JP6280982B2 - スクリーン印刷機 - Google Patents

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Description

本発明は、スキージをスクリーンに押しつけるスクリーン印刷機に関し、スキージを押しつける押圧力の制御に関するものである。
従来、クリーム半田をプリント基板に印刷するスクリーン印刷機がある(例えば、特許文献1など)。この種のスクリーン印刷機においては、複数の透孔を有するスクリーンにスキージを接触させた状態で、スクリーンとスキージとを相対移動させ、スクリーン上のクリーム半田が透孔からプリント基板上に印刷される。この際に、スキージをスクリーンに押し付ける押圧力は、印刷の良否に影響を及ぼす。
具体的には、例えば、押圧力が不足すれば、スクリーンに形成された透孔のスキージ側の開口からクリーム半田が盛り上がった状態で印刷されてしまい、隣接して印刷されたクリーム半田同士が繋がってしまう場合がある。このため、特許文献1に開示されているスクリーン印刷機では、スキージと、スキージを保持するフレームとの間に、スキージをスクリーンに向かって接近する向きに付勢する圧縮コイルスプリングが設けられており、クリーム半田が盛り上がって印刷されないようになっている。
一方で、押圧力が過大であれば、透孔内に導入されたクリーム半田をスキージがそぎ取ってしまい、印刷量が不足したり、スキージやスクリーンの耐久性が低下したりするなどの不具合が生じる場合がある。このため、特許文献1に開示されるスクリーン印刷機では、スキージに加わる荷重を検出するための荷重センサが設けられている。スキージには、スクリーンに接近する際、及びスクリーンから離間する際にスキージと一体的に移動する部材の総重量に加えて、圧縮コイルスプリングの付勢力が荷重として加えられる。スクリーン印刷機は、圧縮コイルスプリングの付勢力に抗する向きの力をスキージに作用させるエアシリンダが設けられており、荷重センサの出力値に基づいてエアシリンダの圧力を制御し押圧力の調整を図っている。
特開平11−227157号公報
しかしながら、上記したスクリーン印刷機では、スキージをスクリーンに押しつける押圧力を検出するための専用のセンサなどが別途必要となってくる。また、荷重センサは、スキージに加わる荷重を正確に検出するために、スキージが移動する動作に影響を受けることなく、スキージと一体的に移動する部材の総重量と圧縮コイルスプリングの付勢力とが適切に作用する位置に設けられる必要がある。このため、上記したスクリーン印刷機では、専用のセンサを設けるためにスキージを保持するフレームの構造などが複雑化し、製造コストの増大を招く虞がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、スキージをスクリーンに押しつける押圧力を簡易な構成にて精度よく調整することができ、ひいては製造コストの低減を図ることが可能なスクリーン印刷機を提供することを目的とする。
上記課題を鑑みてなされた本願に開示される技術に係るスクリーン印刷機は、複数の透孔を有するスクリーンと、スクリーン上を摺動し、スクリーンの透孔から被印刷剤を対象物に印刷するスキージと、シリンダハウジングの内部圧力に応じてスキージをスクリーンに接近、あるいは離間するいずれかの方向に付勢する流体圧シリンダと、シリンダハウジングの内部圧力を検出する圧力センサと、流体圧シリンダに対する単位時間あたりの所定流量の流体の供給あるいは排出により内部圧力を変更する制御を開始してから、圧力センサの検出値が目標の値に到達するまでの応答時間に基づいて内部圧力を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
本願に開示される技術によれば、スキージをスクリーンに押しつける押圧力を簡易な構成にて精度よく調整することができ、ひいては製造コストの低減を図ることが可能なスクリーン印刷機を提供することができる。
本実施形態のクリーム半田印刷機の正面図である。 クリーム半田印刷機の側面図である。 クリーム半田印刷機の押圧力調整用エアシリンダにエアを供給する構成を示す模式図である。 クリーム半田印刷機を制御する制御部を示すブロック図である。 スキージがスクリーンに接触する前の状態を示す模式図である。 スキージがスクリーンに接触した後の状態を示す模式図である。 エアレギュレータの制御圧力と応答時間との関係を示すグラフである。
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態のクリーム半田印刷機100の正面図である。図1に示すようにクリーム半田印刷機100(以下、単に「印刷機」という)は、スクリーン10(図2参照)上のクリーム半田(図示略)をスキージ120によってプリント基板20に印刷する装置である。以下の説明では、図1に示すように、スキージ120が移動する方向をY軸方向(図2における左右方向)、スクリーン10の水平面に平行でY軸方向に直交する方向をX軸方向(図2における紙面直交方向)と称して説明する。
図2は、印刷機100の側面図である。図2に示すスクリーン10は、厚さ方向(図2における上下方向)に貫通する複数の透孔(図示省略)が形成されており、スクリーン10の周縁が図示しないスクリーン枠に固定されている。スクリーン枠は、位置が固定されたスクリーン支持台上に載置され、位置決め装置によってX軸方向及びY軸方向のそれぞれの位置が決定され、固定装置によりスクリーン支持台に固定されている。印刷機100は、基板コンベアによりプリント基板20をX軸方向に沿ってスクリーン10の下方まで搬送した後に、昇降装置によってプリント基板20を昇降させスクリーン10に接触、あるいはスクリーン10から離間させる。プリント基板20は、クリーム半田の印刷時には、スクリーン10の下面に接触させられる。クリーム半田の印刷後、プリント基板20は、基板コンベアにより搬出される。なお、図2においてスクリーン10及びプリント基板20は、図示の都合上、実際よりもスキージ120に近接して図示されている。
印刷機100は、図示しないスキージ移動装置を有する。スキージ移動装置は、Y軸方向に移動可能に保持された図示しないY軸スライドを有しており、サーボモータ34(図4参照)を駆動させてY軸スライドをY軸方向に移動させる。このY軸スライドには、フレーム38が設けられている。フレーム38には、2組のスキージユニット40(図2参照)が取り付けられている。フレーム38は、スキージ移動装置によって、Y軸スライドとともにY軸方向に移動させられる。2組のスキージユニット40は、Y軸方向において対称な位置に設けられており、同一の構成となっている。以下の説明では、一方のスキージユニット40を代表的に説明する。
図2に示すように、フレーム38には、スキージ昇降用エアシリンダ42が下向きに設けられている。スキージ昇降用エアシリンダ42のシリンダハウジング44は、フレーム38に対して固定されている。スキージ昇降用エアシリンダ42のピストンロッド46は、シリンダハウジング44内から下方へ向かって突出し、フレーム38に形成された貫通穴48内に挿入されている。
2組のスキージユニット40の各々が備えるシリンダハウジング44のY軸方向における間には、押圧力調節用エアシリンダ56が設けられている。押圧力調節用エアシリンダ56のシリンダハウジング64は、ピストン62の上側に第1エア室72が形成され、下側に第2エア室74が形成されている。ピストン62のピストンロッド58は、シリンダハウジング64内から下方へ向かって突出し、先端部がフレーム38に固定されている。
ピストン62のシリンダハウジング64とが摺動する部分には、シール部材が配設されておらず、代わりに嵌合させるクリアランスが通常より小さくされているため実質的に気密性が保たれた状態となっている。ピストン62の外周面には、円環状の逃げ溝76が2個形成されている。また、ピストンロッド58が挿通されるシリンダハウジング64の挿通孔には、円環状の逃げ溝78が2個形成されている。これにより、ピストン62は、シリンダハウジング64とのクリアランスが小さくても滑らかに摺動するようになっている。また、フレーム38とシリンダハウジング64との上下方向の間には、圧縮コイルスプリング86が配設され、フレーム38を下方へ付勢している。
フレーム38に設けられた貫通穴48内に挿入されたスキージ昇降用エアシリンダ42のピストンロッド46は、先端部が支持部材102に接続されている。支持部材102の下面には、直線移動部材104が固定されている。支持軸106は、直線移動部材104によって保持されている。回動部材108は、Y軸方向に沿った支持軸106によって、当該支持軸106を中心に回動可能に保持されている。回動部材108の下面には、印刷ヘッド116のスキージ保持部材118が取り付けられている。印刷ヘッド116は、スキージ保持部材118にスキージ120が取り付けられている。印刷ヘッド116は、回動部材108とともに回動可能であり、スキージ昇降用エアシリンダ42及び押圧力調節用エアシリンダ56によって昇降させられる。
図1に示すように、直線移動部材104の上面には、一対の直線状のガイドロッド124がX軸方向に隔たった位置に設けられている。これらのガイドロッド124は、フレーム38に上下方向に設けられた2個の案内筒126に軸方向に摺動可能に嵌合されており、直線移動部材104、回動部材108及びスキージ120の昇降する方向を案内する。
スキージ保持部材118は、略長方形の板状をなし、主面に直交する方向がY軸方向となるように配設されており、スキージ120が着脱可能に構成されている。スキージ120は、例えば、ゴムや金属(例えば、ステンレス)からなり、略長方形の板状に形成され、スキージ保持部材118によって、主面がY軸方向を向くように保持されている。スキージ120は、スクリーン10(図2参照)の水平面に対して傾斜した状態でスキージ保持部材118に保持されている。
<スキージ120をスクリーン10に押しつける押圧力の調整について>
図3に示すように、シリンダハウジング64の第2エア室74には、エアレギュレータ96からシリンダハウジング64の開口64Aを通じてエアが供給される。シリンダハウジング64のピストン62は、第2エア室74の内部圧力に応じて昇降する。エアレギュレータ96は、エア源98と第2エア室74との間に接続されている。エアレギュレータ96は、エア源98から供給される所定値の圧力のエアを、制御部148の制御に基づいて圧力を調整してから第2エア室74に供給する。第2エア室74は、エアレギュレータ96から供給されるエアの圧力に応じてエアが供給され、あるいはエアが排出されて内部圧力が変更される。また、エアレギュレータ96とシリンダハウジング64との間には、第2エア室74の内部圧力を検出する圧力センサ114が設けれている。圧力センサ114は、検出結果を制御部148に出力する。なお、図3は、印刷を実施していない状態を示しており、上昇端位置となっている。制御部148は、例えば、エアレギュレータ96を制御して大気圧に比べて高い圧力のエアを第2エア室74に供給し、スキージ120を図3の上昇端位置まで上昇させる。
図4に示すように、制御部148は、処理回路であるPU140と、制御プログラム等が記憶されたROM142と、作業メモリであるRAM144と、それらを接続するバス146を有する。バス146には、入力インタフェース150が接続され、圧力センサ114が検出した第2エア室74の内部圧力の値が入力される。また、バス146には、出力インタフェース154を介して複数の駆動回路156〜158が接続されている。制御部148は、駆動回路156を介してサーボモータ34を制御する。また、制御部148は、駆動回路157を介してスキージ昇降用エアシリンダ42の各々に供給するエアの圧力を調整するエアレギュレータ94を制御する。また、制御部148は、駆動回路158を介して上記したエアレギュレータ96を制御する。
次に、印刷機100の印刷動作について説明する。
本実施形態の印刷機100は、2組のスキージユニット40により交互に印刷を行う。制御部148は、スキージ移動装置(サーボモータ34)を制御し、2組のスキージユニット40をY軸方向の一方から他方に向かって移動させる。制御部148は、スキージユニット40を移動させる際に、移動方向において上流側に位置するスキージユニット40のスキージ120を下降させてスクリーン10に所望の押付力で接触させる。スキージユニット40は、スクリーン10に沿って移動させられ、スクリーン10上に載せられたクリーム半田をスキージ120により掻き取りつつ、スクリーン10に設けられた透孔を通してプリント基板20上に印刷する。この際、下流側に位置するスキージユニット40は、スキージ昇降用エアシリンダ42のピストンロッド46と、押圧力調節用エアシリンダ56のシリンダハウジング64とを上昇端位置とし、スキージ120をスクリーン10に接触させないようにする。また、印刷機100は、印刷が終了すると、印刷が終了したプリント基板20の搬出、及び次のプリント基板20の搬入を実施する。そして、印刷機100は、先の印刷で使用したスキージ120を上昇させるとともに、先の印刷で使用していないスキージ120を下降させ互いの位置を入れ替え、今度はスキージユニット40をY方向の逆方向に移動させながら印刷を実施する。
図5は、スキージ120がスクリーン10に接触する前の状態を示す模式図である。なお、上記したとおり、本実施形態の印刷機100では、2つのスキージ120のうち、一方のスキージ120で印刷を実施している際には、他方のスキージ120が上昇端位置に保持されている。このため、以下の説明では、印刷に使用するスキージユニット40を中心に説明する。制御部148は、スキージ120を下降させる際、まずスキージ昇降用エアシリンダ42(図1参照)に対応するエアレギュレータ94を駆動回路157を介して駆動し、スキージ120を下降させる。スキージ昇降用エアシリンダ42は、スクリーン10より僅かに上方の位置(例えば、スクリーン10から3mmだけ上方の位置)までスキージ120を下降させる。
次いで、制御部148は、押圧力調節用エアシリンダ56によってスキージ120を下降させる。押圧力調節用エアシリンダ56は、圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗する向きの力をピストンロッド58からフレーム38に作用させる。押圧力調節用エアシリンダ56がフレーム38に作用させる力は、スキージ昇降用エアシリンダ42、直線移動部材104、スキージ保持部材118などを介してスキージ120に作用する。この押圧力調節用エアシリンダ56がスキージ120に作用させる力は、第2エア室74の内部圧力が小さくなるほど小さくなる。ここで、スキージ120には、次式で示す力FCが作用する。
FC=FA+W−FB・・・・・・・(1)
上記式(1)におけるFAは、圧縮コイルスプリング86による下方向きの付勢力である。Wは、押圧力調節用エアシリンダ56によって昇降させられる各種部材(フレーム38、スキージ昇降用エアシリンダ42、支持部材102、直線移動部材104、回動部材108、支持軸106、スキージ保持部材118及びスキージ120)の総重量である。FBは、押圧力調節用エアシリンダ56がスキージ120に作用させる圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗する上方向きの力である。
制御部148は、エアレギュレータ96を制御し、第2エア室74の内部圧力を減圧する。第2エア室74が減圧されるのにともなって力FBが減少し、圧縮コイルスプリング86の力FAによってスキージ120が下降する。スキージ120は、上方向きと下方向きの力が釣り合う(力FCがゼロとなる)位置で停止する。制御部148は、エアレギュレータ96に対して減圧の指示を開始してから、圧力センサ114の検出値が目標とする値に到達するまでの時間を「応答時間」とし、その応答時間に基づいてスキージ120がスクリーン10に接触、あるいはスキージ120がスクリーン10から離間する状態を検出する。
詳述すると、上記式(1)の力FAは、次式で表される。
FA=k×L・・・・・・・・・・・・・・(2)
上記式(2)におけるkは、圧縮コイルスプリング86のバネ定数である。Lは、圧縮コイルスプリング86の上下方向に沿った長さである。
また、上記式(1)の力FBは、次式で表される。
FB=S×P・・・・・・・・・・・・・・(3)
上記式(3)におけるSは、シリンダハウジング64の断面積(シリンダハウジング64内のピストン62を上下方向の一方から見た場合の表面積)である。Pは、第2エア室74の内部圧力である。
例えば、エアレギュレータ96が制御圧力PXをP1からP2に減圧したとする。そして、図5に示すように、左側の状態1から状態2に遷移し、圧縮コイルスプリング86の長さLがL1からL2に変化するとともに、第2エア室74の内部圧力PがP1からP2に変化したとする。この場合、状態1及び状態2の各々の条件を上記(1)〜(3)に当てはめると次式が算出できる。
FC=k×L1+W−S×P1・・・・・・(4)
FC=k×L2+W−S×P2・・・・・・(5)
スキージ120がスクリーン10に接触していない状態において力の釣り合った位置で停止した場合に力FCがゼロとなるため、圧縮コイルスプリング86の長さLの変化量ΔLは、上記式(4)、(5)から次式で表される。
ΔL=L2−L1=(P2−P1)S/k・・・・(6)
また、上記した状態1と状態2とでは、第2エア室74の体積は、ピストン62が下降した分だけ減少する。第2エア室74の体積の変化量ΔV1は、上記式(6)を用いて次式で表される。
ΔV1=S×ΔL=S(P2−P1)/k・・・・(7)
従って、シリンダハウジング64は、エアレギュレータ96によって内部圧力がP1からP2に変更されスキージ120の下降が停止するまでの間に、変化量ΔV1に相当するエアが第2エア室74から排出されることとなる。
また、シリンダハウジング64には、エアレギュレータ96と第2エア室74とが接続される開口64A(図3参照)が所定の大きさで形成されている。このため、第2エア室74は、内部圧力Pの変化にともなって、開口64Aから単位時間あたりに所定流量のエアの供給あるいは排出がなされる。開口64Aを流れるエアの単位時間当たりの流量をQとすると、制御部148がエアレギュレータ96に圧力P1から圧力P2への減圧を指示してから、圧力センサ114の検出値が目標の値(圧力P2)に到達するまでの応答時間RT1は、上記式(7)を用いて次式で表される。
RT1=ΔV1/Q={S(P2−P1)/k}/Q・・・・・・(8)
一方で、図6に示すように、スキージ120がスクリーン10に接触した後では、スキージ120の位置が変動しない。このため、エアレギュレータ96によって例えば内部圧力Pが圧力P3から圧力P4に変更されると、第2エア室74は、体積を一定としたまま圧力が変更されることとなる。つまり、スキージ120がスクリーン10に接触する前と後とでは、第2エア室74の状態変化が異なる。シリンダハウジング64は、エアレギュレータ96によって内部圧力が圧力P3から圧力P4に変更されるまでの間に、次式で示す変化量ΔV2に相当するエアが第2エア室74から排出されることとなる。
ΔV2=V3−(P3/P4)V3=V3×(P4−P3)/P4・・(9)
上記式(9)におけるV3は、スキージ120がスクリーン10に接触した状態における第2エア室74の体積である。
また、この場合における制御部148がエアレギュレータ96に圧力P3から圧力P4への減圧を指示してから、圧力センサ114の検出値が目標の値(圧力P4)に到達するまでの応答時間RT2は、上記式(9)を用いて次式で表される。
RT2=ΔV2/Q={V3×(P4−P3)/P4}/Q・・・・・(10)
そして、スキージ120は、第2エア室74の減圧(力FBの減少)に応じた力FC(式(1)参照)でスクリーン10に押し付けられることとなる。
上記したとおり、スキージ120がスクリーン10に接触する前の応答時間RT1と、接触後の応答時間RT2とは異なる。本実施形態の印刷機100では、変化量ΔV1は、シリンダハウジング64(スキージ120)の上下方向の位置が変動して第2エア室74の体積が大きく変化するため、変化量ΔV2に比べて変化量が大きくなる。このため、変化量ΔV1,ΔV2に相関する応答時間RT1,RT2は、応答時間RT2が応答時間RT1に比べて早くなる。そこで、本実施形態の制御部148は、第2エア室74の内部圧力Pを減圧しながら応答時間を計測し、応答時間RT1から応答時間RT2に変化したことを検出すると、スキージ120がスクリーン10に接触した状態であると判定する。制御部148は、スキージ120のスクリーン10への接触を検出すると、検出した際の設定圧力を基準とし、さらに内部圧力Pを制御してスキージ120をスクリーン10に押しつける押圧力を所望の大きさに変更する。
図7のグラフは、エアレギュレータ96の制御圧力PXと、応答時間RT1,RT2との関係を示している。縦軸は、制御部148がエアレギュレータ96を制御する制御圧力PXを示している。横軸は時間を示している。図7に示す例では、例えば、時間T1から第2エア室74を減圧する制御が開始され、時間T4においてスキージ120がスクリーン10に接触したものとする。また、シリンダハウジング64の第2エア室74は、減圧が開始される時間T1の状態において、内部圧力Pが1MPa(メガパスカル)であるとする。制御部148は、例えば、60秒(S)の間隔ごとに0.1MPaだけ減圧、あるいは加圧するように、エアレギュレータ96に対する制御圧力PXを変更する。また、制御部148は、60秒の間隔ごとに応答時間RT1,RT2の判定を実施する。この60秒の制御期間は、例えば、エアレギュレータ96が第2エア室74を0.1MPaだけ減圧、あるいは加圧するのに十分な時間、即ち、応答時間RT1,RT2に比べて十分に長い時間が設定される。
まず、制御部148は、時間T1において、エアレギュレータ96に対し制御圧力PX、即ち第2エア室74の内部圧力Pを1MPaから0.9MPaに減圧する制御を開始する。この段階では、スキージ120がスクリーン10に接触する前の状態であるため、時間T1から応答時間RT1だけ経過した時に、圧力センサ114の検出値が0.9MPaに到達し、その検出結果が制御部148に入力される。制御部148は、時間T1から60秒後の時間T2において、応答時間の判定を実施する。制御部148は、応答時間が応答時間RT1であると判定する。同様に、制御部148は、60秒ごとに制御圧力PXを0.1MPaだけ減圧していく。
次に、制御部148は、時間T3において制御圧力PXを0.7MPaから0.6MPaに減圧する制御を開始する。時間T4において、スキージ120がスクリーン10に接触する。制御圧力PXを0.6MPaにする制御期間が終了する時間T5において、制御部148は、応答時間が応答時間RT1から応答時間RT2に変化したことを検出し、スキージ120がスクリーン10に接触したと判定する。なお、厳密に言えば、時間T3から時間T4までは、スキージ120がスクリーン10に接触しておらず、時間T4から時間T5までがスキージ120がスクリーン10に接触した状態となる。このため、時間T3から時間T5までの間に計測される応答時間RT2は、スキージ120がスクリーン10と離間していた期間が含まれる分だけ、時間T5以降に計測される応答時間RT2に比べて大きくなる。この場合には、制御部148は、例えば、応答時間が応答時間RT1から所定の時間だけ減少した場合に、応答時間RT2の状態に遷移(スキージ120がスクリーン10に接触)したと判定することで、対応することが可能となる。
次に、制御部148は、スキージ120のスクリーン10への接触を検出した制御圧力PX、この場合は0.6MPaを基準として、さらに制御圧力PXを減圧する制御を行いスキージ120の押圧力を所望の大きさとする。例えば、制御部148には、接触を検出した制御圧力PXからどれだけさらに減圧するのかを示す減圧の幅が予め設定されている。図7に示す例では、制御部148は、接触を検出した制御圧力PX(0.6MPa)から0.3MPaだけさらに減圧する。制御部148は、0.6MPaを基準として0.3MPaだけ減圧した圧力(この場合、0.3MPa)まで制御圧力PXを減圧する。制御部148は、制御圧力PXが0.3MPaとなった時間T6において印刷作業を開始する。これにより、印刷機100は、スキージ120がスクリーン10に対して所望の押圧力で押しつけられた状態となり、好適に印刷することが可能となる。
また、制御部148は、制御圧力PXを減圧する制御と同様に、加圧する制御においても応答時間RT1,RT2の変化からスキージ120とスクリーン10との接触を検出することができる。図7に示す例では、時間T7において、スキージ120がスクリーン10から離間する。制御部148は、例えば、スキージ120をスクリーン10から一度離間させてスキージ120の位置や角度を調整する場合などに、応答時間が応答時間RT2から応答時間RT1に変化した制御圧力PXを基準に制御することが可能となる。
また、応答時間RT1,RT2は、制御圧力PXを減圧する場合と、加圧する場合とで異なる場合がある。これは、例えば、一度スクリーン10に接触したスキージ120が離間する際に、スクリーン10上のクリーム半田が付着し、クリーム半田の粘性に応じた力(スキージ120がスクリーン10から離間する向きに抗する向きの力)が作用することで接触と離間とで応答時間RT1,RT2が異なってくる。あるいは、押圧力調節用エアシリンダ56は、ピストン62とシリンダハウジング64とが摺動することで生じる摩擦抵抗が、ピストン62が上昇する場合と下降する場合とで異なる場合がある。この場合には、応答時間RT1,RT2は、予め、シミュレーションや計測などをして、スキージ120を下降させる場合と、上昇させる場合とで異なる値を設定することが好ましい。これにより、制御部148は、スキージ120が上昇する場合と、下降する場合とに分けて最適化された応答時間RT1,RT2を用いることで、スキージ120とスクリーン10とが接触及び離間する際の制御圧力PXをより正確に検出することが可能となる。
以上、詳細に説明した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
<効果1>スキージ120は、押圧力調節用エアシリンダ56の第2エア室74の内部圧力Pが減圧されると、スクリーン10に接近する方向に向かって下降する。制御部148は、エアレギュレータ96に対して第2エア室74の内部圧力Pを減圧、あるいは加圧する制御を開始してから圧力センサ114の検出値が目標の内部圧力Pの値に到達するまでの応答時間RT1,RT2に基づいて、エアレギュレータ96に対する制御を実行する。
本実施形態の印刷機100では、スキージ120がスクリーン10に接触した後の応答時間RT2が、接触前の応答時間RT1に比べて早くなる。このため、制御部148は、第2エア室74の内部圧力Pを減圧しながら応答時間を計測し、応答時間が応答時間RT1から応答時間RT2に変化したことを検出すると、スキージ120がスクリーン10に接触した状態であると判定する。この応答時間RT1,RT2を検出した内部圧力P(エアレギュレータ96の制御圧力PX)を基準として制御を実施すれば、スキージ120をスクリーン10に押しつける押圧力が調整可能となる。一般的には、この種の印刷機100では、押圧力調節用エアシリンダ56に限らず、可動部の位置を変動させるエアシリンダには圧力センサ114が設けられている。従って、当該印刷機100によれば、既存の圧力センサ114を利用することで、スキージ120の押圧力を検出するための専用のセンサ(荷重センサなど)を別途設ける必要がない。
また、従来のように、荷重センサをスキージ保持部材118等に設ける場合には、スキージ120に加わる荷重を正確に計測するために、荷重センサを適切な位置に設ける必要があり、スキージユニット40の構造が複雑化する虞がある。これに対し、本実施例の印刷機100では、荷重センサ等を別途設ける必要がないため、構造の簡略化が可能となる。上記したように、本実施例の印刷機100によれば、スキージ120の押圧力を簡易な構成にて精度よく調整することができ、ひいては製造コストの低減を図ることが可能となる。
<効果2>制御部148は、エアレギュレータ96の制御圧力PXを0.1MPaだけ減圧、あるいは加圧するのに要する応答時間RT1,RT2を計測する。また、制御部148は、計測した応答時間RT1,RT2の変化に基づいてスキージ120とスクリーン10との接触又は離間の別を検出する。そして、制御部148は、スキージ120のスクリーン10への接触を検出すると、検出した際の制御圧力PXを基準とし、さらに制御圧力PXを制御することで、スキージ120の押圧力を所望の大きさに変更することが可能となっている。
<効果3>印刷機100は、エア源98とシリンダハウジング64との間に、エア源98から供給されるエアの圧力を調整するエアレギュレータ96が設けられている。制御部148は、エアレギュレータ96の制御圧力PXを制御することで、シリンダハウジング64の第2エア室74の内部圧力Pを精度よく調整することが可能となる。
<効果4>印刷機100は、押圧力調節用エアシリンダ56による付勢力に抗する向き(図5における下方向き)にスキージ120を付勢する圧縮コイルスプリング86が設けられている。このような構成では、押圧力調節用エアシリンダ56による付勢力と、圧縮コイルスプリング86による付勢力との調整を図ることで、スキージ120の押圧力が変更可能となる。
また、スキージ120には、当該スキージ120と一体的に移動する各種部材(直線移動部材104など)の総重量に加えて、圧縮コイルスプリング86の付勢力が作用する。従って、このような構成では、スキージ120の適正な押圧力が、スキージ120と一体的に移動する部材の総重量に比べて大きい場合であっても、スキージ120を適正な押圧力でスクリーン10に押し付けることができ、適量なクリーム半田をプリント基板20に印刷することができる。
<効果5>押圧力調節用エアシリンダ56は、シリンダハウジング64とピストン62とが摺動する部分にシール部材が配設されていない。押圧力調節用エアシリンダ56は、摺動する部分に、シール部材を配設する代わりに逃げ溝76,78が形成されており、実質的な気密性が担保されている。これにより、押圧力調節用エアシリンダ56は、一般的なエアシリンダで生じるようなシール部材の摩擦力に起因した抗力のバラツキがなくなる。従って、当該押圧力調節用エアシリンダ56によれば、スキージ120のスクリーン10への押圧力の制御の精度を向上させることが可能となる。
ちなみに、クリーム半田印刷機100は、スクリーン印刷機の一例である。エアシリンダ42,56は、流体圧シリンダの一例である。圧縮コイルスプリング86は、弾性部材の一例である。エア源98は、流体供給部の一例である。制御圧力PXを0.1MPaだけ減圧、あるいは加圧するのに要する応答時間RT1,RT2は、所定応答時間の一例である。クリーム半田は、被印刷剤の一例である。プリント基板20は、対象物の一例である。エアは、流体の一例である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態において、第2エア室74の内部圧力Pを制御する構成は一例であり、例えば、エアレギュレータ96に代えてエアの供給及び排出を切り替える電磁方向切換弁を設けて、制御部148によって電磁方向切換弁を制御してもよい。この場合、例えば、制御部148は、電磁方向切換弁を切り替えるタイミングを、応答時間RT1,RT2の計測を開始するタイミングとしてもよい。
また、印刷機100は、第2エア室74の内部圧力Pの制御に代えて、第1エア室72の内部圧力を制御する構成でもよい。また、スキージユニット40は、第2エア室74の内部圧力Pが加圧されることでスキージ120が下降する構成でもよい。
また、圧縮コイルスプリング86は、1つに限らず、複数設けてもよい。
また、押圧力調節用エアシリンダ56は、シリンダハウジング64とピストン62とが摺動する部分にシール部材が配設された構成でもよい。
また、上記実施形態では、印刷機100は、固定されたスクリーン10に対してスキージ120を相対移動させて印刷を実施したが、スクリーン10をスキージ120に対して相対移動させてもよい。また、印刷機100は、スクリーン10とスキージ120との両方を移動させながら印刷を実施してもよい。
また、押圧力調節用エアシリンダ56に供給する流体は、エアに限らず、窒素等の気体でもよく、油等の液体でもよい。
次に、上記実施形態の内容から導き出される技術的思想について記載する。
(イ)前記制御部は、前記スキージを前記スクリーンに接近させる制御と、前記スキージを前記スクリーンから離間させる制御とで、異なる前記応答時間を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
当該スクリーン印刷機によれば、制御部は、スキージがスクリーンに接近する場合と、スキージがスクリーンから離間する場合とに分けて最適化された応答時間を用いることで、スキージとスクリーンとが接触及び離間する際の内部圧力をより正確に検出することが可能となる。
100 印刷機、10 スクリーン、20 プリント基板、56 押圧力調節用エアシリンダ、62 ピストン、64 シリンダハウジング、86 圧縮コイルスプリング、96 エアレギュレータ、98 エア源、114 圧力センサ、120 スキージ、148 制御部、P 内部圧力、RT1,RT2 応答時間。

Claims (5)

  1. 複数の透孔を有するスクリーンと、
    前記スクリーン上を摺動し、前記スクリーンの前記透孔から被印刷剤を対象物に印刷するスキージと、
    シリンダハウジングの内部圧力に応じて前記スキージを前記スクリーンに接近、あるいは離間するいずれかの方向に付勢する流体圧シリンダと、
    前記シリンダハウジングの内部圧力を検出する圧力センサと、
    前記流体圧シリンダに対する単位時間あたりの所定流量の流体の供給あるいは排出により前記内部圧力を変更する制御を開始してから、前記圧力センサの検出値が目標の値に到達するまでの応答時間に基づいて前記内部圧力を制御する制御部と、
    を備えることを特徴とするスクリーン印刷機。
  2. 前記制御部は、前記内部圧力を所定の圧力だけ変更するのに要する前記応答時間を、所定応答時間として計測し、前記所定応答時間の変化に基づいて前記スクリーンに対する前記スキージの接触又は離間の別を検出し、前記スキージの前記スクリーンへの接触を検出した後に、さらに前記内部圧力を制御して前記スキージを前記スクリーンに押しつける押圧力を変更することを特徴とする請求項1に記載のスクリーン印刷機。
  3. 前記流体圧シリンダに流体を供給する流体供給部と、
    前記流体供給部と前記流体圧シリンダとの間に接続され、前記流体供給部から供給される前記流体の圧力を前記制御部の制御に基づいて所定の圧力に調整するレギュレータと、
    を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスクリーン印刷機。
  4. 前記スキージを、前記流体圧シリンダによる付勢力に抗する向きに付勢する弾性部材を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
  5. 前記流体圧シリンダは、エアシリンダであり、前記シリンダハウジングとピストンとが摺動する部分にシール部材が配設されていないことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
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