JP6320917B2 - 疼痛を治療する方法 - Google Patents

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Description

優先権の主張
本出願は、2011年7月20日に出願の米国特許出願第61/509,886号に対して米国特許法第119条に基づき優先権を主張するものであり、その開示内容は本願明細書に全体で援用されている。
発明の分野
本開示の内容は、ベータ-シクロデキストリンと配合されたジクロフェナクを投与することによって術後通や癌疼痛を治療する方法に関する。更に、本開示の内容は、鎮痛を必要としている特殊な患者集団において疼痛を治療する方法に関する。
オピオイドは疼痛管理のために一般に用いられているが、この種類の薬剤は重大な有害作用を有する。投与量関連副作用のために、また、急性耐性及び痛覚過敏の急速な変化の可能性のために、術後鎮痛用のオピオイドについての過剰な信頼性が罹患率を上昇させることがある。
近年では、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)がオピオイドと対になる多面的鎮痛は、中等度から高度までの急性術後痛の制御のための標準的な臨床診療になってきた。多面的鎮痛によって、オピオイド使用量が少なくなり、結果として術後の吐き気、嘔吐及び鎮静状態が減少する。
NSAIDは、急性術後痛の管理に不可欠である。これは特に術後の「迅速な回復」に関連して当てはまることであり、硬膜外又は局所麻酔、低侵襲技術、最適疼痛制御及び積極的な術後リハビリテーションを併用して、回復を著しく高め且つ罹患率を著しく低下させる。現在行われているほとんどの手術は、緊急であるか又は短期入院に基づいて行われる。緩和されてない疼痛は患者の退院を遅らせることになり、それが計画されてない入院や再入院の一般的な理由である。
患者が耐えることができないか又は経口薬剤を服用することができない場合、また、患者が急速な鎮痛の開始を必要とする場合、非経口NSAIDがしばしば好ましい。退院を早め且つ術後の迅速な回復においてオピオイド関連の副作用を減少させるのに多面的麻酔が重要である。最近の系統的レビューは、NSAIDとケタミンのみが同時のオピオイドの必要量を減少しつつ術後痛の強度を低下させると結論した。Liu et al. Anesth. Analg. 104(3): 689-702 (2007)を参照のこと。
すべてのNSAIDが中等度から高度までの疼痛に有効であるというわけではなく、また、すべてのNSAIDが臨床的に意味のある減少をオピオイド必要量で達成することが可能であるというわけではない。アセトアミノフェンとNSAIDの一部の配合物には、調製及び/又は各投与量の低速注入が必要である。ケトロラクは、北アメリカにおいて最も一般的に用いられる注射用非麻薬性鎮痛薬の1つである。ケトロラクは急速な静脈内の(IV)ボーラスによって投与される単剤として有効であるが、血小板凝集を妨げ且つ投薬量の減少が高齢者のようなリスクのある集団において必須であるような程度まで出血のリスクを上げる。
ジクロフェナクは、非経口剤形及び経口剤形双方で急性及び慢性の疼痛に用いられる周知の非ステロイド系抗炎症薬(「NSAID」)である。経口投薬量は100-200mg/日の範囲にあり、非経口投薬量は注入投与量又は間欠(分割)投与量によって75-150mg/日(1-2mg/kg/日)の範囲にある。ジクロフェナクの経口形及び非経口形の毒性は、周知であり、胃腸、出血、腎、肝、心血管及びアレルギー(アナフィラキシー及び高度の皮膚アレルギー)有害事象が最も重大である。
現在承認されているジクロフェナク製剤は、VoltarolTM、ジクロフェナクの注射用の形である。この製品の使用は、希釈、炭酸水素ナトリウム溶液による緩衝、不安定性及び結果として調製後の即時投与が必要で、投与時間が30分から2時間までの範囲にあることが含まれ、調製及び投与要求によって制限されている。ジクロフェナクの難溶性は、VoltarolTMの非経口使用を希釈された(100-500mlの希釈剤)製品の筋肉内(IM)使用及び/又は緩慢なIV投与に制限している。更に、この製剤は、ジクロフェナクの溶解性を増加させるために、有機溶媒、例えばプロピレングリコールやベンジルアルコールを使っている。これらの賦形剤の各々は、既知の血管刺激薬であり、注射で疼痛を引き起こし得る。
米国特許第5,679,660号明細書及び2004年11月30日に出願の同時係属出願第10/999,155号明細書の2005年10月27日に公開された米国特許出願公開第2005/0238674 A1号明細書には、ジクロフェナクとヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)との新規な製剤が開示されており、いずれの明細書も本願明細書に全体で援用されている。これらの製剤は、より濃縮した調製物、従って急速静脈内投与を可能にする。
毒性作用を回避し且つ特殊な用法を必要とするハイリスク集団への投与に適している低用量で効果的なNSAID製剤が当該技術において求められている。このような集団には、高齢患者、肥満患者、及びがん患者が含まれるが、これらに限定されない。また、高度の疼痛だけでなく中等度の疼痛を治療し且つオピオイド治療の必要性を低くするのに効果的であるNSAIDも求められている。更に、疼痛を治療するのにケトロラクと少なくとも同じ効力を有するが、副作用がより少ないNSAIDを提供することは有利である。
本開示の内容は、一つには、ジクロフェナクナトリウムとベータ-シクロデキストリンとの非経口製剤が中等度から高度までのがん疼痛や術後疼痛を治療し得るという発見によるものである。本開示の内容は、また、認可された最小投与量よりも少ないジクロフェナク投与量が特殊な患者集団において効果的であり且つ安全でもあるという発見によるものである。
本開示の内容は、鎮痛を誘導するのに効果的な単位用量のジクロフェナク化合物; 及びベータ-シクロデキストリン化合物を投与することによって鎮痛を必要としている哺乳類を治療する方法であって、ジクロフェナク化合物の投与量が約50mg未満である、前記方法を提供することである。このような鎮痛の必要性は、がん疼痛又は術後疼痛によるものであってもよい。
一実施態様において、本開示の内容は、哺乳類において整形外科手術に起因する術後疼痛を治療する方法であって、それを必要としている哺乳類に約50mg以下のジクロフェナク化合物及びベータ-シクロデキストリン化合物の医薬組成物を投与することを含む、前記方法を提供することである。
一実施態様において、方法は、投与の約10分以内に哺乳類に疼痛軽減を与える。ある種の実施態様において、方法は、更に、救急薬量の投与を含んでいる。一実施態様において、方法は、投与後約24時間、投与後約48時間、投与後約72時間、投与後約96時間、及び投与後約120時間からなる群より選ばれる時間内に少なくとも約40%救急薬量(amount of rescue medication)を減少させる。
一実施態様において、本開示の内容は、哺乳類における腹部又は骨盤の手術に起因する術後疼痛を治療する方法であって、それを必要としている哺乳類に約50mg以下のジクロフェナク化合物及びベータ-シクロデキストリン化合物の医薬組成物を非経口投与することを含む、前記方法を提供することである。
一実施態様において、方法は、投与の約45分後に、疼痛強度の少なくとも約30%を減少させる。個々の実施態様において、方法は、更に、救急薬量の投与を含んでいる。ある種の実施態様において、方法は、投与後約24時間以内に少なくとも約35%救急薬量を減少させる。具体的な実施態様において、方法は、投与後約48時間以内に少なくとも約35%救急薬量を減少させる。
個々の実施態様において、哺乳類は、体重が少なくとも約210 lb(95kg)のであるヒト被験者である。一実施態様において、哺乳類は、鎮痛に対する有害反応のハイリスクを有する。ある種の実施態様において、哺乳類は、肝障害を有する。個々の実施態様において、哺乳類は、腎障害を有する。具体的な実施態様において、哺乳類は、約65歳以上であるヒト被験者である。具体的な実施態様において、哺乳類は、中等度から高度までの疼痛に苦しんでいる。
一実施態様において、医薬組成物は、約37.5mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。他の実施態様において、医薬組成物は、約18.75mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約9.375mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。
一実施態様において、本開示の内容は、哺乳類において疼痛を治療する方法であって、それを必要としている哺乳類に約37.5mg以下のジクロフェナク化合物及びベータ-シクロデキストリン化合物の医薬組成物を非経口投与することを含む、前記方法を提供することである。疼痛は、がんに起因する。
具体的な実施態様において、ベータ-シクロデキストリン化合物は、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)である。
図1は、時間の経過に伴う疼痛強度差の合計の平均を示すグラフである。試験した製剤には、プラセボ(濃い灰色の棒)、ケトロラク(薄い灰色の棒)、及びジクロフェナク(黒い線)が含まれる。「*」は、P値がプラセボに対して<0.0001であることを表している。 図2は、時間の経過に伴う投与された救急薬の累積量を表すグラフである。試験した製剤には、プラセボ(濃い灰色の棒)、ケトロラク(薄い灰色の棒)、及びジクロフェナク(黒い線)が含まれる。「*」は、P値がプラセボに対して<0.0001であることを表している。「#」は、P値がケトロラクに対して<0.05であることを表している。 図3は、時間の経過に伴う救急薬を必要としなかった各治療群の被験者のパーセントを示すグラフである。テストした製剤には、プラセボ、ケトロラク、及びジクロフェナクが含まれる。 図4は、最後の評価で患者全体の評価を示すグラフである。グラフは、プラセボ、ケトロラク、及びジクロフェナクの各々に対して「すばらしく良い」、「とても良い」、「良い」、「まずまず」、「悪い」の評価を表している患者全体のパーセントを示している。 図5は、プラセボ、ケトロラク、18.75mgのジクロフェナク、及び37.5mgのジクロフェナクの各々に対して手術後の最初の3日間の1日当たりの投与されたレスキューモルヒネの平均量(mg)を示す図である。 図6は、実施例10の治験スケジュールを表す図である。 図7は、実施例10における治験グループの患者の分布及び治験撤退の理由を表す図である。 図8は、実施例10における時間の経過に伴う疼痛強度差の合計の平均を示すグラフである。試験した製剤には、プラセボ、ケトロラク30mg、ジクロフェナク18.75mg、及びジクロフェナク37.5mgが含まれる。 図9は、実施例10における時間の経過に伴う投与されたレスキューモルヒネの平均量を示すグラフである。試験した製剤には、プラセボ、ケトロラク30mg、ジクロフェナク18.75mg、及びジクロフェナク37.5mgが含まれる。 図10は、実施例11における無作為化された患者の分布を表している図である。 図11は、実施例11における最後の評価で患者全体の評価を示すグラフである。グラフは、プラセボ、ケトロラク、及びジクロフェナクの各々に対して「すばらしく良い」、「とても良い」、「良い」、「まずまず」、「悪い」の評価を表している患者全体のパーセントを示している。 図12は、実施例11における時間の経過に伴う疼痛強度差の合計の平均を表すグラフである。試験した製剤には、プラセボ(濃い灰色の棒)、ケトロラク(薄い灰色の棒)、及びジクロフェナク(黒い線)が含まれる。「*」は、P値がプラセボに対して<0.05であることを表している。「#」は、P値がケトロラクに対して<0.05であることを表している。 図13Aは、実施例11に示されるようにプラセボ及びジクロフェナクと比較した時間の経過に伴うハイリスク高齢患者におけるケトロラクの効力を示すグラフである。図13Aは、治療前後に疼痛強度の少なくとも30%減少を達成している患者のパーセントを示すグラフである。試験した製剤には、プラセボ(濃い灰色の棒)、ケトロラク(薄い灰色の棒)、及びジクロフェナク(黒い線)が含まれる。「*」は、P値がプラセボに対して<0.05であることを表している。「#」は、P値がケトロラクに対して<0.05であることを表している。 図13Bは、実施例11に示されるようにプラセボ及びジクロフェナクと比較した時間の経過に伴うハイリスク高齢患者におけるケトロラクの効力を示すグラフである。図13Bは、時間の経過に伴うプラセボに対する治療による救急薬の平均量を示すグラフである。「#」は、P値がケトロラクに対して<0.05であることを表している。 図14は、治験グループにおける患者の分布及び実施例12における治験撤退の理由を表す図である。 図15は、実施例13の試験1において年齢及び体重のコホートに割り当てられた患者の分布を表す図である。 図16Aは、実施例13に示されるようにジクロフェナクPKに対する年齢の影響を示すグラフである。図16Aは、3つの年齢別コホートに18.75mgのHPβCD-ジクロフェナクをIV投与した後のジクロフェナクの時間の経過に伴う平均血漿濃度を示すグラフである。 図16Bは、実施例13に示されるようにジクロフェナクPKに対する体重の影響を示すグラフである。図16Bは、3つの体重別コホートに37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクをIV投与した後のジクロフェナクの時間の経過に伴う平均血漿濃度を示すグラフである。 図17Aは、実施例13に示されるように年齢とジクロフェナクPKパラメータの関係を示すグラフである。図17Aは、実施例13の18.75mg又は37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクの静脈内投与後の分布容積と年齢との関係を表すグラフである。 図17Bは、実施例13に示されるように年齢とジクロフェナクPKパラメータの関係を示すグラフである。図17Bは、18.75mg又は37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクの静脈内投与後の終末消失半減期と年齢の関係を表すグラフである。 図18Aは、実施例13に示されるように腎障害をもつ被験者におけるHPβCD-ジクロフェナクの薬物動態を示すグラフである。図18Aは、軽度又は中等度の腎障害をもつ被験者及び健常な被験者に37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクをIV投与した後の時間の経過に伴うジクロフェナクの平均血漿濃度を示すグラフである。 図18Bは、実施例13に示されるように腎障害をもつ被験者におけるHPβCD-ジクロフェナクの薬物動態を示すグラフである。図18Bは、軽度又は中等度の腎障害をもつ被験者及び健常な被験者に37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクをIV投与した後の時間の経過に伴う賦形剤、HPβCDの平均血漿濃度を示すグラフである。 図19Aは、実施例13に示されるように肝障害をもつ被験者におけるHPβCD-ジクロフェナクの薬物動態を示すグラフである。図19Aは、軽度肝障害をもつ被験者及び健常な被験者に37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクをIV投与した後の時間の経過に伴うジクロフェナクの平均血漿濃度を示すグラフである。 図19Bは、実施例13に示されるように肝障害をもつ被験者におけるHPβCD-ジクロフェナクの薬物動態を示すグラフである。図19Bは、健常な被験者に37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクをIV投与した後の時間の経過に伴う賦形剤、HPβCDの平均血漿濃度を示すグラフである。
本開示の内容は、低用量のジクロフェナク化合物及びベータ-シクロデキストリンの組み合わせを投与することによって鎮痛を必要としている哺乳類の特殊な集団を治療する方法を提供することである。個々の実施態様において、哺乳類は、がん疼痛又は術後疼痛をもっている。具体的な実施態様において、特殊な患者集団は、ハイリスク及び/又は肥満の哺乳類である。
本開示の内容は、一つには、中等度から高度の術後疼痛の治療のためのケトロラク及びプラセボとHPβCDで可溶化したジクロフェナクとの効力の比較の結果に基づくものである。いくつかの投与量レベルでのHPβCDで可溶化したジクロフェナクの効力は、より速い作用の開始を示している。中でも注目すべきは、HPβCDと配合したジクロフェナクによって、現在推奨されている投与量のジクロフェナクの約67%、50%、約25%、約12.5%及び約5%で単回投与効力が得られる。このことは、製剤に対するヒト薬物動態学的結果と組み合わせて、薬剤曝露の程度と時間を減らすことによって低リスクの毒性が予想されたこのNSAIDの1日量全体の減少を支持している。この知見は、臨床的重要性をもっている。
定義
本開示の内容に従って用いられる「医薬組成物」は、1つ以上の医薬的に許容され得る担体又は賦形剤を用いて任意の従来の方法で配合され得る組成物に関する。本明細書に用いられる「医薬的に許容され得る」担体又は賦形剤は、哺乳類、より詳しくはヒトにおいて用いるのに連邦又は州政府の規制機関、又は米国薬局方又は他の一般的に承認された薬局方によって認可されていることを意味する。
用語「投薬量」は、mg/kg/日によって表される製剤を包含することを意味する。投薬量は、具体的な用法に従って投与される成分の量である。「投与量」は、単位容積又は単位質量、例えば、mgの薬剤で表される絶対単位用量で哺乳類に投与される薬剤の量である。投与量は、製剤中の薬剤の濃度、例えば、1リットル当たりのモル(M)、1容積当たりの質量(m/v)、又は1質量当たりの質量(m/m)に左右される。この2つの用語は、具体的な投薬量が製剤の1回以上の投与量の用法に由来するので、密接に関係している。具体的な意味は、いずれにせよ前後関係から明らかである。
用語「哺乳類」は、皮膚が多かれ少なかれ毛髪で覆われた任意の温血脊椎動物が含まれることを意味する。哺乳類は、ヒト以外の動物であり得る。動物の限定されない例としては、家庭内ペット、例えばイヌ又はネコ、家畜、使役動物、又はサーカス又は動物園における動物が挙げられる。最も好ましくは、哺乳類はヒトである。
本明細書に用いられる用語「ハイリスク」は、鎮痛に対する有害反応のハイリスクをもつ哺乳類を意味する。ハイリスクヒト治験者の限定されない例としては、体重が約110 lb(50kg)未満であるか、約65歳以上であるか、内科的潰瘍治療を受けているか、がんをもっているか、免疫不全であるか、又はチャイルド・ピュースコアが約6〜約9であるか、血清クレアチニンが約1.9〜約3.0mg/dLであるか、胃腸の出血又は穿孔の病歴があるか、腎障害があるか、肝障害があるか、又は抗凝固薬を併用している治験者が挙げられる。本明細書に用いられる用語「腎障害」は、女性については1.1mg/dLであり男性については1.3mg/dLである正常範囲よりも大きいスクリーニング血清クレアチニン値、又は約300mg/dLである正常範囲よりも大きい尿中クレアチニン値をを意味する。本明細書に用いられる用語「肝障害」は、男女共に1.2mg/dLである検査室の正常値よりも大きいスクリーニング総ビリルビン値を意味する。
用語「PGE」は、患者の改善の全体的評価を意味する。PGEは、患者の治療の全体的評価を意味する。PGEは、治療を受けた経験全体を捉えることを意図している患者によってなされる評価である。それは、患者が有効性、副作用、便宜、治療適用の容易さのような要因を考慮することができるように設計されている。
用語「認可された最小投与量」は、ヒト又は動物への使用に安全かつ有効なように適切な米国又は海外の規制当局によって全監督庁の認可を受けた最小投薬量を意味する。
投与量又は量に加えられる用語「治療的に有効な」は、それを必要としている哺乳類に投与する際に望ましい活性を生じるのに充分である化合物又は医薬組成物のその量を意味する。本明細書に用いられる用語「治療的に有効な量/投与量」は、哺乳類に投与する際に鎮痛反応を生じるのに充分である化合物又は医薬組成物の量/投与量を意味する。
本明細書に用いられる用語「量」は、前後関係に適切なような量又は濃度を意味する。本開示の内容において、化合物の有効な量は、鎮痛を必要としている患者/哺乳類を治療するのに充分な量を意味する。治療的に有効な量を構成する薬剤の有効な量は、具体的な薬剤の効力、製剤の投与経路、製剤を投与するのに用いられる機械システムのような要因に従って変動する。治療的に有効な量の具体的な薬剤は、このような要因を充分考慮して当業者が選択し得る。
用語「約」又は「ほぼ」は、一部には値がどのように測定されるか又は定量されるか、すなわち、測定システムの限定に左右される、当業者が決定した具体的な値の許容され得る誤差範囲内を意味する。例えば、「約」は、当該技術の実施につき、3以内又は3よりも大きい標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」は、所定の値の20%まで、好ましくは10%まで、より好ましくは5%まで、より好ましくは1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生体系又は生物学的過程に関して、この用語は、数値の1桁分、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。
本明細書に用いられる用語「治療する」は、哺乳類において疼痛の少なくとも1つの症状の程度を少なくとも部分的に軽減、緩和、低減及び/又はそれの時間を短縮することを意味するように本明細書に用いられる。本開示の内容の意味の範囲内で、用語「治療する」は、また、哺乳類における疼痛の少なくとも1つの症状を発症するか又は悪化させることを阻止し、開始を遅延させ(すなわち、疾患の臨床症状より前の時間)及び/又はリスクを低下させることを意味する。
医薬組成物
本開示の内容の医薬組成物は、ジクロフェナク化合物を含む。用語「ジクロフェナク化合物」は、ジクロフェナク又は医薬的に許容され得るジクロフェナク塩を意味する。ジクロフェナクの医薬的に許容され得る塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム又はカリウム塩、又はアミン、例えば、モノ-、ジ-又はトリ-C1-C4アルキルアミン、例えばジエチル-又はトリエチル-アミン、ヒドロキシ-C2-C4アルキルアミン、例えばエタノールアミン、又はヒドロキシ-C2-C4アルキル-C1-C4アルキルアミン、例えばジメチルエタノールアミン、又は第四級アンモニウム塩、例えばテトラメチルアンモニウム塩と形成された塩又はジクロフェナクのコリン塩であり得る(例えば、米国特許第5,389,681号明細書を参照のこと)。好ましくは、ジクロフェナク塩は、ジクロフェナクナトリウムである。
ある種の実施態様において、医薬組成物は、約75mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。一実施態様において、医薬組成物は、約65mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、約60mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約50mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、約45mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約40mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、約37.5mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約30mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、約25mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。一実施例において、医薬組成物は、約20mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約18.75mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。一実施例において、医薬組成物は、約15mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約10mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、約9.375mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。一実施例において、医薬組成物は、約5mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。
非経口投与のための本開示の内容の適切な製剤には、シクロデキストリン包接化合物が含まれる。1つ以上の変性又は未変性シクロデキストリンは、本開示の内容の化合物の水溶性と効力を安定化し且つ増加させるために使い得る。このために有効なシクロデキストリンには、ベータ-シクロデキストリンが含まれる。製剤は米国特許第5,679,660号明細書及び同第5,674,854号明細書に記載されているように調製することができ、これらの明細書の双方が本願明細書に全体で援用されている。
本明細書で用いられ用語「ベータ-シクロデキストリン」は、比較的疎水性の中心空洞と親水性の外面を含有するD-グルコピラノースの環状アルファ-1,4結合オリゴ糖類を意味する。置換された又は置換されていないベータ-シクロデキストリンが、医薬組成物に使用し得る。シクロデキストリンの限定されないいくつかの例が、米国特許第4,727,064号明細書、同第4,764,604号明細書、同第5,024,998号明細書、同第6,407,079号明細書、同第6,828,299号明細書、同第6,869,939号明細書、Jambhekar et al. Int. J. Pharm. 270(1-2): 149-66 (2004)に開示されており、全てが本願明細書に全体で援用されている。
好ましい実施態様において、ベータ-シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)、アルファ-1,4-グルコース結合単位からなる環状のグルコース由来オリゴマーである。これらのグルコースオリゴマーは難水溶性化合物が入り得る錐体状空洞を形成し、水溶性複合体が形成される。HPβCDで可溶化するジクロフェナクの利点には、投薬容積の減少、高pH又は低pH又は可溶化に必要とされる有機溶媒の使用からの刺激の減少、及び薬剤自体からの直接の静脈刺激を回避することが含まれる。一実施態様において、ジクロフェナクナトリウムとHPβCDとの比は、約1:0.5〜約1:10である。一実施態様において、ジクロフェナクナトリウムとHPβCDとの比は、約1:8.9である。具体的な実施態様において、ジクロフェナクナトリウムとHPβCDとの比は、約1:1.5〜約1:5である。ある種の実施態様において、ジクロフェナクナトリウムとHPβCDとの比は、約1:1.5〜1:2.5である。
HPβCDで可溶化されたジクロフェナクナトリウムの薬物動態は評価されている。ジクロフェナクナトリウム及びHPβCDを含有するIV溶液である、DylojectTMの投与後の最高HPβCD血漿濃度は、健常なヒト被験者において70μg/ml及び中等度の腎障害をもつ被験者において106μg/mlであると定量された。計算されたジクロフェナク/シクロデキストリン複合体安定度定数は116 M-1であり、タンパクに結合した計算された薬剤画分は99.5%であり、血漿中のシクロデキストリンに結合した計算された薬剤画分は0.00%であった。これらの値に基づいて、HPβCDは、結合したジクロフェナクナトリウム血漿タンパクの画分又は血漿中の結合していない薬剤の画分に対する影響は無視できるものである。
医薬組成物には、固体剤形、例えば、経口、経鼻(粉末)、又は直腸(坐剤)投与; 及び液体剤形、例えば、非経口投与、経鼻(噴霧)、又は経口投与が含まれる。個々の実施態様において、本開示の内容の医薬組成物は、静脈内投与及び筋肉内投与が含まれる、非経口投与用に調製される。
非経口投与に適しているジクロフェナク化合物及びHPβCDの医薬組成物は、油性又は水性賦形剤中の、懸濁液、溶液、又はエマルジョンの形であってもよく、沈殿防止剤、安定剤、可溶化剤、及び/又は分散剤のような配合剤を含有してもよい。形態は、滅菌であってもよく、流体であってもよい。形態は、製造及び貯蔵の条件下で安定性であってもよく、細菌や真菌のような微生物の汚染作用に対して保存されてもよい。あるいは、ジクロフェナク化合物及びHPβCDは、使用の前に適切な賦形剤で再構成するための滅菌粉末形態であってもよい。医薬組成物は、単位用量形で、アンプル、又は他の単位用量容器で、又は多回用量容器で存在してもよい。あるいは、医薬組成物は、使用直前に、滅菌液体担体、例えば注射用の水の添加のみを必要とする冷凍乾燥(凍結乾燥)状態で貯蔵されてもよい。即時注射溶液及び懸濁液は、滅菌の粉末、顆粒又は錠剤から調製されてもよい。
用いられる賦形剤には、防腐剤、沈殿防止剤、安定剤、色素、緩衝剤、抗菌剤、抗真菌剤、及び等張剤、例えば、糖類又は塩化ナトリウムが含まれる。本明細書に用いられる用語「安定剤」は、亜硫酸塩の必要性を回避し且つ貯蔵寿命を伸ばすために本開示の内容の医薬組成物に必要により用いられる化合物を意味する。安定剤の限定されない例としては、抗酸化剤、好ましくはモノチオグリセロール及び米国特許出願公開第2005/0238674号明細書に記載されているものが挙げられる。
医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容され得る担体を含み得る。担体は、溶媒又は分散媒体であり得る。医薬的に許容され得る担体の限定されない例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、油、及びこれらの適切な混合物が挙げられる。
非経口製剤は、滅菌され得る。滅菌技術の限定されない例としては、細菌保持フィルターによるろ過、最終滅菌、滅菌剤の取込み、照射、加熱、真空乾燥、及び凍結乾燥が挙げられる。
投与経路
本開示の内容に用いられるジクロフェナク-HPβCDの組み合わせは、適切な任意の非経口経路によって投与され得る。非経口投与経路の限定されない例としては、ボーラス注射又は注入のような静脈内だけでなく、筋肉内、皮下、腹腔内又はくも膜下腔内が挙げられる。非経口送達システムの例としては、静脈内(IV)バッグ、注射器、生体浸食性移植片、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入システム、ポンプ送達、ペン型注射器、及びニードルレス注射デバイスが挙げられる。
治療方法
上述したように、本開示の内容の治療方法は、疼痛を治療するために、すなわち、鎮痛のためにジクロフェナクを投与することに関する。特に、ジクロフェナク製剤は、術後疼痛、がん疼痛、片頭痛が含まれる頭痛、外傷、月経困難症、腎疝痛又は胆石疝痛、痛風、関節炎、がん関連の疼痛、筋骨格疼痛、腰痛、線維筋痛、感染由来の疼痛のようなヒト及び動物における急性疼痛状態の治療に適している。
ある種の実施態様において、疼痛は、がんに起因する。がんの限定されない例としては、固形腫瘍、例えば骨、肺、乳房、結腸、卵巣、脳、肝、膵、前立腺、胃、悪性黒色腫、非メラノーマ皮膚がん、並びに血液学的な腫瘍及び/又は悪性腫瘍、例えば小児白血病やリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパ細胞及び皮膚由来のリンパ腫、急性及び慢性白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病又は慢性骨髄性白血病、形質細胞新生物、リンパ系新生物及びAIDS関連のがんが挙げられる。がん疼痛の限定されない例としては、構造上の損傷に起因するがん疼痛、骨膜刺激、神経絞扼、骨肉腫疼痛、及び化学療法後症候群や放射線照射後症候群のようながん治療と関連した疼痛に起因するがん疼痛が含まれる。
具体的な実施態様において、疼痛は、術後疼痛である。術後疼痛の制限されない例としては、整形外科手術、腹部手術、骨盤手術、歯科手術、形成手術、美容整形手術、神経外科手術、泌尿器科手術、肥満手術、胃手術、心臓手術、関節鏡下手術、血管手術、血管内手術、腹腔鏡手術、腫瘍外科手術、結腸直腸手術、下肢整形外科手術、眼科手術、耳形成手術、鼻形成手術、咽頭手術、又は≧2日間の予定された非経口投与NSAIDを複数日にわたって受けるのにふさわしい他の任意の手術が挙げられる。具体的な実施態様において、術後疼痛は、整形外科、腹部手術、又は骨盤手術に起因するか又はそれに続く疼痛である。整形外科手術の限定されない例としては、全股関節手術、 全膝関節手術、両側の全膝関節手術、脊椎手術、肩関節手術、足関節手術、軟組織手術、脊椎固定手術、回旋筋腱板修復術、椎弓切除術、骨折修復術、及び椎間板切除術が挙げられる。腹部/骨盤手術の限定されない例としては、腹式子宮摘出術、腹部開腹手術、胆嚢切除術、膣式子宮摘出術、腹壁又は鼠径ヘルニア修復術、筋腫摘出術、卵管卵巣摘出術、肥満手術、部分的結腸切除術、及び婦人科又は泌尿生殖器手術が挙げられる。
本開示の内容の方法は、中等度から高度の疼痛が含まれるすべての強さの疼痛の治療に適している。中等度又は高度の疼痛は、0-100mmの視覚的評価スケール(VAS)について≧約50mmの疼痛強度として定義される。一実施態様において、中等度の疼痛は、1-100mmのVASについて≧50mm及び<約70mmの疼痛強度として確認される。高度の疼痛は、1-100mmのVASについて≧約70mmの疼痛強度として確認される。本開示の内容の利点は、NSAIDが軽度から中等度までの疼痛を治療するためにのみ使用し得ると以前思われていたので、ジクロフェナクが高度の疼痛に使用し得るという驚くべき発見から得られる。
個々の実施態様において、患者に一度に投与されるジクロフェナクナトリウムの単位用量は、認可された最小投与量の約75%以下、約67%以下、約50%以下、約25%以下、約12.5%以下である。認可された最小投与量の約25%以上である投与量は、最小有効量と同じレベル及び時間の疼痛軽減を示し得る。更にまた、低用量製剤の投与の回数を増加させることによって、患者は、認可された投与量と同じレベルの効力と時間の疼痛軽減を毒性の低下とともに達成し得る。
ある種の実施態様において、ジクロフェナク化合物の単位用量は約75mg未満であり、これはジクロフェナクの最小認可量である。一実施例において、医薬組成物は、約65mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、約60mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約50mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、約45mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約40mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的実施態様において、医薬組成物は、約37.5mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約30mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、約25mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。一実施態様において、医薬組成物は、約20mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約18.75mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。一実施態様において、医薬組成物は、約15mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。ある種の実施態様において、医薬組成物は、約10mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。具体的な実施態様において、医薬組成物は、約9.375mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。一実施態様において、医薬組成物は、約5mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる。18.75mg及び50mgのジクロフェナク投与量は、それぞれ、最小認可量の約25%及び67%及び、それぞれ、認可された1日量の約12.5%又は33%である。
ある種の実施態様において、本開示の内容は、認可された最小投与量より更に少ない有効な日用量を達成するために投薬回数を増やすことによって果たし得る、患者の必要性に低レベルでさえ充分である鎮痛作用を達成する単位用量を減少することによってジクロフェナク及びベータ-シクロデキストリンの投与量減少を漸増することを提供することである。用語「作用」は、プラセボを受ける患者と相対的にジクロフェナクを含有する製剤を受ける患者における反応に統計的有意な差があることを意味する。
本開示の内容の治療方法は、哺乳類に適している。好ましくは、哺乳類は、ヒトである。ある種の実施態様において、哺乳類は、特殊な患者集団の一員であるヒト被験者である。具体的な実施態様において、ヒト被験者は、ハイリスク被験者又は肥満である。
一実施態様において、ヒト被験者は、ハイリスク被験者である。具体的な実施態様において、ハイリスク被験者は、内科的潰瘍治療を受けているか、体重が約110 lb(50kg)未満であるか、チャイルド・ピュースコアが約6〜約9であるか、血清クレアチニンが約1.9〜約3.0mg/dLであるか、胃腸の出血又は穿孔の病歴があるか、腎障害があるか、肝障害があるか、又は抗凝固薬を併用している。いくつかの実施態様において、被験者は、深在静脈血栓症(DVT)予防用の併用抗凝固薬、例えば、ヘパリン、低分子量ヘパリン(LMWH)、アスピリン、又はクロピドグレルを受けている。
ある種の実施態様において、ハイリスク被験者は、高齢者である。具体的な実施態様において、ハイリスク被験者は、少なくとも65歳である。具体的な実施態様において、ハイリスク被験者は、少なくとも65歳であり且つ体重が少なくとも約210 lb(95kg)である。高齢者患者はおそらく腎不全又は肝不全であり、これにより投与された薬剤の血漿レベルがより高くなる。高齢者患者は、また、免疫系を弱めていることがあり得る。これらの患者はしばしば複数の薬剤を服用しているので、薬剤-薬剤相互作用のリスクもある。
ある種の実施態様において、ハイリスクヒト被験者は、がんをもっている。ある種の実施態様において、ヒト被験者は、免疫不全である。がんをもつヒト被験者は、化学療法、放射線、手術のような疾患又はがん治療のため、免疫系の働きが低下しているか、腎不全か、又は肝不全であり得る。他のハイリスク患者と同様に、がんをもつヒト被験者は、これらの被験者がしばしば複数の薬剤を服用しているので、薬剤-薬剤相互作用のリスクもあり得る。
ハイリスク患者はオピオイド及びNSAID誘発副作用のリスクがより大きいので、これらの薬剤の投薬がより少ないことはその曝露及びリスクを最小にするために好ましい。本開示の内容の有意な利点は、ジクロフェナクの低用量及び1日量全体で効力を達成する能力から得られる。他の利点は、救急薬の量及び回数を減少させる能力である。結果として、投薬を減少させるので、これらの薬剤の毒性を低下させることが可能である。
具体的な実施態様において、ヒト被験者は、肥満である。肥満症は、被験者が過剰な体脂肪を有する内科疾患である。肥満症は多くの医学的な病気を伴い、アテローム硬化症、高血圧、不整脈、II型糖尿病、膵臓炎、高コレステロール血症や高脂血症、インスリン抵抗性、骨関節炎、呼吸器系合併症、及びより高いがんのリスクが含まれる。肥満症の一基準は、体重と身長を比較するボディーマスインデックス(BMI)である。30を超えるBMIは、一般に肥満とみなされる。本開示の内容のある種の実施態様において、ヒト被験者は、体重が少なくとも約210 lb(95kg)である。体重が210 lb(95kg)であるヒト被験者は、その人が5'10''(178cm)以下である場合には、少なくとも約30のBMIを有する。肥満の患者は、時には高用量の鎮痛剤を必要とする。Falagas et al. The Lancet 375(9710): 248-251 (2010). 本開示の内容の利点は、肥満の患者でさえジクロフェナクの低用量及び1日量全体で効力を達成する能力から得られる。本開示の内容は、また、救急薬の量及び回数の減少を提供するものである。低投薬量によって、肥満の患者におけるNSAID及びオピオイドの毒性が低下する。
上述のように、哺乳類は、ヒト以外の動物でもあり得る。従って、本開示の内容は、同様に動物薬において、例えば、家庭内ペット、例えばイヌ又はネコ、家畜、使役動物、又はサーカス又は動物園の動物の疼痛を治療するのに有効である。本開示の内容は、特にスポーツにおけるウマ、例えばサラブレッドや他の競走馬、ロデオウマ、サーカスウマ、馬場馬術ウマの疼痛を治療するのに特定の価値を有する。本開示の内容の特定の利点は、ジクロフェナクの投薬量の効力を増加させることによって、スポーツの特定の監督官庁によって許可された最大許容投与量よりも少ない治療量を投与することが可能であるということである。
ある種の実施態様において、方法により、投与後約1時間以内に被験者の疼痛が軽減される。具体的な実施態様において、方法により、投与後約45分以内に疼痛が軽減される。一実施態様において、方法により、投与後約30分以内に疼痛が軽減される。ある種の実施態様において、方法により、投与後約15分以内に疼痛が軽減される。更に他の実施態様において、方法により、投与後約10分以内に疼痛が軽減される。一実施態様において、方法により、投与後約5分以内に疼痛が軽減される。
ある種の実施態様において、方法により、投与後約20分で疼痛強度が少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは疼痛強度の少なくとも約40%、最も好ましくは投与後約20分で疼痛強度の少なくとも50%が低下する。ある種の実施態様において、方法により、投与後約45分で疼痛強度が少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、最も好ましくは投与後約45分で疼痛強度の少なくとも約30%が低下する。ある種の実施態様において、方法により、投与後約45分で疼痛強度の少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは疼痛強度の少なくとも約30%、最も好ましくは投与後約45分で疼痛強度の少なくとも40%が減少する。
ある種の実施態様において、方法は、更に、救急薬の投与を含んでいる。具体的な実施態様において、救急薬は、オピオイドである。オピオイドの限定されない例としては、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、フェンタニル、モルヒネ、ブプレノルフィン、ヒドロモルフォン、メサドン、トラマドール、メペリジン、オキシモルホン、及びペンタゾシンが含まれる。救急薬は、経口、非経口、経鼻(粉末)、直腸(坐剤)、又は局所投与によって投与され得る。
具体的な実施態様において、方法により、有効な疼痛軽減に必要とされる救急薬量が減少される。ある種の実施態様において、方法により、必要とされる救急薬量が投与後約24時間以内に約10%、より好ましくは約20%、より好ましくは約30%、最も好ましくは40%だけ減少される。具体的実施態様において、必要とされる救急薬量が投与後約48時間以内に約10%、より好ましくは約20%、より好ましくは約30%、最も好ましくは約40%だけ減少される。一実施態様において、方法により、必要とされる救急薬量が投与後約72時間以内に約10%、より好ましくは約20%、より好ましくは約30%、最も好ましくは約40%だけ減少される。具体的実施態様において、方法により、必要とされる救急薬量が投与後約96時間以内に約10%、より好ましくは20%、より好ましくは30%、最も好ましくは40%だけ減少される。ある種の実施態様において、方法により、必要とされる救急薬量が投与後約120時間以内に約10%、より好ましくは約20%、より好ましくは約30%、最も好ましくは約40%だけ減少される。
実施例1: 整形外科手術後の中等度から高度までの急性疼痛を治療するIVジクロフェナク
277人の患者、多施設、多回投与量、複数日、無作為化、二重盲検、活性グループとプラセボ対照グループ並行群間治験を整形外科を受けた患者に行った。患者をジクロフェナク、ケトロラク、又はプラセボ(2:1:1の比)に無作為に割り当てた。治験のために選ばれた患者は手術後に6時間以内に、0-100の視覚的評価スケール(VAS)について少なくとも50mmの疼痛強度として定義される、中等度から高度までの疼痛があった。
ベースラインでのリスクグループによって無作為に層別した。グループは、ハイリスク、ハイリスクでない、又は210 lb、又は95kgより重い高体重であった。24時間より長い入院の間の予想された入院と、短い入院によって無作為に層別した。体重が110 lb(50kg)未満のハイリスク患者は、65歳以上であるか、内科的潰瘍治療を受けているか、又はチャイルド・ピュースコアが約6〜約9であるか、血清クレアチニンが約1.9〜約3.0mg/dLであるか、又は胃腸の出血又は穿孔の病歴があった。
ジクロフェナク量は、ハイリスクでないグループでは37.5mg、ハイリスクグループでは18.75mg、高体重グループでは50mgであった。ジクロフェナク製剤は、DylojectTMであった。ケトロラク量は、ハイリスクでない及び高体重のグループでは30mg、ハイリスクグループでは15mgであった。全ての治療グループの患者は退院まで6時間毎にボーラスIV注射が投与されるか、又は患者が有害事象、不充分な疼痛制御、プロトコールの服薬不履行、又は治験担当医師の裁量時のために治験の積極的治療段階から撤退する場合にはまもなく打ち切られた(例えば、併発の病気に対処するために又は非経口NSAID治療がもはや必要とされないために)。患者を、ベースライン(治験薬開始)から少なくとも24時間及び5日間まで観察した。治療応急有害事象を識別するために、有害事象(悪影響)をベースラインの直後でない、手術と無作為化の間に記録した。
救急薬はIVモルヒネであり、合計7.5mgまで2.5mgの増加分で必要に応じて3時間毎に投与した。モルヒネを要求する患者は、治験薬開始後少なくとも30分待つことが勧められた。
患者は、この疼痛をベースライン及び次の24時間まで指定された時点で評価した。長く入院している人々は退院するまで3時間毎にこの疼痛を評価した。患者はベースライン後の5-9日間経過観察のために退院し、ベースライン後の30-37日間経過観察の電話を受けた。
ジクロフェナクについて120人の患者及びプラセボについて60人の患者の試料が、一次的有効性基準において各時間間隔の臨床的に有意な差を検出する95%検出力を与えるために必要であった。この算出は、整形外科手術集団において治験依頼者が行った無作為化プラセボ対照主試験から得られた0〜24時間間隔の468の推定標準偏差をベースにした。その他の間隔の標準偏差は、外挿法によって得た。
統計解析ソフトウェア(Statistical Analysis Software(登録商標))を用いて有効性の分析を行い、特に明記しない限り包括解析集団を意味する。疼痛強度差曲線による領域、疼痛強度差、疼痛軽減曲線による領域、患者の全体的評価、及び救急薬量の分析は、共分散分析(ANCOVA)モデルをベースにし、要因として治療とセンター及び共変量としてベースライン疼痛を有した。信頼区間は、ANCOVAモデルから得られた統合標準偏差をベースにした。治療差は、 線形対比で試験した。
行われる検定が本質的に片側でない限り、統計的有意性のすべての試験は両側であった。相互作用P値<0.1は、有意であるとみなした; 別の方法で、P値<0.05は、有意であるとみなした。疼痛強度差曲線による領域について、ジクロフェナクとプラセボの間の5つの比較は、以下の順序で行った: 0〜24、0〜48、0〜72、0〜96、及び0〜120時間。比較のいずれかが統計的有意性を示さなかった場合には、更なる比較は行わなかった。疼痛軽減曲線による領域を同様に分析した。
疼痛強度が少なくとも30%低下及びその救急薬使用の回数を達成している患者の割合は、コクラン-マンテル-ヘンツェル検定で分析し、層別変数として中心であった。
曲線算出による領域として、救急薬の投与後又は有害事象(悪影響)又は安全性の欠如による撤退後の評価は、事前に設定された規定に帰属した。疼痛強度の事後分析として、帰属規定の更に保存的且つ単純化設定を適用した。
全体としてもリスクグループ内にも、ベースライン特性に対して治療グループ全体の有意差はなかった。手術の分布は、入院の長さ及びリスクグループによって相違した。腱膜瘤切除又は他の足骨手術が短い入院集団(39%)及びハイリスクでないグループ(50%)において最も一般的であった。膝の代替手術が長い入院集団(49%)及びハイリスクグループ(57%)において最も一般的であった。高体重グループにおいて、最も一般的な処置は、腱膜瘤切除(25%)、膝の代替手術(22%)、及び膝の代替手術以外の膝の手術(18%)であった。手術の持続時間、麻酔時間、又は手術の終わりから治験投与開始までの時間に治療グループの間にほとんど差がなかった。
全体として、患者の78%が少なくとも1つの有害事象を報告し、積極的治療グループにおいても同様に発生した。悪影響の発生もまた、全体の集団と比較してリスクグループ全体に同様であった。ほとんどの悪影響(92%)は、重症度が軽度から中等度であった。吐き気が全体的に且つ各リスクグループにおいて最も一般的に報告された悪影響であった。高体重グループの中で、ジクロフェナク50mgの使用はプラセボと比較して悪影響のリスクを増大しなかった。死亡は、報告されなかった。
出血関連の悪影響の発生は、積極的治療グループ(ジクロフェナク、21%; ケトロラク、23%)において同様であり、プラセボグループ(17%)よりほとんど多くなかった。同様に、抗凝固剤を投与した患者の部分集合において(n=197)、治療グループ全体に出血関連の悪影響の臨床的に意味がある差はなかった。ジクロフェナクグループにおいてアラニンアミノ基転移酵素の(正常の上限の8倍を超える)顕著な上昇の報告が1つあった。
VASについて全体の平均疼痛強度は、ベースラインの69mmであった; 患者の57%は中等度の疼痛(50mm≦VAS<70mm)があり、43%は高度の疼痛(VAS≧70mm)があった。治療グループ又はリスクグループ全体にベースライン疼痛強度の有意差はほとんどなかった。
11人の患者は、ベースラインで間違ったリスクグループに割り当てられた。4つの症例において、現場職員が誤りを発見して、治験薬の投与量を調整した。ここで示される事後分析は、投与された用量レベルをベースとする。
疼痛強度差の合計を図1に示す。疼痛強度を少なくとも24時間かけて及び120時間(5日間)ベースライン及び予定の時点での100mm視覚的評価スケールについて評価した。プラセボ(濃い灰色の棒)、ケトロラク(薄い灰色の棒)、及びジクロフェナク(黒い棒)の一次的安全性基準において5時間間隔の各々に対して平均SPIDスコアが示されている。より大きい値は、術後ベースライン値からの疼痛強度のより大きな低下を示している。0〜48、0〜72、0〜96、及び0〜120時間にわたるSPID値のパーセントは、それぞれ、47%、54%、62%、及び68%であった。*P<0.0001プラセボに対して。すべての時間間隔において、疼痛強度差(SPID)の合計の平均は、プラセボ(P<0.0001)よりジクロフェナク及びケトロラクが著しく良好であった。この結果は、ベースライン疼痛強度全体に一貫していた。0〜48時間から始まって、ジクロフェナクは、ケトロラクより一貫して数値的に優れていた。
0〜24、0〜48、0〜72、0〜96、及び0〜120時間について全疼痛軽減は、プラセボ(P<0.0001)よりジクロフェナク及びケトロラクが著しく良好であった。各間隔の間、ジクロフェナクは、ケトロラクより数値が優れていた。臨床的に意味のある疼痛減少は、プラセボの43%と比較してジクロフェナク及びケトロラクについてそれぞれ患者の81%及び75%だけ達成した。ジクロフェナクによって意味のある疼痛減少を有した患者の割合は、10分間、42時間、48時間、及び60時間においてケトロラクグループの割合より著しく優れていた(P≦0.05すべての比較に対して)。
鎮痛の発現は、コンパラトールよりジクロフェナクが急速であった。ベースライン疼痛強度引く予定した各評価における疼痛強度である疼痛強度差としては、プラセボと比較して著しい差があった。この差は、最初にジクロフェナク(P = 0.03)により10分で、ケトロラク(P = 0.006)により30分で生じた。双方の積極的治療について、プラセボからの統計的な分離は、120時間維持された。
図2は、最初の5日間にわたって必要とされる累積量又は救急薬(mg)を示すグラフである。合計7.5mgまで2.5mgの増加分において必要とされるように3時間毎に救急薬(IVモルヒネ)を投与した。最初の5日間にわたる全モルヒネの要求は、プラセボよりジクロフェナクが42%少なく(20.5mgに対して11.8mg)、時間間隔毎にオピオイド節約作用はプラセボと比較してジクロフェナクが少なくとも40%であった。ジクロフェナク治療患者は、一貫して、投与するプラセボ(P<0.0001)より必要としたモルヒネが著しく少なかった。治療の5日間にわたって、ジクロフェナクの患者は、また、ケトロラクの患者と比較して用いたモルヒネが著しく少なかった(18.1mgに対して11.8mg、ケトロラクに対して35%減少、P = 0.008)。
救急薬を必要とした各治療グループにおける患者の累積割合を図3に示す。治験薬の投与から救急薬の投与までの時間の中央値は、ジクロフェナクが最も大きく、220.0分の時間の中央値を有した。試験薬剤の投与からケトロラクの救急薬の投与までの時間の中央値は、137.0分であった。治験薬の投与からプラセボの救急薬の投与までの時間の中央値は、51.0分であった。救急の時間は、プラセボ(P<0.0001治療グループをプラセボと比較するログランク検定を用いた)と比較してジクロフェナクグループとケトロラクグループ双方が著しくより長かった。救急を必要とした患者のうち、半分を超える患者が、プラセボグループの6回以下と比較してジクロフェナクグループとケトロラクグループにおいて2回以下の救急を必要とした(データは示されていない)。
最初の投薬の開始時間後24時間毎に及び完了/早期終了時に患者の全体的評価を行った。治験薬を「悪い」から「すばらしく良い」までに及ぶ5段階評価をどのようにみなすかを被験者に尋ねた。結果を図4に示す。最後の評価(完了又は早期終了)で、プラセボについて患者の22.9%に対して、ジクロフェナクについて患者の70.2%及びケトロラクについて57.6%がこれらの薬剤を「とても良い」か又は「すばらしく良い」と評価した。全体として、積極的治療の平均スコアは、プラセボ(P<0.0001)より著しく高かった。ハイリスクでないグループにおいて、0〜6、0〜24、0〜48、0〜72、0〜96及び0〜120時間間隔の平均SPIDスコアは、プラセボ(P≦0.001)よりジクロフェナク37.5mgで良好であり、積極的治療間で有意差はなかった。同様に、ハイリスクグループで、すべての時間間隔のSPIDスコアは、プラセボ(P<0.05)よりジクロフェナク18.75mgで良好であった。ケトロラク15mgを投与された患者と比較して、ジクロフェナク18.75mgを投与された患者は、0〜24時間(P = 0.02)及び0〜48時間(P = 0.02)についてSPIDスコアがより良好であった。
ほとんどの患者に治験薬を3日以内に投与した。患者のうちの55%に治験薬を1日間、6%に2日間、30%に3日間投与した。短い入院を予想した本質的に全ての患者が1日だけ入院し、ほとんど全て患者に治験薬を4回投与した。155人の長い入院患者のうち、54%が9〜12回、30%が1〜8回、16%が13回以上投与された。
高体重グループにおいて、すべての時間間隔に対するSPIDスコアは、プラセボ(P<0.05)と比較してジクロフェナク50mg及びケトロラク30mg共に良好であり、積極的治療間に著しい差がなかった。
ジクロフェナクを投与された高齢者患者は、疼痛強度の30%低下によって定義されるように、ケトロラクと比較して1.3倍以上の応答割合、プラセボと比較して2.4〜3.5倍以上の応答割合を有した。SPIDスコア及び疼痛強度の30%減少によって測定される、0〜24及び0〜48時間についての鎮痛有効性は、ケトロラク(P<0.05)よりジクロフェナクで良好であり、ジクロフェナク治療患者はケトロラク又はプラセボ(P = 0.05)を投与した患者より少ない救急薬を必要とした。用いられるモルヒネ量はケトロラク治療高齢者患者に対してジクロフェナク治療高齢者患者が35.5%少なく(14.9mgに対して9.6mg)、モルヒネ使用の回数もまたジクロフェナクグループが少なかった(データは示されていない)。
ハイリスクでないグループにおいて、0〜6、0〜24、0〜48、0〜72、0〜96、及び0〜120時間間隔の平均SPIDスコアは、プラセボ(P≦0.001)よりジクロフェナク37.5mgで良好であり、積極的治療間に有意差がなかった。同様に、ハイリスクグループにおいて、すべての時間間隔のSPIDスコアは、プラセボ(P<0.05)よりジクロフェナク18.75mgで良好であった。ケトロラク15mgを投与した患者と比較して、ジクロフェナク18.75mgを投与した患者は、0〜24時間(P = 0.02)及び0〜48時間(P = 0.02)に対して良好なSPIDスコアを有した。
この治験は、痛みを伴う整形外科手術から回復する患者において単独で又はオピオイドと組み合わせて中等度から高度までの急性疼痛を管理するためにジクロフェナクの安全性と有効性を確立するものである。ジクロフェナク37.5mgを6時間毎に投与すると、プラセボより著しく優れた鎮痛が得られ且つ0〜48時間から開始してケトロラクを投与した患者より数値的に大きな鎮痛作用が得られることがわかったが、このことは統計的有意性のレベルに達しなかった。治験の間、全ての治療グループは、必要とされるように救急薬が投与され、満足な鎮痛を経験した。重要なことに、ジクロフェナク治療患者は、ケトロラクで治療した患者より35%少ないレスキューモルヒネを必要とし、差はp=0.008で臨床的に及び統計的有意であった。IVジクロフェナクによるレスキューモルヒネ投与に対する中央値時間は、220分であり、プラセボ投与の患者より4倍長く、ケトロラクを投与した患者より83分長かった。
ジクロフェナク(18.75mg)の半分量で治療した高齢者患者は、鎮痛反応より高い可能性、著しくより良好な鎮痛効力、及び少量のオピオイド要求が含まれる、半分量のケトロラク(15mg)を投与した患者と比較して優れた結果を有した。高齢者の人々はオピオイド及びNSAID誘発副作用のリスクが高いので、この知見は重要であり、これらの曝露とリスクを最小化するために各々の少量投薬量が正当化される。
周術期において、非選択的NSAIDに対するほとんどの懸念の副作用は、腎障害、血小板機能阻害、創傷及び骨の治癒、及びリスクのある個人における消化性潰瘍又は気管支痙攣である。本治験中に腎不全を発症したジクロフェナクについての患者は、一般外科手術後急性腎不全の複数のリスク要因があった: 59歳を超え、男性、肥満症、能動的鬱血性心不全、高血圧、軽度の術前慢性腎不全、及び術中の昇圧薬及び利尿薬使用。彼の腎不全の急性悪化は直ちに始まって、生理学的機能異常の修正時にベースラインの方へ戻り、彼は透析を必要としなかった。非盲検試験は、高齢、腎又は肝障害、又は日常的な抗凝固が含まれる、既知のNSAIDリスク要因を有する何百人もの患者において術後のHPβCDジクロフェナクの安全性を証明した。Chelly J et al. Presentation at the International Association for the Study of Pain 13th World Congress on Pain (2010)を参照のこと。
この治験における血液喪失は、プラセボより積極的治療でわずかに多かった。しかしながら、実質的な血液喪失がしばしば生じる股関節置換術は、ケトロラク(10%)又はプラセボグループ(10%)よりジクロフェナクグループ(13%)において頻度が高かった。従って、ジクロフェナクグループにおけるこの手術の過剰例示は、血液喪失の方へ任意の傾向を誇張することが予想される。
健常志願者における単一用量交差試験において、HPβCDジクロフェナク37.5mgは、経口ジクロフェナク、IVケトロラク、及びアセチルサリチル酸の鎮痛投与量と比較して、結果として血小板機能破壊がほとんどなかった。Bauer KA et al. J Clin Anesth. 2010; 22(7):510-518を参照のこと。双方の所見セットは、ハイリスクの血栓塞栓症を伴う股関節と膝関節形成術並びに股関節骨折手術にとって重要である。血栓予防の唯一の手段として不充分であるが、神経軸索鎮痛は過剰凝固反応を減弱する能力が認識される。米国局所麻酔学会は、NSAIDが硬膜外麻酔又は脊椎麻酔を有する患者において脊髄血腫を生じる追加のリスクを示さないようであり且つ神経軸索ブロックの性能を取り除いてはならないと結論した。
この治験において観察されるレスキューオピオイド薬の使用減少は、NSAIDによる多面的鎮痛の概念に基本的なものである。すべてのNSAID分子が同じ作用機序を有するというわけではなく、ジクロフェナクの固有の作用が整形外科手術後その効力を強化することが考えられる。いかなる理論にも縛られることなく、アデノシン三リン酸感受性カリウムチャネル及び中枢作用の刺激、例えば血漿β-エンドルフィンレベルの増加やN-メチル-D-アスパラギン酸経路の阻害が含まれる機序が考えられる。
ファーストトラックの股関節と膝関節の形成術後でさえ、ほとんどの患者は、最初の48時間の中等度から高度までの疼痛がある。多面的急性術後痛制御のためのNSAID使用について大多数の文献には、軽度から中等度で高度でない疼痛に一般に有効であるとしてNSAIDが記載されている。この治験において、ジクロフェナクは、高度の疼痛だけなく中等度の疼痛を治療するのに効果的であるという予想外の結果を示した。このことは、以前にはNSAIDと最少量のレスキューオピオイド薬によって日常的に制御可能であると考えられなかった疼痛重症度までNSAIDの臨床適応性を広げている。
ジクロフェナクは、高度の疼痛だけでなく中等度の疼痛を治療するのに効果的である予想外の結果を示した。この治験は、更に、ジクロフェナクの新規なIV製剤、充分に確認された安全プロファイルによって長く信頼されたNSAIDが大きな整形外科手術後中等度から高度までの疼痛の治療に安全且つ有効であることを証明している。更にまた、データは、モルヒネが必要に応じて加えられたデフォルト術後鎮痛剤としてHPβCDジクロフェナクが使用することができ、逆ではないことを証明している。
実施例2: 腹部又は骨盤手術後の中等度から高度までの急性疼痛の治療のためのIVジクロフェナク
331人の患者、多施設、多回投与量、複数日、無作為化、二重盲検、並行群間治験を腹部又は骨盤手術を受けた患者に行った。患者を18.75mgのジクロフェナク、37.5mgのジクロフェナク、30mgのケトロラク、又はプラセボ(1:1:1:1の比)に無作為に割り当てた。ジクロフェナク製剤は、DylojectTMであった。治験のために選ばれた患者は手術後に6時間以内に、0-100について少なくとも50mmの疼痛強度として定義される、中等度から高度までの疼痛があった。
治験薬開始後の最初の48時間にわたって疼痛強度差の平均合計は、表1に示されるように、プラセボ及びレスキューモルヒネの投与と比較して積極的治療の各々が著しく良好であった。ベースライン疼痛強度に関係なく、結果は一貫していた。低用量18.75mgHPβCDジクロフェナクグループと標準ケトロラク投与量の30mg又は37.5mgのHPβCDジクロフェナクを投与したものと間にほとんど差がなかったが、ジクロフェナク37.5mgグループがジクロフェナク18.75mgのグループより数値的に大きなSPIDを有した。
表1: 0-48時間について疼痛強度差の合計
Figure 0006320917
0〜24時間間隔について疼痛強度差の合計は、プラセボ(P<0.0001)よりHPβCDジクロフェナク37.5mg及びケトロラクが著しく良好であった。少数の患者のみ(331人のうちの15人)が48時間より長い入院を必要としたので、データはより長い時間間隔を評価するには不充分であった。平均疼痛強度差(予定の各評価においてベースライン疼痛強度引く疼痛強度)は、最初の48時間についてプラセボよりも積極的治療が一貫して良好であった。
臨床的に意味のある疼痛減少を有する患者の割合は、プラセボよりも積極的治療が多かった。治験薬開始の45分後に、ケトロラクの患者の57%、18.75mgのHPβCDジクロフェナク(プラセボに対する積極的治療についてはP = 0.02)の患者の42%、及び37.5mgの患者の46%と比較して、プラセボ及びレスキューモルヒネを投与した患者の34%は、疼痛強度の少なくとも30%減少を有した。
0〜24及び0〜48時間の時間間隔についての平均全疼痛軽減スコアは、プラセボ(P <0.0008)を投与した患者よりも積極的治療が著しく良好であった。第1の24時間の時間間隔の間、平均スコアは、プラセボ(P<0.05)よりも各積極的治療が著しく良好であり、積極的治療の中ではほとんど差がなかった。
救急薬の投与までの時間は、プラセボよりも積極的治療の各々が長かった。レスキューモルヒネ投与までの時間の中央値は、プラセボについて2時間7分、ケトロラクについて4時間15分、低用量18.75mgのHPβCDジクロフェナクについて3時間14分、及び37.5mg標準投与量のHPβCDジクロフェナクについて2時間24分であった。
治験された全ての時間間隔について、表2及び図5に示されるように、積極的治療による患者は、プラセボ対照グループと比較して必要とされるモルヒネが著しく少なく、モルヒネの投与回数が著しく少なかった。最初の24時間について、低用量18.75mgのHPβCDジクロフェナク又は30mg標準投与量のケトロラクを投与する患者は、プラセボ及びレスキューモルヒネで治療した患者と比較して、それぞれ、モルヒネ用量が39%と40%減少を経験した。37.5mg量のHPβCDジクロフェナクを投与する患者は、同じ24時間について44%減少を経験した。全体として、積極的治療についての患者は、プラセボを投与する患者のほぼ半量のモルヒネが必要とされた。
表2: 救急薬、mg、の累積量
Figure 0006320917
積極的治療グループの各々における患者の全体的評価は、0〜24時間及び0〜48時間間隔共にプラセボ(P<0.001)より著しく優れており、低用量18.75mgのHPβCDジクロフェナクを投与する患者と30mgの標準用量のケトロラク又は37.5mg用量のHPβCDジクロフェナクを投与する患者との間にほとんど差がなかった。要するに、積極的治療グループにおける患者の83%〜87%がこれらの治験薬を48時間に「良い」、「とても良い」、又は「すばらしく良い」と評価した。
全体として、85%の患者は少なくとも1つの有害事象を経験し、積極的治療グループの中でも同様の割合であった。ほとんどの事象は、重症度において軽度から中等度までであった。吐き気、腹部膨満、及び注射部位の痛み又は炎症は、積極的治療を投与する患者の間で最も共通に報告された有害事象であった。心血管血栓症のリスク増加の徴候がなかった。
この治験は、腹部又は骨盤大手術の後の中等度から高度までの急性疼痛の治療に対してHPβCDジクロフェナク18.75mgと37.5mgの安全性と有効性を証明している。この治験は、また、HPβCDで可溶化した低用量の37.5mg又は18.75mgのジクロフェナクの6時間毎の送達が標準用量の30mgのケトロラクに匹敵する標準用量の30mgのケトロラク、北アメリカにおいて一般に用いられている注射用非麻薬性鎮痛剤に匹敵する中等度から高度までの疼痛に対する鎮痛を与えることが可能なことを証明した。HPβCDジクロフェナク37.5mg及び18.75mgの投与量は、疼痛強度差の合計、全疼痛軽減、疼痛強度が少なくとも30%低下した患者の割合、レスキューモルヒネを必要とする患者の割合、及びレスキューモルヒネの平均分量によって測定されたプラセボより著しく効果的であり、30mgの標準用量のケトロラクに対して証明されたものに匹敵した。
この臨床試験において証明された治療中に発生した有害事象及び治療関連の有害事象の発生と重症度は、積極的治療対照に匹敵した。治療関連の深刻な有害事象は、いずれのジクロフェナク投与量グループにおいても報告されなかった。HPβCDジクロフェナクは、また、抗凝固剤と同時投与された場合さえ、術後出血関連の有害事象の発生増加を伴わなかった。
疼痛及び鎮痛の必要性は、典型的には、手術後の最初の数日間最も大きくて、その後急速に低下する。臨床経験を確認すると、この治験のレスキュー薬の使用は、手術後に最初の24時間が最も多かった。更にまた、積極的治療のオピオイド節約作用は、プラセボと比較して、治験したあらゆる時間間隔の少なくとも40%であった。メタアナリシスによれば、この規模のモルヒネ減少は手術後の嘔吐及び鎮静の発生において有意な減少を伴っていることからこれらの結果は重要である。
以前の実施例のように、ジクロフェナクは、高度の疼痛だけでなく中等度の疼痛を治療するのに効果的である予想外の結果を示した。この治験は、更に、NSAIDと最少量のレスキューオピオイド薬によって日常的に制御可能であると以前には考えられなかった疼痛重症度に対するNSAIDの臨床適応性を支持している。
この治験は、ジクロフェナク、充分に確認された既知の安全性プロファイルを有する充分に確立したNSAID分子が、腹部又は骨盤大手術の後にジクロフェナクナトリウム-HPβCD IV製剤の範囲内の低用量で投与した場合に中等度から高度までの急性疼痛の治療に対して高度な固有有効性及び安全性を維持することを証明している。更に、この治験は、中等度から高度までの疼痛を有する麻酔後に回復室に到着している患者に対して基礎的な鎮痛剤として用いられるこれらの低用量製剤の能力を支持している。
実施例3: 幅広い代表的な集団における術後疼痛の治療のためのIVジクロフェナク。
971人の患者の非盲検で単一群の前向き治験を、整形外科大手術、腹部/骨盤手術、又は他の手術後の急性術後痛患者の2〜3日間にわたって少量のボーラス注射のHPβCDジクロフェナクを送達することの安全を評価するために行った。整形外科大手術は、両股関節、両膝、脊柱、肩、足首、及び軟組織の手術であった。腹部/骨盤大手術は、子宮摘出、開腹、結腸切除、卵管卵巣摘出、鼠径ヘルニア、及び筋腫摘出の手術であった。971人の患者のうち、765人(登録された被験者の78.8%)の患者は、ヘパリン、低分子量ヘパリン、ワルファリン、アスピリンのような抗凝固剤を同時に併用した。1/3を超える被験者が少なくとも65歳(登録された被験者の37.8%)であった。被験者のほぼ1/3、335人の患者は、体重が少なくとも210 lb、又は95kgであった。患者集団は、術後設定に共通に見られる患者のタイプを反映した。
57人の被験者(登録された被験者の5.9%)はベースライン時に腎障害を有し、31人の被験者(登録された被験者の3.2%)はベースライン時に肝障害を有した。検査室分析としては、ベースライン値が手術後及び最初の治験薬量の前に得られた最近の値であった。スクリーニングで得られた任意の値は、ベースライン値として用いなかった。スクリーニング値がない場合には、ベースライン通院で得られた値を用いた。
ジクロフェナク投与量は、37.5mg及び50mgであった。体重が210 lb、又は95kg未満の被験者の一人を除く全員に、37.5mgのジクロフェナクの投与量を投与した。体重が少なくとも210 lb、又は95kgの被験者の大部分に50mg量を投与した。体重が少なくとも210 lb、又は95kgの14人の被験者に37.5m量を投与した。全体で、634人の患者が37.5mgのジクロフェナクを少なくとも1回投与され、335人の患者が50mgのジクロフェナクを投与された。ジクロフェナク製剤は、DylojectTMであった。
投与した971人の被験者のうち、943人(登録された被験者の89.7%)が治験を完了した。撤退した28人の被験者の中で、最も共通の理由は: 追跡不能、同意の撤回、及び治験手順に関する不遵守であった。体重210 lb、又は95kgを超える2人の被験者を、誤って18.75mgで治療したので、37.5mg又は50mgのジクロフェナク量がまとめのデータには出てこない。結果として、2つの投与量グループからの被験者の合計は969人であり、登録された全被験者の数は971人であった。
HPβCDジクロフェナクに対する全曝露は、被験者の2,359日間であった。ほとんどの被験者が3日間以下の治験治療を受けた。41人の患者(4.2%)は1日間治療し、607人の患者(62.5%)は2日間治療し、220人の患者(22.7%)は数日間治療した。37.5mgと50mgの投薬グループ間で投与の持続時間及び回数に顕著な差はなかった。
全ての統計解析は、SASTM統計ソフトウェアシステム(SAS Institute, Inc., Cary, NC)を用いて行った。連続変数については、試料サイズ、平均、標準偏差、中央値、最小及び最大によってデータをまとめた。分類別又は順序の変数については、回数計算及びパーセントとしてデータをまとめた。不能データは、分類別データのまとめにおいて別の種類として処理した。帰属方法は、安全性又は患者の全体的評価の不能データにあてはめなかった。
5ポイントPGEを完了した958人の被験者のうち、97.3%が治験薬による経験が「すばらしく良い」、「とても良い」、又は「良い」であることを示し、86.4%が「とても良い」又は「すばらしく良い」として治験薬による経験を評価した。
高齢者患者グループ、少なくとも65歳である患者については、平均年齢は、72歳であった。このグループにおいて、367人の高齢者被験者のうちの268人(73.0%)は、37.5mgのジクロフェナクの推奨された投与量が投与され、99人の高齢者被験者は少なくとも210 lbであり、50mgのジクロフェナクの調整された投与量が投与された。有害事象を報告している被験者の発生全体は、2つの投薬グループに対して同様であった。有害事象を報告している被験者の発生全体は、また、高齢者と非高齢者の患者の2つの年齢グループに対しても同様であった。年齢が65歳より下の被験者(83.8%)と比較した高齢者被験者における有害事象のわずかに高いパーセン(86.4%)は、年齢だけでなく併存疾患、術後合併症、及び外科手術の侵入の差にもよるらしい。例えば、高齢者被験者は、急性腎不全(1.6%対0.2%)及びより広範囲な外科手術に生じる体液移行を伴うらしい腎不全(0.8%対0%)の少ないがより高い発生を有した。
合計765人の被験者(78.8%)が抗凝固治療を受け、治験薬投与の最終日にヘパリン、低分子量ヘパリン、又はワルファリンを併用した602人の被験者(62.0%)が含まれた。全体の治験集団において、56人の被験者が1つ以上の治療下で発現した出血関連の有害事象を報告した。これらの事象のほとんど(85.7%)が抗凝固治療を受けた被験者に生じた。治療下で発現した出血事象の発生は、抗凝固剤治療を受けた被験者と集団全体の被験者双方の37.5mgのジクロフェナクグループと50mgのジクロフェナクグループにおいて同様であった。
スクリーニングで腎障害を有した被験者のうちの28人は、体重が少なくとも210 lbであった。このうちの23人は、50mgのジクロフェナクが投与され、5人が37.5mgのジクロフェナクが投与された。全体として、腎障害グループ(79%)の少数の被験者は、非腎障害被験者(85%)より少なくとも1つの悪影響を有した。
スクリーニングで肝障害を有した被験者のうちの8人は、体重が少なくとも210 lbであり、50mgのジクロフェナクが投与された。肝障害をもつ被験者の29人(93.5%)は、非肝障害グループにおける被験者の84.5%と比較して、少なくとも1つの治療下で発現した悪影響を経験した。
50mgのジクロフェナクを投与した大部分の被験者(95.9%)は、体重が95kg、又は209 lbを超えた。肺動脈塞栓症の発生は、治験集団全体の0.3%と比較して高体重コホート、1.4%がより高かった。他のほとんどの悪影響の発生は、残りの治験集団と比較して50mgのジクロフェナクを投与した被験者がより低いか又は同様であった。例外は、発熱(8%)、末梢浮腫(6%)、低カリウム血症(5%)、筋攣縮(4%)、無力症(3%)、及び高血糖(2%)であった。治療関連の悪影響の報告は、安全性集団全体及び高体重サブグループにおいて同様であった。
全体として、大多数の治療中に発生した悪影響は、重症度において軽度又は中等度であった。薬剤関連の心血管の悪影響は報告されなかった。2つの薬剤関連の末梢血管の悪影響が報告された。唯一の薬剤関連の心臓不整脈が報告された(血管迷走神経性失神)。被験者はカニューレの長さを過ぎて触知可能な膨潤又は発赤に気が付かず、誰も明らかな感染を生じなかった。治験退院/早期終了評価時に、大多数の被験者(95.3%)は、反応がなかった。
一般に、創傷癒合は、HPβCDジクロフェナクに影響を受けず、被験者の90%〜95%が正常か又は予想された結果より良好であった。治癒、炎症の範囲と程度、及び ドレナージの程度は、それぞれ被験者の95%、95%、及び93%が治験退院/早期終了時に「正常」又は「予想より良好」であった。全ての場合において、「遅い」か「予想されるより非常に遅い」結果は、被験者の3%以下において観察された。被験者の83%において、創傷分離がなく、被験者の96%において、局在的分離がなかった。被験者の95%において、治験退院/早期終了時に創傷部位に感染の徴候がなかった。1人の被験者(0.1%)が感染の治療のために抗生物質を全身投与された。
一般に、検査室結果の変化は、ヘマトクリット、ヘモグロビン、赤血球、及び白血球の平均値がベースラインから治験退院/早期終了まで少なくとも10%だけ減少する傾向があったことを除いてほとんど観察されなかった。ECG結果が含まれる生命徴候、及び身体検査結果は、ベースラインからの変化をほとんど示さなかった。この治験において、NSAIDに関係すると考えられる唯一の深刻な胃腸の悪影響は、上部消化管出血の一症例であった(0.1%)。慢性使用のためのNSAIDクラスラベリングによって、3〜6ヵ月間治療される患者の1%及び1年間治療される患者の約2%-4%に胃腸悪影響が挙げられる。65歳を超える被験者については、現在の全国質指標には0.3%の術後出血又は血腫の割合が含まれ、これはこの治験に見られるものより高い。
薬剤-薬剤相互作用、手術のタイプ、又は他の要素が出血関連の悪影響の発生に影響を及ぼす程度は、プラセボ対照がないため、この治験において評価され得ない。しかしながら、出血関連の悪影響の発生は、治験薬剤が投与されたかにかかわりなく、術後の予防抗凝固治療を受けている被験者の集団において予想されたものと同様か又は低かった。
この治験における術後の腎不全の観察された発生もまた、全国外科手術データセットに比較して有利である。例えば、米国外科学会 外科医療の質向上プログラムは、すべての被験者全体の1.0%の術後急性腎不全の発生を報告しており、より広範囲な手術を受けているサブグループ又は年齢が高くなるようなリスク要因においては発生がより高い。
治験集団が体液移行、易感染性血行動態バランス、及びおそらく腎機能障害のリスクがあるが、HPβCDジクロフェナクで治療した被験者は一過性腎不全の発症が低い発生を有した。HPβCDジクロフェナクは、また、腎機能の既存の障害をもつ被験者によっても充分に通用した。
この治験において治療した被験者は、HPβCDジクロフェナクの標的患者集団を代表するようである。2相3回投与、複数日無作為化対照試験の結果と一貫して、この治験は腹部/骨盤及び整形外科大手術後の中等度から高度までの急性疼痛の治療のためのHPβCDジクロフェナク注射剤の安全性を示している。体重が95kg以上の被験者に対して37.5mg、50mgの投与量において、HPβCDジクロフェナクは安全であり且つ集団全体によって及び高齢、腎又は肝障害、又は抗凝固剤の使用が含まれる、既知のNSAIDリスク要因をもつ患者によって充分に通用した。
実施例4: 高齢者患者における術後疼痛の治療のための2回投与レベルのIVジクロフェナク
無作為化、二重盲検、プラセボ対照の多施設治験が術後疼痛をもつ高齢者患者において2回投与のジクロフェナクナトリウムの効力、安全性、及びオピオイド節約効果について行われる。
患者をプラセボ、18.75mgのジクロフェナクナトリウム又は37.5mgのジクロフェナクナトリウム(1:1:1:1の比)に無作為に割り当てる。ジクロフェナク製剤は、DylojectTMである。ベースライン疼痛強度を記録し、次に割り当てられた治療のIVボーラス投与を投与する。割り当てられた投与量を6時間毎に3日間合計12回投与する。治験に選ばれた患者は、外科的手術後に中等度から高度までの疼痛をもつ65歳以上である。患者の外科的結果、機能性、及び満足感は1日2回記録される。生活の質の評価は、術後3日目に求められる。
救急薬は、IVオピオイドであり、患者によって決定されたように不充分な疼痛制御をもつ患者を可能にする。レスキューオピオイドを決定した治験担当医師は、現在の実施に従って用いる。
疼痛強度及び疼痛軽減スコアは、最初の投与量の1時間後に、次にその後は1日2回得る。疼痛強度はSPIDによって測定され、疼痛軽減はTOTPARによって測定される。誘発されたオピオイド関連の悪影響評価は1日2回行われる。自発的悪影響、生命徴候の変化及び臨床検査室所見の変更が記録される。出血指数が試験の前に及び完了時に記録される。血栓性静脈炎及び創傷治癒は、毎日調べられる。安全性追跡評価は、手術後4日目と10日目の間の患者及び手術後30-37日の患者において行われる。
実施例5: 肥満患者における肥満手術の術後疼痛の治療のためのIVジクロフェナク
無作為の二重盲検プラセボ対照多施設治験が、肥満手術から生じる術後疼痛患者において2回投与のジクロフェナクナトリウムの効力、安全性、及びオピオイド節約効果について行われる。
患者をプラセボ、50mgのジクロフェナクナトリウム又は37.5mgのジクロフェナクナトリウム(1:1:1:1の比)に無作為に割り当てる。ジクロフェナク製剤は、DylojectTMである。ベースライン疼痛強度を記録し、次に割り当てられた治療のIVボーラス投与を投与する。割り当てられた投与量を6時間毎に3日間合計12回投与する。治験に選ばれた患者は、18歳以上であり、体重が少なくとも95kg(210 lb)であり、肥満手術後に中等度から高度までの疼痛をもっている。患者の一部は、65歳を超えている。患者の外科的結果、機能性、及び満足感が1日2回記録される。生活の質の評価は、術後3日目に求められる。
救急薬は、IVオピオイドであり、患者によって決定されたように不充分な疼痛制御をもつ患者を可能にする。レスキューオピオイドを決定した治験担当医師は、現在の実施に従って用いる。
疼痛強度及び疼痛軽減スコアは、最初の投与量の1時間後に、次にその後は1日2回得る。疼痛強度はSPIDによって測定され、疼痛軽減はTOTPARによって測定される。誘発されたオピオイド関連の悪影響評価は1日2回行われる。自発的悪影響、生命徴候の変化及び臨床検査室所見の変更が記録される。出血指数が試験の前に及び完了時に記録される。血栓性静脈炎及び創傷治癒は、毎日調べられる。安全性追跡評価は、手術後4日目と10日目の間の患者及び手術後30-37日の患者において行われる。
実施例6: 術後疼痛の治療のための3回投与レベルのIVジクロフェナク
無作為の二重盲検プラセボ対照多施設治験が、整形外科大手術、腹部外科手術、又は胸部外科手術後の術後疼痛患者において3回投与のジクロフェナクナトリウムの安全性及びオピオイド節約効果について行われる。
患者をプラセボ、9.375mgのジクロフェナクナトリウム、18.75mgのジクロフェナクナトリウム又は37.5mgのジクロフェナクナトリウム(1:1:1:1の比)に無作為に割り当てる。ジクロフェナク製剤は、DylojectTMである。ベースライン疼痛強度を記録し、次に割り当てられた治療のIVボーラス投与を投与する。割り当てられた投与量を6時間毎に3日間合計12回投与する。治験に選ばれた患者は、整形外科手術、胸部外科手術又は腹部外科手術後に中等度から高度までの疼痛をもつ18歳以上である。
救急薬は、IVオピオイドであり、患者によって決定されたように不充分な疼痛制御をもつ患者を可能にする。レスキューオピオイドを決定した治験担当医師は、現在の実施に従って用いる。
疼痛強度及び疼痛軽減スコアは、最初の投与量の1時間後に、次にその後は1日2回得る。疼痛強度はSPIDによって測定され、疼痛軽減はTOTPARによって測定される。誘発されたオピオイド関連の悪影響評価は1日2回行われる。自発的悪影響、生命徴候の変化及び臨床検査室所見の変更が記録される。出血指数が試験の前に及び完了時に記録される。血栓性静脈炎及び創傷治癒は、毎日調べられる。安全性追跡評価は、手術後4日目と10日目の間の患者及び手術後30-37日の患者において行われる。
実施例7: がん患者における骨痛の治療のためのIVジクロフェナク
無作為化の二重盲検多施設治験は、中等度から高度までの骨痛をもつがん患者においてジクロフェナクナトリウムの効力、安全性、及びオピオイド節約効果について行われる。
患者は、37.5mgのジクロフェナクナトリウム又は7.5mgのモルヒネに無作為に割り当てられる。ジクロフェナク製剤は、DylojectTMである。ベースライン疼痛強度を記録し、次に割り当てられた治療のIVボーラス投与を投与する。割り当てられた投与量を6時間毎に5日間合計20回投与する。治験に選ばれた患者は、転移性骨転移に続く中等度から高度までの疼痛をもつ18歳以上である。
疼痛強度及び疼痛軽減スコアは、最初の投与量の1時間後に、次にその後は1日2回得る。疼痛強度はSPIDによって測定され、疼痛軽減はTOTPARによって測定される。誘発されたオピオイド関連の悪影響評価は1日2回行われる。自発的悪影響、生命徴候の変化及び臨床検査室所見の変更が記録される。機能性及び満足感もまた1日2回記録される。生活の質の評価は、術後5日目に求められる。患者は、毎日疼痛の質(ヒリヒリする、ズキズキする、鋭い、電撃的等)と重症度(11ポイントの数値的疼痛評価スケール)が調べられる。安全性追跡評価は、患者において行われる。
救急薬は、IVオピオイドであり、患者によって決定されたように不充分な疼痛制御をもつ患者を可能にする。レスキューオピオイドを決定した治験担当医師は、現在の実施に従って用いる。
NSAIDの悪影響のための可能性ががん患者及び免疫不全患者においてより大きいことから、癌患者のDylojectTMの安全性及び有効性を示すことは重要である。がん及び免疫不全の患者がオピオイドに対する有害反応のリスクもより大きいようであるので、回数及び時間双方によるDylojectTMのオピオイド節約効果は他の重要な要因である。
実施例8: ホスピス又は在宅治療による患者における疼痛の長期治療のためのIVジクロフェナク
無作為化の二重盲検多施設治験は、長期期間にわたるホスピス又は在宅治療の設定の患者における低用量ジクロフェナクナトリウムの効力について行われる。
患者は、6時間毎に18.75mgのジクロフェナクナトリウムと食塩水、6時間毎に18.75mgのジクロフェナクナトリウムと食塩水、又は12時間毎に18.75mgのジクロフェナクナトリウムと5mgのモルヒネに無作為に割り当てられる。ジクロフェナク製剤は、DylojectTMである。ベースライン疼痛強度を記録し、次に割り当てられた治療のIVボーラス投与を投与する。割り当てられた投与量を6時間又は12時間毎に30日間まで投与する。治験に選ばれた患者は、ホスピス又は在宅治療の設定における18歳以上である。
救急薬は、IVオピオイドであり、患者によって決定されたように不充分な疼痛制御をもつ患者を可能にする。レスキューオピオイドを決定した治験担当医師は、現在の実施に従って用いる。
疼痛強度及び疼痛軽減スコアは、最初の投与量の1時間後に、次にその後は1日2回得る。疼痛強度はSPIDによって測定され、疼痛軽減はTOTPARによって測定される。患者は、毎日疼痛の質(ヒリヒリする、ズキズキする、鋭い、電撃的等)と重症度(11ポイントの数値的疼痛評価スケール)が調べられる。誘発されたオピオイド関連の悪影響評価は最初の5日間が1日2回、次にその後1週間に2回行われる。安全性追跡評価は、患者において行われる。生活の質の評価は、治療の15日目と30日目に求められる。
実施例9: ジクロフェナクナトリウム-HPβCD複合体のHPβCDの薬物動態作用の分析
I. 方法
非経口薬におけるシクロデキストリン、例えばHPβCDの役割は、主に、包接錯体形成による又は非包接錯体やナノ粒子の形成のような別の機序による水に難溶性の親油性薬剤の可溶化である。HPβCDは、薬剤の輸送特性を改善するのでその効率を促進するある種の容器を表わしている。静注後、薬剤分子は、2つの競合過程: シクロデキストリン分子との相互作用と血漿成分との相互作用に供され、後者は主にHSAである。HPβCDとHSAに対する薬剤親和性間のバランスによっては、シクロデキストリン薬剤不活性化及び他の有害反応につながり得る同時投与薬の薬物動態の劇的な変化を生じ得る仮定的リスクが存在する。薬剤/シクロデキストリン相互作用が強いほど及び薬剤/血漿成分相互作用が弱いほど、治療不全又は安全性リスク増加がおそらく現れない。更に、薬剤/シクロデキストリン錯体安定定数、K1:1が希釈度反作用に抵抗するのに充分高い場合、薬剤は血漿成分との相互作用に利用できない。
薬剤の薬物動態に対する好適でないシクロデキストリン影響の可能性を予測するために、比較的簡単な理論モデルが提唱されている。2種類の平衡状態が静脈内(IV)注射を意図した薬剤/シクロデキストリン溶液に適用できることは提唱をベースとしている。第1の平衡は、非経口注射の前に水中で起こり、下記の式によって確認され得る:
純水:
Figure 0006320917
式中、K1:1は、水性製剤中の薬剤/HPβCD 1:1錯体の安定定数であり、[D]は、遊離薬剤の濃度であり、[CD]は、遊離のHPβCDの濃度であり、[D/CD]は、薬剤/HPβCD錯体の濃度であり、fCDは、水溶液においてHPβCDに結合した画分である。
溶液が血液系に注入されるとすぐに、他の競合的平衡過程、すなわち薬剤/血漿タンパク相互作用が起こる:
血漿:
Figure 0006320917
式中、KPは、薬剤/血漿タンパク1:1複合体の安定定数である。この場合、結合した画分は、以下の通りである:
Figure 0006320917
式中fPは、血漿タンパクに結合した画分であり、[P]は、遊離血漿タンパクの濃度であり、fCD血漿は、血漿においてHPβCDに結合される割合であり、[D/P]は、薬剤/血漿タンパク複合体の濃度である。
次の仮説をした。第1に、シクロデキストリン/血漿成分相互作用を薬剤の薬物動態に関して意味をなさないとして無視する。このことは、非常に親水性のHPβCDが無視し得る血漿タンパク結合を示すことが示されている文献データに基づいたものである(Sideris et al.、Pharm Res 1994;11:90-5)。第2に、考慮される唯一の血漿成分はHSAであり、これは血漿タンパクの主成分である。他の成分、例えばグロブリンやコレステロールはヒト血漿中に存在するが、薬剤結合作用に対するこれらの貢献はHSAに比較して無視し得ると考えられる。更にまた、このような成分の存在は、HPβCDの作用を強化よりはむしろ低下させるにちがいない。
DylojectTMの投与の後の最高HPβCD血漿濃度は、正常な健常被験者において70μg/ml及び中等度の腎障害をもつ被験者において106μg/mlであると定量された。下記の算出において、HPβCDの血漿濃度は、106μg/ml(0.106g/リットル又は7.57×10-5Mに対応する)であるとみなされる。血漿中のHSA濃度は、5×10-4と7.5×10-4Mの間にある。平均血漿HSA濃度は、6×10-4Mであるとみなした。
薬剤/HPβCD複合体のK1:1値は、利用できる文献から抜き出した。所定の薬剤/HPβCD複合体のK1:1値が1つを超える供給源から入手可能であった場合、供給源の科学的質及び血漿中のものに最も近い実験条件(温度、媒体の組成物等)の使用に基づいて、最も信頼性が高い値を用いた。
II. 結果
約200の異なる薬剤のデータを探索し、64が算出を可能にする充分な情報を有した。表3に示されるように 、試験した薬剤のK1:1値は、2 M-1(フェノフィブレート)から40,000 M-1(テルミサルタン)までの範囲にあった。血漿タンパク結合は約20%から99%を超える範囲にあったが、68%が≧90%の結合タンパクであり、40%を超えるものが≧97%の結合タンパクであった。そのK1:1値が40,000 M-1のテルミサルタンでさえ、2.9%しか血漿中でHPβCDと結合しない。このわずかな程度の結合がテルミサルタンの遊離画分又は(血漿タンパクへの)結合画分に対して最小限の影響を有するので、HPβCDは薬剤の薬物動態にほとんど影響を及ぼさない。試験した63の薬剤はいずれも、これらの薬物動態を充分に変化させるのに血漿タンパク結合に影響を及ぼす充分に高いK1:1値を有しない。すべての場合において、10%未満の薬剤が血漿においてHPβCDに結合した。まとめると、全ての場合において、HPβCDは、106μg/mlの血漿ピークHPβCD濃度において血漿中の遊離及びタンパク結合薬剤の濃度の10%未満の減少を生じる。
表3の算出は、HPβCDとHSAの間の競合的結合に基づいている。上記したように、他の血漿タンパク質の貢献は、コレステロールのような追加の循環化合物へのHPβCD結合であるので無視される。しかしながら、HPβCDに対して薬剤と競合し得る血漿中の他の化合物の作用は、表3に示したfCD血漿値となり得るだけである。従って、血漿におけるHPβCDへの画分結合の表3の計算値(fCD血漿)は最大値であり、実測値はより低いと思われる。表3は、106μg/ml(0.106g/リットル又は7.57×10-5Mに対応する)のHPβCD濃度で純水中(fCD純水)及び血漿中(fCD血漿)でシクロデキストリンに結合したジクロフェナクナトリウム薬剤画分の算出を示すものである。
表3: シクロデキストリンに結合したジクロフェナクナトリウム画分の算出
Figure 0006320917

Figure 0006320917
aVD - 分布容積
bMW - 分子量
cCmax - 薬剤の薬物動態及び通常の薬剤量の投与に基づく血漿中の最高薬剤濃度
dK1:1 - 1:1の包接錯体の安定定数(上付き文字の符号)
efCD純水 - 純水においてシクロデキストリンに結合した薬剤画分
fタンパク質結合 - タンパク質に結合した薬剤画分(fP)
gfCD血漿 - 血漿においてシクロデキストリンに結合した薬剤画分
h 未発表データに基づく
i 米国特許第6,933,289号
結果は、手術時に共通して同時投与された63の薬剤のいずれもDylojectTMと同時に投与された場合に10%と同じ程度に変化した血漿タンパク質結合がなかったことを示した。それ故、投薬調整がDylojectTMと同時に投与された広範囲の手術中の薬剤に必要とされるようには見えなかった。
他の血漿タンパク質の貢献及びコレステロールのような他の血漿化合物のHPβCD結合の貢献は、この算出において無視される。血漿において、HPβCDに対して薬剤と競合し得る他の化合物は、表3に示したfCD血漿値となる。従って、血漿においてHPβCDに結合した画分の表3における計算値(fCD血漿)は、最大値である。ジクロフェナクナトリウムのいずれも血漿においてHPβCDに結合しなかったので、HPβCDは遊離ジクロフェナクナトリウムの濃度の減少及び106μg/mlの血漿ピークHPβCD濃度での血漿においてタンパク質結合ジクロフェナクナトリウムを生じない。ジクロフェナクナトリウムの安定定数は、116 M-1である。この低い結合量は、結合した血漿タンパク質であるジクロフェナクナトリウム画分又は血漿において結合しない薬剤の画分に対する影響が無視できる。従って、HPβCDは実質的に薬剤の薬物動態に影響しない。
表3に下記の引用文献が示されている。 1 Choudhury et al., Pharm Res 1993;10:156-9. 2 Aicart et al., J Incl Phenom Macroc Chem 2003;47:161-5. 3 Al Omari et al., Drug Dev Ind Pharm 2007;33:1205-15. 4 Vozone et al., J Incl Phenom Macroc Chem 2003 (Volume Date 2002);44:111-5. 5 Moraes et al., Int J Pharm 2007;331:99-106. 6 Loftsson et al., Int J Pharm. 2005;302:18-28. 7 Bhutani et al., J Sci Ind Res 2007;66830-4. 8 Aleem et al., J Pharm Biomed Anal 2008;47:535-40. 9 WO/2008/110080;pp28. 10 Chowdary et al., AAPS Pharm Sci Tech 2006;7:79. 11 Loftsson et al., Pharmazie 1994;49:292-3. 12 Hirayama et al., Eur J Pharm Sci 1997;5:23-30. 13 Loftsson et al., Acta Pharm Nord 1989;1:185-94. 14 Soica et al., Revista de Chimie (Bucharest, Romania) 2007;58:606-11. 15 Malaekeh-Nikouei et al., J Incl Phenom Macroc Chem 2007;59:245-50. 16 Piel et al., Int J Pharm 2006;312:75-82. 17 Misiuk et al., Anal Lett 2008;41:543-60. 18 Loftsson et al., J Incl Phenom Macroc Chem 2007;57:545-52. 19 Le Corre et al., Int J Pharm 1998;169:221-8. 20 Morin et al., J Liq Chrom Rel Tech 2000;23:727-39. 21 Loftsson et al., J Pharm Sci 2002;91:2307-16. 22 Cappello et al., Drug Dev Ind Pharm 2009;35:877-86. 23 Patel et al., J Incl Phenom Macroc Chem 2008;60:241-51. 24 Palmieri et al., S.T.P. Pharma Sci 1997;7:174-81. 25 Holvoet et al., Int J Pharm 2003;265:13-26. 26 Maitre et al., Drug Dev Ind Pharm 2007;33:311-26. 27 Vlachou et al., J Biomater Appl 2003;17:197-206. 28 Ammar et al., Int J Pharm 2006;309:129-38. 29 Zhang et al., Guangpuxue Yu Guangpu Fenxi 2008;28:711-4. 30 Loukas et al., J Pharm Biomed Anal 1997;16:263-8. 31 Mura et al., Int J Pharm 1998;166:189-203. 32 Masson et al., Int J Pharm 1998;164:45-55. 33 Loftsson et al., Int J Pharm 1993;98:225-30. 34 Baboota et al., J Incl Phenom Macroc Chem 2005;51:219-24. 35 Valero et al., J Incl Phenom Macroc Chem 1999;35:663-77. 36 Mura P et al., Int J Pharm 2003;260(2):293-302. 37 Fernandes et al., Eur J Pharm Sci 2002; 15:79-88. 38 Loftsson et al., Int J Pharm 2005;302:18-28. 39 Cho et al., Int J Pharm 2008;349:101-7. 40 Maestrelli et al., J Incl Phenom Macroc Chem 2009;63:17-25. 41 WO/2003/059393;pp16. 42 Larsen et al., J Pharm Sci 2005;94:507-15. 43 Loftsson et al., Int J Pharm 2005;302:18-28. 44 Chen et al., Sepu 2004;22:595-600. 45 Al Omari et al., J Pharm Biomed Anal 2006;41:857-65. 46 Badr-Eldin et al., Eur J Pharm Biopharm 2008;70:819-27. 47 Shewale et al., Int J Chem Sci 2008;6:1449-54. 48 Zia et al., Pharm Res 2001;18:667-73. 49 Trapani et al., J Pharm Sci 2000;89:1443-51.
実施例10: 腹部又は骨盤手術後の中等度から高度までの急性疼痛対して静脈内ケトロラク又はプラセボと比較した新規な注射用ジクロフェナク製剤:
実施例2を、更に、下記のように展開させた。
I. 方法
1. 患者
16の米国施設において、18-65歳の成人が2週間以内に腹部又は骨盤の手術を受ける予定である場合にスクリーニングした。鍵となる包含基準は、手術後6時間以内の0-100mm視覚的評価スケール(VAS)について強度≧50 mmと定義される中等度から高度までの術後痛及び体重>50kgであった。除外基準は、術前、手術時、及び術後の期間にあてはめた。鍵となる術前除外基準は、慢性疾患又は重篤な喘息の病歴、スクリーニング時に最近の(≦6ヵ月)心血管系イベント又は臨床的に重要な異常心電図(ECG)、アスピリンの使用(抗血小板心筋保護のために<325mg/日を除く)、オピオイド、他のNSAID、他の一般の鎮痛薬、多量及び少量のトランキライザー又は治験薬剤開始≦24時間前の抗ヒスタミン薬(手術中に投与された場合を除く)、ベースラインの≦2週間前のモノアミンオキシダーゼ阻害剤、トリプトファン、カルバマゼピン又はバルプロ酸塩の使用、任意の臨床的に重要な検査室異常、及び以前の又は現在の消化性潰瘍、胃腸(GI)の出血、又は任意の出血性素因であった。更に、長時間作用性NSAID又はCOX-2阻害剤が手術の3日前に中止された。また、ジクロフェナク、NSAID、モルヒネ、麻酔薬、又は治験製剤の任意の賦形剤に対する既知のアレルギー、治験薬剤の投与前3ヵ月以内の他の試験中の任意の薬剤のレセプト、既知であるか又は疑わしいアルコール又は薬物乱用、及び2晩臨床研究センターに入院するか又は安全性経過観察入院の5-9日以内に退院することが不本意な場合には被験者を除外した。手術の24時間以内の妊娠テストが陽性の女性被験者又はスクリーニング時に授乳中の被検者も除外した。手術中の除外基準は、手術の間の肋骨弓下切開及びNSAID又はアセトアミノフェンの併用(他の手術中の薬剤は制限しなかった)であった。術後ベースラインECGが異常の被験者は、治験参加から除外した。更に、自己調節鎮痛法(PCA)は、治験薬剤投薬前又は治験薬剤投薬中は許可されなかった。亜酸化窒素及び非常に短時間作用性のバルビツール剤又はベンゾジアゼピンは可能であったが、疼痛強度評価に対する残留効果を回避するために、治験薬剤投与の前に≧1.5時間のウオッシュアウト時間があった。不充分なウオッシュアウト時間(<1.5時間)が予定の治験薬剤投薬に先行する場合には、患者は治験に登録されず、治験薬剤を投与されなかった。術後の局所麻酔は許容されなかった。
2. 治験設計
これは、多施設、多回投与、複数日、無作為化、二重盲検、アクティブ対照、プラセボ対照、平行群間3相治験であった。手術を完了する6時間以内に、VAS疼痛スコア≧50 mmを報告し且つ他の全ての適格要求を満たした患者は、4つの治療グループ(1:1:1:1の比): HPβCDジクロフェナク、18.75mg又は37.5mg; ケトロラクトロメタミン30mg; 又はプラセボの1つに無作為割り当てた。コンピューター処理乱数コードに従って割り当て、臨床スタッフ及び患者は治験薬割り当てがわからなかった。治験薬(1mLのIVボーラス)の最初の投与量は、この最初の6時間以内に全ての治療群の患者によって投与された(表4)。
表4. ベースラインの人口統計及び臨床所見a
Figure 0006320917

Figure 0006320917
a 治験センター当たりの患者の数は、1-80人に及ぶ、10センターの被験者は1-20人であり、4センターの被験者は21-40人であり、2センターの被験者は>40人である。
b 合計(n開腹手術(合計の%)、n腹腔鏡手術(合計の%)); 一部の患者については、開腹と腹腔鏡が指定されなかったことに留意
c VAS = 視覚的評価スケール(0-100 mm)。
d 4人の無作為化被験者は、ベースライン疼痛強度値がなく、この評価において含まれなかった
治験薬の初回の投与は時間0とし、次の全ての投薬及び評価時点は最初の治験薬投与の時間に関連した。次の注射は、退院まで又は有害事象(AE)、不充分な疼痛対照、治験プロトコールの服薬不履行、又は治験担当医師の裁量時による治験からの患者撤退/中止まで6時間毎に投与した。早くに退院されない限りベースライン(治験薬開始)から少なくとも48時間、及び5日間まで患者を観察した。
救急薬(ボーラスIVモルヒネ5mg、鎮痛が不充分である場合には30分後に7.5mgまで増量した)は、治験薬の初回を投与した後いつでも3時間毎に1回まで患者の要求時に利用できたが、患者は治験薬注射後少なくとも1時間待つことを勧められた。患者が救急薬を否定せず、充分な鎮痛がモルヒネで達成されなかった場合には、患者は治験から撤退し、治験担当医師の通常の実施に従って疼痛薬を投与された。
3. 結果判定法及び評価
疼痛強度を安静時に評価し、0-100mmのVASについて初回の治験薬後の48時間にわたって指定された時点に(5、10、15、30、45分、及び1、2、3、5、6、9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、及び48時間; 図6に示されているスケジュールを参照のこと)被験者が記録した(0 =「疼痛がない」; 100 =「考えられる最悪の疼痛」)。図6は、スクリーニング及びベースライン認定診断基準を満たした際に、患者が2-5日間治験薬を投与されたことを示す図である。鍵となる有効性評価及び安全性評価時点が示されている。より長く入院している患者は、退院まで6時間毎に評価される疼痛があった。一次的有効性基準は、初回の治験薬後0-48時間の時間間隔にわたるSPID(mm・時間)であった。評価は、患者によって報告され、標準化ツールを用いて記録された。疼痛強度差(PID)は、記録された疼痛強度をベースライン疼痛強度から減算することによって各時点で算出した。SPIDは、PIDスコアの曲線下面積として算出した。二次的有効性基準は、以下の通りであった:
・0-24時間にわたるSPID
・全疼痛軽減(0-24及び0-48時間間隔(データを入れることができる場合には、0-72-96及び0-120時間も)の疼痛軽減曲線下の面積領域; 疼痛軽減は、疼痛強度が記録された(ベースラインを除く)同じ時点で、0-100mmVAS(0 =「軽減しない」; 100 =「完全な疼痛軽減」)を用いて記録した
・疼痛強度の臨床的に意味のある(≧30%)低下を有する患者の割合(ベースラインに対する、0-100mmVASを用いた)
・各予定評価時のPID
・治験薬の投与から救急薬の投与までの時間
・救急薬の回数及び分量
・5ポイントの分類別スケール(「すばらしく良い」、「とても良い」、「良い」、「まずまず」、「悪い」)で24及び48時間の治験薬の患者の報告による全体的評価。
患者は、ベースラインの5-9日後に安全性経過観察のために退院し、ベースライン後30日間経過観察の電話を受けた。安全性評価には、身体所見、臨床検査、生命徴候、12-誘導ECG、及び6-ポイントスケール(表5及び図6)を用いた治験薬注射の部位の血栓性静脈炎の評価が含まれた。AEを治験全体にわたって記録した。
表5.注射部位血栓性静脈炎スケール
Figure 0006320917
統計解析
治験試料サイズは、治療グループ当たりの包括解析(ITT)集団の80人の患者が48時間にわたるプラセボグループとジクロフェナクグループの間の540mm・時間の疼痛強度の差を検出する80%検出力を与える算出をベースにした。この算出は、Christensen et al., Anesth Prog (2011);58:73-81から予測された1,200mm・時間の推定標準偏差をベースにした。
有効性の分析は、統計解析ソフトウェア(登録商標)を用いて行われ、特に明記しない限り包括解析集団を意味する。SPID効力基準及び疼痛軽減スコアは、台形法則を用いて算出した。SPID算出については、救急薬の投与の後又はAE又は有効性の欠如のために撤退後の評価は、事前に設定された規定に帰属した。救急薬が必要とされる場合には、疼痛強度及び軽減評価を救急鎮痛剤投与の前に得た。救急薬が次の予定の評価の3時間以内に投与される場合には、前の6時間にわたる最悪の評価を繰越した。これをするのに必要な評価が利用できない場合には、評価はベースラインスコアに帰属させた。AE又は有効性の欠如のために中止する患者については、ベースラインスコアを繰越した。同じ規定を疼痛軽減評価にあてはめた。
PID、救急薬量、及び患者の全体的評価を、因子として治療とセンター及び共変量としてベースライン疼痛強度による共分散分析モデルを用いて分析した。積極的治療とプラセボの差は、線形対比で試験した。一次的有効性基準に関する比較を以下の通りに行った: ジクロフェナク37.5mgと0.05の有意水準のプラセボ; 結果が有意である場合には、ジクロフェナク18.75mgを0.05の有意水準のプラセボに対して試験した。ケトロラクを治験薬対照試験として使って、分析感度を確認した。ジクロフェナクグループとケトロラクグループの間の比較は、積極的治療の間で有意差を識別する治験が推進されなかったので行われなかった。
ベースラインから≧30%低下を報告している患者の割合は、層化変数としてセンターによるコックス-マンテル-ヘンツェル試験で分析した。疼痛強度の意味のある(≧30%)低下までの時間及び救急薬の投与までの時間は、カプラン・マイヤー生存分析法によって分析した。記述統計をAE、臨床検査結果、生命徴候、血栓性静脈炎、及びECG結果のために用いた。ロジスティック回帰を用いて、心血管イベントの相対リスクを推定した。
II. 結果
全体で、348人の患者を手術後の治療群に割り当て(治療グループ当たり≧85人の被験者)、331人に≧1回の治験薬を投与した(図7を参照のこと)。図7は、治験グループにおける患者の分布及び治験撤退の理由を示す図である。上で示したように、無作為化されたが治験薬を受けなかった17人の被験者の除外の主な理由は適格基準を満たさなかったことであった(12/17の被験者(70.6%))。これらの12人の被験者のVASスケールについての不充分な疼痛は、除外の主な理由であった(9/12(75%))。≧1回の治療を受けた全331人の患者は、ITT集団に含まれ、人口統計、有効性、及び安全性について評価した。治療グループ間のITT集団の分布は、以下の通りであった: プラセボ、n=76; ジクロフェナク18.75mg、n=86; ジクロフェナク37.5mg、n=87; ケトロラク、n=82。大多数の患者(80.1%、n=265)は、治験を終了した。治療グループ全体に投与された回数の中央値は、8であった(範囲、1-13)。49人の患者(14.8%)に治験薬を1日間、267人(80.6%)に2日間、15人(4.5%)に≧3日間投与した。
ほとんどの患者は、女性(81%)で白人であった(77%;表4)。各治療グループの平均年齢は43歳であり、平均被験者の体重は84kgであった。任意ベースライン特性について治療グループ全体にほとんど差がなかった(全てp>0.05)。総計平均ベースライン疼痛強度は、中等度から高度の範囲内で、68.4mmであった。ベースラインにおいて、患者の60%は中等度の疼痛(50<VAS<70)であり、40%は高度の疼痛(VAS>70)であった。ベースラインの疼痛強度は、治療グループの中でほとんど差がなかった。
1. 有効性
1.1. 一次的有効性基準
治験薬開始後の最初の48時間にわたって、平均SPIDは、HPβCDジクロフェナク(18.75mg、p = 0.032; 37.5mg、p = 0.0001)、及びケトロラク(p<0.0001)双方の投与がプラセボより著しくより大きかった(図8を参照のこと)。図8は、0-24時間及び0-48時間からの疼痛強度差(SPID)の合計を示す図である。視覚的評価スケール(VAS)疼痛強度は、ベースライン及び最初の薬剤投与に続いて48時間の指定された間隔で評価した。疼痛強度差は、ベースライン疼痛強度引く予定された各評価時の疼痛強度として算出された(より大きな数字がより大きな疼痛軽減を示す)。SPIDは、プラセボ、ケトロラク30mg、ジクロフェナク18.75mg、及びジクロフェナク37.5mgに対する0-24及び0-48時間の時間を示した(誤差バーは、標準誤差(SE)を示す)。有意差が、積極的治療の間のSPIDにほとんど差がなかった。*p<0.05、**p≦0.0001対プラセボ。ベースライン疼痛強度に関係なく、これらの結果は一貫していた。3つの積極的治療グループ間の有効性に統計的差がほとんどなかった。
1.2. 二次的有効性基準
0-48時間間隔と同様に、0-24時間間隔にわたるSPIDは、HPβCDジクロフェナク量(18.75mg、p = 0.015; 37.5mg、p<0.0001)及びケトロラク(p<0.0001)(図8)がプラセボより著しくより大きかった。0-72時間については、18.75mgのジクロフェナクはプラセボ(p = 0.08)より著しく大きなSPIDを生じなかったが、37.5mgのジクロフェナク(p=0.0010)及びケトロラク(p=0.0018)はSPIDを大幅に向上させた。平均PIDは、6時間及び30時間の評価を除いて、最初の45時間にわたってプラセボより積極的治療が一貫して大きかった。
意味のある疼痛軽減の基準(≧30%低減)は、術後設定において急性疼痛に意味があるように依然に報告した閾値をベースとした。最初の6時間の投薬の間に、プラセボを投与した患者の55.3%(n=42)が疼痛強度の≧30%低下を有し、ケトロラクにより患者の76.8%(n=63)、18.75mgのHPβCDジクロフェナクにより患者の64.3%(n=54)、及び37.5mgのHPβCDジクロフェナクにより患者の69.8%(n=60)が≧30%低下を報告した。最初の治験薬薬投与後6時間以内にこの低下を報告した被験者の中で≧30%疼痛強度低下までの平均時間は、全ての治療グループ全体で急速であった(変更ITT集団に対して27-33分)。≧30%の疼痛強度低下までの時間の中央値は、積極的治療グループのいずれもとプラセボ(全てp>0.05)の間で違いがなかった。
全疼痛軽減は、0-24及び0-48時間の時間間隔にわたってプラセボより積極的的治療で著しく大きかった(それぞれ、p = 0.0002及び0.0008)。18.75mg及び37.5mgのジクロフェナクの使用により、30mgのケトロラク(0-24時間間隔のp<0.0001及び0-48時間の間隔のついてはp = 0.0001)の使用のように、プラセボ(18.75mg: 0-24時間の間隔についてはp=0.037及び0-48時間の間隔については0.038; 37.5mg: 0-24及び0-48時間の間隔についてはp = 0.0018)より著しく大きな平均全疼痛軽減が得られた。積極的治療の間に差はほとんどなかった。
ITT集団においてレスキューモルヒネ投与までの時間の中央値は、プラセボについては2:07(時間:分)(95% CI: 1:15-2:40)であったが、18.75mgのジクロフェナク(3:14、95% CI: 2:10-5:05; p = 0.014対プラセボ)及びケトロラク(4:15、95% CI: 3:05 - 評価できない; p = 0.0007対プラセボ)では著しく長かった。レスキューモルヒネ投与までの時間は、37.5mgのジクロフェナクについてのプラセボに対して統計的有意性を満たさなかった。(2:24、95% CI: 1:50-4:23; p = 0.0574)。
レスキューオピオイド投与の量及び回数: 積極的治療はレスキューモルヒネ投与の回数を減少させ、治験した全ての時間間隔については、積極的治療についての患者はプラセボグループと比較して著しくより少ないモルヒネを必要とした(図9を参照のこと)。図9は、投与したレスキューモルヒネの平均量を示すグラフである。救急薬(静脈内モルヒネ)は、初回量の治験薬後いつでも利用できた。しかしながら、被験者は、初回治験薬後少なくとも1時間待つことを勧められた。術後日につき投与した平均レスキューモルヒネは、1日(0-24時間)、2日(24-48時間)、及び3日(48-72時間)について示されている。術後(0-72時間)投与された全蓄積量は、プラセボについては15.9mg、ケトロラク(30mg)については8.5mg、18.75mg投与量のジクロフェナクについては8.8mg、及び37.5mg投与量のジクロフェナクについては7.4mgであった。**p≦0.0001、0-24、0-48、及び0-72時間間隔のプラセボに対して。0-24時間間隔については、18.75mgのジクロフェナク、37.5mgのジクロフェナク、又は30mgのケトロラクを投与した患者は、プラセボ(全てp≦0.0001)で治療した患者と比較して、それぞれ、レスキューモルヒネ用量の39%、44%、及び40%減少を経験した。全ての積極的治療により、同様に(全てp≦0.0001)、0-48及び0-72時間間隔にわたってモルヒネ用量の著しい減少がもたらされた。
積極的治療グループの各々における患者の全体的評価は、24及び48時間双方でプラセボ(p<0.001)より著しく優れ、積極的治療グループ間にほとんど差がなかった。全体として、積極的治療グループの患者の83%-87%はこれらの治験薬剤を48時間において「良い」、「とても良い」、「すばらしく良い」として評価した。
2. 安全性
全体として、患者の84.6%(280/331)が≧1のAEを経験した。ほとんどのイベントは、重症度において軽度から中等度であった。吐き気、鼓腸、及び注射部位の痛み/炎症は、積極的治療を受けた患者の中で最も共通に報告されたAEであった(表6)。中等度から高度の疼痛は術後の悪心嘔吐のリスク要因であることを示し、17人はいずれもプラセボグループにおいて最も共通に報告された(表6)。
表6. 有害事象のまとめ
Figure 0006320917
少なくとも1つのAEを経験した全治験集団全体で67人の患者(20.2%)が治験担当医師によって治療に関連したとみなされた。治療関連のAEの発生は、ケトロラク30mgグループの23.2%(19/82)、ジクロフェナク18.75mgグループの19.8%(17/86)、プラセボグループの19.7%(15/76)、及びジクロフェナク37.5mgグループの18.4%(16/87)であった)。1つの深刻なAE(SAE、腹部血腫)は、ケトロラクグループで起こり、おそらく治療に関連したとみなされた。治験からの撤退を促した9人のAEのうち、1人(中等度の末梢浮腫、ジクロフェナク18.75mgグループにおける)は、治療に関連した疑いがあった。死亡はなかった。
心血管AEの発生は、全体で5.4%(18/331)、プラセボグループの9.2%(7/76)、ケトロラクグループの6.1%(5/82)、ジクロフェナク37.5mgグループの4.6%(4/87)、及びジクロフェナク18.75mgのグループの2.3%(2/86)であった。心血管AEは、治療に関連したとみなされなかった。ECGの第三者盲検解析は、臨床的に意味のある所見を明らかにしなかった。注射部位の痛み/炎症は、プラセボより積極的治療グループにおいて共通した(表6)。肝酵素の軽度から中等度の境界域の上昇は、全ての4グループ全体で患者の2%-5%について報告された。肝又は腎関連のAE又は急性肝又は腎障害は報告されなかった。
出血が関連したAEの発生は、プラセボグループにおいて6.6%(5/76)、ケトロラクグループにおいて6.1%(5/82)、ジクロフェナク37.5mgグループにおいて5.7%(5/87)、及びジクロフェナク18.75mgグループにおいて2.3%(2/86)であった(表7)。任意の治療グループにおけるベースラインと経過観察の間に ヘモグロビン又は血小板の減少はなかった。抗凝固剤又は抗凝血性を有する薬剤を投与した被験者の中で、事後分析は、ジクロフェナクのいずれかの投与量を投与した4/105(3.8%)の被験者が≧1の出血に関連したAEを報告し、ケトロラク及びプラセボグループからの3/49(6.1%)及び4/47(8.5%)がそれぞれ出血に関連したAEを有することを明らかにした。
表7. 出血及び創傷治癒に関連した有害事象
Figure 0006320917
a 有害事象
この治験の結果は、急性術後痛の治療のための多回投与注射用HPβCDジクロフェナクの鎮痛効力を確立し、2つの無作為二重盲検試験からの確認及び拡張データが第3大臼歯抜歯後の単回HPβCDジクロフェナクの有効性を確立している(Leeson et al., Reg Anesth Pain Med (2007);32:303-10; Christensen et al., Anesth Prog (2011);58:73-81)。Leeson et al.は、HPβCDジクロフェナク75mg及び最初の75mgジクロフェナク注射用製剤が4時間にわたる全疼痛軽減の主要評価項目に関してプラセボより優れて、同様のAEプロファイルを示すことを見出した。第2の治験、中等度から高度のベースラインVAS評価疼痛強度を有する場合にのみ患者が適格である14人において、HPβCDジクロフェナクは、試験した5回のうちの4回の6時間にわたって全疼痛軽減についてプラセボより優れていた(75、37.5、18.75及び9.4mg)。更に、37.5mg及び75mgのHPβCDジクロフェナク量は疼痛軽減(5分)の最も初期の評価でプラセボより優れていたが、30mg標準量のケトロラクは優れていなかった。
プロピレングリコール及びベンジルアルコールを含有する注射用ジクロフェナク製剤、それ故術後痛の予防又は治療のためのに米国外で利用可能な形態は、30-120分間にわたる遅い注入を必要とする。この治験は、負荷量を含まないHPβCDジクロフェナクの少量のIVボーラス送達が腹部又は骨盤手術後の中等度から高度の急性疼痛の治療に有効なことを証明する。6時間毎の18.75mg又は37.5mg用量の送達は、プラセボより著しい鎮痛効力を示した。鎮痛効力は、30mgのケトロラクの標準量を投与した被験者においても著しかった。3つの活性薬剤全てが、疼痛強度差の合計、全疼痛軽減、及びレスキューモルヒネの平均分量によって測定されるようにプラセボよりも著しく効果的であった。治療に関連したSAEはいずれのジクロフェナク量グループにおいても報告されず、ケトロラクグループにおいて報告された1つのSAE(腹部血腫)は治療に関連したことの疑いがあった。ジクロフェナクもケトロラクも、出血に関連したAEの発生増加と関係していなかった。
臨床経験を確認すると、この治験における救急薬の使用は、術後最初の24時間に最も多かった。積極的治療のオピオイド節約作用は、プラセボと比較して、治験した全ての時間間隔の間で≧40%であり、この大きさのモルヒネ減少が術後の嘔吐と鎮静の発生を減少させるというメタアナリシスが明らかにしている鍵となる所見が示された。著しいオピオイド節約作用は、整形外科手術を受けた102人の患者においてIVジクロフェナク75mgの単回量をIVケトロラク60mg及びプラセボと比較した治験における注射用ジクロフェナクによって以前に述べた(Alexander et al., J Clin Anesth (2002);14:187-92)。NSAIDは、24時間にわたって29%までプラセボに対してモルヒネ要求を減少させ、術後の吐き気、嘔吐、及びそう痒を著しく減少させた。
多面的後痛急性術制御のためのNSAID使用についての大多数の文献には、軽度から中等度については一般に有効であるが、高度の疼痛には有効でないNSAIDが記載されている。しかしながら、この治験において、ジクロフェナク(及び治験薬対照ケトロラク)のボーラスIV注射は、高度の疼痛だけでなく中等度の疼痛に有効であると判明し、それによって、以前にはNSAIDと最少量のオピオイド救急薬で日常的に制御可能であると考えられなかった疼痛強度までNSAIDの臨床適応性を拡張させた。更に、長期にわたる注入と対照的にボーラスによってこの製剤を投与する能力は、疼痛軽減のより急速な発生機会だけでなく、IVラインが潜在的に適合しない併用薬を送達するために使用できない時間短縮を与える。
結論として、この治験は、ジクロフェナクの新規なIV製剤、既知の安全性プロファイルを有する充分に確立したNSAIDが腹部又は骨盤の手術後の中等度及び高度の急性疼痛の治療に対して高程度の有効性を与えることを証明している。治験した患者集団の範囲内で、双方のHPβCDジクロフェナク量(18.75mg及び37.5mg)は、治験薬対照ケトロラクのように、プラセボより著しく大きな鎮痛効力を与えた。疼痛管理に対しては、一般の薬物療法のように、臨床医は最も低い有効量を最も短い必要な時間用いることが推奨される。この治験において証明されたように、中等度又は高度の疼痛によりPACUに到着した患者に対して一次的鎮痛オプションとして用いられるHPβCDジクロフェナクの能力は、特に高用量のNSAID及び/又はオピオイドに対する曝露が患者に著しいリスクを引き起こす場合、他の非経口非麻薬性鎮痛剤より有利となり得る。
実施例11:整形外科手術後に静脈内ケトロラク及びプラセボと比較した新規なジクロフェナク注射用製剤の鎮痛効力及び安全性: 多施設、無作為化、二重盲検、多回投与試験。
実施例1を、更に、下記のように展開させた。
I. 材料及び方法
1. 患者
施設内治験審査委員会(IRB)承認及びIRB承認書面でのインフォームドコンセントの後、患者を12の治験施設でスクリーニングした。鍵となる選択基準には、年齢18-85歳、体重36-136kg、及び選択的整形外科手術後に連続IV鎮痛を必要とする中等度から高度の術後疼痛の期待値が含まれた。鍵となる除外基準には、高齢者の脱水症、心血管イベントの最近の病歴、胃潰瘍の病歴、高度の腎又は肝障害、及び他の鎮痛薬の最近の使用が含まれた(表8)。
表8. 除外基準
Figure 0006320917
2. 治験設計
これは、多施設、多回投与、複数日、無作為化、二重盲検、アクティブ対照、プラセボ対照、平行群間治験であった。0-100mmの視覚的評価スケール(VAS)により≧50 mmの疼痛強度として定義された、術後6時間以内の中等度又は高度の疼痛患者は、IV HPβCDジクロフェナク、ケトロラク、又はプラセボ(2:1:1の比)に無作為に割り当てた。
コンピューター処理乱数コードに従って割り当てた。無作為化は、また、ベースライン時にリスクコホート(ハイリスク、ハイリスクでない、又は高体重[≧95kg])によって、また、予想された長い入院(>24時間)と短い入院によって層別され、無作為化予定の範囲内で6層になった(図10を参照のこと)。図10は、無作為化される患者の分布を示す。合計277人の患者は、少なくとも1回の治験薬を投与し、包括解析集団及び安全性集団を構成した。全体として、239人(86%)の患者は、治験(プラセボについて51/72人、71%; ケトロラクについて56/60人、93%; ジクロフェナクについて132/145人、91%)が完了した。「ハイリスク」患者は、体重が<50kgの患者として定義され、年齢が≧65歳であり、内科的潰瘍治療を受けており、腎不全(血清クレアチニン1.9-3.0mg/dL)又は肝不全(チャイルド・ピュースコア6-9)、又は胃腸出血又は穿孔の病歴を有した。
HPβCDジクロフェナク投与量は、ハイリスクでないコホートにおいて37.5mg、ハイリスクコホートにおいて18.75mg、及び高体重コホートにおいて50mgであった。ケトロラク投与量は、ハイリスクでない及び高体重コホートにおいて30mg及びハイリスクコホートにおいて15mgであった。全ての治療グループにおける患者は、退院まで6時間毎にボーラスIV注射を受けた。ベースライン(治験薬開始)から少なくとも24時間及び5日間まで患者を観察した。全ての治験薬を治験担当医師と患者に対して盲検化した; 個人の治験治療の投与量レベルは盲検化しなかった。
一次的治験薬が軽減しない場合にはレスキューIVモルヒネが利用でき、必要に応じて2.5mgの増加分及び3時間毎に合計7.5mgを超えずに投与された。患者は、一次的治験薬が鎮痛作用を発揮し始めるが決して否定させないように、治験薬開始の少なくとも30分後を待ってモルヒネを要求するように勧められた。
3. 結果判定法及び評価
一次的有効性基準は、5つの間隔: 0-24、0-48、0-72、0-96、及び0-120時間にわたる疼痛強度差の合計(SPID)であり、所定の時点でベースラインからの疼痛強度(0-100の視覚的評価スケールによる)の差を合計することによって算出した。二次的有効性基準は: 0-24、0-48、0-72、0-96、及び0-120時間にわたる全疼痛軽減(全体として及びベースライン時に高度の疼痛患者のサブグループにおいて)、疼痛強度の臨床的に意味のある低下(≧30%)を得る患者の割合、予定された各評価の疼痛強度差(PID)、レスキューモルヒネ投与の量及び回数、及び5ポイントスケールによる患者の全体的評価(0、悪い; 1、まずまず; 2、良い; 3、とても良い; 4、すばらしく良い)であった。患者は、治験薬を投薬の開始後24時間毎に及び完了/早期終了時に評価した。
患者は、これらの疼痛をベースライン及び次の24時間までの指定された時点(初回投与の5、10、15、30、45分、1、2、3、5、6、9、12、15、18、21、24時間後)に評価した。長く入院した患者は退院まで3時間毎にこれらの疼痛を評価した。安全性評価には、身体所見、臨床検査、生命徴候、12-誘導心電図検査、注射部位の血栓性静脈炎の評価、及び予想される治験担当医師が投与した創傷-治癒アンケートが含まれた。治療中に発生したAEを識別するために、有害事象(AE)をベースラインの直後でない、手術と無作為化の間に記録した。
4. 統計解析
HPβCDジクロフェナク(双方の投与量が含まれる)について120人の患者及びプラセボについて60人の患者の試料は、一次的有効性基準における各時間間隔の臨床的に有意な差を検出する95%検出力を与えるために必要であった。この算出は、治験依頼者が整形外科手術集団において行った無作為化プラセボ対照主試験から得られた0-24時間間隔の468の推定標準偏差をベースにした。
有効性の分析は、統計解析ソフトウェア(登録商標)を用いて行われて、特に明記しない限り包括解析集団を意味する。SPID、疼痛強度、全疼痛軽減、患者の全体的評価、及び救急薬量の分析は、共分散分析(ANCOVA)モデルをベースにし、要因として治療とセンター及び共変量としてベースライン疼痛を有した。信頼区間は、ANCOVAモデルから得られた統合標準偏差をベースにした。治療差は、線形対比で試験した。
行われる検定が本質的に片側でない限り、統計的有意性のすべての試験は両側であった。相互作用P値<0.1は、有意であるとみなした; 別の方法で、P値<0.05は、有意であるとみなした。SPIDについて、HPβCDジクロフェナクとプラセボの間の比較は、以下の順序で行った: 0〜24、0〜48、0〜72、0〜96、及び0〜120時間。比較のいずれかが統計的有意性を示さなかった場合には、更なる比較は行わなかった。全疼痛軽減を同様に分析した。
疼痛強度の少なくとも30%低下及びその救急薬使用の回数を達成している患者の割合は、コクラン-マンテル-ヘンツェル検定で分析し、層別変数としてセンターを有した。
合計した算出については、救急薬の投与後又は有害事象(AE)又は有効性の欠如による撤回後の評価は、事前に設定された規定に帰属した。疼痛強度のサブグループ分析として、帰属規定の更に保存的且つ単純化設定を適用した。
II. 結果
1. 患者
合計277人の患者を無作為化し、治験薬を≧1回投与した(図10を参照のこと)。全体として、239人の患者(86%)が治験を完了した。撤退の最もよくある理由は効力(31人の患者、11%)の欠如であった。そして、それはプラセボグループ及び長い滞在集団において最も一般的だった。ほとんどの調査参加者は、女性(178人の患者、64%)で、白人だった(表9を参照のこと)(255人の患者、92%)。平均年齢は55歳であった、そして、82人の患者(30%)は年齢の≧65年であった。6人の患者(2%)は<50kgであった、そして、66(24%)は>95kgであった。
表9. ベースラインの人口統計及び臨床所見
Figure 0006320917



Figure 0006320917
NSAID = 非ステロイド系抗炎症剤; SD = 標準偏差; VAS = 0-100 mm 視覚的評価スケール
ベースライン特性について、全体として又はリスクコホート内で、手術の持続時間、麻酔時間、又は手術の終了から治験投与開始までの時間について治療グループ全体にほとんど差がなかった。患者のほとんどに治験薬を≦3日間投与した(≦1日間、153人の患者、55%; ≦2日間、169人の患者、61%; ≦3日間、252人の患者、91%; ≦5日間、277人の患者、100%)。277人の患者のうち、169人(61%)は1-8回投与し、83(30%)は9-12回投与し、25(9%)は>13回投与した。
VASについて平均疼痛強度全体は、ベースライン時に69mmであり(表9を参照のこと)、治療グループ又はリスクコホート全体に違いがなかった。全体として、277人の患者のうちの157人(57%)は中等度の疼痛(50mmの≦VAS < 70mm)であり、118(43%)は高度の疼痛(VAS≧70 mm)であった。11人の患者はベースライン時に間違ったリスクコホートに割り当てられ、4人の場合において、用量を調整した。ここで示されるサブグループ分析は、投与した量レベルをベースとする。
2. 有効性
全ての時間間隔において、疼痛強度差(SPID)の平均合計は、プラセボ(P < 0.0001)よりジクロフェナク及びケトロラクが著しく大きかった(図1を参照のこと)。図1は、経時疼痛強度差(SPID)の合計を示すグラフである。平均SPIDスコア及び標準誤差は、プラセボ、ケトロラク、及びHPβCDジクロフェナクについて5時間間隔として示されている。より大きい値は、ベースラインからの疼痛のより大きな減弱を示している。0-48、0-72、0-96、及び0-120時間にわたるSPID値のパーセントは、それぞれ、47%、54%、62%、及び68%であった。「*」は、P値がプラセボに対して< 0.0001であることを表している。これらの結果は、ベースライン疼痛強度全体で一貫していた。入院の長さに基づくSPID値の差はほとんどなかった。
0-24、0-48、0-72、0-96、及び0-120時間にわたる全体の疼痛軽減は、プラセボ(P < 0.0001)よりHPβCDジクロフェナク及びケトロラクによって著しく良好であった。ベースライン時に高度の疼痛がある277人の患者のうちの118人(43%)のサブグループにおいて、全ての時間間隔にわたる全体の疼痛軽減は、プラセボ(P≦0.05)よりHPβCDジクロフェナク及びケトロラクによって著しく良好であった。
臨床的に意味のある疼痛減少(強度の≧30%低下)は、プラセボについて72人の患者のうちの31人(43%)と比較して、HPβCDジクロフェナクについて145人の患者のうちの117人(81%)及びケトロラクについて60人の患者のうちの45人(75%)によって達成された。HPβCDジクロフェナクによって意味のある疼痛軽減を有した患者の割合は、10分、42時間、48時間、及び60時間(全ての比較に対してP≦0.05)においてケトロラクによる割合より著しく優れていた。
HPβCDジクロフェナクは、疼痛強度差によって測定したようにより速い鎮痛を明示した。HPβCDジクロフェナクは10分(P = 0.03)においてプラセボより著しく速く、ケトロラクは30分(P = 0.006)を必要とした。積極的治療については、プラセボからの統計的分離は、120時間維持された。積極的治療に対する患者の全体的評価は、プラセボ(P < 0.0001)より著しく高かった(図11を参照のこと)。図11は、最後の評価における患者の全体的評価を示すグラフである。最後の評価において、積極的治療に対する平均スコアは、プラセボ(P <0.0001)よりかった著しく高く、HPβCDジクロフェナクについて141人の患者のうちの99人(70.2%)及びケトロラクについて59人の患者のうちの34人(57.6%)がこれらの薬剤をプラセボについて70人の患者のうちの16人(22.9%)に対して「とても良い」又は「すばらしく良い」と評価した。
3. 救急
HPβCDジクロフェナク治療患者は、プラセボ対照グループ(P < 0.0001)より必要としたモルヒネが著しく少なかった(図2を参照のこと)。図2は、経時投与される救急薬の累積量を示すグラフである。最初の5日間にわたる全体のモルヒネ要求は、HPβCDジクロフェナクがプラセボ(11.8mgと20.5mg)より42%少なく、あらゆる時間間隔において、オピオイド節約作用はプラセボと比較してHPβCDジクロフェナクによって≧40%であった。「*」は、P値がプラセボに対して< 0.0001であることを表している。「#」は、P値がケトロラクに対して< 0.05であることを表している。5日間の治療にわたって、HPβCDジクロフェナクによる患者は、また、ケトロラク(11.8mgと18.1mg、ケトロラクに対して35%減少、P = 0.008)を投与する患者より著しく少ないモルヒネを用いた(図3を参照のこと)。図3は、救急薬を必要とした各治療グループにおける被験者の累積割合を示すグラフである。レスキューモルヒネを必要とした患者のうち、半分を超える患者が、プラセボグループの≦6回と比較して、HPβCDジクロフェナクグループとケトロラクグループにおいて救急を≦2回必要とした。治験薬の投与から救急薬の投与までの時間の中央値(tm)は、HPβCDジクロフェナク(tm=220.0分、プラセボと比較してP < 0.0001)が最も大きく、次にケトロラク(tm=137.0分、プラセボと比較してP < 0.0001)及びプラセボ(tm=51.0分)であった。
4. リスクコホート
HPβCDジクロフェナクに対するSPIDスコアは、リスクコホート及び体重コホート全体でプラセボより著しく高く、0-24及び0-48時間間隔でハイリスクコホートにおけるケトロラクより著しく高かった(図12を参照のこと)。図12は、リスクコホートによって疼痛強度差(SPID)の合計を示すグラフである。平均SPIDは、プラセボ、ケトロラク及びHPβCDジクロフェナクに対して5時間間隔のためにスコアする。「*」は、P値が<0.05対プラセボであることを表している。「#」は、P値が<0.05対ケトロラクであることを表している。プラセボ及びケトロラクと比較した経時ハイリスクの高齢患者のジクロフェナクの効力は、図13に示されている。低用量HPβCDジクロフェナクを投与したハイリスク患者(年齢が≧65歳(n=80))のうちの一サブグループは、疼痛強度の30%減少によって定義されたように、低用量ケトロラク又はプラセボより大きな反応速度を有した(図13Aを参照のこと)。高齢のHPβCDジクロフェナク治療患者は、所定のケトロラク又はプラセボ(P = 0.05)より少ない救急薬を必要とした(図13Bを参照のこと)。図13Aは、治療全体の疼痛強度の少なくとも30%減少を達成している患者のパーセントを示しているグラフである。「*」は、P値が<0.05対プラセボであることを表している。図13Bは、経時プラセボに対する治療によって平均救急薬量をミリグラムで示している図である。用いられるモルヒネの全量は、低用量HPβCDジクロフェナクで治療される高齢者患者より低用量ケトロラク(9.6mgと14.9mg)で治療された高齢者が35.5%少なかった。「#」は、P値がケトロラクに対して<0.05であることを表している。
5. 安全性
死亡は、報告されなかった。全体として、治験した277人の患者のうちの216人(78%)が1つ以上のAEを報告し、積極的治療グループ(表10)、及びリスクコホートにおける発生が同程度であった。ほとんどのAE(92%)は、重症度において軽度から中等度であった。吐き気は、全体的に及び各リスクコホートにおいて最も共通のAEであった。高体重コホートの中で、HPβCDジクロフェナク50mgの使用は、プラセボと比較してAEのリスクを増大しなかった。277人の患者のうちの47人(17%)が治療に関連したと考えられる1つ以上のAEを報告した(表10)。これには、ハイリスクコホートにおける88人の患者のうちの7人(8%)、ハイリスクでないコホートにおける123人の患者のうちの27人(22%)、及び高体重コホートにおける66人の患者のうちの13人(20%)が含まれた。
表10. 有害事象(AE)のまとめ
Figure 0006320917
* 股関節置換術を受けた81歳の肥満男性。P 腎機能不全、貧血、肺性HTN及びCHFの再手術病歴。患者は、術後の貧血及び血圧低下及びクレアチンの上昇を経験した(1.5から2.6に)。患者は生理食塩水による水分補給を受けた。そして、1単位濃厚赤血球及びd/cフロセミド、バルサルタン及びHPβCDジクロフェナクを受けた。軽度の腎機能不全は1日後に回復した。
† 膝置換術を受けた63歳の肥満女性。腎結石及び尿失禁の術前病歴。患者は輸液ボーラスに反応しない術後血圧低下を経験し、クレアチニンが正常から2.5mg/dLに上昇した。患者はICUに移り、昇圧薬で治療した。患者は、反応し、2日後に昇圧薬をやめた。クレアチニンは、最初の上昇の3日後に正常に戻った。急性腎不全、尿細管壊死は5日後に回復した。
5人の患者は、深刻な心血管イベントを有した: HPβCDジクロフェナクについて145人の患者のうちの3人(2.1%)は、深部静脈血栓症を発症し、これらの患者のうちの2人は、>95kgであり、ケトロラクについて60人の患者のうちの1人(1.7%)は鬱血性心不全を発症し、プラセボについて72人の患者のうちの1人(1.4%)は低血圧症を発症した。これらのイベントのいずれもが治療に関連するとみなされなかった。
出血に関連したAEの発生は、積極的治療グループにおいて同様であり(HPβCDジクロフェナク、23/145の患者、16%; ケトロラク、13/60の患者、22%)及びプラセボグループ(12/72の患者、17%)よりほとんど多くなかった。同様に、抗凝固剤(n=197)を投与た患者のサブセットにおいて、治療グループ全体で出血に関連したAEに臨床的に意味のある差はなかった。積極的治療グループとプラセボの間に腎又は肝機能検査の大きな差はなかった。
この治験は、整形外科手術から回復する患者において単独で又はオピオイドと組み合わせて中等度及び高度の急性疼痛を管理するIV HPβCDジクロフェナクの安全性及び有効性を確立する。6時間毎にHPβCDジクロフェナク18.75mg、37.5mg又は50mgは、プラセボ及びレスキューモルヒネを投与するより優れた鎮痛を示し且つ0-48時間から開始するケトロラクより大きな作用を得ることがわかった。試験の間、プラセボが含まれるすべての治療グループは、疼痛の管理を援助するのに必要とされるように補足的なモルヒネを投与することができた。HPβCDジクロフェナク治療患者は、ケトロラク(P = 0.008)で治療した患者より35%少ないレスキューモルヒネを必要とした。レスキューモルヒネを必要とした場合、投与されるまでの時間の中央値は、プラセボ(51分)の4倍を超えるHPβCDジクロフェナクの220分、ケトロラク(137分)を投与した患者より長い83分であった。
低用量HPβCDジクロフェナク(18.75mg)を投与した高齢者患者は、低用量ケトロラク(15mg)を投与した患者より統計的著しく良好な結果を有した。これには、鎮痛反応のより高い可能性、より良好な鎮痛効力、及びケトロラクを投与した患者より少ないオピオイド要求全体が含まれた。これらは、高齢者にはオピオイド誘発及びNSAID誘発副作用のより大きなリスクがあり且つより少ない投薬がこれらの曝露とリスクを最小にするために各々を保証していることを示した重要な所見である。
周術期において、NSAIDで特に懸念される副作用は、腎障害及び出血のリスク増加である。安全性のデータは、腹部又は骨盤の大手術後、HPβCDジクロフェナクの無作為化された多回投与試験において示されたことと一貫していた(Gan et al., Acute Pain, (2008);10: 165-166)。この治験における血液喪失は、プラセボより積極的治療によってわずかに多かった。
この治験において、HPβCDジクロフェナクは、ベースライン時に高度の疼痛があった277人の患者のうちの118人(43%)についてだけでなく、中等度の疼痛をもった患者にも術直後に有効であった。結果は、NSAID単独(と少量の救急薬)によって制御可能であると以前には考えられなかった重症度の疼痛患者にHPβCDジクロフェナクを投与することを示唆している。これにより、日常的に整形外科手術を受ける高齢者患者集団に対して特に重要な意味を有することができた。
結論として、この治験は、ジクロフェナクの新規なIV製剤、充分に確認された安全性プロファイルを有する長く信頼されたNSAIDが、特に高齢者において、一般に行われた整形外科手術後の中等度及び高度の急性疼痛の治療に安全且つ有効なことを証明している。腎機能不全及び出血合併症はまれであるが、これらの原因に関連したリスク因子の認識は慎重に評価されなければならない。更にまた、データは、既定の一次的術後鎮痛剤としてHPβCDジクロフェナクを用い、必要に応じてモルヒネが添加されることを逆よりはむしろ示唆している。
実施例12: 整形外科又は腹部の大手術後の新規なジクロフェナク非経口製剤の安全性: 非盲検、複数日、反復投与臨床試験
実施例3を、更に、下記のように展開させた。
I. 材料及び方法
1. 治験被験者
治験プロトコール及びインフォームドコンセントは、被験者登録の前に各施設の参加している施設内倫理委員会によって確認し承認された。書面による同意を提示した後、被験者を52の施設でスクリーニングし、51の施設が≧1の被験者を登録した。鍵となる対象患者選定基準は、年齢18-85歳及び、スクリーニング評価後3週間以内に、被験者が複数日にわたって≧2日間の予定の非経口投与NSAIDを認定する腹腔(腹腔鏡又は非腹腔鏡)、整形外科、腹部/骨盤又は他の任意の手術も受けるという予想であった。
被験者が重大な心血管、呼吸、腎、肝、又は他の胃腸の疾患、又は治験参加を容認できないほどリスクの大きい精神障害の病歴又は所見がある場合には除外した。他の鍵となる除外基準は、冠状動脈バイパス移植手術、スクリーニング時の肝機能不全(血清ビリルビン>2.5mg/dL)、プロトロンビン時間(PT)正常の上限よりも>20%)、スクリーニング時の著しい腎機能不全(血清クレアチニン>1.9mg/dL)、手術の≦1週間前のワルファリン治療(又はワルファリン治療が最後の治験薬投与前に開始するという予想)、手術時のIV NSAID使用、既知又は疑わしい薬剤又はアルコール乱用、ジクロフェナク、他のNSAID、又は治験薬調製の賦形剤のいずれかに対するアレルギー又は過敏性、及び妊娠又は授乳であった。スクリーニング時に1.9mg/dL未満以外の血清クレアチニン>1.1mg/dL(女性)又は>1.3mg/dL(男性)をもつ適格となる個人は、腎機能障害があると確認されたが、臨床試験への参加から除外されなかった。
2. 治験設計及び手順
これは、多施設、非盲検、反復投与、複数日、単一群の安全治験であった。患者が治験施設の通常の実施に従って手術後安定であるとすぐに、IVボーラスとして投与されるHPβCDジクロフェナク投与は手術直後に開始した。被験者が経口鎮痛薬に完全に移行するか、施設を退院するか、5日間治療を受けるか、又は治験から中止されるまで、治験薬を一次的術後鎮痛薬として24時間6時間(±15分)毎に投与した。ほとんどの患者(65%)に37.5mgのHPβCDジクロフェナク量を投与し、用量は高齢者患者に対して又は肝又は腎障害をもつ患者に対して減少しなかった。複数日、無作為化、対照試験からの以前の薬物動態学的治験及び有効性所見に基づいて、等価物曝露及び有効性を維持するために、患者≧95 kg(35%)に50mgのHPβCDジクロフェナクを投与した。>1のNSAIDに関連したリスク因子を有する被験者≧95 kgをこの用量調整から除外した。1.0mLのIVボーラスとして37.5mg量及び1.33mLのIVボーラスとして50mg量を投与した。
オピオイド又は他の標準的な術後鎮痛薬(他のNSAID又は徐放性オピオイドを除く)を、必要に応じてIV HPβCDジクロフェナクの一次的鎮痛作用を補足し、施設の注意義務の標準に従って投与した。抗凝固性を有する一般的に用いられる薬剤による併用治療は治験中に許可された。クマジン/ワルファリンは、治験薬の同時投与の間、許可されず、治験薬投与の最終日から開始して投与することができた。
被験者が≧8回の連続ジクロフェナク量を投与し(≧2日間の連続治療)、全ての経過観察の要求(最後の治験薬投与後10日間外来での経過観察及び最後の投与後30-37日間経過観察の電話)を完了した場合には、治験を完了したとみなした。
3. 評価
臨床検査(血液学、生化学、検尿)及び12-誘導心電図検査(ECG)を、スクリーニング、ベースライン(治療を開始する直前)及び退院/早期終了で完了した。検査室分析について、ベースライン値を手術後に及び初回の治験薬の前に得られた最近の値として定義した。生命徴候をスクリーニング、ベースライン、退院/早期終了及び経過観察時に集めた。身体所見をスクリーニング及び経過観察時に行った。生命徴候をスクリーニング、ベースライン、退院/早期終了、及び経過観察時に集めた。
3.1 有害事象
AEは、経過観察電話によるインフォームドコンセントの署名から記録し、寛解まで又は最後の回の治験薬を投与した後30日まで、いずれか早く生じた方を経過観察した。治療中に発生したAEは、治験薬との関係に関係なく、最初に発生したか又は治験中に重症度が悪化したものとして定義した。治療とAEの関係は、「関連がない」、「ありそうにない」、「疑わしい」、又は「ありえる」として治験担当医師が定義し、「治療に関連した」と分類されるAEは、治験担当医師が治験薬と「疑わしい」又は「ありえる」関係があるとして分類したものであった。
3.1.1 出血に関連した事象
『出血に関連したAE』として分類されるイベントは、臨床的に関連した出血AEとして治験担当医師によって分類されたものであった。所定患者においてプロトロンビン時間延長(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間延長(PTT)、国際標準比(INR)の増大、ヘマトクリット減少のような臨床検査値の変動は、観察した治験担当医師が同じ個人においてMEDRA協定による臨床AEとしてコード化されるのに充分有意であるイベントを記録しない限り、出血関連のAEとして分類されなかった。治験担当医師が外科手術の予想される結果に対して治験薬によって生じるらしいと貧血イベントを分類しない限り、術後の貧血は出血が関連したAEと分類されなかった。HPβCDジクロフェナクによって生じる有害事象の可能性の治験担当医師の分類に関係なく、出血に関連したAEには治験担当医師によって記録された以下の逐語的な説明が含まれた: 直腸出血、出血性貧血、手術部位の下の悪臭のある小さい血腫、肛門の出血、注射部位の両側前腕出血斑、膣の出血、外科的切開からの血液喪失、外科的部位の左結腸後方の血腫、術後の創傷出血、外科的切開の左膝レベルの過剰な血性排液、外科的吻合レベルのGI出血、上部消化管出血、急性失血性貧血、吐血、血尿、IV部位の表在血塊、感染した左股関節血腫、血便、及び右膝血腫。
3.1.2 腎臓に関連したAE
「著しい腎AE」に分類される事象は、臨床的に有意な腎AEとして分類されるものであった。治験担当医師が同じ個人において認識されたMEDRA協定の範囲内でコード化され得る患者において臨床腎AEを観察しない限り、所定の患者における血中クレアチニン上昇、腎クレアチニンクリアランスの減少、血中尿素の増加のような検査値の変動は著しい腎AEとして分類されなかった。HPβCDジクロフェナクによって生じる有害事象の可能性に関係なく、著しい腎AEには以下の逐語的な説明が含まれた: 尿排出量の減少、急性腎不全、腎尿細管壊死、急性腎機能不全、乏尿、高窒素血症、及び無尿。
3.2 治療有効性の患者の全体的評価
治療の全体としての全体的評価を退院/早期終了で得た。これらの治療経験を「すばらしく良い」、「とても良い」、「良い」、「まずまず」、「悪い」と評価するよう患者に質問した。
II. 結果
1. 人口統計/特性
全体として、1171人の患者を治験のためにスクリーニングし、1050人を登録し、971人にHPβCDジクロフェナクを投与し、安全性集団分析に含めた(図14)。図14は、治験被験者動態を表す表である。図14に示されるように、合計971人の被験者は、急性術後痛のために≧1回の静脈内(IV) HPβCDジクロフェナクを投与し、安全性解析に含めた。全体で、≧1回のHPβCDジクロフェナクを投与する被験者のうちの943人(97.1%)が治験を完了した。登録されたが治験薬を受けなかった79人の患者について、最も共通の理由は、患者の同意撤回(n=32)、手術の取消し(n=13)、インフォームドコンセント後及び治験薬の開始時間前に生じたAE(n=8)及び禁止薬剤の使用(n=8)であった。
表11は、971人の治験した手術後患者に対する人口統計を詳述したものである。平均年齢は58.8歳であり、かなりの割合の患者が65歳(38%)及び75歳(12%)を超えた。ほとんどの被験者が外科大手術(例えば、全膝又は人工股関節全置換術、開放性子宮摘出、開腹)を受け、治験した患者の85%は6時間ごとの投薬スケジュールで手術後2〜3日間HPβCDジクロフェナクを投与した。治験した60%を超える患者もまた、DVT予防のために併用抗凝固剤を投与した。用いられる最も一般の薬剤は、ヘパリン(7.8%)及び低分子量ヘパリン(LMMW)(51.3%)が含まれた。治療の最終日にワルファリン使用が許可され、治験したその134人の患者(13.8%)において確認された。多くの患者は、DVT予防のために用いられる抗凝固剤に加えて心臓予防のための低用量アスピリン(81mg〜325mg/QD)又はクロピドグレルで残った。合計12人の患者(1.2%)をアスピリン又はクロピドグレルで治療した。軽度の既存の腎障害患者を治験から除外せず、腎障害患者のうちの合計57人(5.9%)を評価した。2つの異なる用量レベルのHPβCDジクロフェナクもまた、37.5mg及び50mg以上の投与量をそれぞれ6時間毎に送達した体重が≧95kgの患者について評価した。
表11. 治験患者集団の人口統計及び臨床特性
Figure 0006320917
a 51の治験施設; 最も多い登録施設は、それぞれ、124人(全体の12.8%)、87人(9.0%)、及び80人(8.2%)の被験者を有した。
b 脊椎固定術、回旋筋腱板修復術、椎弓切除術、骨折修復術、椎間板切除術、及びその他、不特定が含まれる。
c 血清クレアチニン>1.1mg/dL(女性)>1.3mg/dL(男性)又は尿中クレアチニン>300mg/dL
d 治験薬投与の最終日から開始する。
2. 安全性
合計823人の(84.8%)患者は、治療中に発生したAEを報告し、85(8.8%)は、HPβCDジクロフェナク投与に関係した「疑いがある」又は「おそらく」関係したとして治験担当医師によってみなされた治療に関連した有害事象を報告した。
表12は、治験集団(研究される患者の>5%で起こる)において最も共通した治療中に発生したAEを示すものである。>5%の患者に報告され且つ治験薬の投与に関係した「疑いがある」又は「おそらく」関係したとしてみなされた治療中に発生したAEもまた表12に示されている。表13は、治験集団における患者によって報告された治療中に発生した及び治療に関連した出血、治療に関連したAEを示し、表14は、治験期間中に生じた治療中に発生した及び治療に関連した著しい腎AEを示すものである。
表12. 治験集団において治療中に発生した及び治療に関連した有害事象(AE)
Figure 0006320917
表13.治験集団において治療中に発生した及び治療に関連した出血関連の有害事象(AE)及び術後貧血
Figure 0006320917
表14. 治験集団における治療中に発生した及び治療に関連した著しい腎有害事象(AE)
Figure 0006320917
2.1 出血に関連したAE
治験集団における32人の患者(3.3%)は、出血に関連した臨床イベントとして治験担当医師によって記載されたAEを報告した(表13)。更に、218人(22.5%)の患者は、軽度から中等度の重症度の術後貧血を報告した。術後貧血のこれらの218人の発病のうち、いずれも、責任のある治験担当医師によって治験薬に関連があるとみなされなかった(表13)。外科大手術から回復の一部として、治験した患者におけるこれらのイベントの重症度の欠如だけでなく、HPβCDジクロフェナク同時投与との治験担当医師によってこのイベントの関連の欠如を生じる軽度から中等度の貧血の回数を考えれば、安全性の結果のバランスは、出血に関連し且つ医学的に有意な結果の可能性を有するとして治験担当医師によって記載されたAEに集中する。
表15は、様々なよく認識されたリスクのある患者集団の分類、例えば高齢の患者、抗凝固剤の併用、長期の投薬、NSAID用量の増加、及び外科大手術を受ける患者において出血関連のAEの発生を示すものである。出血に関連したAEの発生において統計的に有意な差が認められ、腹部大手術後にHPβCDジクロフェナクを投与した患者(5.7%)と婦人科又は泌尿生殖器手術後にHPβCDジクロフェナクを投与した患者(1.3%)との間で顕著であった p = 0.04。整形外科と腹部/骨盤の間で又は整形外科の個々の手術の中でほとんど差がなかった、例えば、全股関節に対して全膝(表15)。更に、調べた他のリスク因子も、治験集団における出血に関連したAEの発生の著しい増加と関係がなかった。
表15. リスクのある術後患者集団おける出血に関連した有害事象(AE)の発生
Figure 0006320917
a NS = グループ間に著しい差がない
b 婦人科学/尿生殖器グループに対して
リスクのある集団における出血に関連したAEに関して2つの所見が特に顕著である。最初に、単一のリスク因子としての年齢が出血に関連したAEの発生に関与しなかったことに留意することは興味深いことである。実際に、出血に関連したAEの最も低い発生が、>75歳の患者に観察された(<65及び65-75歳の患者において、それぞれ、3.1%及び4.4%に対して1.7%(2/117の患者))。更に、抗凝固剤とHPβCDジクロフェナクとの併用は、出血に関連したAEのリスクを増大しなかった。
2.3 腎臓のAE
NSAID使用に関連した急性腎不全のリスクは、術後の患者集団に関して他のよく認識された臨床的問題である。従って、急性腎不全及び尿量減少の報告はこの治験において特に興味深く、これらの腎AEの発生に対するHPβCDジクロフェナクの作用をNSAID誘発腎不全の認識されたリスク因子を含む又は含まない多数の患者部分母集団内で密接に評価した。急性腎不全及び尿量減少の発生を、腎機能のNSAID誘発低下と関連した下記のリスク因子をもつ又はもたない患者において評価した: 易感染性腎機能の以前の病歴、高齢、≧2時間の手術、>2日間の薬剤曝露、薬剤用量の増加、及び外科的大手術(表16)。
合計17人の患者は、急性腎不全(n=8)又は尿量減少(n=9)を経験した。年齢が≧75の患者は、<75歳(p = 0.001)より手術後のこれらの腎AEの1つを発症するリスクが著しく高かった(表16)。>75歳の患者は強調される有意なp値を有し、信頼区間(少数との類似性の指標)は差を示さないないことに重なった。
表16. リスクのある術後集団における急性腎不全の発生及び尿量減少有害事象(AE)
Figure 0006320917
a 血清クレアチニン>1.1mg/dL(女性)>1.3mg/dL(男性)又は尿中クレアチニン>300mg/dL
b NS = グループ間に差はほとんどない
c <65歳の被験者に対して
d 持続して<2時間の外科手術を受けた被験者に対して
急性腎不全又は尿量減少を発症した患者を、手術のタイプ及び手術の時間によって評価した。腹部又は骨盤の手術を受けた患者はだれもこれらの急性イベントを発症しなかった(表16)。整形外科手術を受けた患者は、これらのイベントを患者の1.5-2.9%で示すことがわかった。股関節、膝及び他の整形外科手術の差を示唆する信頼区間に重なりはなく、データの変動性が断固とした結論を出すことを困難にしている。これらの整形外科患者を更に調べるために、手術の平均時間及び既存の腎障害を確認した。≧2時間の長い手術を受けた患者は、また、持続して<2時間の手術を受けた患者(p<0.001; 重なりなしの95%信頼区間; 表16)より急性腎不全又は尿量減少AEを経験するリスクが著しく高かった。急性腎不全の発生は、詳しくは、≧2時間の長い手術を受けた患者において2.4%(n=5/215)及びより短い手術を受けた患者において0.5%(n=3/634)であった。HPbCDジクロフェナク曝露時間(2日間対2-5日間)又は投与量(37.5mg対50mg/投与量)に基づくこれらのAEの発生にほとんど差がなかった。
急性腎不全又は尿量減少を経験した17人の患者において、治療は、水分と利尿剤の投与及びHPβCDジクロフェナクの中止からなった。治験した患者のだれも腎不全の治療として透析を受ける必要はなかった。急性腎不全の発症を経験した8人の患者のうち、このAEの時間の中央値は、3日間、18時間(範囲1日、4時間〜9日、12時間)であった。
急性腎不全を経験した8人の患者のうち、7人(88%)は、また、急性腎不全イベントの前に血圧低下のエピソードを経験した。上記の降圧イベントを経験しなかった残りの急性腎不全患者は、手術及び治験薬による治療の前に腎機能不全があるとして確認された。急性腎不全は、手術前に血清クレアチニンが上昇した患者の3.5%(2/57)で生じたが手術前に血清クレアチニンが正常な患者は0.7%(6/914)だけであった。急性腎不全を経験している患者の年齢の中央値は、60.0歳(23-80歳)の尿量減少を経験する患者に対して79.5歳(60-84歳)でより高かった。全体で、腎有害事象を経験した全ての治験患者の年齢の中央値は、68歳(22-84歳)であり、58.5歳(18-87歳)の腎有害事象を経験しなかった患者の年齢の中央値より著しく高かった。
2.4 治療有効性の患者の全体的評価
全体的有効性評価を完了した被験者のうちの932/958(97.3%)が治験薬による経験を「すばらしく良い」、又は「良い」であると示し、839(86.4%)が「すばらしく良い」又は「とても良い」として評価した。
この治験の主要な目的は、HPβCDジクロフェナクをを投与した術後患者の大集団において生じた出血及び腎臓の有害事象を確認するために多数の、多施設の、反復投与の、複数日試験を調べることであった。治験は、高齢者(367人の被験者≧65歳)、抗凝固剤を併用した被験者(n=602被験者)だけでなく、既存の腎障害をもつ個人(n=57)が含まれる、多数のリスクのあるコホートが含まれるように設計された。この治験は、手術後6時間毎に2〜5日間の術後回復期間投与した場合、IV HPβCDジクロフェナクの安全性プロファイルを確認する。
術後の鎮痛薬としてNSAIDの使用に関連する予想外の重篤な術後出血のリスクは、よく認識された臨床的問題である。これのため、そのような出血を引き起こすHPβCDジクロフェナクの傾向は、NSAID誘発合併症のよく認識された及び容認された危険因子を有する又はそれを有しない種々の部分母集団において分析された。貧血以外の出血に関連したAEに関してリスクのある患者の部分母集団の間にほとんど差は観察されなかった。全体で、全ての治験被験者の3.3%は、出血に関連したAEを報告した。更に、軽度から中等度の術後貧血は、全ての参加者の22.5%において報告された。しかしながら、貧血イベントは、いずれの患者においても治療に関連したとみなされなかった。この治験においてリスクのある患者グループに関して、GI出血、吻合部の出血、外科的切開部位からの術後出血、血腫、吐血、血尿他のような臨床的に有意な出血に関連したAEの発生は、婦人科又は泌尿生殖器手術(大部分は開放子宮摘出)を受けた患者と比較した場合、腹部外科手術(腸の開腹、切開、切除及び吻合だけでなく、胆嚢、胆管、及び膵臓の手術)を受けた患者にのみ著しく上昇した。婦人科/泌尿生殖器手術に対して腹腔による出血に関連したイベントのより多くの発生は、生殖器を含む外科手術に対して臓器及び一般的な外科手術による出血イベントの発生増加を示す以前の証拠と一致している(Stokes et al., BMC Health Serv Res (2011); 11:135)。
重要なことに、出血に関連したAEの発生の統計的有意差は、DVT予防の抗凝固剤を投与しない患者に対して抗凝固剤に加えてHPβCDジクロフェナクを投与した患者の間で生じなかった。同様に、≧65歳及び<65歳の患者、又はHPβCDジクロフェナクによる5日間までの連続治療を受けた患者に対して2日間の治療を受けた患者を比較した場合にも差は見られなかった。
術後集団はすでに体液移動、易感染性血行動態バランス、おそらく腎機能の障害による急性腎不全及び他の腎臓の有害事象のためにより高いリスクがあるが、多回投与IV HPβCDジクロフェナクはこの試験において術後腎不全の比較的低い発生と関係していた。急性腎不全(n=8/971(0.8%))の合計8つの報告はこの治験において存在したが、術後IV又は経口NSAIDを投与した患者だけでなく、全ての手術後の患者において術後急性腎不全の国家の外科的データセットにおいて報告された1%発生と一貫している(Ghaferi et al., New Engl J Med (2009);l361:1368-1375; Kheterpal et al., Anesthesiology (2009);110:505-515)。
この試験が<65歳(1.0%(6/604)の患者又は65-75歳(2.0%、(5/250))の患者に対して年齢が>75歳の患者(5.1%(n=6/604))の尿量減少及び急性腎不全の発生増加を示したことに留意することは重要である。年齢が65-75歳及び<65歳の患者を比較した場合にこれらのAEの発生に統計的な差はなかった。急性腎不全は、75歳を超える年齢(年齢が76 - 85歳の範囲)の患者の4.3%(5/117)で生じた。しかしながら、これらの数は少なく、臨床的に又は統計的に意味のあるシグナルを検出することができない。更に、持続して>2時間外科手術を受けた患者は、全体の長さが<2時間の手術を受けた患者より急性腎不全又は尿量減少AEの発生が多かった。>2時間の長さの手術を受けた患者において、急性腎不全の発生は、より短い外科手術を受けた患者においてわずか0.5%(n=3/634)に対して2.4%(n=5/215)であった。腎臓の有害事象のこの増大は、より広範囲な体液移動の可能性、及びより長い期間を持続するより広範囲な手術で生じる傾向がある血圧低下の対応する期間を反映し得る。
最後に、手術前に正常より高い血清クレアチニンを有する患者もまた、正常な血清クレアチニンを有する患者よりこの試験において著しく高い腎臓の有害事象の発生を経験し、急性腎不全は、高血清クレアチニンを有する患者の3.5%で生じたが、手術前に正常な血清クレアチニンを有する患者のわずか0.7%であった。
治療の期間に関して、2-5日間のHPβCDジクロフェナクによる連続治療は、2日間だけ治療した患者の発生と比較すると、腎臓のAEのほとんど増加を生じなかった。
結論として、この治験は、37.5mgのIV HPβCDジクロフェナクが臨床診療において治療した術後患者のタイプを反映したほとんど除外基準をもたない大患者集団において安全且つ充分に通用したことを証明した。更に、この治験は、>95kgの体重の患者に投与した、50mg量による同様の安全性プロファイルを明らかにした。全体的に、本明細書において確立したIV HPβCDジクロフェナクの安全性プロファイルだけでなく、その鎮痛効力は、以前の治験において示されるように(Christensen et al., Anesth Prog (2011);58:73-81; Leeson et al., Reg Anesth Pain Med (2007);32:303-310)、この新規なジクロフェナク製剤が術後痛の管理に重要な新たな役割として役に立ち得ることを示している。
実施例13: 特別な集団におけるHBβPD-ジクロフェナク、新規な非経口ジクロフェナク製剤の薬物動態(PK)
I. 方法及び被験者
1. 被験者:
2つの治験において全参加者は128人であった(表17)。治験1は、2つの場所、ボルチモア、メリーランド州及びミラマー、フロリダ州で行われた。治験2は、4つの場所: ミネアポリス、ミネソタ州; ノックスビル、テネシー州; オーランド、フロリダ州;、及びミッドグラモーガン、英国で行われた。
表17. 参加者の人口統計学的特性
Figure 0006320917
2. 手順
2.1 治験1 - HPβCD-ジクロフェナクの薬物動態に対する年齢、体重/BMIの影響
2.1.1 被験者基準
この非盲検、単回投与治験は、成人の志願者においてHPβCD-ジクロフェナクの薬物動態、安全性、及び認容性に対する年齢、体重、及び身体組成の影響を評価した。この治験は、2つのコホート: 体重ベース及び年齢ベースにおいて行われた。体重ベースコホートに登録する被験者は、BMIが15kg/m2以上、及び体重が40-159kg(88-350ポンド)の範囲であることを必要とした。年齢ベースコホートに登録する被験者は、年齢が55歳以上であり、BMIが19以上、体重が30kg/m2未満、45kgと95kgの間(99-209ポンド)であることを必要とした。全ての志願者は、非喫煙者であり、良好な健康状態であり、治験人員と情報交換することが可能であることを必要とした。閉経前の女性志願者は、妊娠試験がマイナスあり、授乳中でなく、承認された形の避妊を行うことを必要とした。被験者が重大な病歴又は臨床的に関連した臨床検査結果をもち; ヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルス、又はC型肝炎ウイルスが血清学的に陽性であり; NSAID又はジクロフェナクに過敏性であり; 又は薬物乱用であった場合には除外した。
これらの集団は健康問題があり得ることが予想されたことから、この治験を健常な被験者に制限することは可能ではなかった。制限は、ある種の疾患状態、例えば現在の腸疾患又は感染症、消化性潰瘍、GI出血又は脳出血、及び以前の個々の手術、例えば肥満手術や腸切除に設定された。体重ベースコホートにおける被験者に対して治験から食欲抑制薬又はハーブ薬のような指定された併用薬だけが除外されことになった。しかしながら、心血管イベント、糖尿病、高血圧、及び/又は高コレステロール血症の病歴をもつ志願者は治験に登録することができたが、治験担当医師が健康をリスクにさらさないと判断した。
2.1.2. 手順
体重ベースコホートの被験者は、5つのグループに層別された: やせ過ぎ: 体重を区切らない、BMI≧15及び≦18.9 kg/m2; やせている: 体重≧45及び<60kg、BMI≧19及び≦24.9 kg/m2; おおがら: 体重≧60及び<100kg、 BMI≧19及び≦30 kg/m2; 肥満: 体重を区切らない、BMI≧30及び≦40 kg/m2; 極度の肥満: 体重を区切らない、BMI > 40kg/m2。年齢ベースコホートの被験者は、3つのグループに層別された: 55≦年齢<65歳、65≦年齢<75歳及び年齢≧75(図15に示されている)。図15は、治験1において年齢コホート及び体重コホートに割り当てられた患者の分布を表す図である。合計88人の患者は、コホートに割り当てられた。全88人の患者(100%)患者は、治験を完成了させた。
IV HPβCD-ジクロフェナクの単一用量を朝に投与する前に、被験者は一晩絶食した。参加者は、後に、治験場所で標準化された朝食、昼食及び夕食を受けた。体重ベースコホートにおける被験者は、37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクのIVボーラスが投与された。年齢ベースコホートの被験者は、18.75mgのHPβCD-ジクロフェナクのIVボーラスが投与された。PK分析のための血液試料は、下記の時点で留置IVカニューレによって又は直接の静脈穿刺によって得た: 時間0(投与前)、5、10、20、30、及び45分及び1、1.5、2、2.5、3、4、6、8、10、12、及び18時間投与後。留置カテーテルからの試料に対して、抜き取った血液の最初の2mLを別々の注射器に引き入れ、チュービングデッドスペースの透明な塩類希釈液に捨て、最後の3mLを分析に用いた。
2.2 調査2-腎臓及び肝機能不全症患者のHPβCD-ジクロフェナクの薬物動態
2.2.1 被験者基準
治験2は、腎又は肝障害をもつ被験者においてHPβCD-ジクロフェナク及びその賦形剤HPBCDの薬物動態の非盲検、単一用量治験、及び健常志願者の他の承認された薬剤に用いられるHPβCD-ジクロフェナク及びHPBCDの薬物動態の無作為化、非盲検、単一用量、ツーウェイ、クロスオーバー試験からなった。安定な軽度の慢性腎不全(クレアチニンクリアランス(CrCl)≧50及び≦80mL/分として定義される)又は安定な中等度の慢性腎不全(CrCl≧30及び<50mL/分)をもつ被験者を補充した。健常被験者及び軽度から中等度の慢性腎不全をもつ被験者に対するCrClは、下式を用いて推定された: 糸球体濾過速度(GFRmL/分/1.73m2) =186 ×血清クレアチニン(SCr)-1.154×(年齢)-0.203×(女性である場合0.742)×(アフリカ系アメリカ人である場合1.212) (Levey et al., Annals of internal medicine. (1999);130(6):461-470)。チャイルド・ピュー分類A、5〜6のスコアによって定義される軽度の慢性肝障害、及び≦2.5 mg/dlのビリルビンをもつ被験者を補充した。腎又は肝障害をもつ被験者の年齢が18-75歳の間であり、健常な被験者の年齢が18〜65歳の間である場合には含まれた。
健常な被験者の包含基準は、治験1に対する被験者と同様であった。健常な被験者は、CrCl>80mL/分として定義される正常な腎機能、及び正常な肝機能があることを必要とした。健常な成人被験者は、年齢(±10歳)、性別、及び体重(±10kg)が軽度の慢性腎不全をもつ被験者及び軽度の慢性肝障害をもつ被験者と適合させた。
治験1と同様に、腎グループと肝グループにおいてより大きな幅の共存症の状態のための許容があった。被験者が心血管イベント、糖尿病、高血圧、及び/又は高コレステロール血症の病歴を有する場合には、病歴、身体所見、心電図、及び臨床検査室評価(完全血球算定(CBC)、化学、血小板機能、検尿、B型肝炎表面抗原、HIV抗体、C型肝炎抗体、アルコール口臭、及び尿中の薬剤スクリーンテスト)によって求められたように、これらの状態が安定性で、よく制御され、且つ安全性リスクをほとんど有しないならば、登録することができた。糖尿病患者は、安定な治療法を4週間続けていたにちがいない。
除外基準には、妊娠、管理されていない又は充分に制御されていない糖尿病、透析法の使用、変動するか又は急速に悪化する肝機能、肝がん又は他のがん、臓器移植又は免疫抑制、急性感染症、又は喘息が含まれた。深刻な心血管イベント、例えば心筋梗塞、冠状動脈バイパス手術又は経皮的冠動脈介入、不安定狭心症、卒中又は鬱血性心不全の被験者は除外された。制限は、また、ある種の疾患状態、例えば現在の腸疾患又は感染症、消化性潰瘍、GI出血又は脳出血設定された。B型肝炎又はC型肝炎が陽性だった被験者は、健常グループ及び腎臓のグループから排除除外されたが、軽度の慢性肝障害をもつ被験者の中に含められた。他の処方又はOTC薬剤の歴史及び現在の使用は、モニタされ、干渉可能性が評価され、薬剤によっては除外されることになり得る。NSAID又はジクロフェナクに対する過敏性も除外を促した。
2.2.2 手順
腎又は肝障害をもつ被験者は、治験0日目に治験施設に報告し、2晩と2日間施設に入院した。HPβCD-ジクロフェナク37.5mgを治験1日目に15秒にわたってIVボーラス注射として各被験者に投与した。血液試料を、留置IVカニューレによって又は直接静脈穿刺によって次の時間に得た: 時間0(投与前)、5、10、20、30、及び45分; 1、1.5、2、2.5、3、4、6、8、10、12、18、及び24時間投与後。被験者は、治験担当医師によって評価された後に治験2日目に退院し、最後の安全性評価のために投薬の7±3日後に戻った。異常所見が退院時にない場合には、経過観察の通院は電話によって完了した。
健常な被験者は、治験0日目に治験施設に報告し、3晩と3日間施設に入院した。HPβCD-ジクロフェナク37.5mgをIVボーラスとして15秒間にわたって投与し、治験薬対照、HPβCDで可溶化した承認された抗真菌薬(Sporanox、注射用イトラコナゾール、200mg)をIV注入として60分にわたって投与し、無作為化コードに従って治験1日目と治験2日目に投与した。血液試料を、腎及び肝被験者に対して上記のように得た。被験者にHPβCD-ジクロフェナクを投与したときに、2つの血液試料をジクロフェナク及びHPβCDの濃度測定のための各時点で採血した。イトラコナゾールについては、1つの血液試料をHPβCD濃度の分析に各時点で採血した。被験者は、治験担当医師によって評価された後治験3日目に退院し、安全性評価のために最終回の治験薬を投与した7±3日後に戻った。
3. 薬物動態学的及びおよび統計的な分析
ジクロフェナク血漿濃度は、CEDRA Clinical Research、LLC (8609 Cross Park Drive, Austin, Texas 78754)によって行われた確認されたタンデム型質量分析検出(LC-MS-MS)(定量化(LOQ)曲線範囲の限度5-2000ng/ml)による液体クロマトグラフィで測定した。HPβCDの血漿濃度は、Eurofins Medinet (12635 East Montview Blvd., Suite 214, Aurora, Colorado 80045)によって確認された分析を用いて定量した。HPβCD分析のためのLOQは、100ng/mlであった。
薬物動態パラメータは、非コンパートメント分析を用いて算出した。定量下限以上の血漿濃度だけを分析に用いた。実際のサンプリング時間を全ての薬物動態分析に用いた。プロトコール当たりの時間を用いて、グラフィックディスプレイのための平均血漿濃度を算出した。
最大血清濃度(Cmax)及びCmax(Tmax)までの時間をデータから直接用いた。排出速度定数、λzを、血清濃度-時間曲線の末端対数線形セグメントの負の勾配として算出した。各被験者及び治療のために用いたデータの範囲は、濃度と時間の片対数プロットの目視検査によって定量した。排出半減期(t1/2)を下記の式に従って算出した;
t1/2= 0.693/λz
ゼロから濃度≧: LOQ(AUC(0-τ))を有する最終試料までの曲線下面積を、線形台形法を用いて算出し、以下の式を用いて無限大まで外挿した:
AUC∞= AUC(0-τ) + Ctf/λz、
式中、Ctfは最終濃度≧: LOQである。全血漿クリアランス(CL)は投与量/AUCとして算出され、分布容積(Vz)は投与量/λz AUCとして算出された。
治験1については、、独立PKパラメータCLとVzの強力な関係及び従属パラメータt1/2及び人口統計学的変数の年齢、全体重、及びBMIを、直線回帰を用いて調べた。年齢、体重及びBMIが連続変数であるので、体重及び年齢コホートからデータをこれらの分析のために併用した。
治験2については、糸球体濾過速度(GFR)を、mL/分/1.73m2で、軽度から中等度の腎障害をもつ被験者及び健常対照として腎臓病への食事制限式を用いて推定した:
GFR =186 × Scr-1.154×年齢-0.203×(女性であるの場合0.742)×(アフリカ系アメリカ人である場合1.212)
式中、Scrは、血清クレアチニン、mg/dLである。パラメータCmax、AUC∞、CL、Vz及びt1/2についてジクロフェナク及びHPβCDの薬物動態に対する腎障害の影響を、データの自然対数を用いた分類変数として被験者タイプによる分散分析統計モデル(ANOVA)を用いて調べた。3つの被験者タイプの間で比較は、ペアードt検定を用いて行った。2つのグループだけであったので、同じモデルを用いて、ジクロフェナク及びHPβCDの薬物動態に対する肝障害の影響を追加の比較をせずに試験した。独立の薬物動態学パラメータCLとVzの強力な関係及び従属パラメータt1/2及び腎機能を、GFRに対して各薬物動態パラメータの直線回帰を用いて調べた。
HPβCD-ジクロフェナク(試験)とイトラコノゾール(対照)間のHPβCDに対する薬物動態学的パラメータCmax、AUC(0t)及びAUC∞の比較は、データの自然対数を用いて、配列、配列の範囲内の被験者、治療、及び分類変数としての期間を有する共変モデルを用いて行った。信頼区間(90%)は、対数変換後のデータ及び2つの片側検定手順を用いて3つのパラメータの比率、試験-対照について構成された。点推定値及び信頼限界を累乗して、オリジナルスケールに戻した。全ての薬物動態算出を行い、個々の被験者血漿濃度と時間とのグラフをWindows(登録商標) Version 9.1.3のSAS(登録商標)を用いて作成した。
II. 結果
1. 治験1 - HPβCD-ジクロフェナクの薬物動態に対する年齢、体重/BMIの影響
年齢及び体重のコホートに登録し無作為化した全88人の被験者は治験を完了した。被験者の人口統計学的特性を表17に詳述する。
34人の被験者における薬物動態コホート治験は、IV HPβCD-ジクロフェナクの曝露に対する年齢(55-82歳)の影響を示さなかった(表18、及び図16Aに示されている)。図16Aは、3つの年齢ベースコホートに18.75mgのHPβCD-ジクロフェナクのIV投与の後、ジクロフェナクの経時平均血漿濃度を示すグラフである。CL、Vz、及びt1/2の関係の検査は、分布の容積(Vz)と年齢(p = 0.0183)、及びt1/2と年齢(p = 0.0480)と間の有意な反比例関係を示した(図17A-B)。図17A-Bは、年齢、及びジクロフェナクPKパラメータの関係を示すグラフである。図17Aは、18.75mg又は37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクの静脈内投与後の分布容積と年齢との関係を示すグラフである。図17Bは、18.75mg又は37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクの静脈内投与後の終末消失半減期と年齢の関係を示すグラフである。年齢によるVzの著しい減少があり、これによりt1/2と年齢との間に有意な反比例関係が生じた。年齢及び体重両コホートのプールされた回帰において、ジクロフェナククリアランスは、年齢(p= 0.1779)に影響を受けるように見えなかった。
PKパラメータの平均値は、体重(44-162kg)の増加につれて曝露の減少を示した(表18、及び図16Bに示されている)。図16Bは、5つの体重ベースコホートに37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクをIV内投与した後のジクロフェナクの経時平均血漿濃度を示すグラフである。CL、Vz、及びt1/2及び全体重及びBMIの関係の検査は、CLと体重(p < 0.0001)、Vz及び体重(p < 0.0001)の有意な関係を示した。BMIとの関係は、体重、BMIの主構成要素と一貫していた。体重増加によるCL及びVz双方の比例した増加のため、本質的にt1/2と全体重又はBMIとの間に関係がなく、それぞれのp値が0.4872及び0.8384であり、その比率でt1/2を定量する変化が生じなかった。
表18. 治験において測定された薬物動態パラメータ
Figure 0006320917
体重ベースコホートの1人の被験者及び年齢ベースコホートの6人の被験者は、異常であるとみなされたHPβCD-ジクロフェナクの血漿濃度を有した。PK分析は、これらの被験者を含め、また、除外して行われた。PKパラメータCL、t1/2、及びVz、及び体重又は年齢の治験及び関係の全体的な結論は、見かけの異常な血漿濃度をもつ被験者が含まれることの結果として変化しなかった。ここで示されたPK結果は、これらの被験者を除外していた。
1.1 安全性
死亡がなく、深刻な有害事象(AE)がなく、この治験の間、体重ベース又は年齢ベースのコホートにおける治験から結果として中止につながるAEがなかった。体重ベースコホートの9人の被験者(16.7%)は、14の治療中に発生したAEを報告した。治療グループA(やせ過ぎ)及びE(極度の肥満)の被験者のだれも治験の間、治療中に発生したAEを経験しなかった。すべてのイベントは、、軽度および一過性であるとみなされ、医学的介入をせずに回復し、胃腸イベント、投与部位状態及び頭痛が含まれた。14のイベントのうちの8つ(57.1%)は、治験薬とは無関係であるとみなされた。
年齢ベースコホートにおける3人の被験者(8.8%)は、合計13の治療中に発生するAEを報告した。すべてのイベントは軽度及び一過性であるとみなされ、2つ以外の全てが医学的介入せずに回復した。軽度のイベントには、便秘、投与部位状態、血中アミラーゼの上昇、リパーゼの上昇、そう痒及び高血圧が含まれた。2つのイベント、そう痒と高血圧は、薬剤を必要とした。ほぼ半分(54.5%)は、PIによって治験薬とは無関係であるとみなされた。
2. 治験2 - 腎及び肝機能不全症患者におけるHPβCD-ジクロフェナクの薬物動態
腎機能不全(平均CrCl 56mL/分)をもつ13人の被験者、肝障害(平均ALT 52.4IU/l、平均AST 43.6IU/l、平均ビリルビン0.59mg/dl、チャイルド・ピュースコア5.5)をもつ8人の被験者、及び14人の適合している健常被験者全てが成功して治験を完了した(表18)。被験者の人口統計学的特性は、表17に詳述されている。
AUC(0-τ)及びAUC∞によって測定されるように、HPβCD-ジクロフェナクに対する全体的な曝露は軽度の腎障害、中等度の腎障害及び適合した健常対照によるグループの間で著しい違いがなかった(表18、図18Aに示されている)。図18Aは、軽度又は中等度の腎障害被験者に及び健常被験者に37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクのIV投与後のジクロフェナクの経時平均血漿濃度を示すグラフである。ジクロフェナクの排出速度は、腎機能不全の程度の関数として著しく違いがなかった。軽度の腎機能不全(50の≦CrCl≦80 mL/分)及び適合した健常対照(CrCl > 80mL/分)を有する被験者と比較して、中等度の腎機能不全(30≦CrCl<50mL/分)被験者のジクロフェナクのCLとVzの上昇に対する統計的傾向がほとんどなかった(表18)が、このことは、小試料サイズのアーチファクトであり得る。賦形剤、HPβCDの排出速度は、腎機能不全の程度によって変化した図18B。図18Bは、軽度から中等度の腎障害をもつ被験者に及び健常被験者に37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクのIV投与した後の賦形剤、HPβCDの経時平均血漿濃度を示すグラフである。HPβCDのCLにおいて減少があり、腎機能が低下したAUC∞及びt1/2に対応する増大があった。健常被験者と比較した場合にCLの2.4倍の低下及びt1/2の1.8倍の増加が中等度の腎機能不全被験者に見られた(表18)。
適合した健常対照に対する軽度の肝障害被験者においてジクロフェナク又はHPβCDのPKに差がなかった(表18、及び図19Aに示されている)。図19Aは、軽度の肝障害をもつ被験者に及び健常被験者に37.5mgのHPβCD-ジクロフェナクをIV投与した後のジクロフェナクの経時平均血漿濃度を示すグラフである。
HPβCD-ジクロフェナクの投与後、HPβCDに対する曝露は、健常対照のイトラコナゾールと比較して著しく低下した(図19Bに示されている)。図18Bは、健常被験者に333.3mgのHPβCDを含有する37.5mgのHPβCD-ジクロフェナク及び8000mgのHPβCDを含有するイトラコナゾール200mgをIV投与した後の賦形剤、HPβCDの経時平均血漿濃度を示すグラフである。曝露は、単回投与後のイトラコナゾールの1/20及び定常状態後1/8に等しかった。HPβCD-ジクロフェナクとして333.3mgの投与後、AUC∞の幾何学的な最小二乗法平均比率に基づく、HPβCDに対する曝露は、Sporanoxとして8000mgの投与後の4.58%であり、本質的に投与量の比率と同じであった(4.17%)。中等度の腎機能不全をもつ被験者については、37.5mg量のHPβCD-ジクロフェナク後のHPβCDに対する曝露は、イトラコナゾールを投与した健常被験者より、なおAUC(0-τ)に対して7.9分の1になり、定常状態(Cav)の平均濃度に対して3.9分の1になる。
2.1 安全性
HPβCD-ジクロフェナク薬物動態に対する腎又は肝障害の影響を評価するこの治験において死亡、AEによる撤退、又は深刻な有害事象(SAE)はなかった。深刻なAEがなく、全ての報告されたイベントは、強度が軽度から中等度であった。治療中に発生したAEの全体的な発生と重症度は、全てのコホートにおいて同様に低かった。HPβCD-ジクロフェナク投与後、腎機能不全をもつ2人の被験者(15.4%)及び軽度の肝障害をもつ1人の被験者(12.5%)が薬剤に関連したAEを有すると記録され、薬剤に関連したAEは健常被験者によって報告されなかった。腎又は肝障害を有する患者には有害な肝又は腎AEの報告がなかった。臨床的に有意な治験薬作用は、臨床化学又は血液学パラメータ又は腎機能又は肝臓機能検査には観察されなかった。範囲外の臨床的に有意な生命徴候又はECG結果は、治験の間、観察されなかった。
この治験は高齢がIVHPβCD-ジクロフェナクの全体の曝露に影響を及ぼさず、体重増加が曝露低下と関係していたことを証明した。腎又は肝機能不全は、ジクロフェナクの曝露又は排出に影響を及ぼさなかったが、腎機能不全は、賦形剤HPβCDのクリアランスを減少させた。
この治験は、患者の年齢がHPβCD-ジクロフェナクの全体的な曝露に影響を及ぼさないことを証明した。しかしながら、体内水分及び体脂肪の年齢に関連した変化は、高齢患者において薬剤の分布容積(Vz)を減らすために作用する。年齢増加によるt1/2の減少を生じる年齢増加によるVzの著しい減少が観察された。このことは、高齢被験者のHPβCD-ジクロフェナクの蓄積のリスクが減少したことを示唆している。それ故、HPβCD-ジクロフェナクの投薬法の変更は、薬物動態変化に基づき単に高齢者被験者に必要であってはならない。しかしながら、高齢患者がNSAID副作用、例えば出血、腎臓、及び心臓血管作用に影響されやすいことから、NSAID用量は、典型的には減少される(Aubrun et al., Clinical anaesthesiology (2007);21(1):109-127)。例えば、ケトロラクは、IVボーラスによって投与された場合に効果的であるが、血小板凝集を妨げ(Bauer et al., Journal of clinical anesthesia. (2010);22(7):510-518)、出血のリスクを(Elia et al., Anesthesiology. (2005);103(6):1296-1304)用量減少が高齢者のようなリスクのある集団において必須であるような程度まで増加させる(Physicians' Desk Reference. 2012)。しかしながら、バランスのとれたCOX-1及びCOX-2阻害プロファイルを有する、HPβCD-ジクロフェナクは、主にCOX-1を阻害する、ケトロラクやアスピリンのようなNSAIDより少ないリスクの術後出血をもたらし得る。ヒト志願者の血小板機能の治験において、HPβCD-ジクロフェナクは、主にCOX-1を阻害するNSAID、ケトロラク及びアスピリンより小さい範囲まで凝固能力に影響した(Bauer et al., Journal of clinical anesthesia. (2010);22(7):510-518)。
上で述べられる指針に合わせて、この治験における高齢患者に18.75mg、標準量の半分を投与した。他の治験は、18.75mg投与量が、例えば、上記の実施例1及び2に示された治験に匹敵する有効性を示した。それ故、この治験における高齢患者のHPβCD-ジクロフェナク及び他のジクロフェナクの安全性及び認容性(Dilger et al., Journal of clinical pharmacology. (2002);42(9):985-994; Fredman et al., Anesthesia and analgesia. (1999);88(1):149-154; Bakshi et al., Current medical research and opinion. (1991);12(7):459-465)は、このよく理解されたNSAIDの鎮痛性及びオピオイド節約の利点が高齢者の薬物治療としばしば関係しているリスクの増加を含めずにそのような患者に提供され得る。
患者の体重はHPβCD-ジクロフェナクの速度論に影響し、増加する体重と共に曝露の減少が示される。体重増加と共にCLが著しく上昇し、等価物曝露及び疼痛軽減を維持するために高体重被験者における種々の投与量によって「標準」曝露(AUC)を維持することが考慮されなければならないことが示唆される。全ての年齢の患者及び体重40-95kgの患者については、一様な投与量が、治療の簡易化、誤差の低減、及び投与量算出に費やされる節約時間の利点を提供する。
ジクロフェナクの排出速度は、腎機能不全の程度の関数としてほとんど違いがなかった。このことは他のジクロフェナク製剤の治験と一貫しており、腎排出がクリアランスの重要な経路であることがわからなかった(Brogden et al., Drugs. (1980);20(1):24-48)。しかしながら、腎機能不全をもつ被験者は、HPβCDのクリアランス減少を示した。減少の大きさは、治療量のHPβCD-ジクロフェナク後のHPβCDの血中濃度がIVイトラコナゾール、HPβCDで可溶化される現在市場に出されている抗真菌薬製品で見られるものより充分に少なく保たれるようなものであった。HPβCDは、腎機能不全患者においてジクロフェナクの薬物動態に対して付加又は相乗効果を与えないようであり、HPβCD-ジクロフェナクにおけるHPβCDに対する曝露が軽度から中等度の腎機能不全患者にリスクをもたらさないことが示された。
肝障害は薬剤代謝に影響し得るので、軽度の肝障害をもつ被験者においてジクロフェナク又はHPβCDのPKプロファイルの差が適合した健常対照と比較して観察されなかったことは興味深いものであった。肝代謝はジクロフェナク排出のほぼ100%を占め、HPβCDは広範囲に代謝されず、IV投与の80%〜90%が尿中で変化せずに排出される(Brewster et al., Advanced drug delivery reviews. (2007);59(7):645-666)。肝障害をもつ患者において薬物動態に対するHPβCDの付加又は相乗効果を支持する証拠がなかった。HPβCD-ジクロフェナクは、安全であり、肝機能検査において基礎疾患の顕著な悪化又は著しい上昇がなく軽度の肝障害をもつ被験者において充分に通用した。それ故、投与量調整は、この患者集団において推奨されない。
HPβCD-ジクロフェナクは、他のジクロフェナク製剤より異なった利点があり得る。HPβCD-ジクロフェナクは、ジクロフェナクの溶解性を高めるためにHPβCDを使っており(Gould et al., Food and chemical toxicology: an international journal published for the British Industrial Biological Research Association. (2005);43(10):1451-1459)、投与容積の減少、高又は低pHからの炎症の減弱又は可溶化に必要とされる有機溶媒の使用、薬剤自体から直接の静脈刺激を回避する結果となる(Colucci et al., Acute Pain. (2009);11:15-21)。HPβCD-ジクロフェナクのIVボーラス投与は、安全であり、鎮痛の発現がより速い(Leeson et al., Regional anesthesia and pain medicine. (2007); 32(4):303-310; Christensen et al., Anesthesia progress. (2011);58(2):73-81)。少容積のHPβCD-ジクロフェナクは、IV注入時間を短縮する利点があり、更により痛みを伴わない深部殿筋内筋肉内注射が可能であり得る。HPβCD-ジクロフェナクは使用前に再構成される必要がなく、ジクロフェナクの以前の製剤と比較してコスト削減の可能性がある(Wallerstein, International Society for Pharmacoeconomic and Outcomes Research (ISPOR), 2007)。HPβCD-ジクロフェナクは、一般的には、この治験において充分に通用した。
まとめると、この治験は、HPβCD-ジクロフェナクがこれらの特別な集団(高齢者、肥満、腎機能不全又は肝機能不全)において患者に常用量及びスケジュールで投与量を減少する必要がなく、高体重患者に等価物曝露を維持するのにもっと多くの投与量調整で投与することができることを示唆している。
本開示の内容は、本明細書に記載されている個々の実施態様によって範囲が制限されない。実際に、本明細書に記載されている内容に加えて本開示の内容の種々の変更は、上記の説明及び添付の図面から当業者に明らかになる。このような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲に包含されることを意図する。
特許、特許出願、文献、製品に関する説明、及びプロトコールは、本出願の全体に引用されており、その開示内容は本願明細書に全てのために全体で援用されている。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕哺乳類において術後痛を治療する方法であって、
a. 約50mg以下のジクロフェナク化合物; 及び
b. ベータ-シクロデキストリン化合物;
を含む医薬組成物を、術後痛の治療を必要としている哺乳類に非経口投与することを含み、
術後痛が整形外科手術に起因する、前記方法。
〔2〕前記哺乳類が、鎮痛に対する有害反応のハイリスクを有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記哺乳類の体重が、少なくとも約210 lb(95kg)である、前記〔1〕に記載の方法。
〔4〕前記哺乳類が、肝障害を有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔5〕前記哺乳類が、腎障害を有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔6〕前記哺乳類が、少なくとも約65歳である、前記〔1〕に記載の方法。
〔7〕前記哺乳類が、中等度から高度までの疼痛に苦しんでいる、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕前記医薬組成物が、約37.5mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる、前記〔1〕に記載の方法。
〔9〕前記医薬組成物が、約18.75mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる、前記〔1〕に記載の方法。
〔10〕前記医薬組成物が、約9.375mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる、前記〔1〕に記載の方法。
〔11〕投与後約10分以内に哺乳類に疼痛軽減を与える、前記〔1〕に記載の方法。
〔12〕救急薬量を更に投与することを含む、前記〔1〕に記載の方法。
〔13〕投与後約24時間以内に、少なくとも約40%、救急薬量を減少させる、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕投与後約48時間以内に、少なくとも約40%、救急薬量を減少させる、前記〔12〕に記載の方法。
〔15〕投与後約72時間以内に、少なくとも約40%、救急薬量を減少させる、前記〔12〕に記載の方法。
〔16〕投与後約96時間以内に、少なくとも約40%、救急薬量を減少させる、前記〔12〕に記載の方法。
〔17〕投与後約120時間以内に、少なくとも約40%、救急薬量を減少させる、前記〔12〕に記載の方法。
〔18〕ベータ-シクロデキストリン化合物が、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)である、前記〔1〕に記載の方法。
〔19〕哺乳類において術後痛を治療する方法であって、
a. 約50mg以下のジクロフェナク化合物; 及び
b. ベータ-シクロデキストリン化合物;
を含む医薬組成物を、術後痛の治療を必要としている哺乳類に非経口投与することを含み、
術後痛が腹部又は骨盤の手術に起因する、前記方法。
〔20〕哺乳類の体重が、少なくとも約210 lb(95kg)である、前記〔19〕に記載の方法。
〔21〕哺乳類が、肝障害を有する、前記〔19〕に記載の方法。
〔22〕哺乳類が、腎障害を有する、前記〔19〕に記載の方法。
〔23〕哺乳類が、少なくとも約65歳である、前記〔19〕に記載の方法。
〔24〕哺乳類が、中等度から高度までの疼痛に苦しんでいる、前記〔19〕に記載の方法。
〔25〕医薬組成物が、約37.5mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる、前記〔19〕に記載の方法。
〔26〕医薬組成物が、約18.75mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる、前記〔19〕に記載の方法。
〔27〕医薬組成物が、約9.375mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる、前記〔19〕に記載の方法。
〔28〕投与後約45分で疼痛強度を少なくとも約30%低下させる、前記〔19〕に記載の方法。
〔29〕救急薬量を更に投与することを含む、前記〔19〕に記載の方法。
〔30〕投与後約24時間以内に、少なくとも約35%、救急薬量を減少させる、前記〔29〕に記載の方法。
〔31〕投与後約48時間以内に、少なくとも約35%、救急薬量を減少させる、前記〔29〕に記載の方法。
〔32〕ベータ-シクロデキストリン化合物が、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)である、前記〔19〕に記載の方法。
〔33〕哺乳類において疼痛を治療する方法であって、
a. 約37.5mg以下のジクロフェナク化合物; 及び
b. ベータ-シクロデキストリン化合物;
を含む医薬組成物を、疼痛の治療を必要としている哺乳類に非経口投与することを含み、 疼痛ががんに起因する、前記方法。
〔34〕ベータ-シクロデキストリン化合物が、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)である、前記〔33〕に記載の方法。
本発明のまた更に別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1'〕哺乳類において術後痛を治療するための非経口投与用医薬組成物であって、
a. 約50mg以下のジクロフェナク化合物; 及び
b. ベータ-シクロデキストリン化合物;
を含み、
前記術後痛が整形外科手術に起因する、前記医薬組成物。
〔2'〕前記哺乳類が、鎮痛に対する有害反応のハイリスクを有する;前記哺乳類の体重が、少なくとも約210 lb(95kg)である;前記哺乳類が、肝障害を有する;前記哺乳類が、腎障害を有する;前記哺乳類が、少なくとも約65歳である;及び/又は前記哺乳類が、中等度から高度の疼痛を被っている、前記〔1'〕に記載の医薬組成物。
〔3'〕前記医薬組成物が、約37.5mg以下、任意に約18.75mg以下、又は約9.375mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる、前記〔1'〕に記載の医薬組成物。
〔4'〕投与後約10分以内に前記哺乳類に疼痛軽減を与える、前記〔1'〕に記載の医薬組成物。
〔5'〕前記医薬組成物が、該医薬組成物と救急薬量とを投与することを含む方法により投与される、前記〔1'〕に記載の医薬組成物。
〔6'〕投与後約24時間以内、投与後約48時間以内、投与後約72時間以内、投与後約96時間以内、又は投与後約120時間以内に、少なくとも約40%、前記方法における救急薬量を減少させる、前記〔5'〕に記載の医薬組成物。
〔7'〕ベータ-シクロデキストリン化合物が、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)である、前記〔1'〕に記載の医薬組成物。
〔8'〕哺乳類において術後痛を治療するための医薬組成物であって、
a. 約50mg以下のジクロフェナク化合物; 及び
b. ベータ-シクロデキストリン化合物;
を含み、
前記術後痛が腹部又は骨盤の手術に起因する、前記医薬組成物。
〔9'〕前記哺乳類の体重が、少なくとも約210 lb(95kg)である;前記哺乳類が、肝障害を有する;前記哺乳類が、腎障害を有する;前記哺乳類が、少なくとも約65歳である;及び/又は前記哺乳類が、中等度から高度の疼痛を被っている、前記〔8'〕に記載の医薬組成物。
〔10'〕前記医薬組成物が、約37.5mg以下、任意に約18.75mg以下、又は約9.375mg以下のジクロフェナク化合物を含んでいる、前記〔8'〕に記載の医薬組成物。
〔11'〕投与後約45分で疼痛強度を少なくとも約30%低下させる、前記〔8'〕に記載の医薬組成物。
〔12'〕前記医薬組成物が、該医薬組成物と救急薬量とを投与することを含む方法により投与される、前記〔8'〕に記載の医薬組成物。
〔13'〕投与後約24時間以内又は投与後約48時間以内に、少なくとも約35%、前記方法における救急薬量を減少させる、前記〔12'〕に記載の医薬組成物。
〔14'〕哺乳類において疼痛を治療するための非経口投与用医薬組成物であって、
a. 約37.5mg以下のジクロフェナク化合物; 及び
b. ベータ-シクロデキストリン化合物;
を含み、
前記疼痛ががんに起因する、前記医薬組成物。
〔15'〕ベータ-シクロデキストリン化合物が、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)である、前記〔8'〕又は〔14'〕に記載の医薬組成物。

Claims (9)

  1. 肝障害及び/又は腎障害を有する哺乳類において術後痛を治療するための静脈内投与用医薬組成物であって、
    a. 37.5mg以下のジクロフェナク化合物及び
    b. ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)、
    を含み、
    前記術後痛が整形外科手術に起因する、前記医薬組成物。
  2. 前記哺乳類の体重が、210 lb(95kg)以上である前記哺乳類が、65歳以上である及び/又は前記哺乳類が、中等度から高度の術後痛を被っている、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 投与後10分以内に前記哺乳類に術後痛軽減を与える、請求項1に記載の医薬組成物。
  4. 前記医薬組成物が、該医薬組成物とオピオイドとを投与することを含む方法により投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
  5. 肝障害及び/又は腎障害を有する哺乳類において術後痛を治療するための静脈内投与用医薬組成物であって、
    a. 37.5mg以下のジクロフェナク化合物及び
    b. ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)、
    を含み、
    前記術後痛が腹部又は骨盤の手術に起因する、前記医薬組成物。
  6. 前記哺乳類の体重が、210 lb(95kg)以上である前記哺乳類が、65歳以上である及び/又は前記哺乳類が、中等度から高度の術後痛を被っている、請求項に記載の医薬組成物。
  7. 投与後45分で術後痛強度を30%以上低下させる、請求項に記載の医薬組成物。
  8. 前記医薬組成物が、該医薬組成物とオピオイドとを投与することを含む方法により投与される、請求項に記載の医薬組成物。
  9. 肝障害及び/又は腎障害を有する哺乳類において疼痛を治療するための静脈内投与用医薬組成物であって、
    a. 37.5mg以下のジクロフェナク化合物及び
    b. ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPβCD)、
    を含み、
    前記疼痛ががんに起因する、前記医薬組成物。
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