JP6278932B2 - 燃料電池用膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

燃料電池用膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

Info

Publication number
JP6278932B2
JP6278932B2 JP2015153612A JP2015153612A JP6278932B2 JP 6278932 B2 JP6278932 B2 JP 6278932B2 JP 2015153612 A JP2015153612 A JP 2015153612A JP 2015153612 A JP2015153612 A JP 2015153612A JP 6278932 B2 JP6278932 B2 JP 6278932B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
modulus
young
membrane
catalyst layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015153612A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016035918A (ja
Inventor
優 大森
優 大森
昌史 杉下
昌史 杉下
加藤 高士
高士 加藤
篤志 平出
篤志 平出
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2015153612A priority Critical patent/JP6278932B2/ja
Publication of JP2016035918A publication Critical patent/JP2016035918A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6278932B2 publication Critical patent/JP6278932B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、燃料電池用膜−電極接合体(以下、適宜、膜−電極接合体と称する)及びこの燃料電池用膜−電極接合体を用いた固体高分子形燃料電池に関する。
近年、燃料と酸化剤とを電気化学反応させて、カルノーサイクルに依らず、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する燃料電池が注目されている。燃料電池は原理的に低温でエネルギー変換効率が高く、また発電単位は極めて小規模であることから、出力規模が小さい領域においても高い性能を維持することができる。そして特に、燃料電池は、発電時に無害な水しか生成しないため、環境への影響の点からも、車両の動力源としての応用に期待が集まっている。
燃料電池の一つである固体高分子形燃料電池(PEFC)は、数十個から数百個のセル(単セル)が積層されたスタック構造を有する。各セルは、固体高分子電解質膜を一対の電極で挟持した膜−電極接合体を基本構造とし、この基本構造が一対のセパレータで挟持される。
上述のような膜−電極接合体では、一般的に、各電極は、固体高分子電解質膜(以下、適宜、電解質膜と称する)側から順に、触媒層、ガス拡散層が積層された構造を採る。
この触媒層は触媒粒子及び高分子電解質を含み、また、ガス拡散層はカーボンペーパーやカーボンクロスなどでなる。このような触媒層及びガス拡散層は、両者間の接着性を高め、触媒層の剥離やクラックを生じさせないようにしなくてはならない。
このような要請に応えるための技術も既に種々提案されている。即ち、ガス拡散層上に増粘剤を含む結着材層(バッファ層)を設け、この結着材層(バッファ層)上に触媒粒子及び高分子電解質を含む電極触媒層を積層するという提案がある(例えば、特許文献1参照)。
一方、触媒層を微細多孔質層(MPL)を有する構造のものとした場合にも、MPLに存在する細孔が潰れることに起因する発電性能の低下を招くことのない燃料電池用膜−電極接合体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2007−317391号公報 特開2014−022140号公報
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、触媒層に剛性がない場合、膨潤や差圧によって変形しやすい電解質膜を変形を生じないように確実に保持するためには、カーボンペーパーやカーボンクロスなどでなるガス拡散層で保持する必要がある。そして、このようにガス拡散層で保持するためには、ガス拡散層に塗布された下地層と触媒層を接着するためのバッファ層などが必要になる。
ところが、このようなバッファ層はガス拡散層の細孔を潰すため、ガス拡散性や排水性といった膜−電極接合体の重要な特性を悪化させるという課題を生じる。
一方、燃料電池用膜−電極接合体における電解質膜は他の部材に比し剛性(弾性率)が格段に低く、且つ、乾湿の程度に応じて寸法の変化が大きいという物性を有する。このため、電解質膜が寸法変化する際に、これに隣接する電極層(触媒層、拡散層)やMPLにクラックが存在する場合、隣接する部材よりも弾性率が低い電解質膜に応力の集中が発生し、この結果、電解質膜に亀裂が生じるおそれがある。
電解質膜に亀裂が生じるとガスのクロスリークが生じて、発電機能が損なわれる。
一般に、燃料電池用膜−電極接合体の単セルは、これを多数積層して燃料電池スタックを構成して用いる。このように燃料電池スタックを構成した場合、各単セルの各層の厚みのばらつきにより、上述のようなクラックが生じている部分への荷重の分布が偏る。この荷重が上昇した部位では電解質膜に亀裂が生じガスのクロスリークが生じる。
しかしながら、特許文献2に開示の技術では、この問題を十分に解決し得ない。
本発明は、上述のような課題を解決するべくなされたものであり、ガス拡散性や排水性といった膜−電極接合体の特性を悪化させることなく、電解質膜の変形を確実に抑制することができる燃料電池用膜−電極接合体及びこの燃料電池用膜−電極接合体を用いた固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、ここに次に列記するような技術を提案する。
(1)電解質膜(例えば、後述するPEM10)と、前記電解質膜に対応して設けられた触媒層(例えば、後述のアノード触媒層11a、カソード触媒層12a)を有する電極(例えば、後述するアノード電極11、カソード電極12)と、
を備えた燃料電池用膜−電極接合体(例えば、後述する膜−電極接合体110)であって、
前記触媒層は、補強部材を備えることなく、その面方向のヤング率が、前記電解質膜の面方向のヤング率よりも高いことを特徴とする燃料電池用膜−電極接合体。
上記(1)の燃料電池用膜−電極接合体では、相対的にヤング率が高くリジッドな触媒層によって、電解質膜はその変形が抑制される。そしてこの場合、バッファ層などによって上記電極のガス拡散層(例えば、後述するアノード拡散層11b、カソード拡散層12b)の細孔が潰されることがないため、ガス拡散性や排水性といった膜−電極接合体の重要な特性が損なわれるおそれがない。
(2)前記触媒層は、前記電解質膜の両主面に各対応するように一対設けられ、且つ、該一対の触媒層にはそれぞれ対応するガス拡散層(例えば、後述するアノード拡散層11b、カソード拡散層12b)が設けられ、
前記一対の触媒層のうち一方の触媒層(例えば、後述するカソード触媒層12a)は、その面積が、自層に対応するガス拡散層(例えば、後述するカソード拡散層12b)の面積よりも広く、且つ、その面方向のヤング率が、前記電解質膜の面方向のヤング率よりも高いことを特徴とする上記(1)の燃料電池用膜−電極接合体。
上記(2)の燃料電池用膜−電極接合体では、上記(1)の燃料電池用膜−電極接合体において特に、一方の触媒層は、自層に対応するガス拡散層よりも面積が広く且つ電解質膜よりもヤング率が高くリジッドである。このような一方の触媒層によって、電解質膜はその変形が効果的に抑制される。
(3)前記一対の触媒層のうち他方の触媒層(例えば、後述するアノード触媒層11a)は、その面積が、自層に対応するガス拡散層(例えば、後述するアノード拡散層11b)の面積と等しく、且つ、その面方向のヤング率が、前記一方の触媒層(例えば、後述するカソード触媒層12a)の面方向のヤング率よりも低いことを特徴とする上記(2)の燃料電池用膜−電極接合体。
上記(3)の燃料電池用膜−電極接合体では、上記(2)の燃料電池用膜−電極接合体において特に、電解質膜の他方の主面側の他方の触媒層は、その面方向のヤング率が前記一方の触媒層の面方向のヤング率よりも低い。しかしながら、自層と面積の略等しいガス拡散層が設けられているため、他方の触媒層単体では前記一方の触媒層ほどにはリジッドでなくとも、このガス拡散層の一定の剛性と併せ電解質膜の変形を効果的に抑制できる。従って、電解質膜の両方の主面に各対応する触媒層の双方ともを同程度まで強固にリジッドなものにすることなく、電解質膜の変形を適切に抑制することが可能である。
(4)前記触媒層は、その面方向のヤング率が、温度及び湿度に依らず、前記電解質膜の面方向のヤング率よりも高いことを特徴とする上記(1)の燃料電池用膜−電極接合体。
上記(4)の燃料電池用膜−電極接合体では、上記(1)の燃料電池用膜−電極接合体において特に、環境温度や湿度に左右されずに、電解質膜は強固にその変形が抑制される。
(5)前記一対の触媒層のうち前記一方の触媒層(例えば、後述するカソード触媒層12a)は、その面積が、自層に対応するガス拡散層の面積よりも大きく、且つ、その面方向のヤング率が、他方の触媒層(例えば、後述するアノード触媒層11a)の面方向のヤング率よりも高いことを特徴とする上記(2)の燃料電池用膜−電極接合体。
上記(5)の燃料電池−電極接合体では、上記(2)の燃料電池用膜−電極接合体において特に、一対の触媒層のうち前記一方の触媒層(例えば、後述するカソード触媒層12a)は、その面積が、自層に対応するガス拡散層の面積よりも大きく、且つ、その面方向のヤング率が、他方の触媒層(例えば、後述するアノード触媒層11a)の面方向のヤング率よりも高い。
このような構成を採ることによって、背後に自層を支持する拡散層がない特異な部分が生じる前記一方の触媒層をよりリジッドにして、上記特異な部分においても電解質膜の膨潤等に抗し得るようにする一方、前記他方の触媒層側に変形による応力を逃がして、結果的に電解質膜の変形を適切に抑制することが可能になる。
(6)前記一対の触媒層のうち前記一方の触媒層は、その厚さが、前記他方の触媒層の厚さよりも厚いことを特徴とする上記(5)の燃料電池用膜−電極接合体。
上記(6)の燃料電池−電極接合体では、上記(5)の燃料電池用膜−電極接合体において特に、一対の触媒層のうち前記一方の触媒層は、その厚さが、前記他方の触媒層の厚さよりも厚い。
このような構成を採ることによって、背後に自層を支持する拡散層がない特異な部分が生じる前記一方の触媒層の剛性を高め、上記特異な部分においても電解質膜の膨潤等に抗し得るようにする。
(7)前記一対の触媒層は何れも前記電解質膜との面方向のヤング率の差が50MPaから200MPaの範囲内であることを特徴とする上記(2)から()のいずれか一の燃料電池用膜−電極接合体。
上記(7)の燃料電池−電極接合体では、上記(2)から()のいずれか一の燃料電池用膜−電極接合体において特に、一対の触媒層は何れも電解質膜との面方向のヤング率の差が50MPaから200MPaの範囲内である。このヤング率の差が上記範囲内である場合には、電解質膜の変形に対する抑制効果が十分であり、且つ、小さい方のガス拡散層(例えば、後述するカソード触媒層12a)の外周端が破損しやすくなるおそれが回避される。
(8)前記触媒層は、前記電解質膜の両主面に各対応するように一対設けられ、該一対の触媒層にはそれぞれ対応する微細多孔質層(例えば、後述する微細多孔質層11b1、微細多孔質層12b1)を介してガス拡散層が設けられ、且つ、前記微細多孔質層と前記ガス拡散層とで複合層(例えば、後述するアノード側複合層11c、カソード側複合層12c)を成し、前記複合層の厚さ方向のヤング率は前記電解質膜の厚さ方向のヤング率よりも小さく、前記触媒層の厚さ方向のヤング率は前記電解質膜の厚さ方向のヤング率よりも大きいことを特徴とする上記(1)の燃料電池用膜−電極接合体。
上記(8)の燃料電池−電極接合体では、上記(1)の燃料電池用膜−電極接合体において特に、触媒層は、電解質膜の両主面に各対応するように一対設けられ、該一対の触媒層にはそれぞれ対応する微細多孔質層を介してガス拡散層が設けられ、且つ、微細多孔質層とガス拡散層とで複合層を成し、複合層の厚さ方向のヤング率は電解質膜の厚さ方向のヤング率よりも小さく、触媒層の厚さ方向のヤング率は電解質膜の厚さ方向のヤング率よりも大きい。
このような構成を採ることによって、電解質膜の膨潤等による応力を複合層の収縮で吸収する一方、相対的にリジッドな触媒層によって電解質膜の変形を効果的に抑止することができる。
(9)前記複合層の厚さ方向のヤング率は0.1MPaから35MPaの範囲内にあることを特徴とする上記(8)の燃料電池用膜−電極接合体。
上記(9)の燃料電池−電極接合体では、上記(8)の燃料電池用膜−電極接合体において特に、複合層の厚さ方向のヤング率は0.1MPaから35MPaの範囲内にある。複合層の厚さ方向のヤング率が上記範囲内である場合には、触媒層(アノード触媒層11a或いはカソード触媒層12a)にクラックが生じていても、複合層が応力を吸収して、電解質膜の変形に対する抑制効果が十分なものとなる。
(10)上記(1)から(9)の何れか一の燃料電池用膜−電極接合体を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
上記(10)の固体高分子形燃料電池では、その燃料電池用膜−電極接合体について、上記(1)から(9)のうち該当するものに関する作用効果を奏する。
本発明によれば、ガス拡散性や排水性といった膜−電極接合体の特性を悪化させることなく、電解質膜の変形を確実に抑制することができる燃料電池用膜−電極接合体及びこの燃料電池用膜−電極接合体を用いた固体高分子形燃料電池を具現することができる。
本発明の一実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体を断面視して概略的に示し作用と共に説明する図である。 本発明の一実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体における触媒層の面方向のヤング率と電解質膜の面方向のヤング率とを種々の温度及び湿度において比較して示す図である。 本発明の一実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体におけるCCM(触媒層形成電解質膜)の面方向の寸法変化量をPEM(固体高分子電解質膜)単体での寸法変化量との対比において示す図である。 本発明の他の実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体とその等価モデルを示す図である。 図4の燃料電池用膜−電極接合体の等価モデルによるヤング率のシミュレーション結果を表す図である。 図4の燃料電池用膜−電極接合体に適合する複合層の厚さ方向のヤング率を説明するための図である。 図4の燃料電池用膜−電極接合体について生じる現象を説明するための図である。 図4の燃料電池用膜−電極接合体について生じる現象を説明するための図である。 図4の燃料電池用膜−電極接合体について生じる現象を説明するための図である。 図4の燃料電池用膜−電極接合体について生じる現象を説明するための図である。
以下に図面を参照しながら本発明の一実施形態について詳述することにより本発明を明らかにする。
図1は、本発明の一実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体を断面視して概略的に示し作用と共に説明する図である。
図1の(a)部は、本発明の一実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体を示し、図1の(b)部は、本発明の技術を適用しない場合に発生するおそれがある問題を示している。上記(a)部及び(b)部において、対応する部位には同一の符号を附してある。
図1の(a)部の燃料電池用膜−電極接合体は、電解質膜である固体高分子電解質膜(Proton Exchange Membrane、以下PEMと称する)10の一方の主面側(図では上側)にアノード電極11が設けられ、他方の主面側(図では下側)にカソード電極12が設けられている。アノード電極11はPEM10一方の主面に接するアノード触媒層11aとこのアノード触媒層11aに対応して設けられたアノード拡散層11bとを含んで構成される。また、カソード電極12はPEM10の他方の主面に接するカソード触媒層12aとこのカソード触媒層12aに対応して設けられたカソード拡散層12bとを含んで構成される。
この実施形態では、アノード拡散層11b及びカソード拡散層12bはカーボンペーパーやカーボンクロスなどでなるガス拡散層である。
上述のPEM10とアノード触媒層11a及びカソード触媒層12aによって触媒層形成電解質膜(Catalyst Coated Membrane、以下CCMと称する)100が構成され、また、PEM10とアノード電極11及びカソード電極12によって膜−電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly )110が構成される。
膜−電極接合体110を挟持するようにして、アノード拡散層11b側に第1セパレータ110aが設けられ、カソード拡散層12b側に第2セパレータ110bが設けられている。そして、膜−電極接合体110とこれら第1セパレータ110a及び第2セパレータ110bによって一つのセル(単セル)が構成される。
第1セパレータ110aには燃料ガス(水素)を流通させるための流路となる複数の流路溝111,111が設けられ、第2セパレータ110bには酸化剤(空気)を流通させるための流路となる複数の流路溝112,112が設けられている。
なお、本例では、PEM10、アノード触媒層11a、及び、アノード拡散層11bは面積(本例では平面投影面積、即ち、平面投影領域。以下同様)を等しくするが、カソード触媒層12aはPEM10よりも面積が小さく、カソード拡散層12bは更に一段と面積が小さい。
従って、図示のように、PEM10に対して、アノード側(図では上側)とカソード側(図では下側)とでは、図における左端側で各層状体の端縁が不揃いになっている。
このため、本実施形態では、第1セパレータ110a及び第2セパレータ110bを図における左端側でも端縁が揃うようにすると共に、上述のように各層状体の端縁が不揃いになっている部分を含んで膜−電極接合体110の端部をカバーするようにシール部材130を設けてある。
なお、このシール部材130に替えて、或いは、このシール部材130と共に、第1セパレータ110a及び第2セパレータ110b間にそれらの外周部位を回らせるようにしてシリコン系液状シール材(機能的には枠材)を塗布してもよい。
以上の構成において、図1の(a)部に示された本実施形態における膜−電極接合体110では、固体高分子電解質膜(PEM10)としては、例えば、パーフルオロスルホン酸等の高分子電解質からなる薄膜が用いられる。この固体高分子電解質膜としては、市販品を用いることができ、例えばデュポン社製の「ナフィオン」を用いることができる。
また、ガス拡散層(アノード拡散層11b及びカソード拡散層12b)としては、例えば、カーボン粒子を含む下地層が形成されたカーボンペーパを用いることができる。
また、触媒層(アノード触媒層11a及びカソード触媒層12a)としては、例えば、白金合金が担持された多孔質カーボン粒子からなる触媒粒子と、上述の高分子電解質と、を含む触媒層を用いることができる。
そして、本実施形態では、特に、アノード触媒層11a及びカソード触媒層12aの面方向のヤング率がPEM10の面方向のヤング率よりも高い。
一方、図1の(b)部には、アノード触媒層11a及びカソード触媒層12aの面方向のヤング率がPEM10の面方向のヤング率よりも低い場合に生じるおそれがある問題が示されている。
図1の(b)部に示された例では、アノード電極11がカソード電極12よりも全周(不図示)に亘って大きな主面をなす、所謂段差MEAを構成している。アノード電極11側に流通する反応ガスの圧力は、カソード電極12側に流通する反応ガスの圧力よりも大きい。このため、PEM10の膨潤や両主面にかかる圧力に差圧が生じて、PEM10にたわみを生じる。
この場合、アノード触媒層11a及びカソード触媒層12a(特に図示の場合ではカソード触媒層12a)の面方向のヤング率がPEM10の面方向のヤング率よりも低いと、このたわみによる変形に抗することができない。このため、図中、実線の円C1内の部位のごとく変形によってPEM10が触媒層(この場合はカソード触媒層12a)と共に破損してしまうことになる。
図中、円C1の部位は、特に、カソード拡散層12bの外周端のPEM10の部位であるが、このような破損が生じるおそれは、図中、破線の円C2の部位や円C3の部位についても同様である。円C2の部位や円C3の部位でも円C1の部位におけるような現象が生じ得るのは、カソード触媒層12aにクラックや孔があると、PEM10が陥没するからである。
尚、カソード触媒層12aがフラットな部分では、PEM10がカソード触媒層12aに陥没することはない。即ち、円C2の部位や円C3の部位はカソード触媒層12aと特定の位置関係にある部位である。
図1の(b)部に対し、図1の(a)部に示された膜−電極接合体110では、上述のように、アノード触媒層11a及びカソード触媒層12aの面方向のヤング率がPEM10の面方向のヤング率よりも高い。
このため、相対的に面方向のヤング率が高くリジッドなアノード触媒層11a及びカソード触媒層12aによって、PEM10はその変形が抑制される。そしてこの場合、バッファ層などによってガス拡散層(アノード拡散層11b、カソード拡散層12b)の細孔が潰されることがないため、ガス拡散性や排水性といった膜−電極接合体の重要な特性が損なわれるおそれがない。
また、カソード触媒層12aは、カソード拡散層12bよりも面積が大きく形成され、且つ、その面方向のヤング率が、カソード拡散層12bの面方向のヤング率よりも高い。このため、相対的にヤング率が高くリジッドなカソード拡散層12bによって、PEM10はその変形が抑制される。この場合も、バッファ層などによってカソード拡散層12bの細孔が潰されることがないため、ガス拡散性や排水性といった膜−電極接合体の重要な特性が損なわれるおそれがない。
一方、アノード触媒層11aには、自層と面積が略等しいアノード拡散層11bが設けられている。このアノード触媒層11aの面方向のヤング率は、上述のカソード触媒層12aの面方向のヤング率よりも低い。しかしながら、自層と面積の略等しいガス拡散層(アノード拡散層)11bによる一定の剛性と併せ電解質膜の変形を効果的に抑制できる。このため、PEM10の両方の主面に各対応するアノード触媒層11a及びカソード触媒層12aの双方ともが必ずしも同程度まで強固にリジッドなものでなくとも、PEM10の変形を適切に抑制することが可能である。
換言すれば、カソード触媒層12aは、その面積が、自層に対応するカソード拡散層12bの面積よりも大きく、且つ、その面方向のヤング率が、アノード触媒層11aの面方向のヤング率よりも高い。これにより、背後に自層を支持する拡散層がない特異な部分が生じるカソード触媒層12aをよりリジッドにして、上記特異な部分においてもPEM10の膨潤等に抗し得るようにする一方、アノード触媒層11a側に変形による応力を逃がして、結果的にPEM10の変形を適切に抑制することが可能になる。
次に、CCM100(PEM10、アノード触媒層11a、カソード触媒層12a)の製法について説明する。
質量比で4:6の導電性粒子であるカーボンブラック及び撥水剤であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を溶媒であるエチレングリコールに均一に分散させてなるスラリーをカーボンペーパーの片面に塗布し、乾燥させて下地層を形成し、カーボンペーパーと下地層からなるガス拡散層を作製した。
得られたガス拡散層の下地層上に触媒ペーストをスクリーン印刷し、減圧乾燥してアノード極とカソード極を作製した。触媒ペーストはカーボンブラック(ファーネスブラック)に白金粒子を白金/カーボンの質量比が1:1になるように担持して触媒粒子とし、プロトン伝導成分としてナフィオン(デュポン社商品名)を使用し、ナフィオンの溶液中に触媒粒子を均一に混合して作製した。
そして、触媒層の面方向のヤング率を高めて剛性を増すために、フッ素系の電解質膜(PEM)をアノード極及びカソード極で挟んだ後、従来よりも高い温度である摂氏160度で10分間ホットプレスし、CCM100を作製した。このようにホットプレスにおける温度を高めることにより、プロトン誘電成分の結晶化が促進され、触媒層のヤング率を高めることができる。
以上のようにして作製したCCM100における触媒層とフッ素系のPEM10の面方向のヤング率について検証した結果を図2に示す。
図2は、本実施形態の燃料電池用膜−電極接合体におけるCCM100の触媒層とPEM10との各面方向のヤング率を種々の温度及び湿度において検証した結果を示す図である。
図2から容易に理解されるとおり、温度が摂氏マイナス40度から摂氏100度まで、及び、相対湿度が乾燥状態から95パーセントまでの領域において、触媒層の面方向のヤング率はPEM10の面方向のヤング率を上回っている。
この結果から、本実施形態の膜−電極接合体では、温度及び湿度に関する広範囲な領域で、相対的にリジッドな触媒層によってPEM10はその変形が抑制されることが分る。
ここで、PEM10とCCM100の触媒層との各面方向のヤング率の差は、50MPaから200MPaの範囲内にあることが好ましい。このヤング率の差が50MPa以下の場合には、PEM10の変形に対する抑制効果が不十分であり、200MPa以上の場合には、小さい方のガス拡散層(カソード触媒層12a)の外周端が破損しやすくなるからである。
換言すると、PEM10とCCM100の触媒層との各面方向のヤング率の比は、1:1.5から1:3の範囲内にあることが好ましい。CCM100の触媒層のヤング率がPEM10に対して1:1.5以下の場合には、PEM10の変形に対する抑制効果が不十分であり、1:3以上の場合には、小さい方のガス拡散層(カソード触媒層12a)の外周端が破損しやすくなる。
次に、上述した面方向のヤング率の測定方法について説明する。
(1)PEM10については、面方向に応力を加えて、このときの歪み量を測定し、応力と歪みとに基づいてヤング率を割り出す。
(2)カソード触媒層12a等の触媒層については、面方向のヤング率を直接的に測定することが困難である。このため、PEM10と触媒層との合計のヤング率を測定し、計算によりヤング率を割り出す。この計算では、PEM10と触媒層とを並列のバネとみなす等価モデルを想定して目的とするヤング率を算出する。
図3は、本実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体に関する試験結果であり、CCM100の面方向の寸法変化量をPEM10単体での寸法変化量との対比において示す図である。
図示のようにPEM10単体での試験結果では、摂氏70度、相対湿度95パーセント、及び、摂氏マイナス35度、ドライ状態の環境下では、寸法変化率は5パーセント以上となる。
これに対し、本実施形態のCCM100では、寸法変化率が±2パーセント以内に抑制された。即ち、この値は、触媒層の破断歪限界である±5パーセント以内にある。これはPEM10よりもヤング率の高い触媒層が接合されたことにより、CCM100ではPEM10単体におけるよりも寸法変化率が効果的に抑制されることを裏付けるものである。
図1を参照して既述のように、膜−電極接合体110(MEA)と第1セパレータ110a及び第2セパレータ110bによって燃料電池の単セルが構成される。そしてこの単セルが複数積層され且つ電気的に直列に接続されてスタックが構成される。これが本発明の一つの実施形態としての固体高分子形燃料電池である。
このような固体高分子形燃料電池は、膜−電極接合体110(そのCCM100)について上述したような特徴を有する。
なお、触媒層の面方向のヤング率を高める方法は、必ずしも上述のようにホットプレスの温度を従来より高めに設定する方法に限られるものではない。触媒層と電解質膜の各材質の選択次第で、触媒層の面方向のヤング率を電解質膜との相対において高くすることも可能である。この方法の具体例を次に列記する。
(1)アイオノマー(高分子電解質)と導電材の比率を変える。即ち、導電材(カーボン)の量を通常(通常は、アイオノマー:カーボン=1:1)より多くすることによって触媒層の面方向のヤング率を高めることができる。
(2)フッ素系のアイオノマーである、例えば、ナフィオン(デュポン社商品名)では、イオン交換容量(IEC)が低いほどヤング率が高くなる。この性質を利用して触媒層の面方向のヤング率を高めることができる。
(3)分子構造に起因して、フッ素系のアイオノマーに対しハイドロカーボンであるポリアリーレン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等のアイオノマーの方がヤング率が高くなる。このような性質を利用して、触媒層の面方向のヤング率を電解質膜との相対において高くすることも可能である。
(4)本発明は触媒層の面方向のヤング率が電解質膜の面方向のヤング率よりも高ければ成立する。この点に着眼し、触媒層の面方向のヤング率は通常通りとし、電解質膜の面方向のヤング率を相対的に低くすることも本発明に含まれる。例えば、フッ素系のアイオノマーを電解質膜及び触媒層に用いるが、電解質膜のIEC(イオン交換容量)を触媒層のIECよりも高くして電解質膜の面方向のヤング率を触媒層との相対において低く設定する。或いはまた、触媒層にハイドロカーボン系のアイオノマーを使用する一方、電解質膜にはフッ素系のアイオノマーを用いることによっても電解質膜の面方向のヤング率を触媒層との相対において低く設定することができる。
以上図1から図3を参照して説明した一実施形態を総じて、電解質膜(PEM)は、内部に補強部材が含まれているため、異方性がある。即ち、面方向のヤング率が厚さ方向のヤング率よりも高い。
尚、電解質膜としてナフィオン(デュポン社商品名)を適用した場合、組織上及び構造上の補強策を講じた補強層の態様やナフィオン(デュポン社商品名)自体の成分に応じて、ヤング率は種々の値をとり、一意的には定まらない。
尚、上述の一実施形態では、その一つの態様において、一対の触媒層(アノード触媒層11a、カソード触媒層12a)のうち前記一方の触媒層(カソード触媒層12a)は、その面方向のヤング率が、前記他方の触媒層(アノード触媒層11a)の面方向のヤング率よりも高い。
このような構成を採ることによって、背後に支持部材がない特異な部分(カソード拡散層12bの外側の部分)が生じる前記一方の触媒層であるカソード触媒層12aをよりリジッドにして、上記特異な部分においてもPEM10の膨潤等に抗し得るようにする一方、前記他方の触媒層であるアノード触媒層11a側に変形による応力を逃がして、結果的に電解質膜の変形を適切に抑制することが可能になる。
また、上述の一実施形態では、その一つの態様において、一対の触媒層(アノード触媒層11a、カソード触媒層12a)のうち一方の触媒層(カソード触媒層12a)は、その厚さが、他方の触媒層(アノード触媒層11a)の厚さよりも厚い。
このような構成を採ることによって、背後に自層を支持する拡散層がない特異な部分が生じる一方の触媒層(カソード触媒層12a)の剛性を高め、上記特異な部分においても電解質膜の膨潤等に抗し得るようにして、効果的に電解質膜の変形を抑止することができる。
次に、図面を参照して、本発明の他の実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体について説明する。
図4は、本発明の他の実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体とその等価モデルを示す図である。
図4の(A)部は、本発明の他の実施形態としての燃料電池用膜−電極接合体を断面視して概略的に示す図である。
図4の(A)部において、既述の図1との対応部には同一の符号を附してある。
図4の(A)部の燃料電池用膜−電極接合体(MEA)110mは、PEM10の一方の主面側(図では上側)にアノード電極11が設けられ、他方の主面側(図では下側)にカソード電極12が設けられている。
アノード電極11はPEM10一方の主面に接するアノード触媒層11aとこのアノード触媒層11aに対応して設けられたアノード側複合層11cを含んで構成される。このアノード側複合層11cは、アノード触媒層11aに接する微細多孔質層11b1と、この微細多孔質層11b1の外側に接するアノード拡散層11b2とにより構成される。
また、カソード電極12はPEM10他方の主面に接するカソード触媒層12aとこのカソード触媒層12aに対応して設けられたカソード側複合層12cを含んで構成される。このカソード側複合層12cは、カソード触媒層12aに接する微細多孔質層12b1と、この微細多孔質層12b1の外側に接するカソード拡散層12b2とにより構成される。
尚、アノード側複合層11c及びカソード側複合層12cにおける微細多孔質層(11b1、12b1)は、下地層とも称される。
図4の(A)部のMEA110mは、換言すれば、触媒層(アノード触媒層11a、カソード触媒層12a)は、電解質膜(PEM10)の両主面に各対応するように一対設けられ、該一対の触媒層(アノード触媒層11a、カソード触媒層12a)にはそれぞれ対応する微細多孔質層(微細多孔質層11b1、微細多孔質層12b1)を介してガス拡散層(アノード拡散層11b2、カソード拡散層12b2)が設けられ、且つ、微細多孔質層(微細多孔質層11b1、微細多孔質層12b1)とガス拡散層(アノード拡散層11b2、カソード拡散層12b2)とで複合層(アノード側複合層11c、カソード側複合層12c)を成している。
図4の(B)部は、図4の(A)部のMEA110mの等価モデルを示す図である。この等価モデルでは、燃料電池用膜−電極接合体の各層をばねに対応させて、各層の厚み方向で見たヤング率を表している。
即ち、上述のアノード側複合層11c及びカソード側複合層12cをそれぞれ一つのバネ(11c、12c)に対応させ、これら両者のバネ(11c、12c)間に、中央位置のPEM10に対応するバネ(10)、及び、このバネ(10)の一端と他端に各接続されたアノード触媒層11aに対応するバネ(11a)とカソード触媒層12aに対応するバネ(12a)が接続されて、図示のようなバネの直列接続体が構成されている。
図4の(B)部のようなバネの直列接続体で表されるMEA110mにおけるPEM10の変形を確実に抑制するには、各層の厚み方向で見たヤング率(圧縮弾性率)のうち、上記直列接続体の両端に位置する各バネ(11c、12c)のヤング率を制御することが重要である。
具体的には次のように制御する。即ち、複合層(11c、12c)の厚さ方向のヤング率をPEM10の厚さ方向のヤング率よりも小さなるように、且つ、触媒層(アノード触媒層11a、カソード触媒層12a)の厚さ方向のヤング率をPEM10の厚さ方向のヤング率よりも大きくなるように制御する。
ここで、図5を併せ参照して、触媒層(アノード触媒層11a、カソード触媒層12a)の厚さ方向のヤング率の選択について説明する。
図5は、図4の(B)部の燃料電池用膜−電極接合体の等価モデルによるヤング率のシミュレーション結果を表す図である。
図5において、横軸は上述の複合層(アノード側複合層11c或いはカソード側複合層12c)のヤング率(圧縮弾性率:MPa)、縦軸は触媒層(アノード触媒層11a或いはカソード触媒層12a)にクラックが生じている場合にPEM10にかかる応力の上昇率を表している。即ち、この縦軸では、変化しないときの値である基準値を100%として、この値からの上昇(下降)度合いを%にて表記している。
図5より容易に理解される通り、複合層(11c、12c)の厚さ方向のヤング率が0.1MPaから35MPaの範囲内(矢線Rにて示された範囲)において、PEM10にかかる応力は略基準値、即ち100%を維持している。換言すれば、複合層(11c、12c)の厚さ方向のヤング率を0.1MPaから35MPaの範囲内にすれば、PEM10の変形を効果的に抑制することができる。
図4及び図5を参照して説明したところから明らかな如く、上記直列接続体の両端に位置する各バネ(11c、12c)のヤング率、即ち、複合層(11c、12c)の厚さ方向のヤング率を0.1MPaから35MPaの範囲内にする。複合層(11c、12c)の厚さ方向のヤング率が上記範囲内である場合には、触媒層(アノード触媒層11a或いはカソード触媒層12a)にクラックが生じていても、PEM10の変形に対する抑制効果が十分なものとなる。これは、複合層が応力を吸収して、PEM10に無用の応力がかかることが回避されるからである。
図6は、図4、図5を参照して説明した、燃料電池用膜−電極接合体に適合する複合層(11c、12c)の厚さ方向のヤング率E=σ/γを説明するための図である。
図示のように、応力σの上昇と共にひずみγが上昇する。応力σとひずみγは必ずしも直線的関係にはない。ひずみγは50%以下で使用するのが好ましい。
図7、図8、図9、及び、図10は、図4の燃料電池用膜−電極接合体について生じる現象を説明するための図である。
図7、図9、及び、図10において、既述の図4の(A)部及び図1との対応部には同一の符号を附してある。
図7、図9、及び、図10の燃料電池用膜−電極接合体(MEA)110mは、PEM10の一方の主面側(図では上側)にアノード電極11が設けられ、他方の主面側(図では下側)にカソード電極12が設けられている。
アノード電極11はPEM10一方の主面に接するアノード触媒層11aとこのアノード触媒層11aに対応して設けられたアノード側複合層11cを含んで構成される。このアノード側複合層11cは、図4の(A)部を参照して既述のものと同様のものである。
アノード側複合層11cの外側には、図1を参照して既述のものと同様の第1セパレータ110aが設けられる。
また、カソード電極12はPEM10他方の主面に接するカソード触媒層12aとこのカソード触媒層12aに対応して設けられたカソード側複合層12cを含んで構成される。このカソード側複合層12cも、図4の(A)部を参照して既述のものと同様のものである。
カソード側複合層12cの外側には、図1を参照して既述のものと同様の第2セパレータ110bが設けられる。
図7のPEM10の個所に双方向の矢線にて象徴的に図示のように、PEM10は、乾湿の程度等に応じて面方向及び厚さ方向に寸法変化を生じる。図7では、カソード触媒層12aに、幅dのクラックが生じていると仮定している。この幅dは、5μm乃至50μm程度であるとする。
図8は、クラックの幅dの程度に応じてPEM10にかかる応力σの様子を表す図である。図8より判読される通り、クラックの幅dが5μm乃至50μmの範囲では、クラックの幅dの増加に伴って応力σも非線形に単調増加するが、クラックの幅dが50μmを超えると、応力σは飽和を示す傾向を呈する。
図9は、カソード触媒層12aに、図7にて既述の幅dのクラックが生じていると仮定し、更に、アノード側複合層11cに圧縮応力P1が加わり、カソード側複合層12cに圧縮応力P2が加わったと仮定した様子を示している。
この条件で、アノード側複合層11c及びカソード側複合層12cの圧縮弾性率(ヤング率)が0.1MPaから35MPaの範囲内である場合には、アノード側複合層11c及びカソード側複合層12cが、圧縮応力P1、P2に対応して適度に収縮して、PEM10の膨潤による応力集中を効果的に抑制することができる。
図10は、カソード触媒層12aに、図7にて既述の幅dのクラックが生じていると仮定し、更に、アノード側複合層11cに圧縮応力P1が加わり、カソード側複合層12cに圧縮応力P2が加わったと仮定した様子を示している。
図10では、この条件で、アノード側複合層11c及びカソード側複合層12cの圧縮弾性率(ヤング率)が35MPaよりも大きい場合を仮定している。アノード側複合層11c及びカソード側複合層12cの圧縮弾性率(ヤング率)が35MPaよりも大きい場合には、アノード側複合層11c及びカソード側複合層12cが、圧縮応力P1、P2に対応して収縮しないため、クラックの部位(破線のサークルSCで示した部位)にPEM10の膨潤した膜が入り込み応力集中が発生する。
図7、図8、図9、及び、図10を参照して上述したところから明らかなように、アノード側複合層11c及びカソード側複合層12cの圧縮弾性率(ヤング率)は0.1MPaから35MPaの範囲内であると、PEM10の変形を効果的に抑制することができる。
10…PEM(固体高分子電解質膜)
11…アノード電極
11a…アノード触媒層
11b、11b2…アノード拡散層
11b1…微細多孔質層
11c…アノード側複合層
12…カソード電極
12a…カソード触媒層
12b、12b2…カソード拡散層
12b1…微細多孔質層
12c…カソード側複合層
100…CCM(触媒層形成電解質膜)
110、110m…MEA(膜−電極接合体)
110a…第1セパレータ
110b…第2セパレータ

Claims (10)

  1. 電解質膜と、
    前記電解質膜上に形成された触媒層を有する電極と、
    を備えた燃料電池用膜−電極接合体であって、
    前記触媒層は、補強部材を備えることなく、その面方向のヤング率が、前記電解質膜の面方向のヤング率よりも高く、前記触媒層と電解質膜の面方向のヤング率の差の下限を50MPaとすることを特徴とする燃料電池用膜−電極接合体。
  2. 前記触媒層は、前記電解質膜の両主面に各対応するように一対設けられ、且つ、該一対の触媒層にはそれぞれ対応するガス拡散層が設けられ、
    前記一対の触媒層のうち一方の触媒層は、その面積が、自層に対応するガス拡散層の面積よりも広く、且つ、その面方向のヤング率が、前記電解質膜の面方向のヤング率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  3. 前記一対の触媒層のうち他方の触媒層は、その面積が、自層に対応するガス拡散層の面積と等しく、且つ、その面方向のヤング率が、前記一方の触媒層の面方向のヤング率よりも低いことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  4. 前記触媒層は、その面方向のヤング率が、温度及び湿度に依らず、前記電解質膜の面方向のヤング率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  5. 前記一対の触媒層のうち前記一方の触媒層は、その面積が、自層に対応するガス拡散層の面積よりも大きく、且つ、その面方向のヤング率が、他方の触媒層の面方向のヤング率よりも高いことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  6. 前記一対の触媒層のうち前記一方の触媒層は、その厚さが、前記他方の触媒層の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  7. 前記触媒層は何れも前記電解質膜との面方向のヤング率の差が50MPaから200MPaの範囲内であることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  8. 前記触媒層は、前記電解質膜の両主面に各対応するように一対設けられ、該一対の触媒層にはそれぞれ対応する微細多孔質層を介してガス拡散層が設けられ、且つ、前記微細多孔質層と前記ガス拡散層とで複合層を成し、前記複合層の厚さ方向のヤング率は前記電解質膜の厚さ方向のヤング率よりも小さく、前記触媒層の厚さ方向のヤング率は前記電解質膜の厚さ方向のヤング率よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  9. 前記複合層の厚さ方向のヤング率は0.1MPaから35MPaの範囲内にあることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池用膜−電極接合体。
  10. 請求項1から9の何れか1項に記載の燃料電池用膜−電極接合体を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
JP2015153612A 2014-08-04 2015-08-03 燃料電池用膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池 Active JP6278932B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015153612A JP6278932B2 (ja) 2014-08-04 2015-08-03 燃料電池用膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014158614 2014-08-04
JP2014158614 2014-08-04
JP2015153612A JP6278932B2 (ja) 2014-08-04 2015-08-03 燃料電池用膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016035918A JP2016035918A (ja) 2016-03-17
JP6278932B2 true JP6278932B2 (ja) 2018-02-14

Family

ID=55523643

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015153612A Active JP6278932B2 (ja) 2014-08-04 2015-08-03 燃料電池用膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6278932B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116581346A (zh) * 2023-05-17 2023-08-11 麓丰新材料(广东)有限公司 一种膜电极结构

Family Cites Families (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3504021B2 (ja) * 1994-12-08 2004-03-08 ジャパンゴアテックス株式会社 電気化学装置用電極とその製造方法
JP2001283865A (ja) * 2000-03-31 2001-10-12 Toray Ind Inc 電極触媒層、膜−電極複合体およびそれらの製造方法並びにそれらを用いた燃料電池
JP2004220843A (ja) * 2003-01-10 2004-08-05 Toyota Central Res & Dev Lab Inc 膜電極接合体
JP2006179412A (ja) * 2004-12-24 2006-07-06 Nissan Motor Co Ltd 燃料電池用電極触媒層、およびこれを用いた燃料電池
JP5023570B2 (ja) * 2006-06-21 2012-09-12 トヨタ自動車株式会社 補強型電解質膜および膜電極接合体の製造方法
JP5164348B2 (ja) * 2006-08-03 2013-03-21 日本ゴア株式会社 膜電極組立体およびその製造方法ならびにそれを用いた固体高分子形燃料電池
JP2009087614A (ja) * 2007-09-28 2009-04-23 Aisin Seiki Co Ltd 燃料電池用拡散層、燃料電池用拡散層の製造方法、燃料電池
JP2010067368A (ja) * 2008-09-08 2010-03-25 Toyota Motor Corp 固体高分子型燃料電池用触媒層及び固体高分子型燃料電池用触媒層の形成方法
JP2010123511A (ja) * 2008-11-21 2010-06-03 Toyota Motor Corp 燃料電池及びその製造方法
JP2011175881A (ja) * 2010-02-25 2011-09-08 Toyota Motor Corp 膜電極接合体
EP2741358B1 (en) * 2011-08-02 2018-04-25 Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. Polymer electrolyte fuel cell
US9123932B2 (en) * 2011-11-17 2015-09-01 GM Global Technology Operations LLC Nanofiber supported catalysts as membrane additives for improved fuel cell durability
JP5772554B2 (ja) * 2011-12-06 2015-09-02 トヨタ自動車株式会社 燃料電池
JP5615875B2 (ja) * 2012-01-16 2014-10-29 本田技研工業株式会社 燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016035918A (ja) 2016-03-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20050287414A1 (en) Fuel cell, and a method for preparing the same
US8354199B2 (en) Multi-layer diffusion medium substrate
US20130136954A1 (en) Fuel cell layer
WO2011087013A1 (ja) 燃料電池
US20110165495A1 (en) Apparatus and methods for connecting fuel cells to an external circuit
CN114583185A (zh) 制造发电组件的方法
JP6278932B2 (ja) 燃料電池用膜−電極接合体及び固体高分子形燃料電池
US9088026B2 (en) Adhesive material for fuel cell and fuel cell
JP5476753B2 (ja) 燃料電池
JP2007193948A (ja) 燃料電池
JP5615794B2 (ja) 燃料電池用電解質膜・電極構造体の製造方法
JP5549578B2 (ja) 燃料電池
JP2012074315A (ja) 固体高分子形燃料電池の膜電極接合体およびその製造方法
JP5387059B2 (ja) 膜電極接合体及びその製造方法並びに固体高分子形燃料電池
JP5251139B2 (ja) 燃料電池の膜・電極接合体の製造方法
JP5109502B2 (ja) 触媒層付電解質膜
JP2018078003A (ja) 燃料電池の製造方法
JP5604404B2 (ja) 燃料電池
JP6356436B2 (ja) 電解質膜・電極構造体
JP2019145321A (ja) 燃料電池スタックの製造方法
JP7226350B2 (ja) 燃料電池セルおよび燃料電池セルの製造方法
JP6007163B2 (ja) 電解質膜・電極構造体
KR102257301B1 (ko) 연료전지용 스택
JP5280414B2 (ja) 膜・電極構造体および燃料電池
JP6412995B2 (ja) 電解質膜・電極構造体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160530

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170214

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170321

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170517

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170606

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170803

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171017

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171211

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180109

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180116

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6278932

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150