本発明の実施の形態における水中航走体検出装置1000の構成について、図に基づいて説明する。
図1は、水中航走体検出装置1000の構成を示すブロック図である。図2は、水中航走検出装置1000の使用例を概念的に示す図である。
図1に示されるように、水中航走体検出装置1000の各構成要素は、音響センサ100と、ヘリコプター200とに、搭載される。
水中航走体検出装置1000は、例えば図2に示されるように、使用される。すなわち、水中航走体検出装置1000のうち、音響センサ100は、ヘリコプター200から吊り下げロープ300によって吊り下げられる。なお、音響センサ100はソナーでもある。そして、音響センサ100は、ヘリコプター200により吊り下げられた状態で、海面400下の水中に配置される。音響センサ100およびヘリコプター200は、互いに吊り下げロープ300内の光ファイバー等を介した通信を行う。
図2に示されるように、水中航走体500が海底600に着底している場合を想定する。なお、以下の説明では、水中航走体500が海底600に完全に着底せずに海底600に近接して配置している場合も、水中航走体500が海底600に着底している場合に含まれるものとする。水中航走体500の具体例として、例えば、潜水船、沈没船、機雷などが挙げられる。
後で詳しく説明するように、探信音WAが、音響センサ100内で、ヘリコプター200から送信される指示信号に従って生成される。そして、探信音WAは、音響センサ100から海中に向けて送信される。その後、探信音WAは、海底600に着底している水中航走体500に衝突する。この衝突時に反響音WBが生じる。そして、音響センサ100が反響音WBを受信し、当該反響音WBをヘリコプター200へ送信する。ヘリコプター200は、反響音WBを取得し、これを分析等して、水中航走体500を検出する。
ところで、反響音WBには、検出対象である水中航走体500から反射される反響音と、海底600から反射される反響音(海底600からの残響)とが含まれ得る。背景技術で説明したように、水中航走体500から反射される反響音と、海底600から反射される反響音とが、混在すると、水中航走体500を検出することができない。
このため、水中航走体装置1000では、海底600から反射される反響音が音響センサ100へ入射することを抑制するように、音響センサ100の探信音WAの送信範囲に垂直指向性を持たせている。具体的には、図2に示されるように、鉛直方向VLに対して略垂直方向の面HSから所定の仰角θとなるように、音響センサ100の探信音WAの送信範囲を設定する。
一方、音響センサ100の探信音WAの送信範囲で鉛直方向VLに指向性を持たせた場合であっても、音響センサ100と海底600の間の距離が小さいと、海底600から反射される反響音が音響センサ100へ入射することも考えられる。
このため、水中航走体装置1000では、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを算出して、海底600から反射される反響音が音響センサ100へ入射しないように、水深方向距離VDを所定の距離になるように調整する。
すなわち、水中航走体装置1000では、後で詳しく説明するように、ヘリコプター200から送信される指示に従って、音響センサ100内で海底探信音WKAが生成される。そして、海底探信音WKAは、音響センサ100から海底600に向けて鉛直方向VLに送信される。その後、海底探信音WKAは、海底600に衝突する。この衝突時に海底反響音WKBが生じる。そして、音響センサ100が、海底反響音WKBを受信し、当該海底反響音WKBをヘリコプター200へ送信する。ヘリコプター200は、海底反響音WKBを受信する。また、ヘリコプター200は、海底探信音WKAを送信した時間と、海底反響音WKBを受信した時間との間に時間に基づいて、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを算出する。ヘリコプター200内では、水深方向距離VDが所定値になるように調整される。
なお、図2では、探信音WAが水中航走体500に衝突した際に生じた反響音WBを例示している。
本発明の実施の形態では、以下の記載で詳細に説明するように、水中航走体500が海底600に着底している場合を想定して、ヘリコプター200により吊り下げられた音響センサ100と海底600との間の距離である水深方向距離VDが所定の距離になるように音響センサ100を配置して、鉛直方向VLに指向性を有する探信音WAを送信し、海底600からの残響を抑制して水中航走体500からの反響音を効率よく検出している。
また、音響センサ100と海底600との間の距離が所定の距離になるように音響センサ100を配置するとともに、鉛直方向VLに指向性を有する探信音WAを送信するので、海底600から反射される反響音が音響センサ100へ入射することが抑制される。このため、以下の説明では、反響音WBは、水中内で探信音WAが海底600面に着底する水中航走体500を含む海底突起物(不図示)に衝突する時に生じる音とする。
なお、図2では、水中航走体検出装置1000が海水中に存在する水中航走体500を検出する例を示した。一方、水中航走体検出装置1000は、海水、淡水またはこれらの混合水の中に存在する水中航走体500も検出することができる。以下の説明では、特に断りがない場合、水は海水、淡水またはこれらの混合水の全てを包括的に含むものとする。
図1に戻って、本発明の実施の形態における水中航走体検出装置1000は、音響センサ100と、ヘリコプター200とを有する。
まず、音響センサ100の構成を説明する。
図1に示されるように、音響センサ100は、ヘリコプター200から吊り下げロープ300によって吊り下げられている。また、音響センサ100は、圧電素子110と、送受信切替部120と、A/D(Analog / Digital)変換部130と、水中データ通信部140と、送信波形生成部150と、D/A(Digital/ Analog)変換部160と、増幅部170とを備えている。
図1に示されるように、圧電素子110は、送受信切替部120に電気的に接続されている。圧電素子110は、電気信号と音波の相互切り換えを行う。圧電素子110は、後述の増幅部210が電気信号を出力している場合、電気信号を海底探信音WKAまたは探信音WAに変換して水中内に送信する。このとき、音響センサ100は、図2を用いて説明した通り、水中内で略鉛直方向VLへ向けて、海底探信音WKAを送信する。また、音響センサ100は、図2を用いて説明した通り、水中内で探信音WAを鉛直方向VLに対して略垂直方向の面を基準に所定の仰角度θ内で送信する。
ここで、図3は、音響センサ100により送信される探信音WAの送信範囲を示す図である。図3では、鉛直方向VLに対して略垂直方向の面を、仰俯角0度の線で示している。また、図3では、音響センサ100の移動方向Xを示している。音響センサ100はヘリコプター200により吊り下げられているので、この音響センサ100の移動方向Xはヘリコプター200の飛行方向に対応する。図3に示されるように、例えば、探信音WAの垂直指向性が3度であった場合、指向性の仰角θをθ=1.5度に設定すれば、探信音WAの指向性が仰角0〜3度となる。これにより、仰角0度未満の方向にある海底600は、探信音WAの指向性(探信音WAの送信範囲)から外れる。この結果、音響センサ100は、探信音WAが海底600に衝突することを抑制できる。よって、探信音WAが海底600に衝突して生じる反響音が、音響センサ100により受信されることを、抑制できる。
図1に戻って、圧電素子110は、後述の増幅部210が電気信号を出力していない場合、海底探信音WKBまたは反響音WBを受信して、この海底探信音WKBまたは反響音WBを電気信号に変換する。反響音WBとは、前述の通り、水中内で探信音WAが海底600面に着底する水中航走体500を含む海底突起物に衝突する時に生じる音をいう。圧電素子110は、図2を用いて説明した通り、水中内で海底探信音WKAが海底600に衝突する時に生じる海底反響音WKBを受信する。また、圧電素子110は、図2を用いて説明した通り、水中内で探信音WAが海底600に着底する水中航走体500に衝突する時に生じる反響音WBを受信する。
図1に示されるように、送受信切替部120は、圧電素子110、A/D変換部130および増幅部170に接続されている。送受信切替部120は、圧電素子110の接続先を、増幅部170およびA/D変換部130のうちいずれかに、切り替える。圧電素子110が海底探信音WKAまたは探信音WAを送信している場合、送受信切替部120は、圧電素子110と増幅部170とを電気的に接続する。圧電素子110が海底反響音WKBまたは反響音WBを受信している場合、送受信切替部120は、圧電素子110とA/D変換部130とを接続する。
図1に示されるように、A/D変換部130は、送受信切替部120および水中データ通信部140に接続されている。A/D変換部130は、圧電素子110により受信される海底反響音WKBまたは反響音WBを、送受信切替部120を介して取得する。そして、A/D変換部130は、アナログ信号の電圧をデジタルの数値データへ変換する。すなわち、A/D変換部130は、海底反響音WKBまたは反響音WBをアナログデジタル変換してデジタルデータを生成し、このデジタルデータを水中データ送信部140へ出力する。
図1に示されるように、水中データ通信部140は、A/D変換部130および送信波形生成部150に接続されている。また、水中データ通信部140は、ヘリコプター200の機上データ通信部210との間で、吊り下げロープ300内の光ファイバー等の通信線により通信を行う。水中データ通信部140は、後述のヘリコプター200内の送信波形生成指示部251により生成される指示信号を、機上データ通信部210から受信する。また、水中データ通信部140は、A/D変換部130で生成される海底反響音WKBまたは反響音WBのデジタルデータを、ヘリコプター200内の機上データ通信部210へ、吊り下げロープ300内の光ファイバー等の通信線によって送信する。
図1に示されるように、送信波形生成部150は、D/A変換部160および水中データ通信部140に接続されている。送信波形生成部150は、後述のヘリコプター200の送信波形生成指示部251の指示信号に従って、音響センサ100から送信される海底探信音WKAまたは探信音WAの信号波形のデジタルデータを生成し、これをD/A変換部220へ出力する。
図2および図3を用いて説明したように、送信波形生成部150は、探信音WAを生成する際に、鉛直方向VL(垂直方向)に指向性を持たせるように、垂直指向性の仰角を制御する処理を行う。すなわち、送信波形生成部150は、鉛直方向VLに対して略垂直方向の面HSを基準に所定の仰角度θとなるように、探信音WAを生成する。
また、図2を用いて説明したように、送信波形生成部150は、海底探信音WKAが鉛直方向VLに向けて出力されるように、海底探信音WKAを生成する。
図1に戻って、D/A変換部160は、増幅部170および送信波形生成部150に接続されている。D/A変換部160は、送信波形生成部150により生成される送信波形のデジタルデータをデジタルアナログ変換してアナログ信号を生成し、これを増幅部170へ出力する。
図1に示されるように、増幅部170は、送受信切替部120およびD/A変換部160に接続されている。増幅部170は、音響センサ100から大音量の海底探信音WKAまたは探信音WAを送信するために、D/A変換部160によりデジタルアナログ変換されたアナログ信号の電力を増幅する。また、増幅部170は、増幅したアナログ信号の電力を送受信切替部120へ出力する。
以上、音響センサ100の構成を説明した。
次に、ヘリコプター200の構成を説明する。
図1に示されるように、ヘリコプター200は、機上データ通信部210と、信号検出部220と、計算処理部230と、表示部240と、自動操縦制御部250と、メインローターピッチ制御部260と、音響センサ巻上部270とを有している。
図1に示されるように、機上データ通信部210は、信号検出部220に接続されている。機上データ通信部210は、音響センサ100の水中データ通信部140との間で、吊り下げロープ300内の光ファイバー等の通信線により通信を行う。
図1に示されるように、信号検出部220は、機上データ通信部210、計算処理部230および自動操縦制御部250に接続されている。信号検出部220は、機上データ通信部210により受信されるデータに基づいて、海底反響音WKBまたは反響音WBを検出する。とくに、信号検出部220は、機上データ通信部210により受信される海底反響音WKBのデジタルデータが所定の閾値以上であるかを判断することで、海底反響音WKBを検出する。また、信号検出部220は、海底反響音WKBを検出したタイミングを、自動操縦制御部250へ出力する。また、信号検出部220は、検出した反響音WBを、計算処理部230へ出力する。
図1に示されるように、計算処理部230は、信号検出部220および表示部240に接続されている。計算処理部230は、各種情報を算出する。計算処理部230は、到来方位算出部231と、水平方向距離算出部232とを備えている。
到来方位算出部231は、到来方位Sを算出する。到来方位とは、反響音WBが音響センサ100に入射する方位である。
水平方向距離算出部232は、到来方位算出部231により算出される到来方位に対応して、反響音WBと音響センサ100との間の距離である水平方向距離HDを算出する。このとき、反響音WBの受信までの時間が長いほどに、反響音WBと音響センサ100との間の距離が大きいと考えて、反響音WBと音響センサ100との間の距離を算出している。すなわち、例えば、水中音速C(例えばC=約1500(m/秒))と、探信音WAが送信された時から反響音WBが受信された時までの間の時間TA(秒)と、反響音WBおよび音響センサ100の間の水平方向距離HD(m)との関係は、以下の式1で表される。
HD=(1/2)×C×TA ・・・・・(式1)
図1に示されるように、表示部240は、計算処理部230に接続されている。表示部240は、計算処理部230により算出される各種情報を、表示提供する。すなわち、表示部240は、反響音WBの到来方位Sと、反響音WBおよび音響センサ100の間の水平方向距離HDを、表示提供する。表示部240は、これらの情報を、コンピュータグラフィックスを用いて、濃淡または色彩で表示する。表示部240は、液晶表示装置や有機EL(Electro-Luminescence)表示装置などで構成される。
図4は、水中航走体検出装置1000の表示部240による表示例を簡略的に示す模式図である。
図4に示されるように、ヘリコプター200が表示部240の中央部に表示されている。表示部240は、ヘリコプター200の位置は音響センサ100に対応しているものとして、音響センサ100の位置の代わりにヘリコプター200の位置を表示部240の表示画面の中央部に表示する。実際には、ヘリコプター200の位置と音響センサ100の位置は完全に合致しないが、音響センサおよび反響音WBの間の水平方向距離HDと比較すれば、ヘリコプター200と音響センサ100の位置の誤差は非常に小さい。
また、ヘリコプター200を中心とする探索領域ERが表示されている。さらに、反響音WBが、探索領域ERよりも濃い色で、表示されている。
図4に示されるように、反響音WBの到来方位Sは、ヘリコプター200(音響センサ100)を中心に、基準方位NNからδ(度)回転した方向を向いていることがわかる。また、音響センサ100(ヘリコプター200)および反響音WBの間の水平方向距離HDは、到来方位Sに沿った距離であるから、反響音WBが図4に示される位置に存在することがわかる。そして、表示部240を確認することにより、水中航走体500が反響音WBの位置に存在することを検出することができる。
図1に示されるように、自動操縦制御部250は、信号検出部220、メインローターピッチ制御部260および音響センサ巻上部270に接続されている。図1に示されるように、自動操縦制御部250は、送信波形生成指示部251と、水深方向距離算出部252と、水深方向距離調整部253とを備えている。
送信波形生成指示部251は、自動操縦制御部250に含まれている。送信波形生成指示部251は、音響センサ100の送信波形生成部150に対して、音響センサ100から送信される海底探信音WKAまたは探信音WAの信号波形のデジタルデータを生成させる指示信号を出力する。
水深方向距離算出部252は、自動操縦制御部250に含まれている。水深方向距離算出部252は、海底探信音WKAの送信を制御したタイミングと、水深反射音WKBを検出したタイミングとの間の時間間隔を計測し、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VD(図2を参照)を算出する。すなわち、水深方向距離算出部252は、海底探信音WKAが音響センサ100により送信される時間t1から、海底反響音WKBが音響センサ100により受信される時間t2までの間の時間TBに基づいて、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを算出する。
水深方向距離VDと、海底探信音WKAが音響センサ100により送信される時間t1(秒)から、海底反響音WKBが音響センサ100により受信される時間t2(秒)までの間の時間TBと、水中音速C(例えばC=約1500(m/秒))との関係は、以下の式2で示される。
VD=(1/2)×C×TB
=(1/2)×C×(t2−t1) ・・・・・(式2)
水深方向距離調整部253は、自動操縦制御部250に含まれている。水深方向距離調整部253は、水深方向距離算出部252により算出される水深方向距離VDが予め設定された所定の水深方向距離VD(REF)になるように調整する。具体的には、水深方向距離調整部253は、メインローターピッチ制御部260および音響センサ巻上部270に対して、水深方向距離VDが予め設定された所定の水深方向距離VD(REF)になるように調整する指示をする。
メインローターピッチ制御部260は、自動操縦制御部250および音響センサ巻上部270に接続されている。メインローターピッチ制御部260は、ヘリコプター200に搭載されている。メインローターピッチ制御部260は、水深方向距離調整部253により指示に従って、メインローターの角度ピッチを制御することにより、ヘリコプター200のホバリング飛行高度を調整する。
音響センサ巻上部270は、自動操縦制御部250およびメインローターピッチ制御部260に接続されている。音響センサ巻上部270は、ヘリコプター200に搭載されている。音響センサ巻上部270は、水深方向距離調整部253により指示に従って、ヘリコプター200および音響センサ100の間の吊り下げロープ300の長さを調整する。
次に、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを自動操縦制御部250により調整する方法を説明する。図5は、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを自動操縦制御部250により調整する方法を説明するための図である。
図5に示されるように、ヘリコプター200が、海面400上を飛行している。音響センサ100は、ヘリコプター200から吊り下げロープ300により吊り下げられている。なお、図5では、説明の便宜上、ヘリコプター200内の構成要素のうち、自動操縦制御部250、メインローターピッチ制御部260および音響センサ巻上部270だけを表示している。
図5に示されるように、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDが、例えば、VD=250(m)であったとする。また、所定の水深方向距離VD(REF)が、例えば、VD(REF)=200(m)であったとする。
この場合、水深方向距離調整部253は、水深方向距離VDが所定の水深方向距離VD(REF)である200(m)になるように調整する。このとき、水深方向距離調整部253は、メインローターピッチ制御部260および音響センサ巻上部270に対して、水深方向距離VDが200(m)にするように調整する指示をする。
そして、メインローターピッチ制御部260は、水深方向距離調整部253により指示に従って、メインローターの角度ピッチを制御することにより、ヘリコプター200のホバリング飛行高度を調整する。音響センサ巻上部270は、水深方向距離調整部253により指示に従って、ヘリコプター200および音響センサ100の間の吊り下げロープ300の長さを調整する。
これにより、水深方向距離VDが所定の水深方向距離VD(REF)である200(m)に設定される。
以上、本発明の実施の形態における水中航走体検出装置1000の構成について説明した。
次に、本発明の実施の形態における水中航走体検出装置1000の動作について、図に基づいて説明する。
図6および図7は、水中航走体検出装置1000の動作フローを示す図である。図6は、水深方向距離VDを所定の水深方向距離VD(REF)に調整するまでの処理を示す。図7は、水中航走体500を検出する処理を示す。
図6に示されるように、まず、自動操縦制御部250が、海底探信音WKAの送信指示をする(ステップ:STEP(以下、単にSTと称する)1)。すなわち、自動操縦制御部250では、送信波形生成指示部251が、音響センサ100の送信波形生成部150に対して、音響センサ100から送信される海底探信音WKAの信号波形のデジタルデータを生成させる指示信号を出力する。この指示信号は、信号検出部220および機上データ通信部210を介して、音響センサ100の水中データ通信部140に入力される。水中データ通信部140は、指示信号を、送信波形生成部150へ出力する。
次に、図6に示されるように、送信波形生成部150は、送信波形生成指示部251による指示信号に従って、音響センサ100から送信される海底探信音WKAの信号波形データを生成する(ST2)。そして、送信波形生成部150は、海底探信音WKAの信号波形データをD/A変換部160へ出力する。なお、海底探信音WKAには、特別な指向性を設定していない。
次に、図6に示されるように、D/A変換部160は、送信波形生成部150により生成される送信波形のデジタルデータをデジタルアナログ変換してアナログ信号(海底探信音WKA)を生成する(ST3)。また、D/A変換部160は、生成されたアナログ信号を増幅部170へ出力する。
次に、図6に示されるように、増幅部170は、D/A変換部160によりデジタルアナログ変換された海底探信音WKAのアナログ信号の電力を増幅する(ST4)。また、増幅部170は、増幅された海底探信音WKAのアナログ信号の電力を、音響センサ100の送受信切替部120を介して、圧電素子110へ出力する。
次に、図6に示されるように、圧電素子110が、増幅部170が電気信号を出力している場合、海底探信音WKAの信号を、音波として、水中内で略鉛直方向VL(図2を参照)へ向けて送信する(ST5)。
次に、図7に示されるように、圧電素子110は、増幅部170が電気信号を出力していない場合、海底反響音WKBを受信する(ST6)。そして、圧電素子110は、海底反響音WKBを電気信号に変換して、これを送受信切替部120を介して、A/D変換部130へ出力する。ここで、海底反響音WKBとは、上述の通り、水中内で海探信音WKAが海底600に衝突するときに生じる音をいう。
次に、図6に示されるように、A/D変換部130が、海底反響音WKBの信号をデジタルデータに変換する(ST7)。また、A/D変換部130が、海底反響音WKBのデジタルデータ信号を水中データ通信部140へ出力する。水中データ通信部140は、海底反響音WKBのデジタルデータ信号をヘリコプター200へ向けて送信する。ヘリコプター200では、機上データ通信部210が、海底反響音WKBのデジタルデータ信号を受信し、信号検出部220へ出力する。
次に、図6に示されるように、信号検出部220は、海底反響音WKBのデジタルデータのうち、予め設定された閾値を超えた信号を、海底反響音WKBをして検出する(ST8)。すなわち、信号検出部220は、機上データ通信部210により受信される海底反響音WKBのデジタルデータが所定の閾値以上であるかを判断することで、海底反響音WKBを検出する。
次に、図6に示されるように、信号検出部220は、海底反響音WKBを検出したタイミング(検出タイミング)を、自動操縦制御部250へ出力する(ST9)。
次に、図6に示されるように、自動操縦制御部250では、水深方向距離算出部252が、海底探信音WKAの送信を制御したタイミングと、水深反射音WKBを検出したタイミングとの間の時間間隔を計測し、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VD(図2を参照)を算出する(ST10)。すなわち、水深方向距離算出部252は、式2を用いて説明したように、海底探信音WKAが音響センサ100により送信される時間t1から、海底反響音WKBが音響センサ100により受信される時間t2までの間の時間TBに基づいて、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを算出する。
次に、図6に示されるように、自動操縦制御部250では、水深方向距離調整部253が、音響センサ100と海底600の距離(水深方向距離VD)を一定に保つように、メインローターピッチ制御部260および音響センサ巻上部270へ制御信号を出力する(ST11)。すなわち、水深方向距離調整部253は、水深方向距離算出部252により算出される水深方向距離VDが予め設定された所定の水深方向距離VD(REF)になるように調整する。具体的には、水深方向距離調整部253は、メインローターピッチ制御部260および音響センサ巻上部270に対して、水深方向距離VDが予め設定された所定の水深方向距離VD(REF)になるように調整する指示を、制御信号を介して行う。ここでは、例えば、所定の水深方向距離VD(REF)がVD(REF)=10±1(m)になるように、制御信号が水深方向距離調整部253により生成される。
そして、図3を用いて説明したように、メインローターピッチ制御部260は、水深方向距離調整部253による指示(制御信号)に従って、メインローターの角度ピッチを制御することにより、ヘリコプター200のホバリング飛行高度を調整する。音響センサ巻上部270は、水深方向距離調整部253による指示(制御信号)に従って、ヘリコプター200および音響センサ100の間の吊り下げロープ300の長さを調整する。これにより、水深方向距離VDが予め設定された所定の水深方向距離VD(REF)(例えば、VD(REF)=10±1(m))になるように調整される。音響センサ100が海底600に接触すると、ヘリコプター200のホバリング飛行に重大な支障(最悪の場合、ヘリコプター200の墜落事故)が生じうる。しかし、水深方向距離調整部253による調整により、このような支障を回避することができる。また、海底600に着底する水中航走体500を含む海底突起物を検出するためには、音響センサ100を海底から数mの高さに吊り下げる必要がある。この要求に対しても、水深方向距離調整部253による調整により対応することができる。
次に、図7に移って、自動操縦制御部250が、探信音WAの送信指示をする(ST12)。すなわち、自動操縦制御部250では、送信波形生成指示部251が、音響センサ100の送信波形生成部150に対して、音響センサ100から送信される探信音WAの信号波形のデジタルデータを生成させる指示信号を出力する。この指示信号は、信号検出部220および機上データ通信部210を介して、音響センサ100の水中データ通信部140に入力される。水中データ通信部140は、指示信号を、送信波形生成部150へ出力する。
次に、図7に示されるように、送信波形生成部150は、送信波形生成指示部251による指示信号に従って、音響センサ100から送信される探信音WAの信号波形データを生成する(ST13)。具体的には、図2および図3を用いて説明したように、送信波形生成部150は、探信音WAを生成する際に、鉛直方向VL(垂直方向)に指向性を持たせるように、垂直指向性の仰角を制御する処理を行う。すなわち、送信波形生成部150は、鉛直方向VLに対して略垂直方向の面HSを基準に所定の仰角度θ(例えば、θ=+1.5度)となるように、信号波形の位相を調整して、探信音WAを生成する。そして、送信波形生成部150は、探信音WAの信号波形データをD/A変換部160へ出力する。
次に、図7に示されるように、D/A変換部160は、送信波形生成部150により生成される送信波形のデジタルデータをデジタルアナログ変換してアナログ信号(探信音WA)を生成する(ST14)。また、D/A変換部160は、生成されたアナログ信号を増幅部170へ出力する。
次に、図7に示されるように、増幅部170は、D/A変換部160によりデジタルアナログ変換された探信音WAのアナログ信号を増幅する(ST15)。また、増幅部170は、増幅された探信音WAのアナログ信号を、音響センサ100の送受信切替部120を介して、圧電素子110へ出力する。
次に、図2および図7に示されるように、圧電素子110が、増幅部170が電気信号を出力している場合、探信音WAの信号を、音波として探信音WAを、水中内で鉛直方向VLに対して略垂直方向の面HSを基準に所定の仰角θ内で送信する(ST16)。
次に、図7に示されるように、圧電素子110は、増幅部170が電気信号を出力していない場合、反響音WBを受信する(ST17)。そして、圧電素子110は、反響音WBを電気信号に変換して、これをアナログの電気信号として、送受信切替部120を介して、A/D変換部130へ出力する。ここで、反響音WBとは、上述の通り、水中内で探信音WAが海底600に着底する水中航走体500を含む海底突起物に衝突する時に生じる音をいう。
次に、図7に示されるように、A/D変換部130が、反響音WBのアナログ信号をデジタルデータに変換する(ST18)。また、A/D変換部130が、反響音WBのデジタルデータ信号を水中データ通信部140へ出力する。水中データ通信部140は、反響音WBのデジタルデータ信号をヘリコプター200へ向けて送信する。ヘリコプター200では、機上データ通信部210が、反響音WBのデジタルデータ信号を受信し、信号検出部220へ出力する。
次に、図7に示されるように、信号検出部220が、反響音WBのデジタルデータに、バンドパスフィルタ処理を行う(ST20)。すなわち、信号検出部220は、バンドパスフィルタとして、反響音WBのデジタルデータから、探信音WAと同じ周波数成分以外の周波数帯域のデータを除去する。ここでは、水中航走体500は、海底600に着底した状態で移動せず静止しているものと想定し、周波数のドップラーシフトは生じないものとする。そして、信号検出部220は、バンドパスフィルタ処理後のデジタルデータを、計算処理部230へ出力する。
次に、図7に示されるように、計算処理部230が、反響音WBの到来方位(水平方向の方位)と、反響音WBと音響センサ100との間の距離である水平方向距離HDとを算出する(ST20)。
すなわち、計算処理部230の到来方位算出部231は、計算処理部230により入力されるデジタルデータについて水平方向の方位毎の指向性ビームを合成することにより、方位毎の反響音WBの強度を計算して、反響音WBの到来方位Sを算出する。反響音WBの到来方位とは、前述の通り、反響音WBが音響センサ100に入射する方位である。なお、方位毎の反響音WBの大きさは、全方位の平均値に対して、特定の方位が相対的に大きいか小さいかの比率を信号強度とする。
また、水平方向距離算出部232は、到来方位算出部231により算出される到来方位に対応して、反響音WBと音響センサ100との間の距離である水平方向距離HDを式1に従って算出する。
次に、表示部240は、図4で例示したように、反響音WBの到来方位Sと、反響音WBおよび音響センサ100の間の水平方向距離HDを、濃淡またはカラーで表示提供する(ST21)。すなわち、表示部240は、計算処理部230から入力される方位毎の信号強度のデータを、水平方向距離D毎に、濃淡またはカラーでコンピュータグラフィックスによって表示提供する。図4に示されるように、表示部240の表示画面を確認することによって、濃い色で表示された反響音WBの位置に、水中航走体500を含む海底突起物が存在すると、識別することができる。このときの前記海底突起物が、ヘリコプター200(音響センサ100)を中心に、基準方向NNからδ(度)回転した方向に、ヘリコプター200(音響センサ100)から距離HDの位置に、存在することが検出される。
以上、本発明の実施の形態における水中航走体検出装置1000の動作について、説明した。
以上の通り、本発明の実施の形態における水中航走体検出装置1000は、音響センサ100と、水深方向距離調整部253と、到来方位算出部231と、水平方向距離算出部232とを備えている。
音響センサ100は、水中内で探信音WAを鉛直方向VLに対して略垂直方向の面HSを基準に所定の仰角度θ内で送信し、水中内で探信音WBが海底に着底する水中航走体500を含む海底突起物に衝突する時に生じる反響音WBを受信する。水深方向距離調整部253は、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDが、予め設定された所定の水深方向距離になるように調整する。到来方位算出部231は、反響音WBが音響センサ100に入射する方位である到来方位Sを算出する。水平方向距離算出部232は、到来方位算出部231により算出される到来方位Sに対応して、反響音WBと音響センサ100との間の距離である水平方向距離HDを算出する。そして、水中航走体検出装置1000は、到来方位算出部231により算出される到来方位Sと、水平方向距離算出部232により算出される水平方向距離HDとに基づいて、水中航走体500を検出する。
このように、音響センサ100は、水中内で探信音WAを鉛直方向VLに対して略垂直方向の面HSを基準に所定の仰角度θ内で送信する。すなわち、音響センサ100は、鉛直方向VLに指向性を有する探信音WAを送信する。したがって、音響センサ100の探信音WAの送信範囲に垂直指向性が生じるので、探信音WAが海底600に衝突した際に生じる反響音が生じることを抑制できる。この結果、音響センサ100は、探信音WAが海底600に衝突した際に生じる反響音(海底600からの残響)が含まれないように、水中内で探信音WBが海底に着底する水中航走体500を含む海底突起物に衝突する時に生じる反響音WBを受信することができる。
一方、音響センサ100の探信音WAの送信範囲で鉛直方向VLに指向性を持たせた場合であっても、音響センサ100と海底600の間の距離が小さいと、海底600から反射される反響音が音響センサ100へ入射することも考えられる。そこで、水深方向距離調整部253は、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDが、予め設定された所定の水深方向距離VD(REF)になるように調整する。これにより、音響センサ100から送信される探信音WAが海底600に衝突しにくい位置に、音響センサ100を、配置することができる。また、音響センサ100が海底600からの反響音を受信しにくい位置に、音響センサ100を、配置することができる。
そして、到来方位算出部231は到来方位Sを算出し。水平方向距離算出部232は、反響音WBと音響センサ100との間の距離である水平方向距離HDを算出する。さらに、水中航走体検出装置1000は、到来方位算出部231により算出される到来方位Sと、水平方向距離算出部232により算出される水平方向距離HDとに基づいて、水中航走体500を検出する。
上述したように、音響センサ100の探信音WAの送信範囲に垂直指向性(鉛直方向VLの指向性)を設けて、音響センサ100と海底600との間の水深方向距離VDが所定の距離VD(REF)になるように音響センサ100を配置している。これにより、海底600から反射される反響音(海底600からの残響)が音響センサ100へ入射することは抑制される。
この結果、本発明の実施の形態における水中航走体検出装置1000によれば、海底600に着底する水中航走体500を含む海底突起物からの反響音WBを効率よく検出することができる。また、一般的な水中航走体検出装置と比較して、より高い精度で、海底600に着底する水中航走体500を含む海底突起物を検出することができる。
本発明の実施の形態における水中航走体装置1000において、音響センサ100は、水中内で略鉛直方向VLへ向けて海底探信音WKAを送信し、水中内で海底探信音WKAが海底に600衝突するときに生じる海底反響音WKBを受信するとともに、水中内で探信音WAを鉛直方向VLに対して略垂直方向の面HSを基準に所定の仰角θ内で送信し、水中内で探信音WAが海底600に着底する水中航走体500を含む海底突起物に衝突する時に生じる反響音WBを受信する。水中航走体装置1000は、水深方向距離算出部232をさらに備えている。この水深方向距離算出部252は、海底探信音WKAが音響センサ100により送信される時間から、海底反響音WKBが音響センサ100により受信される時間までの間の時間に基づいて、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを算出する。そして、水深方向距離調整部253は、水深方向距離算出部252により算出される水深方向距離VDが予め設定された所定の水深方向距離VD(REF)になるように調整する。
このように、音響センサ100は、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを算出するために、探信音WAとは別に、海底探信音WKAを、水中内で略鉛直方向VLへ向けて送信し、水中内で海底探信音WKAが海底に600衝突するときに生じる海底反響音WKBを受信している。そして、水深方向距離算出部252が、海底探信音WKAが音響センサ100により送信される時間から、海底反響音WKBが音響センサ100により受信される時間までの間の時間に基づいて、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを算出する。さらに、水深方向距離調整部253が、水深方向距離VDが予め設定された所定の水深方向距離VD(REF)になるように調整する。これにより、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDを、簡単に調整することができる。この結果、音響センサ100から送信される探信音WAが海底600に衝突しにくい位置に、音響センサ100を、より正確に配置することができる。また、音響センサ100が海底600からの反響音を受信しにくい位置に、音響センサ100を、より正確に配置することができる。
本発明の実施の形態における水中航走体装置1000は、表示部240をさらに備えている。表示部240は、到来方位算出部231により算出される到来方位Sと、水平方向距離算出部232により算出される水平方向距離HDを表示提供する。
これにより、操作員が表示部240に表示される反響音WBの到来方位Sと、音響センサ100から反響音WBまでの水平方向距離HDとを、目視で確認することができる。
本発明の実施の形態における水中航走体検出方法は、探信音送信ステップと、反響音受信ステップと、水深方向距離調整ステップと、到来方位算出ステップと、水平方向距離算出ステップと、水中航走体検出ステップとを含んでいる。探信音送信ステップでは、音響センサ100が、水中内で探信音WAを鉛直方向VLに対して略垂直方向の面HSを基準に所定の仰角度θ内で送信する。反響音受信ステップでは、音響センサ100が、水中内で探信音WAが海底600に着底する水中航走体500を含む海底突起物に衝突する時に生じる反響音WBを受信する。水深方向距離調整ステップでは、音響センサ100および海底600の間の距離である水深方向距離VDが、予め設定された所定の水深方向距離VD(REF)になるように調整する。到来方位算出ステップでは、反響音WBが音響センサ100に入射する方位である到来方位Sを算出する。水平方向距離算出ステップでは、到来方位算出ステップで算出される到来方位Sに対応して、反響音WBと音響センサ100との間の距離である水平方向距離HDを算出する。水中航走体検出ステップでは、到来方位算出ステップで算出される到来方位Sと、水平方向距離算出ステップで算出される水平方向距離HDとに基づいて、水中航走体500を検出する。
このような水中航走体検出方法であっても、前述した水中航走体装置1000と同様の効果を奏する。
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、上述各実施の形態に対して、さまざまな変更、増減、組合せを加えてもよい。これらの変更、増減、組合せが加えられた変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。