以下、第1の実施形態及び第2の実施形態について説明する。まず、各実施形態の背景と手法の概要をまとめて説明する。次に、実施形態毎にシステム構成例と手法、処理の流れを詳細に説明し、最後に変形例について説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また各実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.概要
近年、頭部に装着して使用者の視界内に配置した表示部により、映像や画像(以下、単に画像と称する)を、使用者の瞳に向けて映し出す頭部装着型装置の開発が進んでいる。
例えば、前述した特許文献1において開示される頭部装着型装置は、このような頭部装着型装置にカメラ(撮像部)を設け、カメラで撮像した画像を表示部に表示する。これにより、使用者と同じ目線で画像を撮像しつつ、使用者が視線をほとんど移動させずに、撮像した画像を表示部にて確認することが可能になる。つまり、頭部装着型装置を、いわゆるビューファインダーや視力補助装置として用いることができる。
また、他にも例えば前述した特許文献2では、ウェアラブル装置に内蔵した加速度センサの情報に基づいて、表示している画像の表示位置を切り替えるウェアラブル装置が開示されている。
このように、従来の頭部装着型装置を用いる場合であっても、景観を確認しつつ視線をほとんど移動せずに、表示部にて表示画像を確認することが可能である。しかし、そのためには、高度な制御装置が必要となるという問題があった。
また、使用者による頭部装着型装置の使用状況によっては、使用者が常に表示画像を確認したいと思う場合と、使用者が普段は表示画像を確認しないが、必要になった時にだけ、表示画像を確認したいと思う場合がある。
例えば、使用者の前方の景観に重ねて表示部で情報を確認する場合には、使用者は、頭部装着型装置の表示部により、景観を視認しながら情報の確認を行いたいと思うことが多い。
また、机に向かって作業をしている時に、頭部装着型装置の表示部に作業手順を表す画像を表示させる場合には、目線をやや下げた状態で作業を行うため、使用者は、その方向にあわせて表示部を移動して、表示される情報を確認したいと思うことが多い。
さらに、街を歩いている時に、頭部装着型装置の表示部に街のナビ情報を表す画像を表示させる場合には、普段は表示画像が視界を妨げてしまうため、必要になった時にだけ、表示画像を確認したいと思うことが多い。
しかし、従来手法では、複雑な処理を行わずに、使用者の使用状況に応じて、表示画像の表示位置を変更することができなかった。
そこで、以下で説明する第1の実施形態では、使用者の頭部装着型装置の使用状況と、表示部の位置とに応じて、表示部に表示する表示画像の位置を調整する。これにより、使用者が正面方向若しくは視線を下げた下方方向に表示画像を表示させたいか、又は、常に表示画像を視野の正面で閲覧したいか若しくは表示画像を視野周辺で閲覧したいかといった使用者のニーズに応じて、表示画像を表示する頭部装着型装置を実現することができる。
また、表示画像の虚像位置が同じ位置に固定されている場合、使用者が遠くの景色を見ている際と、使用者が近くの景色を見ている際の視点移動で、使用者の目は焦点位置を調整しながら表示画像と景色を見る必要があった。これにより、使用者に目の疲れを感じさせたり、距離感の混乱を招いたりする恐れがあった。
そこで、以下で説明する第2の実施形態では、使用者の頭部装着型装置の使用状況と、表示部の位置とに応じて、距離方向において虚像位置が異なる表示画像を表示部に表示する。これにより、使用者が見ている外界の景観までの距離とあたかも同じ距離があるように表示画像を表示することが可能になる。例えば、使用者が1km離れた山を見ていた場合には、その山までの距離と同じ距離があるように見えるように表示画像を表示する。また、30cm先の机上にある書類を見ている場合には、その書類までの距離と同じ距離があるように見えるように表示画像を表示する。その結果、使用者が表示画像を見る際に自身の目で焦点調整をしなくても済むようになり、使用者の目の疲れを軽減し、距離感の混乱を防ぐことができるようになる。
2.第1の実施形態
2.1 システム構成例
次に、図1に本実施形態の頭部装着型装置(頭部装着型撮像装置又は頭部装着型表示装置)の構成例を示す。
頭部装着型装置100は、表示部110と、支持部120と、表示モード設定部130と、検出部140と、を含む。なお、頭部装着型装置100は、図1の構成に限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加したりするなどの種々の変形実施が可能である。
次に各部の接続について説明する。表示部110は、支持部120に取り付けられ、検出部140に接続されている。そして、表示モード設定部130は、表示部110に接続されている。さらに、検出部140は、表示部110と、表示モード設定部130とに接続されている。
また、頭部装着型装置100は、装着具に取り付けられる。例えば、装着具は、図2(A)に示すような眼鏡GLであり、使用者の目の前方に保持されるレンズと、前端部がレンズの両側に接続され、後端部が使用者の耳に係止されるテンプル部と、を備える。なお、この装着具は、眼鏡型に限らず、頭部装着型装置を使用者の頭部に装着できるのであれば、他のいかなる構成としてもよい。具体的には、ヘルメット型やヘッドフォン型、帽子型、バンド型等の装着具などであってもよい。
次に、頭部装着型装置100の各部で行われる処理について説明する。
まず、表示部110は、表示画像を使用者の視野範囲に表示する。例えば、表示部110(図2(A)のDS)は、液晶や有機EL等を用いた表示素子で表示する画像を、光学プリズムやレンズ、ミラー等の接眼光学系を用い、使用者の瞳に入射させる。このような表示部110の方式としては、ハーフミラー式や、ホログラム式、光学バー式等がある。
次に、支持部(筐体)120は、使用者の頭部に装着可能な装着具に取り付けられ、表示部110を支持する。例えば、支持部120は、図2(A)のように装着具のテンプル部に取り付けられる。
そして、本実施形態の支持部120(図2(A)のSU)は、例えばスライド部SLを有する。
スライド部SLは、支持部120の前面に設けられ、アームを、レンズの表面に略平行な面内で並進可能に支持する。なお、このスライド部SLにおいては、図2(A)に示すように、アームの先端部が装着者眼球の正面前方に配置される位置と、図2(B)に示すように、アームの先端部が装着者眼球の下方の位置との間で、アームの移動範囲が規制される。なお、図2(A)の状態における使用者の眼球EYと表示部DSの位置関係は後述する図4(B)のようになり、図2(B)の状態では後述する図5(B)のような位置関係になる。図2(B)の表示部DSは、スライド部SLが下方にスライドしているため、図5(B)の矢印Y1で示すように、図4(B)よりも下方に位置している。
そして、スライド部は、基端部から先端部に向けて延びるアームを有し、アームの基端部がスライドするように設けられる。
このように、支持部120がスライド部を有する場合には、表示部110は、スライド部のアームの先端部に設けられる。
なお、スライド部は、眼球の回転中心と同一の回転軸に沿って表示部110が動くように構成されることが望ましい。さらに、使用者が常に表示画像を視認できるように、上下方向の表示画面の光軸が回動することが特に好ましい。
次に、検出部140は、表示部110の位置を検出する。例えば、図2(A)のように表示部110(DS)がスライド部SLの先端に設けられている場合には、検出部140は、スライド部SLのアームの先端部が装着者眼球の正面前方に配置されている状態(以下、アーム位置Aと呼ぶ)にあるか否か、先端部が装着者の前方下部位置(以下、アーム位置Bと呼ぶ)にあるか否かを検出し、その検出結果に応じた信号を、表示モード設定部130に出力する。
このような検出部140としては、回転接点によるスイッチ、磁石とホール素子を用いたセンサ、エンコーダーやフォトインタラプタとスリットを用いた方式等を採用することができる。検出部140は、検出結果として、現在アームが2つの位置のいずれかに位置するかを出力してもよいし、連続値としてスライド範囲のどの位置にアームが位置するかを出力してもよい。
そして、表示モード設定部130は、使用者が眼球正面方向を見る正面視モード及び使用者が眼球前方の周辺を見る周辺視モードのうちのいずれかに、表示モードを設定する。
また、頭部装着型装置100には、不図示の撮像部を設けてもよい。例えば撮像部は、使用者の前方を撮像し、支持部120の前面に撮像レンズが露出するよう設けられる。
他にも不図示であるが、支持部120内には、例えば画像処理部と、記憶部と、入出力部を機能的に実現する電子基板と、バッテリとが内蔵されていてもよい。
画像処理部では、撮像部の操作を行うためのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)として用いる画像の生成処理や、外部から伝送された画像データや、記憶部に記憶された画像データに対する画像処理などを行う。画像処理部は、図示しない撮像部をオプションで持つ場合に撮影した撮像画像に対して画像処理を行い、その画像データを記憶部に記憶させる場合もある。また、記憶部は、表示部110に表示する表示画像や、データベースを記憶したり、表示モード設定部130や検出部140等のワーク領域となったりするもので、その機能はRAM等のメモリやHDDなどにより実現できる。
さらに、入出力部は、外部のコンピュータ装置等と、通信ケーブルまたは無線を介した通信により、画像処理部で所定の画像処理が施された画像の出力を行ったり、外部のコンピュータ装置等から出力される画像データの入力を受けたりする。
なお、表示モード設定部130と検出部140等の機能は、各種プロセッサー(CPU等)、ASIC(ゲートアレイ等)、GPUなどのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
2.2 処理の詳細
以下、本実施形態の頭部装着型装置の動作について、図3のフローチャートを用いて説明する。
まず、頭部装着型装置の電源をONにし(S101)、表示部の電源をONにする(S102)。
次に、表示モードが正面視モードに設定されているか、周辺視モードに設定されているかを判断する(S103)。
ここで、正面視モードとは、表示部が使用者の視線方向に位置する表示モードであり、周辺視モードとは、表示部が使用者の視線方向と異なる方向に位置する表示モードである。表示部が使用者の視線方向に位置するとは、使用者の眼球からの視線の延長線上に表示部が位置することをいう。
また、正面視モードは、使用者の視線方向と略同じ方向に表示画像を表示する場合に設定される表示モードであり、周辺視モードは、使用者の視線方向と異なる方向に表示画像を表示する場合に設定される表示モードであるとも言うことができる。さらに言い換えれば、正面視モードは、使用者が視野範囲の中央付近で表示画像を閲覧したいと思う場合に設定される表示モードであり、周辺視モードは、使用者が視野範囲の周辺領域で表示画像を閲覧したいと思う場合に設定される表示モードである。
例えば、景観に重ねて表示画像を表示する場合などには、表示モードを正面視モードに設定する。
一方、机に向かって作業をしており、頭部装着型装置の表示部に作業手順を表す画像を視野の隅に参照表示させる場合や、街を歩いている時に、頭部装着型装置の表示部に街のナビ情報を表す画像を表示させる場合に景観に重なると煩わしい時などには、表示モードを周辺視モードに設定する。
また、表示モードの設定は、例えば、頭部装着型装置に設けられた表示モード切り替えスイッチの使用者によるON/OFFや、眼底カメラセンサによる水晶体厚測定による眼球焦点位置の計測結果や、水晶体反射面像移動による水晶体厚の測定結果や、視線検出による正面視線及び下方視線の検出結果等に基づいて行う。
次に、表示モードが正面視モードに設定されている場合には、表示部における表示画像の表示位置を検出する(S104)。
そして、表示部の表示領域において表示画像を表示する位置を決定するために、検出部が表示部本体の位置を検出する(S105)。
例えば、頭部装着型装置の表示部の表示画像により情報を使用者の前方遠方の景観に重ねて表示したい場合には、使用者の視線移動をできるだけ減らすために、表示画像も使用者の眼球正面方向に表示することが望ましい。本例ではこの場合に、使用者が表示部をスライド移動させて、使用者の眼球正面方向に移動させていると仮定する。
一方で、撮像部を用いて使用者の手元の景観を撮影し、頭部装着型装置の表示部に撮像画像を表示する場合には、前述した例とは逆に、表示画像も使用者の眼球前方下部方向に表示した方がよい。本例ではこの場合に、使用者が表示部をスライド移動させて、使用者の眼球前方下部方向に移動させていると仮定する。
以上の仮定を前提として、検出部がスライド部のアームの位置を表示部の位置として検出し、検出したアームの位置がアーム位置Aである場合には、表示部にアーム位置信号Aを出力する。そして、図4(A)に示すように、表示部が、表示部の表示領域DSの第1の表示位置AR1に表示画像を表示する(S106)。この時、使用者の眼球EYと表示部DSの位置関係は、図4(B)のようになっている。
なお、表示部には、外部から受信した画像若しくは画像処理部で生成された画像の全体若しくは一部の領域を表示画像として表示する。
一方で、検出したアームの位置がアーム位置Bである場合には、表示部にアーム位置信号Bを出力する。そして、図5(A)に示すように、表示部が、表示部の表示領域DSの第2の表示位置AR2に表示画像を表示する(S107)。この時、使用者の眼球EYと表示部DSの位置関係は、図5(B)のようになっている。
また、表示モードが周辺視モードに設定されている場合にも、表示モードが正面視モードに設定されている場合と同様に、表示部における表示画像の表示位置を検出し(S108)、検出部が表示部本体の位置を検出する(S109)。表示部本体の位置に応じて、表示部の表示領域における表示画像の表示位置を切り替えることも同様に行う。
例えば、使用者が机に向かって自分の手元を見ながら作業をしている時に、頭部装着型装置の表示部に作業手順を表す画像等を表示させる場合には、表示画像が使用者の視界を遮り、作業を妨害しないようにすることが望ましい。従って、表示画像は使用者が見ている眼球前方下部方向ではなく、眼球正面方向の位置に表示すべきである。本例ではこの場合に、使用者が表示部をスライド移動させて、使用者の眼球正面方向に移動させていると仮定する。
一方で、街を歩いている時に、頭部装着型装置の表示部に街のナビ情報を表す画像を表示させる場合などには、使用者は普段は前方の景色を見ており、必要時にだけ表示部に表示されるナビ情報を見たいと考えることが多い。また、安全面からも、表示画像が使用者の視界を妨げることは好ましくない。そのため、使用者の視界を妨げない位置に表示画像を表示することが望ましく、結果的に使用者の安全を確保することにもなる。本例ではこの場合に、使用者が表示部をスライド移動させて、使用者の眼球前方下部方向に移動させていると仮定する。
以上の仮定を前提として、検出部がスライド部のアームの位置を表示部の位置として検出し、検出したアームの位置がアーム位置Aである場合には、表示部にアーム位置信号Aを出力する。そして、図6(A)に示すように、表示部が、表示部の表示領域DSの第3の表示位置AR3に表示画像を表示する(S110)。この時、使用者の眼球EYと表示部DSの位置関係は、図6(B)のようになっている。
一方で、検出したアームの位置がアーム位置Bである場合には、表示部にアーム位置信号Bを出力する。そして、図7(A)に示すように、表示部が、表示部の表示領域DSの第4の表示位置AR4に表示画像を表示する(S111)。この時、使用者の眼球EYと表示部DSの位置関係は、図7(B)のようになっている。
そして、装置の電源がOFFか否かを判断し、電源がOFFにされている場合には、処理を終了し、ON状態のままである場合には、ステップS103の処理に戻る(S112)。以上が、本実施形態の処理の流れである。
このように、本実施形態では、使用者が現在見ている景観と表示画像とを同時に見たい場合には、視線方向と同じ方向に表示画像を表示し、使用者が必要時にだけ表示画像を見たい場合には、視線方向と異なる方向に表示画像を表示する。これにより、使用者の視線移動をできるだけ減らしつつ、不要時には視界を妨げない位置に表示画像を表示することが可能となる。
3.第2の実施形態
3.1 システム構成例
次に、第2の実施形態に係る頭部装着型装置について説明する。なお、以下に説明する本実施形態においては、上記第1の実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
まず、基本的な構成は、図1に示した第1の実施形態の構成と同様であるが、支持部120が回動機構(ピボット部)を有する点が第1の実施形態と異なる。その他の表示部110、表示モード設定部130、検出部140は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
支持部120の回動機構(ピボット部)は、装着具に対して表示部110を回動させる。
例えば、図8(A)に示すように、回動機構PBは、装着具GLのテンプル部を挟み込みつつ、支持部SUと接続されている。そして、図8(B)に示すように、回動機構PBを中心に、支持部SU全体を装着具GL(又は使用者)に対して回動させることができる。この時、支持部SUだけが回動し、装着具の位置は変わらない。そのため、このような回動動作により、使用者の眼球に対する表示部DSの位置を変えることができる。
支持部120の内部構造の具体例を、図9(A)を用いて説明する。図9(A)は、頭部装着型装置を真上から見た図である。図9(A)の頭部装着型装置は、支持部の内部に、回動機構PBと、表示素子DDと、表示素子DDをスライド移動させるガイド部GDと、回動機構PBとガイド部GDとを機械的に連結させるリンク機構LIと、を有する。そして、支持部の外部に表示部(接眼光学系)を備える光学バーBRと、頭部取り付けジグマウント部JMとを有する。なお、この頭部装着型装置を図9(A)と垂直な真横方向から見ると図9(B)に示すようになる。図9(B)のLTは、表示パネルと照明ユニットである。ただし、必ずしもこの構成に限定されない。なお、支持部が図9(B)の状態の時の使用者の眼球EYと表示部DSの位置関係は図9(C)のようになる。
そして、図10(A)のように、回動機構PBにより支持部を角度θだけ回動させると、支持部全体が装着具に対してθ°だけ傾く。さらに、この回動動作と連動して接眼光学系に対して表示素子DDが前後に直動し(図10(A)では、距離がdだけ変化している)、その結果として虚像位置が変わる。なお、支持部が図10(A)の状態の時の使用者の眼球EYと表示部DSの位置関係は図10(B)のようになる。図10(B)の表示部DSは、回動機構による回動のため、図10(B)の矢印Y3で示すように、図9(C)よりも下方に位置している。
3.2 処理の詳細
以下、本実施形態の頭部装着型装置の動作について、図11のフローチャートを用いて説明する。ステップS201〜S204及びS208、S212の動作は、図7のステップS101〜S104及びS108、S112と同様であるため、説明を省略する。
さて、前述した第1の実施形態においては、表示部の表示領域において表示画像を表示する位置を決定するために、検出部が表示部本体の位置を検出したが(図3のS105、S109)、本実施形態では、表示画像の虚像位置を決定するために、検出部が表示部本体の位置を検出する(S205、S209)。
例えば、使用者が街を歩いている場合には、使用者が正面を見ているため、自然と遠くの景色を見ていることが多くなる。この際に、表示画像の虚像位置が使用者に近い場合には、使用者は前方の景色を見る際には遠くに焦点を合わせ、表示画像を見る際には近くに焦点を合わせる必要がある。その結果、使用者の目を疲労させたり、距離感を混乱させたりしてしまうことになる。従って、使用者が遠くの景色を見ている場合には、表示画像の虚像位置も遠い位置にすることが望ましい。このことは、表示モードが正面視モードに設定されている場合でも、表示モードが周辺視モードに設定されている場合においても同様である。
一方で、使用者が机で作業をしている場合には、自分の手元を見ている場合がほとんどである。この際に、表示画像の虚像位置が使用者から遠い場合には、使用者は手元の作業状況を見る場合には近くに焦点を合わせ、表示画像を見る場合には遠くに焦点を合わせる必要がある。従って、使用者自身の目による焦点調整の機会をできるだけ減らすために、前述した場合とは逆に、使用者が近くの景色を見ている場合には、表示画像の虚像位置も使用者から近い位置にすることが望ましい。このことも、表示モードが正面視モードに設定されている場合でも、表示モードが周辺視モードに設定されている場合においても同様である。
ただし、虚像位置を遠い位置にする場合でも、近い位置にする場合でも、表示モードが正面視モードに設定されている場合には、使用者が視野の中央付近で表示画像を閲覧したいと考えているため、使用者が表示部を回動させて、使用者の眼球正面方向に移動させていると仮定する。一方で、表示モードが周辺視モードに設定されている場合には、使用者が視野の周辺で表示画像を閲覧したいと考えているため、表示部を回動させて、使用者の眼球前方下部方向に移動させていると仮定する。
以上の仮定を前提として、表示モードが正面視モードに設定されている場合には、検出部が表示部本体の位置を検出する。そして、表示部が使用者の眼球正面方向に位置すると判断された場合に、表示部は、虚像位置が第1の虚像位置である第1の表示画像を表示する(S206)。一方で、表示部が使用者の眼球前方下部方向に位置すると判断された場合には、表示部は、虚像位置が第1の虚像位置よりも使用者に近い第2の虚像位置である第2の表示画像を表示する(S207)。
一方で、表示モードが周辺視モードに設定されている場合も同様に、検出部が表示部本体の位置を検出する。そして、表示部が使用者の眼球正面方向に位置すると判断された場合には、表示部は、虚像位置が第3の虚像位置である第3の表示画像を表示する(S210)。一方で、表示部が使用者の眼球前方下部方向に位置すると判断された場合には、表示部は、虚像位置が第3の虚像位置よりも使用者から遠い第4の虚像位置である第4の表示画像を表示する(S211)。
これにより、使用者が見ている景色と近い位置に表示画像が表示されているように見せることが可能になり、使用者が自身の目で頻繁に焦点調整を行わなくて済むようにすることが可能になる。
4.手法のまとめ
次に、第1の実施形態及び第2の実施形態の手法についてまとめて説明する。
以上の第1の実施形態及び第2の実施形態の頭部装着型装置100は、表示画像を使用者の視野範囲に表示する表示部110と、使用者の頭部に装着可能な装着具に取り付けられ、表示部110を支持する支持部120と、を含む。そして、表示部110は、使用者に対する表示部110の相対的な位置に基づいて、表示部110の表示領域における表示画像の表示位置及び表示画像の距離方向の虚像位置のうちの少なくとも一つを切り替えて表示する。
本実施形態では、前述したように、使用者が使用状況に応じて表示部110を移動させる。そして、表示部110は、表示部110本体の位置に応じて、表示画像の表示位置又は表示画像の虚像位置を切り替えて、表示画像を表示する。
よって、使用者の頭部装着型装置100の使用状況に応じて、表示画像の表示位置又は表示画像の虚像位置を切り替えて表示することが可能となる。
ここで、使用者に対する表示部110の相対的な位置とは、例えば、使用者の眼球に対する表示部110の相対位置のことをいう。
また、表示部110の表示領域とは、表示部において表示画像を表示可能な領域のことをいう。例えば、図4(A)のDSの領域である。
さらに、表示位置(表示範囲)とは、表示画像を実際に表示する位置のことをいう。表示位置は、表示部110の表示領域の全体であってもよいし、表示領域の一部の範囲であってもよい。例えば、図4(A)のAR1の範囲である。
また、第1の実施形態及び第2の実施形態の頭部装着型装置100は、表示画像の表示モードの設定処理を行う表示モード設定部130を含んでもよい。そして、表示モード設定部130は、表示部110が使用者の視線方向に位置する正面視モード及び表示部110が使用者の視線方向と異なる方向に位置する周辺視モードのうちのいずれかに、表示モードを設定する設定処理を行ってもよい。さらに、表示部110は、使用者に対する表示部110の相対的な位置及び設定されている表示モードに基づいて、表示部110の表示領域における表示画像の表示位置及び表示画像の距離方向の虚像位置のうちの少なくとも一つを切り替えて表示してもよい。
これにより、表示部110の位置だけでなく、使用者が通常見ている方向に応じて、表示画像の表示位置又は表示画像の虚像位置を切り替えて表示すること等が可能となる。
また、表示部110は、表示モードが正面視モードに設定されている場合において、表示部110が使用者の眼球正面に位置する場合には、第1の表示位置に表示画像を表示し、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する場合には、第2の表示位置に表示画像を表示してもよい。
ここで、第2の表示位置は、第1の表示位置とは異なる位置である。
また、使用者の眼球正面とは、使用者の顔の前方方向のことを言う。この方向は、使用者の視線方向とは別であり、使用者が同じ姿勢を取っている限りは、使用者の眼球正面は変わらない。例えば、使用者が地面に対して垂直に立っており、使用者の視線方向が地面に平行な方向である場合には、眼球正面も地面に平行な方向である。この場合に、使用者が姿勢を変えずに、視線方向だけを使用者の前方下部方向に変更した場合であっても、眼球正面は地面に平行な方向のままである。逆に、例えば使用者が直立した状態から仰向けに寝る姿勢を取った場合には、眼球正面は地面と垂直な方向になる。なお、眼球正面と同様に、眼球前方下部方向も使用者の視線方向とは独立した方向である。
これにより、表示部110が位置する方向と同じ方向を使用者が通常時に見ている場合において、表示部110が使用者の眼球正面に位置する時と、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する時とで、表示画像の表示位置を変えること等が可能になる。
また、例えば、第1の表示位置は、図4(A)のAR1であり、第2の表示位置は、図5(A)のAR2である。
すなわち、表示部110は、表示モードが正面視モードに設定されている場合において、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する場合には、第1の表示位置よりも下方の第2の表示位置に表示画像を表示してもよい。
これにより、例えば使用者が現在見ている景観と表示画像とを同時に見たい場合に、視線方向と同じ方向に表示画像を表示すること等が可能になる。
また、表示部110は、表示モードが周辺視モードに設定されている場合において、表示部110が使用者の眼球正面に位置する場合には、第3の表示位置に表示画像を表示し、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する場合には、第4の表示位置に表示画像を表示してもよい。
ここで、第4の表示位置は、前述した第1の表示位置と第3の表示位置とは異なる位置である。ただし、第3の表示位置は、第1の表示位置と同じ表示位置であってもよく、第4の表示位置は、前述した第2の表示位置と同じ表示位置であってもよい。
これにより、表示部110が位置する方向と異なる方向を使用者が通常時に見ている場合において、表示部110が使用者の眼球正面に位置する時と、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する時とで、表示画像の表示位置を変えること等が可能になる。
また、例えば、第3の表示位置は、図6(A)のAR3であり、第4の表示位置は、図7(A)のAR4である。
すなわち、表示部110は、表示モードが周辺視モードに設定されている場合において、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する場合には、第3の表示位置よりも下方の第4の表示位置に表示画像を表示してもよい。
これにより、例えば使用者が必要時にだけ表示画像を見たい場合に、視線方向よりも上部方向又は下部方向に表示画像を表示すること等が可能になる。
以上により、使用者の視線移動をできるだけ減らしつつ、不要時には視界を妨げない位置に表示画像を表示すること等が可能となる。
また、表示部110は、表示モードが正面視モードに設定されている場合において、表示部110が使用者の眼球正面に位置する場合には、虚像位置が第1の虚像位置である第1の表示画像を表示し、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する場合には、虚像位置が第2の虚像位置である第2の表示画像を表示してもよい。
これにより、表示部110が位置する方向と同じ方向を使用者が通常時に見ている場合において、表示部110が使用者の眼球正面に位置する時と、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する時とで、表示画像の虚像位置を変えること等が可能になる。
また、表示部110は、表示モードが正面視モードに設定されている場合において、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する場合には、距離方向の虚像位置が、第1の虚像位置よりも使用者に近い第2の虚像位置である第2の表示画像を表示してもよい。
これにより、表示部110が位置する方向と同じ方向を使用者が通常時に見ている場合に、使用者が見ている景色と近い位置に表示画像が表示されているように、使用者に見せること等が可能になる。
また、表示部110は、表示モードが周辺視モードに設定されている場合において、表示部110が使用者の眼球正面に位置する場合には、虚像位置が第3の虚像位置である第3の表示画像を表示し、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する場合には、虚像位置が第4の虚像位置である第4の表示画像を表示してもよい。
これにより、表示部110が位置する方向と異なる方向を使用者が通常時に見ている場合において、表示部110が使用者の眼球正面に位置する時と、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する時とで、表示画像の虚像位置を変えること等が可能になる。
また、表示部110は、表示モードが周辺視モードに設定されている場合において、表示部110が使用者の眼球前方下部方向に位置する場合には、距離方向の虚像位置が、第3の虚像位置よりも使用者から遠い第4の虚像位置である第4の表示画像を表示してもよい。
これにより、表示部110が位置する方向と異なる方向を使用者が通常時に見ている場合に、使用者が見ている景色と近い位置に表示画像が表示されているように、使用者に見せること等が可能になる。
以上により、使用者が自身の目で頻繁に焦点調整を行わなくて済むようにすること等が可能になる。
また、第1の実施形態及び第2の実施形態の頭部装着型装置100は、表示部110の位置を検出する検出部140を含んでもよい。そして、表示部110は、表示部110が使用者に対して相対的に移動したことを検出部140が検出した場合には、表示部110の表示領域における表示画像の表示位置及び表示画像の距離方向の虚像位置のうちの少なくとも一つを切り替えて表示してもよい。
これにより、例えば表示部110の位置をユーザが頭部装着型装置100に入力する手間を省くこと等が可能になる。
また、第1の実施形態及び第2の実施形態の頭部装着型装置100は、使用者の前方を撮像する撮像部を含んでもよい。そして、表示部110は、撮像部が撮像した撮像画像から生成される表示画像を表示してもよい。
これにより、使用者と同じ目線で画像を撮像しつつ、使用者が視線をほとんど移動させずに、撮像した画像を表示部110にて確認すること等が可能になる。
5.他の実施形態
また、前述した第2の実施形態では、表示部の位置に応じて、表示画像の虚像位置を変更したが、他の実施形態では、表示部の位置以外の情報に基づいて、表示画像の虚像位置を変更してもよい。
すなわち、他の実施形態の頭部装着型装置100は、表示画像を使用者の視野範囲に表示する表示部110と、使用者の頭部に装着可能な装着具に取り付けられ、表示部110を支持する支持部120と、を含む。そして、表示部110は、使用者が眼球正面方向を見ている場合には、虚像位置が第1の虚像位置である第1の表示画像を表示し、使用者が眼球前方の周辺を見ている場合には、虚像位置が第2の虚像位置である第2の表示画像を表示する。
これにより、使用者が見ている方向に応じて、表示画像の虚像位置を変えることが可能になる。
また、表示部110は、使用者が眼球前方の周辺を見ている場合には、虚像位置が、第1の虚像位置よりも使用者に近い第2の虚像位置である第2の表示画像を表示してもよい。
これにより、使用者が見ている景色と近い位置に表示画像が表示されているように、使用者に見せること等が可能になる。
また、他の実施形態では、表示部の位置に応じて、画角の異なる表示画像を表示部に表示してもよい。
例えば、頭部装着型装置の使用者が街を歩いている時に、表示部を使用者の眼球正面方向に移動させている場合には、表示画像の画角を小さくして、使用者が肉眼では視認しにくい、遠くの景色を撮像して、撮像した画像を表示部に表示させてもよい。
一方で、頭部装着型装置の使用者が街を歩いている時に、表示部を使用者の眼球前方下部方向に移動させている場合には、表示画像の画角を大きくして、使用者が下を向いている時には見えない正面から手元までの景色を幅広く撮像して、撮像した画像を表示部に表示させてもよい。
以上のように第1の実施形態及び第2の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、頭部装着型装置の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。