JP6300460B2 - 化合物、および前記化合物を有する光音響イメージング用造影剤 - Google Patents
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本実施形態に係る分岐を有するPEGは、水溶性の高分子であり、タンパク質の血清半減期の増加や免疫原性の低下などの効果を奏する。PEGの分子量は、400以上100000以下の範囲であることが好ましく、20000以上であることがさらに好ましい。分子量が20000以上であれば、EPR(Enhanced Permeability and Retention)効果により、生体内の正常部位に比べて腫瘍部位により多くのPEGを集積させることができると考えられる。また、分子量が20000以上において腎臓からの排泄が抑制されるため、低分子量のPEGに比較して、血中滞留性が長くなることが期待できる。また、PEGの分子量増大に伴い、溶液粘性が増大するため、PEGの分子量は100000以下であることが好ましい。
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本実施形態において近赤外有機色素としては、近赤外波長領域の光を吸収して音響波を発するものであれば特に限定されない。ここで、近赤外波長領域とは、600nm以上1300nm以下の範囲である。
B−B’ (29)
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本実施形態において、化合物は分岐を有するPEGと近赤外有機色素を、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、エポキシ基、グリシジル基、N−サクシイミジルオキシ基、N−スルホサクシイミジルオキシ基、またはN−マレイミドアルキル基のいずれか1つ以上を介して公知のカップリング反応によって結合することによって調製する。特に、アミノ基を介して結合させることが好ましい。分岐を有するPEGの末端などにアミノ基が存在するようにしておき、弱アルカリ性のpH領域において効率的かつ選択的に反応する。前記反応により分岐を有するPEGと結合した近赤外有機色素は、限外濾過法、サイズ排除カラムクロマトグラフィー法等の公知のタンパク質精製法により洗浄、精製することができる。
本実施形態に係る光音響イメージング用造影剤は、凍結乾燥時に使用する添加剤を含んでいてもよい。添加剤の一例としてグルコース、ラクトース、マンニトール、ポリエチレングリコール、グリシン、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウムが挙げられる。添加剤は1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよい。
本実施形態に係る光音響イメージング(Photoacoustic Imaging、以下PAIと略すことがある)用造影剤は、上記化合物と分散媒とを有する。なお、PAIは、光音響トモグラフィー(断層撮影法)を含む概念である。分散媒として例えば、生理食塩水、注射用蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖水溶液が挙げられる。また本実施形態に係るPAI用造影剤は、必要に応じて薬理上許容できる添加物、例えば血管拡張剤などを有していても良い。
本実施形態における捕捉分子とは、腫瘍などの標的部位に特異的に結合する物質、標的部位の周辺に存在する物質に特異的に結合する物質などであり、生体分子や医薬品等の化学物質などから任意に選択することができる。具体的には、抗体、抗体フラグメント、一本鎖抗体などの人工抗体、酵素、生物活性ペプチド、グリコペプチド、糖鎖、脂質、分子認識化合物などが挙げられる。これらの物質は単独で用いることもできるし、あるいは複数を組み合わせて用いることもできる。捕捉分子が化学結合された化合物を用いることで、標的部位の特異的な検出、標的物質の動態、局在、薬効、代謝等の追跡を行うことができる。
生体内に投与された本実施形態に係る化合物を、光音響イメージング装置を用いて検出する方法について説明する。本実施形態に係る化合物を検出する方法は以下の(a)、(b)の工程を有する。但し、本実施形態に係る光音響イメージング方法は、以下に示す工程以外の工程を含んでいても良い。
(a)本実施形態に係る化合物が投与された検体に600nm乃至1300nmの波長領域の光を照射する工程
(b)前記検体内に存在する前記化合物から発生する音響波を検出する工程
本発明の実施例において光音響信号強度は以下のように計測した。
本発明の実施例において腫瘍塊への化合物の移行量の評価は腫瘍移植モデルマウスを用いて行った。腫瘍移植マウスは、マウス大腸がん細胞株(Colon26)をヌードマウス皮下に移植し作製した。腫瘍移植マウスへ造影剤を投与し、光音響イメージングを行った。さらに、比較例として投与1日後における腫瘍移植マウスの蛍光イメージングも実施した。蛍光イメージングはIVIS(登録商標) Imaging Systemを用いて行い、腫瘍部分の関心領域(ROI:Region of Interest)の蛍光強度を計測した。
BALB/c Slc−nu/nuマウスに各種細胞を皮下に移植した腫瘍マウスモデルに対して各種ICG−PEG水溶液を、100μL(ICGとして13nmol)静脈注射することにより腫瘍への集積性を評価した。投与24時間後にマウスを炭酸ガスで安楽死させた後、癌組織をそれぞれ摘出した。癌組織をプラスチックチューブに移し、癌組織の重量に対し1.25倍量の1%TritonX−100水溶液を添加し、プラスチックペッスルを用いてホモジネートした。次いで、癌組織重量の20.25倍量のDMSOを加えて、腫瘍組織中の色素抽出液を調製した。次いで、既知濃度のICG−PEG溶液を前記癌組織のTritonX−100溶液で種々の濃度へ希釈し、この希釈溶液に対し、20.25倍量のDMSOを加えて検量用標準液を調製した。IVIS(登録商標)Imaging System 200 Series(Caliper社製)を用いて、プラスチックチューブの状態で、腫瘍組織中の色素抽出液および検量用標準液の蛍光強度を測定することで癌組織中の色素量(%ID/g)を定量した。
(近赤外有機色素と分岐を有するPEGとが共有結合した化合物の調製)
近赤外有機色素はICG−Sulfo−OSu(Dojindo Laboratories,code:I254、上記式(34)で示される化合物)を用いた。ICG−Sulfo−OSu 1mg(1.25μmol)をDMSO 100μLで溶解させた。一方で、1.5mLプラスチックチューブに各種のPEGを秤量した。50mMカーボネートバッファー(pH9.0)でPEGを溶解させ、NH2濃度を0.625mMとした(表1)。
(化合物の吸収測定)
MB2_40k−ICG、MB3_50k−ICG、MB4_80k−ICG、TB_40k−ICG4、OB_15k−ICG8、OB_40k−ICG8ならびにICG−Glyの溶液中での吸光スペクトル測定を行った。50mMの4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid(HEPES)溶液で希釈し、吸収スペクトルから極大波長(λmax)を測定した。表3にそれぞれの吸収極大波長の結果を示す。
(化合物の血中滞留性の評価)
化合物の血中滞留性を確認するために、各種化合物をヌードマウス尾静脈に投与し化合物の血中残存量を評価した。本実施例で用いた化合物の一覧を表4に示す。化合物の作製方法は実施例1に示した通りである。表4においてkは1000を表す。例えば、5kは5000を表す。
(化合物の腫瘍集積性)
化合物の腫瘍集積性を評価するために、Colon26細胞株を移植した腫瘍移植マウスに対して、造影剤を尾静脈に投与した。投与量は色素量として32nmolとした。そして、腫瘍移植マウスへ造影剤を投与1日後における腫瘍集積性を光音響イメージングと蛍光により評価した。マウスの光音響イメージングは市販の光音響イメージング装置(Nexus128,Endra.Inc.製)を造影剤の投与前と投与1日後に実施した。測定波長は797nmとした。そして、投与前に対する投与1日後の相対光音響信号強度を算出した。マウスの腫瘍集積量評価は蛍光を用いて次のように行った。投与24時間後にマウスを炭酸ガスで安楽死させた後、腫瘍組織を摘出した。腫瘍組織をプラスチックチューブに移し、腫瘍組織の重量に対し1.25倍量の1% TritonX−100水溶液を添加し、プラスチックペッスルを用いてホモジネートした。次いで、腫瘍組織重量の20.25倍量のジメチルスルホキシド(DMSO)を加えた。IVIS(登録商標) Imaging System 200Series(CALIPER社製)を用いて、プラスチックチューブの状態で、ホモジネート溶液の蛍光強度を測定することで腫瘍組織中の色素量を定量した。腫瘍組織の単位重量あたりの、投与量に対する腫瘍組織への色素移行量の割合(%injected dose: %IDと略す)を、化合物の腫瘍集積量(%ID/g)として算出した。表7にその結果を示した。
(PEGへの捕捉分子(Affibody(登録商標))の修飾)
本実施例で用いた分岐PEGは、ジマレイミド分岐状PTE2−200MA2(日油社製、MW20000)、ジマレイミド分岐状PTE2−400MA2(日油社製、MW40000)である。
捕捉分子を有するPEGについて表面プラズモン共鳴法(SPR)によって、標的分子であるHER2に対する結合性を評価した。SPRはProteon(登録商標)XPR36(バイオラッドラボラトリーズ社製)を用いて測定した。Recombinant Human ErbB2/Fc Chimera(R&D Systems社製)を酢酸バッファー(pH5.0)に溶解させ、GLMセンサーチップ表面のカルボキシル基へのアミンカップリングにより固定化した。固定化量は、約3000RU(Resonance Unit)であった。次に、捕捉分子を有するPEGを0.005%のTween20を含むリン酸バッファー(pH7.4)で種々の濃度へ希釈した後、流速50μL/分でフローセルへ注入した。測定時間は、注入時間(結合)120秒、注入停止後経過時間(解離)120秒であった。結合速度論解析実験においては、1:1ラングミュアフィッティングモデルを用いてセンサーグラムを分析した。算出された結合解離定数(KD)を表8にまとめた。いずれのサンプルでもHER2に対する結合性が確認された。
腫瘍集積性の評価においては、雌の非近交系BALB/c Slc−nu/nuマウス(購入時6週齢)(日本エスエルシー株式会社)を用いた。マウスに担癌させる前の1週間、標準的な食餌、寝床を用い、自由に食餌および飲料水を摂取できる環境下でマウスを順応させた。イメージング実験の約1週間前に1x106個のColon26マウス大腸癌細胞(理化学研究所)を、マウスの右肩および右腿に、1x106個のHER2遺伝子を人工的に導入したColon26マウス大腸癌細胞をマウスの左肩および左腿にそれぞれ皮下注射した。実験時までに、腫瘍は全て定着しており、マウスの体重は17〜22gであった。担癌させたマウスに捕捉分子を有するPEGまたは、MB3_50k−ICGを、200μL(ICGとして13nmol)を静脈注射した。投与24時間後にマウスを炭酸ガスで安楽死させた後、癌組織をそれぞれ摘出した。癌組織をプラスチックチューブに移し、癌組織の重量に対し1.25倍量の1%TritonX―100水溶液を添加し、プラスチックペッスルを用いてホモジネートした。次いで、癌組織重量の20.25倍量のDMSOを加えて、腫瘍組織中の色素抽出液を調製した。一方で、捕捉分子を有するPEGを投与していない担癌させたマウスから癌組織を摘出した。癌組織をプラスチックチューブに移し、癌組織の重量に対し1.25倍量の1%TritonX―100水溶液を添加し、プラスチックペッスルを用いてホモジネートすることで、癌組織のTritonX―100溶液を調製した。次いで、既知濃度の捕捉分子を有するPEG溶液を、前記癌組織のTritonX―100溶液で種々の濃度へ希釈し、この希釈溶液に対し、20.25倍量のDMSOを加えて検量用標準液を調製した。IVIS(登録商標)Imaging System 200 Series(CALIPER)を用いて、プラスチックチューブの状態で、腫瘍組織中の色素抽出液および検量用標準液の蛍光強度を測定することで癌組織中の色素量を定量した。
Claims (5)
- 下記式(40)乃至(45)のいずれかで示される化合物。
上記式(40)において、nは10以上2500以下の整数であり、
上記式(41)において、n、mはそれぞれ独立に10以上2500以下の整数であり、
上記式(42)において、m、lはそれぞれ独立に10以上2500以下の整数であり、
上記式(43)において、nは10以上2500以下の整数であり、qは1乃至5の整数であり、
上記式(44)において、nは10以上2500以下の整数であり、qは1乃至5の整数であり、
上記式(45)において、nは10以上2500以下の整数であり、qは1乃至5の整数である。 - 腫瘍の造影に用いられることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- リンパ節の造影に用いられることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物と分散媒とを有する光音響イメージング用造影剤。
- 添加剤をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の光音響イメージング用造影剤。
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