JP6311247B2 - ガス化システムの太陽光利用方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ガス化システムの太陽光利用方法及び装置に関する。
従来、石炭をガス化するガス化システムでは、吸熱反応である石炭ガス化の主要反応に必要な熱量を得るために、空気又は酸素により石炭の一部を燃焼させていた。そのため、石炭が持つ熱量の一部を消費され、原料の石炭から燃料ガスへ転換される熱量が100%にならず、最も効率の良いシステムでも80%程度であった。
近年、CO排出削減の観点から、再生可能エネルギーの利用拡大の動きが活発になっているが、ガス化技術にも再生可能エネルギーを取り込むことが検討されている。例えば特許文献1では、ガス化炉へ太陽光を供給し、吸熱反応であるガス化反応の熱の一部、もしくは全部を太陽光から得ることで、これまで消費されていた石炭が持つ熱量の一部も、燃料ガスに転換できることを示している。これにより、石炭が持つ熱量に太陽光からの熱量が加わって、元の石炭の熱量より大きな熱量が、熱量ガスの熱量として得られることになる。その熱量の増加分は、再生可能エネルギー由来のものであるため、最終的にCO排出削減が実現できる。
ただし、このシステムでは、太陽光からの熱が得られない場合、あるいはガス化反応に必要な熱を十分補えない場合には、酸素等の酸化剤をガス化炉内へ投入して不足する熱を補う必要があり、その結果、燃焼反応によって生じるCO等の不燃性ガスによって燃料ガスが希釈されてしまう。
太陽光集光システム、特に太陽光利用循環流動層ガス化装置に使用する「ビームダウン式集光システム」では、例えば特許文献2,3にあるように、地上に配置した反射鏡(ヘリオスタット)で太陽光を反射し、所定の高さに設置した下向き楕円鏡(以下、「センターミラー」と称する。)に集めた後に再度下向きに反射し、地上側の被加熱部に入射させる。被加熱部には、センターミラーからの太陽光をさらに加熱箇所へ集中させるために、被加熱部側が絞られた円筒形の集光鏡が置かれ、太陽光が集中した部分を高温にするための工夫がなされることがある。
特開2001−123183号公報 特開平11−119105号公報 特開2010−151980号公報
ところで近年、燃料ガスにCO等が混入する問題の解決策として、例えば特許文献4(特開2005−41959号公報)に開示されるような循環流動層ガス化システムが開発されている。上記特許文献4では、循環流動層ボイラのシステムを応用したもので、循環する流動媒体を熱媒体として利用することを考え、燃焼炉(ライザー)を上昇した後にサイクロンで分離された熱媒体(流動砂、以下、「熱媒粒子」と称する。)をガス化炉へ流下させ、熱媒粒子が石炭に熱を与えることで、ガス化反応が成立するようにしている。
必要なのは熱であるため、燃焼炉で熱を得る代わりに、特許文献1と同様に、太陽光から熱を得ることも可能である。
循環流動層ガス化システムに太陽光の熱を供給して、ガス化を行う方法として考案したシステムにおいて、太陽光加熱部では、熱媒粒子をガス化に必要な温度まで加熱するために、熱媒粒子を一定時間留まらせ、かつ熱媒粒子を均一に加熱する必要がある。一方、ガス化炉へ必要な熱を供給するために、一定量の熱媒粒子を循環させる必要もある。その対策として、従来の太陽光加熱部では、熱媒粒子の流れの層厚をできるだけ薄くし、かつ必要流量を確保するために、流れの幅を大きく取ることで対応している。また、ガス化に必要な温度に達するのに必要な滞留時間を確保するために、太陽光加熱部の傾斜を調整している。
しかし、太陽光集光システムでは、太陽光加熱部の中心に対し、太陽光が円形断面を持った光の束として照射されるので、太陽光加熱部の中心を流れる熱媒粒子は、前記円形断面の直径を通過することで太陽光による十分な加熱が行われるものの、太陽光加熱部の中心から離れた熱媒粒子は、太陽光による加熱が十分ではなくなる可能性がある。
また、太陽光加熱部は、傾斜した面を熱媒粒子が流れ落ちるように設計されるため、集光した太陽光に対し、ある程度傾斜した面上で熱媒粒子が接することになり、太陽光の照射効率が悪い。
さらに、太陽光加熱部は、熱飛散の防止及び熱媒粒子から発生する粉塵の飛散防止のために、閉じた箱である必要があり、その閉じた上面を太陽光が通過するため、上面に光が透過する材料を用いている。太陽光加熱部の上面は、鉛直上方から照射される太陽光の散乱を防ぐために水平であることが好ましい。すると、太陽光加熱部の上面(太陽光透過面)と下面(熱媒粒子流下面)との距離は、上流側(熱媒粒子の入口)と下流側(熱媒粒子の出口)とで差が大きくなり、これによって太陽光加熱部内に大きな空間ができることになる。この空間は、内部のガス(空気)の対流を引き起こし、これによって熱の放散を助長する可能性があり、太陽光の利用率低下の原因となる。太陽光加熱部の下面の角度をできるだけ水平に近付けることで、内部にできる空間を小さくすることは可能であるが、熱媒粒子の流れを確保するための配慮が必要である。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、ガス化システムの太陽光利用方法及び装置において、循環流動層ガス化システムの熱媒粒子を太陽光加熱部の傾斜板上で適度に留まらせて十分かつ均等に加熱可能とし、さらに太陽光加熱部内の流動化ガスによる熱の拡散を抑えて十分な加熱を可能とすることを目的とする。
上記課題の解決手段として、本発明は、燃料をガス化炉でガス化してガス化ガスを生成するガス化システムの太陽光利用方法であって、前記ガス化システムが、水平方向に対して傾斜する傾斜板と、前記傾斜板の上側を覆うように対向するとともに太陽光集光装置によって集光した太陽光を透過させる透光板と、を有する太陽光加熱部を備え、前記太陽光加熱部が、前記傾斜板上に傾斜方向で並び前記傾斜方向と直交する幅方向に延びる複数の滞留槽を形成し、前記複数の滞留槽に熱媒粒子を流入させ、前記熱媒粒子をオーバーフローさせながら上段側の滞留槽から下段側の滞留槽へ熱媒粒子を流すことを特徴とする。
本発明は、前記太陽光加熱部内のガスを導出し、このガスを前記各滞留槽に導入して前記熱媒粒子を流動化させるべく、前記導出したガスの熱で前記各滞留槽に導入する前のガスを加熱するものであってもよい。
また、本発明は、燃料をガス化炉でガス化してガス化ガスを生成するガス化システムの太陽光利用装置であって、前記ガス化システムが、水平方向に対して傾斜する傾斜板と、前記傾斜板の上側を覆うように対向するとともに太陽光集光装置によって集光した太陽光を透過させる透光板と、を有する太陽光加熱部を備え、前記太陽光加熱部が、前記傾斜板上に傾斜方向で並び前記傾斜方向と直交する幅方向に延びる複数の滞留槽を区画するべく、前記傾斜板上に複数の堰板を起立させることを特徴とする。
本発明は、前記ガス化システムが、原料が供給されるとともにガス化剤の供給により流動媒体による流動層を形成して前記原料のガス化を行う流動層ガス化炉と、前記流動層ガス化炉で生成したチャーと前記流動媒体とを導入して前記チャーを酸化ガスで燃焼することにより前記流動媒体の加熱を行う流動層燃焼炉と、前記流動層燃焼炉の上部から高温流体を導入して前記流動媒体と排ガスとに分離し、分離した前記流動媒体を前記流動層ガス化炉に落下供給する固気分離器と、を有する循環流動層ガス化システムであり、前記固気分離器から前記流動層ガス化炉への落下供給経路に前記太陽光加熱部が設けられるものであってもよい。
また、本発明は、前記太陽光加熱部内のガスを導出する導出路と、前記導出路で導出したガスを前記各滞留槽に導入して各滞留槽に溜まった熱媒粒子を流動化させる導入路と、前記導出路及び導入路に跨り前記導出路で導出したガスの熱で前記各滞留槽に導入する前のガスを加熱する熱交換器と、を備えるものであってもよい。
このとき、前記導入路に補助燃焼炉を有する構成としてもよい。
上記構成によれば、循環流動層ガス化システムにおいて、太陽光加熱部の下面を水平に近付けることで、熱媒粒子の上にできる空間を極力小さくすることが可能な反面、流動層では熱媒粒子だけでなく流動化ガスも加熱され、このガスが熱の一部を持ち去ることで太陽光の熱利用率を低下させることがあるが、このガスの熱を回収して熱媒粒子の加熱に再利用することが可能となる。また、雨天時や夜間には、流動層燃焼炉でのチャーの燃焼量増加により、本システムを良好に稼働させるよう考慮しているが、とくに熱帯地域で見られるスコールのように、太陽光が十分得られている状態から、急激に日射が遮られて、太陽光の熱が得られなくなるような状況に対しては、燃焼量増加の追従が不十分であり、一時的な熱量不足になることが考えられる。このような太陽光からの急速な熱量低下に対しては、直近に補助燃焼炉を設けることが有効である。補助燃焼炉での補助燃料の燃焼により、太陽光加熱部へ供給する流動化ガスの温度を急速に増加させ、太陽光からの熱量不足を適時に補うことが可能となる。
また、本発明は、前記太陽光加熱部の透光板上に円筒状の集光鏡を有し、前記集光鏡の太陽光加熱部側が、前記傾斜板の全幅よりも大径の円筒部と、前記傾斜板の幅方向両側の側辺に沿う平坦部と、を組み合わせて形成されるものであってもよい。
この構成によれば、円筒形集光鏡の太陽光加熱部側が円筒状であると、太陽光加熱部の中央から離れた熱媒粒子は太陽光が十分に照射されない可能性があるが、集光鏡の太陽光加熱部側の形状を変形して傾斜板広い範囲に太陽光を照射することで、太陽光による加熱を十分かつ均等に行うことができる。
また、本発明は、前記太陽光集光装置が、地上に配置した複数の反射鏡で太陽光を上向きに反射し、この反射光を所定の高さに設置したセンターミラーに集めて下向きに反射して、前記太陽光加熱部に入射させるもので、前記複数の反射鏡の少なくとも一部が、ガス化プラントのグランドレベルから所定高さのプラットフォーム上に設置されるものであってもよい。
この構成によれば、反射鏡をプラットフォーム上に設置する一方、プラットフォーム下にガス化プラントの設備の一部を配置するとことが可能となり、ガス化設備の影響で反射鏡が配置できない領域を減らすことができ、太陽光の確保と敷地の有効活用を図ることができる。
本発明によれば、傾斜板上の複数の滞留槽に熱媒粒子を流入させ、この熱媒粒子をオーバーフローさせながら上段側の滞留槽から下段側の滞留槽へ熱媒粒子を流すことで、熱媒粒子の逆流を防いで円滑に一方向へ流すことができる。このとき、熱媒粒子を各滞留槽に滞留させつつ、十分かつ均等な加熱を実現することができる。
本発明の実施形態における太陽光集光装置の概略の側面図である。 上記太陽光集光装置を適用する循環流動層ガス化システムの構成図である。 上記ガス化システムの太陽光加熱セルに接続される流動化ガス循環系統を含む構成図である。 上記流動化ガス循環系統の変形例を示す図3に相当する構成図である。 上記太陽光集光装置の全体の平面図である。 図4の側面図である。 上記太陽光集光装置の変形例の図5に相当する平面図である。 図6の側面図である。 上記太陽光集光装置の他の変形例の図7に相当する側面図である。 上記太陽光加熱セル上に設置する円筒形集光鏡の説明図であり、(a)は上面図、(b)は縦断面図、(c)は下面図をそれぞれ示す。 上記円筒形集光鏡の斜視図である。 上記太陽光加熱セルにおける円筒形集光鏡の照射領域の説明図であり、(a)は本実施形態の照射領域を示し、(b)は比較例の照射領域を示す。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
まず、本実施形態の太陽光集光装置23について説明する。
図1に示すように、太陽光集光装置23は、所定の高さに設置されて下面に反射面を有するセンターミラー25と、センターミラー25の周囲の地上に設置された複数のヘリオスタット24と、を備える。複数のヘリオスタット24でセンターミラー25に向けて反射された太陽光は、センターミラー25で地上側の集光点(後述する太陽光加熱セル20)に向けて反射される。
センターミラー25は、凹状かつ断面楕円状の下向き反射面を形成し、複数のヘリオスタット24で反射された太陽光を再度下方に反射して地上側の集光点に集光させる。センターミラー25は、支持塔25aによって地上から所定の高さに支持される。なお、センターミラー25として凸面かつ楕円状の下向き反射面を有するシステムを用いる例もある。
太陽光集光装置23のうち、地上に配置するヘリオスタット24は、太陽の移動に追従するよう制御しているが、この制御に異常が発生すると、支持塔25aの頂部に配置したセンターミラー25に太陽光を集めることができなくなり、太陽光加熱セル20への太陽光供給ができなくなる。ヘリオスタット24は、支持塔25aの頂部に設置するビームダウン用反射鏡(センターミラー25)を中心に、かなりの面積の敷地に配置されている(図5参照)。
この敷地から見ると、被加熱部(太陽光加熱セル20)は小さな1点に相当することから、ヘリオスタット24からの反射光がわずかにずれるだけで、被加熱部へ反射光が到達しなくなる。また、ヘリオスタット24は多数の反射鏡を有しており、全ての反射光を被加熱部一点に集めるため高度な制御を行っている。したがって、この制御に狂いが発生すれば、被加熱部への熱供給が急激に失われる可能性があるので、熱供給を受ける側には万全の対応が求められる。
本システムを日本に設置する場合、全体の配置は、概ね図5、図6に示すようになる。ここに示す大きさ(直径480m)は、太陽光の集光能力が70MW、ガス化側の石炭処理量は180t/日相当になる。なお、石炭処理量はガス化される石炭の量ではなく、ガス化用の熱を得るため一部燃焼する石炭を含む石炭消費量で表す。ただし、180t/日は太陽光がない場合の石炭消費量であり、太陽光が入ることで石炭消費量を減らすことができる。
図5、図6の配置は、日中の太陽光が南側より照射される地域(北半球)に対応している。南半球の場合は、日中の太陽光が北側から照射されるので、図5の平面配置に対し、太陽の移動方向が異なるだけであり、南北を逆にした配置とすればよい。
石炭ガス化プラントは、中央の支持塔25a周辺だけで配置することは困難であり、ヘリオスタット24のエリアの一部を使用せざるを得ない。しかし、中央の支持塔25aからの距離は、太陽光の反射角度の調整等の観点からあまり長くすることは好ましくない。したがって、図5の例で示した直径480m程度が妥当な範囲と考えられる。
日本を例にした場合、太陽は日中必ず南にあるので、北側のヘリオスタット24は中央の支持塔25aやガス化炉その他関連設備の影に入る可能性が高い。そこで、土地の有効活用と影の影響の軽減の観点から、北側の区域にはある程度の高さ(ガス化プラントのグランドレベルから、例えば20m〜40mの高さ)のプラットフォーム29を設け、その下に、ガス化プラントの内の比較的背の低い設備(ガス処理、水処理、ユーティリティ等)を配置し、ヘリオスタット24はプラットフォーム29の上に設置することで、太陽光の確保と敷地の有効活用を図ることができる。
なお、プラットフォーム29の配置方向と広さは、設置費用と太陽光の集光効率の両面から最適な範囲を決めるのが好ましい。すなわち、プラットフォームの下に入るブラント設備の影については考慮する必要がなくなり,プラント内でもっとも背が高いセンターミラーとその支持塔、およびガス化プラントの中心設備である燃焼炉および太陽光加熱部を含めた流動層ガス化炉のみについて考慮すれば良い。
背の高い設備の影の影響を最小限にするという観点から言えば、影が落ちる方向のヘリオスタットを、地表面より高いプラットフォーム上に配置するのが好ましい。例えば、北半球であれば、影が移動していく北側にプラットフォームを設置することが好ましい。ただし、緯度により影の影響が異なるので、プラットフォームの配置は、影が落ちる時間の長さとそのときの日照の強さを考慮して、太陽光を最大限利用できるよう配慮して決めるのが好ましい。
以下は、日中に太陽が存在する方角と反対側にプラットフォームを配置するのがもっとも効果的な場合について述べる。
ヘリオスタット24を配置する平面視円形の領域R1において、日中に太陽が存在する方角側の平面視扇形の領域R1aに対し、残りの平面視扇形の領域R1bには、前記プラットフォーム29が設置される。領域R1aは平面視で半円以上の領域とされる。領域R1内側の円形領域から領域R1bに一部入り込んだ領域R2には、後述する循環流動層ガス化システムSが配置される。
上に述べたとおり、緯度により影の影響は異なるため、例えば、本システムを赤道を中心とする熱帯地域(北回帰線と南回帰線の間)に設置する場合は、太陽が真上を通過し、かつ季節により太陽の位置が北になったり南になったりするため、図5、図6に示す配置は適当ではない。一方、ガス化プラントとしては、設置する地域に関係なく一定の面積を確保する必要があり、センターミラー25の支持塔25aを中心とした一定面積をガス化プラントだけのために当てると、ヘリオスタット24の設置面積が小さくなって集光量への影響が避けられない。
図5、図6に示した土地の有効活用の考え方を熱帯地域に適用するためには、太陽が北側、南側のいずれを通過しても良い配置を考える必要がある。一方で、ヘリオスタット24すべてを、一段高くしたプラットフォーム29上に設置すると、プラットフォーム29の建設費だけでも膨大なものになり、経済的に成立たなくなる可能性が高い。
そこで、図7、図8に示すように、中央を高くするとともに外側を低くしたプラットフォーム29下にガス化プラントを配置することで、太陽光の確保と敷地の有効活用を図った上でプラットフォーム29の建設費を節約する方法が考えられる。なお、図中領域R1cはプラットフォーム29によりヘリオスタット24をガス化プラントのグランドレベルから、例えば20m〜40m高いレベルに配置可能な領域を示す。
図8の代案としては、図9に示すように、中央が窪んだ土地(すり鉢状が最適だが、両側が高くなった谷間を利用することも可能)を活用し、ヘリオスタット24をガス化プラントの底のレベルから、例えば20m〜40m高い同一のレベルに配置し、ガス化プラントは窪地に設置することで、プラットフォーム29の設置範囲を最小にする方法が考えられる。
なお、窪地に設置する代案は、日本等の太陽が南側(南半球は北側)のみを通過する地域にも適用できる。また、窪地利用については、自然の窪地に加え、人工的に土地の形を変えることで、理想的な土地の形状を実現させることもあり得る。
安全性については、ガス化プラントは可燃性ガス、とくに水素等の爆発性の高いガスを発生させるため、設備内で使用する電気設備については、設置する場所により耐圧防爆仕様の機器の使用が義務付けられる。
図5、図6もしくは図7〜図9の配置をした場合、耐圧防爆等の仕様が義務付けられるエリアにヘリオスタット24が設置される可能性が高い。ヘリオスタット24は太陽光に晒されて高温になるほか、太陽を追尾するため、電動駆動装置が備えられる。プラットフォーム29の下には可燃性ガスが発生するガス化プラントがあり、その上の電動駆動装置に耐圧防爆仕様が適用される可能性がある。耐圧防爆仕様の適用は、コストの増加や場合によっては対応できる製品が入手できないという課題がある。
このため、可燃性ガスを排除するための設備の追加や、プラットフォーム29の気密性を増して可燃性ガスがヘリオスタット24のエリアに侵入しないようにするなどの配慮が必要となり、設備コストとの見合いで配置を検討する必要がある。
次に、図2を参照し、本実施形態のガス化システムである循環流動層ガス化システムSについて説明する。
本システムの流動層ガス化炉1は、下部の分散板2を介して供給されるガス化剤3(水蒸気)により流動媒体4(硅砂、石灰石等の熱媒粒子)が流動して流動層5を形成しており、原料ホッパ6a、及びモータ6bで駆動されるロータリフィーダ等の原料供給機6cを備えた原料供給装置6により原料7(石炭、バイオマス等)を供給すると、原料7は流動層5の流動媒体4による加熱とガス化剤3の作用によりガス化され、ガス化ガス8とチャー(可燃性固形分)を生成する。生成したガス化ガス8は、ホットサイクロン等の分離器9に導かれて固形分10が除去されることにより、製品ガス化ガス8として取り出される。分離器9で分離された固形分10は、流動層ガス化炉1に戻される。
流動層ガス化炉1で生成されるチャーと流動媒体4は、傾斜したシール導入管11に対してオーバーフローにより流動層燃焼炉12に供給される。シール導入管11は、傾斜管11aの途中が下方へ屈曲した突出部11bを有しており、この突出部11bの底部に窒素ガス等の流動化ガスGを供給することで、前記チャーと流動媒体4とを流動させて流動層燃焼炉12に供給している。
流動層燃焼炉12には、モータ13aにより駆動されるファン13からの酸化ガス14(空気又は酸素)が、流量調整ダンパ14aを備えた供給管14bにより散気板15を介して供給されており、前記チャーが流動燃焼することにより流動媒体4の加熱を行う。
流動層燃焼炉12内で流動燃焼した高温流体16は、ホットサイクロン等の固気分離器17に導入されて流動媒体4と排ガス18とに分離され、分離された流動媒体4はダウンカマー19等を介して前記流動層ガス化炉1に供給される。
固気分離器17と流動層ガス化炉1との間には、太陽光加熱セル(太陽光加熱部)20が設置される。太陽光加熱セル20は、固気分離器17からダウンカマー19を介して落下してくる流動媒体4を受けて一旦貯留する貯留室26と、貯留室26から離れるほど段階的に低くなるように設けられた複数の滞留槽27と、を有する。太陽光加熱セル20は、複数の滞留槽27に高低差を与えるべく水平方向に対して傾斜した傾斜板21と、傾斜板21上に立設されて複数の滞留槽27の間を仕切る複数の堰板28と、傾斜板21の上方を覆うように対向しかつ集光した太陽光を透過させて傾斜板21上の流動媒体4を加熱する透光板22と、を有する。
貯留室26には、貯留した流動媒体4を傾斜板21の幅方向に分配して供給する溢流板26a(図12参照)が設けられる。貯留室26の底部では、窒素ガス等の流動化ガスを供給することで流動媒体4の流動化を行っている。貯留室26は、太陽光加熱セル20での流路に比較してはるかに幅の小さいダウンカマー19から落下してくる流動媒体4を貯留、流動化させて、広い流路幅をもつ太陽光加熱セル20へ向けて、流動媒体4を均一に分散させる役割を持つ。
太陽光加熱セル20は、幅方向に延びる複数の滞留槽27の内、上段側の滞留槽27から順に流動媒体4をオーバーフローさせながら下段側の滞留槽27に流下させる。その際、各滞留槽27に溜まった流動媒体4に太陽光を照射して流動媒体4を加熱する。太陽光加熱セル20は、流動媒体4を太陽光によりできるだけ均一に加熱する必要性から、流動媒体4を幅方向で広げつつ各滞留槽27に滞留させ、太陽光の照射時間を確保するとともに、各滞留槽27の流動媒体4の上面に太陽光をできるだけ直交方向から照射可能とする。
太陽光加熱セル20の透光板22には、例えば図1に示すビームダウン式の太陽光集光装置23によって、集光した太陽光が供給される。
透光板22上には、センターミラー25からの太陽光をさらに集光するために、被加熱部側(太陽光加熱セル20側)が絞られた円筒形集光鏡31が設けられる。
図10、図11に示すように、円筒形集光鏡31は、断面円形の上部31aに対し、下部31bを断面円形とせず、傾斜板21の幅方向両側に対応する部位を切り欠いた形状を有する。具体的には、円筒形集光鏡31の下部31bは、傾斜板21の全幅よりも大径の円筒部31cと、傾斜板21の幅方向両側の側辺に沿う平坦部31dと、を組み合わせて形成される。図中線C1は円筒形集光鏡31の中心軸線を示す。
図12(a)に示すように、この円筒形集光鏡31の下部31bの断面形状に相当する照射領域S1は、単に円形の照射領域と比べて、傾斜板21の幅方向での太陽光照射距離の差を少なくし、この点でも幅方向の加熱が均一化される。なお、図12(b)は、下部31bの比較例として円筒状の下部31b’の照射領域S1’を示す。
図2を参照し、太陽光加熱セル20の下部にはシールポット36が設けられる。シールポット36は、太陽光加熱セル20の下端に設けた降下管からの流動媒体4を受け、窒素ガス等の流動化ガスの供給によって流動媒体4の流動層5を形成し、かつ流動層5の内部に開口した下側のダウンカマー19’により流動媒体4を流動層ガス化炉1に供給する。
シールポット36は、流動層ガス化炉1で発生するガス化ガス8の一部がダウンカマー19’を逆流して太陽光加熱セル20へ流入することを防止する働きをする。ガス化ガス8の太陽光加熱セル20への流入は、製品ガス(ガス化ガス8)のロスにつながるだけでなく、可燃性のガス化ガス8が、酸化雰囲気となる可能性のある太陽光加熱セル20内で爆発を引き起こす危険性を取り除く役割を持っている。
太陽光加熱セル20は、太陽光から得られる熱量の最大値が、流動層ガス化炉1での原料7のガス化に必要な熱量の例えば50〜80%程度を保持するように設定される。これは、例えば太陽光加熱セル20において太陽光から得られる熱量の最大値が、流動層ガス化炉1での原料7のガス化に必要な熱量の100%近くを保持するように設定した場合には、流動層燃焼炉12での燃焼が不要になり、流動層燃焼炉12内の温度が低下することで流動層燃焼炉12内のガス線速度が低下し、流動媒体4を流動層ガス化炉1に循環させることが困難になるからである。流動層燃焼炉12内で、ある程度の燃焼量を保つことで温度を維持し、流動層燃焼炉12内のガス線速度をある程度のレベルに保つことが必要である。
流動層燃焼炉12には、補助燃料ホッパ40、及びモータ41で駆動されるロータリフィーダ等の燃料供給機42等からなる補助燃料供給装置43を設けて、補助燃料44(石炭等)を供給する。
流動層ガス化炉1には、流動層5の温度を計測する流動層温度計45が設けられ、流動層温度計45の検出温度は制御装置46に入力される。
また、ヘリオスタット24のエリアの複数個所には、日照計47が配置され、日照計47の日照検出信号も制御装置46に入力される。
さらに、太陽光加熱セル20の出口には、流動媒体4の温度を計測するセル出口温度計48が設けられ、セル出口温度計48からのセル出口温度信号も制御装置46に入力される。
また、流動層燃焼炉12には、内部の燃焼温度を計測する燃焼温度計49が設けられ、燃焼温度計49からの検出温度も制御装置46に入力される。
さらに、流動層燃焼炉12の下部に酸化ガス14を供給する供給管14bには、酸化ガス14の供給量を検出する流量計50が設けられ、流量計50の検出流量も制御装置46に入力される。
制御装置46は、流動層ガス化炉1の負荷に応じた原料供給指令信号を原料供給装置6のモータ6bに出力する。
また、制御装置46は、流動層ガス化炉1に設けた流動層温度計45による検出温度に基づいた補助燃料制御信号を補助燃料供給装置43にモータ41に出力し、補助燃料44の供給を制御する温度制御器53を有し、かつ流動層燃焼炉12に設けた燃焼温度計49による検出温度に基づいた流量制御信号を酸化ガス14の供給管14bに設けた流量調整ダンパ14aに出力し、酸化ガス14の供給を制御する循環量制御器55を有する。
温度制御器53は、流動層温度計45からの検出温度が予め設定した設定温度に保持されるように、補助燃料供給装置43のモータ41に補助燃料制御信号を出力して制御する。このとき、太陽光加熱セル20で得られる太陽光からの熱量は一定でなく変動するため、例えば太陽光からの熱量が減少した場合には時間遅れをもって流動層温度計45の検出温度が低下する。このため、流動層温度計45の検出温度が低下した段階で補助燃料44を増加する補助燃料制御信号を補助燃料供給装置43に送っても、固気分離器17を介して流動層ガス化炉1に供給される流動媒体4の温度が上昇して設定温度に回復するまでには時間がかかり、この時間遅れのために流動層ガス化炉1の温度が変動してしまう。
このため、温度制御器53には、日照計47からの日照検出信号を入力し、流動層温度計45の検出温度が設定温度になるように補助燃料供給装置43に出力する補助燃料制御信号を、日照検出信号に基づいて先行して補正するようにしている。
また、温度制御器53には、太陽光加熱セル20出口の流動媒体4の温度を計測するセル出口温度計48からのセル出口検出温度信号を入力している。したがって、温度制御器53は、流動層温度計45の検出温度が設定温度になるように補助燃料供給装置43に出力する補助燃料制御信号を、セル出口検出温度信号に基づいて宣告して補正することもできる。しかし、日照の変化によってセル出口検出信号が変化するまでには時間が掛かり、さらにセル出口検出信号の変化は固気分離器17から落下供給される流動媒体4の温度変化も含んだのもとなるため、先行補正を行う際には、日照計47からの日照検出信号を用いることが好ましい。したがって、セル出口温度計48からのセル出口検出温度信号は、太陽光加熱セル20において太陽光により流動媒体4がどの程度の熱量を受けて温度が変化したかの目安の判断として制御の補助に用いられる。
循環量制御器55は、流動層燃焼炉12に設けた燃焼温度計49による検出温度に基づいて、流量計50からの酸化ガス14の検出流量が所定値になるように、酸化ガス14の供給管14bに備えた流量調整ダンパ14aに流量制御信号を出力して制御する。
なお、酸化ガスの流量は、流動層ガス化炉1から供給されるチャーと流動層燃焼炉12に直接供給される補助燃焼に対し、酸素量が過剰になる範囲で制御する場合は、流動層燃焼炉12内を上昇する流動媒体4の線速度を優先した制御となる。
ここで、流動層燃焼炉12に供給する補助燃料44の供給量が変化すると、燃焼炉温度が変化して燃焼ガスの体積が変化することで、流動層燃焼炉12内を上昇する流動媒体4の線速度が変化する。このため、固気分離器17を介して流動層ガス化炉1に供給される流動媒体4の循環量が変化することになる。流動層ガス化炉1で安定したガス化を達成するためには、流動媒体4の循環量は一定に保持する必要がある。このため、循環量制御器55は、燃焼温度計49による検出温度に基づいて、流動層燃焼炉12内を上昇する流動媒体4の線速度が一定に保持されるように、流量制御信号により流量調整ダンパ14aを調整して流動層燃焼炉12に供給する酸化ガス14の供給量を制御する。
また、このように酸化ガス14の供給量を制御すると、酸化ガス14の供給量の変化に伴って流動層ガス化炉1に供給される流動媒体4の温度が変化することになるので、この温度変化分については温度制御器53により補助燃料44の供給を微調整するようにしている。
なお、流動層燃焼炉12内を上昇する流動媒体4の線速度を一定にする制御は、上述のとおり、燃料(チャーと補助燃料)に対して、酸化ガス中の酸素が過剰に存在する場合に限定するもので、流動媒体4の線速度を一定にする制御により、酸素が不足する条件となるような場合は、酸化ガス14の供給量を、燃料に対する酸素量がある程度過剰になるまで酸化ガスの流量を増加させ、流動媒体4の線速度が制御目標値より大きくなってもよい。
次に、上記循環流動層ガス化システムSの作用について説明する。
原料供給装置6から流動層ガス化炉1に供給された原料7は、流動層5においてガス化剤3(水蒸気)と流動媒体4による加熱の作用を受けてガス化され、ガス化ガス8とチャーを生成する。生成したガス化ガス8は流動層ガス化炉1の上部から取り出され、チャーは流動媒体4と共にシール導入管11を介して流動層燃焼炉12に供給される。
流動層燃焼炉12では、下部から供給される酸化ガス14によってチャーが燃焼するとともに、補助燃料供給装置43から供給される補助燃料44が燃焼することにより流動媒体4の加熱が行われ、流動層燃焼炉12内の高温流体16は、上部から取り出されて固気分離器17に導入され、流動媒体4と排ガス18とに分離される。固気分離器17で分離された流動媒体4は、ダウンカマー19を介して太陽光加熱セル20に供給され、太陽光により加熱される。太陽光加熱セル20で加熱された流動媒体4は、流動層ガス化炉1に供給され、原料7のガス化に供される。
太陽光加熱セル20では、貯留室26に備えた溢流板26aにより貯留室26内の流動媒体4を傾斜板21の幅方向に分配して供給する。傾斜板21上では、上段の滞留槽27から流動媒体4が幅方向に広がりつつ溜まり、順次オーバーフローしながら傾斜板21の傾斜方向に沿うように下段側へ流下する。これにより、流動媒体4への太陽光の照射時間を確保し、流動媒体4を十分に加熱することができる。
傾斜板21上には、幅方向に延びる複数の堰板28により、同じく幅方向に延びて傾斜方向に並ぶ複数の滞留槽27が区画される。流動媒体4は、まず最上段の滞留槽27に供給された後、オーバーフローにより堰板28を乗り越えて下流側の滞留槽27に順に供給され、最終的に最下段の滞留槽27からオーバーフローして流出する。これにより、流動媒体4の流量を確保した上で太陽光加熱セル20内での滞留時間を確保して十分に加熱できるとともに、各滞留槽27において幅方向で均一に加熱することができる。
太陽光加熱セル20の透光板22は水平に配置され、鉛直上方から入射される太陽光は透光板22と垂直に入射するよう設定されるため、透光板22を透過する際の太陽光の散乱が抑えられ、太陽光が狙った範囲に確実に照射される。
流動層ガス化炉1では、反応温度を一定に保持することにより安定したガス化を行うことが要求されるが、太陽光加熱セル20で得られる太陽光からの熱量は一定でなく変動するため、流動層温度計45の検出温度を制御装置46の温度制御器53に入力し、流動層温度計45の検出温度が予め設定された設定温度になるように、補助燃料制御信号を補助燃料供給装置43に送って補助燃料44の供給量を制御する。
この制御により、設定温度に対して太陽光加熱セル20で得られる熱量では不足する分の熱量を、補助燃料供給装置43からの補助燃料44の供給によってカバーするようにしたので、太陽光加熱セル20で得られる熱量を最大限に活用したガス化が可能になる。
太陽光加熱セル20で得られる熱量では不足する熱量を補助燃料供給装置43から供給される補助燃料44によってカバーするようにしているので、流動層ガス化炉1から流動層燃焼炉12に供給されるチャーが極力少なくなるように流動層ガス化炉1の運転を設定することで、原料7のガス化率を高めることができる。
前述のように、太陽光加熱セル20で得られる太陽光からの熱量は一定でなく変動するため、例えば太陽光からの熱量が減少した場合には時間遅れをもって流動層温度計45の検出温度が低下する。そのため、流動層温度計45の検出温度の低下に伴って補助燃料44を増加する補助燃料制御信号を補助燃料供給装置43に送っても、固気分離器17を介して流動層ガス化炉1に供給される流動媒体4の温度が上昇するまでに時間遅れが生じ、流動層ガス化炉1の温度が不安定に変動してしまう。
このため、日照計47からの日照検出信号を温度制御器53に入力し、流動層温度計45の検出温度が設定温度になるように、補助燃料供給装置43に出力する補助燃料制御信号を、日照検出信号に基づいて先行して補正するようにしているので、日照の変化に基づいて生じる流動層ガス化炉1の流動層5の温度の変動を抑制して安定させることができる。すなわち、日照計47の計測値と補助燃料44の供給量とは、日照計47の計測値の減少したとき、補助燃料44の供給量が増加する方向に制御が行われる。
さらに、循環量制御器55には、流動層燃焼炉12に設けた燃焼温度計49からの検出温度が入力されており、この検出温度に基づいて、循環量制御器55は、流動層燃焼炉12内を上昇する流動媒体4の線速度が一定に保持されるように、流量調整ダンパ14aに流量制御信号を出力して酸化ガス14の供給量を制御している。このため、流動層燃焼炉12から流動層ガス化炉1に循環する流動媒体4の循環量が安定し、流動層燃焼炉12でのガス化が安定して行われるようになる。
ただし、前述のとおり、燃料に対する酸化ガス中の酸素が不足する条件にならないよう、酸化ガスの供給量を設定することがあり、流動層燃焼炉12内を上昇する流動媒体4の線速度が増加することはやむを得ない。
流動層ガス化炉1から排出されるチャーと流動媒体4は、前述のとおり、傾斜したシール導入管11を介して流動層燃焼炉12に供給されるが、シール導入管11では、下方へ屈曲した突出部11bと、ここへ供給される窒素ガス等の流動化ガスGにより、チャーと流動媒体4を流動層燃焼炉12へ供給するように構成されており、突出部11bへ供給される窒素ガス等の流動化ガスGの調整により、チャーと流動媒体4の供給量をある程度制限することができ、流動層燃焼炉12内を上昇する流動媒体4の線速度が増加があっても、流動媒体の循環量が大幅に増加することはない。
太陽光加熱セル20上に設ける円筒形の円筒形集光鏡31は、ヘリオスタット24及びセンターミラー25により集光した太陽光によって高温条件に晒されるため、材料強度を保持するとともに温度変化による変形を防止するために水冷する必要があり、冷却水等を含めた円筒形集光鏡31の重量は相当なものとなる。しかしながら、円筒形の円筒形集光鏡31は、水平な透光板22上に鉛直に保持されるため、その重量が円筒形集光鏡31の下面にバランスよくかかり、円筒形集光鏡31を構成する材料はさほどの強度を必要とせず、変形等を抑制して支持できるため、円筒形集光鏡31の材料の板厚をあまり厚くする必要はなく、太陽光が被加熱部に向かって効率よく反射するような精密な加工を行うことは、特に難しいものではない。
前述のように、太陽光加熱セル20の透光板22と傾斜板21との間の空間は、太陽光加熱セル20内のガス(空気)の対流を引き起こし、熱の放散を助長して太陽光の利用率低下の原因となる。すなわち、流動層5では熱媒粒子だけでなく流動化ガスも加熱され、これが熱の一部を持ち去ることで太陽光の熱利用率を低下させるので、この熱を回収して熱媒粒子の加熱に再利用することが望まれる。
そこで、本システムでは、図3に示すように、太陽光加熱セル20に回転再生式熱交換器64を含む流動化ガス循環系統60を設け、この系統にブロワ61により流動化ガスを循環させることで、流動化ガスの熱を再利用可能とする。
具体的には、本システムは、太陽光加熱セル20内のガスを導出する導出路62と、導出路62の下流端に吸入口を接続するブロワ61と、ブロワ61の吹出口に上流端を接続し導出路62で導出したガスを各滞留槽27に底部から導入して流動媒体4の流動化に寄与する導入路63と、導出路62及び導入路63に跨り前記導出したガスの熱で各滞留槽27に導入するガスを再加熱する熱交換器64と、を備える。
なお、図中符号65は導出路62における熱交換器64よりも下流側に設置されて導入路63における熱交換器64に導入する前のガスを予熱する予熱器、符号66は導出路62における予熱器65とブロワ61との間に設置される放熱器、符号67は導入路63におけるブロワ61の直前に設置されるフィルタ内蔵のバッファタンク、符号68は導入路63における予熱器65よりも上流側に設置される圧力調整用の空気導入路、符号69は導出路62における熱交換器64よりも下流側から分岐して圧力調整弁69aを介して過大圧力を排ガス18とともに排出可能とする圧力調整系統、をそれぞれ示す。
本システムでは、熱回収すべきガスの温度が太陽光加熱セル20内の温度(約1000℃)である。一方、回収した熱により加熱する対象は、太陽光加熱セル20に供給する流動化ガスであり、この温度は太陽光加熱セル20内の温度に近いほどよい。すなわち、約1000℃の熱を回収し、流動化ガスを1000℃近くまで加熱できることが求められるが、このような高温条件では金属材料を用いた熱交換器では難しい。
高温流体間の熱交換の例としては高温空気燃焼という技術があり、熱交換の媒体にセラミック材料を用いる。ここでの熱交換は、流体から流体への直接の熱交換ではなく、セラミックを高温流体で加熱し、その後に流す流体を低温流体に切り替えて、この低温流体を前記加熱後のセラミックで加熱することで、高温流体から低温流体へ間接的に熱を移動するものである。セラミックは蓄熱体として利用され、1000℃のような高温にも十分耐えられるので、高温の熱交換に有効である。このような熱交換器は再生式熱交換器と称される。
ただし、高温流体と低温流体との切り換え操作が必要になるので、この部分に工夫が必要となる。一般的に考えられるのは弁による切り換えであるが、低温側(高温流体側の蓄熱体出口と低温流体側の蓄熱体入口)は問題ないが、高温側(高温流体側の蓄熱体入口と低温流体側の蓄熱体出口)は1000℃に耐えられなければならず、金属製の弁の使用は困難であり、弁を用いずに流体を切り換えることが必要となる。
弁を用いない再生式熱交換器の例としては、ボイラプラントで空気予熱器に利用される回転式の熱交換器がある。この回転式熱交換器は、モータ64aにより駆動されるロータ64b内を周方向で複数の空間に区画し、これら複数の空間内に熱媒(セラミック)を収容する。複数の空間の内の一部は高温ガスの流路(導出路62)に配置され、他の一部は加熱前ガスの流路(導入路63)に配置される。高温ガスの流路に配置された空間内のセラミックを加熱した後、ロータ64bを回転させ、加熱したセラミックを加熱前ガスの流路に配置し、セラミックの熱で加熱前ガスを加熱するとともに、高温ガスの流路には加熱前のセラミックを配置して高温ガスの熱で加熱する。この繰り返しにより、高温ガスの熱を加熱前ガスの加熱に利用することができる。
回転式熱交換器は、熱交換する二つの流体間を完全にシールすることはできないが、太陽光加熱セル20の流動化に用いるガスは、ブロワ61により循環して再利用することが可能であり、シールが不完全であっても利用可能と判断される。
上記改善の効果として、技術的に確立された太陽光集光システムが利用できる。
また、太陽光加熱セル20を流動層式とすることで、熱媒粒子入口部と熱媒粒子出口部との高低差が少なくなり、太陽光加熱セル20上面の太陽光透過面を水平に配置しても、太陽光加熱セル20内の空間の拡大が抑えられ、内部の流動化ガスの対流を抑制するとともに、太陽光加熱セル20全体の表面積を減らし、外部への熱放散を極力少なくすることができる。
また、集光した太陽光を照射する範囲が円形であると、太陽光加熱セル20両側では熱媒粒子が照射領域S1を通過する距離が短くなるため、太陽光から得られる熱量が少なくなるが、流動層5内では熱媒粒子の混合が活発であり、照射光量の多い中心部と照射光量の少ない周辺部とは混合効果により温度が均一になる。太陽光加熱セル20の幅方向で熱媒粒子が照射領域S1を通過する距離は、前記した円筒形集光鏡31の構成によっても均等化が図られる。
また、棚段式に滞留槽27を配置することで、太陽光加熱セル20底面の傾きに関係なく、太陽光加熱セル20へ供給される熱媒粒子の流量がそのままの量で通過し、太陽光加熱セル20内に対流する熱媒粒子量に過不足が生じることはない。
すなわち、太陽光加熱セル20の流動化ガスを循環利用し、かつ再生式回転熱交換器64で太陽光加熱セル20から排出されるガスの熱を回収し、その熱で太陽光加熱セル20に供給するガスの加熱を行うことで、太陽光から得られる熱を効率よく利用するとともに、流動化ガスの供給温度が高いので、熱媒粒子も効率よく加熱することができる。
本実施形態のガス化システム(循環流動層ガス化システムS)において、太陽光加熱セル20は、流動層燃焼炉12(ライザー)出口の固気分離器17の熱媒粒子が排出されて流動層ガス化炉1へ供給される系統の途中に設けられる。太陽光加熱セル20内では、熱媒粒子が流動層5を形成しながら、棚田状に高低差を持って設置された数段の滞留槽27を順次オーバーフローしながら下流へ移動し、その間に太陽光加熱セル20上面の透光板22から供給される太陽光によって加熱される。太陽光加熱セル20の最終段からオーバーフローした熱媒粒子は、流動層ガス化炉1への連絡配管に集められて流動層ガス化炉1へ供給される。
太陽光加熱セル20で熱媒粒子の流動化に用いられたガスは、太陽光加熱セル20のガス出口から再生式回転熱交換器64へと導かれ、このガスが持つ1000℃程度の高温の熱が回収された後、流動化ガス循環系統60により再度太陽光加熱セル20の流動化ガスとして利用される。再生式回転熱交換器64で回収した熱は、太陽光加熱セル20へ供給する流動化ガスの加熱に利用される。
太陽光加熱セル20の流動化ガス循環系統60では、ブロワ61で許容される温度までガスを冷却する必要があるので、熱交換や冷却によって循環ガスの温度を調整する。
本システムでは、流動層燃焼炉12にて熱媒粒子をガス化に必要な温度まで加熱した後、固気分離器17で分離して流動層ガス化炉1へ供給している。本システムでは、この系統に太陽光加熱セル20を配置することにより、熱媒粒子の加熱を、第一段の流動層燃焼炉12、第二段の太陽光加熱セル20、という二段を経て、最終的にガス化に必要な温度まで加熱する。
したがって、太陽光加熱セル20で十分な熱が供給できるときは、流動層燃焼炉12での燃料消費を抑えることができる。また、それに応じてガス化原料となる石炭消費も減らすことができるが、発生する燃料ガスとしては、石炭消費量が減少しても、太陽光を利用しないシステムと変らない発熱量が得られる。節約した原料の発熱量分は太陽エネルギー(再生可能エネルギー)であることから、CO排出の削減にもつながる。
なお、太陽光は、丸一日、さらには年間を通じて常時得られるものではなく、夜間、曇天、雨天時のほか、日の出や日没時等の太陽光の弱い時間帯などにおいては、太陽光加熱セル20で十分な熱量を得ることが期待できない。このとき、流動層燃焼炉12での燃料消費を増して、熱媒粒子に供給する熱量を確保することで、プラントの運転を継続できることができる。
太陽光を確保するという意味では、本システムの立地は乾燥地帯が適しているが、このような場所では、ガス化に必要な水(水蒸気)を得るのが困難である。水の確保という面では、熱帯雨林気候の地域への立地を考慮する必要があるが、この場合、スコールのような天候の急激な変化への対応が求められる。また、太陽光が失われると同時に、流動層燃焼炉12での燃焼量増加を行うことで、ガス化に必要な熱量の確保することが理論的には可能であるが、この場合、流動層燃焼炉12を構成する水冷壁や耐火物構造の熱容量が大きくなるため、瞬時に温度を変化させることが困難である。
そこで、図4に示すように、太陽光加熱セル20の流動化ガス入口に補助燃焼炉70を設け、ガスや油のような着火と燃焼調整が容易な燃料を用いて不足する熱を補うことにより、プラント熱収支の急激な変化を抑え、安定して燃料ガスを発生させることが可能となる。
なお、この補助燃焼炉70は、プラントのスタートアップを円滑に行う上でも有効であるとともに、太陽光集光装置23の下記制御異常が発生したときの対応にも効果を発揮することが期待される。
以上説明したように、本実施形態によれば、循環流動層ガス化システムSが、傾斜板21と、傾斜板21の上側を覆うように対向するとともに太陽光集光装置23によって集光した太陽光を透過させる透光板22と、傾斜板21上に棚田状に形成された複数の滞留槽27と、を有する太陽光加熱セル20を備え、太陽光加熱セル20が、傾斜板21上の複数の滞留槽27に流動媒体4を流入させ、この流動媒体4をオーバーフローさせながら上段側の滞留槽27から下段側の滞留槽27へ流動媒体4を流すことで、熱媒粒子の逆流を防いで円滑に一方向へ流すことができる。このとき、熱媒粒子を各滞留槽27に滞留させつつ、十分かつ均等な加熱を実現することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した手段及び各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記循環流動層ガス化システムSは一例であって、ガス化に必要な熱量の一部を太陽光から得ることができるガス化システムであればよい。
S…循環流動層ガス化システム(ガス化システム)、1…流動層ガス化炉(ガス化炉)、3…ガス化剤、4…流動媒体(熱媒粒子)、5…流動層、7…原料、8…ガス化ガス、12…流動層燃焼炉、14…酸化ガス、16…高温流体、17…固気分離器、18…排ガス、20…太陽光加熱セル(太陽光加熱部)、21…傾斜板、22…透光板、27…滞留槽、28…堰板、31…円筒形集光鏡(集光鏡)、31b…下部(太陽光加熱部側)、31c…円筒部、31d…平坦部、62…導出路、63…導入路、64…回転再生式熱交換器(熱交換器)、70…補助燃焼炉

Claims (8)

  1. 原料をガス化してガス化ガスを生成するガス化システムの太陽光利用方法であって、
    前記ガス化システムが、水平方向に対して傾斜する傾斜板と、前記傾斜板の上側を覆うように対向するとともに太陽光集光装置によって集光した太陽光を透過させる透光板と、
    を有する太陽光加熱部を備え、
    前記太陽光加熱部が、前記傾斜板上に傾斜方向に並ぶと共に当該傾斜方向において高さが順次異なる複数の滞留槽を形成し、最上段の前記滞留槽に前記熱媒粒子を供給すると共に前記各滞留槽に流動化ガスを導入して前記熱媒粒子を流動化させてオーバーフローさせることにより上段側の滞留槽から下段側の滞留槽へ前記熱媒粒子を流し、
    前記ガス化システムは、ガス化剤及び前記太陽光加熱部から流入する前記熱媒粒子を用いて前記原料をガス化することを特徴とするガス化システムの太陽光利用方法。
  2. 前記太陽光加熱部内から導出したガスの熱で前記流動化ガスを加熱することを特徴とする請求項1に記載のガス化システムの太陽光利用方法。
  3. 原料をガス化してガス化ガスを生成するガス化システムの太陽光利用装置であって、
    前記ガス化システムが、水平方向に対して傾斜する傾斜板と、前記傾斜板の上側を覆うように対向するとともに太陽光集光装置によって集光した太陽光を透過させる透光板と、
    を有する太陽光加熱部を備え、
    前記太陽光加熱部が、前記傾斜板上に傾斜方向に並ぶと共に当該傾斜方向において高さが順次異なる複数の滞留槽を区画するべく、前記傾斜板上に複数の堰板を起立させ、最上段の前記滞留槽に前記熱媒粒子を供給すると共に前記各滞留槽に流動化ガスを導入して前記熱媒粒子を流動化させてオーバーフローさせることにより上段側の滞留槽から下段側の滞留槽へ前記熱媒粒子を流し、
    前記ガス化システムは、前記太陽光加熱部から流入する前記熱媒粒子による流動層を形成し、当該流動層にガス化剤を供給することにより前記原料をガス化する流動層ガス化炉を備えることを特徴とするガス化システムの太陽光利用装置。
  4. 前記ガス化システムが、
    前記流動層ガス化炉と、
    前記流動層ガス化炉で生成したチャーと前記熱媒粒子とを導入して前記チャーを酸化ガスで燃焼することにより前記熱媒粒子の加熱を行う流動層燃焼炉と、
    前記流動層燃焼炉の上部から高温流体を導入して前記熱媒粒子と排ガスとを分離し、分離した前記熱媒粒子を前記流動層ガス化炉に落下供給する固気分離器と、
    を有する循環流動層ガス化システムであり、
    前記固気分離器から前記流動層ガス化炉への落下供給経路に前記太陽光加熱部が設けられることを特徴とする請求項3に記載のガス化システムの太陽光利用装置。
  5. 前記太陽光加熱部内のガスを導出する導出路と、
    前記各滞留槽に前記流動化ガスを供給する導入路と、
    前記導出路及び導入路に跨り前記導出路で導出したガスの熱で前記流動化ガスを加熱する熱交換器と、
    を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載のガス化システムの太陽光利用装置。
  6. 前記導入路に補助燃焼炉を有することを特徴とする請求項5に記載のガス化システムの太陽光利用装置。
  7. 前記太陽光加熱部の透光板上に円筒状の集光鏡を有し、
    前記集光鏡の太陽光加熱部側が、前記傾斜板の全幅よりも大径の円筒部と、前記傾斜板の幅方向両側の側辺に沿う平坦部と、を組み合わせて形成されることを特徴とする請求項3から6の何れか一項に記載のガス化システムの太陽光利用装置。
  8. 前記太陽光集光装置が、
    地上に配置した複数の反射鏡で太陽光を上向きに反射し、この反射光を所定の高さに設置したセンターミラーに集めて下向きに反射して、前記太陽光加熱部に入射させるもので、
    前記複数の反射鏡の少なくとも一部が、ガス化プラントのグランドレベルから所定高さのプラットフォーム上に設置されることを特徴とする請求項3から7の何れか一項に記載のガス化システムの太陽光利用装置。
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