JP6312393B2 - 多能性幹細胞の判別方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面増強ラマン散乱(SERS)法による多能性幹細胞の判別方法に関する。
分化多能性を有する細胞は、多能性幹細胞などと称され、生体を構成する全ての臓器や組織へ分化する能力を保持していることから、何らかの疾患で損傷した臓器などを再生する上で極めて有効な手段として期待されている。当初、分化多能性を有する細胞としては、ES細胞(胚性幹細胞;EmbryonicStem cells)の多能性に着目し、医療分野あるいは基礎研究分野においてその利用性について精力的な研究が行われてきた。しかし、ES細胞は生命の起源となる胚から取得されるものであるため、その使用上、倫理的な問題に直面することとなった。また、ES細胞から調製した組織などは、移植の段階で拒絶反応を引き起こすおそれがあり、このような免疫的な問題を克服する必要もあった。そこで、近年、ES細胞を用いた場合に生じ得る倫理上の問題と免疫学上の問題を解決することができる分化多能性細胞として、iPS細胞(人工多能性幹細胞;inducedpluripotent stem cells)に多くの期待が寄せられるようになってきた。
マウスのiPS細胞は、Yamanakaらによって、Nanog遺伝子の発現を指標にし、マウス線維芽細胞へOct3/4、Sox2、Klf4、c−Mycの4つの遺伝子を導入することにより、初めて樹立された。さらに、ヒトのiPS細胞についても、Thomsonらが、ヒトの線維芽細胞に、OCT3/4、SOX2、Nanog、LIN28を導入してヒトiPS細胞を樹立し、また、Yamanakaらは、OCT3/4、SOX2、KLF4、C−MYCをヒトの線維芽細胞に導入して、同じくiPS細胞を樹立した。
iPS細胞は、ES細胞の持つ倫理的問題と免疫学上の問題を克服した理想的な分化多能性細胞ではあるが、人工的に作り出されている点から、安全性の面(例えば、癌化など)でさらに研究を進める必要がある。ES細胞については、上記問題を含みつつも、生来の分化多能性を備えた細胞であることから、依然として、研究対象としては重要な位置を占めている。以上のように、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞を研究対象にする機会は益々増えて行くことが予想されている現状において、多能性幹細胞本来の性質を備えている細胞を迅速に簡易な方法で判別し、取得することは、重要な課題の一つである。
ところで、ES細胞やiPS細胞などは、一見均一な細胞集団を形成しているように見えるが、例えば、ES細胞については、膜表面抗原や転写因子の発現量の違いからいくつかの分画に分かれることが示唆されている。また、iPS細胞についてもその樹立過程において遺伝子導入後に生じる未分化様コロニーには、不完全な初期化により生じたコロニーも存在することが分かっている。従って、このように不均一な細胞集団から同一の分化多能性を保持した細胞集団を分取することは、今後の研究開発を促進していく上でも、重要なことである。
したがって、これまでに、多能性幹細胞の未分化性を識別するマーカーの使用に関し、例えば、絨毛膜絨毛、羊水、胎盤などから、c−Kit陽性細胞を選択して多能性胎児性幹細胞を調製する方法(特許文献1)、脂肪組織などからp75NTR及びc−Kit陽性細胞を選択して多能性幹細胞を調製する方法(特許文献2)、また、精巣細胞をグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)を含む培地で培養し、SSEA−1、CD9、c−Kitなどのマーカーの発現を手掛かりにして多能性幹細胞を取得する方法(特許文献3)などが報告されている。しかしながら、従来方法で調製された細胞集団の中には、未分化状態をすでに喪失した細胞が少なからず含まれており、効率的な分化誘導を行う上での障害となることがあった。そこで、分化多能性を維持する細胞を選別し、多能性幹細胞を効率的に調製する方法として、E−カドヘリン及びc−Kitの発現を指標にして、分化多能性を維持する細胞を効率的に選別することに成功し、c−Kitのみを指標にした場合には、多能性幹細胞以外のc−Kit陽性細胞(例えば、生殖細胞、造血細胞など)の混入を防ぐことが難しかったが、c−Kitの他にE−カドヘリンの細胞表面上での発現を多能性幹細胞の選択の指標に加えることで、混入細胞を効率的に除去する方法が提案されている(特許文献4)。
ところで、ES細胞やiPS細胞を細胞移植治療に応用する際は、これらの多能性幹細胞から目的の細胞へ分化誘導を行った後に移植するという方法が一般的に考えられる。しかし、この際に問題となるのが、分化誘導後に残存する未分化細胞によって移植後に引き起こされる奇形腫(テラトーマ)形成である。マウスES細胞とマウスiPS細胞から神経幹/前駆細胞を含むneurosphereを作製し、免疫不全であるNOD/SCIDマウスの脳線条体へ移植することによって、安全性の検討を行った報告では、ES細胞由来neurosphere移植マウス群の1割、iPS細胞由来neurosphere移植マウス群の4割において、混入した未分化細胞由来のテラトーマ形成が観察されたとされる。さらにiPS細胞由来neurosphere中に約0.02%以上の未分化iPS細胞が含まれていた場合、移植後にテラトーマ形成が生じ得るということが明らかとなっている(非特許文献1)。そのため、これらの結果は、分化誘導後に残存するわずかな未分化細胞のほぼ完全な除去を行わなければならないことを示し、つまり、残存するわずかな未分化iPS細胞が腫瘍を形成する事が本再生医療の大きな壁であり、この問題を解決し、臨床応用を可能にするためには、少なくとも移植直前の培養細胞集団から全ての未分化iPS細胞を除去する細胞純化技術の確立が必須である。そこで、光が細胞を透過することにより生じる光の位相差の値や光が細胞を透過する際の光の屈折率の値を用い、非侵襲で幹細胞の培養経過中における個々の細胞の分化状態の診断方法が提案されるに至っている(特許文献5)。
WO2003/042405 特開2006−230235 WO2005/100548 特開2010−200676 特開2013−158325
Miura K., Okada Y., Aoi T.,Okada A., Takahashi K., Okita K., Nakagawa M., Koyanagi M.,Tanabe K., Ohnuki M., Ogawa D., Ikeda E., Okano H. and Yamanaka S.:Variation in the safety of induced pluripotent stemcell lines. Nat. Biotechnol.,27, 743-745 (2009).
従来の判別方法の中で、前者の方法は、マーカーを使用し、細胞の大きさの差異、細胞密度の差異、細胞の自家蛍光の差異及び/又は細胞の生死に基づいて、多能性幹細胞の候補細胞を分取し、分取した多能性幹細胞の候補細胞から、E−カドヘリン及びc−Kitを細胞表面上に発現する細胞を蛍光染色して選別し、フローメトリ−で分別するので思ったほど簡単ではない。他方、後者の方法は、マーカーを使用せず、非侵襲で光学的に細胞の分化未分化を判断するには僅かな差異を判断する必要があり、検出精度維持に熟練を要するので汎用性がない。そこで、マーカーを使用し、c−Kitの他にE−カドヘリンの細胞表面上での発現を利用する方法および非侵襲の光学的判断方法に変えて、より簡易で正確に選抜でき、汎用性のある分化未分化を判断する方法の提供が望まれる。
ところで、本発明者らは表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して血液中の微量遊離DNAおよびクロマチンなどの癌関連物質の検出、定量測定の研究を行っていたが、これら癌細胞由来の癌関連物質中、ヒストンにDNAが巻き付いてメチル化により強固に結合している遊離DNA(循環腫瘍DNA:ctDNA)は図1に示すように正電荷を帯びる一方、アセチル化してヒストンとDNAが解離すると負電荷を帯びる傾向にあることに着目し、遊離DNAを選択的に吸着し、表面増強ラマン散乱(SERS)を利用して定量分析する方法を提案している。本発明者らはiPS細胞の調製において、未分化細胞は癌細胞由来の遊離DNAと同様、ヒストンにDNAが巻き、メチル化されて強固に結合してDNAの転写が起こらないようになっているもので、これがクロマチンを形成して正電荷を帯びると考えられ、他方、分化細胞はヒストンからのDNAが解離して分化増殖したもので未分化細胞とは異なる電荷を有する。これに着目すると、未分化細胞は、癌細胞由来の遊離DNAと同様、表面増強ラマン散乱(SERS)法を利用してクロマチンピークの発現の有無により細胞集団から採取した細胞が未分化細胞か否かを判別することができ、多能性幹細胞を細胞集団から選抜することができる。そこで、本発明はSERS法を用いて幹細胞の分化未分化を判断する方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、細胞集団から細胞を分取し、そこから得られる正電荷を有するタンパク分をタンパク吸着SERSチップ上に選択的に吸引し、表面増強ラマン散乱(SERS)法により散乱スペクトル中でのクロマチンピークの発現を指標として、未分化細胞か分化多様性維持細胞かを判別することを特徴とする多能性幹細胞の判定方法およびそれに用いる多能性幹細胞判定用チップを提供するものである。
本発明によれば、細胞画分をそのまま、又は溶解或いはたんぱく質を抽出して被検体としての正電荷を有するタンパク分をタンパク吸着SERSチップ上に選択的に吸引することができるので、未分化細胞に由来する正電荷を有するタンパク分を選択的に吸着することができる。したがって、SERS法によりクロマチンピークの発現を指標として、未分化細胞か分化多様性維持細胞かを判別することができる。よって、従来の判別マーカーを使用する判定方法に比べて、簡易でかつ正確に分化細胞と未分化細胞とを判別することができ、多様性維持細胞を細胞集団から選抜分取し、完全な分化多能性を維持した多能性幹細胞を調製することができる。
また、SERS法を用いるので、分化増殖後の細胞集団中に微量の未分化細胞が残存していてもそれを判定でき、再度の除去工程に付することにより完全に未分化細胞が除去された分化細胞を提供することができる。
したがって、本発明においては、前記細胞集団が、iPS細胞に代表される幹細胞を含む細胞集団であると、癌化する可能性の高い未分化細胞を除去し、細胞接種後に癌化する危険を解消することができる。
また、本発明に係る多能性幹細胞判定用チップを用いると、チップ表面にハロゲン化銀又はハロゲンを含む酸化銀の針状ナノ結晶を含むので、試料液滴を滴下すると水中で負電荷を帯び、所望の未分化細胞のみを吸着し、その上でレーザー光の照射を受けて還元され、金属銀ナノ粒子を析出する能力を有するので、SERS法により、未分化細胞の遊離DNAに起因とするクロマチンピークを検出することができ、簡易に細胞集団から必要な多能性幹細胞を採取することができる。また、分化増殖後の細胞集団中に微量の未分化細胞が残存するのを検出することができるので、完全に未分化細胞を除去した安全な分化細胞を再生医療のために提供することができる。
メチル化したヒストンにより生ずる正電荷を有する未分化細胞(a)とアセチル化し分化増殖した分化細胞(b)の機能概念図である。 ラマン波形のピーク算出法を示し、ヒト血清サンプル中に遊離DNAが存在するときは633nmレーザーによるラマン散乱のスペクトルには1350cm−1近辺と1550cm−1近辺に散乱強度のクロマチンピークが発現することを示す。 未分化細胞から抽出された遊離DNAを含む正電荷たんぱく分を調整した希釈試料とラマン散乱強度との関係を示すラマンスペクトルで、試料濃度と散乱強度ピーク上昇値が相関関係にあることを示す。 実施例1で示す新規SERS基板作成法の手順を示す説明図で、左上の有限会社マイテック製基板は右横のSEM像を示す写真である。 実施例1で製造したナノ粒子凝集体(量子結晶)の各種SEM像を示す写真である。 ナノ粒子の拡大SEM像を示す。 りん青銅坂上に滴下後の放置時間と量子結晶形状の関係を示す写真である。 量子結晶のEDSスペクトル(元素分析)の結果を示すグラフである。 量子結晶をハロゲンイオンの存在下にアルカリ処理(次亜塩素酸処理)した場合のSEM像である。 アルカリ処理した量子結晶中の針状結晶を示す図である。 ラクビーボール状の塊を示す図である。 大きい塊のEDSスペクトル(元素分析)の結果を示すグラフ図である。
本発明は、SERS法により遊離DNAを含むことによる図2に示すSERSスペクトルでのクロマチンピークの発現を指標として、多能性幹細胞が未分化細胞であるか否かを判別する方法である。
本発明においては、チオ硫酸銀量子結晶を次亜塩素酸ソーダ水溶液で処理すると、以下の反応により塩化銀又は塩素イオンを含む酸化銀の針状ナノ結晶群が形成され、水溶液中で負電荷を帯び、遊離DNAを含む未分化細胞由来のたんぱく質を吸着して電荷移動錯体を形成する一方、レーザ光照射により塩化銀又は酸化銀の一部が還元されて金属銀が析出して表面プラズモン増強効果を示すため、SERS法により遊離DNAを含むことによるクロマチンピークの発現を検出できるという理念に基づいている。
本発明者らは以下に詳述するように、チオ硫酸銀水溶液を銅合金上で凝集させることにより銀錯体の量子結晶を化学還元法を採用して形成しているが、かかる銀錯体をハロゲンイオンの存在下にアルカリ処理(次亜塩素酸で処理)すると、以下の反応によりハロゲンイオンを核として銀ハロゲン化物またはハロゲンを含む銀酸化物の複合物の針状ナノ結晶群が形成される(図9)。
Na2S2O3+4NaClO+HO →Na2SO4+H2SO+4NaCl
Ag+ + NaCl → AgCl + Na+
Ag+ + 3NaOCl → 2AgCl + NaClO3 + 2Na+
Ag+ + OH- → AgOH
2Ag++ 2OH → Ag2O +H2O
この針状ナノ結晶は水中で(−)荷電を帯びるのに対し、試料中の未分化細胞由来の遊離DNAはヒストンにDNAが巻きついて(+)荷電を帯びるため(図1(a))、未分化細胞由来のたんぱく質は正電荷を帯び、針状ナノ結晶に選択的に吸着する。しかも銀ハロゲン化物またはハロゲンを含む銀酸化物の複合物の針状ナノ結晶群はレーザー光の照射により還元され、金属銀ナノ粒子を析出するため、レーザー光照射により表面プラズモン増強効果を示し、吸着された遊離DNAに代表される未分化細胞を検出するクロマチンピークが表面増強ラマン散乱(SERS)のスペクトルに発現する。
したがって、本発明によれば、表面増強ラマン散乱(SERS)のスペクトルにより一見均一な細胞集団の中から、分化多能性を維持する幹細胞と未分化細胞を区別し、分化多能性を維持する多能性幹細胞を選抜分取することが可能となる。このように選抜分取された幹細胞を、定法に従い、分化多能性を保持し、かつ分裂増殖が可能な状態で培養を行えば、完全な分化多能性を維持した幹細胞の集団を調製することができる。分化増殖した分化細胞に未分化細胞が残存するかしないかもSERS法により確認することができる。
本明細書において、「細胞集団」とは、複数の細胞の集まりのことであるが、例えば、分化多能性を喪失した細胞(分化多能性の一部を喪失した細胞を含む)及び/又は完全な分化多能性を維持した細胞(すなわち、本来の意味における多能性幹細胞又は幹細胞)を含む細胞の集まりのことである。そのような細胞の集まりとしては、例えば、分化多能性を喪失した細胞を含むES細胞集団、不完全な初期化状態(完全に未分化な状態ではないこと)にある細胞を含むiPS細胞集団などを挙げることができる。また、本発明で用いる細胞とは、幹細胞の培養中に存在する細胞であり、幹細胞そのもの、幹細胞が分化して生成する細胞および幹細胞の培養のために添加されたフィーダー細胞などを例として挙げることができる。幹細胞としては、iPS細胞、ES細胞、骨髄間葉系幹細胞、脂肪組織由来間葉系幹細胞などを例として挙げることができる。培養状態にある細胞の集団のみならず、生体中に組織又は器官の一部として含まれる細胞の集団をも含む概念である。
ここで、「iPS」細胞とは、人工多能性幹細胞若しくは誘導多能性幹細胞とも称される分化多能性を獲得した細胞のことで、体細胞(例えば、線維芽細胞など)へ分化多能性を付与する数種類の転写因子(以下、ここでは「分化多能性因子」と称する)遺伝子を導入することにより、ES細胞と同等の分化多能性を獲得した細胞のことである。分化多能性因子」としては、すでに多くの因子が報告されている。また、「ES細胞」とは、一般的には、胚盤胞期の受精卵をフィーダー細胞と共に一緒に培養し、増殖した内部細胞塊由来の細胞をばらばらにし、さらに、植え継ぐ操作を繰り返し、最終的に「ES細胞株」として樹立したものをいう。このように、ES細胞は、受精卵から取得することが多いが、その他、脂肪組織、絨毛膜絨毛、羊水、胎盤、精巣細胞など、受精卵以外から取得され、ES細胞類似の特徴を持ち、分化多能性を有するES細胞様の細胞も知られており、これらの細胞集団も本発明にかかる「細胞集団」又は「細胞の集団」に含まれる。
本明細書中に記載される「細胞」の由来は、ヒト及び非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、サル、イヌ、ネコ、トリなど)であり特に限定はされない。また、「多能性幹細胞」又は「幹細胞」とは、当業者によって理解されている意味と異なるものではなく、例えば、細胞分裂を経ても同じ分化能を維持し、理論上すべての生体中の組織(細胞)に分化することができる細胞のことを意味する。
以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(タンパク吸着チップの製造例)
図4に示すように、チオ硫酸銀1000ppm水溶液を調製し、その1滴をりん青銅板上滴下し、約3分間放置し、溶液を吹き飛ばすと、右横のSEM像を示す量子結晶が作成されていた。図5は実施例1で製造したナノ粒子凝集体(量子結晶)の各種SEM像を示す写真であり、図6はナノ粒子の拡大SEM像を示す。100nm前後の薄い六角柱状結晶であって、表面に数nmオーダの凹凸が発現している。金属ナノ結晶に特有のファセットは確認できなかった。図7はりん青銅坂上に滴下後の放置時間と量子結晶形状の関係を示す写真である。まず、六角形の量子結晶が生成し、形状を維持しつつ成長するのが認められる。図8は量子結晶のEDSスペクトル(元素分析)の結果を示すグラフである。りん青銅板上に形成された結晶は銀及び錯体配位子由来の元素を検出したが、銅板上にチオ硫酸銀1000ppm水溶液を調製し、その1滴を滴下し、約3分間放置し、溶液を吹き飛ばした場合は、銀のみを検出したに過ぎなかった。
(量子結晶の作成の考察)
量子結晶は1000ppmチオ硫酸銀錯体水溶液の場合、りん青銅板上に滴下して3分間放置すると、100nm前後の六角柱状に形成され、各六角柱状の量子結晶は数nmオーダの凹凸を持つことがSEM像から確認された(図4、図5及び図6)が、金属ナノ結晶に特有のファセットは確認できず、EDS元素分析で銀及び錯体配位子由来の元素を検出されたため、全体は銀錯体のナノ結晶であって、その表面に現れる凹凸は錯体中の銀がクラスタとして量子ドットを形成して広がっていると推測される。本発明の銀錯体量子結晶がりん青銅板上に形成される一方、銅基板上には銀のみのナノ粒子が析出する現象を見ると、チオ硫酸銀錯体の平衡電位が0.33で銅の電極電位(0.34)と同等であるため、銅基板上には銀(0.80)のみが析出し、りん青銅の場合は0.22と電極電位がわずかに卑であるため、銀錯体の結晶が析出したものと思われる。したがって、量子結晶を作成するためには1)錯体水溶液が500〜2000ppmという希薄な領域であること、2)金属錯体水溶液の平衡電位に対し担持金属の電極電位がわずかに卑であること、3)電極電位差で金属錯体が凝集させることが重要であると思われる。また、1000ppmチオ尿素銀錯体水溶液を使用した場合も同様であった。
(未分化細胞の採取)
iPS細胞の場合は、例えば、特表2013−503603号に記載の方法、(1) 多能性幹細胞を分化誘導させる工程、(2) 該細胞を未分化維持条件で培養する工程、(3) 該培養による未分化細胞の発生を検出し、対照と比較する工程、および (4) 検出した値が、対照発生値以下である多能性幹細胞を選択する工程を含む、分化抵抗性を示さない多能性幹細胞の選択方法により未分化細胞と分化多能性維持細胞を用意し、その細胞膜画分から未分化細胞由来の正電荷タンパク分を調製してSERS分析に付することができる。
他方、ES細胞においては、特開2010−104350号に記載の以下の方法により未分化状態のES細胞及び未分化状態を逸脱したES細胞を用意し、その細胞膜画分から未分化細胞に由来する正電荷タンパク分を調製してSERS分析に付することができる。
1. LIF存在下で培養した未分化状態のES細胞と、LIF非存在下培養し未分化状態を逸脱したことを確認したES細胞とを用意する。ここで、未分化状態を逸脱し分化がはじまったことは、既知の未分化状態特異的マーカーであるアルカリフォスファターゼ活性や転写因子Oct3/4、SSEA1の消失を免疫蛍光染色法により確認することができる。
2. 次いで、Intoh, A., Kurisaki, A, Yamanaka, Y., Hirano, H., Fukuda, H., Sugino, T., and Asashima, M. Proteomics (2008) in pressに記載の方法に基づきこれら未分化及び分化細胞の膜タンパク質を調製し同定・定量比較を行う。まず、これら細胞を低張液細胞抽出液でホモジナイズすることにより破砕し、遠心分離して沈殿として細胞膜粗画分を得る。
3. さらにこの細胞膜粗画分をショ糖密度勾配遠心法により精製し、細胞膜画分を得る。
4. 細胞膜画分に含まれるタンパク質を抽出し、未分化の程度を確認できる。さらに、磁気細胞分離法、フローサイトメトリー法などにより、未分化状態の細胞のみを分離して、分化細胞のみを精製することもできる。
(分化増殖後の分化細胞中に残存する未分化細胞)
他方、特開2013−158325公報に開示の以下の方法により分化増殖後の分化細胞中に未分化細胞が残存する細胞集団を求めることができる。
DMEM-F12(Sigma,D6421)培地に、100units/mlペニシリン−0.1mg/mlストレプトマイシン(Sigma,P7539)、0.1mM non-essential amino acid(Sigma,M7145)、2mM L-glutamine(Invitrogen,25030-081)、0.1 mM 2-mercaptoethanol(Sigma,M7522)を添加したDMEM-F12(Sigma,D6421)培地に20%の濃度になるようにKNOCKOUTTM Serum Replacement(KSR)(Invitrogen,10828-028)を添加し、bFGF(basic fibroblast growth factor)(Wako,064-04541)を5ng/mlとなるように添加したものを、ヒトiPS細胞増殖用培地として用いた。この培地およびフィーダー細胞(マウス胎児線維芽細胞(Millipore,R-PMEF-CFL)(MEF))を用いて増殖・回収したヒトiPS細胞(253G1,HPS0002)を、10μM Y-27632、5ng/ml bFGFを添加したヒトiPS細胞増殖用培地を用いて、播種密度1.0×104 cells/cm2でマトリゲルコーティングディッシュに播種し、無フィーダー単一分散培養した。播種21時間後にアルカリフォスファターゼ(ALP)染色し、ALP染色陽性の未分化細胞がALP染色陰性の分化細胞中に残存することを確認した。この細胞集団を用いてタンパク質抽出した後その試料液滴を用いてSERS法によりクロマチンピークの発現の存非により未分化細胞の残量を定量することができる。
(未分化細胞の判定)
実施例1で調整したりん青銅板上のチオ硫酸銀量子結晶基板にpH11の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(5%)を滴下し、3分後水溶液を吹き飛ばし、その直後、上記未分化細胞から抽出した試料液を純粋で10倍、100倍、1000倍希釈して調整し、それぞれを633nmのレーザー光を照射してラマンスペクトルを測定した。その結果を図3に示す。
未分化細胞の存在量とピーク上昇値およびピーク積分値との間には相関関係が認められる。ピーク発現およびピーク積分値を考慮すると、未分化細胞は定量が可能であるということができる。
(複合針状ナノ結晶についての考察)
上記量子結晶基板に5%次亜塩素酸ソーダ水溶液を滴下して2分間処理して除去すると図9に示す結晶構造が見られ、針状の結晶とラクビーボール状の塊と大きい塊が見られたので、それぞれの組成をEDSスペクトル(元素分析)で分析すると、以下の反応式から図10の結果を示すグラフ(a),(b),(c)に示すように針状の結晶はともに塩化銀と酸化銀の複合結晶からなるものと考えられるが、(a)針状の結晶は塩素リッチな銀酸化物, (b)ラクビーボール状の塊は銀リッチな銀酸化物,(c) 大きい塊は次亜塩素酸の残渣と判断でき、針状の結晶が集まってラクビーボール状の塊を形成すると考えられる。
Na2S2O3+4NaClO+HO →Na2SO4+H2SO+4NaCl (1)
Ag+ + NaCl → AgCl + Na+ (2)
Ag+ + 3NaOCl → 2AgCl + NaClO3 + 2Na+ (3)
Ag+ + OH- → AgOH (4)
2Ag++ 2OH → Ag2O +H2O (5)
チオ硫酸銀の量子結晶を次亜塩素酸水溶液、0.01規定苛性ソーダ水溶液、0.01規定塩酸水溶液、0.1モル炭酸ナトリウム水溶液で処理しても同様の結果は得られなかったので、この針状結晶の形成には銀イオンとチオ硫酸イオンの存在下に上記酸化反応により生ずるものと思われる。
塩化銀及び酸化銀は水溶液中で負電荷を帯び、光により還元されて金属銀を析出させるので、正電荷の癌関連物質を吸着し、しかも吸着した未分化細胞関連物質と銀粒子との間の表面プラズモン増強効果が得られるものと思われる。
本発明は、分化多能性を維持する多能性幹細胞か、未分化細胞かを効率的に判別する方法であり、医療分野等において利用される分化多能性細胞の効率的な調製に極めて有効な手段を極めて有効な手段を提供するものである

Claims (3)

  1. 細胞集団から細胞を分取し、その細胞画分から未分化細胞由来の正電荷たんぱく分を調製してタンパク吸着SERSチップ上に選択的に吸引し、表面増強ラマンスペクトル法によりラマン散乱のスペクトルに発現する1350cm -1 近辺と1550cm -1 近辺のピーク(クロマチンピーク)の発現を指標として、未分化細胞か分化多様性維持細胞かを判別することを特徴とする多能性幹細胞の判別方法。
  2. 前記細胞集団が、ES又はiPS細胞を含む細胞集団である請求項1に記載の方法。
  3. 前記タンパク吸着チップとして、ハロゲン化銀又はハロゲンを含む酸化銀の針状ナノ結晶を含むチップを用いる請求項1または2に記載の方法。
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