JP6307462B2 - 関節音測定システム - Google Patents
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Description
しかしながら、X線画像には軟骨が写らないため、骨間距離から軟骨の状態を推測して診断する必要があり診断精度に問題があった。
さらに、高精度に診断する方法として、MRI(核磁気共鳴画像法)診断や関節鏡を用いた診断があるが、大型の装置が必要であったり、患者への負担が大きいため、早期診断や生着診断等に利用するのは難しいという問題があった。
VAGとは、屈伸運動などを行うことで、自分の体重を負荷として軟骨細胞に付加し、膝器官中の大腿骨と脛骨および膝蓋骨との端部に存在する軟骨細胞同士が擦れることで発生する関節音を、体外に設置した加速度センサやマイクロフォンを用いて振動信号や音信号として検出し、OA疾患の有無によりある特定の周波数成分の信号強度が増減する点から関節軟骨の状態を評価する非侵襲的な診断方法である。
この特許文献1には、生体音響センサの検出信号に、高速フーリエ変換(FFT)等の周波数解析等の信号処理を行って、周波数スペクトル特性の特徴に基づいて診断を行うことが記載されている。尚、本発明における振動センサは、加速度センサやマイクロフォンおよび音響センサの総称である。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(12)を提供する。
検査対象物の屈伸角度を検出し、角度情報を出力する角度センサと、
角度情報に基づいて、振動信号を2以上の分割信号に分割する信号分割部と、
2以上の分割信号それぞれに対して、周波数解析を行い、2以上の解析信号を出力する周波数解析部とを有する関節音測定システム。
(2) 2以上の解析信号同士の比較、および、2以上の解析信号と基準信号との比較の少なくとも一方を行って、音源位置を判定する判定部を有する(1)に記載の関節音測定システム。
(3) 振動センサを2以上有する(1)または(2)に記載の関節音測定システム。
(4) 振動センサを4つ有する(3)に記載の関節音測定システム。
(5) 2以上の振動センサそれぞれから出力される2以上の振動信号の相互相関関数から遅延時間を算出する遅延時間算出部を有する(3)または(4)に記載の関節音測定システム。
(6) 判定部は、2以上の解析信号同士の比較結果、および、2以上の解析信号と基準信号との比較結果の少なくとも一方と、遅延時間とに基づいて、音源位置を判定する(5)に記載の関節音測定システム。
(7) 信号分割部における、振動信号の分割数が、2以上10以下である(1)〜(6)のいずれかに記載の関節音測定システム。
(8) 信号分割部における分割数が3であり、振動信号の分割位置が、屈伸角度が30°±5°の位置、および、60°±5°の位置である(1)〜(7)のいずれかに記載の関節音測定システム。
(9) 角度センサが、傾斜計である(1)〜(8)のいずれかに記載の関節音測定システム。
(10) 振動センサが、加速度センサである(1)〜(9)のいずれかに記載の関節音測定システム。
(11) 加速度センサが、圧電型加速度センサである(10)に記載の関節音測定システム。
(12) 周波数解析部が、高速フーリエ変換を行う(1)〜(11)のいずれかに記載の関節音測定システム。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
図1に示す関節音測定システム10は、4つの加速度センサ12a〜12dと、角度センサ13と、加速度センサ12a〜12dおよび角度センサ13に接続される信号分割部16と、周波数解析部18と、判定部20と、表示部22と、制御部24と、操作部26とを有する。
図示例においては、信号分割部16、周波数解析部18、判定部20、表示部22、制御部24、および、操作部26が、測定装置本体14を構成する。
また、加速度センサ12a〜12dは、本発明における振動センサの一種である。
なお、4つの加速度センサ12a〜12dは、被検体の膝関節近傍の異なる位置に取り付けられる以外は、基本的に同じ構成を有するので、以下の説明において、4つの加速度センサ12a〜12dを区別する必要がない場合には、加速度センサ12として説明を行う。
加速度センサ12としては、圧電式、静電容量式、サーボ式、気泡式、熱検知方式、機械的変位測定方式等の種々の公知の加速度センサが利用可能である。なかでも、圧電型加速度センサは、検出できる加速度成分の範囲と検出できる周波数範囲の点で好適である。
一例として、4つの加速度センサ12a〜12dを有する場合には、加速度センサ12aは脛骨の外側顆の位置、加速度センサ12bは脛骨の内側顆の位置、加速度センサ12cは膝蓋骨の位置、加速度センサ12dは脛骨の位置に取り付けるのが好ましい。
加速度センサを2つ以上有する構成は、後述する遅延時間算出部における遅延時間の算出を行うことができるので、より高精度に音源位置を特定できる点で好ましい。特に、加速度センサを4つ有する構成は、遅延時間算出部における遅延時間の算出において、3次元空間上でより高精度に音源位置を特定できる点、コストの点等で好ましい。
具体的には、音響インピーダンスが、1.35×106〜47×106kg/(m2・sec)の範囲の物質が好ましく、ソナゲル(タキロン社製)、ジェルファイン(オオサキメディカル株式会社)、キャビジェル(株式会社メイク)などの超音波検査で用いられる超音波ジェルを用いることができる。
加速度センサ12を被検体の皮膚に直接接触させて固定した場合には、加速度センサ12と皮膚との間に空気の層ができてしまい、この空気との界面で振動が反射して体内に戻ってしまうため、振動が加速度センサ12に十分に伝わらないおそれがある。これに対して、加速度センサ12と被検体との間に、音響インピーダンスの値が生体に近い物質からなる層を設けることで、センサと皮膚との間に空気の層ができることを抑制でき、これにより、振動を加速度センサ12に十分に伝えることができる。
角度センサ13としては、特に限定はなく、水平方向に対する傾斜角度を検出する傾斜計、ロータリーエンコーダ等の回転角センサ、ポテンショメータ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)静電容量方式角度センサ等の種々の公知の角度センサが利用可能である。なかでも、MEMS静電容量方式角度センサは、角度分解能と応答速度の点で好適である。
角度センサ13は、検出した角度情報を測定装置本体14の信号分割部16に供給する。
この点について、図2(A)および図2(B)を用いて説明する。
図2(A)に示す角度情報のグラフは、被検体の屈伸運動により、膝を90°曲げた状態から、膝を伸ばした状態まで変化する屈伸角度と時間との関係を測定したものである。この際、前述のとおり膝を90°曲げた状態を角度0°、膝を伸ばした状態を角度90°と定義する。
一方、図2(B)に示す振動信号のグラフは、図2(A)に示す膝の角度変化に伴って発生する膝の軟骨細胞の擦れ音(関節音)を加速度として測定した、加速度と時間との関係を表すものである。すなわち、この加速度の時間変化が振動信号である。
すなわち、図2(A)および図2(B)に示すグラフは、1回の屈伸運動に対応する信号であり、信号分割部16は、1回の屈伸運動で得られた振動信号を、屈伸角度に応じて3つの分割信号に分割している。
さらに、信号分割部16による分割数は3つであるのが特に好ましい。この点については後に詳述する。
なお、信号分割部16による振動信号の分割位置は、角度が均等になる位置で分割するのが好ましく、信号分割部16による分割数が3つの場合には、角度が30°±5°の位置、および、60°±5°の位置で分割するのが好ましい。
図示例においては、4つの加速度センサ12を有し、信号分割部16において、各加速度センサ12から出力される振動信号をそれぞれ3つに分割するので、周波数解析部18は、12個の分割信号それぞれについて、周波数解析を行う。
なかでも、処理負荷が低い、計算コストが安価等の観点からFFTによる周波数解析が好ましい。
なお、後述の実施例における解析信号を示す図5(A)〜図5(E)は、分割信号に対してFFTによる周波数解析を行った解析信号の例である。
すなわち、膝の関節音の振動信号に対して、FFT等の周波数解析を行い、パワー値と周波数との関係を表す解析信号を求め、50Hz〜100Hzの周波数帯でのパワー値を健常者のものと比較することで、診断を行う。
この点について、図3(A)〜図3(D)を用いて詳細に説明する。
なお、図3(A)〜図3(D)においては、大腿骨F、脛骨Tおよび膝蓋骨Pのみを示す他の骨や靭帯、骨膜、腱等の図示は省略している。
一方、図3(D)に示すように、膝を完全に曲げた状態では、膝蓋骨Pの軟骨Pcは、大腿骨Fの軟骨Fcの先端側の面と接しており、脛骨Tの軟骨Tcは、大腿骨Fの軟骨Fcの後ろ側の側面と接している。
また、図3(C)に示すように、膝を伸ばした状態から曲げると、膝蓋骨Pの軟骨Pcは、大腿骨Fの軟骨Fc上を滑り移動し、脛骨Tの軟骨Tcは、大腿骨Fの軟骨Fc上を滑り移動する。
すなわち、膝蓋骨Pの軟骨Pcおよび脛骨Tの軟骨Tcは常に、大腿骨Fの軟骨Fcに接しており、大腿骨Fの軟骨Fcは、膝の屈伸の状態により軟骨との接触位置が変わる。
解析信号A1、A2のみ、あるいは、解析信号A2、A3のみが、所定の周波数帯のパワー値が健常者に比較して高い場合、ならびに、解析信号A1、A2、A3のいずれか1つで、所定の周波数帯のパワー値が健常者に比較して高い場合には、他の軟骨と接したり離れたりする部位、すなわち、大腿骨Fの軟骨Fcのある箇所が悪くなっていることがわかる。
そこで、患部の位置を更に特定するために、4つの加速度計を患部近傍の異なる位置に取り付け、それぞれの位置からの信号の相関係数を計算して、遅延時間により、音源(患部)の位置を推定することが提案されている。
しかしながら、4つの加速度計を用いて、各加速度計からの信号の遅延時間により、音源の位置を特定する場合であっても、相関係数自体非常に小さく、精度が十分でないという問題があった。
また、本発明においては、1つの加速度センサを用いた場合であっても、患部の位置をある程度特定することができる。
具体的には、例えば、判定部20は、各解析信号での所定の周波数帯のパワー値を基準となるパワー値と比較して、全ての解析信号が、基準のパワー値を上回った場合には、膝蓋骨Pの軟骨Pcおよび脛骨Tの軟骨Tcの少なくとも一方が悪いと判定し、解析信号の少なくとも1つが、基準のパワー値を上回った場合には、大腿骨Fの軟骨Fcが悪いと判定し、全ての解析信号が基準のパワー値以下であった場合には、正常であると判定する。
また、判定部20は、解析信号が基準のパワー値と比較した結果と、解析信号同士を比較した結果とに基づいて判定を行ってもよい。
また、1つの加速度センサ12を有する構成の場合には、全ての解析信号が大きくなった場合には、膝蓋骨起因か脛骨起因かが不明であるが、加速度センサを2以上有する場合には、膝蓋骨付近に取り付けた加速度センサからの信号の解析結果と、脛骨付近に取り付けた加速度センサからの解析結果から音源位置をより正確に判定できる。また、大腿骨起因の場合も、1つの加速度センサでは、大腿骨起因としか推定できないが、2以上の加速度センサを有する場合には、外側顆近傍の加速度センサからの解析結果と内側顆近傍の加速度センサからの解析結果を合わせることで、大腿骨の内側か、外側かが判定できる。
判定部20は、判定結果を表示部22に供給する。
また、制御部24は、操作部26を用いて操作者によって入力された各種の情報を、必要な部位に供給する。例えば、操作部26に、測定の開始および終了の情報、信号分割部16で用いられる信号の分割数、分割する角度等の情報、判定部20で用いられる基準のパワー値の情報等の入力が行われた場合には、これらの情報を、必要に応じて、関節音測定システムの各部に供給する。
また、操作部26は、操作者が、必要に応じて各種の情報を入力するための、入力機能を備えている。例えば、操作部26は、測定の開始および終了の情報、信号分割部16で用いられる信号の分割数、分割する角度等の情報、判定部20で用いられる基準のパワー値の情報等を入力するための、入力機能を備えている。
また、図1に示す例では、周波数解析部18による解析信号に基づいて、判定部20が患部の位置を判定して、判定結果を表示部22に表示する構成としたが、これに限定はされず、周波数解析部18による解析信号のグラフを表示部22に表示する構成としてもよい。すなわち、解析信号のグラフを表示部22に表示するのみで、医師等が、解析信号のグラフを見て患部位置の特定を行うようにしてもよい。
なお、図4に示す関節音測定システム30は、さらに遅延時間算出部32を有する以外は、図1に示す関節音測定システム10と同じ構成を有するので、同じ部位には同じ符号を付し、以下の説明では異なる部位を主に行う。
図示例においては、遅延時間算出部32、信号分割部16、周波数解析部18、判定部20、表示部22、制御部24、および、操作部26が、測定装置本体34を構成する。
2以上の加速度センサ12を有する場合、ある音源から発せられた振動が、各加速度センサに届くまでの時間は、加速度センサ12の取り付け位置に応じて異なる。すなわち、音源の近くに取り付けられた加速度センサに振動が届くまでの時間と、音源の遠くに取り付けられた加速度センサに同じ振動が届くまでの時間との間には時間差がある。
遅延時間算出部32は、この時間差を遅延時間として算出するものである。
そこで、遅延時間算出部32は、各加速度センサが検出した振動信号同士の波形の相互相関関数を求めることで、遅延時間Δtを求める。
振動信号fiの時間軸はそのままに、振動信号gi+nを時間軸上でΔtずらして、上記相互相関関数Rn (fg)を計算し、相互相関関数Rn (fg)が最大となる、すなわち、振動信号fiと振動信号gi+nとの相関が強くなる場合の時間Δtが遅延時間となる。
なお、加速度センサが2つの場合には、得られた遅延時間から、音源がどちらの位置に近いかがわかる。また、加速度センサが3つの場合には、得られた遅延時間から、2次元平面上での音源の位置が推定できる。また、加速度センサが4つの場合には、得られた遅延時間から3次元空間上での音源の位置が推定できる。
すなわち、判定部20bは、各解析信号での所定の周波数帯のパワー値を基準のパワー値と比較して、基準のパワー値を上回るか否かに応じて、膝蓋骨Pの軟骨Pcおよび脛骨Tの軟骨Tcの少なくとも一方が悪いのか、大腿骨Fの軟骨Fcが悪いのか、正常であるのかを判定し、さらに、遅延時間Δtの情報から、膝蓋骨Pの軟骨Pcおよび脛骨Tの軟骨Tcのどちらが悪いのか、大腿骨Fの軟骨Fcのどの位置が悪いのかを判定する。
例えば、各解析信号での所定の周波数帯のパワー値が基準のパワー値を上回り、かつ、遅延時間Δtの情報から、膝蓋骨Pに近い加速度センサに到達するのが最速である場合には、判定部20bは、膝蓋骨Pの軟骨Pcが悪いと判定する。
なお、関節音測定システム30において、判定部20bを有さずに、周波数解析部18により得られた解析信号、および、遅延時間算出部32が算出した遅延時間Δtの情報を表示部22に表示する構成としてもよい。
5人の被検体に対して、以下の測定を行った。
なお、5人の被検体は、健常者である被験者A、膝蓋骨軟骨に損傷を有する被験者B、脛骨軟骨に損傷を有する被験者C、大腿骨軟骨の外側顆に損傷を有する被験者D、大腿骨軟骨の内側顆に損傷を有する被験者Eとした。
まず、被検体の膝に、加速度センサ(ワコーテック社製 MA3-04AD)、4つを外側顆(a)、内側顆(b)、膝蓋骨(c)、脛骨(d)に固定した。固定する際は、バンドを利用して固定した。この際、固定力(バンドの巻き張力)が一定になるように調整した。また角度センサ(ワッティー社製 HA−205)を大腿四頭筋に固定して、膝の傾斜角度を測定できるようにした。なお、実施例においては、座位状態で屈曲した状態を0°、立位状態で膝が伸張した状態を90°とした。
加速度センサおよび角度センサを取り付けた状態で、20秒間で2回、屈伸運動を行った。その際、立上り運動(0°→90°)、立下り運動(90°→0°)を1秒間で行えるように運動スピードが一定になるように訓練して実験を行った。また、立上り運動、立ち下がり運動の間は立った状態で3秒間開けて余計なノイズ成分が測定されないように注意した。
各加速度センサからの出力信号は、A/Dボードを通してPCに入力した。周波数解析部による周波数解析は、(a)位置の加速度センサからの振動信号に対して行った。その際、(a)位置以外の加速度センサからの信号は入ってこないように他の加速度センサの電源を切った状態で実験を行った。
また、遅延時間算出部による遅延時間を求める実験では、(a)位置、(b)位置、(c)位置、(d)位置の4つの加速度センサからの信号を検出した。
〔周波数解析〕
(a)位置から加速度センサを通して得られた時間領域の加速度データのRMS(root mean square)平均値(X方向、Y方向、Z方向)、すなわち、振動信号を算出した。
次に、信号分割部において、角度センサを通して得られた角度情報から、0°〜30°、30°〜60°、60°〜90°の3つ領域に対応する分割信号V1、V2、V3に分割して、時間領域の振動信号を3つに分けた。
次に、周波数解析部において、各分割信号V1、V2、V3のデータに対してFFT処理を行い、周波数領域のデータである3つの解析信号A1、A2、A3に変換した。
各被験者A〜Eについて、得られた解析信号をそれぞれ図5(A)〜図5(E)に示す。
被験者Aのデータは、A1〜A3の3領域で低い強度となった。すなわち、正常であると判定される。
被験者Bのデータは、A1〜A3の3領域で強い強度となった。すなわち、膝蓋骨軟骨および脛骨軟骨の少なくとも一方が悪いと判定される。
被験者Cのデータは、A1〜A3の3領域で強い強度となった。すなわち、膝蓋骨軟骨および脛骨軟骨の少なくとも一方が悪いと判定される。
被験者Dのデータは、A1とA2の2領域で低く、A3の領域で強い強度となった。すなわち、大腿骨軟骨が悪いと判定される。
被験者Eのデータは、A1の領域で低く、A2とA3の領域で強い強度となった。すなわち、大腿骨軟骨が悪いと判定される。
これらの判定結果は、実際の被験者の状態と一致しており、正しいことがわかる。
(a)位置、(b)位置、(c)位置、(d)位置の各加速度センサから得られた時間領域の加速度データのRMS平均値、すなわち、振動信号を算出した。
遅延時間算出部において、各加速度センサから得られた振動信号の相互相関関数を計算して、遅延時間を計算した。その際、(a)位置−(b)位置、(a)位置−(c)位置、(a)位置−(d)位置、(b)位置−(c)位置、(b)位置−(d)位置、(c)位置−(d)位置のそれぞれの振動信号間での遅延時間を計算した。遅延時間計算により、(a)位置〜(d)位置のどの位置の信号が最速かを判断することで、音源位置が(a)位置起因か、(b)位置起因か、(c)位置起因か、(d)位置起因かを推定した。
なお、相関関数実験には関しては、被験者B、被験者C、被験者D、被験者Eに関して行った。
被験者Bの場合は、(c)位置の加速度センサの振動信号が最速であった。したがって、膝蓋骨近傍の大腿骨軟骨または膝蓋骨軟骨が悪いと推定される。
被験者Cの場合は、(d)位置の加速度センサの振動信号が最速であった。したがって、脛骨近傍の大腿骨軟骨または脛骨軟骨が悪いと推定される。
被験者Dの場合は、(a)位置の加速度センサの振動信号が最速であった。したがって、大腿骨外側顆の軟骨または脛骨外側の軟骨が悪いと推定される。
被験者Eの場合は、(b)位置の加速度センサの振動信号が最速であった。したがって、大腿骨内側顆の軟骨または脛骨内側の軟骨が悪いと推定される。
被験者Bの場合は、周波数解析の結果から、膝蓋骨軟骨および脛骨軟骨の少なくとも一方が悪いと判定され、遅延時間からは、膝蓋骨近傍の大腿骨軟骨または膝蓋骨軟骨が悪いと推定された。したがって、膝蓋骨軟骨が悪いと判定される。
被験者Cの場合は、周波数解析の結果から、膝蓋骨軟骨および脛骨軟骨の少なくとも一方が悪いと判定され、遅延時間からは、脛骨近傍の大腿骨軟骨または脛骨軟骨が悪いと推定された。したがって、脛骨軟骨が悪いと判定される。
被験者Dの場合は、周波数解析の結果から、大腿骨軟骨が悪いと判定され、遅延時間からは、大腿骨外側顆の軟骨または脛骨外側の軟骨が悪いと推定された。したがって、大腿骨外側顆の軟骨が悪いと判定される。
被験者Eの場合は、周波数解析の結果から、大腿骨軟骨が悪いと判定され、遅延時間からは、大腿骨内側顆の軟骨または脛骨内側の軟骨が悪いと推定された。したがって、大腿骨内側顆の軟骨が悪いと判定される。
これらの判定結果は、実際の被験者の状態と一致しており、正しいことがわかる。
以上の判定結果を表1に示す。
また、複数の加速度センサからの振動信号の相互相関関数から遅延時間を求めるのみでは、2箇所以上の位置特定まではできるが、損傷位置を1箇所に特定することはできない。これに対して、周波数解析から得られる判定結果と、複数の加速度センサからの振動信号の相互相関関数から得られる判定結果とを組み合わせることで、損傷位置を1箇所に特定することができることがわかる。
参考例として被験者Aに関して、1つの加速度センサで振動信号を検出し、0°〜90°の全領域でFFTを行い、データの精度に関して調べた。図6に参考例のFFTの結果を示す。
図5(A)〜図5(E)と図6との比較から明らかなように、本手法を用いると、若干データにノイズが見られるようになったが、損傷を持った患者に対するデータと健常者のデータの信号差が不明確になるほどのノイズではなく、本手法が非常に優れたものである事を示す結果となった。
以上から本発明の効果は明らかである。
12 加速度センサ
13 角度センサ
14、34 測定装置本体
16 信号分割部
18 周波数解析部
20、20b 判定部
22 表示部
24 制御部
26 操作部
32 遅延時間算出部
Claims (12)
- 検査対象物の屈伸運動に伴う振動を検出し、振動信号を出力する1以上の振動センサと、
前記検査対象物の屈伸角度を検出し、角度情報を出力する角度センサと、
前記角度情報に基づいて、前記振動信号を2以上の分割信号に分割する信号分割部と、
2以上の前記分割信号それぞれに対して、周波数解析を行い、2以上の解析信号を出力する周波数解析部とを有することを特徴とする関節音測定システム。 - 2以上の前記解析信号同士の比較、および、2以上の前記解析信号と基準信号との比較の少なくとも一方を行って、音源位置を判定する判定部を有する請求項1に記載の関節音測定システム。
- 前記振動センサを2以上有する請求項1または2に記載の関節音測定システム。
- 前記振動センサを4つ有する請求項3に記載の関節音測定システム。
- 2以上の前記振動センサそれぞれから出力される2以上の前記振動信号の相互相関関数から遅延時間を算出する遅延時間算出部を有する請求項3または4に記載の関節音測定システム。
- 2以上の前記解析信号同士の比較、および、2以上の前記解析信号と基準信号との比較の少なくとも一方を行って、音源位置を判定する判定部を有し、
前記判定部は、2以上の前記解析信号同士の比較結果、および、2以上の前記解析信号と基準信号との比較結果の少なくとも一方と、前記遅延時間とに基づいて、音源位置を判定する請求項5に記載の関節音測定システム。 - 前記信号分割部における、前記振動信号の分割数が、2以上10以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の関節音測定システム。
- 前記信号分割部における分割数が3であり、前記振動信号の分割位置が、前記屈伸角度が30°±5°の位置、および、60°±5°の位置である請求項1〜7のいずれか1項に記載の関節音測定システム。
- 前記角度センサが、傾斜計である請求項1〜8のいずれか1項に記載の関節音測定システム。
- 前記振動センサが、加速度センサである請求項1〜9のいずれか1項に記載の関節音測定システム。
- 前記加速度センサが、圧電型加速度センサである請求項10に記載の関節音測定システム。
- 前記周波数解析部が、高速フーリエ変換を行う請求項1〜11のいずれか1項に記載の関節音測定システム。
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