以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下に述べるように、本実施形態の省エネルギ支援システム1は、各需要家2(1)〜2(n)の単位時間ごとの電力消費量を表す電力消費データをそれぞれ収集すると共に、各需要家2(1)〜2(n)の属性情報を管理する。支援システム1は、各需要家2(1)〜2(n)から単位時間ごとの電力消費データを定期的に受信する。支援システム1は、その電力消費データを複数のクラスタ13に分類する。クラスタ13は、電力消費パターン別クラスタ、パターン別クラスタと呼んでもよい。ここで、電力消費パターンとは、電力消費データを示す時系列データの概形である。なお、電力消費データをロードデータと、電力消費パターンをロードカーブと呼ぶこともできる。
支援システム1は、各クラスタ13に属する需要家に共通する属性情報14を抽出し、各需要家の電力消費データと属性情報14の少なくとも一つとから、各需要家が属する可能性のある属性別のクラスタを1つ以上抽出する。属性の共通する複数のクラスタを、類似クラスタ群と呼ぶことができる。
支援システム1は、クラスタ13毎に、需要家の電力消費データと環境情報との相互相関関数を算出することもできる。支援システム1は、例えば、遅れ時刻ゼロにおける相互相関関数の値、任意の遅れ時刻範囲における相互相関関数のピーク値、ピーク値の遅れ時刻の少なくともいずれか1つを、相互相関に関する特徴量として抽出する。
支援システム1は、属性情報が共通する類似クラスタ群において、類似クラスタ群に属する需要家に共通する特徴量の範囲を算出し、類似クラスタ群における特徴量の差異を算出する。支援システム1は、算出した差異が基準値よりも大きな特徴量を抽出し、特徴量の種別と特徴量に対応する環境情報の種別とから、関連する省エネ行動を選定する。選定した省エネ行動は、支援情報として需要家に送信され、提示される。
これにより、本実施形態によれば、属性情報が共通する類似クラスタ群の中から目標クラスタを抽出し、その目標クラスタを目標として選択する。そして、目標クラスタで実行されている省エネ行動を、支援対象の需要家に推奨する。
本実施形態では、属性情報が共通するにもかかわらず、所属先クラスタが異なる場合、換言すれば、異なるクラスタに属する需要家同士が共通する属性情報を持つ場合、手本となる需要家を検出する。そして、その手本となる需要家(目標需要家)で実行されている省エネ行動を、他の需要家(支援対象の需要家)で実行させる。これにより、支援対象の需要家の電力消費パターンが、手本とした需要家の電力消費パターンに近づくように、支援対象の需要家を誘導することができる。
図1は、省エネルギ支援システム1の機能構成を示す。省エネルギ支援システム(以下、支援システムと略記する場合がある。)1は、後述のように、少なくとも一つのコンピュータから構成されるもので、支援対象の需要家に対して支援情報を提示する。
支援システム1は、例えば、エネルギサービスプロバイダにより使用される。エネルギサービスプロバイダは、電力を利用する複数の需要家2(1)〜2(n)と契約し、各需要家2(1)〜2(n)に対して、電力管理に関するサービスを提供する。
エネルギサービスプロバイダとしては、例えば、経費節減の実績に応じて報酬を得るESCO事業者(Energy Service Company)、電力小売事業者、設備管理サービスを提供するEMS(Energy Management System)アグリゲータ、のいずれでもよい。
支援システム1は、例えば、データ収集部10、情報記憶部11、分類部12、類似クラスタ群抽出部15、目標クラスタ選定部16、特徴検出部17、省エネ行動推定部18、支援情報提供部19を備える。
データ収集部10は、「情報取得部」の例であり、各需要家2(1)〜2(n)からデータを取得する。以下、特に区別しない場合、需要家2と呼ぶ。データ収集部10は、各需要家2から、電力消費データとしての電力消費データと、エネルギ消費に関する属性情報と、省エネ行動の履歴とを取得する。データ収集部10の取得したデータは、情報記憶部11に記憶されて管理される。
分類部12は、各需要家の電力消費データの中から、複数の電力消費パターンを抽出する。電力消費パターンごとにクラスタ13が生成される。以下の説明では、クラスタ13の持つ電力消費パターンを、電力消費パターン13と呼ぶ場合がある。
電力消費傾向の似ている電力消費データは、同じ電力消費パターンに分類されるため、同じクラスタ13に所属する。同一クラスタ13に属する需要家は、それぞれエネルギ消費に関する属性情報14を一つ以上備えている。エネルギ消費に関する属性情報14としては、例えば、電力消費データの取得日や時刻、需要家の業種、契約条件、保有する電気設備の種類、需要家の環境などがある。需要家の業種には、例えば、一般家庭、集合住宅、商業施設、ビルディング、工場、病院、映画館、遊園地、学校などがある。需要家の環境には、例えば、気温、湿度、日照量、降雨量、風速などの気象条件がある。
類似クラスタ群抽出部15は、「需要家群抽出部」の例である。類似クラスタ群抽出部15は、各クラスタ13に分類された需要家から、属性情報が共通する複数の需要家を需要家群として抽出する。つまり、各クラスタ13から、共通の属性情報を有する需要家を抽出して類似クラスタ群を生成する。これにより、例えば、「平日の昼間に電力を多く使用し、かつ太陽光発電装置を備えている一般需要家」という共通の属性を有する需要家を各クラスタ13から集めることができる。
目標クラスタ選定部16は、「目標選択部」の例である。目標クラスタ選定部16は、類似クラスタ群の各需要家の属する電力消費パターンのうち、所定の省エネルギ指標に関する値が所定の省エネルギ基準値以上である電力消費パターンを持つクラスタ13を、目標クラスタ(目標電力消費パターン)として選択する。
特徴検出部17は、目標クラスタに属する需要家(目標需要家)の持つ属性情報の中から特徴的な属性情報を検出する。省エネルギ行動推定部18は、目標クラスタに特徴的な属性情報と、目標クラスタで実行された省エネ行動の履歴とに基づいて、効果を発揮している省エネ行動を推定する。
支援情報提供部19は、省エネルギ行動推定部18と共に「省エネルギ行動支援部」の一例を構成する。支援情報提供部19は、省エネルギ行動推定部18で推定した省エネ行動を含む支援情報を作成し、支援対象の需要家2へ送信する。支援情報は、推奨する省エネ行動、手本にすべき目標クラスタの電力消費パターンの少なくともいずれか一方を含むことができる。
支援対象の需要家には、例えば、省エネルギ支援システム1の管理下に置かれた新たな需要家と、既存の需要家2のうちエネルギ効率の低い需要家とがある。なお、省エネルギ支援システム1の管理対象として新たに追加された需要家の電力消費パターンが、その需要家に対応する目標クラスタの電力消費パターンに属する場合は、支援対象として抽出する必要はない。エネルギ消費について改善する必要がないためである。
省エネルギ行動推定部18は、省エネ行動に代えて、または省エネ行動と共に、目標クラスタで実施されている電気設備の設備制御情報を、推奨制御方法として推定することもできる。支援情報提供部19は、推奨制御方法を含む支援情報を作成して、支援対象の需要家に送信してもよい。支援情報提供部19は、推奨制御方法に従って、支援対象の需要家の持つ電気設備を遠隔制御することもできる。
図2は、省エネルギ支援システム1を含む電力管理システムの全体を示す。支援システム1は、例えば、電力情報収集サーバ110、データ分析サーバ120、需要家データベースサーバ130、省エネルギ支援情報サーバ140、支援情報提供サーバ150を備えている。それらサーバ110〜150は、通信ネットワークCN2を介して双方向通信可能に接続されている。通信ネットワークCN2は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどから構成できる。
各サーバ110〜150は別々の物理サーバとして構成してもよい。各サーバ110〜150を仮想サーバとして生成し、一つの物理サーバ上に設ける構成としてもよい。複数のサーバで実現する複数の機能を一つのサーバに統合してもよいし、その逆に、一つのサーバで実現する一つの機能を複数のサーバで分散してもよい。各サーバ110〜150の構成は後述する。以下の説明では、データベースをDBと略記する場合がある。
支援システム1は、通信ネットワークCN1を介して、複数の需要家2と双方向通信可能に接続されている。通信ネットワークCN1は、公衆回線、専用回線、インターネットなどから構成することができる。
需要家2は、図示せぬ電力系統から供給される電力を消費する。需要家2は、例えば、管理端末210、センサ220、電気設備を有する。電気設備の内容は、需要家2の目的や性質に応じて異なる。
例えば、ある需要家2(1)は、電気設備として、太陽光発電装置(図中、PV)230と、バッテリ240と、ヒートポンプ(図中、CHP)250と、電気的負荷260を有する。電気負荷260としては、例えば、照明装置、空調装置、冷蔵庫、エレベータなどがある。
他の需要家2(2)は、電気設備として、太陽光発電装置230と、バッテリ240と、電気的負荷260を備えており、ヒートポンプ250は有していない。さらに別の需要家2(n)は、電気設備として、ヒートポンプ250と電気的負荷260を備えており、太陽光発電装置230およびバッテリ240は備えていない。
センサ220は、例えば、電力計、電圧計、電流計、周波数計、温度計、湿度計、日照量計、風速計のような計測装置である。センサ220は、需要家2の消費電力(電力消費データ)と、需要家2での電力消費に関わる環境情報とを計測して出力する。従って、センサ220は、実際には、計測目的の異なる複数のセンサから構成されるセンサ群であるが、図中では一つのセンサであるかのように示している。センサ220の種類および構成は、需要家2の目的や性質に応じて異なる。
管理端末210は、センサ220で検出したデータ(電力消費データ、温度などの環境情報)を定期的にまたは不定期に、支援システム1へ送信する。また、管理端末210は、支援システム1から受信した支援情報に基づいて、省エネ行動を提案するための画面(後述)を表示したり、管理下にある電気設備を制御したりする。
図3,図4は、支援システム1を構成する各サーバ110〜150のハードウェア構成およびソフトウェア構成を示す。
図3は、データ分析サーバ120、需要家情報DBサーバ130、省エネルギ支援情報サーバ140を示す。
データ分析サーバ120は、電力情報収集サーバ110の収集した電力情報を分析するサーバである。データ分析サーバ120は、例えば、ユーザインターフェース部121、マイクロプロセッサ部122、メモリ部123、クラスタDB124、通信部125を備えており、これら各装置121〜125は内部バスで接続されている。
ユーザインターフェース部121は、支援システム1を操作するオペレータとの間で、情報を交換する装置である。なお、オペレータには、支援システム1を管理するシステム管理者を含むものとする。ユーザインターフェース部121は、オペレータがサーバ120へ情報を入力するための情報入力装置と、サーバ120がオペレータに情報を提示するための情報出力装置を含む。情報入力装置には、例えば、キーボード、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイス、音声指示装置などがある。情報出力装置には、例えば、ディスプレイ、プリンタ、音声出力装置などがある。
マイクロプロセッサ部122は、メモリ部123に格納されたコンピュータプログラムPG11〜PG13を実行することで、後述の機能を実現する。クラスタDB124は、後述するように、需要家2の属性情報を管理するデータベースである。通信部125は、通信ネットワークCN2を介して、他のサーバと通信するための装置である。
メモリ部123は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置を総称した記憶装置であり、コンピュータプログラムPG11〜PG13を格納する。なお、本実施例では、オペレーティングシステム、デバイスドライバなどの基本的コンピュータプログラムは図示を省略する。
クラスタリングプログラムPG11は、電力消費データに基づいて需要家2を分類するためのクラスタリング処理を行う。要因分析プログラムPG12は、クラスタ毎の電力消費パターンの原因となっている属性を特定するための処理を実行する。相関分析プログラムPG13は、電力消費データと環境情報との相関関係を分析する処理を実行する。各プログラムPG11〜PG13の処理結果は、クラスタDB124に格納される。
需要家情報DBサーバ130は、各需要家2の属性情報などを記憶し、管理するサーバである。需要家情報DBサーバ130は、データ分析サーバ120と同様に、ユーザインターフェース部131、マイクロプロセッサ部132、メモリ部133、データベース134〜136、通信部137を備える。
ユーザインターフェース部131、マイクロプロセッサ132、メモリ部133、通信部137は、データ分析サーバ120で述べた構成と対応するため、説明を省略する。メモリ部133に格納されている蓄積プログラムPG14は、各需要家2から取得されたデータを所定のデータベースに格納する蓄積処理を実行する。
環境情報DB134は、各需要家2から取得する環境情報を記憶して管理する。上述の通り、環境情報には、例えば、気温、湿度、日照量、風速などがある。属性情報DB135は、各需要家2から取得する他の属性情報を記憶して管理する。他の属性情報としては、上述の通り、電気設備の種類、契約条件、需要家の種別などがある。電力消費量DB136は、各需要家2から単位時間毎に取得した電力消費データを記憶して管理する。
省エネルギ支援情報サーバ140(以下、支援情報サーバとも呼ぶ)は、支援対象の需要家2における省エネルギを促進するための省エネ行動を抽出し、抽出した省エネ行動を含む支援情報を生成するサーバである。
支援情報サーバ140も、データ分析サーバ120と同様に、ユーザインターフェース部141、マイクロプロセッサ部142、メモリ部143、データベース144、通信部145を備える。
ユーザインターフェース部141、マイクロプロセッサ部142、メモリ部143、通信部145は、データ分析サーバ120で述べた構成と同様なので説明を省略する。メモリ部143に格納されている省エネ行動抽出プログラムPG15は、目標クラスタの需要家で実行されている省エネ行動の中から、支援対象の需要家に推奨すべき省エネ行動を抽出する処理を実行する。省エネ目標設定プログラムPG16は、省エネルギの目標値を算出する処理を実行する。省エネルギの目標値には、例えば、目標となる電力消費パターン、省エネ指標における目標値がある。
各プログラムPG15,PG16で算出された省エネ行動と省エネ目標とは、省エネ行動DB144に格納される。後述の支援情報提供サーバ150は、省エネ行動DB144から省エネ行動および省エネ目標を読み出して、支援対象の需要家2へ送信する。省エネ行動DB144は、支援情報を記憶するための支援情報記憶部と呼ぶこともできる。
図4は、電力情報収集サーバ110と支援情報提供サーバ150を示す。電力情報収集サーバ110は、各需要家2から電力消費データや属性情報および環境情報を収集するサーバであり、上述したデータ分析サーバ120と同様に、ユーザインターフェース部111、マイクロプロセッサ部112、メモリ部113、通信部114を備える。これらはデータ分析サーバ120で述べたと同様であるため、説明を省略する。電力情報収集サーバ110は、データベースを備えない。電力情報収集サーバ110の収集した情報(データ)は、需要家情報DBサーバ130の有するDB134〜136へ格納される。
メモリ部113に格納された情報収集プログラムPG10は、各需要家2から電力情報を収集する処理を実行する。上述のように、ここで電力情報には、電力消費データ、属性情報、環境情報を含む。
なお、電力情報収集サーバ110が収集する情報の一部を、オペレータがユーザインターフェース部111を介して電力情報収集サーバ110へ入力することもできる。例えば、需要家の種別を示す情報(一般家庭、工場、ビルなど)、発電事業者や送配電事業者またはエネルギサービスプロバイダとの契約条件などを、オペレータは電力情報収集サーバ110へ入力できる。入力方法は問わない。キーボードから手動で入力してもよいし、音声で入力してもよいし、記録媒体に記憶させた情報をサーバ110のドライブにセットして読み取らせてもよい。または、オペレータの指示する外部サーバへアクセスし、その外部サーバから情報をダウンロードしてもよい。電力情報収集サーバ110は、需要家2から瞬時電力値や検針値を直接取得できない場合、送配電事業者などが運用するコンピュータシステムから、それら瞬時電力値や検針値を取得してもよい。
支援情報提供サーバ150は、支援対象の需要家へ支援情報を提供するサーバであり、上述した電力情報収集サーバ110と同様に、ユーザインターフェース部151、マイクロプロセッサ部152、メモリ部153、通信部154を備える。それら装置151〜154は、電力情報収集サーバ110で述べたと同様であるため、説明を省略する。
メモリ部153に格納された支援情報提供プログラムPG17は、支援情報サーバ140の省エネ行動DB144から支援情報を取得して支援対象の需要家へ送信する処理を実行する。
ここで、図1に示す支援システム1と図2〜図4に示す各サーバ110〜150との対応関係の一例を説明する。データ収集部10は、例えば、電力情報収集サーバ110に対応する。情報記憶部11は、例えば、需要家情報DBサーバ130に対応する。分類部12、類似クラスタ群抽出部15、目標クラスタ選定部16、特徴検出部17は、例えば、データ分析サーバ120に対応する。省エネルギ行動推定部18は、例えば、省エネルギ支援情報サーバ140に対応する。支援情報提供部19は、例えば、支援情報提供サーバ150に対応する。
図5は、需要家2の構成例を示す。需要家2は、その文脈に応じて、自然人または法人等として、または、装置等として扱う。需要家2は、電力を消費する自然人または法人等であるが、実際に電力を使用するのは家庭電化製品やエレベータなどの電気設備や電気負荷である。支援システム1を利用する需要家2を、ユーザまたは需要家2のユーザと呼ぶことがある。
図2で述べたように、需要家2には、管理端末210が設けられている。管理端末210は、例えば、マイクロプロセッサ部211、メモリ部212、入力部213、表示部214、通信部215、I/O(Input/Output)部216を備える。
マイクロプロセッサ部211は、メモリ部212に格納されたコンピュータプログラムPG21、PG22を実行することで、管理端末210としての機能を実現する。メモリ部212には、例えば、送信プログラムPG21、表示プログラムPG22、制御プログラムPG23が格納されている。
送信プログラムPG21は、センサ220の検出した情報を定期的にまたは随時に電力情報収集サーバ110へ送信する処理を実行するプログラムである。情報の送信タイミングとしては、例えば、前回の送信時から所定時間が経過した場合、サーバ110から要求された場合、所定の変化が検出された場合などがある。
表示プログラムPG22は、支援情報提供サーバ150から受信した支援情報の全部または一部を表示部214に表示させる処理を実行するプログラムである。制御プログラムPG23は、支援情報提供サーバ150から受信した支援情報に後述する設備制御方法が含まれている場合に、その設備制御方法に従って電気設備を制御する処理を実行するプログラムである。
入力部213は、需要家2のユーザからの情報を受け付ける装置である。入力部213は、例えば、キーボード、手動ボタン、タッチパネル、音声指示装置などとして構成することができる。表示部214から管理端末210からユーザへ情報を提供するための装置である。表示部214は、例えば、ディスプレイ、プリンタ、音声出力装置などから構成することができる。
通信部215は、通信ネットワークCN1を介して、支援システム1の電力情報収集サーバ110および支援情報提供サーバ150に接続されている。通信部215は、情報を電力情報収集サーバ110へ送信する。さらに、通信部215は、支援情報提供サーバ150から支援情報を受信する。
I/O部216は、管理端末210の外部に設けられている所定の装置と通信ネットワークCN3を介して接続されている。I/O部216は、所定の装置との間で、信号やデータを交換する。所定の装置としては、センサ220、太陽光発電装置230、バッテリ240、ヒートポンプ250、電気負荷260がある。上述のように、全ての需要家2がそれぞれ同一の設備を有するわけではなく、需要家の種別に応じて保有設備の種類や仕様は異なる。
図6は、電力消費データを分類するクラスタリング処理を示す概念図である。図6(a)は、各需要家2から収集した電力消費データであって、クラスタリング処理の実行前の状態を示す。
複数の電力消費データの形状の類似度を分析することで、図6(b)〜(d)に示すように、幾つかのクラスタK1、K2、K3を抽出することができる。各クラスタを代表する電力消費データの形状は、「電力消費パターン」に該当する。
昼間の電力需要の変動が比較的少ない需要家は、クラスタK1に分類される。不規則な電力需要変動の多い需要家は、クラスタK2に分類される。昼間に大きな需要ピークが現れる需要家は、クラスタK3に分類される。図6に示すクラスタ(電力消費パターン)は例示であって、図示したものに限定されない。
図7は、クラスタDB124の構成例を示す。クラスタリング処理の結果は、データ分析サーバ120のクラスタDB124に記録される。クラスタDB124は、リレーショナル型のDBであり、例えば、需要家識別子と、需要家の電力消費データと、属性情報と、クラスタ番号と、類似クラスタ群の情報とが格納される。ここでの属性情報には、例えば、需要家の位置、契約メニュー、契約受電量、電気設備などがある。
需要家識別子(需要家ID)は、各需要家2を識別する情報である。電力消費データは、例えば30分間のような所定時間毎の電力消費データである。契約メニューには、通常プラン、深夜割引プランなどの用意された契約メニューのうち、その需要家で契約しているメニューである。契約受電量は、その需要家で利用可能な電力量の上限値である。電気設備には、ヒートポンプ、バッテリ、太陽光発電装置210、負荷260を含むことができる。
クラスタ番号は、クラスタリング処理の結果、その需要家が属するクラスタを識別する情報である。類似クラスタ群番号とは、その需要家と共通する属性を有する他の需要家をまとめたクラスタ群を識別する情報である。図7の例では、一方の需要家(ID1)はクラスタK1に、他方の需要家(ID2)はクラスタK2にそれぞれ属している。そして、各需要家(ID1、ID2)は同一の類似クラスタ群に属している。
図8は、診断木の例を示す概念図である。ノードN1は、需要家の属性である「業種(種別)」を示す。業種の値が「商業施設」である場合は左側の診断木へ、「工場」である場合は右側の診断木へと進む。業種が「商業施設」の場合、電気設備の属性として「ヒートポンプ(CHP)有り」「電気設備無し」「太陽光発電装置(PV)有り」のいずれかに分類される。業種が「工場」の場合、契約プランの属性として「深夜割引プラン」「通常プラン」のいずれかに分類される。
リーフL1、L2は、診断結果としてのクラスタ番号を示す。リーフL1には、業種が「商業施設」であり、属性「電気設備」が「CHP」である需要家の属するクラスタが集まっている。「商業施設」であり、「CHP」を有するクラスタには、クラスタK1とクラスタK2の需要家が集まっている。これらの共通する属性を有するクラスタの集合を類似クラスタ群SKと呼ぶ。属性が共通するクラスタとは、属性の全てが共通する場合に限らず、属性の一部が共通する場合も含む。換言すれば、需要家の持つ全ての属性のうち、一部が共通する需要家は、属性の類似する需要家である。
図9は、電力消費データと環境情報との相関を分析する概念を示す。図9の上段は、各クラスタK1〜K3を代表する電力消費パターンを示す。図9の中段は、環境情報の一例としての気温の時間変化を示す。図9の下段は、電力消費データと気温との相互相関関数の算出結果を示す。
下記の数1により、相互相関関数を得ることができるf(t)は電力消費データの変化、g(t)は温度変化を示す。算出した相互相関関数は、代表電力消費パターンと環境情報とのタイムラグtにおける類似度を示し、t=0における値を同一時刻での類似度である相関係数と呼ぶ。環境情報は、クラスタの算出に用いた電力消費データと同一期間に計測された温度、湿度、日照量、降雨量などの気象条件に関する時系列データである。
図9の左列に、クラスタK1より算出された相互相関関数を示す。図9の中央の列に、クラスタK2より算出された相互相関関数を示す。図9の右列に、クラスタK3により算出された相互相関関数を示す。
クラスタK1に係る相互相関関数は、クラスタK2に係る相互相関関数よりも、ピーク値および相関係数が大きい。クラスタK1に係る相互相関関数は、クラスタK3に係る相互相関関数よりも、ピーク値および相関係数が大きく、かつ、ピーク遅れ時間は小さい。
ここで例えば、クラスタK1が電力消費の点で優良なクラスタ(目標クラスタ)であるとする。この場合、クラスタK1を他のクラスタK2、クラスタK3と比較すること、相関係数の大きさがクラスタK1とその他クラスタK2およびK3とを区別するための特徴量として抽出することができる。クラスタ同士を区別する特徴量の種別としては、相関係数に限らず、ピーク値、遅れ時間などがある。
図10は、省エネルギ支援情報サーバ140の有する省エネ行動DB144の構成例を示す。省エネ行動DB144は、例えば、省エネ行動と、環境情報と、特徴量と、変化を対応付けて管理する。
省エネ行動とは、電力消費量を低減するために需要家で実行しうる具体的な行動を示す情報である。省エネ行動の例としては、「冷暖房前倒し」、「照明消灯」、「PV清掃」、「夜間外気取り入れ」などがある。
「冷暖房前倒し」は、冷暖房設備の運転開始時刻を通常よりも早くする行動を示す。建物断熱性などによっても異なるが、気温が低い早朝のうちに冷房を開始したり、気温がまだ高い夕方のうちに暖房を開始したりすることで、電力消費量を低減できる。省エネ行動「冷暖房前倒し」を実行する場合、環境情報としての気温と電力消費データとの相互相関関数において、「ピーク値」「遅れ時刻」「相関係数」がそれぞれ減少する。それらの値の変化は、省エネ行動DB144の「変化」に記録されている。
省エネ行動「照明消灯」は、照明装置を消灯する行動を示す。省エネ行動「照明消灯」は、環境情報としての日照量と電力消費データとの相関係数を減少させる。省エネ行動「PV清掃」は、太陽光発電装置230を清掃する行動を示す。太陽光発電パネルの表面に積もった塵埃などを取り除いたり、太陽光発電パネルを覆い隠す雑草を除いたりする行動である。省エネ行動「PV清掃」は、環境情報としての日照量と電力消費データとの相互相関関数において「ピーク値」を減少させる。
省エネ行動「夜間外気取り入れ」は、夜間に外気を建物内に取り込むことで、室温を予め低下させる行動である。省エネ行動「夜間外気取り入れ」は、環境情報としての気温と電力消費データとの相互相関関数において、「遅れ時刻」を増加させる。つまり、外部の気温が上昇した場合でも、前夜のうちに冷たい外気を室内に導いて室温を低下させているため、空調装置を作動させる時刻が通常よりも遅くなる。すなわち、省エネ行動「夜間外気取り入れ」は、気温上昇に対する電力消費量増大の追従が遅れる。さらに、省エネ行動「夜間外気取り入れ」は、環境情報としての気温と電力消費データとの相互相関関数において、ピーク値を減少させる。
省エネ行動は、図10に示すものに限られない。電力消費量を節減できる行動であればよい。例えば、空調装置のフィルタを清掃したり、空調装置の冷媒を補充または交換したり、窓ガラスに遮光シールを貼ったり、壁に断熱材を設けたりする行為も省エネ行動の一種である。
図11は、省エネルギ支援処理の全体を示すフローチャートである。各需要家2の管理端末210は、契約条件や電気設備の種類、需要家の種別(業種)などの基本的な属性情報を支援システム1の電力情報収集サーバ110へ送信する(S10)。電力情報収集サーバ110は、需要家2から受信した属性情報を需要家情報DBサーバ130の属性情報DB135へ蓄積する(S11)。
なお、基本的属性情報は、需要家2から支援システム1へ送信する場合に限らず、オペレータが需要家情報DBサーバ130へ入力してもよい。また、基本的属性情報は、管理端末210が自動的に支援システム1へ送信してもよいし、ユーザが管理端末210を操作して送信してもよい。
需要家2では、その後、何らかの省エネ行動を実施することができる(S12)。このステップS12は、人間により手動で行われる可能性がある。手動で実行されるステップは点線で示す。
省エネ行動としては、図10で述べたように、冷暖房前倒し、照明消灯、PV清掃、夜間外気取り入れなどがある。管理端末210が電気設備を制御できる場合、空調装置の設定温度などの設定値や動作ログは、省エネ行動の実績となる。
ユーザが空調装置のフィルタや室外機を清掃したり、夜間の外気を取り込んだり、太陽光発電装置の周囲の除草をしたりした場合、ユーザは、それら省エネ行動の作業記録を管理端末210へ入力する。自動的に実行される省エネ行動がある場合、その省エネ行動が実行された旨の情報も管理端末210へ入力される。
手動または自動で何らかの省エネ行動が実施されると、その省エネ行動の実績を示す情報は、管理端末210から通信ネットワークCN1を介して支援システム1へ送信される(S13)。支援システム1の電力情報収集サーバ110は、管理端末210から省エネ行動の実績に関するデータを受信すると、記憶する(S14)。
需要家2において電気負荷260が作動すると、電力を消費する(S15)。センサ220は、その電力消費量を検出して管理端末210に送る。管理端末210は、電力消費データを支援システム1へ送信する(S16)。管理端末210は、例えば、30分間などの所定周期で消費電力量(kWh)を支援システム1へ送信する。支援システム1の需要家情報DBサーバ130は、管理端末210から受信した電力消費データを電力消費量DB136へ記憶する(S17)。
管理端末210は、センサ220で検出した気温や日照量などの環境情報を支援システム1へ送信する(S18)。支援システム1の需要家情報DBサーバ130は、管理端末210から受信した環境情報を環境情報DB134へ記憶する(S19)。
支援システム1は、所定のタイミングで、需要家2における省エネルギを支援するための処理(S20〜S24)を実行する。所定のタイミングとしては、例えば、一年毎、季節毎、毎月、毎週、毎日を挙げることができる。例えば、夏と冬のように、消費電力量の大きい季節だけ、省エネルギを実現するための行動を提案してもよい。
データ分析サーバ120は、各需要家2の電力消費データに基づいて、各需要家2を電力消費の実態が似ているクラスタへ分類すると共に、各クラスタに属する需要家2の属性情報に基づいて、各クラスタを特徴付けている属性値を抽出する(S20)。
データ分析サーバ120は、分類した各クラスタと、受信した省エネ行動の実績とに基づいて、クラスタ毎に特徴的な省エネ実績を抽出する(S21)。さらに、データ分析サーバ120は、気温や日照量などの環境情報と、各クラスタにおける電力消費の代表的な傾向を示す電力消費パターンとの相関を分析することで、電力消費パターンに影響を与えている環境情報の項目を推測する(S22)。
省エネルギ支援情報サーバ140は、各需要家2に対して提示すべき省エネ行動を、クラスタ分類と省エネ実績と環境情報との相関に基づいて抽出する(S23)。省エネルギ支援情報サーバ140は、省エネ行動を含む支援情報を生成し、各需要家2へ送信する(S24)。
需要家2の管理端末210は、支援システム1から支援情報を受信すると、表示部214に表示する(S25)。ステップS20〜S23の詳細は、後述する。
図12は、各需要家2を電力消費データに基づいて分類する処理(図11のS20)の詳細を示すフローチャートである。
データ分析サーバ120は、各需要家2から収集した電力消費データの類似度に応じてクラスタリングを行う(S30)。ここで電力消費データの類似度を求める方法の一例を説明する。例えば、電力消費データをフーリエ変換することで、周波数成分の量(フーリエ係数)を抽出する。次に、分割した各電力消費パターン間の類似度を、抽出したフーリエ係数列の差として定義する。そして、例えば、k−means法等の、教師なしクラスタリング手法を用いて、電力消費データを分類する。なお、これまでに受信した電力消費データの時系列全体を分類処理に用いてもよいし、あるいは、月毎や週毎のような任意の期間の電力消費データを用いて分類してもよい。
データ分析サーバ120は、需要家2の契約条件や保有する電気設備等の属性情報とクラスタとから、診断木を生成する(S31)。診断木は、電力消費パターンを分類したクラスタ毎に特徴的な属性値を発見するためのものである。つまり、ステップS31では、各クラスタを特徴付けている属性値を発見するために、診断木を作成する。
図8に示したように、属性情報をノードとして、クラスタを示す識別番号をリーフとして、各需要家の契約条件や保有設備等の属性と当該需要家が属するクラスタの識別番号とを入力として、決定木学習アルゴリズムにより診断木を作成する。決定木学習アルゴリズムとしては、例えば、ID3、C4.5などがある。なお、診断木は、ID3などの決定木学習アルゴリズムで生成する場合に限らない。各クラスタに共通する属性項目と属性値を抽出することが可能であり、かつ、属性値に基づいて、既知の需要家の属するクラスタのうちいずれのクラスタに属するかを予測できる方法であればよい。例えば、全ての属性値の組合せを網羅した決定表を用いて、診断木を作成してもよい。
データ分析サーバ120は、クラスタと診断木を用いて、図8に示すように、属性値が類似するクラスタ群SKを抽出する(S32)。類似クラスタ群とは、契約条件や保有する電気設備等の属性値が全て共通するクラスタ、もしくは、一定割合以上共通するクラスタの集合である。ステップS31で作成した診断木において、リーフに割り当てられた1つ以上のクラスタを類似クラスタ群と判断して、抽出する。
図13は、クラスタ毎に特徴的な省エネ実績を抽出する処理(図11のS21)の詳細を示すフローチャートである。
データ分析サーバ120は、全ての類似クラスタ群について、複数のクラスタが含まれているか検査する(S40)。
類似クラスタ群に複数のクラスタが含まれる場合(S40:YES)、それらクラスタを代表する電力消費パターンに基づいて、最も省エネ指標の値の良い優良クラスタを抽出する(S41)。つまり、データ分析サーバ120は、類似クラスタ群を構成する各クラスタの電力消費パターンについて、省エネ指標の値をそれぞれ算出し、最も良い値を得たクラスタを優良クラスタとして抽出する。
類似クラスタ群を構成する各クラスタのうち、優良クラスタ以外の他のクラスタを、省エネ支援の対象クラスタとして抽出することもできる。または、省エネ指標の値が所定の支援対象基準値よりも低いクラスタを、支援対象クラスタとして抽出してもよい。さらには、オペレータ(システム管理者)の指定するクラスタを支援対象クラスタとしてもよいし、あるいは、需要家2からの黙示または明示の要求により、その需要家2の属するクラスタを支援対象クラスタとして抽出してもよい。なお、ここでは、省エネ指標が良いとは、省エネ指標が高いことを意味する。
ここで、代表的な電力消費パターンは、そのクラスタに属する需要家の電力消費の傾向を代表する電力消費パターンである。例えば、当該クラスタに属する需要家の電力消費データにおける時刻毎の平均値を代表電力消費パターンとしてもよい。または、k−means法により求めたクラスタの重心を、逆フーリエ変換した時系列データを代表電力消費パターンとして用いてもよい。
省エネ指標は、支援システム1または需要家2にとっての、電力消費の効率を示す値である。省エネ指標は、クラスタの代表電力消費パターンから算出可能であり、かつ、クラスタ間で比較可能な値であれば何れでもよい。省エネ指標は、例えば、最大使用電力、合計使用電力、稼働率のいずれでもよい。最大使用電力は、代表電力消費パターンの最大値から算出できる。合計使用電力は、代表電力消費パターンの値を合算することで求めることができる。稼働率は、合計使用電力量を最大使用電力で割ることで求められる。
データ分析サーバ120は、優良クラスタの省エネ行動履歴と支援対象クラスタの省エネ行動履歴とから、優良クラスタに特徴的な省エネ行動を抽出する(S42)。
データ分析サーバ120は、例えば、需要家分類に用いた電力消費パターンの計測期間における省エネ行動履歴を取得する。そして、データ分析サーバ120は、優良クラスタで実施されている省エネ行動のうち、支援対象の需要家での実行回数よりも多く実施されている省エネ行動を、抽出する。つまり、データ分析サーバ120は、優良クラスタに属する需要家で実施されている省エネ行動の種別およびその実行回数と、支援対象クラスタに属する需要家で実施されている省エネ行動の種別およびその実行回数と、優良クラスタに属する需要家で実施されていない省エネ行動の種別およびその実行回数数と、支援対象クラスタに属する需要家で実施されていない省エネ行動およびその実行回数とを算出することで、優良クラスタでの実行回数が支援対象クラスタでの実行回数よりも多い省エネ行動種別を抽出する。
ここでは、優良クラスタに特徴的な省エネ行動を推奨すべき省エネ行動として抽出する場合を説明した。これに代えて、例えば、支援対象クラスタのみに見られる省エネ行動を「効果の薄い省エネ行動」として抽出しても良い。効果の薄い省エネ行動を需要家に通知することで、需要家は無駄な省エネ行動を実行する必要がなくなり、需要家の利便性が向上する。
図14は、気温や日照量などの環境情報と電力消費パターンとの相関を分析する処理(図11のS22)の詳細を示すフローチャートである。
データ分析サーバ120は、全ての類似クラスタ群について、複数のクラスタが含まれるか検査する(S50)。類似クラスタ群が複数のクラスタを含む場合(S50:YES)、データ分析サーバ120は、類似クラスタ群を構成する各クラスタの中から、最も省エネ指標の高い優良クラスタを抽出する(S51)。データ分析サーバ120は、図13のステップS41で述べたと同様に、各クラスタを代表する代表電力消費パターンを生成し、各電力消費パターンについて省エネ指標を算出し、省エネ指標が最も良いクラスタを優良クラスタとして抽出する。データ分析サーバ120は、優良クラスタ以外の他のクラスタを、支援対象クラスタとして抽出することができる。
データ分析サーバ120は、優良クラスタの代表電力消費パターンと、支援対象クラスタの代表電力消費パターンと、それら代表電力消費パターンの算出対象期間における環境情報との、相互相関関数を算出する(S52)。相互相関関数は、図9で述べたように、上述の数1で算出することができる。
データ分析サーバ120は、相互相関関数から複数の特徴量を算出する(S53)。ここで、特徴量としては、相互相関関数から算出可能であり、相互相関関数の何らかの特徴を示す値であり、かつ、スカラー値であれば何れの値でもよい。特徴量は、例えば、相互相関関数の最大値もしくは最小値として算出されるピーク値、ピーク値でのタイムラグであるピーク遅れ時刻、タイムラグ0における相関係数の少なくともいずれか1つを含むことができる。
データ分析サーバ120は、相互相関関数から算出した特徴量に基づいて、優良クラスタと支援対象クラスタとを区別するための特徴量とその閾値とを算出する(S54)。データ分析サーバ120は、例えば、クラスタと各クラスタの特徴量とから、環境情報の種別と特徴量の種別を1つずつ抽出し、優良クラスタと支援対象クラスタを分割する閾値を算出する。
例えば、線形Support Vector Machineにおいて、特徴量を要素とするベクトル化した特徴量ベクトルを入力情報とする。そして、優良クラスタで有れば「1」を、支援対象クラスタであれば「−1」を教師信号として学習し、学習結果としての識別平面の係数から最も影響の大きい特徴量を抽出しても良い。
または、特徴量の種別それぞれについて、優良クラスタと支援対象クラスタとを分割する最も誤識別率が少ない閾値を算出し、誤識別が最も小さい特徴量種別およびその閾値を抽出してもよい。
図15は、支援対象の需要家へ推奨する省エネ行動を抽出する処理(図11のS23)の詳細を示すフローチャートである。
省エネルギ支援情報サーバ140は、省エネ行動の提示対象である需要家(支援対象の需要家)について、その契約条件や保有する電気設備などの属性情報を属性情報DB135から取得する(S60)。
なお、支援対象の需要家は、例えば電力消費量が多いなどの何らかの抽出基準によって事前に抽出しておいても良いし、省エネ行動の提示を支援システム1に要求した需要家でも良い。または、支援システム1の管理下にある各需要家のうち、優良クラスタに属する需要家以外の全需要家を、支援対象の需要家として抽出してもよい。
支援情報サーバ140は、支援対象の需要家が属するクラスタを推定し、そのクラスタが属する類似クラスタ群と、その類似クラスタ群からステップS41およびステップS51で抽出された優良クラスタとを取得する(S61)。
支援対象の需要家のこれまでの電力消費データが取得可能な場合、例えばk−means法で算出したクラスタの重心との距離の最も近いクラスタを、支援対象の需要家の属するクラスタとする。支援対象の需要家のこれまでの電力消費データが得られない場合、属性情報を図12のステップS31で生成した診断木へ入力することで、その支援対象の需要家が所属する類似クラスタ群を推定する。
支援情報サーバ140は、支援対象の需要家が優良クラスタに属するか否かを判定する(S62)。支援情報サーバ140は、支援対象の需要家が優良クラスタに属すると判定した場合(S62:YES)、本処理を終了する。支援対象の需要家は、省エネ指標の最も良いクラスタに属しており、省エネ行動を提示する必要性が乏しいためである。
支援情報サーバ140は、支援対象の需要家が優良クラスタ以外のクラスタに属すると判定した場合(S62:NO)、そのクラスタの属する類似クラスタ群を特定する。支援情報サーバ140は、その類似クラスタ群から抽出される優良クラスタの持つ代表電力消費パターンを、目標とすべき電力消費パターンに設定する(S63)。
支援情報サーバ140は、優良クラスタに特異な省エネ行動を取得し、その省エネ行動を、支援対象の需要家へ提示する推奨省エネ行動とする(S64)。優良クラスタに特異な省エネ行動を抽出する処理は、図13で述べた。
支援情報サーバ140は、図14で算出した環境情報との相関分析結果として、優良クラスタと支援対象の需要家の属するクラスタとを区別する、環境情報の種別および特徴量の種別を取得する(S65)。
支援情報サーバ140は、環境情報の種別および特徴量の種別に対応する省エネ行動を抽出する(S66)。ここで、環境情報の種別および特徴量の種別に対応する省エネ行動とは、温度や日照量等の環境情報に依存して内容が変化する省エネ行動である。例えば、温度に応じて制御内容と電力消費量とが変化する冷暖房設備における冷房の前倒し運転や、夜間の外気取り入れなどの行動が該当する。
環境情報の種別および特徴量の種別と省エネ行動との対応関係は、事前に省エネルギ支援情報サーバ140の省エネ行動DB144に登録しておいても良い。あるいは、需要家の過去の電力消費データと過去の省エネ行動との対応関係に基づいて、環境情報の種別および特徴量の種別と省エネ行動との関係を統計的に推定しても良い。
例えば、「夜間の外気取り入れ」を実施する前後で、電力消費量と気温との相互相関関数のピーク値が低下した場合を想定する。この場合、環境情報の種別「気温」と特徴量の種別「ピーク値」とに対して、省エネ行動「夜間の外気取り入れ」を対応付けて記憶することができる。
本処理では、目標とする電力消費パターン(S63)と、過去の省エネ行動履歴から抽出した省エネ行動(S64)と、環境情報との相関から抽出した省エネ行動(S66)の3つの情報を抽出する場合を説明した。しかし、それら3つの情報全てを抽出して支援対象の需要家へ提示する必要はなく、3つのうちのいずれか1つ以上を抽出して提示する構成でもよい。
図16は、省エネ行動の提案画面G10の一例を示す。支援システム1の支援情報提供サーバ150は、支援対象の需要家に対し、省エネ行動提案画面G10を通じて支援情報を提供する。
提案画面G10は、例えば、分析結果表示部GP11、電力消費パターン表示部GP12、推奨省エネ行動表示部GP13、効果表示部GP14を備える。分析結果表示部GP11は、支援対象の需要家の電力消費を分析した結果を表示する。電力消費パターン表示部GP12は、支援対象の需要家が目標とすべき電力消費パターンと、支援対象の需要家の現在の電力消費の時間変化とが表示される。
推奨省エネルギ行動表示部GP13は、支援対象の需要家に推奨する省エネ行動を表示する。効果表示部GP14は、推奨省エネ行動を実行した場合に期待できる省エネ効果の推定値を表示する。支援対象の需要家は、画面G10の表示内容を確認し、省エネ行動を実行することができる。
このように構成される本実施例によれば、需要家の電力消費データを分類し、省エネルギに関して支援を要する需要家と手本となるべき需要家とを抽出し、支援を要する需要家に適切な省エネ行動を提示することができる。本実施例によれば、支援対象の需要家自身との比較ではなく、支援対象の需要家と似た属性を有する他の需要家を手本として、省エネ行動を抽出するため、実践的で効果の高い省エネ行動を推奨できる。
また本実施例によれば、環境情報との関係からも省エネ行動を抽出して支援対象の需要家へ提示することができる。
従って、本実施例によれば、需要家での電力消費を効果的に節減し、電力料金を低減することができる。
本実施例によれば、最初に需要家を分類し、次に類似クラスタ群を抽出するため、電力消費パターンの似ている需要家については省エネ行動を抽出する必要がなく、その分計算処理を低減できる。また、最初に需要家を分類するため、クラスタリング処理(分類処理)に使用するデータを十分確保して、適切なクラスタを適切な数だけ形成できる。もし、類似クラスタ群の抽出を先に実行し、その類似クラスタ群の中で需要家を分類する場合、クラスタリング処理に使用するデータ量が少なくなるため、クラスタを形成する処理の精度が低下する。