以下、本発明の光学式センサの実施の形態の例について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の例は本発明の実施の形態を例示するものであって、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
<センサ100>
(全体構成)
図1(a),(b)に、センサ100の概略構成を示す透視状態の上面図および断面図を示す。図1(a)において左右方向が第1方向D1であり、上下方向が第3方向D3であり、紙面に直交する方向が第4方向D4である。センサ100は、反射フィルム10、発光素子20、受光素子アレイ30、配線基板40および筐体50を備える。
筐体50は、D3方向に開口部を有し、内部に収容空間51を形成している。筐体50の開口部には、反射フィルム10が配置されている。反射フィルム10は、操作面10aと反射面10bとを有する。操作面10aと反射面10bとは、反射フィルム10を挟んで反対側に存在している。反射フィルム10は、この反射面10bが筐体50の収容空間51を臨むように、筐体50に取着されている。ここで、反射フィルム10は、操作面10aからの応力印加に対して変形可能であり、かつ、応力を除去した際に初期形状に戻る、弾性力を有している。このように弾性的な変形を可能とするためには、反射フィルム10自体を弾性の高い材料で形成してもよいし、反射フィルム10に張力を加えた状態で筐体50に取着することで実現してもよい。
筐体50の収容空間51の底面には配線基板40が配置されている。そして配線基板40の上面40aには、発光素子20および受光素子アレイ30が配置されている。発光素子20と受光素子アレイ30とは互いに間隔をあけて配置されている。受光素子アレイ30は、複数の受光素子31を備え、個々の受光素子31はD1方向に互いに間隔をあけて配列されている。
(メカニズム)
発光素子20は、反射フィルム10の反射面10bに向けて発光する。受光素子アレイ30の各受光素子31は反射面10bからの光を受光し、その受光量に応じた光電流を発生させる。
ここで、受光素子アレイ30の各受光素子31はD1方向に配列されている。これにより、反射フィルム10のD1方向における変形の解析が可能となる。
そして、センサ100では、図1(c)に示すように、反射面10bに複数の帯状構造11を備える反射フィルム10を用いている。帯状構造11は所定方向S1に向けて一様に延びている。そして、複数の帯状構造11が、S1方向に直交する方向S2に周期的に配列されている。言い換えると、複数の帯状構造11が、その長辺をS1方向に短辺をS2方向に揃えて配置されており、短辺側であるS2方向に配列されている。図1(c)で示す例では、帯状構造11として、頂角60°のプリズム構造としたプリズムシートを用いたものを示す。
このような反射フィルム10を用いることにより、S1方向とS2方向とで反射特性に差を設けることができる。この例ではS2方向において指向性を高めているものとなる。すなわち、反射フィルム10は反射特性に異方性(指向性)を有することとなる。また、帯状構造11が複数配列されていることから、反射フィルム10面内のいずれの領域においても細かい領域に区分して異方性を発現することができる。
本実施形態のセンサ100では、入射する光に対する反射特性に異方性を有する反射フィルム10が受光素子の配列方向であるD1方向と非平行となるように配置されている。すなわち、D1方向とD3方向で作る座標系と、S1方向とS2方向とで作る座標系とが一致しないようにずらして配置させている。これにより、反射光に、確実にD1方向以外の情報を含ませることが可能となる。
センサ100では、このような反射フィルム10と、D1方向に配列した複数の受光素子31とを組み合わせることで、受光素子アレイ30が備えるD1方向に対する分解能と、D1方向とずらして配置した反射フィルム10が備える反射の異方性とを組み合わせて、D1方向に加えD1方向と角度を持たせた方向との2方向で検出可能となり、反射フィルム10の変形を解析することができる。さらに詳述すると、反射フィルム10により生じる受光量のD1方向における分布を、複数の受光素子31により確認することができる。すなわち、帯状構造11を傾ける方向とその傾斜角とにより変化する反射特性と、押圧部(押下げ部)からの距離に応じて変化する受光素子31と反射フィルム10とのD4方向における距離に応じた反射特性とにより、反射光の帰着点を変化させることができる。この変化はD1方向に反射光の分布にも表れる。この反射光の分布を確認することで、センサ100は、発光素子20と受光素子31との組み合わせを一次元方向に配列した場合であっても、反射フィルム10の変形を2次元的に解析可能となる。
また、反射フィルム10の押下げた部分の直下に発光素子20や受光素子31が位置しなくても、反射フィルム10の変形に基づく複数の受光素子31の受光量分布の変化により変形位置を解析可能となる。これにより、反射フィルム10の面積よりもはるかに小さな領域に発光素子20及び受光素子31を配置した場合であっても、反射フィルム10全面の変位を解析可能となる。
以上より、反射フィルム10全面の変位を検出するための受光素子31および発光素子20の素子配置を簡易なものとすることができ、生産性の高いセンサ100を提供することができる。
ここで、反射フィルム10として図1(c)に示すような頂角60°のプリズムシートを用いたセンサ100における動作の具体例を示す。図2(a),(b)に異方性を有さないフィルムを用いたときの、図2(c)、(d)に異方性を有する反射フィルム10を用いたときの、光の反射のメカニズムを模式的に示す。
図2(a)に示すように、通常のフィルムを用いた場合には、D1方向とD3方向とで形成する面に対する法線を仮定すると、この法線に対してθ0の角度で入射した光は、フィルムに対する入射角θ1もθ0と等しくなる。さらに、その反射光も角度を変えずθ0で反射される。この状態でフィルムを傾けずに、D1方向とD3方向とで形成され、受光素子31,発光素子20が配置される面(基準面)からフィルムまでの距離を変える。この場合には、フィルムの変形量δDが、基準面から変形前のフィルムまでの距離Dから、基準面から変形後のフィルムまでの距離を差し引いた変化量(以下、距離変化量:δdとする)と等しくなる。そして、フィルムの押圧部直下においては、押圧に応じて基準面とフィルムとの距離のみが変化して、フィルムが初期位置にある場合に想定された反射光の到達位置である基準点から、発光素子20側に到達位置が変化していく。
そして、図2(b)に示すように、通常のフィルムを押圧し、角度ξだけ傾けたときには、この法線に対してθ+2ξの角度で反射される。すなわち、フィルムの押圧前と押圧後でフィルムの傾きにより反射光の到達位置が発光素子20から離れる方向に変化する。これと同時に、フィルムが傾くことにより、基準面とフィルムとの距離も小さくなる方向に変化する。すなわち反射光の到達位置は、発光素子20に近づく方向に変化する。この2つの変化がお互いの影響を相殺しあい、フィルムの押圧に伴い、フィルムが初期位置にある場合に想定された反射光の到達位置である基準点から、若干到達位置が変化する。なお、この場合には、フィルムの距離変化量は、押圧位置から測定箇所までの距離に応じて変化する。
なお、反射フィルム10もS1方向においては一様な形状である。このため、このような反射のメカニズムは、反射フィルム10を用いたときのS1方向の成分の光における反射についても同様となる。
これに対して図2(c)に示すように、反射フィルム10を用いたときにS2方向の成分の光については、法線に対してのθ0角度で入射した光は、角度を変えずθ0で反射される。この状態で反射フィルム10を傾けずに、基準面から反射フィルム10までの距離を変える。この場合には、フィルムの変形量δDが距離変化量と等しくなる。すなわち、反射フィルム10の押圧部直下においては、押圧に応じて基準面と反射フィルム10との距離のみが変化して、反射フィルムが初期位置にある場合に想定された反射光の到達位置である基準点から、発光素子20側に到達位置が変化していく。すなわち、図2(a)と同じ動きとなる。
次に、図2(d)に示すように、反射フィルム10を押圧し、ξの角度傾けた場合には、プリズムの斜辺を2回反射する過程でξの成分は相殺され、法線に対する入射角と同じであるθ0の角度で光が戻る。すなわち、反射フィルム10への入射角θ1は傾斜角度ξ分少なくなりθ0−ξとなるが、反射フィルム10に対する反射角度がθ0+ξとなり、その結果、法線に対する反射光の角度は押圧の前後で変化しない。このため、基準面に対する光の到達位置は、押圧による基準面と反射フィルム10との距離の変化に起因する変化が支配的となる。なお、この場合には、反射フィルム10の距離変化量δdは、反射フィルム10の変形量δDに対して、押圧位置から測定箇所までの距離に応じて変化する。
ここで、図2(a),(c)の場合を条件1、図2(b)の場合を条件2、図2(d)に示す場合を条件3とし、各条件について、反射フィルムおよびフィルムの初期位置から基準面側の変位量に対する、反射光の到達位置と基準点との乖離量を計算した結果を図3に示す。図3に示す通り、従来のフィルムを用いた条件2に対して、反射フィルム10を用いた条件3は、押圧による変位量(変形量δD)に対して、反射光の到達位置の変化量が大きい。このことから、一定面積の受光素子31で受光する反射光の変化量も大きく変わることとなり、高感度での検出が可能であることを示している。
さらに、反射フィルム10を用いた場合のS1方向の反射特性を示す条件1,条件2と、反射フィルム10を用いた場合のS2方向の反射特性を示す条件3とで、押圧による変位量に対しする反射光の到達位置の変化量の割合が大きく異なるものとなる。このことから、S1方向とS2方向とで異なる傾向で反射することが確認できることが分かる。
このように、反射フィルム10を用いる場合には、反射フィルム10の傾きの有無、傾き角度により、S1方向の光の成分とS2方向の光の成分とで、光の到達位置が変化することとなる。言い換えると、S1方向の光の成分とS2方向の光の成分との光の到達位置を分離させて変化させるものとなる。これに、反射フィルム10の傾きが、S1方向とS2方向とで形成される座標系のどの方向に向かうかを組み合わせることで、面内全面の位置を識別可能となる。
なお、上述したものは、広がりを有する入射光のうち中心部分の光線について検討したものである。実際の光は広がり(分布)を有し、入射角度にもばらつきがあるため、反射光にも広がりが生じる。これにより基準面に到達するときの反射光は上述の到達位置を内部にふくむような広がりを有するものとなる。
ここで、図4に示すように、反射フィルム10の操作面10aにおけるA〜Eの各部位を押下げて反射フィルム10を弾性変形させたときの、各受光素子31に生じる光電流量を検証する。なお、E部は反射フィルム10の中央部であるが、図4にその図示を省略している。
まず、反射フィルム10が変形せず、初期形状を保っている場合には、発光素子20に対してS2方向に光が反射する。発光素子20と受光素子31とのD2方向における離間距離にもよるが、この例では、広がりを有する反射光の中心は、点線で示す発光素子20と受光素子31との間に向かう。ここで、反射光は広がりを有するため、発光素子20からS2方向に位置する受光素子31c〜31eでごく弱い光電流が発生するものとなる。
次に、ポジションAを変形させた場合には、反射フィルム10の変形は、S1方向に沿うものとなり、指向性の高いS2方向への影響は少ない。このため、反射フィルム10が傾き、反射面10bへの入射角度が大きい方向に変わり、反射光はポジションAから離れる位置(発光素子20からS2方向にさらに離れる位置)に向けられる。すなわち、受光素子31d,31eにおいて、初期状態より若干光電流が増加する。
次に、ポジションBを変形させた場合には、反射フィルム10の変形は、指向性の高いS2方向への変形が支配的となる。このため、反射フィルム10が傾き、指向性の高いS2方向の入射面の平面透視面積が大きくなり、S2方向への反射光の強度が高まる。さらに、入射角度が大きくなることにより、反射光はポジションBから離れる位置(発光素子20からS2方向にさらに離れる位置)に向けられる。その結果、受光素子31d,31eにおいて、初期状態より大きく光電流が増加する。
次に、ポジションCを変形させた場合には、反射フィルム10の変形は、S1方向に沿うものとなり、指向性の高いS2方向への影響は少ない。このため、反射フィルム10が傾き、入射角度が変わることにより、ポジションCから離れる側に位置する受光素子31b,31cにおいて、初期状態より若干光電流が増加する。
次に、ポジションDを変形させた場合には、反射フィルム10は、指向性の高いS2方向における変形が支配的となる。これにより、反射光の強度が高まるとともに、この反射光は、反射フィルム10の傾きにより、ポジションDから離れる側に導かれる。すなわち、受光素子31b,31cにおいて、初期状態より著しく光電流が増加する。
最後に、ポジションEを変形させる場合には、その直下にある受光素子31cの受光量は減少するが周囲の受光素子31の光強度が増加する。
受光量の違いを受光量を規格化して比較すると、従来の異方性を有さないフィルムを用いた場合には、A部とB部との区別、C部とD部との区別がつかなかった。しかしながら、本例では区別がつくことが確認できた。
このような各受光素子31における光電流の大きさは、D1方向およびD3方向で形成される座標系と、S1方向およびS2方向で形成される座標軸のずれ具合により変わってくるが、それぞれの位置関係に応じた、光信号の変化を計測することができる。
(詳細)
上述のようなセンサ100を構成する構成要素について詳述する。
反射フィルム10は、可撓性を有するような厚みとしている。そして、反射面10bの帯状構造11が、発光素子20からの光に対して反射特性を有している。帯状構造11はS2方向に隙間なく配置されていてもよいし、間隙をあけて配置されていてもよい。この例では、間隙なく隣り合う帯状構造11が接するように配置されている。
また、帯状構造11は、発光素子20の光に対して反射特性を有し、反射特性に異方性(指向性)を持たせることができれば、特にその形状および材料に限定はない。この例では、帯状構造11としてS1方向に一様なプリズム状をなしている。プリズム状とすることにより、S1方向への反射を抑制し、S2方向への指向性を持たせることができる。さらに、プリズム状とすることにより、入射角度により反射光の強度が大きく変化するものとなる。これにより、反射フィルム10の変形に沿って入射面となるプリズム状の帯状構造11の初期位置に対する角度が変化すると、反射光の強度、反射光の到達位置や到達する方向が大きく変わるものとなる。これにより、反射フィルム10の形状変化を感度よくセンシングすることができるものとなる。
帯状構造11の周期的配置を決定する個々のプリズムの大きさは、特に限定されないが、発光素子20からの光の広がり(スポット径)に対して、3個から30個程度含まれることが好ましい。個々の帯状構造11が大きすぎると、プリズム面における多重反射が多くなり、受光強度が低下するからである。例えば、プリズムの一辺を50μmとし、発光素子20の反射フィルム10に到達する位置でのスポット径を200μm程度とすればよい。
このような反射フィルム10として、例えば、図1(c)に示すような頂角60度のプリズムを用いてもよい。
筐体50は、収容空間51に外部からの光が侵入しないような遮光性を有する材料からなり、内部に収容する構造体を保護できる強度を有する材料で構成すればよい。例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)などの汎用プラスチック、ポリアミド樹脂(PA)ポリカーボネート樹脂(PC)などのエンジニアリングプラスチック、液晶ポリマーなどのスーパーエンジニアリングプラスチック、およびアルミニウム(Al)、チタン(Ti)などの金属材料で形成される。また複数の材料の組み合わせであってもよい。
そして、筐体50は、反射フィルム10を張力をかけて保持する保持部を備えている。このように、反射フィルム10を張力をかけて保持することにより、反射フィルム10自体に弾性力がない場合であっても反射フィルム10は弾性的に変化できるものとなる。
配線基板40は、外部装置との電気的接続および発光素子20や受光素子アレイ30との電気的接続を実現するためのものであり、発光素子20や受光素子31にバイアスを印加したり、外部装置との間で信号を授受したりするものである。このような配線基板40としては、有機基板や積層セラミック基板等、適宜自由に選択することができる。
発光素子20は、反射フィルム10で反射可能な光を出射できれば特に限定はされないが、通常のLED素子、LD等を用いることができる。
受光素子アレイ30を構成する複数の受光素子31は通常のフォトダイオードを用いることができる。
このような発光素子20,受光素子31,反射フィルム10は、例えば、発光素子20からの光が焦点を結ぶ位置近傍に反射フィルム10を設置する。そして、初期位置を保つ反射フィルム10における反射光が、少なくとも受光素子31の1つに到達するように受光素子アレイ30を配置してもよいし、発光素子20が形成された領域と受光素子アレイ30が形成された領域の間に到達するように受光素子アレイ30を配置してもよい。
ここで、配線基板40は、発光素子20および受光素子アレイ30が収容空間51の底面のうち中央近傍に位置するよう配置している、言い換えると、反射フィルム10の面中心と発光素子20および受光素子アレイ30が配置された領域の中心とが略一致するようにして配置されている。これにより、反射フィルム10面内における変形を感度のばらつきなく検出することができるものとなる。
また、D1方向およびD3方向で形成される座標系と、S1方向およびS2方向で形成される座標軸とをずらすように、反射フィルム10と受光素子アレイ30との位置関係を調整している。言い換えると、受光素子31の配列方向と反射フィルムの帯状構造11の伸びる方向(長辺方向)とを角度をつけて配置している。具体的には5°〜50°ずらしている。より好ましくは、10°から30°程度とすればよい。これにより、D3方向の位置に依存する受光量の変化の割合が高くなるため、1次元配列の受光素子31から反射フィルム10の2次元における変形情報を高精度にセンシングすることができるものとなる。
なお、収容空間51の雰囲気は、内部に収容する電子部品を保護するために真空や不活性ガスとしてもよいし、温度特性を安定化させるために減圧状態としてもよいし、反射フィルム10の弾性力を高めセンシング感度を向上させるために大気圧よりも高い圧力としてもよい。
<変形例1:センサ100A:発光素子アレイ>
上述のセンサ100では発光素子20を1つ設けた構成を説明したが、図5に示すセンサ100Aのように、複数個の発光素子20Aをからなる発光素子アレイ25を設けてもよい。以下、他の変形例でも同様であるが、比較元のセンサ(本例ではセンサ100)と異なる部分についてのみ説明し、重複する説明を省略する。なお、図5において、図1と異なる部分の構成が明らかとなるように、反射フィルム10Aの図示を省略している。
センサ100Aは、発光素子20Aを複数個備えており、これらが互いに間隔をあけて配置されて発光素子アレイ25をなしている。各発光素子20Aの間隔,発光素子20Aの個数等に制限はないが、この例では、受光素子アレイ30の受光素子31と同じ数とし、同じ間隔で配置している。発光素子20Aは、第2方向(D2方向)に配列されている。D2方向は、S1方向と非平行であればよい。この例では、D2方向は、S1方向と角度をなすとともに、D1方向と略平行としている。
そして、このような発光素子アレイ25と受光素子アレイ30AとはD3方向に間隔をあけて並列配置されている。このように配置することにより、発光素子20と受光素子31との組み合わせをD1方向一列に配列しているものとなる。
複数個の発光素子20Aを時分割で駆動すれば、個々の発光素子20Aの発光に対する複数の受光素子31のそれぞれでの受光量を区別して検出することができ、反射フィルム10Aの変形をより精度よく検出できるものとなる。
また、複数個の発光素子20Aを同時に点灯し、反射フィルム10Aの面内の各部位押下時の個々の受光素子31の受光量の分布傾向を確認しておけば、同時点灯しても反射フィルム10Aの変形をより精度よく検出できるものとなる。
<変形例2:センサ100B:反射フィルム10の相対位置>
上述のセンサ100Aでは、発光素子20Aの配列方向および受光素子31Aの配列方向であるD1方向と、発光素子20Aの配列方向であるD2方向とが平行である例を説明した。これに対して、図6に示すように、D1方向とD2方向とが非平行となるように各構成要素が配置されているセンサ100Bとしてもよい。
ここで、D2方向を基準とすると、個々の発光素子20Bから出射された光が一定間隔離れた反射フィルム10Bにより反射されて基準面に到達する位置(基準点)は、D2方向に垂直なD3方向において一定間隔あけて並ぶD2方向と平行な列に並ぶ。そして、D1方向とD2方向とが非平行であるということは、言い換えると、この基準点の列と受光素子31Bが並ぶ列方向であるD1方向が非平行であり、ずれていることとなる。このような構成により、受光素子アレイ30Bは、D2方向と垂直なD3方向における感度に変化を持たせたものとなる。これにより、受光素子31Dの配列によっても、D1方向とD3方向との2方向について、すなわち2次元方向において検出可能とすることができる。
このような、D1方向とD2方向とのなす角度は、90°以下が好ましく、より具体的には3°〜20°程度とすればよい。この例では、基準点の列と受光素子31Bの列とが交差するように、D3方向の距離を調整している。
また、反射フィルム10Bは、そのS1方向をD2方向に対してずらすように設定すればよい。基準点は発光素子20Bの配列と反射フィルム10Bとの関係で決まるからである。反射フィルム10BのS1方向と、受光素子アレイ30BのD1方向とは図6に示すようにD2方向に対して同じ方向にずらしていてもよいし、点線で記すような反対方向にずらしていてもよい。
<変形例3:センサ100C:発光素子・受光素子>
上述のセンサ100,100A,100Bの発光素子20,20A,20Bおよび受光素子31,31A,31Bに代えて、発光素子20C,受光素子31Cを備えたセンサ100Cとしてもよい。すなわち、配線基板40に個々の発光素子20,受光素子31を実装して形成してもよいが、より好ましくは、同一基板に薄膜プロセスにより一体的に作りこんで形成すればよい。
例えば、発光素子20Cは、半導体材料からなる基板23C上に、所望の発光波長を得られるように、バンドギャップを調整した複数の半導体層が積層させて構成させる発光ダイオードとしてもよい。半導体層は、MOCVD(有機金属化学気相成長:Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)装置を用いて形成する。
このような発光素子20Cの一例を図7(a)に示す。図7(a)は発光素子20Cの断面図である。この例では、発光素子20Cは、GaAs基板やSi基板からなる基板23Cの一主面23Ca上に、バッファ層,一導電型の第1コンタクト層,一導電型の第2クラッド層、活性層、他導電型の第2クラッド層、他導電型の第2コンタクト層が順次積層されてなる。この半導体層は、例えばAlGaAs系の半導体層として、ドープする不純物の種類、濃度をコントロールすることにより、所望の半導体層を積層することができる。
このようにして構成された発光素子20Cは、駆動する対の電極間にバイアスを印加することによって、活性層が発光して、光の光源として機能する。
また、発光素子20Cを駆動するための電極は、一導電型の第1コンタクト層および他導電型の第2コンタクト層にそれぞれ接続されるよう、薄膜形成方法により電極層を形成した後にフォトリソグラフィ法により所望の形状に加工して形成すればよい。このような電極は必要に応じて絶縁層を介して形成することで所望の位置で所望の半導体層のみに電気的に接続されるものとなる。
このように半導体の基板23C上に発光素子20Cを形成することにより、パターニングのためのマスクを変更するのみで、半導体の基板23Cの所望の位置に所望の形状で精度よく複数の発光素子20Cを配列させることができる。
さらに、発光素子20Cを全て薄膜プロセスにより形成することができるので、発光素子20Cの大きさを小さくすることができるとともに、センサ100A,100Bのように複数個の発光素子20Cを備えるときには、個々の発光素子20Cの間隔を小さくすることができるので、小型で高精度な発光素子アレイ25Cを提供することができる。
また、図7(b)に示すように、受光素子アレイ30Cの受光素子31Cはフォトダイオードを、一導電型の半導体材料からなる基板33Cの一主面33Ca(表面)に他導電型半導体領域32を形成して構成してもよい。半導体の基板33Cとしては、一導電型のSi基板等を用いることができる。そして、他導電型半導体領域32を形成する領域に開口部を設けたマスクを用い、所望の領域に熱拡散、イオン打ち込み等の手法により他導電型を呈する不純物をドープさせる。また、他導電型の半導体層をエピタキシャル成長させた後に所望の形状の他導電型半導体領域32にパターニングして形成してもよい。
なお、本例では一導電型はn型であり、逆導電型はp型である。この例では、一導電型の不純物としてリン(P)を1×1017〜2×1018atoms/cm3の濃度で含んでいる。n型の不純物としては、リン(P)の他に、例えば窒素(N)、砒素(As)、アンチモン(Sb)およびビスマス(Bi)などが挙げられ、ドーピング濃度は1×1016〜1×1020atoms/cm3とされる。なお、本例では一導電型はn型であり、他導電型はp型である。
他導電型不純物としては、例えば亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、炭素(C)、ホウ素(B)、インジウム(In)またはセレン(Se)などが挙げられ、ドーピング濃度は1×1016〜1×1020atoms/cm3とされる。このような半導体の基板33Cと他導電型半導体領域32とでpn接合を形成し、受光素子31Cが形成される。
受光素子31Cから光電流をとりだすための電極も発光素子20Cと同様に、導電膜を形成した後に所望の形状にパターニングすることで形成することができる。
このようにして、半導体の基板33の所望の位置に所望の形状の受光素子31Cを形成できるので、受光素子31Cを小型化でき、かつ高い位置精度で複数の受光素子31Cを配列させた受光素子アレイ30Cを得ることができるものとなる。
このように、発光素子20C及び受光素子アレイ30Cをそれぞれ同一基板に各素子を作りこんだチップ状とすることにより、小型化および高い位置精度を実現できる。
なお、上述の例では、発光素子20C(発光素子アレイ25)及び受光素子アレイ30Cは、それぞれ別基板に形成し別チップとした場合を例に説明したが、半導体の基板23Cおよび半導体の基板33Cを同一基板として、1つの基板の所望の位置に発光素子20Cおよび受光素子31Cを形成することで、発光素子アレイ25C及び受光素子アレイ30Cを一体化することもできる。その場合にはさらに複数の発光素子20C,複数の受光素子31Cの位置精度をさらに高めることができる。また、実装数を削減することができるので、実装コストも低減し、その結果、生産性の高いセンサ100Cを提供することができる。
また、この例では、発光素子20Cとして、GaAs系LEDを構成してなり、その発光波長は赤外光となる。これに対して、受光素子31Cは、発光素子20Cと異なる材料系であるSi系のPDとしている。これにより、受光素子31Cは赤外光に対する光変換効率を高めることができ、微小な光量の変化をセンシングできるものとなる。
さらに、同一基板上に発光素子20C,受光素子31Cを形成する場合には、その製造過程で同一基板の近接位置にて形成されるため、複数の素子間で輝度、感度のばらつきを低減することができる。このため、安定した測定が可能のセンサ100Cとすることができる。
また、受光素子31Cは他導電型半導体領域32が基板33の表層に形成されているので、反射光によりキャリアが発生してもその移動距離は非常に短くなり、高速応答が可能となる。このため、反射フィルム10Cの変形の時間的変化に対しても遅延なく追従することのできる高速駆動のセンサ100Cとすることができる。
<変形例4:センサ100D:反射フィルム10D>
センサ100の反射フィルム10は、その透光性については限定していない。例えば、透光性を有さない材料を用いて反射フィルム10を構成してもよいし、厚み方向の途中に遮光層や反射層を含ませ、反射フィルム10の操作面10aと反射面10bとの間の透光性を低くしてもよい。この場合には、外部からの光(自然光)に対する透光性を低くした場合には、外部の光の影響を抑制し、発光素子20からの光の反射光のみの情報をもとにセンシングすることができる。発光素子20からの光に対する透光性を低くした場合には、発光素子20からの光を内部に閉じ込め、効率的に発光素子20からの光を利用することができる。
一方で、発光素子20からの光に対して、一定の透光性を有する反射フィルム10Dを用いたセンサ100Dとしてもよい。反射フィルム10Dを構成する材料として透光性を有する材料を用いてもよいし、複数の帯状構造11間に微小な間隙を設け、その部位に透光性をもたせてもよい。このように、反射フィルム10Dが透光性を有することにより、発光素子20Dからの光が反射フィルム10Dの操作面10Da側へ通過する。そして、反射フィルム10Dの操作面10Da側から例えば指等の物体が近接したときに、通過した光が物体により反射され受光素子31D側に戻ることで、受光素子31Dが受光する光量が増加し、物体の有無、物体の位置を確認できる、さらに、その光量の時間的変化を追うことにより、物体の接近、移動等の動きを確認することができる。
このような反射フィルム10Dとして、例えば、ポリカーボネートの高分子樹脂材料からなるプリズムシートを例示することができる。
<変形例5:反射フィルム>
また、プリズムシートからなる反射フィルム10に代えて、図8に示すように、帯状構造11Eを有する反射フィルム10Eを有するセンサ100Eとしてもよい。
反射フィルム10Eの帯状構造11Eは、第1帯状領域12と第2帯状領域13とを有し、これらがS2方向に並んで配列している。そして、反射フィルム10E全体として、S1方向に延びる第1帯状領域12と第2帯状領域13とがS2方向に交互に配列される。
ここで、第1帯状領域12と第2帯状領域13とで発光素子20Eの出射光に対する偏光特性に差を設ける。この例では、第1帯状領域12が偏光特性を有し、第2帯状領域13が偏光特性を有さないものとしている。このような構成により、S1方向とS2方向とで反射特性に差を設けることができ、その結果、指向性を有する反射フィルム10Eを実現することができる。
<変形例:その他>
本発明のセンサ100は上述の実施形態に限定されない。例えば、図5に示す、センサ100Aにおいて、発光素子アレイ25と受光素子アレイ30Aとの列は互いに平行でなくてもよい。
また、発光素子アレイ25の発光素子20Aの配列方向と、受光素子アレイ30の受光素子31の配列方向と、反射フィルム10のS1方向と、のうちいずれか2つの方向に差をつけ、その他の組み合わせは平行としてもよい。異ならせる角度は5deg〜15deg程度とすればよい。
また、図7においては、基板上に半導体層を薄膜成長させたり、基板にドーパントを拡散させたりして、同一基板に発光素子20Cと受光素子31Cを作りこんだが、この例に限定されない。例えば、半導体性のエピフィルムを貼付することで、同一基板に発光素子20Cと受光素子31Cとを作りこんでもよい。
また、発光素子アレイ25と受光素子アレイ30との組み合わせを複数設けてよい。その場合には、D1方向に配列しても、D2方向に配列しても、放射状に配列しても、マトリックス上に配列してもよい。その場合には、情報数が増えるため、より精密なセンシングが可能なセンサ100とすることができる。
また、D1方向において、受光素子アレイ30と並ぶように少なくとも1つの第2発光素子をさらに備えていてもよい。第2発光素子からの光を複数の受光素子31のうち、どの受光素子で検出できるかを判別することで、D4方向(反射フィルム10との距離)もセンシングすることができる。第2発光素子を複数個、D1方向に配列させてアレイ状とすれば、どの第2発光素子を点灯させたときに第2発光素子からの光を受光できるかを判別することで、D4方向(反射フィルム10との距離)もセンシングすることができる。このような第2発光素子は、受光素子アレイ30の両側に配置してもよい。
さらに、反射フィルム10と受光素子31との間および反射フィルム10と発光素子20との間に光学系を配置してもよい。具体的にはレンズ、シリンドリカルレンズ、プリズム等を例示することができる。このような光学系を追加するときには、発光素子20からの光が光学系と通り、反射フィルム10の位置で焦点を結ぶようにD3方向の距離を調整することが好ましい。
また、上述の例では、キャップ状の筐体50の収容空間51の内部に配線基板40を収容した例を用いて説明したが、配線基板40の上面40aに筒状の筐体を設けてもよい。その場合には、配線基板40の上面40aを底面として、筐体の内壁を側壁とする収容空間が実現できる。この構成により、外部装置との電気的接続が容易になる。
また、図18に示すように、配線基板40に配線基板40を囲う側壁を有する支持体60を設け、この支持体60により、各発光素子20,受光素子31に応じたマイクロレンズ、プリズム等の光学系65を配置してもよい。この場合には、発光素子20が照射する光の指向性を高め、受光素子31への光を集光することができるので、より感度を高めることができる。
このように、発光素子20、受光素子31、反射フィルム10の配置等を適宜変化させることにより、反射フィルム10に対する動作に対する各受光素子31により検出する検出信号の分布の傾向が異なる場合も生じる。しかしながらが、異方性を有する反射フィルム10と、一次元配列の受光素子31とを組み合わせることで、押下げ位置、動作により固有の(区別可能な)強度分布を受光素子アレイ30で検出可能であることを見出したのが本発明の真髄である。
<センサ装置200>
(処理流れ_可能となるセンシング対象)
上述のセンサ100〜100Dをセンサ装置200に組み込み、人や物の様々な動作、物体の動きをセンシングする。
ここでは、センサ100Aを用いた例について説明する。センサ装置200は、図9に示すように、センサ100Aと、制御部210,検出部220,判定部230と、を有する。
制御部210は、センサ100Aに接続される。具体的には、センサ100Aの発光素子20Aの点灯・非点灯を制御するものである。この例では、複数の発光素子20Aをそれぞれ順番に時分割で点灯させる。制御部210は定電流回路で構成してもよく、場合により複数個を点灯することもある。
このように、制御部210により、発光素子20Aが点灯している状態で反射フィルム10Aの操作面10Aaの一部を押下げ、反射フィルム10を変形させる。ここで、反射フィルム10の変形に伴う受光素子31Aの受光量に応じた光電流を、センサ100Aに接続された検出部220で検出する。
検出部220では、検出される光電流は、1つ目の発光素子20Aaを発光させたときの複数の受光素子31Aのそれぞれで検出される光電流と、2つの発光素子20Abを発光させたときの、複数の受光素子31Aのそれぞれで検出される光電流と、・・・というような、個々の発光素子20Aの点灯に応じて複数の受光素子31Aのそれぞれにより検出する光電流を時分割で含むものとなる。検出部220はアナログSWや電流増幅アンプから構成されることもある。
検出部220で検出された光電流は、判定部230に送られる。判定部230は、データ変換部231,データ格納部232,標準データ格納部233,比較部234とを備える。
データ変換部231は、検出部220からの光電流を電圧値に変換しアナログ信号からデジタル信号へと変換する。この過程でアンプ等を追加し信号を増幅したり、フィルタを用いてのノイズを除去したりしてもよい。
データ格納部232は、データ変換部231により処理された信号を格納する。そして、このデータ変換部231に格納されたデータと、標準データ格納部233に格納されたデータとの比較を比較部234により行なう。標準データ格納部233には、予め反射フィルム10Aのあらゆる変形に応じた光電流に起因する信号の分布を格納している。これにより、実測データであるデータ格納部232に収容されたデータと標準データ格納部233に格納されたデータとの比較により、反射フィルム10Aの変形を判定することができる。
ここで、反射フィルム10Aの変形の判定とは、反射フィルム10Aの変形位置と変形量とを特定することである。変形量には、D3方向への変形量に加え、反射フィルム10Aの面方向における変形量、すなわち、反射フィルム10Aに作用する物体の接触面積も含まれる。
以上より、センサ装置200によれば、反射フィルム10Aの面内の押下げ位置,量、押下げ面積を判別することができる。
さらに、判定部230内のデータ変換部231により変換された信号の時間的な変化を連続的に解析する解析部(不図示)を備えていてもよい。このような解析部により、反射フィルム10Aの操作面10Aaに作用する力の動きを判定することが可能となる。すなわち、反射フィルム10Aの面内の押下げ位置,量、押下げ面積の軌跡を判別することができるものとなる。
これにより、反射フィルム10Aの押下げ位置から作用する物体の接触位置を、押下げ位置の軌跡から作用する物体の移動経路を、押下げ面積の軌跡から作用する物体の接触面積の変化とその移動経路とを区別してセンシングすることができる。一例として、指で反射フィルム10Aを押し下げる場合に適合させると、例えば、反射フィルム10Aの四隅、中央の押下げを区別して判別可能であり、D1方向,D2方向,S1方向,S2方向等に指を移動させる動きも区別可能であり、D1方向,D2方向,S1方向,S2方向等に指を回転させるように移動させる動きも、方向に加え、前者の単に指を移動させる動きと区別して判別することができる。前者は接触面積に変化がなく、後者は接触面積に変化があるからである。
(応用分野)
このようなセンサ装置200は、例えば、タブレット電子機器、ウェアラブル電子機器等に搭載され、電子機器の動作を指示するポインタ,ジョイスティック,スイッチと等価の機能を発現すべく操作機器に組み込むことができる。また、配管等の流路の壁面の一部に、操作面10aが流路の内部を臨むようにセンサ装置200を取りつけることで、流路内部の圧力変化、流体の移動方向等を解析することもできる。さらに、プリンタのトナー流路に設けることでトナー流量,残量をセンシングすることができる。
なお、上述のセンサ装置200では、判定部230において、実測値を予め記録した標準データと比較することで反射フィルム10Aの変形を判定した例を用いて説明したが、この例には限定されない。例えば、検出部220で検出された光電流に基づき、判定部230内のマイクロプロセッサーでセンサ100Aの構成を元に演算を行ない直接反射フィルム10Aの変形を判定してもよい。
さらに、反射フィルム10Aが透光性を有するものとしてもよい。その場合には、反射フィルム10Aを押下げる前に、反射フィルム10Aの面内のどの位置に作用する物体を接近させているかを判別することができる。これにより、操作面10Aaを目視できない状態で操作する可能性のあるウェアラブル電子機器等にセンサ装置200を組み込む際に、実際の操作前に所望の押下げ位置に近接できているかを確認することができる。例えば、メガネの弦に操作面10Aaを配置するときに有用である。
<光学式操作装置300>
上述のセンサ装置200に操作認識部310を組み合わせ、光学式操作装置300とし、センサ装置200でセンシングした人や物の動作と連動して電子機器を制御することができる。
具体的には、センサ装置200からの情報を操作認識部310に送り、操作認識部310にて、センサ装置200でセンシングした反射フィルム10Aの形状変化に応じた入力操作を認識する。
これにより、生産性が高く、感度の優れたセンサ装置200を用いて、電子機器に対する操作を実現する光学式操作装置300を提供することができる。
上述のセンサ100Aを参照し、図10にモデルを示すセンサを製造した。具体的には、配線基板40として通常のプリント基板を用い、この配線基板40に発光素子アレイ25と受光素子アレイ30とがD3方向に並列配置されるように実装した。発光素子アレイ25と受光素子アレイ30とは、Si単結晶基板に図7(a),(b)を参照に発光素子20(LED1〜LED4),受光素子31(PD1〜PD4)を形成した。発光素子アレイ25は、D1方向に発光素子20を4個配列するように形成し、受光素子アレイ30は、D1方向に受光素子31を4個配列するように形成した。なお、発光素子アレイ25と受光素子アレイ30とは同一基板に一体的に形成した。
反射フィルム10は、透光性を有するプリズムシートを採用した。
各部の具体的な構成は下記の通りである。
帯状構造の幅(S2方向)w:50μm
帯状構造の形状:頂角60度のプリズム状
帯状構造の長辺が延びる方向(S1方向)とD1方向との角度:10°
反射フィルムとSi基板との距離:3mm
比較例として、上述の実施例1のセンサにおいて反射フィルムに代えて等方性の反射特性をもつミラーシートとしたものを製造した。
上述のような実施例1のセンサと比較例のセンサとにおいて、その反射フィルムのうち図10のA〜Gに示す位置を押下げ、発光素子LED1〜LED3を時分割で発光させたときの、各受光素子PD1〜PD3の光電流強度を図11に示す。なお、図11において、個々の光電流強度は最も大きい光電流強度で規格化している。
図11からも明らかなように、比較例のセンサではD2方向(例えばポジションAとB)の位置の違いを区別できないのに対して、実施例1のセンサでは、ポジションA〜Gの全てにおいて各受光素子31の受光強度分布が異なっており、反射フィルム10の全方位において押下げ位置を区別して検出可能であることを確認できた。さらに、発光素子20を複数個時分割で点灯することで、同様に各押下げ位置に応じて異なる受光強度分布の情報をさらに追加することができるので、より正確に検出することができる。さらに、各受光素子31の受光強度分布の傾向を備えるがその強度が異なる場合には、押下げ量および押下げ面積が異なることを推定可能である。
上述のセンサ100Bを参照し、図12にモデルを示すセンサを製造した。具体的には、実施例1と異なる部分は、発光素子20(LED1〜LED8)および受光素子31(PD1〜PD8)をそれぞれ8個設けた点と、発光素子20の配列方向と受光素子31の配列方向とを10°ずらした点であり、それ以外が実施例1と同様に製造した。
このようにして製造したセンサにおいて、押圧力を段階的に強くしながら反射フィルムの同じ位置を押圧したときの、PD1〜8での光電流強度の変化の様子を測定した。すなわち、反射フィルムの変形量が段階的に多くなるときのPD1〜8での光電流強度の変化の様子を測定した。さらに言い換えると、基準面と反射フィルムとの距離を段階的に近付けたときのPD1〜8での光電流強度の変化の様子を測定した。
PD1〜PD8の出力のうち、PD1,PD4,PD8の光電流強度の時間的な変化の様子を図13に示す。図13において、横軸(時間軸)の1において弱く押圧し、2において中程度の力で押圧し、3で強く押圧したときの、各PDにおける出力変化の様子を縦軸の変化量として示している。図からも明らかなように、押圧力(押下げ量;距離変化量)に応じて出力変化も大きくなることが確認できた。このことから、実施例2のセンサによれば、反射フィルムに対する押圧力を判別することができることが分かった。
次に、図12に示すポジションA〜Dを押圧したときのPD1〜8での光電流強度の変化の様子を測定した。ここで、PD1〜PD8の出力のうち、PD1,PD4,PD8の光電流強度の時間的な変化の様子を図14に示す。図14において、横軸(時間軸)の1においてポジションAを押圧し、以下、2においてポジションBを、3においてポジションCを、4においてポジションDをそれぞれ押圧したときの、各PDにおける出力変化の様子を縦軸の変化量として示している。図からも明らかなように、ポジションA〜Dのそれぞれを押圧したときのPD1,PD4,PD8の出力信号の変化の傾向がそれぞれ固有のものとなっていることが確認できた。これにより、二次元全面において反射フィルムの変形箇所を特定することが可能であることを確認できた。
次に、上述の実施例1,2のセンサを参照し、図15に示すモデルのセンサを製造した。具体的には、発光素子20,受光素子31の素子数をそれぞれ10個とし、それぞれPD1〜PD10,LED1〜LED10とした。
このセンサの操作面10Aaに対して、図15に示す動作1〜動作7の操作を行なった。そのときの各受光素子31a〜31jの光電流強度を図16,図17に示す。なお、図16において、PD1〜PD10の個々の光電流強度は相対強度で示した。また、動作6,7は図17に、その時間的変動についても示した。
その結果、各動作を区別して認識することができることを確認した。特に動作6,7は、動作6が押圧面積がほぼ一定であるのに対して、動作7は押圧面積が変化することの違いを明確に区別することができることを確認した。