JP6313663B2 - バックロードホーン型スピーカーボックス - Google Patents

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本発明は、ボックス内に複雑に屈曲しながら開口面積が次第に広がる長い音道を形成したバックロードホーン型スピーカーボックスに関する。
スピーカーの発する低音域の音を減衰少なく、効率良く前方に放射させるスピーカーボックスとしてバックロードホーン型スピーカーボックスが知られている。一般的な高能率スピーカーユニットは、低音のレベルが中高音に比べて相対的に低くなってしまう問題を有する。これに対してバックロードホーン型スピーカーボックスを使用した場合は、低音再生が良好なためクリアで自然な音質を楽しむことができる。図7は従来のバックロードホーン型スピーカーボックスの一例の縦断面である(特許文献1)。直方体形状のボックス50の正面に取り付けられたスピーカー51の前面から出る高音・中音は直接に放射され、スピーカー51の後面からでる音はスピーカー背面側の音室52から何枚もの仕切り板53で形成された音道(バックロード)54に入る。そして、その屈曲した長い音道54を通過して前面開口部55から前方に放射される。音道54の断面積は、低音での放射効率を高めるため先に行くほど漸増するようにされている。バックロードホーン型スピーカーボックスに必要される複雑に屈曲した長い音道は、板材、合板、繊維板(MDF)等の木製板材で製作される。これら木製板材を切断して多数の仕切り板を製作し、それらを手作業で精度良く張り付けて組み立てられる。しかし、このような組立方式は量産に向かない問題がある。
より効率的に屈曲した音道を製作する方法として特許文献2には、屈曲壁を等しく切り抜いた一定厚さの中間板を複数枚積層し、両側に側板をあててボルト締め又は接着剤で接着することにより連続する音道を形成する方法が提案されている。このボックスの場合は、2枚の側板間に介設される複数の中間板の屈曲壁をNC機械加工により製作できるため量産性に富む。
しかし、これら従来のボックスは何れも木製板材の組み合わせで製作されている。板材の組み合わせでは複雑に屈曲した長い曲線形状が理想とされる音道の構成には設計上の限界がある。前記の中間板を複数枚積層する方式でも、音道は長さ方向には2次元的であるため音道の長さには限界がある。また、ボックスは内部の気圧変動を防ぐため堅い素材を使用するのが有利であるが、木製板材は硬さが十分とはいえず、共振や耳鳴りが生じ易い問題もある。
公開実用昭52−20828号公報 特許第3840413号公報
本発明は、従来技術のこうした問題点を解決するためになされたもので、その課題は、堅い素材を使用し、複雑に屈曲しながら断面積が次第に大きくなっていく長い音道を精度良く形成できるバックロードホーン型スピーカーボックスを提供することにある。
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、内部に屈曲した音道を設けたバックロードホーン型スピーカーボックスであって、該ボックスは直方体形状の本体部、該本体部の左右側面を覆う左側面板、右側面板、背面を覆う背面板を備え、本体部は金属隗を切削するか、又は、鋳型に金属を流し込む鋳造法で一体成形されており、上部には正面側から背面側に貫通する音室が設けられ、その正面開口部にはスピーカー固定部が設けられ、音室からはスピーカー背面の発する音を本体部正面下部の開口に導く音道が本体部に凹溝及び/又は貫通孔を設けて形成されており、左側面板、右側面板は音道の側面表面への露出部分を覆う大きさに形成して固定されており、背面板は本体部背面と同形状に形成して固定されていることを特徴とするバックロードホーン型スピーカーボックスである。
本構成のスピーカーボックスは本体部に金属を使用する。金属隗を切削加工して音道、音室を形成する場合はNC工作機械を使用できるため量産化が可能であり、鋳造法の場合は原型となるボックス本体部を一度、製作すれば、そのモデルを使用した鋳造鋳型を量産できるため、この場合も本体部の量産が可能となる。また、切削や鋳造で音道を形成するため音道の形状を理想的なエクスポネンシャル・ホーンの形に近づけることができる。更に、金属は木材よりも比重が大きいため、これをくり抜いて形成した音道は共振を低減し、不要な周波数の乱れを生じにくい利点を有する。
また、請求項2に記載の発明は、内部に屈曲した音道を設けたバックロードホーン型スピーカーボックスであって、該ボックスは本体部、該本体部の左右側面を覆う左側面板、右側面板、背面を覆う背面板を備え、本体部は直方体形状に形成され、上部には正面側から背面側に貫通する音室が設けられ、その正面開口部にはスピーカー固定部が設けられ、本体部背面側には音室の背面側にてスロートで音室に繋がる背面側音道が本体部に凹状溝を渦巻き状に設けて形成してあり、本体部右側面には背面側音道の先端と貫通孔で繋がる右側面音道が本体部に凹状溝を渦巻き状に設けて形成してあり、本体部左側面には本体部右側面の先端と貫通孔で繋がる左側面音道が本体部に凹状溝を渦巻き状に設けて形成してあり、その先端は本体部正面下部にて外方に向けて開口しており、音室及び各音道を形成した本体部は金属隗を切削するか、又は、鋳型に金属を流し込む鋳造法で一体成形されており、左側面板、右側面板は各音道の側面表面への露出部分を覆う大きさに形成して固定されており、背面板は本体部背面と同形状に形成して固定されていることを特徴とするバックロードホーン型スピーカーボックスである。
本構成のスピーカーボックスは請求項1記載の本体部と同様に金属を使用するため同様の効果が得られる。また、本構成のスピーカーボックスでは長くて複雑に屈曲する音道を本体部の背面、左側面、右側面の3側面に配している。即ち、左側面、右側面には異なる複雑な音道を形成しており、それらと直角な背面にも別の音道を形成する。3面にこのような複雑な音道を形成できるのは本体部を金属で一体形成するためである。多数の木片の組み合わせで箱体内部に音道を構築する従来の方法では殆ど不可能なことであり大きな利点である。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のバックロードホーン型スピーカーボックスにおいて、前記ボックス本体部はアルミニューム合金、マグネシュウム合金、真鍮、青銅、砲金又はステンレスの何れかの合金を用いて形成されていることを特徴とするバックロードホーン型スピーカーボックスである。
このような金属は切削加工や鋳造が容易である利点を有する。
本発明に係るバックロードホーン型スピーカーボックス1の斜視図である。 スピーカーボックス1の分解斜視図である。 ボックス本体部2を正面右斜め、背面左斜めから見た斜視図である。 ボックス本体部2の左側面図、正面図、右側面図、背面図である。 音室8のスピーカー13から背面側に放射された音の経路である。 図4の(2)の正面図に示したA−A線に沿った断面図である。 従来のバックロードホーン型スピーカーボックスの一例である。
以下、本発明に係るバックロードホーン型スピーカーボックスの一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明に係るバックロードホーン型スピーカーボックス1の斜視図、図2はその分解斜視図である。バックロードホーン型スピーカーボックス1は、ボックス本体部2と、その左右側面を覆う左側面板3、右側面板4と、背面を覆う背面板5を備えて構成される。図1は左側面板3を透明板として描いてある。図3の(1)はボックス本体部2を正面右斜めから見た斜視図、図3の(2)はボックス本体部2を背面左斜めから見た斜視図、図4の(1)はボックス本体部2の左側面図、図4の(2)は正面図、図4の(3)は右側面図、図4の(4)は背面図である。
ボックス本体部2は、取り付けたスピーカーの背面側から発せられる音を屈曲した長い音道を経由させて正面開口から前方に放射させる機能を果たす。ボックス本体部2は正面横幅が上下幅、奥行き幅より幅狭の直方体形状に金属で一体形成されており、その表面及び内部には音道、音室、スピーカー取り付け部等が形成されている。スピーカーはボックス本体部2の正面上部に設けられた開口7に前方に向けて取り付けられる。図6は図4の(2)の正面図に示したA−A線に沿った断面図であり、取り付けられるスピーカーの背面側にはスピーカーの大きさにほぼ等しい略矩形断面の空洞(音室)8が本体部2の背面側まで貫通して設けられている。
ボックス本体部2の背面側には図4の(4)の背面図、図3の(2)の斜視図に示すように渦巻き状の背面側音道10が設けられている。音道10は本体部に凹状溝を設けて形成されており、その開口部は背面板5で覆われる。背面側音道10の始端部は音室8の背面近くの下面に設けたスロート11を介して音室8と繋がる。図5は音室8の開口7に取り付けたスピーカー13からその背面側に放射された音が音室8、背面側音道10等を通って正面下部の開口14から放射されるまでの経路を矢印で示したものである。
音室8を通過した音はスロート11を通過して背面板5の背面側音道10に入り、その渦巻き状の凹状溝の中を進んで背面板5下部の終端部17aに至る。ボックス本体部2の右側面板4にも図4の(3)の右側面図、図3の(1)の斜視図に示すような渦巻き状の右側面音道16が本体部に凹状溝を設けて形成されている。背面側音道10の終端部17aと右側面音道16の始端部17bは図6の断面図にその位置を示す貫通孔17で繋がっている。
背面側音道10を通過した音は貫通孔17を通って右側面音道16に入り、その中を進む。右側面音道16も背面側音道10と同様に渦巻き状の凹状溝で形成されている。その終端部18aは右側面板4の中央部にあり、そこから直角方向に向きを変えて貫通孔18を抜け、左側面板3に形成された左側面音道19に入る。左側面板3にも図4の(1)の左側面図、図3の(2)の斜視図に示すような渦巻き状の左側面音道19が本体部に凹状溝を設けて形成されている。左側面音道19に入った音は渦巻き状の凹状溝を前進し、終端であるボックス本体部2の下部に設けられた開口14から外部に放射される。
バックロードホーン用の音道は長い曲線形状をなし、出口に向かうに従って音道断面積が順次大きくなることが理想とされている。本実施形態の各音道は背面側音道10始端のスロート11からの距離が長くなるほど断面積が大きくなるように形成されている。
左右側面を覆う左側面板3、右側面板4は、ボックス本体部2の左側面、右側面に形成された左側面音道19、右側面音道16の凹状溝の開口部を覆う大きさの四角形状に形成して止め螺子で固定される。背面板5はボックス本体部2の背面と同じ大きさの四角形状に形成して止め螺子で固定され、背面側音道10と音室8の開口部を覆う。
本実施形態のバックロードホーン型スピーカーボックス1の一番の特徴はボックス本体部2を金属で一体形成している点にある。その製作は直方体形状金属隗を切削加工する方法、あるいは、鋳型に金属を流し込む鋳造法で行なう。金属としてはアルミニューム合金、マグネシュウム合金、真鍮、青銅、砲金、ステンレス等を使用する。金属隗を切削加工して音道、音室を形成する方法では、NC工作機械を使用することで量産化が可能である。鋳造法の場合は原型となるボックス本体部2を切削、または手作業で一度、製作すれば、その試作モデルを使用して鋳造鋳型を量産できるため、この場合もボックス本体部2の量産が可能となる。
また、本実施形態のバックロードホーン型スピーカーボックス1では長くて複雑に屈曲する音道をボックス本体部2の背面、左側面、右側面の3側面に3次元的に配している。即ち、左側面、右側面には異なる音道が形成されており、それらと直角な背面にもこれらと異なる音道が形成されている。3面にこのような複雑で異なる音道を形成できるのはボックス本体部2を金属で一体形成しているためである。多数の木片の組み合わせで箱体内部に音道を構築する従来の方法では殆ど不可能なことであり大きな利点である。また、切削や鋳造で音道を形成するため、音道の形状を理想的なエクスポネンシャル・ホーンの形に近づけることのできる利点も有する。更に、金属は木材よりも比重が大きいため、これをくり抜いて形成した音道は共振を低減し、不要な周波数の乱れを生じにくい利点も有する。
図面中、1はバックロードホーン型スピーカーボックス、2はボックス本体部、3は左側面板、4は右側面板、5は背面板、8は音室、10は背面側音道、11はスロート、13はスピーカー、14は正面下部開口、16は右側面音道、17は貫通孔、19は右側面音道、18は貫通孔を示す。

Claims (3)

  1. 内部に屈曲した音道を設けたバックロードホーン型スピーカーボックスであって、
    該ボックスは直方体形状の本体部、該本体部の左右側面を覆う左側面板、右側面板、背面を覆う背面板を備え、
    前記本体部は金属隗を切削するか、又は、鋳型に金属を流し込む鋳造法で一体成形されており、上部には正面側から背面側に貫通する音室が設けられ、その正面開口部にはスピーカー固定部が設けられ、前記音室からはスピーカー背面の発する音を本体部正面下部の開口に導く音道が本体部に凹溝及び/又は貫通孔を設けて形成されており、
    前記左側面板、右側面板は前記音道の側面表面への露出部分を覆う大きさに形成して固定されており、
    前記背面板は本体部背面と同形状に形成して固定されていることを特徴とするバックロードホーン型スピーカーボックス。
  2. 内部に屈曲した音道を設けたバックロードホーン型スピーカーボックスであって、
    該ボックスは直方体形状の本体部、該本体部の左右側面を覆う左側面板、右側面板、背面を覆う背面板を備え、
    前記本体部の上部には正面側から背面側に貫通する音室が設けられ、その正面開口部にはスピーカー固定部が設けられ、
    本体部背面側には、前記音室の背面側にてスロートで音室に繋がる背面側音道が本体部に凹状溝を渦巻き状に設けて形成してあり、
    本体部右側面には、前記背面側音道の先端と貫通孔で繋がる右側面音道が本体部に凹状溝を渦巻き状に設けて形成してあり、
    本体部左側面には、前記本体部右側面の先端と貫通孔で繋がる左側面音道が本体部に凹状溝を渦巻き状に設けて形成してあり、その先端は本体部正面下部にて外方に向けて開口しており、
    前記音室及び各音道を形成した本体部は金属隗を切削するか、又は、鋳型に金属を流し込む鋳造法で一体成形されており、
    前記左側面板、右側面板は前記各音道の側面表面への露出部分を覆う大きさに形成して固定されており、
    前記背面板は本体部背面と同形状に形成して固定されていることを特徴とするバックロードホーン型スピーカーボックス。
  3. 請求項1又は2に記載のバックロードホーン型スピーカーボックスにおいて、前記ボックス本体部はアルミニューム合金、マグネシュウム合金、真鍮、青銅、砲金又はステンレスの何れかの合金を用いて形成されていることを特徴とするバックロードホーン型スピーカーボックス。
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