JP6303367B2 - 導電性ペースト、導電性膜及びタッチパネル - Google Patents

導電性ペースト、導電性膜及びタッチパネル Download PDF

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Description

本発明は、導電性ペーストおよびその利用に関するものであり、さらに詳しくは細線印刷適性に優れる導電性ペースト、これを用いてなる導電性薄膜、該導電性薄膜が透明導電性層上に積層した導電性積層体、及びその導電性積層体を用いたタッチパネルに関する。
指や専用のペン等で画面に触れることにより操作を行う透明タッチパネルはATM、カーナビゲーションシステム、ゲーム機、駅の切符自動販売機、複写機、博物館の解説端末、及びコンビニの情報端末等、幅広い用途に用いられ、普及が進んでいる。透明タッチパネルは、透明な二枚の導電性薄膜を重ね合わせてスイッチを形成するように構成されている。透明タッチパネルの透明導電性薄膜としては、蒸着法やスパッタ法により酸化インジウム・スズ膜(以下ITO膜と略記する場合がある)をポリエステルフィルム、ガラス等の基材に付着させ、そのITO膜をエッチングすることによりパターニングして形成されているものが一般的である。
タッチパネルには種々の方式があり、抵抗膜方式と静電容量方式が代表的な方式である。近年、スマートフォンやタブレットPCの普及に伴い注目を浴びている静電容量方式は、指や専用のペンでパネルに触れることで起こる放電現象等を感知してパネル上の触れられた位置を特定する方式で、多点感知できることが抵抗膜方式に対する特徴である。多点感知を高解像度で行なうために、従来の抵抗膜方式と比較し、多数の配線電極を形成させる必要がある。さらには、近年、ディスプレイ画面をより大きくするために、また商品デザイン上の要求により、配線電極が配置される額縁部をより狭くしたいとの要求が高まっている。このような背景から、多数の配線電極を高密度で形成させることが要求され、配線電極の高細線化の要求が一層強くなっている。
多数の配線電極を高密度で形成させるためには、細い配線を短い間隔で配置すれば良い。そのための工法としては、フォト法が挙げられるが、フォト法は廃液処理による環境負荷が大きく、工程が煩雑であり、コスト的観点を含め多くの課題を抱えている。また、上記フォト法によって形成された配線電極は、アルミニウムや銅など金属のみで形成されたものであるため、折り曲げ等の物理的衝撃に対して弱いという問題がある。またフォト法がその使用環境から用いられる基材の主流がガラスであるが、タッチパネルの軽量化が求められる今日、基材の選択性が限られるというデメリットも抱えている。
一方でスクリーン印刷法は、基材選択性に優れ、例えばガラス、ITOフィルム、ITOの一部をエッチングしたエッチングフィルム、PETフィルム、ポリイミドフィルム、などの基材を問わず、種々基材にパターンを形成することができる。
さらにはスクリーン印刷法はコスト面や設備の簡易さのメリットがあり、本スクリーン印刷法にて導電性ペーストを用いて細線を形成することができれば、極めてメリットが生じる。また、導電性ペーストは塗布又は印刷後の硬化において、塗膜内部の金属粉末等の導電性粉末相互の距離が接近することにより高導電性を発現することができるため、フォト法で用いられる銅やアルミニウムよりも高導電性を発現することができ、さらに、基材との結着剤としてバインダー樹脂を用いているため、折り曲げ等の物理的衝撃に対してメリットがある。しかしながら、スクリーン印刷法において、導電性ペーストを用いて細い電極を形成させるためには、導電ペーストの細線適性が必要となる。
従来の抵抗膜方式の配線電極に求められる線幅は、ラインとスペースの幅(以下、L/Sと略記する)が各々200μm(200/200μm)以上であることが多く、比較的ラフなパターンが形成できれば事足りていたが、静電容量方式のタッチパネルの普及により近年のL/Sの要求は100/100μm以下となっており、さらにはL/Sが50/50μm以下を求められる場合もあり、細線適性に対する要求は更に高まってきている。
導電性ペーストに細線適性を付与するためには、スクリーン塗布後のにじみを抑制するために、ペースト中の溶剤量を下げる等の方法によりペースト粘度を上げる等のペースト設計の考え方があるが、ペースト粘度を上げると、スクリーン印刷におけるスキージングの際にペーストが開口部を通り抜けにくくなるという課題があった。さらに、版と基材との版離れが顕著に悪化するという問題点があった。特に近年のライン/スペース間の狭小化に伴う細線形成の需要の高まりを受けて、細線形成性、形状を良好とするためにスクリーン版のハイメッシュ化が進み、それにより開口部の大きさがより小さくなる傾向があるため、細線適性を有した高粘度の導電性ペーストにおいて、開口部を通り抜ける際の版通過性(吐出性)が極めて重要な課題となっていた。
スクリーン印刷の印刷条件の最適化からの細線適性向上のアプローチとしては、版通過性に関しては、スキージ角度を調整することや、スキージ速度を遅くすることで改善することが従来試みられているが、スクリーン版に負荷がかかることで版の寿命が短くなる可能性があり、さらには印刷速度が低下するという問題がある。また、版離れに関しては、スクリーン版と基材のクリアランスを大きくすることで版離れを改善することなどが従来試みられてきたが、印刷の寸法精度が悪くなることや、スクリーン版に大きな負荷がかかり版の寿命が短くなる懸念がある。スクリーン版の改良からの細線適性向上のアプローチとしては、樹脂膜表面の平滑製を高めたスクリーン印刷用版を製造する方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では版の製造が複雑になるために、コスト高になり、大面積化に容易に対応できないという欠点がある。
一方、ペーストの改良からの細線適性向上のアプローチの例は少なく、従来のメンブレンスイッチや感圧センサ等の電極用途として用いられる導電性ペーストをタッチパネル用途に転用して細線形成用として用いている例が多い。例えば、特許文献2、3で示されている特許においては、ペースト中に有機溶剤が比較的多く含まれているためペースト粘度が低く、このようなペーストを細線印刷に適用した場合は、版通過性、吐出性は良好だが、にじみによる線太りが生じやすい傾向にある。このため、これらの導電性ペーストにおいては、L/Sが100/100μmを下回る細線を形成することは困難である。さらには連続印刷においてにじみが激しくなる傾向があり、この点でも細線形成用には不向きである。
特許文献4、5においては、平均粒子径100nm以下の銀粉末を用いた細線形成用のペーストの例が示されている。導電性金属粉の粒子径を細かくすることによって版の目詰まりを抑制することができるので、版通過性については有利ではある。しかながら、実際のスクリーン印刷時のペーストの版通過性や版離れの良し悪しについてはペーストの構成成分であるバインダー樹脂やその他添加剤の占める寄与が大きい。このため、粒子径の細かい銀粉を用いることによって細線適性を付与できたとしても、印刷後、特に連続印刷で枚数を重ねるごとにダレを生じさせたり、版通過性を損なう可能性がある。さらに粒子径の細かい銀粉を用いることで、コストの増加という問題もあるため、粒子径を小さくせずともバインダー樹脂等を用いて細線印刷性を改善することは非常に意味のあることである。さらには特許文献4、5の例は焼結(乾燥)温度が150℃×30分以上であり、このような加工温度においては、タッチパネル用途として用いた場合、生産性が低下する他、基材へのダメージが大きく、生産上のかなりのデメリットとなる。
以上のように、スクリーン印刷法で細線を高精度に形成することは容易ではない。さらに、これまで述べてきたスクリーン印刷における細線印刷適性の他、近年のタッチパネルの小型化、汎用化に伴い、使用される環境、使用する頻度は従来よりも多種多用となっていることから、求められる形成電極の湿熱信頼性はますます高いものとなっている。
さらに、近年、加工工程の省エネ化や、加工(乾燥)に使用するボックスオーブンや遠赤外線乾燥炉内の系内温度変動による生産性低下の低減、下地の基材の耐熱性の観点から低温での乾燥工程が強く求められており、より低い温度(135℃以下)において塗膜物性を発現することが求められている。
以上の背景より、スクリーン印刷法において、細線形成に適し、さらには形成後の細線電極は湿熱信頼性に優れ、低温乾燥可能なペーストが求められているが、これらを満足するペーストができていないのが現状である。
湿熱信頼性に優れ、低温乾燥可能なペーストという性能を実現するためだけであれば、単一バインダー樹脂を使用した系において分子量を高くすることやガラス転移温度を高くすることが検討されているが(例えば特許文献6)、分子量を高めることや、ガラス転移温度を高めることにより、バインダー樹脂の凝集力が高くなり、ファイン印刷性を両立させようと高粘度にした際にハンドリング性が顕著に悪くなる他、スクリーン印刷時の版通過性(吐出性)が顕著に悪くなり、版離れも極めて悪化する。
特開2004−325552号公報 特開2000−67645号公報 特開2003−223812号公報 特開2004−273205号公報 特開2011−526054号公報 特開2006−059720号公報
本発明は、スクリーン印刷法において、高粘度でありながらも細線印刷適性を有し、さらには高い湿熱信頼性、低温乾燥性を実現することができる導電性ペーストを提供することを目的とする。
このような問題を解決するために、鋭意検討した結果、導電性ペースト中に数平均分子量の異なる2種以上のバインダー樹脂を含有させ溶剤含有量を少なくすることにより、高粘度に設計した導電性ペーストにおいても、スクリーン印刷法におけるファイン印刷適正を付与でき、さらにスクリーン印刷によって形成された導電塗膜としての湿熱信頼性も良好であるという知見を得た。
本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)熱可塑性樹脂(A)ならびに熱可塑性樹脂(B)、導電性金属粉(C)および有機溶剤(D)を含有してなる導電性ペーストであって、熱可塑性樹脂(B)はポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、およびフェノキシ樹脂からなる群より選択されてなる少なくとも1種以上であり、熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量Mn(A)が10,000〜70,000であり、かつ熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量Mn(A)と熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量Mn(B)の比率Mn(A)/Mn(B)が5〜100であり、熱可塑性樹脂(A)の重量分率W(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量分率W(B)の比率W(A)/W(B)が1〜20であり、導電性ペースト全重量に対する有機溶剤(D)の重量分率が25重量%以下であることを特徴とする導電性ペースト。
(2)導電性ペースト全重量に対する熱可塑性樹脂(A)の重量分率と熱可塑性樹脂(B)の重量分率の和が3〜20重量%であることを特徴とする(1)に記載の導電性ペースト。
(3)導電性金属粉末(C)の平均粒子径(D50)が4μm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の導電性ペースト。
(4)熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度がいずれも45℃以上120℃以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(5)熱可塑性樹脂(A)がポリウレタン樹脂であって、熱可塑性樹脂(A)が、(A1)数平均分子量1,000〜10,000かつガラス転移温度45〜80℃の非晶性ポリオール、(A2)数平均分子量1,000未満の1分子に2個以上のイソシアネートと反応し得る官能基を有する化合物、及び(A3)ポリイソシアネートを重付加反応することによって得られる構造を有するポリウレタン樹脂であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(6)熱可塑性樹脂(B)がポリウレタン樹脂および/またはポリエステル樹脂であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(7)熱可塑性樹脂(B)が熱可塑性樹脂(A)を構成する数平均分子量1,000〜10,000かつガラス転移温度45〜80℃の非晶性ポリオールであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(8)熱可塑性樹脂(A)の酸価が50〜500eq/tonであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(9)導電性金属粉末(C)として銀を含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の導電性ペースト。
(10)前記(1)〜(9)のいずれかに記載の導電性ペーストを用いてなる導電性薄膜。
(11)前記(10)に記載の導電性薄膜を透明導電性層上に積層した導電性積層体。
(12)前記透明導電性層が、酸化インジウム・スズを主成分としてなるITO膜を導電成分とする透明導電体である(11)に記載の導電性積層体。
(13)前記(11)または(12)に記載の導電性積層体を用いたタッチパネル。
本発明の導電性ペーストは、2種の異なる数平均分子量のバインダー樹脂を用いることで、導電性ペーストのファイン印刷性と湿熱信頼性を両立したものである。詳しくは、2種の異なる数平均分子量の樹脂を用いることで、溶剤含有量が少ない高粘度のペーストにおいても、一方の数平均分子量の高いバインダー樹脂で湿熱信頼性を保持し、もう一方の数平均分子量の小さいバインダー樹脂で、ファイン印刷性(版通過性(吐出性)、版離れ性を改良することができたものである。
本発明のペーストを用いることで、近年要求されるタッチパネルの細線形成を低温乾燥のスクリーン印刷法によって実現することができる。
本発明の導電性ペーストは、熱可塑性樹脂(A)ならびに熱可塑性樹脂(B)、導電性金属粉末(C)および有機溶剤(D)を含有してなる導電性ペーストであって、熱可塑性樹脂(A)の重量分率W(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量分率W(B)の比率W(A)/W(B)が1〜20、熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量Mn(A)と熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量Mn(B)の比率Mn(A)/Mn(B)が5〜100、熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量Mn(A)が10,000〜70,000、導電性ペースト全重量に対する有機溶剤(D)の重量分率が25重量%以下であることを特徴とする導電性ペーストである。
本発明の導電性ペーストにおいて、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)は少なくとも数平均分子量が異なる熱可塑性樹脂であり、そこに含有される熱可塑性樹脂のうち、もっとも重量分率の高い成分を熱可塑性樹脂(A)、次に重量分率の高い成分を熱可塑性樹脂(B)と呼ぶこととする。但し、最も重量分率の高い熱可塑性樹脂が2種類以上含まれている場合には、それらのうち最も数平均分子量の高いものを熱可塑性樹脂(A)、最も数平均分子量の低いものを熱可塑性樹脂(B)とする。
本発明の導電性ペーストに用いられる熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)は異なる数平均分子量を有し、比率Mn(A)/Mn(B)が5〜100である。高分子量成分である熱可塑性樹脂(A)は主に湿熱信頼性を担い、低分子量成分である熱可塑性樹脂(B)は主にペーストの版通過性(吐出性)と版離れ性を改良する効果を発揮する。すなわち熱可塑性樹脂(A)と少量の熱可塑性樹脂(B)を併用することにより、スクリーン印刷版のメッシュ開口部が小さい部分においても、ペーストの版通過性が良好となり印刷中にカスレや詰まりが生じず連続して細線印刷が可能となり、版離れにも特に問題が生じることがない。
比率Mn(A)/Mn(B)の範囲としては5〜100であり、より好ましくは7〜30である。Mn(A)/Mn(B)が5より小さいと、ペーストの版通過性と版離れ性の改良効果が小さく、Mn(A)/Mn(B)が100より大きいと、連続印刷時にカスレが生じる場合がある。
このような2種の異なる数平均分子量の熱可塑性樹脂をバインダー樹脂として用いた場合、GPC分析における分子量分布曲線が双山以上のピークとなる場合が多い。これは、それぞれの熱可塑性樹脂の分子量分布のピークトップが異なるためであり、その結果、分子量分布が単一樹脂を用いた場合よりもブロードになる。すなわち、単一樹脂と比較し、バインダー樹脂全体の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が大きくなることになるが、これが、湿熱信頼性と細線印刷性の両立の実現に寄与している。
なお、本発明の導電性ペーストには、3種類以上の熱可塑性樹脂が配合されていても良い。その場合、熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)以外の熱可塑性樹脂の数平均分子量は、Mn(A)よりも小さく、Mn(B)よりも大きいことが好ましい。Mn(A)よりも大きいと、細線印刷性が低下する場合があり、一方でMn(B)よりも小さいと、湿熱信頼性が低下する場合があり、さらには、ペースト粘度が低下することによる印刷の滲みといった問題点も顕著となる場合があるからである。
熱可塑性樹脂(A)の種類は特に限定されないが、ポリウレタン樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂(A)としてポリウレタン樹脂を用いることで、導電性ペーストの塗布又は印刷後の硬化において、分子間の水素結合に起因する高い凝集力により、塗膜の湿熱信頼性の向上が確保でき、さらに塗膜内部の金属粉末等の導電性粉末相互の距離が接近することにより高導電性を発現することができる。ポリウレタン樹脂には、非結晶性ポリオールとポリイソシアネートの反応によって形成されるものが含まれていることが溶剤溶解性を確保する点や樹脂Tgの設計の自由度の点で好ましい。
熱可塑性樹脂(B)の種類は特に限定されないが、相溶性の観点から、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂が好ましく、ポリウレタン樹脂および/またはポリエステル樹脂であることが特に好ましい。熱可塑性樹脂(A)よりも数平均分子量の低い熱可塑性樹脂(B)を配合することにより、本発明の導電性ペーストの流動性を向上させることができ、スクリーン印刷を行う際のペーストの版通過性および版離れを顕著に改良することができる。
熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量Mn(A)は10,000〜70,000であり、より好ましくは20,000〜70,000、さらに好ましくは10,000〜40,000の範囲である。Mn(A)が低すぎると、湿熱信頼性の面で好ましくない。一方、Mn(A)が高すぎると、樹脂の凝集力が増し、湿熱信頼性は向上するものの、スクリーン印刷における細線印刷適性が顕著に低下する。
熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量Mn(B)は、前記Mn(A)の1/5〜1/100であり、1,000以上10,000未満であることが好ましい。Mn(B)が低すぎると、湿熱信頼性に問題が出る他、本発明のペーストの粘度が低下しすぎ、細線印刷時にダレを生じ、印刷不良を引き起こすことがある。また、Mn(B)が高すぎると、湿熱信頼性の向上は期待できるが、ファイン印刷の際の版通過性(吐出性)、版離れの改善効果は顕著に低下し、さらに熱可塑性樹脂(A)との相溶性が低下し、貯蔵時に分散不良を生じる可能性がある。
異なる樹脂を混合した場合の分子量分布の指標として重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)を分散比と定義した場合、本発明のペーストが含有する熱可塑性樹脂(A)、(B)の分散比Mw/Mnの好ましい範囲としてはいずれも2.5〜8であることが好ましく、より好ましくは3.0〜5の範囲である。Mw/Mnが2.5より小さい場合、高粘度におけるペーストの版通過性への寄与が小さくなり印刷性の面で好ましくない。一方で8よりも大きい場合には分子量分布が広くなりすぎるため、熱可塑性樹脂(A)起因による細線印刷時の版通過性(吐出性)、版離れの悪化を誘発し、熱可塑性樹脂(B)による湿熱信頼性の低下が引き起こされる場合がある。
尚、分散比Mw/Mnはゲル浸透クロマトグラフ(GPC)によって測定することができる。
熱可塑性樹脂(A)の重量分率W(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量分率W(B)の比率W(A)/W(B)は1〜20である必要があり、より好ましくはW(A)/W(B)が1.5〜15、更に好ましくは2〜8である。比率W(A)/W(B)が低すぎると、版通過性、版離れは良好となるが、印刷後にダレを生じる他、塗膜としての湿熱信頼性に問題が生じる傾向にある。比率W(A)/W(B)が高すぎると、版通過性、版離れが改善されず、細線形成の改良が期待できない。
熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度は40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が低すぎると、高温時に樹脂が軟化するため、ペーストから形成される導電性薄膜の湿熱信頼性が低下するおそれがあり、また、表面硬度の低下を誘発しタック性により製造工程及び/又は使用の際に接触相手側へのペースト含有成分の移行が生じて導電性薄膜としての信頼性が低下するおそれがある。一方、熱可塑性樹脂(A)のガラス転移温度は、印刷性、密着性、溶解性、ペースト粘度、及び印刷性等を考慮すると150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度の下限は−10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度がー10℃よりも低いと、高温時に樹脂が軟化するため、ペーストから形成される導電性薄膜の湿熱信頼性が低下するおそれがあり、また、表面硬度の低下を誘発しタック性により製造工程及び/又は使用の際に接触相手側へのペースト含有成分の移行が生じて導電性薄膜の湿熱信頼性が低下するおそれがある。一方、熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度の上限は特に制限されないが、印刷性、密着性、溶解性、ペースト粘度、及び印刷性等を考慮すると150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。
熱可塑性樹脂(A)は、特定の範囲の酸価を有することが好ましい。熱可塑性樹脂(A)として酸価を有する樹脂を用いることにより、形成される導電性薄膜の基材に対する密着性を著しく向上させることができる。熱可塑性樹脂(A)の酸価は、50〜500eq/tonであることが好ましく、100〜350eq/tonであることがより好ましい。熱可塑性樹脂(A)の酸価が低すぎると、形成される導電性薄膜と基材との密着性が低くなる傾向がある。一方、熱可塑性樹脂(A)の酸価が高すぎると、形成される導電性薄膜の吸水性が高くなる上、カルボキシル基による触媒作用により熱可塑性樹脂の加水分解が促進される可能性があり、導電性薄膜としての信頼性の低下につながる傾向がある。一方、熱可塑性樹脂(B)に関しては、特に酸価は限定されない。
熱可塑性樹脂(A)は、前述のようにポリウレタン樹脂であることが好ましく、下記の成分を反応させて得られるポリウレタン樹脂であることがより好ましい。(A1)分子量1,000〜10,000、好ましくは、1,500〜7,000であり、ガラス転移温度30℃〜80℃、好ましくは45〜70℃の非晶性ポリオールと、(A2)数平均分子量1,000未満、好ましくは60〜400の1分子に2個以上のイソシアネートと反応し得る官能基を有する化合物と、(A3)ポリイソシアネートと、の重付加反応によって得ることができる化学構造からなるポリエステルウレタン樹脂であることが特に好ましい。
前記非晶性ポリオール(A1)の好ましい例としてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられるが、分子設計の自由度からポリエステルポリオールがより好ましい。
前記(A1)として用いられる前記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸とポリオールの縮合により得られるものが樹脂設計の自由度、溶剤溶解性の点で好ましい。
前記ポリエステルポリオールの共重合成分として使用されるジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ダイマー酸等の炭素数12〜28の二塩基酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールA、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールS、ダイマー酸、水素添加ダイマー酸、水素添加ナフタレンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;ヒドロキシ安息香酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸が挙げられる。また、発明の効果を損なわない範囲で、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の多価のカルボン酸、フマール酸等の不飽和ジカルボン酸、さらに、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等のスルホン酸金属塩基含有ジカルボン酸を共重合してもよい。
前記ポリエステルポリオールの共重合成分として使用されるポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1、3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール等の脂環族ジオールが挙げられる。また、発明の効果を損なわない範囲でトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリン等の多価ポリオールを併用してもよい。
非晶性ポリオール(A1)がポリエステルポリオールである場合、強度や耐熱性、耐湿性、及び耐熱衝撃性等の耐久性等の観点から、ポリエステルポリオールを構成する全酸成分のうち芳香族ジカルボン酸が60モル%以上共重合されていることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは98モル%以上である。全酸成分が芳香族ジカルボン酸からなることは好ましい実施態様である。芳香族ジカルボン酸成分の共重合比率が低すぎると、得られるポリウレタン樹脂のガラス転移温度が45℃より低くなり、得られる導電性薄膜の湿熱信頼性が低下するおそれがある。
非晶性ポリオール(A1)がポリエステルポリオールである場合、強度や耐熱性、耐湿性、及び耐熱衝撃性等の耐久性等の観点から、ポリエステルポリオールを構成する全ポリオール成分の内、主鎖の炭素数が4以下であるグリコールが60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましい。全ポリオール成分の内、主鎖の炭素数が4以下であるグリコールの共重合比率低すぎると得られるポリウレタン樹脂のガラス転移温度が60℃より低くなり、得られる導電性薄膜の湿熱信頼性が低下するおそれがある。
化合物(A2)におけるイソシアネートと反応し得る官能基としては、水酸基及びアミノ基が好ましく、いずれか一方を有するものでも双方を有するものであっても良い。具体的な(A2)成分の例としては、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸の他、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2’,2’−ジメチル−3’−ヒドロキシプロパネート、2−ノルマルブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−フェニル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−3−ナトリウムスルホ−2,5−ヘキサンジオール、ダイマージオール(たとえば、ユニケマ・インターナショナル社製PRIPOOL−2033)等の1分子中に2個の水酸基を有する化合物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリグリセリン等の多価アルコール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の1分子に1個以上の水酸基とアミノ基を有するアミノアルコール、エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンなどの脂肪族ジアミンやメタキシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンなどの1分子中に2個のアミノ基を有する化合物が挙げられる。この中でも極性基を付与する観点や、溶剤溶解性を付与する観点でジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。化合物(A2)は単独で用いてもよいし複数を併用しても何ら問題はない。
熱可塑性樹脂(A)を構成するポリイソシアネート(A3)の例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの中でも反応性、溶剤溶解性を考慮し、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用することが好ましい。化合物(A3)は単独で用いてもよいし複数を併用しても何ら問題はない。
前記ポリイソシアネート(A3)と非晶性ポリオール(A1)及び数平均分子量1,000未満の1分子に2個以上のイソシアネートと反応し得る官能基を有する化合物(A2)を反応させることによって、熱可塑性樹脂(A)にウレタン結合を導入することができる。また、前記ポリイソシアネート(A3)と非晶性ポリオール(A1)、及び数平均分子量1,000未満の1分子に2個以上のイソシアネートと反応し得る官能基を有する化合物(A2)を反応させることによって、熱可塑性樹脂(A)にウレタン結合を導入することができる。
本発明の導電性ペーストにおいては、本発明の効果を損なわない程度に熱可塑性樹脂(A)または熱可塑性樹脂(B)と反応し得る硬化剤を配合してもよい。硬化剤を配合することにより、硬化処理工程が必要となり、生産工程の負荷が増すことがあるが、架橋による塗膜の湿熱信頼性の向上が期待できる。本発明のバインダー樹脂に反応し得る硬化剤は、特に限定されないが、接着性、耐屈曲性、硬化性等からイソシアネート化合物が特に好ましい。さらに、これらのイソシアネート化合物として、イソシアネート基をブロック化したものを使用すると、貯蔵安定性が向上し、好ましい。イソシアネート化合物以外の硬化剤としては、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、ベンゾグアナミン、尿素樹脂等のアミノ樹脂、酸無水物、イミダゾール類、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の公知の化合物が挙げられる。これらの硬化剤には、その種類に応じて選択された公知の触媒あるいは促進剤を併用することもできる。硬化剤の配合量としては、本発明の効果を損なわない程度に配合されるものであり、特に制限されるものではないが、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計100質量部に対して、0.5〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、2〜20質量部がさらに好ましい。
本発明の導電性ペーストに配合することができるイソシアネート化合物の例としては、芳香族又は脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート等があり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、等の芳香族ジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、あるいはこれらのイソシアネート化合物の3量体、及びこれらのイソシアネート化合物の過剰量と例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子活性水素化合物又は各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物等と反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。また、イソシアネート基のブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類;t−ブタノール、t−ペンタノール等の第三級アルコール類;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタム等のラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステル等の活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、イミダゾール類、尿素類、ジアリール化合物類、重亜硫酸ソーダ等も挙げられる。このうち、硬化性よりオキシム類、イミダゾール類、アミン類が特に好ましい。
熱可塑性樹脂(A)を導電性ペーストに含有することにより、導電性薄膜を形成させるために低温乾燥(例えば135℃以下)を施しても、積層される透明電極層に対して極めて優れた密着性を有し、高導電性を発現することができる。これは、熱可塑性樹脂(A)が高分子量の樹脂成分を含有するため、分子間の凝集力が高いためである。すなわち分子間の凝集力が高いと、基材界面との分子間の相互作用が増大し、接着性が向上する。さらには導電性フィラーのパッキングを高め、導電性フィラー同士の接触を高めることができ、導電性が向上する。
本発明の導電性ペーストにおいて、熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)以外に上記に記載のポリウレタン樹脂以外のポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル以外に、カーボンブラック、グラファイト粉などの炭素系のフィラー等の非金属からなる導電性粉末を用いても良い。カーボンブラック、グラファイト粉を含む場合の、カーボンブラック及び/又はグラファイト粉の含有量としては、金属粉末100質量部に対して、25質量部以下、さらに好ましくは11質量部以下で配合することが導電性を向上させる点で好ましい。25質量部より多いと導電性を損ねる場合があり、さらに印刷性が悪化する場合がある。これらの導電性金属粉は、単独で用いてもよく、また、併用してもよい。これらの中で、銀粉単独又は銀粉を主体とするものが高い導電性を示す塗膜を得やすい点で、特に好ましい。
導電性金属粉(C)の形状は特に限定されないが、好ましい形状の例としては、公知のフレーク状(リン片状)、球状、樹枝状(デンドライト状)、特開平9−306240号公報に記載されている球状の1次粒子が3次元状に凝集した形状(凝集粉)等を挙げることができる。これらの中で、球状、凝集粉、フレーク状のものが好ましい。
導電性金属粉(C)の粒子径は特に限定されないが、細線適性を付与するという観点から、中心径(D50)が4μm以下であるものが好ましく、0.4μm以上であるものがより好ましい。中心径が4μm以下の小さい導電性粉末を用いることで、版の目詰まり等を低減することができる。中心径が4μmより大きい導電性粉末を用いた場合には、版の目詰まりが起こる他、形成された細線の形状が悪く、細線同士が接触を起こし短絡を招く可能性がある。一方で、D50の下限としては、0.4μm以上が好ましい。0.4μmより小さくなると、銀粉の凝集力が増し、吐出性が悪化する他、コスト的観点からも好ましくない。
導電性金属粉(C)の配合率は、導電性に優れる導電性薄膜を得るという観点から、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計100質量部に対して、400質量部以上が好ましく、560質量部以上がより好ましく、700質量部以上がさらに好ましい。一方、導電性粉(C)の配合率は、基材との密着性に優れる導電性薄膜を得るという観点から、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)の合計100質量部に対して、1,900質量部以下が好ましく、1,230質量部以下がより好ましく、750質量部以下がさらに好ましい。
本発明の導電性ペーストには、下記の無機物を添加することができる。無機物としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブテン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタム等の各種炭化物;窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物;酸化チタン(チタニア)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物;チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物;二硫化モリブデン等の硫化物;フッ化マグネシウム、フッ化炭素等の各種フッ化物;ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸;その他、滑石、ベントナイト、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、ガラス繊維、雲母等を用いることができる。これらの無機物を添加することによって、印刷性や耐熱性、さらには機械的特性や湿熱信頼性を向上させることが可能となる場合がある。中でも、本発明の導電性ペーストにおいては、印刷性を付与するという観点で、シリカが好適である。
すなわち、シリカが存在するとシリカを含むフィラー同士の物理凝集力、さらには水素結合形成による擬似架橋によって粘度を高めることができる。このような擬似架橋による粘度の上昇はスクリーン印刷時にかかるせん断によって架橋が一時的に破壊され、低粘度化が可能となり、メッシュ開口部が狭い場合においても版通過性を向上させることができるためである。使用するシリカにおいてはその粒子径や、その親水性、疎水性は問わずに使用することができる。
また、チキソ性付与剤、消泡剤、難燃剤、粘着付与剤、加水分解防止剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料を用いることができる。さらには樹脂分解抑制剤としてカルボジイミド、エポキシ等を適宜使用することもできる。これらは単独もしくは併用で用いることができる。
本発明における有機溶剤(D)は、沸点が100℃以上、300℃以下であることが好ましく、より好ましくは沸点が150℃以上、280℃以下である。有機溶剤(D)の沸点が低すぎると、ペースト製造工程やペースト使用に際に溶剤が揮発し、導電性ペーストを構成する成分比が変化しやすい懸念がある。一方で、有機溶剤の沸点が高すぎると、低温乾燥工程が求められる場合(例えば135℃以下)において、溶剤が塗膜中に多量に残存する可能性があり、塗膜の信頼性低下を引き起こす懸念がある。
また、本発明における有機溶剤(D)としては、熱可塑性樹脂(A)、(B)に対する溶解性が良好であることが好ましい。具体例としては、エチルジグリコールアセテート(ECA)、ブチルグリコールアセテート(BCA)、ブチルジグリコールアセテート(BDGAC)、シクロヘキサノン、トルエン、イソホロン、γ-ブチロラクトン、ベンジルアルコール、エクソン化学製のソルベッソ100,150,200、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ターピオネール等が挙げられるが、これらの中で、溶解性、スクリーン印刷性(連続印刷時の溶剤揮発性)において良好であるという観点から、ECA、BCA、BDGACおよびそれらの混合溶剤が好ましい。
有機溶剤(D)の含有量としては、ペースト全重量100重量部に対して25重量部以下(重量分率として25重量%以下)であることが好ましく、20重量部以下であることがさらに好ましい。有機溶剤(D)の含有量が高すぎるとペースト粘度が低くなり、細線印刷の際にダレを生じる。
本発明の導電性ペーストは、細線を形成させる必要があるため、従来からキーボード用のメンブレンスイッチや感圧センサ等の電極用用途に用いられる一般的な導電性ペーストの粘度よりも高いことが好ましい。具体的には150Pa・s以上、さらに好ましくは200Pa・s以上が好ましい。上限は特には制限されないが、粘度が高すぎると版通過性(吐出性)の観点で、印刷性が顕著に低下する他、連続印刷にて版詰まりが起こる可能性が高くなる。
本発明の導電性ペーストは、F値が60〜95%であることが好ましく、より好ましくは75〜95%である。F値とはペースト中に含まれる全固形分100質量部に対するフィラー質量部を示す数値であり、F値=(フィラー質量部/固形分質量部)×100で表される。ここで言うフィラー質量部とは導電性粉(C)の質量部、固形分質量部とは溶剤以外の成分の質量部であり、導電性粉末、バインダー樹脂、その他の硬化剤や添加剤を全て含む。F値が60%未満であると良好な導電性が得られず、95%をこえると密着性及び/又は硬度が低下する傾向にあり、印刷性が低下する場合がある。
本発明の導電性ペーストの製造方法は特に限定されないが、例えば、以下のような工程により、製造することができる。まず、熱可塑性樹脂(A)および(B)を有機溶剤(D)に溶解する。次いでこの溶液に導電性金属粉(C)、ならびに、必要であればその他の添加剤を添加し、ダブルプラネタリーやディゾルバー、遊星式の攪拌機等で予備分散を実施する。次いでこれを、三本ロールミルで分散して、導電性ペーストを得る。このような工程により得られた導電性ペーストは、さらに濾過しても良い。
また、本発明のような溶剤含有量が少ない導電性ペーストにおいては、三本ロールミルを用いる分散工程が生産効率の点で特に有効であるが、その他の分散機、例えばビーズミル、ニーダー、エクストルーダーなどを用いて分散しても何ら問題はない。
本発明の導電性ペーストを基材上に塗布または印刷して塗膜を形成し、次いで塗膜に含まれる有機溶剤(D)を揮散させ乾燥させることにより、導電性薄膜を形成することができる。
有機溶剤(D)を揮散させる工程は、常温下および/または加熱下で行うことが好ましい。加熱する場合、乾燥後の導電性薄膜の導電性や密着性、表面硬度が良好となることから、加熱温度は80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましい。また、下地の透明導電性層の耐熱性、及び生産工程における省エネルギーの観点から、加熱温度は150℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。本発明の導電性ペーストに硬化剤が配合されている場合には、有機溶剤(D)を揮散させる工程を加熱下で行うと、硬化反応が進行する。
導電性薄膜の厚さは、用いられる用途に従って適切な厚さに設定すればよい。乾燥後の導電性薄膜の導電性において良好であるという観点から、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、9μm以上がさらに好ましい。また、導電性薄膜の厚さは、スクリーン印刷性において良好である点、及びペースト使用量低減によるコストメリットの観点から、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
導電性ペーストが塗布される基材は特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリイミド、ポリエステル等が挙げられる。また、前記基材と導電性膜との間に透明導電性層を設け、導電性薄膜を透明導電性層上に積層することにより、導電性積層体を得ることができる。透明導電性層の素材は特に限定されないが、例えば、酸化インジウム・スズを主成分としてなるITO膜に適用することが可能である。また、透明導電性層は基材全面に形成されたものだけでなく、エッチングにより透明導電性層の一部が除去されたものを使用することもできる。
本発明の導電性積層体を用い、タッチパネルを製造することができる。タッチパネルは、抵抗膜方式であっても静電容量方式であってもよい。いずれのタッチパネルにも適用が可能であるが、本ペーストは、細線形成に好適であるため、静電容量方式に用いられることが好ましい。
タッチパネルの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ITO膜等の透明導電性層を積層した基材上に、硬化後、導電性を与える回路を形成するように、導電性ペーストを塗布又は印刷し、加熱により塗布又は印刷した導電性ペーストを硬化させ、導電性積層体を形成させ、得られる導電性積層体を別の導電性積層体と貼り合わせることにより製造することができる。
本発明の導電性ペーストは、タッチパネルの電極回路配線用として好適に用いられるが、それ以外にも、電磁波シールド用途、電子部品の回路形成用途、端子やリード線の導電性接着剤等の用途にも使用することが可能である。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、特に断らない限り例中の「部」は「質量部」を示し、固形分濃度とは有機溶剤を完全に揮発させた後の不揮発分のことを示す。
本発明におけるポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂の物性評価、および、導電性ペーストの評価は、下記の方法により行った。
1.数平均分子量、重量平均分子量
試料樹脂を4mlのテトラヒドロフラン(テトラブチルアンモニウムクロライド5mM添加)に試料4mgを溶解した後、0.2μmの孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過し、ゲル浸透クロマトグラフィー分析を行った。装置は島津製作所社製のゲル浸透クロマトグラフ(GPC)Prominenceを用い、示差屈折計(RI計)を検出器として、カラム温度30℃、流量1ml/分にて樹脂試料のGPC測定を行った。数平均分子量、重量平均分子量の値は標準ポリスチレン換算値とし、分子量1000未満に相当する部分を省いて算出し、それを試料樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)とした。
2.ガラス転移温度(Tg)
試料樹脂5mgをアルミニウム製サンプルパンに入れて密封し、セイコーインスツルメンツ(株)製の示差走査熱量分析計(DSC)DSC−220を用いて、200℃まで、昇温速度20℃/分にて測定し、ガラス転移温度以下のベースラインの延長線と遷移部における最大傾斜を示す接線との交点の温度で求めた。
3.酸価
試料樹脂0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレイン溶液を用いた。酸価の単位はeq/ton、すなわち試料1トン当たりの当量とした。
4.樹脂組成
クロロホルム−dに試料樹脂を溶解し、VARIAN製400MHz−NMR装置を用い、1H−NMR分析により樹脂組成比を求めた。
5.導電性積層体テストピースの作製
厚み100μmのアニール処理をしたPETフィルム(東レ社製ルミラーS)又はITO膜(尾池工業(株)製、KH300)に、スクリーン印刷法により導電性ペーストを印刷し、幅25mm、長さ450mmのべた塗りパターンを形成し、120℃で30分乾燥、硬化したものを導電性積層体テストピースとした。乾燥膜厚は8〜12μmになるように印刷時の塗布厚を調整した。
6.密着性
導電性積層体テストピースを用いてJIS K−5400−5−6:1990に従って、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製)を用い、剥離試験により評価した。但し、格子パターンの各方向のカット数は11個、カット間隔は1mmとした。100/100は剥離がなく密着性が良好なことを示し、0/100は全て剥離してしまったことを表す。
7.比抵抗
導電性積層体テストピースのシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。膜厚はゲージスタンドST−022(小野測器社製)を用い、PETフィルムの厚みをゼロ点として硬化塗膜の厚みを5点測定し、その平均値を用いた。シート抵抗はMILLIOHMMETER4338B(HEWLETT PACKARD社製)を用いてテストピース4枚について測定し、その平均値を用いた。
8.鉛筆硬度
導電性積層体テストピースを厚さ2mmのSUS304板上に置き、JIS K 5600−5−4:1999に従って鉛筆硬度を測定した。
9.耐ブロッキング性:
導電性積層体テストピースを2枚、塗膜面を接するように重ね合わせ、導電性塗膜部分に500gの荷重を印加して、80℃で72時間放置した。ついで荷重を取り除き常温で1時間放置した後に重ね合わせた導電性積層体テストピースを剥がし、以下の基準で外観により良否を判定した。
○:塗膜双方への転写がなく、元の塗膜状態を保持している。
×:双方への転写が見られ、ハガレが生じている。
10.耐環境負荷試験:
導電性積層体テストピースを、80℃で300時間加熱し、次いで85℃、85%RH(相対湿度)で300時間加熱し、その後24時間常温で放置した後、各種評価を行った。
11.ペースト粘度
サンプル温度25℃において、コーン・プレート型粘度計(RE―85型(東機産業社製、コーン形状角度3°、R14)を用い、0.5rpmでローターを回転させ、回転開始180秒後の測定値を元に、導電性ペーストの粘度を測定した。
12.貯蔵安定性
導電性ペーストをポリ容器に入れ、密栓したものを40℃で1ヶ月貯蔵した。貯蔵後に粘度測定及び上記5.導電性積層体テストピースにより作製したテストピースの評価を行った。
○:著しい粘度変化はなく、初期の比抵抗、鉛筆硬度、密着性を維持している。
×:かなりの粘度上昇が認められ、比抵抗、鉛筆硬度、密着性の低下が認められる。
12.細線の印刷性評価
細線の線幅としてラインとスペースの幅(L/S)を50/50μmとし、スクリーン版として、東京プロセスサービス社製のST500ステンレスメッシュ(版サイズ320mm、乳剤厚10μm、線径18μm)を用いて、ITOエッチングフィルム上に連続100枚印刷を行なった。スクリーン印刷条件は、スキージー圧を0.4MPa、スキージー速度を100mm/sec、クリアランスを1.5mmとした。
連続印刷性の評価は下記判断基準で行った。
○:連続100枚印刷中にカスレが生じず、版離れにも特に問題が生じない。
×:連続100枚印刷終了以前にカスレが発生する、または、版離れが悪化して連続100枚印刷ができない。
また、形成された細線の評価は、上記印刷物を用い、レーザー顕微鏡(キーエンスVHX−1000)にてL/Sを測定し、また細線の状態の観察を実施して下記判断基準により細線印刷性を評価した。
○:断線がなく、にじみによる細線間の短絡(ショート)がない。
×:一部断線もしくはにじみによる細線間の短絡(ショート)がある。
樹脂の製造例
ポリエステル樹脂P−1の製造例
攪拌機、コンデンサー、及び温度計を具備した反応容器にテレフタル酸ジメチル700部、イソフタル酸ジメチル700部、エチレングリコール671部、ネオペンチルグリコール526部、テトラブチルチタネート0.48部を仕込み、180℃、3時間エスエル交換を行なった。次に、1mmHg以下まで徐々に減圧し、240℃、1.5時間重合した。得られた共重合ポリエステル樹脂P−1の組成及び物性を表1に示した。
ポリエステル樹脂P−2〜P−5、P−7の製造例
ポリエステル樹脂P−1の製造例においてモノマーを変更し、ポリエステル樹脂P−2〜P−5、P−7を製造した。得られた共重合ポリエステル樹脂の組成及び樹脂物性を表1に示した。
ポリエステル樹脂P−6の製造例
攪拌機、コンデンサー、及び温度計を具備した反応容器にテレフタル酸700部、イソフタル酸700部、無水トリメリット酸16.9部、エチレングリコール983部、2−メチル−1、3−プロパンジオール154部、窒素雰囲気2気圧加圧下、160℃から230℃まで3時間かけてエステル化反応を行った。放圧後、テトラブチルチタネート0.92部を仕込み、次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。窒素気流下、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸を50.6部投入し、30分間反応を行いポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂P−6の組成及び物性を表1に示した。
ポリウレタン樹脂U−1の製造例
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にポリエステル樹脂P−1を1000部、ネオペンチルグリコール(NPG)を80部、ジメチロールブタン酸(DMBA)を90部投入した後、エチルジグリコールアセテート(ECA)1087部仕込み、85℃において溶解した。その後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を460部加え、85℃、2時間反応を行った後、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.5部添加し、85℃でさらに4時間反応させた。ついで、ECA1940部で溶液を希釈し、ポリウレタン樹脂U−1を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液の固形分濃度は35(質量%)であった。このようにして得た樹脂溶液をポリプロピレンフィルム上に滴下し、ステンレス鋼製のアプリケーターを用いて延展し、樹脂溶液の薄膜を得た。これを120℃に調整した熱風乾燥機内に3時間静置して溶剤を揮散させ、次いでポリプロピレンフィルムから樹脂薄膜を剥がし、フィルム状の乾燥樹脂薄膜を得た。乾燥樹脂薄膜の厚みは約30μmであった。左記乾燥樹脂薄膜をポリウレタン樹脂U−1の試料樹脂として、各種樹脂物性の評価結果を表2に示した。
ポリウレタン樹脂U−2〜U−7の製造例
ポリウレタン樹脂U−2〜U−7は、ポリエステルポリオール、イソシアネートと反応する基を有する化合物及びポリイソシアネートを表2に示すものに代えた以外は、ポリウレタン樹脂U−1の製造例と同様の方法にて製造した。ポリウレタン樹脂U−2〜U−6の樹脂物性の評価結果を表2に示した。
DMBA:ジメチロールブタン酸
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
NPG:ネオペンチルグリコール
DMH:2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
ポリウレタン樹脂U−2〜U−7の樹脂物性の評価結果を表3に示した。
ポリウレタン樹脂U−8〜U−9の製造例
ポリウレタン樹脂U−8〜U−9は、ポリエステルポリオール、イソシアネートと反応する基を有する化合物及びポリイソシアネートを表3に示すものに代えた以外は、ポリウレタン樹脂U−1の製造例と同様の方法にて製造した。ポリウレタン樹脂(U-8)〜(U-9)を製造する際に用いた各成分及び樹脂物性を表3に示す。
実施例1
固形分濃度35質量%のポリウレタン樹脂U−1溶液を2,285部(固形部換算800部)、ポリエステル樹脂P−1を固形分濃度70質量%となるようにECAへ溶解した溶液285部(固形部換算200部)、フェロ・ジャパン(株)製のフレーク状銀粉SF70Aを7,888部、カーボンブラックとしてライオン(株)製のECP600JDを111部、(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBFを111部、レベリング剤として共栄社化学(株)製のMKコンクを71部、分散剤とビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk2155を30部、溶剤としてECAを300部配合し、チルド三本ロール混練り機に3回通して分散した。得られたペーストの評価結果を表4に示した。
実施例2〜15および比較例1〜9
導電性ペーストの樹脂および配合を変えて実施例2〜15を実施した。さらに同様に導電性ペーストの樹脂および配合を変えて比較例1〜9を実施した。導電性ペーストの配合および評価結果を表4〜表6に示した。いずれの実施例もオーブン120℃×30分という比較的低温かつ短時間の加熱により良好な塗膜物性を得ることができた。またITO膜への密着性、環境試験後の密着性、耐ブロッキング性等も良好であった。
なお、表4〜表6において、バインダー樹脂、導電粉末、添加剤及び溶剤は以下のものを用いた。
樹脂T-1:ジャパンエポキシレジン社製JER1010(数平均分子量5500)
樹脂T-2:ジャパンエポキシレジン社製JER1004(数平均分子量1650)
樹脂T-3:ジャパンエポキシレジン社製JER1256(数平均分子量13000)
樹脂T-4:ニトロセルロース (数平均分子量300000)
樹脂T-5:日信化学社製塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂CN
(数平均分子量42000)

銀粉1:フェロ・ジャパン(株)製SF70A
銀粉2:フェロ・ジャパン(株)製S7000−14
銀粉3:福田金属箔粉工業(株)製AgC−2011
銀粉4:DОWAエレクトロニクス(株)製AG2−1C
カーボンブラック:ライオン(株)製ケッチェンECP600JD
グラファイト粉:(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBF
硬化剤:旭化成ケミカルズ(株)製MFK−60X
硬化触媒:共同薬品(株)製KS1260
レベリング剤:共栄社化学(株)MKコンク
分散剤1:ビックケミー・ジャパン(株)社製Disperbyk2155
分散剤2:ビックケミー・ジャパン(株) 社製のDieperbyk180
分散剤3:ビックケミー・ジャパン(株) 社製のDieperbyk130
添加剤1:日本アエロジル(株)社製シリカR972
添加剤2:日本アエロジル(株)社製シリカ#300
ECA:ダイセル化学工業(株)製エチルジグリコールアセテート
BCA:ダイセル化学工業(株)製ブチルグリコールアセテート
BDGAC:ダイセル化学工業(株)製ブチルジグリコールアセテート
比較例1
固形分濃度35質量%のポリウレタン樹脂溶液(U-7)を2,860部(固形部換算1000部)、フェロ・ジャパン(株)製のフレーク状銀粉SF70Aを7,888部、カーボンブラックとしてライオン(株)製のECP600JDを111部、(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBFを111部、レベリング剤として共栄社化学(株)製のMKコンクを71部、分散剤とビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk2155を30部、溶剤としてエチルジグリコールアセテート(ECA)を300部配合し、チルド三本ロール混練り機で3回通して分散した表5に全溶液中の各成分の量を示す。得られた銀ペーストをアニール処理をしたPETフィルムに4.密着性試験において記述した方法で印刷した後、120℃×30分で乾燥した。得られた塗膜物性は、比抵抗は8.6×10-5Ω・cm、密着性100/100、鉛筆硬度Bであった。結果を表6に示す。
一方で、基材としてITOフィルムKH300(尾池工業社製)を用い、4.密着性試験において記述した方法で印刷、乾燥し評価した。また環境試験を実施した。
さらに、KH300をエッチング処理によってITOを除去したITOエッチングフィルムを用いて、スクリーン印刷において細線印刷性の検討を実施した。結果を表6に示す。
比較例2
ポリエステル樹脂(P-6)を固形分濃度40質量%となるようにエチルジグリコールアセテートに溶解したポリエステル溶液を2,501部(固形部換算1,000部)、フェロ・ジャパン(株)製のフレーク状銀粉SF70Aを6540部、カーボンブラックとしてライオン(株)製のケッチェンECP600JDを111部、(株)中越黒鉛工業所製のグラファイトBFを111部、レベリング剤として共栄社化学(株)製のMKコンクを71部、分散剤1としてビックケミー・ジャパン(株)製のDiesperbyk2155を31部、溶剤としてエチルジグリコールアセテートを370部を配合し、チルド三本ロール混練り機で3回通して分散した。表5に全溶液中の各成分の量を示す。得られた銀ペーストをアニール処理をしたPETフィルムに4.密着性試験において記述した方法で印刷した後、120℃×30分で乾燥した。得られた塗膜物性は、比抵抗は9.6×10-5Ω・cm、密着性100/100、鉛筆硬度HBであった。結果を表6に示す。
一方で、上記比較例1と同様に、環境試験ならびにスクリーン印刷における細線印刷性の検討を実施した。結果を表6に示す。
比較例3〜9
表5に示す成分及び配合により実施例1と同様に銀ペーストを作製し、アニール処理をしたPETフィルムを基材として塗膜を作製した。塗膜物性を表6に示す。
比較例1と同様にITOフィルムKH300(尾池工業社製)を用い、4.密着性試験において記述した方法で印刷、乾燥し評価した。また環境試験を実施し、さらに、KH300をエッチング処理によってITOを除去したITOエッチングフィルムを用いて、スクリーン印刷において細線印刷性の検討を実施例1と同様に実施した。評価結果を表6に示す。
なお、表5に示す、導電粉末、添加剤及び溶剤は、表5のものと同じである。
本発明の導電性ペーストを用いて得られた導電性薄膜は、湿熱信頼性に優れ、かつ本発明の導電性ペーストは、ファイン印刷性(版通過性(吐出性)、版離れ性を改良することができたものである。
本発明の導電性ペーストを用いることで、近年要求されるタッチパネルの細線形成を低温乾燥のスクリーン印刷法によって実現することができるので、産業上非常に有用である。

Claims (13)

  1. 熱可塑性樹脂(A)ならびに熱可塑性樹脂(B)、導電性金属粉(C)および有機溶剤(D)を含有してなる導電性ペーストであって、熱可塑性樹脂(B)はポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、およびフェノキシ樹脂からなる群より選択されてなる少なくとも1種以上であり、熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量Mn(A)が10,000〜70,000であり、かつ熱可塑性樹脂(A)の数平均分子量Mn(A)と熱可塑性樹脂(B)の数平均分子量Mn(B)の比率Mn(A)/Mn(B)が5〜100であり、熱可塑性樹脂(A)の重量分率W(A)と熱可塑性樹脂(B)の重量分率W(B)の比率W(A)/W(B)が1〜20であり、導電性ペースト全重量に対する有機溶剤(D)の重量分率が25重量%以下であることを特徴とする導電性ペースト。
  2. 導電性ペースト全重量に対する熱可塑性樹脂(A)の重量分率と熱可塑性樹脂(B)の重量分率の和が3〜20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 導電性金属粉末(C)の平均粒子径(D50)が4μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
  4. 熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)のガラス転移温度がいずれも45℃以上120℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペースト。
  5. 熱可塑性樹脂(A)がポリウレタン樹脂であって、熱可塑性樹脂(A)が、(A1)数平均分子量1,000〜10,000かつガラス転移温度45〜80℃の非晶性ポリオール、(A2)数平均分子量1,000未満の1分子に2個以上のイソシアネートと反応し得る官能基を有する化合物、及び(A3)ポリイソシアネートを重付加反応することによって得られる構造を有するポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ペースト。
  6. 熱可塑性樹脂(B)がポリウレタン樹脂および/またはポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ペースト。
  7. 熱可塑性樹脂(B)が熱可塑性樹脂(A)を構成する数平均分子量1,000〜10,000かつガラス転移温度45〜80℃の非晶性ポリオールであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ペースト。
  8. 熱可塑性樹脂(A)の酸価が50〜500eq/tonであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の導電性ペースト。
  9. 導電性金属粉末(C)として銀を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の導電性ペースト。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の導電性ペーストを用いてなる導電性薄膜。
  11. 請求項10に記載の導電性薄膜を透明導電性層上に積層した導電性積層体。
  12. 前記透明導電性層が、酸化インジウム・スズを主成分としてなるITO膜を導電成分とする透明導電体である請求項11に記載の導電性積層体。
  13. 請求項11または12に記載の導電性積層体を用いたタッチパネル。
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