以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
まず、リチウムイオン二次電池の動作原理及びリチウムの析出原理について、図2乃至図4を参照して説明する。
図2に、リチウムイオン二次電池の充電を行う場合について示し、図3に、リチウムイオン二次電池の放電を行う場合について示す。図2及び図3に示すように、電池を一つの閉回路と見なすと、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向きになる。また、リチウムイオン二次電池の充電と放電では、アノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わるため、本明細書では、反応電位が高い電極を正極または+極(プラス極)と呼び、反応電位が低い電極を負極または−極(マイナス極)と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、放電電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「−極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書において説明に用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。また、図2及び図3において、正極は正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO4)を有し、負極は負極活物質として黒鉛を有する場合について説明する。
図2(A)に、リチウムイオン二次電池を充電する場合において、リチウムイオン二次電池101と、充電器102を示す。リチウムイオン二次電池が充電を行う場合、正極では、式(1)の反応が起こる。
LiFePO4 → FePO4 + Li+ + e− (1)
また、負極では、式(2)の反応が起こる。
C6 + Li+ + e− → LiC6 (2)
よって、リチウムイオン二次電池の充電の全反応式は、式(3)となる。
LiFePO4 + C6 → FePO4 + LiC6 (3)
本来負極においては、Liが黒鉛に貯蔵されることで電池の充電が行われるが、何らかの原因で充電中に負極でLi金属の析出が起きたときは、式(4)の反応が起こる。つまり、負極では黒鉛へのLi挿入反応とLiの析出反応が両方起こることになる。
Li+ + e− → Li (4)
また、正極及び負極それぞれの電極の平衡電位は、材料とその平衡状態によって決まる。そして、正極及び負極それぞれの電極の材料がどのような平衡状態であるかで、電極間の電位差(電圧)が変化する。
図2(B)に、リチウムイオン二次電池の充電時の電圧を示す。図2(B)に示すように、充電の場合、時間tが経過して、電流が流れて反応が進むほど電極間の電圧は上昇する。
図3(A)に、リチウムイオン二次電池を放電する場合において、リチウムイオン二次電池101と、負荷103を示す。リチウムイオン二次電池の放電を行う場合、正極では、式(5)の反応が起こる。
FePO4 + Li+ + e− → LiFePO4 (5)
また、負極では、式(6)の反応が起こる。
LiC6 → C6 + Li+ + e− (6)
よって、リチウムイオン二次電池の放電の全反応式は、式(7)となる。
FePO4 + LiC6 → LiFePO4 + C6 (7)
また、Li金属の析出が起きた後の放電では、負極において、式(8)の反応が起こる。つまり、負極では、黒鉛からのLiの脱離反応とLiの溶解反応が両方起こる。
Li → Li+ + e− (8)
図3(B)に、リチウムイオン二次電池の放電時の電圧を示す。図3(B)に示すように、放電の場合、時間tが経過して、電流が流れて反応が進むほど電極間の電圧は減少する。
図4に、リン酸鉄リチウムを有する正極の、リチウム金属電極に対する電極電位の関係と、黒鉛を有する負極の、リチウム金属電極に対する電極電位の関係と、を示す。図4において、白抜き矢印は、充電電圧を表す。
リン酸鉄リチウムを有する正極と、黒鉛を有する負極との間の電極電位の差は、3.5V−0.2V=3.3Vである。電極電位は、平衡状態に対する値であるため、充電電圧が3.3Vであると、正極において式(1)の反応と式(5)の反応、負極において、式(2)と式(6)の反応が釣り合うため、電流が流れない。
よって、充電電流を流すためには、3.3Vより大きな充電電圧が必要となる。例えば、電池内部の直列抵抗成分を無視し、余分な充電電圧が、全て式(1)と式(2)の電極反応に使われるとすると、図4に示す白抜き矢印のように、余分の充電電圧は正極と負極それぞれに、正極に対する過電圧及び負極に対する過電圧として配分される。電極の単位面積に対し、より大きな電流密度を得るには、より大きな過電圧が必要となる。例えば、電池に対して、急速充電を行うと、活物質表面の単位面積あたりの電流密度を大きくする必要があるため、より大きな過電圧が必要となる。
しかしながら、活物質の単位面積あたりの電流密度を大きくするために、過電圧を大きくしていくと、負極に対する過電圧が大きくなるため、図4に示す白抜き矢印の先端がリチウム金属電極の電極電位を下回る。すると、式(4)に示す反応が起こる。このとき、負極表面にリチウムが析出することになる。
実際に、充電後のリチウムイオン二次電池(正極:LiFePO4、負極:黒鉛、セパレータ:ポリプロピレン)のコインセルを分解し、ウィスカー状のリチウムが黒鉛表面に析出している様子を示す走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))写真を図12に示す。また、充電時に異常の見られた別のリチウムイオン二次電池の負極活物質の表面に形成されるウィスカー状の反応生成物の一例を観察した結果を図13(A)及び図13(B)に示す。走査型イオン顕微鏡(SIM:Scanning Ion Microscope)の平面写真を図13(A)に示す。図中の白色の矢印が示す部分にウィスカー状の反応生成物が認められる。SIM写真の矢印方向から断面観察を行った結果を図13(B)に示す。なお、観察には、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope、日立ハイテクノロジーズ製「H−9000NAR」)を、加速電圧200kV、および倍率5万5千倍で用いた。
図12及び図13(A)及び図13(B)に示すように、ウィスカー状のリチウムが屈曲しながら成長して一部が屈曲した形状となっている。屈曲している部分があることから、成長のメカニズムは先端からの成長と、根元からの成長との両方があると考えられる。
また、充電時に異常の見られたリチウムイオン二次電池を分解し、セパレータを観察したところ、ウィスカー状のリチウムが付着していることが確認できた。そのセパレータの観察模式図を図14に示す。
セパレータには微細な穴22が多数あるはずであるが、何らかの理由で一部なくなっている場合がある。また、図14に示すようにウィスカー状のリチウム21が付着している場合がある。このようにセパレータが目詰まりを起こしている。なお、充電異常が発生したバッテリーを分解してセパレータを観察したところ、図14のような状態となっており、セパレータの目詰まりは、短絡や容量低下の原因若しくは要因の一つと考えられる。
上述したウィスカー状のリチウム21などの生成物が形成され、セパレータの目詰まりが生じないように充電中に逆パルス電流を複数回流す。
図1(A)に示すように充電中に逆パルス電流を複数回流すこと、つまり、充電中に充電を一時中断して、放電電流(すなわち逆パルス電流)を流す、という動作を複数回行うことで、バッテリー内のリチウムの析出をなくし、セパレータの目詰まりを防止することができる。なお、充電を一時中断して、逆パルス電流を流すまでの間には、切り替え期間が生じる場合もある。その切り替え期間では、バッテリーの端子が開放状態となって、電流が実質的にほとんど流れなくなる。
図1(A)においては、一例として、逆パルス電流Iinvの絶対値が充電電流Iaの絶対値よりも大きく設定している。また、n回目(ただしn≧2の自然数)の逆パルス電流を流す時間(逆パルス電流の印加時間t1)は、直前(n−1回目)の逆パルス電流を流した後、充電電流が流れていた時間(充電電流の印加時間t2)よりも、一例としては、短くする。例えば、逆パルス電流の印加時間t1は0.1秒以上3分以下、代表的には3秒以上30秒以下とする。
逆パルス電流を流す時間t1だけでなく、逆パルス電流を流す回数や、充電電流を流す時間t2なども適宜調節することが好ましい。バッテリーの特性に合わせて、充電中に最適な条件、即ち、効果的にリチウムの析出を抑え、且つ、セパレータの目詰まりが生じない条件で充電中に逆パルス電流を複数回流すことが望ましい。例えば、1回の充電期間中で逆パルス電流を流す回数の上限は、セパレータの目詰まりが生じなくなる回数とすればよい。
図1(B)は、バッテリー10の断面図である。負極14は、負極集電体と、これに接するように設けられた負極活物質層を有している。また、正極活物質層及び負極活物質層は対向しており、正極活物質層及び負極活物質層の間には、電解液13及びセパレータ15を有する。
バッテリー10の正極12は、正極集電体と、これと接するように設けられた正極活物質層を有している。
図5(A)は蓄電池用電極410の縦断面図である。図5(A)に示す電極410は、集電体412上に活物質層414を有する。電極410は正極または負極として用いることができる。図5(A)において、活物質層414は集電体412の一方の面にのみ形成されているが、活物質層414は集電体412の両面に有してもよい。また、活物質層414は集電体412の表面全域に形成する必要はなく、外部端子と接続するための領域等、非塗布領域を適宜設ける。
<集電体>
集電体412には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。集電体412は、箔状、板状(シート状)、網状、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体412は、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
<活物質層>
活物質層414は、少なくとも活物質を有する。また、活物質層414は、活物質の他、活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、活物質層414の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。
<正極活物質>
蓄電池用電極410をバッテリー10の正極12として用いる場合には、活物質層414に含まれる活物質(以下、正極活物質という。)として、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な材料を用いることができ、例えば、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、またはスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料等がある。正極活物質として、例えばLiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を用いることができる。
オリビン型構造のリチウム含有材料(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等がある。
特に、LiFePO4は、安全性、安定性、高容量密度、高電位、初期酸化(充電)時に引き抜けるリチウムイオンの存在等、正極活物質に求められる事項をバランスよく満たしているため、好ましい。なお、LiFePO4の理論容量は、170mAh/gである。
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有材料としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNiO2、LiMnO2、Li2MnO3、LiNi0.8Co0.2O2等のNiCo系(一般式は、LiNixCo1−xO2(0<x<1))、LiNi0.5Mn0.5O2等のNiMn系(一般式は、LiNixMn1−xO2(0<x<1))、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のNiMnCo系(NMCともいう。一般式は、LiNixMnyCo1−x−yO2(x>0、y>0、x+y<1))がある。さらに、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、Li2MnO3−LiMO2(M=Co、Ni、Mn)等がある。
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料としては、例えば、LiMn2O4、Li1+xMn2−xO4、Li(MnAl)2O4、LiMn1.5Ni0.5O4等がある。
LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1−xMO2(M=Co、Al等))を混合すると、マンガンの溶出を抑制する、電解液の分解を抑制する等の利点があり好ましい。
また、正極活物質として、一般式Li(2−j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)等のリチウム含有材料を用いることができる。一般式Li(2−j)MSiO4の代表例としては、Li(2−j)FeSiO4、Li(2−j)NiSiO4、Li(2−j)CoSiO4、Li(2−j)MnSiO4、Li(2−j)FekNilSiO4、Li(2−j)FekColSiO4、Li(2−j)FekMnlSiO4、Li(2−j)NikColSiO4、Li(2−j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li(2−j)FemNinCoqSiO4、Li(2−j)FemNinMnqSiO4、Li(2−j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li(2−j)FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等のリチウム化合物を材料として用いることができる。
また、正極活物質として、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、Mn、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナシコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等がある。また、正極活物質として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般式で表される化合物、NaFeF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、MoS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の逆スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料、バナジウム酸化物系(V2O5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物系、有機硫黄系等の材料を用いることができる。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、正極活物質として、上記リチウム化合物及びリチウム含有材料において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。ただし、キャリアイオンとしてリチウムを用いない場合、リチウムの析出は生じないが、リチウムイオン以外のキャリアイオンなどが固体となった生成物が生じる恐れがあり、その場合においても生成物が形成されるため、セパレータの目詰まりが生じないように充電中に逆パルス電流を複数回流すことは有効である。
また、正極活物質として、上記材料を複数組み合わせた材料を用いてもよい。例えば、上記材料を複数組み合わせた固溶体を正極活物質として用いることができる。例えば、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3O2とLi2MnO3の固溶体を正極活物質として用いることができる。
<負極活物質>
蓄電池用電極410をバッテリー10の負極14として用いる場合には、活物質層414に含まれる活物質(以下、負極活物質という。)として、例えば、リチウムの溶解・析出、又はリチウムイオンの挿入・脱離が可能な材料を用いることができ、リチウム金属、炭素系材料、合金系材料等を用いることができる。
リチウム金属は、酸化還元電位が低く(標準水素電極に対して−3.045V)、重量及び体積当たりの比容量が大きい(それぞれ3860mAh/g、2062mAh/cm3)ため、好ましい。
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム−黒鉛層間化合物の生成時)にリチウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1〜0.3V vs.Li/Li+)。これにより、リチウムイオン電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な合金系材料も用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、例えば、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ag、Au、Zn、Cd、In、Ga等のうち少なくとも一つを含む材料がある。このような元素は炭素に対して容量が大きい。このような元素を用いた合金系材料としては、例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。
特に、負極活物質としてシリコンを用いる場合、シリコンの理論容量は4200mAh/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。シリコンを負極活物質として用いた場合、黒鉛と比較して理論吸蔵容量が大きいため、リチウムイオン二次電池の高容量化や小型化を実現することができる。
シリコンを用いる場合、体積膨張が大きいため、図5(C)に示す電極構造とすることが好ましい。図5(C)は、負極の表面部分を拡大して模式的に示した断面図である。負極401は、あたかも生け花で用いる剣山(Kenzan:Spiky Frog)のような構造をしている。なお、図においては基礎部401aを薄く記載しているが、突起部401bに対して基礎部401aは極めて厚い。負極401は、複数の突起部401bと、複数の突起部のそれぞれが共通して接続する基礎部401aと、負極活物質層402を有する。負極活物質層402にシリコンを用い、当該シリコンは、非晶質(アモルファス)シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン又はこれらの組み合わせを用いることができる。一般に結晶性が高い程シリコンの電気伝導度が高いため、電極として導電率の高い電池として利用することができる。一方、シリコンが非晶質の場合には、結晶質に比べてリチウム等のキャリアイオンを吸蔵することができるため、放電容量を高めることができる。また、負極活物質層402にリン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたシリコンを用いてもよい。リン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたシリコンは、導電性が高くなるため、負極の導電率を高めることができる。
複数の突起部401bは、基礎部401aの表面に対して実質的に垂直方向に延びている。ここで「実質的に」とは、基礎部401aの表面と突起部の長手方向における中心軸とのなす角が90°であることが好ましいが、負極集電体の製造工程における水平だしの誤差や、突起部401bの製造工程における工程ばらつき、充放電の繰り返しによる変形等による垂直方向からの若干の逸脱を許容することを趣旨とした語句である。具体的には、基礎部401aの表面と突起部の長手方向における中心軸とのなす角が90°±10°以下であれば良く、好ましくは90°±5°以下である。なお、複数の突起部401bが基礎部401aから延びている方向を長手方向と呼ぶ。突起部401b及び基礎部401aは、チタンを用いることが好ましい。チタンは鋼鉄以上の強度を有する一方で、質量は鋼鉄の半分以下であり非常に軽い。また、チタンはアルミニウムよりも約2倍の強度を有し、他の金属よりも金属疲労が生じにくい。このため、軽量な電池の形成が実現できるとともに、繰り返しの応力に強い負極活物質層の芯として機能させることができ、シリコンの膨張収縮による劣化や崩壊を抑制することができる。さらに、チタンはドライエッチングの加工に非常に適した材料であり、高いアスペクト比の突起部を集電体表面に形成することが可能である。
また、他の負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物、(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、他の負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し、好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させておくことで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。なお、上記フッ化物の電位は高いため、正極活物質として用いてもよい。
<結着剤>
結着剤(バインダ)として、代表的なポリフッ化ビニリデン(PVdF)の他、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等を用いることができる。
<導電助剤>
導電助剤としては比表面積が大きい材料が望ましく、アセチレンブラック(AB)等を用いることができる。また、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンといった炭素材料を用いることもできる。
グラフェンは薄片状であり、高い導電性を有するという優れた電気特性、及び柔軟性並びに機械的強度という優れた物理特性を有する。そのため、グラフェンを、導電助剤として用いることにより、活物質同士の接触点や、接触面積を増大させることができる。
なお、本明細書において、グラフェンは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含む。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、XPSで測定した場合にグラフェン全体の2atomic%以上20atomic%以下、好ましくは3atomic%以上15atomic%以下である。
ここで、酸化グラフェンを還元した得られたグラフェンが多層グラフェンである場合、グラフェンの層間距離は0.34nmより大きく0.5nm以下、好ましくは0.38nm以上0.42nm以下、さらに好ましくは0.39nm以上0.41nm以下である。通常のグラファイトは、単層グラフェンの層間距離が0.34nmであり、酸化グラフェンを還元したグラフェンの方が、その層間距離が長いため、多層グラフェンの層間におけるキャリアイオンの移動が容易となる。
また、導電助剤としては、上述した炭素材料の代わりに、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等を用いることができる。
ここで、導電助剤として、グラフェンを用いた場合の活物質層について、図5(B)を用いて説明する。
図5(B)は、活物質層414の拡大縦断面図である。活物質層414は、粒状の活物質422と、導電助剤としてのグラフェン424と、結着剤(バインダともいう。図示せず)と、を含む。
活物質層414の縦断面においては、活物質層414の内部において概略均一にシート状のグラフェン424が分散する。図5(B)においてはグラフェン424を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン424は、複数の粒状の活物質422を覆うように、あるいは複数の粒状の活物質の表面上に張り付くように形成されているため、互いに面接触している。また、グラフェン424どうしも互いに面接触することで、複数のグラフェン424により三次元的な電子伝導のネットワークを形成している。
これは、グラフェン424の原料として、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いるためである。均一に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元してグラフェンとするため、活物質層414に残留するグラフェン424は部分的に重なり合い、互いに面接触する程度に分散していることで電子伝導の経路を形成している。
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の従来の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン424は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させることなく、粒状の活物質422とグラフェン424との電子伝導性を向上させるができる。よって、活物質層414における活物質422の比率を増加させることができる。これにより、蓄電池の放電容量を増加させることができる。
<電解液>
電解液13としては、電解質として、キャリアイオンを有する材料を用いる。電解質の代表例としては、LiPF6、LiClO4、Li(FSO2)2N、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等のリチウム塩がある。これらの電解質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。また、より安定にするため、電解液にビニレンカーボネート(VC)を少量(1wt%)添加して電解液の分解をより少なくしてもよい。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、電解質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
また、電解液の溶媒としては、キャリアイオンの移送が可能な材料を用いる。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、蓄電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いることで、蓄電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電池の破裂や発火などを防ぐことができる。また、イオン液体は、カチオンとアニオンとを含む。イオン液体としては、エチルメチルイミダゾリウム(EMI)カチオンを含むイオン液体、またはN−メチル−N−プロピルピペリジニウム(PP13)カチオンを含むイオン液体などがある。
<セパレータ>
セパレータ15は、セルロース(紙)、または微細孔が設けられたポリオレフィン樹脂(ポリプロピレンやポリエチレンなど)の多孔質フィルムを用いることができる。
本実施の形態では析出したリチウムを例に説明したが、特に限定されず、電極やセパレータに付着する生成物が劣化の原因となり、充電中に逆パルス電流を複数回流すことで劣化を回復できるバッテリーであれば、本発明の一態様を適用することができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、急速充電させる場合において充電中に逆パルス電流を複数回流す一例を図6に示す。
図1(A)では、逆パルス電流Iinvの絶対値が電流Iaの絶対値よりも大きい例を示しているが、図6では、逆パルス電流Iinvの絶対値が電流Iaの絶対値よりも小さい。充電は、電流Iaによって行われるため、電流Iaの絶対値が大きければ大きいほど充電が完了するまでの時間が短くなる。
少なくとも充電電流を瞬間的に停止するだけでは本発明の一態様の効果は得られないことを実験により確認できており、リチウムが析出する電流方向とは逆方向に電流が流れる、所謂、逆パルス電流を瞬間(0.1秒以上3分以下、代表的には3秒以上30秒以下)に流す。充電中に逆パルス電流を瞬間に複数回流すことで、セパレータの目詰まりを防止し、劣化を回復させることができるという効果を得ることができる。
従って、逆パルス電流Iinv>0mAとし、例えば、逆パルス電流Iinvを約0.3mAとし、電流Iaを約15mAとして図6に示すような電流をバッテリーに流すことで本発明の一態様の効果を得ることができる。
また、バッテリーが動作不良とならない範囲であれば、電流Iaの絶対値を大きくするだけでなく、逆パルス電流Iinvの絶対値も大きくしてもよい。
また、ここでは、逆パルス電流Iinvの絶対値と電流Iaの絶対値について変更する例を示したが、逆パルス電流を流す時間t1や、逆パルス電流を流す回数や、充電電流を流す時間t2なども適宜調節することが好ましい。バッテリーの特性に合わせて、充電中に最適な条件、即ち、効果的にリチウムの析出を抑え、且つ、セパレータの目詰まりが生じない条件で逆パルス電流を流すことが望ましい。例えば、1回の充電で逆パルス電流を流す回数の上限は、セパレータの目詰まりが生じなくなる回数とすればよい。
本実施の形態は、実施の形態1と自由に組み合わせることができる。
(実施の形態3)
リチウムイオン二次電池の構造について、図7及び図8を用いて説明する。
図7(A)は、コイン型(単層偏平型)のリチウムイオン二次電池の外観図であり、部分的にその断面構造を併せて示した図である。
コイン型の二次電池950は、正極端子を兼ねた正極缶951と負極端子を兼ねた負極缶952とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット953で絶縁シールされている。正極954は、正極集電体955と、これと接するように設けられた正極活物質層956により形成される。また、負極957は、負極集電体958と、これに接するように設けられた負極活物質層959により形成される。正極活物質層956と負極活物質層959との間には、セパレータ960と、電解液(図示せず)とを有する。
負極957は負極集電体958上に負極活物質層959を有し、正極954は正極集電体955上に正極活物質層956を有する。
正極954、負極957、セパレータ960、電解液には、それぞれ上述した部材を用いることができる。
正極缶951、負極缶952には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。正極缶951は正極954と、負極缶952は負極957とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極957、正極954及びセパレータ960を電解液に含浸させ、図7(A)に示すように、正極缶951を下にして正極954、セパレータ960、負極957、負極缶952をこの順で積層し、正極缶951と負極缶952とをガスケット953を介して圧着してコイン型の二次電池950を製造する。
次に、積層フィルムを用いた薄型(ラミネート型とも呼ぶ)の二次電池の一例について、図7(B)を参照して説明する。図7(B)では、説明の便宜上、部分的にその内部構造を露出して記載している。
図7(B)に示すラミネート型の二次電池970は、正極集電体971及び正極活物質層972を有する正極973と、負極集電体974及び負極活物質層975を有する負極976と、セパレータ977と、電解液(図示せず)と、外装体978と、を有する。外装体978内に設けられた正極973と負極976との間にセパレータ977が設置されている。また、外装体978内は、電解液で満たされている。なお、図7(B)においては、正極973、負極976、セパレータ977をそれぞれ一枚ずつ用いているが、これらを交互に積層した積層型の二次電池としてもよい。
正極、負極、セパレータ、電解液(電解質及び溶媒)には、それぞれ上述した部材を用いることができる。
図7(B)に示すラミネート型の二次電池970において、正極集電体971及び負極集電体974は、外部との電気的接触を得る端子(タブ)の役割も兼ねている。そのため、正極集電体971及び負極集電体974の一部は、外装体978から外側に露出するように配置される。
ラミネート型の二次電池970において、外装体978には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。このような三層構造とすることで、電解液や気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保する。
次に、円筒型の二次電池の一例について、図8を参照して説明する。円筒型の二次電池980は図8(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)981を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)982を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)982とは、ガスケット(絶縁パッキン)990によって絶縁されている。
図8(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶982の内側には、帯状の正極984と負極986とがセパレータ985を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶982は、一端が閉じられ、他端が開いている。
正極984、負極986、セパレータ985には、上述した部材を用いることができる。
電池缶982には、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶982の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板988、989により挟まれている。
また、電池素子が設けられた電池缶982の内部は、電解液(図示せず)が注入されている。電解液には、上述した電解質及び溶媒を用いることができる。
円筒型の二次電池に用いる正極984及び負極986は捲回するため、集電体の両面に活物質層を形成する。正極984には正極端子(正極集電リード)983が接続され、負極986には負極端子(負極集電リード)987が接続される。正極端子983及び負極端子987は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子983は安全弁機構992に、負極端子987は電池缶982の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構992は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子991を介して正極キャップ981と電気的に接続されている。安全弁機構992は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ981と正極984との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子991は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
次に、角型の二次電池の一例について、図7(C)を参照して説明する。図7(C)に示す捲回体993は、負極994と、正極995と、セパレータ996と、を有する。捲回体993は、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重なり合って積層され、該積層シートを捲回したものである。この捲回体993を角型の封止缶などで覆うことにより角型の二次電池が形成される。なお、負極994、正極995及びセパレータ996からなる積層の積層数は、必要な容量と体積に応じて適宜設計すればよい。
円筒型の二次電池と同様に、負極994は端子997及び端子998の一方を介して負極タブ(図示せず)に接続され、正極995は端子997及び端子998の他方を介して正極タブ(図示せず)に接続される。その他、安全弁機構等の周辺構造は、円筒型の二次電池に準ずる。
以上のように二次電池として、コイン型、ラミネート型、円筒型及び角型の二次電池を示したが、その他様々な形状の二次電池を用いることができる。また、正極と負極とセパレータとが複数積層された構造や、正極と負極とセパレータとが捲回された構造であってもよい。
次に、バッテリーの一例であるリチウムイオンキャパシタについて説明する。
リチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタ(EDLC。Electric Double Layer Capacitorの略)の正極に、炭素材料を用いたリチウムイオン二次電池の負極を組み合わせたハイブリッドキャパシタであり、正極と負極の蓄電原理が異なる非対称キャパシタである。正極が電気二重層を形成し物理的作用により充放電を行うのに対して、負極はリチウムの化学的作用により充放電を行う。この負極活物質である炭素材料等に予めリチウムを吸蔵させた負極を用いることで、従来の負極に活性炭を用いた電気二重層キャパシタに比べ、エネルギー密度を飛躍的に向上させている。
リチウムイオンキャパシタは、リチウムイオン二次電池の正極活物質層に代えて、リチウムイオン及びアニオンの少なくとも一つを可逆的に担持することができる材料を用いればよい。このような材料として、例えば活性炭、導電性高分子、ポリアセン系有機半導体(PAS。PolyAcenic Semiconductorの略)等が挙げられる。
リチウムイオンキャパシタは、充放電の効率が高く、急速充放電が可能であり、繰り返し利用による寿命も長い。
このようなリチウムイオンキャパシタに対して、本発明の一態様に係るバッテリーの駆動方法に用いることができる。これにより不可逆容量の発生を抑制し、サイクル特性を向上させたバッテリーを実現することができる。
次に、電気回路等を有するバッテリーについて説明する。
図9は、上述した角型の二次電池に電気回路等を設けたバッテリーの例を示す図である。図9(A)及び(B)に示すバッテリー6600は、電池缶6604の内部に上述した捲回体6601を収納したものである。捲回体6601は、端子6602及び端子6603を有し、電池缶6604の内部で電解液に含浸される。端子6603は電池缶6604に接し、端子6602は、絶縁材などを用いることにより電池缶6604から絶縁する構成としてもよい。電池缶6604は、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用いることができる。
さらに、図9(B)に示すバッテリー6600に電気回路等を設けることができる。図9(C)及び(D)は、バッテリー6600に、電気回路等を設けた回路基板6606、アンテナ6609、アンテナ6610、ラベル6608を設けた例を示す図である。
回路基板6606は、電気回路6607、端子6605等を有する。回路基板6606としては、例えばプリント基板(PCB)を用いることができる。プリント基板を回路基板6606として用いた場合、プリント基板上に抵抗素子、コンデンサ等の容量素子、コイル(インダクタ)、半導体集積回路(IC)などの電子部品を実装し結線して電気回路6607を形成することができる。電子部品としてはこれらの他に、サーミスタ等の温度検出素子、ヒューズ、フィルタ、水晶発振器、EMC対策部品等、種々の部品を実装することができる。
これらの電子部品によって形成された電気回路6607は、例えばバッテリー6600の過充電監視回路、過放電監視回路、過電流に対する保護回路等として機能させることができる。
回路基板6606が有する端子6605は、端子6602、端子6603、アンテナ6609、アンテナ6610、及び電気回路6607に接続される。図9(C)及び(D)においては5つの端子を示しているが、これに限らず、任意の端子数とすればよい。端子6605を用いてバッテリー6600の充放電を行う他、バッテリー6600を搭載する電気機器との信号の授受を行うことができる。
アンテナ6609及びアンテナ6610は、例えばバッテリーの外部との電力の授受、信号の授受を行うために用いることができる。アンテナ6609及びアンテナ6610の一方又は双方を上述した電気回路6607に電気的に接続することで、電気回路6607により外部との電力の授受又は信号の授受を制御することができる。あるいは、アンテナ6609及びアンテナ6610の一方又は双方を端子6605に電気的に接続することで、バッテリー6600を搭載する電気機器の制御回路により外部との電力の授受又は信号の授受を制御することもできる。
なお、図9(C)及び(D)では2種類のアンテナを設けたバッテリー6600の例であるが、アンテナは複数種設けてもよく、あるいはアンテナを設けない構成としてもよい。
図9(C)及び(D)においては、アンテナ6609及びアンテナ6610がコイル形状である場合を示すが、これに限られず、例えば線状、平板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。
なお、無線による電力の授受(非接触電力伝送、無接点電力伝送あるいはワイヤレス給電などともいう)には、電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電波方式等を用いることができる。
アンテナ6609の線幅は、アンテナ6610の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ6609により受電する電力量を上げることができる。
また、アンテナ6609及びアンテナ6610と、バッテリー6600との間に層6611を有する。層6611は、例えば捲回体6601による電界又は磁界の遮蔽を防止することができる機能を有する。この場合、層6611には、例えば磁性体を用いることができる。あるいは、層6611を遮蔽層としてもよい。
なお、アンテナ6609及びアンテナ6610は、外部との電力の授受又は信号の授受とは異なる用途として用いることができる。例えば、バッテリー6600を搭載する電気機器がアンテナを有さない機器である場合、アンテナ6609及びアンテナ6610を用いて電気機器への無線通信を実現することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。具体的には、本実施の形態で得られるバッテリーの充電中に、生成物(代表的にはウィスカー状のリチウムなど)が形成される電流方向とは逆方向に流れる電流(逆パルス電流)を流して生成物を溶去することでバッテリーの劣化を防止、または劣化を回復させるとともに、バッテリーの充放電性能を最大限に引き出し、バッテリーの充放電性能を長時間維持する。また、製造後のバッテリーの充電中に逆パルス電流を流すことでバッテリーの製造後には問題なく充放電でき、良品として出荷しても、その後、何らかの原因により、急にバッテリーとして機能しなくなってしまう不良品をなくすことができる。
(実施の形態4)
本発明の一態様に係るバッテリーの駆動方法は、様々な電気機器の電源に対して用いることができる。また、本実施の形態で得られるバッテリーの充電中に逆パルス電流を複数回流すことでメンテナンスフリーのバッテリーを実現することもできる。
ここで電気機器とは、電気の力によって作用する部分を含む工業製品をいう。電気機器は、家電等の民生用に限られず、業務用、産業用、軍事用等、種々の用途のものを広くこの範疇とする。本発明の一態様に係るバッテリーの駆動方法を利用した電気機器としては、例えば、テレビやモニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型やノート型等のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、CD(Compact Disc)プレーヤやデジタルオーディオプレーヤ等の携帯型又は据置型の音響再生機器、携帯型又は据置型のラジオ受信機、テープレコーダやICレコーダ(ボイスレコーダ)等の録音再生機器、ヘッドホンステレオ、ステレオ、リモートコントローラ、置き時計や壁掛け時計等の時計、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯電話機、自動車電話、携帯型又は据置型のゲーム機、歩数計、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、マイクロフォン等の音声入力機器、スチルカメラやビデオカメラ等の写真機、玩具、電気シェーバ、電動歯ブラシ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、加湿器や除湿器やエアコンディショナ等の空気調和設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、電動工具、煙感知器、補聴器、心臓ペースメーカ、携帯型X線撮影装置、放射線測定器、電気マッサージ器や透析装置等の健康機器や医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ガスメータや水道メータ等の計量器、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、自動販売機、自動券売機、現金自動支払機(CD。Cash Dispenserの略)や現金自動預金支払機(ATM。AutoMated Teller Machineの略)、デジタルサイネージ(電子看板)、産業用ロボット、無線用中継局、携帯電話の基地局、電力貯蔵システム、電力の平準化やスマートグリッドのためのバッテリー等の産業機器が挙げられる。
なお、上記電気機器は、消費電力のほぼ全てを賄うための主電源に対して、本発明の一態様に係るバッテリーの駆動方法を用いることができる。また、上記電気機器は、主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができる無停電電源に対して、本発明の一態様に係るバッテリーの駆動方法を用いることができる。あるいは上記電気機器は、主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して、電気機器への電力の供給を行うための補助電源の充電中に、逆パルス電流を複数回流すバッテリーの駆動方法を適用することができる。補助電源として、本発明の一態様に係るバッテリーの駆動方法を用いる場合、劣化が回復するため、メンテナンスフリーを実現することができ、定置型電源、または蓄電設備におけるメンテナンス費用や手間を省くことができる。定置型電源、または蓄電設備におけるメンテナンス費用は莫大であり、本実施の形態で得られるバッテリーの駆動方法により、大幅に維持費用を抑えることができる顕著な効果が得られる。
電気機器の一例として携帯情報端末の例について、図10を用いて説明する。
図10(A)は、携帯情報端末8040の正面及び側面を示した斜視図である。携帯情報端末8040は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。携帯情報端末8040は、筐体8041の正面に表示部8042、カメラ8045、マイクロフォン8046、スピーカ8047を有し、筐体8041の左側面には操作用のボタン8043、底面には接続端子8048を有する。
表示部8042には、表示モジュール又は表示パネルが用いられる。表示モジュール又は表示パネルとして、有機発光素子(OLED)に代表される発光素子を各画素に備えた発光装置、液晶表示装置、電気泳動方式や電子粉流体方式等により表示を行う電子ペーパ、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)、PDP(Plasma Display Panel)、SED(Surface Conduction Electron−emitter Display)、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、カーボンナノチューブディスプレイ、ナノ結晶ディスプレイ、量子ドットディスプレイ等が用いることができる。
図10(A)に示す携帯情報端末8040は、筐体8041に表示部8042を一つ設けた例であるが、これに限らず、表示部8042を携帯情報端末8040の背面に設けてもよいし、折り畳み型の携帯情報端末として、二以上の表示部を設けてもよい。
また、表示部8042には、指やスタイラス等の指示手段により情報の入力が可能なタッチパネルが入力手段として設けられている。これにより、表示部8042に表示されたアイコン8044を指示手段により簡単に操作することができる。また、タッチパネルの配置により携帯情報端末8040にキーボードを配置する領域が不要となるため、広い領域に表示部を配置することができる。また、指やスタイラスで情報の入力が可能となることから、ユーザフレンドリなインターフェースを実現することができる。タッチパネルとしては、抵抗膜方式、静電容量方式、赤外線方式、電磁誘導方式、表面弾性波方式等、種々の方式を採用することができるが、表示部8042は湾曲するものであるため、特に抵抗膜方式、静電容量方式を用いることが好ましい。また、このようなタッチパネルは、上述の表示モジュール又は表示パネルと一体として組み合わされた、いわゆるインセル方式のものであってもよい。
また、タッチパネルは、イメージセンサとして機能させることができるものであってもよい。この場合、例えば、表示部8042に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部8042に近赤外光を発光するバックライト又は近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
また、表示部8042にタッチパネルを設けずにキーボードを設けてもよく、さらにタッチパネルとキーボードの双方を設けてもよい。
操作用のボタン8043には、用途に応じて様々な機能を持たせることができる。例えば、ボタン8043をホームボタンとし、ボタン8043を押すことで表示部8042にホーム画面を表示する構成としてもよい。また、ボタン8043を所定の時間押し続けることで、携帯情報端末8040の主電源をオフするようにしてもよい。また、スリープモードの状態に移行している場合、ボタン8043を押すことで、スリープモード状態から復帰させるようにしてもよい。その他、押し続ける期間や、他のボタンと同時に押す等により、種々の機能を起動させるスイッチとして用いることができる。
また、ボタン8043を音量調整ボタンやミュートボタンとし、音出力のためのスピーカ8047の音量の調整等を行う機能を持たせてもよい。スピーカ8047からは、オペレーティングシステム(OS)の起動音等特定の処理時に設定した音、音楽再生アプリケーションソフトからの音楽等各種アプリケーションにおいて実行される音ファイルによる音、電子メールの着信音等様々な音を出力する。なお、図示しないが、音出力をスピーカ8047とともに、あるいはスピーカ8047に替えてヘッドフォン、イヤフォン、ヘッドセット等の装置に音を出力するためのコネクタを設けてもよい。
このようにボタン8043には、種々の機能を与えることができる。図10(A)では、左側面にボタン8043を2つ設けた携帯情報端末8040を図示しているが、勿論、ボタン8043の数や配置位置等はこれに限定されず、適宜設計することができる。
マイクロフォン8046は、音声入力や録音に用いることができる。また、カメラ8045により取得した画像を表示部8042に表示させることができる。
携帯情報端末8040の操作には、上述した表示部8042に設けられたタッチパネルやボタン8043の他、カメラ8045や携帯情報端末8040に内蔵されたセンサ等を用いて使用者の動作(ジェスチャー)を認識させて操作を行うこともできる(ジェスチャー入力という)。あるいは、マイクロフォン8046を用いて、使用者の音声を認識させて操作を行うこともできる(音声入力という)。このように、人間の自然な振る舞いにより電気機器に入力を行うNUI(Natural User Interface)技術を実装することで、携帯情報端末8040の操作性をさらに向上させることができる。
接続端子8048は、外部機器との通信や電力供給のための信号又は電力の入力端子である。例えば、携帯情報端末8040に外部メモリドライブするために、接続端子8048を用いることができる。外部メモリドライブとして、例えば外付けHDD(ハードディスクドライブ)やフラッシュメモリドライブ、DVD(Digital Versatile Disk)やDVD−R(DVD−Recordable)、DVD−RW(DVD−ReWritable)、CD(Compact Disc)、CD−R(Compact Disc Recordable)、CD−RW(Compact Disc ReWritable)、MO(Magneto Optical Disc)、FDD(Floppy Disk Drive)、又は他の不揮発性のソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)デバイスなどの記録メディアドライブが挙げられる。また、携帯情報端末8040は表示部8042上にタッチパネルを有しているが、これに替えて筐体8041上にキーボードを設けてもよく、またキーボードを外付けしてもよい。
図10(A)では、底面に接続端子8048を1つ設けた携帯情報端末8040を図示しているが、接続端子8048の数や配置位置等はこれに限定されず、適宜設計することができる。
図10(B)は、携帯情報端末8040の背面及び側面を示した斜視図である。携帯情報端末8040は、筐体8041の表面に太陽電池8049とカメラ8050を有し、また、充放電制御回路8051、バッテリー8052、DCDCコンバータ8053等を有する。なお、図10(B)では充放電制御回路8051の一例としてバッテリー8052、DCDCコンバータ8053を有する構成について示しており、バッテリー8052には、上記実施の形態で説明した本発明の一態様に係るバッテリーの駆動方法を用いる。
携帯情報端末8040の背面に装着された太陽電池8049によって、電力を表示部、タッチパネル、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池8049は、筐体8041の片面又は両面に設けることができる。携帯情報端末8040に太陽電池8049を搭載させることで、屋外などの電力の供給手段がない場所においても、携帯情報端末8040のバッテリー8052の充電を行うことができる。
また、太陽電池8049としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、非晶質シリコン又はこれらの積層からなるシリコン系の太陽電池や、InGaAs系、GaAs系、CIS系、Cu2ZnSnS4、CdTe−CdS系の太陽電池、有機色素を用いた色素増感太陽電池、導電性ポリマーやフラーレン等を用いた有機薄膜太陽電池、pin構造におけるi層中にシリコン等による量子ドット構造を形成した量子ドット型太陽電池等を用いることができる。
ここで、図10(B)に示す充放電制御回路8051の構成、及び動作についての一例を、図10(C)に示すブロック図を用いて説明する。
図10(C)には、太陽電池8049、バッテリー8052、DCDCコンバータ8053、コンバータ8057、スイッチ8054、スイッチ8055、スイッチ8056、表示部8042について示しており、バッテリー8052、DCDCコンバータ8053、コンバータ8057、スイッチ8054、スイッチ8055、スイッチ8056が、図10(B)に示す充放電制御回路8051に対応する箇所となる。
外光により太陽電池8049で発電した電力は、バッテリー8052を充電するために必要な電圧とするために、DCDCコンバータ8053で昇圧又は降圧される。そして、表示部8042の動作に太陽電池8049からの電力が用いられる際には、スイッチ8054をオンにし、コンバータ8057で表示部8042に必要な電圧に昇圧又は降圧する。また、表示部8042での表示を行わない際には、スイッチ8054をオフにし、スイッチ8055をオンにしてバッテリー8052の充電を行う。
なお、発電手段の一例として太陽電池8049を示したが、これに限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段を用いてバッテリー8052の充電を行ってもよい。また、携帯情報端末8040のバッテリー8052への充電方法はこれに限られず、例えば上述した接続端子8048と電源とを接続して充電を行ってもよい。また、無線で電力を送受信して充電する非接触電力伝送モジュールを用いてもよく、以上の充電方法を組み合わせてもよい。
ここで、バッテリー8052の充電状態(SOC。State Of Chargeの略)が、表示部8042の左上(破線枠内)に表示される。これにより、使用者は、バッテリー8052の充電状態を把握することができ、これに応じて携帯情報端末8040を節電モードと選択することもできる。使用者が省電力モードを選択する場合には、例えば上述したボタン8043やアイコン8044を操作し、携帯情報端末8040に搭載される表示モジュール又は表示パネルや、CPU等の演算装置、メモリ等の構成部品を省電力モードに切り換えることができる。具体的には、これらの構成部品のそれぞれにおいて、任意の機能の使用頻度を低減し、停止させる。また、充電状態に応じて設定によって自動的に省電力モードに切り替わる構成とすることもできる。また、携帯情報端末8040に光センサ等の検出手段を設け、携帯情報端末8040の使用時における外光の光量を検出して表示輝度を最適化することで、バッテリー8052の電力の消費を抑えることができる。
また、太陽電池8049等による充電時には、図10(A)に示すように、表示部8042の左上(破線枠内)にそれを示す画像等の表示を行ってもよい。
さらに、電気機器の一例として蓄電システムの例について、図11を用いて説明する。ここで説明する蓄電システム8100は、蓄電システムとして家庭で用いることができる。また、ここでは一例として家庭用の蓄電システムについて説明するが、これに限られず、業務用として又はその他の用途で用いることができる。
図11(A)に示すように、蓄電システム8100は、系統電源8103と電気的に接続するためのプラグ8101を有する。また、蓄電システム8100は、家庭内に設けられた分電盤8104と電気的に接続する。
また、蓄電システム8100は、動作状態等を示すための表示パネル等8102などを有していてもよい。表示パネルはタッチスクリーンを有していてもよい。また、表示パネルの他、主電源のオンオフを行うためのスイッチや蓄電システムの操作を行うためのスイッチ等を有していてもよい。
なお、図示しないが、蓄電システム8100を操作するために、蓄電システム8100とは別に、例えば室内の壁に操作スイッチを設けてもよい。あるいは、蓄電システム8100と家庭内に設けられたパーソナルコンピュータ、サーバ等と接続し、間接的に蓄電システム8100を操作してもよい。さらに、スマートフォン等の情報端末機やインターネット等を用いて蓄電システム8100を遠隔操作してもよい。これらの場合、蓄電システム8100とその他の機器とは有線により又は無線により通信を行う機構を、蓄電システム8100に設ければよい。
図11(B)は、蓄電システム8100の内部を模式的に示した図である。蓄電システム8100は、複数のバッテリー群8106とBMU(Battery Management Unit)8107とPCS(Power Conditioning System)8108とを有する。
バッテリー群8106は、バッテリー8105を複数並べて接続したものである。系統電源8103からの電力を、バッテリー群8106に蓄電することができる。複数のバッテリー群8106のそれぞれは、BMU8107と電気的に接続されている。
BMU8107は、バッテリー群8106が有する複数のバッテリー8105の状態を監視及び制御し、またバッテリー8105を保護することができる機能を有する。具体的には、BMU8107は、バッテリー群8106が有する複数のバッテリー8105のセル電圧、セル温度データ収集、過充電及び過放電の監視、過電流の監視、セルバランサ制御、電池劣化状態の管理、電池残量((充電率)State Of Charge:SOC)の算出演算、駆動用バッテリーの冷却ファンの制御、又は故障検出の制御等を行う。なお、これらの機能の一部又は全部は上述のように、バッテリー8105内に含めてもよく、あるいはバッテリー群ごとに当該機能を付与してもよい。また、BMU8107はPCS8108と電気的に接続する。
過充電とは、満充電の状態から更に充電を行うことをいい、過放電とは、動作保障できる容量を超えて放電を更に行うことをいう。例えば、過充電の監視は、規定値(許容値)を超えた電圧にならないように、充電時のバッテリーの電圧を監視することで行うことができる。また、過放電の監視は、規定値(許容値)未満の電圧にならないように、放電時のバッテリーの電圧を監視することで行うことができる。過電流とは、規定値(許容値)を超えた電流のことである。バッテリーの過電流の原因は、バッテリー内での正極と負極のショート、バッテリーへの負荷が大きすぎる場合等がある。過電流の監視は、バッテリーを流れる電流を監視することで行うことができる。
PCS8108は、交流(AC)電源である系統電源8103と電気的に接続され、直流−交流変換を行う。例えば、PCS8108は、インバータや、系統電源8103の異常を検出して動作を停止する系統連系保護装置などを有する。蓄電システム8100の充電時には、例えば系統電源8103の交流の電力を直流に変換してBMU8107へ送電し、蓄電システム8100の放電時には、バッテリー群8106に蓄えられた電力を屋内などの負荷に交流に変換して供給する。なお、蓄電システム8100から負荷への電力の供給は、図11(A)に示すように分電盤8104を介してもよく、あるいは蓄電システム8100と負荷とを有線又は無線により直接行ってもよい。
なお、蓄電システム8100への充電は上述する系統電源8103からに限らず、例えば屋外に設置した太陽発電システムから電力を供給してもよい。
本実施の形態は、他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。