であり、図1における施設1内のシステムをより詳細に記述したものである。測定システムTN0200は、センサにより音あるいは振動を検知し、見守り対象者の位置及び歩行情報を取得するシステムである。測定システムTN0200は、センサTN0107a、TN0107bと、データ収集部TN0201aと、制御部及び演算部TN0202と、蓄積部TN0203と、通信部TN0204とを備える。
センサTN0107は、施設1内に設置され、人の動く音あるいは振動をセンシングするものである。センサTN0107で得られたデータは、データ収集部TN0201aで収集される。データ収集部TN0201aで収集されたデータは、制御部及び演算部TN0202を経由し、一旦蓄積部TN0203に蓄積される。制御部及び演算部TN0202は、データ収集部TN0201aで収集されたデータに関してデータ解析処理を行う。また、制御部及び演算部TN0202は、歩行信号計測部TN0201及び蓄積部TN0203の制御を行う。制御部及び演算部TN0202によってデータ解析された結果は、通信部TN0204を経由してネットワーク8に送信される。また、制御部及び演算部TN0202は、通信部TN0204からのデータに基づき、制御や演算を行うこともできる。
<音源位置の測定>
次に、本実施例において音源位置の測定の詳細について説明する。見守りシステムでは、センサTN0107を用いて、見守り対象者が歩行している際に足音が生じた位置を特定し、施設1内での移動経路や、場所の特定、移動速度などの計測を行う。
図4は、足音の生じた位置を特定する原理を説明する図である。足音が生じたタイミング(TN0301a、TN0301b、・・・)から、センサTN0107で足音の信号を受信するタイミング(センサTN0107a:TN0302a、TN0302b、・・・、センサTN0107b:TN0303a、TN0303b、・・・)までの間では、足音が生じた場所からセンサTN0107a、TN0107bまでの距離に応じて、伝搬遅延時間が生じる。例えば、空気中の音の伝搬速度は、気温15℃では約340m/sである。このため、センサTN0107a、TN0107bとの間に1mの距離の差があれば、約3ミリ秒の遅延時間が生じる。また、廊下などの剛体を歩行による振動が伝搬する際にも伝搬遅延時間が生じる。
足音の生じた場所が動くにつれ、センサTN0107a、TN0107bで音を受信する到達時間は変化する。音の伝搬する速度をvsとした場合、到達時間は音源からセンサまでの距離をvsで除算した時間だけ遅れることとなる。従って、1つの音源からの音を2つのセンサTN0107a、TN0107bで受信した場合、以下の関係式が成り立つ。
{xf(n)−x1}−{x2−xf(n)}=Δt(n)・vs
ここで、xf(n)は、音が生じた音源の位置である。また、x1はセンサTN0107aの座標であり、x2はセンサTN0107bの座標である。また、Δt(n)は、センサTN0107aとセンサTN0107bで音を受信したときの時間差である。また、添え字のnはn番目の音の音源位置、計測時間差データであることを示す。この式は、以下のように変形できる。
xf(n)={Δt(n)・vs+(x2−x1)}/2
従って、センサTN0107a、TN0107bの座標と、音の伝搬速度と、センサTN0107aとセンサTN0107bでの受信時間差が分かれば、音源の位置を算出することができる。センサTN0107a、TN0107bの座標は設置の際に既知であり、音の伝搬速度は気温や媒質等に依存するが既知の値として取り扱う事ができる。従って、Δt(n)を計測すれば、音源の位置を算出することができる。
<足音位置の算出フロー>
図5は、足音の位置を算出する信号処理のフローの一例を示す。以下の処理の主体は、測定システムTN0200の制御部及び演算部TN0202である。
まず、施設1内に設置されたセンサTN0107からの足音のデータを取得する(TN0401)。取得したデータを時間差抽出に適したデータに変更するために、取得したデータに対してフィルタリング処理を実行する(TN0402)。具体的には、例えば周波数フィルタを用い、ある所定の範囲の周波数の信号を抽出する処理や、ノイズ除去の処理を行う。また、信号対雑音比を高めるため、周波数方向に積分する処理などを行う。
次に、このような処理を各々のセンサTN0107からのデータについて実施した後、受信信号の到達時間差の算出を行う(TN0403)。具体的には、例えば、それぞれの信号の到達時間を抽出するため、時間微分を行い、微分値がピークとなる時間を抽出することにより、音の変化が大きい時間、すなわち、音の到達時間を求める。各々のセンサTN0107からのデータに対して音の到達時間を求め、その差を計算することにより、音の到達時間差を算出し、音源の位置を計算する(TN0404)。また、別の方法としては、各々のセンサTN0107からのデータの相互相関関数を計算し、相関が最も高い時間差を到達時間差とする方法もある。このようにして算出した到達時間差を用い、音源の位置の特定を行う。
なお、伝搬時間以外を用いて音源位置を特定する方法も考えられる。例えば、音の強度を用いる方法がある。センサTN0107aとセンサTN0107bとで受信した音の強度の比から音源位置を算出することができる。しかしながら、この方法では、音の指向性の影響を受けやすく、算出結果に誤差が生じる場合がある。また、音は距離に対して非線形に減衰するため、誤差を生じる場合もある。このような場合は伝搬遅延時間差を用いて音源位置を算出することにより正確に音源位置を算出できる。
本実施例では、到達時間差を用いて音源の位置を算出するため、各センサTN0107からのデータは、データ収集部TN0201aによって同期させて取得される。例えば、空気中であれば、音はおおよそ10cm程度の距離に対して約0.3ミリ秒の時間がかかる。したがって、同期させる精度に関して、おおよそ10cm程度の位置精度を得るためには、空気中であれば約0.3ミリ秒の時間よりも高い精度で同期させる。到達時間差を精度よく算出するためには、各センサTN0107からのデータは、例えば、0.1ミリ秒以下の誤差で同期させて取得することが望ましい。
また、到達時間差を精度よく算出するためには、一定以上の周波数でデータを取得する必要がある。10cm程度以内の誤差で位置計測を行うには、例えば10kHz以上のサンプリング周波数でサンプリングを行うことが望ましい。
図6は、各センサTN0107からのデータに基づいて算出した音源の位置の時間変化(TN0501)をプロットした図である。人が歩き、移動している場合は、時間に伴い、音源の位置が変化する。この時系列データから、人の動きや場所、歩行速度を把握することが可能となる。
<歩行速度の算出フロー>
図7は、足音の音源位置の時系列データから歩行速度を算出するフローである。以下の処理の主体は、情報処理システム2の制御部及び演算部13である。
まず、足音が生じた時間と音源の位置の時系列データTN0501(図6参照)を取得する(TN0601)。次に、時系列データTN0501を必要に応じてフィルタリングや、補間などを行い、歩行速度を算出するのに適したデータに変換する(TN0602)。補間には、スプライン補間、線形補間などが考えられる。
次に、変換されたデータに対して時間微分を行うことにより、歩行速度の時間変化を算出する(TN0603)。次に、歩行速度の時間変化のデータから、最大値、あるいは平均値などを抽出し、歩行速度を算出する(TN0604)。
ここで、歩行速度を算出する場合、歩行距離が短い場合と長い場合とで歩行速度は異なる。このため、歩行速度を例えば過去の歩行速度と比較する際には、同一の条件で比較することが望ましい。例えば、一定の距離以上歩行した場合の最大の歩行速度で比較する方法などが考えられる。あるいは、特定の位置、例えば、廊下の真ん中付近などでの歩行速度を抽出して比較することも考えられる。
また、別の例として、部屋のドアや出入り口にセンサを設置し、ある部屋から別の部屋へ移動した時間差を計測し、その移動距離から歩行速度を求める方法も考えられる。しかしながら、このような方法では、部屋の出入り口付近で立ち止まり、ドアの開閉を行ったりする時間が含まれることや、部屋を出入りする際に歩行速度が変わることから、正確な歩行速度を算出することは難しい。一方、本実施例によれば、音源の位置の時系列データから歩行速度を算出することで歩行速度の時間変化、最大値、平均値や立ち止まっている時間なども認識することができる。また、歩行速度に加えて、足音の音源位置の時系列データから歩行周期を算出してもよい。
<足音の音源位置の時系列データの一例>
図8は、測定システムTN0200からネットワーク上の情報処理システム2に送信され、情報処理システム2に蓄積されるデータセットの一例を示す。
図8に示すように、一歩毎のデータについて、音の発生した時刻と、音源の位置とを情報処理システム2の履歴蓄積部12に蓄積する。また、音のデータからは音源の位置のデータのみでなく、音の強度や周波数領域での特徴量を抽出してもよい。これらのデータは、歩行パラメータ(歩行音強度、歩行周期、歩行位置、歩行速度など)の算出に使用される。情報処理システム2の履歴蓄積部12には、必要に応じて、音の強度、音の周波数特徴量なども蓄積する。情報処理システム2は、蓄積されたデータを元に、見守り対象者の滞在部屋の推定処理及び見守り対象者の歩行機能の判定処理を実行する。情報処理システム2は、見守り対象者の異常を検知した場合は、端末3に通知するなどの処理を行う。
なお、ここまでは、データを施設1内に設置した機器により解析した後、ネットワーク8経由で情報処理システム2内の履歴蓄積部12にデータを蓄積する構成として説明したがこれに限るものではない。センサTN0107からのデータを情報処理システム2の履歴蓄積部12に直接送信し、施設1内に設置した機器ではなく情報処理システム2内で全ての演算を行ってもよい。施設1内のローカルシステム(測定システムTN0200)である程度の処理を行えば、抽象度の高いデータのみをネットワーク8を介して送るため、よりセキュリティが高くなる。また、情報処理システム2に送信するデータ量を減らすことができるため、通信量を抑制することができる。
一方、情報処理システム2をクラウドコンピューティングの形態で構成してもよい。この場合、クラウド上に存在する情報処理システム2に全てのデータを蓄積し、データ処理を行えば、豊富な計算リソースを利用可能となる。また、処理前の生の信号データを情報処理システム2において全て蓄積しておくことで新たなアプリケーションの開発、アプリケーションを更新、追加した際に過去までさかのぼって解析を実施することが可能となる。
また、通常は抽象度の高いデータを施設1内の測定システムTN0200からネットワーク8経由で情報処理システム2に送信し、情報処理システム2からの要求があった場合のみ生データを送信する構成としてもよい。具体的には、例えば、1日分の生データを測定システムTN0200の蓄積部TN0203に蓄積しておき、情報処理システム2からリクエストのあった時間帯の生データを情報処理システム2に送信してもよい。
なお、本実施例では、施設1内に2つのセンサTN0107a、TN0107bを配置し、見守り対象者の直線状の位置を算出する構成を説明したが、これに限るものではない。原理的には少なくとも3つのセンサを配置すれば2次元平面での位置を算出することができる。例えば、廊下あるいは部屋の四隅に1つずつ合計4つのセンサを設置し、その空間内での歩行音を取得し、見守り対象者の位置を特定してもよい。2次元での位置特定を行うことでその空間内での移動経路を算出することができる。
また、2つ以上のセンサを用いて1次元の位置を計算してもよい。例えば、4つのセンサを用いて、1次元の位置を特定すれば、計算に用いる事ができる情報が増えるため、位置特定の精度を向上させることが可能となる。また、一部のセンサによりデータが取れていなかった場合においても、他のセンサからのデータにより位置を算出することができる。
<歩行音の判別フロー>
足音などの床あるいは空気の振動による信号で歩行状態を判断する場合、検出した振動が歩行により生じた足音(歩行音)であるか否かを判別する必要がある。ここでは、歩行音の判別方法について記述する。
図9は、歩行音の判別アルゴリズムのフローを示す。一例として、センサTN0107a、TN0107bとして、マイクなどの振動検出センサを用いた場合について説明する。なお、図9において、ステップ901〜910の処理の主体は、測定システムTN0200の制御部及び演算部TN0202であり、ステップ911〜915の処理の主体は、情報処理システム2の制御部及び演算部13である。
まず、あらかじめ設定した時間間隔(Tsample)おきに、マイクなどの振動検出センサーシステムによって連続的(時系列)に環境音などの振動を計測する(901)。次に、環境音などの時系列データを記録する(902)。
次に、Tsample時間内の振動の時系列データの解析を行う。具体的には、取得したTsample時間の振動時系列データのスペクトログラムを求め、ある低周波領域(f0からf1)においてある強度範囲内(Ithl1からIthh2)のピーク信号があるかを判別する(903)。これを第一の歩行ピーク判別とする。
ここで、居住様式は国ごとに様々であるが、例えば、施設1内において靴を脱いで過ごす様式と、施設1内において靴を履いた状態で過ごす様式とがある。前者の様式においては、はだしや靴下、スリッパなど足底が柔らかい状態で施設1内を歩行する場合が多いため、居住建物の中での歩行音に起因した振動は、低周波成分が強く、その信号強度は限られた変動幅の中に収まる。したがって、この性質を利用して歩行ピークを判断することができる。また、後者の様式においても、第一の歩行ピーク判別は可能である。判別に使用する周波数領域(f0からf1)および強度範囲(Ithl1からIthh2)は観測対象者の観測対象建物での歩行時の振動情報を計測してあらかじめ決定すればよい。
なお、第一の歩行ピーク判別を満たすピーク信号が無い場合、歩行に起因したピーク信号はないと判断し、ステップ901に戻る。ピーク信号があった場合、第二の歩行ピーク判別であるステップ904に進む。
次に、第二の歩行ピーク判別として、第一の歩行ピーク判別に該当したピーク信号の減衰時間がt0以下であるかを判定する(904)。この判別条件は、歩行音は足が着地したときに生じる足と床の衝突音であるため、信号強度の減衰が速いといった特徴を利用して、歩行以外の低周波ノイズと歩行音とを区別するものである。この条件を満たすピーク信号が無い場合、歩行に起因したピーク信号はないと判断してステップ901に戻る。ピーク信号があった場合、第三の歩行ピーク判別であるステップ905に進む。
次に、第三の歩行ピーク判別として、第二の歩行ピーク判別を満たすピーク信号の強度が、ある周波数(f2)以上であり、且つある信号強度(Ithh3)以下であるかを判定する(905)。この判別条件は、建物の中での歩行時に生じる振動は高周波成分が少ない性質を利用して、歩行以外の大きな音と歩行音とを区別するものである。判別に使用する周波数(f2)および信号強度(Ithh3)は、観測対象者の観測対象建物での歩行時の振動情報を計測し、あらかじめ決定する。この条件を満たすピーク信号が無い場合、歩行に起因したピーク信号はないと判断して、ステップ901に戻る。ピーク信号があった場合、ステップ906へ進む。
次に、第三の歩行ピーク判断を満たすピーク信号は歩行に起因したものであると判定する(906)。さらに、歩行に起因したピーク信号と判別された信号は、そのピーク時間が記録される(906)。
次に、前回検出された歩行音のピーク信号が発生した時間と、今回検出された歩行音のピーク信号が発生時間との間の時間差が、ある時間内(t1からt2)であるかを判定する(907)。この判定により見守り対象者が歩行状態であるか否かを判定する。これは人の歩行周期は体調などの健康状態によりわずかに変化するものの、ある変位範囲内に収まるといった特徴を利用して判別するものである。この条件に当てはならない場合、歩行状態ではないと判定して(908)、ステップ901に戻る。この条件を満たした場合、見守り対象者は歩行状態であると判定する(908)。
見守り対象者が歩行状態であると判定された場合、足音の音源位置を算出する(910)。例えば、図5で説明したフローを実行する。その後、時刻、見守り対象者の位置、足音の信号強度、及び足音の信号の周波数などの情報を情報処理システム2へ送信する。
次に、歩行に起因する信号ピークが発生する時間間隔から歩行周期を算出する(911)。その後、見守り対象者の位置を推定する(912)。なお、位置の推定方法については後で詳細に記述する。さらに、推定した歩行位置の時系列変化により歩行速度を算出する(913)。次に、歩行周期、歩行速度、歩行音強度、及び歩行位置などを歩行パラメータとして情報処理システム2の履歴蓄積部12に記録する(914)。
次に、歩行パラメータの情報と、見守り対象者の位置と、異常判定情報格納部11の異常判定テーブル(図17参照)とを用いて、見守り対象者の状態を推定する(915)。見守り対象者の状態が異常でないと判定された場合、ステップ901に戻る。異常であると判定された場合、後で説明する異常事態対応に移る(図18参照)。以上述べた方法により、歩行音を判別して、見守り対象者の健康状態を判定する。
図9の第一の歩行ピーク判別から第三の歩行ピーク判別(ステップ903〜905)について図10から図13を用いて説明する。ここでは、施設1内において靴下を履いて廊下を歩行した例を用いて説明する。
図10は、時間間隔(Tsample)を0.6秒として環境音をマイクで計測した際の音圧の時系列データである。0.4秒付近に大きなピークが見られるが、これが歩行に起因するものか判別する。
まず、計測した音圧の時系列データのスペクトログラムを求め、f0=100Hzからf1=400Hzの周波数領域の積算強度の時系列データにおいて、Ithl1=35dB以上、Ithh2=55dB以下のピークがあるかを調べる。
図11Aは、100Hzから400Hzの周波数領域の積算強度の時系列データである。0.4秒付近に35dB以上55dB以下のピークがあることがわかる。したがって、図11Aの例は、第一の歩行ピーク判別を満たすことが分かる。
次に、検出したピークの減衰時間を調べる。ここでは検出したピーク強度から10dB下がるのに要する時間を減衰時間t0とし、t0が0.1秒以下であるかで判断する。図11Aでは、ピーク強度50dBから40dBまで下がるのに要する時間は0.03秒であったため、第二の歩行ピーク判別を満たすことが分かる。
次に、1kHz以上の周波数領域の積算強度時系列データの0.4秒付近が40dB以下であるかを調べる。図11Bは、1kHz以上の周波数領域の積算強度時系列データである。0.4秒付近の強度は40dB以下であることから、第三の歩行ピーク判別を満たすことが分かる。以上から、図10における0.4秒付近のピーク信号は歩行に起因したものであると判定し、このピーク発生時間0.38秒を記録する。
次に、前回検出した歩行ピーク発生時間との差の算出(図9のステップ907)について説明する。ここで、図10における0.4秒付近のピークが初めての歩行ピークと仮定し、再び、Tsample時間の音計測を行う。図12は、再度、Tsample時間の音圧を計測した際の時系列データである。図12において、1.0秒付近に大きなピークが見られるが、これが歩行に起因するものか前回同様に判別する。
図13Aは、100Hzから400Hzの周波数領域の積算強度の時系列データである。1.0秒付近に35dB以上55dB以下のピークがあることがわかる。したがって、図13Aの例は、第一の歩行ピーク判別を満たすことが分かる。
このピークの減衰時間は0.05秒であり、1kHz以上の周波数領域の積算強度時系列データ(図13B)から1.0秒付近の強度は40dB以下である。したがって、ピーク信号は歩行に起因したものであると判定し、このピーク発生時間1.03秒を記録する。
このピーク発生時間(1.03)と前回のピーク発生時間(0.38)との間の差がt1=0.25秒以上t2=1秒以下であれば歩行状態と判断する。1.03−0.38=0.65秒であり、上述の条件を満たすため、見守り対象者は歩行状態であると判定できる。
ここでは、第一の歩行ピーク判別から第三の歩行ピーク判別(ステップ903〜905)を説明したが、歩行音の判別アルゴリズムはこの組み合わせに限定されない。例えば、判別条件は、ピーク信号に対する所定の周波数領域における強度範囲、及び、ピーク信号の減衰時間の少なくとも1つに関する条件で定義されてもよい。また、他の条件を設定してもよい。また、ここでは、低周波成分強度、高周波成分強度、及び減衰時間などの値をあらかじめ設定した単純な閾値で判断したが、ニューラルネットやサポートベクターマシンなどデータマイニング、機械学習の手法で判断することもできる。
また、ここでは、センサTN0107としてマイクを使用し、歩行による振動を音として観測したが、他の構成を用いてもよい。例えば、床や壁より伝わる振動をマイクやピエゾ振動センサ、加速度センサ、歪みセンサを用いて検出してもよい。その場合、ピエゾ振動センサ、加速度センサは、微小な振動を検出することができる。また、歪みセンサは、振動周波数が遅い振動を検出することができる。
<歩行音の時系列変化の例>
次に、歩行を行ったときに観測される足着地時の信号強度の時系列変化の典型例について説明する。ここで、信号強度とは、マイクなどの振動センサで検出した歩行音の振幅の絶対値や歩行音の低周波成分のみの強度などが相当する。歩行音は左右の足の歩行音が交互に検出されると考えられる。ここでは便宜的に最初に検出された歩行音を右脚、次に検出された歩行音を左脚としてそれぞれ実線と点線で示している。
図14Aは、健常者の典型例である。左右の足の着地周期や、左足と右足の着地間隔の変動幅が小さく、信号強度における左右の差は少ない。これに対し、変形性関節症などで片方の脚の関節等に痛みなどの障害がある場合、左足と右足の着地間隔が不均一になる(図14B)。また、別の例では、信号強度が大きく異なったりするようになる(図14C)。
また、歩行周期や信号強度の不均一性が小さくても、周期が変動幅以上に長くなる場合もある(図14D)。さらに別の例として、信号強度が平常時の変動幅以上に弱くなった場合もある(図14E)。この場合、衰弱による歩行能力の低下が疑われる。本実施例では、情報処理システム2の制御部及び演算部13が、これらの歩行様式を解析し、あらかじめ設定した歩行音間隔(歩行周期)及び信号強度の変動範囲を超えた場合、異常と判定する。異常と判定された場合、異常事態対応に移る。また、これらの歩行音幅間隔及び信号強度を1か月前や1年前などあらかじめ設定した期間遡った時期の歩行音幅間隔及び信号強度と比較して異常とみなす変動範囲を決定することもできる。なお、図14B−図14Eでは、歩行音間隔と信号強度の組み合わせのパターンについて説明したが、歩行音間隔と信号強度の少なくとも一方で異常を判定してもよい。
<テーブルの構成>
次に、情報処理システム2の間取り情報格納部10、異常判定情報格納部11、履歴蓄積部12、及び、見守り者情報格納部16に格納されるデータについて説明する。なお、以後の説明では、格納部10、11、16及び蓄積部12の情報を、「テーブル」構造を用いて説明するが、これら情報は必ずしもテーブルによるデータ構造で表現されていなくても良く、リスト、キュー等のデータ構造やそれ以外で表現されていても良い。そのため、データ構造に依存しないことを示すために「テーブル」、「リスト」、「キュー」等について単に「情報」と呼ぶことがある。
図15は、間取り情報格納部10に格納される間取りテーブルの例を示す。間取りテーブル1500は、図2に示す施設1の間取りに対応する。間取りテーブル1500は、間取ID1501と、カテゴリ1502と、出入り口の中央位置1503と、位置判断最小値1504と、位置判断最大値1505とを構成項目として含む。
このテーブルの作成の仕方を説明する。二つのセンサ、すなわち、センサTN0107a及びセンサTN0107bを施設1に設置する際にセンサ間の距離を測定する。一方のセンサTN0107bから一定の距離が離れた点で床を叩くなどで信号を発生させ、システムによって、上述した音源位置の算出処理を実行する。数点でデータを取得し、算出位置と実測値との間にずれが生じた場合には演算式を補正する。
さらに、一方のセンサTN0107bから各部屋の入り口の中心までの距離を実測し、記録する。この距離が小さいものから順に並べ、間取りIDを割り振る。なお、ここでは説明の便宜上、風呂や玄関など、通常必ずしも部屋と呼ばないものも「部屋」という呼称を用いる。また、玄関、トイレ、風呂、寝室とする居間、寝室で無い居間、廊下を区別し、各間取りIDに対して部屋のカテゴリを割り当てる。
センサTN0107bから間取ID(R1)の部屋の入り口の中心までの距離をDR1とし、センサTN0107bから間取ID(R2)の部屋の入り口の中心までの距離をDR2とし、センサTN0107bから間取ID(R3)の部屋の入り口の中心までの距離をDR3とする。このとき、R2の部屋の位置判断最小値1504は(DR2+DR1)/2とし、位置判断最大値1505は(DR3+DR2)/2と設定する。具体的には、R2の部屋の位置判断最小値1504は、(0.9+0)/2=0.45となる。また、R2の部屋の位置判断最大値1505は、(1.5+0.9)/2=1.2となる。
図15では説明のため、DR1からDR5の値(中央位置1503の値)の例、及びこの例の場合の位置判断最小値1504と位置判断最大値1505を記述している。実際に用いるのは位置判断最小値1504と位置判断最大値1505なので、これらの値を計算した後はDR1からDR5の値は必ずしも保持する必要は無い。また、両端の間取りID、すなわち、R1及びR6については、位置判断最小値1504、あるいは位置判断最大値1505が存在しない。これらのデータを格納した間取りテーブル1500は、情報処理システム2の間取り情報格納部10に格納される。
図16Aは、履歴蓄積部12に格納される状態情報テーブル1600の例を示す。状態情報テーブル1600は、情報処理システム2における見守り対象者の状態情報を格納したものである。状態情報テーブル1600は、状態ID1601と、所在1602と、状態開始日時1603と、継続時間1604と、異常判定1605と、コンタクトID1606と、コンタクト日時1607とを構成項目として含む。
所在1602には、間取りテーブル1500の間取ID1501に対応する値が格納される。状態開始日時1603は、所在1602での滞在を開始した日時を示し、継続時間1604は、所在1602に滞在した継続時間を示す。なお、継続時間1604は、1つ前の滞在部屋の終了点と次の滞在部屋の終了点との時刻の差であり、次の滞在部屋の終了点が検知されていない場合(すなわち、部屋に滞在中の場合)にはその時の現在時刻と直近の終了点との時刻の差である。滞在部屋の推定方法については後述する。
異常判定1605には、後述する異常判定テーブル(図17参照)を用いた判定により異常が判定された場合に、異常ID1701が格納される。コンタクトID1606には、見守り対象者が異常と判定された場合に実行したコンタクトID1611(図16B参照)が格納される。また、コンタクト日時1607は、コンタクトID1606に対応するコンタクトを実施した日時が格納される。
図16Bは、見守り者情報格納部16に格納されるコンタクト内容テーブル1610の例を示す。コンタクト内容テーブル1610は、コンタクトID1611と、内容1612とを構成項目として含む。内容1612には、見守り対象者が異常と判定された後に見守り担当者が実施したコンタクトの内容及び結果が具体的に記載されている。ここでは、図示を省略しているが、見守り者情報格納部16には、このコンタクト内容テーブル1610とは別に、見守り担当者の情報(アカウント、メールアドレスなど)を格納した管理テーブルも格納されている。
図17は、異常判定情報格納部11に格納される異常判定テーブル1700の例を示す。異常判定テーブル1700は、異常ID1701と、意味1702と、条件1703と、緊急1704とを構成項目として含む。
異常判定テーブル1700は、見守り対象者の位置の時系列の変化や、歩行音強度、歩行周期、歩行位置、歩行速度などの歩行パラメータを判定条件として、見守り対象者の異常を判定するための情報を格納している。見守り対象者の位置の時系列の変化としては、施設1内での移動(廊下などの特定の箇所の往復)、施設1内の滞在部屋、及び滞在時間などである。
条件1703の意味は、意味1702に示されている。例えば、異常ID1701=U1の場合、夜間にトイレに3回以上行くという条件1703が設定されている。これは、夜間にトイレの頻度が多く、体調不良が考えられることを意味する。その他にも、異常ID1701=U2の場合、歩行速度が0.8m/s未満であるという条件1703が設定されている。これは、歩行機能が低下したことを意味する。なお、異常判定テーブル1700の条件1703の中で、歩行速度などの歩行機能の基準は個人の現在の歩行機能に応じて設定する。例えば、施設における体力テストにて歩行速度を測定し、その一定割合、例えば70%を基準に設定する。体力テスト結果が得られない場合には、虚弱と判定される歩行速度、あるいはそれより速い速度を基準とする。また、体調不良や怪我などを検知するには、直近一定期間、例えば一ヶ月間の歩行速度の平均値に対して一定割合以下の速度、例えば50%以下だと異常と判定するなどとする。したがって、図17では省略しているが、複数の見守り対象者ごとに条件1703を設定するようにしてもよい。
また、図17では図示を省略しているが、異常ID1701=U5、U9の条件1703は、図14B〜図14Eで説明した歩行信号の強度と歩行周期のパターンに対応する条件が設定される。情報処理システム2の制御部及び演算部13は、信号強度及び歩行周期のパターンを用いて、見守り対象者の異常を判定することができる。
また、緊急1704には、緊急を示すフラグ(0または1)が格納されている。例えば、緊急1704が1の場合、緊急の異常を示す。緊急の異常である場合、情報処理システム2のメールサーバ17は、緊急対応者に電子メール等の手段で通知を行う。緊急性が低い場合、例えば加齢により歩行機能が徐々に低下し、その結果、歩行速度が低下した場合、平時の見守り者が気付いたときにコンタクトし、本人の意思確認等を行ってから歩行機能の強化の対応を行えばよい。また、風呂やトイレの滞在時間が非常に長い場合などは、生命に関わる緊急事態の可能性があるため、情報処理システム2は、平時の見守り担当者に加え、緊急対応者に対して通知処理を実行する。この運用により、緊急対応者が見守り対象者に緊急で訪問するなどの対応を取ればよい。
異常判定テーブル1700を用いた処理のフローは以下の通りである。情報処理システム2の制御部及び演算部13は、異常判定テーブル1700と、滞在部屋の推定結果及び歩行パラメータとを用いて、見守り対象者の異常に関する判定処理を実行する(図9のステップ915)。制御部及び演算部13は、状態情報テーブル1600及び歩行パラメータが異常判定テーブル1700の条件1703の判定条件に合致するかを計算する。制御部及び演算部13は、判定条件に合致した場合、状態情報テーブル1600の異常判定1605に、対応する異常ID1701を書き込む。
情報処理システム2は、異常判定テーブル1700の緊急1704に応じて、平時の見守り担当者及び緊急対応者の少なくも一方に通知処理を実行する。緊急の場合、緊急対応者が、見守り対象者の施設1に緊急訪問する。平時の見守り担当者は見守り対象者の異常を端末3によって確認する。見守り担当者は、見守り対象者にコンタクトした場合、端末3によりコンタクト内容を入力する。情報処理システム2の制御部及び演算部13は、その情報を受け取り、状態情報テーブル1600のコンタクトID1606及びコンタクト日時1607を記録する。
<滞在部屋の推定方法>
次に、滞在部屋の推定方法を説明する。情報処理システム2の制御部及び演算部13は、見守り対象者の位置の時系列の変化と間取りテーブル1500とを用いて、見守り対象者が滞在している施設1内の部屋を判定する。例えば、制御部及び演算部13は、居住者の位置の時系列情報(図8)を受け取った後、一連の歩行行為の開始点と終了点を判定する。歩行行為の終了判定は、歩行行為を一定時間検知でなくなった場合に、検知できた最後の一歩を終了点とすることにより行う。
制御部及び演算部13は、終了点の位置情報に対し、間取りテーブル1500を参照する。ここで、終了点の位置が、位置判断最小値1504より大きく、且つ位置判断最大値1505よりも小さくなるような間取ID1501を判定する。制御部及び演算部13は、この間取ID1501を、歩行行為を終了した後に滞在している部屋として判定する。滞在部屋の判定結果は、状態情報テーブル1600に反映される。なお、滞在部屋が玄関の場合(歩行行為の終了点が玄関の場合)、外出したと見なす。
また、より確実に部屋の出入りを判定する方法として、後述するようにドアの開閉音あるいはドア開閉による気圧変化を測定し、歩行信号と付き合わせても良い。ここまでは、一連の歩行行為の終了点で滞在部屋を推定したが、これに併せて開始点を判定してもよい。開始判定は、歩行行為を一定時間検知でなくなった場合に、その後検知できた最初の一歩を開始点とする。部屋に入った行為に対応する終了点に加え、部屋から出た行為に対応する開始点を検知することで、より詳細に見守り対象者の行動を把握できる。また、廊下で動けなくなった場合、開始点と終了点の両方を用いることで異常判定を行うことができる。
なお、各部屋の出入り口の前で床を叩くなどで信号を発生させ、情報処理システム2が、滞在部屋の推定の演算を行い、必要に応じて演算式を補正してもよい。
<見守りサービスのフロー>
次に、見守りシステムの処理フローについて説明する。図18は、第1実施例に係る見守りシステムを用いた見守りサービスのフローの例である。
まず、本人、家族あるいは自治体などの見守りを行いたい組織が、見守りサービスを申し込むと、見守りサービス提供者は、見守り対象者が住む施設1に測定システムTN0200を設置する。測定システムTN0200を設置した後、上述したように各部屋の出入り口などで音を発生させ、情報処理システム2の演算式を補正してもよい。また、情報処理システム2にアカウントの登録を行う。また、見守りサービス提供者は、平時の見守り担当者と緊急対応者を決定する。平時の見守り担当者と緊急対応者の情報(アカウント、アドレスなど)は、見守り者情報格納部16に格納される。
見守り担当者は、ログインするためのアカウント情報を受け取り、見守りをスタートする。平時の見守り担当者は、PCや携帯端末などの端末3を用いて、最低一日一回見守り対象者のデータを閲覧する。以下に、見守り担当者及び緊急対応者へ通知されるフローを説明する。
まず、施設1の測定システムTN0200は、常時、音の信号検知、足音判断、及び位置計算の処理を実行する。そして、施設1の測定システムTN0200は、常時、時刻、見守り対象者の位置、足音の信号強度、及び足音の信号の周波数などの情報を情報処理システム2へ送信する(1801)。
情報処理システム2は、受け取った情報を元に、歩行周期の算出や滞在部屋の推定処理を実行する。ここで、情報処理システム2は、間取りテーブル1500(図15)を参照し、状態情報テーブル1600を更新する(1802)。
その後、情報処理システム2は、歩行速度などの歩行パラメータを算出し、算出した歩行パラメータを、例えば、履歴蓄積部12に記録する(1803)。情報処理システム2は、状態情報テーブル1600及び歩行パラメータの情報が異常判定テーブル1700の条件を満たすかを判定する(1804)。ここでは、見守り対象者に異常がないと判定されたと仮定する(1804)。
平時の見守り担当者は、端末3を用いて情報処理システム2に対してデータ表示画面の表示をリクエストし、端末3には、データ表示画面(図19参照)が表示される(1805)。見守り対象者に異常が見られないため、ここでは平時の見守り担当者は何も行わない。
その後、情報処理システム2は、状態情報テーブル1600及び歩行パラメータの情報が異常判定テーブル1700の条件を満たすかを判定し、見守り対象者に異常があると判定される(1806)。
ここで、情報処理システム2は、異常判定テーブル1700の緊急1704を用いて、緊急性が高い異常であるかを判定する(1807)。緊急性が高い異常であると判定された場合には、情報処理システム2は、緊急時対応者の端末3に直接通知する(1807のY)。緊急対応者は、情報処理システム2からの通知を閲覧し、見守り対象者に声がけを行うか、あるいは、施設1に緊急訪問する(1808)。
一方、緊急の異常でない場合、情報処理システム2は、平時の見守り担当者の端末3に通知する(1807のN)。見守り担当者は、情報処理システム2からの通知を閲覧し(1809)、見守り対象者に連絡(例えば、声がけ)を取る(1810)。ここで、見守り対象者からの応答が正常であれば、見守り担当者は、端末3を用いてコンタクト内容を入力する(1811)。情報処理システム2は、受け取ったコンタクト内容を状態情報テーブル1600に記録する(1812)。なお、見守り対象者が異常であると回答すれば、見守り担当者は、緊急対応者に連絡する(1813)。連絡を受けた緊急対応者は、施設1に緊急訪問する(1814)。
なお、異常が認められる場合で、例えば、緊急性が低い歩行機能の低下の疑いなどの場合、トレーニング等の機能回復/強化サービスの推奨を行う。見守り対象者が希望した場合、見守りサービス提供者は、機能回復/強化サービスを提供する事業者に連絡を行う。
上述の運用を行うことにより、平時の見守り担当者に特別なスキルが求められず、また、見守り対象者への声がけを常時する必要もなく、施設1への緊急訪問の体制をとる必要もない。したがって、本実施例の見守りシステムは、平時の見守り担当者に対して低負担である。この見守りシステムを利用することにより、近隣の家庭が見守り担当者となることも可能である。その結果、専任の社員を擁して見守りシステムを提供する場合と比較して、低コストで見守りサービスを提供することが可能である。
<端末の画面例>
図19は、情報処理システム2が提供する見守り担当者用のデータ表示画面の例であり、端末3に表示される画面を示す。
画面1900には、複数の見守り対象者の行動情報、及び、異常の有無が一覧で示されている。したがって、見守り担当者が複数の見守り対象者を効率的に見守ることが可能である。ここでは、画面1900には、Home1、Home2、Home3の3箇所の見守り対象者の情報が表示されている。
例えば、三角の印1901は、廊下の夜間の通過を示しており、四角の印1902は、廊下の昼間の通過を示している。Home2の見守り対象者は、夜間に三度起きて廊下を通過している。このとき、見守り対象者は、夜間に三度起きてトイレに行っていたため、異常判定テーブル1700の異常ID1701でU1に該当する。したがって、Status1903には、警告を表示し、同時に異常ID1701(U1)が表示されている。
見守り担当者は、画面1900に、夜間に起きる回数が多い、あるいは、歩行速度の低下などの異常が表示されている場合、見守り対象者に電話などで連絡を行う。実際には異常が認められない場合、見守り担当者は、端末3を用いてコンタクト内容を入力する。情報処理システム2は、端末3からコンタクト内容の情報を受け取ると、その情報を状態情報テーブル1600のコンタクトID1606及びコンタクト日時1607に記録する。
本実施例によれば、日常生活の中で見守り対象者が特に意識することなく、見守り対象者の位置を時系列で測定してモニタリングすることができる。また、見守り対象者の運動機能も時系列で測定しモニタリングすることも可能である。検知した結果は、あらかじめ決められた判定条件と比較され、見守り対象者の異常を検知することができる。これにより、検知結果を用いて見守り対象者に対して外部から適切な手段を採ることができる。
また、本実施例によれば、把握した位置情報と、あらかじめ取得した部屋の間取り情報と付き合わせることにより、見守り対象者がどの部屋にいつ出入りしたかの行動モニタが可能である。このように、見守り対象者の日常の生活パターンの変化の把握も可能であるため、見守り対象者の変調をより多くの情報から検知することができる。
また、本実施例によれば、日常生活の中から見守り対象者の歩行機能をモニタリングすることにより、歩行機能などの運動機能の低下の兆候を捉え、予防的な措置を取ることができる。
<第2実施例>
本実施例では、見守り対象者の施設1内の位置を推定する方法の別の例について説明する。図20は、第2実施例の位置推定方法の原理を表す模式図である。
本実施例の位置推定方法では、音の伝播速度が媒体の種類により異なることを利用する。歩行時の足MI10_3が床MI10_4に着地する際に発生する歩行音を、大気音マイクMI10_1と床音マイクMI10_2の2つのマイクを用いて計測する。大気音マイクMI10_1と床音マイクMI10_2は、互いに近接した位置に設置されている。大気音マイクMI10−1は空気を伝わる音を観測し、床音マイクMI10−2は床を伝わる音を観測する。
音の伝播速度は伝達する媒体の種類により大きく異なる。例えば、空気中を音が伝わる速さは、およそ毎秒350メートルである。一方、床材に多く用いられる木材における伝播速度は、毎秒3000から5000メートル程度である。図21は、ある歩行音が大気音マイクMI10_1と床音マイクMI10_2に到達する時間を示す。図21に示すように、大気音マイクMI10_1では、歩行音の到達時間がtairであるに対し、床音マイクMI10_2では、歩行音の到達時間がtfloorである。したがって、床音マイクMI10_2の到達時間ほうが大気音マイクMI10_1より早い。この到達時刻の差を解析することにより、歩行音源のマイクからの距離lを以下の式より算出する。
この式で、vair、vfloorは、それぞれ大気中と床材での音の伝播速度である。これらの値は、使用する建物と間取りに依存し、実測により一度決定すれば定数として使用できる。そのため、歩行音源のマイクからの距離lは、歩行音が大気音マイクMI10_1で観測された時間と床音マイクMI10_2で観測された時間の差に比例する。さらに、このようにして算出した歩行音のマイクからの距離lと、マイクを設置した間取り情報とから、見守り対象者の位置を推定する。
次に、見守り対象者が廊下を歩行して移動した際の位置推定方法の具体例について説明する。およそ3mの廊下を見守り対象者が歩行して移動したところ、廊下の端部に設置した大気音マイクMI10_1と床音マイクMI10_2で4回の歩行音が観測された。図22Aは、これらの歩行音について、大気音マイクMI10_1での到達時間と床音マイクMI10_2での到達時間との差を大気音マイクMI10_1への到達時間tairに対してプロットしたものである。また、図22Bは、上記式を用いて歩行音の大気音マイクMI10_1での到達時間と床音マイクMI10_2での到達時間との差から算出したマイクからの距離lを大気音マイクMI10_1の到達時間tairに対してプロットしたものである。ここで、vair、vfloorはそれぞれ毎秒340m、毎秒4200mとして計算した。
このようにして、各歩行音が生じた時刻での歩行音源すなわち見守り対象者のマイクからの距離を得ることができる。このようにして算出した歩行音源のマイクからの距離lとマイクを設置した間取り情報により、見守り対象者の位置を推定することができる。
また、本実施例では、大気を媒体として伝達する歩行音と床を媒体として伝達する歩行音を2つのマイクを用いて別々に計測したが、無指向性マイクを床から数ミリから数センチ程度離して設置すると、床音と大気音の両方を計測することが可能である。また、本実施例では歩行音を検出するためにマイクを使用したが、加速度センサやピエゾセンサ、歪センサなど他の振動検出装置も使用することも可能である。
<第3実施例>
本実施例では歩行音が小さく、歩行音を振動として観測することが困難な場合の見守り対象者の建物内位置を推定する方法について説明する。
見守り対象者が移動しているにもかかわらず歩行音が観測できない状態は、見守り対象者の衰弱が考えられる。そのため、健康状態を見守るための見守りシステムで検出できることが望ましい。しかしながら、歩行音が観測できない場合、上述した方法では見守り対象者の場所が特定できず、移動しているかを検知することができない。その場合、見守り対象者の場所を特定するために歩行音情報だけでなく別の位置検出方法も併用する。
そのための一つの方法は、超音波や赤外線などの電磁波の観測対象物からの反射を利用した距離センサを使用することである。これらの距離センサは、観測対象物から反射してきた電磁波を検出し、その予想到達時間とのずれや、三角計量法などを利用して観測対象物とセンサとの間の距離を算出する。これらの距離センサを廊下などの生活動線が見渡せる天井位置に設置して、見守り対象者を計測することにより、見守り対象者の場所を推定することができる。この方法は、安価なセンサで容易に構成できる反面、見守り対象者に必ず電磁波が照射され、その反射波がセンサに戻ってくる必要があるため、使用する建物環境に応じて設置場所を検討する必要がある。
また、別の例として、廊下などの生活動線が見渡せる天井位置に赤外線360度カメラ(画像取得部)を設置し、赤外線画像によって見守り対象者の位置を算出してもよい。この方法はある程度設置場所に自由度があるが、情報処理システム2が、画像から位置を検出するため画像データ処理部を備える必要がある。
また、さらに別の方法として、廊下などの生活動線の床裏に静電近接センサを縞状、あるいは格子状に設置する方法がある。静電近接センサとは静電容量型のタッチパネルに使用されるセンサであり、電極と電気的なグランドと考えられる対象物で生じる電気容量の変化を検知するセンサである。対象物が電極に近接すれば電気容量は増加するため、対象物が電極に接近したことがわかる。このセンサを例えば廊下の長手方向15cmおきに縞状に設置すれば、15cmの解像度で見守り対象者の位置を観測できる。この方法は、近接センサであるため、床板の裏などに設置することができ、設置後はランニングコストも少ないといった利点がある。ただし、床板裏などに設置する工事あるいは、床に縞状静電近接センサを搭載した絨毯やマットなどの敷物を敷く必要がある。
<第4実施例>
本実施例では、音源の位置を算出する際のパラメータをキャリブレーションする方法及び構成について説明する。図23は、第4の実施例に係る見守りシステムの構成図であり、施設1に設置される測定システムの別の例である。
測定システムTN0200_2は、センサTN0107a、TN0107bと、データ収集部TN0201aと、制御部及び演算部TN0804と、蓄積部TN0203と、通信部TN0204と、温度センサTN0801と、スピーカTN0802と、ドライバTN0803とを備える。スピーカTN0802は、例えば、見守り対象者からの足音の信号と同種の信号を出力する。
音源の位置を算出する際には、センサTN0107aとTN0107bとの間の距離、及び、音の伝搬速度をパラメータとして用いる。施設1内に設置されているセンサTN0107は、家具などの配置の変更に伴い、センサTN0107を移動させる場合がある。また、センサTN0107を初めに設置した際などには、その間の距離を計測するためのキャリブレーションが必要となる。また、音の伝搬速度は温度により変わるため、その時の気温により補正する必要がある。したがって、以下の例では、温度センサTN0801で検知した温度と、スピーカTN0802からセンサTN0107a、TN0107bに信号が到達する時間差とを用いて、足音の音源の位置を推定するための式のキャリブレーションを実行する。
図24は、キャリブレーションのフローを示す。まず、制御部及び演算部TN0804は、温度センサTN0801を制御し、気温のデータを取得する(TN0901)。音の空気中での伝搬速度は気温により変わることが知られており、例えば以下の式で近似的に算出できる。
vs=331.5+0.6T(m/s)
ここでTは気温(℃)である。制御部及び演算部TN0804は、この式を用い、気温から音の伝搬速度vsを求める(TN0902)。
2つのセンサTN0107a、TN0107b間の距離は、センサTN0107aと所定の距離に設置されたスピーカTN0802からの音を用いてキャリブレーションを行う(センサTN0107aとスピーカTN0802との間の距離は既知とする)。スピーカTN0802は、ドライバTN0803により駆動され、音を出力する(TN0903)。
次に、スピーカTN0802から出力された音はセンサTN0107により受信され、制御部及び演算部TN0804は、センサTN0107aとセンサTN0107bとで受信した時間差を算出する(TN0904)。
次に、制御部及び演算部TN0804は、音源であるスピーカTN0802とセンサTN0107aとの間の距離が既知であるため、センサTN0107bの位置を計算する(TN0905)。この計算には温度センサTN0801で計測したデータから算出した音の伝搬速度を用いる。制御部及び演算部TN0804は、このようにして求めたパラメータを解析用として設定し(TN0906)、音源位置の算出の解析に用いる。
なお、キャリブレーションの際にスピーカTN0802から出力する音は、可聴域である必要はなく、例えば超音波であってもよい。超音波であれば人に聞こえないため、住人に認識されず、キャリブレーションすることができる。また、キャリブレーションさせていることを不快に感じさせないために、音楽を用いてもよい。
キャリブレーションは、定期的、見守りシステムの起動時、イベント発生時などのタイミングで行う。具体的には、例えば、センサTN0107などを設置して電源を起動した際に行うことで、自動的に位置計算を行うパラメータが求められる。また、例えば10分置きなど、定期的にキャリブレーションを行うことで気温の日内変化に対応することができる。また、気温が変わった場合や、大きな音、家具やセンサTN0107自体を動かすような音がした場合などのイベントが発生した際にキャリブレーションを実施してもよい。あるいは、情報処理システム2からのネットワーク8経由での指示に従い、キャリブレーションを行ってもよい。例えば、足音位置のデータが異常であり、パラメータのキャリブレーションが必要と判断した場合に、情報処理システム2から指示を行うなどが考えられる。また、見守り対象者が外出している際に行ってもよい。
なお、本実施例のキャリブレーションは新たにスピーカTN0802を有する構成として説明したが、これに限るものではなく、スピーカTN0802の代わりに場所が既知である音源を用いてもよい。例えば、間取りから位置が既知である、扉の開閉音を利用してキャリブレーションを行ってもよい。これにより、特にスピーカTN0802などを設置しなくとも日常的にキャリブレーションを行うことができる。
図25は、扉の開閉音をキャリブレーションに利用する場合のフローである。以下では、図23の符号を用いて説明するが、この例では、測定システムTN0200_2は、スピーカTN0802及びドライバTN0803を有しておらず、センサTN0107とキャリブレーション用の扉との間の距離が既知であるとする。
扉の開閉音をキャリブレーションに利用する場合、測定システムTN0200_2が設置される施設1あるいは居住の扉の開閉音を判別するために、通常のキャリブレーションの手順のほかに、この扉の開閉音を取得して記録する手順が必要となる。例えば、測定システムTN0200_2は、扉の開閉音を特徴付けるパラメータ(周波数領域と強度など)の時間変化のデータと、温度センサTN0801からのデータとを記録する校正テーブルを備える。以下に処理の流れを説明する。
まず、測定システムTN0200_2を施設1に設置後、制御部及び演算部TN0804は、温度センサTN0801を制御し、気温のデータを取得する(2501)。次に、センサTN0107aとセンサTN0107bによって、扉の開閉音を取得する(2502)。その後、制御部及び演算部TN0804は、取得したデータに対してフィルタリング処理を実行し、ノイズを除去する(2503)。
次に、制御部及び演算部TN0804は、扉の開閉音の特徴量(周波数領域と強度など)を抽出し、その特徴量の時間変化と温度センサTN0801からのデータを校正テーブルに記録する(2504)。また、制御部及び演算部TN0804は、センサTN0107aとセンサTN0107bにおける扉の開閉音の到達時間差を算出し、その情報を校正テーブルに記録する(2505)。
ステップ2501〜2505がシステム設置時に行われる。このように、システム設置時のキャリブレーションでは、扉の開閉音を特徴付ける周波数領域と強度の時間変化をあらかじめ取得し、このデータと温度センサTN0801からのデータを校正テーブルに記録する。これに加えて、センサTN0107a、TN0107bで信号を受信し、到達時間差を検出し、到達時間差を記録する。なお、扉が複数ある場合は、それぞれの開閉音の特徴量とセンサTN0107a、TN0107bで受信した時間差とを組にして記録しておく。この構成によれば、音の特徴量が似ている場合でも、時間差の情報を基に位置を推測できるので、どの扉か区別することができる。キャリブレーションにはいずれの扉の開閉音を用いてもよい。
ステップ2507〜2510は、日常の音計測のステップである。日常の音計測時には、制御部及び演算部TN0804は、センサTN0107a、TN0107bにより検出された信号を、校正テーブルの値と比較して、扉の開閉音であるかどうかを判定する(2507)。扉の開閉音ではないと判断された場合は、キャリブレーションは行わず、上述の足音判定フローへ移る。
扉の開閉音であると判定された場合、先に説明したキャリブレーションの場合と同様に、温度センサTN0801を制御して気温のデータを取得する(2508)。次に、制御部及び演算部TN0804は、温度センサTN0801からのデータを元に、センサTN0107a、TN0107bで受信した扉の開閉音の到達時間差を温度補正した値△tc’を求める(2509)。
次に、制御部及び演算部TN0804は、足音の音源の位置を求める式の補正項を算出し、その補正項を記録する(2510)。ここで、システム設置時に同じセンサTN0107a、TN0107bで受信した扉の開閉音の到達時間差△tcとする。到達時間差△tc’が到達時間差△tcと異なっている場合、センサ位置がずれたことが考えられる。ここで足音をセンシングしたとき、センサTN0107a、TN0107bの受信時間差を△tとすると、足音の音源の位置xfを求める式は、第1実施例で示したxf(n)の式に対して補正項を加えた次の式となる。
xf={△t・vs+(x2+x1)}/2 + (△tc−△tc’)/2
ここで、添え字のnは省略した。x1、x2はセンサ設置当初のセンサTN0107a、TN0107bの座標である。この構成によれば、センサTN0107a、TN0107bがシステム設置後に移動された場合でも、あらかじめ記録した校正テーブルの値と比較することにより、足音の音源の位置を求める式の補正項を求めて、正確な位置を計測することができる。
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることがあり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、上述したように、センサTN0107からのデータを情報処理システム2に直接送信して、情報処理システム2側で残りの処理を実行してもよい。また、異常判定などの情報を施設1内に配置して、異常判定までの処理を測定システムTN0200側で実行するようにしてもよい。このように、各拠点の構成は適宜変更が可能である。
上述したように、実施例の構成は、それらの一部や全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現することができる。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードで実現してもよい。この場合、プログラムコードを記録した非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を情報処理装置(コンピュータ)に提供し、その情報処理装置(又はCPU)が非一時的なコンピュータ可読媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。非一時的なコンピュータ可読媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
また、プログラムコードは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によって情報処理装置に供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムを情報処理装置に供給できる。
また、図面における制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。