以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態には、変形例を含めて同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。そして、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る作業車両をトラクタ1として説明する。図1は、実施形態に係る作業車両としてのトラクタ1の平面図であり、図2は、トラクタ1の一部を省略して示す側面図である。また、図3は、トラクタ1の動力伝達経路を示す説明図であり、図4Aは、トラクタ1の制御ブロック図、図4Bは、コントローラ30の説明図である。
トラクタ1は、圃場等で作業を行う作業車両であり、図1および図2に示すように、機体2の左右側それぞれに、操舵用の車輪として設けられた前輪4と、駆動用の車輪として設けられた後輪5とを備える。機体2の前部に設けられたボンネット6内には、エンジン7(図3を参照)が搭載され、かかるエンジン7からの出力は、動力伝達機構3(図3を参照)を介して左右の後輪5,5へ伝達される。また、機体2の後部には、ロータリ(図示省略)などの作業機を装着可能なリヤPTO(Power Take−Off)軸11が配設される(図3を参照)。
動力伝達機構3は、図3に示すように、作動油を用いる油圧無段変速装置8と、機械的な機構を用いて変速する副変速装置9とを備える。すなわち、動力伝達機構3は、エンジン7で発生した動力を、油圧無段変速装置8および副変速装置9で適宜減速(変速)して、デフケース10を介して後輪5に伝達する。こうして、後輪5は、伝達された動力によって駆動される。
油圧無段変速装置8は、HST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機であり、詳しくは後述するが、エンジン7からの駆動力を後輪5に伝達することができる。なお、以下では、油圧無段変速装置についてHSTと記す場合もある。
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、エンジン7から動力が伝達される後輪駆動軸51に後輪5を取付けており、後輪5のみが駆動する二輪駆動としている。しかし、トラクタ1としては、エンジン7で発生しかつ油圧無段変速装置8および副変速装置9で減速した動力を、さらに前輪4にも伝達することで四輪駆動とすることもできる。そして、四輪駆動状態と二輪駆動状態とを切り換え可能に構成することもできる。なお、二輪駆動としては、左右の後輪5,5ではなく左右の前輪4,4にエンジン7の動力を伝達する構成であってもよい。
また、機体2の中央部には、図1および図2に示すように、運転者がトラクタ1を操縦する際に座る操縦席12が設けられ、操縦席12の前方には、前輪4の操舵に用いるステアリングハンドル13が設けられる。ステアリングハンドル13は、ハンドルポスト131の上端側に回動可能に取付けられる。
また、ハンドルポスト131には、トラクタ1の走行時における進行方向を前進と後進とで切り換える前後進切換レバー27が配設される。
前後進切換レバー27は、トラクタ1を前進させる場合には前側に倒し、トラクタ1を後進させる場合には後ろ側に倒すことにより、エンジン7からの動力による機体2の前進、後進を切り換えることができる。また、前後進切換レバー27は、前進位置と後進位置との間に中立位置を有しており、この中立位置は、トラクタ1が前方にも後方にも進まないようにすることができる。前後進切換レバー27は、前後進レバーセンサ322(図4Aを参照)により、操作位置(前進位置、後進位置、中立位置)が検出される。
ハンドルポスト131の下方側、すなわち、操縦席12に運転者が座った場合における運転者の足元付近には各種ペダルが配設される。すなわち、図1に示すように、操縦席12の左前方にはクラッチペダル20が配設され、右前方には、ペダル操作としての踏み込み操作に応じて後輪5を制動するブレーキペダル21が配設される。本実施形態では、ブレーキペダル21は、後輪5を制動させるための踏み込み操作をペダル操作として受けるものとしたが、ブレーキペダル21は、左右の前輪4と左右の後輪5とのうちの少なくとも一つを制動させるために踏み込み操作を受けるものであってもよい。
また、機体2の走行速度を変更する変速ペダル22がブレーキペダル21と並ぶように設けられる。本実施形態に係るトラクタ1の走行速度は、変速ペダル22の踏込量に応じてエンジン7の回転数を調整するとともに、油圧無段変速装置8のトラニオン軸87(図3を参照)を回動して設定走行速度となるように制御される。
すなわち、トラクタ1は、図4Aおよび図4Bに示すように、広義における変速制御装置として機能するコントローラ30を備える。コントローラ30は、CAN(Controller Area Network)通信で制御信号の交信を行う各種のエンジンコントローラ(ECU:Electronic Control Unit)31,32,33を備えており、走行系をはじめ、エンジン7、作業機昇降系の動作制御がなされる。本実施形態における走行系エンジンコントローラ32が制御部に相当する。
詳しくは後述するが、例えば、走行系エンジンコントローラ32は、変速ペダル22の踏込操作によってエンジン7の回転数が最大となる第1のペダル位置P1よりも浅い位置に設定された第2のペダル位置P2にて、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度が最大となるように制御する(図9を参照)。なお、以下では、エンジンコントローラをECUと記す場合がある。
ここで、変速ペダル22について、図5を参照しながら説明を加える。図5は、本実施形態に係るトラクタ1の変速ペダル22を示す説明図である。変速ペダル22は、図5に示すように、機体2に取付られるブラケット220の上面側において、ペダル本体221の基端が枢支部222に回動自在に連結される。運転者のペダル操作により、ペダル本体221は解放位置Aから最大踏込位置Bまで回動することになる。ペダル本体221の下方位置にはストッパ223が設けられており、解放位置Aから踏み込まれたペダル本体221は、最大踏込位置Bにおいてストッパ223に当接して回動が規制される。
また、ブラケット220の下面側には、ペダル本体221を解放位置Aになるように付勢するスプリング224が設けられる。そして、このスプリング224の反対側には、運転者による変速ペダル22のペダル操作(踏み込み操作)を検出する変速ペダルセンサ321(図4Aを参照)が設けられる。変速ペダルセンサ321は、変速ペダル22(ペダル本体221)の踏込量に応じたぺダル位置を検出するペダル位置検出部に相当し、検出結果を走行系ECU32に出力する。ところで、本実施形態においては、この変速ペダルセンサ321の回動支点(不図示)は、ペダル本体221の回動支点となる枢支部222とはオフセットされている。
また、図1に示すように、トラクタ1の操縦席12の左側には、走行時における変速に関する操作を行う主変速レバー300と、副変速レバー310と、トラクタ1の後部に装着される作業機を駆動するPTO軸11の駆動断続を行うPTOクラッチレバー320とが配設される。
主変速レバー300は、トラクタ1の速度を、例えば1速から8速までに設定することができ、その設定速度になるように、走行系エンジンECU32がエンジン7の回転数を調整するとともに、油圧無段変速装置8のトラニオン軸87の角度(トラニオン軸角度)を調整する。
副変速レバー310は、機体2の走行速度を低速、中速、高速の3段に副変速装置9(図3参照)を変速するためのものである。副変速装置9は、低速、中速、高速の状態で互いにギヤ比が異なるように、選択的に設定可能な複数のギヤ比を有する。なお、副変速レバー310が変速する低速および中速は、圃場内で作業を行う際に走行する場合に適し、高速は、圃場間を移動する際に路上走行する場合に適する。
また、操縦席12の右側には、機体2の後部に連結した作業機の高さを調整するポジションレバー330が配設される。ポジションレバー330の操作位置は、ポジションレバーセンサ331(図4A参照)により検出され、このポジションレバーセンサ331は、検出結果を作業機昇降系ECU33に出力する。
ここで、動力伝達機構3について、図3を参照しながら説明を加える。動力伝達機構3は、エンジン7の後段側に配設されたミッションケース(不図示)内に設けられる。エンジン7の出力軸の回転がクラッチペダル20(図1)で断続されるメインクラッチ(不図示)を介してダンパ34を経由して油圧無段変速装置8の入力軸80に伝動される。すなわち、油圧無段変速装置8には、エンジン7の動力が入力される。
油圧無段変速装置8は、可変容量型の油圧ポンプ81と固定容量型の油圧モータ82で構成され、油圧ポンプ81の可動斜板83の傾きを変えることで油圧モータ82の回転を変更する。可動斜板83の傾きは、変速ペダル22および主変速レバー30や前後進切換レバー27の動きを検出して作動する油圧シリンダなどのアクチュエータ84によって変更されて、油圧モータ82のモータ出力軸86の回転が変速される。油圧ポンプ81に直接繋がるポンプ出力軸85の回転は入力軸80の回転数と同じである。
ポンプ出力軸85の回転は、PTOクラッチ35を介してPTO軸11に伝達され、最終的にリヤPTO軸11RやミッドPTO軸11Mによりミッションケースの外部へ取り出される。かかる構成により、エンジン7の動力を外部に取り出して、リヤPTO軸11Rに連動連結したロータリーやミッドPTO軸11Mに連動連結したモアなどの作業機を駆動することができる。
また、油圧モータ82のモータ出力軸86は、副変速装置9を経て、デフケース10を介して後輪5,5を駆動する。なお、モータ出力軸86の回転数は、HST出力軸回転センサ323(図4A参照)により検出される。HST出力軸回転センサ323は、検出結果を走行系ECU32に出力する。
油圧無段変速装置8の可動斜板83は、図示しないトラニオンアームに連動連結したトラニオン軸87に連結される。こうして、トラニオン軸87およびトラニオンアームと可動斜板83とは、互いに連動することになる。すなわち、本実施形態に係る油圧無段変速装置8は、トラニオン軸角度が変更されることにより、エンジン7から入力された動力を変速して出力する。
ところで、トラニオン軸87およびトラニオンアームの回動角度(位置)と可動斜板83の傾斜角度とは、互いに対応して変化する。そこで、本実施形態では、トラニオンアームの回動角を検出するトラニオンアーム角度センサを設けてトラニオン軸角度を検出するようにしている。
また、動力伝達機構3は、トラニオンアームおよびトラニオン軸87を中立位置に保持する中立保持機構(不図示)を備える。
制御部を構成するエンジンECU31、走行系ECU32および作業機昇降系ECU33は、それぞれ、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)を有する。コントローラ30は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、トラクタ1の各部を制御する。
図4Aに示すように、エンジンECU31には、アクセルセンサ311およびエンジン回転センサ312が接続される。アクセルセンサ311は、変速ペダル22の回動角度を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。エンジン回転センサ312は、エンジン7の回転数を検出し、検出結果をコントローラ30に出力する。
そして、エンジンECU31は、燃料高圧ポンプ313へのレール圧と、高圧インジェクタ314への噴射信号を出力する。この高圧インジェクタ314の噴射タイミングをアクセルセンサ311の検出値を基にエンジンECU31によって調節することにより、エンジン7の出力回転数を任意に調節することができる。
走行系ECU32には、前述の変速ペダルセンサ321、前後進レバーセンサ322、HST出力軸回転センサ323、および車速センサ324が接続される。車速センサ324は、後輪5の軸の回転から機体2の走行速度を検出し、検出結果を走行系ECU32に出力する。
また、走行系ECU32は、HST前進比例圧力ソレノイド(HST前進比例圧力sol)328への前進出力信号と、HST後進比例圧力ソレノイド(HST後進比例圧力sol)329への後進出力信号等を出力する。すなわち、制御部を構成する走行系ECU32は、変速ペダルセンサ321(ペダル位置検出部)の検出値に基づき、エンジン7の回転数および油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度を制御することができる。
さらに、走行系ECU32には、詳しくは後述するが、走行モード切替スイッチ325、エンジン回転セットダイヤル326およびトラニオン軸角度セットダイヤル327が接続される。
作業機昇降系ECU33には、前述のポジションレバーセンサ331と、リフトアームポジションセンサ332とが接続される。リフトアームポジションセンサ332は、リフト位置信号を検出し、検出結果を作業機昇降系ECU33に出力する。そして、作業機昇降系ECU33は、図示しない油圧シリンダのメイン上昇ソレノイド(メイン上昇sol)333へ上昇信号を出力するとともに、メイン下降ソレノイド(メイン下降sol)334へ下降信号を出力する。
本実施形態に係るトラクタ1は、上述してきた構成を有するものであり、以下にその作用について説明する。図6は、変速ペダル22の操作量とエンジン7の回転数との関係を示すエンジン回転指示特性図である。また、図7は、変速ペダル22の操作量と油圧無段変速装置8に印加される駆動電流との関係を示す開度指示特性図、図8は、油圧無段変速装置8の出力軸回転数と駆動電流値との関係を示す説明図である。
図6に示すエンジン回転指示特性図では、横軸はペダル操作量となる踏込量を、縦軸はエンジン回転数を示す。横軸におけるAは、例えば、図5におけるペダル解放位置Aに相当し、Bは図5におけるペダル最大踏込位置Bに相当する。また、変速ペダル22の踏込量(操作量)は、踏み込んだときの変速ペダル22のペダル開度の割合と等価である。ペダル解放位置Aから踏込側にかけてはペダル遊び領域Cが設けられる。なお、この遊び領域Cでは、エンジン7の低速アイドル回転保持位置と重なっている。
図示するように、本実施形態に係るトラクタ1のエンジン回転数は、変速ペダル22の踏込量により、基本的には線形に変化することが分かる。なお、エンジン回転数としては、必ずしも厳密に線形に変化しなくても構わない。例えば、緩やかに二次曲線的な変化をするような構成であってもよい。
図7に示す開度指示特性図では、横軸はペダル操作量となる踏込量を、縦軸は油圧無段変速装置8に印加される駆動電流を示す。横軸におけるAは、例えば、図5におけるペダル解放位置Aに相当し、Bは図5におけるペダル最大踏込位置Bに相当する。ここで、解放位置Aを示す変速ペダルセンサ321の検出値は、予め初期値として走行系ECU32に記憶されている。
ペダル解放位置Aから踏込側にかけて、HST中立領域Dが設けられる。このHST中立領域Dは、本実施形態における油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度が中立となる領域となる。かかるHST中立領域Dの踏込側に駆動開始ポイント電流が印加される開始位置Eが設定される。すなわち、HST中立領域Dよりも変速ペダル22の踏込位置側から油圧無段変速装置8は始動することになる。さらに変速ペダル22を踏み込んでいくと、駆動電流は増加していくが、変速ペダル22の回動軸と変速ペダルセンサ321の回動軸がオフセットされた位置に設定されていることなどに起因して、ペダル操作量と駆動電流の比は一定ではなく、変化する。こうして、変速ペダル22が踏み込まれると、走行系ECU32は、油圧無段変速装置8の回転ゼロから曲線的に駆動電流を変化させる。
また、ぺダル最大踏込位置Bの手前側において、油圧無段変速装置8の最大開度を指定する最大維持余裕角度Fが設けられる。すなわち、踏込位置における最大維持余裕角度Fが維持される区間では、エンジンHiアイドル状態となる。
図8は、油圧無段変速装置8の出力軸回転数と駆動電流値との関係を示しており、油圧無段変速装置のトラニオン軸87を回転するアクチュエータ84を制御するソレノイド(不図示)に付与する駆動電流とHST出力軸回転センサが検出するHST出力軸回転数との関係を測定した駆動電流値とHST出力軸回転数の測定データが示されている。
測定データについて、設計では実線で示す設計変化線Gを変動する想定であるが、油圧無段変速装置8や機体2毎の特性によって、実際の測定データは変速幅Hと最大回転数幅Jの変動が有る。そこで、本実施形態に係るトラクタ1では、トラクタ1の個体毎に走行速度特性のバラつきが生じないように調整モードを設けている。
そして、調整モードでは、機体2毎に異なる駆動電流値とHST出力軸回転数の測定データを、制御データとして走行系ECU32に記憶するようにしている。
調整モードは、トラクタ1の組み立てが終って最終調整時に、副変速レバー31を中立にして油圧無段変速装置8以降の駆動を断って走行負荷の加わらない状態で行われる。すなわち、先ず、前進側の測定で、増速時のデータとして、駆動電流を油圧無段変速装置8が回転しないゼロから最大回転数Kを得るに充分な最大駆動電流値Mまで変化させて油圧無段変速装置8の出力軸回転数を測定する。
そして、回転開始の駆動開始電流値Nと、規定位置(例えば、最大駆動電流値Mの90%の最大付近駆動電流値Pをとる位置)での増速最大付近回転数Qを制御データとして走行系ECU32に記憶する。なお、最大付近駆動電流値Pをとる規定位置としては、ペダル最大踏込位置B(図6および図7参照)における回転数から100〜200回転程度解放側へ戻した位置に設定することもできる。また、かかる最大付近駆動電流値Pをとる規定位置の解放側に、前述した最大維持余裕角度Fが設けられる(図7参照)。
また、減速時のデータとして、駆動電流を最大駆動電流値Mからゼロまで変化させて減速最大付近回転数Rと駆動停止電流値Sを制御データとして、例えば走行系ECU32に記憶する。この駆動停止電流値Sは、実際にトラクタ1を走行させて計測することで、正確な値を検出することが出来る。
後進側も前述同様にして、減速側の制御データを走行系ECU32に記憶する。なお、駆動電流を付与して油圧無段変速装置8の回転が出るには僅かのタイムラグがあるために、駆動電流の付与から所定時間経過後の回転数を制御データとするとよい。
なお、変速ペダル22の踏込み深さによる油圧無段変速装置8の回転数は、増速側の駆動開始電流値Nと増速最大付近回転数Q及び減速側の減速最大付近回転数Rと駆動停止電流値Sを用いて演算した制御変化率から算出する駆動電流値をアクチュエータ84に付与することで行うことができる。
このように、調整モードを設けることで、例えば、トラクタ1の個体毎の走行特性のばらつきを可及的に抑えることが可能となる。また、調整モードによって、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度を変更する駆動電流の特性を設定することにより、所望する発進位置や加速感が良くなるように変更することが容易にできるようになる。
なお、変速ペダル22の初期値として、解放側では、エンジン7の低速回転が確保された既定のLoアイドル保持ストロークがあるようにして、エンジンLoアイドル調整をおこなう構成とすることが望ましい。これにより、運転者はトラクタ1の微速操作がやりやすくなる。
他方、変速ペダル22の初期値として、踏込側では、図7を参照して説明したように、最大踏込位置でHiアイドルが確保されるように調整するようにするとともに、エンジンHiアイドル状態よりも回転数が低い増速最大付近回転数Qを得る位置を踏込側の基準値とするとよい。これにより、運転者の加速フィーリングが向上する。
また、調整モードにおいて、変速ペダル22の初期値として設定する際には、踏込側の規定位置を設定する場合、エンジン7の回転数を規定回転に固定し、既定の操作で走行系ECU32に記憶させることができる。これにより、設定操作も容易となり、設定結果のバラつきも少なくなる。
なお、調整モードにおいて、変速ペダル22の初期値を記憶する場合、実測などではなく、解放側に設定した規定記憶位置と、踏込側に設定した規定記憶位置とを直線で結んだ一次曲線で変化するように演算によって油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度を決めることもできる。これによれば、簡単な演算式でばらつきの少ない性能が得られる。
ところで、本実施形態に係るトラクタ1の制御部、すなわち走行系ECU32は、図4Bに示すように、複数の走行モードを有する。そして、かかる走行モードを、走行モード切替スイッチ325によって選択可能としている。
すなわち、詳しくは後述するが、図4Bに示すように、走行系ECU32は、第1の走行モードである走行速度調整モードと、第2の走行モードであるエンジン回転数調整モードと、第3の走行モードであるエンジン回転数一定モードとを有し、走行モード切替スイッチ325を接続している。
このように、複数の走行モードを備えることにより、例えば、トラクタ1で作業をする際に、運転者の多様な要望に応えることができる。想定される運転者の要望としては、例えば、PTO軸11の回転を一定で行いたい、走行速度の変化を滑らかな変化特性にしたい、走行速度を一定にしたい、あるいは、PTO軸11の回転と走行速度の関係を一定の比率にしたいなどである。このように、多様な要求をモード選択により満たせるようにすることにより、作業の精度向上を図るとともに、走行時の運転操作性を良好にすることができる。
第1の走行モードである走行速度調整モードは、通常の走行モードである。図9は、本実施形態に係るトラクタ1の変速制御の一例を示す説明図であり、P1で示す位置は、エンジン7の回転数が最大となる第1のペダル位置である。
第1の走行モードにおける変速制御について説明すると、図9(a)に示すように、変速ペダル22の操作量(踏込量)に対し、エンジン7の回転数は略線形に変化する(図6参照)。すなわち、走行系ECU32は、変速ペダル22の踏込操作による踏込量とエンジン7の回転数との比を一定に維持している。
また、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度についても、本来は、変速ペダル22の操作量(踏込量)に対して略線形に変化することが望ましい。
しかし、変速ペダル22と、この変速ペダル22の操作量を実際に検出する変速ペダルセンサ321との間に機械的なずれなどが生じる場合がある。例えば、本実施形態では、図5に示したように、変速ペダル22の回動支点となる枢支部222と変速ペダルセンサ321の回動支点がオフセットされている。
よって、変速ペダル22の踏込操作に対して、変速ペダルセンサ321の検出結果は線形に変化しない場合がある。すなわち、変速ペダル22の踏込量とトラニオン軸角度との比が変動する場合、例えば、変速ペダル22の踏込量の変化率に対するトラニオン軸角度の変化率が変動する場合などがある。具体的には、変速ペダル22の踏込操作に対して、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度の変化が、図9(b)に示すように、二次曲線を描くように変化する場合がある。
このような変化を示す場合、実際の車速についても、図9(c)の破線で示すような二次曲線を描くように変化する。すなわち、運転者が変速ペダル22を踏み込むにつれて、車速変化が急激に変化することになるため、運転操作が難しくなる。
一方、トラニオン軸角度の変化が二次曲線的な変化をする場合、微速運転時や低速運転時においては、速度変化が緩やかなので運転しやすいというメリットもある。そこで、変速ペダル22の踏込操作に対し、少なくともトラニオン軸角度の変化率が変動し、線形ではなく非線形になる構成の動力伝達機構3を備える本実施形態に係るトラクタ1のコントローラ30について、以下のような制御を行うものとした。
すなわち、図9(b)に示すように、変速ペダル22の踏込操作によってエンジン7の回転数が最大となる第1のペダル位置P1よりも浅い位置に設定された第2のペダル位置P2にて、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度が最大となるように制御するのである。つまり、本実施形態に係るトラクタ1の油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度は、変速ペダル22の操作量に対して、図9(b)の実線で示すような変化を示すことになる。
かかる制御を行うようにすると、変速ペダル22の操作量(踏込量)に対し、トラクタ1の車速の変化は、図9(c)の実線で示すように、低速側においては緩やかな変化となる二次曲線状になる。一方、変速ペダル22の操作量(踏込量)が増すにつれて変速ペダル22の変化は線形となり、一次曲線(直線)状に変化する。
なお、操作性に影響するものでなければ、必ずしも厳密な直線状とする必要はない。例えば、変速ペダル22を操作した際に、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度が最大となる第2のペダル位置P2を越えた位置より後は、走行速度は変速ペダル22の操作に応じたエンジン7の回転数にのみ依存することになる。したがって、この場合であっても、やはり変速ペダル22の操作フィーリングは良好となる。
このように、本実施形態では、走行系ECU32は、トラニオン軸角度の変化率を、変速ペダル22の踏込量が浅いほど小さく、踏込量が深くなるにつれて大きくなるように制御している。すなわち、変速ペダル22の操作量について、操作初期は速度変化が小さく、かつ緩やかに増速可能とするとともに、その後の変速ペダル22の操作量については、所定の速度変化で線形に増速されるようにしている。そのため、本実施形態に係るトラクタ1では、微速操作は行いやすく、かつ加速感などにおいて違和感を生じるおそれがなくなる。
図10A〜10Cは、トラクタ1の走行モードをそれぞれ示す説明図である。図10Aは、トラクタ1の走行速度調整モードを示す説明図、図10Bは、トラクタ1のエンジン回転数調整モードを示す説明図、図10Cは、トラクタ1のエンジン回転数一定モードを示す説明図である。なお、図10A〜10Cにおいて、横軸にAで示す位置は、ペダル解放位置を示す(図6、図7を参照)。
本実施形態における第1の走行モード(走行速度調整モード)では、前述したように、車両速度変化が動かし始めは小さく、その後、略既定の速度変化になるようにしていた。しかし、図10Aに示すように、変速ペダル22の踏込操作に対し、走行速度の変化率が若干変化するように調整することもできる。なお、車速の変化率やその変化の程度については適宜設定することができる。
このように、第1の走行モード(走行速度調整モード)では、走行速度が変速ペダル22の操作により速度変化率として指示されるが、例えば、路上走行の場合、その際に走行負荷などが生じても、それに追従してスピード変化が一定になるように、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度とエンジン回転数をそれぞれ変更する。したがって、走行速度変化が所定の変化になるため、運転時の操作性が良好になる。
次に、第2の走行モードであるエンジン回転数調整モードについて説明する。第2の走行モード(エンジン回転数調整モード)は、図10Bに示すように、変速ペダル22の踏込操作に対し、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度は変化せず、エンジン7の回転数は変化する。
かかる第2の走行モードであれば、例えば、圃場の土壌を耕起するためのプラウ作業のように、一定の車速に保持したままで行うことが望ましい作業の場合に、変速ペダル22の踏込操作に対しては、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度は変化せず、エンジン7の回転数のみがペダル操作に応じて変化するため、車速を維持する際の調整を直感的に行え、車速調整が容易に行える。
すなわち、プラウ作業では、均一に土壌を反転させるためには走行速度が一定であることが望ましい。この第2の走行モード(エンジン回転数調整モード)とすれば、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度は固定されており、変速ペダル22の操作がエンジン回転数の変動に直結するため、直感的なペダル操作で速度を一定に保持しやすくなる。例えば、土壌が固いところに差し掛かり、負荷が増大して速度が落ちた場合は、変速ペダル22の操作によってエンジン7の回転を上げればよく、運転者による速度調整も容易である。
また、かかる第2の走行モードでは、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度は固定のまま、変速ペダル22の踏込操作に応じてエンジン7の回転数が略線形に変化する。したがって、第2の走行モードは、エンジン7から動力を取り出すPTO軸11に連結して使用する作業機であって、変速ペダル操作によって出力を変動させることが好ましい作業機による作業にも適している。
かかる第2の走行モードにおいて、トラニオン軸角度の固定は、操作性の良いトラニオン軸角度セットダイヤル327(図1および図4Aを参照)で容易にセットすることができる。このトラニオン軸角度セットダイヤル327は、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度を任意の値にセットすることができ、これを操作することで、油圧無段変速装置8の出力を所望する大きさに維持することができる。
また、かかる第2の走行モードにおいて、変速ペダル22が非操作状態にある解放位置Aでは油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度が中立になるように設定するとよい。すなわち、図10Bに示すように、ペダル解放位置側にHST中立領域D(図7参照)を設けることにより、変速ペダル22が解放されている場合は機体2を停止することができるようになり、誤操作を防止して安全性を確保することができる。図中、Cはペダルの遊び領域を示す(図6参照)。
また、図10Bに示すように、ここでは、油圧無段変速装置8の駆動開始位置とエンジン7の低速側でのアイドル回転保持位置、すなわち機械的な遊び領域Cとが共に重なる領域を持つように設定するとよい。これにより、操作開始時、微速操作がやりやすくなる。さらに、このとき、HST中立領域Dについても、このアイドル回転保持位置および遊び領域Cと略同程度の大きさの領域とするとよい。
なお、図示するように、トラニオン軸角度が、HST中立領域Dからトラニオン軸角度セットダイヤル327でセットした一定の値になるまでは、変速ペダル22の踏込に応じた所定の立ち上がり曲線になるように変化させている。これにより、走り始めなどにおいては、図9(c)で示すように車速が緩やかに変化する微速操作領域が設けられるようになり、変速ペダル22の操作性が向上する。
また、第3の走行モード(エンジン回転数一定モード)は、図10Cに示すように、変速ペダル22の踏込操作に対し、エンジン7の回転数の回転数は変化せず、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度は変化する。
かかる第3の走行モード(エンジン回転数一定モード)では、例えば、芝刈りを行うモア作業などのように、エンジン7の動力をミッドPTO軸11Mから取り出す作業の場合、エンジン回転数が一定の良好な状態で作業することができる。
かかる第3の走行モードにおいて、エンジン7の回転数の固定は、操作性の良いエンジン回転セットダイヤル326(図1および図4Aを参照)で容易にセットすることができる。このエンジン回転セットダイヤル326は、エンジン7の回転数を任意の値にセットすることができ、これを操作することで、エンジン7の出力を所望する一定の大きさに維持することができる。また、図10Cに示すように、ここでは、ペダル解放位置Aにおいてもエンジン7の回転数はセットした値に保持されている。したがって、ミッドPTO軸11Mの回転が常に一定に保持されるため、芝刈り機や草刈り機などを用いるモア作業などでは作業性が向上する。
なお、ここでは、PTO軸をミッドPTO軸11Mとしたが、これに限定されるものではなく、作業機によってはリアPTO軸11Rから動力を取り出すものに適用することもできる。また、エンジン7の回転数や油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度の固定操作はエンジン回転セットダイヤル326やトラニオン軸角度セットダイヤル327のようなダイヤル式ではなく、たとえば、レバー式などとすることもでき、その形態は適宜設計可能である。
図11は、作業車両の変形例として、モア100を装着したトラクタ1の側面図である。モア100は、ミッドPTO軸11Mから動力を得て刈刃が回転するものであるが、例えば芝刈り作業を行う場合、ミッドPTO軸11Mの回転は一定であると良好な作業を行いやすい。モア100を装着した場合、第3の走行モード(エンジン回転数一定モード)にすることにより、エンジン7の回転数は一定であるため、例えば、機体2が停止中であってもモア100を一定回転で作動させることができる。そして、走行速度については、変速ペダル22を操作することで油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度を変更し、容易に速度調整ができる。
これらの走行モード切換操作は、前述したように、例えば操縦席12の近傍に設けられた走行モード切替スイッチ325(図1、図4Aおよび図4Bを参照)により行われる。
上述の各走行モードでの制御を実現するために、走行系ECU32は、例えば、第1の走行モード、第2の走行モードおよび第3の走行モードそれぞれに応じたエンジン7の回転数および油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度が関連付けられた指示値テーブルを有する構成とすることができる。すなわち、走行系ECU32のROM(Read Only Memory)にこれらテーブルが記憶されており、同じく記憶された走行制御プログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行することにより、各モードにおける走行特性が実現される。
このように、エンジン7の回転数および油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度の指示値テーブルを有する構成とすることにより、変速制御が容易に行える。また、変速ペダル22の操作による踏込位置に対し、実際の車速がずれてしまうような場合、そのときの指示値テーブルと、実際のエンジン7の回転数を比較し、実際のエンジン7の回転数が高い場合は、トラニオン軸角度を出力が小さくなる側に変更して所望する指定速度になるように制御することができる。また、指示値テーブルは、多様な条件に応じた複数の指示値テーブルを設けておくことにより、例えば、変速ペダル22の操作による踏込位置に対し、実際の車速がずれてしまうような場合、最適な指示値テーブルを読み出して走行制御することもできる。
なお、上述したように、変速ペダル22の操作による踏込位置に対し、実際の車速がずれてしまうような場合、指示値テーブルを用いるのではなく、車速がずれていることを報知する手段と、運転者がマニュアル操作でエンジン7の回転数を変更するスロットルレバーなどを設ける構成とすることもできる。
(参考例)
ここで、上述してきたトラクタ1は、設計上の機械的な構造によって、変速ペダル22の操作量の変化を変速ペダルセンサ321が線形に検出できず、変速ペダル22の踏込量とトラニオン軸角度との比が変動するものであった。そこで、これを補正する一例について説明する。ここでは、油圧無段変速装置8のトラニオン軸87を駆動するサーボ電流値を所定の特性で変化させるようにした例について説明する。
図12Aは、通常のトラクタの変速ペダルの操作量と変速ペダルの操作量に応じたセンサ値との関係を示す説明図、図12Bは、参考例係る作業車両としてのトラクタの変速ペダルの操作量に応じたセンサ値と油圧無段変速装置のトラニオン軸の駆動サーボ電流値との関係を示す説明図、図12Cは、参考例に係る作業車両としてのトラクタの変速ペダルの操作量と油圧無段変速装置のトラニオン軸角度との関係を示す説明図である。
図12Aに示すように、変速ペダルのセンサ値は、線形ではなく二次曲線状に変化している。その結果、トラニオン軸角度の変化も非線形となっていた(図9(b)を参照)。そこで、かかるセンサ値に対し、図12Bに示す特性を有する駆動サーボ電流値を生成し、これを油圧無段変速装置に印加することで、図12Cに示すように、トラニオン軸角度を線形に変化させることが可能となる。したがって、変速ペダルの踏込操作の始めから終わりに至るまで、変速ペダルの踏込操作に対し、走行速度を線形に変化させやすくなる。
上述してきた実施形態より、以下のトラクタ1(作業車両)の変速制御装置が実現できる。
(1)トラニオン軸角度を変更することでエンジン7から入力された動力を変速して出力する油圧無段変速装置8を有しており、変速ペダル22の踏込量と前記トラニオン軸角度との比が変動するトラクタ1(作業車両)のコントローラ30(変速制御装置)において、変速ペダル22の踏込量に応じたぺダル位置を検出する変速ペダルセンサ321(ペダル位置検出部)と、変速ペダルセンサ321の検出値に基づき、エンジン7の回転数および油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度を制御する走行系ECU32(制御部)とを備え、走行系ECU32は、変速ペダル22の踏込操作によってエンジン7の回転数が最大となる第1のペダル位置P1よりも浅い位置に設定された第2のペダル位置P2にて、前記トラニオン軸角度が最大となるように制御するトラクタ1のコントローラ30。
(2)上記(1)において、走行系ECU32は、前記トラニオン軸角度の変化率を、変速ペダル22の踏込量が浅いほど小さく、前記踏込量が深くなるにつれて大きくなるように制御するトラクタ1のコントローラ30。
(3)上記(1)または(2)において、走行系ECU32は、変速ペダル22の踏込量とエンジン7の回転数との比が一定となるように制御するトラクタ1のコントローラ30。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一つにおいて、走行系ECU32は、変速ペダル22の解放位置Aと、第1のペダル位置P1よりも浅い規定位置(最大駆動電流値Mの90%の最大付近駆動電流値Pを取る位置)とにおける変速ペダルセンサ321の各検出値をそれぞれ初期値として記憶し、該初期値に基づき、前記トラニオン軸角度を変更する駆動電流の特性を設定するトラクタ1のコントローラ30。
(5)上記(4)において、走行系ECU32は、前記規定位置の解放側に、前記トラニオン軸角度を最大に維持する最大維持余裕角度Fが設けられるように前記駆動電流の特性を設定するトラクタ1のコントローラ30。
(6)上記(4)または(5)において、走行系ECU32は、前記初期値として記憶された前記解放位置Aの踏込側に、前記トラニオン軸角度が中立となる中立領域Dが設けられるように前記駆動電流の特性を設定するトラクタ1のコントローラ30。
(7)トラニオン軸角度を変更することでエンジン7から入力された動力を変速して出力する油圧無段変速装置8を有するトラクタ1(作業車両)のコントローラ30(変速制御装置)において、変速ペダル22の踏込量に応じたぺダル位置を検出する変速ペダルセンサ321(ペダル位置検出部)と、変速ペダルセンサ321の検出値に基づき、エンジン7の回転数および油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度を制御する走行系ECU32(制御部)とを備え、走行系ECU32は、変速ペダル22の踏込操作に対し、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度は変化させず、エンジン7の回転数は変化させるエンジン回転数調整モードを有するトラクタ1のコントローラ30。
(8)上記(7)において、エンジン7の出力を外部へ取り出すミッドPTO軸11M(PTO軸)を備え、走行系ECU32は、変速ペダル22の踏込操作に対し、走行速度の変化率が一定となるように前記エンジンの回転数および前記油圧無段変速装置のトラニオン軸角度を調整する走行速度調整モードと、変速ペダル22の踏込操作に対し、エンジン7の回転数は変化させず、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度は変化させるエンジン回転数一定モードとをさらに有するトラクタ1のコントローラ30。
(9)上記(8)において、各モードを切り替える走行モード切替スイッチ325を備え、走行系ECU32は、前記各モードにそれぞれ応じたエンジン7の回転数および油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度の指示値テーブルを有するトラクタ1のコントローラ30。
(10)上記(7)〜(9)のいずれか一つにおいて、走行系ECU32は、前記エンジン回転数調整モードにおいては、変速ペダル22が非操作状態にある解放位置Aで油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度が中立になるように制御するトラクタ1のコントローラ30。
(11)上記(8)〜(10)のいずれか一つにおいて、エンジン7の回転数を一定の値にセットするエンジン回転セットダイヤル326と、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度を一定の値にセットするトラニオン軸角度セットダイヤル327とを備え、コントローラ30は、前記エンジン回転数調整モードでは、エンジン7の回転数を変速ペダル22の操作で変更する一方、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度はトラニオン軸角度セットダイヤル327でセットした値を維持し、前記エンジン回転数一定モードでは、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度は変速ペダル22の操作で変更する一方、エンジン7の回転数はエンジン回転数セットダイヤル326でセットした値を維持するトラクタ1のコントローラ30。
上述してきた実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、表示要素などのスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質など)は、適宜に変更して実施することができる。
例えば、走行系ECU32は、複数の走行モードを有する中で、第1の走行モードの場合に、上記(1)に記したように、変速ペダル22の踏込操作に対するエンジン7の回転数が最大となる第1のペダル位置P1よりも浅い位置に設定された第2のペダル位置P2にて、油圧無段変速装置8のトラニオン軸角度が最大となるように制御することとした。しかし、かかる制御は、複数の走行モードを有さない場合であっても適用することができる。
また、作業車両1は、上述した実施形態及び変形例で用いられている構成や制御等を適宜組み合わせてもよく、または、上述した構成や制御以外を用いてもよい。