JP6285882B2 - ヒアルロン酸誘導体および医療用製剤 - Google Patents
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Description
特に、これらの接着剤は一度、接着剤が硬化すると再度接着することはできず、接着剤をさらに塗布する必要があった。
更に本発明は、前記一般式(A)で表される構造が、ヒアルロン酸構造が有する全カルボキシル基あたり1〜90モル%導入されている前記のヒアルロン酸誘導体である。
更に本発明は、ヒアルロン酸誘導体の粘度平均分子量が1,000〜15,000,000である前記のヒアルロン酸誘導体である。
本発明で使用されているヒアルロン酸は、例えば動物組織から抽出したもの、または発酵法で製造したものどちらでも使用できる。発酵法で使用する菌株はストレプトコッカス属のヒアルロン酸生産能を有する微生物であり、ストレプトコッカス・エクイFM−100(特開昭63−123392号公報)、ストレプトコッカス・エクイFM−300(特開平2−234689号公報)が挙げられる。これらの変異株を用いて培養、精製されたものを用いる。またヒアルロン酸の分子量は、約1×105〜1×107ダルトンのものが好ましい。なお本発明でいうヒアルロン酸は、そのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムの塩をも包含する。
本発明におけるヒアルロン酸における結合性を有する官能基のモル数に対する、一般式(A)で表される官能基群のモル数の比率、即ち官能基の導入率(置換度)は、ヒアルロン酸に構造を構成している全カルボキシル基量に対して1〜90モル%であり、好ましくは5〜80モル%、より好ましくは10〜70モル%、更により好ましくは18〜49モル%である。但し、ヒアルロン酸における官能基とは具体的には6員環に結合しているカルボキシル基に限定されず、カルボキシル基もしくはヒドロキシル基、またはヒアルロン酸末端にのみ存在するヒドロキシル基のうちの1種または2種以上の官能基を表す。すなわち、一般式(A)はヒアルロン酸の末端ヒドロキシル基とエステル、エーテル基などで結合していても、環状6員環に結合しているカルボキシル基と、エステル基、アミド基により結合していてもよい。好ましくは後者であり、側鎖として上記一般式(A)で表されている化学構造式を有する基がヒアルロン酸と結合している場合である。側鎖に導入する上記式(A)の構造や導入率によって、接着性能は変化し、目的に応じた最適な接着性能を持つヒアルロン酸誘導体を設計し、かつ製造することができる。
本発明のヒアルロン酸誘導体の粘度平均分子量は1000〜1500万であり、好ましくは低分子量領域では1100〜10000、高分子量領域では10万〜1000万であり、より好ましくは低分子量領域では2000〜8000、高分子量領域では50万〜1000万であり、更により好ましくは低分子量領域では3000〜7000、高分子量領域では80万〜1000万である。このとき、本発明のヒアルロン酸誘導体としては、共有結合からなる化学架橋や、静電相互作用によるイオン架橋、ファンデルワールス力、疎水性相互作用による物理架橋などの架橋構造を有し、粘度平均分子量が測定できないヒアルロン酸誘導体を含む。
低分子量側は、接着性に加えて皮膚表面から体内に吸収されるような美容用途や保水力を向上させるための添加剤用途で好ましく、高分子量側は接着性に加え、潤滑性が求められる膝関節軟骨損傷治療用などの用途において好ましい。
本発明のヒアルロン酸誘導体の好ましい粘弾性としては、温度30℃の条件で、レオメーターとよばれる動的粘弾性測定装置を用い、角速度10rad/secで測定したときの絶対粘度が、0.5〜100Pa・secが好ましく、さらに好ましくは2〜30Pa・secである。この範囲が注入型ゲルとしての取り扱い性の良さと体内での滞留性を同時に満足させられる範囲であるが、使用目的により適宜変更できる。
上記式(A)で表される化合物は、例えば、プロトカテク酸エチルとエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、2−アミノエタノール、4−アミノエタノール、エチレングリコール、テトラエチレングリコール等から通常用いられている合成方法により製造できる。さらに、上記式(A)で表される構造を側鎖に有するヒアルロン酸誘導体は、ヒアルロン酸ナトリウムと、プロトカテク酸とジアミン等より合成された化合物を適切な溶媒に溶解し、1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride等を用いて反応させ、その後精製を行うことによって、製造できる。
本発明のヒアルロン酸誘導体は使用目的に応じて、種々の形態で提供できる。例えば、純水やリン酸緩衝生理食塩水の溶液の形態でも利用可能である。また、種々の成形体に加工することも可能で、例えばスポンジの如き多孔体、不織布、フィルム、シート等の形状に成形することができる。成形体を製造する方法としては、例えば凍結乾燥法、乾式製膜、湿式製膜、凝固紡糸、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法などが挙げられる。
以下の実施例に使用したヒアルロン酸ナトリウムは鶏冠由来、あるいはストレプトコッカス属由来のヒアルロン酸ナトリウムである。鶏冠由来のヒアルロン酸ナトリウムは粘度平均分子量が1,000,000Daのヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)、粘度平均分子量が1,600,000〜2,900,000Daのヒアルロン酸ナトリウム(キユーピー(株)製)等が市販されている。ストレプトコッカス属由来のヒアルロン酸ナトリウムは粘度平均分子量が1,800,000〜2,200,000Daのヒアルロン酸ナトリウム(キッコーマンバイオケミファ(株)製)等が市販されており、これらを購入して用いた。
その他の試薬については、テトラヒドロフラン、プロトカテク酸エチル、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、グルタミン酸、ヒスチジン、β−アラニル−L−ヒスチジン(L-Carnosine)は和光純薬工業(株)製を、1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride(以下EDCと称する。)は東京化成工業(株)製を使用した。
一般式(A)で表される官能基等を導入したヒアルロン酸誘導体の官能基種類の特定、官能基の導入量(カルボキシル基の置換度)については、1H−NMR(Bruker Biospin製 AVANCE III HD 500)測定を行い、その得られたスぺクトルを解析して求めた。具体的には、得られたNMRスペクトルのヒアルロン酸由来のメチルカルボニルアミノ基中のメチル基の水素原子に係る積分値と側鎖のカルボキシル基に導入した官能基のベンゼン環の水素原子に係る積分値より、ヒアルロン酸の側鎖に導入された官能基の定量を行い、側鎖のカルボキシル基に対する置換度を算出した。
ヒアルロン酸誘導体を0.2mol/L塩化ナトリウム100mLに溶かした水溶液の流下時間が0.2mol/L塩化ナトリウム水溶液の試液の流下時間の2.0〜2.4倍となる量を求め,0.2mol/L塩化ナトリウム水溶液の試液に溶かして正確に100mLとし,試料溶液(1)とした.試料溶液(1)を16mL,12mL及び8mLずつを正確に量り,それぞれに0.2mol/L塩化ナトリウム試液を加えて正確に20mLとし,試料溶液(2),試料溶液(3)及び試料溶液(4)とする.試料溶液(1),試料溶液(2),試料溶液(3)及び試料溶液(4)につき,ウベローデ型粘度計を用いて30℃で試験を行った。
粘度平均分子量は、下記式に基づいて、算出した。
接着性能を評価するために、ブタモモ肉を使ったずりせん断破壊試験を行った。使用したブタモモ肉は20mm×60mm、厚み2mmの大きさにカットし2枚の試験片を切り出した。その2枚の試験片の重なり部分が20mm×20mmとなるようにして(図1、図2参照。)、テンシロン万能試験機を用いて試験を行った。
接着剤として用いるヒアルロン酸誘導体は次の方法でシート状のサンプルにした。まず、ヒアルロン酸誘導体の目付量が2.5mg/cm2となるように、ヒアルロン酸誘導体の水溶液を凍結乾燥し、シート状に加工した。このヒアルロン酸誘導体のシート状サンプルを10mm×20mmの大きさに切り出し、ずりせん断破壊試験用のサンプルとし、ブタモモ肉で挟み試験用サンプルを作成した。
また実施例2,9においては、上記方法で一旦接着力を測定したずりせん断破壊試験用サンプルをはがし、接着剤やヒアルロン酸誘導体シート状サンプル、その他の接着剤となるものを新たに付けることなく、2枚の試験片を同じ位置同士が重なり部分となるように再度貼り合わせ、再度接着力を測定評価した。
実施例1で得たヒアルロン酸誘導体、および市販のヒアルロン酸ナトリウムを1wt%の濃度でリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、粘弾性測定装置(レオメータ)ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン製RFSIIIを用いて角速度10Rad/Sec、温度30℃で絶対粘度を測定した。絶対粘度が低い素材は、注射器を用いてヒアルロン酸誘導体を患部に直接投与すると言った利用法も可能となる。
プロトカテク酸エチル182重量部をエチレンジアミン300重量部に溶解し、窒素雰囲気下で130℃で還流した。二十時間反応させた後、減圧することにより、系中からエチレンジアミンを除去した。得られた生成物はクロロホルムで精製し、N−(2−アミノエチル)−3,4−ジヒドロキシベンズアミド(以下、C2アミンと称する。)186重量部(収率95%)を得た。同様の方法でN−(4−アミノブチル)−3,4−ジヒドロキシベンズアミド(以下、C4アミンと称する。)も合成した。
その後、透析精製を行い、凍結乾燥し目的物を得た。確認は1H−NMR(Bruker Biospin製 AVANCE III HD 500)により行い、目的物の生成を確認し、カルボキシル基に導入された置換基の種類と置換度を算出し、また置換基導入後の粘度平均分子量を測定した。
粘度平均分子量100万のヒアルロン酸ナトリウム300重量部をテトラヒドロフラン/水=1/1(v/v)1200000重量部に溶解し、0.1MのHCl溶液を用いて、pH=5.5に調整した。その後、C2アミン37重量部(ヒアルロン酸のカルボキシル基100等量に対し、25等量)とEDC144重量部、グルタミン酸28重量部(ヒアルロン酸のカルボキシル基100等量に対し、25等量)を添加し、三時間反応させた。
その後、透析精製を行い、凍結乾燥し目的物を得た。確認は1H−NMR(Bruker Biospin製 AVANCE III HD 500)により行い、目的物の生成を確認し、カルボキシル基に導入された置換基の種類と置換度を算出し、また置換基導入後の粘度平均分子量を測定した。
生体用接着剤の比較サンプルとして帝人ファーマで販売しているフィブリングルー系の組織接着剤であるボルヒール(登録商標)をヒアルロン酸誘導体の代わりに用いた。ボルヒールを使用方法説明書通りに使用し、実施例1等と同じ大きさのブタモモ肉の試験片を同様の操作にて接着し、ずりせん断破壊試験を行い、接着力を評価した。結果を表1に纏めた。なお、この比較例2のずりせん断破壊試験用のサンプルは、実施例2,9のような再度接着力評価を試みたところ、接着剤の類を使用することなく、再度貼り合わせることができなかった。結果を表1、表2に纏めた。
精製ヒアルロン酸ナトリウムの比較サンプルとして、生化学工業株式会社アルツディスポ(登録商標)関節注25mgを精製し、凍結乾燥し、実施例1と同様のシート状のサンプルを作成した。実施例1のC2アミンを導入したヒアルロン酸誘導体のシート状サンプルの代わりに、上記のヒアルロン酸ナトリウムのシート状サンプルを用いて、ずりせん断破壊試験を行い実施例1と同様に接着力を評価した。結果を表1に纏めた。
参考例として、20mm×60mm、厚み2mmの大きさにカットしたブタモモ肉試験片1枚のみを用いて、接着力評価と同じ操作にてテンシロン万能試験機を用いて試験を行った。結果を表1に掲載した。
2 所定の大きさにカットしたブタモモ肉の試験片の他方
3 2つの試験片を接着している本発明のヒアルロン酸誘導体等からなるシート状サンプル
Claims (4)
- 下記一般式(A)で表される構造を有するヒアルロン酸誘導体であり
前記一般式(A)で表される構造のうち、下記一般式(B)で表される部分の化学構造が、2,3−ジヒドロキシベンゾイル基、3,4−ジヒドロキシベンゾイル基、2,3,4−トリヒドロキシベンゾイル基、3,4,5−トリヒドロキシベンゾイル基、または2,3−ジヒドロキシ−5−メチル−ベンゾイル基である前記ヒアルロン酸誘導体。
- 前記一般式(A)で表される構造が、ヒアルロン酸構造が有する全カルボキシル基あたり1〜90モル%導入されている請求項1に記載のヒアルロン酸誘導体。
- ヒアルロン酸誘導体の粘度平均分子量が1,000〜15,000,000である請求項1または2に記載のヒアルロン酸誘導体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒアルロン酸誘導体を含む医療用製剤。
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