以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
(実施の形態1)
図1は本発明に係る実施の形態1の速度制御装置を備えたトラクタの側面図である。図1に示すように、トラクタ車体10は、前部にエンジン11を搭載し、ステアリングハンドル12によって操向可能の前輪13、及び後輪14等を有して、このエンジン11から伝動して駆動走行する四輪駆動走行の乗用形態としている。
フロア15の後部に運転席16が設けられている。車体10の後端にはロータリ耕耘装置等の各種作業機を装着して昇降するリフトアーム17が設けられて、車体10の前部にはフロントローダ18等の作業機を装着している。
図2はミッションケース部の側面図である。図2に示すように、車体10は、エンジン11の後側にクラッチハウジング19、及びミッションケース20を剛体的に連結し、クラッチハウジング19内の後部にはHST(油圧無段変速装置)21が装着されている。このHST21は、入力軸22をクラッチ軸23から連動し、出力軸24を後部の副変速装置25へ連動して、このHST21のトラニオン軸26の操作によって、中立位置から前進位置と後進位置に切替える前後進切替と、前進及び後進の増減速とを行わせることができる。
図3はHSTの油圧回路図である。図3に示すように、このHST21は、HST油圧回路27に前記入力軸22で駆動されるHST可変油圧ポンプ28と、出力軸24を駆動するHST定量油圧モータ29を有し、トラニオン軸26を回動することによってHST可変油圧ポンプ28の斜板角を変えて、HST油圧回路27内の油圧力を変更してHST油圧モータ29を中立停止状態から正回転の増減速、及び逆回転の増減速の回転に駆動することができる。
図4はHST操作機構の機能を説明する簡略斜視図である。図1、図4に示すように、前記フロア15にはHSTペダル1が前側へ踏み込み自在に設けられて、このHSTペダル1の踏み込み量をポテンショメータ30(ペダルセンサ)が検出し、その検出信号をコントローラ31へ出力する。コントローラ31はその検出結果をモータ32を出力することによって、前記トラニオン軸26及び斜板を作動する。このように、HSTペダル1の踏込量によってHST定量油圧モータ29の駆動回転数を増減することができる。
図5は、コントローラ31への入力信号と、出力信号を示す制御ブロック図である。コントローラ31には上述したように、ペダルセンサ30からの信号、前後進シャトルレバー33からの信号の他に、車速センサ38からの検出信号、後述するモード切替スイッチ40からの信号、速度上限ダイヤルスイッチ41、オートクルーズスイッチ42からの信号なども入力されている。さらに、コントローラ31からはHST用モータ32、モニターランプ43へ制御信号などが出力される。
図6は、コントローラ31の具体的機能を示す機能ブロック図である。図6に示すように、コントローラ31には、通常の走行速度制御を行う通常制御部311と、オートクルーズ走行の速度制御を行うオートクルーズ制御部312と、最大車速変更部313と、メモリ310が設けられている。なお、コントローラ31は、本発明の制御部の一例である。
通常制御部311へは、ペダルセンサ30からの外部信号、モード切替スイッチ40からの外部信号が入力されている。ペダルセンサ30からの信号は、オペレータのペダル1への踏み込み量を表す。モード切替スイッチ40からの信号は、走行モードを切り換えさせる指示を表す。すなわち、メモリ310は、通常の走行制御用データを格納した通常モードテーブル310Aと、作業時の走行制御用データを格納した作業モードテーブル310Bを有している。
図6においては、この各テーブル310A、310Bの走行制御用データは、縦軸が車速を、横軸がペダルの踏み込み量を示す2次元座標の一次直線で表示され、横軸のペダル踏み込み量に応じて、縦軸の車速が決まることを意味している。実際のメモリ310では、この走行制御用データは、このような一次直線(y=ax+b)を用いず、具体的な表形式データで記憶されていてもかまわない。また直線である必要も無い。横軸のDは最大踏み込み量を示し、縦軸のMAX1、MAX2は最大の車速を示す。
モード切替スイッチ40は利用する走行制御用データとして、このような通常の走行制御用データと、作業時の走行制御用データを切り換えさせることが出来る。そして、通常制御部311の出力はHST用モータ32へ入力されている。
次に、オートクルーズ制御部312へは、モード切替スイッチ40からの外部信号と、オートクルーズスイッチ42からの外部信号が入力されている。オートクルーズスイッチ42はオートクルーズ走行を指示するスイッチである。このオートクルーズスイッチ42からの指示に従って、オートクルーズ制御部312は、後述するようにその指示があった際の、ペダルを最大踏み込んだ場合の最大車速に、維持速度を設定し、一定速度走行を実現させる制御部である。
さらに、最大車速変更部313へは、速度上限ダイヤルスイッチ41からの外部信号が入力されている。この最大車速変更部313は、速度上限ダイヤルスイッチ41からの指示に従って、作業モードテーブル310Bにおける、最大踏み込み量Dに対する最大車速MAX2の大きさを変更させる制御部である。すなわち、速度上限ダイヤルスイッチ41はダイヤル式であり、任意の大きさに最大車速MAX2を変更可能となっている。この一次直線のデータの場合はその傾きを任意に変更することになる。
次に、本実施の形態における、走行速度制御の動作を説明する。
[I] 通常走行モードの場合
オペレータはモード切替スイッチ40により、通常走行モードを選択した場合は、通常制御部311はそれを受けて、通常モードテーブル310Aの方を参照する。そして、ペダルセンサ30からの踏み込み量信号を入力して、その大きさに対応する車速を演算し、その車速信号をHST用モータ32へ出力する。HST用モータはその車速信号に従って、HST21のトラニオン軸の回動角度を適宜変更する。それによって、HST21は変速を行い、トラクタ車体10は踏み込み量に応じた速度で走行する。
オペレータは車体の速度を変更したい場合は、ペダル1の踏み込み量を変更すればよい。なお、ペダルを最大限度踏み込んだ場合(D量)の車速は、MAX1となるようになっている。
[II] 作業走行モードの場合
今、オペレータはモード切替スイッチ40によって、作業走行モードを選択したとする。その場合は、通常制御部311はそれを受けて、作業モードテーブル310Bの方を参照する。この作業モードテーブル310Bの場合、その一次直線の傾きは、作業モードにふさわしく、通常の走行モードより緩やかに設定されている(実線参照)。
従って、ペダルセンサ30からの踏み込み量信号を入力して、その大きさに対応する車速を演算するが、その値は、上述した通常走行モードに比べて、当然にその車速値は小さくなる。そしてその車速信号をHST用モータ32へ出力する。HST用モータはその車速信号に従って、HST21のトラニオン軸の回動角度を適宜変更する。それによって、HST21は変速を行い、トラクタ車体10は踏み込み量に応じた速度で走行する。これによって低速作業において、ペダルの踏み込み量に対応する車速の変更が、通常の走行モードの場合に比べて、微調整が容易になる。すなわち、同じペダルの踏み込み量の変化分でも、通常の走行モードに比べて、車速の変化分は小さいので、車速の微調整が容易になる。なお、この作業モードの場合、ペダルを最大限度踏み込んだ場合(D量)の車速は、MAX2となるようになっている。
次に、オペレータが作業モードの走行制御の態様を変更したい場合は、速度上限ダイヤルスイッチ41を操作する。この速度上限ダイヤルスイッチ41を操作することによって、その操作信号は、最大車速変更部313へ入力され、この最大車速変更部312はその操作信号に従って、作業モードテーブル310Bの一次直線の傾きの大きさを変更する。このように、一次直線の傾きを任意に変更することが出来るので、簡単にダイヤルを調節することによって、望ましい傾きに変更することが出来る(破線参照)。
その変更された傾きの一次直線のデータを参照して、通常制御部311は走行制御を実行することになる。
[III]オートクルーズ走行モードの場合
次に、オペレータが、オートクルーズ走行を行う場合は、オートクルーズスイッチ42をオンする。そのオン信号はオートクルーズ制御部312へ入力される。オートクルーズ制御部312はそのオートクルーズのオン信号を受けて、通常制御部311の通常の走行制御を停止させる。
さらに、そのオートクルーズのオン信号が出された際の走行モードが、通常走行モードか、作業走行モードかをモード切替スイッチ40からの信号により判断する。さらにその結果に従って、その際の走行モードが通常走行モードの場合は、通常モードテーブル310Aにおける、車速MAX1を、オートクルーズ走行の一定走行の維持速度として決定する。
また、その際の走行モードが作業走行モードの場合は、作業モードテーブル310Bにおける、車速MAX2を、オートクルーズ走行の一定走行の維持速度として決定する。従って、作業走行モードの場合、速度上限ダイヤルスイッチ41のダイヤル調整で調整された最大車速MAX2が維持速度として決定される。
そのため、作業走行モードの場合において、走行制御の適切なダイヤル調整に対応した、オートクルーズ走行の適切な維持速度が実現される。また逆に言えば、オートクルーズ走行の維持速度が適切になるように、作業走行モードの一次直線の傾きを予め決めておくことになる。なお、このことは、通常走行モードにおけるオートクルーズ走行の維持速度についても同じことが言える。
このようにして、維持速度が決定されると、オートクルーズ制御部312はその決定された速度信号をHST用モータ32へ出力する。HST用モータはその車速信号に従って、HST21のトラニオン軸の回動角度を変更する。それによって、HST21は変速を行い、以後、トラクタ車体10は決定された速度を維持して走行する。
以上説明したように、オートクルーズ走行を行う場合、その指示が出た際の、走行モード次第で、それにふさわしい維持速度が自動的に決定され、オートクルーズ走行が実現される。従って、オートクルーズ走行専用の維持速度選択スイッチなど余分なスイッチ類は省くことが出来る。また、上述のように適切な維持速度が実現出来る。
なお、図6はコントローラ31の機能図であって、このような機能を実現するために、コンピュータを用いてソフトウェア的に実現することも、専用のハード回路を用いて実現してもかまわない。
図7は、本実施の形態の別の変形例における、コントローラ31への入力信号と、出力信号を示す制御ブロック図である。図5のケースと異なるところは、モード切替ランプ44が追加されている点である。
このモード切替ランプ44は、モード切替スイッチ40により走行モードが切り換えられた際、点滅するランプである。例えば、図6の通常走行モードが路上走行に対応し、作業走行モードがより車速の低い、作業を行う場合の走行に対応している場合、その作業走行モードに切り換えられている場合のみ、ランプが点灯するようになっている。
このようにすることによって、モードの切り換えがオペレータにとって明確となり、その結果安全性の向上にもつながる。勿論逆に路上走行時に点灯するようになっていてもかまわない。
図8は、本実施の形態の別の変形例における、コントローラ31の具体的機能を示す機能ブロック図である。
図8における通常制御部311は、モード切替スイッチ40からモード切り換え指示を受けた場合、直ちに別のモードに切り換えて速度制御を行うことをせず、次のような制御を行う。すなわち、モードを切り換えた場合、同じペダル1の踏み込み量のままで、それまでの車速よりより早くなる場合は、直ぐには車速を変更させず、踏み込み量を増大させても、それまでの車速を維持する。そしてペダル1の踏み込みを戻し、ペダル1の踏み込み量が、新しい走行モードにおいて上述したそれまでの車速に対応する踏み込み量の位置まで戻った際、新しい走行モードの制御に切り換え、以後新しい走行モード制御で走行制御を実行していく。
なお、モードを切り換えた場合、同じペダル1の踏み込み量のままで、それまでの車速よりより遅くなる場合は、直ぐに車速を変更させる制御を行う。
このことを図9を用いて説明する。図9は、図8の2つの走行モードを同じxy座標に表示したグラフである。今、作業モードで走行しており、踏み込み量がD1だったとする。また、その際の速度がv1だったとする。そのような状態で、モード切替スイッチ40から、通常走行モードへの切替指示が出たとする。
そのような場合、同じ踏み込み量D1において、現在の速度はv1であるが、通常走行モードでは、v1よりも早い速度v2になる。そこで、踏み込み量をそのままに維持しても、増大しても、速度は変わらないように制御する。そして、踏み込み量をD1から減らして、踏み込み量をD2まで戻すと、通常走行モードにおいて、踏み込み量D2に対応する速度はv1であるから、それまでの速度v1と同じとなる。そのような状態になった際、通常走行モードに従う速度制御に切り換える。
このように制御することによって、走行モードを切り換えた際、急に車速が早くなりオペレータに危険が生じることを防止することが出来る。
図10は、本実施の形態の別の変形例における、コントローラ31の具体的機能を示す機能ブロック図である。
通常制御部311には前後進シャトルレバー33からの指示信号が入力されている。メモリ310には、前後進シャトルレバー33からの指示と、ペダル1の踏み込み量とに従って、速度制御を行う際の参照データが格納されている。
例えば、前後進シャトルレバー33からの指示が前進走行の場合を説明する。メモリ310内の(a)側の横軸には、ペダル踏み込み量が、また、縦軸には、前進と後進で上下に速度方向性を持たせた車速が表示されている。この変形例の場合は、簡潔に説明するため、一通りの走行モードを示している。今踏み込み量がD3とすると、前進側の直線走行モード(一点鎖線)の車速v3が指示車速となる。
メモリ310内の(b)側の横軸には、時間が、また、縦軸には、前進と後進で上下に速度方向性を持たせた車速が表示されている。そこで、上述したとおり、D3の踏み込み量の場合、車速v3が指示されるので、(b)側のグラフのとおり、当初はv3の車速で前進方向に一定速度で走行する。
今、前後進シャトルレバー33から、前進から後進へ切り換える指示が出されたとする。その場合、踏み込み量はD3のままであるが、一気に後進で車速v3に速度制御されず、(b)に示すように、一定の変化比率(一点鎖線の傾き)で減速していき、やがて速度0となり、さらに、逆方向(後進)にその変化比率で加速していき、速度v3に達したところで、後進でv3に速度制御される。
また、速度v3で後進走行している時に、前後進シャトルレバー33から前進への切替指示が出た場合は、上述した走行制御と反対に、(a)側、(b)の点線に示すとおり、いきなり速度v3で前進させるのではなく、一定の変化比率(点線の傾き)で減速させ、速度0を通過した後、徐々に前進しながら加速し速度v3で一定前進速度に制御される。
このようにすることによって、前進中、あるいは後進中に、前後進シャトルレバー33により,方向転換指示をしても、急激な車速変化を回避出来て安全性が高まる。
図11は、本実施の形態の別の変形例における、コントローラ31の具体的機能を示す機能ブロック図である。図10の変形例と異なるところは、ペダル踏み込み量をD3とすると、前後進シャトルレバー33によって、後進から前進へ切り換える場合、後進走行中に「後進から前進への切替」指示があった場合の上述した速度変化の変化率(点線の傾き)方が、前進走行中に「前進から後進への切替」指示があった場合の上述した速度変化の変化率(一点鎖線の傾き)よりも、大きい、すなわち、急速に前進へ切替、速度v3を実現させるようになっている。
通常、後進走行は危ないので前進走行に切り換える場合は早めに前進走行に切り換えた方が望ましい。また、後進走行から比較的急に前進走行へ切り換えても、運転者は運転席の背中のシートで支えられるので危険は特に無いといえる。
図12は、本実施の形態の別の変形例における、コントローラ31の具体的機能を示す機能ブロック図である。図10の変形例と異なるところは、前後進シャトルレバー33を操作した際、速度が0になる際、それを一定時間維持したのち、ふたたび加速する点である。
なお、図12において、(a)は、前進走行中に、シャトルレバー33からの指示によって、後進走行へ切り換える場合を示し、(b)は、後進走行中に、シャトルレバー33からの指示によって、前進走行へ切り換える場合を示している。
例えば、(a)に示すように、前進中に、シャトルレバー33からの指示によって、後進走行へ切り換える場合は、徐々に減速していき、速度0になったところで、例えば1秒間だけ、速度0を保つ。つまり停止する。それから、後進走行に入り徐々に加速していき、速度v3に到達する。
なお、後進中に、前進に切り替わるときも同様に、一定時間速度0を維持する。
この変形例においては、速度0において少しの間停止してから、方向転換するので、方向転換における安全性がより一層高まる。
図13は、本実施の形態の別の変形例における、コントローラ31の具体的機能を示す機能ブロック図である。図10の変形例と異なるところは、シャトルレバー33からの指示が出された際の、車速の大小に応じて、上述した車速の加減速の変化率が異なる点である。
すなわち、図13における(a)は、前進中に、前後進シャトルレバー33からの指示によって、後進側に方向転換する場合であり、(b)は、後進中に、前後進シャトルレバー33からの指示によって、前進側に方向転換する場合である。
例えば、前進中の車速が小さい順にv4、v5、v6とすると、減速の変化率は速度のより小さい方がより変化率が大きく、つまり、急速に減速させるようにしている。速度0からの加速も同様である。
また、(b)においても、同様に後進中の車速が小さい順にv4、v5、v6とすると、減速の変化率は速度のより小さい方がより変化率が大きく、つまり、急速に減速させるようにしている。速度0からの加速も同様である。
このように、前後進のシャトルレバー33からの指示が出された際の車速の大きい程、加減速の変化率を緩やかにすることによって、運転者の安全性がより高まる。
図14は、本実施の形態の別の変形例における、コントローラ31の具体的機能を示す機能ブロック図である。図13の変形例と異なるところは、前後進シャトルレバー33からの指示が出た際の車速の大小に応じて、上述した車速の加減速の変化率が異なる点((a)参照)に加えて、(b)に示すように、減速してきて速度0になったとき、再度、ペダル1の踏み込み量を検出し、その踏み込み量に対応した車速を計算し直し、その再計算した車速の大小に応じて、上述した車速のそれからの加速の変化率を決定する点である。
すなわち、図15に示すように、例えば踏み込み量がD6において、前進中に前後進シャトルレバー33によって、後進の指示が出た場合、その後進の指示が出た際の車速がv6とする。車速がv6であるから、図14(a)から分かるように、緩やかな変化率で減速していく。そうして、速度0になったとき、ペダル1の踏み込み量を検出する。例えば、その際のペダル踏み込み量がある程度戻っていて、D4になっていたとする(図15参照)。その場合、図15に示すように、その際の踏み込み量D4では本来制御目標車速はv4となる。
そのような場合、速度0から後進側に加速していく場合の変化率は速度v4の場合に予定されている変化率、つまりかなり急激に加速することにする。
このようにすることによって、車速が早い時に,前進から後進に切り換えると、その速度にふさわしく時間を掛けてゆっくり減速していき、速度0になった後は、安全なので急速に加速させることが出来る。その結果、短時間で且つ安全に前後進を切り換えることが出来る。なお、後進中における前進への切替制御についても同様である。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図16は本実施の形態2に掛かるトラクタの側面図、図17は同トラクタの正面図である。
図16、図17において、車体10、ステアリングハンドル12、運転席16、フロア15、前輪13、後輪14等は実施の形態1の場合と同様である。
車体10のボンネット61の中には、メイン燃料タンク50が配設されている。501は燃料タンク50の給油口501である。また、メイン燃料タンク50の上方のボンネット61の部分には開閉自在なカバー611が設けられている。
他方、フロア15の左側の前端部151の前面から下面にかけて、予備燃料タンク51が取り付けられている。その取り付け方はフロア15の下面に直接取り付けても良いし、その位置に、予備燃料タンク51を支える台(図示省略)を設けてもよい。
なお、この予備燃料タンク51の給油口511は燃料を補給できるように、多の部材が存在しないフリーな空間に露出している。
この予備燃料タンク51からメイン燃料タンク50の間にはパイプ70が連結され、さらにその予備燃料タンク51の中の燃料をメイン燃料タンク50へ持ち上げるためのポンプ71が予備燃料タンク51の側に設置されている。
さらに、ポンプ71等を制御する制御装置72が図18に示すように設けられている。この制御装置72の前面パネル724は運転席の前に設けられ、運転中でもオペレータが操作出来るようになっている。すなわち、図18は、本実施の形態2の概念図である。メイン燃料タンク50には、入れられている燃料の量を検出するセンサが複数個設けられている。センサs1は、量が4/5程度存在することを検出し、センサs2は、量が1/2程度存在することを検出し、センサs3は、量が1/3程度存在することを検出するセンサである。また、センサs5は空かどうかを検出するセンサである。
他方、予備燃料タンク51にはセンサs4が設けられ、量が4/5程度存在していることを検出する。なお、センサs6は空かどうかを検出するセンサである。
これら各センサs1、s2、s3、s4、s5、s6の各出力は制御装置72へ入力されている。制御装置72は次に説明するようにポンプ71を制御する。なお、センサの種類としては、フロート式など公知のセンサを用いることが出来る。図面上は模式的に描いている。
I. メイン燃料タンク50の補給の場合
メイン燃料タンク50の量が1/3程度となると、センサs3がそれを検出し、それに従って、制御装置72は自動的にポンプ71を駆動し、予備燃料タンク51から燃料をパイプ70を介してメイン燃料タンク50へ供給することを開始する。なお、1/3程度と少なくなった場合その旨をオペレータへ知らせるためランプ722を点滅させる。
メイン燃料タンク50の量が増加して1/2程度を越えると、センサs2がそれを検出し、制御装置72はポンプ71の駆動を低下させ、汲み上げる量を減少させる。さらに、メイン燃料タンク50の量が増加して4/5程度となると、センサs1がそれを検出して、ポンプ71の駆動を停止し、ブザー721でそれを知らせる。
なお、このような予備燃料タンク51からメイン燃料タンク50への燃料の供給状態を液晶ディスプレイ723に表示させる。ここに(50)はメイン燃料タンク50の燃料の量を表示する表示部であり、(51)は予備燃料タンク51の燃料の量を表示する表示部である。徐々に量が変化する様子を表示することが出来る(その精度は各センサの数次第である)。
なお、予備燃料タンク51の量が空の場合は上記補給動作は行わない。
II. 予備燃料タンク51の補給の場合
メイン燃料タンク50と予備燃料タンク51の双方ともに空になった場合(センサs5、センサs6がそれを検知する)、ポンプ71を駆動させた後(エンジンは停止中であっても駆動可能)、予備燃料タンク51の給油口511から手動で燃料を補給する。なお、4/5程度になるとセンサs4がそれを検出し、ブザー721でそれを知らせる。
なお、ポンプ71は手動でも動かせるタイプである。
また、725はポンプ71を駆動させるスイッチであり、制御装置72の前面パネル724に取り付けられているので、運転中でもポンプ71を駆動出来るようになっている。
なお、メイン燃料タンク50の給油口501は、ポンプ71が故障しても、直接燃料を補給出来るようにするため設けられている。
このように、本実施の形態2は、メイン燃料タンク50と、予備燃料タンク51と、予備燃料タンク51から燃料をメイン燃料タンク50へ補給するポンプと、少なくともメイン燃料タンク50の中の燃料の量を検出するセンサと、を備え、メイン燃料タンク50の位置はボンネット61の中に配置され、予備燃料タンク51はメイン燃料タンク50の位置よりも低い位置(例えばフロア15が存在する高さ)に配置されているので、燃料を供給するとき、高い位置に存在するメイン燃料タンク50へ直接燃料を補給する必要はなく、それより低い位置に存在する予備燃料タンク51へ燃料を補給すればいいので、重い燃料を高い位置まで持ち上げる面倒な作業を無くすことが出来る。
また、メイン燃料タンク50や、予備燃料タンク51の中の燃料の量をディスプレイに表示させることで、オペレータに一目でおおよそどれくらい入っているか分かり易い。
なお、予備燃料タンク51は、本実施の形態2では進行方向に向かって右側に配置したが、左側でもかまわない。さらには、左右に2台予備燃料タンク51を設置してもかまわない。その場合、メイン燃料タンク50への補給のタイミングは、いずれかを優先させつつ、双方の予備燃料タンク51、51がバランス良く消費されるように、交互に補給させるなどする。また、そのような場合ポンプ71を共用し、弁で切り換えることも可能で在る。
さらにまた、図示はしていないが、予備燃料タンク51の横に、運んできた燃料タンクを載置できる載置板(フロアーの一部でもかまわない)を設け、運んできた燃料タンクから容易に予備燃料タンク51へ燃料を手動で注入出来るようにすることが望ましい。
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図19は本実施の形態3における主変速レバーの平面図である。
図面上右側の溝81は、従来の主変速レバー80を移動させる溝であって、車速を多段階に設定できるようになっている。この変速はHST機構を用いてもよいが、その他の変速機構を用いても良い。主変速レバー80を縦方向に移動させることによって車速を設定出来る。なお、HSTペダルを設けている場合は速度設定した後そのHSTペダルを押すことで設定車速に制御する。
さらに、この右側の溝81の横に平行して、溝82が設けられている。この溝82と溝81は中立位置(N)で横に連結されており、主変速レバー80が横スライドすることで行き来出来るようになっている。この左側の溝82において、主変速レバー80を前方(図面上上方向)に1回動かすと、右側の溝81における1速度分増速させることが出来る。すなわち、例えば、5回前方に動かすと、停止状態からだとすると5速度設定したことになる。手を離すと中立位置Pに戻るようになっている。中立位置Pに戻った後、さらに、1回前方に動かすと、5速度から1速度増速し、6速度設定したことになる。
逆に後ろ側へ1回動かすと、1速度分減速させることが出来る。なお、停止状態からスタートして増速方向に3回動かした後、減速方向に5回動かしても、中立状態の設定となる。
いずれの溝81、82に主変速レバー80がある場合でも、その位置を検出するポテンショメータなどのセンサでその位置と動きの回数などを検出する。図示しない制御回路はその検出された位置や動きの回数に基づき、速度制御を行う。
このように、スタート時、あるいはそれまでの車速から、増減速を溝82側で主変速レバー80を動かすことで、容易に出来る。
なお、前進か後進かを選択するためには、別に上述した前後進シャトルレバーが設けられる。
図20は本実施の形態3の別の変形例である。従来の主変速レバー80の移動用溝81の横に、ダイヤル83が設けられている。このダイヤル83は例えば前方(図面上上方)へ回せば、増速指示、後方(図面上下方)へ回せば減速指示となる。さらに、その回す量に比例して増減速の大きさも決まる。
すなわち、溝81の主変速レバー80の位置で決まる車速を最大速度として、そのダイヤル83で増減速が設定出来る。
そのようなダイヤル83の回転量を検出するセンサが設けられている。その検出されたダイヤル83の回転量に基づいて、図示しない制御回路は速度制御を行う。
なお、前進か後進かを選択するためには、別に上述した前後進シャトルレバーが設けられる。
図21は本実施の形態3の別の変形例である。図21(a)は、運転席の前にある、ステアリングハンドル84、操作パネル86、その表示画面86aなどを示す略平面図である。そのハンドルポスト87には、リニア−レバー(前後進シャトルレバー)85が取り付けられている。図21(b)は、そのリニア−レバー85とハンドルポスト87をA方向から見た場合の、略示図である。すなわち、ハンドルポスト87には、リニア−レバー85の根元部85aが移動するための溝88が開設されている。この溝88は前進か後進かを決める左右の溝88a、88bと、その中央の中立溝88gと、左側の前進側の方からさらに左右に分かれた溝88c、88dと、右側の後進側の方からさらに左右に分かれた溝88e、88fとが形成されている。
これらの溝88の中をリニア−レバー85が動くことによって、前進、後進、増速、減速を指示できるようになっている。すなわち溝88cと、溝88eは増速を指示する機能に対応し、溝88d、溝88fは減速を指示する機能に対応している。
なお、リニア−レバー85の位置を検出するためのセンサが設けられ、その位置センサの出力に基づき、制御回路が速度制御することはいうまでもない。
図21(c)は従来の主変速レバー80とその溝81である。例えば図示するように、今主変速レバー80が4速度位置に置かれているとする。その状態で、リニア−レバー85を溝88bの前進位置(エンジン回転数がアイドリングでも走行し始まる)に入れ、変速ペダルを踏み込み、エンジン回転数が最大回転になると、4速度で前進する。さらに、リニアーレバー85を上に動かし溝88cに入れると、4速度から5速度に増速する。溝88dに入れると4速度から3速度へ減速する。後進の場合も同様である。
このようにすることによって、増減速の操作性や、作業性が向上する。
なお、本実施の形態3においては、HST速度制御機構を用いない速度制御の場合も適用可能である。