JP6292078B2 - 繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置および繊維強化プラスチック成形体用基材抄造方法 - Google Patents

繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置および繊維強化プラスチック成形体用基材抄造方法 Download PDF

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本発明は、繊維強化プラスチック成形体用の基材を抄造する装置およびその方法に関するものである。
強化繊維を含む不織布を加熱加圧処理し、成形した繊維強化プラスチック成形体は、既にスポーツ,レジャー用品,航空機用材料など様々な分野で用いられている。これらの繊維強化プラスチック成形体においてマトリックスとなる樹脂には、エポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,またはフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられることが多い。しかし、熱硬化性樹脂を用いた場合には、熱硬化性樹脂と強化繊維を混合した不織布は冷蔵保管しなければならず、長期保管ができないという難点がある。
このため、近年は、熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用い、強化繊維を含有した繊維強化不織布の開発が進められている。このような熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用いた繊維強化不織布は、保存管理が容易であり、長期保管ができるという利点を有する。また、熱可塑性樹脂を含む不織布は、熱硬化性樹脂を含む不織布と比較して成形加工が容易であり、加熱加圧処理を行うことにより成形加工品を成形することができるという利点を有している。
従来、熱可塑性樹脂は、耐薬品性・強度,耐熱性等に関し、熱硬化性樹脂よりも劣るものが主流であった。しかし、近年は、耐薬品性,強度,耐熱性等に優れた熱可塑性樹脂が盛んに開発されるようになり、これまで熱可塑性樹脂について常識とされてきた上記のような不具合が目覚ましく改善されてきている。このような熱可塑性樹脂は、いわゆる「エンプラ(エンジニアリングプラスチック)」と呼ばれる樹脂であり、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)等が挙げられる(例えば、非特許文献1)。
強化繊維には、炭素繊維,ガラス繊維,アラミド繊維等が用いられている。このような強化繊維は繊維強化プラスチック成形体の強度を高める働きをする。また、強化繊維は、その配向方向を特定の方向に調整することによって、繊維強化プラスチック成形体の強度に方向性を持たせることが知られている(例えば、特許文献1〜6)。このような繊維強化プラスチック成形体は、自動車のバンパービーム等の補強用芯材や、一方向に機械的強度が要求される構造部品に用いられている。
特開平5−44188号公報 特開平9−41280号公報 特開平6−155495号公報 特開平4−208405号公報 特開平4−208406号公報 特開平4−208407号公報
「平成19年度 熱可塑性樹脂複合材料の機械工業分野への適用に関する調査報告書」、財団法人 次世代金属・複合材料研究開発協会、社団法人 日本機械工業連合会、平成20年3月発行
ところで、繊維強化プラスチック成形体用基材に用いる強化繊維は、その繊維長が長い方がプラスチック(マトリックス樹脂)をより強化することができる。そこで、繊維径が小さく繊維長が大きい繊維(例えばカーボン単繊維)を用いて繊維強化プラスチック成形体用基材を抄造することが好ましい。
しかし、強化繊維の多くは凝集性が比較的強いため、分散液中で互いに凝集して絡み付きやすい。強化繊維が凝集して塊状に絡み付くと、繊維の配向化も困難になり、繊維密度のばらつきも生じ易くなり、繊維強化プラスチック成形体用基材の品質低下の原因となる。
特許文献2に記載されているように、分散槽内で強化繊維と熱可塑性樹脂とを含むスラリーを調製して、このスラリーを分散槽から抄紙槽に送る手法では、特に繊維強化プラスチック成形体用基材を大量生産する場合、分散槽内で大量にスラリーを調製した後、これをストックさせておくことになる。このため、分散槽内で強化繊維が再凝集してしまう。特許文献2のように層流または層流から乱流への遷移域でスラリーを輸送する技術では、強化繊維の凝集の進行を遅延させるだけで、再凝集してしまった強化繊維を積極的に解繊することはできず、強化繊維が凝集した状態のスラリーを抄紙槽に送ることになり、繊維強化プラスチック成形体用基材の品質を確保する上での課題となる。
本発明は、上記のような課題に鑑み創案されたもので、その目的の一つは、繊維強化プラスチック成形体用基材の品質を向上させることができるようにした、繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置および繊維強化プラスチック成形体用基材抄造方法を提供することである。
なお、ここでいう目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的として位置づけることができる。
(1)上記の目的を達成するために、本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置は、強化繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含む分散液から前記強化繊維と前記マトリックス樹脂からなる繊維強化プラスチック成形体用基材を抄造する装置であって、前記分散液が貯留された貯留槽と、前記分散液を一時的に貯留する貯留部と、前記貯留槽と前記貯留部との間に設けられ、前記貯留部の下方に突出して形成され、前記貯留部に前記分散液を導入する導入部と、前記貯留部の下部の前記分散液内から前記分散液の液面よりも上方にわたって斜め上方に向けて移動する抄造領域を有する傾斜ボトムワイヤと、前記導入部に設けられ、前記貯留部に導入される前記分散液に乱流を発生させる乱流発生装置と、を備えることを特徴としている。
(2)前記乱流発生装置は、前記分散液を複数に分岐して流通させ且つ流路断面積が変化する乱流発生流路を有することが好ましい。
(3)前記乱流発生流路は、管状であることが好ましい。
(4)前記乱流発生流路の下流端は流路断面積が縮小されていることが好ましい。
(5)前記貯留槽と前記導入部との間に設けられ、流通する前記分散液を静的に攪拌するスタティックミキサを備えることが好ましい。
(6)前記分散液における前記強化繊維の濃度が0.5%以下であることが好ましい。
(7)前記乱流発生装置により発生される乱流のレイノルズ数が、7000以上であって200000以下であることが好ましい。
(8)前記分散液の粘性が0.9mPa・s以上であって3.0mPa・s以下以下であることが好ましい。
(9)本発明の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造方法は、強化繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含む分散液から前記強化繊維と前記マトリック樹脂材からなる繊維強化プラスチック成形体用基材を抄造する方法であって、前記分散液が貯留された貯留槽から前記分散液を一時的に貯留する貯留部に前記分散液を導入する導入工程と、前記貯留部の下部の前記分散液内から前記分散液の液面よりも上方にわたって斜め上方に向けて移動する抄造領域を有する傾斜ボトムワイヤを作動させて、前記抄造領域において前記分散液から前記強化繊維と前記マトリックス樹脂をと含んでなる湿基材を抄造する抄造工程と、を有し、前記導入工程において前記貯留部に導入される前記分散液に乱流を発生させることを特徴としている。
(10)前記分散液における前記強化繊維の濃度が0.5%以下であることが好ましい。
(11)前記乱流発生工程で発生する乱流のレイノルズ数が、7000以上であって200000以下ことが好ましい。
(12)前記分散液の粘性が0.9mPa・s以上であって3.0mPa・s以下以下であることが好ましい。
本発明によれば、貯留部に貯留槽から供給された分散液を導入する導入部において乱流発生装置によって分散液に乱流を発生させることにより、導入部の上流で強化繊維どうしの距離がばらついていたとしても、強化繊維どうしの距離を均して導入部下流の貯留部に供給することができ、また、導入部の上流で強化繊維が凝縮していたとしても、凝集した強化繊維を乱流により解きほぐして導入部の下流に設けられた貯留部に供給することができる。したがって、貯留部における強化繊維の凝集あるいは再凝集を抑制することができる。延いては、繊維強化プラスチック成形体用基材への凝集した強化繊維の混在を抑制することができ、繊維強化プラスチック成形体用基材の品質を向上させることができる。
本発明の一実施形態にかかる繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置を示す模式図である。 本発明の一実施形態にかかる強化繊維解繊装置を模式的に示す側面図である。 本発明の一実施形態にかかる強化繊維解繊装置を模式的に示す上面図である。 本発明の一実施形態にかかる繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置における乱流発生装置を取り出して示す拡大図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態は、繊維強化プラスチック成形体用基材を製造する装置(以下、「繊維強化プラスチック成形体用基材製造装置」という)に関するものであり、この繊維強化プラスチック成形体用基材製造装置は、本発明にかかる繊維強化プラスチック成形体用基材を抄造する装置(以下、「繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置」という)と、強化繊維を解繊する装置(以下、「強化繊維解繊装置」という)とを備えている。
抄造して得られた繊維強化プラスチック成形体用基材は不織布状である。この繊維強化プラスチック成形体用基材を加熱加圧処理することで繊維強化プラスチック成形体が成形される。この繊維強化プラスチック成形体は、シート状あるいは所望形状の成形体に成形することができる。
本実施形態では、重力の作用方向を下方とし、その逆方向を上方とする。また、繊維強化プラスチック成形体用基材の製造過程を基準に上流および下流を定める。
〔一実施形態〕
[1.構成]
はじめに、一実施形態にかかる強化繊維解繊装置および繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置が適用された繊維強化プラスチック成形体用基材製造装置の構成を説明する。
[1−1.前提]
まず、繊維強化プラスチック成形体用基材製造装置の前提について説明する。
繊維強化プラスチック成形体用基材製造装置は、強化繊維とマトリックス樹脂とを含む分散液から強化繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化プラスチック成形体用基材を抄造する繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置の上流側に、強化繊維解繊装置が設けられている。この強化繊維解繊装置は、所定長さに切断された強化繊維の集合体(以下、「強化繊維のチョップドストランド」という)を解繊する装置である。
繊維強化プラスチック成形体用基材が加熱あるいは加圧されることにより、繊維強化プラスチック成形体が成形される。この繊維強化プラスチック成形体用基材は、不織布の一つであり、強化繊維とマトリックス樹脂とが分散(懸濁)された分散液(いわゆる「スラリー」)から抄造される。
以下、強化繊維,マトリックス樹脂,分散液について説明する。
[1−1−1.強化繊維]
本実施形態では、上記の強化繊維に炭素繊維を適用している。ただし、強化繊維には、炭素繊維以外に、ガラス繊維、アラミド繊維、さらに他種の強化繊維を適用してもよく、複数種の強化繊維がハイブリッドされていてもよい。例えば、ガラス繊維やPBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維等の耐熱性に優れた有機繊維が強化繊維に含有されていてもよい。なお、炭素繊維としては、特にポリアクリロニトリル(PAN)系繊維を用いたPAN系のものを用いることが好ましい。これらの繊維を強化繊維に用いることで、繊維強化プラスチック成形体用基材の強度や剛性を効率よく確保することができる。
また、強化繊維の繊維長は、2mm以上であって150mm以下であることが好ましい。繊維長が小さくなるほど強化繊維の分散性が良好で外観上優れた繊維強化プラスチック成形体を得ることができる。また、強化繊維の繊維長が大きくなるほど、繊維強化プラスチック成形体の強度や耐衝撃性を向上させる傾向にある。ただし、強化繊維の繊維長が大きくなるほど、強化繊維どうしが絡み付いた塊状の凝集体(以下、「フロック」という)が生じるおそれがある。このため、要求される繊維強化プラスチック成形体の強度と強化繊維のフロックの抑制とを考慮して、強化繊維の繊維長を設定することが好ましい。
また、強化繊維の繊維径は、3μm以上であって25μm以下であることが好ましい。強化繊維の繊維径は小さいほうが繊維強化プラスチック成形体の強度、剛性を高めることができるが、強化繊維のフロックが発生しやすくなる。例えば、繊維径が3μm以下であると人体に取り込まれた場合に発がん性の問題が生じうる。一方、繊維径が大きぎると強化繊維の分散性が低下し、繊維強化プラスチック成形体の強度が低下する。これらの観点から、強化繊維の繊維径を上記の範囲内とすることが好ましい。
また、強化繊維の断面形状は、円形に限定されず、楕円形などの異形断面のものであってもよい。
強化繊維のチョップドストランドは、例えば2000本〜3000本の単繊維の強化繊維が同一方向に配向されて集束(集合)されたストランドが所定長さに切断されたものである。この強化繊維のチョップドストランドは、水等の液体に分散しやすい性質を有する。また、強化繊維のチョップドストランドとして、その強化繊維どうしが反発する薬品の塗布されたものを用いてもよい。
[1−1−2.マトリックス樹脂]
上記のマトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂を含んでおり、熱可塑性樹脂のみで構成されることが好ましく、本実施形態では熱可塑性樹脂のみで構成されている。この熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート(PC),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK),ポリアミドイミド(PAI),ポリフェニレンスルフィド(PPS),ポリエーテルイミド(PEI),ポリエーテルケトンケトン(PEKK),ポリアミド,ポリプロピレンといった樹脂を例示することができる。これらの熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、これら熱可塑性樹脂の中でも、高強度の繊維強化プラスチック成形体用基材を得るために、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリプロピレンを用いることが好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂は繊維状であることが好ましく、繊維分散性が良好なポリカーボネート繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、ポリプロピレン繊維といった繊維状の樹脂(熱可塑性樹脂繊維)を用いることが好ましい。本実施形態では、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂繊維を適用している。ただし、熱可塑性樹脂は粒子状などの他の形態であってもよい。
熱可塑性樹脂が繊維状である場合、熱可塑性樹脂の繊維長についても、2mm以上であって150mm以下であることが好ましい。強化繊維及び熱可塑性樹脂繊維の各繊維長は上記範囲内であればそれぞれ任意に選定することができる。熱可塑性樹脂の繊維長は、大きくなるほど抄造される繊維強化プラスチック成形体用基材の工程強度を向上させることができる傾向にある。ここでいう工程強度とは、繊維強化プラスチック成形体用基材を製造する工程における破損に耐える強度を意味する。繊維強化プラスチック成形体用基材は、工程強度が向上されることで、製造工程において例えばベルトやロールに支持されていない個所での不具合を抑制することができる。ただし、熱可塑性樹脂の繊維長が大きくなるほど、熱可塑性樹脂どうしの絡み付きによるフロックが生じやすい。これにより、後述する輸送パートIIIや導入パートIVでバルブやポンプ等で詰まりが発生するおそれがある。このため、要求される繊維強化プラスチック成形体の強度と熱可塑性樹脂の繊維どうしの絡み付きの抑制とを考慮して、強化繊維の繊維長を設定することが好ましい。
また、熱可塑性樹脂の繊維径は、3μm以上であって300μm以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂の繊維径が小さくなるほど、抄造される繊維強化プラスチック成形体用基材の柔軟性の向上,表面繊維の脱落防止に寄与しうるものの、熱可塑性樹脂のフロックが生じやすい。このため、要求される繊維強化プラスチック成形体用基材の特性と熱可塑性樹脂のフロックの抑制とを考慮して、熱可塑性樹脂の繊維径を設定することが好ましい。
繊維強化プラスチック成形体用基材における強化繊維と熱可塑性樹脂との質量比は、10:90〜80:20の範囲であることが好ましく、20:80〜70:30の範囲であることがより好ましく、30:70〜70:30の範囲であることが更に好ましい。このような範囲内に強化繊維と熱可塑性樹脂との質量比を設定することにより、軽量かつ高強度の繊維強化プラスチック成形体を得ることができる。なお、分散液には、繊維強化プラスチック成形体用基材の強化繊維と熱可塑性樹脂どうしを結着させるために、バインダー成分が含まれていてもよい。
バインダーとしてはアクリル樹脂エマルジョン,スチレン−アクリル樹脂エマルジョン,PVA,熱可塑性樹脂等の湿紙機不織布の製造に一般的に使用されるものを使用することができる。添加方法は、PET−変性PET芯鞘構造繊維,ポリプロピレン−ポリエチレン芯鞘構造バインダー繊維等の熱可塑性樹脂,またはPVA繊維やPVA樹脂等を強化繊維等と共に分散させて添加することができ、PVA溶液,アクリル樹脂エマルジョン,スチレン・アクリル樹脂エマルジョン等の液状バインダーを、乾燥パートの上流側でスプレーやディッピングによって添加することもできる。
[1−1−3.分散液]
分散液とは、分散溶媒に強化繊維および熱可塑性樹脂が分散あるいは浮遊した状態となっているものである。分散液としては、分散溶媒に水を用いた水系分散液や、分散溶媒としてアルコールなどの有機溶媒を用いた有機溶媒系の分散液がある。本実施形態では、安価で管理の容易な水系分散液を適用している。水系分散液は、少なくとも水を含む分散液であり、水のみからなってもよいし、水系分散液の安定性を損ねない限り、水以外の溶剤や界面活性剤等が含まれてもよい。
分散溶媒に用いる水としては、通常の工業用水のほか、蒸留水や精製水などを用いることができる。この水には、必要に応じて界面活性剤が混合されうる。界面活性剤は、陽イオン型,陰イオン型,非イオン型,両性の各種に分類されるが、本発明においては繊維の種類に応じて適切な界面活性剤を任意に選定することができる。
界面活性剤を水に混合する場合の界面活性剤の濃度は、好ましくは0.01質量%以上であって1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上であって0.5質量%以下である。
分散溶媒には必要に応じて高分子化合物(粘剤)を溶解させ、分散溶媒の粘度を調整し得る。この高分子化合物は、溶媒の種類に応じて水溶性高分子、溶剤系高分子を用いることができる。分散溶媒が水の場合は、ポリアクリルアミド、デンプン,ポリビニルアルコール,ポリエチレンオキシドを用いることが好ましい。強化繊維が炭素繊維の場合、特にアニオン性のポリアクリルアミドがこのましい。高分子化合物を分散溶媒に溶解する場合の高分子化合物の濃度は、好ましくは0.01質量%以上であって5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上であって1質量%以下である。
分散溶媒を構成する界面活性剤,高分子化合物はそれぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、分散液については、後述する導入パートIVにおいて詳細を後述する。
[1−1−4.基本構成]
次に、図1を参照して、繊維強化プラスチック成形体用基材製造装置の基本構成を説明する。
この繊維強化プラスチック成形体用基材製造装置は、上流側から順に、強化繊維のチョップドストランド5(図1では図示省略,図2および図3参照)を解繊する解繊パートI(解繊工程,図1では二点鎖線で示す,図2および図3参照)と、解繊パートIで解繊された強化繊維9が分散溶媒に投入された分散液を貯留する第一貯留パートII(第一貯留工程)と、第一貯留パートIIから分散液を輸送する輸送パート(輸送工程)IIIと、輸送パートIIIで輸送された分散液を次に述べる第二貯留パート(第二貯留工程)Vに導入する導入パート(導入工程)IVと、導入パートIVで導入された分散液を貯留する第二貯留パートVと、第二貯留パートVで貯留された分散液から繊維強化プラスチック成形体用基材の湿基材(強化繊維およびマトリックス樹脂に水を含有するウェットウェブ,図1では太線で示す)を抄造する抄造パート(抄造工程)VIと、水を供給して輸送パートIIIで輸送される分撒水を希釈する希釈パート(希釈工程)VIIとを備えている。
解繊パートIには、強化繊維解繊装置1が適用され、第一貯留パートII,輸送パートIII,導入パートIV,第二貯留パートV,抄造パートVI,希釈パートVIIには、繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置2が適用されている。
図2および図3に示すように、解繊パートIには、強化繊維のチョップドストランド5(ここでは一箇所にのみ符号を付す)を解繊する強化繊維解繊装置1が設けられている。この強化繊維解繊装置1によってチョップドストランド5は解繊されて、抄造材料としての強化繊維9となる。
図1に示すように、第一貯留パートIIには、分散溶媒が貯留される貯留槽20が設けられている。この貯留槽20に貯留された分散溶媒には、強化繊維解繊装置1によって解繊された強化繊維9(図2および図3参照)が投入される。この分散溶媒には、図示省略する熱可塑性樹脂も投入される。
輸送パートIIIには、貯留槽20から分散液を輸送する輸送パイプ30が設けられている。この輸送パイプ30には、詳細を後述するポンプP1およびミキサMが介装されている。貯留槽20から輸送される分散液は、希釈パートVIIの希釈水導入パイプ81によって導入される希釈水により、希釈される。
導入パートIVには、輸送パイプ30により輸送された分散液を第二貯留パートVに導入する導入部40が設けられている
第二貯留パートVには、導入部40により導入された分散液を一時的に貯留する貯留部(「ポンド」とも称される)50が設けられている。
そして、抄造パートVIで貯留部50に貯留された分散液から湿基材が抄造される。
なお、図示省略するが、繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置2においては、抄造パートVIよりも下流側に、脱水フェルト等の公知の装置を用いたプレスパートや、ヤンキードライヤーや熱風ドライヤーといった公知の装置を用いたドライヤパートが装備され、抄造パートVIから送り出された湿基材に対して、下流側の各処理パートによって脱水および加熱による乾燥がなされ、シート状の繊維強化プラスチック成形体用基材が製造される。
[1−2.詳細構成]
次に、繊維強化プラスチック成形体用基材製造装置における各パートの詳細構成を上流側から順に説明する。
[1−2−1.解繊パート]
図2および図3を参照して、解繊パートIの強化繊維解繊装置1について説明する。
強化繊維解繊装置1は、上載された強化繊維のチョップドストランド5を下方から搬送する下部搬送装置10と、下部搬送装置10に強化繊維のチョップドストランド5を載置するホッパ16(図3では図示省略する)と、強化繊維のチョップドストランド5を上方から搬送する上部搬送装置13と、上部搬送装置13とホッパ16の間に設けられたシャワー(給液装置)17(図3では図示省略する)とを備えている。
以下、下部搬送装置10および上部搬送装置13を説明し、その次にホッパ16,シャワー17の順で各構成を説明する。
下部搬送装置10は、ロール12a,12bに巻回された無端状の下部搬送ベルト11を有する。ここでは、下部搬送ベルト11の搬送面111が水平に設けられており、搬送面111上に載せられた強化繊維のチョップドストランド5を搬送方向(図2,図3中では右方向)に搬送する。
ロール12a,12bの少なくとも一方が下部搬送ベルト11を搬送駆動する駆動ロールであって、この駆動ロールは下部搬送速度V1に応じた周速で回転する。すなわち、下部搬送ベルト11は搬送面111を含む何れの個所においても下部搬送速度V1で搬送方向に移動する。
上部搬送装置13は、下部搬送装置10の搬送方向と同一方向に強化繊維のチョップドストランド5を搬送するものである。なお、上部搬送装置13による搬送とは、強化繊維のチョップドストランド5に搬送方向への力を加えることを意味し、このチョップドストランド5の搬送は下部搬送装置10を主体として行なわれる。この上部搬送装置13は、ロール15a,15b,15c,15dに巻回された無端状の上部搬送ベルト14を有する。
上部搬送ベルト14は、下部搬送装置10の搬送方向(上部搬送装置13の搬送方向と同一方向)に伸縮可能である。なお、下部搬送ベルト11,上部搬送ベルト14の何れにも、ゴムなどの伸縮性のある材料を用いることができる。なお、下部搬送ベルト11は、上部搬送ベルト14よりも伸縮しにくいものが用いられている。
ロール15a,15b,15c,15dは、上部搬送ベルト14の搬送面141の上流端14aに配置される上流駆動ロール15aと、上部搬送ベルト14の搬送面141の下流端14cに配置される下流駆動ロール15bと、従動ロール15c,15dとに類別することができる。
上流駆動ロール15aは、下部搬送速度V1と等速の周速で回転する。したがって、上部搬送ベルト14は、上流駆動ロール15aによって下部搬送ベルト11と等速(下部搬送速度V1)で搬送方向へ駆動される。
一方、下流駆動ロール15bは、下部搬送速度V1よりも高速の上部搬送速度V2(>V1)に応じた周速で回転する。したがって、上部搬送ベルト14は、下流駆動ロール15bによって下部搬送ベルト11よりも高速(上部搬送速度V2)で搬送方向へ駆動される。
よって、上部搬送ベルト14は上流駆動ロール15aとの接触個所から下流駆動ロール15bとの接触個所に向けて下部搬送速度V1からこ50れよりも高速な上部搬送速度V2へと速度を次第に上昇させて移動する。
なお、図2に二点鎖線で示すように、上流駆動ロール15aと下流駆動ロール15bとの間(即ち、搬送面141の搬送方向中間部14b)に上部搬送ベルト14を下方に押さえつける押さえロール15eが設けられてもよい。さらに、押さえロール15eの設置個数は、一つに限らず複数であってもよい。
下部搬送装置10の下部搬送ベルト11と上部搬送装置13の上部搬送ベルト14とは、強化繊維のチョップドストランド5を上下から挟みこんで搬送する。このとき、下部搬送ベルト11により下部搬送速度V1で搬送される強化繊維のチョップドストランド5の上部に、上部搬送ベルト14が伸張しつつ次第に速度を速めながら搬送方向への力(以下、「搬送力」という)を加えていき、この力が繊維間を剥離させる剪断力として作用するようになっている。
以下、図2を参照してさらに説明する。
上部搬送ベルトの搬送面141は、上流端14aが下部搬送ベルト11の搬送方向中間部11bに配置され、下流端部14cが下部搬送ベルト11の下流端11cよりも突出して配置される。
なお、下部搬送ベルト11の下流端11cの下方であり、上部搬送ベルト14の下流端14cの下方には、貯留槽20(二点鎖線で示す)が設けられている。
ホッパ16は、下部搬送ベルト11に対して、上方であって上流端11aと搬送方向中間部11bとの間に設けられている。このホッパ16は、チョップドストランド5における強化繊維の配向方向が下部搬送ベルト11の搬送方向に対して交差するように、強化繊維のチョップドストランド5を下部搬送ベルト11上に載置するものである。すなわち、ホッパ16は、下部搬送ベルト11の搬送方向と交差する配向姿勢(下部搬送ベルト11に載置されたときに強化繊維の配向方向)で強化繊維のチョップドストランド5を下部搬送ベルト11上に載置するものである。チョップドストランド5における強化繊維の配向方向と下部搬送ベルト11の搬送方向との角度が90度に近づくほど、チョップドストランド5の解繊効率は向上する。したがって、下部搬送ベルト11の搬送方向に対して直交する配向姿勢でチョップドストランド5を下部搬送ベルト11上に載置することがより好ましい。
ここでは、載置される強化繊維のチョップドストランド5がホッパ16内に集積されており、ホッパ16の下部には下部搬送ベルト11の搬送方向側に強化繊維のチョップドストランド5の厚み分だけ切り欠かれた切り欠16aが形成されている。このため、ホッパ16により強化繊維のチョップドストランド5が下部搬送ベルト11に所定の配向姿勢で順次載置される。なお、安定して強化繊維のチョップドストランド5を所望の配向姿勢で載置するために、複数のホッパ16を搬送方向に直交する方向(搬送ベルト11の幅方向)に並べて配置してもよい。
シャワー17は、下部搬送ベルト11の上方であるとともに、ホッパ16よりも下流側であって上部搬送装置13よりも上流側に設けられている。このシャワー17は、強化繊維のチョップドストランド5に液体を供給する。この液体には、上述した分離溶媒と同じものを用いることができる。なお、シャワー17に替えて、シャワー17よりも高圧に液体を供給(噴射)するウォータジェット(給液装置)を用いてもよい。なお、複数のシャワー17または複数のウォータジェットを単独または組み合わせて用いてもよい。
強化繊維のチョップドストランド5は水等の液体に分散しやすい性質を有するため、下部搬送ベルト11および上部搬送ベルト14による搬送力が加えられる前に液体が供給されると、強化繊維のチョップドストランド5は、搬送ベルト11,14による解繊に先立って分散される。ウォータジェットを用いる場合には、給液圧が高圧なことから、この物理的な力で強化繊維のチョップドストランド5を更に解繊することができる。
[1−2−2.第一貯留パート]
以下、図1を参照して、繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置2の第一貯留パートII,輸送パートIII,導入パートIV,第二貯留パートV,抄造パートVI,希釈パートVIIを説明する。
上述したように、第一貯留パートIIの貯留槽20には、分散溶媒に、解繊された強化繊維9やマトリックス樹脂が投入され分散された分散液が貯留されている。
この貯留槽20には、上部に開口20aが形成され、底部に流出口20bが形成されている。この開口20aは、解繊された強化繊維9(図2および図3参照)やマトリックス樹脂の投入口として機能する。
なお、貯留槽20には、分散溶媒の混合などのためにアジテータ(図示省略)が設けられていてもよい。
[1−2−3.輸送パート,希釈パート]
輸送パートIIIの輸送パイプ30は、上流端部30aが貯留槽20の流出口20bに接続され、下流端部30bが導入部40に接続されている。この輸送パイプ30には、上流から順に、分散液を圧送するポンプP1と、圧送された分散液を攪拌するミキサMとが介装されている。
更に、輸送パイプ30には希釈水導入パイプ81を通じて希釈水が圧入され、分散液の濃度が約10倍〜20倍以上に希釈される。このように分散液を低濃度とすることにより、後述するミキサMや乱流発生装置41での分散効果をより高め、分散状態が良好な繊維強化プラスチック成形体用基材を得ることができる。
希釈水導入パイプ81は、下流端部81aが輸送パイプ30に接続されている。この接続個所は、ミキサMよりも上流側であっても、ミキサMよりも下流側であってもよいが、ミキサMの上流側であるほうが強化繊維の分散性が改善されるため好ましい。
なお、ここで説明する希釈パートVIIでは、希釈水が大量に使用されるため、水の節約の観点から、希釈水として抄紙パートVIで排出される水を再利用している。具体的には、希釈水として、抄紙パートVIのサクションボックス62によって吸引された水分が
循環パイプ82を流通してタンク80に貯められたものを用いている。タンク80に貯留された希釈水は、ポンプP2によって連続的に希釈水導入パイプ81から輸送パイプ30に供給される。
ただし、希釈パートVIIで用いる希釈水としては、サクションボックス62以外のサクションボックス63,64,72(何れも詳細を後述する)によって吸引された水分を用いてもよい。更に言えば、抄造パートVIで排出された水分を再利用しなくてもよい。
ミキサMとしては、スタティックミキサを用いることが好ましい。スタティックミキサは、駆動部が設けられておらず、流通する分散液を静的に攪拌するのでシンプルに構成することができる。このスタティックミキサは、詳細を後述する乱流発生装置41に先立って予備的に分散液を攪拌するものである。ただし、ミキサMとして、プロペラを回転駆動する駆動部を備えたミキサを用いてもよく、また、ミキサMは省略してもよい。
[1−2−4.導入パート]
導入パートIVの導入部40は、輸送パイプ30によって輸送された分散液を貯留部50に導入するものである。また、導入部40は、上流端部40aが輸送パイプ30の下流端部30bに接続され、下流端部40bが貯留部50のインレット50aと接続されている。
なお、図1では導入部40が鉛直方向に対して斜め上方に延びて設けられているものを例示するが、導入部40は、上下方向あるいは水平方向に沿って延びて設けられていてもよい。
この導入部40には、分散液に乱流を発生させる乱流発生装置41が設けられている。
図4に示すように、乱流発生装置41は、分散液を複数に分岐して流通させ且つ流路断面積が変化する乱流発生流路42を有する。ここでは、乱流発生流路42は、5つの流路42a,42b,42c,42d,42eを有するものを例示するが、2〜4または6以上に分岐した流路を有していてもよい。更に言えば、分散液を分岐させずに流通させる乱流発生流路42を用いてもよい。
乱流発生流路42は管状である。乱流発生流路42の流路断面としては、円形状や多角形状のものを挙げることができる。ただし、乱流発生流路42はスリット状であってもよい。この場合、シート状の構造物(いわゆる「フローシート」)によって乱流発生流路42を区画することで、スリット状の乱流発生流路42を形成することができる。
この乱流発生流路42は、流路方向位置によって流路断面積が異なる。つまり、乱流発生流路42は、流路方向に沿って内径が変化し、その流路断面積が変化するように構成されている。
乱流発生流路42において、上流部421は流路断面積S1を有し、流通方向中間部422は流路断面積S2を有し、下流部423は流路断面積S3を有する。これらの流路断面積S1,S2,S3を上流から順に説明する。
上流部421は、強化繊維の引っかかりを抑制するために上流端部42Aの開口が拡大されており、流路断面積S1は上流端部42Aから下流に向かうにつれて縮小する。
流通方向中間部422は、上流部421の下流端からステップ状に拡大した流路断面積S2を有し、この流路断面積の変化により乱流が発生する。
下流部423は、流路断面積S3が下流端42bに向かうにつれて再び縮小する。下流端42Bでは流路断面積が急激に拡大する。このため、下流部423の下流側では、比較的大きな乱流が発生する。
なお、導入部40において、乱流発生装置41の下流側にイブナロール(図示省略)を設けてもよい。イブナロールは千鳥状に穿孔されたロールであり、これらの孔を分散液が流通することで、強化繊維のフロッグを解きほぐすことができる。ただし、分散液における強化繊維の濃度や強化繊維の繊維長によっては、強化繊維の凝集や再凝集を促してしまうおそれもあるため、強化繊維のフロックの原因となるパラメータを考慮して、イブナロール設置の可否を定めることが好ましい。
次に、分散液のパラメータについて説明する。
分散液における強化繊維の濃度(希釈水によって希釈される前の濃度)は、概ね3.0%以下であることが好ましい。この濃度が大きければ生産効率は高まるが、貯留槽20内での強化繊維どうしの再凝集が強くなりやすくなくなる。分散液における強化繊維の濃度が3.0%以下であれば、乱流発生装置41によって強化繊維の再凝集を解きほぐし良好な分散状態を得ることができる。
希釈水導入パイプ81より圧入される希釈水によって希釈された後の分散液における強化繊維の濃度は、乱流発生装置41の分散効果を高め、繊維結束の少ない繊維強化プラスチック成形体用基材を得るという観点から0.5%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましく、0.01%以下がより更に好ましい。なお、この濃度が低いほうが、坪量の均一性の観点からも有利である。
一方、希釈後の分散液における強化繊維の濃度が0.02%以上であると、分散液を脱水して抄造する場合に目付けを確保して生産性を向上させることができる。この濃度の調整は、希釈水の循環量を調整することで行うことができる。
また、乱流発生装置41によって発生される乱流のレイノルズ数は、7000以上であって200000以下であることが好ましく、170000以下であることがより好ましい。このレイノルズ数が大きくなるほど、乱流の発生が促進されて強化繊維の凝集を解きほぐしたり強化繊維のフロックを抑制することができる傾向にあるものの、強化繊維の切れや折れが生じるおそれがある。このため、強化繊維の凝集あるいは再凝集の抑制と強化繊維の切れや折れ(即ち強化繊維の強度)とを考慮して、レイノルズ数が設定されることが好ましい。すなわち、ここでいう乱流のレイノルズ数は、7000以上であれば強化繊維の凝集あるいは再凝集を抑制することができ、170000以下であれば強化繊維の切れや折れを抑制することができる。
また、分散液(分散溶媒)の粘性は、前述した粘剤を添加することで、0.9mPa・s以上であって3.0mPa・s以下とされることが好ましい。この粘性が大きくなるほど、レイノルズ数は同じであっても繊維の分散性に優れ、且つ、強化繊維の切れや折れが少ない繊維強化プラスチック成形体用基材が得られる傾向にある。一方、脱水抵抗が増大して生産性の低下につながるおそれがある。このため、強化繊維の凝集の抑制と生産性とを考慮して、粘性が設定されることが好ましい。すなわち、分散液の粘性が、1.1mPa・sであれば強化繊維の凝集を抑制することができ、1.0mPa・s以下であれば生産性を向上させることができる。ここでいう粘性の設定範囲は、項目[1−1−3.分散液]で上述した高分子化合物(粘剤)の溶解濃度を所定範囲に設定することで達成しうる。
なお、分散液の粘度は、貯留部50から採取した分散液を、80meshのフィルタ(フルイ)で濾過して濾液を採取し、キャノン・フェンスケ粘度計を用いてJIS Z 8803「液体の粘度測定方法」に規定される測定方法に従って測定することができる。
また、分散液の粘度設定に用いる粘剤は、輸送パートIIIにおける希釈パートVIIとの合流部よりも下流側,導入パートIV,貯留パートV,希釈パートVII、即ち、希釈水が循環流通する個所で注入することができる。なお、上記の粘剤は、ポンプP1とミキサMとの間、または、ミキサMと乱流発生装置41との間に注入されることが好ましい。この場合、粘剤の投入口(図示省略)が対応個所に形成される。
[1−2−5.第二貯留パート]
第二貯留パートVの貯留部50は、導入部40から導入された分散液を一時的に貯留するものである。なお、貯留部50には、貯留される分散液の側壁としてプレート部(図示省略)が設けられている。
この貯留部50は、導入部40から離隔するほど貯留される分散液の水深が浅くなるように傾斜した底部50bを有している。この底部50bは開口を有し、この開口に沿って後述するボトムワイヤ装置60の傾斜ボトムワイヤ61が走行する。
[1−2−6.抄造パート]
抄造パートVIは、傾斜ボトムワイヤ61を有するボトムワイヤ装置60と、トップワイヤ(搬送ベルト)71を有するトップワイヤ装置(液面部移動装置)70とを備えている。
以下、ワイヤ装置60,70について詳細に説明する。
ボトムワイヤ装置60は、無端状の傾斜ボトムワイヤ61と、この傾斜ボトムワイヤ61が巻回された複数のロール64a,64b,64c,64d,64e,64f,64gと、三種のサクションボックス62,63,65とを有する。
傾斜ボトムワイヤ61は、分散液から湿基材を抄造する領域(以下、「抄造領域」という)61aを有する。この抄造領域61aは、貯留部50の下部(底部50bの開口部)から分散液の液面69aよりも上方にわたって斜め上方に向かう領域である。
複数のロール64a,64b,64c,64d,64e,64f,64gの少なくとも一つは駆動ロールであり、この駆動ロールは傾斜ボトムワイヤ61による抄造速度(ボトム抄造速度V3)で回転する。すなわち、ロール64a,64b,64c,64d,64e,64f,64gに巻回された傾斜ボトムワイヤ61はボトム抄造速度V3で駆動される。このため、傾斜ボトムワイヤ61の抄造領域61aは、分散液内から分散液の液面69aよりも上方にわたって斜め上方に向けて移動する領域といえる。
三種のサクションボックス62,63,65は、分散液の液面69aよりも下方に吸引口62aが設けられた上流サクションボックス(下部吸引装置)62と、分散液の液面69aと同レベル近傍に吸引口63aが設けられるとともに後述する液面部移動領域71aの下流端でトップワイヤ71と傾斜ボトムワイヤ61とが離隔する部分の直下流に設けられたトランスファーサクションボックス(トランスファー吸引装置)63と、分散液の液面69aよりも上方に吸引口65aが設けられた下流サクションボックス65に大別することができる。このトランスファーサクションボックス63は、液面部移動領域61aの下流端と対応する箇所の直下流に設けられている。
上流サクションボックス62は、吸引口62aから抄造領域61aを介して分散液の水分を下方に吸引するものである。ここで吸引された水分は、タンク80に流送され、希釈水として輸送パイプ30に圧入される。この上流サクションボックス62は、分散液から湿基材を抄造するために吸水するものであり、次に説明するサクションボックス63,65よりも大量の水分を吸収する。
トランスファーサクションボックス63は、吸引口63aから抄造領域61aを介して傾斜ボトムワイヤ上61の湿基材を下方の傾斜ボトムワイヤ61に吸引するものである。このトランスファーサクションボックス63は、ボトムワイヤ装置60の傾斜ボトムワイヤ61とトップワイヤ装置70のトップワイヤ71との間の湿基材を下方の傾斜ボトムワイヤ61(抄造領域61aの上面)に引き付ける。もちろん、ここでも湿基材の水分を傾斜ボトムワイヤ61の下方へ吸引する。
下流サクションボックス65は、トランスファーサクションボックス63によりも下流側に配置されており、トランスファーサクションボックス63で吸水された湿機材から更なる吸水を促進するものである。この下流サクションボックスは、吸引口65aから傾斜ボトムワイヤ61上の湿基材の水分を下方に吸引する。
トップワイヤ装置70は、貯留部50に貯留された分散液の液面部69を抄造領域61aの移動に対応して、具体的には、上流から下流へ向けて移動させる装置である。
このトップワイヤ装置70は、無端状のトップワイヤ71と、このトップワイヤ71が巻回された複数のロール73a,73b,73c,73dと、サクションボックス(上部吸引装置)72とを有する。
トップワイヤ71は、分散液の液面部69に沿う液面部移動領域71aを有する。
複数のロール73a,73b,73c,73dの少なくとも一つは駆動ロールであり、この駆動ロールはトップ抄造速度V4で回転する。液面部移動領域71aは抄造領域61aの移動に対応して移動するものであり、ここでは、トップ抄造速度V4と上記のボトム抄造速度V3とが等しく(V3=V4)設定されている。このため、ロール73a,73b,73c,73dに巻回されたトップワイヤ71は、ボトムワイヤ61と同じ速度で駆動される。具体的に言えば、トップワイヤ71の液面部移動領域71aは、ボトムワイヤの抄造領域61aと同じ速度で上流から下流へ向けて移動する。
複数のロール73a,73b,73c,73dのうち、液面部移動領域71aの下流端に配置されるロール73aは、トップワイヤ71を傾斜ボトムワイヤ61上の湿基材に圧接させる圧接ロールである。
サクションボックス72は、液面部移動領域71aを介して分散液の水分を上方に吸引するものであり、吸引口72aが分散液の液面69aの上方に設けられている。
[2.作用および効果]
本発明の一実施形態にかかる強化繊維解繊装置1および繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置2は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
[2−1.強化繊維解繊装置]
はじめに、解繊パートIにおける強化繊維解繊装置1の作用および効果について説明する。
下部搬送装置10に強化繊維のチョップドストランド5を搬送方向と交差する配向姿勢で載置するホッパ16は、下部搬送ベルト11に対して上方であって上流端11aと搬送方向中間部11bとの間に設けられているため、強化繊維解繊装置1における上流側に強化繊維のチョップドストランド5を載置することができる。
下部搬送装置10の下部搬送ベルト11と上部搬送装置13の上部搬送ベルト14とによって強化繊維のチョップドストランド5が上下から挟みこまれて搬送され、この際に、上部搬送ベルト14が特に下流駆動ロール15b周辺において下部搬送ベルト11よりも高速で搬送駆動される。このため、搬送方向と交差する配向姿勢で上載された強化繊維のチョップドストランド5には、上部搬送ベルト14によって、下部搬送ベルト11よりも高速でかつ下部搬送ベルト11と同一方向に搬送力が加えられる。
この搬送力により、同一方向に配向されて集束された強化繊維のチョップドストランド5に配向方向に対して交差する方向の力(剪断力)が作用することになり、強化繊維のチョップドストランド5を細かく分離して良好に解繊することができる。
搬送方向に伸縮可能な上部搬送ベルト14は、搬送面141の上流端14aに設けられた上流駆動ロール15aによって下部搬送ベルト11と等速で搬送駆動されるとともに、搬送面141の下流端14cに設けられた下流駆動ロール15bによって下部搬送ベルト11よりも高速で搬送駆動される。このため、強化繊維のチョップドストランド5に搬送力を加える領域において、上部搬送ベルト14の搬送速度が下部搬送ベルト11と等しい速度から次第に速度上昇される。
したがって、下部搬送ベルト11に載置され搬送されている強化繊維のチョップドストランド5が上部搬送ベルト14により搬送されながら徐々に解繊される。これにより、解繊される強化繊維の配向姿勢の変動が抑えられ、確実な解繊に寄与しうる。また、上部搬送ベルト14の搬送速度が下部搬送ベルト11の搬送速度よりも次第に高速になることから、強化繊維のチョップドストランド5を確実に解繊することができる。
押さえロール15eは、上流駆動ロール15aと下流駆動ロール15bとの間で上部搬送ベルト14を下方に押さえつけるため、上部搬送ベルト14を強化繊維に対して確実に接触させることができることにより、更に確実に解繊することができる。
ホッパ16よりも下流側であって上部搬送装置13よりも上流側にシャワー17が設けられ、このシャワー17は、強化繊維のチョップドストランド5に液体を供給する。このため、強化繊維のチョップドストランド5に上方から搬送力が加えられる前に、強化繊維のチョップドストランド5に液体が供給される。
したがって、ベルト11,14による解繊に先立って、強化繊維のチョップドストランド5を予備的に解繊することができる。強化繊維のチョップドストランド5は水等の液体に分散しやすい性質を有することは、予備的な解繊に寄与する。これにより、強化繊維のチョップドストランド5を更に確実に解繊することができる。
上部搬送ベルトの搬送面141は、上流端14aが下部搬送ベルト11の搬送方向中間部11bに配置され、下流端部14cが下部搬送ベルト11の下流端11cよりも突出して配置され、また、貯留槽20は、下部搬送ベルト11の下流端11cの下方であり、上部搬送ベルト14の下流端14cの下方に設けられているため、解繊された強化繊維9を分散溶媒の貯留された貯留槽20に投下することができる。このようにして、繊維強化プラスチック成形体用基材の製造にかかる工程を連続的に実施することができ、生産性の向上に寄与する。
このようにして、分散液において強化繊維を良好に分散することで、繊維強化プラスチック成形体用基材の品質向上に寄与する。
[2−2.繊維強化プラスチック成形材用基材抄造装置]
次に、繊維強化プラスチック成形材用基材抄造装置2の作用および効果について説明する。
[2−2−1.第一貯留パート〜導入パート,希釈パート]
まず、第一貯留パートII〜導入パートIV,希釈パートVIIにおける繊維強化プラスチック成形材用基材抄造装置2の作用及び効果について説明する。
第一貯留パートIIでは、貯留槽20の開口部20aから解繊された強化繊維9が分散溶媒に投入され、貯留槽20に分散液が貯留される。この分散液は、輸送パイプ30の上流端部30aが接続された流出口20bから流出する。
輸送パートIIIでは、輸送パイプ30内において、分散液がポンプP1に圧送されて流通する。このとき、ミキサMによって分散液が攪拌される。すなわち、乱流発生装置41に先立ってミキサMにより攪拌される。これが、強化繊維のフロック抑制に寄与する。
ミキサMにスタティックミキサが用いられていれば、駆動部を有する他のミキサによる攪拌に比較して、分散液は緩やかに攪拌される。このため、分散液中の強化繊維の切れや折れを抑制することができるとともに、分散液中における強化繊維どうしの距離の偏りを均すことで良好な分散状態とすることが可能である。
輸送パートIIIで輸送される分散液は、希釈パートVIIから供給される希釈液によって希釈される。これにより、輸送パートIIIを流通する分散液において、強化繊維の分散性を向上させることができる。また、希釈パートVIIで用いる希釈水は、サクションボックス62によって吸引された水分を循環的に再利用するため、用水にかかるコストを抑えることができる。
導入パートIVでは、導入部40を分散液が流通する。この導入部40には、分散液に乱流を発生させる乱流発生装置41が設けられている。このため、乱流発生装置41を流通した分散流には乱流が発生する。
この乱流発生装置41では、流路断面積が変化する個所で乱流が発生する。特に、分散液の流通量に対して流路断面積の変化が大きいほど発生する乱流が大きくなる。乱流発生装置41の乱流発生流路42において、上流部421から流通方向中間部422に分散液が流通するときに比較的小さな乱流が発生し、下流部423から分散液が流出するときに比較的大きな乱流が発生する。このようにして、乱流を確実に発生させることができる。
分散液の濃度,粘性,レイノルズ数や強化繊維の繊維長,繊維径といった各パラメータによるが、乱流発生装置41によって発生される乱流によって、導入部40の上流で強化繊維どうしの距離がばらついていたとすれば、このばらつきを均して導入部40の下流の貯留部50に供給することができ、また、導入部40の上流で強化繊維が凝集していたとすれば、この凝縮を乱流により解きほぐして導入部40の下流の貯留部50に供給することができる。したがって、貯留部50における強化繊維の凝集あるいは再凝集を抑制することができる。延いては、繊維強化プラスチック成形体用基材への凝集した強化繊維の混在を抑制することができる。
分散液を層流または層流から乱流への遷移域で輸送する技術では、分散液における強化繊維どうしの距離を変動させにくくするだけなのに対し、繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置2は、乱流発生装置41により、強化繊維どうしの距離を均し、凝集した強化繊維を乱流により解きほぐすことで、いわば積極的に強化繊維どうしのフロックを抑制することができる。したがって、強化繊維のフロックを確実に抑制することができ、繊維強化プラスチック成形体用基材の品質を向上させることができる。また、インラインで強化繊維のフロックを確実に抑制することができ、長時間にわたる繊維強化プラスチック成形体用基材の安定生産に寄与する。
また、乱流発生流路42は管状であるため、スリット状のものに比較して効果的に乱流を発生させることができる。
[2−2−2.第二貯留パートおよび抄造パート]
次に、第二貯留パートVおよび抄造パートVIにおける繊維強化プラスチック成形材用基材抄造装置2の作用及び効果について説明する。
第二貯留パートVでは、抄造パートVIに移行する分散液が貯留部50に一時的に貯留される。そして、抄造パートVIでは、貯留部50に貯留された分散液から湿基材が抄造される。この抄造パートVIでは、ボトムワイヤ装置60とトップワイヤ装置70とによって湿基材が抄造される。
トップワイヤ装置70は、湿基材が抄造されるときに、抄造領域61aの移動に対応して上流から下流へ向けて分散液の液面部69を移動させる。これにより、分散液の液面部69において、強化繊維のフロックを抑制することができる。また、上下のワイヤ61,71で脱水した湿基材を重ね合わせることができ、高坪量化も可能となる。この結果、湿基材に強化繊維のフロックが混在することを抑制することができ、強化繊維の配向や密度を均一なものにすることができ、さらに坪量を上げることも可能となる。よって、繊維強化プラスチック成形体用基材の品質を向上させることができる。これにより、繊維強化プラスチック成形体用基材を成形した繊維強化プラスチック成形体の剛性や強度を向上させることができる。
貯留部50に貯留された分散液には、ボトムワイヤ装置60およびトップワイヤ装置70のそれぞれによって流れが作られる。
貯留部50では、傾斜ボトムワイヤ61による分散液の流速F1とトップワイヤ71による分散液の流速F2とが発生する。
傾斜ボトムワイヤ61による分散液の流速F1は、上方に向かうに連れて小さくなる。これは、貯留部50の下部から分散液の液面69aよりも上方にわたって斜め上方に向けて移動する抄造領域61aを有する傾斜ボトムワイヤ61によって分散液が引きずられるからである。
また、トップワイヤ71によって生じる分散流の流速F2は、下方に向かうに連れて小さくなる。これは、貯留部50に貯留された分散液の液面部69に沿って上流から下流へ向けて液面部移動領域71aを有するトップワイヤ71によって分散液が引きずられるからである。
これらより、傾斜ボトムワイヤ61によって生じる下方から上方へ向けて小さくなる分散流の流速F1とトップワイヤ71によって生じる上方から下方へ向けて小さくなる分散流の流速F2とが合成され、貯留部50の上下方向における分散流の流速を均すことができる。さらに、抄造領域61aの移動速度(ボトム抄造速度V3)と液面部移動領域71aの移動速度(トップ抄造速度V4)とが等しいため、貯留部50の上下方向における分散流の流速のばらつきを更に抑制することができる。
次に、湿基材の抄造について説明する。
ボトムワイヤ装置60には、傾斜ボトムワイヤ61の抄造領域61aを介して分散液を下方に吸引する上流サクションボックス62が備えられている。このため、傾斜ボトムワイヤ61上に強化繊維およびマトリックス樹脂を含む湿基材が抄造される。傾斜ボトムワイヤ61上に抄造される湿基材は、上流サクションボックス62の調整によって、傾斜ボトムワイヤ61の抄造方向に沿った配向(縦の配向)とすることができる。
トップワイヤ装置70には、トップワイヤ71の液面部移動領域71aを介して分散液を上方に吸引するサクションボックス72が備えられている。このため、上流から下流に向かうにつれてトップワイヤ71直下の分散液中の強化繊維およびマトリックス樹脂の濃度が上昇する。これにより、トップワイヤ71下に強化繊維およびマトリックス樹脂を含む湿基材が抄造されうる。トップワイヤ71下に抄造される湿基材は、サクションボックス72の調整によって、トップワイヤ71の抄造方向に沿った配向(縦の配向)とすることができる。
これらのワイヤ装置60,70により、縦方向に高度に配向する湿基材を抄造することができ、延いては、縦の高配向を有する繊維強化プラスチック成形体用基材を製造することができる。なお、サクションボックス62,72を調整することにより、湿基材の縦横比を調整することができるのは言うまでもない。
トップワイヤ装置70には、トップワイヤ71を傾斜ボトムワイヤ61上の湿基材に圧接させる圧接ロール73aを有するため、トップワイヤ71により抄造された湿基材は傾斜ボトムワイヤ61により抄造された湿基材上に圧接される。この圧接ロール73aの圧接により、湿基材から効率よく水分を除去することができる。
湿基材が水分とともにトランスファーサクションボックス63あるいは下流サクションボックス65により下方に吸引されるため、傾斜ボトムワイヤ61上の湿基材にトップワイヤ71下の湿基材が引き付けられ、湿基材を下流側に案内することができる。
〔その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した一実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
上述した一実施形態の強化繊維解繊装置1では、シャワー17がホッパ16よりも下流側に設けられたものを説明したが、シャワー17がホッパ16よりも上流側に設けられてもよい。
また、シャワー17は省略してもよい。この場合、例えば強化繊維解繊装置1の下流部を貯留槽20に貯留された分散溶媒に浸漬し、上部搬送ベルト14の搬送面141が水没するように設けられてもよい。この場合、下部搬送ベルト11の搬送面111と上部搬送ベルト14の搬送面141とが下流側に向かうにつれて下方に位置するように傾斜して配置される。かかる構成によれば、シャワー17が設けられるのと同様に、強化繊維のチョップドストランドを確実に解繊することができる。
また、本強化繊維解繊装置1では、少なくとも下部搬送ベルト11の搬送速度V1と上部搬送ベルト14の搬送速度V2とが異なっていればよい。例えば、上部搬送ベルト14の搬送速度V2が一定に設定されてもよい。また、下部搬送ベルト11の搬送速度V1よりも上部搬送ベルト14の搬送速度V2が低速に設定されてもよい。この場合、上部搬送ベルト14の搬送速度V2を搬送速度V1から次第に低下させるようにしてもよい。また、上部搬送ベルト14の搬送速度V2を一定に設定し、下部搬送ベルト11における搬送面111の搬送速度V1を次第に速度上昇するように設定したり次第に速度低下するように設定してもよい。
また、上部搬送装置13は上述した配置に限られない。例えば、上部搬送ベルト14の搬送面141の下流端が、下部搬送ベルト11の搬送面111の下流端12bよりも上流に配置されていてもよい。
また、上部搬送ベルト14を省略し、搬送方向に並んで設けられるとともに強化繊維のチョップドストランド5を上方から搬送するロールを設けてもよい。これらのロールの少なくとも一部が下部搬送ベルトの搬送速度V1と異なる速度で回転することで、チョップドストランドを解繊することができる。
また、強化繊維解繊装置1の下流側に貯留槽20が設けられていなくてもよい。つまり、強化繊維解繊装置1を繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置2とは切り離して用いてもよい。
上述した繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置2では、分散液を貯留部50へ導入する導入部40において分散液の流れに乱流を発生させることが重要であり、少なくとも流通する分散液に乱流を発生させるものを備えていればよく、その詳細構成は上述した構成に限られない。例えば、乱流発生装置41における乱流発生流路42の流路断面積が下流端のみ縮小されていてもよい。
また、サクションボックス62,63,72のうち特に湿基材を所定の経路に案内するサクションボックス63では、対向するロールが配置される個所やベルト搬送路の曲がり角といった個所に配置される場合にはサクションロールを用いてもよい。
また、トップワイヤ71に替えて、ゴムやフィルム等からなる他の搬送ベルト(脱水作用のないベルト)を用いてもよい。この場合、搬送ベルトによって液面部69が移動されるため、湿機材の品質を向上させることができる。
こうした搬送ベルトを用いる場合ワイヤのような脱水効果は得られず、搬送ベルト下に湿基材を抄造するのは困難と考えられるため、トップベルト装置70による抄造に用いるサクションボックス72やトランスファーサクションボックス63などの構成は省略される。
さらに、搬送ベルトを用いない液面部移動装置も考えられる。すなわち、少なくとも上流から下流へ向けて液面部69を移動させる構成が備えられていればよく、このような構成としては、所定の方向に回転駆動されるロールの一部が液面部69に浸漬されるものや、液面部69の液面と平行に空気を流通させるブロアや、液面部69に浸漬されて分散液を液面に沿って下流に圧送するポンプやミキサなどを挙げることができる。
1 強化繊維解繊装置
2 繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置
5 強化繊維のチョップドストランド(集合体)
9 解繊された強化繊維
10 下部搬送装置
11 下部搬送ベルト
111 搬送面
11a 上流端
11b 搬送方向中間部
11c 下流端
12a,12b ロール
13 上部搬送装置
14 上部搬送ベルト
141 搬送面
14a 上流端
14b 搬送方向中間部
14c 下流端
15a 上流駆動ロール
15b 下流駆動ロール
15c,15d 従動ロール
15e 押さえロール
16 ホッパ
16a 切り欠
17 シャワー(給液装置)
20 貯留槽
20a 開口
20b 流出口
30 輸送パイプ
30a 上流端部
30b 下流端部
40 導入部
40a 上流端部
40b 下流端部
41 乱流発生装置
42 乱流発生流路
42a,42b,42c,42d,42e 各流路
42A 上流端
42B 下流端
421 上流部
422 流通方向中間部
423 下流部
50,500 貯留部
50a インレット
50b 底部
60 ボトムワイヤ装置
61,610 傾斜ボトムワイヤ
61a.611 抄造領域
62 上流サクションボックス(下部吸引装置)
62a 吸引口
63 トランスファーサクションボックス(トランスファー吸引装置)
63a 吸引口
64a,64b,64c,64d,64e,64f,64g ロール
65 下流サクションボックス
69,690 液面部
69a 液面
70 トップワイヤ装置(液面部移動装置)
71 トップワイヤ(搬送ベルト)
71a 液面部移動領域
72 サクションボックス(上部吸引装置)
72a 吸引口
73a 圧接ロール
73b,73c,73d その他のロール
80 タンク
81 希釈水導入パイプ
81a 下流端部
82 循環パイプ
I 解繊パート
II 第一貯留パート
III 輸送パート
IV 導入パート
V 第二貯留パート
VI 抄造パート
VII 希釈パート
1,P2 ポンプ
M (スタティック)ミキサ
1 下部搬送速度
2 上部搬送速度
3 ボトム抄造速度
4 トップ抄造速度
1 傾斜ボトムワイヤ61による分散液の流速
11 貯留部500の分散液の流速
2 トップワイヤ71による分散液の流速

Claims (12)

  1. 強化繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含む分散液から前記強化繊維と前記マトリックス樹脂からなる繊維強化プラスチック成形体用基材を抄造する装置であって、
    前記分散液が貯留される貯留槽と、
    前記貯留槽から輸送される前記分散液を一時的に貯留する貯留部と、
    前記貯留槽と前記貯留部との間に設けられ、前記貯留部の下方に突出して形成され、前記貯留部に前記分散液を導入する導入部と、
    前記貯留部に貯留される前記分散液の分散液液面よりも下方の前記貯留部内における前記貯留部の下部から前記分散液液面よりも上方にわたって斜め上方に向けて移動する抄造領域を有する傾斜ボトムワイヤと、
    前記導入部に設けられ、前記貯留部に導入される前記分散液に乱流を発生させる乱流発生装置と、を備えた
    ことを特徴とする、繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置。
  2. 前記乱流発生装置は、前記分散液を複数に分岐して流通させ且つ流路断面積が変化する乱流発生流路を有する
    ことを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置。
  3. 前記乱流発生流路は、管状である
    ことを特徴とする、請求項2に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置。
  4. 前記乱流発生流路の下流端は流路断面積が縮小されている
    ことを特徴とする、請求項2または3に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置。
  5. 前記貯留槽と前記導入部との間に設けられ、流通する前記分散液を静的に攪拌するスタティックミキサを備えた
    ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置。
  6. 前記分散液における前記強化繊維の濃度が0.5%以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置。
  7. 前記乱流発生装置により発生される乱流のレイノルズ数が、7000以上であって200000以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置。
  8. 前記分散液の粘性が0.9mPa・s以上であって3.0mPa・s以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造装置。
  9. 強化繊維と熱可塑性のマトリックス樹脂とを含む分散液から前記強化繊維と前記マトリック樹脂からなる繊維強化プラスチック成形体用基材を抄造する方法であって、
    前記分散液が貯留された貯留槽から前記分散液を一時的に貯留する貯留部に前記分散液を輸送し導入する導入工程と、
    前記貯留部に貯留された前記分散液の分散液液面よりも下方の前記貯留部内における前記貯留部の下部から前記分散液液面よりも上方にわたって斜め上方に向けて移動する抄造領域を有する傾斜ボトムワイヤを作動させて、前記抄造領域において前記分散液から前記強化繊維と前記マトリックス樹脂とを含んでなる湿基材を抄造する
    抄造工程と、を有し、
    前記導入工程において前記貯留部に導入される前記分散液に乱流を発生させる
    ことを特徴とする、繊維強化プラスチック成形体用基材抄造方法。
  10. 前記分散液における前記強化繊維の濃度が0.5%以下である
    ことを特徴とする、請求項9に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造方法。
  11. 前記乱流発生工程で発生する乱流のレイノルズ数が、7000以上であって200000以下である
    ことを特徴とする、請求項9または10に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造方法。
  12. 前記分散液の粘性が0.9mPa・s以上であって3.0mPa・s以下である
    ことを特徴とする、請求項9〜11の何れか1項に記載の繊維強化プラスチック成形体用基材抄造方法。
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