JP6282569B2 - 船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法 - Google Patents

船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法 Download PDF

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Description

本発明は、船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法に関し、より具体的には船舶全体のエネルギー需要の予測を行う船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法に関するものである。
タンカー、貨物船など一般船の運航支援を対象とした運航支援システムが従来より実現されている。一般船では、ほとんどのエネルギー消費は推進部で行われており、また居住区のエネルギー需要は略一定である。一方、大型客船等の客船では、一般船とは異なり居住区のエネルギー需要が多い。エネルギー需要が発生した際に需要に応じて発電する方式が採られており、前述の運航支援システムにおける最適化には十分反映されていない。このため、居住区のエネルギー需要を含めた船舶内のエネルギー需要を考慮する方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、居住区のエネルギー需要を含めた船内のエネルギー予測モデルを構築し、居住区のエネルギー需要をも考慮することが開示されている。
特開2014−125123号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、居住区のエネルギー需要の具体的な予測方法が開示されていないため、推進部のエネルギー需要に加え、居住区のエネルギー需要をも考慮することによるメリットが十分に享受できてないという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、居住区のエネルギー需要の予測方法を確立した船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法は以下の手段を採用する。
船舶の船内需要における過去のエネルギー需要実績に基づき複数のエネルギー予測モデルを構築し、前記エネルギー予測モデルの優劣判断に用いる評価指標である予測評価値を各々複数の前記予測評価値の種別である予測評価値種別ごとに算出する予測モデル構築部と、前記予測モデル構築部で構築された複数の前記エネルギー予測モデルから前記予測評価値が最小であるエネルギー最適予測モデルを選定する予測モデル選定部と、前記エネルギー最適予測モデルと、前記過去のエネルギー需要実績または気象、海象および海流予報とから船舶エネルギー需要予測を行う予測部と、前記過去のエネルギー需要実績におけるスペクトル分析を行う前処理部と、を備え、前記予測モデル構築部は、前記過去のエネルギー需要実績に対し前記スペクトル分析されたスペクトルが第1閾値を上回る周波数成分を抽出して前記エネルギー予測モデルとして時系列モデルを複数構築し、前記過去のエネルギー需要実績に基づき前記エネルギー予測モデルとして回帰モデルを複数構築し、複数の前記時系列モデル及び前記回帰モデルについて各々前記予測評価値を算出することを特徴とする船舶の運航支援システムを採用する。
本発明によれば、予測モデル構築部は、船舶の船内需要における過去のエネルギー需要実績に基づき複数のエネルギー予測モデルを構築し各々複数の予測評価値種別の予測評価値を算出し、予測モデル選定部は、予測モデル構築部で構築された複数のエネルギー予測モデルから予測評価値が最小であるエネルギー最適予測モデルを選定し、予測部は、エネルギー最適予測モデルと、過去のエネルギー需要実績または気象、海象および海流予報とから船舶エネルギー需要予測を行うことから、船舶の居住区のエネルギー需要を含めた船舶エネルギー需要に対し、エネルギー予測モデルの予測精度の評価指標となる予測評価値が最小、すなわち精度の高い予測を選定することができ、これを用いた運航支援が可能となる。
また、複数のエネルギー予測モデルを構築することから、様々な電力需要のパターンに対応でき、船舶の種類、航路、日程などによらず精度の高い予測の適用が可能である。
上記発明において、前記予測モデル選定部は、前記スペクトル分析されたスペクトル各周波数成分の振幅と第2閾値との比較結果に基づき前記時系列モデルまたは前記回帰モデルのいずれを用いるか決定し、決定した前記時系列モデルまたは前記回帰モデルのいずれかにおいて前記予測評価値が最小となる前記エネルギー最適予測モデルを選定することとしてもよい。
本発明によれば、予測モデル構築部は、過去のエネルギー需要実績に対し第1閾値を上回る周波数成分を抽出してエネルギー予測モデルとして時系列モデルを複数構築し、過去のエネルギー需要実績に基づきエネルギー予測モデルとして回帰モデルを複数構築し、各エネルギー予測モデルについて予測評価値を算出し、予測モデル選定部は、時系列モデルまたは回帰モデルのいずれを用いるか決定した上で予測評価値が最小となるエネルギー最適予測モデルを選定することから、船舶によりそれぞれの特徴を持った船舶エネルギー需要に対応する複数のエネルギー予測モデルを構築することができるため、精度の高い船舶エネルギー需要予測が可能である。
上記発明において、前記予測モデル選定部において各前記予測評価値種別ごとに最小予測評価値の前記エネルギー予測モデルを選定し、前記予測部において各前記予測評価値種別ごとの最小予測評価値の前記エネルギー予測モデルに基づき各々前記船舶エネルギー需要予測を行い、各前記船舶エネルギー需要予測と航行後のエネルギー需要実績とを比較し最も誤差の小さい前記船舶エネルギー需要予測における前記予測評価値種別を抽出する、及び前記時系列モデルおよび前記回帰モデルに基づき前記第1閾値および前記第2閾値を修正した上で、該予測評価値種別および該第1閾値を前記予測モデル構築部へ送信し、該第2閾値を前記予測モデル選定部へ送信する閾値・情報量規準選択部を備えることとしてもよい。
本発明によれば、予測モデル選定部は各予測評価値種別ごとに最小予測評価値のエネルギー予測モデルを選定し、予測部は各予測評価値種別ごとの最小予測評価値のエネルギー予測モデルに基づき各々船舶エネルギー需要予測を行い、閾値・情報量規準選択部は、各船舶エネルギー需要予測と航行後のエネルギー需要実績とを比較し最も誤差の小さい船舶エネルギー需要予測における予測評価値種別を抽出するとともに時系列モデルおよび回帰モデルに基づき第1閾値および第2閾値を修正した上で、予測評価値種別および第1閾値を予測モデル構築部へ送信し、第2閾値を予測モデル選定部へ送信することから、予測と実績との誤差を把握しこれを次回の運航時に対し適用することができ、予測精度の向上が可能となる。
上記発明において、前記予測モデル選定部は、前記閾値・情報量規準選択部から送信された前記予測評価値種別の前記予測評価値が最小であるエネルギー最適予測モデルを選定することとしてもよい。
本発明によれば、前処理部は、過去のエネルギー需要実績における特徴分析を行い、予測モデル選定部は、特徴分析の結果に基づき時系列モデルまたは回帰モデルのいずれを用いるか決定しフィードバックされた予測評価値種別の予測評価値の最小値であるエネルギー最適予測モデルを選定することから、エネルギー需要実績に応じたエネルギー予測モデルをその特徴分析(例えば周期性)から導くことができるため、精度の高い船舶エネルギー需要予測が可能である。また、前回の航行において得られたエネルギー最良予測モデルの結果をフィードバックすることから、さらに精度の高い船舶エネルギー需要予測が可能となる。
上記発明において、前記前処理部は、前記予測モデル構築部が用いる前記過去のエネルギー需要実績においてエネルギー需要実績データの欠落した欠落時間帯がある場合、前記欠落時間帯前後の前記エネルギー需要実績データに基づき線形補間を行う、または、全前記欠落時間帯の削除を行うとしてもよい。
本発明によれば、前処理部は、過去のエネルギー需要実績においてデータの欠落した欠落時間帯がある場合、欠落時間帯前後のエネルギー需要実績データに基づき線形補間を行う、または、全欠落時間帯の削除を行うことから、欠落時間帯のあるデータをそのまま用いる場合は予測精度が悪化する可能性があるが、いずれかの方法によりエネルギー予測モデル構築用データに対しフィルタ処理を行うことによって予測精度を向上させることができる。
上記発明において、気象、海象および海流予報と他船の気象海象海流計測情報との誤差を算出し、該誤差を用いて前記気象、海象および海流予報の修正を行った修正予報情報を取得し、前記エネルギー最適予測モデル、前記過去のエネルギー需要実績、及び前記修正予報情報に基づき船舶エネルギー需要予測を行う予測部を備えることとしてもよい。
本発明によれば、予測部は、気象、海象および海流予報と他船の気象海象海流計測情報との誤差を算出し、該誤差を用いて各予報の修正を行った修正予報情報を取得し、エネルギー最適予測モデル、過去のエネルギー需要実績、及び修正予報情報に基づき船舶エネルギー需要予測を行うことから、他船の計測データを活用することで気象、海象および海流予報の精度を高めることができ、精度の高い気象、海象および海流情報を用いることでより精度の高い船舶エネルギー需要予測を用いた運航支援が可能となる。
本発明は、前述のいずれかに記載の船舶の運航支援システムを搭載する船舶を採用する。
本発明によれば、船舶が前述のいずれかに記載の船舶の運航支援システムを搭載することから、船舶の居住区のエネルギー需要を含めた船舶エネルギー需要に対し、エネルギー予測モデルの予測精度の評価指標となる予測評価値が最小、すなわち精度の高い予測を選定することができ、これを用いた運航支援が可能となる。
また、複数のエネルギー予測モデルを構築することから、様々な電力需要のパターンに対応でき、船舶の種類、航路、日程などによらず精度の高い予測の適用が可能である。
本発明は、船舶の船内需要における過去のエネルギー需要実績に基づき複数のエネルギー予測モデルを構築し、前記エネルギー予測モデルの優劣判断に用いる評価指標である予測評価値を各々複数の前記予測評価値の種別である予測評価値種別ごとに算出する予測モデル構築工程と、複数の前記エネルギー予測モデルから前記予測評価値が最小であるエネルギー最適予測モデルを選定する予測モデル選定工程と、前記エネルギー最適予測モデルと、前記過去のエネルギー需要実績または気象、海象および海流予報とから船舶エネルギー需要予測を行う予測工程と、前記過去のエネルギー需要実績におけるスペクトル分析を行う前処理工程と、を有し、前記予測モデル構築工程は、前記過去のエネルギー需要実績に対し前記スペクトル分析されたスペクトルが第1閾値を上回る周波数成分を抽出して前記エネルギー予測モデルとして時系列モデルを複数構築し、前記過去のエネルギー需要実績に基づき前記エネルギー予測モデルとして回帰モデルを複数構築し、複数の前記時系列モデル及び前記回帰モデルについて各々前記予測評価値を算出することを特徴とする船舶の運航支援方法を採用する。
本発明によれば、船舶の船内需要における過去のエネルギー需要実績に基づき構築された複数のエネルギー予測モデルから予測評価値が最小であるエネルギー最適予測モデルを選定し、エネルギー最適予測モデルと気象、海象および海流予報、および過去のエネルギー需要実績とから船舶エネルギー需要予測を行うことから、船舶の居住区のエネルギー需要を含めた船舶全体のエネルギー需要に対し精度の高い予測を行い、これを用いた運航支援が可能となる。
また、複数のエネルギー予測モデルを構築することから、様々な電力需要のパターンに対応でき、船舶の種類、航路、日程などによらず精度の高い予測の適用が可能である。
本発明によれば、船舶内のエネルギー需要に対し複数の予測モデルを構築しその中から最適な予測モデルを選定するので、精度の高い予測が行え、これを用いた最適な運航支援が可能となる。
本発明の第1実施形態に係る船舶の運航支援システムを示した概略構成図である。 本発明の第1実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部を示した概略構成図である。 本発明の第1実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部の予測の処理を示したフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部の閾値設定・情報量規準選択部の処理を示したフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る前処理部におけるデータ欠測時の処理例を示した表である。 本発明の第1実施形態に係る前処理部におけるスペクトル分析を示したグラフである。 本発明の第1実施形態に係る予測モデル構築部における時系列モデル及び回帰モデルの例とその各情報量規準値を示した表である。 本発明の第2実施形態に係る船舶の運航支援システムを示した概略構成図である。 本発明の第2実施形態に係る予測部を示した概略構成図である。 本発明の第2実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部の予測の処理を示したフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部の閾値設定・情報量規準選択部の処理を示したフローチャートである。
以下に、本発明に係る船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図1乃至7を用いて説明する。
図1には、本実施形態に係る船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法の概略構成が示されている。
図1に示されるように、船舶の運航支援システム1は、船舶100に搭載された自船の運航データを計測する計測システム110、自動操縦装置120及びディスプレイ130、衛星から地球上の現在位置情報を受信するGPS(Global Positioning System/全地球測位網)80、本実施形態では例えば地上のデータセンターに備えられた最適航路計算部10、船舶エネルギー需要予測部20、最適船速計画部30及び各々の部品間と相互通信を行いデータの記憶を担う記憶部40、及び各部品間のデータの送受信を行う通信網300を主な構成として備えている。
船舶100は、主機が電気モータである船舶を想定している。
最適航路計算部10は、世界気象機関の予報データから取得した気象、海象および海流予報と、船舶100の計測システム110から船舶100の運航スケジュール(発着地点および発着時刻等)を受信する。次に、受信した運行スケジュールを満足し、かつ燃料消費量が最小となる航行ルートを算出する。算出された最適な航行ルートの情報、すなわち運航航路計画は、船舶エネルギー需要予測部20、最適船速計画部30、自動操縦装置120及びディスプレイ130へ通信網300を通じて送信される。
船舶エネルギー需要予測部20は、船舶のエネルギー需要を予測モデルを用いて予測する。船舶のエネルギー需要は、船舶の動きに関わらないため、このような場合の予測には統計予測モデルを用いるのが好適である。
図2には、本実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部の概略構成が示されている。
船舶エネルギー需要予測部20は、前処理部21、予測モデル構築部22、予測モデル選定部23、予測部24及び閾値設定・情報量規準選定部25を備えている。
船舶エネルギー需要予測部20は、予測モデル構築用データ及び実績データを取得し、予測モデルの構築・選択を行った上で予測を行う。前処理部21、予測モデル構築部22、予測モデル選定部23、予測部24及び閾値設定・情報量規準選定部25は、それぞれ相互にデータのやり取りを行う。
以下、本実施形態の船舶エネルギー需要予測部の各部およびその処理について、図3及び4のフローチャートを用いて説明する。
図3には、本実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部の予測の処理を示したフローチャートが表されており、図4には本実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部の閾値設定・情報量規準選択部の処理を示したフローチャートが表されている。
前処理部21は、予測モデル構築用データにおけるフィルタ処理を行う。
本実施形態では、例えば1時間毎に居住区のエネルギー需要(船内需要)のデータを取得しているとする。客船では、停泊中に船舶のメンテナンスを行う機会が多い。このメンテナンス期間中、居住区のエネルギー需要のデータが取得されていない、すなわち欠測している場合がある。したがって、欠測した時間帯を含めたエネルギー需要の取得データをそのまま用いて予測モデルの構築を行うとすると、予測精度が悪化してしまうことが懸念される。
そこで、前処理部21において予測モデル構築用データに対しフィルタ処理を実施する(図3のステップS301)。
前処理部21に対し、予測モデル構築用データ(1時間毎の居住区のエネルギー需要のデータ/過去のエネルギー需要実績)が渡されると、そのデータに欠測した時間帯がある場合、前処理部21は「前後データによる線形補間」及び「欠測時間帯全削除」の2つのフィルタ処理を行う。
図5には、本実施形態に係る前処理部におけるデータ欠測時の処理例を表す表が示されている。
図5の(a)は居住区のエネルギー需要のデータにおいて欠測した時間帯がある元データの例、(b)は(a)に対し「前後データによる線形補間」のフィルタ処理を行った例、(c)は(a)に対し「欠測時間帯全削除」のフィルタ処理を行った例を表す表である。
図5(a)の例の場合、18時から20時の時間帯における19時の時間帯において欠測が発生している。
「前後データによる線形補間」のフィルタ処理を行う場合は、19時の前後、すなわち18時と20時のデータにより、19時のデータの線形補間値を算出する。この場合、図5(b)に示されるように、19時の時間帯の船舶エネルギー需要は150kWが線形補間値として与えられる。
「欠測時間帯全削除」のフィルタ処理を行う場合は、図5(c)に示されるように欠測した19時の時間帯のデータを全て削除する。
このように、前処理部21において予測モデル構築用データに対し2つのフィルタ処理済データが作成される。
次にフィルタ処理が行われた予測モデル構築用データに対し、特徴分析を行う(図3のステップS302)。
予測を行う対象(本実施形態の場合、居住区のエネルギー需要)の時系列データについてスペクトル分析を行い、周期性の有無やその強さを確認する。
図6には、本実施形態に係る前処理部におけるスペクトル分析を示したグラフが表されている。
図6の横軸はスペクトルの周期、縦軸はスペクトルの振幅を表している。図6のスペクトルは特に12時間および24時間の場合に振幅が大きくなっていることから、このスペクトルは12時間の周期性を持つと言える。
また、前処理部21は、予測モデル構築用データを用いて、予測モデルの説明変数候補を作成する。
予測を行う対象(本実施形態の場合、居住区のエネルギー需要)の時系列データについて各時間帯毎の平均値を算出し、同時に計測されている気温や湿度等とともに説明変数候補とする。例えば、予測を行う対象のデータに時間との相関関係、すなわち周期性(例えば昼間にピークがあり夜間にボトムがある等)がある場合、時間帯毎の平均値を説明変数とした回帰モデルを構築することで、予測精度の向上が見込める。
以上、前処理部21による図3のステップS301及びステップS302の処理により導き出された各フィルタ処理済の予測モデル構築データとスペクトル分析結果および説明変数候補とを予測モデル構築部22へ送信する。
予測モデル構築部22は、前処理部21によってフィルタ処理されたデータをもとに、パラメータ設定を含む予測モデルの構築を行う。予測モデルについては、時系列モデル及び回帰モデルの2つのモデルを構築するものとする。
予測モデル構築部22による時系列モデルの構築について説明する(図3のステップS303)。
時系列モデルの構築を行う場合、予測モデル構築部22は、前処理部21により「前後データによる線形補間」のフィルタ処理が行われた予測モデル構築用データを用いる。時系列モデルは、AR(Autoregressive/自己回帰)モデル、MA(Moving-average/移動平均)モデル、あるいはそれらを応用したモデル、及びそれらを組み合わせたモデルのいずれを用いてもよい。
予測モデル構築部22は、後述する閾値設定・情報量規準選択部25より、第1閾値を受信する(図3のBより遷移)。
図6のグラフに、第1閾値が示されている。予測モデル構築部22は、前処理部21から受信したスペクトル分析結果および第1閾値に基づき、スペクトルが第1閾値を上回る周波数成分を抽出する。図6の例では、この予測モデル構築用データのスペクトルが12時間の周期性を持つ(例えば、朝と夕にエネルギー需要がピークとなる)ことがわかる。
抽出した周波数成分(周期性)を表現する時系列モデルの次数(パラメータ)候補それぞれについて、前処理部21によってフィルタ処理された予測モデル構築用データを元に、予測モデルを構築する。ここで次数候補は、用いたモデルによって変動する(例えばARモデルの場合は自己回帰パラメータ等)。
また、予測モデル構築の際、予測モデルを構築する度に各予測モデルの情報量規準(予測評価値)を算出する。情報量規準は、予測モデルの優劣判断に用いる評価指標であり、情報量規準の種別(予測評価値種別)としては、AIC(Akaike's Information Criterion/赤池情報量規準)、BIC(Bayesian Information Criterion/ベイズ情報量規準)及びGIC(Generalized Information Criterion/一般化情報量規準)等がある。情報量規準は、その値が小さいほど予測精度が良いとされる指標である。
また、予測モデル構築部22による回帰モデルの構築について説明する(図3のステップS304)。
回帰モデルの構築を行う場合、予測モデル構築部22は、前処理部21により「欠測時間帯全削除」のフィルタ処理が行われた予測モデル構築用データを用いる。回帰モデルは、多項式のような線形回帰モデル、及びニューラルネットワークのような非線形回帰モデルのいずれを用いてもよい。
例えば、多項式モデルを用いる場合、次数(パラメータ)候補および説明変数候補のそれぞれについて前処理部21において導き出されたデータをもとに予測モデルの構築を行う。また、ニューラルネットワークモデルを用いる場合、中間層(ノード)数の候補それぞれについて、前処理部21において導き出されたデータをもとに予測モデルの構築を行う。
また、予測モデル構築の際、予測モデルを構築する度に各予測モデルの情報量規準(予測評価値)を算出する。
図7には、本実施形態に係る予測モデル構築部における時系列モデル及び回帰モデルの例とその各情報量規準値を示した表が示されている。
図7(a)は、時系列モデルの例A乃至D、(b)は、回帰モデルの例E乃至Hを示している。時系列モデル及び回帰モデルのいずれについても、情報量規準AIC、BIC及びGICを算出している。
例えば、時系列モデルの例A乃至Dの場合、スペクトル分析結果において抽出されたスペクトルの周波数成分と、選択されたモデル(例えばARモデル)に応じた次数(パラメータ)とに基づき予測値が算出される。またこの各予測モデルについて、情報量規準のAIC、BIC及びGICが算出されている。予測モデル構築部22は、前処理部21により「前後データによる線形補間」のフィルタ処理が行われた予測モデル構築用データを用いる。よって、時系列モデルを用いる場合は、周期性のあるデータに対する予測精度が向上する。
また、回帰モデルの例E乃至Hの場合、説明変数候補と、選択されたモデル(例えば多項式モデル)に応じた次数(パラメータ)とに基づき予測値が算出される。またこの各予測モデルについて、情報量規準のAIC、BIC及びGICが算出されている。予測モデル構築部22は、前処理部21により「欠測時間帯全削除」のフィルタ処理が行われた予測モデル構築用データを用いる。よって、回帰モデルを用いる場合は、正しいデータのみによる予測が可能である。
以上、予測モデル構築部22によって構築された各予測モデルが、予測モデル選定部23へ送信される。
予測モデル選定部23は、前処理部21によるスペクトル分析結果をもとに、予測モデルに時系列モデル及び回帰モデルのいずれを用いるか選定する。また、選定した予測モデルのうち、どのモデルを用いるか選定する。
予測モデル選定部23によるモデルの選定について説明図する(図3のステップS305からS308)。
予測モデル選定部23は、後述する閾値設定・情報量規準選択部25より、第2閾値を受信する(S305/図3のBより遷移)。前処理部21によってスペクトル分析されたスペクトルの各周波数成分の振幅が第2閾値を超える、すなわちスペクトルの周期性が強いといえる場合は、時系列モデルを選定し(S306)、スペクトルの各周波数成分の振幅が第2閾値を超えない場合は、回帰モデルを選定する(S307)。これは、時系列モデルは周期性のある予測対象を表現するのに適しているためである。
例えば図6に示されたスペクトルの場合は、8時間、12時間、24時間の周期において第2閾値を超えていることから、時系列モデルを選定する。
予測を行う対象(本実施形態の場合、居住区のエネルギー需要)が複数存在する場合は、全ての予測を行う対象に対し、いずれのモデルを適用するか決定する。
予測モデル選定部23は、後述する閾値設定・情報量規準選択部25より、今回の評価に用いる情報量規準の情報を受信する(S308/図3のBより遷移)。本実施形態の場合、例えばAICが選択されているものとする。
ステップS306において時系列モデルが選定された場合、予測モデル構築部22において構築された全ての時系列モデルのうち、ステップS308にて受信した今回の評価に用いる情報量規準AICの値が最も小さい値である時系列モデルを最終的な予測モデル(エネルギー最適予測モデル)として選定する。
図7のような予測モデルが構築されているの場合、スペクトルの各周波数成分の振幅が第2閾値を超えており、かつAICが選択されている場合は、図7(a)の時系列モデル例のうちAICの値が最も小さい値3.5である例Aが選択されることとなる。
ステップS307において回帰モデルが選定された場合、予測モデル構築部22において構築された全ての回帰モデルのうち、ステップS308にて受信した今回の評価に用いる情報量規準AICの値が最も小さい値である回帰モデルを最終的な予測モデル(エネルギー最適予測モデル)として選定する。
図7のような予測モデルが構築されている場合、スペクトルの各周波数成分の振幅が第2閾値を超えておらず、かつAICが選択されている場合は、図7(b)の回帰モデル例のうちAICの値が最も小さい値2.1である例Gが選択されることとなる。
以上、予測モデル選定部23によって選定された予測モデル(エネルギー最適予測モデル)における予測値を、予測部24へ送信する。
また、今回の評価に用いる情報量規準(本実施形態の場合、AIC)以外の情報量規準(本実施形態の場合、BIC及びGIC)についても、その値が最も小さい値である予測モデルを選定する。
図7の場合、BICの値が最も小さい値2.5である例B、GICの値が最も小さい値11.5である例Eがそれぞれ選定され、これら予測モデルにおける予測値についても、予測部24へ送信する。
予測部24は、予測モデル選定部23によって選定された予測モデルに基づき予測を行う。
予測部24による予測について説明する(図3のステップS309及びS310)。
予測部24は、最適航路計画部10から運航航路計画および気象、海象および海流予報を、記憶部40から予測を行う対象(本実施形態の場合、居住区のエネルギー需要)の過去の実績値(過去のエネルギー需要実績)をそれぞれ受信する(S309)。
次に、予測モデル選定部23によって選定された予測モデルに応じて、ステップS309において受信した情報を用いて予測を行う(予測値を算出する)(S310)。
予測モデル選定部23によって時系列モデルが選定されていた場合は、選定された時系列モデルの予測値および予測を行う対象(居住区のエネルギー需要)の過去の実績値を用いて予測を行う。例えば図7(a)の例Aが選定されていた場合は、「24時間前の値」及び「48時間前の値」に過去の実績値を代入し、予測値を算出する。
一方、予測モデル選定部23によって回帰モデルが選定されていた場合は、選定された回帰モデルの予測値および気象、海象および海流予報を用いて予測を行う。例えば図7(b)の例Eが選定されていた場合は、「気温」及び「湿度」に気象、海象および海流予報の値を代入し、予測値を算出する。
予測部24は、このように算出した船舶エネルギー需要の予測値を、最適船速計画部30、船舶100の自動操縦装置120及びディスプレイ130へ送信する。
また、予測部24は、予測モデル選定部23において今回の評価に用いる情報量規準以外の情報量規準において選定した予測モデルについても、そのモデルに応じてステップS309において受信した情報を用いて予測値を算出する。予測部24は、このように算出した船舶エネルギー需要の各情報量規準最小モデルの予測値を、閾値設定・情報量規準選択部25へ送信する(図3のAへ遷移)。
閾値設定・情報量規準選択部25は、予測モデルの構築および選定に用いられる閾値の設定、および情報量規準の選択を行う。
閾値設定・情報量規準選択部25による閾値の設定および情報量規準の選択について説明する(図4のステップS401及びS402)。
閾値設定・情報量規準選択部25は、予測部24からエネルギー最適予測モデルにおける予測値および各情報量規準最小モデルの予測値を受信し、船舶100の運航が終了するまで情報を保存する。また、運航中は、船舶100の計測システム110から予測を行う対象(居住区のエネルギー需要)の実績データを随時受信または計測システム110からの実績データを記憶部40にて随時記憶し運航終了時にまとめて受信する(S401/図4のAより遷移)。
船舶100の運航が終了すると、閾値設定・情報量規準選択部25は、保存していた各情報量規準最小モデルの予測値と予測を行う対象(居住区のエネルギー需要)の実績データとを比較し、実績データとの差が最も小さい予測値(エネルギー最良予測モデルの予測値)の情報量規準を抽出する(S402)。この抽出された情報量規準が、次回の運航時における「今回の評価に用いる情報量規準」として予測モデル選定部23へ送信される(図4のBへ遷移/図3のS308へ)。
また、全ての予測対象それぞれにおいて時系列モデル及び回帰モデルによる予測値を算出し、それぞれについて実績値との比較から予測誤差を求める。この結果により、第1閾値および第2閾値の修正を行う(S402)。
具体的には、時系列モデル及び回帰モデルの選定(ステップS305)において回帰モデルの選定割合が多い、すなわち第1閾値が高く時系列モデルの候補を絞りすぎている可能性がある場合は、第1閾値を低く修正する。逆に、時系列モデル及び回帰モデルの選定(ステップS305)において時系列モデルの選定割合が多い、すなわち第1閾値を第2閾値の値に近づけても時系列モデルが選定されている場合は、第1閾値を高く修正する。
また、実績データとの比較により時系列モデルの方が予測誤差が小さいにもかかわらず回帰モデルが予測モデルとして選定されていた場合、すなわち第2閾値が高かった場合は、第2閾値を低く修正する。逆に、実績データとの比較により回帰モデルの方が予測誤差が小さいにもかかわらず時系列モデルが選定されていた場合、すなわち第2閾値が低かった場合は、第2閾値を高く修正する。ただし、いずれの場合であっても第2閾値は必ず第1閾値よりも大きな値であるとする。
閾値設定・情報量規準選択部25によって修正された第1閾値は予測モデル構築部22へ、および第2閾値は予測モデル選定部23へ、それぞれスペクトル分析結果と合わせて送信される(図4のBへ遷移/図3のS303及びS305へ)。
最適船速計画部30は、船舶エネルギー需要予測部20から船舶エネルギー需要予測情報を受信すると、発電モデルを利用して、要求(予測)される電力に対する発電効率が最良となる発電用エンジン(図示せず)の動作状態の組合せ及び当該組合せによる(発電)燃料消費量を算出する。以上の処理を船速をパラメータとして繰り返し行い、1航海中の燃料消費量が最小となる船速パターンを算出する。ここで、船速パターンの算出方法については特に限定しない。
また、最適船速計画部30は、算出した船速パターンを用い、船舶エネルギー需要の再予測必要性判断を行う。これは、船速によって各時刻における船舶100の位置が変わることから、船舶エネルギー需要予測に用いるべき気象、海象および海流予報が船舶エネルギー需要予測部20で用いた情報と異なることが発生する場合があるためである。ここで、船舶エネルギー需要の再予測が必要であると判断された場合は、船舶エネルギー需要予測部20による船舶エネルギー需要の予測へ戻る。以降、船舶エネルギー需要予測部20による船舶エネルギー需要の予測と、最適船速計画部30による船速パターンの算出とを繰り返す。
船舶エネルギー需要の再予測が必要でないと判断された場合は、最適船速計画部30は算出された船速パターン、すなわち最適船速計画を自動操縦装置120およびディスプレイ130へ送信する。
船舶100の推進に必要なエネルギー需要については、気象、海象および海流等と船舶100の性能および船速を用いて算出する物理モデルが好適である。
自動操縦装置120は、最適航路計画部10より運航航路計画および最適船速計画部30より最適船速計画を受信する。
受信した各計画データを用いて、自動操縦装置120は、船舶100の推進および操舵に関わる発電機、スクリュー駆動部などの各部(いずれも図示せず)を動作させて、運航航路計画により定められた航路を最適船速計画により定められた船速で船舶100を航行させる。
ディスプレイ130は、最適航路計画部10より運航航路計画を、最適船速計画部30より最適船速計画を、GPS80より船舶100の位置情報を、計測システム110よりその他航行に関わる各種情報をそれぞれ受信する。受信した情報は、液晶ディスプレイ等の表示装置に表示される。
以上、説明してきたように、本実施形態に係る船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
予測モデル構築部22が船舶100の船内需要における過去のエネルギー需要実績に基づき複数のエネルギー予測モデルを構築し各々複数の情報量規準の種別の情報量規準を算出し、予測モデル選定部23は、予測モデル構築部22で構築された複数のエネルギー予測モデルから情報量規準が最小であるエネルギー最適予測モデルを選定し、予測部24は、エネルギー最適予測モデルと、過去のエネルギー需要実績または気象、海象および海流予報とから船舶エネルギー需要予測を行うことから、船舶100の居住区のエネルギー需要を含めた船舶エネルギー需要に対し、エネルギー予測モデルの予測精度の評価指標となる情報量規準が最小、すなわち精度の高い予測を選定することができ、これを用いた運航支援が可能となる。
また、複数のエネルギー予測モデルを構築することから、様々な電力需要のパターンに対応でき、船舶100の種類、航路、日程などによらず精度の高い予測の適用が可能である。
また、予測モデル構築部22は、過去のエネルギー需要実績に対し第1閾値を上回る周波数成分を抽出してエネルギー予測モデルとして時系列モデルを複数構築し、過去のエネルギー需要実績に基づきエネルギー予測モデルとして回帰モデルを複数構築し、各エネルギー予測モデルについて情報量規準を算出し、予測モデル選定部23は、時系列モデルまたは回帰モデルのいずれを用いるか決定した上で情報量規準が最小となるエネルギー最適予測モデルを選定することから、船舶によりそれぞれの特徴を持った船舶エネルギー需要に対応する複数のエネルギー予測モデルを構築することができるため、精度の高い船舶エネルギー需要予測が可能である。
また、前処理部21は、過去のエネルギー需要実績においてデータの欠落した欠落時間帯がある場合、欠落時間帯前後のエネルギー需要実績データに基づき線形補間を行う、または、全欠落時間帯の削除を行うことから、欠落時間帯のあるデータをそのまま用いる場合は予測精度が悪化する可能性があるが、いずれかの方法によりエネルギー予測モデル構築用データに対しフィルタ処理を行うことによって予測精度を向上させることができる。
また、予測モデル選定部23は各情報量規準の種別ごとに最小情報量規準のエネルギー予測モデルを選定し、予測部24は各情報量規準の種別ごとの最小情報量規準のエネルギー予測モデルに基づき各々船舶エネルギー需要予測を行い、閾値・情報量規準選択部25は、各船舶エネルギー需要予測と航行後のエネルギー需要実績とを比較し最も誤差の小さい船舶エネルギー需要予測における情報量規準種別を抽出するとともに時系列モデルおよび回帰モデルに基づき第1閾値および第2閾値を修正した上で、情報量規準種別および第1閾値を予測モデル構築部22へ送信し、第2閾値を予測モデル選定部23へ送信することから、予測と実績との誤差を把握しこれを次回の運航時に対し適用することができ、予測精度の向上が可能となる。
また、前処理部21は、過去のエネルギー需要実績における特徴分析を行い、予測モデル選定部23は、特徴分析の結果に基づき時系列モデルまたは回帰モデルのいずれを用いるか決定しフィードバックされた情報量規準種別の情報量規準の最小値であるエネルギー最適予測モデルを選定することから、エネルギー需要実績に応じたエネルギー予測モデルをその特徴分析(例えば周期性)から導くことができるため、精度の高い船舶エネルギー需要予測が可能である。また、前回の航行において得られたエネルギー最良予測モデルの結果をフィードバックすることから、さらに精度の高い船舶エネルギー需要予測が可能となる。
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について、図8乃至11を用いて説明する。
上記した第1実施形態では、気象、海象および海流予報は世界気象機関の予報データを用いるとしたが、本実施形態では、自船の航行予定の海域のみの気象、海象および海流予報と、自船の航行予定の海域内を運航している他船の計測データとを活用するものである。その他の点については第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
図8には、本実施形態に係る船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法の概略構成が示されている。
図8に示されるように、船舶の運航支援システム1は、船舶100に搭載された計測システム110、自動操縦装置120及びディスプレイ130、GPS80、本実施形態では例えば陸上の情報センターに備えられた最適航路計算部10、船舶エネルギー需要予測部20、最適船速計画部30、記憶部40及び他の船舶との通信を行う通信装置70、及び通信網300を主な構成として備えている。
船舶100は、主機は電気モータである船舶を想定している。
また、最適航路計算部10は、世界気象機関の予報データから気象、海象および海流予報を取得する。
また、自船(船舶)100が航行する予定の海域内を運航している他船200には、通信装置210が搭載されており、運航支援システム1の通信装置70と相互に通信が可能である。
図9には、本実施形態に係る予測部を示した概略構成図が示されている。
予測部24は、図2に示されるように船舶エネルギー需要予測部20の内部に備えられている。本実施形態の予測部24は、図9に示されるように、内部に比較部241及び予測値算出部242を備えている。
以下、本実施形態の船舶エネルギー需要予測部の各部およびその処理について、図10及び11のフローチャートを用いて説明する。
図10には、本実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部の予測の処理を示したフローチャートが表されており、図11には本実施形態に係る船舶エネルギー需要予測部の閾値設定・情報量規準選択部の処理を示したフローチャートが表されている。
まず、前処理部21において予測モデル構築用データに対しフィルタ処理を実施し(図10のステップS101)、フィルタ処理が行われた予測モデル構築用データに対し、特徴分析を行う(S102)。前処理部21によるステップS101及びステップS102の処理により導き出された各フィルタ処理済みの予測モデル構築データとスペクトル分析結果および説明変数候補を、予測モデル構築部22へ送信する。
次に、予測モデル構築部22によって時系列モデルの構築(S103)及び回帰モデルの構築(S104)を行う。ステップS103において、予測モデル構築部22は、閾値設定・情報量規準選択部25より第1閾値を受信する。また、各予測モデル構築の際、予測モデルを構築する度に各予測モデルの情報量規準(予測評価値)を算出する。
以上、予測モデル構築部22によって構築された各予測モデルが、予測モデル選定部23へ送信される。
次に、予測モデル選定部23は、閾値設定・情報量規準選択部25より、第2閾値を受信する(S105/図10のDより遷移)。前処理部21によってスペクトル分析されたスペクトルの各周波数成分の振幅が第2閾値を超える、すなわちスペクトルの周期性が強いといえる場合は、時系列モデルを選定し(S106)、スペクトルの各周波数成分の振幅が第2閾値を超えない場合は、回帰モデルを選定する(S107)。予測モデル選定部23は、閾値設定・情報量規準選択部25より、今回の評価に用いる情報量規準の情報を受信する(S108/図10のDより遷移)。
ステップS106において時系列モデルが選定された場合、予測モデル構築部22において構築された全ての時系列モデルのうち、ステップS108にて受信した今回の評価に用いる情報量規準の値が最も小さい値である時系列モデルを最終的な予測モデル(エネルギー最適予測モデル)として選定する。
ステップS107において回帰モデルが選定された場合、予測モデル構築部22において構築された全ての回帰モデルのうち、ステップS108にて受信した今回の評価に用いる情報量規準の値が最も小さい値である回帰モデルを最終的な予測モデル(エネルギー最適予測モデル)として選定する。
以上、予測モデル選定部23によって選定された予測モデル(エネルギー最適予測モデル)における予測値を、予測部24の予測値算出部242へ送信する。
一方、比較部241は、通信装置70及び210を経由して自船100の運航航路計画による航路上を航行する他船200から航路上における気象、海象および海流の計測情報を(S109)、最適航路計画部10から運航航路計画および運航航路計画による航路上における気象、海象および海流予報を、記憶部40から予測を行う対象(本実施形態の場合、居住区のエネルギー需要)の過去の実績値を(S110)それぞれ受信する。
自船100と同じ海域かつ同じ時刻における気象、海象および海流予報(予報値)と、他船200の気象、海象および海流の計測情報(実測値)とを比較する。予報値と実測値との比較の誤差から、予報誤差を算出する。例えば、「気温を実際より平均3℃低く予報している」、「海流を平均3m/s早く予報している」、「予報範囲の中央付近は気温を実際より平均5℃高く予報している一方、境界付近は平均2℃低く予報している」等の予報誤差が考えられる。
比較部241は、算出された予報誤差を用いて、自船100の運航航路計画による航路上の予報の修正を行い、予測値算出部242へ送信する(S111)。
予測値算出部242は、比較部241から修正を行った予報を、予測モデル選定部23から予測モデルを、記憶部40から予測を行う対象(本実施形態の場合、居住区のエネルギー需要)の過去の実績値をそれぞれ受信し、これらの情報から船舶エネルギー需要の予測を行う(S112)。
次に、予測値算出部242は、算出した船舶エネルギー需要の予測値を最適船速計画部30、船舶の自動操縦装置120及びディスプレイ130へ送信する。
また、予測値算出部242は、予測モデル選定部23において今回の評価に用いる情報量規準以外の情報量規準において選定した予測モデルについても、そのモデルに応じて受信した情報を用いて予測を行う。予測値算出部242は、このように算出した船舶エネルギー需要の各情報量規準最小モデルの予測値を、閾値設定・情報量規準選択部25へ送信する(図10のCへ遷移)。
閾値設定・情報量規準選択部25は、予測部24からエネルギー最適予測モデルにおける予測値および各情報量規準最小モデルの予測値を受信し、船舶100の運航が終了するまで情報を保存する。また、運航中は、船舶100の計測システム110から予測を行う対象(居住区のエネルギー需要)の実績データを随時受信、または計測システム110からの実績データを記憶部40にて随時記憶し運航終了時にまとめて受信する(図11のS113/図11のCより遷移)。
船舶100の運航が終了すると、閾値設定・情報量規準選択部25は、保存していた各情報量規準最小モデルの予測値と予測を行う対象(居住区のエネルギー需要)の実績データとを比較し、実績データとの差が最も小さい予測値(エネルギー最良予測モデルの予測値)の情報量規準を抽出する(S114)。この抽出された情報量規準が、次回の運航時における「今回の評価に用いる情報量規準」として予測モデル選定部23へ送信される(図11のDへ遷移/図10のS108へ)。
また、時系列モデル及び回帰モデルのそれぞれについて予測誤差を確認する。この結果により、第1閾値および第2閾値の修正を行う(S114)。
閾値設定・情報量規準選択部25によって修正された第1閾値は予測モデル構築部22へ、および第2閾値は予測モデル選定部23へ、それぞれスペクトル分析結果と合わせて送信される(図11のDへ遷移/図10のS103及びS105へ)。
以上、説明してきたように、本実施形態に係る船舶の運航支援システム及び船舶の運航支援方法によれば、以下の作用効果を奏する。
予測部24は、気象、海象および海流予報と他船200の気象海象海流計測情報との誤差を算出し、その誤差を用いて各予報の修正を行った修正予報情報を取得し、エネルギー最適予測モデル、過去のエネルギー需要実績、及び修正予報情報に基づき船舶エネルギー需要予測を行うことから、他船200の計測データを活用することで気象、海象および海流予報の精度を高めることができ、精度の高い気象、海象および海流情報を用いることでより精度の高い船舶エネルギー需要予測を用いた運航支援が可能となる。
1 運航支援システム
10 最適航路計算部
20 船舶エネルギー需要予測部
21 前処理部
22 予測モデル構築部
23 予測モデル選定部
24 予測部
25 閾値設定・情報量規準選定部
30 最適船速計画部
40 記憶部
70 通信装置
80 GPS
100 船舶
110 計測システム
120 自動操縦装置
130 ディスプレイ
200 他船
210 通信装置
241 比較部
242 予測値算出部
300 通信網

Claims (8)

  1. 船舶の船内需要における過去のエネルギー需要実績に基づき複数のエネルギー予測モデルを構築し、前記エネルギー予測モデルの優劣判断に用いる評価指標である予測評価値を各々複数の前記予測評価値の種別である予測評価値種別ごとに算出する予測モデル構築部と、
    前記予測モデル構築部で構築された複数の前記エネルギー予測モデルから前記予測評価値が最小であるエネルギー最適予測モデルを選定する予測モデル選定部と、
    前記エネルギー最適予測モデルと、前記過去のエネルギー需要実績または気象、海象および海流予報とから船舶エネルギー需要予測を行う予測部と、
    前記過去のエネルギー需要実績におけるスペクトル分析を行う前処理部と、
    を備え
    前記予測モデル構築部は、前記過去のエネルギー需要実績に対し前記スペクトル分析されたスペクトルが第1閾値を上回る周波数成分を抽出して前記エネルギー予測モデルとして時系列モデルを複数構築し、前記過去のエネルギー需要実績に基づき前記エネルギー予測モデルとして回帰モデルを複数構築し、複数の前記時系列モデル及び前記回帰モデルについて各々前記予測評価値を算出することを特徴とする船舶の運航支援システム。
  2. 前記予測モデル選定部は、前記スペクトル分析されたスペクトル各周波数成分の振幅と第2閾値との比較結果に基づき前記時系列モデルまたは前記回帰モデルのいずれを用いるか決定し、決定した前記時系列モデルまたは前記回帰モデルのいずれかにおいて前記予測評価値が最小となる前記エネルギー最適予測モデルを選定することを特徴とする請求項1に記載の船舶の運航支援システム。
  3. 前記予測モデル選定部において各前記予測評価値種別ごとに最小予測評価値の前記エネルギー予測モデルを選定し、
    前記予測部において各前記予測評価値種別ごとの最小予測評価値の前記エネルギー予測モデルに基づき各々前記船舶エネルギー需要予測を行い、
    各前記船舶エネルギー需要予測と航行後のエネルギー需要実績とを比較し最も誤差の小さい前記船舶エネルギー需要予測における前記予測評価値種別を抽出する、及び前記時系列モデルおよび前記回帰モデルに基づき前記第1閾値および前記第2閾値を修正した上で、該予測評価値種別および該第1閾値を前記予測モデル構築部へ送信し、該第2閾値を前記予測モデル選定部へ送信する閾値・情報量規準選択部を備えることを特徴とする請求項に記載の船舶の運航支援システム。
  4. 記予測モデル選定部は、前記閾値・情報量規準選択部から送信された前記予測評価値種別の前記予測評価値が最小であるエネルギー最適予測モデルを選定することを特徴とする請求項3に記載の船舶の運航支援システム。
  5. 前記前処理部は、前記予測モデル構築部が用いる前記過去のエネルギー需要実績においてエネルギー需要実績データの欠落した欠落時間帯がある場合、前記欠落時間帯前後の前記エネルギー需要実績データに基づき線形補間を行う、または、全前記欠落時間帯の削除を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の船舶の運航支援システム。
  6. 象、海象および海流予報と他船の気象海象海流計測情報との誤差を算出し、該誤差を用いて前記気象、海象および海流予報の修正を行った修正予報情報を取得し、前記エネルギー最適予測モデル、前記過去のエネルギー需要実績、及び前記修正予報情報に基づき船舶エネルギー需要予測を行う予測部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の船舶の運航支援システム。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の船舶の運航支援システムを搭載する船舶。
  8. 船舶の船内需要における過去のエネルギー需要実績に基づき複数のエネルギー予測モデルを構築し、前記エネルギー予測モデルの優劣判断に用いる評価指標である予測評価値を各々複数の前記予測評価値の種別である予測評価値種別ごとに算出する予測モデル構築工程と、
    複数の前記エネルギー予測モデルから前記予測評価値が最小であるエネルギー最適予測モデルを選定する予測モデル選定工程と、
    前記エネルギー最適予測モデルと、前記過去のエネルギー需要実績または気象、海象および海流予報とから船舶エネルギー需要予測を行う予測工程と、
    前記過去のエネルギー需要実績におけるスペクトル分析を行う前処理工程と、
    を有し、
    前記予測モデル構築工程は、前記過去のエネルギー需要実績に対し前記スペクトル分析されたスペクトルが第1閾値を上回る周波数成分を抽出して前記エネルギー予測モデルとして時系列モデルを複数構築し、前記過去のエネルギー需要実績に基づき前記エネルギー予測モデルとして回帰モデルを複数構築し、複数の前記時系列モデル及び前記回帰モデルについて各々前記予測評価値を算出することを特徴とする船舶の運航支援方法。
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