JP6317498B2 - スタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物、及びスタッドレスタイヤ - Google Patents

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本発明は、スタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物、及びそれを用いたスタッドレスタイヤに関する。
現在市販されているタイヤは、全重量の半分以上が石油資源からなる原材料から構成されている。例えば、一般的な乗用車用ラジアルタイヤは、タイヤ全重量に対して、合成ゴムを約2割、カーボンブラックを約2割、他にアロマオイルや合成繊維を含んでおり、タイヤ全体で5割以上の石油資源からなる原材料を含んでいる。
しかしながら、近年、環境問題が重視されるようになり、CO排出に対する規制が強化され、また、石油原料は有限であって供給量が年々減少していることから将来的に石油価格の高騰が予測され、石油資源からなる原材料の使用には限界がみられる。
そこで近年、循環型社会の構築を求める声が高まり、材料分野においてもエネルギー分野と同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。
例えば、特許文献1には、合成ゴムに代えて天然ゴム、カーボンブラックに代えて無機フィラーやバイオフィラー、石油系オイルに代えて植物油脂、合成繊維に代えて天然繊維を用いる等して、タイヤ全重量の75重量%以上を石油外資源からなる原材料で構成することによって、地球に優しく将来の石油の供給量の減少に備えたタイヤの技術が開示されている。
しかしながら、天然ゴムは、ブタジエンゴムのような合成ゴムに比べて、低温特性、雪氷上性能が劣るという問題がある。特にスタッドレスタイヤのトレッドにおいては、良好な雪氷上性能を確保するため、ブタジエンゴムを配合することは必須であり、将来の石油供給量の減少に備えたスタッドレスタイヤを作ることは極めて困難であった。
特開2003−63206号公報
本発明は、上記課題を解決し、循環型社会の要求に応えながら、従来の合成ゴムを用いたスタッドレスタイヤと同等の低温特性、雪氷上性能を有するスタッドレスタイヤを供することができるスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明は、バイオマス由来のモノマー成分を重合して得られ、ASTMD6866−10に準拠して測定したpMC(percent Modern Carbon)が1%以上、ガラス転移温度(Tg)が−120〜−60℃であるバイオマス由来ゴムを含み、上記モノマー成分が、ブタジエン、ミルセン、オシメン、及びコスメンからなる群より選択される少なくとも1種であるスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物に関する。
上記バイオマス由来ゴムが、ジエン系ゴムであることが好ましい。
上記バイオマス由来ゴムを構成するモノマー成分のうち、50mol%以上がブタジエンであることが好ましい。
上記バイオマス由来ゴムが、バイオマス由来のアルキルアルコール類、アリルアルコール類、アルケン類、アルデヒド類、及び不飽和カルボン酸類からなる群より選択される少なくとも1種のバイオマス由来成分から触媒反応により得られたジエンを重合したものであることが好ましい。
上記アルキルアルコール類が、エタノール、ブタノール、及びブタンジオールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記ブタノールが、メバロン酸経路に関連する遺伝子、MEP/DOXP経路に関連する遺伝子、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、及びブタノールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子が導入されている微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種により生産されたものであることが好ましい。
上記アリルアルコール類が、クロチルアルコール及び/又は3−ブテン−2−オールであることが好ましい。
上記アルケン類が、ブテン及び/又はエチレンであることが好ましい。
上記エチレンが、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種を用いた発酵により、バイオマスより変換されたものであることが好ましい。
上記エチレンを生産する微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体が、ACCシンターゼをコードする遺伝子を導入及び/又は改変されているものであることが好ましい。
上記アルデヒド類が、アセトアルデヒドであることが好ましい。
上記不飽和カルボン酸類が、チグリン酸及び/又はアンゲリカ酸であることが好ましい。
上記バイオマス由来ゴムが、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種により、バイオマスから直接生産されたモノマー成分を重合したものであることが好ましい。
上記モノマー成分がブタジエンであり、該ブタジエンが、糖類、ヘミテルペン類、及びアミノ酸からなる群より選択される少なくとも1種から変換されたものであることが好ましい。
上記アミノ酸が、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びアルギニンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記ヘミテルペン類及び/又はアミノ酸をブタジエンに変換する酵素が、HMG−CoAレダクターゼ、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ、及びアミノ酸デカルボキシラーゼからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記モノマー成分がブタジエンであり、該ブタジエンを生産する微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体が、HMG−CoAレダクターゼをコードする遺伝子、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子、アミノ酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子を導入及び/又は改変されたものであることが好ましい。
上記バイオマス由来ゴムが、バイオマス由来のブタジエンを酵素反応によりポリブタジエンゴムとしたものであることが好ましい。
上記酵素反応に関与する酵素が、長鎖プレニル鎖延長酵素であることが好ましい。
上記バイオマス由来ゴムが、微生物、植物、及び動物からなる群より選択される少なくとも1種の組織培養により生産されたポリブタジエンゴムであることが好ましい。
上記バイオマス100質量%中の糖類の含有量が20質量%以上であることが好ましい。
上記バイオマス100質量%中のアミノ酸及びたんぱく質の合計含有量が10質量%以上であることが好ましい。
上記バイオマス100質量%中の脂肪酸及び脂肪酸エステルの合計含有量が10質量%以上であることが好ましい。
上記バイオマス由来ゴムが、上記バイオマス由来のモノマー成分として、由来が異なる複数のモノマー成分を重合して得られたものであることが好ましい。
上記バイオマス由来ゴムが、バイオマス由来のモノマー成分と石油資源由来のモノマー成分とを重合して得られたものであることが好ましい。
上記バイオマス由来ゴムが、バイオマス資源の供給状況、石油資源の供給状況、及び/又は市場の要求に応じて、適宜選択された比率で、バイオマス由来のモノマー成分、若しくはバイオマス由来のモノマー成分と石油資源由来のモノマー成分とを重合して得られたものであることが好ましい。
本発明はまた、ポリブタジエンゴムを含むスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物であって、上記ポリブタジエンゴムが、原料ブタジエンの少なくとも一部として、バイオマスから始める反応または一連の反応によって得られたものを使用して重合して得られたものであるスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物に関する。
上記スタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中の上記ポリブタジエンゴムの含有量が5〜90質量%であることが好ましい。
本発明はまた、バイオマス資源の供給状況、石油資源の供給状況、及び/又は市場の要求に応じて、適宜選択された比率で、バイオマス由来のモノマー成分、若しくはバイオマス由来のモノマー成分と石油資源由来のモノマー成分とを重合することを特徴とする、ASTMD6866−10に準拠して測定したpMC(percent Modern Carbon)が1%以上、ガラス転移温度(Tg)が−120〜−60℃であるバイオマス由来ゴムの製造方法に関する。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
本発明によれば、バイオマス由来のモノマー成分を重合して得られ、ASTMD6866−10に準拠して測定したpMC(percent Modern Carbon)が1%以上、ガラス転移温度(Tg)が−120〜−60℃であるバイオマス由来ゴムを含み、前記モノマー成分が、ブタジエン、ミルセン、オシメン、及びコスメンからなる群より選択される少なくとも1種であるスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物であるので、循環型社会の要求に応えながら、従来の合成ゴムを用いた場合と同等の良好な低温特性、雪氷上性能が得られる。従って、該ゴム組成物をスタッドレスタイヤに用いることにより、循環型社会の要求に応えながら、従来の合成ゴムを用いたスタッドレスタイヤと同等の低温特性、雪氷上性能を有するスタッドレスタイヤを提供できる。
ブタジエンの製造に用いた装置を簡略的に示す模式図である。
本発明のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物は、バイオマス由来のモノマー成分を重合して得られ、ASTMD6866−10に準拠して測定したpMC(percent Modern Carbon)が1%以上、ガラス転移温度(Tg)が−120〜−60℃であるバイオマス由来ゴムを含み、前記モノマー成分が、ブタジエン、ミルセン、オシメン、及びコスメンからなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明では、ゴム成分として、ブタジエン、ミルセン、オシメン、及びコスメンからなる群より選択される少なくとも1種のバイオマス由来のモノマー成分(以下、単に、バイオマス由来のモノマー成分ともいう)を重合して得られ、ASTMD6866−10に準拠して測定したpMCが1%以上、ガラス転移温度(Tg)が−120〜−60℃であるバイオマス由来ゴムを使用する。
pMCとは、標準現代炭素(modern standard reference)の14C濃度に対する試料の14C濃度の比であり、本発明では、この値が化合物(ゴム)のバイオマス比率を示す指標として用いられる。この値の持つ意義について、下記に述べる。
炭素原子1モル(6.02×1023個)中には、通常の炭素原子の約一兆分の一である約6.02×1011個の14Cが存在する。14Cは放射性同位体と呼ばれ、その半減期は5730年で規則的に減少している。これらが全て崩壊するには22.6万年を要する。従って大気中の二酸化炭素等が植物等に取り込まれて固定化された後、22.6万年以上が経過したと考えられる石炭、石油、天然ガス等の化石燃料においては、固定化当初はこれらの中にも含まれていた14C元素は全てが崩壊している。故に21世紀である現在においては、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料には14C元素は全く含まれていない。故にこれらの化石燃料を原料として生産された化学物質にも14C元素は全く含まれていない。
一方、14Cは宇宙線が大気中で原子核反応を行い、絶え間なく生成され、放射壊変による減少とがバランスし、地球の大気環境中では、14Cの量は一定量となっている。従って、現在の環境中で物質循環しているバイオマス資源由来の物質の14C濃度は、上記のとおりC原子全体に対して約1×10−12mol%程度の値となる。従って、これらの値の差を利用して、ある化合物(ゴム)中の天然資源由来の化合物(バイオマス資源由来の化合物)の比率(バイオマス比率)を算出する事が出来る。
この14Cは、次のようにして測定することが一般的である。タンデム加速器をベースとした加速器質量分析法を使用し、13C濃度(13C/12C)、14C濃度(14C/12C)の測定を行う。測定では、14Cの濃度の基準となるmodern standard referenceとして、1950年時点の自然界における循環炭素中の14C濃度を採用する。具体的な標準物質としては、NIST(National Institute of Standards and Technology:米国国立標準・技術研究所)が提供するシュウ酸標準体を用いる。このシュウ酸中の炭素の比放射能(炭素1g当たりの14Cの放射能強度)を炭素同位体毎に分別し、13Cについて一定値に補正して、西暦1950年から測定日までの減衰補正を施した値を標準の14C濃度の値(100%)として用いる。この値と、実際に測定した試料の値の比が、本発明で用いるpMC値となる。
したがって、ゴムが100%バイオマス(天然系)由来の物質で製造されたものであれば、地域差等あるものの、おおよそ110pMC程度の値を示すことになる(現在は通常の状態では、100とならないことが多い)。一方、石油等の化石燃料由来の化学物質について、この14C濃度を測定した場合、ほぼ0pMC(例えば、0.3pMC)を示すことになる。この値が上述で言うバイオマス比率0%に相当する。
以上のことから、pMC値の高いゴム、すなわち、バイオマス比率の高いゴムをスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物に用いることは、環境保護の面で好適である。
ASTMD6866−10に準拠して測定したバイオマス由来ゴムのpMC(この値は、バイオマス由来ゴムのバイオマス比率を示す)は、1%以上であり、好ましくは10%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは100%以上であり、上限は特に限定されない。循環型社会の要求により応えることができることから、pMCは高いほど好ましい。なお、上述のように、標準物質との比率で計算されるという性質上、100%を超える値を取り得る。
なお、本発明において、ゴム(バイオマス由来ゴム)のpMCは、ASTMD6866−10に準拠して測定して得られる値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
なお、実施例に記載のように、ゴムの14C濃度を分析するためには、まずゴムの前処理が必要となる。具体的には、ゴムに含まれる炭素を酸化処理し、すべて二酸化炭素へと変換する。更に、得られた二酸化炭素を水や窒素と分離し、二酸化炭素を還元処理し、固形炭素であるグラファイトへと変換する必要がある。そして、この得られたグラファイトにCs等の陽イオンを照射して炭素の負イオンを生成させ、タンデム加速器を用いて炭素イオンを加速し、負イオンから陽イオンへ荷電変換させ、質量分析電磁石により123+133+143+の進行する軌道を分離し、143+は静電分析器により測定を行うことができる。
バイオマス由来ゴムのガラス転移温度(Tg)は、−120〜−60℃である。Tgがこの範囲内であることにより、従来から使用されている100%バイオマス由来ゴムである天然ゴムでは達成できなかった、低温特性、雪氷上性能をタイヤに付与することができる。該Tgは、−80℃以下であることが好ましく、−90℃以下であることがより好ましく、−95℃以下であることが更に好ましく、−100℃以下であることが特に好ましい。Tgが−60℃を超えると、低温特性、雪氷上性能が低下する傾向にある。また、該Tgは、好ましくは−115℃以上である。Tgが−120℃未満のゴムを得ることは困難であり、汎用として適さない可能性がある。
なお、本発明において、ゴム(バイオマス由来ゴム)のTgは、実施例に記載の方法により測定できる。
本発明では、バイオマス由来のモノマー成分を重合して得られ、pMCが特定値以上、特定のガラス転移温度を有するバイオマス由来ゴムをスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物に使用することにより、循環型社会の要求に応えながら、従来の合成ゴムを用いたスタッドレスタイヤと同等の低温特性、雪氷上性能を有するスタッドレスタイヤを提供するという従来技術では解決できなかった課題を解決できる。
バイオマス由来ゴムとしては、ミルセン重合体、ジエン系ゴムであることが好ましく、ジエン系ゴムであることがより好ましく、良好な低温特性、雪氷上性能が得られるという理由から、ポリブタジエンゴム(バイオマスポリブタジエンゴム(BBR))であることが更に好ましい。
ここで、ジエン系ゴムとしては、上記pMC及びTgを満たす範囲であれば、ジエン系モノマー以外の他のモノマー成分(芳香族ジエン系モノマー(スチレン等)、モノテルペン(ミルセン等)等共重合可能なモノマー成分)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
また、BBRとしては、上記pMC及びTgを満たす範囲であれば、ブタジエン以外の他のモノマー成分(ブタジエン以外のジエン系モノマー(イソプレン等)、芳香族ジエン系モノマー(スチレン等)、モノテルペン(ミルセン等)等共重合可能なモノマー成分)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
良好な耐摩耗性、耐屈曲疲労性が得られるという理由から、BBRのシス含量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
なお、BBRのシス含量は、実施例に記載の方法により測定できる。
良好な耐摩耗性、耐屈曲疲労性が得られるという理由から、BBRのMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5である。
なお、BBRのMw、Mnは、実施例に記載の方法により測定できる。
上記バイオマス由来ゴムは、バイオマス由来のモノマー成分を重合して得られたゴムである。
なお、本発明では、バイオマス由来のモノマー成分を重合して得られたゴムには、バイオマス由来のモノマー成分を従来法に従って重合したゴムだけではなく、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体(以下においては、微生物等ともいう)による反応や酵素反応により得られたゴムも含まれる。
また、本発明では、バイオマスのことをバイオマス資源ともいう。
本発明において、バイオマス(バイオマス資源)とは、生物由来のカーボンニュートラルな有機性資源を意味し、具体的にはデンプンやセルロース等の形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれ、そして化石資源を除く資源である。
バイオマス資源としては、可食であっても、非可食であってもかまわず、特に制限されない。食料と競合せず、資源の有効利用の観点からは、非可食原料を用いることが好ましい。
バイオマス資源の具体例としては、例えば、セルロース系作物(パルプ、ケナフ、麦わら、稲わら、古紙、製紙残渣等)、木材、木炭、堆肥、天然ゴム、綿花、サトウキビ、おから、油脂(菜種油、綿実油、大豆油、ココナッツ油、ヒマシ油等)、炭水化物系作物(トウモロコシ、イモ類、小麦、米、籾殻、米ぬか、古米、キャッサバ、サゴヤシ等)、バガス、そば、大豆、精油(松根油、オレンジ油、ユーカリ油等)、パルプ黒液、生ごみ、植物油カス、水産物残渣、家畜排泄物、食品廃棄物、藻類、排水汚泥等が挙げられる。
バイオマス資源としては、これらを処理したもの(すなわち、バイオマス由来物質)であってもよい。処理方法としては、例えば、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体等の働きを利用した生物学的処理方法;酸、アルカリ、触媒、熱エネルギー、光エネルギー等を利用した化学的処理方法;微細化、圧縮、マイクロ波処理、電磁波処理等の物理的処理方法等の既知の方法が挙げられる。
また、バイオマス資源としては、上記バイオマス資源や上記処理を行ったバイオマス資源から、抽出、精製したもの(すなわち、バイオマス由来物質)であってもよい。例えば、バイオマス資源から精製した糖類、たんぱく質、アミノ酸、脂肪酸、脂肪酸エステル等であってもかまわない。
糖類としては、バイオマス由来であれば特に限定されず、例えば、スクロース、グルコース、トレハロース、フルクトース、ラクトース、ガラクトース、キシロース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、マンノース、イドース、アラビノース、アピオース、マルトース、セルロース、デンプン、キチン等が挙げられる。
たんぱく質としては、バイオマス由来で、アミノ酸(好ましくはL−アミノ酸)が連結してできた化合物であれば特に限定されず、ジペプチド等のオリゴペプチドも含む。
アミノ酸としては、バイオマス由来で、アミノ基とカルボキシル基の両方の官能基を持つ有機化合物であれば特に限定されず、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、リジン、アスパラギン、グルタミン等が挙げられる。なかでも、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニンが好ましい。なお、アミノ酸は、L型であってもD型であってもよいが、天然における存在量が多く、バイオマス資源として使用しやすいという理由から、L型が好ましい。
脂肪酸としては、バイオマス由来であれば特に限定されず、例えば、酪酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、バイオマス由来であれば特に限定されず、例えば、動物由来脂、植物油、バイオマス由来油脂改質物等が挙げられる。
バイオマス資源としては、種々の材料、不純物が混合していてもかまわないが、バイオマス100質量%中の糖類の含有量が20質量%以上であることが、効率的な変換のために好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。また別の形態では、バイオマス100質量%中のアミノ酸及びたんぱく質の合計含有量が10質量%以上であることが、効率的な変換のために好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。さらに別の形態では、バイオマス100質量%中の脂肪酸及び脂肪酸エステルの合計含有量が10質量%以上であることが、効率的な変換のために好ましい。
バイオマス由来のモノマー成分は、ブタジエン(1,3−ブタジエン)、ミルセン(β−ミルセン)、オシメン(β−オシメン)、及びコスメンからなる群より選択される少なくとも1種である。また、バイオマス由来のモノマー成分として、これらに加えて、チグリン酸、アンゲリカ酸等のヘミテルペン類;セスキテルペン類;スクアレン類;ジテルペン類;カロテノイド類等を使用してもよい。バイオマス由来のモノマー成分としては、良好な低温特性、雪氷上性能が得られるという理由から、ブタジエン(1,3−ブタジエン)が好ましい。
なお、ミルセンは月桂樹やバーベナ、オシメンはラベンダーやリママメ、コスメンはコスモス等から抽出可能である。
バイオマス由来ゴムを構成するモノマー成分100mol%中のブタジエンの割合は、良好な低温特性、雪氷上性能が得られるという理由から、好ましくは50mol%以上、より好ましくは70mol%以上、更に好ましくは80mol%以上、特に好ましくは90mol%以上、最も好ましくは95mol%以上であり、100mol%であってもよい。
以下においては、代表例として、バイオマス由来ゴムが、バイオマス由来のブタジエンを重合して得られたBBRである場合について具体的に説明する。なお、上述のように、本発明では、バイオマス由来のブタジエンを重合して得られたBBRには、バイオマス由来のブタジエンを従来法に従って重合したBBRだけではなく、微生物等による反応や酵素反応により得られたBBRも含まれる。
バイオマス資源からブタジエンを調製する方法としては、種々の方法をあげることができ、特に限定されない。例えば、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種によって、バイオマス資源から直接ブタジエンを得る生物学的処理方法;上記化学的処理方法をバイオマス資源に施すことによりブタジエンを得る方法;上記物理的処理方法をバイオマス資源に施すことによりブタジエンを得る方法;インビトロの酵素反応等でバイオマス資源をブタジエンに変換する方法;これらの方法を組み合わせる方法等が挙げられる。なお、バイオマス資源をブタジエンに変換する微生物、植物、動物は、遺伝子操作されていても、されていなくても構わない。
微生物等を用いたバイオマス資源からブタジエンへの直接変換法は特に限定されないが、アミノ酸をアルキルアルコール類及び/又はヘミテルペン類に変換する生体内経路を用いて行うことが可能である。
アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニンが好ましい。また、ヘミテルペン類としては、チグリン酸及び/又はアンゲリカ酸が好ましい。
好ましい例としては、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体に、デカルボキシラーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子、及び/又はレダクターゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子を導入及び/又は改変して、アミノ酸及び/又はヘミテルペン類よりブタジエンを得る方法が挙げられる。
デカルボキシラーゼ活性を有する酵素としては、例えば、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.33)、各種アミノ酸デカルボキシラーゼ、レダクターゼ活性を有する酵素としては、HMG−CoAレダクターゼ、12−オキソフィトジエン酸レダクターゼ(E.C. 1.3.1.42)等が挙げられる。
アミノ酸を経由する生体内反応によりブタジエンを発酵で生産する好ましい例としては、イソロイシンから微生物等が有する天然の代謝経路に沿って生体内合成されるチグリン酸及び/又はアンゲリカ酸に各種脱炭酸酵素を作用させることにより生産する方法が挙げられる。他にもアミノ酸の代謝途中に生産される各種脂肪酸誘導体を利用して、脱炭酸酵素反応により、ブタジエンを得ることができる。
ブタジエンを得るために必要なアミノ酸は、直接培地に添加しても構わないが、好ましい例としては、植物粉砕物、畜産廃棄物等の発酵により生体内でアミノ酸を生合成して、生合成したアミノ酸を利用することが好ましい。この場合には、糖類及び/又はたんぱく質類からブタジエンゴムが変換されることとなる。
一般的な発酵によるアルコール、アルケン類の製造方法が、バイオマス資源として主に糖類を利用するのに対して、この製造方法では、アミノ酸、たんぱく質を中心としたバイオマス資源も有効活用することもできる可能性が大きいため、有用である。
バイオマス資源からブタジエンを調製する他の方法としては、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種によって、バイオマス資源より、ブタジエンを合成可能な中間体を得て、得られた中間体に対して、触媒反応等の上記化学的処理方法、上記物理的処理方法、上記インビトロの酵素反応、これらの方法を組み合わせる方法等を施すことによりブタジエン(ブタジエン等のジエン)を得る方法も好ましく用いられる。
ブタジエンを合成可能な中間体としては、アルキルアルコール類、アリルアルコール類、アルケン類、アルデヒド類、不飽和カルボン酸類等が挙げられる。
アルキルアルコール類としては、バイオマス由来であれば特に限定されず、エタノール、ブタノール、ブタンジオールが好ましく、ブタノール、ブタンジオールがより好ましい。なお、ブタノールは、1−ブタノールであっても、2−ブタノールであってもかまわず、これらの混合物であってもかまわない。
微生物等を使用して、バイオマス資源からエタノール(バイオマス資源由来のエタノールをバイオエタノールともいう)やブタノール(バイオマス資源由来のブタノールをバイオブタノールともいう)を発酵により製造する方法としては、公知の方法が種々知られており、酵母によるエタノール発酵により、バイオマス資源(例えば、サトウキビやグルコース)からバイオエタノールを得る方法、発酵菌類によるアセトン・ブタノール発酵(ABE発酵)により、バイオマス資源(例えば、グルコース)からバイオブタノールを得る方法が一般的である。ABE発酵の場合には、ブタノール、アセトン等の混合溶媒が得られるので、これを蒸留することでバイオブタノールが得られる。さらにブタノールは、バイオエタノールから触媒反応により直接、もしくはアセトアルデヒドを経て得ることも可能である。
ABE発酵を行う微生物は、ABE発酵を行うことが可能な微生物であれば特に限定されず、例えば、エシュリヒア(Escherichia)属、ジモモナス(Zymomonas)属、カンジダ(Candida)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、クロストリジウム(Clostridium)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属等に属する微生物が挙げられる。これらは、野性株、変異株、または細胞融合もしくは遺伝子操作等の遺伝子工学的手法によって誘導された組み換え株等、いずれの形態の株でも用いることができる。なかでも、クロストリジウム属に属する微生物が好ましく、Clostridium acetobutylicum、Clostridium beijerinckii、Clostridium saccharobutylicum、Clostridium saccharoperbutylacetonicumがより好ましい。
バイオブタノールを生産する方法の好ましい例の一つとして、例えば、メバロン酸経路に関連する遺伝子、MEP/DOXP経路に関連する遺伝子、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、及びブタノールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種の遺伝子が導入されている微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種による発酵によりブタノールを得る方法が挙げられる(例えば、特表2010−508017号公報)。
また、バイオマス資源から発酵により製造されたエタノールやブタノールは、バイオエタノール、バイオブタノール(例えば、デュポン社製のバイオブタノール)として商業的にも流通している。
また、ブタンジオールは、バイオプラスチックの原料として各種発酵により直接製造する方法(例えば、Syu MJ,Appl Microbial Biotechnol 55:10−18(2001)、Qinら,Chinese J Chem Eng 14(1):132−136(2006)、特表2011−522563号公報、特開昭62−285779号公報、特開2010−115116号公報等)が開発されており、バイオ由来ブタンジオールとして容易に用いることができる。さらにバイオマス由来のコハク酸、フマル酸、フルフラール等を変換することにより、ブタンジオールを製造してもよい。
上記ブタンジオール発酵を行う微生物は、ブタンジオール発酵を行うことが可能な微生物であれば特に限定されず、例えば、エシュリヒア(Escherichia)属、ジモモナス(Zymomonas)属、カンジダ(Candida)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、クロストリジウム(Clostridium)属、クリプシエラ(Klebsiella)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属等に属する微生物が挙げられる。これらは、野性株、変異株、または細胞融合もしくは遺伝子操作等の遺伝子工学的手法によって誘導された組み換え株等、いずれの形態の株でも用いることができる。なかでも、バチルス属、クロストリジウム属、クリプシエラ属に属する微生物が好ましく、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、Bacillus polymyxa、Bacillus subtilis、Bacillus pumilus、Bacillus macerans、Bacillus licheniformis、Bacillus megaterium、Klebsiella pneumoniaeがより好ましい。
前記アルキルアルコール類からは、発酵等の上記生物学的処理方法や、触媒反応等の上記化学的処理方法、上記物理的処理方法、上記インビトロの酵素反応、これらの方法を組み合わせる方法等を施すことによりブタジエンに変換することができる。
アルキルアルコール類からブタジエンへの直接変換法としては、例えば、ヒドロキシアパタイト、Ta/SiO、アルミナ、ゼオライト等の脱水、脱水素化触媒を用いて、エタノール及び/又はブタノールをブタジエンへ変換する方法が知られている。
アリルアルコール類としては、バイオマス由来であれば特に限定されず、ブタジエンへの変換の容易さから、クロチルアルコール、3−ブテン−2−オールが好ましい。
クロチルアルコール、3−ブテン−2−オールは、微生物等の発酵により、バイオマス資源より直接得てもよいし、バイオマス由来のクロトン酸やその誘導体を還元することにより得てもよい。また、バイオマス由来のブタンジオールをゼオライト、アルミナ、酸化セリウム等を触媒としてクロチルアルコールを得ることも可能である(例えば、特開2004−306011号公報)。
アリルアルコール類からブタジエンへの変換方法としては、例えば、一般的に知られているゼオライト、アルミナ等の接触還元触媒により脱水することによりクロチルアルコールからブタジエンへ変換する方法等が挙げられる。
アルケン類としては、バイオマス由来であれば特に限定されず、エチレン、ブテン(別名ブチレン)が好ましく、エチレンがより好ましい。
バイオマス由来のエチレン、ブテンの製法としては、例えば、バイオエタノールをアルミナ、ゼオライト等の脱水触媒もしくは高温処理にてエチレンにする方法、バイオブタノールをアルミナ、ゼオライト等の脱水触媒もしくは高温処理にてブテンに変換する方法等が挙げられる。
また、上記アルケン類(エチレン、ブテン)は、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種を用いた発酵により、バイオマス資源から直接得ることも可能である。
上記エチレン発酵を行う微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体は、ACCシンターゼ(エチレンシンターゼ)活性を有する酵素をコードする遺伝子を導入及び/又は改変されているものであることが生産効率の点で好ましいが、この限りではない。
上記ブテン発酵を行う微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体は、ジホスホメバロン酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.33)活性を有する酵素をコードする遺伝子を導入及び/又は改変されているものであることが好ましいが(例えば、特表2011−526489号公報)、この限りではない。
上記アルケン類からブタジエンへの変換方法としては、例えば、ブテンをアルミナ、ゼオライト等でブタジエンに変換する方法、エチレンを塩化パラジウム等の酸化触媒で部分的にアセトアルデヒドに変換した後、残存エチレンと脱水反応することによりブタジエンを得る方法等が挙げられる。
アルデヒド類としては、バイオマス由来であれば特に限定されず、アセトアルデヒドが好ましい。
アセトアルデヒドは、バイオマス資源より直接、微生物等の発酵により得てもよいし、バイオマス由来のエチレンから塩化パラジウム等の酸化触媒によりアセトアルデヒドに変換して得てもよい。
上記アルデヒド類からブタジエンへの変換方法としては、例えば、エチレンと脱水反応する方法等が挙げられる。
不飽和カルボン酸類としては、バイオマス由来であれば特に限定されず、チグリン酸、アンゲリカ酸が好ましい。
チグリン酸、アンゲリカ酸は、バイオマス資源より直接、微生物等の発酵により得てもよい。具体的には、チグリン酸、アンゲリカ酸は、イソロイシンから微生物等が有する天然の代謝経路により生体内合成できる。また、ハズ油等から精製してもよい。
上記不飽和カルボン酸類からブタジエンへの変換方法としては、例えば、チグリン酸やアンゲリカ酸に、各種脱炭酸酵素を作用させることにより変換する方法、金属触媒、ゼオライト、アルミナ等を作用させることにより変換する方法等が挙げられる。
上述の方法等により、バイオマス資源から得られたブタジエンからポリブタジエンゴム(バイオマスポリブタジエンゴム(BBR))を重合する方法は、当業者にとって公知の方法である、石油資源由来のブタジエンからポリブタジエンゴムを重合する方法と同様であり、特に限定されるものではない。
バイオマス資源から得られたブタジエンとしては、入手容易性、得られるBBRの性能等の観点から、アルキルアルコール類(好ましくはエタノール、ブタノール(より好ましくはブタノール))由来のブタジエン、アルケン類(好ましくはエチレン)由来のブタジエン、不飽和カルボン酸類(好ましくはチグリン酸)由来のブタジエンを好適に使用できる。また、これらのブタジエンを組み合わせて使用することも好適である。
得られるBBRの分子量、分岐、ミクロ構造は、求めるタイヤの性能に合わせて、公知の方法に従って重合条件を変更することにより任意に選択することができる。また、ブタジエン以外の他のモノマー成分(ブタジエン以外のジエン系モノマー(イソプレン等)、芳香族ジエン系モノマー(スチレン等)、モノテルペン(ミルセン等)等共重合可能なモノマー成分)と任意の割合(ただし、上記pMC及びTgを満たす割合に限る)で、共重合させることも可能である。また、バイオマス資源から得られたブタジエンは、バイオマス資源から得られたブタジエン以外のブタジエン(石油資源由来のブタジエン)と併せて使用してもよい。
一方で、現在、バイオエタノール、バイオエチレン等を中心としたバイオマスコンビナートの計画が一部に存在するが、バイオエタノール、バイオエチレンは、主に糖類及び/又はセルロース類をバイオマス資源として製造されており、たんぱく質、脂質、アミノ酸といった他のバイオマス資源を有効に活用することができていない。さらに、糖類は食料との競合、セルロースの乱獲は森林伐採に繋がり、必ずしも環境に配慮されていない状況も起こり得る。
そのため、種々のバイオマス資源の供給状況、石油資源の供給状況、市場の要求(例えば、バイオマス資源の食料としての需要との競合動向)といった総合的な環境への要望に応じて、上記バイオマス由来のモノマー成分として、バイオマス由来のモノマー成分を複数使用したり、バイオマス由来のモノマー成分と石油資源由来のモノマー成分とを併用したり、これらのモノマー成分の使用比率を最適な比率になるように調整して使用したりすることが好ましい。これにより、一種類のバイオマス資源に頼ることなく、糖、たんぱく質、脂質等幅広いバイオマス資源を有効に活用することができ、バイオマス由来ゴムの供給の安定化、製造時の状況に応じた環境への配慮を行うことができる。例えば、バイオマス由来のブタジエンは、バイオエタノール、バイオブタノール、テルペン類他前記の様々な基質を利用して得ることが可能である。
なお、バイオマス由来のモノマー成分を複数使用する場合には、異なるバイオマスを由来とするモノマー成分、すなわち、異なるバイオマス資源から得られたモノマー成分を使用することが好ましい。これにより、複数のバイオマス資源を有効活用することができ、上述の総合的な環境への要望により好適に応じることができる。
また、バイオマス資源から得られたブタジエンからBBRに変換する別の好ましい例としては、酵素反応を利用する方法がある。ゴムラテックスに含まれるいくつかの酵素(長鎖プレニル鎖延長酵素)はジエンの重合反応を促進する効果があることが知られており、これらの酵素を利用してインビボ又はインビトロで重合を行うことができる。
長鎖プレニル鎖延長酵素としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。
BBRをバイオマス資源から直接得る方法としては、例えば、ジエン重合能を保有する微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種を培養(組織培養)することによって、バイオマス資源より直接BBRに変換する方法、ブタジエン(好ましくはバイオマス資源から得られたブタジエン)を添加した培地で、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種を培養することによって、BBRを重合させる方法等が挙げられる。
上記ジエン重合能を保有する微生物等としては、例えば、パラゴムノキ、インドゴムノキ、タンポポ、イチヂク、ノゲシ、セイタカアワダチソウ、グアユーレ、サボジラ、トチュウ等の植物やそれらの組織培養体が好適に挙げられる。
なお、微生物等を培養する場合、通常、炭素源としてグルコース等の糖類が使用されるため、微生物等により製造される化合物は、全てバイオマス資源由来物質に該当する。
以上の説明のように、BBRは、原料ブタジエン(モノマー成分であるブタジエン)の少なくとも一部として、バイオマスから始める反応(バイオマス資源からブタジエンへの1段階の反応(バイオマス資源からブタジエンを直接生成させる反応)または一連の反応(バイオマス資源を開始物質としてブタジエンを生成させる一連の反応)によって得られものを使用して重合して得られたものである。
ゴム成分100質量%中のバイオマス由来ゴム(好ましくはBBR)の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。また、該含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。バイオマス由来ゴム(好ましくはBBR)の含有量が上記範囲内であると、良好な低温特性、雪氷上性能、耐摩耗性、耐屈曲疲労性が得られる。
バイオマス由来ゴム以外に使用できるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ジエン系合成ゴム(イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等)が挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、バイオマス由来ゴムと併用することにより、循環型社会の要求に応えながら、良好な低温特性、雪氷上性能、耐屈曲疲労性が得られるという理由から、NRが好ましい。
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。NRの含有量が上記範囲内であると、循環型社会の要求に応えながら、良好な低温特性、雪氷上性能、耐摩耗性、耐屈曲疲労性が得られる。
本発明のゴム組成物は、充填剤を含むことが好ましい。充填剤としては、タイヤにおいて公知に使用されているものであれば、限定無く使用できる。前記充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、クレー、炭酸カルシウム、モンモリロナイト、セルロース、ガラスバルーン、各種短繊維等が挙げられる。前記充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウムがタイヤ物性の面で好ましい。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても構わない。
上記充填剤の配合量は、ゴム100質量部に対して、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜180質量部、更に好ましくは30〜150質量部、特に好ましくは35〜55質量部である。10質量部未満であると、ゴム組成物の強度が不十分となり、耐摩耗性、耐屈曲疲労性、雪氷上性能が低下する傾向がある。一方、200質量部を超えると、充填剤がゴムに充分に分散せず、ゴム物性(低燃費性、耐摩耗性、耐屈曲疲労性、雪氷上性能)が低下する傾向がある。
上記充填剤のなかでも、シリカを含むことが、タイヤの低燃費性、低温特性、雪氷上性能向上の点から好ましい。
シリカのBET法による窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましい。50m/g未満では、ゴム強度が低下し、耐摩耗性、耐屈曲疲労性が低下する傾向がある。また、該NSAは、250m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましい。250m/gを超えると、加工性が悪化し、低燃費性、耐摩耗性、耐屈曲疲労性が悪化する傾向にある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。該シリカの含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは50質量部以下、最も好ましくは25質量部以下である。シリカの含有量が上記範囲内であると、良好な低燃費性が得られるとともに、良好な補強効果(耐摩耗性、耐屈曲疲労性)、低温特性、雪氷上性能も得られる。
上記充填剤のなかでも、カーボンブラックを含むことが、タイヤの耐摩耗性、耐屈曲疲労性向上の点から好ましい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は50m/g以上が好ましく、90m/g以上がより好ましい。50m/g未満では、充分な補強性が得られず、充分な耐摩耗性、耐屈曲疲労性、雪氷上性能が得られないおそれがある。該NSAは、180m/g以下が好ましく、130m/g以下がより好ましい。180m/gを超えると、分散させるのが困難となり、低燃費性、耐摩耗性、耐屈曲疲労性、雪氷上性能が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。5質量部未満では、充分な耐摩耗性、耐屈曲疲労性、雪氷上性能が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。100質量部を超えると、分散性が悪化し、低燃費性、耐摩耗性、耐屈曲疲労性、雪氷上性能が悪化する傾向がある。
スタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物には、上記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、シランカップリング剤、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックス、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等を適宜配合できる。
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、上記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
また、ゴム組成物を製造する際の、バイオマス資源の供給状況、石油資源(例えば、石油資源由来のモノマー成分)の供給状況、及び/又は市場の要求(例えば、バイオマス資源の食料としての需要との競合動向)といった総合的な環境への要望に応じて、バイオマス由来のモノマー成分、石油資源由来のモノマー成分の比率を適宜選択して、適宜選択された比率で、バイオマス由来のモノマー成分、若しくはバイオマス由来のモノマー成分と石油資源由来のモノマー成分とを重合して、バイオマス由来ゴムを重合することにより、従来の合成ゴムを用いた場合と同等の性能のバイオマス由来ゴムを製造することができる。
本発明のスタッドレスタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
本発明のスタッドレスタイヤは、乗用車用スタッドレスタイヤ、トラック・バス用スタッドレスタイヤ、二輪車用スタッドレスタイヤ、競技用スタッドレスタイヤ等として好適に用いられる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
下記製造例で得られたブタジエン、ポリブタジエンゴムについて、下記の方法にて評価を行った。
(ブタジエン、ポリブタジエンゴムのpMC)
ブタジエン、ポリブタジエンゴムのpMCは、下記の方法にて、ASTMD6866−10に準拠して測定した。
試料(ブタジエン又はポリブタジエンゴム)を燃焼させ、二酸化炭素(CO)を発生させ、該二酸化炭素を真空ラインで精製した。次に、鉄を触媒として、精製した二酸化炭素を水素で還元し、グラファイト(C)を生成させた。そして、得られたグラファイトを内径1mmのカソードにハンドプレス機で詰め、それをホイールにはめ込み、測定装置(タンデム加速器をベースとした14C−AMS 専用装置(NEC社製))に装着した。該測定装置により、14C濃度、13C濃度の測定を行い,米国国立標準局(NIST)から提供されたシュウ酸を標準試料として、バイオマス比率を示すpMC(%)を算出した。なお、pMCの算出の際に、13C濃度値による補正を行った。
(ポリブタジエンゴムのシス含量)
BRUKER社製AV400のNMR装置、データ解析ソフトTOP SPIN2.1を用いてシス含量を測定した。
(ポリブタジエンゴムのガラス転移温度(Tg))
JIS−K7121に従い、(株)島津製作所製の自動示差走査熱量計(DSC−60A)を用いて、昇温速度10℃/分の条件でガラス転移温度(Tg)を測定した。
(ポリブタジエンゴムの分子量分布(Mw/Mn))
下記の条件(1)〜(8)でゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定した。そして、測定したMw、Mnから重合体の分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(1)装置:東ソー社製HLC−8020
(2)分離カラム:東ソー社製GMH−XL(2本直列)
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)注入量:5μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
製造例1(ブタノールからブタジエンを製造)
<バイオブタノールの製造>
300mlの発酵槽(DASGIP)にSoni et al(Soni et al,1987,Appl.Microbiol.Biotechnol.27:1−5)に記載の250mlの合成培地(糖類を含む)を満たし、窒素で30分スパージした。そこにClostridium acetobutylicum(ATCC824)を嫌気性条件下で、接種した。培養温度は35℃に一定維持し、pHはNHOH溶液を用い、5.5に調節した。培養中、嫌気性条件を維持し、振盪速度は300rpmで維持した。5日間培養後、培養液を蒸留し、従来より周知となっているイオン交換樹脂法により分離して、バイオブタノール(1−ブタノール)を得た。
<バイオブタノールからブタジエンを製造>
図1に示す装置を用いて、<バイオブタノールの製造>により得られたバイオブタノール(1−ブタノール)を原料として、バイオマス由来ブタジエンを合成した。
アルコール導入管(原料導入管)21と、導入されたアルコールを気化させる加熱装置(電気炉)22と、該アルコールを脱水反応させる脱水反応用カラム23と、該脱水反応で得られた生成物を冷却して精製アルケン混合物から水を除去するための冷却装置24と、該アルケンを気化させる加熱装置25と、該アルケンからさらに脱水素反応してブタジエンを合成する二段目反応カラム26と、生成した反応生成物を回収するための冷却装置27とを備える装置(図1参照)を用いた。脱水反応用カラム23は、触媒として酸化アルミニウム(メルク(株)製の101095100)を10g充填した。
二段目の脱水素化反応の触媒は、以下のようにして調整した。硝酸クロム5.8gをイオン交換水に溶解させ、この中にSSZ−35型ゼオライト(シリカ/アルミナ比:40)6gを入れて含浸させ、一晩放置した。その後、100℃のオーブン中で乾燥させて前駆体を得た。この前駆体をセラミックス製容器中に入れ、空気の存在下に700℃で3時間の焼成を行って、クロム10質量%を含むクロム担持ゼオライト触媒を得た。
そして、二段目反応カラム26に、前記クロム担持ゼオライト触媒を10g充填した。
ガス導入管(図示せず)より脱水反応用カラム23に窒素ガスを供給した。窒素ガスの供給速度はLHSV換算で1/hrとした。加熱装置22によって脱水反応用カラム23を所定温度まで昇温した後、アルコール導入管21よりバイオブタノールを所定量供給した。反応条件は、反応温度:500℃、反応圧力:常圧、バイオブタノールと窒素とのモル比(バイオブタノール/窒素):50/50とした。反応時間は2時間とした。生成物を脱水反応用カラム23に連結された冷却装置(生成物トラップ)24に集め、水を分離した。
二段目反応カラム26は、500℃に加熱した。冷却装置(生成物トラップ)27は、−20℃に冷却した。冷却装置(生成物トラップ)24を通じて、予備加熱した混合気体(一段目の脱水反応で得られたブテン混合物/窒素/空気を1:1:1)を供給速度はLHSV換算で1/hr導入し、得られた反応混合物を特開昭60−115532号公報に記載の方法で分離、精製することにより、バイオマス由来のブタジエンを8%の収率で得た。得られたブタジエン(バイオマス由来ブタジエン)のバイオマス比率を示すpMCの値は、105%であった。
製造例2(バイオエタノールからブタジエンを製造)
図1の装置を用いて、エタノールをブタジエンに変換する公知の方法(Kirshenbaum, I. (1978). Butadiene. In M. Grayson (Ed.), Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd ed., vol. 4, pp. 313−337. New York: John Wiley & Sons.)により、市販のバイオエタノールを用いて、バイオマス由来ブタジエンを合成した。得られたブタジエン(バイオマス由来ブタジエン)のバイオマス比率を示すpMCの値は、108%であった。
製造例3(バイオエチレンからブタジエンを製造)
酢酸パラジウム 0.5mmol/Lを、0.3mol/L NaPMo40 に溶解して調製した触媒を図1の装置の二段目反応カラム26に導入し、装置をアルゴン置換した。そこにバイオマス由来のエチレン(試作品、トウモロコシ由来バイオエタノールよりの製品)を導入した。装置を150℃、0.5MpaGの条件下で循環ライン28を通じて触媒溶液を循環させながら1時間反応した。冷却装置27のドレインを通じて触媒溶液を除去後、バイオエタノールを浸漬させたアルミナ触媒(住友化学社製アルミナKHA−46)を投入し、400℃で5時間反応させた。反応混合物をGC/MSにて分析することにより、ブタジエンの生成を確認した。得られたブタジエン(バイオマス由来ブタジエン)のバイオマス比率を示すpMCの値は、109%であった。
製造例4(チグリン酸からブタジエンを製造)
ハズ油より分離・精製したチグリン酸(生体内アミノ酸経由中間体)500mg、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)30mg、トリエチルホウ素10mgをアルゴン充填したオートクレーブにいれ、200℃で1時間反応させた。生成物をGC/MSで分析することにより、ブタジエンの生成を確認した。得られたブタジエン(バイオマス由来ブタジエン)のバイオマス比率を示すpMCの値は、108%であった。
製造例1〜4で得られたバイオマス由来ブタジエンをBRUKER社製AV400のNMR装置(データ解析ソフトTOP SPIN2.1)を用いて測定したところ、これらのブタジエンは、1,3−ブタジエンであることを確認した。
製造例5(バイオマスポリブタジエンゴム(BBR)の製造)
製造例1〜4で得られたバイオマス由来ブタジエン(1,3−ブタジエン)を混合したものを、モノマー成分として使用してBBR(本発明のバイオマス由来ゴムに相当)の合成を行った。
<触媒の調整>
オクタン酸ネオジム(0.09mmol)のシクロヘキサン溶液、メチルアルモキサン(2.7mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(4.7mmol)および四塩化ケイ素のシクロヘキサン溶液(0.09mmol)をネオジムの5倍量の1,3−ブタジエン(バイオマス由来ブタジエン)と50℃で30分間反応熟成させた。
<BBRの合成>
窒素置換した内容積5リットルのオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン(バイオマス由来ブタジエン)300gを仕込んだ。これらに、あらかじめ調整した触媒を投入し、50℃で30分間重合を行った。
重合終了後、2,4−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3gをメタノール溶液として添加し、脱溶媒した後乾燥して、バイオマスポリブタジエンゴム(BBR)を250g得た。得られたBBRのバイオマス比率を示すpMCは105%、Tgは−110℃、シス含量は99.0質量%、Mw/Mnは2.1であった。
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:RSS#3(Tg:−75℃)
BR:日本ゼオン(株)製のNipol BR1220
BBR:製造例5により得られたバイオマスポリブタジエンゴム(本発明のバイオマス由来ゴムに相当)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のシーストN220(NSA:114m/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(平均一次粒子径:15nm、NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi75
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
(実施例及び比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。次に、得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間、2mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物(加硫ゴムシート)を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形した後、他のタイヤ部材と貼り合わせて、未加硫タイヤを形成し、170℃で12分間プレス加硫することにより、試験用スタッドレスタイヤ(DS−2パターン、タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
得られた加硫ゴム組成物、試験用スタッドレスタイヤを下記により評価した。結果を表1に示す。
(1)低温硬度
加硫ゴム組成物について、JIS K6253に準じ、タイプA硬さ計にて−10℃で測定した。
結果は、比較例1を100として指数表示した。指数が小さいほど、硬度が低く、低温特性、雪氷上性能に優れる。
(2)Tg(ガラス転移温度)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度−100〜100℃、動歪み0.5%の条件下で各加硫ゴム組成物のtanδのピーク値を測定し、その測定値をTgとした。
(3)雪氷上性能
試験用スタッドレスタイヤを国産2000ccのFR車に装着し、下記の条件(氷上、雪上)にて、実車性能を評価した。具体的には、上記車両を用いて発進、加速及び停止についてフィーリングによるハンドリング性能の評価を行った。フィーリング評価は、比較例1を100として基準とし、明らかに性能が向上したとテストドライバーが判断したものを120、これまでで全く見られなかった良いレベルであるものを140とする様な評点付けをした。
(氷上) (雪上)
試験場所 : 北海道名寄テストコ−ス 北海道名寄テストコ−ス
気温 : −1〜−6℃ −2〜−10℃
Figure 0006317498
表1から、比較例2、3では、ゴム成分として、NRと共にBRを配合しているため、良好な低温特性、雪氷上性能が得られているものの、ゴム成分全体のpMCが低く、循環型社会の要求に充分に応えることができていない。一方、比較例1では、ゴム成分として、NR100質量%を採用しているため、ゴム成分全体のpMCが高くなり、循環型社会の要求に応えることはできるものの、低温特性、雪氷上性能が大幅に低下した。それに対して、実施例では、ゴム成分として、NRと共にBBRを配合しているため、ゴム成分全体のpMCが高くなり、循環型社会の要求に応えることができると共に、良好な低温特性、雪氷上性能も得られた。実施例1、3、比較例2、3の比較により、バイオマス由来ゴム(BBR)を使用することにより、従来の合成ゴム(BR)を用いた場合と同等の良好な低温特性、雪氷上性能が得られることが分かった。
21 アルコール導入管(原料導入管)
22 加熱装置(電気炉)
23 脱水反応用カラム
24 冷却装置
25 加熱装置
26 二段目反応カラム
27 冷却装置
28 循環ライン

Claims (19)

  1. ポリブタジエンゴムを含むスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法であって、前記ポリブタジエンゴムが、モノマー成分であるブタジエンの少なくとも一部として、バイオマスから始める反応または一連の反応によって得られたものを使用して重合して得られたものであり、
    前記ポリブタジエンゴムが、バイオマス由来のアリルアルコール類、アルケン類、アルデヒド類、及び不飽和カルボン酸類からなる群より選択される少なくとも1種のバイオマス由来成分から触媒反応(ただし、微生物生体内反応は除く)により得られたブタジエンを重合したものであるスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  2. 前記アリルアルコール類が、クロチルアルコール及び/又は3−ブテン−2−オールである請求項記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  3. 前記アルケン類が、ブテン及び/又はエチレンである請求項記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  4. 前記エチレンが、微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体からなる群より選択される少なくとも1種を用いた発酵により、バイオマスより変換されたものである請求項記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  5. 前記エチレンを生産する微生物、植物、動物、及びこれらの組織培養体が、ACCシンターゼをコードする遺伝子を導入及び/又は改変されているものである請求項記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  6. 前記アルデヒド類が、アセトアルデヒドである請求項記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  7. 前記不飽和カルボン酸類が、チグリン酸及び/又はアンゲリカ酸である請求項記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  8. 前記ポリブタジエンゴムが、バイオマス由来のブタジエンを酵素反応によりポリブタジエンゴムとしたものである請求項1記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  9. 前記酵素反応に関与する酵素が、長鎖プレニル鎖延長酵素である請求項記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  10. 前記バイオマス100質量%中の糖類の含有量が20質量%以上である請求項1記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  11. 前記バイオマス100質量%中のアミノ酸及びたんぱく質の合計含有量が10質量%以上である請求項1記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  12. 前記バイオマス100質量%中の脂肪酸及び脂肪酸エステルの合計含有量が10質量%以上である請求項1記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  13. 前記ポリブタジエンゴムが、バイオマス由来のモノマー成分として、由来が異なる複数のモノマー成分を重合して得られたものである請求項1〜12のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  14. 前記ポリブタジエンゴムが、バイオマス由来のモノマー成分と石油資源由来のモノマー成分とを重合して得られたものである請求項1〜13のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  15. 前記ポリブタジエンゴムが、バイオマス資源の供給状況、石油資源の供給状況、及び/又は市場の要求に応じて、適宜選択された比率で、バイオマス由来のモノマー成分、若しくはバイオマス由来のモノマー成分と石油資源由来のモノマー成分とを重合して得られたものである請求項1〜14のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  16. 前記スタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物が、窒素吸着比表面積が90〜180m/gのカーボンブラックを、ゴム成分100質量部に対して、15〜100質量部含み、
    ゴム成分100質量%中の前記ポリブタジエンゴムの含有量が50質量%以上である請求項1〜15のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  17. 前記スタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量%中の前記ポリブタジエンゴムの含有量が5〜90質量%である請求項1〜15のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物の製造方法。
  18. 請求項1〜17のいずれかに記載の製造方法によりスタッドレスタイヤ用トレッド用ゴム組成物を製造する工程と、製造したゴム組成物を用いてトレッドを作製する工程とを含むスタッドレスタイヤの製造方法。
  19. バイオマス資源の供給状況、石油資源の供給状況、及び/又は市場の要求に応じて、適宜選択された比率で、バイオマス由来のモノマー成分、若しくはバイオマス由来のモノマー成分と石油資源由来のモノマー成分とを重合することを特徴とバイオマス由来のモノマー成分が、バイオマス由来のアリルアルコール類、アルケン類、アルデヒド類、及び不飽和カルボン酸類からなる群より選択される少なくとも1種のバイオマス由来成分から触媒反応(ただし、微生物生体内反応は除く)により得られたブタジエンであり、ASTMD6866−10に準拠して測定したpMC(percent Modern Carbon)が1%以上、ガラス転移温度(Tg)が−120〜−60℃であるバイオマス由来ゴムの製造方法。
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