以下、各実施形態に係る医用データ移行システムについて図面を用いて説明する。
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態に係る医用データ移行システムを備えた病院システムの一例を示す模式図であり、図2は同病院システムの一部を示す模式図であり、図3は医用データ移行システムの構成を示す模式図である。
病院システムは、図1に示すように、クライアント端末10、オーダリングシステム20、電子カルテシステム30、既存のデータ保管システム40、新規のデータ保管システム50及び医用データ移行システム60がLANなどのネットワークを介して通信可能となっている。病院システムは、病院情報システム(hospital information system:HIS)と呼んでもよい。既存のデータ保管システム40は、既存のレポートシステム41及び既存の医用画像保管システム42を備えている。新規のデータ保管システム50は、新規のレポートシステム51及び新規の医用画像保管システム52を備えている。各データ保管システム40,50は、それぞれサーバ装置として構成されていてもよい。クライアント端末10は、複数台が設けられているが、ここでは1台のみを代表例として図示している。
クライアント端末10は、医師等の操作者により操作されるコンピュータ端末であり、病院システムにアクセス可能となっている。また、複数のクライアント端末10は色々の種類があり、例えば、各データ保管システム40,50に保管された検査画像等の画像データを表示するための画像ビューアを備えているものもある。
オーダリングシステム20は、クライアント端末10等から読出/書込可能なシステムであり、クライアント端末10から入力された検査の予約情報を保管する。
電子カルテシステム30は、クライアント端末10等から読出/書込可能なシステムであり、クライアント端末10から入力された各種の情報を保管する。電子カルテシステム30は、例えば、患者名、院内区分、病棟(入院の場合)、病名、処方、既往歴、主要症状経過、手術、処置、検査結論、患者状況などの診療内容に関する情報を保管する。電子カルテシステム30は、診療内容に関する情報以外に、各種報告書、紹介状、指導内容書、説明書、同意書、看護記録、手術記録を保管する場合もある。電子カルテシステム30は、オーダリングシステム20を兼ねる場合もある。
既存のデータ保管システム40は、レポートシステム41及び医用画像保管システム42を備えている。
レポートシステム41は、ユーザによるクライアント端末10等の操作に応じて、医用画像保管システム42内の検査画像を表示し、ユーザによる検査画像の読影結果を表す読影レポート(以下、レポートという)を作成し、当該レポートを保管する機能をもっている。当該保管されたレポートは、病院システム内のクライアント端末10等から閲覧可能となっている。
医用画像保管システム42は、図示しない医用撮影装置で発生した検査画像を管理する機能をもっている。当該保管された検査画像は、病院システム内のクライアント端末10等から閲覧可能となっている。
新規のデータ保管システム50は、既存のデータ保管システム40に保管された医用データの移行先のシステムであり、例えば、レポートシステム51及び医用画像保管システム52を備えている。
レポートシステム51は、既存のレポートシステム41と同様の機能を有しており、また、新規システムであることに応じた任意の機能を更に備えていてもよい。
医用画像保管システム52は、既存の医用画像保管システム42と同様の機能を有しており、また、新規システムであることに応じた任意の機能を更に備えていてもよい。
医用データ移行システム60は、図2に示すように、病院システムに用いられる既存のデータ保管システム40に保管された医用データを新規のデータ保管システム50に移行させるためのシステムである。移行対象の医用データは、医用画像保管システム42の画像データとデータベース、及びレポートシステム31のデータである。移行手法としては、例えば、移行前に、当該医用データに患者単位の優先順位を示す患者優先順位をつけ、患者単位の医用データを画像ビューアの初期表示レイアウトに基づいてグループ化し、得られたデータブロックを移行させる方式としてもよい。なお、「初期表示レイアウト」の用語は、表示レイアウトの一例を示しており、単に「表示レイアウト」と読み替えてもよい。このことは各実施形態において同様である。
このような医用データ移行システム60は、図3に示すように、記憶部61、保管部62、入力部63、データ通信部64、処理部65及び表示部66を備えている。
記憶部61は、ROM(Read-Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置であり、一時的なワークエリアとして処理部65に使用される。
保管部62は、長期保存用の記憶装置であり、ハードディスク(HDD-Hard Disk Drive)又はNAS(Network Attached Storage)等として実装される。
入力部63は、マウスやキーボードなどの入力機器を介し、ユーザからの各種命令や情報入力を受け付けて処理部65に送出する。
データ通信部64は、処理部65に接続され、病院内の他のシステムやクライアント端末10と、データや操作指示のやり取りを行う。
処理部65は、各部61〜64,66に接続され、図4のフローチャートに示す処理を実行するための機能を有している。
補足すると、処理部65は、以下の各機能(f65-1)〜(f65-7)を有している。
(f65-1) 病院システムから患者の状況を示す患者状況情報を抽出する患者状況抽出機能。
(f65-2) 抽出した患者状況情報を記憶部61に書込む患者状況書込機能。
(f65-3) 医用データのうちの検査画像データを表示する画像ビューアの各々の操作者に関連付けられた初期表示レイアウトを病院システムから取得するレイアウト取得機能。
(f65-4) 取得した初期表示レイアウトを記憶部61に書込むレイアウト書込機能。
(f65-5) 記憶部61内の患者状況情報及び初期表示レイアウトに基づいて、移行させる医用データ単位の優先順位を示す移行優先順位を決定する移行優先順位決定機能。
ここで、移行優先順位決定機能(f65-5)は、以下の各機能(f65-5-1)及び(f65-5-2)を備えていてもよい。
(f65-5-1) 患者状況情報に基づいて、患者単位の優先順位を示す患者優先順位を決定する機能。
(f65-5-2) 患者優先順位が同一の医用データのうち、初期表示レイアウトの各々に共通に用いられる医用データの移行を優先するように移行優先順位を決定する機能。
(f65-6) 決定された移行優先順位に基づいて、医用データの移行先となる新規のデータ保管システム50を選定する移行先選定機能。
ここで、新規のデータ保管システム50は、病院システムを有する病院の内部に設置された第1のデータ保管システムと、病院の外部に設置された第2のデータ保管システムとがある場合でもよい。この場合、移行先選定機能(f65-6)は、決定された移行優先順位に基づいて、当該第1のデータ保管システム又は当該第2のデータ保管システムを選定してもよい。
(f65-7) 決定された移行優先順位に基づいて、既存のデータ保管システム40に保管されている医用データを、当該選定された新規のデータ保管システム50に移行するデータ移行機能。
ここで、データ移行機能(f65-7)は、予め設定されたスケジュール及び移行優先順位に基づいて、医用データを移行してもよい。
表示部66は、処理部65に接続され、ユーザに処理や入力を提示するための表示機器である。表示部66としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどが使用可能となっている。
このような医用データ移行システム60は、例えば、ハードウェア構成、又はハードウェア資源とソフトウェアとの組合せ構成のいずれでも実施可能となっている。組合せ構成のソフトウェアとしては、予めネットワーク又は記憶媒体からコンピュータにインストールされ、医用データ移行システム60の機能を当該コンピュータに実現させるためのプログラムが用いられる。
次に、以上のように構成された医用データ移行システムの動作を図4のフローチャート及び図5〜図16の模式図を用いて説明する。
ステップST1のデータ取得処理において、医用データ移行システム60内の処理部65は、データ通信部64を介して、病院システムから患者の状況を示す患者状況を抽出する。具体的には、医用データ移行システム60は、図5に示すように、データベースファイルなどのデータ形式の予約情報をオーダリングシステム20から取得すると共に、テキストファイル形式の情報(例、患者状況情報、院内区分情報、検査結論情報)を電子カルテシステム30から取得する。取得された各情報は、処理部65により記憶部61に書込まれる。
ステップST2のキーワード抽出処理において、処理部65は、図6に示すように、記憶部61内の患者状況情報からキーワード「退院済」及び「死亡」を抽出し、当該キーワードを、当該患者状況情報に対応する格納タグ名「患者状況」のタグに格納する。
同様に、処理部65は、記憶部61内の予約情報からキーワード「予約日程」及び「予約時間」を抽出し、当該キーワードを当該予約情報に対応する格納タグ名「予約」のタグに格納する。
同様に、処理部65は、記憶部61内の院内区分情報からキーワード「救急」、「ICU」、「普通入院」及び「外来」を抽出し、当該キーワードを、当該院内区分情報に対応する格納タグ名「院内区分」のタグに格納する。
同様に、処理部65は、記憶部61内の検査結論情報からキーワード「要精検」、「要注意」、「問題無し」、「経過観察」及び「他病院へ紹介」を抽出し、当該抽出したキーワードを、取得した検査結論情報に対応する格納タグ名「検査結論」のタグに格納する。
ここで、記憶部61内の情報がテキストファイルの場合、処理部65は、テキスト全体をスキャンし、キーワードのテキストマッチングを行う。
記憶部61内の情報がデータベースファイルの場合、処理部65は、データベースに関連するタグの場所で、該当キーワードに対し、ストリングマッチングを行う。
次に、ステップST3の患者状況リスト作成処理において、処理部65は、ステップST2で抽出した情報に基づいて患者状況リストを作成し、当該患者状況リストを記憶部61に保存する。患者状況リストは、図7に示すように、患者名・ID毎に、患者状況、予約、院内区分、検査結論、最終作成日を含む構造の患者データを有し、このような患者データを一覧して示すリスト情報である。
次に、処理部65は、ステップST4〜ST5,ST7〜ST8に示すように、記憶部61内の患者状況情報及び初期表示レイアウトに基づいて、移行させる医用データ単位の優先順位を示す移行優先順位を決定する。以下、ステップST4〜ST5,ST7〜ST8の処理について述べる。なお、この過程で、ステップST6のレイアウト取得処理についても述べるが、ステップST6の処理は、各ステップST1〜ST5の前後の所望の時点で実行可能である。
ステップST4の患者優先順位決定処理において、処理部65は、患者状況情報に基づいて、患者単位の優先順位を示す患者優先順位を決定する。具体的には、処理部65は、患者状況リスト内の各キーワードの順番に基づいて、患者優先順位を決定する。各キーワードの順番は、デフォルト設定又はユーザ設定により、決定されている。
デフォルト設定の場合、各キーワードの順番の例は、患者優先順位の高い方から「救急」、「ICU」、「院内」、「経過観察」、「入院」、「外来」、「予約された診断時間」、「紹介」、電子カルテから「要精検」、電子カルテから「要注意」、電子カルテから「問題無し」、「タグなし」、「精算済」、「退院済」、「死亡」である。病院システムのデフォルト設定では、すぐに医用データが必要な患者(検査又は診断の緊急性が高い患者)ほど、高い患者優先順位が決定される。
次に、ステップST5の患者並び替え処理において、医用データ移行システム60は、患者優先順位に基づいて、患者状況リスト内の患者データを並び替える。仮に、複数のキーワードが存在する場合、前述したデフォルト設定の順番で上位のキーワードが優先される。しかし、タグなし以降のデータであれば、患者優先順位がタグなしのデータより低く設定される。
ここで、患者並び替え処理の一例を図8に示す患者状況リストにより説明する。
図8において、患者状況リストは、5名の患者α,β,γ,δ,εの患者データを一覧して示している。
一般的なデータ移行の場合、時間の昇順か降順(逆順)で患者データを並べるが、例えば、時間の降順で並べると、患者β,γ,δ,ε,αの順になる。
これに対し、ステップST4の処理で患者優先順位を決定した場合、高い患者優先順位から患者α,γ,δ,ε,βになる。理由は、救急患者は、医用データがすぐ参照される可能性が高いため、高い患者優先順位に決定される。
図8に示す例の場合、患者α,βは、院内区分が「救急」のため、最高の患者優先順位に決定される。しかしながら、患者βは死亡したため、患者βの患者優先順位が患者α,βの並び順の最後になる。
次に、患者γ,εは、院内区分が「普通」であり、他の並び条件から見たら、患者γの検査結論が「要注意」であり、患者εの検査結論が「問題なし」である。
デフォルト設定上、「問題なし」の患者優先順位よりも「要注意」の患者優先順位の方が高いため、患者γは、患者εよりも高い患者優先順位に決定される。
次は、患者δ,εの予約情報に基づき、患者δの予約検査時間「2013/03/19 11:00」が患者εの予約検査時間「2013/03/19 13:00」よりも早いことから、患者δは、患者εよりも高い患者優先順位に決定される。
続いて、患者並び替え処理の他の一例を図9に示す患者状況リストにより説明する。具体的には、複数のキーワードが存在する場合に、デフォルト設定の順番で上位のキーワードが優先される処理について述べる。この説明では、優先される上位のキーワード(又は日時データ等)を「最上位患者状況」と呼ぶ。すなわち、最上位患者状況は、患者状況リストの各患者の列のデータのうち、最終的に患者優先順位を示すデータである。
デフォルト設定は、前述した通り、患者優先順位の高い方から「救急」、「ICU」、「院内」、「経過観察」、「入院」、「外来」、「検査予約日時」、「紹介」、電子カルテから「要精検」、電子カルテから「要注意」、電子カルテから「問題無し」、「タグなし」、「精算済」、「退院済」、「死亡」である。
但し、「検査予約日時」がなく、最上位患者状況が「問題なし」、「タグなし」、「精算済」、「退院済み」や「死亡」の場合には、低い優先順位としている。当該患者優先順位は、患者優先順位決定の際に使用されている優先順位である。
図9で最上位患者状況の決定を説明する。患者αの列には一つの患者状況「救急」しかないので、最上位患者状況は「救急」である。
患者βの列には2つの患者状況「死亡」,「救急」があり、最上位患者状況は「死亡」になる。
患者γの列には、2つの患者状況「普通」,「要注意」があり、最上位患者状況が「普通(入院)」になる。
患者δの列には、患者状況「退院済」,予約検査時間「2013/03/19 11:00」があり、最上位患者状況が「2013/03/19 11:00(検査予約時間)」になる。
患者εの列には、キーワードがないので、最上位患者状況は「タグなし」になる。
次に、ステップST6の画像ビューア初期レイアウト取得処理において、処理部65は、医用データのうちの検査画像データを表示する画像ビューアの各々のユーザ(操作者)に関連付けられた初期表示レイアウトを病院システムからデータ通信部64により取得する。取得された初期表示レイアウトは、処理部65により、記憶部61に書込まれる。具体的には、処理部65は、画像ビューアの初期表示レイアウトに関する情報を取得する。初期表示レイアウトに関する情報は、初期表示レイアウトの他に、例えば、表示条件を含んでもよい。初期表示レイアウトは、検査画像が画像ビューア上に表示される配置を示している。初期表示レイアウトは、主に、モダリティ、検査部位、及びユーザの個人設定(過去検査の数、検査画像の配置)に応じて変化する。
ここで、初期表示レイアウトは、今回の検査画像と、過去の複数の検査画像との配置を示す場合がある。また、一つの画面で、検査画像が複数のマスに配置される場合がある。
また、画像ビューアは複数のユーザに操作される場合がある。この場合、処理部65は、初期表示レイアウトに必要となる最大検査数をまとめるために、画像ビューアの各々のユーザの初期表示レイアウトに関する情報を取得する必要がある。
そのため、処理部65は、病院システムの画像ビューアのユーザ設定を示すデータベースファイルの処理により、全ユーザの初期表示レイアウトに関する情報を一つのレイアウト詳細設定リストにまとめる。レイアウト詳細設定リストは、処理部65により記憶部61に書込まれる。
ここで、レイアウト詳細設定リストは、図10に示すように、ユーザ名・ID毎に、レイアウト名、モダリティ、検査部位、レイアウトで用いる過去検査の数、を含む構造のレイアウト詳細設定データを有し、このようなレイアウト詳細設定データを一覧して示すリスト情報である。なお、例えば、「レイアウトで用いる過去検査の数」が「3」の場合、レイアウトでは、前回の検査(1つ目の検査)、前々回の検査(2つ目の検査)、前々々回の検査(3つ目の検査)、を用いることを意味する。このとき、レイアウトには、3つの過去検査と比較される今回の検査(4つ目の検査)も用いられる。
次に、ステップST7のデータグループ化処理において、医用データ移行システム60は、レイアウト詳細設定リストにより、各モダリティ及び検査部位に対し、レイアウトで用いる過去検査の数の最大値を計算できる。レイアウトで用いる過去検査の数の最大値により、各患者に対し、一回のデータ移行に必要な最小データ移行量がわかる。医用データ移行システム60は、この最小データ移行量を用い、各患者の医用データを移行時のデータブロックとしてグループ化する。
ここで、データグループ化の一例を図11に示すレイアウト詳細設定リストにより説明する。
図11に示す全ユーザA,B,Cにおける、モダリティが「CT」かつ検査部位が「HEAD」のデータは、レイアウトで用いる過去検査の数の最大値が「10」のため、一回のデータ移行に必要となる最小データ移行量が10検査分になる。
このため、モダリティが「CT」かつ検査部位が「HEAD」である10検査分のデータがデータブロックとしてグループ化される。
データブロックは、図12に示すように、患者名・IDに関連付けたデータブロックID毎に、モダリティ、検査部位、レイアウトで用いる過去検査の数、データ最終更新時間、を含むデータ構造を有している。
もし同一の検査又はレイアウトに対し、複数のモダリティ・検査部位が存在する場合、当該レイアウトで用いる過去検査の数も、過去検査の数の最大値の計算に含める必要がある。この場合、処理部65は、モダリティ・検査部位の単位で、最小データ移行量を求める。
例えば図13に示す例の場合、レイアウトにおいて、3種類のモダリティ「CT」,「MRI」,「CT、MRI」が混在し、かつ3種類の検査部位「CHEST、HEAD」,「CHEST」(胸郭),「HEAD」(頭部)が混在する場合がある。
複数のモダリティ・検査部位が混在する場合、レイアウトで用いる過去検査の数の最大値がデータブロックの最小データ移行量になる。
図13において、モダリティ「MRI」で且つ検査部位「CHEST」、「HEAD」の場合、レイアウトで用いる過去検査の数は「10」である。モダリティ「CT」で且つ検査部位「CHEST」、「HEAD」の場合、レイアウトで用いる過去検査の数は「5」である。
その他、モダリティ「CT」で且つ検査部位「HEAD」の場合、レイアウトで用いる過去検査の数が「11」である。
本手法では、モダリティ・検査部位の単位で、レイアウトに用いる過去検査の数の最大値でデータブロックの最小データ移行量を決める。このため、全てのモダリティ・検査部位において、レイアウトで用いる過去検査の数の最大値から、データブロックの最小データ移行量が得られる。
図13に示す例の場合、モダリティが「CT」と「MRI」、検査部位が「CHEST」と「HEAD」、それぞれ11検査分のデータがデータブロックとしてグループ化される。
次に、ステップST8のデータブロックの並び替え処理において、医用データ移行システム60は、患者単位でデータブロックの移行優先順位を設定する。
すなわち、患者のデータブロックが患者優先順位と同じ順位に移行優先順位が設定される。しかしながら、同一患者に対し、2つ以上のデータブロックを有する場合には、各データブロックに対し、患者優先順位とは異なる移行優先順位を決定する必要がある。
例えば、各データブロックのデータ最終更新時間に基づき、最新データを持つデータブロックが当該患者のデータ移行の一つ目であるようにしてもよい。
医用データ移行システム60は、一つ目のデータブロックを除き、残りの全てのデータブロックに優先順位を設定するまで、次の優先順位を持つ患者と比べ、このステップを実行する。
もし複数のデータブロックが同じ最終更新時間をもつ場合、各データブロックのデータブロックIDの昇順に移行優先順位を設定してもよい。
ここで、図14を用い、データブロックの並び替え処理の一例を説明する。
この時点で患者単位の患者優先順位は決定されているとする。患者優先順位の高い方から、患者α,β,γである。患者αは3つのデータブロックを有し、患者βは2つのデータブロックを有している。
ここで、並び替え処理としては、例えば(a)同一患者内での並び替え処理、又は(b)各患者間での並び替え処理、のいずれとしてもよい。
(a)の場合、例えば、患者αについては、患者αの3つのデータブロックをデータ最終更新時間の昇順に並べ替えた後、患者αの同一のデータ最終更新時間のデータブロックをデータブロックIDの昇順に並べ替えればよい。以下同様に、患者単位でデータブロックを並べ替えればよい。その結果、(a)の場合、並び替え処理後のデータブロックは、図15に示すように、移行優先順位が高い順から、データブロックIDが「001」、「002」、「003」、「005」、「004」、「006」になる。
一方、(b)の場合、例えば、患者αの3つのデータブロックをデータ最終更新時間の昇順に並べ替えた後、先頭にある同一のデータ最終更新時間のデータブロックをデータブロックIDの昇順に並べ替えればよい。しかる後、患者αの同一のデータ最終更新時間をもつ2つのデータブロックを除いた残り4つのデータブロックについては、データ最終更新時間の昇順に並び替えた後、同一のデータ最終更新時間のデータブロックをデータブロックIDの昇順に並び替えればよい。その結果、(b)の場合、並び替え処理後のデータブロックは、図16に示すように、移行優先順位が高い順から、データブロックIDが「001」、「002」、「005」、「003」、「006」、「004」になる。
補足すると、患者αのデータブロックについては、データ最終更新時間の昇順の並び替え後、先頭にある同一のデータ最終更新時間「2013/03/05 09:00」をもつ2つのデータブロック、すなわちデータブロックID「001」、「002」をもつ2つのデータブロックが最も高い移行優先順位になる。
このとき、2つのデータブロックのうち、1番小さい値のデータブロックID「001」をもつデータブロックを最高の移行優先順位にし、2番目に小さい値のデータブロックID「002」を2番目の移行優先順位にする。
また、患者αの残りのデータブロックID「003」をもつデータブロックのデータ最終更新時間「2013/03/05 09:30」は、患者βのデータブロックID「005」をもつデータブロックのデータ最終更新時間「2013/03/05 09:00」よりも遅い。このため、患者αのデータブロックID「003」をもつデータブロックは、患者βのデータブロックID「005」をもつデータブロックよりも、低い移行優先順位にする。
同様に、患者βの残りのデータブロックID「004」をもつデータブロックは、患者γのデータブロックID「006」をもつデータブロックよりも、低い移行優先順位にする。
以上により、(b)の場合、並び替え処理後のデータブロックは、移行優先順位が高い順から、データブロックIDが「001」、「002」、「005」、「003」、「006」、「004」になる。
次に、ステップST9の移行先の決定処理において、医用データ移行システム60は、以上のステップで決定された移行優先順位に基づいて、医用データの移行先となる新規のデータ保管システム50を選定する。
例えば、所定順位より高い移行優先順位をもつデータブロックについては、病院システムを有する病院の内部に設置された新規のデータ保管システム50(第1のデータ保管システム)を移行先として選定し、所定順位以下の低い移行優先順位をもつデータブロックについては、病院の外部に設置された図示しないデータセンタ(第2のデータ保管システム)を移行先として選定してもよい。
また、同一患者に複数のデータブロックが存在し、当該データブロックのデータ最終更新時間が移行時点から3ヶ月以上経つ場合、データの移行先を外部のデータセンタに選定してもよい。
次に、ステップST10のデータ移行処理において、処理部65は、決定された移行優先順位に基づいて、既存のデータ保管システム40に保管されている医用データを、当該選定された新規のデータ保管システム50(又は外部のデータセンタ)に移行する。ここで、処理部65は、予め設定されたスケジュール及び移行優先順に基づいて、医用データを移行してもよい。具体的には、処理部65は、病院の運用に合わせてスケジュールに設定された時間帯(例、深夜)に、医用データを移行してもよい。
上述したように本実施形態によれば、病院システムから患者状況情報を抽出し、画像ビューアの各々の操作者に関連付けられた初期表示レイアウトを取得し、患者状況情報及び初期表示レイアウトに基づいて、医用データ単位の移行優先順位を決定し、移行優先順位に基づいて、移行先となる新規のデータ保管システムを選定し、移行優先順位に基づいて、既存のデータ保管システム40に保管されている医用データを、選定された新規のデータ保管システム50に移行する。これにより、待ち時間の発生を阻止しつつ、必要な医用データを参照することができる。
また、本実施形態によれば、新規のデータ保管システム50としては、病院システムを有する病院の内部に設置された第1のデータ保管システムと、病院の外部に設置された第2のデータ保管システムとがある場合、決定された移行優先順位に基づいて、第1のデータ保管システム又は第2のデータ保管システムを選定できる。これにより、例えば、移行優先順位の高い医用データについては病院内部で移行処理を完結するので、移行処理の安全性を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、予め設定されたスケジュール及び移行優先順位に基づいて、医用データを移行できるので、例えば深夜時間帯など、医用データを移行する可能性が低い時間帯に医用データを移行するスケジュールを設定することにより、データ移行中に医用データを参照できない不都合を低減させることができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る医用データ移行システムについて、前述した各図を参照しながら説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態の他の具体例であり、処理部65が、移行優先順位決定機能(f65-5)内の一機能(f65-5-2)を用いている。この機能(f65-5-2)は、前述した通り、患者優先順位が同一の医用データのうち、初期表示レイアウトの各々に共通に用いられる医用データの移行を優先するように移行優先順位を決定する機能である。なお、初期表示レイアウトの各々に共通に用いられる医用データは、最小の検査数で用いられるデータである。
例えば、図11に示したレイアウト詳細設定リストにおいて、レイアウト名「LAYOUT1」をもつ初期表示レイアウトは、用いる過去検査の数が「5」である。また例えば、レイアウト名「HEAD_EPI」をもつ初期表示レイアウトは、用いる過去検査の数が「2」である。他のレイアウト名をもつ初期表示レイアウトも同様に、用いる過去検査の数が設定されている。このレイアウト詳細設定リストの場合、図17に示すように、初期表示レイアウトの各々に共通に用いられる医用データは、過去検査の数が「2」(最小の検査数)までの検査画像データである。なお、初期表示レイアウトの各々に共通に用いられる医用データは、レイアウトとして指定される回数が多い医用データであり、頻繁に使用される医用データである。
よって、例えば図18に示すように、患者αの過去のCT−HEAD検査結果を表す6つの検査画像データd1〜d6が保管されていた場合、処理部65は、過去検査の数が「2」までの検査画像データd1,d2の移行を優先するように、移行優先順位を決定する。処理部65は、例えば、検査画像データd1,d2を含むデータブロックの移行を優先するように、移行優先順位を決定すればよい。
次に、以上のように構成された医用データ移行システムの動作を説明する。
いま、前述同様に、ステップST1〜ST4の処理により患者優先順位が決定され、ステップST5の処理により患者並び替え処理が実行されたとする。また、前述同様に、ステップST6の処理により、画像ビューアの各々のユーザ(操作者)に関連付けられた初期表示レイアウトが取得されたとする。
次に、ステップST7のデータグループ化処理において、医用データ移行システム60は、レイアウト詳細設定リストにより、各モダリティ及び検査部位に対し、レイアウトで用いる過去検査の数の最小値を計算できる。なお、レイアウトで用いる過去検査の数の最小値は、初期表示レイアウトの各々に共通に用いられる医用データの数を表している。レイアウトで用いる過去検査の数の最小値により、各患者に対し、一回のデータ移行に必要な最小データ移行量がわかる。医用データ移行システム60は、この最小データ移行量を用い、各患者の医用データを移行時のデータブロックとしてグループ化する。
ここで、データグループ化の一例を図11に示したレイアウト詳細設定リストにより説明する。
図11に示した全ユーザA,B,Cにおける、モダリティが「CT」かつ検査部位が「HEAD」のデータは、レイアウトで用いる過去検査の数の最小値が「2」のため、一回のデータ移行に必要となる最小データ移行量が2検査分になる。
このため、モダリティが「CT」かつ検査部位が「HEAD」である2検査分のデータがデータブロックとしてグループ化される。
もし同一の検査又はレイアウトに対し、複数のモダリティ・検査部位が存在する場合、当該レイアウトで用いる過去検査の数も、過去検査の数の最小値の計算に含める必要がある。この場合、処理部65は、モダリティ・検査部位の単位で、最小データ移行量を求める。
例えば図13に示したように、複数のモダリティ・検査部位が存在する場合、レイアウトで用いる過去検査の数の最小値がデータブロックの最小データ移行量になる。
図13において、モダリティ「MRI」で且つ検査部位「CHEST」、「HEAD」の場合、レイアウトで用いる過去検査の数は「2」である。モダリティ「CT」で且つ検査部位「CHEST」、「HEAD」の場合、レイアウトで用いる過去検査の数は「2」である。
その他、モダリティ「CT」で且つ検査部位「HEAD」の場合、レイアウトで用いる過去検査の数が「5」である。
本手法では、モダリティ・検査部位の単位で、レイアウトに用いる過去検査の数の最小値でデータブロックの最小データ移行量を決める。このため、全てのモダリティ・検査部位において、レイアウトで用いる過去検査の数の最小値から、データブロックの最小データ移行量が得られる。
図13に示した例の場合、モダリティが「CT」と「MRI」、検査部位が「CHEST」と「HEAD」、それぞれ2検査分のデータがデータブロックとしてグループ化される。
次に、ステップST8のデータブロックの並び替え処理において、医用データ移行システム60は、患者単位でデータブロックの移行優先順位を設定する。
すなわち、患者のデータブロックが患者優先順位と同じ順位に移行優先順位が設定される。しかしながら、同一患者に対し、2つ以上のデータブロックを有する場合には、各データブロックに対し、患者優先順位とは異なる移行優先順位を決定する必要がある。
本実施形態では、処理部65が、患者優先順位が同一の医用データのうち、初期表示レイアウトの各々に共通に用いられる医用データの移行を優先するように移行優先順位を決定する。
例えば、処理部65は、初期表示レイアウトの各々に共通に用いられる2検査分の検査画像データを含むデータブロックの移行を優先するように、移行優先順位を決定する。
ここで、データブロックの並び替え処理の一例を説明する。
この時点で患者単位の患者優先順位は決定されているとする。患者優先順位の高い方から、患者α,β,γである。患者αは3つのデータブロックを有し、患者βは2つのデータブロックを有している。
ここで、並び替え処理としては、例えば同一患者内での並び替え処理を用いる。
例えば、患者αについては、患者αの3つのデータブロックをデータ最終更新時間(検査日時順)の降順に並べ替えればよい。以下同様に、患者単位でデータブロックを並べ替えればよい。
以下、前述同様に、処理部65は、ステップST9〜ST10の処理により、新規のデータ保管システム50(又は外部のデータセンタ)を選定し、医用データを当該新規のデータ保管システム50(又は外部のデータセンタ)に移行する。また前述同様に、処理部65は、予め設定されたスケジュール及び移行優先順に基づいて、医用データを移行してもよい。
上述したように本実施形態によれば、患者優先順位が同一の医用データのうち、初期表示レイアウトの各々に共通に用いられる医用データの移行を優先するように移行優先順位を決定する。これにより、第1の実施形態の効果に加え、頻繁に使用される医用データを優先的に移行させることができる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、病院システムから患者状況情報を抽出し、画像ビューアの各々の操作者に関連付けられた初期表示レイアウトを取得し、患者状況情報及び初期表示レイアウトに基づいて、医用データ単位の移行優先順位を決定し、移行優先順位に基づいて、移行先となる新規のデータ保管システムを選定し、移行優先順位に基づいて、既存のデータ保管システム40に保管されている医用データを、選定された新規のデータ保管システム50に移行する。これにより、待ち時間の発生を阻止しつつ、必要な医用データを参照することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。