JP6321369B2 - はんだ中の銅濃度定量方法 - Google Patents

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Description

本件発明は、はんだ中の銅濃度の定量方法に関し、具体的にはインターコネクタ用はんだ中の銅濃度を、簡易且つ迅速に、低コストで信頼性高く定量する方法に関する。
インターコネクタとは、平板形状の導体にはんだをめっきした線材であり、例えば太陽電池のセル同士を接続する等各種電気・電子機器用コネクタとして用いられる。インターコネクタは、主に銅線を溶融はんだ浴内に浸漬して製造されるが、このはんだ処理中に当該銅線の銅原子が溶融はんだ浴内に溶出し、時間と共に当該溶融はんだ浴内の銅濃度が増加してしまう。そのため、インターコネクタの製造を長時間行うと、当該インターコネクタのはんだ中の銅濃度が規格値を超えてしまい、はんだの融点が上昇して流動性等に影響を及ぼすこととなる。その結果、製造されたインターコネクタには、ブリッジ不良等が生じて品質の低下を招く原因となるため、溶融はんだ浴内の銅濃度を定期的に調査する必要がある。
そのため、従来より、溶融はんだ浴内の銅濃度をICP発光分析法等を使用し定量して、当該溶融はんだ浴内の銅濃度が適正範囲になるように定期的に調整が行われている。
例えば、特許文献1には、はんだ浴からはんだ材料を常時あるいは適切な時間間隔で採取し、ICP発光分析法等の元素分析法を用いてはんだ浴の構成元素を定量し、はんだ浴内の銅元素の比率が増加している場合には銅元素以外のはんだ材料構成元素をはんだ浴に添加する旨開示している(引用文献1の段落0020参照のこと。)。
特開2004−63509号公報
しかし、特許文献1に開示している従来公知のICP発光分析法等の元素分析法を用いてはんだ中の銅濃度を定量する方法だと、試料を酸溶解する等の測定の前処理が煩雑であり、信頼性の高い分析を行うには手間を要し、簡易且つ迅速にはんだ中の銅濃度を定量することが困難であった。更に、特許文献1に開示しているICP発光分析法は、定量するにあたって専門的知識が必要となり、製造現場で用いるには熟練者が必要となるため人的コストの増大を招いていた。
本件発明は上述した点を鑑みてなされ、その目的は、はんだ中の銅濃度を、簡易且つ迅速に、低コストで信頼性高く定量することが出来る方法を見出し、溶融はんだ浴内の銅濃度が規格値を超えないよう管理することにある。
本発明者等は、以下に述べるはんだ中の銅濃度定量方法を採用することで上記課題を達成するに到った。
本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法は、錫を含有するはんだ中の銅濃度(wt%)の定量方法であって、当該銅濃度は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅の積算値(Cu−Kα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)と錫の積算値(Sn−Lα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)との比(銅の積算値/錫の積算値)をXとした場合に、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式により定量することを特徴とする。
本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法は、錫を含有するはんだ中の銅濃度(wt%)の定量方法であって、当該銅濃度Yは、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅のピーク強度(Cu−Kα線におけるピーク強度)と錫のピーク強度(Sn−Lα線におけるピーク強度)との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)をXとした場合に、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式により定量することを特徴とする。
また、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法において、前記はんだは、Sn−Ag系の鉛フリーはんだであることが好ましい。
本件発明に係るはんだ中の銅濃度を定量する方法を採用することで、被測定試料の溶解等の前処理が不要となり、はんだ中の銅濃度を簡易且つ迅速に定量することが可能となる。また、本件発明に係るはんだ中の銅濃度を定量する方法は、特に専門性を必要とせず、誰にでも簡易且つ迅速に定量が行えるため、人的コストの増大を抑制し、製造現場で用いる上においても都合が良い。更に、本件発明に係るはんだ中の銅濃度を定量する方法は、エネルギー分散型X線分析装置を用いることで、はんだ中の銅濃度を高精度で信頼性高く定量することができ、その結果、安価でありながらも高品質なインターコネクタを提供することが可能となる。
電子ビームの加速電圧を変化させて測定したはんだの特性X線エネルギースペクトルである。 電子ビームのビーム電流を変化させて測定したはんだの特性X線エネルギースペクトルである。 本実施例における測定条件での銅の積算値と錫の積算値との比(銅の積算値/錫の積算値)[%]と銅濃度[wt%]との関係を示したグラフである。 本実施例における測定条件での銅のピーク強度と錫のピーク強度との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)[%]と銅濃度[wt%]との関係を示したグラフである。
以下、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法について一実施の形態を説明する。
本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法は、錫を含有するはんだ中の銅濃度(wt%)の定量方法であって、当該銅濃度は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅の積算値(Cu−Kα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)と錫の積算値(Sn−Lα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)との比(銅の積算値/錫の積算値)をXとした場合に、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式により定量することを特徴とするものである。
本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法は、錫を含有するはんだ中の銅濃度を定量する方法に関し、例えばSn−Zn系やSn−Ag−Cu系等、錫を含有するはんだであれば当該はんだ中の銅濃度を定量することが出来る。
また、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法は、エネルギー分散型X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を用いてはんだ中の銅濃度の定量を行うものである。ここで、エネルギー分散型X線分析装置とは、試料に電子ビームを照射したときに発生するX線のエネルギーや強度を解析することにより試料を構成する元素の種類や含有量を調べる従来より公知の装置であり、はんだを溶液化させずに非破壊で元素分析でき試料調整が不要であるため、簡易且つ迅速に定量を行うことが可能である。
そして、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法によれば、はんだ中の銅濃度は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅の積算値(Cu−Kα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)と錫の積算値(Sn−Lα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)との比(銅の積算値/錫の積算値)をXとした場合に、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式のYを求めることで簡易且つ迅速に定量することが出来る。ここで、Y=aX+bで表される一次関数式に関する定数a,bの値に関しては、エネルギー分散型X線分析装置の違い等によって若干の変動があるものの、概ね「0.6≦a≦0.8」、「0.03≦b≦0.2」を満たす範囲となる。なお、上述した一次関数式「Y=aX+b」の定数a,bの値は、予めはんだの組成がそれぞれ異なる試料を数種類用意し、これらの試料に電子ビームを照射して得られたデータに基づき銅濃度と当該(銅の積算値/錫の積算値)の関係をグラフ上にプロットして作成した検量線より求められる。要するに、当該定数a,bの値は、用いる測定装置に特有の値として得られるものである。
すなわち、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法では、エネルギー分散型X線分析装置を用い、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅の積算値(Cu−Kα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)と錫の積算値(Sn−Lα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)との比(銅の積算値/錫の積算値)を算出することで、錫を含有するはんだ中の銅濃度を高精度で信頼性高く定量することが出来る。ちなみに、はんだ中の銅濃度は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて単純に銅の積算値を求めることで定量することも出来るが、当該エネルギー分散型X線分析装置のコンディションや測定試料の表面状態等に変化があった場合には定量値に影響が及び、信頼性の高い定量を行うことが困難となる。しかし、はんだ中の銅濃度を定量するにあたって、上述した比(銅の積算値/錫の積算値)を求めることで、当該エネルギー分散型X線分析装置のコンディション等の影響を抑え、定量ばらつきを小さくすることが出来る。
また、本件発明に係る銅濃度定量方法は、 錫を含有するはんだ中の銅濃度(wt%)の定量方法であって、当該銅濃度は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅のピーク強度(Cu−Kα線におけるピーク強度)と錫のピーク強度(Sn−Lα線におけるピーク強度)との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)をXとした場合に、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式により定量することを特徴とする。
本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法は、錫を含有するはんだ中の銅濃度を定量する方法に関し、エネルギー分散型X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X−ray spectroscopy)を用いてはんだ中の銅濃度の定量を行うものである。この点に関しては、上述したもう一つのはんだ中の銅濃度定量方法と同じであるため、ここでの説明は省略する。
本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法によれば、はんだ中の銅濃度は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅のピーク強度(Cu−Kα線におけるピーク強度)と錫のピーク強度(Sn−Lα線におけるピーク強度)との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)をXとした場合に、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式のYを求めることで簡易且つ迅速に定量することが出来る。ここで、Y=aX+bで表される一次関数式に関する定数a,bの値に関しては、エネルギー分散型X線分析装置の違い等によって若干の変動があるものの、概ね「1.0≦a≦1.2」、「−1.2≦b≦−1.5」を満たす範囲となる。なお、上述した一次関数式「Y=aX+b」の定数a,bの値は、予めはんだの組成がそれぞれ異なる試料を数種類用意し、これらの試料に電子ビームを照射して得られたデータに基づき銅濃度と当該(銅のピーク強度/錫のピーク強度)の関係をグラフ上にプロットして作成した検量線より求められる。要するに、当該定数a,bの値は、用いる測定装置に特有の値として得られるものである。
すなわち、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法では、エネルギー分散型X線分析装置を用い、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅のピーク強度(Cu−Kα線におけるピーク強度)と錫のピーク強度(Sn−Lα線におけるピーク強度)との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)を算出することで、錫を含有するはんだ中の銅濃度を高精度で信頼性高く定量することが出来る。ちなみに、はんだ中の銅濃度は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて単純に銅のピーク強度を求めることで定量することも出来るが、当該エネルギー分散型X線分析装置のコンディションや測定試料の表面状態等に変化があった場合には定量値に影響が及び、信頼性の高い定量を行うことが困難となる。しかし、はんだ中の銅濃度を定量するにあたって、上述した比(銅の積算値/錫の積算値)を求めることで、当該エネルギー分散型X線分析装置のコンディション等の影響を抑え、定量ばらつきを小さくすることが出来る。
また、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法において、はんだは、Sn−Ag系の鉛フリーはんだであることが好ましい。
従来より、プリント基板等の電子部品に用いられるはんだにおいては、環境問題への対応として鉛を除去した鉛フリーはんだが用いられるようになっている。インターコネクタを製造するにあたっても例外ではなく、Sn−3Ag−0.5Cu等のSn−Ag系の鉛フリーはんだが主に用いられている。ところが、無鉛はんだは、有鉛はんだに比べて銅を溶かし込む作用が強く、インターコネクタを製造する際に銅線から銅原子が溶融はんだ浴内に溶出して溶融はんだ槽中の銅濃度が急激に上昇してしまい、溶融はんだ槽中の銅濃度管理が困難である。また、Sn−Ag系の無鉛はんだは、ICP発光分析法等の元素分析法を用いた従来の銅濃度定量方法だと、被測定試料を酸溶解する際に銀が不溶性の塩化銀を形成する等して、測定の前処理が困難となる。しかし、本件発明の銅濃度定量方法は、Sn−Ag系の鉛フリーはんだであっても、このはんだ中の銅濃度を高精度で信頼性高く求めることが出来る。
以下、本件発明の実施例を示し、本件発明をより詳細に説明する。但し、本件発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
まず、本件発明では、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を5分としたときに得られるX線スペクトルに基づき、はんだ中の銅濃度を定量するが、この理由について以下に示す。参考までに、本実施例で用いるエネルギー分散型X線分析装置は、日本電子株式会社製の型番EX−23000BUとした。
図1は、電子ビームの加速電圧を変化させて測定したはんだの特性X線エネルギースペクトルである。なお、図1の右側に示すスペクトル波形は左側に示すスペクトル波形中において破線が囲まれた部分を拡大したものである。ここで、分析範囲を1.2mm×0.9mmとし、ビーム電流を2.0nAとし、積算時間を300秒とし、試料高さを10mmとした。その結果、電子ビームの加速電圧が10kVのときに、X線エネルギーがCu−Lα線(0.93keV)で強度1772のピークが示され、X線エネルギーがCu−Kα線(8.04keV)でピークが示されていない。また、電子ビームの加速電圧が15kVのときに、X線エネルギーがCu−Lα線(0.93keV)でピークが示されず、X線エネルギーがCu−Kα線(8.04keV)で強度512のピークが示された。また、電子ビームの加速電圧が25kVのときに、X線エネルギーがCu−Lα線(0.93keV)で強度599のピークが示され、X線エネルギーがCu−Kα線(8.04keV)で強度729のピークが示された。
すなわち、図1に示す結果より、電子ビームの加速電圧が10kVの場合には、明瞭なCu−Kα線のピークは認められず、また、Cu−Lα線のピークは認められるものの連続するX線の強度が強いためピークの認定が困難である。また、電子ビームの加速電圧が15kVの場合には、Cu−Lα線において明瞭なピークが認められない。これらに対して、電子ビームの加速電圧が25kVの場合には、Cu−Lα線及びCu−Kα線においてピークが明瞭に確認でき、連続するX線においてピークの認定が容易である。
また、図2は、電子ビームのビーム電流を変化させて測定したはんだの特性X線エネルギースペクトルである。なお、図2の右側に示すスペクトル波形は左側に示すスペクトル波形中破線が囲まれた部分を拡大したものである。ここで、分析範囲を1.2mm×0.9mmとし、加速電圧を25kVとし、積算時間を300秒とし、試料高さを10mmとした。その結果、電子ビームのビーム電流が1.0nAのときに、X線エネルギーがCu−Lα線(0.93keV)で強度542のピークが示され、X線エネルギーがCu−Kα線(8.04keV)で強度593のピークが示されている。また、電子ビームの加速電圧が2.0nAのときに、X線エネルギーがCu−Lα線(0.93keV)で強度599のピークが示され、X線エネルギーがCu−Kα線(8.04keV)で強度729のピークが示された。また、電子ビームの加速電圧が3.0nAのときに、X線エネルギーがCu−Lα線(0.93keV)でピークが示されず、X線エネルギーがCu−Kα線(8.04keV)で強度630のピークが示された。
すなわち、図2に示す結果より、電子ビームのビーム電流が1.0nA,2.0nAの場合には、Cu−Kα線及びCu−Lα線において明瞭なピークが認められた。ところが、電子ビームのビーム電流が3.0nAの場合には、Cu−Lα線において明瞭なピークが認められなかった。
以上のことから、エネルギー分散型X線分析装置を用いてはんだ中の銅濃度を定量するにあたって、加速電圧を18〜25kVとし、ビーム電流を0.5〜2.8nAとした測定条件を採用し、Cu−Kα線の観察により銅濃度の定量を行うことが好ましいことが分かる。なお、積算時間は10分以内であれば、はんだ中の銅濃度を定量する上で支障が生じないことが経験上確認されている。
次に、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法において、得られるX線スペクトルの銅の積算値(Cu−Kα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)と錫の積算値(Sn−Lα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)との比(銅の積算値/錫の積算値)、また、得られるX線スペクトルの銅のピーク強度と錫のピーク強度との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)を算出することで、はんだ中の銅濃度を高精度で信頼性高く定量出来ることとした理由について以下に述べる。
〈X線スペクトルの銅の積算値と錫の積算値との比(銅の積算値/錫の積算値)と銅濃度の関係について〉
表1には、それぞれ銅濃度の異なる試料1〜4について、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を25kV、ビーム電流を2.0nA、積算時間を300秒としたときに得られるX線スペクトルの銅の積算値(Cu−Kα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)と錫の積算値(Sn−Lα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)との比(銅の積算値/錫の積算値)を求めた結果を示す。
Figure 0006321369
表1に示す試料は、銅濃度が0.50wt%の試料1(ニホンゲンマ社製(品番:NP303 3.0))、銅濃度が0.71wt%の試料2(ニホンゲンマ社製(品番:NP503 B20))、銅濃度が3.04wt%の試料3(ニホンゲンマ社製原料(品番:NP303)を使用した溶融はんだ浴から採取)、銅濃度が1.09wt%の試料4(MBH analycal LTD製(品番:74XCA5)である。これら試料は、熱間樹脂に埋め込んだ後に、表面をバフ仕上げした。そして、これら各試料について2回ずつネルギー分散型X線分析装置を用いてX線スペクトルの銅の積算値(Cu−Kα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)と錫の積算値(Sn−Lα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)との比(銅の積算値/錫の積算値)を測定した。その結果、試料1の積算値比の平均は0.58となり、試料2の積算値比の平均は0.84となり、試料3の積算値比の平均は4.26となり、試料4の積算値比の平均は1.47となった。
図3は、本実施例における測定条件での銅の積算値と錫の積算値との比(銅の積算値/錫の積算値)[%]と銅濃度[wt%]との関係を示したグラフである。図3は、表1に示す結果をグラフ化したものであるが、検量線が銅濃度が0.5wt%から3.04wt%まで優れた直線性を有し、一次関数式「Y=0.688X+0.108」で表すことが可能である。従って、以上の結果から、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法によれば、はんだ中の銅濃度を、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式のYを求めることで簡易且つ迅速に定量することが出来ることが分かった。また、この場合に、定数a,bの値に関しては、「0.6≦a≦0.8」、「0.03≦b≦0.2」を満たすことが確認出来た。そして、はんだ中の銅濃度は、銅の積算値(Cu−Kα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)と錫の積算値(Sn−Lα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)との比(銅の積算値/錫の積算値)から簡易でありながらも高精度で信頼性高く求めることが出来ることが分かった。
〈X線スペクトルの銅のピーク強度と錫のピーク強度との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)と銅濃度の関係について〉
表2には、それぞれ銅濃度の異なる試料1〜4について、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を25kV、ビーム電流を2.0nA、積算時間を300秒としたときに得られるX線スペクトルの銅のピーク強度(Cu−Kα線におけるピーク強度)と錫のピーク強度(Sn−Lα線におけるピーク強度)との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)を求めた結果を示す。
Figure 0006321369
表2に示す試料は、銅濃度が0.50wt%の試料1(ニホンゲンマ社製(品番:NP303 3.0))、銅濃度が0.71wt%の試料2(ニホンゲンマ社製(品番:NP503 B20))、銅濃度が3.04wt%の試料3(ニホンゲンマ社製原料(品番:NP303)を使用した溶融はんだ浴から採取)、銅濃度が1.09wt%の試料4(MBH analycal LTD製(品番:74XCA5)である。これら試料は、熱間樹脂に埋め込んだ後に、表面をバフ仕上げした。そして、これら各試料について2回ずつネルギー分散型X線分析装置を用いてX線スペクトルの銅のピーク強度(Cu−Kα線におけるピーク強度)と錫のピーク強度(Sn−Lα線におけるピーク強度)との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)を測定した。その結果、試料1のピーク強度比の平均は1.72となり、試料2のピーク強度比の平均は1.76となり、試料3のピーク強度比の平均は3.95となり、試料4のピーク強度比の平均は2.19となった。
図4は、本実施例における測定条件での銅のピーク強度と錫のピーク強度との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)[%]と銅濃度[wt%]との関係を示したグラフである。図4は、表2に示す結果をグラフ化したものであるが、検量線が銅濃度が0.8wt%から3.04wt%まで優れた直線性を有し、Yが0.8以上の場合に、一次関数式「Y=0.688X+0.108」で表すことが可能である。従って、以上の結果から、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法によれば、はんだ中の銅濃度を、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式のYを求めることで簡易且つ迅速に定量することが出来ることが分かった。また、この場合に、定数a,bの値に関しては、「1.0≦a≦1.2」、「−1.2≦b≦−1.5」を満たすことが確認出来た。そして、はんだ中の銅濃度は、銅のピーク強度(Cu−Kα線におけるピーク強度)と錫のピーク強度(Sn−Lα線におけるピーク強度)との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)から簡易でありながらも高精度で信頼性高く求めることができ、特に銅濃度が概ね0.8wt%以上のはんだに関して高精度で信頼性高く求めることができ好ましいことが分かった。
本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法を採用することで、はんだ中の銅濃度を簡易且つ迅速に、低コストで信頼性高く定量することが出来る。従って、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法によれば、例えばインターコネクタを製造するにあたって銅線を浸漬し溶融はんだ浴内の銅濃度が規格値を超えようとしている場合でも、迅速に対応することができ、更に高品質なインターコネクタを安価で提供することが可能となる。なお、本件発明に係るはんだ中の銅濃度定量方法は、錫を含有するはんだであれば採用することが出来るため、プリント基板等の電子部品に用いられるはんだ中の銅濃度を定量する場合等にも好適に採用することが出来る。

Claims (3)

  1. 錫を含有するはんだ中の銅濃度(wt%)の定量方法であって、
    当該銅濃度は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅の積算値(Cu−Kα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)と錫の積算値(Sn−Lα線におけるスペクトル波形とバックグラウンドとの差の積算値)との比(銅の積算値/錫の積算値)をXとした場合に、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式により定量することを特徴とするはんだ中の銅濃度定量方法。
  2. 錫を含有するはんだ中の銅濃度(wt%)の定量方法であって、
    当該銅濃度は、エネルギー分散型X線分析装置を用いて、加速電圧を18〜25kV、ビーム電流を0.5〜2.8nA、積算時間を10分以内としたときに得られるX線スペクトルの銅のピーク強度(Cu−Kα線におけるピーク強度)と錫のピーク強度(Sn−Lα線におけるピーク強度)との比(銅のピーク強度/錫のピーク強度)をXとした場合に、Y=aX+b(a、bは定数であり、a≠0である)で表される一次関数式により定量することを特徴とするはんだ中の銅濃度定量方法。
  3. 前記はんだは、Sn−Ag系の鉛フリーはんだである請求項1又は請求項2に記載のはんだ中の銅濃度定量方法。
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